(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】光配向性ポジティブc-プレートリターダ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220915BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220915BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220915BHJP
【FI】
G02B5/30
C08F2/44 Z
B32B7/023
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504174
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020070414
(87)【国際公開番号】W WO2021013780
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518163910
【氏名又は名称】ロリク・テクノロジーズ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ROLIC TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ピレシュ,デービッド
(72)【発明者】
【氏名】フランツ,リチャード
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
4J011
【Fターム(参考)】
2H149AA13
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(57)【要約】
本発明は、光配向性ポジティブc-プレートリターダを生成するための材料組成物及び方法に関する。偏光への曝露によって上記c-プレートリターダの表面に平面配向方向が誘起され得るので、スレーブ材料は、追加の配列層を必要とせずに、画定された方位角配列方向でc-プレートリターダの表面に配向され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光配向性のポジティブc-プレートリターダを含む光学素子(1、2)を製造する方法であって、
ホメオトロピック配向性の重合性液晶、及び光配列性物質を含むPAPC材料組成物を提供するステップと、
支持体(11)上に、前記PAPC材料の層(12)を形成するステップであって、前記液晶分子がホメオトロピック配列される、ステップと、
前記PAPC層内で重合性液晶の重合を開始するステップと、
前記PAPC層(12)を配向光に曝露して、スレーブ材料用の該層の上面に配向を生成するステップであって、該生成された配向方向は、前記上面の少なくとも一領域において、前記PAPC層表面に対して平面的であるか、又は傾斜している、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記重合性液晶の重合が、前記PAPC層(12)が配向光に曝露される前に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合性液晶の重合が、前記PAPC層(12)が配向光に曝露された後に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記重合性液晶の重合及び配向の生成が、前記PAPC層(12)を配向光に曝露する単一のステップで開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PAPC層中の前記光配列性物質が、該光配列性物質の濃度が前記PAPC層の中央よりも前記PAPC層の上面で高くなるような密度勾配を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光配列性物質が、フッ素化及び/又はシロキサン部分を含み、及び/又はポリシロキサンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
追加のステップにおいて、スレーブ材料が、前記PAPC層の上部に直接接触して塗布される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
PAPC層(12)を含む層構造(1、2)であって、
前記PAPC層(12)は、重合された液晶モノマーを含み、
前記重合された液晶モノマーは、ホメオトロピックに配向され、かつその表面上に配向能力を提供し、
前記配向能力は、前記PAPC層の表面に対して平面的に、又は傾斜してスレーブ材料を配向させることができる、層構造(1、2)。
【請求項9】
前記PAPC層(12)中の光配列性物質は、該光配列性物質の濃度が前記PAPC層の中央よりも前記PAPC層の上面で高くなるような密度勾配を有する、請求項8に記載の層構造。
【請求項10】
前記光配列性物質が、フッ素化及び/又はシロキサン部分を含み、及び/又はポリシロキサンである、請求項8又は9に記載の層構造。
【請求項11】
前記PAPC材料が二色性色素を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の層構造。
【請求項12】
前記PAPC層と直接接触する追加の異方性層(13)を有し、該追加の層が液晶ポリマーを含み、該追加の層の液晶ポリマーが、前記PAPC層の配向情報に従って配向されている、請求項8~11のいずれか一項に記載の層構造。
【請求項13】
前記PAPC層(12)が、ポジティブc-プレートリターダとして作用し、液晶ポリマーを含む前記追加の層が、平面リターダとして作用する、請求項12に記載の層構造。
【請求項14】
ホメオトロピック配向性の重合性液晶、及び光配列性物質を含む組成物であって、光配列性物質の重量パーセントが、溶媒を含まない組成物に対して、5%未満、1重量%未満、又はさらに0.1重量%未満であり、前記光配列性物質が、フッ素化及び/又はシロキサン部分を含み、及び/又はポリシロキサンである、組成物。
【請求項15】
前記光配列性物質がポリマーであり、側鎖にフッ素化部分を含む、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向性ポジティブc-プレートリターダ、並びにそのようなc-プレートリターダと接触する非垂直に配向された液晶層を含む層構造に関する。本発明はさらに、光配向性ポジティブc-プレートリターダを生成する方法、並びに光配向性ポジティブc-プレートリターダに適した材料に関する。
【背景技術】
【0002】
光配向は、様々な用途のための液晶ディスプレイ(LCD)及び光リターダフィルムの製造において強力な配向方法となっている。
【0003】
光リターダフィルムの場合、液晶モノマーは、光配向層の上部に塗布される。光配向層の配向情報を液晶モノマーに転移した後、液晶材料を固化させるために、モノマーを重合及び/又は架橋させる。重合及び/又は架橋された液晶モノマーは、液晶ポリマー(LCP)としても公知である。
【0004】
