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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】通気された印刷ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20220915BHJP
   B41J 2/065 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B41J2/14 501
B41J2/065
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502904
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2020067327
(87)【国際公開番号】W WO2021008817
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/069212
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522019524
【氏名又は名称】スクロナ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ガリカー
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF21
2C057AG01
2C057AG15
2C057AG29
2C057AG84
2C057AG93
2C057BD05
2C057BD12
2C057DB01
(57)【要約】
印刷ヘッドは、ターゲット(4)にインクを印刷するための複数のノズル(6)を備えたノズル層(24)を具備する。それは、ノズル(6)とターゲット(4)との間の領域(18)にガスを供給するための吹き出し開口(14)を具備する、通気開口(14、16)、並びにガスをこの領域(18)から離れるように供給するための吸引開口(16)を更に具備する。これにより、印刷工程をより良好に制御するために、領域(18)において所望の雰囲気を維持することを可能にする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にインクを堆積するための印刷ヘッドであって、この印刷ヘッドが、ノズル層(24)を具備しており、
前記ノズル層(24)が、
a)複数のノズル(6)と、
b)前記ノズル層(24)を通じて伸びる、複数の通気開口(14、16)と、を具備する、印刷ヘッド。
【請求項2】
前記通気開口(14、16)は、前記ノズル(6)に隣接する領域(18)から離れたところにガスを供給するための吸引開口(16)と、ガスを前記領域(18)に向かって供給するための吹き出し開口(14)と、を具備する、請求項1に記載の印刷ヘッド。
【請求項3】
ノズル(6)の配列と、
前記配列内の各ノズル(6)について、少なくとも1つの通気開口(14、16)、特にノズル毎に正確に1つの通気開口(14、16)と、を具備する、請求項1又は2に記載の印刷ヘッド。
【請求項4】
前記配列内の各ノズル(6)について、少なくとも2つ、特にノズル毎に正確に2つの通気開口(14、16)を具備する、請求項3に記載の印刷ヘッド。
【請求項5】
前記配列は、複数の同一のユニットセル(28)を有しており、各ユニットセル(28)が、少なくとも1つのノズル(6)と、前記通気開口(14、16)の同じ配置と、を具備する、請求項3又は4に記載の印刷ヘッド。
【請求項6】
各ユニットセル(28)は、吹き出し開口(14)の少なくとも一部と、吸引開口(16)の少なくとも一部と、を具備する、請求項2及び5に記載の印刷ヘッド。
【請求項7】
各ユニットセル(28)は、1つの吹き出し開口(14)と、1つの吸引開口(16)と、前記吹き出し開口(14)と前記吸引開口(16)との間に、特に前記吹き出し開口(14)と前記吸引開口(16)との間の中心に、配置された1つのノズル(6)と、からなる、請求項6に記載の印刷ヘッド。
【請求項8】
各ユニットセル(28)は、長方形(32)の縁部の中心において交互に配置された吹き出し開口(14)の半分2つ及び吸引開口(16)の半分2つと、前記長方形(32)の中心にある1つのノズル(6)と、からなり、特に、
前記長方形(32)は正方形である、請求項6に記載の印刷ヘッド。
【請求項9】
各ユニットセル(28)は、第1の長方形(34)の角部にある4つの4分の1の吸引開口(16)と、前記第1の長方形(34)の縁部の中央にある4つの半分の吹き出し開口(14)と、前記第1の長方形(34)の中心にある1つの吸引開口(16)と、第2の長方形(36)の角部にある4つのノズル(6)と、からなり、
前記第1と第2の長方形(34、36)は、平行な縁部を有していて且つ同心であり、前記第1の長方形(34)は、前記第2の長方形(36)の2倍の直径を有しており、そして特には、前記長方形(34、36)は正方形である、請求項6に記載の印刷ヘッド。
【請求項10】
前記通気開口(14、16)に接続する通気ダクト(58a、58b、58c)を具備する、請求項1から9のうちいずれか一項に記載の印刷ヘッド。
【請求項11】
前記通気ダクト(58a、58b、58c)は、相互接続ダクト(58b、58c)を具備しており、各相互接続ダクト(58b、58c)が、複数の前記通気開口(14、16)を相互に接続しており、そして特には、前記相互接続ダクト(58b、58c)は、水平に伸びる、請求項10に記載の印刷ヘッド。
【請求項12】
前記吹き出し開口(14)を相互に接続する相互接続ダクトの第1のセット(58b)と、吸引開口(16)を相互に接続する相互接続ダクトの第2のセット(58c)と、を具備する、請求項2及び11に記載の印刷ヘッド。
【請求項13】
前記通気ダクト(58a、58b、58c)の少なくとも一部を通過して伸びる、導電性ビアを具備する、請求項10から12のうちいずれか一項に記載の印刷ヘッド。
【請求項14】
前記ノズル層(24)は、単一の一体型の主要部である、請求項1から13のうちいずれか一項に記載の印刷ヘッド。
【請求項15】
前記印刷ヘッドは、各ノズル(6)において少なくとも1つのノズル電極(44)を具備する、電気流体力学的印刷ヘッドである、請求項1から14のうちいずれか一項に記載の印刷ヘッド。
【請求項16】
作動可能なノズル(6)と通気開口(14、16)とを備えた、コア領域(74)と、前記コア領域(74)を囲む通気開口(14'、16')の最も外側の列と、を具備する前記印刷ヘッドにおいて、
前記印刷ヘッドは、前記コア領域(74)の前記通気開口(14、16)を介して、に比べて、前記最も外側の列の前記通気開口(14'、16')の少なくとも幾つかを通じて、より少ないガス流量を生成するように適合されて構成される、請求項1から15のうちいずれか一項に記載の印刷ヘッド。
【請求項17】
作動可能なノズル(6)と通気開口(14、16)とを備えたコア領域(74)と、
通気開口(14、16)を備えるが作動可能なノズル(6)を備えない縁部領域(76)と、
前記コア領域(74)と前記縁部領域(76)との間において伸びる境界(72)と、を具備する前記印刷ヘッドにおいて、
前記境界(72)から前記縁部領域(76)の最も外側の通気開口(14、16)までの距離(W)は、前記境界(72)に垂直な方向に沿った前記コア領域(74)における平均ノズル間距離(D)の少なくとも2倍、特には少なくとも5倍である、請求項1から16のうちいずれか一項に記載の印刷ヘッド。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の印刷ヘッド(2)を具備する、印刷システム。
【請求項19】
ターゲット保持器(8)と、
