(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】機械学習に基づく無線周波数信号パラメータの推定のためのスペクトルダイバーシティーの活用
(51)【国際特許分類】
G01S 3/48 20060101AFI20220915BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20220915BHJP
G06N 3/08 20060101ALI20220915BHJP
H04B 17/391 20150101ALI20220915BHJP
H04B 17/373 20150101ALI20220915BHJP
G01S 5/04 20060101ALN20220915BHJP
【FI】
G01S3/48
G01S7/02 216
G06N3/08
H04B17/391
H04B17/373
G01S5/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504170
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 US2020042008
(87)【国際公開番号】W WO2021016003
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507364997
【氏名又は名称】サイプレス セミコンダクター コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Cypress Semiconductor Corporation
【住所又は居所原語表記】198 Champion Court, San Jose, CA 95134, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エイダン スミス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター シミレイスキー
(72)【発明者】
【氏名】キラン ウルン
【テーマコード(参考)】
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC18
5J062DD24
5J070AB07
5J070AE09
5J070AF03
5J070AK22
(57)【要約】
アンテナアレイによって受信される無線周波数(RF)信号の到来角(AoA:angle-of-arrival)および他のパラメータを推定する例示的な方法は、複数のRFチャネルにおいて複数のアンテナ素子によって複数の無線周波数(RF)信号電力測定値を受け取ることと、複数のRF信号電力測定値に機械学習モデルを適用することにより、推定されるRF信号パラメータ値を計算することと、RF信号パラメータ値を出力することと、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置により、複数の無線周波数(RF)チャネルにおいて複数のアンテナ素子によって複数のRF信号電力測定値を受け取るステップと、
前記複数のRF信号電力測定値に機械学習モデルを適用する前記処理装置により、推定されるRF信号パラメータ値を計算するステップと、
前記処理装置により、前記RF信号パラメータ値を出力するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記複数のRF信号電力測定値は、複数のRF信号の大きさの値および複数のRF信号の位相値を含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記RF信号パラメータ値は、LoS(line-of-sight) AoA(angle-of-arrival)、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延または相対位相のうちの1つである、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記機械学習モデルは、次元が低減された空間における中間表現に前記複数のRF信号電力測定値を変換するために特徴抽出を実行する、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記機械学習モデルは、前記次元が低減された空間における前記中間表現から、推定される前記RF信号パラメータ値を推論するために回帰タスクを実行する、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、複数のRFチャネルにおける複数のアンテナ素子による複数のRF信号電力測定値を含むトレーニングデータセットを処理することにより、前記機械学習モデルをトレーニングするステップをさらに有し、前記RF信号電力測定値は、対応するRF信号パラメータ値によってラベル付けされる、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記機械学習モデルは、ニューラルネットワークであり、推定される誤差値があらかじめ定められる閾値を下回るまで、前記複数のRF信号電力測定値を受け取るステップと、前記機械学習モデルを適用するステップと、を繰り返して実行する、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、推定される誤差値が、あらかじめ定められた閾値を上回ることが特定されるのに応じて、前記複数のRF信号電力測定値に第2の機械学習モデルを適用することにより、推定される前記RF信号パラメータ値を再計算するステップをさらに有し、前記第2の機械学習モデルは、第1の前記機械学習モデルよりも多くの個数のRF信号マルチパスに対応する、
請求項1記載の方法。
【請求項9】
装置であって、前記装置は、
複数の周波数チャネルにおいて、複数の無線周波数(RF)信号電力測定値を受け取るために、複数のアンテナ素子を有するアンテナに接続されるように構成されているトランシーバと、
前記トランシーバに接続されたプロセッサと、
を有し、
前記プロセッサは、
機械学習モデルのシーケンスから機械学習モデルを選択するように構成されており、前記シーケンスの第1の機械学習モデルは、第1の個数の信号経路を含む第1の信号伝搬環境において生成された第1のトレーニングデータセットでトレーニングされており、前記シーケンスの第2の機械学習モデルは、第2の個数の信号経路を含む第2の信号伝搬環境において生成された第2のトレーニングデータセットでトレーニングされており、信号経路の前記第2の個数は、信号経路の前記第1の個数を上回っており、
前記プロセッサは、
前記複数のRF信号電力測定値に、選択された前記機械学習モデルを適用することにより、推定されるRF信号パラメータ値を計算し、
パラメータ推定誤差が、あらかじめ定められた誤差閾値以下であることが特定されるのに応じて、前記RF信号パラメータ値を出力する、
ようにさらに構成されている、
システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、
パラメータ推定誤差が、あらかじめ定められた前記誤差閾値を上回ることが特定されるのに応じて、推定された前記RF信号パラメータ値が、前記あらかじめ定められた誤差閾値を下回るまで、前記選択動作および前記計算動作を反復的に繰り返すようにさらに構成されている、
請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記複数のRF信号電力測定値は、複数のRF信号の大きさの値および複数のRF信号の位相値を含む、
請求項9記載のシステム。
【請求項12】
