(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】磁気素子を具備する形状記憶合金アクチュエータ部分組立体、及び当該形状記憶合金アクチュエータ部分組立体を備える流体弁
(51)【国際特許分類】
F03G 7/06 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
F03G7/06 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503535
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 IB2020056757
(87)【国際公開番号】W WO2021014315
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019000012348
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511020829
【氏名又は名称】サエス・ゲッターズ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・チトロ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・アラックア
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・マッティア・フランチェスキーニス
(57)【要約】
本発明は、第1の実施態様において、形状記憶合金ワイヤ(15)と、付勢バネ(16)と、第1の可動要素(13)の運動と端子(18)を具備する第2の可動要素(14)の運動とを結合するための磁気応答素子(17、17′)と、を備えているアクチュエータ部分組立体に関し、第2の実施態様において、流体弁であって、流体弁が、流体弁の開閉を制御する末端部を具備するプランジャを備えており、プランジャの動作が、形状記憶合金ワイヤ、付勢要素、及び磁気応答素子の作用によって制御される、流体弁に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ部分組立体(10;20;30;40;50)であって、
第1の固定面(11;21;31;41;51;61)及び第2の固定面(12;22;32;42;52;62)と、
第1の可動要素(13;23;33;43;53;63)及び第2の可動要素(14;24;34;44;54;64)と、
前記第1の固定面(11;21;31;41;51;61)に固定されていると共に、前記第1の可動要素(13;23;33;43;53;63)を静止位置から動作位置に移動させるために前記第1の可動要素(13;23;33;43;53;63)に接続されている形状記憶合金ワイヤ(15;25;35;45;55;65)と、
前記形状記憶合金ワイヤ(15;25;35;45;55;65)が及ぼす駆動力に抗して作用するように、前記第1の固定面及び前記第2の固定面のうち一の固定面と前記第1の可動要素及び前記第2の可動要素のうち一の可動要素とに接続されている付勢手段(16;26;36;46;56;66)と、
を備えている前記アクチュエータ部分組立体(10;20;30;40;50)において、
前記第1の可動要素(13;23;33;43;53;63)と前記第2の可動要素(14;24;34;44;54;64)とが、前記第1の可動要素及び前記第2の可動要素のうち一方の可動要素に配置された永久磁石を具備する磁気応答素子(17;17′,27;27′,37;37′,47;47′,57;57′,67,67′)と他方の可動要素に配置された1つ以上の対応する磁気応答素子とを介した磁気結合によって接続され、これにより、前記形状記憶合金ワイヤ(15;25;35;45;55;65)の動作時に前記第1の可動要素(13;23;33;43;53;63)が変位し、その結果として、第2の可動要素(14;24;34;44;54;64)が静止位置から動作位置に変位し、前記磁気結合が、前記形状記憶合金ワイヤ(15;25;35;45;55;65)の動作停止時に、前記付勢手段(16;26;36;46;56;66)によって前記第1の可動要素及び前記第2の可動要素が静止位置に復帰することを提供し、
前記第2の固定面(12;22;32;42;52;62)が、前記第1の可動要素(13;23;33;43;53;63)と前記第2の可動要素(14;24;34;44;54;64)とを好ましくは液密に隔てるように、前記第1の可動要素と前記第2の可動要素との間に挿置されていることを特徴とするアクチュエータ部分組立体(10;20;30;40;50)。
