(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】脊椎髄核再生用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/32 20150101AFI20220915BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220915BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61K35/32
A61P19/08
A61K9/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502614
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 KR2020009182
(87)【国際公開番号】W WO2021010704
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0086411
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515131404
【氏名又は名称】アジュ ユニバーシティー インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】AJOU UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】ミン ビョン-ヒュン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB32
4C076CC09
4C076FF70
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB46
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA02
4C087MA67
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA96
(57)【要約】
本発明は、胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含む脊椎髄核再生用組成物、椎間板組織再生用組成物及び該組成物を有効成分として含む脊椎疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。脊椎髄核再生用組成物は、圧縮及び引張強度など脊椎髄核の特徴を模写して、これと類似した組織に再生され、椎間板組織再生用組成物は、椎間板内に移植されて損傷した椎間板組織を効果的に復元させて、それを含む脊椎疾患の予防または治療用薬学組成物は、椎間板ヘルニアのような脊椎疾患の根本的な治療剤として活用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含む、脊椎髄核再生用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、
前記脊椎髄核の圧縮及び引張強度を模写し、流動性及び生力学的安定性を有したゲル状であることを特徴とする、請求項1に記載の脊椎髄核再生用組成物。
【請求項3】
胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含む、椎間板組織再生用組成物。
【請求項4】
前記組成物は、
椎間板内に移植されて損傷した椎間板組織を復元させることを特徴とする、請求項3に記載の椎間板組織再生用組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載の組成物を有効成分として含む、脊椎疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記脊椎疾患は、
腰椎椎間板ヘルニア、頚椎椎間板ヘルニア、脊椎捻挫、脊椎炎及び脊柱管狭窄症からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項5に記載の脊椎疾患の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎髄核再生用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腰痛は、人口の84%が一生の間に少なくとも一回以上経験する程度に頻繁である。椎間板(Intervertebral disc)の退行性変化による腰痛は、人口の80%以上でよく表われ、このような退行性変化は、髄核細胞の減少、糖タンパクと2次膠原質など細胞外基質(Extracellular matrix、ECM)の生成減少による髄核内水分分圧の減少に起因する。結果として脊椎後関節及び脊椎体に全般的な退行性変化を起こして、患者に激しい疼痛と活動制限とを招く。椎間板の退行性変化は、遺伝的要因、環境的要因、老化など多様な因子によって発生し、慢性的な体重負荷、強度の高い身体的活動、肥満などは、椎間板の退行性変化を加速化させる原因となる。
【0003】