前記印刷ヘッド(2)及び/又は前記ターゲット保持器(8)を加熱又は冷却するための、少なくとも1つの温度制御装置(10)と、を具備する、請求項18に記載の印刷システム。
【請求項20】
前記印刷ヘッドを冷却するための印刷ヘッド温度制御装置(10)及び/又は、前記ターゲット保持器(8)を加熱するためのターゲット温度制御装置(12)、を具備する、請求項19に記載の印刷システム。
【請求項21】
前記印刷ヘッド(2)に接続する、インク循環ポンプ(13)を更に具備する、請求項18から20のうちいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項22】
前記通気開口(14、16)及び/又はガスの流れを制御するための弁(20b、22b)を通過するガスの質量流量を調節するための少なくとも1つの質量流コントローラ(20a)を具備する、請求項18から21のうちいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項23】
ターゲットに関係する、加速電極を更に具備する、前記印刷システムにおいて、
前記加速電極は、前記ターゲット(4)に向かって任意のノズルから噴射された液滴を加速するために、前記ターゲットと前記印刷ヘッド(2)との間において均一な電界を生成するためのものである、請求項18から22のうちいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項24】
請求項1から17のいずれか一項に記載の前記印刷ヘッドを動作させるための方法であって、
前記ノズル(6)を用いてターゲット(4)にインクを印刷するステップと、
前記通気開口(14、16)を通じてガスを運ぶステップと、を具備する、方法。
【請求項25】
前記通気開口(14、16)の幾つかは、吹き出し開口(14)であり、別の前記通気開口(14、16)は、吸引開口(16)である、前記方法であって、この方法が、
前記ノズル(6)における領域(18)から離れたところに前記吸引開口(16)を通じてガスを供給するステップと、
前記吹き出し開口(14)を通じて前記領域(18)にガスを供給するステップと、を具備する方法において、
特に、ガスは、前記領域(18)から離れたところに供給されると共に、同時に前記領域(18)に供給される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記吹き出し開口(14)を通じて前記領域(18)内に運ばれるガスの流量は、前記領域(18)から前記吸引開口(16)を通じて運ばれるガスの流量に等しい、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記印刷ヘッドのノズル電極(44)からの電界は、印刷中に前記ノズル(6)から前記インクを噴射するように使用される、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項28】
前記印刷ヘッド(2)及び前記ターゲット(4)の内の少なくとも1つの温度を制御するステップを具備する、請求項24から27のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ターゲット(4)を前記印刷ヘッド(2)よりも高い温度に維持するステップであって、特に、前記ターゲット(4)と前記印刷ヘッド(2)との間の温度差が、少なくとも10℃、特には少なくとも30℃で維持するステップ、を具備する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ターゲット(4)を、特には少なくとも80℃に加熱するステップを具備する、請求項24から29のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記印刷ヘッド(2)の少なくとも1つの入口(21)を通じて、前記印刷ヘッド(2)の複数の吹き出し開口(14)にガスを供給するステップであって、前記少なくとも1つの入口(21)と前記吹き出し開口(14)との間の前記ガスの流動抵抗が、全ての前記吹き出し開口(14)について25%未満、特には5%未満で変化するステップと、
前記印刷ヘッドの吸引開口(16)から、前記印刷ヘッド(2)の少なくとも1つの出口(23)を通じてガスを供給するステップであって、前記吸引開口(16)と前記少なくとも1つの出口(23)との間の前記ガスの流動抵抗は、全ての前記吸引開口(16)について、25%未満、特には5%未満で変化するステップと、の内の少なくとも1つを具備する、請求項のうちいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にインクを堆積させるための印刷ヘッドに関する。本発明はまた、その様な印刷ヘッドを備えた印刷システム、及びその様な印刷ヘッドを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数のノズルを具備するノズル層を有する、電気流体力学的印刷ヘッドを開示する。特許文献1に開示の発明は、ノズルが一方の側に配置されていて更に供給導管がもう一方の側の供給層を介して伸びる、構造に基づく。
ノズル電極は、インクがノズルからターゲットに向かって加速されるように使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/009223号
【特許文献2】国際公開公報2016/169956号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明により解決されるべき問題は、印刷品質が改善された上記のタイプの印刷ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この問題は、請求項1に記載の印刷ヘッドにより解決される。従って、印刷ヘッドは、ノズル層を具備する。このノズル層は、少なくとも次の部分を順に具備する。
a)複数のノズル。これらのノズルは、インクをターゲットに噴射するように構成される。インクは、印刷可能な任意の液体であってもよい。
b)ノズル層を介して伸びる複数の通気開口。
【0006】
通気開口は、印刷ヘッドとターゲットとの間の領域にガスを供給すること、及び/又はガスを該領域から運び去ることを可能にする。従って、印刷が行われる空間内のガスの組成を制御又は少なくとも変更することが可能になり、これにより、印刷処理工程を制御するための豊富な選択肢が提供される。これらの選択肢の幾つかは、以下に説明される。
【0007】
通気開口は、少なくとも2つのタイプの開口を具備することが有利である。第1のタイプは、ノズルに隣接する領域から離れたところにガスを供給するための吸引開口として設計される。第2のタイプは、ガスを該領域に向かって供給するための吹き出し開口として設計される。
【0008】
本発明は、目詰まりの問題に起因する悪影響を減少しつつ、改善された印刷品質を提供する。特には、平坦なマルチ(多数)ノズル印刷ヘッドにおいて多くのノズルを使用することにより、印刷ヘッドとその上に印刷されるターゲットとの間の領域において蒸発した液体が蓄積する結果を生じ得る。この問題は、印刷解像度が、10μm未満、潜在的可能性として1μm未満の解像度にさえにもなり得る、特許文献1に開示されるような電気流体力学的マルチノズル印刷ヘッドにおいて特に顕著である。更に、その様な印刷ヘッドは、例えば、特許文献2に開示されるように、大きいノズルアレイに配置された数百万のノズルの使用を潜在的に可能にする。従来のインクジェット印刷ヘッドとは異なり、ノズルは、極めてより多数であり且つ両方の主配列軸線に沿って大部分がほぼ同じ寸法の長方形である配列の中に、配置される場合がある。
【0009】