【請求項2】
前記永久磁石の1つ以上の組が、前記付勢手段(16;26;36;46;56;66)の力の1倍~10倍、好ましくは前記付勢手段の1.5倍~5倍の抗力を有していることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ部分組立体(10;20;30;40;50)。
【請求項3】
前記形状記憶合金ワイヤ(15;35;45)の端部それぞれが、前記第1の固定面(11;31;41)に固定されており、前記形状記憶合金ワイヤ(15;35;45)の中央部が、V字状構成又はU字状構成で前記第1の可動要素(13;33;43)に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ部分組立体(10;30;40)。
【請求項4】
前記形状記憶合金ワイヤ(25;55)の端部が、前記第1の固定面(21;51)及び前記第1の可動要素(23;53)に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ部分組立体(20;50)。
【請求項5】
磁気応答素子(17,17′;27,27′;37,37′;47,47′;57,57′;67,67′)がそれぞれ、1つ以上の永久磁石及び1つ以上の強磁性素子であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のアクチュエータ部分組立体(10;20;30;40;50)。
【請求項6】
前記磁気応答素子(17,17′;27,27′;37,37′;47,47′;57,57′;67,67′)がそれぞれ、第1の極性を有する1つ以上の永久磁石と異極性を有する1つ以上の永久磁石であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のアクチュエータ部分組立体(10;20;30;40;50)。
【請求項7】
前記磁気応答素子(17,17′;27,27′;37,37′;47,47′;57,57′;67,67′)が、前記第1の可動要素(13;23;33;43;53;63)及び第2の可動要素(14;24;34;44;54;64)の少なくとも一部分に固定されているか、又は前記第1の可動要素及び第2の可動要素の少なくとも一部分を構成していることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のアクチュエータ部分組立体(10;20;30;40;50)。
【請求項8】
前記第2の可動要素(24)が、磁性材料から作られていることを特徴とする請求項7に記載のアクチュエータ部分組立体(20)。
【請求項9】
磁石及び磁気応答素子(17,17′;27,27′;47,47′)から成る1組以上が、略同一の高さを有していることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のアクチュエータ部分組立体(10;20;40)。
【請求項10】
一方の可動要素上の磁気応答素子(37)の高さが、他方の可動要素上の1組以上の磁石又は1つ以上の磁気応答素子(37′)を包含することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のアクチュエータ部分組立体(30)。
【請求項11】
前記第1の可動要素(13;23;33;43;53;63)と前記第2の可動要素(14;24;34;44;54;64)とが、互いに同軸又は同心で配置されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のアクチュエータ部分組立体(10;20;30;40;50)。
【請求項12】
前記第2の固定面(42)が、前記第2の可動要素(44)に取り付けられた磁気応答素子(47′)によって物理的に接触されることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のアクチュエータ部分組立体(40)。
【請求項13】
前記磁気応答素子(47′)が、円状の断面を有しており、前記第2の固定面(42)と前記第2の可動要素(44)とが相対運動する際に前記磁気応答素子(47′)が回転可能とされるように取り付けられていることを特徴とする請求項12に記載のアクチュエータ部分組立体(40)。
【請求項14】
前記付勢手段(16;26;36;46;56;66)が、比例した復帰力を前記形状記憶合金ワイヤ(15;25;35;45;55;65)に付与することを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のアクチュエータ部分組立体(10;20;30;40;50)。