前記RF信号パラメータ値は、LoS(line-of-sight) AoA(angle-of-arrival)、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延または相対位相のうちの1つである、
請求項9記載のシステム。
【請求項13】
機械学習モデルの前記シーケンスの各機械学習モデルは、次元が低減された空間における中間表現に前記複数のRF信号電力測定値を変換するために特徴抽出を実行する、
請求項9記載のシステム。
【請求項14】
前記機械学習モデルは、前記次元が低減された空間における前記中間表現から、推定される前記RF信号パラメータ値を推論するために回帰タスクを実行する、
請求項13記載のシステム。
【請求項15】
装置であって、前記装置は、
複数の無線周波数(RF)チャネルにおける複数の周波数チャネルにおいて、複数のRF信号電力測定値を受け取るために、複数のアンテナ素子を有するアンテナに接続されるように構成されているトランシーバと、
前記トランシーバに接続されたプロセッサと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記複数のRFチャネルにおける前記複数のRF信号電力測定値に機械学習モデルを適用することにより、推定されるRF信号パラメータ値を計算し、
パラメータ推定誤差が、あらかじめ定められた誤差閾値以下であることが特定されるのに応じて、前記RF信号パラメータ値を出力する、
ように構成されている、
装置。
【請求項16】
前記プロセッサは、
パラメータ推定誤差が、あらかじめ定められた前記誤差閾値を上回ることが特定されるのに応じて、RFチャネルの異なるセットにおいて受け取られる複数の次のRF信号電力測定値に対し、前記計算動作を繰り返すようにさらに構成されている、
請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記複数のRF信号電力測定値は、複数のRF信号の大きさの値および複数のRF信号の位相値を含む、
請求項15記載の装置。
【請求項18】
前記RF信号パラメータ値は、LoS(line-of-sight) AoA(angle-of-arrival)、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延または相対位相のうちの1つである、
請求項15記載の装置。
【請求項19】
前記機械学習モデルは、次元が低減された空間における中間表現に前記複数のRF信号電力測定値を変換するために特徴抽出を実行する、
請求項15記載の装置。
【請求項20】
前記機械学習モデルは、前記次元が低減された空間における前記中間表現から、推定される前記RF信号パラメータ値を推論するために回帰タスクを実行する、
請求項19記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2019年9月26日に出願された米国非仮特許出願第16/584,545号の国際出願であり、2019年7月24日に出願された米国仮特許出願第62/878,192号の利益を主張するものであり、そのすべては、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
無線周波数(RF)信号の到来角(AoA:angle-of-arrival)および/または他のパラメータの正確な推定は、さまざまなタスク、例えば、受信アンテナアレイに対する送信器の位置の決定を含むソーストラッキングを実行するために望ましいことがある。特定の実装形態では、ソーストラッキングは、1つまたは複数の受信装置によって取得されるAoAの複数の測定値に基づいて実行可能である。
【0003】
添付の図面の図では本開示を、制限的ではなく例示的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】受信アンテナアレイの空間特性および周波数スペクトルダイバーシティーについて、受信信号強度インジケータ(RSSI:Received Signal Strength Indicator)の例示的な分布を示すプロットを描画する線図である。
【
図2】次元が低減された空間にプロットされた、変換された入力データの例示的な視覚化を描画する線図である。
【
図3】例示的なニューラルネットワークの構造を略示する図である。
【
図4】複数のRFチャネルにおける、連続したRF信号電力レベル測定値を示す複数のプロットを示す線図である。
【
図5】モデルのシーケンスを略示する図であり、このモデルのシーケンスでは、各後続モデルは、このシーケンスにおける先行モデルのトレーニングに利用されるトレーニングデータセットを生成した信号伝搬環境における信号経路の個数よりも多くの個数の信号経路を含む信号伝搬環境において生成されたトレーニングデータセットでトレーニングされている。
【
図6】
図5のモデルのシーケンスによる到来角(AoA)推定における誤差を略示する線図である。
【
図7】アンテナアレイによって受信されるRF信号のAoAおよび/または他のパラメータの推定を実装するシステムのブロック図である。
【
図8】複数のRFチャネルにおいてアンテナアレイによって受信されるRF信号のAoAおよび/または他のパラメータを推定する例示的な方法の流れ図である。
【
図9】複数のRFチャネルにおいてアンテナアレイによって順次に受信されるRF信号レベル測定値に基づき、RF信号のAoAおよび/または他のパラメータを繰り返して推定する例示的な方法の流れ図である。
【
図10】複数のRFチャネルにおいて、アンテナアレイによって受信されるRF信号のAoAおよび/または他のパラメータを機械学習モデルのセットによって繰り返して推定する例示的な方法の流れ図である。
【0005】
詳細な説明
本明細書で説明される実施形態は、アンテナアレイによって受信される無線周波数(RF)信号の到来角(AoA)および他のパラメータを推定するためのシステムおよび方法に関する。このようなパラメータには、LoS(line-of-sight)到来角、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延、相対位相、および/または他のパラメータが含まれていてよい。説明のための例では、推定されるAoAおよび/または他のパラメータは、ソーストラッキングに、すなわち受信アンテナアレイに対する送信器の位置を特定するために使用可能である。説明のための例では、送信器の位置は、異なる空間点に配置された3つの受信器によって取得される3つのAoA測定値に基づいて推定可能である。
【0006】
RF信号の伝搬は、さまざまな要因によって影響を受けることがあり、これには、送信器および受信器を取り巻く環境において、RF信号が通過し得る複数の経路を生成し得る反射器の存在が含まれる。結果として受信器は、それぞれ異なる経路を通過する、送信されたRF信号の複数のコピーの重ね合わせを認識することになる。RF信号のマルチパス伝搬は、位相シフトおよび信号干渉を引き起こすことがあり、このことそれ自体は、信号フェージングを引き起こすことがあり、したがってAoAおよび他のRF信号パラメータの推定精度に悪影響を及ぼす。
【0007】
さまざまな一般的な実装形態が試みているのは、受信アンテナの物理的サイズを増大させかつ/または観察時間を長くすることによって、マルチパス信号伝搬を補償することである。しかしながら、アンテナ設計要件により、例えば、モバイルデバイスまたはウェアラブルデバイスの意図された用途により、アンテナの物理的サイズおよび/または観察時間は、制限されてしまうことがある。
【0008】
本明細書で説明されるシステムおよび方法は、さまざまな無線通信プロトコルおよび実装形態(例えばBLE(Bluetooth Low Energy)チャネルまたはWi-Fiサブキャリア)に存在しかつ複数のRFチャネルにおけるRF信号の同時および/または順次の送信を伴う周波数スペクトルダイバーシティーに依拠することにより、一般的な実装形態の上記の欠陥およびさまざまな他の欠陥を取り扱う。