比較すると、ほとんどのインクジェット印刷ヘッドは通常、ノズルが狭い長方形又は傾斜した長方形の区域内に配置されるように構築されており、そこでは高速の動きは、本質的に該長方形の区域の狭い寸法の方向において行われる。その様な動きの間に、画素位置は一般的に、単一又は非常に少数の液滴を得る。動きは一般的に、ターゲットの幅又は長さ全体を走査するので、単一の液滴の頂部上にある印刷ヘッドの滞留時間は非常に短く、従って、ターゲットの頂部上に印刷ヘッドがない間に、印刷された液滴は乾燥できる。印刷ヘッドは、一旦以前に印刷された液滴が完全に乾燥してしまうと、2回目の印刷サイクルのためだけに戻る場合がある。
【0010】
電気流体力学的印刷ヘッドを使用する場合において、高印刷解像度のために、移動速度は、インクジェット印刷ヘッドに使用される速度よりも小さいことが好ましい。更に、潜在的に全ての移動方向における印刷ヘッドの比較的大きな伸長部分は、ターゲット上の任意の同じくらいに広い範囲の上の印刷ヘッドの滞留時間が、印刷処理能力と比較して長いことを意味する。従って、印刷ヘッドは、単一の液滴が乾燥に必要とするであろう時間よりも、はるかにより長い時間の間、ターゲット上の所与の位置を覆っている場合がある。従って、ターゲット上へのノズルの印刷出力と同様に、印刷ヘッド及び液体で満たされた多数のノズルの存在は、堆積した液体の乾燥挙動に強く影響し得る。印刷ヘッドとターゲットとの間の距離が印刷ヘッドの横方向の寸法よりもはるかに小さいとすると、この状況は一般的に、印刷ヘッドとターゲットの間の雰囲気を蒸発した液体で飽和させることになる。これにより、縁部領域において蒸発した液体濃度が印刷ヘッドの中心位置よりも低くなるという事実により、液体の蒸発の妨げ、又は少なくとも不均一な蒸発を結果的に生じ得る。どちらの問題も、印刷の処理能力と均一性とに強く影響する。本発明は、長い滞留時間であっても、印刷ヘッドを動作させることを可能にするための解決策を提供する。
【0011】
前述のように、本発明は、大きな印刷ヘッド、即ち、全ての方向において1mm、特に10mmを超える直径を有する、ノズルの配列を有する、印刷ヘッドに特に有用である。
【0012】
印刷ヘッドは、ノズルの配列を具備することが有利である。該配列において、ノズル毎に少なくとも1つの通気開口が存在しており、特にはノズル毎に少なくとも2つの通気開口が存在する。これにより、各ノズルの制御された微小な雰囲気を維持できる。
【0013】
一実施形態において、配列は、複数の同一のユニットセルに分割可能であり、その際、各ユニットセルは、少なくとも1つのノズル及び通気開口の同じ配置を具備する。言い換えれば、ノズルと通気開口(単数又は複数)との相対的な配置は、各ユニットセルにおいて同じである。
【0014】
印刷ヘッドは、電気流体力学印刷ヘッドであることが有利であり、そして各ノズルにおいて少なくとも1つのノズル電極を具備する。ノズル電極は、電気流体力学的にノズルからインクを噴射するように配置できる。
【0015】
印刷ヘッドは、通気開口と少なくとも1つのガス源と少なくとも1つのガス溜めとの間においてガスを輸送するために、通気開口に接続する通気ダクトを更に具備してもよい。
【0016】
印刷ヘッドは、通気ダクトの少なくとも一部を介して伸びる、導電性ビア(electrically conductive vias)を更に具備してもよく、これにより、ガスの輸送だけでなく電気を流すためにも通気ダクトを使用することを可能にする。
【0017】
本発明はまた、少なくとも以下を具備する、印刷ヘッドを動作させるための方法に関する:
該ノズルを用いてターゲットにインクを印刷し、該通気開口を介してガスを運ぶこと、である。
【0018】
印刷及び搬送が、印刷速度を上げるために、同時に行われることが有利である。
【0019】
前述のように、幾つかの開口は、吹き出し開口であってもよいが、他方で別の開口は、吸引開口であってもよい。この場合において、この方法は、
該吸引開口を介して該ノズルの領域から離れたところにガスを供給し、
該吹き出し開口を介して該領域にガスを供給すること、を具備することが有利である。
【0020】
これにより、ノズルにおいてガスを局所的に交換することを可能にする。ガスの安定した交換を維持するために、ガスは領域から離れて供給され、更に同時に、領域に供給されることが有利である。
【0021】
更に、印刷ヘッドとターゲットとの間に、温度差が導入されることが有利である。この温度差により、ターゲットに付着した液体と、印刷ヘッドのノズル内に含まれる液体と、の間に蒸気圧の差が存在する。この圧力差により、より高圧領域からより低圧領域に向う蒸発した液体の拡散運動を引き起こす。より高い圧力(即ち、より高い温度)領域が、ターゲット上にあり、且つより低い圧力(即ち、より低い温度)領域が印刷ヘッド上にあることが有利である。従って、蒸発した液体を基板から離れて印刷ヘッドに向かって移動させるために、その様な印刷ヘッドは、基板よりも低い温度にあることが有利である。
【0022】
但し、もし蒸発した液体がターゲットから印刷ヘッドに向かって移動する場合には、温度差により、このことは、直ちに、印刷ヘッド表面の雰囲気を過飽和にするので、従って印刷ヘッド上に液体を凝縮させ得る。特に、このことが原因になって、電気流体力学的印刷ヘッドは、完全に機能不能になる場合がある。但し、吹き出しタイプの通気開口から導入されたガスが、基板に事前に印刷された蒸発した液体を溶解させることができれば、凝縮を防止することができる。次に、その様な液体濃縮ガスは、吸引タイプの通気開口を介して除去されてもよい。
【0023】
従って、導入されたガスは、印刷に使用される少なくとも1つの液体の50%未満の飽和状態であることが有利であり、20%未満の飽和状態であることがより有利である。温度差及びガスの流れの適切な選択により、最小限の凝縮条件が維持されている場合であるにも係らず、この様にして、印刷ヘッドにおける液体の凝縮は、防止可能である。乾燥した表面上において、液体核、即ち成長中心、の形成に関連する熱力学的エネルギ障壁のために、過飽和条件においてさえも印刷ヘッド上で、凝縮が直ぐに発生しないので、これは実行可能である。比較すると、ノズル内に形成された液体への凝縮は、容易に生じ得る。従って、ノズルは、凝縮による少量の液体を吸収することにより、過飽和な雰囲気を補償することができる。
【0024】
印刷ヘッドの表面をテフロン(登録商標)又は別の撥液性材料で被覆することにより、乾燥部分上の凝縮開始が、更に低減されることが有利である。
【0025】
温度差とガス流量との組み合わせにより、ターゲットから液体を素早く除去することを可能にするので、それにより時間単位当りで、より多くのインクを印刷することを可能にする。
【0026】
ここで、「インク」という言葉は、有利には、液体媒体と堆積されるべき含まれる材料との組み合わせを表す。この材料は、液体中に分散、溶解、又はそうでなければ安定化することができる。インクの印刷及び液体媒体の蒸発において、堆積される材料だけが残る。
【0027】
一般的に、含まれる材料は、所与の寸法の構造、例えば特定の幅及び高さの線、に形成されるために用いられる。もしインクがその様な線に高い体積流量で堆積する場合には、これは、液体の蓄積により線の広がりを生じ得る。結果として、より低い体積流量が、選択されなければならない。体積流量を減少させる代わりに、通気開口の間にガス循環を導入することにより、有利には、且つターゲットにおける温度よりも低い温度を印刷ヘッドに追加的に導くことにより、蒸発速度を増大させてもよい。後者は更に、ノズルとターゲットとにおいて蒸発速度を特に制御することを可能にする。印刷ヘッドにおける蒸発は、ゼロに近いことが有利であり、又は僅かに負でさえもあることが有利であり(つまり、僅かな凝縮が発生する)、それは、ノズル位置におけるインク内の含まれる材料の濃度がほぼ一定のままであることを意味し、それにより、目詰まり又は最初の液滴効果に関連する問題を減少させる。
