(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】がん治療のためのインテグリン標的化ノッティン-FC融合体と抗CD47抗体の併用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20220915BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220915BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220915BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220915BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220915BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220915BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220915BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220915BHJP
A61P 15/14 20060101ALI20220915BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220915BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220915BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61K38/17
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K16/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 D
A61K45/00
A61P15/14
A61P17/00
A61P1/00
G01N33/574 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502863
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 US2020042644
(87)【国際公開番号】W WO2021011912
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】592116475
【氏名又は名称】ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・リーランド・スタンフォード・ジュニア・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コクラン,ジェニファー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラーベ,アマンダ ローレン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA41
4C084CA18
4C084CA53
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZB26
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA18
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗CD47抗体または抗SIRPα抗体と併用したインテグリン結合Fc融合タンパク質によりがんを治療する方法を提供する。本発明はかかる方法で使用される組成物も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質及びSIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤を対象に投与することを含む、前記対象のがんを治療するための方法であって、前記インテグリン結合ポリペプチドが、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と少なくとも90%同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されている、前記方法。
【請求項2】
前記SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤が、抗CD47抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤が、抗SIRPα抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と少なくとも90%同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、配列番号59~配列番号91(両端を含む)からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、配列番号130(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、配列番号131(GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及びGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質及び前記抗CD47抗体を投与することの前に、前記対象の前記がんにおけるCD47陽性発現に基づいて治療を行うための前記対象を選択することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記がんにおけるCD47発現が、前記対象の対応する非がん性組織の細胞よりも少なくとも10%高い、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記Fcドメインが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のFcドメインからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記Fcドメインが、ヒトFcドメインである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、前記Fcドメインに直接結合されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、リンカーポリペプチドを介して前記Fcドメインに結合されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記リンカーポリペプチドが、GGGGS(配列番号136)及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号137)からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗CD47抗体が遮断抗体である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗CD47抗体が、CD47とリガンドであるシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)との相互作用を遮断する遮断抗体である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗CD47抗体が、前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の前、後、または同時に投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体が少なくとも2つのインテグリンに結合する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体が少なくとも3つのインテグリンに結合する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体が、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びα5β1からなる群から選択される少なくとも2つのインテグリンに結合する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象の前記がん細胞に対する食作用を刺激する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記がんが、乳癌、結腸癌及び黒色腫から選択される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤、及び薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物であって、前記インテグリン結合ポリペプチドが、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と少なくとも90%同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されている、前記組成物。
【請求項23】
前記SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤が、抗CD47抗体である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤が、抗SIRPα抗体である、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、配列番号59~配列番号91(両端を含む)からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項22~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、配列番号130(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、配列番号131(GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及びGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)からなる群から選択される配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されている、請求項22~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記Fcドメインが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のFcドメインからなる群から選択される、請求項22~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記Fcドメインが、ヒトFcドメインである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、前記Fcドメインに直接結合されている、請求項22~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、リンカーポリペプチドを介して前記Fcドメインに結合されている、請求項22~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記リンカーポリペプチドが、GGGGS(配列番号136)及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号137)からなる群から選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体が遮断抗体である、請求項22~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体が、CD47とリガンドであるシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)との相互作用を遮断する遮断抗体である、請求項22~32のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
有効量のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質及びSIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤による治療を行うための対象を特定する方法であって、前記インテグリン結合ポリペプチドが、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と90%同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されており、前記方法が、前記対象からの腫瘍試料におけるCD47陽性発現についてスクリーニングすることを含む、前記方法。
【請求項35】
前記SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤が、抗CD47抗体である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤が、抗SIRPα抗体である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記腫瘍試料におけるCD47陽性発現をスクリーニングすることの前に、前記対象から腫瘍細胞をインビトロで単離することをさらに含む、請求項34~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記腫瘍試料におけるCD47発現が、対応する非腫瘍組織の細胞よりも少なくとも10%高い、請求項34~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、配列番号59~配列番号91(両端を含む)からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項34~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、配列番号130(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、配列番号131(GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及びGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)からなる群から選択される、請求項34~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記Fcドメインが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のFcドメインからなる群から選択される、請求項34~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記Fcドメインが、ヒトFcドメインである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、前記Fcドメインに直接結合されている、請求項34~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、リンカーポリペプチドを介して前記Fcドメインに結合されている、請求項34~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記リンカーポリペプチドが、GGGGS(配列番号136)及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号137)からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体が遮断抗体である、請求項34~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体が、CD47とリガンドであるシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)との相互作用を遮断する遮断抗体である、請求項34~46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体が、前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の前、後、または同時に投与される、請求項34~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体が少なくとも2つのインテグリンに結合する、請求項34~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体が少なくとも3つのインテグリンに結合する、請求項34~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体が、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びα5β1からなる群から選択される少なくとも2つのインテグリンに結合する、請求項34~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質及び前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体による治療が、前記対象の前記腫瘍に対する食作用を刺激する、請求項34~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
マクロファージを有効量のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質及びSIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤とインビボまたはインビトロで接触させることを含む、マクロファージによるFc媒介食作用を誘導する方法であって、前記インテグリン結合ポリペプチドが、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と90%同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されており、前記接触させることが食作用を誘導する、前記方法。
【請求項54】
前記SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤が、抗CD47抗体である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤が、抗SIRPα抗体である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記食作用が、前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体の非存在下と比較して、前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体の添加により増加する、請求項53~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、配列番号130(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、配列番号131(GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及びGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)からなる群から選択される、請求項53~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記Fcドメインが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のFcドメインからなる群から選択される、請求項53~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記Fcドメインが、ヒトFcドメインである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、前記Fcドメインに直接結合されている、請求項53~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記インテグリン結合ポリペプチドが、リンカーポリペプチドを介して前記Fcドメインに結合されている、請求項53~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記リンカーポリペプチドが、GGGGS(配列番号136)及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号137)からなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体が遮断抗体である、請求項53~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体が、CD47とリガンドであるシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)との相互作用を遮断する遮断抗体である、請求項53~63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体が、前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の前、後、または同時に投与される、請求項53~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体が少なくとも2つのインテグリンに結合する、請求項53~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体が少なくとも3つのインテグリンに結合する、請求項53~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体が、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びα5β1からなる群から選択される少なくとも2つのインテグリンに結合する、請求項53~67のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本出願は、2019年7月17日出願の米国特許仮出願第62/875,337号に基づく優先権を主張するものであり、その全開示内容の全体を参照によって本明細書に援用するものである。
【0002】
インテグリン関連タンパク質(IAP)としても知られるCD47(Cluster of Differentiation47)は、膜貫通タンパク質である。このタンパク質はCD47遺伝子によってコードされている。CD47は免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、膜インテグリンと会合する。CD47は、リガンドとしてのトロンボスポンジン1(TSP-1)及びシグナル調節タンパク質α(SIRPα)に結合する。CD47は一般に、免疫系のマクロファージに対していわゆる「don’t eat me」シグナルとして機能する。CD47は、一部のがん及び肺線維症などの他の疾患の潜在的な治療標的として標的化されている。CD47は、アポトーシス、増殖、接着、遊走など、様々な細胞プロセスに関与している。さらに、CD47は免疫応答及び血管新生反応にも関与していることが示されている。CD47はヒト細胞で遍在的に発現しており、多くの異なるがん細胞で過剰発現していることがわかっている。しかし、抗体ベースの治療法は、多くの腫瘍が既知の腫瘍関連抗原を欠いていることためにしばしば困難であり、腫瘍における遍在的な発現を考慮すると、単剤療法は問題が生じる場合がある。
【0003】
〔背景技術〕
インテグリンは、固形腫瘍の開始、進行、及び転移にとって重要な多種多様な細胞機能を調節する細胞外マトリックス接着受容体のファミリーである。腫瘍の進行におけるインテグリンの重要性のため、インテグリンはがん治療における魅力的な標的となっており、様々な種類のがんの治療を可能としている。がん性細胞に存在するインテグリンとしては、ανβ3、ανβ5、及びα5β1が挙げられる。抗体、直鎖状ペプチド、環状ペプチド、ペプチド模倣体など、がんに関連する個々のインテグリンを標的とした様々な治療薬が開発されている。しかしながら、小さな構造化されたペプチド足場を利用するか、または複数のインテグリンを同時に標的にしようとした者はこれまでになかった。さらに、現在のインテグリン標的薬は単剤療法として投与されている。様々ながんをより効果的に治療するため、新しい併用療法が必要とされている。
【0004】
本発明は、この要請を満たし、がん治療に使用するための新規の併用療法を提供するものである。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明は、有効量のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質及びSIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤を対象に投与することを含む、対象のがんを治療するための方法であって、前記インテグリン結合ポリペプチドが、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と少なくとも90%同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されている、方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、抗CD47抗体である。
【0007】
いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、抗SIRPα抗体である。
【0008】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と少なくとも90%同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドはFcドメインと結合されている。
【0009】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号130(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、配列番号131(GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及びGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)からなる群から選択される。
【0011】
方法のいくつかの実施形態において、方法は、前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体及び前記抗CD47抗体を投与することの前に、前記対象のがんにおけるCD47陽性発現に基づいて治療を行うための前記対象を選択することを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記がんにおけるCD47発現は、前記対象の対応する非がん性組織の細胞よりも少なくとも10%高い。
【0013】
いくつかの実施形態において、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4 Fcドメインからなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態において、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。
【0015】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、前記Fcドメインに直接結合される。
【0016】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、リンカーポリペプチドを介して前記Fcドメインに結合される。
【0017】
いくつかの実施形態において、リンカーポリペプチドは、GGGGS(配列番号136)及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号137)を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、遮断抗体である。
【0019】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、CD47とリガンドであるシグナル調節タンパク質α(SIRPα)との相互作用を遮断する遮断抗体である。
【0020】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の前、後、または同時に投与される。
【0021】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも2つのインテグリンに結合する。
【0022】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも3つのインテグリンに結合する。
【0023】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びα5β1からなる群から選択される少なくとも2つのインテグリンに結合する。
【0024】
いくつかの実施形態において、方法は、前記対象のがん細胞に対する食作用を刺激する。
【0025】
いくつかの実施形態において、がんは、乳癌、結腸癌及び黒色腫から選択される。
【0026】
本発明はまた、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤、及び薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物であって、前記インテグリン結合ポリペプチドが、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と少なくとも90%同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されている、組成物も提供する。
【0027】
いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、抗CD47抗体である。
【0028】
いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、抗SIRPα抗体である。
【0029】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号130(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、配列番号131(GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及びGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)からなる群から選択される配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドはFcドメインに結合されている。
