(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】止血ハイドロコロイドの形成および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61L 15/28 20060101AFI20220915BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20220915BHJP
A61L 27/26 20060101ALI20220915BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20220915BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61L15/28
A61L27/20
A61L27/26
A61B17/00 400
A61M35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503417
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 US2020042809
(87)【国際公開番号】W WO2021011940
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522021170
【氏名又は名称】ユナイテッド・ヘルス・プロダクツ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ナジビ,ササン
(72)【発明者】
【氏名】ベプレート,ダグラス
【テーマコード(参考)】
4C081
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C081AA07
4C081AA14
4C081AB19
4C081BA11
4C081CD02
4C081DA12
4C081DA15
4C160MM18
4C267AA61
4C267BB19
4C267BB35
4C267CC01
(57)【要約】
創傷部位に分配するための止血ハイドロコロイドを形成するための方法およびシステムは、
モノマーの鎖を含み固体形態にある酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマー、
該鎖中の第1の複数のモノマーに関し、Rは-OCH
2(COO)CH
2CH
3であり、R1は-OCH
2(COO)CH
2CH
3であり、R2は-CH
2OCH
2(COO)CH
2CH
3であり;該鎖中の第2の複数のモノマーに関し、Rは-OCH
2(COO)CH
2CH
3であり、R1は-OCH
2(COO)CH
2CH
3であり、R2は-(COO)CH
2CH
3である;ならびに
創傷部位に分配するための止血ゲルを形成するためにポリマーと混合される液体;
を包含する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷部位に分配するための止血ハイドロコロイドの形成方法であって、
固体形態にある酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーを第1の混合および分配装置に提供すること、該酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーはモノマーの鎖を含み、該鎖中の第1の複数のモノマーに関し、Rは-OCH
2(COO)CH
2CH
3であり、R1は-OCH
2(COO)CH
2CH
3であり、R2は-CH
2OCH
2(COO)CH
2CH
3であり;該鎖中の第2の複数のモノマーに関し、Rは-OCH
2(COO)CH
2CH
3であり、R1は-OCH
2(COO)CH
2CH
3であり、R2は-(COO)CH
2CH
3である;
液体を第2の混合および分配装置に提供すること;
第1の混合および分配装置を第2の混合および分配装置に接続して、第1および第2の分配および混合装置の間の液体の流れを可能にすること;ならびに
液体を、固体形態にある酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマー中に分配すること;
液体および酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーを、止血ゲルが形成するまで、第1および第2の混合および分配装置の間で繰り返し混合すること;
を含む、前記方法。
【請求項2】
さらに、アダプターを第1および第2の混合および分配装置の間に接続することを含み、該アダプターが、第1および第2の混合および分配装置の間の液体の流れが可能になるように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アダプターが三方活栓を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
活栓が、流れが第1および第2の混合および分配装置の間のみを通過できるように位置付けられた弁を包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
液体が滅菌水または生理食塩水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーが、顆粒、粒子、小片の状態にあるか、または顆粒化もしくは粉末化形態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の分配および混合装置が第1のシリンジを含み、第2の分配および混合装置が第2のシリンジを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに、第2のシリンジの第2のプランジャーを押して第2のシリンジから第1のシリンジに液体を押し込み、それによって、第1のシリンジの第1のシリンジプランジャーを伸長させ、酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーを湿潤させて、止血材料/液体混合物を形成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらに、第2のシリンジプランジャーを押して第2のシリンジから第1のシリンジに止血材料/液体混合物を押し込んで、第1のシリンジの第1のシリンジプランジャーを伸長させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、第1のシリンジプランジャーを押して第1のシリンジから第2のシリンジに止血材料/液体混合物を押し込んで、第2のシリンジの第2のシリンジプランジャーを伸長させ、止血材料/液体の可視的に均質な混合物が形成するまで、第2のシリンジプランジャーと第1のシリンジプランジャーを繰り返し交互に押して、止血ゲルの形成をもたらすことを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、止血ゲルを含有する第1または第2のシリンジをアダプターから取り外し、選択したシリンジを用いて創傷部位に止血ゲルを注入して、出血を抑制することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アダプターが雌-雌ルアーロックアダプターを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
止血ハイドロコロイドを形成するためのシステムであって、
モノマーの鎖を含む酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマー、
該鎖中の第1の複数のモノマーに関し、Rは-OCH
2(COO)CH
2CH
3であり、R1は-OCH
2(COO)CH
2CH
3であり、R2は-CH
2OCH
2(COO)CH
2 CH
3であり;該鎖中の第2の複数のモノマーに関し、Rは-OCH
2(COO)CH
2 CH
3であり、R1は-OCH
2(COO)CH
2CH
3であり、R2は-(COO)CH
2 CH
3である;ならびに
止血ゲルを形成する酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーと混合される水性液体;
を含む、前記システム。
【請求項14】
さらに、酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーを含有する第1の混合および分配装置と、水性液体を含有する第2の混合および分配装置とを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
さらに、第1および第2の混合および分配装置の間に連結されたアダプターを含み、該アダプターが、第1および第2の混合および分配装置の間の液体の流れが可能になるように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
アダプターが三方活栓を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
活栓が弁を包含し、該弁が、止血ゲルが形成するまでは流れが第1および第2の混合および分配装置の間のみを通過できるように位置付けられ、次いで止血ゲルが三方活栓から流れ出ることが可能になるように位置付けられる、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーが、顆粒、粒子、小片の形態にあるか、または顆粒化もしくは粉末化形態にある、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
第1の分配および混合装置が第1のシリンジを含み、第2の分配および混合装置が第2のシリンジを含む、請求項14に記載のシステムであって、
第2のシリンジの第2のプランジャーを押すと、第2のシリンジから第1のシリンジに液体が押し込まれ、それによって、第1のシリンジの第1のシリンジプランジャーが伸長し、酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーが湿潤して、止血ゲルが形成し、
第2のシリンジプランジャーを押すと、第2のシリンジから第1のシリンジに止血ゲルが押し込まれ、第1のシリンジの第1のシリンジプランジャーが伸長する、
前記システム。
【請求項20】
アダプターが雌-雌ルアーロックアダプターを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血材料の形成および使用方法、より詳細には、さまざまな創傷からの出血および毛細血管性出血を制御するために使用されるゲルまたはフォームに形成される止血ハイドロコロイドの形成および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外科的処置および損傷は、しばしば失血を特徴とする。失血に対処するための従来のアプローチ、例えば、用手圧迫、焼灼、または縫合は、時間がかかる可能性があり、出血を制御するのに必ずしも有効ではない。