【0028】
重要なことに、もし各ノズルが少なくとも1つの通気開口に結合されている場合には、全てのノズルは、ガス-溶解液の濃度に関して非常に類似した雰囲気を有する。もし例えば、ガスが、印刷ヘッドの下で、幾つかのノズルにより分離された通気開口の間において、印刷ヘッドの一方の側からもう一方の側に向かって、吹き付けられる場合には、その様なガスは、入った場所に比べて、出る場所において、より高い濃度の液体を有するであろう(ガスが印刷ヘッドの下でその経路に沿って液体を連続的に吸収するためである)。従って、入口点と出口点とにおいて、ノズルの状況は、同じではなく、これにより、異なる乾燥速度と異なる目詰まりの脆弱性とを生じ、不均一な印刷結果を生じ得る。
【0029】
従って、本発明はまた、このタイプの印刷ヘッドと、同様にターゲット保持器と、印刷ヘッド及び/又はターゲット保持器を加熱又は冷却するための少なくとも1つの温度制御装置と、を具備する印刷システムに関する。特に、システムは、印刷ヘッドを冷却するための印刷ヘッド温度制御装置及び/又はターゲット保持器を加熱するためのターゲット温度制御装置を具備する。
【0030】
同様に、本発明の方法は、有利には、印刷ヘッド及びターゲット保持器の内の少なくとも1つの温度を制御するステップを具備してもよい。
【0031】
ターゲットは、有利には、印刷ヘッドよりも高い温度において、特にはターゲットと印刷ヘッドとの間の温度差が少なくとも10℃、特に少なくとも30℃で、保持される。
【0032】
また、堆積された材料の原位置における焼き戻しを支援するために、有利には、ターゲットの温度は、例えば、少なくとも80℃に加熱される。
【0033】
印刷ヘッドは、有利には、電気流体力学印刷ヘッドとして動作すること、即ち、印刷ヘッドのノズル電極による電界が、印刷中にノズルからインクを噴射するように使用される。
【0034】
本発明は、以下の詳細な説明を考慮すると、より良好に理解され、上記のもの以外の目的が明らかになるであろう。この説明は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、印刷ヘッドとターゲットとを備えた印刷機(プリンタ)の概略側面図である。
図2図2は、印刷ヘッドの底部から見た、ノズルと通気開口の第1の配置を示す。
図3図3は、印刷ヘッドの底部から見た、ノズルと通気開口の第2の配置を示す。
図4図4は、印刷ヘッドの底部から見た、ノズルと通気開口の第3の配置を示す。
図5図5は、印刷ヘッドの断面図である。
図6図6は、図5の線VI-VIに沿った断面図である。
図7図7は、図5の線VII-VIIに沿った断面図である。
図8図8は、図5の線VIII-VIIIに沿った断面図である。
図9図9は、印刷ヘッドの底部から見た、ノズルと通気開口の第4の配置を示す。
図10図10は、印刷ヘッドの底部から見た、ノズルと通気開口の第5の配置を示す。
図11図11は、エッジフロー補償を備えた第1の実施形態を示す。
図12図12は、エッジフロー補償を備えた第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義:
ノズルと通気口の配列の「ユニットセル(単位小区画)」は、配列の全体的な対称性を有していて且つそこから配列全体を二次元で繰り返すことにより構築できる、ノズルと通気開口との最小のグループである。
【0037】
「の上」、「の下」、「頂部」、「底部」等の用語は、下向きであるノズル噴射方向を有する、印刷ヘッドの底部側に、ノズル層が配置されるように理解されるべきである。
「水平」は、ノズル層の平面に平行な方向を示す。「垂直」は、ノズル層の平面に垂直な方向を示す。
【0038】
一般的な構成:
図1は、本発明の実施形態の一般的な構成を示す。図1は、ターゲット4にインクを印刷するために使用される、印刷ヘッド2を示す。
【0039】
印刷ヘッド2は、例えば特許文献1に記載されるような基本設計を有しており、且つインクを噴射するためのノズル6の配列を具備する。以下の実施形態において、より詳細に説明するように、ノズル6に配置されたノズル電極は、ノズル6からインク液滴を電気流体力学的に噴射するように使用されており、そして加速電極は、ノズルからターゲット4へインクを加速する。
【0040】
ターゲット保持器8は、印刷ヘッド2の下に配置され、例えば、印刷ヘッド2の下の0.1から2mmの距離でターゲット4を保持するように適合される。ターゲット保持器8は、例えば、該加速電極を形成してもよい。
【0041】
この例において、均一な電気が、印刷ヘッド2とターゲット4との2つの平坦な表面の間において生じることができ、均一な電気が、任意のノズル6から印刷ヘッド2の表面に対して垂直な方向において噴射された液滴を、液滴が堆積するターゲット4に向かって加速するように、加速電極は、ターゲット4に関係する。
【0042】
印刷ヘッド2は、印刷ヘッド温度制御装置10を具備してもよく、及び/又は印刷ヘッド温度制御装置10に熱的に接続されてもよく、そしてターゲット保持器8は、印刷ヘッド2とターゲット4との間に温度勾配を導入することにより、基板8上においてインクの乾燥を促進するように、ターゲット温度制御装置12を具備してもよく、及び/又はターゲット温度制御装置12に熱的に接続してもよい。
【0043】
温度制御装置10、12は、抵抗加熱器、又はペルチェ素子を具備してもよく、あるいは、温度制御装置10、12を通過する液体を遠隔で加熱又は冷却してもよい。
いずれにせよ、受動的な加熱又は冷却もまた、例えば、印刷ヘッド又はターゲットの何れか、あるいはその両方を室温に戻すように利用してもよい。
【0044】
有利な実施形態において、印刷ヘッド温度制御装置10は、インク自体を冷却又は加熱するように適合される。例えば、インクは、印刷ヘッド2の外側で冷却又は加熱されて、その後印刷ヘッド2に供給されてもよい。
【0045】
より良好な温度制御のために、印刷される前にインクは、再循環されてもよい。言い換えれば、そして図1に示されるように、印刷システムは、印刷ヘッド2を介してインクを循環させるために印刷ヘッド2に接続する循環ポンプ13を具備してもよく、その際、有利には、インクは、印刷ヘッド温度制御装置10により温度制御される。循環するインクの一部は、印刷のためにノズル6に分岐される。
【0046】
加熱及び/又は冷却のための技術の組み合わせもまた、使用されてもよい。例えば、金属の塊、又は窒化アルミニウム等の良好な熱伝導性を有する別の材料の塊が供給層26に接触している状態で、前記塊を加熱又は冷却するために、ペルチェ素子を使用することができる。同時に、この塊は、インクが通過するものであってもよく、その場合、インクは、供給層26に入る前に、塊の温度を吸収する。
【0047】
印刷ヘッド温度制御装置10は、有利には、印刷ヘッド2の温度がターゲット温度制御装置12によりターゲット4に設定された温度よりも低くなるように、印刷ヘッド2の温度を設定する。この様にして、より高い液体の蒸発速度が、印刷ヘッド2に比べて、ターゲット4において生成される。印刷ヘッド2及びターゲット4の両方の絶対温度は、室温より高くても又は低くてもよいが、他方で依然として、印刷ヘッド2は、比較すると、ターゲット4よりも低い温度であることが理解される。例えば、印刷ヘッド2の温度は、50℃が選択されてもよいが、他方で、ターゲット4の温度は、100℃が選択されてもよい。ターゲット4のその様な高温は、液滴衝突時の溶媒の蒸発を促進するだけではなく、更に加えて、ターゲットにおける温度は、原位置における、インク内に含まれる堆積材料のある種の焼結温度を導入するために選択されてもよい。更に、異なる蒸気圧の溶媒に合わせて調整することも、可能である。例えば、より低い沸点の液体は、より高い沸点の液体よりも低い中央温度にて処理してもよい。ここで、中央温度とは、ターゲット4と印刷ヘッド2との間の中間温度を意味する。