米国特許第6,717,644号は、個々の光軸方向を有するLCP層のスタックを開示している。LCP層の各々は、光配向層などの配向層によって配向されている。このため、LCP層のスタック内の層の総数は、LCP層の数の少なくとも2倍である。個々の光軸方向を有するLCP層のスタックは、例えば、Solcフィルタなどの干渉カラーフィルタを生成するために使用され得る。
【0005】
国際公開第2018/019691号は、液晶ポリマー材料及び光配列性物質を含む材料の表面に配向を生成する方法を開示している。この方法を用いると、第2又はそれ以上のLCP層を配向させるための別個の配向層が必要ないため、したがって多層光学フィルムの層数を減らすことができる。上記の特許出願は、例えば、OLEDディスプレイの反射防止構造用の無彩色円偏光子として作用するように設計された、平面リターダ及び液晶ポリマーを含む偏光子を有する層構造について述べている。言及される他の例は、Solc又はLyotフィルタなどの干渉カラーフィルタである。
【0006】
米国特許第’5,995’184号は、表面エネルギーを低下させる表面活性化学材料を添加することによって、空気界面側の重合性液晶の層の固有傾斜角を低下させる方法を開示している。平面的な液晶配向を実現するために、傾斜角を0度まで減少させることができる。
【0007】
平面リターダは、光の入射角からの、遅延特性の強い依存性を受ける。したがって、1つ以上の平面リターダに加えて、平面リターダの角度依存性を光学的に補償するポジティブc-プレートリターダを含むリターダフィルム構造に対する強い要求がある。
【0008】
c-プレートリターダは、異常屈折率(ne)の軸がリターダの平面に対して垂直である一軸リターダである。c-プレートリターダにおいて、異常屈折率が通常の屈折率(no)よりも大きい場合、c-プレートリターダはポジティブc-プレートリターダと呼ばれるが、これは、異常屈折率が通常の屈折率よりも小さいネガティブc-プレートリターダとは対照的である。
【0009】
平面リターダ層と同様に、IPS又はFFSモード用に設計されたLCDなどの平面液晶配向を有するLCDにおける視野角依存性を低減するためにも、ポジティブc-プレートリターダが使用される。ポジティブc-プレートリターダはまた、基板表面に対して光軸が傾斜しているリターダ層などの液晶層の角度依存性を減少させるのに役立たせることができる。
【0010】
効率的な方法で、例えば、現行技術水準の方法と比較して層の数及び製造ステップを減らすことによって、ポジティブc-プレートリターダを含む層構造を製造することを可能にする方法及び材料を利用可能にすることが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の目的は、リターダなどの平面的又は傾斜した液晶層と組み合わせて、ポジティブc-プレートリターダを含むデバイスの製造を単純化するための方法及び関連材料を提供することである。
【0012】
本発明による方法において、ポジティブc-プレートリターダは、重合性液晶及び1つ以上の光配列性物質を含む組成物から形成される。その結果得られたリターダ層は、配向光に曝露すると、表面が、液晶材料などの配向可能な材料のための平面的又は傾斜した配向能力を発現させるという特性を有する。
【0013】
c-プレートリターダ自体は好ましい方位角成分を有さないので、c-プレートリターダを製造するための方位角配向方向を提供する必要はない。液晶性c-プレート材料が塗布される基板は、c-プレートリターダ材料中の液晶のホメオトロピック配列の発現を支持することだけが必要である。
【0014】
基板との相互作用に加えて、液晶層の上面での液晶と空気の相互作用がホメオトロピック配列を支持することも必要である。したがって、液晶c-プレート材料における表面エネルギーの適切なバランスが重要である。
【0015】
読みやすくする目的で、「光配向性ポジティブC-プレート(photo-alignable positive C-plate)」という用語には、略語PAPCが使用される。
【0016】
本出願の文脈において、PAPC材料は、ホメオトロピック配向性の重合性液晶及び光配向性物質を含む組成物を意味するものとする。したがって、PAPC層は、PAPC材料から形成された層である。
【0017】
好ましくは、光配列性物質は、配向光への曝露時に、スレーブ材料の平面的又は傾斜した配向能力を発現させる特性を有する。
【0018】
最新技術のポジティブc-プレートリターダが、重合性液晶を含むが光配列性物質を含まない材料から形成される場合、c-プレートリターダは、その表面上に液晶のための好ましい方位角配向方向を提供することができない。さらに、c-プレートリターダ中の液晶分子はホメオトロピックに配向され、これは基板表面に対して垂直であることを意味するため、c-プレートリターダの表面は、液晶層のホメオトロピック配向を提供することができる。
【0019】
前記したように、米国特許第’5,995’184号は、表面エネルギーを低下させる表面活性化学材料を添加することによって、空気界面側の重合性液晶の層内で固有傾斜角が低下することを開示している。したがって、当業者は、表面に移動する物質を添加した場合に、液晶材料がホメオトロピックに配向する可能性を維持することはほとんど不可能であると予想するであろう。
【0020】
液晶用の配向層は、液晶と接触する層の表面で配向情報を提供しなければならない。したがって、PAPC層中の光配列性物質の少なくとも一部は、PAPC層の空気界面の表面に移動しなければならない。PAPC材料中の光配列性物質は平面的配列又は傾斜配列のために設計されているので、当業者は、特に液晶材料と光配向性物質の表面エネルギーが互いに異なる場合、上面の光配向性物質により、空気界面での液晶分子の固有の傾斜が減少し、したがってホメオトロピック液晶配列がもはや不可能になり得ることを予想するであろう。
【0021】
本発明によるPAPC層は、光配向性物質がPAPC組成物に含まれているが、液晶のホメオトロピック配列を示す。
【0022】
本発明によるPAPC層では、液晶の好ましい方位角配列方向は、配向光への曝露によってPAPC層の表面に誘起され得るが、これはPAPC層表面に光配列性物質が存在することに起因する。PAPC層の表面におけるこの好ましい方位角配列方向は、PAPC層の上部上に堆積された液晶材料などのスレーブ材料に転移され得る。驚くべきことに、配向光によって生成される配向は、PAPC層内のホメオトロピック配向液晶によって誘起される強い配向力でさえよりも優位である。
【0023】
PAPC層中の液晶材料の重合は、例えば、配向光への曝露の前、曝露と同時、又は曝露後に、非偏光の化学光への曝露によって開始され得る。好ましくは、PAPC材料は、重合性液晶材料と光配列性物質との波長感度が異なるように設計されているため、したがって配向光による光配向の生成に必要な波長とは異なる波長の光によって、液晶材料の重合が開始され得る。好ましくは、PAPC材料は光開始剤を含む。
【0024】
