(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】溶融性ポリマーの増粘調製用押出機
(51)【国際特許分類】
B29B 7/42 20060101AFI20220915BHJP
B29B 7/58 20060101ALI20220915BHJP
B29C 48/505 20190101ALI20220915BHJP
B29C 48/68 20190101ALI20220915BHJP
B29C 48/76 20190101ALI20220915BHJP
【FI】
B29B7/42
B29B7/58
B29C48/505
B29C48/68
B29C48/76
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502890
(86)(22)【出願日】2020-07-19
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 DE2020100630
(87)【国際公開番号】W WO2021008659
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】102019119533.0
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514054214
【氏名又は名称】グノイス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Gneuss GmbH
【住所又は居所原語表記】Moenichhusen 42, D-32549 Bad Oeynhausen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン グノイス
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ グノイス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル グノイス
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F201AJ08
4F201AR12
4F201BA01
4F201BC02
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK25
4F201BK33
4F201BK36
4F201BK44
4F201BK47
4F207AJ08
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK01
4F207KK12
4F207KL04
4F207KL05
4F207KL07
4F207KL22
4F207KL23
4F207KL33
4F207KL36
4F207KL42
4F207KL43
4F207KL45
(57)【要約】
内側ハウジング凹部(18)を有するハウジング(10)を備える押出機(100)であって、内側ハウジング凹部(18)には、螺旋状の押出機スクリュフライト(32,33,34)を有する押出機スクリュ(20)が回転可能に配置されている、押出機(100)。押出機スクリュ(20)は、その外径に関して、直径開始領域と直径中間領域と直径終了領域とに分割されており、直径中間領域(23)は、他の直径領域よりも大きな外径を有しており、異なる直径を有する領域の間に、それぞれ移行円錐部が形成されており、直径中間領域(23)には、少なくとも1つの脱気部(23.2)が形成されており、脱気部(23.2)は、ハウジング凹部を有しており、ハウジング凹部から少なくとも1つの吸引口(15)がハウジング(10)の外側へと延在している。ここで、押出機スクリュシャフトコアとハウジング凹部(18)の内壁との間に形成された流路が、環状のラバール・ノズルとして形成されており、押出機スクリュフライト(32,33,34)の外径は一定であり、かつ径方向の流路高さは拡大している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融性ポリマーの増粘調製用押出機(100)であって、前記押出機(100)は、内側ハウジング凹部(18)を有するハウジング(10)を少なくとも備え、前記内側ハウジング凹部(18)には、少なくとも1つの螺旋状の押出機スクリュフライト(31,...,35)を有する押出機スクリュ(20)が回転可能に配置されており、
前記押出機スクリュ(20)は、その外径に関して、直径開始領域、直径中間領域、および直径終了領域(21,23,25)に分割されており、
-前記直径中間領域(23)は、他の前記直径領域(21,25)よりも大きな外径を有しており、
