(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】リアルタイムアプリケーショントラフィックのための競合衝突回避
(51)【国際特許分類】
H04W 74/02 20090101AFI20220915BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20220915BHJP
【FI】
H04W74/02
H04W84/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504259
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 IB2020056488
(87)【国際公開番号】W WO2021014263
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】シン リャンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】アブエルサウード モハメド
(72)【発明者】
【氏名】迫田 和之
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA14
5K067DD34
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックと非RTAトラフィックとが共存するキャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)をサポートする無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)を介して動作する無線通信回路。リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックを送信するためのチャネル時間を、RTAパケットの予想到着時間に基づいてスケジュールし、このスケジュールを近隣局と共有する。チャネルを求めて競合する複数のRTAトラフィックのチャネル競合衝突を防ぐために、近隣局のスケジュールに基づいてスケジュール時間を調整する。チャネルアクセス遅延時間及び競合衝突を低減しながらRTA送信をサポートする様々な機構について説明する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークにおける無線通信装置であって、
(a)自機の受信エリア内のローカルエリアネットワーク(WLAN)上の少なくとも1つの他の無線局と少なくとも1つのチャネルを介して無線で通信するように構成された無線通信回路と、
(b)前記WLAN上で動作するように構成された局内の、前記無線通信回路に結合されたプロセッサと、
(c)前記プロセッサが実行できる命令を記憶した非一時的メモリと、
を備え、
(d)前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、
(i)リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックと非RTAトラフィックとが共存するキャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)をサポートするネットワークを介した通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケットの通信及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするように構成されたWLAN局として前記無線通信回路を動作させることと、
(ii)リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、
(iv)予想されるRTAパケット到着時間に基づいて、リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックを送信するためのチャネル時間をスケジュールすることと、
(v)スケジュールされたチャネル時間情報を近隣無線局と共有することと、
(vi)複数のRTAトラフィックが前記チャネルを求めて競合している時にチャネル競合衝突を防ぐために、近隣無線局の少なくとも1つの前記スケジュールされたチャネル時間に基づいて、スケジュールされたチャネル時間を調整することと、
を含むステップを実行する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記命令は、リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別するように前記プロセッサによって実行された時に、事前ネゴシエーション情報又はパケットヘッダ情報を使用することに応答してRTAトラフィックと非RTAトラフィックとを区別することを含むステップをさらに実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、前記無線局がアクセスポイント(AP)として動作し、スケジュールされたチャネル時間情報をそのビーコンにおいて発行して、前記スケジュールされたチャネル時間を自機の近隣無線局に広告することを含むステップをさらに実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、近隣無線局のスケジュールされたチャネル時間を受け取り、前記情報を前記無線局のBSSのタイミング同期機能(TSF)において解析することを含むステップをさらに実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、RTAトラフィックを送信するためのチャネル時間をスケジュールする前記プロセス中に、RTAパケット送信のための前記スケジュールされたチャネル時間中に非RTAパケットの送信を控えることを含むステップをさらに実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、チャネル競合衝突を回避しながら前記チャネルのための競合をいつ開始すべきであるかを決定するためにRTA内部タイマを利用することを含むステップをさらに実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記命令は、RTA内部タイマを利用する前記プロセッサによって実行された時に、前記RTAパケットの前記目標遅延時間に基づいて前記RTA内部時間をランダム化することをさらに含む、
請求項7に記載の装置。
【請求項8】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、短い送信機動作期間(TXOP)で送信要求(RTS)形態のシグナリングを利用して、RTAパケット送信のための将来的なチャネル時間を予約することを含むステップをさらに実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
ネットワークにおける無線通信装置であって、
(a)自機の受信エリア内のローカルエリアネットワーク(WLAN)上の少なくとも1つの他の無線局と少なくとも1つのチャネルを介して無線で通信するように構成された無線通信回路と、
(b)前記WLAN上で動作するように構成された局内の、前記無線通信回路に結合されたプロセッサと、
(c)前記プロセッサが実行できる命令を記憶した非一時的メモリと、
を備え、
(d)前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、