一方、PAPC材料は、配向光のある光スペクトルに対して、配向光への1回の曝露が、液晶材料の重合及び光配列性物質の配列の生成を同時に開始するように設計され得る。材料及び曝露パラメータを適切に選択することにより、配向光によって誘起される光配向反応による配向力が液晶構造を変形させるほど十分に強くなる前に、ホメオトロピック構成の液晶材料を急速に固化させることができる。
【0025】
液晶を重合する前に、PAPC層が配向光に曝露されると、重合性液晶のホメオトロピック構成を維持することさえ可能である。この場合、PAPC材料の粘度は、液晶分子が垂直配向から離れるように傾斜するのを防ぐのに十分に高くなければならない。この目的のために、配向光への曝露が開始した時点から、液晶が重合してPAPC材料の透明化温度を十分に下回るまで、PAPC材料の温度を維持することが有用である。
【0026】
PAPC材料は溶媒を含むことができる。溶媒は、組成物の調製及び保存のため、並びに最適な印刷及び/又はコーティング性能のための粘度の適切な調整に有用であり得る。溶媒は、典型的には、PAPC材料が支持体上に堆積された後、例えば加熱によって除去される。溶媒を含まないPAPC材料は液晶相を有するべきであり、好ましくは溶媒を含まないPAPC材料はほぼ室温で液晶相である。以下において、PAPC材料の透明化温度は、そのような溶媒が除去されたPAPC材料の透明化温度を意味するものとする。
【0027】
好ましい実施形態では、PAPC材料は、光の可視スペクトルの少なくとも1つの波長範囲の光を吸収する1つ以上の二色性色素を含む。このようなPAPC材料の層では、液晶分子がホメオトロピックに配向されているが、その結果、基板表面に垂直な軸に沿った対称軸を有する直線偏光子として作用する。
【0028】
層並びに層の表面と組み合わせて使用される相対的な用語「上部」及び「下部」は、支持体の位置に関して定義される。したがって、層の下部は支持体に面しており、一方、上側又は上面はそれぞれ支持体から外方に面している。
【0029】
本発明の方法に従って塗布及び処理されたPAPC層は、液晶材料及びその構成、並びにPAPC材料に含まれる任意の二色性色素によって決定される光学機能を有する。
【0030】
本出願の文脈内で、「重合性」及び「重合された」という用語は、それぞれ「架橋性」及び「架橋された」の意味を含むものとする。同様に、「重合」は、「架橋」の意味を含むものとする。
【0031】
本出願の文脈において、「光配列性物質」は、配向光に曝露すると、異方性特性が誘起され得る材料である。また、「光配列された物質」とは、配向光に曝露することにより配向された光配向性物質を指す。本発明の場合、誘起された異方性は、スレーブ材料、特に液晶材料のための配向能力を提供するようなものでなければならない。「配向方向」という用語は、スレーブ材料に誘起される好ましい方向を指すものとする。例えば、スレーブ材料が液晶材料である場合、配向方向は、液晶分子が配向される方向である。
【0032】
本出願の文脈では、「配向光」という用語は、光配列性物質に異方性を誘起することができ、少なくとも部分的に直線的又は楕円的に偏光され、及び/又は斜め方向から光配列性物質の表面に入射する光を意味するものとする。好ましくは、配向光は、5:1を超える偏光度で直線的に偏光される。配向光の波長、強度及びエネルギーは、光配向性物質の感光性に応じて選択される。典型的には、波長は、UV-A、UV-B及び/又はUV-C範囲又は可視範囲にある。好ましくは、配向光は、450nm未満の波長の光を含む。より好ましくは、配向光は、420nm未満の波長の光を含む。
【0033】
配向光が直線的な偏光である場合、配向光の偏光面は、配向光の伝播方向及び偏光方向によって画定される平面を意味するものとする。配向光が楕円偏光である場合、偏光面は、光の伝播方向及び偏光楕円の長軸によって画定される平面を意味するものとする。
【0034】
光配向(photo-alignment)、光配向性(photo-alignable)及び光配向された(photo-aligned)という用語は、それぞれ光配列(photo-orientation)、光配列性(photo-orientable)及び光配列された(photo-oriented)という用語と同義に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明は、添付の図面によってさらに説明される。様々な特徴は必ずしも縮尺通りに描かれていないことが強調される。
【
図1】ポジティブc-プレートリターダとして作用し、スレーブ材料の配向を提供するPAPC層を示す図である。
【
図2】スレーブ材料の層がPAPC層によって配向されている層スタックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の第1の態様によれば、配向されたLCP層のスタックを製造するための方法が提供される。
【0037】
本発明の方法は、
ホメオトロピック配向性の重合性液晶化合物、及び光配列性物質を含む組成物(PAPC材料)を提供するステップと、
支持体上にPAPC材料の層を形成するステップであって、液晶分子がホメオトロピック配列される、ステップと、
PAPC層内で重合性液晶の重合を開始するステップと、
PAPC層を配向光に曝露して、スレーブ材料用の層の上面に配向を生成するステップであって、生成された配向方向は、上面の少なくとも一領域において、PAPC層表面に対して平面的であるか、又は傾斜している、ステップと、
を含む。
【0038】
「支持体上」という語句における「支持体」という用語は、基材の意味を含むものとする。
【0039】
重合性液晶を重合するステップと、配向光に曝露するステップとは、任意の順序であってもよい。重合は、配向光への曝露の前又は後に開始され得る。本方法の特別な実施形態では、重合及び配向の発生は、配向光に曝露する単一のステップで達成される。いずれの場合も、液晶は、配向光に曝露されている間、それらのホメオトロピック構成を維持するように注意されなければならない。好ましくは、これは、PAPC層を配向光に曝露する前に、液晶を重合するステップによって行われる。
【0040】
液晶が重合される前にPAPC層が配向光に曝露される場合、配向光がホメオトロピック液晶構成の変形を誘起しないように注意されなければならない。この目的のために、配向光への曝露の時点から、液晶が重合されてPAPC材料の透明化温度を十分に下回るまで、PAPC材料の温度を維持することが有用である。配向光への曝露の時点から、液晶が重合されるまで、PAPC材料の温度は、PAPC材料の透明化温度から5℃又は10℃低い温度よりも低いことが好ましい。より好ましくは、PAPC材料の温度は、透明化温度から20℃、30℃又は40℃低い温度よりも低いことであり、最も好ましくは、PAPC材料の温度は、透明化温度から50℃、60℃又は70℃低い温度よりも低い。PAPC材料の温度は室温に近いことがさらに好ましい。特に好ましいのは、温度が50℃未満であることであり、より好ましくは40℃未満であり、最も好ましくは30℃未満である。
【0041】
この方法の好ましい実施形態では、傾斜配向を生成するために、例えば液晶のプレチルト角を提供するために、配向光が斜め方向からPAPC層の表面に照射される。
【0042】