【0003】
外科的処置および損傷に起因する出血を制御するために、いくつかの局所止血薬が開発されている。コラーゲンベースの粉末、スポンジ、および布などいくつかの止血薬は、粒状の性質を有する。このような粒状止血薬は天然の血栓形成のための格子を提供するが、凝固障害患者においてこの過程を増強することはできない。トロンビンのような薬理学的に活性な薬物は、例えば、トロンビン、コラーゲン、および/またはカルシウムに浸漬したゲル-フォームスポンジまたは粉末のように、粒子状担体と組み合わせて使用することができる。トロンビンは広範に出血している組織表面上の出血を制御するために使用されてきたが、血餅が接着し得る枠組みの欠如によりその使用は制限されてきた。自己由来および同種異系フィブリン糊は血餅形成をもたらすことができるが、湿組織に十分に接着せず、活動性出血を伴う創傷にほとんど影響を及ぼさない。
【0004】
全体を参照として援用する米国特許公報第8557874号には、化学的に処理されたセルロースから作製された止血布帛材料が開示されており、該止血材料は、創傷表面上で溶解する。一態様において、止血材料は、モノマーの鎖を含む酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーを含み、各モノマーは以下の構造式を有する:
【0005】
【0006】
[式中、鎖中の第1の複数のモノマーに関し、Rは-OCH2(COO)CH2CH3であり、R1は-OCH2(COO)CH2CH3であり、R2は-CH2OCH2(COO)CH2CH3であり;鎖中の第2の複数のモノマーに関し、Rは-OCH2(COO)CH2CH3であり、R1は-OCH2(COO)CH2CH3であり、R2は-(COO)CH2CH3である]。米国特許公報第8557874号にはさらに、凝固過程を強化するために使用される、化学的に処理された植物材料から作製される止血布帛材料の形成方法が開示されている。しかしながら、特定の医療処置におけるこのような止血布帛材料の適用は、とりわけ実用的ではない場合がある。したがって、ゼラチン状またはフォーム様形態にある止血ハイドロコロイドを形成し、このような形態にある止血ハイドロコロイドを、さまざまな創傷からの出血を制御するために適用する方法が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本発明は、さまざまな創傷からの出血の制御に使用するための止血ハイドロコロイドの形成方法に関する。とりわけ、本発明は、化学的に処理された水溶性の植物材料から作製された固体止血材料からの止血ハイドロコロイドの形成に関する。得られる止血ハイドロコロイドは、活動性出血および毛細血管性出血の制御に適している。
【0009】
場合によっては、固体止血材料は、セルロースのベータ-(1-4)-D-グルコピラノースポリマーに基づく酸化誘導体化エステル化セルロースを含むことができる。セルロースのポリマーから、酸化誘導体化エステル化セルロースは、ポリマー内のモノマーの炭素6上のヒドロキシル基の酸化、ならびに/または炭素2、炭素3および/もしくは炭素6(炭素6が酸化されていない場合)上のヒドロキシル基の誘導体化による1以上の酢酸エステルの形成によって、作り出すことができる。場合によっては、つづいてモノマーの炭素2、3、および/または6からの酢酸エステルの1以上をエトキシル化して、エチルエステルを形成してもよい。
【0010】
固体止血材料は、顆粒、フレークまたは粉末の形態にあることができる。その後、固体止血材料を、人体への注入または人体上での使用に安全な液体と組み合わせて、ゼラチン状またはフォーム様形態にあるハイドロコロイド(以下、止血ハイドロコロイドとよぶ)を形成する。例えば、液体は、滅菌水、生理食塩水および/もしくはトロンビン、またはアルブミンなどの発泡剤を含むことができる。これに加えて、止血ハイドロコロイドは、さらなる利点のために、抗生物質など他の材料および/または物質と組み合わせることができる。固体止血材料は、さまざまな方法によって液体と混合することができる。例えば、止血ハイドロコロイドは、2つのシリンジ(例えば、2つの10MLシリンジ)をその間にある三方活栓に接続することによって形成することができる。一方のシリンジは固体止血材料を含有し、他方のシリンジは液体を含有する。一方のシリンジからの液体を、活栓または雌-雌コネクターに通して、固体止血材料を含有するシリンジに押し込む。その後、均一なコンシステンシーが達成されるまで(例えば、30秒~2分)、液体および止血材料を一方のシリンジから他方のシリンジに通して行ったり来たりさせる。固体止血材料と液体との混合によりゲルが形成し、これを、混合後にゲルを含有しているシリンジの1つを用いて望ましい位置に注入することができる。
【0011】
止血ハイドロコロイドは体外および体内の両方で使用することができ、人体によって吸収されることができる。止血ハイドロコロイドの凝固特性に起因して、止血は迅速であり得る。創傷の性質および使用される処置方法に応じて、止血ハイドロコロイドは、動脈または静脈からの活動性出血を制御するために、あるいは腹腔鏡処置中の内部出血または整形外科的処置における骨表面を制御するために、さまざまな形態で製作することができる。止血ハイドロコロイドは、止血を達成するために、組織の中または周囲に安全に注入することができる。さらに、このような止血ハイドロコロイドは、過度の膨潤による感圧性器官または組織の閉塞または圧迫のリスクを示さない。このような止血ハイドロコロイドは、神経/脊椎、腹腔鏡的、整形外科的および心血管的手術に特に適用可能である。
【0012】
固体止血材料は、粉末または顆粒形態にある固体止血材料を含有する第1のシリンジと、望ましい液体を含有する第2のシリンジとを含む、2つのシリンジを含有するキットで提供することができる。2つのシリンジの間に接続された活性または雌-雌コネクターを使用して、止血ハイドロコロイドが必要とされるときに固体止血材料を液体と混合して、ゲルを形成することができる。あるいは、止血ハイドロコロイドは、あらかじめ作製されたゼラチン状形態で単一のシリンジ中に提供される。さらに他の態様において、止血ハイドロコロイドは、必要に応じて発泡止血材料を分配することができるように、液体発泡剤を含有する加圧容器内に提供される。このように、止血材料は、提供される形態にかかわらず、運搬および貯蔵が容易であり、安定であり、貯蔵寿命が比較的長く、手術および日常使用の要件を満たし、戦場での緊急止血に適用することができ、痛みを引き起こさず、正確に創傷に適合し、湿潤していても創傷部位に良好に接着し、公知の副作用がなく、血液凝固異常患者または抗凝固剤服用患者においてであっても高い止血効果を示す。本発明の止血ハイドロコロイドは、形成しやすく、使用が安全かつ容易であり、経済的であり、止血が必要とされるあらゆる状況下で利用することができ、産業において経済的に作製することができる。
【0013】
一態様において、創傷部位に分配するための止血ハイドロコロイドの形成方法は、固体形態にある酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーを第1の混合および分配装置に提供することを含み、該酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーはモノマーの鎖を含み、該鎖中の第1の複数のモノマーに関し、Rは-OCH2(COO)CH2CH3であり、R1は-OCH2(COO)CH2CH3であり、R2は-CH2OCH2(COO)CH2CH3であり;該鎖中の第2の複数のモノマーに関し、Rは-OCH2(COO)CH2CH3であり、R1は-OCH2(COO)CH2CH3であり、R2は-(COO)CH2CH3である。液体を第2の混合および分配装置に提供する。第1の混合および分配装置を第2の混合および分配装置に接続して、第1および第2の分配および混合装置の間の液体の流れを可能にする。液体を、固体形態にある酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマー中に分配する。液体および酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーを、止血ゲルが形成するまで、第1および第2の混合および分配装置の間を繰り返し通過させて混合する。
【0014】
他の態様において、アダプターを第1および第2の混合および分配装置の間に接続し、該アダプターは、第1および第2の混合および分配装置の間の液体の流れが可能になるように構成されている。
【0015】
一態様において、アダプターは三方活栓を含む。他の態様において、アダプターは雌-雌ルアーロックアダプターを含む。
他の態様において、活栓は、流れが第1および第2の混合および分配装置の間のみを通過できるように位置付けられた弁を包含する。
【0016】
液体は、滅菌水または生理食塩水を含むことができる。
酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーは、顆粒、粒子、小片の形態にあるか、または顆粒化もしくは粉末化形態にあることができる。
【0017】
一態様において、第1の分配および混合装置は第1のシリンジを含み、第2の分配および混合装置は第2のシリンジを含む。
他の態様において、第2のシリンジの第2のプランジャーを押すと、第2のシリンジから第1のシリンジに液体が押し込まれ、それによって、第1のシリンジの第1のシリンジプランジャーが伸長し、酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーが湿潤して、止血材料/液体混合物が形成する。
【0018】
さらに他の態様において、第2のシリンジプランジャーを押すと、第2のシリンジから第1のシリンジに止血材料/液体混合物が押し込まれ、第1のシリンジの第1のシリンジプランジャーが伸長する。
【0019】
さらに他の態様において、第1のシリンジプランジャーを押すと、第1のシリンジから第2のシリンジに止血材料/液体混合物が押し込まれて、第2のシリンジの第2のシリンジプランジャーが伸長し、止血材料/液体の可視的に均質な混合物が形成するまで、第2のシリンジプランジャーと第1のシリンジプランジャーを繰り返し交互に押して、止血ゲルの形成をもたらす。
【0020】
他の態様において、止血ゲルを含有する第1または第2のシリンジをアダプターから取り外し、選択したシリンジを用いて創傷部位に止血ゲルを注入して、出血を抑制する。
一態様において、止血ハイドロコロイドを形成するためのシステムは、
モノマーの鎖を含む酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマー、