【0031】
いくつかの実施形態において、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4 Fcドメインからなる群から選択される。
【0032】
いくつかの実施形態において、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。
【0033】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、前記Fcドメインに直接結合される。
【0034】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、リンカーポリペプチドを介して前記Fcドメインに結合される。
【0035】
いくつかの実施形態において、リンカーポリペプチドは、GGGGS(配列番号136)及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号137)を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体は、遮断抗体である。
【0037】
いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体は、CD47とリガンドであるシグナル調節タンパク質α(SIRPα)との相互作用を遮断する遮断抗体である。
【0038】
本発明はまた、有効量のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質及びSIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤による治療を行うための対象を特定する方法であって、前記インテグリン結合ポリペプチドが、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と90%同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されており、方法が、前記対象からの腫瘍試料におけるCD47陽性発現についてスクリーニングすることを含む、方法も提供する。
【0039】
いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、抗CD47抗体である。
【0040】
いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、抗SIRPα抗体である。
【0041】
方法のいくつかの実施形態において、腫瘍試料におけるCD47陽性発現をスクリーニングすることの前に、方法は、前記対象から腫瘍細胞をインビトロで単離することをさらに含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、腫瘍試料におけるCD47発現は、対応する非腫瘍性組織の細胞よりも少なくとも10%高い。
【0043】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号130(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、配列番号131(GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及びGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)からなる群から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態において、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4 Fcドメインからなる群から選択される。
【0046】
いくつかの実施形態において、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。
【0047】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、前記Fcドメインに直接結合される。
【0048】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、リンカーポリペプチドを介して前記Fcドメインに結合される。
【0049】
いくつかの実施形態において、リンカーポリペプチドは、GGGGS(配列番号136)及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号137)を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体は、遮断抗体である。
【0051】
いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体は、CD47とリガンドであるシグナル調節タンパク質α(SIRPα)との相互作用を遮断する遮断抗体である。
【0052】
いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体は、前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の前、後、または同時に投与される。
【0053】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも2つのインテグリンに結合する。
【0054】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも3つのインテグリンに結合する。
【0055】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びα5β1からなる群から選択される少なくとも2つのインテグリンに結合する。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質及び前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体による治療は、前記対象の腫瘍に対する食作用を刺激する。
【0057】
本発明はまた、マクロファージを有効量のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質及びSIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤とインビボまたはインビトロで接触させることを含む、マクロファージによるFc媒介食作用を誘導する方法であって、前記インテグリン結合ポリペプチドが、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と90%同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されており、前記接触させることが食作用を誘導する、方法も提供する。
【0058】
いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、抗CD47抗体である。
【0059】
いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、抗SIRPα抗体である。
【0060】
いくつかの実施形態において、食作用は、前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体の非存在下と比較して、前記抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体の添加により増加する。
【0061】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号130(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、配列番号131(GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及びGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)からなる群から選択される。
【0062】
いくつかの実施形態において、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4 Fcドメインからなる群から選択される。
【0063】
いくつかの実施形態において、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。
【0064】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、前記Fcドメインに直接結合される。
【0065】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、リンカーポリペプチドを介して前記Fcドメインに結合される。
【0066】
いくつかの実施形態において、リンカーポリペプチドは、GGGGS(配列番号136)及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号137)を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体は、遮断抗体である。
【0068】
いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体は、CD47とリガンドであるシグナル調節タンパク質α(SIRPα)との相互作用を遮断する遮断抗体である。
【0069】
いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体または前記抗CD47抗体は、前記インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の前、後、または同時に投与される。
【0070】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも2つのインテグリンに結合する。
【0071】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも3つのインテグリンに結合する。
【0072】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びα5β1からなる群から選択される少なくとも2つのインテグリンに結合する。
【0073】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むことで最もよく理解することができる。図面には、以下の図が含まれる。
【0074】
〔図面の簡単な説明〕
<
図1>様々ながん細胞株でのα及びβインテグリンサブユニット(A
V、A
5、B
3、及びB
1)の発現を示す。エラーバーは、3重で実施した実験から計算された標準誤差を表す。
【0075】
<
図2>様々ながん細胞株におけるCD47の発現を示す。エラーバーは、3重で実施した実験から計算された標準誤差を表す。
【0076】
<
図3>Aは、MC38、B16F10、及びE0771細胞に対する2.5F-Fcの用量依存的結合を示す。Bは、100nMの飽和濃度でのMC38、B16F10、E0771、及び4T1-GFP細胞に対する2.5F-Fcの結合を示す。エラーバーは、3重または2重で実施した実験から計算された標準誤差を表す。
【0077】
<
図4A>がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にMC38がん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。エラーバーは、3重で実施した実験から計算された標準誤差を表す。
【0078】
<
図4B>がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にMC38がん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。エラーバーは、3重で実施した実験から計算された標準誤差を表す。
【0079】
<
図4C>がん細胞を食作用アッセイに先立って2.5F-Fc及び抗CD47抗体とともにプレインキュベートした場合にMC38がん細胞を貪食したマクロファージの割合(ゲーティングしたもの、2.94%)を示すフローサイトメトリーの図である。
【0080】
<
図4D>がん細胞を食作用アッセイに先立って2.5F-Fc及び抗CD47抗体とともにプレインキュベートした場合にMC38がん細胞を貪食したマクロファージの割合(ゲーティングしたもの、28.4%)を示すフローサイトメトリーの図である。
【0081】
<
図5A>がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。試験したがん細胞は、B16F10黒色腫細胞である。
【0082】
<
図5B>がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。試験したがん細胞は、E0771乳腺腺癌細胞である。
【0083】
<
図5C>がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。試験したがん細胞は、4T1-GFP乳癌細胞である。
【0084】
<
図5D>がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。試験したがん細胞は、U87MGヒト神経膠芽腫細胞である。
【0085】
<
図5E>がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。非がん性293T細胞も試験した。
【0086】
<
図6A>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSでの模擬治療後のマウスにおけるMC38誘発腫瘍の形態を示す。
【0087】
<
図6B>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。処置が9日目に開始される前の8日目の異なる処置群にわたる初期腫瘍サイズを示す。
【0088】
<
図6C>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる処置の経過中に測定された腫瘍の面積及び体積を示す。
【0089】
<
図6D>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる処置の経過中に測定された腫瘍の面積及び体積を示す。
【0090】
<
図6E>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の終了時に18日目に摘出された腫瘍のサイズ及び重量を示す。各処置群で10匹のマウスを使用した。
【0091】
<
図6F>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の終了時に18日目に摘出された腫瘍のサイズ及び重量を示す。各処置群で10匹のマウスを使用した。
【0092】
<
図6G>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。治療プロトコルの模式図を示す。
【0093】
<
図7A>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10メラノーマ細胞誘発腫瘍の応答を示す。治療が開始される直前の9日目の異なる治療群にわたる初期腫瘍サイズを示す。
【0094】
<
図7B>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の経過中及び終了に向かって測定された腫瘍の面積、体積及び重量を示す。各処置群で9匹のマウスを使用した。
【0095】
<
図7C>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の経過中及び終了に向かって測定された腫瘍の面積、体積及び重量を示す。各処置群で9匹のマウスを使用した。
【0096】
<
図7D>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の経過中及び終了に向かって測定された腫瘍の面積、体積及び重量を示す。各処置群で9匹のマウスを使用した。
【0097】
<
図7E>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の経過中及び終了に向かって測定された腫瘍の面積、体積及び重量を示す。各処置群で9匹のマウスを使用した。
【0098】
<
図7F>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の経過中及び終了に向けて、設定された安楽死基準に基づいた模擬生存率を示す。
【0099】
<
図7G>抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。治療プロトコルの模式図を示す。
【0100】
<
図8>Aは、MC38細胞でα-CD47と併用した2.5F-Fcのインビトロ食作用の力価測定を示す。Bは、B16F10細胞でα-CD47と併用した2.5F-Fcのインビトロ食作用の力価測定を示す。
【0101】
<
図9A>α-CD47処置と併用した2.5F-Fcが、インビボで生存を延長する能力を示す。B16F10がん細胞を移植したマウスモデルからの腫瘍進行データを示す。
【0102】
<
図9B>α-CD47処置と併用した2.5F-Fcが、インビボで生存を延長する能力を示す。
図9Aで処置した動物の生存データを示す。
【0103】
<
図9C>α-CD47処置と併用した2.5F-Fcが、インビボで生存を延長する能力を示す。MC38がん細胞を移植したマウスモデルからの腫瘍進行データを示す。
【0104】
<
図9D>α-CD47処置と併用した2.5F-Fcが、インビボで生存を延長する能力を示す。
図9Cで処置した動物の生存データを示す。
【0105】
〔発明を実施するための形態〕
I.序論
1.定義
特許請求の範囲及び明細書で使用される用語は、特に断らない限り、以下に記載されるように定義される。親仮特許出願で使用されている用語と直接矛盾する場合には、本明細書で使用されている用語が優先するものとする。
【0106】
「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体のことを指す。天然に存在するアミノ酸とは、遺伝子コードによってコードされるもの、及び、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、及びO-ホスホセリンなどの後で修飾されたアミノ酸である。「アミノ酸類似体」とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合したα炭素)を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなど)のことを指す。かかる類似体は、修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物のことを指す。本明細書では、アミノ酸は、それらの一般的に知られる3文字記号によるか、またはIUPAC-IUB生化学命名法委員会により推奨される1文字記号で呼称する場合がある。同様にヌクレオチドも、広く認められている1文字の略号で呼称する場合がある。
【0107】
「アミノ酸置換」とは、所定のアミノ酸配列(出発ポリペプチドのアミノ酸配列)中の少なくとも1つの既存のアミノ酸残基を、第2の異なる「置換」アミノ酸残基で置換することを指す。「アミノ酸挿入」とは、所定のアミノ酸配列への少なくとも1つのさらなるアミノ酸の組み込みを指す。挿入は通常、1個または2個のアミノ酸残基の挿入からなるが、本発明では、より大きな「ペプチド挿入」、例えば 、約3~約5個、または最大で約10、15、または20個のアミノ酸残基の挿入を行うことができる。挿入される残基(複数可)は、上記に開示したように、天然に存在するものでも天然に存在しないものでもよい。「アミノ酸欠失」とは、所定のアミノ酸配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基の除去を指す。
【0108】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書ではアミノ酸残基のポリマーを呼称するうえで互換的に使用される。これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学模倣体であるようなアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0109】
「核酸」とは、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド及びそれらのポリマーを指す。特に限定されない限り、この用語には、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の形で代謝される天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸が含まれる。特に示されない限り、特定の核酸配列は、明示的に示される配列だけでなく、保存的に改変されたその変異体(例えば、縮重コドン置換物)及び相補的配列も暗黙裏に含む。詳細には、縮重コドン置換物は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基及び/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することによって得ることができる(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991;Ohtsuka et al.,.Biol.Chem.260:2605-2608(1985;及びRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。アルギニン及びロイシンでは、2番目の塩基の改変も保存的である場合がある。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、及び遺伝子によってコードされるmRNAと互換的に使用される。本明細書で使用されるポリヌクレオチドは、未修飾のRNAもしくはDNA、または修飾されたRNAもしくはDNAであってよい、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドで構成することができる。例えば、ポリヌクレオチドは、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、及び一本鎖及び二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖またはより一般的には二本鎖、または一本鎖及び二本鎖領域の混合物であってよいDNA及びRNAを含むハイブリッド分子で構成することができる。さらに、ポリヌクレオチドは、RNAまたはDNA、またはRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域で構成されてもよい。ポリヌクレオチドはまた、安定性または他の理由のために修飾された1つ以上の修飾塩基またはDNAもしくはRNA骨格を含み得る。「修飾」塩基としては、例えば、トリチル化塩基及びイノシンなどの非通常塩基が挙げられる。様々な修飾をDNA及びRNAに行うことができる。したがって、「ポリヌクレオチド」には、化学的、酵素的、または代謝的に修飾された形態が含まれる。
【0110】
本明細書で使用する場合、「PK」という用語は、「薬物動態」の頭字語であり、例えば、対象による吸収、分布、代謝、及び排出を含む化合物の特性を含む。本明細書で使用する場合、「延長PK基」とは、生物学的活性分子に融合されるかまたは一緒に投与される場合に生物学的活性分子の循環半減期を増加させるタンパク質、ペプチド、または部分を指す。延長PK基の例としては、PEG、ヒト血清アルブミン(HSA)結合剤(米国公開番号2005/0287153及び2007/0003549、PCT公開番号WO2009/083804及びWO2009/133208に開示されるもの、及び米国公開第2012/094909号に記載されるSABA分子)、ヒト血清アルブミン、FcまたはFcフラグメント及びそれらの変異体、ならびに糖類(例えば、シアル酸)が挙げられる。他の例示的な延長PK基が、本明細書に参照によりその全体を援用するKontermann et al.,Current Opinion in Biotechnology 2011;22:868-876に開示されている。
【0111】
特定の態様では、記載されるノッティン-Fcで、ポリペプチドリンカーなどの1つ以上の「リンカードメイン」を使用することができる。本明細書で使用する場合、「リンカー」または「リンカードメイン」という用語は、直鎖状配列中の2個以上のドメインを接続する配列を指す。本明細書で使用する場合、「ポリペプチドリンカー」という用語は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列中の2個以上のドメインを接続するペプチドまたはポリペプチド配列(例えば、合成ペプチドまたはポリペプチド配列)を指す。例えば、ポリペプチドリンカーを使用して、インテグリン結合ポリペプチドをFcドメインまたはHSAなどの他のPK延長体に接続することができる。いくつかの実施形態において、かかるポリペプチドリンカーは、ポリペプチド分子に柔軟性を与えることができる。例示的なリンカーとしては、これらに限定されるものではないが、4個のグリシンに1個のセリンが続く[Gly4Ser]及び4個のグリシンに3個のセリンが続く[Gly4Ser3]などのGly-Serリンカーが挙げられる。
【0112】
本明細書で使用する場合、「連結された」、「融合された」、または「融合体」という用語は互換的に使用される。これらの用語は、化学的結合または組換え手段を含む何らかの手段による、2個以上の要素または構成要素またはドメインの連結を指す。化学的結合の方法(例えば、ヘテロ二官能性架橋剤を使用する)は、当該技術分野では周知のものである。
【0113】
「インテグリン」という用語は、細胞接着にとって重要な膜貫通型ヘテロ二量体タンパク質を意味する。インテグリンはα及びβサブユニットを含む。これらのタンパク質は、細胞外マトリックス成分(例えば、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニンなど)に結合し、シグナル伝達カスケードを誘導することによって応答する。インテグリンは、Arg-Gly-Asp(RGD)モチーフを認識することによって細胞外マトリックス成分に結合する。特定のインテグリンは腫瘍細胞の表面にみられるため、有望な治療標的となる。特定の実施形態において、標的となるインテグリンは、個別にまたは組み合わせて、ανβ3、ανβ5、及びα5β1である。
【0114】
「インテグリン結合ポリペプチド」という用語は、ノッティンポリペプチド足場内にインテグリン結合ドメインまたはループを含むポリペプチドを指す。インテグリン結合ドメインまたはループには、少なくとも1つのRGDペプチドが含まれる。特定の実施形態において、RGDペプチドは、ανβ1、ανβ3、ανβ5、ανβ6、及びα5β1インテグリンにより認識される。特定の実施形態において、RGDペプチドは、ανβ1、ανβ3、ανβ5、ανβ6、及びα5β1インテグリンの組み合わせに結合する。これらの特定のインテグリンは腫瘍細胞及びその血管系にみられるため、対象となる標的である。
【0115】
インテグリンは、異なる細胞特異性及び接着特異性を有するα及びβヘテロダイマーに非共有結合する細胞外マトリックス接着タンパク質のファミリーである(Hynes,1992;Luscinskas and Lawler,1994)。インテグリン-タンパク質相互作用を介して媒介される細胞接着は、細胞の運動性、生存、及び分化に関与している。インテグリン受容体の各α及びβサブユニットは、リガンド結合及び特異性に寄与する。
【0116】
多くの異なる細胞表面インテグリンへのタンパク質結合は、短いペプチドモチーフArg-Gly-Asp(RGD)を介して媒介され得る(Pierschbacher and Ruoslahti,1984)。これらのペプチドには2つの機能がある。すなわち、表面に固定化される場合に細胞接着を促進することと、溶液中の細胞に提示される場合には細胞接着を阻害することである。RGD配列を含む接着タンパク質としては、フィブロネクチン、ビトロネクチン、オステオポンチン、フィブリノーゲン、フォン・ヴィレブランド因子、トロンボスポンジン、ラミニン、エンタクチン、テネイシン、及び骨シアロタンパク質が挙げられる(Ruoslahti,1996)。RGD配列は、α5β1、α8β1、ανβ1、ανβ3、ανβ5、ανβ6、ανβ8、及びαvβ3インテグリンを含む20種類の既知のインテグリンの約半分に対して特異性を示し、より低い程度でα2β1、α3β1、α4β1、及びα7β1 インテグリンに対して特異性を示す(Ruoslahti,1996)。詳細には、ανβ3 インテグリン が、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、オステオポンチン、フォン・ヴィレブランド因子、及びトロンボスポンジンなどの様々なRGD含有タンパク質に結合することができる(Ruoslahti,1996;Haubner et al.,1997)のに対して、α5β1インテグリンはより特異的であり、フィブロネクチンに結合することが示されているだけである(D’Souza et al.,1991)。
【0117】
直鎖状のペプチド配列RGDは、それが由来するタンパク質よりもインテグリンに対する親和性がはるかに低い(Hautanen et al.,1989)。これは、直鎖状ペプチドには存在しない折り畳まれたタンパク質ドメインによってもたらされるコンフォメーション特異性によるものである。機能的インテグリン活性の増大が、環状RGDモチーフの調製、RGD配列に隣接する残基の変更、及び小分子模倣物の合成によってもたらされている((Ruoslahti,1996;Haubner et al.,1997)に概説されている)。
【0118】
「ループドメイン」という用語は、秩序だった二次構造を持たない、ペプチドの表面に一般低に存在するペプチド鎖内のアミノ酸部分配列を指す。「ループ」という用語は、当該技術分野では、αヘリックス、βシートなどの形態におけるように秩序だっていない二次構造を指すものとして理解されている。
【0119】
「インテグリン結合ループ」という用語は、通常、インテグリンに結合するような定向分子進化などの実験方法によって最初から作製される、約9~13個のアミノ酸からなる一次配列を指す。特定の実施形態において、インテグリン結合ループは、足場及び所望の結合特異性に特異的なアミノ酸間に配置されたRGDペプチド配列またはこれに類する配列を含む。RGD含有ペプチドまたは類似のペプチド(RYDなど)は、一般に、既知のタンパク質の天然の結合配列から単純には得られない。インテグリン結合ループは、好ましくはノッティンポリペプチド足場内のシステイン残基間に挿入され、ループの長さはシステイン残基間の三次元間隔に応じて最適なインテグリン結合を与えるように調整される。例えば、ノッティン足場内の隣接するシステイン残基が互いに連結されている場合、最適なループは、隣接するシステイン残基が一次配列中で分離されたシステイン残基に連結されている場合よりも短くなる可能性がある。そうでなければ、特定のアミノ酸置換を導入することでより長いRGD含有ループを、高い親和性でインテグリンを結合する最適なコンフォメーションに拘束することができる。本明細書で使用されるノッティンポリペプチド足場は、天然のノッティンを切り詰めるために、またはループまたは不要なシステイン残基またはジスルフィド結合を除去するために行われた特定の修飾を含むことができる。