PAPC層の全領域が配向光に曝露されると、その結果、一軸配向が生じる。配向光は、例えばフォトマスクによって特定の領域を覆うことによって、又は光ビームを所望の領域のみに走査することによって、PAPC層の一部のみが配向光に曝露されるように成形され得る。PAPC層上に配列パターンを生成するために、配向光の異なる偏光面を用いた後続の曝露ステップを追加してもよい。を含む、光配向によって配向パターンを生成する公知の任意の他の方法、たとえば空間的に変調された偏光面を用いた配向光への曝露、も同様に使用され得る。その結果、PAPC層の表面に複数の配列方向が生成され得る。好ましい相対的な配列方向は、基板の縁部などの基準方向に対して0°、45°、90°、135°である。異なる領域における配列方向の好ましい組み合わせは、0°及び45°、0°及び90°、45°及び135°であり、角度は基準方向に関して測定される。
【0043】
支持体は、剛性又は可撓性であってもよく、任意の形態又は形状を有することができる。例えば、複雑な表面を有する物体であることができる。原則として、それは任意の材料からなることができる。好ましくは、支持体は、プラスチック、ガラス又は金属を含むか、又はシリコンウェハである。支持体が可撓性である場合、支持体はプラスチック又は金属箔であることが好ましい。好ましくは、支持体の表面は平坦である。好ましくは、支持体は透明である。
【0044】
支持体は、PAPC材料の堆積中に移動していてもよい。例えば、PAPC材料の層は、移動する可撓性箔上に、材料組成物を堆積させることによって、連続的なロール・ツー・ロールプロセスで製造してもよく、可撓性箔は好ましくはプラスチック又は金属である。
【0045】
支持体は、有機層、誘電層又は金属層などの追加の層を有することができる。層は、異なる機能を有することができ、例えば、支持体でコーティングされる材料の相溶性を高めるプライマー層として有機層がコーティングされ得る。金属層は、例えばディスプレイなどの電気光学デバイスに使用される場合、電極として使用されることができ、又は反射器としての機能を有することができる。支持体はまた、例えば、薄膜トランジスタ、電極又はカラーフィルタを備え得るLCD用の基板などの、特定の機能を有する光学素子又はデバイスであることができる。別の例では、支持体は、OLED層構造を含むデバイスである。支持体はまた、リターダフィルム;偏光子、例えば偏光フィルム又はシート偏光子;反射偏光子、例えば市販のVikuity(商標)DBEFフィルムなどであることができる。
【0046】
PAPC層は、押出、鋳造、成形、2D若しくは3D印刷又はコーティングなどの任意の適切な方法によって支持体に塗布され得る。適切なコーティング方法は、例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、キスロールコーティング、ダイコーティング、浸漬、ブラッシング、バーによる鋳造、ローラーコーティング、フローコーティング、ワイヤコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、カーテンコーティング、エアナイフコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、計量ロッド(Meyerバー)コーティング、スロットダイ(押出)コーティング、ローラーコーティング、フレキソコーティングである。適切な印刷方法には、シルクスクリーン印刷;フレキソ印刷などの凸版印刷、ジェット印刷;ダイレクトグラビア印刷又はオフセットグラビア印刷などの凹版印刷;オフセット印刷などの平版印刷、又はスクリーン印刷などのステンシル印刷が含まれる。
【0047】
PAPC材料の層は、支持体の全表面を覆う必要はない。そうではなく、層は、例えば印刷によって、パターンの形態で塗布されてもよく、又は堆積後に、例えばフォトリソグラフィ法によって、パターンの形態を有するように処理されてもよい。
【0048】
PAPC層における光配列性物質の主たる目的は、PAPC層の上面に配向を生成することであるため、光配列性物質が層の厚さ方向に沿って均等に分布している必要はない。したがって、他の化合物の量に対する光配列性物質の量の比は、層の厚さ方向に沿って変化することが好ましく、これは、厚さ方向に沿って光配列性物質の濃度勾配が存在することを意味する。好ましくは、光配列性物質の濃度は、層の中央よりもPAPC層の上面の方が高い。より好ましくは、光配列性物質と重合性液晶とが相分離している。好ましくは、相分離した光配列性物質は、重合性液晶の上方及び/又は下方に層として配置される。
【0049】
ポジティブc-プレートリターダ内の液晶分子は支持体層に対して垂直に配列されるため、好ましい方位角配列方向は、配向層又は他の配列手段によって提供される必要はない。支持体の表面とPAPC材料との相互作用は、配列がホメオトロピックであるようなものであれば十分である。支持体は、さらなる処理なしに既にそのような特性を提供することができる。別法として、材料の薄層は、PAPC層中の液晶のホメオトロピック配列を支持するように特に設計された支持体上にコーティングされ得る。いずれの場合でも、PAPC材料の堆積後に、PAPC層の温度を上昇させることが有用であり得る。
【0050】
上記の任意の変形例に加えて、本発明の方法は、PAPC層の配向された表面の上にスレーブ材料を塗布するステップを含むことができる。
【0051】
本出願の文脈において、「スレーブ材料」は、光配列された材料との接触時に異方性を確立する能力を有する任意の材料を指すものとする。
【0052】
「異方性の(anisotropic)」及び「異方性(anisotropy)」という用語は、例えば、光吸収、複屈折、導電率、分子配列;他の材料、例えば液晶の配向特性、又は弾性率などの機械的特性を指すことができる。例えば、スレーブ材料が可視光に対して光吸収異方性を示す場合、それは直線偏光子として作用することができる。「配向方向」という用語は、異方性特性の対称軸を指すものとする。
【0053】
スレーブ材料は、重合性及び/又は非重合性化合物を含むことができる。
【0054】
スレーブ材料は、溶媒の有無にかかわらずコーティング及び/又は印刷によって塗布でき、PAPC層の全領域にわたって、又はその一部にのみ、塗布され得る。好ましくは、この方法は、PAPC層に塗布する前又は後に、スレーブ材料を加熱するステップを含む。この方法はまた、熱処理又は化学光への曝露によって、スレーブ材料中で重合を開始するステップを含むことができる。スレーブ材料の性質に応じて、窒素などの不活性雰囲気下、又は真空下で、重合を実行することが有用であり得る。スレーブ材料は、等方性若しくは異方性染料及び/又は蛍光染料を含有することができる。
【0055】
好ましくは、スレーブ材料は自己組織化材料である。スレーブ材料が液晶材料であることがより好ましく、スレーブ材料が液晶ポリマー(LCP)材料であることが特に好ましい。
【0056】