該鎖中の第1の複数のモノマーに関し、Rは-OCH2(COO)CH2CH3であり、R1は-OCH2(COO)CH2CH3であり、R2は-CH2OCH2(COO)CH2 CH3であり;該鎖中の第2の複数のモノマーに関し、Rは-OCH2(COO)CH2 CH3であり、R1は-OCH2(COO)CH2CH3であり、R2は-(COO)CH2 CH3である;ならびに
止血ゲルを形成する酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーと混合される水性液;
を含む。
【0021】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、以下の解説および添付の特許請求の範囲で説明されるか、またはより完全に明らかになるであろう。特徴および利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される機器および組み合わせによって実現および獲得することができる。さらに、本発明の特徴および利点は、本発明の実施によって知ることができ、または以下で説明するように、解説から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の上記および他の特徴および利点が得られるように、本発明のより詳細な説明を、添付の図面に例示する本発明の特定の態様を参照することによって行う。図面は本発明の典型的な態様を示しているに過ぎず、したがって、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではないことを理解し、本発明を、添付の図面を使用することによって、さらなる具体性および詳細を伴って記載し、説明する:
【
図1】
図1は、セルロースポリマーの化学式のいくつかの態様を例示する;
【
図2】
図2は、本発明の止血材料のポリマーを形成するために用いることができるモノマーの化学式のいくつかの態様を例示する;
【
図3】
図3は、本発明の止血材料に用いることができるポリマーの一部の化学式のいくつかの態様を例示する;
【
図4】
図4は、本発明の止血材料に用いることができるポリマーの一部の化学式のいくつかの態様を例示する;
【
図5】
図5は、本発明の止血材料のポリマーを形成するために用いることができるモノマーの化学式のいくつかの態様を例示する;
【
図6】
図6は、本発明の原理に従った、止血材料を液体と混合するためのシステムの第1の態様を例示する;
【
図7A】
図7Aは、本発明の原理に従った、止血材料を液体と混合するためのシステムの第2の態様を例示する;
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに示す止血材料を液体と混合するためのシステムのアダプターを例示する。
【
図8】
図8は、本発明の原理に従った、液体止血材料を分配するためのシステムを例示する;
【
図9】
図9は、本発明の原理に従った、フォームの形態にある止血材料を分配するための容器を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、生体吸収性であり、さまざまな創傷からの出血の制御に使用するために現場で形成することができる、ゼラチン状または発泡形態にある止血ハイドロコロイドの形成方法に関する。とりわけ、本発明は、水に溶解するように作製されたセルロースのような化学的に処理された植物材料から作製された止血ハイドロコロイドに関する。止血ハイドロコロイドは、組織からの活動性出血および毛細血管性出血を制御するのに適している。
1.止血
本発明の止血ハイドロコロイドをより良く説明するために、ここで、拘束力のない止血の説明を提供する。止血という用語は、血管系の損傷後の出血を止める機序(例えば、正常な血管収縮、異常な閉塞、凝固、または外科的手段)をさすために用いることができる。生物学的止血は、細胞成分と可溶性血漿タンパク質の両方に依存する。とりわけ、凝固による止血は、血漿凝固および線溶タンパク質、血小板、ならびに血液血管系の複雑な相互作用に依存することができる。止血過程は、概念上、一次止血、二次止血、および三次止血の3段階に分類することができる。
【0024】
一次止血は、主として、一次血小板血栓の形成を特徴とすることができる。血栓は、循環血小板が血管損傷部位に接着し、凝集する際に形成することができる。高ずり速度の領域(例えば、微小血管系)では、血小板膜の糖タンパクIb-IXに結合しうるフォン・ヴィレブランド因子(vWf)によって凝集が媒介される可能性がある。低ずり速度の領域(たとえば動脈)では、フィブリノゲンが、血小板受容体への付着によって血小板の内皮下層への結合を媒介する。凝集は、露出した内皮下層に血小板が接着して始まる。血小板が血管壁に接着すると、血小板は形状を変化させ、その表面上のコラーゲン受容体を活性化して、アルファおよび密顆粒構成要素を放出する。さらに、血管壁の損傷に続いて血管収縮が起こる。血管収縮は血管外の失血を遅らせるだけでなく、局所の血流を遅くして、露出した内皮下層表面への血小板の接着および凝固過程の活性化を増強する。
【0025】
血栓の形成に続いて、凝集反応が起こる可能性がある。血小板の活性化は、血液凝固酵素複合体の構築のためのプラットフォームとして機能するアニオン性リン脂質の暴露をもたらす。血小板凝集には、接着した血小板に対する追加的な血小板の活性化、動員、および結合が関与する。凝集は、トロンボキサン2、PAF、ADP、およびセロトニンなどの血小板アゴニストによって促進される。活性化した血小板は、強力な血小板凝集アゴニストおよび血管収縮薬である、トロンボキサンおよび血小板活性化因子を合成および放出する。活性化は、凝固カスケードを介した、他の血小板アゴニストであるトロンビンの生成によって増強される。血小板凝集は主にフィブリノゲンによって媒介され、フィブリノゲンは、隣接する血小板上の糖タンパクIIb/IIIaに結合する。この凝集は一次血小板血栓の形成をもたらし、フィブリンの形成によって安定化される。
【0026】
二次止血は、循環している凝固因子、カルシウム、および血小板が関与する凝固カスケードを介したフィブリン形成を特徴とすることができる。凝固カスケードには、内因系、外因系、および共通の3つの経路が関与する。凝固開始の主な経路は外因系経路であり、内因系経路は凝固カスケードを増幅するように作用する。
【0027】
外因系経路には、第X因子を活性化する組織因子と第VII因子の複合体が関与することができる。血液凝固の外因系経路は、血液が組織因子に暴露されると開始される。膜貫通タンパク質である組織因子が内皮細胞、内皮下組織および単球によって発現され、発現はサイトカインによってアップレギュレートされる。組織因子は活性化された第VII因子(第VIIa因子)と結合し、生じた複合体は第X因子および第IX因子を活性化する。次いで、第X因子は、第V因子、カルシウムおよび血小板リン脂質の存在下で、プロトロンビンをトロンビンに活性化する。この経路は、組織因子経路阻害因子とよばれるリポタンパク質関連分子によって急速に阻害される。しかしながら、この経路によって生成される少量のトロンビンは内因系経路の第XI因子を活性化し、これが凝固カスケードを増幅する。
【0028】
トロンビンは第XI因子と第VIII因子の活性化によって内因系経路を活性化する。内因系経路では、活性化された第IX因子(第IXa因子)が第VIIIa因子と組み合わさって、第X因子を活性化する第2の手段を提供する。内因系経路には高分子キニノゲン、プレカリクレイン、第XII因子、第XI因子、第IX因子、および第VIII因子が関与する。第VIII因子は、第IX因子が媒介する第X因子の活性化の補助因子(カルシウムおよび血小板リン脂質とともに)として作用する。活性化された第IX因子は、活性化された第VIII因子、カルシウム、およびリン脂質とともに(テナーゼ複合体とよばれる)、第X因子の活性化を増幅して、大量のトロンビンを生成する。
【0029】
外因系経路と内因系経路は第X因子の活性化で合流する。共通経路には、第X因子が媒介するプロトロンビンからのトロンビンの生成(第V因子、カルシウムおよび血小板リン脂質により促進される)と、フィブリノゲンからのフィブリンの産生が関与する。第Xa因子は第Va因子およびプロトロンビンと複合体を形成してプロトロンビナーゼを形成し、このプロトロンビナーゼはプロトロンビンを切断して、止血における重要な酵素であるトロンビンを生成する。凝固カスケードの最終段階において、トロンビンはフィブリノゲンを切断してフィブリンモノマーを生成し、次いでこれが重合する。このポリマーは第XIIIa因子(それ自体トロンビンによって第XIII因子から生成される)によって共有結合的に架橋されて、化学的に安定な血餅を形成する。トロンビンはまた、フィードバックして補因子VおよびVIIIを活性化し、それによって、凝固系をさらに増幅する。
【0030】
三次止血は、線維素溶解に関与する主要酵素であるプラスミンの形成を特徴とする。凝固カスケードが活性化されると同時に、組織プラスミノゲン活性化因子が内皮細胞から放出される。組織プラスミノゲン活性化因子は血餅内のプラスミノゲンに結合して、これをプラスミンに変換する。プラスミンは血餅中のフィブリノゲンおよびフィブリンの両方を溶解して、フィブリンおよびフィブリノゲン分解産物を放出する。
【0031】
最後に、フィブリンは線溶系によって消化され、その主要成分はプラスミノゲンおよび組織型プラスミノゲン活性化因子(tPA)である。これらのタンパク質はともに重合フィブリンに組み込まれ、そこで相互作用してプラスミンを生成し、このプラスミンがフィブリンに作用して、あらかじめ形成されていた血餅を溶解する。
【0032】
線溶系は、次に、3つのセリンプロテイナーゼ阻害因子、すなわち、抗プラスミン、プラスミノゲン活性化抑制因子-1(PAI-1)、およびプラスミノゲン活性化抑制因子-2(PAI-2)により調節される。血漿D-ダイマーは、内因性線溶系がフィブリンを分解するときに生成される。これらは2つのフィブリン分子から誘導される2つの同一のサブユニットからなる。フィブリノゲンおよびフィブリンから誘導されるフィブリノゲン分解産物とは異なり、D-ダイマーは特異的に架橋したフィブリン誘導体である。
【0033】
フィブリン沈着の過程は、天然の抗凝固系の機序によって制限される。適切な血流の維持および細胞表面活性の調節は、活性化された血液凝固酵素および複合体の局所的な蓄積を制限する。抗トロンビン(AT)は、セルピン(セリンプロテアーゼ阻害因子)ファミリーの血漿タンパク質メンバーであり、すべての活性化された凝固酵素の活性を阻害する。ATの阻害作用は、ヘパリンに結合することにより数千倍に増大する。プロテインCは、第Va因子および第VIIIa因子を不活性断片にタンパク質分解するビタミンK依存性タンパク質である。プロテインCは内皮細胞のプロテインC受容体(EPCR)に結合し、プロテインSという補助因子によって調整される反応において、別の内皮細胞膜に基づくタンパク質であるトロンボモジュリンに結合したトロンビンによって活性化される。組織因子経路阻害因子は、組織因子、第VIIa因子、および第X因子と四次複合体を形成し、それによって外因系凝固経路を阻害するリポタンパク質関連血漿タンパク質である。