-異なる直径を有する領域(21,23,25)の間に、それぞれ移行円錐部(22,24)が形成されており、
-前記直径中間領域(23)には、少なくとも1つの脱気部(23.2)が形成されており、前記脱気部(23.2)は、ハウジング凹部を有しており、前記ハウジング凹部から少なくとも1つの吸引口(15)が前記ハウジング(10)の外側へと延在している、
押出機(100)において、
-前記直径中間領域(23)の前記押出機スクリュ(20)は、押出機スクリュシャフトコアと前記ハウジング凹部(18)の内壁(19)との間に形成された流路が環状のラバール・ノズルとして形成され、前記少なくとも1つの押出機スクリュフライト(32,33,34)の外径が一定であり、かつ径方向の流路高さが拡大するように形成されており、かつ
-前記少なくとも1つの吸引口(15)は、前記直径中間領域(23)の端部の前記脱気部(23.2)に配置されている
ことを特徴とする、押出機(100)。
【請求項2】
前記押出機スクリュ(20)は、機能的に少なくとも計量化部(21.2)と、前記脱気部(23.2)と、吐出部(25)とに分割されており、
-前記計量化部(21.2)の前記押出機スクリュ上には、ポリマーメルトを圧縮および/または均質化する手段が形成されており、前記計量化部(21.2)は、流れ方向に見て、前記直径開始領域(21)から前記移行円錐部(22)を経て前記直径中間領域(23)内まで延在しており、かつ
-前記吐出部(25)は、完全に前記直径終了領域(25)内に形成されている、請求項1記載の押出機(100)。
【請求項3】
前記直径中間領域(23)の前記押出機スクリュフライト(32,33,34)は、前記直径開始領域(21)の直径D1の少なくとも1.5倍に相当する外径D2を有する、請求項1または2記載の押出機(100)。
【請求項4】
前記直径中間領域(23)は、開始部分(23.1)および終了部分(23.2)を有しており、前記開始部分(23.1)における、前記少なくとも1つの押出機スクリュフライト(32,33,34)の隣接部分間に形成されるチャネルの径方向のチャネル深さは、前記終了部分(23.2)よりも小さい、請求項1から3までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項5】
前記直径中間領域(23)の前記終了部分(23.2)における前記押出機スクリュフライト(32,33,34)の前記チャネル深さは、前記開始部分(23.1)の前記チャネル深さの少なくとも3倍である、請求項1から4までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項6】
前記脱気部(23)の前記開始部分(23.1)における前記少なくとも1つの押出機スクリュフライト(32,33,34)の前記チャネル深さは、前記直径D2の1%~5%である、請求項1から5までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項7】
前記終了部分(23.2)における前記少なくとも1つの押出機スクリュフライト(32,33,34)の前記チャネル深さは、前記脱気部(23.2)の前記直径D2の少なくとも10%である、請求項1から6までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項8】
前記終了部分(23.2)における前記少なくとも1つの押出機スクリュフライト(32,33,34)の前記チャネル深さは、少なくとも20mmである、請求項1から7までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項9】
前記直径D2は、D1の少なくとも1.5倍に相当する、請求項1から8までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項10】
前記脱気部(23.2)の長さは、D2の少なくとも2倍である、請求項1から9までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項11】
前記押出機スクリュ(20)は、前記計量化部(22)から前記脱気部(23.2)への移行部および/または前記脱気部(23.2)から前記吐出部(25)への移行部に、それぞれテーパ状の移行部(22,24)を有しており、前記移行部(22,24)では、前記押出機スクリュフライト(31,32,33,34,35)が中断されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項12】