本出願の文脈内で使用される液晶ポリマー(LCP)材料は、液晶モノマー及び/又は液晶オリゴマー及び/又は液晶ポリマー及び/又は架橋液晶を含む液晶材料を意味するものとする。液晶材料が液晶モノマーを含む場合、このようなモノマーは、典型的には、例えば配向層との接触によりLCP材料に異方性が生成された後に、重合され得る。重合は、熱処理によって、又は化学光、好ましくはUV光を含む化学光への曝露によって開始され得る。LCP材料は、単一タイプの液晶化合物のみを含むこともできるが、追加の重合性及び/又は非重合性化合物を含むことができ、その場合、化合物のすべてが液晶化合物である必要はない。さらに、LCP材料は添加剤を含有することができ、該添加剤は、光開始剤、阻害剤、キラル添加剤、等方性若しくは異方性蛍光色素及び/又は非蛍光色素、特に二色性色素を含むがこれらに限定されない。
【0057】
適切な液晶モノマー又はプレポリマーは、例えば、国際公開第2005/105932号、国際公開第2005/054406号、国際公開第2004/085547号、国際公開第2003/027056号、米国特許第2004/0164272号、米国特許第6746729号、米国特許第6733690号、国際公開第2000/48985号、国際公開第2000/07975号、国際公開第2000/04110号、国際公開第2000/05189号、国際公開第99/37735号、米国特許第6395351号、米国特許第5700393号、米国特許第5851424号及び米国特許第5650534号に開示されている。好ましい液晶モノマー又はプレポリマーは、アクリレート又はジアクリレート、メタクリレート、ジメタクリレート、アリル、ビニル又はアクリルアミドである重合性基を有する。
【0058】
本発明の第2の態様によれば、本発明による方法及びデバイスに使用するための、重合性液晶及び1つ以上の光配列性物質を含むPAPC材料組成物が提供される。
【0059】
PAPC材料は、2種類以上の光配列性物質を含むことができる。
【0060】
PAPC材料は、光開始剤及び/又は阻害剤、光安定剤、等方性又は異方性の蛍光色素及び/又は非蛍光色素、二色性色素及び/又はキラル添加剤、並びにレオロジー特性又は接着性を改善するための他の添加剤をさらに含有することができる。
【0061】
重合性液晶化合物の合計に対する光配列性物質の合計の重量比が0.5未満、より好ましくは0.2未満、最も好ましくは0.1未満であるPAPC材料が好ましい。PAPC層の厚さに応じて、PAPC材料中の光配列性物質の重量パーセントは、溶媒を含まない組成物に関して、5%未満、1重量%未満、又は0.1重量%未満であることができる。極端な場合、溶媒を含まない組成物に対して0.01重量%の光配列性物質は、依然として十分な配向特性を達成するのに十分である。好ましくは、光配列性物質が、相分離を支持するために、フッ素化及び/又はシロキサン部分を含み、及び/又はポリシロキサンである。好ましくは、光配列性物質がポリマーであり、側鎖にフッ素化部分を含む。光配列性ポリシロキサンの例は、国際公開公報第2017/081056号に開示されている。フッ素化部分を含む光配列性物質は、例えば、米国特許第8,173,749号(B)、米国特許出願公開第2011/0065859号(A1)、米国特許出願公開第2012/0316317号(A1)、米国特許第9,097,938号(B2)、米国特許出願公開第2016/0083655号(A1)、米国特許出願公開第2016/0271894号(A1)、国際公開第2019/030292号に見出すことができる。これらの特許及び特許出願は、フッ素化物質に関して参照により組み込まれる。上記特許及び特許出願の実施例におけるフッ素化部分は、主にポリマーの側鎖の一部である。したがって、これらの側鎖は相分離に強く影響する。したがって、本発明の目的のために、上記に列挙する特許における実施例の特定の主鎖構造以外の他の主鎖構造を、フッ素化側鎖構造と組み合わせて使用され得る。好ましい実施形態では、PAPC材料は、2つの異なるタイプの光配列性物質を含み、それらの一方はPAPC層の上面に移動する傾向があり、他方は層の底部に移動する傾向がある。
【0062】
好ましくは、PAPC材料は、以下の実施例で使用されている光配列性物質PA1を含む。
【0063】
相分離を支持するために、光配列性物質と重合性液晶材料とは、光配列性物質のモノマー双極子モーメントと液晶分子とのモノマー双極子モーメントが互いに異なるように選択され得る。モノマー双極子モーメントは、モノマーの双極子モーメントを指し、又はポリマー、オリゴマー及びプレポリマーの場合、それぞれ、そのようなポリマー、オリゴマー及びプレポリマーのモノマー単位の双極子モーメントを指すものとする。好ましくは、モノマー双極子モーメントは、0.5デバイを超えて、より好ましくは1デバイを超えて、最も好ましくは1.5デバイを超えて異なる。
【0064】
PAPC材料中の光配列性物質は、光反応機構とは無関係に、配向光への曝露時に、スレーブ材料のために配向特性を提供する異方性特性が生成され得る、任意の種類の感光性材料であることができる。したがって、適切な光配列性物質は、例えば、配向光への曝露時に、光二量化反応、光分解、トランス-シス異性化又は光フリース転位によって、異方性が誘起される材料である。好ましいPAPC材料は、配向光に曝露されると光二量化反応が開始され得る、光配列性物質を含む。
【0065】
光配列性物質は、上述のように、光配列性部分を含み、該光配列性部分は、配向光に曝露すると、好ましい方向を発現させ、したがって異方性特性を生成することができる。このような光配列性部分は、異方性吸収特性を有することが好ましい。典型的には、そのような部分は、230から500nmの波長範囲内の吸収を示す。好ましくは、光配列性部分は、300から450nmの波長範囲の光の吸収を示し、より好ましくは、310から380nmの波長範囲の吸収を示す部分である。
【0066】
好ましくは、光配列性部分は、炭素-炭素二重結合、炭素-窒素二重結合又は窒素-窒素二重結合を有する。
【0067】
例えば、光配列性部分は、置換又は非置換アゾ染料、アントラキノン、クマリン、メリシアニン、2-フェニルアゾチアゾール、2-フェニルアゾベンズチアゾール、スチルベン、シアノスチルベン、フルオロスチルベン、シンナモニトリル、カルコン、シンナメート、シアノシンナメート、スチルバゾリウム、1,4-ビス(2-フェニルエチレニル)ベンゼン、4,4’-ビス(アリールアゾ)スチルベン、ペリレン、4,8-ジアミノ-1,5-ナフトキノン染料、アリールオキシカルボン酸誘導体、アリールエステル、N-アリールアミド、ポリイミド、ジアリールケトン(2つの芳香環と共役したケトン部分又はケトン誘導体、例えば置換ベンゾフェノン、ベンゾフェノンイミン、フェニルヒドラスメタゾン及びヒドラカルバゾンを有する)である。
【0068】
上記に列挙した異方性吸収材料の調製は、例えばHoffman et al.,米国特許第4,565,424号、Jones et al.,米国特許第4,401,369号、Cole,Jr.et al.,米国特許第4,122,027号、Etzbachet al.,米国特許第4,667,020号及びShannonラet al.,米国特許第5,389,285号に示されるように周知である。
【0069】
好ましくは、光配列性部分は、アリールアゾ、ポリ(アリールアゾ)、スチルベン、シアノスチルベン、シンナメート又はカルコンを含む。
【0070】