図1によって略示されかつ本明細書で以下により詳細に説明されるように、各チャネルにおけるRF信号の伝搬は、信号経路における反射器の存在に対して異なって応答するため、複数のRFチャネルを利用することにより、限られた個数のアンテナアレイ素子を補償することができる。したがって、周波数スペクトル領域において受け取られる信号パラメータ値を解析することによって、空間領域におけるアンテナ応答が推論可能である。
【0009】
理論的には解析的に、すなわち曲線あてはめおよび曲面外挿法を使用することにより、推論を行うことができるのに対し、このような関数の複雑さは、タスクの次元に指数関数的に依存し、特に、信号経路における反射器の個数に依存することになる。逆に、本明細書で説明されるシステムおよび方法は、複数のRFチャネルにおいて観察されるRF信号電力レベル(例えば、RF信号の大きさおよび位相値によって表される)から、受信されるRF信号のAoAおよび/または他のパラメータ(例えば、LoS AoA、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延、相対位相、および/または他のパラメータ)を推論するためのモデルを構築してトレーニングするために機械学習技術を利用する。特に、本開示の機械学習に基づくシステムおよび方法は、広範囲の入力次元に同じモデルのセットを利用できるために非常にスケーラブルである。
【0010】
本明細書では、上記の方法およびシステムのさまざまな態様を制限ではなくむしろ実施例として説明する。本明細書で説明される方法は、ハードウェア(例えば、汎用および/もしくは専用処理装置、ならびに/または他の装置および関連する回路)、ソフトウェア(例えば、処理装置によって実行可能な命令)、またはこれらの組み合わせによって実装可能である。
【0011】
本明細書で上述したように、RF信号マルチパスが存在する状況において、アンテナアレイによって受信されるRF信号のAoAおよびさまざまな他のパラメータの推定精度を改善するために、アンテナアレイの物理的寸法を増大させ、かつ/または観察時間を長くすることができる。しかしながら、このような「力任せ」のアプローチの適用性は、(例えば、モバイルデバイスまたはウェアラブルデバイスに対して)アンテナアレイの物理的なサイズおよび/または最大観察時間を制限し得るさまざまな設計要件により、大きく限定されてしまうことがある。逆に、本開示のシステムおよび方法は、無線通信のさまざまな態様(例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)チャネルまたはWi-Fiサブキャリア)に固有に存在しかつ複数のRFチャネルにおいて、同時および/または順次のRF信号の送信を伴う周波数スペクトルダイバーシティーに依拠している。
図1によって略示されているように、各チャネルにおけるRF信号の伝搬は、信号経路における反射器の存在に対して異なって応答するため、複数のRFチャネルを利用することによって、限られた個数のアンテナアレイ素子を補償することができる。
【0012】
図1には、受信アンテナアレイの空間特性(すなわちアンテナアレイ素子の個数)と、周波数スペクトルダイバーシティー(すなわち信号伝送に利用されるRFチャネルの個数)と、について、受信信号強度インジケータ(RSSI)の分布を示すプロット100が描画されている。
図1の説明のための例では、RSSIが利用されているが、他のさまざまな実装形態では、他のRF信号パラメータ(位相、群遅延など)が利用可能である。
【0013】
図1において見て取ることができるように、RSSI応答プロット100は、複数の繰り返しパターンを含み、これにより、プロットされた山および谷は、類似のサイズを有しかつ周期的に出現する。したがって、空間領域におけるRSSI値は、周波数スペクトル領域におけるRSSI値を解析することによって推論可能である。
図1の説明のための例では、空間次元は、特定の値で(例えば4つのアンテナアレイ素子において)打ち切られていてよく、より多くの個数のアンテナアレイ素子についてのRSSI値は、複数のRFチャネルにおいて受信されるRF信号から取得されるRSSI値によって外挿可能である。
【0014】
本明細書で上述したように、本明細書で説明されるシステムおよび方法は、複数のRFチャネルにおいて観察されるRF信号電力レベルから、受信される信号のAoAおよび/または他のパラメータ(例えば、LoS AoA、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延、相対位相、および/または他のパラメータ)を推論するためのモデルを構築してトレーニングするために機械学習技術を利用する。一部の実装形態では、各アンテナアレイ素子についてのRF信号の大きさおよび位相の複数のペアにより、観察されるRF信号電力レベルを表すことができる。
【0015】
機械学習に基づくモデルは、入力データの次元を低減させ、したがって解決すべきタスクの計算複雑度を大幅に減少させるために特徴抽出を実行することができる。
図2には、同相および直交(IおよびQ)値の次元が低減された空間にプロットされた、変換された入力データの例示的な視覚化が描画されている。
図2では、各円形プロット210A~210Kが、それぞれのアンテナアレイ素子によって受信されたRF信号のAoAを視覚化するのに対し、プロット210A~210Kの各ドットは、単一の周波数チャネルにおける観察に対応する。本明細書で説明されるこの例は、AoA値で動作するが、本開示のシステムおよび方法は、受信されるRF信号の他のパラメータ(例えば、LoS AoA、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延、相対位相および/または他のパラメータ)にも同様に適用可能である。
【0016】
機械学習に基づくモデルは、RF信号パラメータの値を推定するための回帰タスクを実行するために、抽出された特徴(すなわち、次元が低減された空間における入力データの表現)を利用することができる。
図2によって略示されているように、回帰処理は、既知のパラメータの集合を有し得る、組み合わされた単一のプロット220と合流するまで、いずれかのプロット210A~210Kの外部にある回転中心215に対して相対的に、初期円プロット210A~210Kを回転させることによって可視化することができる。したがって、各初期円プロット210A~210Kに適用される変換の1つまたは複数のパラメータ(回転角など)は、組み合わされたプロット220のパラメータの既知の集合と、初期円プロット210A~210Kのパラメータと、の間の差分を表すことになる。したがって、初期円プロット210A~210Kによって描画されるRF信号のAoAおよび/または他のパラメータは、各初期円プロット210A~210Kに適用される変換のパラメータに基づいて、組み合わされたプロット220によって表されるRF信号パラメータの既知の集合を変更することによって計算可能である。
【0017】
説明のための
図2の例では、各初期円プロット210A~210Kに適用される変換は、回転変換であるが、回帰タスクを実行する際に、他のタイプの変換(例えば1つまたは複数の軸に沿ったスケーリング)を機械学習モデルによって適用してもよい。したがって、これらの変換のパラメータは、例えば、回転角、アスペクト比、倍率などを含んでいてよい。
【0018】