【請求項15】
前記形状記憶合金ワイヤ(15;25;35;45;55;65)及び前記付勢手段(16;26;36;46;56;66)が、前記第1の可動要素(13;23;33;43;53;63)によって物理的に隔てられていることを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のアクチュエータ部分組立体(10;20;30;40;50)。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のアクチュエータ部分組立体(10;20;30;40;50)を具備することを特徴とする流体弁(600)。
【請求項17】
前記第2の固定面(62)によって、前記第2の可動要素(64)と前記第1の可動要素(63)とが液密に接続されることを特徴とする請求項16に記載の流体弁(600)。
【請求項18】
前記付勢手段(66)が、比例した復帰力を前記形状記憶合金ワイヤ(65)に付与することを特徴とする請求項16又は17に記載の流体弁(600)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の実施態様として、形状記憶合金(SMA)ワイヤと、末端部を具備する要素を移動させるために磁気的に結合された可動要素と、を備えているアクチュエータ部分組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
形状記憶合金ワイヤを利用するアクチュエータアセンブリ及びアクチュエータシステムは、当該技術分野において知られており、近年の開発によって、例えば稠密性や統合の容易性のような本質的な利点を十分に活用可能とするために信頼性及び堅牢性が改善されていることに起因して、益々普及している。例えば、特許文献1は、緊急用アクチュエータを有しているロック装置に関し、特許文献2は、多飲料水の自動販売機に設置されている弁の動作システムを開示しており、特許文献3は、動作温度の範囲を拡大させたアクチュエータを開示しており、特許文献4は、家庭用電化製品の動作要素を開示している。
【0003】
これら装置すべてにおいて、形状記憶合金(SMA)の特徴が、より具体的には、2つの相、すなわち比較的低温で安定しているいわゆるマルテンサイト相と比較的高温で安定しているオーステナイト相との間における構造転移によって特徴づけられているSMAの材料特性が利用されている。形状記憶合金は、4つの温度Mf,Ms,As,Afによって特徴づけられている。ここで、温度Mfは、形状記憶合金が完全にマルテンサイト相に遷移する温度、すなわち形状記憶合金がマルテンサイト構造を有する温度である。温度Afは、形状記憶合金が完全にオーステナイト相に遷移する温度、すなわち形状記憶合金がオーステナイト構造を有する温度である。温度Ms及び温度Asは、2つの方向において転移が開示される温度である。
【0004】
形状記憶合金から作られているワイヤ、いわゆるSMAワイヤは、温度が温度Mf以下から温度Af以上に変化した場合に、又はその逆に変化した場合に、当該ワイヤの形状を変化させるように記憶されている。SMAワイヤの加工及び記憶は、非特許文献1に例示されるように、当該技術分野では広く知られた手段である。
【0005】
また、SMAワイヤは、オーステナイト開始温度As以上の温度において短縮開始し、オーステナイト最終温度Af以上の温度で加熱された場合において加熱すると最終長さに到達することが知られている。形状記憶合金ワイヤの短縮は、一般に、電流通過による加熱(ジュール効果)によって制御されるが、アクチュエータの内部において1つ以上の要素を変位させるために利用される。
【0006】
また、幾つかのアクチュエータは、磁気素子を具備するSMAワイヤの利用と密接に関連している。特に特許文献5は、SMAワイヤが作用させる力を低減させることによって動作機能又はロック機能を実現するために、SMAワイヤを基礎とするアクチュエータのための付勢手段として、磁石の利用を開示している。また、特許文献6は、SMAワイヤの付勢手段として、一方の磁石が固定された2つの磁石の利用を開示している。
【0007】
特許文献7は、第2の永久磁石を貼り付けたブロック部材をロック解除するために、永久磁石を貼り付けたSMAワイヤを概略的に説明しているギア機構に関する。
【0008】
特許文献8は、弁の流体部分を制御する弁制御モジュールであって、当該流体部分から隔離されている当該弁制御モジュールを開示しており、弁開放手段として磁気カップリングも示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2016/156283号
