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特表2022-541568ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法
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  • 特表-ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/02 20060101AFI20220915BHJP
   G06N 3/04 20060101ALI20220915BHJP
   G06N 99/00 20190101ALI20220915BHJP
   G05B 13/04 20060101ALI20220915BHJP
   G05D 9/12 20060101ALI20220915BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G05B13/02 J
G06N3/04 136
G06N99/00 180
G05B13/04
G05D9/12 B
E02B7/20 105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503555
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 CN2021079840
(87)【国際公開番号】W WO2021196997
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】202010255987.7
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520414480
【氏名又は名称】中国長江三峡集団有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】518142258
【氏名又は名称】中国水利水電科学研究院
【氏名又は名称原語表記】China Institute of Water Resources and Hydropower Research
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】王 浩
(72)【発明者】
【氏名】雷 暁輝
(72)【発明者】
【氏名】戴 会超
(72)【発明者】
【氏名】孔 令仲
(72)【発明者】
【氏名】張 召
(72)【発明者】
【氏名】王 超
(72)【発明者】
【氏名】楊 恒
(72)【発明者】
【氏名】朱 永楠
(72)【発明者】
【氏名】楊 朝暉
【テーマコード(参考)】
2D019
5H004
5H309
【Fターム(参考)】
2D019AA45
5H004GB08
5H004KC27
5H004KD02
5H004KD32
5H309AA07
5H309BB01
5H309CC09
5H309DD22
5H309HH25
5H309HH28
(57)【要約】
本発明は、ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法を開示し、水位予測の技術分野に関する。該方法では、ファジーニューラルネットワークを使用して、ゲート開度と開渠の制御水位との間の関係を制御し、予測制御アルゴリズムを結合したゲート前水位制御器を構築する。ゲート前水位制御器の制御目標に基づいて、勾配最適化アルゴリズムを使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を解き、解いた最適制御率に基づいて、実際に測定された水位変化情報を収集して、それに最適制御率を掛けて、制御戦略を生成し、それによって、水位予測及び制御の目的を達成する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1、多入力単一出力のファジィニューラルネットワークを確立し、水路の運用データに基づいて、ファジィニューラルネットワークをトレーニングし、ゲートの開度値及び初期水位に基づいて、水路池の水位を予測できるファジィニューラルネットワーク予測モデルを取得するステップと、
S2、ステップS1のファジィニューラルネットワーク予測モデルに基づいて、予測制御アルゴリズムを結合したゲート前水位制御器を構築するステップと、
S3、ステップS2で構築されたゲート前水位制御器の制御目標に基づいて、勾配最適化アルゴリズムを使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を解くステップと、
S4、ステップS3で解いた最適制御率に基づいて、実際に測定された水位変化情報を収集し、それに最適制御率を掛けることによって制御戦略を生成するステップとを含むことを特徴とする、ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法。
【請求項2】
ステップS1で確立された多入力単一出力のファジィニューラルネットワークは、具体的に4つの層を含み、具体的には、
第1層は入力層であり、この層には、入力変数の次元を表すk個のニューロンがあり、入力層の式が次のようになり、
【数1】

ここで、i=1,2,…,kであり、uがi番目の入力値であり、x=[x,x,…,x]が出力ベクトルであり、
第2層はラジアルベースであり、この層には、入力をファジー化するためのP個ニューロンがあり、この層の出力はメンバーシップ関数の積であり、ニューロンの出力は式(2)のようになり、
【数2】

ここで、j=1,2,…,Pであり、x=[x,x,…,x]がファジィニューラルネットワーク層の入力であり、c=[c1j,c2j,…,ckj]、σ=[σ1j,σ2j,…,σkj]がそれぞれj番目のニューロンの中心ベクトル及び幅ベクトルであり、φがj番目のニューロンの出力値であり、Pが該層のニューロンの数であり、
第3層は規則層であり、この層にはP個のニューロンもあり、その出力形式は式(3)のようになり、
【数3】