一部の実装形態では、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:convolutional neural network)またはリカレントニューラルネットワーク(RNN:recurrent neural network)などのニューラルネットワークにより、特徴抽出および回帰を実行するために使用されるモデルを実装することができる。ニューラルネットワークは、「人工ニューロン」と称される多数の接続されたノードを実装する計算モデルであり、これにより、各人工ニューロンは、1つまたは複数の入力信号(バイアス信号を含む)を処理して、1つまたは複数の隣接する人工ニューロンに出力信号を送信する。人工ニューロンの出力は、その入力の線形結合にその活性化関数を適用することによって計算可能である。ニューラルネットワークは、本明細書において以下で詳細に説明するように、一般的にはいかなるタスク固有の規則によってプログラミングされることなく、特徴抽出、回帰および/または分類タスクを実行するために、処理例(「トレーニングデータセット」)によってトレーニングされることが可能である。
【0019】
図3に略示されているように、本開示のシステムおよび方法によって使用されるニューラルネットワークは、多層パーセプトロン(MLP:multilayer perceptron)300によって表すことができ、その人工ニューロンは、入力層310、1つまたは複数の隠れ層320A~320L、および出力層330を含む複数の層にグループ分けされる。入力層310は、1つまたは複数のニューロン340A~340Nを含み、これらのニューロンは、第1隠れ層320Aの1つまたは複数のニューロン350A~350Kに接続されている。第1隠れ層ニューロン350A~350Kそれ自体は、第2隠れ層320Lの1つまたは複数のニューロン360A~360Mに接続されている。第2隠れ層ニューロン360A~360Mそれ自体は、出力層330の1つまたは複数のニューロン370A~370Zに接続されている。人工ニューラルネットワーク300のノードの少なくとも一部は、非線形活性化関数を利用できるのに対し、残りのノード(例えば、出力層のノード)は、線形活性化関数を利用できる。
図3は、単一の隠れ層350を略示しているが、本開示のシステムおよび方法のさまざまな実装形態では、隠れ層の個数は異なっていてよい。一部の実施形態では、隠れ層の個数は、モデルのハイパーパラメータ、すなわち、その値がトレーニング処理前に指定されるパラメータである。このモデルの他のハイパーパラメータは、各層におけるノードの個数、活性化関数タイプなどを含んでいてよい。
【0020】
図3の各エッジは、人間の脳におけるシナプスの動作と同様の仕方で、1つの人工ニューロンから別の1つの人工ニューロンへ信号を送信するための接続を表している。それぞれの接続を介して送信される信号を増大または減衰させるエッジ重み付けは、ラベル付けされた複数の入力(すなわち、既知の分類を有する入力)を含むトレーニングデータセットに基づいて、ネットワークトレーニングステージで定義される。
【0021】
ニューラルネットワークトレーニング手順は、すべてのエッジ重み付けおよびニューロンバイアス値をランダム値またはあらかじめ定められた値に初期化することで開始可能である。順方向の伝搬には、ニューラルネットワークによる、トレーニングデータセットのラベル付けされたデータ項目の順次の処理が含まれる(すなわち、与えられた周波数チャネルにおいて複数のアンテナ素子によって測定されるRF信号の大きさおよび位相値を含む各ベクトルが、対応するAoA値および/または他のRF信号パラメータ値によってラベル付けされるように、RF信号電力レベルの複数のベクトルを順次に処理することが含まれる)。ニューラルネットワークの観察される出力は、処理されているベクトルに関連付けられたラベルによって指定される所望の出力と比較され、誤差は、ニューラルネットワークの前の層に伝搬されて戻され、この層において重み付けおよびバイアス値が調整されて、あらかじめ定められた損失関数(例えば、観察される出力と、ラベルによって指定される所望の出力と、の間の差分)が最小化される。この処理は、出力誤差が、あらかじめ定められた閾値を下回るまで繰り返し可能である。
【0022】
図2を参照して本明細書で上述したように、本開示のシステムおよび方法を実装する、機械学習に基づくモデルは、rawデータの次元を低減するためにまず特徴抽出を実行し、次いで、RF信号パラメータの値を推定するために回帰を実行することによって、複数の周波数チャネルにおいて受信されたRF信号の多数のパラメータを処理することができる。一部の実装形態では、1つまたは複数の層が特徴抽出を実行するのに対して残りの層が回帰タスクを実行する同じニューラルネットワークにより、特徴抽出および回帰の両方を実行することができる。他の実装形態では、特徴抽出および回帰タスクを実行するために、別々にトレーニングされた2つのニューラルネットワークが使用可能である。
【0023】
本明細書で上述したように、本開示のシステムおよび方法は、空間領域における信号電力レベルの分布を推論するために周波数スペクトルダイバーシティーを活用する。しかしながら実際には、利用可能なRFチャネルの個数は、さまざまな設計および/または実装固有の制約によって制限され得る。
図4の一連のプロット410A~410Dによって略示されているように、限られた個数の利用可能な周波数チャネルにおけるrawデータ測定値は、
図2に示した円形プロットに類似した閉ループ曲線ではなく、各曲線の特定の部分だけを示すことができる。
【0024】
さらに、RF信号は、複数の周波数チャネルにおいて同時に送信されるのではなく、順次に送信されてもよい。
図4の説明のための例では、各プロット410A~410Dは、RFチャネルの対応する集合におけるRF信号測定値を表している。さまざまな一般的な技術は、順次のデータを処理するのには適していないこともあるが、本開示のシステムおよび方法は有利には、rawデータのバッチをリアルタイムで順次に処理するために、リカレントニューラルネットワーク(RNN)を使用する。
【0025】
RNNは、ネットワークによって前に処理された入力に関する情報を表すそれ自体の状態を維持することができる。RNNは、後続の各入力を処理するために状態情報を考慮することになる。換言すると、ネットワーク出力は、現在の入力によってだけでなく、ネットワークによって前に処理された入力によっても定義される。
【0026】
一部のRNNは、勾配減衰作用(gradient attenuation effect)の影響を受けやすい場合があり、これによって、ネットワークは、長い入力シーケンスを処理することが実質的に不可能になる。勾配減衰作用は、複数の長・短期記憶(LSTM:long short-term memory)層を利用することによって回避可能であり、これらの長・短期記憶層は、処理の次の層を実行するために、ネットワークが、それ自体の状態と入力との間で選択を行えるようにするゲーティング機構を利用する。LSTMニューラルネットワークは、非常に低い勾配減衰を呈するため、このようなネットワークは、より長い入力シーケンスを処理することができる。
【0027】
したがって、RNNに基づくモデルは、複数の周波数チャネルにおいて受信されたRF信号のパラメータの複数のバッチを順次に処理することができ、各バッチの処理後、受信されたRF信号のAoAおよび/または他のパラメータの推定精度を高めることができる。
図4の説明のための例では、プロット420は、プロット410A~410Dによって描画された4つのバッチにおいて受信されたRF信号の順次の処理を表している。
【0028】
本開示のシステムおよび方法によって利用されるニューラルネットワークは、数千個の測定点を表すrawデータが順次に処理されることになるため、限られた計算能力および/または限られた利用可能メモリを有するハードウェア(モバイルデバイスまたはウェアラブルデバイスなど)に展開可能であり、またニューラルネットワークの内部状態により、ネットワークによって処理された入力データから抽出された必要な情報が記憶されるため、ニューラルネットワークによって処理された後、rawデータの各バッチを廃棄することができる。