【特許文献2】欧州特許第2615951号明細書
【特許文献3】欧州特許第2171183号明細書
【特許文献4】国際公開第2015/150377号
【特許文献5】米国特許8528597号明細書
【特許文献6】米国特許出願2009/0236931号明細書
【特許文献7】米国特許出願第2008/0006112号明細書
【特許文献8】米国特許出願第2012/0151913号明細書
【特許文献9】特願2009/075170号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、結合された磁気応答素子が、アクチュエータの状態に応じて、可動アクチュエータ素子を駆動させるための手段と、静止位置へのアクチュエータの復帰を早めるための手段とを提供するように、要素を往復運動させるためにSMAワイヤと1組以上の永久磁石とを利用するアクチュエータを提供することである。第1の実施態様は、
- 第1の固定面及び第2の固定面と、
- 第1の可動要素及び第2の可動要素と、
- 第1の固定面に固定されていると共に、第1の可動要素を静止位置から動作位置に移動させるために第1の可動要素に接続されている形状記憶合金ワイヤと、
- 形状記憶合金ワイヤが及ぼす駆動力に抗して作用するように、第1の固定面及び第2の固定面のうち一の固定面と第1の可動要素及び第2の可動要素のうち一の可動要素とに接続されている付勢手段と、
を備えているアクチュエータ部分組立体において、
第1の可動要素と第2の可動要素とが、第1の可動要素及び第2の可動要素のうち一方の可動要素に配置された永久磁石を具備する磁気応答素子と他方の可動要素に配置された1つ以上の対応する磁気応答素子(すなわち、異極性を有する磁石及び/又は強磁性材料)とを介した磁気結合によって接続され、これにより、形状記憶合金ワイヤの動作時に第1の可動要素が変位し、その結果として、第2の可動要素が静止位置から動作位置に変位し、磁気結合が、形状記憶合金ワイヤの動作停止時に、付勢手段によって第1の可動要素及び第2の可動要素が静止位置に復帰することを提供し、
第2の固定面が、第1の可動要素と第2の可動要素とを好ましくは液密に隔てるように、第1の可動要素と第2の可動要素との間に挿置されている、アクチュエータ部分組立体を構成している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
また、本発明は、より良好にバランスされたアクチュエータ部分組立体の構造を提供する。すなわち、第2の可動要素(アクチュエータを動作させる要素)は、第1の可動要素の場合のように非対称な力を受けない。第2の可動要素に取り付けられた形状記憶合金ワイヤが特定の平面に配置されているので、アクチュエータ部分組立体を一層円滑に機能させることができるからである。
【0012】
さらに、本発明におけるアクチュエータ部分組立体の好ましい実施例では、SMAワイヤと付勢手段とが、SMAワイヤと付勢手段とが対向する側に配置されている第1の可動要素によって物理的に隔てられている。このような物理的な隔離は、特に幾つかのアクチュエータ部分組立体がマイクロシステムに採用され得ることを考慮すると、SMAワイヤが直線構成のみならず、SMAワイヤの強度及び/又は移動量を大きくすることができる、いわゆるU字状構成又はV字状構成であっても好適に利用可能である点において、アクチュエータ部分組立体の設計の柔軟性及び組立の容易性を向上させることができる。特許文献9は、直線構成に限定されたアクチュエータを例示しているが、直線的なSMAワイヤと付勢手段との両方が、第1の固定面と第1の可動要素との間において同心状に接続されており、すなわち、第1の可動要素の同一側に配置されているので、実質的にSMAワイヤの他の構成を利用することができない。
【0013】
本発明の構成では、高レベルの小型化が可能であることを強調することが肝心である。この場合には、特許文献8に記載のように、置換制御モジュールが弁の流体部分に接続されているのではなく、SMAアクチュエータが、弁の流体モジュールに完全に統合されているからである。特許文献8と本発明との間において最も関連する相違点は、形状記憶合金ワイヤと付勢手段とが隔てられていないことと、磁気応答素子が可動要素に直接取り付けられていないので、中間要素が必要となり、余計な重量物(encumbrance)を構造体に追加しなくてはならないことである。
【0014】