ここで、l=1,2,…,Pであり、vが1番目の出力であり、v=[v,v,…,vが出力ベクトルであり、
第4層は出力層であり、出力層のフィッティング方式が、重み係数方式を採用しており、計算式は式(4)のようになり、
【数4】

ここで、w=[w,w,…,wは出力重みベクトルであり、vは規則層の出力ベクトルであることを特徴とする、請求項1に記載のファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法。
【請求項3】
ステップS1で構築されたニューラルネットワーク予測モデルの入力層変数は、式(5)
【数5】

で示され、
出力層変数は、式(6)
【数6】

で示されていることを特徴とする、請求項1に記載のファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法。
【請求項4】
ステップS2で構築されたゲート前水位制御器の目的関数は、式(7)のようになり、
【数7】

ここで、
【数8】

であり、Hは制御時間であり、
【数9】

を満たし、対象y(t+i)は、予測された出力変数であり、即ち、予測されたゲート前の水位であり、
【数10】

は出力変数の目標値であり、即ち、ゲート前の目標水位であり、u(t)はゲート開度であり、Δu(t)は制御変数であり、u(t)の増分であり、即ちゲート開度の変化量であり、
【数11】

及び
【数12】

はそれぞれ、ステップiの出力変数及びステップjの制御変数の重み係数であることを特徴とする、請求項1に記載のファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法。
【請求項5】
ステップS3では、勾配最適化のプロセスは、以下のステップを含み、
S31、式8に示すように、ゲート前水位制御器の目的関数を最小化させ、
【数13】

ここで、
【数14】

であり、
S32、勾配アルゴリズム理論によれば、式(9)を使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を計算し、
【数15】