【0120】
インテグリン結合配列を分子(例えば、ノッティンポリペプチド)足場に組み込むことにより、直鎖状または環状ペプチドループよりも固く、安定したリガンド提示のフレームワークが与えられる。さらに、溶液中の小ペプチドのコンフォメーションの柔軟性は高く、結合時に大きなエントロピーペナルティをもたらす。かかるコンストラクトについては、本明細書に参照によりその全体を援用する国際特許公開WO2016/025642にも詳細に記載されている。
【0121】
インテグリン結合配列をノッティンポリペプチド足場に組み込むことで、高親和性インテグリン結合に必要なコンフォメーションの拘束が与えられる。さらに、こうした足場は、親和性や安定性の成熟などのタンパク質工学の実験を行うためのプラットフォームを提供する。
【0122】
本明細書で使用する場合、「ノッティンタンパク質」という用語は、タンパク質、糖、脂質などの広範囲の分子標的に結合する、通常25~40個のアミノ酸からなる小タンパク質の構造的ファミリーを指す。その三次元構造は、3~5個のジスルフィド結合の特異な配置によって基本的に定義される。同じシスチンネットワークを有するいくつかの異なる微小タンパク質で見つかった、1個のジスルフィド架橋が2個の他の鎖内ジスルフィド結合によって限定された大環状骨格を横切る特徴的な結び目トポロジーに因んで、このクラスの生体分子にその名前が与えられた。それらの二次構造含有量は一般に低いものの、ノッティンは、ジスルフィド結合フレームワークによって安定化された小さな三本鎖逆平行βシートを共有している。シスチンノットタンパク質とも称される、生化学的に明確に定義されたノットファミリーのメンバーには、Ecballium elaterium種子からのトリプシン阻害剤EETI-II、捕食性イモガイConus geographusの毒液からのニューロンN型Ca2+チャネルブロッカーであるココノトキシン、アグーチ関連タンパク質(AgRP,Millhauser et al.,“Loops and Links: Structural Insights into the Remarkable Function of the Agouti-Related Protein,”Ann.N.Y.Acad.ScL,Jun.1,2003;994(1):27-35を参照)、ωアガトキシンファミリーなどが含まれる。適当なアガトキシン配列[配列番号41]が、本出願と共通の発明者を有する米国特許第8,536,301号に記載されている。本明細書に開示される方法における使用に適した他のアガトキシン配列としては、これらに限定されるものではないが、ω-アガトキシン-Aa4b(GenBankアクセッション番号P37045)及びω-アガトキシン-Aa3b(GenBankアクセッション番号P81744)が挙げられる。本明細書に開示される方法における使用に適した他のノッティン配列としては、ノッティン[Bemisia tabaci](GenBankアクセッション番号FJ601218.1)、ω-リコトキシン(Genbankアクセッション番号P85079)、μ-O-コノトキシンMrVIA=電圧ゲートナトリウムチャネルブロッカー(Genbankアクセッション番号AAB34917)及びナンバンカラスウリ(Momordica cochinchinensis)トリプシン阻害剤I(MCoTI-I)またはII(MCoTI-II)(それぞれUniprotアクセッション番号P82408及びP82409)が挙げられる。
【0123】
ノッティンタンパク質は、特徴的なジスルフィド結合構造を有している。この構造は、Gelly et al.,“The KNOTTIN website and database:a new information system dedicated to the knottin scaffold,”Nucleic Acids Research,2004,Vol.32,Database issue D156-D159にも示されている。三本鎖βシートは多くのノッティンに存在している。システイン残基間の間隔は、インテグリン結合ループの分子トポロジー及びコンフォメーションと同様に重要である。
【0124】
「分子足場」という用語は、本明細書に記載のRGDペプチド配列などのインテグリン結合ループが組み込まれた、予め定義された三次元構造を有するポリマーを意味する。「分子足場」という用語は、本明細書においても意図されている、当該技術分野で認識された(他の文脈での)意味を有する。例えば、Skerraによるレビュー、“Engineered protein scaffolds for molecular recognition,” J.Mol.Recognit.2000;13:167-187は、次の足場、すなわち免疫グロブリンスーパーファミリーの抗体のシングルドメイン、プロテアーゼ阻害剤、ヘリックスバンドルタンパク質、ジスルフィドノットペプチド、及びリポカリンについて述べている。適切な分子骨格を選択するためのガイダンスが示されている。
【0125】
「ノッティンポリペプチド足場」という用語は、本明細書に記載されるように、分子足場としての使用に適したノッティンタンパク質を指す。操作するうえで望ましいノッティンポリペプチド足場の特性としては、1)インビトロ及びインビトロでの高い安定性、2)全体の折り畳みを壊すことなく足場のアミノ酸領域を他の配列で置き換えることが可能であること、3)分子の別々の領域を操作することにより多官能性または二重特異性標的化を与えることが可能であること、及び4)必要に応じて、化学合成及び非天然アミノ酸の組み込みが可能である小さなサイズが挙げられる。ヒトタンパク質に由来する足場が、毒性または免疫原性の問題を軽減するために治療用途で好ましいが、これは必ずしも厳密な要件ではない。タンパク質設計に使用されている他の足場としては、フィブロネクチン(Koide et al.,1998)、リポカリン(Beste et al.,1999)、細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)(Hufton et al,2000)、及びテンダミスタット(McConnell and Hoess,1995;Li et al,2003)が挙げられる。これらの足場はタンパク質工学に有用なフレームワークであることが証明されているが、ノッティンなどの分子足場には、サイズが小さく安定性が高いという違った利点がある。
【0126】
本明細書で使用する場合、「NOD201」という用語は、以下の配列:GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCG PNGFCG(配列番号130、2.5Fペプチド)を含み、及び2.5FペプチドとFcドメインとの間にリンカーを有さないインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を指す。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来し、マウスまたはヒト由来であってよい。
【0127】
本明細書で使用する場合、「NOD201modK」という用語は、以下の配列:GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG(配列番号131、2.5FmodKペプチド)を含み、2.5FmodKペプチドとFcドメインとの間にリンカーを有さないインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を指す。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来し、マウスまたはヒト由来であってよい。
【0128】
本明細書で使用する場合、「NOD203」という用語は、以下の配列:GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132、2.5Fペプチド)を含み、2.5FペプチドとFcドメインとの間にGly4Serリンカーを有するインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を指す。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来し、マウスまたはヒト由来であってよい。
【0129】
本明細書で使用する場合、「NOD203modK」という用語は、以下の配列:GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133、2.5FmodKペプチド)を含み、2.5FmodKペプチドとFcドメインとの間にGly4Serリンカーを有するインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を指す。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来し、マウスまたはヒト由来であってよい。
【0130】
本明細書で使用する場合、「NOD204」という用語は、以下の配列:GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134、2.5Fペプチド)を含み、2.5FペプチドとFcドメインとの間にGly4Ser3リンカーを有するインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を指す。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来し、マウスまたはヒト由来であってよい。
【0131】
本明細書で使用する場合、「NOD204modK」という用語は、以下の配列:CPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135、2.5FmodKペプチド)を含み、2.5FmodKペプチドとFcドメインとの間にGly4Ser3リンカーを有するインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を指す。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来し、マウスまたはヒト由来であってよい。
【0132】
本明細書で使用する場合、「AgRP」という用語は、PDBエントリ1HYKを意味する。KnottinデータベースにおけるそのエントリはSwissProtAGRP_HUMANであり、アミノ酸129個の完全長配列をみつけることができる。このエントリは、アミノ酸87で始まる配列を含んでいる。さらなるGがこのコンストラクトに追加されている。このエントリは、Jackson,et al.2002 Biochemistry,41,7565、及び参照によりその全体を援用する国際特許公開WO2016/025642に記載されているCI05A変異も含まれており、ループ4の太字及び下線で示された部分が本明細書に記載されるRGDシーケンスに置き換えられている。ループ1及び3は括弧で挟んで示されている。
【0133】
本明細書で使用する場合、「インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体」は、「ノッティン-Fc」と互換的に使用され、ノッティンポリペプチド足場内にインテグリン結合アミノ酸配列を含み、Fcドメインに機能的に連結されたインテグリン結合ポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、インテグリン結合ポリペプチドのN末端に融合されている。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、インテグリン結合ポリペプチドのC末端に融合されている。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、リンカーを介してインテグリン結合ポリペプチドに機能的に連結されている。
【0134】
本明細書で使用する場合、「Fc領域」という用語は、その2本の重鎖のそれぞれのFcドメイン(またはFc部分)によって形成される天然免疫グロブリンの部分を指す。本明細書で使用する場合、「Fcドメイン」という用語は、FcドメインがFvドメインを含まない単一の免疫グロブリン(Ig)重鎖の部分を指す。そのため、Fcドメインは「Ig」または「IgG」と呼ばれることもある。特定の実施形態において、Fcドメインは、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域で始まり、抗体のC末端で終わる。したがって、完全なFcドメインは、少なくともヒンジドメイン、CH
2ドメイン、及びCH
3ドメインを含む。特定の実施形態において、Fcドメインは、ヒンジ(例えば、上部、中間、及び/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH
2ドメイン、CH
3ドメイン、CH
4ドメイン、またはそれらの変異体、部分、もしくはフラグメントのうちの少なくとも1つを含む。他の実施形態において、Fcドメインは、完全なFcドメイン(すなわち、ヒンジドメイン、CH
2ドメイン、及びCH
3ドメイン)を含む。一実施形態において、Fcドメインは、CH
3 ドメイン(またはその部分)に融合されたヒンジドメイン(またはその部分)を含む。一実施形態において、Fcドメインは、CH
3 ドメイン(またはその部分)に融合されたCH
2ドメイン(またはその部分)を含む。別の実施形態において、Fcドメインは、CH
3ドメインまたはその部分からなる。別の実施形態において、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその部分)とCH
3ドメイン(またはその部分)とからなる。一実施形態において、Fcドメインは、CH
2ドメイン(またはその部分)とCH
3ドメインとからなる。別の実施形態において、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその部分)とCH
2ドメイン(またはその部分)とからなる。一実施形態において、Fcドメインは、CH
2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH
2ドメインの全体または一部)を欠いている。本明細書におけるFcドメインは、一般に、免疫グロブリン重鎖のFcドメインの全体または一部を含むポリペプチドを指す。Fcドメインには、CH
1、ヒンジ、CH
2、及び/またはCH
3ドメイン全体を含むポリペプチド、ならびに、例えば、ヒンジ、CH
2、及びCH
3ドメインのみを含むそのようなペプチドのフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。Fcドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体を含むがこれらに限定されない、任意の種及び/または任意のサブタイプの免疫グロブリンに由来するものとすることができる。ヒトIgG1定常領域はUniprotP01857及び
図1にみられる。上部ヒンジ領域が欠失したヒトIgG1のFcドメインは、国際特許公開番号WO 2016/025642の表2、配列番号3にみられる。Fcドメインには、天然のFc及びFc変異体分子が含まれる。Fc変異体及び天然Fc’と同様、Fcドメインという用語には、完全抗体から消化されたかまたは他の手段によって生成されたかにかかわらず、単量体または多量体(例えば、二量体)形態の分子が含まれる。Fcドメインへのアミノ酸残基番号の割り当ては、Kabatの定義に従う(例えば、Sequences of Proteins of Immunological Interest(Table of Contents,Introduction and Constant Region Sequences sections),5
th edition,Bethesda,MD:NIH vol.1:647-723(1991);Kabat et al.,“Introduction” Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept of Health and Human Services,NIH,5
th edition,Bethesda,MD vol.1 :xiii-xcvi(1991);Chothia & Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);Chothia et al,Nature 342:878-883(1989)を参照)。本明細書に記載のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体に関して、本明細書に記載のまたは既知の任意のIgGからの任意のFcドメインを、マウス、ヒト、及びヒンジ欠失(EPKSC欠失;国際特許公開番号WO2016/025642の配列番号3を参照)などのその変異体を含むFc融合体の一部として用いることができる。
【0135】
本明細書に記載されるように、いずれのFcドメインも、天然に存在する免疫グロブリン分子の天然のFcドメインとアミノ酸配列が異なるように改変できる点は当業者により理解されよう。特定の例示的な実施形態において、Fcドメインは、高いエフェクター機能(例えば、FcγR結合性)を有している。
【0136】
本発明のポリペプチドのFcドメインは、異なる免疫グロブリン分子に由来するものとすることができる。例えば、ポリペプチドのFcドメインは、IgG1分子に由来するCH2及び/またはCH3ドメインと、IgG3分子に由来するヒンジ領域とを含むことができる。別の例において、Fcドメインは、IgG1分子に一部由来し、IgG3分子に一部由来するキメラヒンジドメインを含むことができる。別の例において、Fcドメインは、IgG1分子に一部由来し、IgG4分子に一部由来するキメラヒンジを含むことができる。
【0137】
指定されたポリペプチドまたはタンパク質に「由来する」ポリペプチドまたはアミノ酸配列とは、ポリペプチドの起源を指す。好ましくは、特定の配列に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、その配列、または少なくともアミノ酸10~20個、好ましくは少なくともアミノ酸20~30個、より好ましくは少なくともアミノ酸30~50個からなるその部分と本質的に同一であるか、またはそうでなければ、その配列にその起源があるものとして当業者によって特定可能であるようなアミノ酸配列を有する。別のペプチドに由来するポリペプチドは、出発ポリペプチドに対して1つ以上の変異、例えば、別のアミノ酸残基で置換されているか、または1つ以上のアミノ酸残基の挿入もしくは欠失を有する1つ以上のアミノ酸残基を有することができる。
【0138】
ポリペプチドは、天然に存在しないアミノ酸配列を含むことができる。ノッティンタンパク質との関連で、そのような変異体は、必然的に、出発ノッティンタンパク質との配列同一性または類似性は100%未満である。いくつかの実施形態において、変異体は、出発ポリペプチドのアミノ酸配列と約75%~100%未満、より好ましくは約80%~100%未満、より好ましくは約85%~100%未満、より好ましくは約90%~100%未満(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)及び実施形態によっては、例えば変異体分子の長さにわたって、約95%~100%未満のアミノ酸配列同一性または類似性を有する。
【0139】
一実施形態では、出発ポリペプチド配列とそれに由来する配列との間にはアミノ酸1個の違いがある。この配列に関する同一性または類似性は、本明細書においては、配列同士を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、最大配列同一率とを得た後の出発アミノ酸残基と同一(すなわち、同じ残基)である候補配列中のアミノ酸残基の割合(%)として定義される。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
一実施形態では、インテグリン結合ポリペプチドまたはその変異体は、配列番号59~135から選択されるアミノ酸配列からなるか、本質的になるか、またはそれを含む。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号59~135から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号59~135から選択される連続したアミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の連続したアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号59~135から選択されるアミノ酸配列の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、または500個(またはこれらの数内の任意の整数)の連続したアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む。
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
本明細書で使用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、それらが由来する天然に存在する、または天然の配列の望ましい活性を維持しつつ、天然配列と配列が異なるように変更することができる点も当業者によって理解されよう。例えば、「非必須」アミノ酸残基の保存的置換または変更をもたらすヌクレオチドまたはアミノ酸の置換を行うことができる。突然変異は、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発などの標準的な技術によって導入することができる。
【0158】
本明細書に記載されるポリペプチド(例えば、ノッティン、Fc、ノッティン-Fc、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体など)は、1つ以上のアミノ酸残基、例えば必須または非必須アミノ酸に保存的アミノ酸置換を有することができる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、結合ポリペプチド内の非不可欠アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基で好ましく置換される。別の実施形態において、一連のアミノ酸残基を、側鎖ファミリーのメンバーの順序及び/または組成が異なる構造的に似た一連のアミノ酸残基で置換することもできる。あるいは、別の実施形態では、突然変異を飽和突然変異誘発などによって、コード配列の全体または一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた変異体を本発明の結合ポリペプチドに組み込み、所望の標的に結合するそれらの能力についてスクリーニングすることもできる。
【0159】
「改善する」という用語は、予防、重症度または進行の軽減、寛解、またはその治癒を含む、病状(例えばがん)の治療におけるあらゆる治療上有益な結果を指す。
【0160】
「インビボ」という用語は、生体内で生じるプロセスを指す。
【0161】
本明細書で使用される「哺乳動物」または「対象」または「患者」という用語は、ヒト及び非ヒトの両方を含み、これらに限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマ、及びブタを含む。
【0162】
2つ以上の核酸またはポリペプチドの配列との関連での同一率」(%)という用語は、下記の配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTN、または当業者が利用可能な他のアルゴリズム)のうちの1つを用いて、または目視検査により測定される、最大の一致について比較し、整列させた場合に、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の特定の比率(%)が同じである2つ以上の配列または部分配列のことを指す。用途に応じて、同一率」(%)は、比較される配列の領域にわたって、例えば、機能ドメインにわたって存在するか、あるいは、比較される2つの配列の完全長にわたって存在することができる。
【0163】
配列比較では、一般的に、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合には部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一率(%)を算出する。
【0164】
比較を行うための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性の探索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ処理による実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FAST、及びTFASTA)によって、または目視検査によって実施することができる(一般的には、下記のAusubel et al.を参照)。
【0165】
配列同一率(%)及び配列類似率(%)を決定するのに適したアルゴリズムの1つの例として、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されるBLASTアルゴリズムがある。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationウェブサイトを通じて公に入手可能である。
【0166】
本明細書で使用する場合、「gly-serポリペプチドリンカー」という用語は、グリシン及びセリン残基からなるペプチドを指す。例示的なgly-serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列Ser(Gly4Ser)nを含む。一実施形態において、n=1である。一実施形態において、n=2である。別の実施形態において、n=3、すなわち、Ser(Gly4Ser)3である。別の実施形態において、n=4、すなわち、Ser(Gly4Ser)4である。別の実施形態において、n=5である。さらに別の実施形態において、n=6である。別の実施形態において、n=7である。さらに別の実施形態において、n=8である。別の実施形態において、n=9である。さらに別の実施形態において、n=10である。別の例示的なgly-serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列(Gly4Ser)nを含む。一実施形態において、n=1である。一実施形態において、n=2である。好ましい実施形態において、n=3である。別の実施形態において、n=4である。別の実施形態において、n=5である。さらに別の実施形態において、n=6である。別の例示的なgly-serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列(Gly3Ser)nを含む。一実施形態において、n=1である。一実施形態において、n=2である。好ましい実施形態において、n=3である。別の実施形態において、n=4である。別の実施形態において、n=5である。さらに別の実施形態において、n=6である。
【0167】
本明細書で使用する場合、「半減期」とは、例えば、自然のメカニズムによる分解及び/またはクリアランスまたは隔離のために、インビボでポリペプチドの血清または血漿濃度が50%減少するのにかかる時間を指す。本明細書で使用されるポリペプチドはインビボで安定化され、その半減期は、例えば、HSA、MSAまたはFcとの融合、PEG化により、または分解及び/またはクリアランスまたは隔離に抵抗する血清アルブミン分子(例えば、ヒト血清アルブミン)との結合によって増大する。半減期は、薬物動態分析など、それ自体が公知である任意の方法で決定することができる。適当な技術は当業者には明らかであり、例えば、適当な用量の本発明のアミノ酸配列または化合物を対象に適当に投与する工程と、前記対象から定期的に血液試料または他の試料を採取する工程と、前記血液試料中の本発明のアミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度を決定する工程と、そのようにして得られたデータ(のプロット)から、本発明のアミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度が、投与時の初期レベルと比較して50%減少するまでの時間を計算する工程と、を一般的に含むことができる。さらなる詳細は、例えば、Kenneth,A.et al.,Chemical Stability of Pharmaceuticals:A Handbook for Pharmacists and in Peters et al.,Pharmacokinetic Analysis:A Practical Approach(1996)などの標準ハンドブックに記載されている。Gibaldi,M.et al.,Pharmacokinetics,2nd Rev.Edition,Marcel Dekker(1982)も参照される。
【0168】
本明細書で使用する場合、「小分子」は、約500ダルトン未満の分子量を有する分子である。
【0169】
本明細書で使用する場合、「治療用タンパク質」とは、薬剤として対象に投与することができる任意のポリペプチド、タンパク質、タンパク質変異体、融合タンパク質及び/またはそれらのフラグメントを指す。例示的な治療用タンパク質は、インターロイキン、例えば、IL-7である。
【0170】
本明細書で使用する場合、2つ以上の個々の成分によって生じる効果に関する「相乗」または「相乗効果」とは、これらの成分が併用される場合に生じる全体の効果が、単独で作用する各成分の個々の効果の合計よりも大きい現象のことを指す。
【0171】
「充分な量」または「~のに充分な量」という用語は、所望の効果を生じるのに充分な量、例えば、腫瘍のサイズを縮小するのに充分な量を意味する。
【0172】
「治療有効量」という用語は、疾患の症状を改善するのに有効な量である。予防措置は治療とみなすことができるため、治療有効量とは「予防有効量」でもあり得る。
【0173】
本明細書で使用する場合、「併用療法」とは、各薬剤または療法の組み合わせ及び同時投与の有益な効果をほぼ同時に与えるようなレジメンでの連続的な形での各薬剤または療法の投与を含む。併用療法はまた、個々の要素を異なる時間及び/または異なる経路によって投与することができるが、個々の要素が組み合わせとして作用して、各薬剤の同時作用もしくは薬物動態及び薬力学効果、または併用療法の腫瘍治療アプローチによって有益な効果を与えるような組み合わせも含む。
【0174】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、当業者によって理解され、それが用いられる文脈に応じてある程度異なる。その用語が使用される文脈を考慮しても当業者に明確でない用語が使用されている場合、「約」とは、特定の値のプラスマイナス10%以内を意味するものとする。
【0175】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈によってそうでない旨が明示されない限り、複数の指示物を含む点に留意されなければならない。
【0176】
本明細書に記載される様々な態様を以下のサブセクションにおいてさらに詳細に説明する。
2.インテグリン及びノッティンポリペプチド及びFc融合体
インテグリンは、固形腫瘍の開始、進行、及び転移にとって重要な多種多様な細胞機能を調節する細胞外マトリックス接着受容体のファミリーである。腫瘍の進行におけるインテグリンの重要性により、インテグリンはがん治療における魅力的な標的となっており、様々な種類のがんの治療を可能としている。がん性細胞に存在するインテグリンとしては、ανβ1、ανβ3、ανβ5、ανβ6、及びα5β1が挙げられる。