本発明の構成の他の利点は、代替的に、特に流体弁の用途に関連する。この場合のように、形状記憶合金ワイヤは、流体の特定の性質(液体、気体、混合体)とは無関係に常時空気に露呈しているので、形状記憶合金ワイヤの熱管理及び制御並びに形状記憶合金ワイヤの動作を良好に維持することができる。これにより、特許文献8に記載のように、弁が限られた数の動作位置に制限されるのではなく、完全な比例性を実現することができる。このような制限は、例えばバネや屈曲等のような比例した付勢を利用することを想定している本発明の好ましい実施例とは異なり、双安定/三安定の付勢手段の利用に関連付けられる。
【0015】
第1の固定面と第2の固定面とは、アクチュエータ部分組立体に関連付けて解釈されるべきであることに留意すべきである。より詳細には、本発明におけるアクチュエータ部分組立体は、可動装置(例えば、自動車両)に取り付けられており、そのような場合には、相対的な意味合いでそれらは固定面とされる。
【0016】
本発明について、以下の図面を参考にしつつ、さらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明におけるアクチュエータ部分組立体の第1の実施例の、非動作状態における概略的な断面図である。
【
図1B】本発明におけるアクチュエータ部分組立体の第1の実施例の、動作状態における概略的な断面図である。
【
図2A】本発明におけるアクチュエータ部分組立体の第2の実施例の、非動作状態における概略的な概略的な断面図である。
【
図2B】本発明におけるアクチュエータ部分組立体の第2の実施例の、動作状態における概略的な概略的な断面図である。
【
図3A】本発明におけるアクチュエータ部分組立体の第3の実施例の、非動作状態における概略的な断面図である。
【
図3B】本発明におけるアクチュエータ部分組立体の第3の実施例の、動作状態における概略的な断面図である。
【
図4A】本発明におけるアクチュエータ部分組立体の第4の実施例の、非動作状態における概略的な断面図である。
【
図4B】本発明におけるアクチュエータ部分組立体の第4の実施例の、動作状態における概略的な断面図である。
【
図5A】本発明におけるアクチュエータ部分組立体の第5の実施例の、非動作状態における概略的な断面図である。
【
図5B】本発明におけるアクチュエータ部分組立体の第5の実施例の、動作状態における概略的な断面図である。
【
図6】本発明におけるアクチュエータ部分組立体を組み込んだ弁の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
理解し易くするために、図示の様々な部品の寸法及び寸法比は、特に形状記憶合金ワイヤの直径を除いて変更されている場合がある。さらに、例えば形状記憶合金ワイヤの圧着部や電気接点のような、本発明を理解するために必要ではない幾つかの要素は、概略図に表されていない。
【0019】
図1A及び
図1Bはそれぞれ、(SMAワイヤが非動作状態とされる)静止位置及び(SMAワイヤが動作状態とされる)動作位置における、本発明におけるアクチュエータ部分組立体10の第1の実施例の概略的な断面図である。
【0020】
アクチュエータ部分組立体10が、第1の上側固定面11と、第2の下側固定面12と、第2の下側固定面12の外側に位置する第1の可動要素13と、第2の下側固定面12の内側に位置する第2の可動要素14とを備えており、第1の可動要素13と第2の可動要素14とは、好ましくは互いに同軸に配置されている。第1の可動要素13は、いわゆるV字状構成の形状記憶合金ワイヤ15によって変位され、形状記憶合金ワイヤ15の端部は、第1の固定面11に固定され、形状記憶合金ワイヤ15の中央部は、第1の可動要素13に固定/接続されている。
【0021】
形状記憶合金ワイヤ15が動作すると、第1の可動要素13が上昇し、さらに、第1の可動要素13に取り付けられた第1の磁石17と、第2の可動要素14に取り付けられた第2の磁石17′との吸引力によって、第2の可動要素14を上方に引き上げる。
【0022】
SMAワイヤ15が動作停止すると、第2の可動要素14が、付勢要素によって、この場合には、第2の固定面12と第2の可動要素14との間に接続されているバネ16によって、磁石17,17′の磁気吸引力を介して第1の可動要素13を静止位置に向かって引き下げる。
【0023】
図1A及び
図1Bは、第2の可動要素14の自由な先端部に固定されている端子要素18を表わす。端子要素18の機能は、第2の固定面12のサポート19,19′との関係によって特徴づけられている。より具体的には、本発明は、端子18の特定の形状、材料、又は目的に限定される訳ではない。端子18は、例えば、接触要素19,19′のための電気端子であっても、流体回路の開口部(この場合には、参照符号19,19′は開口部の壁に相当する)を閉じるためのプランジャであっても、ドアロックや磁気クラッチであっても良い。