【0029】
一部の実装形態では、raw入力データは、2つ以上のモデルのシーケンスによって処理可能であり、このシーケンスでは、すべてのモデルにより、複数のRFチャネルにおいて観察されるRF信号電力レベル(例えば、RF信号の大きさおよび位相値によって表される)から、受信されたRF信号のAoAおよび/または他のパラメータ(例えば、LoS AoA、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延、相対位相、および/または他のパラメータ)が推論され、各後続モデルは、このシーケンスにおける先行モデルのトレーニングに利用されるトレーニングデータセットを生成した信号伝搬環境における反射器の個数よりも多くの個数の反射器(ひいては多くの個数の信号経路)を含む信号伝搬環境において生成されるトレーニングデータセットでトレーニングされている。
図5の説明のための例では、モデル510Aは、単一の信号経路を含む(すなわちマルチパスを含まない)第1の信号伝搬環境において生成された第1のトレーニングデータセットでトレーニングされており、モデル510Aは、観察されたRF信号電力レベルからAoAを推論する。モデル510Bは、少なくとも2つの信号経路を含む第2の信号伝搬環境において生成された第2のトレーニングデータセットでトレーニングされており、モデル510Bは、観察されたRF信号電力レベルから、AoAと、第1の反射の特性(反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延、相対位相)と、を推論する。モデル510Cは、少なくとも3つの信号経路を含む第3の信号伝搬環境において生成された、第3のトレーニングデータセットでトレーニングされており、モデル510Cは、観察されたRF信号電力レベルから、AoAと、第1の反射および第2の反射の特性(反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延、相対位相)と、を推論する。
【0030】
図5には3つのモデルのセットが示されているが、本開示のシステムおよび方法のさまざまな実装形態では、順次に使用されるモデルの個数は異なっていてもよい。
【0031】
AoA誤差の推定には、推定されたAoA出力に基づいて、入力(すなわちRF信号の大きさおよび位相値)を再構成し、再構成された入力と、観察される入力と、を比較することが含まれていてよく、したがって真のAoA値が未知であってもAoA誤差が推定可能である。
【0032】
すべてのモデル510の出力は、推定された誤差値と、あらかじめ定められた閾値(対応するモデル510のハイパーパラメータによって指定可能である)と、を比較することによって解析される。推定された誤差値が、あらかじめ定められた閾値を上回る場合、次のモデル510をアクティベートすることができる。このような繰り返しは、推定された誤差値が、あらかじめ定められた閾値以下になるまで継続することができ、閾値以下になった時点でこの方法を終了することができ、現在のレベルのモデル510によって生成された出力を最終的な出力として利用することができる。
【0033】
したがって、
図5の各モデル510A~510Kは、必要な個数の信号経路を含む信号伝搬環境において生成されるトレーニングデータセットを使用して、別々にトレーニング可能である。一部の実装形態では、信号経路の必要な個数よりも少ない個数の信号経路を含む信号伝搬環境において生成された別のトレーニングデータセットでモデルをさらにトレーニングすることができ、したがって、モデル510A~510Kの後方互換性が保証され、すなわち、より高いレベルのモデルが、モデルのトレーニングに利用された信号伝搬環境における信号経路の個数よりも少ない個数の信号経路を有する信号伝搬環境において測定されたrawデータについて十分な結果を生成することが保証される。
【0034】
図6には、
図5のモデル510A~510Kのセットによる、AoA推定における誤差が度で略示されている。
図6では、プロット610Aは、0マルチパス環境から得られたトレーニングデータセットでトレーニングされたモデルによる、0マルチパス環境についてのAoA推定誤差を(度で)描画しており、プロット610Bは、1マルチパス環境から得られたトレーニングデータセットでトレーニングされたモデルによる、0マルチパス環境についてAoA推定誤差を(度で)描画しており、プロット610Cは、1マルチパス環境から得られたトレーニングデータセットでトレーニングされたモデルによる、1マルチパス環境についてAoA推定誤差を(度で)描画しており、プロット610Dは、0マルチパス環境から得られたトレーニングデータセットでトレーニングされたモデルによる、1マルチパス環境についてAoA推定誤差を(度で)描画している。
図6からわかるように、プロットのペア610A~610Bは、同様のAoA推定誤差を示しており、したがって、低次マルチパス環境における高次モデルの後方互換性を実証している。
【0035】
特に、モデル510A~510Kは、限られた計算能力および/または限られた利用可能メモリを有するハードウェア(モバイルデバイスまたはウェアラブルデバイスなど)に展開可能である。与えられたどの時点においてもただ1つのモデルだけが動作可能である必要があるため、ハードウェアフットプリントは単にシリーズの最大のモデルを展開するのに十分であるべきである。というのは、各モデルは、使用後に廃棄されて、次のモデルが同じハードウェアにロードされ得るからである。
【0036】
図7は、アンテナアレイによって受信されるRF信号のAoAおよび/または他のパラメータの推定を実装するシステムのブロック図である。システム700は、処理装置706を含むことができ、この処理装置706それ自体は、アンテナアレイ707に接続されたフロントエンド回路708を含む。フロントエンド回路708は、トランシーバ712と、アナログ・デジタル変換器(ADC:analog-to-digital converter)714と、を含むことができる。アンテナアレイ707に接続されたトランシーバ712は、アンテナアレイ707を介してRF信号を送受信可能である。処理装置は、本明細書で説明されるように、AoA推定ツール120を実装可能である。処理装置は、1つまたは複数のアプリケーションプロセッサ、1つまたは複数のホストプロセッサ、1つまたは複数のマイクロコントローラ、および/または他の処理コンポーネントを含んでいてよい。一部の実施形態では、システム700は、トランシーバと、このトランシーバによって受信または送信されるRF信号を表すデジタル値を処理するプロセッサと、を含むシステムオンチップ(SoC:System-on-Chip)として実装可能である。トランシーバおよびプロセッサは、共通のキャリア基板上に設けられていてよいか、または別々の集積回路に実装されていてよい。
【0037】
一部の実装形態では、処理装置は、複数のRFチャネルの各々において、各アンテナアレイ素子によって測定された、RF信号の大きさおよび位相の複数のペアを受け取ることができる。この場合、処理装置は、受信されたRF信号のAoAおよび/または他のパラメータ721A~721N(例えば、LoS AoA、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延、相対位相および/または他のパラメータ)を計算するために機械学習モデルを利用することができる。機械学習モデルは、本明細書において上でさらに詳細に説明したように、入力データの次元を低減させることを目的として特徴抽出を実行することができ、次いで、RF信号パラメータ値を推定することを目的として回帰タスクを実行するために、抽出された特徴(すなわち、次元が低減された空間における入力データの表現)を利用することができる。