2.止血機序
以下に、本発明の止血ハイドロコロイドが止血の達成に寄与することができる方法を示す。
【0034】
a)物理的経路による止血
止血ハイドロコロイドが血液と接触すると、止血材料は血液凝固カスケードを刺激することができる。例えば、(例えば、水、生理食塩水またはトロンビン)を吸収し、それによって固体からゼラチン状物質に変化している止血材料は、血液の流れを遅くすることができる。可溶性止血ゲルは創傷表面を覆い、流体を吸収した後、さらに膨張することができる。止血ゲルが血液中の流体に接触すると、止血材料の一部が粘性体を形成し、毛細血管の端部を塞ぐことができる。
【0035】
b)化学的経路による止血
「化学的経路による止血」という用語は、本発明の止血ハイドロコロイドが血小板と接触したときに、上昇した速度で吸収および凝固が起こり得ることを意味する。
【0036】
c)生理学的経路による止血
「生理学的経路による止血」という用語は、本発明の止血ハイドロコロイドが、人体において凝固因子を活性化し、トロンビンの形成を促進して、止血作用を生じさせることができることを意味する。凝固因子は、内因性凝固系および外凝固系を活性化する鍵となる因子であることができる。いくつかの凝固因子が正の電気をもたらす可能性があることは、既に知られている;したがって、それらは一般に負の電気を持つ物質によって活性化することができる。止血ハイドロコロイドは水溶性であることができるので、凝固因子を活性化するために大量の負の電気を生成することができる。
3.止血ハイドロコロイド
さまざまな態様は、止血系と反応して出血を処置または防止する組成物および材料を提供する。これらの態様の組成物および材料は、血液の凝固をもたらすことができる。とりわけ、組成物および材料を組み合わせて、止血ハイドロコロイドを形成する。ハイドロコロイドは、水の存在下でゲルを形成する物質である。本発明において、止血ハイドロコロイドは、化学的に処理されたセルロース系材料のような固体止血剤を、水、生理食塩水またはトロンビンのような液体と組み合わせることによって形成される。
【0037】
止血剤の創傷への効果的な送達は、出血によって特徴付けられる損傷の処置において、ならびに出血の制御が問題となり得る外科的処置(例えば、大きな表面積、大量の動脈または静脈出血、毛細血管性出血を伴う創傷、臓器裂傷/切除などを含む外科的処置)において望ましい。本発明の組成物および材料は、創傷への止血剤の送達における多くの利点、例えば、限定されるものではないが、適用および除去の容易さ、生物吸着能(bioadsorption potential)、抗原性、および組織反応性を有することができる。
【0038】
創傷の性質および使用される処置方法に応じて、止血ハイドロコロイドの態様はさまざまな形態で作製することができる。例えば、ゲルまたはフォームは、創傷に適用されたときに、動脈または静脈からの活動性出血を制御することができ、または腹腔鏡処置中の内部出血を制御することができる。毛細血管性出血を伴う脳創傷にしばしば直面する神経外科において、ゲルまたはフォームは、他の固体形態の止血材料が適用困難であり得る所に適用することができる。さまざまな形態の送達および取扱い特性の差異にもかかわらず、止血ハイドロコロイドは、患部に止血剤を配置し、血小板接着、血小板活性化、および/または血液凝固を介して止血血栓形成を迅速に開始するのに有効であることができる。
【0039】
本発明の止血ハイドロコロイドは、任意の適切な材料から形成することができる。例えば、止血ハイドロコロイドを生産するために用いることができる固体材料のいくつかの非限定的な例は、以下を含むことができる:セルロース、セルロース誘導体(例えば、アルキルセルロース(例えばメチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、硫酸セルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシエチルセルロース)、キチン、カルボキシメチルキチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アルギン酸塩、アルギン酸、プロピレングリコールアルギン酸塩、グリコーゲン、デキストラン、硫酸デキストラン、カードラン、ペクチン、プルラン、キサンタン、コンドロイチン、硫酸コンドロイチン、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルキトサン、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、カラギーナン、キトサン、デンプン、アミロース、アミロペクチン、ポリ-N-グルコサミン、ポリマンヌロン酸、ポリグルクロン酸、および上記の誘導体。固体材料を、ヒトでの使用に安全な液体、例えば、滅菌水、生理食塩水および/またはトロンビンと組み合わせて、ゼラチン状止血材料を形成する。
【0040】
しかしながら、いくつかの態様によれば、記載する止血ハイドロコロイドは、
図1に例示するように、セルロースのベータ-(1-4)-D-グルコピラノースポリマーに基づくことができる。とりわけ、
図1は、
4C
1いす型形状にある他の2つのグルコピラノース残基(例えば、残基105および110)に接続しているベータ連結グルコピラノース残基100が、炭素2、炭素3、および炭素6に結合しているヒドロキシル基を含むことができることを例示する。
【0041】
いくつかの態様において、止血ハイドロコロイドは、酸化誘導体化エステル化セルロースを含むことができる。いくつかの態様によれば、酸化誘導体化エステル化セルロースを含む止血ハイドロコロイドは、ベータ-(1-4)-D-グルコピラノースポリマーから、炭素6上のヒドロキシル基の酸化、ならびに/または炭素2、炭素3および/もしくは炭素6(炭素6が酸化されていない場合)上のヒドロキシル基の誘導体化による1以上の酢酸エステルの形成を介して、作り出すことができる。いくつかの態様によれば、次いで炭素2、3および/または6からの酢酸エステルの1以上をエトキシル化して、エチルエステルを形成してもよい。
【0042】
図2は、止血ハイドロコロイドのポリマーを作り出すために用いることができる酸化誘導体化エステル化セルロースの基本単位、すなわちモノマーの構造式のいくつかの態様を例示する。具体的には、
図2は、止血ハイドロコロイドのモノマーとして機能する6員グルコピラノシル環115が、さまざまな官能基を含むことができることを示す。例えば、
図2は、第1の官能基Rは炭素2を介して環115に結合することができ、第2の官能基R
1は炭素3を介して環115に結合することができ、および/または第3の官能基R
2は炭素5を介して環115に結合することができることを例示する。
【0043】
R、R1、およびR2を含むさまざまな官能基は、止血材料が生体吸収性であることを可能にし、かつ創傷における出血を低減することを可能にする、任意の官能基を含むことができる。例えば、R、R1および/またはR2は、それぞれ個別に、-CH2OCH2(COO)CHxCHx、-(COO)CHxCHx、-OCH2(COO)CHxCHx、-OH、-CH2OH、またはCOOHを含むことができる。しかしながら、いくつかの好ましい態様によれば、Rは、-OHまたはエチルカルボキシメチル基、例えば、-OCH2(COO)CH2CH3を含むことができる。いくつかの好ましい態様において、R1は、-OHまたはエチルカルボキシメチル基、例えば-OCH2(COO)CH2CH3を含むことができる。さらに、いくつかの態様において、R2は、-CH2OCH2(COO)CH2CH3のようなエチルカルボキシメチル基、または-(COO)CH2CH3のようなカルボキシエチル基を含むことができる。
【0044】
止血ハイドロコロイドのポリマーを形成するために用いられるモノマーは、止血材料が未反応セルロースのみではなく、酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーを含むことを可能にする官能基の任意の適した組み合わせを有することができる。例えば、
図3は、酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーの一部のいくつかの態様を例示する。すなわち、
図3は、一緒に接続しているモノマーのいくつかの非限定的な例を例示し、各モノマーは官能基の異なる組み合わせを含む。例えば、
図3は、第1のモノマー120において、Rは-OHを含むことができ、R1は-OHを含むことができ、R
2は-CH
2OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができることを例示する。
図3はまた、第2のモノマー125において、Rは-OHを含むことができ、R
1は-OHを含むことができ、R
2は-(COO)CH
2CH
3を含むことができることを示す。さらに、
図3は、第3のモノマー130において、Rは-OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができ、R
1は-OHを含むことができ、R
2は-(COO)CH
2CH
3を含むことができることを示す。最後に、
図3は、第4のモノマー135において、Rは-OHを含むことができ、R
1は-OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができ、R
2は-(COO)CH
2CH
3を含むことができることを示す。
【0045】
いくつかの態様に従って、
図4および5は、止血ハイドロコロイドを形成するために用いられる酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーにおいて可能であることができる官能基の組み合わせの他の非限定的な例を示す、いくつかの追加のモノマーを例示する。具体的には、
図4は、第5のモノマー例140において、Rは-OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができ、R
1は-OHを含むことができ、R
2は-CH
2OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができることを示す。
図4は、第6のモノマー例145において、Rは-OHを含むことができ、R
1は-OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができ、R
2は-CH
2OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができることを例示する。また、