大韓民国の国民健康保険公団によれば、2006年から2010年までの健康保険診療費の支給資料を分析した結果、ヘルニア疾患(M50、M51)の診療患者が毎年増加傾向を示して、人口10万人当り患者数は、2006年に3,849人から2010年4,496人に1.7倍増加している。「ヘルニア疾患」による診療費は、2006年4,387億ウォンから2010年6,869億ウォンに1.56倍増加して、「ヘルニア疾患」に莫大な医療コストがかかっている。
【0004】
退行性椎間板による腰痛を治療するために、薬物治療、物理治療などの保存的療法が使われ、このような保存的療法が効果がない場合、椎間板切除術、脊椎固定術、人工椎間板挿入術のような手術的治療が考慮される。手術的治療を通じて短期間の疼痛の減少効果はあるが、長期的な追跡結果、退行性変化の悪化及び脊椎不安定症の誘発で腰痛がさらに激しくなる。すなわち、既存の手術的治療は、退行性椎間板を根本的に治療する方法ではなく、長期的に激しい疼痛を再発させるという問題点がある。
【0005】
前記問題点を解決するために、今まで試みられた生物学的治療法は、不足な成長因子を補充方法が代表的である。成長因子[transforming growth factor(TGF)β、insulin like growth factor-1、bone morphogenic protein-2]を変性された椎間板に注入して基質生成を刺激することができるが、経時的に注入された成長因子は、生体内分解タンパク質によって破壊されて持続的な注入が必要であり、他の動物を通じて作られるので、生産コストが高いという短所がある。
【0006】
それを解消するために、遺伝子操作を通じて成長因子が常に発現される治療法についての研究が進められた。非ウイルス性伝達体を用いて基質生成遺伝子を挿入し、生体内で所望のタンパク質を持続的な分泌を誘導して生物学的効果を得る治療概念であるが、臨床に直ちに適用するには無理がある。
【0007】
慢性腰痛の最も平凡な原因である椎間板の退行性変化は、いまだに効果的な治療方法がない非可逆的な疾患であるので、根本的な治療剤の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記問題を解決するために、本発明は、椎間板疾患などの根本的な治療のための脊椎髄核再生用組成物及び椎間板組織再生用組成物を提供する。
【0009】
また、前記脊椎髄核再生用組成物または前記椎間板組織再生用組成物を含む脊椎疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による脊椎髄核再生用組成物は、胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含みうる。
【0011】
本発明による椎間板組織再生用組成物は、胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含みうる。
【0012】
本発明による脊椎疾患の予防または治療用薬学組成物は、前記脊椎髄核再生用組成物または前記椎間板組織再生用組成物を有効成分として含みうる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による脊椎髄核再生用組成物は、圧縮及び引張強度など脊椎髄核の特徴を模写して、これと類似した組織に再生され、椎間板組織再生用組成物は、椎間板内に移植されて損傷した椎間板組織を効果的に復元させることができる。
【0014】
本発明による脊椎疾患の予防または治療用薬学組成物は、前記のような特徴を有した脊椎髄核再生用組成物または椎間板組織再生用組成物を有効成分として含むことにより、椎間板ヘルニアのような脊椎疾患の根本的な治療に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による組成物を利用した椎間板の治療方法を簡略に示した図面である。
【
図2】本発明の一実験例による後腹膜接近法による退行性腰椎椎間板ウサギモデルの製作過程である。
【
図3】本発明の一実験例による椎間板損傷ウサギモデルの腰椎椎間板のT MRIイメージである。
【
図4】本発明の一実験例による椎間板損傷ウサギモデルの組織学的検査のためのエンベッディング(embedding)過程を示した図面である。
【
図5】
図4のウサギモデルの組織学的検査の結果であって、
図5は、1番のウサギを、
図6は、13番のウサギの組織学的検査の結果である。
【
図6】
図4のウサギモデルの組織学的検査の結果であって、
図5は、1番のウサギを、
図6は、13番のウサギの組織学的検査の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明者は、一般的な関節軟骨と異なる脊椎髄核の特性を分析して、それによる組織再生に関する研究を進行しているうちに、ウサギ腰椎椎間板欠損モデルで胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含む組成物の脊椎髄核再生効果を確認することにより、本発明を完成した。
【0018】
本発明は、胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含む脊椎髄核再生用組成物を提供する。