【0048】
以下でより詳細に説明するように、印刷ヘッド2は、吹き出し開口14と吸引開口16とを具備する、複数の通気開口を具備する。
【0049】
吹き出し開口14は、ノズル6の下の領域18にガスを供給するように使用される。吸引開口16は、領域18から離れたところにガスを供給するように使用される。
【0050】
ガス源20は、ポンプ又は圧力貯蔵槽と、任意選択で、印刷ヘッドの入口21に直列に接続する、質量流コントローラ20aと、を具備してもよい。これとは別に又はそれに加えて、ガス溜め22は、真空ポンプ又は低圧貯蔵槽と、任意選択で、印刷ヘッドの出口23に直列に接続する、質量流コントローラ22aと、を具備してもよい。
【0051】
質量流コントローラは、質量流センサと、圧力調整器と、直列に接続された高速切替ピエゾ弁20b、22bと、を具備することが有利である。ピエゾ弁は、ガス源から入口へ、又はガス溜めから出口への高速オン(入)/オフ(切)切り替えに使用される。定常状態のガスの流れは、圧力調整器により制御され、質量流量センサをフィードバック装置として使用する。圧力調整器の圧力はまた、過渡特性を改善するように、定常状態の流れのための要件よりも重要視して設定されてもよい。
【0052】
結果的に、ピエゾ弁は、線形比例方式又はパルス幅変調方式において操作され、定常状態の流れを制限及び制御する。圧力調整器は、ハーフブリッジ構成の2つの高速切替ピエゾ弁と圧力センサとを使用して、前述の線形比例方式又はパルス幅変調駆動方式を適用することにより完全に省略できる。
【0053】
ガス流が、ターゲット4におけるインクの印刷流量及び乾燥速度に対して調整されることが有利であるので、印刷ヘッドのオン状態とアイドル(idle)状態との間におけるガス流の高速切り替えは,有益である。例えば、印刷の終了において、印刷流量は、急速にゼロになってもよく、その場合において、有利には、ノズルからの液体の蒸発を加速しないために、ガス流量は同様に、ゼロに減少することである。市販の質量流コントローラは、100ミリ秒のオーダーで正確なガス流制御及び設定時間を可能にする。ピエゾ弁の使用により、1~10ミリ秒のオーダーの又は1ミリ秒未満でさえも高速切替及び設定時間が、実現される。
【0054】
より一般的に言えば、本発明の印刷システムは、通気開口14、16を通過する、及び/又はガスの流れを制御するための弁20b、22bを通過する、ガスの質量流量を調整する(即ち、所望のレベル(水準)において測定及び維持する)ための少なくとも1つの質量流量コントローラを具備してもよい。
【0055】
印刷ヘッド2は、ノズル6並びにノズル電極を具備する、ノズル層24と、供給層26と、を具備する。供給層26は、ノズルにインクを供給するための供給ダクトと、同様に通気開口14、16をそれらのそれぞれのガス源20及びガス溜め22に接続する、通気ダクトと、を構成する。
【0056】
ノズルと通気開口の幾何学的形状:
ノズル6及び通気開口14、16の配置は、領域18を通るインクの軌道、並びに基板及びノズルにおけるインクの乾燥挙動に影響を与えることができ、従って、ノズル6及び通気開口14、16の配置は、注意して設計される必要がある。
【0057】
図2は、図1に示される設計に対応する、第1の実施形態を示す。ここで、各ノズル6は、1つの吹き出し開口14と1つの吸引開口16との間に(即ち、吹き出し開口14と吸引開口16との間の接続線上)配置される。ノズル6は、有利には、これらの2つの通気開口14、16の間の中央に配置される。
【0058】
図2は、お互いに平行に伸びる、2列のノズル6及び通気開口14、16を示す。図2は、ノズル6の配列及び配列の通気開口14、16のごく一部のみを示す。
【0059】
図示されるように、配列は、複数のユニットセル28に分割可能である。図2は、各々が点線の正方形で囲まれた、その様な2つのユニットセル28を示す。
各ユニットセル28は、少なくとも1つのノズル6と、制御された局所的なガス流をノズル6の周りに生成するために、吹き出し開口14の少なくとも一部と、吸引開口16の少なくとも一部と、を具備することが有利である。
【0060】
図2の実施形態において、各ユニットセル28は、正確に1つのノズル6と、その隣接する吹き出し開口14と、その隣接する吸引開口16と、を含む。
通気開口14、16により生成されるガス流は、破線の矢印30により示される。特に、ノズル6の出口を横切る基本的に線形のガス流が存在する。ガス流は、ノズルから出るインクを偏向させる傾向があるが、しかしガスの流れは全てのノズルにおいて同じであるので、ガスの流れにより引き起こされる偏向は、基板8に堆積した全てのインクの線形のオフセットを結果的にもたらすだけである。
【0061】
図3は、ノズル6及び通気開口14、16の配置の別の実施形態を示す。
ここで、各ユニットセル28は、正方形32の縁部の中心(縁部は、ユニットセル28の境界と一致する)に交互に配置された、吹き出し開口14の半分2つ及び吸引開口16の半分2つと、正方形32の中心における1つのノズル6と、からなる。
【0062】
この設計において、そして図3に示すように、ノズル6を横切る直接的なガス流13は存在せず、それにより、ノズルにより噴射されるインクの偏向は減少する。図2の第1の実施形態において引き起こされるような均一な偏向力でさえも、例えば、もし印刷ヘッドと基板との間の距離が全てのノズルについて同じではない場合には、問題を引き起し得るので、これは有益である。この場合において、幾らかの液滴は、別の液滴よりも長時間の間偏向し、そのことは、基板上のそれらの幾らかの液滴の衝突位置において相対的なオフセットをもたらす。距離の変動は、印刷ヘッドと基板表面の間の不適切な整列により引き起こされる場合があるが、しかし基板に配置された表面トポグラフィの存在によっても潜在的に引き起こされる場合がある。従って図3の実施形態は、図2の実施形態よりも優れていると見なされてもよい。
【0063】
図4は、ノズル6及び通気開口14、16の配置の第3の実施形態を示す。
ここで、各ユニットセル28は、第1の正方形34の角部にある4つの4分の1の吸引開口16と、第1の正方形34の縁部の中央にある4つの半分の吹き出し開口と、第1の正方形34の中心にある1つの吸引開口16とからなる。更に、ユニットセルは、第2の正方形36の角部にある4つのノズル6を具備する。第1と第2の正方形34、36は、平行な縁部を有しており、同心であり、第1の正方形34は、第2の正方形36の2倍の直径を有する。
【0064】
この場合に、隣接する2つのノズル6の周りのガス流は反対方向である。しかしながら、ノズル6を直接的に横切るガスの流れが存在しない(図3の実施形態と同様に)ので、この非対称性の影響は軽微である。
【0065】
図4の実施形態におけるユニットセル28はまた、ノズル1個の間隔によりオフセットしてもよい(例えば、図において右側に向かって)ことが留意されなければならない。その場合において、各ユニットセル28は、第1の正方形34の角部にある4つの4分の1の吹き出し開口14と、第1の正方形34の縁部の中央にある4つの半分の吸引開口16と、第1の正方形34の中央にある1つの吹き出し開口14とからなる。言い換えれば、ユニットセルは、複数の方法で表現することができ、その際、その表現は、ノズル8及び通気開口14、16の同じ物理的配置を表現するという点において、置き換えすることができる。
【0066】
このことは、その様なユニットセルを表現する方法が通常複数存在することを示しており、そしてクレームに記載されたユニットセルの類型を満たすためには、所与の物理的配置がクレームに記載されたユニットセルの類型のユニットセルに分割できれば十分である。