【0024】
図1A及び
図1Bの概略的な断面図は、異極性を有する2つの磁石17,17′を利用している部分組立体を表わす。当該磁石は、第1の可動要素13及び第2の可動要素14それぞれに取り付けられている環状の形態とされる。
【0025】
図2A及び
図2Bはそれぞれ、(SMAワイヤが非動作状態とされる)静止位置及び(SMAワイヤが動作状態とされる)動作位置における、本発明におけるアクチュエータ部分組立体20の第2の実施例を示す概略的な断面図である。
【0026】
図1A及び
図1Bに表わす第1の実施例に関して最も重要な構造上の相違点は、現在は第1の可動要素23と第2の固定面22との間に接続されており、ひいてはバネ16のように押出作用ではなく引張作用を発揮している付勢要素/戻りバネ26の位置決めにある。
【0027】
図1A及び
図1Bの戻り要素16と
図2A及び
図2Bの戻り要素26との間における異なる位置決めが、本発明におけるアクチュエータ部分組立体の2つの主要な構成を浮き彫りにする。
【0028】
アクチュエータ部分組立体20に見られる他の違いは、単なる変形例であるので、アクチュエータ部分組立体10の構成にも適用可能である。他の違いとしては、
- 形状記憶合金ワイヤ25が直線/線形に構成されており、一方の端部が第1の固定面21に固定されていると共に、他方の端部が第1の可動要素23に固定されていること、及び
- 第2の可動要素24が、第1の可動要素23に取り付けられた磁気素子27と磁気的に結合するために、磁気素子27′で作られていること、
が挙げられる。
【0029】
図1Aと同様に、第2の可動要素24の先端に位置する端子要素28は、第2の固定面22のサポートとして機能する部分組立体要素29,29′との関係を通じて、アクチュエータ部分組立体の範囲及び機能を決定する。
【0030】
図3A及び
図3Bはそれぞれ、静止位置及び動作位置における、アクチュエータ部分組立体30の第3の実施例の概略的な断面図である。
図1A及び
図1Bに表わす第1の実施例と同様に、この場合も、付勢バネ36が、第2の可動要素34と第2の固定面32との間に接続されている。この場合には、端子38は、第2の可動要素34に固着された要素ではなく、むしろ第2の可動要素34の一部分、特に流体弁ポートの密閉に最も適している先端部分であるので、第2の固定面32のサポート39,39′は、弁壁の一部、すなわち、より一般には弁絶縁要素を呈している。
【0031】
アクチュエータ部分組立体30では、V字状構成のSMAワイヤ35が、第1の固定面31と、磁気素子37、好ましくは著しく長手方向に延在しているシリンダを具備する第1の可動要素33とを接続している一方、複数の比較的小型の環状磁気素子37′が、第2の可動要素34に沿って離隔して取り付けられている。SMAワイヤ35を動作させると、第1の可動要素33が上昇し、磁気要素37と複数の磁気要素37′との磁気的結合を介して第2の可動要素34を上方に持ち上げる。SMAワイヤ35を冷却すると、第2の可動要素34が、第2の固定面32と第2の可動要素34との間に接続された付勢バネ36の押し付けによって、当該磁気的結合を介して第1の可動要素33を引き下げる。
【0032】
図4A及び
図4Bはそれぞれ、静止位置及び動作位置における、アクチュエータ部分組立体40の第4の実施例の概略的な断面図である。構造は、
図1A及び
図1Bに表わす第1の実施例と略同一であり、第1の上側固定面41と、第2の下側固定面42と、第1の可動要素43と、第2の可動要素44と、V字状構成のSMAワイヤ45と、第2の可動要素44と第2の固定面42との間に接続されている付勢バネ46と、第1の可動要素及び第2の可動要素43,44それぞれに取り付けられている磁気素子47,47′と、第2の固定面42のサポート49,49′と接触するための、第2の可動要素44の先端に位置する端子48とを備えている。
【0033】
唯一の相違点は、第2の可動要素44に取り付けられた磁気素子47′も第2の固定面42と接触していることである。従って、磁気素子47′は、第1の可動要素43に固定されたSMAワイヤ45が動作する際に磁気素子47が上向きの引張を発生させる場合に、及び、SMAワイヤ45が動作停止すると付勢バネ46が下向きの押出を発生させる場合に、摩擦を最小にする円状の断面を有している。この目的のために、磁気素子47′は、第2の固定面42と第2の可動要素44とが相対運動している際に回転可能なように取り付けられている。例えば、磁気素子47′は、第2の可動要素44と一体化されている上側のレッジ47″と下側のレッジ47″との間に配置されており、回転する磁気素子47′の脱落を防止しつつ、第2の固定面42との接触を回避する大きさになっている。