少なくとも前記脱気部(23.2)において、同じピッチの少なくとも2つの絡み合う押出機スクリュフライト(32,33,34)が前記押出機スクリュ(20)に形成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の特徴を有する溶融性ポリマーの増粘調製用押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック工業では、ポリマーの可塑化および調製に押出機が利用されている。目的が単なる可塑化である場合には、多くの機種は、1つの押出機スクリュを有するモノロータとして、または2つの押出機スクリュを有するダブルロータとして利用可能であり、押出機スクリュの特定の幾何学的形状により、固体粒子の形態のプラスチックが一方の端部で引き込まれ、これが溶融されて液状で吐出される。多くの用途では、例えば固形物に含まれる水分を除去するために均質化や脱気も行われる。この場合の欠点は、しばしば押出機での強いせん断によってポリマーの分子鎖長が短くなり、それにより粘度が低下することである。こうした作用は、特に高粘度のポリマーで生じる。しかし所定の使用事例では、下流の加工プロセスに溶融ポリマーの所定の粘度が必要とされる場合には、押出機での可塑化の際に粘度が低下しすぎてはならない。これは例えば、ポリエステル(PET)などの加水分解性重縮合物のリサイクルについて、特にテキスタイルプラスチック繊維の製造のような要求の厳しい下流の加工プロセスに関連して該当する。
【0003】
独国特許出願公開第2237190号明細書には、押出機スクリュを備えたゴム混合物加工用押出機が記載されている。吸引領域のスクリュ径を増大させることで脱気性を向上させており、供給部および吐出部に対する押出機スクリュフライトのチャネル深さを保持することで一定の搬送性能が保証されている。ゴム以外のポリマーに対して粘度に狙いどおりの影響を及ぼすための使用は示されていない。
【0004】
可塑化、特に同時に増粘を伴うポリマーの調製に関して、欧州特許第1434680号明細書からマルチローテーションシステムを備えた押出機が知られている。このいわゆるMRS押出機は、メインスクリュの周囲に複数のプラネタリー型駆動スクリュが配置された多軸スクリュ押出機部分を有する押出機スクリュを備えている。これらのプラネタリー型スクリュは、押出機スクリュと一体となって回転すると同時に、その固有の軸線周りで回転する。多軸スクリュ押出機部分では、混合度が高く、表面積が大きくなるため、押出機ハウジングのこの領域に配置されたガス吸引部は特に有効である。ポリマーに含まれる水分の大部分が効率的に吸引されることから、重縮合物において大幅な鎖の延長が可能となり、ひいては固有粘度の増加を達成することができる。同時に、異物が分離されるため、MRS押出機はPETのリサイクルに特に適しており、連続運転でリサイクル原料から高純度PETを直接得ることができ、これをさらなる後処理なしで飲料や食品の包装に使用することが可能である。
【0005】
飲料や食品の包装に必要な粘度は、公知のMRS押出機により問題なく達成できるが、さらに高粘度のPETを必要とする適用プロセスでは、MRS押出機の各種プロセスパラメータを変化させても、達成可能な最大粘度には限界が生じるという問題が発生する。したがって、粘度の増加と低下とが常に同時に起こり、当初は粘度増加につながる作用が優勢であるが、やがて逆の作用と均衡するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、少なくとも0.7ml/gの高い固有粘度が達成可能なポリマーメルト、特にPETの調製を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題は、請求項1の特徴を有する押出機によって解決される。
【0008】
PET調製向けの実績のあるMRS押出機の個々の設計上の特徴と、ゴム加工向けの公知のモノロータとを組み合わせ、さらにもう1つの重要な革新を加えた構想が、意想外にも成功を導いている。
【0009】
まず、本発明の解決策は、モノロータの概念、すなわち押出機スクリュを1つのみ有する押出機に基づいている。本発明によれば、ポリマーをせん断する役割の大部分を担う、公知のMRS押出機に存在するプラネタリー型スクリュが不要となる。真空引き領域での周速を高めるために、脱気部で押出機スクリュの直径が部分的に増大している。しかし、本発明による押出機で達成可能な粘度増加は実質的に、脱気部が2つに分割されており、かつ以下の重要な特徴を含むことに起因している。
【0010】
押出機スクリュの幾何学的形状を参照できるようにするため、直径を以下のように表す:
-供給/計量化部ではD1
-吐出部ではD2、および
-脱気部も配置されている、その間の領域ではD2。
【0011】