図2及び3の実施形態において、各ノズル8に対して2つの通気開口14、16が設けられるが、他方で、図4の実施形態において、各ノズル8に対して単一の通気開口14、16のみが設けられる。従って、図4の実施形態のノズルの密度は、図2及び3の実施形態よりも大きくすることができる。
【0067】
印刷ヘッドの設計:
図5~8は、印刷ヘッド2のノズル層24及び供給層26の可能な設計を示す。
ノズル層24のノズル6の設計は、特許文献1に開示される装置の設計に実質的に対応する。
【0068】
特に、各ノズル6は、窪み42に配置された噴出口40を具備する。噴出口40より下の高さにおいて、少なくとも1つのノズル電極44が窪み42を取り囲み、噴出口40に形成された液体メニスカスからインクを取り出すように使用される。図示される実施形態において、ノズル電極44は環状である(図8を参照)。
【0069】
図示される実施形態において、任意選択の遮蔽電極46は、ノズル電極44の下のレベルに配置される。遮蔽電極46は、各ノズル6の位置の開口を除いてノズル6の配列を実質的に全て覆い、隣接するノズル6のノズル電極44の影響を遮蔽し、領域18内の均一な電界を維持するのに役立つ。
【0070】
ノズル層24は、電極44、46の間において第1の誘電体副層48と、ノズル電極44の真上において第2の誘電体副層50と、を具備してもよい。第3の誘電体副層52は、噴出口40を形成する。第4の誘電体副層54は、各噴出口40をその窪み42の中心に配置及び保持するための噴出口40の支持膜を形成する。
【0071】
供給層26は、ノズル6にインクを供給するための供給ダクト56a、56bを構成する。図示される実施形態において、それらは、ノズル6から垂直に上方に伸びるビア部位(via section)56aと、水平相互接続部位56bとを具備する。後者は、例えば図5の断面に対して垂直に伸び、それらの各々は、複数のビア部位56aを相互に接続する。相互接続部位56bは、印刷ヘッド2のより大きなインク末端部に接続してもよく、そこでは、インク貯蔵槽がインク末端部に接続してもよい。
【0072】
通気開口14、16は、通気ダクト58a、58b、58cに接続しており、これらの通気ダクト58a、58b、58cは、印刷ヘッド2を通って、ガス源20及びガス溜め22に接続可能な通気末端部60まで伸びる。
【0073】
図示される実施形態において、通気ダクト58a、58b、58cは、通気開口14、16から印刷ヘッド2の少なくとも一部を通って、特に、ノズル層24と供給層26の少なくとも一部を通って垂直に伸長する、煙突状部58aを具備する。
更に、示された通気ダクト58a、58b、58cは、2セットの相互接続ダクト58b、58cを具備しており、これらの相互接続ダクトのそれぞれは、複数又は全ての通気開口14、16を相互に接続する。
図示されるように、有利には、相互接続ダクト58b、58cは、印刷ヘッド2を通って水平に伸びる。
【0074】
図示される実施形態において、相互接続ダクトの第1のセット58bは、吹き出し開口14を相互接続し、相互接続ダクトの第2のセット58cは、吸引開口16を相互に接続する(逆もまた同様)。2つのセットは、吹き出し開口14にガスを供給するため、及び吸引開口16から離れたところにガスを供給するための別個のダクトシステムを構成する。従って、この例において、図3に示されるものと本質的に等しい、通気開口の配置が示される。
【0075】
有利には、相互接続ダクト58b、58cの第1と第2のセットは、印刷ヘッド内の異なる垂直の高さに設置されており、それにより第1と第2のセットを分離して保持することをより容易にする。何れの場合においても、相互接続ダクト58b、58cを形成した後に、単一の垂直通気ダクトが、供給層26の次のより高い水平面の高さへガス流を存続させるように形成されてもよい。この様にして、異なるガス圧の相互接続ダクト(即ち、吹き出しの吸引専用)又はインクを運ぶ水平方向の相互接続部位の形成のために空間が生成される。このことは、図3に示されるものとは別の実施形態にとって、重要であり得る。
【0076】
例えば、図4の実施形態によれば、吸引又は吹き出しタイプの何れかの通気ダクト58aの相互接続は、別のタイプ(即ち、吹き出し又は吸引)の通気ダクト58aの上又は供給ダクト56aの上を通過しなければ、可能ではないであろう。何れにしても、相互接続をうまく行うために、図5に示されるように、ビア部位56aを水平方向の相互接続部位56bにより先ず相互接続することが可能である。多くのビア部位56aが以前に占めていた空間を解放することにより、したがって、供給層26のより高い副層上の通気ダクト58aを相互接続できるであろう。
【0077】
供給層26のより高い副層に向かう通気ダクト58aの数の減少は、最終的に、少なくとも1つの通気末端部60に減少させる。
【0078】
しかしながら、その様な減少は、任意の2つの吹き出し開口14又は吸引開口16からそれぞれの入口21又は出口23(図1を参照)までの距離が個々の開口間で異なってもよいことを意味する。有利には、異なる吹き出し開口14又は吸引開口16を通る同等のガス流を得るために、圧力降下が、主に、吹き出し開口14又は吸引開口16の細い管路、又は印刷ヘッド2全体にわたって均一である任意の別の管路、によって、確実に生じるようにする。このため、図5の実施形態では、煙突状部58aを具備する。
【0079】
このことは例えば、不均一な対応物、例えば相互接続ダクト58b、58cと比較して、均一な通気ダクト、例えば、煙突状部58a等の平均断面積及び長さを調整することにより、成し得ることができる。所与の通気ダクトのより小さな断面及びより長い長さは、それにより、より高い圧力降下を意味する。従って、評価できる結果を達成する1つの方法は、通気ダクトの均一な部分にわたる圧力降下が平均して特定のパーセンテージ未満に変化するまで、吹き出し開口14及び吸引開口16の直径を小さくすることである。その様なパーセンテージは、全ての吹き出し開口14及び吸引開口16にわたって25%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましい。
【0080】
より一般的に言えば、印刷ヘッドの動作は、有利には、以下のステップのうちの少なくとも1つを具備する。
即ち、印刷ヘッド2の少なくとも1つの入口21を介して、印刷ヘッド2の複数の吹き出し開口14にガスを供給するステップであって、少なくとも1つの入口(21)と吹き出し開口14との間のガスの流動抵抗が、全ての該吹き出し開口14にわたって(即ち、全ての該吹き出し開口14について)、25%未満、特には5%未満で変化する、ステップ、及び/又は、
印刷ヘッドの吸引開口16から印刷ヘッド2の少なくとも1つの出口23を介してガスを供給するステップであって、吸引開口16と少なくとも1つの出口23との間のガスの流動抵抗が、全ての該吸引開口16にわたって(即ち、全ての該吸引開口16について)25%未満、特には5%未満で変化する、ステップ。
【0081】
供給ダクト56a、56b及びノズル6の直径を設計する場合にも、有利には、同等の工程が実行される。この場合、関連する流量は、液体を噴射する時に、ノズル6を通る液体の流量である。
【0082】
図示される実施形態において、供給層26は、供給層26(以下に説明される)内の様々な導電性通路を絶縁するために、有利には誘電体材料である、幾つかの副層を具備する。
第1の副層62aは、ビア部位56a並びに煙突状部58aの一部を構成する。
第2の副層62bは、インク用のインク供給ダクトの相互接続部位56bを構成する。煙突状部58aは、この第2の副層62bを通り抜けて伸びる。
【0083】
第3の副層62cは、第2の副層62bを覆い、相互接続部位56bを上から閉じる。煙突状部58aは、この第3の副層62bを通り抜けて伸びる。