光配列性物質は、特にモノマー、オリゴマー又はポリマーであり得る。光配列性部分は、例えば、ポリマー又はオリゴマーの主鎖内又は側鎖内に共有結合することができ、又はモノマー又は重合性ではない他の化合物の一部であることができる。光配列性物質は、さらに、異なる種類の光配列性部分を含むコポリマーであることができ、又は光配列性部分を含む、及び含まない側鎖を含むコポリマーであることができる。
【0071】
ポリマーは、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアミック酸、ポリマレインイミド、ポリ-2-クロロアクリレート、ポリ-2-フェニルアクリレート、非置換又はC1~C6アルキル置換ポイルアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ-2-クロロアクリルアミド、ポリ-2-フェニルアクリルアミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリエステル、ポリビニルエステル、ポリスチレン誘導体、ポリシロキサン、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸の直鎖又は分岐アルキルエステル、ポリフェノキシアルキルアクリレート、ポリフェノキシアルキルメタクリレート、炭素数1~20のアルキル残基を有するポリフェニルアルキルメタアクリレート、ポリアクリルニトリル、ポリメタクリルニトリル、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ポリ-4-メチルスチレン又はそれらの混合物を示す。
【0072】
光配列性物質はまた、光増感剤、例えばケトクマリンやベンゾフェノンを含むことができる。
【0073】
さらに、好ましい光配列性モノマー又はオリゴマー又はポリマーは、米国特許第5,539,074号、米国特許第6,201,087号、米国特許第6,107,427号、米国特許第6,632,909号及び米国特許第7,959,990号に記載されている。
【0074】
本発明の第3の態様によれば、本発明による方法を使用することによって作製された異方性層のスタック並びに関連材料が提供される。
【0075】
図1の構造1は、支持体として使用される基板11上のPAPC層12を示す。PAPC層中の液晶は、PAPC層がポジティブc-プレートリターダを形成するように、ホメオトロピックに配向される。液晶のホメオトロピック配列を支持するために、基板の表面は、プラズマ又はコロナ処理などの表面処理によって改質され得る。基板は、PAPC層の液晶をホメオトロピック配列させるのに適切な表面エネルギーを提供する材料の層を含むことも可能である。PAPC層内の液晶を架橋し、単一の照射ステップで行われ得る、配向光への曝露後、PAPC層の表面は、液晶材料などのスレーブ材料の平面配向又は傾斜配向のための配向能力を提供する。
【0076】
図2の構造2では、架橋性液晶材料などのスレーブ材料の層13が、PAPC層の表面に直接塗布される。スレーブ材料は、PAPC層12の光配向性表面によって配向されている。好ましくは、スレーブ材料はLCP材料を含む。LCP材料は、二色性色素及び/又はキラル添加剤などの添加剤をさらに含むことができる。したがって、層13は、複屈折性であってもよく、偏光子として作用することができ、ねじれ型であることができ、又はコレステリック型であることができる。層13中のLCP分子は、平面的であっても傾斜していてもよい。
【0077】
好ましくは、層13は複屈折性であり、平面的に配列された液晶を含み、ここに平面的とは、層の表面に平行であることを意味する。この場合、
図2の構造2は、ポジティブc-プレートリターダと平面リターダ(a-プレート)とを組み合わせる。この構造はわずか2つの層で作成され得ることが指摘される。好ましくは、層13は、1/4波又は1/2波リターダとして作用する。層13が無彩色リターダであることが特に好ましい。
【0078】
ほとんどの用途で、PAPC層の面外位相差Rthは-10nmより低い。好ましくは、Rthは-50nmより低く、より好ましくは-100nmより低い。
Rth=((nx+ny)/2-nz)×d、
式中、nx、nyは基板面内の屈折率であり、nzは基板面に垂直な屈折率であり、dは層厚である。
【0079】
PAPC層の典型的な材料について、PAPC層の厚さは、100nmより厚く、好ましくは500nmより厚く、より好ましくは1μmより厚い。いくつかの用途では、PAPC層の厚さは2μmより厚く、又はさらには3μmより厚い。
【0080】
本発明による層構造は、例えば、LCD用の輝度向上フィルム、ディスプレイ又はOLED照明用途のような有機発光デバイス(OLED)と組み合わせて、及びディスプレイ用の反射防止構造の一部として使用され得る。
実施例
実施例で使用した材料
化合物
光配向材料PA1
【化1】
国際公開第2019/030292号に記載されているように合成した。
液晶モノマーLCM1
【化2】
液晶モノマーLCM2
【化3】
液晶モノマーLCM3
【化4】
液晶モノマーLCM4
【化5】
液晶モノマーLCM5
【化6】
液晶モノマーLCM6
【化7】
液晶モノマーLCM7
【化8】
二色性色素dDye
【化9】
国際公開第2015/177062号に従って調製。
溶液
S-LCP1
33.43重量% LCM4
0.70重量% 光開始剤-Irgacure OXE 02(BASF)
0.70重量% カヤラッドDPCA-20(日本化薬)
0.07重量% Tinuvin 123(BASF)
0.01重量% BHT(アルドリッチ社)
0.09重量% Tego Flow 300(Tego Chemi Essen)
溶媒
52.00重量% 酢酸ブチル
13.00重量% シクロヘキサノン(CHN)
【0081】
溶液S-LCP1は、物質を溶媒の混合物に溶解し、溶液を室温で30分間撹拌することによって調製される。
S-LCP 2(ホメオトロピック配向LCP)
物質
19.56重量% LCM2
4.89重量% LCM3
0.50重量% Irgacure 369(BASF)
0.05重量% BHT(アルドリッチ社)
溶媒
60.00重量% メチルエチルケトン(MEK)
15.00重量% CHN
【0082】
溶液S-LCP2は、物質を溶媒の混合物に溶解し、溶液を室温で30分間撹拌することによって調製される。
S-dLCP
物質
35.12重量% LCM6
4.00重量% dDye
0.80重量% Irgacure 369(BASF)
0.08重量% BHT(アルドリッチ社)
溶媒
48.00重量% メチルエチルケトン(MEK)
12.00重量% CHN
【0083】
溶液S-dLCPは、物質を溶媒の混合物に溶解し、溶液を室温で30分間撹拌することによって調製される。
S-cLCP
物質
14.2重量% LCM4
9.9重量% LCM7
1重量% LumogenS 750(BASF)
0.8重量% Irgacure 907(BASF)
0.06重量% Irgafos 168(BASF)
0.04重量% BHT(アルドリッチ社)
溶媒
59.2重量% メチルプロピルケトン
7.4重量% ジオキサラン