図4は、第7のモノマー例150において、Rは-OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができ、R
1は-OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができ、R
2は-CH
2OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができることを示す。さらに、
図5は、第8の非限定的なモノマー例150を示し、モノマー150はいす型形状で描かれている。
図5は、いくつかの態様において、Rは-OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができ、R
1は-OCH
2(COO)CH
2CH
3を含むことができ、R
2は-(COO)CH
2CH
3を含むことができることを示す。
【0046】
酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーは、上記官能基の任意の適した組み合わせを含む任意のモノマーの組み合わせを含むことができる。したがって、官能基の任意の組み合わせを有するモノマーは、同一または異なる官能基が同一および/または異なる炭素上に位置している1つまたは2つの他のモノマーに接続していてもよい。例えば、
図3は、止血ハイドロコロイドのポリマーの一部において考えうる1つのモノマーの組み合わせ(すなわち、モノマー120、125、130、および135)を示している。それにもかかわらず、他の態様において、官能基の異なるまたは同様の組み合わせを有するモノマーは、化学的に実行可能な他の任意の順序で、止血ハイドロコロイドのポリマー全体にわたって接続していることができる。
【0047】
酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーは、出血を制御するのにポリマーを用いることを可能にする任意の適した長さであることができる。例えば、
図2は、酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーが任意の適した数のモノマーを含むことができることを例示し、モノマーの数をnとする。実際、いくつかの態様において、酸化誘導体化エステル化セルロースのポリマーは、約2~約150000個のモノマーを含むことができる。しかしながら、他の態様において、ポリマーは約2~約20000個のモノマーを含むことができる。さらに他の態様において、ポリマーは約500~約2000個のモノマーを含むことができる。実際、他の態様において、ポリマーは約1000個のモノマーを含むことができる。
【0048】
いくつかの態様に従って、モノマーおよび他の化合物は、不斉中心を有することができる。特記しない限り、記載するモノマーのすべてのキラル、ジアステレオマー、およびラセミ形態、ならびに記載するモノマーのすべての幾何異性体形態は、本発明に包含されることができる。不斉置換炭素原子を含有する本発明の化合物は、光学活性またはラセミ形態で単離することができることも理解されるであろう。さらに、本発明は、記載する酸化誘導体化エステル化セルロースの形成において存在し得る任意のまたはすべての中間生成物および副生成物を包含することができる。例えば、いくつかの態様においてポリマーは約99.99%エトキシル化されていることができるが、本発明は、より高いまたはより低い程度にエトキシル化されたポリマーを含むことができる。これに加えて、本発明はまた、ベータおよび/またはアルファ結合を包含することができるさまざまな形態のエーテル結合を介して他のモノマーに接続されるモノマーを包含することもできる。
【0049】
上記のように、止血ハイドロコロイドは水溶性であり、セルロースのような化学的に処理された植物繊維に基づくことができる。未処理植物繊維は水を吸収することができるが、不溶性であり得る。本発明の方法によって処理された後、その物理的および化学的性質は、得られた止血ハイドロコロイドが水および体液に溶解するように著しく変化する。上記のように、本発明の止血ハイドロコロイドは、出血を止めるために体内および体外の両方で使用することができる。生物学的系において利用される場合、本発明の可溶性止血材料は水を吸収し続け、そしてさらに膨張し続けることができる。
【0050】
止血ハイドロコロイドは、滅菌水、生理食塩水またはトロンビンのような液体であらかじめ湿らせてあるゲルまたはフォームの形態で提供される。止血ハイドロコロイドは固体止血材料から形成される。固体止血材料を液体と組み合わせ、固体止血材料が液体を吸収してゲルを形成するまで、一定期間にわたり混合する。固体止血材料は、あらかじめ選択されたサイズの粒子、小片、顆粒の形態、または粉末形態で提供することができる。得られた止血ゲルは、シリンジなどにより流動可能であるのに十分な液体を提供されるが、血液凝固を活性化するために創傷に適用される場合、血液など他の液体をさらに吸収する能力を有する。本発明の止血ハイドロコロイドは、物理的、化学的、および生理学的機序という少なくとも3つの機序によって止血効率を高めることができ、以下、それぞれについて詳しく説明する。とりわけ、止血ハイドロコロイドは血液凝固因子を活性化してトロンビンの形成を促進することができ、該材料は血液から流体を吸収し、さらに膨張することができる。止血ハイドロコロイドの適用は血液の粘度を上昇させることができ、血流速度を低下させることができ、コロイドは、出血が起こっている血管の開口部を塞ぐことができる。可溶性止血材料は血液凝固因子を活性化し、トロンビンの形成を促進することができるので、血液凝固の閉塞症または欠損症を有する患者には特に有効であり得る。
【0051】
止血ハイドロコロイドは、臨床を含む広範囲の用途および応急処置の両方に使用することができる。これは、血液または体液の流れを停止させるための簡単で効果的な手段が望ましい厳しい環境(例えば、戦場状況)において、有利かつ容易に使用することができる。止血ハイドロコロイドは可溶性であることができ、圧迫下で創傷表面に用いることができる。該材料は、望ましい場合は薬物を含まずに提供することができ、または、特定の目的に望ましい薬物を含有することができる。
【0052】
止血ハイドロコロイドは、外科的用途および外傷の野外処置における使用の両方において使用するのに適切であることができる。例えば、この材料は、出血が特に問題となり得る血管手術での使用に適切であることができる。該止血材料は心臓外科手術における使用に適切であることができる。心臓外科手術では、複数の血管吻合およびカニューレ挿入部位が、体外バイパスによって誘発された凝固障害を併発し、局所止血剤によってのみ制御可能な出血をもたらすことがある。該止血材料は、骨性、硬膜外および/または硬膜下の出血または脊髄からの出血の制御が縫合または焼灼に適していない脊髄手術中に、迅速かつ効果的な止血をもたらすのに適切であることができる。そのような場合、該止血材料は神経根への損傷の可能性を最小限に抑え、処置時間を短縮することができる。他の例において、該止血材料はまた、大量出血のリスクが高い、肝臓手術、生体肝移植処置、または癌性腫瘍の除去における使用にも適切であることができる。この材料は、有効な止血材料としての使用に適切であることができ、このような処置において患者の転帰を著しく向上させることができる。大量出血が問題でない状況でさえ、該止血ハイドロコロイドは、止血を達成するための使用に適切であることができる。例えば、この材料は、抜歯などの歯科処置;擦過傷;熱傷;スポーツ関連損傷などに使用することができる。この材料はまた、毛細血管性出血を伴う創傷がよくみられ、処置することが難しい、神経外科での使用に適切であることができる。
【0053】
本発明の止血材料の性質は以下の属性の任意の組み合わせを包含することができる:
a)水溶性
公知の先行技術のセルロース繊維材料は、親水性ヒドロキシアミノ-を含有することができる。しかしながら、このようなセルロース繊維材料では分子間に水素結合が大量に存在する場合があり、結晶化度が高い可能性がある。したがって、公知の従来技術のセルロース繊維材料は、水に溶解しない可能性がある。それにもかかわらず、本発明による処理中に、セルロースを以下のように化学的に変化させることができる:
i)重合度、ならびに分散力および誘導容量を低減することができる。
【0054】
ii)親水性ラジカル基を、分子間の空間を広げ、いくつかの分子の内部および/または分子間の水素結合を破壊するように誘導することができる。
iii)結晶化度を低下させることができ、非晶質帯域を拡大することができ、分子間の配向力を低下させることができるほか、水分子は、小さなパック中で分子化合物を形成することが可能である。
【0055】
熱力学の観点から、止血材料の分子と水分子との間の混合の自由エネルギーはゼロ未満であることができる。さらに、溶解度の差も約1.7~約2.0未満であり得るので、溶解が起こることができる。上記のように、記載する止血材料の水による溶解プロセスは、以下を包含することができる:止血材料が流体を吸収して膨張し、材料がゲルに変換され得るように構造の結合が解除され、材料が完全に溶解する。
【0056】
b)水および分極性媒体への吸収率
止血材料の水および分極性媒体への吸収速度が速い場合、吸収量は大きくなり得る。これは止血に有益である。
4.止血ゲルとして使用するための可溶性止血材料の作製方法
酸化誘導体化エステル化セルロースで構成される可溶性止血材料の形成は、任意の適切な方法で遂行することができる。それにもかかわらず、可溶性止血材料およびその生産方法のより良い理解を提供するために、止血材料の典型的な作製方法の非限定的な例を以下に提供する。該方法は以下を含むことができる:
a)水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムを反応容器の内袋に入れた後、適量の純水を加え、成分が溶解するまで撹拌する。内袋中の溶液にエチルアルコール(好ましくは約95%エチルアルコール)を注ぎ、混合する。ヒーターの電源を入れ、内袋の温度を20℃より高温(好ましくは約25℃~約28℃)に保ち、望ましい温度で一定時間、好ましくは約10時間保持する。
【0057】
b)化学的に処理される原料(例えば、セルロース)、好ましくは、ガーゼの形態にある脱脂および漂白された植物繊維を、反応容器中の混合溶液に入れる。外側本体の温度を20℃より高温、好ましくは約30℃±3℃付近に維持する。さらに、該方法は、内袋の温度を約20℃~約30℃、好ましくは約26℃±1℃に維持することを含むことができる。
【0058】
c)内袋の温度を約20℃±3℃に低下させ、反応容器を一定時間、好ましくは約5時間にわたり回転させ始める。
d)一定時間後に温度が20℃未満、好ましくは約5℃±3℃に低下することができるように、冷水を内袋に移動させる。この低下した温度で一定時間、好ましくは約1時間にわたり溶液を反応させる。
【0059】