第3の副層62bはまた、各相互接続部位56bから少なくとも1つのビア部位を構成してもよい。同じビア部位はまた、インク末端部を介してインク源に通じることを可能にする開口が最上層に形成されるまで、より高い各副層内に上向きに伸びてもよい。この例において、1つのその様なビア部位56c及びそれぞれのインク口56dは、点線で示される。これは、供給ダクトを相互接続した後に、ごく少数のビア部位だけが、完全に最上層までの全経路で有効に形成されることが必要であることを例示する。
【0084】
第4の副層62dは、吹き出し開口14へのガス用の相互接続ダクトの第1のセット58bを構成する。吸引開口16に関係する煙突状部58aは、この第4の副層62dを通過して伸びる。
第5の副層62eは、第4の副層62dを覆い、相互接続ダクト58bを上から閉じる。吸引開口16に関係する煙突状部58aは、この第4の副層62eを通過して伸びる。
【0085】
第6の副層62fは、吸引開口16からのガス用の相互接続ダクトの第2のセット58cを形成する。
第6の副層62fはまた、相互接続ダクトの第1のセット58bの各相互接続ダクトからの少なくとも1つの煙突状部を形成してもよい。同じ煙突状部はまた、ガス末端部60(図示せず)の形で最上層に開口が形成されるまで、その後に続く上部副層の各々の中へ伸びてもよい。
【0086】
第7の副層62gは、第6の副層62fを覆い、相互接続ダクトの第2のセット58cを上から閉じる。第7の副層62gは、また、1つ以上のガス末端部60を形成してもよい。
前述のように、様々な電極を印刷機の1つ以上の電圧源に接続するために、幾つかの導電性通路が、印刷ヘッド2、及び特に、供給層26に設けられる。
導電性通路は、印刷ヘッドの副層の幾つか又は全てを通過して伸びる、適切な電気ビア(electrical vias)を具備してもよい。
【0087】
1つの特に有利な実施形態において、印刷ヘッド2は、通気ダクト58a、58b、58cの少なくとも一部を通過して伸びる、導電性ビア64を含んでもよい。特に、その様な導電性ビア64は、煙突状部58aの少なくとも幾つかに沿って伸びてもよい。導電性ビアは例えば、それぞれの煙突状部58aの壁の少なくとも一部に沿って伸びる、導電性被覆により形成されてもよい。
【0088】
図8に示すように、導電性ビア64は、ノズル電極44に接続してもよい。異なるノズル電極44を少なくとも2つの異なる電圧源に接続させるために、ビア64の半分は、導電性の相互接続線の第1のセット66aに、例えば副層62cの頂面において(図7を参照)接続する一方、ビア64の残りの半分は、導電性の相互接続線の第2のセット66bに、例えば副層62eの頂面において、接続しても良い。
【0089】
煙突状部58aの導電性ビア64はまた、上記の用途に加えて又はその代わりに、遮蔽電極46等の印刷ヘッド2の任意の別の電極(単数又は複数)に電圧を供給するように使用されてもよいことが留意されなければならない。
【0090】
印刷ヘッドを特定の温度に設定するべき場合には、有利には、幾つかの電気ビア64を、例えば、金属インクを空洞内に電気メッキするか、或いは金属インクを印刷することにより、金属で完全に満たされた別個のビアとして少なくとも形成する。特に、銅の様な熱伝導率の良い金属は、その様なビアを充填するように使用することができる。この様にして、冷却又は加熱装置により印刷ヘッドにもたらされる温度は、その名のとおり、あまり良好な熱伝導特性を有さない供給層の誘電体層を横切って、ノズル層に効率的に送られる。
【0091】
図示されるように、印刷ヘッド2のノズル層24と共に供給層26は、単一の一体型の主要部を形成する。ノズル層24と供給層26は、例えば、半導体技術で知られるように、マスキング及びエッチングの手段を使用して製造されてもよい。
【0092】
特に、供給層26は、永久乾燥フィルムレジストの積み重ね及びパターニングにより、例えば、エポキシベースのドライフィルムレジスト、又は個々のパターニングされたガラスシート、特に、例えば接着剤の接着により共に接着される、レーザーパターニングされたガラスシートから、作製されてもよい。
【0093】
印刷ヘッドの動作:
印刷ヘッドは、ノズル6からターゲット4にインクを噴射するために、ノズル電極44に適切な電圧パルスを印加することにより動作する。
同時に、又は実際の印刷ステップとは異なる時間において、ガスは通気開口14、16を介して運ばれる。
インクを印刷するステップ及びガスを運ぶステップは、また、以下の例で説明するように、断続的に行われてもよいにも係らず、有利には、同時に行われる。
【0094】
有利には、吹き出し開口14を介して領域18に運ばれるガスの流量(例えば、毎秒当りの領域18に運ばれるガス量)は、領域18から吸引開口16を介して運ばれるガスの流量(例えば、毎秒当りの領域18から運ばれるガス量)と等しい。これは、領域18のガス組成を均一に保って、領域18の縁部に向かう横方向のガスの流れを回避するために役立ち、横方向のガスの流れは、例えば、その横方向のガスの流れを通過する液滴の形態の、インク構成要素を偏向させる可能性がある。
【0095】
しかしながら、吹き出し開口14と吸引開口16を通る流量が等しい必要はないことが留意されなければならない。実際には、あるタイプの通気開口(吹き出し開口又は吸引開口のいずれか)は、やはり完全に省略されてもよいが、その一方で、領域18の縁部における全体的な水平ガス交換に依存することにより、領域18を通気することもやはり可能である。その場合において、例えば、領域18は、吹き出し開口14から新鮮なガスで溢れていてもよいか、又は、領域18は、古いガスが吸引開口16により除去されながら、領域18の縁部から水平方向に引き込まれる新鮮なガスで溢れていてもよい。この実施形態において、領域18におけるガス流により引き起こされる非対称な偏向を回避するために、有利には、ガス流を作動させる間に、印刷が、中断されてもよい。
【0096】
また、印刷が中断される場合に、印刷ヘッド2とターゲット4との間の温度差が維持されながら、ガスの流れが活性化されないことが有利である。印刷中止後もガスの流れが続く場合、ターゲットから印刷ヘッドに向かう拡散性のガスの流れがないため、ターゲット上に液体が無いことは、ガスの流れがノズルから液体を除去することを維持することを意味する。ノズルの耐目詰まり性を支えるために、ガスは、部分的な飽和状態のガスの種類から完全に飽和状態のガスの種類に切り替えられてもよい。
【0097】
吹き出し開口14から領域18に運ばれるガスは、以下の機能の内の1つ以上を満たしてもよい。
-ガスは、乾燥させるため、即ち、蒸発したインク溶媒又はインク媒体を領域18から運び去るために、使用されてもよい。この場合において、インクは、ターゲット4上で気化する成分を有しており、該成分の濃度は、吹き出し開口14から領域18に供給されるガスにおける方が、吸引開口16を介して排出されるガスよりも、低い。
-ガスは、空気とのインクの望ましくない化学反応を防ぐ不活性ガスであってもよい。例えば、ガスは、窒素又は希ガスを含有してもよい。
ガスはまた、乾燥を助けるため、及び化学的に不活性な雰囲気を導入するための両方の目的に使用可能であることが理解される。
【0098】
エッジフロー(Edge Flow)の制御:
図11は、通気開口14、16を備えた印刷ヘッド2に関する別の有利な技術を示す。例として、図3のノズル6及び通気開口14、16の平面配置について示されるが、しかし、この平面配置は、本明細書に記載される実施形態のいずれかを用いて組み合わることができる。
【0099】
この図は、印刷ヘッドの縁部領域を示しており、ここで参照番号70は、印刷ヘッドの2つの縁部を概略的に示す。簡略化のために、吹き出し開口14は、プラス記号で示されており、吸引開口16は、マイナス記号で示される。ノズル6は、小さな黒い点で表される。