7.4重量% CHN
【0084】
溶液S-cLCPは、物質を溶媒の混合物に溶解し、溶液を室温で30分間撹拌することによって調製される。
S-PAPC 1(PAPC材料)
物質
9.70重量% LCM1
9.70重量% LCM2
4.80重量% LCM3
0.25重量% PA1
0.50重量% Irgacure 369(BASF)
0.05重量% BHT(アルドリッチ社)
溶媒
60.00重量% MEK
15.00重量% CHN
【0085】
溶液S-PAPC1は、物質を溶媒の混合物に溶解し、溶液を室温で30分間撹拌することによって調製される。
S-PAPC 2(PAPC材料)
物質
18.34重量% LCM1
6.11重量% LCM3
0.25重量% PA1
0.50重量% Irgacure 369(BASF)
0.05重量% BHT(アルドリッチ社)
溶媒
60.00重量% MEK
15.00重量% CHN
【0086】
溶液S-PAPC2は、物質を溶媒の混合物に溶解し、溶液を室温で30分間撹拌することによって調製される。
S-PAPC3
物質
19.00重量% LCM2
8.10重量% LCM5
0.30重量% PA1
0.55重量% Irgacure 369(BASF)
0.05重量% BHT(アルドリッチ社)
溶媒
72.00重量% MEK
溶液S-PAPC3は、物質をMEK溶媒に溶解し、溶液を室温で30分間撹拌することによって調製される。
【0087】
実施例1
100μmのシクロオレフィンポリマー(COP、Zeon製のZeonor ZF 16-100)プラスチック基材の表面を、O2プラズマ:出力80%(200W、40kHz)、O2流量5sccm、時間3分で活性化した。
【0088】
次いで、COP基質を溶液S-PAPC1でKbarコーティング(バーサイズ1)し、オーブン内で50℃で5分間アニールした。次いで、N2雰囲気下、室温で、200mJ/cm2の直線偏光UVB光にフィルムを曝露した。次いで、交差偏光子間でフィルムを目視観察した。基材に対して垂直に見ると、フィルムは、偏光子に対する基材の方位角とは無関係に暗く見えることが分かった。しかしながら、斜めの角度で観察すると、フィルムは明るくなった。生成されたフィルムは、光軸が基板に垂直な複屈折性であると結論付けられた。したがって、混合物の液晶はホメオトロピック配向された。
【0089】
次いで、溶液S-LCP1を、バーコーティング(kバー1、速度8)によってPAPC1層上に直接コーティングし、オーブン内で50℃で2分間アニールした。最後に、N2雰囲気下で1.5J/cm2のUVA光に曝露することによって、フィルムを架橋した。
【0090】
次いで、交差偏光子間でフィルムを再び目視観察した。ここで、基板に対して垂直に見ると、一軸に配列された複屈折性フィルムが、光軸の明確な配列を伴って生成されていることが分かった。傾斜補償器を用いた偏光顕微鏡でのコノスコープ観察により、光軸は平面的であり、PAPC1層に照射されたUVB光の偏光方向と平行であることが分かった。PAPC1層の表面に配列が生成され、誘起された配列方向に沿ってLCP1液晶を配向させたと結論付けられた。
【0091】
次いで、生成されたフィルム構造体を偏光計(AxoScan、Axometrics製)でさらに評価した。PAPC1層及びLCP1層の面内遅延特性(R0)及び面外遅延特性(Rth)の両方を、550nmでの測定値から抽出し、その結果、Rth=-145nm及びR0=178nmであった。
【0092】
値R0及びRthは以下のように定義される。
R0=(nx-ny)×d
Rth=((nx+ny)/2-nz)×d、
式中、nx、nyは基板面内の屈折率であり、nzは基板面に垂直な屈折率であり、dは層厚である。
【0093】
実施例2
実施例1と同様に、プラズマ処理されたCOPフィルムを基材として使用した。溶液S-PAPC2を、COP基板上にKbarコーティング(バーサイズ1)し、オーブン内で50℃で5分間アニールした。次いで、N2雰囲気下、室温で、200mJ/cm2の直線偏光UVB光にフィルムを曝露した。次いで、交差偏光子間でフィルムを目視観察した。基材に対して垂直に見ると、フィルムは、偏光子に対する基材の方位角とは無関係に暗く見えることが分かった。しかしながら、斜めの角度で観察すると、フィルムは明るくなった。生成されたフィルムは、光軸が基板に垂直な複屈折性であると結論付けられた。したがって、混合物の液晶はホメオトロピック配向された。
【0094】
次いで、溶液S-LCP1をバーコーティング(kバー1、速度8)によって、PAPC2層上に直接コーティングし、オーブン内、50℃で2分間アニールした。最後に、N2雰囲気下で、1.5J/cm2のUVA光に曝露することによってフィルムを架橋した。
【0095】
次いで、交差偏光子間でフィルムを再び目視観察した。ここで、基板に対して垂直に見ると、一軸に配列された複屈折性フィルムが、光軸の明確な配列を伴って生成されていることが分かった。傾斜補償器を用いた偏光顕微鏡でのコノスコープ観察により、光軸は平面的であり、PAPC2層に照射されたUVB光の偏光方向と平行であることが分かった。PAPC2層の表面に配列が生成され、誘起された配列方向に沿ってLCP1液晶を配向させたと結論付けられた。
【0096】
次いで、生成されたフィルム構造体を偏光計(AxoScan、Axometrics製)でさらに評価した。PAPC2層及びLCP1層の面内遅延特性(R0)及び面外遅延特性(Rth)の両方を、550nmでの測定値から抽出し、その結果、Rth=-288nm及びR0=178nmであった。
【0097】
比較実施例1
実施例1と同様に、プラズマ処理されたCOPフィルムを基材として使用した。COP基質を、溶液S-LCP2でKbarコーティング(バーサイズ1)し、オーブン内で50℃で5分間アニールした。次いで、N2雰囲気下、室温で、200mJ/cm2の直線偏光UVB光にフィルムを曝露した。次いで、交差偏光子間でフィルムを目視観察した。基材に対して垂直に見ると、フィルムは、偏光子に対する基材の方位角とは無関係に暗く見えることが分かった。しかしながら、斜めの角度で観察すると、フィルムは明るくなった。生成されたフィルムは、光軸が基板に垂直な複屈折性であると結論付けられた。したがって、混合物の液晶はホメオトロピック配向された。
【0098】
LCP2層の面外遅延特性(Rth)を決定するために、生成したフィルムを偏光計(AxoScan、Axometrics製)で評価した。その結果、Rth=-306nmという値が決定された。
【0099】
次いで、溶液S-LCP1を、バーコーティング(kバー1、速度8)によってLCP2層上に直接コーティングし、オーブン内、50℃で2分間アニールした。最後に、N2雰囲気下で1.5J/cm2のUVA光に曝露することによってフィルムを架橋した。
【0100】
交差偏光子間でフィルムを再び目視観察した。ここで、フィルムは、偏光子に関して基材の方位角とは無関係に明るく見えることが分かった。しかし、一軸配列の代わりに、シュリーレン組織が観察され、これは、ホメオトロピックLCP2層によって好ましい方位角配列が提供されなかったことを意味する。したがって、LCP1層の液晶は配向しなかった。