【0019】
本発明において、「胎児軟骨組織由来の細胞」は、胎児軟骨組織から分離された細胞を総称し、望ましくは、コラゲナーゼ(collagenase)などを用いて軟骨組織を完全に消化させた後、分離された軟骨前駆細胞(chondrocytes)である。
【0020】
本発明において、「胎児軟骨組織由来の細胞外基質」は、胎児軟骨組織由来の細胞から細胞によって合成され、細胞外に分泌、蓄積された分子で構成されている生体高分子の集合体であって、コラーゲン(collagen)、エラスチン(elastin)などの繊維性タンパク質、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan、GAG)などの複合タンパク質、フィブロネクチン(fibronectin)、ラミニン(laminin)などの細胞付着性タンパク質などを含みうる。前記細胞外基質は、前記のようなタンパク質で組織の形状を成しながら、組織の物理的性質を決定し、細胞の環境の保持に重要な役割を果たす。
【0021】
本発明において、「脊椎(spine)」は、ヒトに、首と背中、腰、お尻、しっぽ部に至るまで主要骨格を保持させる骨であって、33個の脊椎骨で構成されている。
【0022】
本発明において、「髄核(Nucleus Pulposus)」は、前記脊椎骨の間のクッションの役割を行う椎間板の中心部であって、元気な髄核のほとんどは水からなり、このような水分をよく捕まえることができるプロテオグリカンが豊かである。
【0023】
本発明において、「再生(regeneration)」は、さまざまな原因で組織または器官の欠損などが起こった場合、以前と同じ組織または器官にその欠損部を補充、修復、復元、回復させようとする作用を言い、これらの用語と混用して使われる。
【0024】
本発明による脊椎髄核再生用組成物は、脊椎髄核の組織特性を再現することができる。より詳細には、前記組成物は、前記脊椎髄核の圧縮及び引張強度を模写することができ、流動性及び生力学的安定性を有したゲル(gel)状であり、例えば、前記胎児軟骨組織由来の細胞が搭載された胎児軟骨組織由来の細胞外基質ハイドロゲル(hydrogel)状であるが、これに制限されるものではない。前記組成物は、関節負荷に耐えることができる生力学的安定性を有し、脊椎関節運動によって一定形態の変形が可能である。
【0025】
本発明において、「ゲル」は、ゼリーと類似した物質であって、柔らかくて弱い範囲から強くて粗い範囲までの物性を有し、ゲルのほとんどの重量は、液体(liquid)であるが、3次元ネットワーク構造によって全体としては固体のように行動し、「ゲル」と混用して使われる。
【0026】
本発明は、胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を有効成分として含む椎間板組織再生用組成物を提供する。
【0027】
本発明において、「椎間板」は、脊椎で脊椎骨と脊椎骨との間に繋ぐ軟骨構造物であって、「脊椎円盤」または「椎間板ヘルニア」と混用して使われる。椎間板は、髄核及び血管と神経とを有する線維輪(annulus fibrosus)で構成され、前記髄核と前記線維輪は、互いに区別される構造ではあるが、その境界部では混在されている形状が見られる。
【0028】
本発明による椎間板組織再生用組成物は、椎間板組織の特性を再現することができる前記胎児軟骨組織由来の細胞が搭載された胎児軟骨組織由来の細胞外基質ハイドロゲル状であるが、これに制限されるものではない。
【0029】
本発明による椎間板組織再生用組成物は、椎間板内に移植されて損傷した椎間板組織を復元させることができる。本発明の一実験例によれば、腰椎椎間板損傷ウサギモデルで前記組成物を注入した場合、前記椎間板組織の再生が確認された。
【0030】
本発明は、前記脊椎髄核再生用組成物または前記椎間板組織再生用組成物を有効成分として含む脊椎疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0031】
本発明による薬学組成物において、前記脊椎疾患は、脊椎軟骨組織などが機械的刺激や炎症反応による欠陥、損傷、欠損による疾患または老化、遺伝的または環境的要因による退行性変化による疾患を含み、より詳細には、腰椎椎間板ヘルニア、頚椎椎間板ヘルニア、脊椎捻挫、脊椎炎及び脊柱管狭窄症からなる群から選択される1つ以上であるが、これらに制限されるものではない。
【0032】
前記組成物は、分解によって機能を消失して反復的な投与が必要な既存の製品とは異なって、脊椎組織内に移植されて長期間保持される。
【0033】
本発明による薬学組成物は、脊椎組織損傷または欠損部位に直接注入可能な形態で剤形化され、例えば、分化された胎児軟骨組織由来の細胞が搭載された胎児軟骨組織由来の細胞外基質ハイドロゲル状である。
図1は、前記組成物を利用した椎間板の治療方法を簡略に示したものであって、前記組成物は、望ましくは、
図1のように注射剤または微細侵襲が可能な形態に製造されて移植される。
【0034】