【0038】
図8は、複数のRFチャネルにおいてアンテナアレイによって受信されるRF信号のAoAおよび/または他のパラメータを推定する例示的な方法の流れ図である。方法800および/またはその個々の関数、ルーチン、サブルーチンまたは動作のそれぞれは、ハードウェア(回路、専用ロジックなど)、ソフトウェア(汎用コンピューティングシステムまたは専用マシンで実行されるものなど)、ファームウェア(組み込みソフトウェア)、またはそれらの任意の組み合わせを含む処理ロジックによって実行されてよい。方法800の2つ以上の関数、ルーチン、サブルーチンまたは動作は、並列に、または以下に説明する順序とは異なり得る順序で実行可能である。特定の実装形態では、方法800は、単一の処理スレッドによって実行可能である。方法800は択一的には、2つ以上の処理スレッドによって実行されてよく、各スレッドは、方法の1つまたは複数の個々の関数、ルーチン、サブルーチンまたは動作を実行する。説明のための例では、方法800を実装する処理スレッドは、(例えば、セマフォ、クリティカルセクションおよび/または他のスレッド同期化機構を使用して)同期化可能である。択一的には、方法800を実装する処理スレッドは、互いに非同期で実行されてよい。一実施形態では、方法800の動作は、
図7の例示的なシステム700の処理装置706によって実行されてよい。
【0039】
ブロック810では、上記の方法を実装する処理装置により、複数のRFチャネルにおいて、複数のアンテナ素子により、複数の無線周波数(RF)信号電力測定値を受け取ることができる。一部の実装形態では、本明細書において上でさらに詳細に説明したように、各アンテナアレイ素子についてのRF信号の大きさおよび位相の複数のペアにより、観察されるRF信号電力レベルを表すことができる。
【0040】
ブロック820では、処理装置により、複数のRF信号電力測定値に機械学習モデルを適用することによって、推定されるRF信号パラメータ値を計算することができる。受信信号のAoAおよび/または他のパラメータ(例えば、LoS AoA、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延、相対位相および/または他のパラメータ)によってRF信号パラメータを表すことができる。機械学習モデルは、入力データの次元を低減させるために特徴抽出を実行することができる。次いで、機械学習は、本明細書において上でさらに詳細に説明したように、RF信号のパラメータ値を推定することを目的として回帰タスクを実行するために、抽出された特徴(すなわち、次元が低減された空間における入力データの表現)を利用することができる。
【0041】
ブロック830では、処理装置により、(例えば、RF信号パラメータ値を表示すること、および/または1つまたは複数の通信ネットワークを介して1つまたは複数の受信側にRF信号パラメータ値を伝送することによって)RF信号パラメータ値を出力することができ、方法は終了可能である。
【0042】
図9は、複数のRFチャネルにおいて、アンテナアレイによって順次に受信されるRF信号レベル測定値に基づき、RF信号のAoAおよび/または他のパラメータを繰り返して推定する例示的な方法の流れ図である。方法900および/またはその個々の関数、ルーチン、サブルーチンまたは動作のそれぞれは、ハードウェア(回路、専用ロジックなど)、ソフトウェア(汎用コンピューティングシステムまたは専用マシンで実行されるものなど)、ファームウェア(組み込みソフトウェア)、またはそれらの任意の組み合わせを含む処理ロジックによって実行されてよい。方法900の2つ以上の関数、ルーチン、サブルーチンまたは動作は、並列に、または以下に説明する順序とは異なり得る順序で実行可能である。特定の実装形態では、方法900は、単一の処理スレッドによって実行可能である。方法900は択一的には、2つ以上の処理スレッドによって実行されてよく、各スレッドは、方法の1つまたは複数の個々の関数、ルーチン、サブルーチンまたは動作を実行する。説明のための例では、方法900を実装する処理スレッドは、(例えば、セマフォ、クリティカルセクションおよび/または他のスレッド同期化機構を使用して)同期化可能である。択一的には、方法900を実装する処理スレッドは、互いに非同期で実行されてよい。一実施形態では、方法900の動作は、
図7の例示的なシステム700の処理装置706によって実行されてよい。
【0043】
ブロック910では、上記の方法を実装する処理装置により、複数のRFチャネルにおいて、複数のアンテナ素子により、無線周波数(RF)信号電力レベルの測定値のバッチを受け取ることができる。一部の実装形態では、本明細書において上でさらに詳細に説明したように、各アンテナアレイ素子についてのRF信号の大きさおよび位相の複数のペアにより、観察されるRF信号電力レベルを表すことができる。
【0044】
ブロック920では、処理装置により、受け取ったRF信号電力測定値のバッチに機械学習モデルを適用することによって、推定されるRF信号パラメータ値を計算することができる。受信信号のAoAおよび/または他のパラメータ(例えば、LoS AoA、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延、相対位相および/または他のパラメータ)によってRF信号パラメータを表すことができる。機械学習モデルは、入力データの次元を低減させるために特徴抽出を実行することができる。次いで、機械学習は、本明細書において上でさらに詳細に説明したように、RF信号のパラメータ値を推定することを目的として回帰タスクを実行するために、抽出された特徴(すなわち、次元が低減された空間における入力データの表現)を利用することができる。
【0045】
ブロック930において、パラメータ推定誤差が、あらかじめ定められた閾値誤差値を上回っていることが特定されるのに応じて、この方法は、ループしてブロック910に戻ることができ、このブロック910では、異なるRFチャネルのセットについて、測定値の次のバッチを受け取ることができる。そうでない場合、すなわち、パラメータ推定誤差が、あらかじめ定められた閾値誤差値以下の場合、この方法は、ブロック940に続くことができる。
【0046】
ブロック940では、処理装置により、(例えば、RF信号パラメータ値を表示すること、および/または1つまたは複数の通信ネットワークを介して1つまたは複数の受信側にRF信号パラメータ値を伝送することによって)RF信号パラメータ値を出力することができ、方法は終了可能である。
【0047】
図10は、複数のRFチャネルにおいて、アンテナアレイによって受信されるRF信号のAoAおよび/または他のパラメータを機械学習モデルのセットによって繰り返して推定する例示的な方法の流れ図である。方法1000および/またはその個々の関数、ルーチン、サブルーチンまたは動作のそれぞれは、ハードウェア(回路、専用ロジックなど)、ソフトウェア(汎用コンピューティングシステムまたは専用マシンで実行されるものなど)、ファームウェア(組み込みソフトウェア)、またはそれらの任意の組み合わせを含む処理ロジックによって実行されてよい。方法1000の2つ以上の関数、ルーチン、サブルーチンまたは動作は、並列に、または以下に説明する順序とは異なり得る順序で実行可能である。特定の実装形態では、方法1000は、単一の処理スレッドによって実行可能である。方法1000は択一的には、2つ以上の処理スレッドによって実行されてよく、各スレッドは、方法の1つまたは複数の個々の関数、ルーチン、サブルーチン、または動作を実行する。説明のための例では、方法1000を実装する処理スレッドは、(例えば、セマフォ、クリティカルセクションおよび/または他のスレッド同期化機構を使用して)同期化可能である。択一的には、方法1000を実装する処理スレッドは、互いに非同期で実行されてよい。一実施形態では、方法1000の動作は、