押出機スクリュシャフトの押出機スクリュフライトの外周縁により画定される押出機スクリュの外径は、先行する供給および計量化部および後続の吐出部と比較して著しく増大しており、少なくともそこでの直径の1.2倍~2.0倍である。この外径は、長さ全体にわたって十分に一定であることが好ましく、その結果、円筒形のエンベロープとなる。このため、付属のボアをハウジングに容易に製造することができ、押出機スクリュとハウジングとの間の軸方向変位を小さくすることができる。押出機スクリュの前後の部分への移行領域にのみ、好ましくはテーパ形状が生じる。
【0012】
一方で、押出機スクリュのシャフトコアの外径は、脱気部の2つの部分領域で大きく変化し、すなわち、上流側の開始領域では同様に大きくなり、押出機スクリュフライトの平行部分間のチャネル深さが小さくなるのに対して、後続の終了領域では著しく小さくなり、チャネルが深くなる。
【0013】
ハウジングの少なくとも1つの吸引口は、チャネル深さが大きい位置にある。この吸引口は、開始領域と終了領域との間にあるシャフトコアの直径増大部まで延在することができる。
【0014】
押出機スクリュの最初の部分ですでに可塑化されたメルトは、脱気部の開始領域で強度に圧縮される。なぜならば、そこではスクリュフライトとシャフトコアとハウジングボアとの間に形成されたチャネルの自由体積が小さいためである。
【0015】
しかし、脱気部の終了領域ではこの体積が非常により大きく、供給されたメルトによってこの体積をほぼ満たすことはできない。そのため、シャフトコアの直径増大部では、メルトが自由体積へと急激に膨張する。メルト流が破裂してメルト表面積の大幅な増大を招き、これによりメルトから揮発性物質を吸引することができる。
【0016】
本発明による押出機の駆動力は、駆動サテライトスクリュが不要であるために先行技術に比べて低減されている。
【0017】
直径D2>1.5×D1を選択した場合、脱気ポートによって形成される押出機の真空チャンバにおいて、メルトと真空との間のさらに大面積の相互作用が達成されることが保証される。
【0018】
脱気部のスクリュの長さが2×D2であると合理的である。これにより、脱気ポートを通じて脱気できる面積が可能な限り大きくなるため、一般的な多軸スクリュ押出機部分と比較して、真空が作用し得る面積は、ごくわずかにしか減少しない。
【0019】
例えば、入口領域および脱気部のスクリュフライトのピッチが実質的に同じ大きさである場合には、スクリュの脱気部において、ピッチが実質的に同じである少なくとも1つのさらなるスクリュフライトがスクリュフライト間に設けられていると有利である。
【0020】
押出機の脱気部の終了領域で直径が増大しているため、ピッチが供給部および計量化部と同じであれば、スクリュフライトは、スクリュの供給/計量化部あるいは吐出部よりもかなり離れていることになる。第1のスクリュフライト内に配置された少なくとも1つの第2のあるいは複数のスクリュフライトを設けることにより、ハウジングと螺旋との間に脱気部においてスクリュの長さに沿って混練作業および送り作業を行えるせん断箇所が多くなるため、脱気部のメルトの表面積がさらに増加する。
【0021】
しかし、例えば供給/計量化部および吐出部のスクリュのピッチが実質的に同じ大きさであるが、脱気部のスクリュの螺旋のピッチがそこより大きいことも可能である。
【0022】
これにより、押出機の脱気部のスクリュフライトが接近する。また、メルトに混練作業および推進作業をより多く導入することも可能となり、それにより真空と接するメルトの表面積が増加する。
【0023】
脱気部のスクリュフライトのチャネル深さは、脱気部のスクリュの直径D2の少なくとも10%であると有利である。しかし、スクリュの脱気部においてスクリュフライト間に形成されるチャネルの表面積が、入口領域において螺旋間に配置される溝の表面積の少なくとも1.5倍の大きさであると、また有利である。
【0024】
これらの各措置により、スクリュフライト間のチャネルがメルトで完全に満たされることがなくなる。メルトは、スクリュフライトの側面にある対応する溝において最大の高さを有しており、底部に向かって下がり、かつ/またはより大きな長さに広がることができる。さらに、スクリュの動きによってメルトをチャネル内で混練することができる。この措置も、同じ時間内により多くのメルト面積が脱気ポートの負圧に接して、より良好にメルトを脱気できるようにするためのものである。
【0025】
押出機が、計量化部から脱気部への移行部に調整可能なスロットルあるいは調整可能な保持リングを備えていると有利である場合があり、これらによりせん断ギャップを調整することができる。これにより、一方では、完全に可塑化されたメルトのみが脱気部に達することが保証される。他方では、ある程度の密閉性が達成され、これにより入口領域に対する負圧の短絡が起こり得ないことが保証される。