また、前記注射剤は、生理食塩液、リンゲル液、Hank溶液または滅菌された水溶液などの水性溶剤、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの高級脂肪酸エステル及びエタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはグリセリンなどの非水性溶剤などを用いて製造可能であり、粘膜透過のために、通過するバリアに適した当業者に公知の非浸透性剤が使われ、変質防止のための安定化剤として、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなどと、乳化剤、pH調節のための緩衝剤、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコールなどの微生物発育を阻止するための保存剤などの薬学的に許容可能な担体をさらに含みうる。
【0035】
本発明による薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与される。前記「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な恵み/危険の比率で脊椎組織の損傷の治療に十分であり、副作用を起こさない程度の量を意味する。
【0036】
前記薬学組成物の有効用量レベルは、使用目的、患者の年齢、性別、体重及び健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、配合または同時使用される薬物を含んだ要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって異なるように決定される。本発明による薬学組成物は、前記脊椎組織の損傷または欠損部位のサイズによって適切な容量で移植される。
【0037】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0038】
<実施例1>ヒト胎児軟骨組織由来の軟骨前駆細胞の分離及び培養
【0039】
胎児軟骨組織由来の細胞及び胎児軟骨組織由来の細胞外基質を含む脊椎髄核再生用組成物であるアーティペースト(ArtiPaste)の製造のために、12~15週齢の胎児のヒザ関節から軟骨前駆細胞を分離した。前記ヒザ関節から分離された軟骨組織をリン酸緩衝溶液(phosphated buffered saline;PBS)で洗浄した後、37℃、5% CO2インキュベーターで0.2%(w/v)コラゲナーゼ(Worthington Biochemical Corp.,Lakewood,NJ)を含むダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Egle Medium;以下、DMEM、Gibco,Grand Island,NY)で4時間培養した。軟骨組織が完全に消化されて放出された軟骨細胞を1700rpmで10分間遠心分離した後、沈殿された軟骨前駆細胞を組織培養皿(培養皿当たり1×106cellsの密度に150mm(dia.)×20mm(h))に接種した。
【0040】
<実施例2>アーティペーストの製作
【0041】
前記実施例1から収得した軟骨前駆細胞を10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)、50units/mLペニシリン(penicillin)及び50μg/mLストレプトマイシン(streptomycin)が添加されたDMEMに2×105cellsで希釈した後、15~18日間単層培養した。培養後、培地を除去し、0.05%トリプシン-EDTA(Gibco)を添加して細胞外基質と結合された細胞膜を収得した。細胞及び細胞外基質が結合された細胞膜の収得は、0.05%トリプシン-EDTA(Gibco)処理後、細胞をピペットで分離せず、細胞及び細胞外基質を含む細胞膜全体を一回に収得した。
【0042】
収得した細胞及び細胞外基質を含む細胞膜を軟骨分化培地(1%抗生剤-抗真菌剤(antibiotic-antimycotic)、1.0mg/mLインスリン(insulin)、0.55mg/mLヒトトランスフェリン(human transferrin)、0.5mg/mL亜セレン酸ナトリウム(sodium selenite)、50μg/mLアスコルビン酸(Ascorbic acid)、1.25mg/mLウシ血清アルブミン(bovine serum albumin;BSA)、100nMデキサメタゾン(dexamethasone)、40μg/mLプロリン(proline)及び10ng/ml TGF-βを含むDulbecco’s Modified Egle Medium-High Glucose;DMEM-HG)が含まれた50mlチューブに入れ、250×gで20分間遠心分離してペレット状の構造体を製造した。
【0043】
製造された細胞ペレットを前記組成と同一の軟骨分化培地が入れられた培養皿に入れ、37℃、5% CO2インキュベーターで1週、2週及び3週間培養してアーティペーストを製造した。
【0044】
<実験例1>椎間板損傷ウサギモデルでアーティペースト注入による変化確認
【0045】
1.腰椎椎間板線維輪欠損モデルの製作方法
【0046】