【0177】
ノッティンタンパク質は、熱及びタンパク質分解に対する安定性が高く、突然変異誘発に耐性を有する小型でコンパクトなペプチドであり、そのため、優れた分子足場となる。これらのペプチドには、「結び目(ノット)」コアを形成する少なくとも3つのジスルフィド結合が含まれている。ノッティンタンパク質はまた、表面に露出したいくつかのループを含んでおり、これらのループが標的に結合できるようになっている。これらのループは、特定の標的に高い親和性で結合するように操作できるため、治療に役立つツールとなる。
【0178】
本発明では、治療効果を与えるFcドナーと融合された、インテグリンに結合することができるRGD配列を有するように操作されたノッティンポリペプチド足場(「ノッティン-Fc」とも呼ばれる)を使用するが、本明細書ではこれをインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体と呼ぶ。上記で述べたように、Fcフラグメントは、半減期を延長するためにタンパク質及び/または治療薬に付加されている。本明細書で使用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合との関連で、Fcのエフェクター機能は、様々ながんの治療に寄与する。いくつかの実施形態において、この効果は、抗CD47抗体とともに(または組み合わせて)使用される場合に、さらなる用途が見出され、及び/または増強され得る。いくつかの実施形態において、3個のインテグリンに同時に結合するインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体(ノッティン-Fcとも呼ばれる)、例えば、NOD201(配列番号139)、NOD203(配列番号142)、及びNOD204(配列番号143)からなる群から選択されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体が使用される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、NOD201(配列番号139)である。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、NOD203(配列番号142)である。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、NOD204(配列番号143)である。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、Fcドメインと機能的に連結された、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG(2.5F,配列番号130)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG(2.5FmodK,配列番号131)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、またはGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)を含む。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、Fcドメインと機能的に連結された、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG(2.5F,配列番号130)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG(2.5FmodK,配列番号131)GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、またはGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)を含み、前記Fcドメインは、マウス及びヒトを含むIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4由来のものである。例示的なIgG配列は当該技術分野では周知のものであり、上記の
図1及び表1にみることができる。
【0179】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、ανβ1、ανβ3、ανβ5、ανβ6、及びα5β1から選択される1つ以上のインテグリンに高い親和性で結合する。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、ανβ1、ανβ3、ανβ5、ανβ6、及びα5β1から選択される2個のインテグリンに高い親和性で結合する。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、ανβ1、ανβ3、ανβ5、ανβ6、及びα5β1から選択される3個のインテグリンに高い親和性で結合する。いくつかの実施形態において、結合親和性は、約100nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約20nM未満、約10nM未満であり、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、または約1nM未満である。いくつかの実施形態において、結合親和性は5nM未満である。いくつかの実施形態において、結合親和性は約4nM未満である。いくつかの実施形態において、結合親和性は約3nM未満である。いくつかの実施形態において、結合親和性は約2nM未満である。いくつかの実施形態において、結合親和性は約1nM未満である。いくつかの実施形態において、結合親和性は約1.6nMである。いくつかの実施形態において、結合親和性は約1.5nMである。いくつかの実施形態において、結合親和性は約1nMである。いくつかの実施形態において、結合親和性は約0.7nMである。
【0180】
いくつかの実施形態において、NOD201は、血清及び熱チャレンジに対して極めて安定である。いくつかの実施形態において、この安定性は、ジスルフィド結合したペプチドではなく、Fcドメインによって与えられる。いくつかの実施形態において、40℃での長時間のインキュベーションまたは5回の凍結融解サイクルの後にもNOD201の凝集または分解は起こらない。
【0181】
NOD201ペプチド(Antitope)のインシリコ免疫原性分析が行われており、配列にiTope(商標)及びTCED(商標)分析を行って、ヒトMHCクラスIIと結合し、及び/または既知のT細胞エピトープと相同性を共有することが予測されるペプチドが特定されている。この分析では、TCED(商標)において既知のT細胞エピトープとの一致は確認されなかった。いくつかの実施形態において、NOD201は、非生殖細胞系列の異所性のMHCクラスII結合ペプチドを含まない。したがって、いくつかの実施形態において、NOD201免疫原性のリスクは低い。いくつかの実施形態において、NOD201の免疫原性は低い。
3.FCドメイン
Fcドメインは、抗原に結合する可変領域を含まない。本明細書に記載されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体に有用なFcドメインは、多くの異なるソースから得ることができる。特定の実施形態において、Fcドメインは、ヒト免疫グロブリン由来のものである。特定の実施形態において、Fcドメインは、ヒトIgG1の定常領域由来のものである(
図1;配列番号126)。ヒトIgG1の例示的なFcドメインが、配列番号126に示されている(
図1)。特定の実施形態において、ヒトIgG1のFcドメインは、上部ヒンジ領域を有さない(
図1及び表1)。しかしながら、Fcドメインは、例えば、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む、別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来するものであってもよい点は理解される。さらに、Fcドメインまたはその一部は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来するものとすることができる。Fcドメインは、マウスまたはヒトのものとすることができる。
【0182】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、変異体Fcドメインを含む。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、変異体IgG1 Fcドメインを含む。いくつかの実施形態において、変異Fcドメインは、ヒンジ、CH2、及び/またはCH3ドメインに1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態において、変異体Fcドメインは、D265A変異を含む。
【0183】
いくつかの実施形態において、本発明のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、完全なFc領域の1つ以上の定常領域ドメインを欠いている(すなわち、それらが部分的または完全に欠失している)。特定の実施形態において、本発明のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、CH2ドメインの全体を欠く。いくつかの実施形態において、本発明のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、IgG1ヒト定常領域ドメイン(例えば、WO02/060955A2及びWO02/096948A2を参照)をコードするベクター(例えば、IDEC Pharmaceuticals、San Diegoより入手されるもの)に由来するCH2ドメイン欠失Fc領域を含む。
【0184】
いくつかの実施形態において、例示的なベクターは、CH2ドメインを欠失させ、ドメイン欠失IgG1定常領域を発現する合成ベクターを与えるように操作される。これらの例示的なコンストラクトは、好ましくは、結合CH3ドメインをそれぞれのFcドメインのヒンジ領域に直接融合させるように操作される点に留意されたい。
4.ノッティンポリペプチド足場を操作する方法
ノッティンポリペプチド足場は、インテグリン結合配列を好ましくはループの形で挿入して特定のインテグリン結合性を付与するために用いられる。インテグリン結合性は、RGDペプチドのようなインテグリン結合ペプチド配列を挿入することによってノッティンポリペプチド足場に組み込まれることが好ましい。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ペプチド配列の挿入は、天然のノッティンタンパク質の一部の置換をもたらす。例えば、一実施形態において、RGDペプチド配列は、天然の溶媒曝露ループの全体または一部を、1つ以上のインテグリンに結合するように選択されたRGD含有ペプチド配列(例えば、アミノ酸5~12個の配列)に置き換えることによってループに挿入される。溶媒曝露ループ(すなわち、表面上にある)は、一般に、天然のノッティンタンパク質配列内のジスルフィド結合されたシステイン残基によって固定されている。インテグリン結合置換アミノ酸配列は、ループ部分のコドンをランダム化し、操作されたペプチドを発現させ、所定のリガンドへの結合性が最も高い変異体を選択することによって得ることができる。この選択ステップは、前のステップから最も結合性の高い結合タンパク質を選択し、そのループを再ランダム化することにより、数回にわたり繰り返すことができる。
【0185】
インテグリン結合ポリペプチドは、多くの方法で改変することができる。例えば、ポリペプチドは、内部でさらに架橋してもよく、または互いに架橋してもよく、またはRGDループを他の架橋された分子足場にグラフトしてもよい。タンパク質またはペプチドバイオコンジュゲートを調製するための多くの市販の架橋試薬がある。これらの架橋剤の多くは、タンパク質側鎖内の遊離アミンまたはスルフヒドリル基を介した生体分子の二量体ホモ結合またはヘテロ結合を可能にする。より最近では、炭水化物基を介したヒドラジド部分との結合が関与する他の架橋方法が開発されている。これらの試薬は、バイオコンジュゲートの調製における化学実験の経験がほとんどまたはまったくない研究者に、便利で簡易な架橋手法を与えるものであった。
【0186】
EETI-IIノッティンタンパク質(本明細書に参照によりその内容を援用する米国特許第8,536,301号の配列番号39)は、ジスルフィド結び目を有するトポロジーを含み、突然変異誘発に適した複数の溶媒曝露ループを有している。いくつかの実施形態では、分子足場としてEETI-IIを用いる。
【0187】
分子足場として使用できるノッティンタンパク質の別の例として、AgRPまたはアガトキシンがある。AgRP(米国特許第8,536,301号の配列番号40)及びアガトキシン(米国特許第8,536,301号の配列番号41)のアミノ酸配列は異なるが、これらの構造は同じものである。例示的なAgRPノッティンは米国特許第8,536,301号の表1にみられる。
【0188】
上記で参照したCochranらに付与されたUS2009/0257952に記載されているように、さらなるAgRP操作ノッティンを作製することができる(その内容を参照により本明細書に援用する)。AgRPノッティン融合体は、AgRPループ1、2、及び3、ならびにループ4を用いて調製することができる。
【0189】
本発明のポリペプチドは、組換えDNAによって生成することができ、またはペプチドシンセサイザーを使用して固相で合成することができ、これは、本明細書に記載される3つの足場すべてのペプチドに対して行われている。本発明のポリペプチドは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)または他の標識との反応によってそれらのN末端においてさらにキャップすることができ、さらにまた、さらなる架橋反応を生じるように選択されたアミノ酸残基を含むように合成することができる。TentaGel S RAM Fmocレジン(Advanced ChemTech)を使用して、切断に際してC末端アミドを与えることができる。B-アラニンは、ペプチドが脱保護された際のチアゾリドンの生成及びフルオレセインの放出を防ぐためのN末端アミノ酸として用いられる(Hermanson,1996)。ペプチドは、8%トリフルオロ酢酸、2%トリイソプロピルシラン、5%ジチオトレイトールでレジンから切断され、側鎖が脱保護され、最終生成物はエーテル沈殿によって回収される。ペプチドは、0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル勾配とC4またはC18カラム(Vydac)を用いた逆相HPLCによって精製され、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF)またはエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)で検証される。
【0190】
本ペプチドが組換えDNAによって生成される場合、選択されたペプチドをコードする発現ベクターが適切な宿主に形質導入される。宿主は、上記に述べたような適切なペプチドフォールディング及びジスルフィド結合の形成が行われるように選択する必要がある。EETI-IIなどの特定のペプチドは、細菌などの原核生物宿主で発現される場合に適切に折り畳ませることができる。
【0191】
本ペプチドの二量体、三量体、及び四量体の複合体は、上記の配列の遺伝子工学によって、または例えばペプチドのC末端に導入されたシステイン残基を有する操作されたペプチドと合成架橋剤との反応によって形成することができる。これらのオリゴマーペプチド複合体は、ゲル濾過によって精製することができる。本発明のペプチドのオリゴマーは、複数のペプチド配列を端から端までコードするベクターを調製することによって調製することができる。また、マルチマーは、例えば、米国特許第6,265,539号に記載されるような各ペプチドを複合体化することによって調製することができる。その場合、活性HJVペプチドは、アミノ末端のリシル残基とグリシル残基などの1~約5個のアミノ酸残基とを含むスペーサーペプチドにペプチド結合されるようにペプチドのアミノ末端残基を改変することによって複合ポリペプチドを形成させることにより、マルチマーの形態で調製されている。あるいは、各ペプチドは、そのアミノ末端及びカルボキシ末端のそれぞれにシステイン(Cys)残基を含むように合成されます。次に、得られたジシステイン末端(di-Cys)化したペプチドを酸化して、di-Cysペプチドモノマーをポリマーまたは環状ペプチドマルチマーに重合させる。マルチマーはまた、リジンコアマトリックスを用いた固相ペプチド合成によって調製することもできる。本発明のペプチドは、ナノ粒子として調製することもできる(“Multivalent Effects of RGD Peptides Obtained by Nanoparticle Display,”Montet,et al.,J.Med.Chem.;2006;49(20)pp6087-6093を参照)。EETI二量体化は、EETI-II二量体化に関する論文“Grafting of thrombopoietin-mimetic peptides into cystine knot miniproteins yields high-affinity thrombopoietin antagonist and agonists,”Krause,et al.,FEBS Journal;2006;274 pp86-95に従って本発明のEETI-IIペプチドを用いて実施することができる。これは、参照により本明細書に援用するPCT出願第PCT/US2013/065610号にさらに述べられている。
【0192】
フィブロネクチン及び他の接着タンパク質上の相乗的部位が、インテグリン結合性の増強に関して特定されている(Ruoslahti,1996;Koivunen et al.,1994;Aota et al.,1994;Healy et al.,1995)。異なるインテグリン特異的モチーフを1個の可溶性分子に組み込むことができれば、治療薬の開発に重要な影響をもたらすものと考えられる。相乗的結合効果を有するインテグリン結合タンパク質を作製するために、ヘテロ官能特異性を有する架橋剤を使用することができる。さらに、これらの同じ架橋剤を、二重特異性標的分子を作製するために、または治療用途で放射性核種または毒性物質を送達するための溶媒として容易に使用することができる。
5.インテグリン結合ポリペプチド
Fc融合体で使用するためのインテグリン結合ポリペプチドは、インテグリン結合ループ(例えば、RGDペプチド配列)及びノッティンポリペプチド足場を含む。そのようなインテグリン結合ポリペプチドは、本明細書に参照によりその内容を援用する米国特許第8,536,301号に記載されている。米国特許第8,536,301号に記載されるように、インテグリン結合ポリペプチドは、結合特異性及び有効性に影響を与えることなく、非RGD残基をある程度変化させることができる。例えば、11個の残基のうち3個を変化させた場合、2.5Dに対して約70%の同一性を有することになる。表1に、本発明の範囲内の例示的なインテグリン結合ポリペプチド、及びそれらの特定のノッティンポリペプチド足場(例えば、EETI-IIまたはAgRP)を示す。いくつかの実施形態において、Fc融合体で使用するためのインテグリン結合ポリペプチドは、本明細書に記載されるペプチド2.5F及び2.5FmodK(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG,2.5F,配列番号130及びGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG,2.5FmodK,配列番号131)、ならびにGCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及び/またはGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)である。
【0193】
特定の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、ανβ3、ανβ5、またはα5β1に別々に結合する。
【0194】
特定の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、ανβ3とανβ5に同時に結合する。
【0195】
特定の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、ανβ3、ανβ5、及びα5β1に同時に結合する。
【0196】
特定の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、本明細書に記載される2.5Fまたは2.5FmodK(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG,2.5F,配列番号130及びGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG,2.5FmodK,配列番号131)、ならびにGCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及び/またはGCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)である。いくつかの実施形態において、米国特許第8,536,301号の表1に記載されるインテグリン結合ポリペプチドも、本明細書に記載されるFc融合体で使用することができる。
【0197】
本ポリペプチドは、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びα5β1インテグリン受容体を標的とする。本ポリペプチドは、親和性が以前にほとんどまたはまったく示されていないαiibβ3などの他の試験されたインテグリンには結合しない。したがって、これらの操作されたインテグリン結合ポリペプチドは、上記に名前を挙げたインテグリンを特異的に過剰発現する様々なヒトのがんにおいて幅広い診断及び治療用途を有する。以下に説明するように、これらのポリペプチドは、界面活性剤で可溶化されたインテグリン受容体及び腫瘍細胞表面のインテグリン受容体の両方に高い親和性で結合する。
【0198】
ανβ3(及びανβ5)インテグリンは、骨肉腫、神経芽細胞腫、肺、乳房、前立腺、膀胱のがん腫、神経膠芽腫、浸潤性黒色腫など、多くの腫瘍細胞でも高度に発現される。ανβ3インテグリンは、腫瘍細胞及び/または乳癌、卵巣癌、前立腺癌、及び結腸癌の血管系で発現されるが、正常な成人組織または血管では発現されないことが示されている。α5β1インテグリンもまた、腫瘍細胞及び/または乳癌、卵巣癌、前立腺癌、及び結腸癌の血管系で発現されるが、正常な成人組織または血管では発現されないことが示されている。本発明の小さな、コンフォメーション的に拘束されたポリペプチド(アミノ酸約33個)は、分子内結合によってそのように拘束されている。例えば、EETI-IIは3個のジスルフィド結合を有している。これは、EETI-IIのインビボでの安定性を高める。
【0199】
現在までのところ、ανβ3、ανβ5、及びα5β1インテグリンに高い親和性及び特異性で結合できる単一の薬剤の開発は実現されていないものと考えられている。これらの3つのインテグリンの3つすべてが腫瘍で発現され、血管新生及び転移の媒介に関与しているため、広域スペクトルの標的化剤(すなわち、ανβ3、ανβ5、及びα5β1)は、診断及び治療用途でより効果的である可能性が高い。
【0200】
本発明の操作されたノッティンポリペプチドは、以前に特定されているインテグリン標的化化合物と比較していくつかの利点を有している。本発明のノッティンポリペプチドは、タンパク質分解耐性と極めて高いインビボ安定性を与えるコンパクトなジスルフィド結合コアを有している。
【0201】
ノッティンポリペプチドのサイズ(約3~4kDa)及びRGDベースの環状ペプチドと比較して向上した親和性は、分子イメージング及び治療用途において向上した薬物動態及び生体内分布を与えるものである。これらのインテグリン結合ポリペプチドは、化学合成、及びイメージングプローブ、放射性同位元素、または化学療法剤の部位特異的結合を可能にするうえで充分に小さい。さらに、これらのインテグリン結合ポリペプチドは、インビボ特性をさらに改善するために必要に応じて化学的に容易に修飾することができる。
6.インテグリン結合ポリペプチド-FC融合体
本明細書及び本明細書に参照によりその全体を援用するところの米国特許出願第2014/0073518号に記載されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体(ノッティン-Fc融合体)は、操作されたインテグリン結合ポリペプチド(ノッティン足場内の)と、FcyRに結合してエフェクター機能を誘導することができるFcドメインまたは抗体様コンストラクトとを組み合わせたものである。
【0202】
本発明者らの研究は、マウス血清中のインテグリン結合-Fc融合タンパク質の半減期が約24時間を上回ることを示している。ノッティンポリペプチドのサイズ(約58kDa)及びRGDベースの環状ペプチドと比較して向上した親和性は、分子イメージング及び治療用途において向上した薬物動態及び生体内分布を与えるものである。
【0203】
抗体のFc部分は、免疫グロブリン分子を構成する2本の重鎖の2つのカルボキシ末端ドメインによって形成される。IgG分子には、2本の重鎖(それぞれ約50kDa)と2本の軽鎖(それぞれ約25kDa)が含まれている。すべての抗体の一般的な構造は非常に似通っており、タンパク質の先端の小さな領域が非常に変化に富むため、わずかに異なる先端構造を持つ何百万もの抗体が存在することができる。この領域は、超可変領域(Fab)として知られている。もう一方のフラグメントは抗原結合活性を有していないが、容易に結晶化することが最初に観察されたことから、Fragment crystallizableからFcフラグメントと名付けられた。このフラグメントは、対合したC3/4ドメインとC3/4ドメインに対応し、エフェクター分子及び細胞と相互作用する抗体分子の部分である。重鎖アイソタイプ間の機能の違いは、主にFcフラグメントにある。抗体分子のFc部分とFab部分をつなぐヒンジ領域は、実際には堅いヒンジではなく、2個のFabアームの独立した動きを可能にする柔軟な鎖である。これは、ハプテンに結合した抗体の電子顕微鏡観察によって示されている。したがって、本発明の融合タンパク質は、抗体フラグメントの各アームに1つずつ、2個のノッティンペプチドを含むように作製することができる。
【0204】
Fc部分は抗体クラス(及びサブクラス)間で異なるが、そのクラス内では同じである。重鎖のC末端はFc領域を形成する。Fc領域は受容体結合部分として重要な役割を果たしている。抗体のFc部分は、2つの異なる形でFc受容体に結合する。例えば、IgG及びIgMのFab部分が病原体に結合した後、それらのFc部分が食細胞(マクロファージなど)の受容体に結合して食作用を誘導する。
【0205】
本発明のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、Fc部分が二重の結合能力を与えるように、及び/または半減期を延長する目的では、発現レベルなどを改善するように実施することができる。インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体中のFcフラグメントは、例えば、マウスIgG2aまたはヒトIgG1由来のものであってよい。いくつかの実施形態において、Fcフラグメントは、マウスIgG1、IgG2、IgG3、またはマウスIgG4、及びそれらの変異体に由来するものとすることができる。いくつかの実施形態において、Fcフラグメントは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはマウスIgG4、及びそれらの変異体に由来するものとすることができる。例えば、
図1を参照されたい。必要に応じて、インテグリン結合部分(ノッティン)をFc部分に接続するためのリンカーを用いることができる。
【0206】
いくつかの実施形態において、リンカーは、インテグリンまたはFc受容体に対するインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の結合親和性に影響を及ぼさない。様々なFcドメイン遺伝子配列(例えば、マウス及びヒトの定常領域の遺伝子配列)が、公的にアクセス可能な寄託情報の形で利用可能である。
7.Fc-ドメイン
様々なFcドメイン遺伝子配列(例えば、マウス及びヒトの定常領域の遺伝子配列)が、公的にアクセス可能な寄託情報の形で利用可能である。特定のエフェクター機能を欠く、及び/または免疫原性を低下させるための特定の修飾を有する、Fcドメイン配列を含む定常領域ドメインを選択することができる。抗体及び抗体をコードする遺伝子の多くの配列が公開されており、適当なFcドメイン配列(例えば、ヒンジ、CH2、及び/またはCH3配列、またはその部分)を、当該技術分野で認識されている技術を使用してこれらの配列から誘導することができる。次いで、上記の方法のいずれかを使用して得られた遺伝物質を改変または合成して本明細書で使用されるポリペプチドを得ることができる。定常領域DNA配列の対立遺伝子、変異体及び突然変異が、本明細書に開示される方法における使用に適している点がさらに理解されよう。
【0207】
本明細書に開示される方法における使用に適したインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、1つ以上のFcドメイン(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上のFcドメイン)を含むことができる。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、異なるタイプのものであってよい。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体中に存在する少なくとも1つのFcドメインは、ヒンジドメインまたはその部分を含む。別の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその部分を含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも1つのCH3ドメインまたはその部分を含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも1つのCH4ドメインまたはその部分を含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の実施形態では、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも1つのヒンジドメインまたはその部分と、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその部分(例えば、ヒンジ-CH2の向きで)とを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の実施形態では、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその部分と、少なくとも1つのCH3ドメインまたはその部分(例えば、CH2-CH3の向きで)とを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の実施形態では、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくとも1つのヒンジドメインまたはその部分、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその部分、及び少なくとも1つのCH3ドメインまたはその部分を、例えば、ヒンジ-CH2-CH3、ヒンジ-CH3-CH2、またはCH2-CH3-ヒンジの向きで含む少なくとも1つのFcドメインを含む。