ここで、ηは制御入力の学習率であり、u(t)に関する目的関数J(u(t))の偏導関数を計算し、
【数16】

を取得し、
それから
【数17】

を取得し、
ここで、
【数18】

はヤコビ行列であり、ファジィニューラルネットワークモデルによって算出されることを特徴とする、請求項1に記載のファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路水位のリアルタイム制御の技術分野に関し、特にファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水路給水の制御目標は、ユーザーに安全で信頼性の高い給水サービスを提供することである。給水の安定性は、特定のポイントの水位を制御することによって実現される。これらのポイントは通常、水路運用制御ポイントと呼ばれ、制御ポイントで安定した水位を維持することが、水路を安全に運用するための主要な条件である。水位制御は、主に水路池の中央と入口にある制御用建物によって行われる。水路池の水位制御は、主にリアルタイムの水位情報に依存しており、従来の水路操作制御は基本的に手動操作に依存しており、制御プロセスはゲート操作者の操作経験に完全に依存している。この運用モードには多くの明らかな欠点がある。レギュレーターの制御プロセスには多くの主観的な要因があり、水量を正確に制御することは困難であり、水の放棄や不十分な給水を引き起こしやすくなる。
【0003】
そのため、現在の開渠給水事業は、無人自動運行を実現する方向に進んでいる。開渠自動化制御の基本は、開渠制御アルゴリズムと開渠制御モデルである。開渠制御アルゴリズムに関しては、現在、伝統的なPI制御アルゴリズムに加えて、先進的な最適制御アルゴリズム、予測制御アルゴリズム、およびロバスト制御アルゴリズムなどがある。開渠制御モデルには、主に線形化されたサンブナン方程式制御モデル及び簡易線形制御モデルが含まれる。制御モデルと制御アルゴリズムの長所と短所は、制御システムの制御レベルに直接影響する。制御アルゴリズムに関しては、予測制御アルゴリズムは、その制御理論と実際のエンジニアリングにおける制御性能が他の制御アルゴリズムよりもはるかに高いことを証明していた。開渠制御の研究において、開渠制御システムの制御効果を制限する主な要因は、制御モデルの精度である。制御モデルは、研究対象の制御入力と制御対象の関係を反映する必要があり、ある程度の高速計算も必要である。開渠シミュレーション方程式、サンブナン方程式は、水路池の水位と流量の変化傾向をよくシミュレートすることができると証明されているため、この方程式を使用して、水路池の水位と流量の関係を導き出すことができる。ただし、サンブナン方程式の非線形特性と微分特性により、解く時や制御アルゴリズムの適用時により大量の計算が発生し、この方程式を制御モデルとして直接使用することはできない。現在、サンブナン方程式の微分特性については、線形化処理が主流であるが、サンブナン方程式を線形化して得られる制御モデルでさえ複雑であり、現在の研究は主に単一水路池の制御モデルの構築に焦点を当てて、実際の複数の直列つなぎ水路池のプロジェクトに適用できない。簡易線形制御モデルは、現在最も一般的に使用されている制御モデルであり、単一水路池の水位が流量と線形関係にあり、定常関係であると仮定している。この関係を表す方程式は、積分時間遅延モデルである。積分時間遅延モデルを詳細に処理することにより、複数の水路池の制御水位目標と制御流量変化値の関係を記述した制御モデルを構築することができる。ただし、この簡易線形制御モデルの使用にも一連の問題がある。1つは、積分時間遅延モデルの水路池と水位および流量の間の定常線形関係パラメータを決定することが難しいことである。もう1つは、積分時間遅延モデルは単純化されすぎており、それは水路池と水位および流量の間に定常線形関係があると仮定し、この基本的な仮定は、水路池の給水条件が大きく変化する場合には当てはない。三つ目は、ここでの制御作用量はゲート流量であり、さらにゲート流量をゲート開度に変換する必要があることである。これらの問題は、簡易線形制御モデルの実用性を制限した。
【0004】
したがって、上記の技術的問題を解決するための水位予測及び制御方法を見つけることが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来の技術における前述の問題を解決するために、ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明によって採用される技術的解決手段は以下のとおりである。
【0007】
ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法であって、
S1、多入力単一出力のファジィニューラルネットワークを確立し、水路の運用データに基づいて、ファジィニューラルネットワークをトレーニングし、ゲートの開度値及び初期水位に基づいて、水路池の水位を予測できるファジィニューラルネットワーク予測モデルを取得するステップと、
S2、ステップS1のファジィニューラルネットワーク予測モデルに基づいて、予測制御アルゴリズムを結合したゲート前水位制御器を構築するステップと、
S3、ステップS2で構築されたゲート前水位制御器の制御目標に基づいて、勾配最適化アルゴリズムを使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を解くステップと、
S4、ステップS3で解いた最適制御率に基づいて、実際に測定された水位変化情報を収集し、それに最適制御率を掛けることによって制御戦略を生成するステップとを含む。
【0008】
好ましくは、ステップS1で確立された多入力単一出力のファジィニューラルネットワークは4つの層を含み、具体的には、
第1層は入力層であり、この層には、入力変数の次元を表すk個のニューロンがあり、入力層の式が次のように表され、
【数1】

ここで、i=1,2,…,kであり、uがi番目の入力値であり、x=[x,x,…,x]が出力ベクトルであり、
第2層はラジアルベースであり、この層には入力をファジー化するためのP個ニューロンがあり、この層の出力はメンバーシップ関数の積であり、ニューロンの出力は式(2)のようになり、
【数2】

ここで、j=1,2,…,Pであり、x=[x,x,…,x]がファジィニューラルネットワーク層の入力であり、c=[c1j,c2j,…,ckj]、σ=[σ1j,σ2j,…,σkj]がそれぞれj番目のニューロンの中心ベクトル及び幅ベクトルであり、φがj番目のニューロンの出力値であり、Pが該層のニューロンの数であり、
第3層は規則層であり、この層にはP個のニューロンもあり、その出力形式は式(3)のようになり、
【数3】