【0101】
実施例3、パターン化リターダ
実施例1と同様に、プラズマ処理されたCOPフィルムを基材として使用した。COP基質を、溶液S-PAPC3でKbarコーティング(バーサイズ1)し、オーブン内、50℃で5分間アニールした。
【0102】
2段階曝露プロセスによって、PAPC3層の表面に配向パターンを生成した。第1のステップにおいて、PAPC3層を、不透明で透過領域を有するフォトマスクを介して、基板の基準縁部に対して0°の偏光方向で、N2雰囲気下、1000mJ/cm2の平行直線偏光UVB光に曝露した。第2のステップにおいて、PAPC3層を、フォトマスクなしに、基板の基準縁部に対して45°の偏光方向で、N2雰囲気下、500mJ/cm2の平行直線偏光UVB光に曝露した。
【0103】
次いで、交差偏光子間でフィルムを目視観察した。基材に対して垂直に見ると、フィルムは、偏光子に対する基材の方位角とは無関係に暗く見えることが分かった。しかしながら、斜めの角度で観察すると、フィルムは明るくなった。生成されたフィルムは、光軸が基板に垂直な複屈折性であると結論付けられた。したがって、混合物の液晶はホメオトロピック配向された。
【0104】
曝露したPAPC3層の上に、KBarコーティング(バーサイズ1)によって、LCP溶液S-LCP1から層を形成した。オーブン内、50℃で60秒間、湿潤膜をアニールして乾燥させ、続いて高圧水銀灯の光1500mJ/cm2を照射して窒素下、室温で架橋させた。交差偏光子を通してフィルムを観察すると、パターン化リターダとして作用することが分かった。基材の基準縁部が、いずれかの交差偏光子の偏光方向と一致するようにフィルムを回転させると、第1のステップで曝露した領域は暗く見える一方で、他の領域は明るくなる。装置を45°回転させると、2つの領域の外観が反転し、以前は暗い領域が明るくなり、以前は明るい領域が暗くなる。
【0105】
実施例4、パターン化偏光子
PAPC3層を、プラズマ処理されたCOP上にコーティングし、アニールし、乾燥させ、直線偏光UVB光の偏光方向について0°及び90°が選択される(0°及び45°の代わりに)ことを除いて、実施例3と同様に曝露した。
【0106】
曝露したPAPC3層の上に、KBarコーティング(バーサイズ3)によって、溶液S-dLCPから層を形成した。オーブン内、95℃で120秒間、湿潤膜をアニールして乾燥させ、続いて高圧水銀灯の光1500mJ/cm2を照射して、窒素下、室温で架橋させた。
【0107】
偏光子を通してフィルムを観察すると、パターン化偏光子として作用することが分かった。基材の基準縁部が偏光子の吸収軸と一致するようにフィルムを回転させると、第1のステップで曝露した領域は明るく見える一方、他の領域は暗くなる。装置を90°回転させると、2つの領域の外観が反転し、以前は暗い領域が明るくなり、以前は明るい領域が暗くなる。
【0108】
実施例5、コレステリックデバイス
実施例1と同様に、プラズマ処理されたCOPフィルムを基材として使用した。COP基質を、溶液S-PAPC3でKbarコーティング(バーサイズ1)し、オーブン内、50℃で5分間アニールした。
【0109】
N2雰囲気下、室温で、1000mJ/cm2の直線偏光UVB光にフィルムを曝露した。
【0110】
曝露したPAPC3層の上に、KBarコーティング(バーサイズ1)によって、コレステリックLCP溶液S-cLCPから層を形成した。オーブン内、99℃で60秒間、湿潤膜をアニールして乾燥させ、続いて高圧水銀灯の光1500mJ/cm2を照射して窒素下、室温で架橋させた。フィルムは、十分に配列したコレステリックフィルムとして作用し、反射において青色着色を示すことが分かった。フィルムを斜め入射で見ると、赤方偏移を示す。
本発明及び異なる実施形態は、以下の条項によって要約することができる。
1.光配向性のポジティブc-プレートリターダを含む光学素子(1、2)を製造する方法であって、
ホメオトロピック配向性の重合性液晶及び光配列性物質を含む、PAPC材料組成物を提供するステップと、
支持体(11)上にPAPC材料の層(12)を形成するステップであって、液晶分子がホメオトロピック配列される、ステップと、
PAPC層内で重合性液晶の重合を開始するステップと、
PAPC層(12)を配向光に曝露して、スレーブ材料用の層の上面に配向を生成するステップであって、生成された配向方向は、上面の少なくとも一領域において、PAPC層表面に対して平面的であるか、又は傾斜している、ステップと、
を含む方法。
2.重合性液晶の重合が、PAPC層(12)が配向光に曝露される前に開始される、条項1に記載の方法。
3.重合性液晶の重合が、PAPC層(12)が配向光に曝露される後に開始される、条項1に記載の方法。
4.重合性液晶の重合及び配向の生成が、PAPC層(12)を配向光に曝露する単一のステップで開始される、条項1に記載の方法。
5.PAPC層中の光配列性物質が、光配列性物質の濃度が層の中央よりもPAPC層の上面で高くなるような密度勾配を有する、条項1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.光配列性物質が、フッ素化及び/又はシロキサン部分を含み、及び/又はポリシロキサンである、条項1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.追加のステップにおいて、スレーブ材料が、PAPC層の上部に、直接接触して塗布される、条項1~6のいずれか一項に記載の方法。
8.PAPC層(12)を含む層構造(1、2)であって、
該層構造は、重合された液晶モノマーを含み、
該重合された液晶モノマーは、ホメオトロピックに配向され、かつ、その表面上に配向能力を提供し、
該配向能力は、PAPC層の表面に対して平面的に、又は傾斜してスレーブ材料を配向させることができる、層構造(1、2)。
9.PAPC層(12)中の光配列性物質は、光配列性物質の濃度が層の中央よりもPAPC層の上面で高くなるような密度勾配を有する、条項8に記載の層構造。
10.光配列性物質が、フッ素化及び/又はシロキサン部分を含み、及び/又はポリシロキサンである、条項8又は9に記載の層構造。
11.PAPC材料が二色性色素を含む、条項8~10のいずれか一項に記載の層構造。
12.PAPC層と直接接触する追加の異方性層(13)を有し、前記追加の層が液晶ポリマーを含み、前記追加の層の液晶ポリマーが、PAPC層の配向情報に従って配向されている、条項8~11のいずれか一項に記載の層構造。
13.前記PAPC層(12)が、ポジティブc-プレートリターダとして作用し、前記液晶ポリマーを含む追加の層が、平面リターダとして作用する、条項12に記載の層構造。
14.ホメオトロピック配向性の重合性液晶、及び光配列性物質を含む組成物であって、光配列性物質の重量パーセントが、溶媒を含まない組成物に対して、5%未満、1重量%未満、又はさらに0.1重量%未満であり、光配列性物質が、フッ素化及び/又はシロキサン部分を含み、及び/又はポリシロキサンである、組成物。
15.光配列性物質がポリマーであり、側鎖にフッ素化部分を含む、条項14に記載の組成物。
【国際調査報告】