【0034】
図1~
図4に表わすすべての実施例において、アクチュエータ部分組立体は、可動要素の直線運動を示しているが、優位には、同一の概念が、非動作状態及び動作状態それぞれにおける、本発明におけるアクチュエータ部分組立体50の第5の実施例の概略的な断面図を表わす
図5A及び
図5Bに例示される回転式アクチュエータに適用可能とされる。
【0035】
より具体的には、アクチュエータ部分組立体50は、磁気応答素子57,57′それぞれを具備する第1の円状の同心可動要素53及び第2の円状の同心可動要素54を備えている。形状記憶合金ワイヤ55が、第1の固定面51と第1の可動要素53の実質的に外周上の接点との間に接続されている一方、SMAワイヤ55の引張作用に対抗する弾性要素56が、略反対位置で、第1の固定面51と第1の可動要素53の外周上の他の接点との間に接続されている。
【0036】
円状の第2の固定面52は,第1の可動要素53と第2の可動要素54との間に同心配置されていると共に、径方向に延在しているサポート59によって支持されており、接触要素(端子)58は、第2の可動要素54の外周と同一平面上に取り付けられている。SMAワイヤ55が動作すると、第1の可動要素53が(
図5A及び
図5Bに表わす実施例では反時計回りに)回転されるので、結合された磁気応答素子57,57′を介して第2の可動要素54が回転され、これにより端子58はサポート59に沿って移動されると共に、サポート59と位置合わせ/接触される。
【0037】
すべての上述の実施例は、本発明の優位性を示している。すなわち、結合された磁気応答素子は、以下の2つの機能を果たす:
- SMAワイヤを動作させる(電流供給により加熱される)ことによってアクチュエータ要素を駆動させること;及び
- SMAワイヤを動作停止させる(電流供給が停止される)ことによって静止位置へのアクチュエータの復帰を促進させること。
【0038】
上記の説明のように、本発明におけるアクチュエータ部分組立体には2つの主要な構成があり、第1の構成では、付勢バネが第1の可動要素に作用し、第2の構成では、付勢バネが第2の可動要素に作用する。
【0039】
これら2つの主要な実施例は、多様な形態で実施可能であり、特に以下の幾つかの形態は、説明した図面を参照して既に表わされている:
- SMAワイヤの構成:最も有用な構成のうち一の構成として、単一のSMAワイヤが利用される。SMAワイヤは、好ましくは、一方の端部が第1の固定面に固定されると共に他方の端部が第1の可動要素に固定された直線状の構成であるか、又は代替的には、両端部が第1の固定面に固定されると共に中央部が第1の可動要素に固定/接続された、いわゆるV/U字状の構成とされる。
- 磁気応答要素:永久磁石の少なくとも1つの組が、第1の可動要素又は第2の可動要素に配設されている。他方の可動要素の磁気応答要素は、異極性の磁石の1つ以上の組であるか、又は強磁性材料から成るか若しくは強磁性材料を備えている1つ以上の要素とされる。
- 磁気応答素子は、第1の可動要素及び第2の可動要素に固定/接続されているが、代替的には、第1の可動要素及び/又は第2の可動要素が、磁気応答素子/材料を備えているか、若しくは磁気応答素子/材料で作られている。
- 磁気応答素子の高さは、同一であるか、又は一方の磁気応答素子が、他方の可動要素の対応する磁気素子の組を囲む高さを有している。
- 磁気応答素子の大きさ及び形状は同一でなくて良く、この点において、磁気応答素子が第2の固定面と接触している場合には円状の断面が望ましい。
- 第1の固定面及び第2の固定面は、別個のアクチュエータ要素に対応しているか、又は単一要素、例えば好適な形状のアクチュエータフレームの一部分とされる。
- アクチュエータ部分組立体は、直線移動又は回転移動する。
【0040】
上記のすべてのバリエーションは、本発明の限定的な側面ではなく、2つの主要な実施例のアクチュエータ部分組立体に組み合わせて利用できる可能性のある好ましい解決策に過ぎません。
【0041】
好ましくは、磁気応答要素は、第1の可動要素(図示の実施例における外側要素)の変位と第2の可動要素の変位との間における動作遅延を回避するために、付勢バネを圧縮することができる磁気抗力を提供する一連の永久磁石を備えている。磁気抗力は、磁気吸引力に対して垂直な力であり、形状記憶合金ワイヤが第1の可動要素を引っ張ることに直接起因する。磁気抗力は、付勢バネ力の1倍~10倍、好ましくは付勢バネ力の1.5倍~5倍の間である必要があり、当業者であれば永久磁石のデータシートから容易に得ることができる。