ここで、l=1,2,…,Pであり、vがl番目の出力であり、v=[v,v,…,vが出力ベクトルであり、
第4層は出力層であり、出力層のフィッティング方式が、重み係数方式を採用しており、計算式は式(4)のようになり、
【数4】

ここで、w=[w,w,…,wは出力重みベクトルであり、vは規則層の出力ベクトルである。
【0009】
好ましくは、ステップS1で構築されたニューラルネットワーク予測モデルの入力層変数は、式(5)
【数5】

で示され、
出力層変数は、式(6)
【数6】

で示されている。
【0010】
好ましくは、ステップS2で構築されたゲート前水位制御器の目的関数は、式(7)のようになり、
【数7】

ここで、
【数8】

であり、Hは制御時間であり、
【数9】

を満たし、対象y(t+i)は、予測された出力変数であり、即ち、予測されたゲート前の水位であり、
【数10】

は出力変数の目標値であり、即ち、ゲート前の目標水位であり、u(t)はゲート開度であり、Δu(t)は制御変数で、u(t)の増分であり、即ちゲート開度の変化量であり、
【数11】

及び
【数12】

はそれぞれステップiの出力変数及びステップjの制御変数の重み係数である。
【0011】
好ましくは、ステップS3では、勾配最適化のプロセスは、以下のステップを含み、
S31、式8に示すように、ゲート前水位制御器の目的関数を最小化させ、
【数13】

ここで、
【数14】

であり、
S32、勾配アルゴリズム理論によれば、式(9)を使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を計算し、
【数15】

ここで、ηは制御入力の学習率であり、u(t)に関する目的関数J(u(t))の偏導関数を計算し、
【数16】

を取得し、
それから
【数17】

を取得し、
ここで、
【数18】

はヤコビ行列であり、ファジィニューラルネットワークモデルによって算出される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0013】
本発明は、ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法を開示する。該方法は、ファジィニューラルネットワークを介して、ゲート開度と開渠の制御水位との間の関係を制御し、予測制御アルゴリズムを結合したゲート前水位制御器を構築し、ゲート前水位制御器の制御目標に基づいて、勾配最適化アルゴリズムを使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を解き、解いた最適制御率に基づいて、測定された水位変化情報を収集して、それに最適制御率を掛けて制御戦略を生成し、水位の正確な予測と制御の目的を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で使用されるファジィニューラルネットワークの構造図である。
図2】実施例1に係る図1のファジィニューラルネットワークに基づいて構築されたゲート水位制御方法の概略図である。
図3】具体的な実施形態では、シミュレーションモデルを使用して、リアゲート位置1~ゲート4のゲート前の水位変化をシミュレートする概略図である。
図4】具体的な実施形態では、シミュレーションモデルを使用して、リアゲート位置5~ゲート8のゲート前の水位変化をシミュレートする概略図である。
図5】具体的な実施形態では、シミュレーションモデルを使用して、リアゲート位置9~ゲート11のゲート前の水位変化をシミュレートする概略図である。
図6】具体的な実施形態では、シミュレーションモデルを使用して、リアゲート位置1~ゲート4のゲート開度変化をシミュレートする概略図である。
図7】具体的な実施形態では、シミュレーションモデルを使用して、リアゲート位置5~ゲート8のゲート開度変化をシミュレートする概略図である。
図8】具体的な実施形態では、シミュレーションモデルを使用して、リアゲート位置9~ゲート11のゲート開度変化をシミュレートする概略図である。
図9】本発明に係る、ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的、技術的解決手段、および利点をより明確にするために、添付の図面を参照しながら、本発明を以下でさらに詳細に説明する。本明細書に記載の具体的な実施形態は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【実施例
【0016】
本実施例は、ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法を提供し、図9に示すように、
S1、多入力単一出力のファジィニューラルネットワークを確立し、水路の運用データに基づいて、ファジィニューラルネットワークをトレーニングし、ゲートの開度値及び初期水位に基づいて、水路池の水位を予測できるファジィニューラルネットワーク予測モデルを取得するステップと、
S2、ステップS1のファジィニューラルネットワーク予測モデルに基づいて、予測制御アルゴリズムを結合したゲート前水位制御器を構築するステップと、
S3、ステップS2で構築されたゲート前水位制御器の制御目標に基づいて、勾配最適化アルゴリズムを使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を解くステップと、
S4、ステップS3で解いた最適制御率に基づいて、実際に測定された水位変化情報を収集し、それに最適制御率を掛けることによって制御戦略を生成するステップとを含む。
【0017】
本実施例において、ステップS1で確立された多入力単一出力のファジィニューラルネットワークは、具体的に4つの層を含み、具体的には、
第1層は入力層であり、この層には、入力変数の次元を表すk個のニューロンがあり、入力層の式が次のようになり、
=u (1)
ここで、i=1,2,…,kであり、uがi番目の入力値であり、x=[x, x,…, x]が出力ベクトルであり、
第2層はラジアルベースであり、この層には、入力をファジー化するためのP個ニューロンがあり、この層の出力はメンバーシップ関数の積であり、ニューロンの出力は式(2)のようになり、
【数19】