【0026】
要するに、本発明は、吸引領域におけるメルトの破裂、旋回および混合が、先行技術のような機械的混合要素によってではなく、ラバール・ノズルの原理によってもたらされることに基づいている。このラバール・ノズルは、本発明では、この領域においてフライトの外径を同じにしかつハウジングボアの内径を一定にしつつ、コア径を急激に減少させることによってもたらされる。
【0027】
本発明による脱気部におけるラバール・ノズルの原理は、メルトに対する前述の機械的影響に加え、温度の影響、すなわち冷却をも伴うものである。生じる冷却は、本発明による押出機において様々な方法で付加的な効果として利用することができる。
【0028】
先行技術のMRS押出機では、機械的せん断による膨大な入熱を補償するために、脱気部の押出機スクリュシャフトの内部冷却がほぼ常に必要であるが、本発明によれば、少なくとも脱気部の終了領域についてはこれを省くことができる。これにより、少なくとも押出機スクリュ全体に必要な冷却電力が削減される。
【0029】
特定の状況下では、冷却が非常に強力であり、メルトが部分的に凍結する場合がある。これに対する対策として、脱気部の終了領域に加熱部が設けられていてもよい。例えば、加熱ベルトでハウジングを加熱することができる。
【0030】
一方で、本発明による押出機でも、供給および計量化部でのせん断によって依然として強度の入熱が生じるため、押出機スクリュの外部温度制御を省き、代わりに温度制御用の流体をスクリュの内部流路を通じて循環させることが考えられ、そのために外部ポンプのみが設けられ、外部熱交換器は設けられない。流体は、シャフト端部で内部スクリュボアに導入され、供給および計量化部で、また場合によってはさらに脱気部の開始領域でも加熱され、その後、終了領域で、深いスクリュフライト内で案内される冷却されたメルトに放熱する。吐出は、押出機スクリュシャフトのもう一方の端部で行われる。ポンプへの返送は、外部で行われる。
【0031】
スクリュが、特に脱気部で、例えば周辺流路の形態で、または同心流路として、スクリュの表面温度の速効的で正確な調整を保証する温度制御流路を有すると有利である。スクリュフライトも流路として形成することが可能である。
【0032】
以下、本発明を、図面に示す押出機の例示的実施形態を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1には、本発明による押出機100の外側からの透視図が示されており、端部の軸受および駆動要素は図示されていない。特に内側ハウジング凹部18を有するハウジング10が視認でき、この内側ハウジング凹部18には、押出機スクリュ20が回転可能に装着されている。ハウジング10は、固体ポリマー粒子の供給口12を有する入口領域11を有している。接続フランジ13を介して、拡大された直径を有する中間領域14が続いており、この中間領域14は、内側ハウジング凹部18内まで延在する少なくとも1つのハウジング開口部15を有している。このハウジング開口部15には、吸引ユニット、特に真空ポンプが接続されている。
【0035】
さらなる接続フランジ16を介して、ハウジング10の終了領域17が続いており、その直径は再び低減されて、開始領域11の直径とほぼ一致する。終了領域17の端部では、特に円筒形ボアとして形成されているハウジング凹部18が開口しているため、調製されたポリマーメルトをこの箇所から排出してさらに加工することができる。
【0036】
図2は、押出機スクリュ20の透視図である。供給部21.1は、固体粒子としてのポリマーを供給する役割を果たす。これに計量化部21.2が続いている。供給部21.1および計量化部21.2は、共通の螺旋状の押出機スクリュフライト31を有している。押出機スクリュ20は、供給部21.1および計量化部21.2と同じかまたは類似の直径を有する吐出部25を有しており、また同様に押出機スクリュフライト35を1つのみ有している。
【0037】
その間に脱気部23が位置しており、この脱気部23は、開始領域23.1と終了領域23.2とに分割されている。脱気部23では、長さ全体にわたって直径が変化しているスクリュシャフトコアが、合計3つの絡み合う押出機スクリュフライト32,33,34によって囲まれている。
【0038】
図3には、本発明の本質である押出機スクリュ20のこの部分の拡大側面図が示されており、各外径D1,D2,D3も示されている。例示的に、寸法および幾何学的関係は以下のとおりである:
-計量化部21.2において、押出機スクリュフライト31は、比較的小さな110mmの外径D1を有している。
-吐出部25において、押出機スクリュフライト35は、外径D1の0.8~1.2倍に相当する、すなわちD1とほぼ一致するが20%大きくても小さくてもよい、外径D2を有している。