【0208】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、1つ以上の免疫グロブリン重鎖に由来する少なくとも1つの完全Fc領域(例えば、ヒンジ、CH2、及びCH3ドメインを含むFcドメイン。ただし、これらは同じ抗体に由来する必要はない)を含む。他の実施形態では、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、1つ以上の免疫グロブリン重鎖に由来する少なくとも2つの完全Fcドメインを含む。特定の実施形態において、完全Fcドメインは、ヒトIgG免疫グロブリン重鎖(例えば、ヒトIgG1)に由来する。
【0209】
別の実施形態では、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、完全なCH3ドメインを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、完全CH2ドメインを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、少なくともCH3 ドメインと、ヒンジ領域及びCH2 ドメインの少なくとも一方とを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。一実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、ヒンジと、CH3ドメインとを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、ヒンジ、CH2、及びCH3ドメインを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。特定の実施形態において、Fcドメインは、ヒトIgG免疫グロブリン重鎖(例えば、ヒトIgG1)に由来する。いくつかの実施形態において、ヒトIgG1のFcドメインが、1つ以上のヒンジ領域システイン残基を除去または置換するために、ヒンジ領域の変異、置換、または欠失とともに使用される。
【0210】
インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体のFcドメインを構成する定常領域ドメインまたはその部分は、異なる免疫グロブリン分子に由来するものであってよい。例えば、本発明で使用されるポリペプチドは、IgG1分子に由来するCH2ドメインまたはその部分と、IgG3分子に由来するCH3領域またはその部分とを含むことができる。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、IgG1分子に一部由来し、IgG3分子に一部由来するヒンジドメインを含むFcドメインを含むことができる。本明細書に記載されるように、Fcドメインは、天然に存在する抗体分子とアミノ酸配列が異なるように改変できる点は当業者により理解されよう。
【0211】
他のコンストラクトでは、1つ以上の構成Fcドメインの間にペプチドスペーサーを置くことが望ましい場合もある。例えば、いくつかの実施形態において、ペプチドスペーサーを、ヒンジ領域とCH2ドメインとの間に、及び/またはCH2とCH3ドメインとの間に配置することができる。例えば、CH2ドメインが欠失され、残りのCH3ドメイン(合成または非合成)が、アミノ酸1~20、1~10、または1~5個のペプチドスペーサーによりヒンジ領域に接続された、適合性コンストラクトを発現させることができる。こうしたペプチドスペーサーを加えることで、例えば、定常領域ドメインの調節エレメントを自由な状態でアクセス可能に維持するか、またはヒンジ領域を柔軟な状態に保つことができる。好ましくは、本発明と適合性のあるいずれのリンカーペプチドも、比較的非免疫原性であり、Fcの適切なフォールディングを妨げないものである。
8.Fcアミノ酸への変更
いくつかの実施形態において、Fcドメインは、例えば、アミノ酸の突然変異(例えば、付加、欠失、または置換)によって変更または改変される。本明細書で使用する場合、「Fcドメイン変異体」という用語は、Fcドメインが由来する野生型Fcと比較して、アミノ酸置換などの少なくとも1つのアミノ酸改変を有するFcドメインを指す。例えば、FcドメインがヒトIgG1抗体に由来する場合、変異体は、ヒトIgG1のFc領域の対応する位置の野生型アミノ酸と比較して少なくとも1つのアミノ酸変異(例えば、置換)を含む。
【0212】
いくつかの実施形態において、ヒトIgG1のFcドメインのヒンジ領域は、3個のヒンジ領域システイン残基(EU番号付けによる残基220、226、及び229に位置する)のうちの1つ以上が変異または除去されるようにアミノ酸置換または欠失によって改変される。いくつかの態様では、軽鎖と対合するシステインを除去するために上部ヒンジ領域が欠失される。例えば、いくつかの実施形態において、米国特許第8,536,301号の配列番号3に記載されるように、上部ヒンジ領域のアミノ酸「EPKSC」が欠失される。他の態様では、3個のヒンジ領域システインのうちの1つ以上が変異している(例えば、セリンに)。特定の実施形態では、システイン220がセリンに変異している。
【0213】
いくつかの実施形態において、Fc変異体は、ヒンジドメインまたはその部分に位置するアミノ酸位置に置換を含む。いくつかの実施形態において、Fc変異体は、CH2ドメインまたはその部分に位置するアミノ酸位置に置換を含む。別の実施形態において、Fc変異体は、CH3ドメインまたはその部分に位置するアミノ酸位置に置換を含む。別の実施形態において、Fc変異体は、CH4ドメインまたはその部分に位置するアミノ酸位置に置換を含む。
【0214】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、複数のアミノ酸置換を含むFc変異体を含む。本明細書に記載される方法で使用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上のアミノ酸置換を含むことができる。
【0215】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、少なくとも1個のアミノ酸位置またはそれ以上、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸位置またはそれ以上の間隔によって互いに間隔を置いて配置される。いくつかの実施形態において、操作されたアミノ酸は、少なくとも5、10、15、20、または25個のアミノ酸位置またはそれ以上の間隔によって互いに間隔を置いて配置される。
【0216】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合は、ポリペプチドの抗原非依存性エフェクター機能、特にポリペプチドの循環半減期を変化させるようなFcドメインに対するアミノ酸置換を含む。
【0217】
一実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、活性化FcyR(例えば、FcγI、Fcγ1α、またはFcyRIIIα)に対する高い結合性を示す。FcRまたは補体結合活性を変化させる例示的なアミノ酸置換が、本明細書に参照により援用する国際PCT公開番号第WO2005/063815号に開示されている。特定の実施形態において、Fc領域は、以下の突然変異、すなわち、S239D、S239E、L261A、H268D、S298A、A330H、A330L、I332D、I332E、I332Q、K334V、A378F、A378K、A378W、A378Y、H435G、またはH435Gのうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態において、Fc領域は、以下の突然変異、すなわち、S239D、S239E、I332DまたはI332EまたはH268Dのうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態において、Fc領域は、以下の突然変異、すなわち、I332DまたはI332EまたはH268Dのうちの少なくとも1つを含む。
【0218】
本明細書で使用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体のグリコシル化を変化させるアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体のFcドメインは、グリコシル化(例えば、N-またはO-結合型グリコシル化)の低下をもたらす変異を有するFcドメインを含んでもよく、または野生型Fcの変化したグリコフォーム(例えば、低フコースまたはフコースを含まないグリカン)を含んでもよい。別の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、グリコシル化モチーフ、例えば、アミノ酸配列NXTまたはNXSを含むN-結合型グリコシル化モチーフの近くまたは内部にアミノ酸置換を有する。グリコシル化を低減または変化させる例示的なアミノ酸置換が、参照により本明細書に援用するWO05/018572及びUS 2007/0111281に開示されている。他の実施形態では、本明細書で使用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、溶媒曝露表面に位置する操作されたシステイン残基またはその類似体を有する少なくとも1つのFcドメインを含む。いくつかの実施形態において、本明細書で使用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、第2のシステイン残基とのジスルフィド結合を実質的に含まない、少なくとも1つの操作された遊離システイン残基またはその類似体を含むFcドメインを含む。上記の操作されたシステイン残基またはその類似体のいずれかを、その後、当該技術分野で認識されている技術を用いて機能的ドメインに結合することができる(例えば、チオール反応性ヘテロ二官能性リンカーと結合させることができる)。
【0219】
一実施形態では、本明細書で使用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合は、本明細書に記載のFcドメインから独立して選択される2つ以上のその構成Fcドメインを有する遺伝子的に融合されたFcドメインを含むことができる。一実施形態では、各Fcドメインは同じである。別の実施形態において、Fcドメインのうちの少なくとも2つは異なる。例えば、本明細書で使用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体のFcドメイン同士は、同じ数のアミノ酸残基を含むか、またはFcドメイン同士は、1つ以上のアミノ酸残基(例えば、約5個のアミノ酸残基(例えば、1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基)、約10個の残基、約15個の残基、約20個の残基、約30個の残基、約40個の残基、または約50個の残基)だけ、長さが異なってもよい。いくつかの実施形態において、本明細書で使用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体のFcドメイン同士は、1つ以上のアミノ酸位置で配列が異なってもよい。例えば、Fcドメインの少なくとも2つは、約5個のアミノ酸位置(例えば、1、2、3、4、または5個のアミノ酸位置)、約10個の位置、約15個の位置、約20個の位置、約30個の位置、約40個の位置、または約50個の位置で異なってもよい。
II.核酸組成物
本発明のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体をコードする核酸組成物、ならびに核酸を含む発現ベクター、及び核酸及び/または発現ベクター組成物で形質転換された宿主細胞も提供される。
【0220】
インテグリン結合ポリペプチド-Fcをコードする核酸組成物が当該技術分野では周知の単一の発現ベクターに一般的に組み込まれ、宿主細胞に形質導入され、そこで発現されて、本発明のインテグリン結合ポリペプチド-Fcを生成する。核酸は、シグナル及び分泌配列、調節配列、プロモーター、複製起点、選択遺伝子などを含むがこれらに限定されない、適切な転写及び翻訳制御配列を含む発現ベクターに組み込むことができる。
【0221】
例えば、タンパク質のDNAを発現させるには、DNAを標準的な分子生物学の手法(例えば、PCR増幅または遺伝子合成)によって得ることができ、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に機能的に連結されるようにDNAを発現ベクターに挿入すればよい。この関連で、「機能的に連結された」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節するそれらの意図された機能を果たすように抗体遺伝子がベクターに連結されることを意味するものとする。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。タンパク質遺伝子は、標準的な方法(例えば、遺伝子フラグメント及びベクター上の相補的な制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端のライゲーション)によって発現ベクターに挿入することができる。上記に加えてまたは上記に代えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞からのタンパク質(融合タンパク質を含む)の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。遺伝子は、シグナルペプチドが遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるようにベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であってよい。例示的なシグナルペプチドとしては、これに限定されるものではないが、MTRLTVLALLAGLLASRA(配列番号138)が挙げられる。
【0222】
本発明の少なくともいくつかの実施形態による組換え発現ベクターは、タンパク質遺伝子に加えて、宿主細胞内の遺伝子の発現を制御する調節配列を有している。「調節配列」という用語は、例えば、プロモーター、エンハンサー、及び遺伝子の転写または翻訳を制御する他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むものとする。そのような調節配列は、例えば、Goeddel(“Gene Expression Technology”,Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990))に記載されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの因子に依存し得る点は当業者には理解されよう。哺乳動物宿主細胞での発現用の好ましい調節配列としては、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)及びポリオーマに由来するプロモーター及び/またはエンハンサーなどの哺乳動物細胞に高いレベルのタンパク質発現を誘導するウイルスエレメントが挙げられる。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはβ-グロビンプロモーターなどの非ウイルス性調節配列を使用することもできる。さらに、SV40初期プロモーター及びヒトT細胞白血病ウイルス1型のロングターミナルリピートの配列を含むSRαプロモーターシステムなどの異なるソースからの配列で構成される調節エレメントも使用することができる(Takebe,Y.et al.(1988)Mol.Cell.Biol.8:466-472))。
【0223】
タンパク質遺伝子及び調節配列に加えて、本発明の少なくともいくつかの実施形態による組換え発現ベクターは、例えば、宿主細胞内でのベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)及び選択マーカー遺伝子などのさらなる配列を有することができる。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にするものである(例えば、いずれもAxelらによる米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、及び同第5,179,017号を参照)。例えば通常、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に薬剤(G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなど)に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を伴うdhfr宿主細胞での使用)及びneo遺伝子(G418選択用)が挙げられる。
【0224】
本発明のタンパク質を発現させるには、タンパク質をコードする発現ベクターを、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトする。「トランスフェクション」という用語の様々な形態は、原核生物または真核生物の宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に使用される広範な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含するものとする。原核生物または真核生物の宿主細胞のいずれにおいても本発明の少なくともいくつかの実施形態によるタンパク質を発現させることは理論的に可能ではあるが、真核生物細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞での抗体の発現が最も好ましい。
【0225】
いくつかの実施形態において、組換えタンパク質を発現するための哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601-621に記載されるDHFRマーカーとともに使用される、Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載されるdhfr-CHO細胞)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が挙げられる。詳細には、NSO骨髄腫細胞とともに使用するための別の好ましい発現システムは、WO87/04462、WO89/01036及びEP338,841に開示されるGS遺伝子発現システムである。タンパク質遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、タンパク質は、宿主細胞内でタンパク質が発現されるのに充分な時間、またはより好ましくは、宿主細胞が増殖される培地中にタンパク質が分泌されるのに充分な時間にわたって宿主細胞を培養することによって産生される。
III.SIRPα-CD47免疫チェックポイント経路の阻害剤
本明細書に記載の治療方法で使用するためのSIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、SIRPα-CD47免疫チェックポイント経路の機能を阻害することができる任意の化合物を含むことができる。「SIRPα-CD47免疫チェックポイントの阻害剤」及び「SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤」という語句は、本出願内で互換的に使用される。阻害には、機能の低下及び完全な遮断が含まれる。いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント経路タンパク質は、ヒトCD47タンパク質である。したがって、いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、ヒトCD47の阻害剤である。
【0226】
いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤としては、これらに限定されるものではないが、ALX148(操作された高親和性SIRPaタンパク質)、mIAp301(thermoより)、MIAP410、及び/またはCV1-G4、またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体が挙げられる。
1.SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤-抗体
いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、抗CD47抗体である。いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、SIRPαに対する抗体である。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、本開示のインテグリン結合-Fc融合タンパク質と併用される。
【0227】
本明細書で使用される「抗体」という用語には、天然に存在する抗体及び操作された抗体、ならびに例えば、標的免疫チェックポイントまたはエピトープ(例えば 抗原結合部分を保持する)に結合することができる完全長抗体またはその機能的フラグメントまたは類似体が含まれる。本明細書に記載される方法に従って使用される抗体は、これらに限定されるものではないが、ヒト、ヒト化、動物またはキメラを含む任意の由来のものであってよく、IgG1またはIgG4アイソタイプが好ましいが任意のアイソタイプのものであってよく、さらにグリコシル化されていてもよく、グリコシル化されていなくともよい。特定の実施形態では、アイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。いくつかの実施形態において、アイソタイプはIgG1である。いくつかの実施形態において、アイソタイプはIgG2である。いくつかの実施形態において、アイソタイプはIgG3である。いくつかの実施形態において、アイソタイプはIgG4である。抗体という用語には、抗体(複数可)が本明細書に記載される結合特異性を示す限り、二重特異性または多重特異性抗体も含まれる。
【0228】
ヒト化抗体とは、ヒト抗体との類似性を高めるためにタンパク質配列が改変されている非ヒト(例えば、マウス、ラットなど)抗体を指す。キメラ抗体は、1つの種の1つ以上の要素と、別の種の1つ以上の要素とを含む抗体を指し、例えば、ヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む非ヒト抗体がある。
【0229】
抗体の多くの形態は、本発明の併用において使用するために操作することができ、その代表的な例としては、Fabフラグメント(VL、VH、CL及びCH1ドメインで構成される一価のフラグメント)、F(ab’)2フラグメント(ヒンジ領域において少なくとも1つのジスルフィド架橋によって接続された2個のFabフラグメントを含む二価のフラグメント)、Fdフラグメント(VH及びCH1ドメインで構成される)、Fvフラグメント(抗体の一本のアームのVL及びVHドメインで構成される)、dAbフラグメント(単一の可変ドメインフラグメント(VHまたはVLドメイン)で構成される)、最終的にリンカーによって互いに融合されて一本鎖のタンパク質鎖を形成するFvフラグメントの2個のドメインVLとVHを含む単鎖Fv(scFv)が挙げられる。
【0230】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、完全な抗体、ならびにCD47に特異的に結合するscFv及び/またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、モノクローナル抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはCD47を少なくとも部分的にアンタゴナイズすることができるそれらのフラグメントである。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、遮断抗体である。
【0231】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、健康な組織だけでなくがん細胞で発現される「don’t eat me」シグナルを遮断する。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、CD47とリガンドであるトロンボスポンジン-1(TSP-1)との相互作用を遮断する遮断抗体である。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、CD47とリガンドであるシグナル調節タンパク質α(SIRPα)との相互作用を遮断する遮断抗体である。
【0232】
いくつかの実施形態において、併用療法のSIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、CD47に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントである。いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、モノクローナル抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはCD47を少なくとも部分的にアンタゴナイズすることができるそれらのフラグメントである。
【0233】
いくつかの実施形態において、CD47に特異的に結合する抗CD47抗体モノクローナル抗体としては、これらに限定されるものではないが、Hu5F9-G4、5F9抗CD47抗体(FortySeven)、CC-90002、INBRX-103、SRF231、TTI-622、NI-1701、NI-1801、OSE-172、AUR-104、AUR-105、抗CD47 MAb(Biocad)、抗CD47抗体(Arch Oncology)、CD47-SIRPαモジュレーター、B6H12、B6H12F(ab’)2、抗CD47抗体(BosterBio)、BIRC126、OAAB21755、Ab400、抗マウスCD47 Alexa-680抗体(mlAP301)、MIAP410、CV1-G4、抗CD47抗体(FortySeven)、抗CD47抗体(ALX)、抗CD47抗体(Surface Oncology)、抗CD47抗体(Celgene)、抗CD47抗体(Innovent)、抗CD47抗体(Trillium)、及び/またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体が挙げられる。
【0234】
いくつかの実施形態において、SIRPαに特異的に結合する抗SIRPα抗体としては、これらに限定されるものではないが、TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)、TTI-622(SIRPa-IgG4 Fc)、FSI-189(FortySeven)、抗SIRPα抗体(FortySeven)、抗SIRPα抗体(ALX)、抗SIRPα抗体(Surface Oncology)、抗SIRPα抗体(Celgene)、抗SIRPα抗体(Innovent)、及び/または抗SIRPα抗体(Trillium)、またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体が挙げられる。
【0235】
当業者には周知であるように、上記に述べた特定の抗体には別称及び/または同等の名称が使用されている場合がある。そのような別称及び/または同等の名称は、本発明との関連で互換可能である。
IV.リンカー
特定の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、リンカーを介してFcフラグメントに融合される。例えば、本明細書に参照によりその全容を援用するところのUS2010/0210511US2010/0179094、及びUS2012/0094909に開示されているものなど、適切なリンカーが当該技術分野で周知である。例示的なリンカーとしては、gly-serポリペプチドリンカー、グリシン-プロリンポリペプチドリンカー、及びプロリン-アラニンポリペプチドリンカーが挙げられる。特定の実施形態において、リンカーは、gly-serポリペプチドリンカー、すなわち、グリシン及びセリン残基からなるペプチドである。
【0236】
例示的なgly-serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列Ser(Gly4Ser)n、ならびに(Gly4Ser)n及び/または(Gly4Ser3)nを含む。いくつかの実施形態において、n=1である。いくつかの実施形態において、n=2である。いくつかの実施形態において、n=3、すなわち、Ser(Gly4Ser)3である。いくつかの実施形態において、n=4、すなわち、Ser(Gly4Ser)4である。いくつかの実施形態において、n=5である。いくつかの実施形態において、n=6である。いくつかの実施形態において、n=7である。いくつかの実施形態において、n=8である。いくつかの実施形態において、n=9である。いくつかの実施形態において、n=10である。別の例示的gly-serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列Ser(Gly4Ser)nを含む。いくつかの実施形態において、n=1である。いくつかの実施形態において、n=2である。いくつかの実施形態において、n=3である。別の実施形態において、nは4である。いくつかの実施形態において、n=5である。いくつかの実施形態において、n=6である。別の例示的gly-serポリペプチドリンカーは、(Gly4Ser)nを含む。いくつかの実施形態において、n=1である。いくつかの実施形態において、n=2である。いくつかの実施形態において、n=3である。いくつかの実施形態において、n=4である。いくつかの実施形態において、n=5である。いくつかの実施形態において、n=6である。別の例示的gly-serポリペプチドリンカーは、(Gly3Ser)nを含む。いくつかの実施形態において、n=1である。いくつかの実施形態において、n=2である。いくつかの実施形態において、n=3である。いくつかの実施形態において、n=4である。別の実施形態において、n=5である。さらに別の実施形態において、n=6である。別の例示的gly-serポリペプチドリンカーは、(Gly43)nを含む。いくつかの実施形態において、n=1である。いくつかの実施形態において、n=2である。いくつかの実施形態において、n=3である。いくつかの実施形態において、n=4である。いくつかの実施形態において、n=5である。いくつかの実施形態において、n=6である。別の例示的gly-serポリペプチドリンカーは、(Gly3Ser)nを含む。いくつかの実施形態において、n=1である。いくつかの実施形態において、n=2である。いくつかの実施形態において、n=3である。いくつかの実施形態において、n=4である。別の実施形態において、n=5である。さらに別の実施形態において、n=6である。
【0237】
いくつかの実施形態において、リンカーポリペプチドは、GGGGS(配列番号136)及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号137)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーポリペプチドは、GGGGS(配列番号136)である。いくつかの実施形態において、リンカーポリペプチドは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号137)である。