ここで、j=1,2,…,Pであり、x=[x,x,…,x]がファジィニューラルネットワーク層の入力であり、c=[c1j,c2j,…,ckj]、σ=[σ1j,σ2j,…,σkj]がそれぞれj番目のニューロンの中心ベクトル及び幅ベクトルであり、φがj番目のニューロンの出力値であり、Pが該層のニューロンの数であり、
第3層は規則層であり、この層にはP個のニューロンもあり、その出力形式は式(3)のようになり、
【数20】

ここで、l=1,2,…,Pであり、vがl番目の出力であり、v=[v, v,…,vが出力ベクトルであり、
第4層は出力層であり、出力層のフィッティング方式が、重み係数方式を採用しており、計算式は式(4)のようになり、
【数21】

ここで、w=[w,w,…,wは出力重みベクトルであり、vは規則層の出力ベクトルである。
【0018】
好ましくは、ステップS1で構築されたニューラルネットワーク予測モデルの入力層変数は、式(5)で示され、
【数22】

出力層変数は、式(6)、
【数23】

で示されている。
【0019】
本実施例において、ステップS2で構築されたゲート前水位制御器の目的関数は、式(7)で示され、
【数24】

ここで、
【数25】

であり、Hは制御時間であり、
【数26】

を満たし、対象y(t+i)は、予測された出力変数であり、即ち、予測されたゲート前の水位であり、
【数27】

は出力変数の目標値であり、即ち、ゲート前の目標水位であり、u(t)はゲート開度であり、Δu(t)は制御変数で、u(t)の増分であり、即ちゲート開度の変化量であり、
【数28】

及び
【数29】

はそれぞれステップiの出力変数及びステップjの制御変数の重み係数である。
【0020】
本実施例において、勾配最適化のプロセスは、以下のステップを含み、
S31、式8に示すように、ゲート前水位制御器の目的関数を最小化させ、
【数30】

ここで、
【数31】

であり、
S32、勾配アルゴリズム理論に基づいて、式(9)を使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を計算し、
【数32】