e)適量のアルコール、好ましくは95%エチルアルコール、および適量のクロロ酢酸を、反応容器に加える。30分後、内袋内の温度は20℃より高温まで上昇する可能性があり、好ましくは、温度は約5℃±3℃から約41℃±3℃まで変化する。適量の過酸化水素を加える。温度を40℃未満、好ましくは約32℃±3℃まで低下させ、一定期間、好ましくは約1.5時間にわたり反応を継続させる。
【0060】
f)材料を反応容器から容器、好ましくはステンレス鋼製の槽に入れる。適量のアルコール、好ましくは70%エチルアルコールを加え、撹拌し、すすぐ。この時点で、これを好ましくは遠心脱水によって乾燥させる。
【0061】
g)上記のようにして得られた材料を、適量の選択したアルコール、好ましくは70%エチルアルコールを含む、好ましくはステンレス鋼製の別の容器に入れた後、これを、酸、好ましくは塩酸を溶液に加えて、望ましいpH値、好ましくは約7±0.5のpH値を達成することによって中和する。
【0062】
h)材料を取り出し、乾燥させる。好ましくは、材料を、別の容器中で、もう1回、または何回も、溶液が明澄になるまで上記のように処理する。材料を乾燥させる。所望により、材料にアイロンをかけて平坦にしてもよい。
【0063】
I)乾燥した止血材料を機械に入れて、材料のシートを顆粒または粉末に変形させる。機械は材料のシートを微粉砕して粉末を形成することができ、材料のシートを磨砕して顆粒にすることができ、材料のシートを細断してフレークなどを形成することができる。
5.止血ゲルの形成
酸化誘導体化エステル化セルロースを含む上記乾燥(固体)止血材料から止血ゲルを形成するために、固体止血材料を液体と組み合わせ、均質なゲルが形成するまで混合する。液体は、滅菌水、生理食塩水および/またはトロンビンの形態にあることができる。固体止血材料の量に対する液体の分量は、吸収特性が完全には枯渇しない一方で、シリンジなどを通して分散させることができる流動性ゲルを形成することが可能になるような分量である。
【0064】
例として、固体止血材料と液体との比は、約4mLの液体に対して約1グラムの固体止血材料の比である。したがって、本発明による止血ゲルを形成するためには、1グラムの固体止血材料を4mLの生理食塩水と混合して、生理食塩水ベースの止血ハイドロコロイドを生成する。同様に、トロンビンベースのハイドロコロイドを形成するために、1グラムの固体止血材料を4mLのトロンビンと混合する。いずれの場合も、Ancefなどの抗生物質を、処方された投与量に従って混合物に添加することができる。例えば、1グラムのAncefを1mLの生理食塩水と混合し、1グラムの固体止血材料と混合して、止血ハイドロコロイドを形成することができる。同様に、上記トロンビンベースのハイドロコロイドを、1グラムのAncefなど適切な用量の抗生物質を含有する1mLの生理食塩水と混合することができる。固体止血材料と液体のこのような比により、止血材料を液体で完全に飽和させることなく、流動性ヒドロゲルを形成することが可能になる。これはさらに、得られた止血ゲルを創傷に適用することを可能にし、止血ヒドロゲルが創傷部位で流体とさらに反応して血液凝固を補助することを可能にする。
【0065】
図6に示すように、止血ゲル(ヒドロゲルの形態にある)を形成するためのシステムは一般に200で示され、止血ゲルが必要とされるときに液体202を固体止血材料204と混合することによって形成される。
図6では、シリンジ206および208の形態にある2つの混合および分配装置が三方活栓210と相互接続されている。活栓210は、流れが2つのシリンジ202および204の間のみを通過することができるように位置付けられた弁212を包含する。第1のシリンジ206は、滅菌水または生理食塩水などの液体202を含有する。第2のシリンジ208は、顆粒状または粉末状の酸化誘導体化エステル化セルロースなどの固体形態にある止血材料204を含有する。第1のシリンジプランジャーを押すことによって、液体202は第1のシリンジ206から第2のシリンジ208内に押し込まれ、それによって、止血材料204は湿潤する。これにより、第2のシリンジプランジャー209は伸長する。次いで、第2のシリンジプランジャー209を押すと、止血材料/液体混合物が第2のシリンジ208から第1のシリンジ206に押し込まれ、したがって、第1のシリンジ206のプランジャー207が伸長する。その後、第1のシリンジ206のプランジャー207を押して、止血材料/液体混合物を活栓210に通して第2のシリンジ208内に押し戻す。このプロセスを、止血材料/液体の可視的に均質な混合物が形成し、止血ゲルの形成がもたらされるまで繰り返す。得られた止血ゲルを含有するシリンジ206または208を活栓210から取り外し、創傷での出血抑制を補助するために、創傷部位に止血ゲルを注入するために直接使用する。さらに、シリンジ内に止血ゲルを提供することにより、シリンジで容易に制御可能な止血ゲルの適用量で、止血ゲルを容易に創傷内に導くことができる。
【0066】
図7Aおよび7Bに示すように、止血ゲル(ヒドロゲルの形態にある)を形成するためのシステムは一般に230で示され、止血ゲルが必要とされるときに液体232を固体止血材料234と混合することによって形成される。
図7Aにおいて、2つのシリンジ236および238は雌-雌ルアーロックアダプター240と相互接続されている。
図7Bに示すように、ルアーロックアダプター240は第1の末端に第1のルアーロック末端242を包含し、第2の末端に第2のルアーロック末端244を包含する。管部分246は第1および第2のルアーロック末端242および244と流体連通し、相互接続している。一対の対向して伸長しているフィンガータブ(finger tab)248および250は、シリンジ236および238を接続または取り外す際にルアーロックアダプター240を把持するために管部分246に取り付けられ、従属している。ルアーロックアダプター240は、流れがルアーロックアダプター240のみを通過し、したがって2つのシリンジ236および238の間のみを通過することができるように、シリンジ236と238との間に接続されている。第1のシリンジ236は、滅菌水または生理食塩水などの液体232を含有する。第2のシリンジ238は、顆粒状または粉末状の酸化誘導体化エステル化セルロースなどの固体形態にある止血材料234を含有する。第1のシリンジプランジャー237を押すことによって、液体232は第1のシリンジ236から第2のシリンジ238内に押し込まれ、それによって、止血材料234は湿潤する。これにより、第2のシリンジプランジャー239は伸長する。次いで、第2のシリンジプランジャー239を押すと、止血材料/液体混合物が第2のシリンジ238から第1のシリンジ236に押し込まれ、したがって、第1のシリンジ236のプランジャー237が伸長する。その後、第1のシリンジ236のプランジャー237を押して、止血材料/液体混合物をルアーロックアダプター240に通して第2のシリンジ238内に押し戻す。このプロセスを、止血材料/液体の可視的に均質な混合物が形成し、
図8に示すような止血ゲル260の形成がもたらされるまで繰り返す。止血ゲル260の形成までの止血材料/液体の状態を見るために、シリンジ236および238は十分に透明なプラスチック材料から形成され、その結果、混合が進行するにつれ、それら各々の内容物およびその状態を視覚的に見ることができる。
【0067】
図8に示すように、アダプター240(
図7A参照)から取り外された、得られた止血ゲル260を含有するシリンジ236には、分配アダプター270が取り付けられる。分配アダプターは第1の末端272にルアーロックコネクターを有し、第2の反対側の末端に分配チップ274を有する。第1の末端272はシリンジ236の遠位端に連結され、ルアーロック接続部と一緒に保持される。分配アダプター240は中空管を含み、この中空管は、そこを通過する止血ゲルの流れが可能になるように、したがって、創傷部位での出血を抑制するためにプランジャー237が矢印で示されるようにシリンジ本体に対して押し下げられるときに、創傷部位に止血ゲルを分配するように、構成される。さらに、シリンジ内に止血ゲルを提供することにより、シリンジで容易に制御可能な止血ゲルの適用量で、止血ゲルを容易に創傷内に導くことができる。
【0068】
さまざまな態様の止血ゲルは創傷に対し良好な接着性を示し、その結果、止血ゲルの接着性を高めるための接着剤または他の材料は通常は必要ない。
6.止血フォームの形成
図9に示すように、酸化誘導体化エステル化セルロースを含む止血ゲル304から止血フォーム302を形成するために、
図7に示すように、止血ゲル304を液体発泡剤305と組み合わせ、噴射剤310を含有する加圧容器308に入れる。止血ゲル304および液体発泡剤305は、出血を抑制するために止血フォーム302が必要とされる望ましい部位に、容器310から噴射される。
7.追加的な止血剤の使用
さまざまな態様で使用することができる他の好適な止血剤としては、限定されるものではないが、凝固因子濃縮物、組換え第VIIa因子、アルファネート(alphanate)FVIII濃縮物、ビオクレート(bioclate)FVIII濃縮物、モノクレート-P(monoclate-P) FVIII濃縮物、へマートP(haemate P)FVIII、フォン・ヴィレブランド因子濃縮物、ヘリキサート(helixate)FVIII濃縮物、ヘモフィルM FVIII濃縮物、フメート-P(humate-P)VIII濃縮物、hyate-C(登録商標)、ブタFVIII濃縮物、コエートHP(koate HP)FVIII濃縮物、コゲネートFVIII濃縮物、リコンビネート(recombinate)FVIII濃縮物、モノニン(mononine)FIX濃縮物、およびフィブロガミンP(fibrogammin P)FXIII濃縮物を挙げることができる。このような止血剤は、任意の適切な形態で(例えば、粉末として、液体として、純粋な形態で、適切な賦形剤中で、適切な支持体または担体上で、など)、本発明の止血材料に適用することができる。
【0069】
単一の止血剤または止血剤の組み合わせを用いることができる。止血材料上での止血薬の担持レベルは、例えば、選択した材料および止血薬の性質、材料の形態、および処置される創傷の性質に応じて多様であることができる。しかしながら、一般に止血ガーゼの場合、止血薬対止血ガーゼの一般に好ましい重量比は、約0.001:1以下~約2:1以上であることができる。より好ましくは、追加の止血薬対止血材料の重量比は、約0.05:1以下~約2:1以上であることができる。より好ましくは、約0.06:1、0.07:1、0.08:1、0.09:1、0.10:1、0.15:1、0.20:1、0.25:1、0.30:1、0.35、0.40:1、0.45:1、0.50:1、0.55:1、0.60:1、0.65:1、0.70:1、0.75:1、0.80:1、0.85:1、0.90:1、または0.95:1から約1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、または1.5:1の重量比を利用することができるが、特定の態様ではより高いまたはより低い比が好ましいことがある。