V.ポリペプチドの製造方法
いくつかの態様において、本明細書に記載されるポリペプチド(例えば、ノッティン-Fcまたはインテグリン結合タンパク質Fc融合体)は、組換えDNA技術を使用して形質転換された宿主細胞中で産生される。これを行うため、ペプチドをコードする組換えDNA分子が調製される。そのようなDNA分子を調製する方法は当該技術分野では周知のものである。例えば、ペプチドをコードする配列を、適当な制限酵素を使用してDNAから切り出すことができる。あるいは、ホスホロアミダイト法などの化学合成技術を用いてDNA分子を合成することもできる。また、これらの手法を組み合わせて用いることもできる。
【0238】
ポリペプチドを製造する方法はまた、適当な宿主においてペプチドを発現することができるベクターを含む。ベクターは、適当な発現制御配列に機能的に連結されたペプチドをコードするDNA分子を含む。DNA分子をベクターに挿入する前後のいずれかにおいてこの機能的連結に影響を与える方法は周知のものである。発現制御配列としては、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソームヌクレアーゼドメイン、開始シグナル、停止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、及び転写または翻訳の制御に関与する他のシグナルが挙げられる。
【0239】
得られたDNA分子を有するベクターを使用して適当な宿主を形質転換する。この形質転換は、当該技術分野では周知の方法を用いて行うことができる。
【0240】
多くの利用可能な周知の宿主細胞のいずれも本発明の実施において使用することができる。特定の宿主の選択は、当該技術分野で認識されている多くの因子によって決められる。これらの因子としては、例えば、選択される発現ベクターとの適合性、DNA分子によってコードされるペプチドの毒性、形質転換の速度、ペプチドの回収の容易さ、発現特性、生物学的安全性及びコストが挙げられる。これらの因子のバランスは、すべてのホストが特定のDNA配列の発現にとって同等に効果的であるとは限らないことを理解したうえで取る必要がある。これらの一般的なガイドラインの範囲内で、有用な微生物宿主としては、細菌(E.coli sp.など)、酵母(Saccharomyces sp.など)及びその他の真菌類、昆虫、植物、培養中の哺乳動物(ヒトを含む)細胞、または当該技術分野では周知の他の宿主が挙げられる。
【0241】
次に、形質転換された宿主を培養及び精製する。宿主細胞は、所望の化合物が発現されるように、従来の発酵条件下で培養することができる。そのような発酵条件は当該技術分野では周知のものである。最後に、ペプチドを当技術分野で周知の方法によって培養物から精製する。
【0242】
化合物は合成法によって製造することもできる。例えば、固相合成法を使用することができる。適当な手法は当技術分野で周知であり、Merrifield(1973),Chem.Polypeptides,pp.335-61(Katsoyannis and Panayotis eds.);Merrifield(1963),J.Am.Chem.Soc.85: 2149;Davis et al.(1985),Biochem.Intl.10:394-414;Stewart and Young(1969),Solid Phase Peptide Synthesis;U.S.Pat.No.3,941,763;Finn et al.(1976),The Proteins(3rd ed.)2:105-253;及びErickson et al.(1976),The Proteins(3rd ed.)2: 257-527に記載されるものが挙げられる。固相合成法は、小さなペプチドを生成するのに最も費用効果の高い方法であり、個々のペプチドを生成するための好ましい手法である。誘導体化されたペプチドを含むか、または非ペプチド基を含む化合物を、周知の有機化学の手法によって合成することができる。
【0243】
他の方法は、分子の発現/合成に関するものであり、当業者には一般的に知られるものである。
1.ポリペプチドの発現
上記の核酸分子は、例えば、ベクターで形質導入された細胞内での核酸分子の発現を誘導することができるベクターに含めることができる。したがって、ノッティン-Fc変異体に加えて、ノッティン-Fc変異体をコードする核酸分子を含む発現ベクター、及びこれらのベクターをトランスフェクトした細胞も、特定の実施形態の中にある。
【0244】
使用に適したベクターとしては、細菌で使用するためのT7ベースのベクター(例えば、Rosenberg et al.,Gene 56:125,1987を参照)、哺乳動物細胞で使用するためのpMSXND発現ベクター(Lee and Nathans,J.Biol.Chem.263:3521,1988)、及び昆虫細胞で使用するためのバキュロウイルス由来ベクター(例えば、Clontech,Palo Alto,Calif.から販売される発現ベクターpBacPAKS)が挙げられる。そのようなベクター中で目的のポリペプチドをコードする核酸インサートは、例えば、発現させようとする細胞タイプに基づいて選択されるプロモーターと機能的に連結することができる。例えば、T7プロモーターは細菌で使用することが、ポリヘドリンプロモーターは昆虫細胞で使用することが、サイトメガロウイルスまたはメタロチオネインプロモーターは哺乳動物細胞で使用することができる。また、高等真核生物の場合、組織特異的及び細胞タイプ特異的プロモーターが広く入手可能である。これらのプロモーターは、体内の特定の組織または細胞タイプで核酸分子の発現を誘導する能力に因んで名付けられた。当業者には、核酸の発現を誘導するために使用することができる多くのプロモーター及び他の調節エレメントが周知である。
【0245】
挿入された核酸分子の転写を促進する配列に加えて、ベクターは複製起点、及び選択可能なマーカーをコードする他の遺伝子を含むことができる。例えば、ネオマイシン耐性(neor)遺伝子は、それが発現される細胞にG418耐性を付与し、それによりトランスフェクトされた細胞の表現型の選択を可能にする。当業者は、特定の調節エレメントまたは選択可能なマーカーが特定の実験的状況での使用に適しているかどうかを容易に判断することができる。
【0246】
本発明で使用することができるウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ベクター、ヘルペスウイルス、シミアンウイルス40(SV40)、及びウシ乳頭腫ウイルスベクターが含まれる(例えば、Gluzman(Ed.),Eukaryotic Viral Vectors,CSH Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)が挙げられる。
【0247】
インテグリン結合タンパク質Fc融合変異体をコードする核酸分子を含み、これを発現する原核細胞または真核細胞もまた、本発明の特徴である。本発明の細胞は、トランスフェクトされた細胞、すなわち、核酸分子、例えば、インテグリン結合タンパク質Fc融合体をコードする核酸分子が組換えDNA技術によって導入された細胞である。そのような細胞の子孫もまた、本発明の範囲内にあるものとみなされる。
【0248】
発現システムの正確な構成要素はそれほど重要ではない。例えば、インテグリン結合タンパク質Fc融合変異体は、大腸菌などの原核生物宿主、または昆虫細胞(例えば、Sf21細胞)、または哺乳動物細胞(例えば、COS細胞、NIH 3T3細胞、またはHeLa細胞)などの真核生物宿主内で産生させることができる。これらの細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(Manassas,Va.)をはじめとする多くのソースから入手することができる。発現システムの選択に当たっては、構成要素同士が互いに適合性があることだけが重要である。当業者であれば、そのような判断を下すことができる。さらに、発現システムの選択に当たって手引きが必要な場合、当業者は、Ausubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,New York,N.Y.,1993)及びPouwels et al.(Cloning Vectors:A Laboratory Manual,1985 Suppl.1987)を参考にすることができる。
【0249】
発現されたポリペプチドは、通常の生化学的手法を使用して発現システムから精製することができ、本明細書に記載されるように、例えば、治療薬として使用することができる。
VI. 組成物及び投与
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤とともに(例えば、同時にまたは順次)投与される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、抗SIRPα免疫チェックポイント阻害剤とともに(例えば、同時にまたは順次)投与される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、抗CD47抗体とともに(例えば、同時にまたは順次)投与される。いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の前に投与される。いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与と同時に投与される。いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の後に投与される。いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤とインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体とは同時に投与される。いくつかの実施形態において、SIRPα-CD47免疫チェックポイント阻害剤とインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体とは順次投与される。いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の前に投与される。いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体剤は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与と同時に投与される。いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体剤は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の後に投与される。いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体とインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体とは同時に投与される。他の実施形態において、抗SIRPα抗体とインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体とは順次投与される。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の前に投与される。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与と同時に投与される。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の後に投与される。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体とインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体とは同時に投与される。他の実施形態において、抗CD47抗体とインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体とは順次投与される。
【0250】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、抗SIRPα抗体とともに投与される。いくつかの実施形態において、抗SIRP抗体は、完全な抗体、ならびにSIRPαに特異的に結合するscFv及び/またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、抗SIRP抗体は、モノクローナル抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはSIRPを少なくとも部分的にアンタゴナイズすることができるそれらのフラグメントである。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、抗CD47抗体とともに投与される。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、完全な抗体、ならびにCD47に特異的に結合するscFv及び/またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、モノクローナル抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはCD47を少なくとも部分的にアンタゴナイズすることができるそれらのフラグメントである。
【0251】
いくつかの実施形態において、SIRPαに特異的に結合する抗SIRPα抗体としては、これらに限定されるものではないが、TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)、TTI-622(SIRPa-IgG4 Fc)、FSI-189(FortySeven)、抗SIRPα抗体(FortySeven)、抗SIRPα抗体(ALX)、抗SIRPα抗体(Surface Oncology)、抗SIRPα抗体(Celgene)、抗SIRPα抗体(Innovent)、及び/または抗SIRPα抗体(Trillium)、またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体が挙げられる。
【0252】
いくつかの実施形態において、CD47に特異的に結合する抗CD47抗体モノクローナル抗体としては、これらに限定されるものではないが、Hu5F9-G4、5F9抗CD47抗体(FortySeven)、CC-90002、INBRX-103、SRF231、TTI-622、NI-1701、NI-1801、OSE-172、AUR-104、AUR-105、抗CD47 MAb(Biocad)、抗CD47抗体(Arch Oncology)、CD47-SIRPαモジュレーター、B6H12、B6H12F(ab’)2、抗CD47抗体(BosterBio)、BIRC126、OAAB21755、Ab400、抗マウスCD47 Alexa-680抗体(mlAP301)、MIAP410、CV1-G4、抗CD47抗体(FortySeven)、抗CD47抗体(ALX)、抗CD47抗体(Surface Oncology)、抗CD47抗体(Celgene)、抗CD47抗体(Innovent)、抗CD47抗体(Trillium)、及び/またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体が挙げられる。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体としては、これらに限定されるものではないが、Hu5F9-G4、5F9抗CD47抗体(FortySeven)、CC-90002、INBRX-103、SRF231、TTI-622、NI-1701、NI-1801、OSE-172、AUR-104、AUR-105、抗CD47 MAb(Biocad)、抗CD47抗体(Arch Oncology)、CD47-SIRPαモジュレーター、B6H12、B6H12F(ab’)2、抗CD47抗体(BosterBio)、BIRC126、OAAB21755、Ab400、抗マウスCD47 Alexa-680抗体(mlAP301)、MIAP410、CV1-G4、抗CD47抗体(FortySeven)、抗CD47抗体(ALX)、抗CD47抗体(Surface Oncology)、抗CD47抗体(Celgene)、抗CD47抗体(Innovent)、抗CD47抗体(Trillium)、及び/またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体が挙げられる。
【0253】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質は、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と少なくとも90%同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドはFcドメインと結合されている。
【0254】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質は、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含む。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含む。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号130(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、配列番号131(GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及びCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)からなる群から選択される。
【0255】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質は、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と少なくとも90%の同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されており、抗CD47抗体は、Hu5F9-G4、5F9抗CD47抗体(FortySeven)、CC-90002、INBRX-103、SRF231、TTI-622、NI-1701、NI-1801、OSE-172、AUR-104、AUR-105、抗CD47 MAb(Biocad)、抗CD47抗体(Arch Oncology)、CD47-SIRPαモジュレーター、B6H12、B6H12F(ab’)2、抗CD47抗体(BosterBio)、BIRC126、OAAB21755、Ab400、抗マウスCD47 Alexa-680抗体(mlAP301)、MIAP410、CV1-G4、抗CD47抗体(FortySeven)、抗CD47抗体(ALX)、抗CD47抗体(Surface Oncology)、抗CD47抗体(Celgene)、抗CD47抗体(Innovent)、抗CD47抗体(Trillium)、及び/またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体からなる群から選択される。
【0256】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質は配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含み、抗CD47抗体は、Hu5F9-G4、5F9抗CD47抗体(FortySeven)、CC-90002、INBRX-103、SRF231、TTI-622、NI-1701、NI-1801、OSE-172、AUR-104、AUR-105、抗CD47 MAb(Biocad)、抗CD47抗体(Arch Oncology)、CD47-SIRPαモジュレーター、B6H12、B6H12F(ab’)2、抗CD47抗体(BosterBio)、BIRC126、OAAB21755、Ab400、抗マウスCD47 Alexa-680抗体(mlAP301)、MIAP410、CV1-G4、抗CD47抗体(FortySeven)、抗CD47抗体(ALX)、抗CD47抗体(Surface Oncology)、抗CD47抗体(Celgene)、抗CD47抗体(Innovent)、抗CD47抗体(Trillium)、及び/またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含み、抗CD47抗体は、Hu5F9-G4、5F9抗CD47抗体(FortySeven)、CC-90002、INBRX-103、SRF231、TTI-622、NI-1701、NI-1801、OSE-172、AUR-104、AUR-105、抗CD47 MAb(Biocad)、抗CD47抗体(Arch Oncology)、CD47-SIRPαモジュレーター、B6H12、B6H12F(ab’)2、抗CD47抗体(BosterBio)、BIRC126、OAAB21755、Ab400、抗マウスCD47 Alexa-680抗体(mlAP301)、MIAP410、CV1-G4、抗CD47抗体(FortySeven)、抗CD47抗体(ALX)、抗CD47抗体(Surface Oncology)、抗CD47抗体(Celgene)、抗CD47抗体(Innovent)、抗CD47抗体(Trillium)、及び/またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列を含み、抗CD47抗体は、Hu5F9-G4、5F9抗CD47抗体(FortySeven)、CC-90002、INBRX-103、SRF231、TTI-622、NI-1701、NI-1801、OSE-172、AUR-104、AUR-105、抗CD47 MAb(Biocad)、抗CD47抗体(Arch Oncology)、CD47-SIRPαモジュレーター、B6H12、B6H12F(ab’)2、抗CD47抗体(BosterBio)、BIRC126、OAAB21755、Ab400、抗マウスCD47 Alexa-680抗体(mlAP301)、MIAP410、CV1-G4、抗CD47抗体(FortySeven)、抗CD47抗体(ALX)、抗CD47抗体(Surface Oncology)、抗CD47抗体(Celgene)、抗CD47抗体(Innovent)、抗CD47抗体(Trillium)、及び/またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号130(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、配列番号131(GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及びCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)からなる群から選択され、抗CD47抗体は、Hu5F9-G4、5F9抗CD47抗体(FortySeven)、CC-90002、INBRX-103、SRF231、TTI-622、NI-1701、NI-1801、OSE-172、AUR-104、AUR-105、抗CD47 MAb(Biocad)、抗CD47抗体(Arch Oncology)、CD47-SIRPαモジュレーター、B6H12、B6H12F(ab’)2、抗CD47抗体(BosterBio)、BIRC126、OAAB21755、Ab400、抗マウスCD47 Alexa-680抗体(mlAP301)、MIAP410、CV1-G4、抗CD47抗体(FortySeven)、抗CD47抗体(ALX)、抗CD47抗体(Surface Oncology)、抗CD47抗体(Celgene)、抗CD47抗体(Innovent)、抗CD47抗体(Trillium)、及び/またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体からなる群から選択される。
【0257】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質は、コンセンサス配列GCXXXRGDXXXXXCKQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号34)またはGCXXXRGDXXXXXCSQDSDCXAGCVCXPNGFCG(配列番号35)と少なくとも90%の同一の配列を含み、前記インテグリン結合ポリペプチドがFcドメインに結合されており、抗SIRPα抗体は、TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)、TTI-622(SIRPa-IgG4 Fc)、FSI-189(FortySeven)、抗SIRPα抗体(FortySewven)、抗SIRPα抗体(ALX)、抗SIRPα抗体(Surface Oncology)、抗SIRPα抗体(Celgene)、抗SIRPα抗体(Innovent)、及び抗SIRPα抗体(Trillium)またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体からなる群から選択される。
【0258】
いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合タンパク質は、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含み、抗SIRPα抗体は、TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)、TTI-622(SIRPa-IgG4 Fc)、FSI-189(FortySeven)、抗SIRPα抗体(FortySewven)、抗SIRPα抗体(ALX)、抗SIRPα抗体(Surface Oncology)、抗SIRPα抗体(Celgene)、抗SIRPα抗体(Innovent)、及び抗SIRPα抗体(Trillium)またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一の配列を含み、抗SIRPα抗体は、TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)、TTI-622(SIRPa-IgG4 Fc)、FSI-189(FortySeven)、抗SIRPα抗体(FortySewven)、抗SIRPα抗体(ALX)、抗SIRPα抗体(Surface Oncology)、抗SIRPα抗体(Celgene)、抗SIRPα抗体(Innovent)、及び抗SIRPα抗体(Trillium)またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される配列を含み抗SIRPα抗体は、TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)、TTI-622(SIRPa-IgG4 Fc)、FSI-189(FortySeven)、抗SIRPα抗体(FortySeven)、抗SIRPα抗体(ALX)、抗SIRPα抗体(Surface Oncology)、抗SIRPα抗体(Celgene)、抗SIRPα抗体(Innovent)、及び抗SIRPα抗体(Trillium)またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号59~配列番号91からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチドは、配列番号130(GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、配列番号131(GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号132)、GCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGS(配列番号133)、GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号134)、及びCPRPRGDNPPLTCKQDSDCLAGCVCGPNGFCGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号135)からなる群から選択され、抗SIRPα抗体は、TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)、TTI-622(SIRPa-IgG4 Fc)、FSI-189(FortySeven)、抗SIRPα抗体(FortySewven)、抗SIRPα抗体(ALX)、抗SIRPα抗体(Surface Oncology)、抗SIRPα抗体(Celgene)、抗SIRPα抗体(Innovent)、及び抗SIRPα抗体(Trillium)またはこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体からなる群から選択される。
【0259】
本発明の薬学的組成物は、併用療法として(すなわち、他の薬剤と組み合わせて)投与することができる。薬剤としては、これらに限定されるものではないが、インビトロで合成により調製された化学組成物、抗体、抗原結合領域、ならびにそれらの組み合わせ及び結合体が挙げられる。特定の実施形態において、薬剤は、アゴニスト、アンタゴニスト、アロステリックモジュレーター、または毒素として作用することができる。
【0260】
いくつかの実施形態において、本発明は、抗CD47抗体を、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/またはアジュバントとともに含む別個の医薬組成物と、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/またはアジュバントとともに含む別の医薬組成物とを提供する。特定の実施形態において、本発明はさらに、免疫チェックポイント阻害剤(またはVEGFのアンタゴニスト)を、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/またはアジュバントとともに含む別個の医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、医薬組成物は、抗CD47抗体及びインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の両方を、医薬的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/またはアジュバントとともに含む。
【0261】