ここで、ηは制御入力の学習率であり、u(t)に関する目的関数J(u(t))の偏導関数を計算し、
【数33】

を取得し、
それから
【数34】

を取得し、
ここで、
【数35】

はヤコビ行列であり、ファジィニューラルネットワークモデルによって算出される。
【0021】
(発明を実施するための形態)
本実施形態では、11段式の直列水路池を例にとり、レギュレーターの開度を制御することにより、各水路池の下流レギュレーターのゲート前の水位が安定するように確保し、即ち、制御目標が11個レギュレーターのゲート前の水位である。上流で大きな流量の変化が発生し、初期の水位がゲート前の目標水位よりもはるかに低いと仮定する。11個レギュレーターのゲート前の目標水位は、それぞれ73.8m、72.6m、71.8m、70.5m、69.4m、68.3m、65.9m、65.4m、64.4m、63.2m、62.2mである。制御戦略は、目標水位が目標水位の上下0.3m以内になるように、2時間に1回制御するように決定される。実施例1の方法で、調整の目標を達成するためにゲートを制御する。この方法はリアルタイムのゲート制御アルゴリズムであるため、この実施形態では、実際のプロジェクトの代わりに、一次元流体力学モデルを確立してアルゴリズム表示を行う。
【0022】
ステップ一:実施例のシミュレーションモデルを確立し、シミュレーションモデルのゲート開度を変更することにより、異なるゲート前の水位の変化プロセスを生成し、このゲート開度、ゲート前の水位データを記憶し、4層のフォワードトポロジ接続形式のニューラルネットワークを確立し、ニューラルネットワークの入力層変数及び出力層変数がそれぞれ、
【数36】

であり、
前述のデータを使用してこのニューラルネットワークをトレーニングする。
【0023】
ステップ二:このニューラルネットワークに基づいて、ゲート前の水位予測制御器を確立し、制御器の目標は、
【数37】

であり、
制限条件は、
【数38】

であり、
ここで、Hは制御時間であり、
【数39】

を満たし、対象y(t+i)は予測された出力変数であり、即ち予測されたゲート前の水位であり、
【数40】

は出力変数の目標値であり、即ちゲート前の目標水位であり、u(t)はゲート開度であり、Δu(t)は制御変数であり、u(t)の増分であり、即ちゲート開度の変化量である。
【数41】

及び
【数42】

はそれぞれ、出力変数及び制御変数の重み係数である。
【0024】
ステップ三:式8に示すように、勾配アルゴリズムを使用してこの制御器の制御率を最適化し、ゲート前水位制御器の目的関数を最適化し、
【数43】

ここで、
【数44】

であり、
勾配アルゴリズム理論に基づいて、式(9)を使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を計算し、
【数45】

ここで、ηは制御入力の学習率であり、u(t)に関する目的関数J(u(t))の偏導関数を計算して、
【数46】

を取得し、
それから、
【数47】

を取得し、
ここで、
【数48】

はヤコビ行列であり、ファジィニューラルネットワークモデルによって算出される。
【0025】
そして、得られた最適制御率をシミュレーションモデルの水路に適用し、シミュレーションモデルにおいて上流流量を20m/sの外乱で徐々に増加させ、この制御率でゲートを制御する。2hのステップ長で制御し、シミュレーションモデルを使用して、ゲート前の水位をシミュレートした結果を図3~5に示し、ゲート開度を図6~8に示す。
【0026】
本発明により開示された上記の技術的解決手段を採用することにより、以下の有益な効果が得られる。
【0027】
本発明は、ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法を開示し、該方法は、ファジィニューラルネットワークを介して、ゲート開度と開渠の制御水位との間の関係を制御し、予測制御アルゴリズムを結合したゲート前水位制御器を構築し、ゲート前水位制御器の制御目標に基づいて、勾配最適化アルゴリズムを使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を解き、解いた最適制御率に基づいて、実際に測定された水位変化情報を収集して、それに最適制御率を掛けて制御戦略を生成し、水位予測と制御の目的に達する。
【0028】
上記は、本発明の好ましい実施形態にすぎない。なお、当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改善および修正を行うことができ、これらの改善および修正は、本発明の保護範囲と見なされるべきである。
【0029】
(付記)
(付記1)
S1、多入力単一出力のファジィニューラルネットワークを確立し、水路の運用データに基づいて、ファジィニューラルネットワークをトレーニングし、ゲートの開度値及び初期水位に基づいて、水路池の水位を予測できるファジィニューラルネットワーク予測モデルを取得するステップと、
S2、ステップS1のファジィニューラルネットワーク予測モデルに基づいて、予測制御アルゴリズムを結合したゲート前水位制御器を構築するステップと、
S3、ステップS2で構築されたゲート前水位制御器の制御目標に基づいて、勾配最適化アルゴリズムを使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を解くステップと、
S4、ステップS3で解いた最適制御率に基づいて、実際に測定された水位変化情報を収集し、それに最適制御率を掛けることによって制御戦略を生成するステップとを含むことを特徴とする、ファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法。
【0030】
(付記2)
ステップS1で確立された多入力単一出力のファジィニューラルネットワークは、具体的に4つの層を含み、具体的には、
第1層は入力層であり、この層には、入力変数の次元を表すk個のニューロンがあり、入力層の式が次のようになり、
【数49】