-脱気部23において、押出機スクリュフライト32,33,34は、D2の少なくとも1.5倍に相当し、特に2倍でさえある均一な外径D2を有している。本例では、D2=190mmである。
【0039】
したがって、外径D1,D2およびD3は部間で変化するだけであり、各部21.2,23,25の中では一定である。その間にテーパ状の移行部22,24が形成されている。
【0040】
シャフトコア径は、計量化部21.2でも吐出部25でも十分に一定である。均質化および圧縮を達成しかつ/または流速に局所的に影響を与えるために、押出成形技術で通常行われるように、シャフトコア径および/またはスクリュピッチのわずかな変動が提供される。
【0041】
脱気部から吐出部への移行部においてすぐに、吐出部のシャフトコア径は、例えばさらなる経路の直径よりも低減されており、それによって、脱気部ではそこに存在する真空ゆえにほぼゼロであった溶融圧力を、吐出部では再び高めることができる。
【0042】
本発明の本質は、脱気部23内のシャフトコア径が、移行箇所23.4で急激に低減されていることにある。脱気部23の開始領域23.1ではシャフトコア径が大きく、押出機スクリュフライト32,33,34の高さ、ひいてはそれらの間に形成されたチャネル41の高さが小さいのに対して、終了領域23.2のシャフトコア径ははるかに小さい。挙げられた例では、開始部分23.1のチャネル41においてチャネル深さは4mmであり、特に外径D2の10%~20%である。終了部分23.2では、チャネル42において、チャネル深さは32mmであり、したがって開始領域23.1のチャネル41と比較して、そこでのチャネル42の高さは3~10倍増加している。
【0043】
図3中の二重破線は、押出機スクリュフライトの経路を示すものである。計量化部21.2および吐出部25には、それぞれ螺旋状の押出機スクリュフライト31,35が1つのみ存在する。脱気部23では、二重破線は、最初の押出機スクリュフライト32の経路のみを示している。これらの線は、それぞれ2つのさらなる押出機スクリュフライト33,34と交差することが明らかにわかる。このように、脱気部23には、合計3つの絡み合う押出機スクリュフライト32,33,34が形成されている。
【0044】
図4は、計量化部21.2から脱気部23への移行部の透視図である。このために、テーパ状の移行部22を明確に視認できるように、ハウジング部分11および13(
図1参照)が取り外されている。計量化部21.2の押出機スクリュフライト31は、移行部22の手前で終わっている。脱気部23の3つの押出機スクリュフライトは、すでに移行部22内で始まっており、
図4では押出機スクリュフライト32,33の始まりのみが視認できる。押出機スクリュフライト31が移行部22の手前で終わり、3つの押出機スクリュフライト32,33および34が移行部22内で始まっていることにより、メルトの流れが3つの部分流に早期に分割される。
【0045】
図5は、本発明の本質である本発明による押出機100の部分の部分断面図である。ここでは、ハウジング10の中間領域14の断面が示されている。これにより、一方では、ハウジング凹部の内壁19の断面が、吸引口15での中断を除いて完全に直線状に延びていること、すなわちハウジングボアが円筒形であることがわかる。さらに、3つのすべての押出機スクリュフライト32,33,34の外周縁が常に内壁19の手前のごく近傍で終わっていることがわかる。開始領域23.1には非常に狭いチャネル41が形成されており、このチャネルを通してメルトの流れ全体を搬送する必要がある。最後に、
図5には押出機シャフトコアの直径の推移が良好に示されており、これは移行箇所23.4で急激に低減されており、その後、終了領域23.2では小さいまま一定である。これにより、内壁19と、押出機スクリュフライト32,33,34の平行部分と、押出機シャフトコアとの間に大体積のチャネル42が形成されている。
【0046】
図6は、押出機スクリュ20の寸法の関係性を非常に誇張して図示した概略図である。シャフトコア径、およびフライトの外周縁全体にわたって測定された外径が示されている。本図により、特に押出機スクリュ20の長さ全体にわたるチャネル深さの変動が明らかとなる。計量化部21の端部に向かって、シャフトコア径は増大する。外径D1は一定のままである。それにより、チャネル深さが小さくなる。搬送されたメルトが圧縮される。移行部22では外径がD2まで増大するため、流動可能な体積が増加する。これは、円錐形移行部22のチャネル深さのさらなる減少によって補われる。目的は、形成された流路が満たされるように、メルトを開始領域23.1に搬送することである。また、そこでの隙間が狭いため、せん断が高まる。
【0047】