いくつかの実施形態において、本発明は、抗CD47抗体を、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/またはアジュバントとともに含む医薬組成物と、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/またはアジュバントとともに含む別の医薬組成物とを提供する。特定の実施形態において、薬剤のそれぞれ、例えば、抗CD47抗体またはインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、別個の組成物として製剤化することができる。いくつかの実施形態において、許容可能な製剤材料は、好ましくは、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である。特定の実施形態において、製剤材料(複数可)は、腫瘍内、皮下(s.c.)及び/または静脈内(I.V.)投与用である。特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧、粘度、透明度、色、等張度、匂い、無菌性、安定性、溶解または放出速度、吸着または浸透を改変、維持または保存するための製剤材料を含むことができる。特定の実施形態において、適当な製剤材料としては、これらに限定されるものではないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンなど);抗微生物剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris-HCl、クエン酸塩、リン酸塩または他の有機酸など);増量剤(マンニトールまたはグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;及びその他の炭水化物(ブドウ糖、マンノースまたはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど);着色剤、香料及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩を形成する対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);懸濁化剤;界面活性剤または湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80などのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなど);安定性向上剤(スクロースまたはソルビトールなど);張度増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウムまたはカリウム、マンニトールソルビトールなど);送達溶媒;希釈剤;賦形剤及び/または医薬アジュバントが挙げられる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company(1995))。特定の実施形態では、製剤は、PBS;20mM NaOAC(pH5.2)、50mM NaCl;及び/または10mM NAOAC(pH5.2)、9%スクロースを含む。特定の実施形態において、最適な医薬組成物は、例えば、意図される投与経路、送達形式、及び所望の投与量に応じて当業者によって決定される。例えば、上記のRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。特定の実施形態において、そのような組成物は、抗CD47抗体またはノッティン-Fcの物理的状態、安定性、インビボ放出速度、及びインビボクリアランス速度に影響を及ぼし得る。
【0262】
いくつかの実施形態において、医薬組成物中の主要な溶媒または担体は、本質的に水性または非水性のいずれかであってよい。例えば、特定の実施形態において、適当な溶媒または担体は、注射用水、生理食塩水または人工脳脊髄液とすることができ、非経口投与用の組成物において一般的な他の材料が添加されてもよい。特定の実施形態において、生理食塩水は、等張性リン酸緩衝生理食塩水を含む。特定の実施形態において、中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンと混合された生理食塩水は、さらなる例示的な溶媒である。特定の実施形態において、医薬組成物は、約pH7.0~8.5のTris緩衝液、または約pH4.0~5.5の酢酸緩衝液を含み、ソルビトールまたはその適当な代替物をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体またはインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を含む組成物は、所望の純度を有する選択された組成物を、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態の任意の配合剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences、前出)と混合することによって保存用に調製することができる。
【0263】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、非経口送達用に選択することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、吸入または例えば経口などの消化管を介した送達用に選択することができる。かかる薬学的に許容される組成物の調製は、当業者の技能の範囲内である。
【0264】
いくつかの実施形態において、製剤成分は、投与部位に許容される濃度で存在する。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、組成物を生理学的pHまたはわずかに低いpH、一般的には約5~約8のpH範囲内に維持するために用いられる。
【0265】
特定の実施形態において、非経口投与が想定される場合、治療用組成物は、薬学的に許容される溶媒中に所望の抗CD47抗体またはノッティン-Fcを含む、パイロジェンフリーの非経口的に許容される水溶液の形態とすることができる。特定の実施形態において、非経口注射用の溶媒は、抗CD47抗体またはインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体が無菌等張溶液として配合され、適切に保存されている無菌蒸留水である。いくつかの実施形態において、調製は、製品の制御された、または持続的放出を可能とする、注射可能なミクロスフェア、生体浸食性粒子、ポリマー化合物(例えば、ポリ乳酸またはポリグリコール酸など)、ビーズまたはリポソームなどの物質と、所望の分子との配合を含むことができ、その後、これをデポ注射により投与することができる。いくつかの実施形態において、ヒアルロン酸も使用することができ、循環中の持続時間の延長を促進する効果を与えることができる。特定の実施形態において、埋め込み可能な薬物送達装置を用いて所望の分子を導入することができる。
【0266】
インビボ投与に用いられる医薬組成物は一般的に無菌のものである。特定の実施形態では、これは、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に実現可能である。組成物が凍結乾燥されるいくつかの実施形態において、この方法を用いた滅菌は、凍結乾燥及び再溶解の前または後に行うことができる。特定の実施形態において、非経口投与用の組成物は、凍結乾燥形態または溶液中で保存することができる。いくつかの実施形態において、非経口組成物は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈内注射用溶液のバッグまたはバイアルに一般的に入れられる。
【0267】
いくつかの実施形態において、医薬組成物が製剤化された後、これを、溶液、懸濁液、ゲル、エマルション、固体として、または脱水もしくは凍結乾燥された粉末として、滅菌バイアル中で保存することができる。いくつかの実施形態において、かかる製剤は、即時使用形態、または投与前に再溶解される形態(例えば、凍結乾燥された)のいずれかで保存することができる。
【0268】
いくつかの実施形態において、単回用量投与単位を与えるためのキットが提供される。特定の実施形態において、キットは、乾燥タンパク質を有する第1の容器と、水性製剤を有する第2の容器の両方を含むことができる。いくつかの実施形態において、シングルチャンバー型及びマルチチャンバー型のプレフィルドシリンジ(例えば、液体シリンジ及びリオシリンジ)を含むキットが含まれる。
【0269】
いくつかの実施形態において、治療目的で使用される、抗CD47抗体を含む医薬組成物及び/またはノッティン-Fcを含む1つ以上の医薬組成物の有効量は、例えば、治療の状況及び目的によって決まる。したがって、当業者には、特定の実施形態に基づく治療用の適切な投与量レベルは、送達される分子、、抗CD47抗体、インテグリン結合ポリペプチド-Fcが用いられる適応症、投与経路、ならびに患者のサイズ(体重、体表面または臓器のサイズ)及び/または状態(年齢及び一般的な健康状態)に応じて異なることが理解されよう。いくつかの実施形態において、臨床医は、最適な治療効果を得るために、投与量を力価測定し、投与経路を変更することができる。特定の実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の一般的な投与量は、上記に述べた因子に応じて、それぞれ、約0.1μg/kg~約100mg/kg以上の範囲とすることができる。特定の実施形態において、投与量は、0.1μg/kg~約100mg/kg、または1μg/kg~約100mg/kg、または5μg/kg~約100mg/kgの範囲とすることができる。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与量は、約5mg/kg~約50mg/kgの範囲とすることができる。いくつかの実施形態において、投与量は、約10mg/kg~約40mg/kg、約10mg/kg~約30mg/kg、約10mg/kg~約25mg/kg、約5mg/kg~約20mg/kg、約5mg/kg~約15mg/kg、または約5mg/kg~約10mg/kgの範囲とすることができる。いくつかの実施形態において、投与量は約10mg/kgである。
【0270】
いくつかの実施形態において、投与頻度は、使用される製剤中での抗CD47抗体またはインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体、及び場合により免疫チェックポイント阻害剤(またはVEGFのアンタゴニスト)の薬物動態パラメータを考慮したものである。いくつかの実施形態において、臨床医は、所望の効果が得られる投与量に達するまで組成物を投与する。したがって、いくつかの実施形態において、組成物は、単回用量として、または時間をかけて複数用量(同量の所望の分子を含む場合も含まない場合もある)として、または埋め込み装置またはカテーテルによる連続注入として投与することができる。当業者は適切な投与量のさらなる改良を行うことができるが、これは当業者によって日常的に実施される業務の範囲内にある。いくつかの実施形態において、適切な投与量は、適切な用量反応データを使用して決定することができる。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の前、後、及び/または同時に投与される。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の1日、2日、3日、4日、5日、6日、またはそれ以上の期間の後に投与される。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の2日後に投与される。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の3日後に投与される。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の投与の4日後に投与される。
【0271】
いくつかの実施形態において、医薬組成物の投与経路は、既知の方法、例えば、経口、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、皮下、眼内、動脈内、門脈内、または病巣内注射による経路;徐放システムによる、または埋め込み装置によるものである。いくつかの実施形態において、組成物は、ボーラス注射によって、または注入によって連続的に、または埋め込み装置によって投与することができる。特定の実施形態において、併用療法の個々の要素を異なる経路によって投与することができる。
【0272】
いくつかの実施形態において、組成物は、膜、スポンジ、または所望の分子を吸収またはカプセル化させた別の適切な材料を埋め込むことによって局所的に投与することができる。埋め込み装置が使用されるいくつかの実施形態において、装置は、任意の適切な組織または器官内に埋め込むことができ、所望の分子の送達は、拡散、時限放出ボーラス、または連続投与によって行われる。いくつかの実施形態において、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体、及び場合により免疫チェックポイント阻害剤(またはVEGFのアンタゴニスト)を含む医薬組成物は、エクスビボの形で使用することが望ましい場合もある。その場合、患者から取り出された細胞、組織及び/または臓器を、抗CD47抗体及び/またはインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を含む医薬組成物に曝露し、その後、これらの細胞、組織及び/または臓器を患者に体内に再び移植する。
【0273】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体またはインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、ポリペプチドを発現及び分泌するように本明細書に記載される方法を用いて遺伝子操作された特定の細胞を移植することによって送達することができる。特定の実施形態において、かかる細胞は、動物またはヒトの細胞であってよく、自家、他家、または異種であってよい。いくつかの実施形態において、細胞は不死化することができる。いくつかの実施形態において、免疫応答の可能性を減らすため、周囲組織の浸潤を防ぐように細胞をカプセル化することができる。いくつかの実施形態において、カプセル化材料は、タンパク質産物(複数可)の放出は可能とするが、患者の免疫系または周囲組織からの他の有害な因子による細胞の破壊を防ぐ、通常は生体適合性の半透性ポリマー封入材料または膜である。
VII.治療法及び治療効果の指標
本明細書に記載されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体及び/またはそれらを発現する核酸は、異常なアポトーシスまたは分化プロセスに関連する疾患(例えば、がんなどの細胞増殖疾患または細胞分化疾患)を治療するうえで有用である。さらに、本明細書に記載される抗CD47抗体またはインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、異常なアポトーシスまたは分化プロセスに関連する疾患(例えば、がんなどの細胞増殖疾患または細胞分化疾患)を治療するうえで有用である。本発明の方法による治療に適しているがんの非限定的な例を以下に述べる。
【0274】
細胞増殖及び/または分化疾患の例としては、がん(例えば、がん腫、肉腫、転移性疾患または造血性腫瘍性疾患、例えば、白血病)が挙げられる。転移性腫瘍は、これらに限定されるものではないが、前立腺、結腸、肺、乳房、及び肝臓の腫瘍を含む多くの原発腫瘍タイプから発生し得る。したがって、例えば抗CD47抗体及びノッティン-Fcを含む、本明細書で使用される組成物は、がんを有する患者に投与することができる。
【0275】
本明細書で使用する場合、「がん」(または「がん性」)、「過剰増殖性」、及び「腫瘍性」という用語を使用して、自律的増殖能力を有する細胞(すなわち、急速に増殖する細胞増殖を特徴とする異常な状態または条件)を指すことがある。
【0276】
過剰増殖性及び腫瘍性の病態は、病的(すなわち、病態を特徴付けるまたは構成する)として分類され得るか、または非病的(すなわち、正常から逸脱しているが病態とは関連がない)として分類され得る。これらの用語は、組織病理学的タイプまたは浸潤の段階に関係なく、すべてのタイプのがん性増殖または発がんプロセス、転移性組織または悪性形質転換細胞、組織、または臓器を含むことを意味する。「病的過剰増殖性」細胞は、悪性腫瘍の成長を特徴とする病態で生じる。非病的過剰増殖細胞の例としては、創傷修復に関連する細胞の増殖が含まれる。
【0277】
増殖性障害のさらなる例としては、造血性腫瘍性疾患が含まれる。本明細書で使用する場合、「造血腫瘍性疾患」という用語は、例えば、骨髄、リンパ球または赤芽球系統、またはそれらの前駆細胞から生じる造血系由来の過形成/腫瘍性細胞が関与する疾患を含む。いくつかの実施形態において、疾患は、低分化型急性白血病(例えば、赤芽球性白血病及び急性巨核芽球性白血病)から生じる。さらなる例示的な骨髄性障害としては、これらに限定されるものではないが、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性白血病(CML)が挙げられ(Vaickus,L.(1991)Crit.Rev.in Oncol./Hemotol.11:267-97に概説される)、リンパ性悪性腫瘍としては、これらに限定されるものではないが、B系統ALL及びT系統ALLを含む急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、有毛細胞白血病(HLL)、及びウォルデンストロームマクログロブリン血症(WM)が挙げられる。悪性リンパ腫のさらなる形態としては、これらに限定されるものではないが、非ホジキンリンパ腫及びその変化型、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病及びリードスターンバーグ病が挙げられる。
【0278】
「がん」という用語は、当該技術分野で認識されており、呼吸器系がん、消化器系がん、泌尿生殖器系がん、精巣がん、乳がん、前立腺がん、内分泌系がん、及び黒色腫を含む上皮または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。本明細書に記載される変異体併用療法は、腎癌または黒色腫を含むあらゆる種類のがん、または任意のウイルス性疾患を有するか、有することが疑われるか、または発症するリスクが高いと考えられる患者を治療するために使用することができる。例示的ながんとしては、子宮頸部、肺、前立腺、乳房、頭頸部、結腸及び卵巣の組織から発生するがんが挙げられる。この用語には、がん性及び肉腫性組織で構成される悪性腫瘍を含むがん肉腫も含まれる。「腺がん」は、腺組織に由来するがん、または腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成するがんを指す。
【0279】
本明細書で使用される「がん」は、悪性増殖または腫瘍(例えば、無秩序な細胞増殖)を引き起こす異常で制御されていない細胞分裂を特徴とするあらゆる腫瘍性疾患(侵襲性、非侵襲性または転移性によらず)を広く指す。その非限定的な例は本明細書に記載されている。この用語には、無秩序な細胞増殖を一般的に特徴とする哺乳動物の任意の生理学的状態が含まれる。がんの例は、実施例に例示されており、本明細書内にも記載されている。「がん」または「新生物」という用語は、肺、乳房、甲状腺、リンパ腺及びリンパ組織、消化器系臓器、及び泌尿生殖器を冒すものを含む様々な臓器系の悪性腫瘍、ならびに多くの結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌及び/または精巣腫瘍、肺の非小細胞性がん、小腸のがん及び食道のがんなどの悪性腫瘍を含むものと一般的に考えられる腺がんを指して用いられる。
【0280】
本発明のインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を使用して治療することができるがんの非限定的な例としては、これらに限定されるものではないが、がん、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられる。かかる癌のより具体的な例としては、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)(消化管癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)または腎臓癌(renal cancer)、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、及び様々な種類の頭頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;多発性骨髄腫及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)が挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明による治療に適した他のがんとして、これらに限定されるものではないが、がん、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病、またはリンパ系悪性腫瘍が挙げられる。かかるがんのより具体的な例としては、直腸結腸癌、膀胱癌、卵巣癌、黒色腫、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)(消化管癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)または腎臓癌(renal cancer)、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、及び様々な種類の頭頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(脳腫瘍と関連するものなど)、及びメグス症候群と関連する異常な血管増殖が挙げられる。好ましくは、がんは、結腸直腸癌、乳癌、直腸癌、非小細胞性肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。例示的な実施形態では、がんは、早期のまたは進行した(転移性を含む)膀胱癌、卵巣癌または黒色腫である。別の実施形態において、がんは、結腸直腸がんである。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、血管新生腫瘍の治療に有用である。
【0281】
抗CD47抗体及びインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の量は、腫瘍の成長及びサイズを減少させるのに充分な量であり、または治療上有効な量は、選択された特定の化合物または組成物だけでなく、投与経路、治療される状態の性質、ならびに患者の年齢及び状態によって変わり、最終的には患者の医師または薬剤師の裁量に委ねられであろうことは、当業者によって理解されよう。本発明の方法で使用される化合物が投与される時間の長さは、個人ごとに異なる。
【0282】
本明細書の実施例で用いられる結腸癌モデル(MC38マウス結腸癌)は、固形腫瘍の一般化されたモデルであることは当業者によって理解されよう。つまり、このモデルにおける治療の有効性は、他の非黒色腫固形腫瘍における治療の有効性も予測する。例えば、Baird et al.(J Immunology 2013;190:469-78;Epub Dec 7,2012)に記載されるように、B16F10腫瘍に対する抗腫瘍免疫の媒介における獲得免疫応答を誘導する寄生虫株であるcpsの有効性は、肺癌及び卵巣癌のモデルを含む他の固形腫瘍に一般化できることが判明した。
【0283】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体と併用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、がんの治療に使用される。
【0284】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体と併用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、黒色腫、白血病、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、腎癌、及び脳腫瘍の治療に使用される。
【0285】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体と併用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、腫瘍細胞の成長及び/または増殖を阻害する。
【0286】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体と併用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、腫瘍サイズを減少させる。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体と併用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、原発性腫瘍の転移を阻害する。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体と併用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、腫瘍サイズを減少させる。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体と併用されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体は、原発性腫瘍の転移を阻害する。本明細書において治療と言う場合、記載されたがん及び症状の予防だけでなく、治療にまで及ぶことは当業者には理解されよう。
【0287】
本明細書における「がん治療」とは、がんを予防または治療するか、またはがんの1つ以上の症状を改善する任意の方法を指す。一般的に、かかる治療は、インテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体の単独での投与、または化学療法もしくは放射線治療もしくは他の生物学的製剤と併用した投与、及びその活性を増強するための投与を含む。いくつかの実施形態において、がん治療は、生存率の増加を含むか、またはそれによって測定することができる。いくつかの実施形態において、がん治療は腫瘍体積の減少をもたらす。
【0288】
有効性の指標には、腫瘍サイズの縮小、腫瘍数の減少、転移数の減少、及び病状の減少(または余命の増加)も含まれる。いくつかの実施形態において、腫瘍サイズの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%の減少は、治療効果を示す。いくつかの実施形態において、腫瘍数の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%の減少は、治療効果を示す。いくつかの実施形態において、腫瘍負荷の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%の減少は、治療効果を示す。いくつかの実施形態において、転移数の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%の減少は、治療効果を示す。
VIII.キット
キットは、本明細書に開示されるインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体、及び場合により免疫刺激剤または免疫チェックポイント阻害剤(またはVEGFのアンタゴニスト)、及び使用説明書を含むことができる。さらに、キットは、本明細書に開示される抗CD47抗体及びインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体、ならびに使用説明書を含むことができる。キットは、適切な容器内に、抗CD47抗体及びインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体、1つ以上のコントロール、ならびに当該技術分野では周知の各種の緩衝剤、試薬、酵素及び他の標準成分を含むことができる。いくつかの実施形態は、同じバイアル内に抗CD47抗体とノッティン-Fcが入れられたキットを含む。特定の実施形態において、キットは、別々のバイアルに入れられた抗CD47抗体及びノッティン-Fcを含む。
【0289】
容器は、少なくとも1つのバイアル、ウェル、試験管、フラスコ、ボトル、注射器、または他の容器手段を含み、その中に抗CD47抗体及びインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体を、場合によっては適当に等分して入れることができる。追加の成分が提供される場合、キットは、この成分を入れることができる追加の容器を含んでもよい。キットは、販売用に緊密に閉じ込められた抗CD47抗体及びインテグリン結合ポリペプチド-Fc融合体、ならびに他の任意の試薬容器の手段を含んでもよい。かかる容器は、その中に所望のバイアルが保持される射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器を含み得る。容器及び/またはキットは、使用説明書及び/または警告が記されたラベルを含んでもよい。
【0290】
本開示を以下の実施例によりさらに説明するが、実施例はさらなる限定として解釈されるべきではない。本出願の全体にわたって引用されるすべての図面及びすべての参照文献、Genbank配列、特許及び公開された特許出願を、参照により本明細書に明示的に援用するものである。詳細には、国際特許公開第WO2013/177187号、米国特許第8,536,301号、及び米国特許公開第2014/0073518号の開示内容の全体をあらゆる目的で参照により本明細書に明示的に援用する。
【0291】
〔実施例〕
以下は、本明細書に記載の方法を実施するための特定の実施形態の例である。これらの例はあくまで例示の目的で示されるものにすぎず、本発明の範囲をいかなる意味においても限定しようとするものではない。用いられる数値(例えば、量、温度など)に関して精度を確実とするべく努力に努めてはいるが、ある程度の実験的誤差及び偏差は無論のこと許容されなければならない。本発明の実施では、特に断らない限りは、当該技術分野の技術の範囲内で、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、及び薬理学の従来の方法を用いている。かかる技術は文献に充分な説明がなされている(例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Sambrook,et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照されたい)。
【0292】
以下に一般的に述べられる発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるが、以下の実施例は、あくまで本発明の特定の態様及び実施形態を例示する目的で含まれるものであって、本発明を限定することを意図するものではない。
実施例1:がん細胞におけるインテグリン及びCD47の発現
MC38(マウス結腸腺癌細胞株)、4T1-GFP(ステージIVのヒト乳癌を模倣したマウス乳腺腫瘍細胞株)、E0771(マウス髄質乳房腺癌)、及びB16F10(マウス黒色腫細胞株)細胞をATCCから取得し、接着性組織培養皿中で10%ウシ胎児血清(FBS)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(PS)抗生物質を含む培地と30~80%コンフルエンスに維持した。細胞表面上のインテグリン及びCD47の発現レベルを評価するため、トリプシンベースの受容体切断を防止するために細胞解離バッファー(CDB)を使用して70%コンフルエンスで細胞を回収し、最適なインテグリンのコンフォメーションを維持するためにさらなる二価カチオンを添加したPBSベースのバッファーであるインテグリン結合バッファー(IBB)でクエンチした。その後の染色及び洗浄ステップはすべて、適切なインテグリンのコンフォメーションを維持するためにIBB中で、また、受容体の内部移行またはターンオーバーを低減するために氷上で行った。各細胞タイプの40,000個の細胞を、マウスインテグリンAV、A5、B3、B1 及びCD47に対する抗体とともに4℃のロッキングプラットフォーム上で1時間インキュベートした。次に細胞を洗浄し、フィコエリトリン(PE)-標識抗IgG二次抗体と4℃のロッカー上で30分間、暗所でインキュベートした。さらに洗浄した後、細胞をフローサイトメトリーで分析し、蛍光を定量した。蛍光値は、二次抗体のみのコントロールの蛍光値を差し引くことによって補正し、平均の蛍光として表した。すべての試料は3重で試験した。