図7の例示的なシステム700の処理装置706によって実行されてよい。
【0048】
ブロック1010では、この方法を実装する処理装置により、複数のRFチャネルにおいて、複数のアンテナ素子により、複数のRF信号電力測定値を受け取ることができる。一部の実装形態では、本明細書において上でさらに詳細に説明したように、各アンテナアレイ素子についてのRF信号の大きさおよび位相の複数のペアにより、観察されるRF信号電力レベルを表すことができる。
【0049】
ブロック1020では、処理装置により、2つ以上のモデルのシーケンスから、次の機械学習モデルを選択することができ、これらのモデルのシーケンスでは、各後続モデルは、このシーケンスにおける先行モデルのトレーニングに利用されるトレーニングデータセットを生成した信号伝搬環境における反射器の個数よりも多くの個数の反射器(したがって、より多くの個数の信号経路)を含む信号伝搬環境において生成されたトレーニングデータセットでトレーニングされている。各機械学習モデルは、入力データの次元を低減させるために特徴抽出を実行することができる。次いで、機械学習は、本明細書において上でさらに詳細に説明したように、RF信号のパラメータ値を推定することを目的として回帰タスクを実行するために、抽出された特徴(すなわち、次元が低減された空間における入力データの表現)を利用することができる。
【0050】
ブロック1030では、推定されるRF信号パラメータ値を計算するために、処理装置により、複数のRF信号電力測定値に、選択された機械学習モデルを適用することができる。本明細書において上でさらに詳細に説明したように、受信信号のAoAおよび/または他のパラメータ(例えば、LoS AoA、反射AoA、反射の減衰、反射の相対遅延、相対位相および/または他のパラメータ)によってRF信号パラメータを表すことができる。
【0051】
ブロック1040において、パラメータ推定誤差が、あらかじめ定められた閾値誤差値を上回っていることが特定されるのに応じて、この方法は、ループしてブロック1010に戻ることができ、このブロック1010では、モデルのシーケンスから次のモデルが選択される。そうでない場合、すなわち、パラメータ推定誤差が、あらかじめ定められた閾値誤差値以下の場合、この方法は、ブロック1050に続くことができる。
【0052】
ブロック1050では、処理装置により、(例えば、RF信号パラメータ値を表示すること、および/または1つまたは複数の通信ネットワークを介して1つまたは複数の受信側にRF信号パラメータ値を伝送することによって)RF信号パラメータ値を出力することができ、方法は終了可能である。
【0053】
本明細書で説明される実施形態は、上記の図面に関して記載されているのと同じまたは類似の機能を実行し得る処理装置を含む電子システムによって実装されてもよく、その逆でもあってよい。別の実施形態では、処理装置は、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラであってよい。AoA推定ツール120は、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサで動作するファームウェアとして実装可能である。マイクロコントローラは、本明細書で説明される推定をアプリケーションプロセッサに報告することができる。電子システムは、本明細書で説明される推定を提供するためにマイクロコントローラを利用するコンピュータシステム用のホストプロセッサを含むことができる。ホストプロセッサは、1つまたは複数の処理装置、メモリ、および電子システムに対して動作を実行する他のハードウェアまたはソフトウェアコンポーネントを含んでいてよい。
【0054】
処理装置は、アナログおよび/またはデジタルの汎用入力/出力(「GPIO」:general purpose input/output)ポートを含んでいてよい。GPIOポートは、プログラミング可能であってよい。GPIOポートは、プログラマブルインターコネクトおよびロジック(「PIL」:Programmable Interconnect and Logic)に接続可能であり、このPILは、GPIOポートと、処理装置のデジタルブロックアレイと、の間の相互接続部として機能する。処理装置は、一部のケースにおいてさまざまなアナログ機能を実装するために、プログラミング可能なかつ再プログラミング可能なアナログブロックを含んでいてよい。処理装置はまた、デジタルブロックアレイを含んでいてもよい。1つの実施形態では、構成可能なユーザモジュール(「UM」:user module)を使用して、さまざまなデジタルロジック回路(例えば、DAC、デジタルフィルタまたはデジタル制御システム)を実装するように、デジタルブロックアレイを設定することができる。デジタルブロックアレイは、システムバスに接続されていてよい。処理装置はまた、RAM(random access memory)およびプログラムフラッシュなどのメモリ装置を含んでいてもよい。RAMは、SRAM(static RAM)であってよく、プログラムフラッシュは、不揮発性記憶装置であってよく、これらは、ファームウェア(例えば、本明細書で説明される動作を実装するためにプロセッサによって実行可能な制御アルゴリズム)を記憶するために使用可能である。処理装置はまた、メモリおよびプロセッサに接続されたメモリコントローラユニット(「MCU」:memory controller unit)を含んでいてもよい。プロセッサは、命令を実行するかまたは動作を実行するように構成された処理要素(例えばプロセッサコア)であってよい。プロセッサは、本開示の利益を得る当業者によって理解されるように、他の処理要素を含んでいてよい。メモリは、処理装置の内部にあってもよいし、その外部にあってもよいことにも留意すべきである。メモリが内部にある場合、メモリは、プロセッシングコアなどの処理要素に接続可能である。メモリが処理装置の外部にある場合、本開示の利益を得る当業者によって理解されるように、処理装置は、メモリが設けられている他の装置に接続される。
【0055】
一実施形態では、処理装置はさらに処理ロジックを含む。処理ロジックの動作の一部または全部は、ファームウェア、ハードウェア、またはソフトウェア、またはそれらの一部の組み合わせで実装可能である。処理ロジックは、本明細書で説明されたように、アンテナアレイから信号を受信することができる。処理装置はまた、アナログブロックアレイ(例えば、フィールドプログラマブルアナログアレイ)を含んでいてもよい。システムバスにはアナログブロックアレイも接続可能である。一実施形態では、構成可能なUMを使用して、さまざまなアナログ回路(例えば、ADCまたはアナログフィルタ)を実装するように、アナログブロックアレイを構成できてもよい。アナログブロックアレイはまた、GPIOポートに接続されてもよい。処理装置は、内部発振器/クロックおよび通信ブロック(「COM」)を含んでいてよい。別の実施形態では、処理装置は、スペクトラム拡散クロックを含む。発振器/クロックブロックは、処理装置の1つまたは複数のコンポーネントにクロック信号を供給する。通信ブロックは、アプリケーションインタフェース(「I/F」)ラインを介して、ホストプロセッサ(アプリケーションプロセッサとも称される)などの外部コンポーネントと通信するために使用可能である。
【0056】