脱気部23の中央では、シャフトコア径が急激に大きく低減されており、フライトの外径D2は一定のままである。そこで生じる流路の体積を、もはや開始部23.1を経由して供給されるメルトによって満たすことはできない。その結果、それまで高度にせん断され、ひいては強度に加熱もされていたメルトが急激に膨張する。膨張時には、ブロック矢印で示すように、含まれる揮発性物質が特に良好に放出され、これを吸引することができる。
【0048】
この後、メルトを再びガス不含の状態で回収して均質に搬送するために、複数の流路を狭くする。この目的のために、流路はまず移行部24に向かってわずかに狭くなっている。移行部では、フライトとシャフトコアとがそれぞれ異なる円錐角を有しており、これも流路を拡大する原因となる。移行部24と吐出部25の始まりとの間には、短い一定のチャネル深さが提供されており、その後にシャフトコア径が再び増大し、結果として、押出機スクリュフライトの外径D2が一定の状態で、チャネル深さが低減されている。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
図2は、押出機スクリュ20の透視図である。供給部21.1は、固体粒子としてのポリマーを供給する役割を果たす。これに計量化部21.2が続いている。供給部21.1および計量化部21.2は、
一緒になって直径開始領域21を形成しており、かつ共通の螺旋状の押出機スクリュフライト31を有している。押出機スクリュ20は、供給部21.1および計量化部21.2と同じかまたは類似の直径を有する吐出部25を有しており、また同様に押出機スクリュフライト35を1つのみ有している。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
その間に、直径中間領域に脱気部23が位置しており、この脱気部23は、開始領域23.1と終了領域23.2とに分割されている。脱気部23では、長さ全体にわたって直径が変化しているスクリュシャフトコアが、合計3つの絡み合う押出機スクリュフライト32,33,34によって囲まれている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
脱気部23から吐出部25への移行部においてすぐに、吐出部25のシャフトコア径は、例えばさらなる経路の直径よりも低減されており、それによって、脱気部ではそこに存在する真空ゆえにほぼゼロであった溶融圧力を、吐出部では再び高めることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
本発明の本質は、脱気部23内のシャフトコア径が、移行箇所23.4で急激に低減されていることにある。脱気部23の開始領域23.1ではシャフトコア径が大きく、押出機スクリュフライト32,33,34の高さ、ひいてはそれらの間に形成されたチャネル41の高さが小さいのに対して、終了領域23.2のシャフトコア径ははるかに小さい。挙げられた例では、開始部分23.1のチャネル41においてチャネル深さは4mmであり、特に外径D2の10%~20%である。終了領域23.2では、チャネル42において、チャネル深さは32mmであり、したがって開始領域23.1のチャネル41と比較して、そこでのチャネル42の高さは3~10倍増加している。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
この後、メルトを再びガス不含の状態で回収して均質に搬送するために、複数の流路を狭くする。この目的のために、流路はまず移行部24に向かってわずかに狭くなっている。移行部24では、フライトとシャフトコアとがそれぞれ異なる円錐角を有しており、これも流路を拡大する原因となる。移行部24と吐出部25の始まりとの間には、短い一定のチャネル深さが提供されており、その後にシャフトコア径が再び増大し、結果として、押出機スクリュフライトの外径D2が一定の状態で、チャネル深さが低減されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融性ポリマーの増粘調製用押出機(100)であって、前記押出機(100)は、内側ハウジング凹部(18)を有するハウジング(10)を少なくとも備え、前記内側ハウジング凹部(18)には、少なくとも1つの螺旋状の押出機スクリュフライト(31,...,35)を有する押出機スクリュ(20)が回転可能に配置されており、
前記押出機スクリュ(20)は、その外径に関して、直径開始領域
(21)と、直径中間領域
と、直径終了領域
とに分割されており、
-前記直径中間領
域は、他の前記直径領
域よりも大きな外径を有しており、
-異なる直径を有する
直径領
域の間に、それぞれ移行円錐部(22,24)が形成されており、
-前記直径中間領