図2は、本発明の一実験例による後腹膜接近法による退行性腰椎椎間板ウサギモデルの製作過程である。大韓民国のCHA(チャ)医科学大学校動物実験倫理委員会の許可を得て、重量2.5kg以上(2.5~3kg)であるニュージーランドホワイトウサギ(New Zealand White Rabbit、雌)15匹を対象にしてアーティペーストを利用した椎間板再生治療法に対する非臨床実験を進行した。
【0047】
図2を参照すれば、手術のために、ゾレチル(Zoletil)15mg/kgとロムプン(Rompun)5mg/kgとを混合してウサギの筋肉に注入した後、ウサギの腰推部の右側部位の毛を除去し、腰推部の中央部から右に約3cmになる地点を選定した後、13番目の肋骨と腸骨との間の皮膚を約5cmの長さに切開した。
【0048】
出血しないように注意し、筋膜を切開し、腰推周囲の筋肉と腹膜との間を通じて腰推に接近する後腹膜接近法を用いて直接腰椎椎間板を露出した。モデル製作に使われた腰推3~4番、4~5番、そして、5~6番の間の椎間板に16ゲージ(gauge)スパイラルニードル(spinal needle)を5mmの深さに刺し込んで椎間板の線維輪に欠損を作った。
【0049】
2-1.アーティペーストの挿入
【0050】
腰椎椎間板線維輪欠損誘導直後、腰推3~4番と5~6番との間の椎間板にアーティペースト50μlを直接注入した。26ゲージ脊椎針を5mmの深さに注入してアーティペースト注入後、フィブリングルー(fibrin glue)を使用して注入したアーティペーストの漏れ(leakage)を防止した。
【0051】
注入後、8週目にあらゆる動物を犠牲させた後、MRIを撮影し、組織学的検査を施行した。椎間板の退行性変化程度を評価するための映像学的指標としては、MRI撮影を通じたT2強調画像(repetition time/echo time;2000/120ms)を利用した。
【0052】
2-2.実験の結果
【0053】
図3は、本発明の一実験例による椎間板損傷ウサギモデルの腰椎椎間板のT MRIイメージである。
【0054】
図3を参照すれば、腰推3~4番、4~5番、5~6番の間の椎間板に線維輪欠損を誘導した以後に、腰推3~4番と腰推5~6番との間の椎間板のみにアーティペーストを挿入した結果、赤い矢印が示す如何なる治療剤も挿入していない腰推4~5番の間の椎間板は、アーティペーストを挿入した腰推3~4番と腰推5~6番との間の椎間板に比べて間隔が狭くなっており、退行性変化が保持されると表われた。一方、治療剤を挿入していない腰推4~5番の椎間板に比べて、アーティペーストを挿入した腰推3~4番、腰推5~6番の間の椎間板が再生されたことを確認することができた。
【0055】
3-1.組織学的検査
【0056】
図4は、本発明の一実験例による椎間板損傷ウサギモデルの組織学的検査のためのエンベッディング過程を示したものである。
【0057】
図4を参照すれば、Aは、試片の外観の形状であり、Bは、前記試片の椎間板中心に切断するために準備する形状、Cは、前記試片を椎間板中心に切断した形状を示す。
【0058】
3-2.検査の結果
【0059】
図5及び
図6は、
図4のウサギモデルの組織学的検査の結果であって、
図5は、1番のウサギを、
図6は、13番のウサギの組織学的検査の結果である。
【0060】
図5及び
図6を参照すれば、
図5の1番のウサギの腰推2~3番は、正常対照群、腰推3~4番は、アーティペースト注入群、腰推4~5番は、アーティペースト非注入群及び腰推5~6番は、アーティペースト注入群であって、腰推3~4番、5~6番の間の椎間板線維輪欠損が復元されたと表われた。
【0061】
図6の13番のウサギも、腰推2~3番は、正常対照群、腰推3~4番は、アーティペースト注入群、腰推4~5番は、アーティペースト非注入群及び腰推5~6番は、アーティペースト注入群であって、腰推3~4番、5~6番の間の椎間板線維輪欠損が復元されたと表われた。
【0062】
4.組織毒性及び免疫反応の評価
【0063】
アーティペーストを注入した場合、組織毒性は確認されず、炎症細胞の増加が確認されず、アーティペースト非投与椎間板に比べて組織が再生されることが確認された。
【0064】
<比較例1>アーティペーストとゲルスティックス(GelStix、Replication Medical Inc)との比較
【0065】
既存の製品であるゲルスティックスは、間葉幹細胞または前記細胞にハイドロゲルのような生体材料を含んだものであって、短期間の機能を示すことができるが、分解によって機能を消失して反復的な投与が必要である。
【0066】
これとは異なって、本発明の一実施例によるアーティペーストは、軟骨由来幹細胞及び基質を含み、髄核の圧縮及び引張強度を模写して類似した組織に再生される。すなわち、流動性及び生力学的安全性を有したゲルタイプの組成物であって、生物学的及び解剖学的に髄核軟骨組織の特性を再現することができる。
【0067】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。すなわち、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
【国際調査報告】