8.止血材料の調製における補助物質の使用
特定の態様では、止血材料として、記載した酸化誘導体化エステル化セルロースのみを含む止血ゲルを利用することが望ましい場合がある。しかしながら、他の態様では、コラーゲンまたは他の材料などの他の材料を、止血材料として、記載した酸化誘導体化エステル化セルロースと併せて用いることができる。記載した酸化誘導体化エステル化セルロースと併せて利用することができる他の物質としては、トロンビン、フィブリノゲン、ヒドロゲル、および酸化セルロースを挙げることができる。当業者には理解されるように、他の補助物質も利用することができる。
9.多機能止血材料
止血剤を創傷に効果的に送達することに加えて、いくつかの態様において、酸化誘導体化エステル化セルロースを含む止血材料は、他の物質も送達することができる。特定の態様において、このような物質としては、医薬、抗生物質、医薬組成物、治療剤、および/または生理学的効果を生じる他の物質を挙げることができる。物質は、材料を別の材料上に堆積させる、または材料中に薬剤を組み込むのに適した当技術分野で公知の任意の方法によって、止血材料上に堆積させることができる。
【0070】
いくつかの態様において、任意の適切な医薬、医薬組成物、治療剤、抗生物質または他の望ましい物質を、記載した酸化誘導体化エステル化セルロースを含む止血材料中に組み込むことができる。医薬としては、限定されるものではないが、抗炎症薬、抗感染症薬、抗生物質、麻酔薬、免疫抑制剤および化学療法薬を挙げることができる。
【0071】
適した抗炎症薬のいくつかの非限定的例としては、限定されるものではないが、以下を挙げることができる:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、セレコキシブ、トリサリチル酸コリンマグネシウム、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メレナム酸(melenamic acid)、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サルサレート、スリンダク、およびトルメチン;ならびに、コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメテゾン(betamethesone)、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、ブデソニド、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム、フルニソリド、フルチカゾンプロピオン酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、フルオシノニド、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル、デソニド、デスオキシメタゾン、フルオシノロン、トリアムシノロン、クロベタゾールプロピオン酸エステル、およびデキサメタゾン。
【0072】
抗感染症薬としては、限定されるものではないが、以下を挙げることができる:駆虫薬(メベンダゾール)、アミノクリコシド(aminoclycoside) を含む抗生物質(ゲンタマイシン、ネオマイシン、トブラマイシン)、抗真菌性抗生物質(アムホテリシンb、フルコナゾール、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ナイスタチン、ミカチン、トルナフテート)、セファロスポリン(セファクロル、セファゾリン、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン)、ベータ-ラクタム系抗生物質(セフォテタン、メロペネム)、クロラムフェニコール、マクロライド(アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン)、ペニシリン(ペニシリンGナトリウム塩、アモキシシリン、アンピシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、ピペラシリン、チカルシリン)、テトラサイクリン(ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン)、バシトラシン、クリンダマイシン、コリスチメタン酸ナトリウム、ポリミキシンb硫酸塩、バンコマイシン、抗ウイルス薬、例えば、アシクロビル、アマンタジン、ジダノシン、エファビレンツ、ホスカルネット、ガンシクロビル、インジナビル、ラミブジン、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、スタブジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ジドブジン、キノロン(シプロフロキサシン、レボフロキサシン)、スルホンアミド(スルファジアジン、スルフィソキサゾール)、スルホン(ダプソン)、フラゾリドン、メトロニダゾール、ペンタミジン、結晶性スルファニルアミド(sulfanilamidum crystallinum)、ガチフロキサシン、およびスルファメトキサゾール/トリメトプリム。
【0073】
麻酔薬としては、限定されるものではないが、以下を挙げることができる:エタノール、ブピバカイン、クロロプロカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プロカイン、ロピバカイン、テトラカイン、デスフルラン、イソフルラン、ケタミン、プロポフォール、セボフルラン、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、マルカイン、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、レミフェンタニル、スフェンタニル、ブトルファノール、ナルブフィン、トラマドール、ベンゾカイン、ジブカイン、塩化エチル、キシロカルン(xylocalne)、およびフェナゾピリジン。
【0074】
化学療法薬としては、限定されるものではないが、以下を挙げることができる:アドリアマイシン、アルケラン、Ara-C、BiCNU、ブスルファン、CCNU、カルボプラチナム、シスプラチナム、シスプラチナム、ダウノルビシン、DTIC、5-FU、フルダラビン、ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキサート、ミスラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、窒素マスタード、タキソール、ベルバン(velban)、ビンクリスチン、VP-16、ゲムシタビン(ジェムザール)、ハーセプチン、イリノテカン(カンプトサール、CPT-11)、ロイスタチン、ナベルビン、リツキサン、STI-571、タキソテール、トポテカン(ハイカムチン)、ゼローダ(カペシタビン)、およびゼヴェリン(zevelin)。
【0075】
さまざまな他の医薬および医薬組成物もまた、酸化誘導体化エステル化セルロースを含む止血材料のさまざまな態様における使用に適切であることができる。これらとしては、トレチノインなどの細胞増殖薬;デンシチン(2-アミノ-3-(オキサリルアミノ)-プロピオン酸)などの凝固促進剤;ならびに、オキシベンゾンおよびオクトクリレンなどの日焼け止めを挙げることができる。
【0076】
ヒト上皮成長因子(hEGF)もまた、特定の態様において使用することができる。この小分子量ペプチドは分裂誘起タンパク質であり、皮膚および表皮の再生に重要であり得る。それは、3つのジスルフィド架橋を有する小さい53アミノ酸残基長のタンパク質であることができる。上皮成長因子は産生されたまま使用することができ、または好ましい態様で使用する前に重合することができる。hEGFの存在は、皮膚の治癒および再生にプラスの効果を有することができる。
【0077】
さまざまな態様において使用することができる他の物質は、公知の殺菌作用、創傷治癒特性、および疼痛緩和特性を有する従来の医薬、薬剤、および治療薬を包含することができ、またはそれらから誘導することができる。これらの薬剤としては、限定されるものではないが、Sanqi(Radix Notoginsent)を挙げることができる。他のこのような薬剤は、Dahuang(Radix Et Rhizoma Rhei)であり得る。それの化合物の1つEmodinは、抗炎症効果をもたらすことができ、そしてまた、軟組織浮腫を効果的に減少させることができる。他の薬剤としては、抗生物質製剤として使用されているZihuaddng(Herba Violae)を挙げることができる。
【0078】
Baiji(Rhizoma Bletillae)は、止血剤として、また創傷治癒を促進するために、長年使用されてきた。これは、以下の物質を含有することができる:(3,3’-ジ-ヒドロキシ-2’,6’-ビス(p-ヒドロキシベンジル)-5-メトキシビベンジル-1);2,6-ビス(p-ヒドロキシベンジル)-3’,5-ジメトキシ-3-ヒドロキシ-ビベンジル);(3,3’-ジヒドロキシ-5-メトキシ-2,5’,6-トリス(p-ヒドロキシ-ベンジル)ビベンジル);7-ジヒドロキシ-1-p-ヒドロキシベンジル-2-メトキシ-9,10-ジヒドロ-フェナントレン);(4,7-ジヒドロキシ-2-メトキシ-9,10-ジヒドロキシフェナントレン);ブレストリアレンA(4,4’-ジメトキシ-9,9’,10,10’-テトラヒドロ[1,1’-ビフェナントレン]-2,2’,7,7’-テ-トロール);ブレストリアレンB(4,4’-ジメトキシ-9、10-ジヒドロ[1,1’-ビフェナントレン]-2-,2’,7,7’-テトロール);バタタシン;3’-O-メチルバタタシン;ブレストリンA(1);ブレストリンB(2);ブレストリアノールA(4,4’-ジメトキシ-9,9’,10,10’-テトラヒドロ]-1’,3-1-ビフェナントレン]-2,2’,7,7’-テトラオール);ブレストラノールB(4’、5-ジメトキシ-8-(4-ヒド-ロキシベンジル)-9,9’,10,10’-テトラヒドロ-[1’,3-ビフェナントレン]-2,2’,7,7’-テトラオール-ブレストラノールC(4’,5’-ジメトキシ-8-(4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-[1’,3-ビ-フェナントレン]-2,2’,7,7’-テトラオール);(1,8-ビ(4-ヒドロキシベンジル)-4-メトキシ-フェナ-ントレン-2,7-ジオール);3-(4-ヒドロキシベンジル)-4-メトキシ-9,10-ジヒドロ-フェナントレン-2,7-ジオール;(1,6-ビ(4-ヒドロキシベンジル)-4-メトキシ-9,10-ジヒドロフェナントレン-2,-7-ジオール;(1-p-ヒドロキシベンジル-4-メトキシフェナントレン-2,7-ジオール);2,4,7-トリメトキシ-フェナントレン;2,4,7-トリメトキシ-9,10-ジヒドロフェナントレン;2,3,4,7-テトラメトキシフェナントレン;3,3’,5-トリメトキシ-ビベンジル;3,5-ジメトキシビベンジル;およびフィシオン。