【0100】
図11は、作動中のノズル6の外側境界72を更に示す。図において、境界72の左側のノズル6は、印刷ヘッド2のコア領域74において、印刷のために作動できるように構成される。印刷時には、ノズル6は、インクを噴射するように作動している。
【0101】
境界72の外側の領域、即ち縁部領域76において、作動可能なノズルは存在しないが、しかし複数の吹き出し開口14及び/又は吸引開口16が存在する。
図示されるように、縁部領域76において、吹き出し開口14及び/又は吸引開口16は、有利には、境界72に平行に、列に沿って、特に単一の列に沿って、伸びている。
【0102】
より一般的に言えば、印刷ヘッドは、作動可能ノズル6及び通気開口14、16を備えたコア領域74と、コア領域74を取り囲み且つ通気開口14'、16'を備える一方で、作動可能ノズル6を備えない縁部領域76と、を具備しており、縁部領域76とコア領域74の間に(仮想)境界線72を備えることが有利である。
図11の実施形態において、コア領域74を取り囲む通気開口14’、16’、16”の1列が正確に設けられる。
【0103】
これらの通気開口14’、16’、16”は、図11の実施形態において、コア領域74の通気開口14、16よりも小さい直径を有し、それにより、より少ないガス流量を生成する。この設計は、縁部に沿った通気開口14'、16'、16”が、コア領域74における通気開口よりも少ない数の隣接する通気開口を有することを考慮している。従って、それらを通るガス流を減らすことは、印刷ヘッドのフローパターンを、一番外側の作動ノズル6の位置において、より均一にする。
【0104】
一般的に、印刷ヘッドは、最外列の通気開口14'、16'、16”の少なくとも幾つかを通じて、コア領域74の通気開口14、16を通じるよりも少ないガス流量を生成するように適合し及び構成される。
【0105】
特に、コア領域74の外側の縁部に沿った最も外側の通気開口14'、16'(但し、角部の通気開口16”ではない)は、図11の実施形態において、4つの隣接する通気開口の代わりに3つだけを有しており、従って、それらを通るガス流は、有利には、コア領域の通気開口14、16を通るガス流の約75%である。同様に、コア領域74の角部の外側の通気開口16”を通るガス流は、有利には、コア領域74の通気開口14、16を通るガス流の約50%を有するように適合されるべきである。
【0106】
図11において、ガス流量の減少は、前述のように、最も外側の通気開口14’、16’、16”の直径の減少により実施される。直径の減少量は、通気開口と通気ダクトとの長さ及び形状に依存しており、数値シミュレーション及び/又は近似計算を使用して計算できる。
【0107】
通気開口14‘、16’、16“の直径を縮小する代わりに、これらの通気開口に繋がる通気ダクトの直径が、縮小されてもよい。
更に別の実施形態において、別個のガス源及び/又はガス溜めが、コア領域74と縁部領域76に設けることが可能であって、後者は、前者より低いガス流量のためにより低い圧力を有する。
【0108】
図12は、コア領域74の縁部における不均一なガス流を低減するための別の設計を示す。
ここで、縁部領域76は、奥行きがある通気開口の幾つかの列であるが、縁部領域76の通気開口14’、16’は、有利には、コア領域74の通気開口と同じガス流量(少なくとも境界72に近く)を有する。
【0109】
境界72から縁部領域76の最も外側の通気開口14'、16'(即ち、境界72から最も遠く離れる縁部領域76のこれらの通気開口)までの距離Wは、境界72に垂直な方向に沿ったコア領域74における平均ノズル間距離Dの少なくとも2倍、特に、少なくとも5倍である。
【0110】
図11及び12の実施形態の場合において、並びに作動可能なノズルのない縁部領域を有する任意の別の実施形態において、印刷ヘッドを動作させるための方法は、有利には、縁部領域76から全くインクを噴射しないことを具備する一方、当該方法は、コア領域74のノズル6からインクを噴射することを具備する。
【0111】
その様な特別に設計された縁部領域76を使用することは、通気開口により生成されるガス流パターンが、通気開口により覆われる区域の縁部において不均一になる傾向があること、即ち、蒸発したインクの不均一な分布と、異なるノズルにより噴射された液滴間の僅かな飛行経路の逸脱を引き起こす可能性のある、不均一な気流パターン、の原因になる傾向があること、を理解することに基づく。従って、均一な印刷結果のためには、縁部領域76において作動可能なノズルがないことが有利である。
【0112】
前述のように、縁部領域76において作動可能なノズルは、存在しない。これは、例えば、次の手段のうち1つ以上の手段により達成できる。
-縁部領域76において全てのノズルをなくすこと。
-縁部領域76においてノズルを設けるが、それらをインク源に接続しないこと、及び/又は
-ノズルにノズル電極44を設けないこと、及び/又はノズル電極44を電圧源に接続しないこと、及び/又は(動作中)これらのノズル電極に電圧を印加しないこと。
【0113】
印刷ヘッドは、コア領域74の通気開口14、16を通じるよりも小さなガス流量を、縁部領域76の通気開口14’、16’の少なくとも幾つかを通じて生成するように適合及び構成されることが有利である。これは例えば、図11に示されるように、縁部領域76の通気開口の少なくとも幾つかを、コア領域74の通気開口14、16よりも小さい直径、特に、少なくとも5%小さい直径で設けることにより達成できる。
【0114】
縁部領域76においてガス流通気開口が減少するような場合及び同様の場合において、印刷ヘッドを動作させる方法は、有利には、縁部領域76の通気開口14、16の少なくとも幾つかから通すよりも、コア領域74の少なくとも幾つかの通気開口14、16を通じて、より多くの量のガスを供給することを具備し、有利には、通気開口14、16からのガス流量が少なくとも20%少ないことである。
【0115】
注記:
規則的な配列に配置されたノズル6とは別に、印刷ヘッド2は、該配列の外側に別のノズル、例えば特別な印刷作業専用のノズル、を具備してもよい。これらの別のノズルは、有利には、数がより少ない(例えば、全てのノズルの10%以下)ことであり、これらの別のノズルは、それら自身の通気開口を備えてもよく、又は備えなくてもよい。
【0116】
上記の例において、ユニットセル28は正方形である。但し、それらがまた、単なる長方形であってもよいことが留意されるべきである。ユニットセルの設計によっては、長方形よりも正方形の形状の方が、より高度な形状であり、ノズルの周囲の同一のガスの流れを維持するために有利な場合もあるが、2つの垂直な水平方向において等しいノズル間隔を厳密に設定する必要性は存在しない。
【0117】
同様に、ノズルは、正方形の様式において配置する必要はなく、しかしまた六角形の様式において配置されてもよい。例えば、これは、隣接する4つのノズル8の位置にその縁部が配置された正方形の中心を形成する、全てのそれらの位置において、図3の印刷ヘッド2にノズル8を追加することにより実現されるであろう。この様にして、印刷ヘッドのノズル8の数は、2倍になる一方、通気開口14、16の数は一定のままである、つまり、ノズル8毎に1つの通気開口14、16のみが存在するため、図4の状況と同様に、単一のノズルのレベルでは対称性はもはや存在しない。これは、図9に示される。
【0118】
最後に、図10は、ノズルが3回対称に配置された設計を示す。
本発明の現在好適な実施形態が示され、説明されるが、本発明は、それに限定されないが、以下の特許請求の範囲内で別の方法で様々に具体化及び実施されてもよいことが明確に理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】