【0042】
本発明におけるアクチュエータ部分組立体に利用される適切な形状記憶合金としては、例えばニチノール(登録商標)のようなNi-Ti基合金が挙げられ、Hf,Nb,Pt,Cuのような付加元素を含んでいても含まなくても良い。SMAワイヤアクチュエータ要素の適切な直径は、25μm~500μmである。
【0043】
本発明は、第2の実施態様では、上述のアクチュエータ部分組立体を具備する流体弁である。
【0044】
特定の実施例では、第2の固定面は、形状記憶合金ワイヤが流体と接触しないように液密になっているので、例えば水、油、冷媒液(例としては、いわゆるR410a)のような、その性質及び特性によって形状記憶合金ワイヤを損傷させる可能性がある流体を利用することができる。既に説明したように、これら流体との接触は、一般にジュール効果を通じて加熱されることによって実現されるSMAワイヤの動作に影響を与える。
【0045】
図6は、本発明におけるアクチュエータ部分組立体を具備する流体弁600の概略的な断面図である。流体弁600は、第2の可動要素64に対応するプランジャによって連通状態と隔離状態とを選択可能とされる、流体入口601及び流体出口602を有しており、第2の可動要素64は、場合によっては、出口602の寸法と末端部68の寸法とが“完全”に一致する場合には任意であるリングガスケット68′によって、液密状態の接続を実現するための適切な末端部68を有している。さもなければ、流体弁600は、例えば調節式オリフィスのような、流量制御機能を実行する要素とされる。第2の可動要素64と第1の可動要素63とは、弁本体603によって支持されていると共に弁本体603に接続されている第2の固定面62によって、液密状態で互いから隔てられている。付勢バネ66は、第2の可動要素64を第2の固定面62と接続させている。
【0046】
図6は、いわゆるノーマルクローズ構成の流体弁600、すなわち、SMAワイヤ65が動作停止状態にある場合に、流体入口601と流体出口602とが互いから隔離されている流体弁600を表わす。第1の固定面61と第1の可動要素63との間に接続されているV字状のSMAワイヤ65が動作すると、第1の可動要素63が上昇し、(第1の可動要素63に配設されている)磁気応答素子67と(第2の可動要素64に配設されている)磁気応答素子67′との作用によって、第2の可動要素/プランジャ64が上方に引き込まれ、これにより流体入口601と流体出口602とが流通するようになる。
【0047】
形状記憶合金ワイヤ65が動作停止した場合には、付勢バネ66が、流体弁600を閉じるように第2の可動要素/プランジャ64を押し下げると共に、磁気応答素子67,67′の磁気結合を介して第1の可動要素63を静止位置に向かって引き込む。
【符号の説明】
【0048】
10 アクチュエータ部分組立体
11 第1の上側固定面
12 第2の下側固定面
13 第1の可動要素
14 第2の可動要素
15 形状記憶合金ワイヤ
16 バネ
17 磁石
17′ 磁石
18 端子要素
19 サポート
19′ サポート
20 アクチュエータ部分組立体
21 第1の上側固定面
22 第2の下側固定面
23 第1の可動要素
24 第2の可動要素
25 形状記憶合金ワイヤ
26 付勢要素/戻りバネ
27 磁気素子
27′ 磁気素子
28 端子要素
29 サポート
29′ サポート
30 アクチュエータ部分組立体
31 第1の上側固定面
32 第2の下側固定面
33 第1の可動要素
34 第2の可動要素
35 形状記憶合金ワイヤ
36 付勢バネ
37 磁気素子
37′ 磁気素子
38 端子要素
39 サポート
39′ サポート
40 アクチュエータ部分組立体
41 第1の上側固定面
42 第2の下側固定面
43 第1の可動要素
44 第2の可動要素
45 形状記憶合金ワイヤ
46 付勢バネ
47 磁気素子
47′ 磁気素子
47″ レッジ
48 端子
49 サポート
49′ サポート
50 アクチュエータ部分組立体
51 第1の上側固定面
52 第2の下側固定面
53 第1の可動要素
54 第2の可動要素
55 形状記憶合金ワイヤ
56 弾性要素
57 磁気応答素子
57′ 磁気応答素子
58 接触要素(端子)
59 サポート
59′ サポート
60 アクチュエータ部分組立体
61 第1の上側固定面
62 第2の下側固定面
63 第1の可動要素
64 第2の可動要素
65 形状記憶合金ワイヤ
66 付勢バネ
67 磁気応答素子
67′ 磁気応答素子
68 末端部
68′ リングガスケット
600 流体弁
601 流体入口
602 流体出口
603 弁本体
【国際調査報告】