【0079】
Rougui(Cortex Cinnamoni)は疼痛緩和効果を有する。これは、以下の物質の一部または全部を含有することができる:アンヒドロシンゼイラニン(anhydrocinnzeylanine);アンヒドロシンゼイラノール(anhydrocinnzeylanol);シンカシオール(cinncassiol)A;シンナカシオール(cinnacassiol)Aモノアセテート;シンカシオールAグルコシド;シンゼイラニン(cinnzeylanine);シンゼイラノール(cinnzeylanol);シンカシオールBグルコシド;シンカシオールC1;シンカシオールC1グルコシド;シンカシオールC2;シンカシオールC2;シンカシオールD1;シンカシオールD1グルコシド;シンカシオールD2;シンカシオールD2グルコシド;シンカシオールD3;シンカシオールD4;シンカシオールD4グルコシド;シンカシオールE;リオニレシノール;3α-O-B-D-グルコピラノシド;3,4,5-トリメトキシフェニル1-O-β-D-アピノフラノシル-(1→6)-β-D-グルコピラノシド;(±)-シリンガレシノール;ケイ皮アルデヒド環状グリセロール1,3アセタール;エピカテキン;3’-O-メチル-(-)-エピカテキン;5,3’-ジ-O-メチル-(-)-エピカテキン-;5,7,3’-トリ-O-メチル-(-)-エピカテキン、5’-O-メチル-(+)-カテキン;7,4’-ジ-O-メチル-(+)-カテキン;5,7,4’-トリ-O-メチル-(+)-カテキン;(-)-エピカテキン-3-O-β-D-グルコピラノシド;(-)-エピカテキン-8-C-β-D-グルコピラノシド;(-)-エピカテキン-6-C-β-D-グルコピラノシド;プロシアニジン;シンナムタンニンA2、A3、A4;(-)-エピカテキン;プロシアニジンB-1、B-2、B-5、B-7、C-1;プロアントシアニジン;プロアントシアニジンA-2;8-C-β-D-グルコピラノシド;プロシアニジンB-2 8-C-β-D-グリコピラノシド;カシオシド(cassioside)[(4s)-2,4-ジメチル-3-(4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-1-ブテニル)-4-(β-D-グルコピラノシル)メチル-2-シクロヘキセン-1-オン];3,4,5-トリメトキシフェニル-β-D-アピオフラノシル-[(1.f-wdarw.6)-β-D-グルコピラノシド;クマリン;ケイ皮酸;プロシアニジン;プロシアニジンB2;シンナモシド(cinnamoside)[(3R)-4-{(2’R,4’S)-2’-ヒドロキシ-4’-(β-1-D-アピオフラノキシ-(1→6)-β-D-グルコピラノシル)-2’,6’,6’-トリメチル-シクロヘキシリデン}-3-ブテン-2-オン)];シンナムアルデヒド;3-2(ヒドロキシフェニル)-プロパン酸;O-グルコシド;シンナマン(cinnaman)A2;P、S、Cl、K、Ca、Ti、Mn、Fe、Cu、Zn、Br、Rb、Sr、およびBa。
【0080】
さまざまな態様の止血材料に組み込むことができる他の物質としては、さまざまな薬理学的作用物質、賦形剤、および医薬製剤の技術分野で周知の他の物質を挙げることができる。他の薬理学的作用物質としては、限定されるものではないが、抗血小板薬、抗凝固剤、ACE阻害剤、および細胞毒性薬を挙げることができる。これらの他の物質は、以下を包含することができる:イオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、PluronicTM、TritonTM)、洗浄剤(例えば、ポリオキシルステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム)、乳化剤、解乳化剤、安定剤、水性および油性担体(例えば、白色ワセリン、イソプロピルミリステート、ラノリン、ラノリンアルコール、鉱油、ソルビタンモノオレエート、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール)、皮膚軟化薬、溶媒、防腐剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、エチレンジアミン四酢酸塩)、増粘剤(例えば、プルリン(pullulin)、キサンタン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース)、可塑剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール)、抗酸化剤(例えば、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンC、カルシウム)、緩衝剤、柔軟剤(例えば、ケイ素)、抗生物質、低級抗生物質(例えば、銀、テトラサイクリンなど)など。
【0081】
以下の実施例で発明をさらに詳細に説明することができるが、これらの実施例を、本発明の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。
【実施例】
【0082】
実施例1
すでに述べたように、記載した酸化誘導体化エステル化セルロースを含む止血材料は、さまざまな方法で作製することができる。それにもかかわらず、止血材料を作製するための方法の非限定的な一例は、以下を含むことができる:
1)活性化処理:
a)2リットルの水酸化ナトリウム、2リットルの炭酸ナトリウム、および1リットルの次亜塩素酸ナトリウムを反応容器の内袋に入れた後、適量の純水を加え、成分が完全に溶解し、約8~9.5のpH値を達成するまで撹拌する。次に、60リットルの95%エチルアルコールを内袋に注ぎ、混合する。その後、ステンレス鋼製ヒーターの電源を入れ、内袋の温度を約25℃~約28℃に保ち、10時間保持する。
【0083】
b)反応容器中の混合溶液に、約80メートルのセルロース製臨床用ガーゼを入れる。このとき、外側本体の温度は30℃±3℃にすべきである。さらに、内袋の温度は26℃±1℃にすべきである。
【0084】
c)内袋の温度を20℃±3℃に低下させ、反応容器を約3~約5時間にわたり回転させ始める。
d)冷蔵庫からの冷水を20℃±3℃の温度の内袋に移動させる。30分後に温度は5℃±3℃に低下する。この反応を1時間にわたりそのまま生じさせる。
【0085】
2)酸化処理
a)約60リットルの95%エチルアルコールおよび12瓶のクロロ酢酸を反応容器に加える。その後、約45℃の温度の水中に入れる。30分後、内袋内の温度は5℃±3℃から41℃±3℃に上昇する可能性がある。過酸化水素1瓶を加え、温度を32℃±3℃に低下させ、反応を約1.5時間にわたり継続させる。
【0086】
3)すすぎおよび乾燥
a)ガーゼを反応容器からステンレス鋼製の槽に入れ、60kgの70%エチルアルコール中に加え、撹拌し、すすぐ。次いで、遠心脱水によってガーゼを乾燥させる。
【0087】
b)上記のようにして得られたガーゼを、60kgの70%エチルアルコールを含む別のステンレス鋼製の槽に入れ、これを、塩酸を添加して7±0.5のpH値を達成することによって中和する。
【0088】
c)ガーゼを取り出し、乾燥させ、このガーゼを、別のステンレス鋼製の槽中で、もう1回、または何回も、溶液が明澄になるまで上記のように処理する。その後、ガーゼを取り出し、乾燥させ、アイロンをかけることにより平坦にする。
【0089】
d)すすいだガーゼを乾燥機で乾燥する。電源スイッチを入れ、乾燥ボタンを押すと、乾燥機が作動し始め、不要なエチルアルコールをガーゼから除去する。
4)殺菌およびアイロンがけ
乾燥およびアイロンがけに関し。ローラを回転させると、ガーゼは通過し、ガーゼは乾燥され続け、ガーゼはアイロンがけされるので、ガーゼは巻き上げられる前に平坦になることができる。
【0090】
5)微粉砕
a)ガーゼのシートを微粉砕機に挿入し、ガーゼを磨砕して粉末にする。
6)キット
a)1グラムの止血粉末を第1のシリンジに入れる。
【0091】
b)4mLの生理食塩水を第2のシリンジに引き入れる。
c)必要に応じて、生理食塩水を止血粉末と混合するために2つのシリンジを組み合わせるために使用することができる混合活栓に、第1および第2のシリンジを提供する。
【0092】
本発明のこれらの観点について記載してきたが、本発明は新規な種類の可溶性止血材料を提供し、それは産業界において単純かつ経済的に作製することができることが理解される。また、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明は、その精神または範囲から逸脱することなく、その多くの明らかな変形が可能であるので、上記の説明に記載される特定の詳細によって限定されるべきではないことも理解される。
【0093】
本発明は、その精神および本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態において具現化することができる。記載した態様は、あらゆる点で例示的なものにすぎず、限定的なものではないとみなすべきである。したがって、本発明の範囲は、上記記載ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の同等性の意味および範囲内に入るすべての変更は、それらの範囲内に包含されるべきである。
【符号の説明】
【0094】
100 ベータ連結グルコピラノース残基
105 グルコピラノース残基
110 グルコピラノース残基
115 6員グルコピラノシル環
120 第1のモノマー
125 第2のモノマー
130 第3のモノマー
135 第4のモノマー
140 第5のモノマー例
145 第6のモノマー例
150 第7のモノマー例(
図4)
150 第8の非限定的なモノマー例(
図5)
200 止血ゲルを形成するためのシステム
202 液体
204 固体止血材料
206 第1のシリンジ
207 第1のシリンジプランジャー
208 第2のシリンジ
209 第2のシリンジプランジャー
210 三方活栓
212 弁
230 止血ゲルを形成するためのシステム
232 液体
234 固体止血材料
236 第1のシリンジ
237 第1のシリンジプランジャー
238 第2のシリンジ
239 第2のシリンジプランジャー
240 雌-雌ルアーロックアダプター
242 第1のルアーロック末端
244 第2のルアーロック末端
246 管部分
248 フィンガータブ
250 フィンガータブ
260 止血ゲル
270 分配アダプター
272 第1の末端
274 分配チップ
302 止血フォーム
304 止血ゲル
305 液体発泡剤
308 加圧容器
310 噴射剤
【国際調査報告】