【0293】
図1は、様々ながん細胞株におけるA
V、A
5、B
3、及びB
1インテグリンの発現を示す。
図2は、様々ながん細胞株におけるCD47の発現を示す。
実施例2: インテグリン標的化ノッティンはがん細胞に結合する
がん細胞上のインテグリンへのインテグリン標的化ノッティンの結合をアッセイした。2.5F-Fcをインテグリン標的化ノッティンの例として使用した。インテグリン受容体の切断を防止するために細胞をCDBを用いて70%コンフルエンスで回収し、その後、クエンチして冷IBBで維持した。次に40,000個の細胞を1pM~250nMの2.5F-Fcと4℃のロッカー上で2時間インキュベートした。洗浄後、細胞を抗IgG-PE二次抗体を用いて4℃のロッカー上で30分間、暗所で染色した。細胞を再び洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。蛍光を測定し、二次抗体のみのコントロールの蛍光値を差し引いた後、各サンプルの平均蛍光値を定量した。二重で試験したMC38細胞を除き、すべての試料は3重で試験した。
【0294】
図3Aは、MC38、B16F10及びE0771細胞に対する2.5F-Fcの結合の用量反応曲線を示す。結合親和性(K
d)を計算した。2.5F-Fcは以前に報告されている約1nMの値とほぼ同じKD(1.3nM)でMC38細胞に結合するが、2.5F-Fcはより高い親和性(それぞれ、0.7nM及び0.4nMのK
d)でB16F10及びE0771細胞に結合する。
【0295】
図3Bは、飽和濃度である100nMでのMC38、B16F10、E0771及び4T1-GFP細胞への2.5F-Fcの結合を示す。2.5-Fcは、MC38、B16F10、及びE0771細胞に対しては同様の結合を示すが、4T1-GFP細胞に対する結合はわずかに高くなっている。
実施例3:インテグリンを標的とするノッティンとCD47阻害剤の併用はがん細胞の食作用を誘導する
マクロファージの誘導
以下の手順に従ってC57BL/6マウスの骨髄からマクロファージを誘導した。すなわち、安楽死させた成体マウスの大腿骨、脛骨、及び寛骨を採取し、10%FBS及び1%PSを含む温めたRPMI細胞培地中に粉砕した。次いで骨髄を解離させ、70μmフィルターで濾した。遠心分離後、細胞をACK溶解緩衝液に再懸濁し、赤血球を除去した。残りの非赤血球をペレット化し、再懸濁し、再濾過した後、10%FBS、1%PS、及び単球からマクロファージへの分化を誘導するサイトカインである10ng/mLのM-CSFを含むRPMI plus培地中、非接着性細胞培養皿に播種した。7日間のインキュベーションの後、解離した骨髄中に存在する単球の大部分は、マクロファージ特異的マーカーを発現し、食作用を行うことができる接着性の強いマクロファージに分化した。非接着性の細胞タイプをすべて除去し、接着性マクロファージをCDB及び機械的スクレーパーを用いて回収した。マクロファージをカウントし、食作用アッセイを行うために完全RPMI中、氷上で維持した。
タンパク質とがん細胞とのプレインキュベーション
がん細胞をCDBで回収し、2%FBSを含むIBB中でクエンチし、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)中、37℃で20分間染色した。染色後、細胞を2%FBSを含むIBBで洗浄し、カウントした。100,000個の細胞を1μgの2.5F-Fc、2.5F(Fcドメインに融合させていない2.5F)、2.5Fc-dead(FcのFc受容体への結合を妨げる点変異がFcドメインに存在する2.5F-Fcの変異体)、RDG-Fc(インテグリン結合ループがスクランブルされ、インテグリンに結合しないノッティン変異体と融合させたFc)、抗CD47抗体(MIAP410、InVivoMab番号BE0283)、インターロイキン2(IL- 2)、またはこれらの組み合わせと、96ウェルプレートのウェル中、37℃で30分間インキュベートして、細胞の生存率を維持しながら、各抗体とがん細胞との免疫複合体を形成させた。
食作用アッセイ
プレインキュベーションに続いて、50,000個のマクロファージをがん細胞に加え、37℃で1時間インキュベートして、食作用を起こさせた。次に、細胞をペレット化し、2%FBSを含む冷IBBで洗浄した。マクロファージ特異的蛍光抗体である抗F4/80-AF647を加え、氷上で20分間、細胞とインキュベートした。次に、細胞をペレット化し、フローサイトメトリーによる分析の直前にDAPI溶液に再懸濁した。がん細胞を貪食したマクロファージは、Alexa Fluor647陽性かつAlexa Fluor488陽性である細胞をゲーティングすることによって定量し、各処置に応答したCFSE+マクロファージの割合(%)として計算した。すべての試料は3重で試験した。
【0296】
食作用アッセイに先立って、MC38細胞を、抗CD47抗体、2.5F-Fc、2.5F、IL-2、2.5Fc-dead、RDG-Fc、またはそれらの組み合わせ、及びPBSコントロールとプレインキュベートした。
図4Aは、抗CD47または2.5F-Fc単独では、がん細胞の食作用をベースライン(約3~5%)の約2倍(最大12%)増加させるのに対して、抗CD47と2.5F-Fcを併用した場合にはがん細胞の食作用をベースラインの5~6倍(約28~30%)増加させることを示している。これは、2.5F-Fcが、抗CD47抗体によって媒介されるがん細胞のインビトロ食作用を増強すること、また、その逆を示している。このモデルでは、IL-2ペプチドも2.5Fペプチドも食作用に顕著な影響を示さなかった。
【0297】
図4Bは、がん細胞の食作用に対する抗CD47抗体と2.5F-Fcの相乗効果を示している。この効果は、2.5F-FcのFcドメイン及びインテグリン結合ドメインに依存するものである。
図4C及び4Dは、フローサイトメトリーで分析したマクロファージの例示的なプロファイルを示す。
図4Bは、食作用アッセイの前にMC38がん細胞をPBS中でプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合が低かった(2.94%)ことを示している。
図4Cは、食作用アッセイの前にMC38がん細胞を2.5F-Fc及び抗CD47抗体とプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合が増加した(28.4%)ことを示している。
【0298】
抗CD47抗体と2.5-Fcとの併用の効果を、他のがん細胞(B16F10、E0771、4T1、及びヒト神経膠芽腫細胞株であるU87MG)及び非がん細胞(293T)で試験した。
図5A及び5Bに示されるように、B16F10黒色腫細胞及びE0771乳癌細胞と抗CD47抗体及び2.5-Fcとのプレインキュベーションによって、抗CD47抗体または2.5-Fc処置単独と比較して、マクロファージによる食作用の顕著な増加が誘導された。4T1乳癌細胞に関して、2.5F-Fcは4T1の食作用を増加させたが、抗CD47抗体の効果はわずかであった(
図5C)。
【0299】
U87MGヒト神経膠芽腫細胞は、CD47遮断または2.5F-Fcに中度の応答を示し、抗CD47抗体と2.5F-Fcの併用はいずれかの薬剤単独と比較して食作用のわずかな増加をもたらした(
図5D)。低レベルのインテグリンを発現するがCD47を過剰発現する非がん性のヒト腎臓細胞株である293T細胞の場合、抗CD47抗体とのプレインキュベーションが食作用の劇的な増加をもたらしたのに対して、2.5F-Fc単独とのプレインキュベーションでは、食作用はわずかに増加しただけであった。さらに、2.5F-Fcを加えると、抗CD47抗体処置によって誘導される食作用は減少した(
図5E)。要約すると、ここでのデータは、2.5F-Fcと抗CD47抗体の併用の効果は細胞株に依存することを示唆している。
実施例4:インテグリン標的化ノッティンとCD47阻害剤の併用治療はインビボでの腫瘍負荷を軽減する
MC38細胞により誘導される腫瘍負荷
MC38細胞を60%コンフルエンスで回収し、FBSを含まないRPMI培地に再懸濁した。次に、100万個の細胞を各C57BL6マウスの脇腹に皮下移植し、少なくとも15mm
2のサイズの腫瘍にまで増殖させた。MC38細胞の接種後9日目にマウスを、同様の初期腫瘍サイズの分布を有する腫瘍を有する各群(n=10)に群分けした。各マウスに500μgの2.5F-Fcタンパク質を腹腔内(IP)に、400μgの抗CD47抗体MIAP410を腫瘍内(IT)に、及び500μlの皮下PBSをサポート用に投与した。模擬治療を行ったマウスには、2.5F-Fc及び抗CD47抗体の代わりに、500μlのPBSを腹腔内に、及び400μlのPBSを腫瘍内に投与した。処置は1日置きに3回、1週間にわたって(すなわち、9日目、11日目及び13日目)投与し、MC38細胞をマウスに移植した後、18日目にすべてのマウスを安楽死させた。その後、腫瘍を摘出し、それらのサイズと重量を測定した。
【0300】
図6Aは、MC38がん細胞をマウスに接種した後、18日目に摘出した腫瘍の形態を示す。マウスを抗CD47抗体、2.5F-Fc、抗CD47抗体と2.5F-Fcの併用、及びPBSコントロールで処置した。併用療法を投与したマウスの腫瘍は、目に見えて小さく、血管新生が少なく、潰瘍を起こしにくいようであった。処置中の腫瘍の進行も測定した。初期の腫瘍サイズは異なる処置群間で類似しているが(
図6B)、併用処置を投与したマウスは、サイズ及び重量においてPBS、抗CD47単独、または2.5F-Fc単独の群よりも小さい最小の腫瘍負荷を示した(
図6C~6F)。2.5F-Fc単独による処置でも、PBSまたは抗CD47抗体単独と比較して、18日目の腫瘍サイズが減少した。全体として、併用療法を投与したマウスは、腫瘍量のさらなる減少及び全身状態の改善を示した。
B16F10細胞により誘導される腫瘍負荷
B16F10黒色腫細胞を60%コンフルエンスで回収し、FBSを含まないRPMI培地に再懸濁した。次に、100万個の細胞を各C57BL6マウスに皮下移植し、少なくとも15mm
2のサイズ(面積で測定して)の腫瘍にまで増殖させた。がん細胞の接種後8日目にマウスを、サイズ分布が類似した腫瘍を有する各群(n=9)に群分けした。その後、1日置きに1週間にわたって(9日目、11日目、13日目)、合計3回の処置を投与した。最初の処置では、各マウスに500μgの2.5F-Fcタンパク質を静脈内(IV)投与し、400μgの抗CD47抗体MIAP410を腫瘍内(IT)投与した。次の2回の処置では、各マウスに500μgの 2.5F-Fcタンパク質を腹腔内(IP)投与し、400μgの抗CD47抗体MIAP410を腫瘍内(IT)投与した。すべてのマウスに緩和ケアとして500μlのPBSを投与した。がん細胞の接種後19日目にマウスを安楽死させ、次に腫瘍を摘出し、面積及び重量を測定した後、10%ホルマリン溶液で固定した。マウスはすべて同じ日に安楽死させたが、マウスが3つの安楽死基準(1000mm
3を超える腫瘍体積、10%以上の体重減少、及び腫瘍面積の30%以上の潰瘍)のいずれかに達した時点に基づいて生存曲線を作成した。この試験は動物施設の獣医師の支援により実施し、動物の苦痛を最小限に抑えるために必要に応じて追加の緩和ケアを施した。
【0301】
図7Aに示されるように、異なる処置群間の初期の腫瘍サイズは、15~40mm
2の範囲であり、約25mm
2の同様の平均サイズを有していた。処置期間中に腫瘍の面積及び体積([長さ×幅×幅]/2として定義され、幅はより短い方の寸法である)を測定することにより、
図7B~7Eは、すべての処置群で、PBSによる模擬治療と比較して腫瘍負荷が軽減されたことを示している。さらに、抗CD47抗体と2.5F-Fcの併用処置によって最も効果的な腫瘍抑制がもたらされ、いずれかの薬剤単独と比較して腫瘍サイズの縮小が示された。上記と一致して、併用療法で処置したマウスの生存率は、いずれかの薬剤単独と比較して有意に改善された(
図7F)。
実施例5:実施例1~4の詳細な材料及び方法
材料及び方法
インテグリン及びCD47の発現
最初にATCCから取得し、本発明者らの研究室で継代した細胞株を、接着性組織培養皿で30~80%のコンフルエンスに維持し、10%ウシ胎児血清(FBS)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(PS)抗生物質を含む培地を供給した。トリプシンベースの受容体切断を防止するために細胞解離バッファー(CDB)を使用して70%コンフルエンスで細胞を回収し、最適なインテグリンのコンフォメーションを維持するためにさらなる二価カチオンを添加したPBSベースのバッファーであるインテグリン結合バッファー(IBB)でクエンチした。すべての染色及び洗浄ステップは、適切なインテグリンコンフォメーションを維持するためにIBBで行い、細胞の内部移行または受容体のターンオーバーを低減するために氷冷状態に保った。各系統の40,000個の細胞を、マウスインテグリンA
V、A
5、B
3、及びB
1に対する抗体とともに、4℃の低温室内のロッカー上で1時間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、蛍光二次抗体である抗IgG-PEとともに、4℃の低温室内のロッカー上で30分間、暗所でインキュベートする。さらに洗浄した後、細胞をBD Accuri Flow Cytometerにかけ、細胞の蛍光を定量する。蛍光値は、二次抗体のみの蛍光値を差し引くことによって補正し、GraphPad Prismにプロットする。CD47の発現については、40,000個の細胞を一次結合抗体である抗CD47-PEを用いて4℃の低温室内のロッカー上で1時間、暗所で染色し、アイソタイプコントロールである抗ニワトリ-PEと比較して自家蛍光及び非特異的結合について補正した。すべての試料は3重で試験する。
インビトロ2.5F-Fc結合アッセイ
インテグリン受容体の切断を防止するために細胞株をCDBと70%コンフルエンスで回収し、冷IBBでクエンチして維持し、カウントする。次いで40,000個の細胞を1pM~250nMの範囲の2.5F-Fcの濃度で添加して最終容量を800μLとし、4℃の低温室内のロッカー上で2時間、インキュベートする。次いで細胞を洗浄し、抗IgG-PE二次抗体に再懸濁し、4℃の低温室内のロッカー上で30分間、暗所で染色する。細胞を、BD Accuri Flow Cytometerでの蛍光分析の直前に、洗浄、ペレット化し、再懸濁する。二次抗体のみのコントロールの蛍光値を差し引くことにより、細胞の自家蛍光と非特異的結合の値を補正し、GraphPad Prismにプロットする。すべてのE0771及びB16F10試料は3重で試験し、MC38細胞は2重で試験する。
インビトロ食作用アッセイ
マクロファージの回収
以下のようにC57BL/6マウスの骨髄からマクロファージを誘導した。すなわち、安楽死させた成体マウスの大腿骨、脛骨、及び寛骨を採取し、10%FBS及び1%PSを含む温めたRPMI細胞培地中に粉砕した。次に、骨髄を解離させ、70μmフィルターで濾し、スピンし、ACK溶解緩衝液に再懸濁して赤血球を除去し、完全培地でクエンチする。次に、細胞をペレット化し、再懸濁し、再び濾過した後、RPMI plus:10%FBS、1%PS、及び単球からマクロファージへの分化を誘導するサイトカインである10ng/mLのM-CSF中で非接着細胞培養皿に播種した。7日後、解離した骨髄中に存在する単球の大部分は、マクロファージ特異的マーカーを発現し、活発な食作用を行うことができる接着性の強いマクロファージに分化した。非接着性の細胞タイプをすべて吸引し、マクロファージをCDB及び機械的スクレーパーを用いて回収した。細胞をカウントし、共培養アッセイのプレインキュベーション期間が完了するまで氷上で完全RPMI中に維持した。
タンパク質とがん細胞とのプレインキュベーション
IBB中に1μgの2.5F-Fc、抗CD47抗体MIAP410(InVivoMab カタログ番号BE0283)、またはそれらの組み合わせを含む96ウェルプレートを調製し、氷上で保存した。がん細胞株をCDBを用いて回収し、2%FBSを含むIBBでクエンチし、カウントしてから、37℃のインキュベーター内で20分間、カルセインで染色した。細胞をIBB+2%FBS中で洗浄し、カウントし、100,000個の染色した細胞を調製した96ウェルプレート中で抗体溶液に添加する。次いで、プレートを37℃のインキュベーター内で30分間インキュベートして、細胞の生存率を維持しながら、抗体とがん細胞との免疫複合体を形成させた。
共培養及び食作用の定量化
プレインキュベーション後、50,000個のマクロファージを、がん細胞、2.5F-Fc、及び/または抗CD47抗体を含む96ウェルプレートに添加した。この共培養プレートを37℃のインキュベーター内で1時間インキュベートして食作用を起こさせた後、冷IBB+2%FBS中で細胞をペレット化して洗浄した。次いで、細胞を氷上でマクロファージ特異的蛍光抗体である抗F4/80-AF647で20分間、暗所で染色し、ペレット化し、FACS分析の直前にDAPI溶液に再懸濁する。次いで、マクロファージ特異的マーカーであるAF647、及びがん細胞を表すAF488についての二重陽性事象が、がん細胞を貪食したマクロファージの数を表すように、生きた単一細胞をゲーティングした。次いで、各抗体による処置に応答したCFSE+マクロファージの割合(%)を、GraphPad Prismで定量化及び分析した。すべての試料は3重で試験した。
インビボ腫瘍試験
MC38の腫瘍負荷
MC38細胞を、0.05%トリプシンを用いて60%コンフルエンスで回収し、完全RPMI培地(10%FBS+1%PS)中でクエンチした後、カウントし、FBSを含まないナイーブRPMI中に再懸濁した。次いで、1E6個の細胞をC57BL6マウスの脇腹に皮下移植し、腫瘍の面積が少なくとも15mm
2になるまで増殖させた。次いで、各群(n=10)が同様の初期腫瘍サイズの分布を有するようにマウスを群分けした。500μgの2.5F-Fcタンパク質を腹腔内(IP)投与し、400μgの抗CD47抗体MIAP410を腫瘍内(IT)投与し、すべてのマウスにサポート用の500μlの皮下PBSを投与した。模擬治療を行ったマウスに、同量のPBSをIP及びITに注射した。処置は1日置きに3回、1週間にわたって投与し、すべてのマウスを接種後18日目に安楽死させた。安楽死後、腫瘍を摘出し、サイズと重量を再測定した後、10%ホルマリン溶液で一晩保存した。次に、腫瘍を70%エタノールに移して保存し、その後、スタンフォード大学のAnimal Histology Services Coreによってパラフィン包埋腫瘍ブロックに処理してもらった。
B16F10の腫瘍負荷
B16F10細胞を0.05%トリプシンを用いて60%コンフルエンスで回収し、完全DMEM培地(10%FBS+1%PS)中でクエンチしてからカウントし、FBSを含まないナイーブDMEM中に再懸濁する。次いで1E6個の細胞を皮下に移植し、面積が少なくとも15mm
2の触知可能な腫瘍にまで進行させた後、同様の腫瘍サイズの分布を有する処置群(n=9)に分けた。その後、1日置きに1週間にわたり合計3回の処置を投与し、19日目にすべてのマウスを安楽死させた。2.5F-Fc(500μg)は最初の処置でIV投与し、残りの2回の処置ではIP投与し、抗CD47抗体(400μg)は3回の処置すべてで腫瘍内投与した。すべてのマウスに緩和ケアとして500μlのPBSを投与した。その後、腫瘍を摘出し、面積及び重量を測定してから、10%ホルマリン溶液中で固定した。すべての動物実験は、獣医師の支援により、APLACプロトコル28701に従って実施した。
実施例6:Α-CD47と併用した2.5F-FCのインビトロ食作用の力価測定
タンパク質の力価測定により、骨髄由来のマウスマクロファージによるがん細胞の食作用が用量依存的であることが示された。MC38またはB16F10がん細胞をCFSE染色し、洗浄し、2.5F-Fc及び抗CD47抗体MIAP410とともに4℃で30分間、プレインキュベートした。次に、マウスマクロファージを、10万個のがん細胞と5万個のマクロファージを含む96ウェルプレートに2:1の標的:エフェクター比で添加した。細胞を37℃で1時間共培養した後、マクロファージを洗浄し、抗F480-APC抗体で20分間染色した。細胞を洗浄してDAPIに再懸濁し、生細胞をフローサイトメトリーで分析した。
図8A及び8Bに結果を示す。APC及びCFSEについて二重陽性のマクロファージの割合は、食作用の割合(%)を表す。力価測定は、観察された最大食作用の割合(%)としてプロットし、PBS単独での食作用のバックグラウンドレベルを差し引く。
図8Aは、MC38細胞に対する2.5F-Fc+抗CD47処置の併用に応答した食作用の用量依存性を示している。MC38細胞は、5ng/mlの少量の両方の薬剤に反応し、約200ng/mlで最大食作用指数に達した。38.2pMの2.5F-Fc及び15.6pMの抗CD47では、食作用レベルは観察された最大値の半分であった。
図8Bは、B16F10細胞に対する2.5F-Fc+抗CD47処置の併用に応答した食作用の用量依存性を示している。B16F10細胞は、オプソニン化により多くのタンパク質を必要とし、約15ng/mlで食作用のベースラインレベルを超えて増加し、約3.7μg/mlで最大となった。最大食作用の半値は、104.7pMの2.5F-Fc及び42.9pMの抗CD47で観察され、MC38細胞と比較して約3倍多くのタンパク質を必要とした。コントロール:10E3ng/mL、各タンパク質1μg、[2.5F-Fc/dead/RDG]=163nM、[CD47]=66.7nM
結果は、食作用の増加がFc認識に依存していることを示している。Fc受容体への結合を妨げる点突然変異をFcドメインに有する変異体である2.5Fc-deadによる処置は、食作用に影響を与えなかった。インテグリン結合ループがスクランブルされたノッティン変異体であるRDG-fcでも影響は認められず、インテグリンの効果的な結合がこの併用効果にとって重要であることを示している。
実施例7:2.5F-FCとΑ-CD47処置の併用はインビボでの生存を延長する
がんの同系マウスモデルは、2.5F-Fcとα-CD47の併用処置により、経時的な生存率の改善を示した。1e6個のがん細胞をC57BL/6Jマウスの皮下に移植し、処置に先立って最小腫瘍面積15mm
2にまで増殖させました。ノギス測定により、マウスの腫瘍の進行を週3回モニターした。
図21~
図24に結果を示す。
図9Aは、示された処置、すなわち、250μLのPBS中、500μgの2.5F-Fc、2.5F-Ab-融合体、または2.5F-FcDeadをIP投与により、50μLのPBS中、400μgの抗CD47をIT投与により、1日置きに投与して、1週間にわたって3回の処置を行ったB16F10腫瘍からのデータを示す。21日目までに、2.5F-Fcを抗CD47と併用して投与したマウスは、最も遅い腫瘍進行を示した。
図3Bは、35日間にわたる生存率が、2.5F-Fc併用処置によってのみ改善されることを示している。2.5F-Ab-融合体の質量が大きいことにより、Ab-融合体を単独で、または抗CD47と併用して投与したマウスでは、概ね半分のモル数のタンパク質が投与された。
図9Cは、等モル量の2.5F-Fc(238μg)、2.5F-FcDead(238μg)、または2.5F-Ab-融合体(500μg)を、250μLのPBS単独中でIP投与により、または50μLのPBS中、400μgの抗CD47タンパク質と併用してIT投与により、週2回、3週間にわたって合計6回の処置を行ったMC38腫瘍からのデータを示している。21日目までに、2.5F-Fcと抗CD47を併用して投与したマウスのみが腫瘍の進行の遅延を示した。
図9Dは、50日間にわたる生存率が、2.5F-Fc+抗CD47療法によって大幅に改善されることを示している。他の処置では、全生存率に統計的に有意な増加は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0302】
【
図1】様々ながん細胞株でのα及びβインテグリンサブユニット(A
V、A
5、B
3、及びB
1)の発現を示す。エラーバーは、3重で実施した実験から計算された標準誤差を表す。
【
図2】様々ながん細胞株におけるCD47の発現を示す。エラーバーは、3重で実施した実験から計算された標準誤差を表す。
【
図3】Aは、MC38、B16F10、及びE0771細胞に対する2.5F-Fcの用量依存的結合を示す。Bは、100nMの飽和濃度でのMC38、B16F10、E0771、及び4T1-GFP細胞に対する2.5F-Fcの結合を示す。エラーバーは、3重または2重で実施した実験から計算された標準誤差を表す。
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図4A】がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にMC38がん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。エラーバーは、3重で実施した実験から計算された標準誤差を表す。
【
図4B】がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にMC38がん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。エラーバーは、3重で実施した実験から計算された標準誤差を表す。
【
図4C】がん細胞を食作用アッセイに先立って2.5F-Fc及び抗CD47抗体とともにプレインキュベートした場合にMC38がん細胞を貪食したマクロファージの割合(ゲーティングしたもの、2.94%)を示すフローサイトメトリーの図である。
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図4D】がん細胞を食作用アッセイに先立って2.5F-Fc及び抗CD47抗体とともにプレインキュベートした場合にMC38がん細胞を貪食したマクロファージの割合(ゲーティングしたもの、28.4%)を示すフローサイトメトリーの図である。
【
図5A】がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。試験したがん細胞は、B16F10黒色腫細胞である。
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図5B】がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。試験したがん細胞は、E0771乳腺腺癌細胞である。
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図5C】がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。試験したがん細胞は、4T1-GFP乳癌細胞である。
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図5D】がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。試験したがん細胞は、U87MGヒト神経膠芽腫細胞である。
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図5E】がん細胞を食作用アッセイに先立って異なる条件でプレインキュベートした場合にがん細胞を貪食したマクロファージの割合(%)を示す図である。非がん性293T細胞も試験した。
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図6A】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSでの模擬治療後のマウスにおけるMC38誘発腫瘍の形態を示す。
【
図6B】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。処置が9日目に開始される前の8日目の異なる処置群にわたる初期腫瘍サイズを示す。
【
図6C】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる処置の経過中に測定された腫瘍の面積及び体積を示す。
【
図6D】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる処置の経過中に測定された腫瘍の面積及び体積を示す。
【
図6E】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の終了時に18日目に摘出された腫瘍のサイズ及び重量を示す。各処置群で10匹のマウスを使用した。
【
図6F】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の終了時に18日目に摘出された腫瘍のサイズ及び重量を示す。各処置群で10匹のマウスを使用した。
【
図6G】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。治療プロトコルの模式図を示す。
【
図7A】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10メラノーマ細胞誘発腫瘍の応答を示す。治療が開始される直前の9日目の異なる治療群にわたる初期腫瘍サイズを示す。
【
図7B】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の経過中及び終了に向かって測定された腫瘍の面積、体積及び重量を示す。各処置群で9匹のマウスを使用した。
【
図7C】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の経過中及び終了に向かって測定された腫瘍の面積、体積及び重量を示す。各処置群で9匹のマウスを使用した。
【
図7D】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の経過中及び終了に向かって測定された腫瘍の面積、体積及び重量を示す。各処置群で9匹のマウスを使用した。
【
図7E】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の経過中及び終了に向かって測定された腫瘍の面積、体積及び重量を示す。各処置群で9匹のマウスを使用した。
【
図7F】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。異なる治療の経過中及び終了に向けて、設定された安楽死基準に基づいた模擬生存率を示す。
【
図7G】抗CD47抗体、2.5F-Fc、及び抗CD47抗体と2.5F-Fcとの併用による処置、ならびにPBSによる模擬治療時のマウスにおけるB16F10黒色腫細胞誘発腫瘍の応答を示す。治療プロトコルの模式図を示す。
【
図8】Aは、MC38細胞でα-CD47と併用した2.5F-Fcのインビトロ食作用の力価測定を示す。Bは、B16F10細胞でα-CD47と併用した2.5F-Fcのインビトロ食作用の力価測定を示す。
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図9A】α-CD47処置と併用した2.5F-Fcが、インビボで生存を延長する能力を示す。B16F10がん細胞を移植したマウスモデルからの腫瘍進行データを示す。
【
図9B】α-CD47処置と併用した2.5F-Fcが、インビボで生存を延長する能力を示す。
図9Aで処置した動物の生存データを示す。
【
図9C】α-CD47処置と併用した2.5F-Fcが、インビボで生存を延長する能力を示す。MC38がん細胞を移植したマウスモデルからの腫瘍進行データを示す。
【
図9D】α-CD47処置と併用した2.5F-Fcが、インビボで生存を延長する能力を示す。
図9Cで処置した動物の生存データを示す。
【配列表】
【国際調査報告】