処理装置は、例えば、集積回路(「IC」)、ダイ基板、マルチチップモジュール基板などの共通のキャリア基板上に設けられていてよい。択一的には、処理装置のコンポーネントは、1つまたは複数の別々の集積回路および/またはディスクリートコンポーネントであってよい。例示的な一実施形態では、処理装置は、カリフォルニア州サンノゼ在のサイプレスセミコンダクタ社によって開発された、プログラマブルシステムオンチップ(PSoC(登録商標):Programmable System on a Chip)処理装置である。処理装置は択一的には、マイクロプロセッサまたは中央処理ユニット、コントローラ、専用プロセッサ、DSP(digital signal processor)、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field programmable gate array)などの当業者に公知の1つまたは複数の他の処理装置であってよい。
【0057】
また、本明細書で説明される実施形態は、アプリケーションプロセッサに接続される処理装置の構成を有する形態に限定されることはなく、RF信号を測定してrawデータをホストコンピュータに送信し、このホストコンピュータにおいてこのrawデータがアプリケーションによって解析されるシステムを含み得ることにも留意すべきである。実際に、処理装置によって行われる処理は、アプリケーションプロセッサにおいて行われてもよい。
【0058】
AoA推定ツール120は、処理装置のICに組み込まれていてよく、または択一的には別のICに組み込まれていてよい。択一的には、他の集積回路への組み込みのために、AoA推定ツール120の記述を生成してコンパイルすることができる。例えば、VHDLまたはVerilogなどのハードウェア記述言語を使用して、AoA推定ツール120についてのパラメータを記述する挙動レベルコードまたはその一部を生成して、機械アクセス可能媒体(例えばCD-ROM、ハードディスク、フロッピーディスクなど)に記憶することができる。さらに、レジスタ転送レベル(「RTL」:register transfer level)コード、ネットリストに、または回路レイアウトにも、挙動レベルコードをコンパイルして組み込み、機械アクセス可能媒体に記憶することができる。挙動レベルコード、RTLコード、ネットリストおよび回路レイアウトは、AoA推定ツール120を記述するさまざまな抽象化レベルを表すことができる。電子システムのコンポーネントは、上で説明されたコンポーネントのすべてまた一部を含んでもよいし、またはこれらをまったく含まなくてもよいことに留意すべきである。
【0059】
一実施形態では、電子システムは、タブレットコンピュータにおいて使用されてよい。電子装置は択一的には、他のアプリケーション、例えばノートブックコンピュータ、携帯電話機、PDA(personal data assistant)、キーボード、テレビジョン、リモートコントローラ、モニタ、ハンドヘルドマルチメディア装置、ハンドヘルドメディア(オーディオおよび/またはビデオ)プレーヤ、ハンドヘルドゲーム装置、POS(point of sales)トランザクション用の署名入力装置、eBookリーダー、医療機器など、倉庫トラッキング装置、例えば運送会社で使用されるスキャナなど、オートモーティブデバイス、例えば自動車キーおよび車両内の電子装置、GPS(global position system)、またはコントロールパネルなどで使用されてもよい。特定の実施形態は、機械可読媒体に記憶された命令を含み得るコンピュータプログラム製品として実装可能である。これらの命令は、記載された動作を実行するための汎用プロセッサまたは専用プロセッサをプログラミングするために使用可能である。機械可読媒体は、機械(例えばコンピュータ)によって読み取り可能な形態(例えば、ソフトウェア、処理アプリケーション)で情報を記憶または伝送するための任意の機構を含む。機械可読媒体には、磁気記憶媒体(例えば、フロッピーディスク)、光学記憶媒体(例えば、CD-ROM)、光磁気記憶媒体、ROM(read-only memory)、RAM(random-access memory)、消去可能プログラマブルメモリ(例えばEPROMおよびEEPROM)、フラッシュメモリ、または電子命令を記憶するのに適した別のタイプの媒体が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0060】
さらに、一部の実施形態は、機械可読媒体が記憶されておりかつ/または2つ以上のコンピュータシステムによって実行される分散型コンピューティング環境において実施可能である。さらに、コンピュータシステム間で転送される情報は、コンピュータシステムを接続する通信媒体を越えてプルまたはプッシュされてよい。
【0061】
本明細書の方法の動作は、特定の順序で示されかつ説明されているが、各方法の動作の順序は変更可能であり、これにより、特定の動作は、逆の順序で実行可能であるか、または特定の動作は、少なくとも部分的に、他の動作と並行して実行可能である。別の実施形態では、異なる動作の命令またはサブ動作は、断続的かつ/または交互に行われてよい。本明細書で使用される「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などの用語は、異なる要素間を区別するためのラベルを意味しており、必ずしもその番号指定にしたがった順序を示すことを意味してはいない。本明細書で使用される用語「~に接続される」は、直接に接続されているか、または1つまたは複数の中間コンポーネントを介して間接的に接続されていることを意味することができる。本明細書で説明されるさまざまなバスを介して供給されるいずれの信号も、他の信号と時間多重化され、かつ1つまたは複数の共通のオンダイバス(one-die-bus)を介して供給されてよい。付加的には、回路コンポーネントまたはブロック間の相互接続およびインタフェースをバスとして見ることも、または単一の信号線路として見ることも可能である。各バスは、択一的には1つまたは複数の単一の信号線路であってよく、また各単一の信号線路は、択一的にはバスであってよい。
【0062】
上の説明には、本発明の複数の実施形態の理解を提供するために、特定のシステム、コンポーネント、方法等々の実施例などの多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、少なくとも一部の実施形態は、これらの特定の詳細がなくても実施可能であることが、当業者には明らかであろう。他には、周知のコンポーネントまたは方法は、本発明の実施形態を不必要に不明瞭にしてしまうことを回避するために、詳細には説明されていないか、または簡単なブロック図の形態で示されている。したがって、記載された特定の詳細は、単なる例示である。特定の実装形態は、これらの例示的な詳細とは異なっていてよいが、依然として本発明の実施形態の範囲内にあるものと考えることができる。
【0063】
特許請求の範囲に記載された対象の実施形態は、本明細書で説明されたさまざまな動作を含むが、これらに限定されない。これらの動作は、ハードウェアコンポーネント、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって実行可能である。
【0064】
上の説明には、特許請求の範囲に記載された対象の複数の実施形態の理解を提供するために、特定のシステム、コンポーネント、方法等々の実施例などの多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、上記の方法の少なくとも一部の実施形態は、これらの特定の詳細がなくても実施可能であることが当業者には明らかであろう。他には、周知のコンポーネントまたは方法は、詳細には説明されていないか、または簡単なブロック図の形態で示されている。したがって、記載された特定の詳細は、単なる例示である。特定の実装形態は、これらの例示的な詳細とは異なっていてよいが、依然として特許請求の範囲の対象の範囲内にあるものと考えることができる。
【国際調査報告】