域には、少なくとも1つの脱気部(2
3)が形成されており、前記脱気部(2
3)は、ハウジング凹部を有しており、前記ハウジング凹部から少なくとも1つの吸引口(15)が前記ハウジング(10)の外側へと延在している、
押出機(100)において、
-前記直径中間領
域の前記押出機スクリュ(20)は、押出機スクリュシャフトコアと前記ハウジング凹部(18)の内壁(19)との間に形成された流路が環状のラバール・ノズルとして形成され、前記少なくとも1つの押出機スクリュフライト(32,33,34)の外径が一定であり、かつ径方向の流路高さが拡大するように形成されており、かつ
-前記少なくとも1つの吸引口(15)は
、前記脱気部(2
3)の端部の終了部分(23.2)に配置されている
ことを特徴とする、押出機(100)。
【請求項2】
前記押出機スクリュ(20)は、機能的に少なくとも計量化部(21.2)と、前記脱気部(2
3)と、吐出部(25)とに分割されており、
-前記計量化部(21.2)の前記押出機スクリュ上には、ポリマーメルトを圧縮および/または均質化する手段が形成されており、前記計量化部(21.2)は、流れ方向に見て、前記直径開始領域(21)から前記移行円錐部(22)を経て前記直径中間領
域内まで延在しており、かつ
-前記吐出部(25)は、完全に前記直径終了領
域内に形成されている、請求項1記載の押出機(100)。
【請求項3】
前記直径中間領
域の前記押出機スクリュフライト(32,33,34)は、前記直径開始領域(21)の直径D1の少なくとも1.5倍に相当する外径D2を有する、請求項1または2記載の押出機(100)。
【請求項4】
前記直径中間領
域は、開始
領域(23.1)および終了
領域(23.2)を有しており、前記開始
領域(23.1)における、前記少なくとも1つの押出機スクリュフライト(32,33,34)の隣接部分間に形成されるチャネルの径方向のチャネル深さは、前記終了
領域(23.2)よりも小さい、請求項1から3までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項5】
前記直径中間領
域の前記終了
領域(23.2)における前記押出機スクリュフライト(32,33,34)の前記チャネル深さは、前記開始
領域(23.1)の前記チャネル深さの少なくとも3倍である、請求項1から4までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項6】
前記脱気部(23)の前記開始
領域(23.1)における前記少なくとも1つの押出機スクリュフライト(32,33,34)の前記チャネル深さは、前記直径D2の1%~5%である、請求項1から5までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項7】
前記終了
領域(23.2)における前記少なくとも1つの押出機スクリュフライト(32,33,34)の前記チャネル深さは、前記脱気部(2
3)の前記直径D2の少なくとも10%である、請求項1から6までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項8】
前記終了
領域(23.2)における前記少なくとも1つの押出機スクリュフライト(32,33,34)の前記チャネル深さは、少なくとも20mmである、請求項1から7までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項9】
前記直径D2は、D1の少なくとも1.5倍に相当する、請求項1から8までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項10】
前記脱気部(2
3)の長さは、D2の少なくとも2倍である、請求項1から9までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項11】
前記押出機スクリュ(20)は、前記計量化部(2
1.2)から前記
開始部分(23.
1)への移行部および/または前記
終了領域(23.2)から前記吐出部(25)への移行部に、それぞれテーパ状の移行部(22,24)を有しており、前記移行部(22,24)では、前記押出機スクリュフライト(31,32,33,34,35)が中断されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【請求項12】
少なくとも前記脱気部(2
3)において、同じピッチの少なくとも2つの絡み合う押出機スクリュフライト(32,33,34)が前記押出機スクリュ(20)に形成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の押出機(100)。
【国際調査報告】