ここで、i=1,2,…,kであり、uがi番目の入力値であり、x=[x,x,…,x]が出力ベクトルであり、
第2層はラジアルベースであり、この層には、入力をファジー化するためのP個ニューロンがあり、この層の出力はメンバーシップ関数の積であり、ニューロンの出力は式(2)のようになり、
【数50】

ここで、j=1,2,…,Pであり、x=[x,x,…,x]がファジィニューラルネットワーク層の入力であり、c=[c1j,c2j,…,ckj]、σ=[σ1j,σ2j,…,σkj]がそれぞれj番目のニューロンの中心ベクトル及び幅ベクトルであり、φがj番目のニューロンの出力値であり、Pが該層のニューロンの数であり、
第3層は規則層であり、この層にはP個のニューロンもあり、その出力形式は式(3)のようになり、
【数51】

ここで、l=1,2,…,Pであり、vが1番目の出力であり、v=[v,v,…,vが出力ベクトルであり、
第4層は出力層であり、出力層のフィッティング方式が、重み係数方式を採用しており、計算式は式(4)のようになり、
【数52】

ここで、w=[w,w,…,wは出力重みベクトルであり、vは規則層の出力ベクトルであることを特徴とする、付記1に記載のファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法。
【0031】
(付記3)
ステップS1で構築されたニューラルネットワーク予測モデルの入力層変数は、式(5)
【数53】

で示され、
出力層変数は、式(6)
【数54】

で示されていることを特徴とする、付記1に記載のファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法。
【0032】
(付記4)
ステップS2で構築されたゲート前水位制御器の目的関数は、式(7)のようになり、
【数55】

ここで、
【数56】

であり、Hは制御時間であり、
【数57】

を満たし、対象y(t+i)は、予測された出力変数であり、即ち、予測されたゲート前の水位であり、
【数58】

は出力変数の目標値であり、即ち、ゲート前の目標水位であり、u(t)はゲート開度であり、Δu(t)は制御変数であり、u(t)の増分であり、即ちゲート開度の変化量であり、
【数59】

及び
【数60】

はそれぞれ、ステップiの出力変数及びステップjの制御変数の重み係数であることを特徴とする、付記1に記載のファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法。
【0033】
(付記5)
ステップS3では、勾配最適化のプロセスは、以下のステップを含み、
S31、式8に示すように、ゲート前水位制御器の目的関数を最小化させ、
【数61】

ここで、
【数62】

であり、
S32、勾配アルゴリズム理論によれば、式(9)を使用して、ゲート前水位制御器の最適制御率を計算し、
【数63】

ここで、ηは制御入力の学習率であり、u(t)に関する目的関数J(u(t))の偏導関数を計算し、
【数64】

を取得し、
それから
【数65】

を取得し、
ここで、
【数66】

はヤコビ行列であり、ファジィニューラルネットワークモデルによって算出されることを特徴とする、付記1に記載のファジィニューラルネットワークに基づく直列水路の水位予測及び制御方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】