(i)リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックと非RTAトラフィックとが共存するキャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)をサポートするネットワークを介した通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケットの通信及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするように構成されたWLAN局として前記無線通信回路を動作させることと、
(ii)事前ネゴシエーション情報又はパケットヘッダ情報を使用することに応答して、リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、
(iv)予想されるRTAパケット到着時間に基づいて、リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックを送信するためのチャネル時間をスケジュールすることと、
(v)スケジュールされたチャネル時間情報を近隣無線局と共有することと、
(vi)複数のRTAトラフィックが前記チャネルを求めて競合している時にチャネル競合衝突を防ぐために、近隣無線局の少なくとも1つの前記スケジュールされたチャネル時間に基づいて、スケジュールされたチャネル時間を調整することと、
(vii)RTAトラフィック送信のためのチャネル時間をスケジュールする前記プロセス中に、RTAパケット送信のための前記スケジュールされたチャネル時間中に非RTAパケットの送信を控えることと、
を含むステップを実行する、
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、前記無線局がアクセスポイント(AP)として動作し、スケジュールされたチャネル時間情報をそのビーコンにおいて発行して、前記スケジュールされたチャネル時間を自機の近隣無線局に広告することを含むステップをさらに実行する、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、近隣無線局のスケジュールされたチャネル時間を受け取り、前記情報を前記無線局のBSSのタイミング同期機能(TSF)において解析することを含むステップをさらに実行する、
請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、チャネル競合衝突を回避しながら前記チャネルのための競合をいつ開始すべきであるかを決定するためにRTA内部タイマを利用することを含むステップをさらに実行する、
請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記命令は、RTA内部タイマを利用する前記プロセッサによって実行された時に、前記RTAパケットの前記目標遅延時間に基づいて前記RTA内部時間をランダム化することをさらに含む、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、短い送信機動作期間(TXOP)で送信要求(RTS)形態のシグナリングを利用して、RTAパケット送信のための将来的なチャネル時間を予約することを含むステップをさらに実行する、
請求項9に記載の装置。
【請求項15】
ネットワークにおける無線通信の実行方法であって、前記装置は、
(a)リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックと非RTAトラフィックとが共存するキャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)をサポートするネットワークを介した通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケットの通信及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするように構成されたWLAN局として無線通信回路を動作させることと、
(b)リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、
(c)予想されるRTAパケット到着時間に基づいて、リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックを送信するためのチャネル時間をスケジュールすることと、
(d)スケジュールされたチャネル時間情報を近隣無線局と共有することと、
(e)複数のRTAトラフィックが前記チャネルを求めて競合している時にチャネル競合衝突を防ぐために、近隣無線局の少なくとも1つの前記スケジュールされたチャネル時間に基づいて、スケジュールされたチャネル時間を調整することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
事前ネゴシエーション情報又はパケットヘッダ情報を使用することに応答して、RTAトラフィックと非RTAトラフィックとを区別することをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記無線局がアクセスポイント(AP)として動作し、スケジュールされたチャネル時間情報をそのビーコンにおいて発行して、前記スケジュールされたチャネル時間を自機の近隣無線局に広告することを含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
近隣無線局のスケジュールされたチャネル時間を受け取り、前記情報を前記無線局のBSSのタイミング同期機能(TSF)において解析することをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
RTAトラフィックを送信するためのチャネル時間をスケジュールする前記プロセス中に、RTAパケット送信のための前記スケジュールされたチャネル時間中に非RTAパケットの送信を控えることをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項20】
チャネル競合衝突を回避しながら前記チャネルのための競合をいつ開始すべきであるかを決定するためにRTA内部タイマを利用することをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記RTAパケットの前記目標遅延時間に基づいて前記RTA内部時間をランダム化することをさらに含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
短い送信機動作期間(TXOP)で送信要求(RTS)形態のシグナリングを利用して、RTAパケット送信のための将来的なチャネル時間を予約することをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2019年7月24日に出願された米国仮特許出願第62/878,190号に対する優先権及びその利益を主張するものであり、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
〔連邦政府が支援する研究又は開発に関する記述〕
該当なし
【0003】
〔コンピュータプログラム付属書の引用による組み入れ〕
該当なし
【0004】
〔著作権保護を受ける資料の通知〕
本特許文献中の資料の一部は、アメリカ合衆国及びその他の国の著作権法の下で著作権保護を受けることができる。著作権の権利所有者は、合衆国特許商標庁の一般公開ファイル又は記録内に表される通りに第三者が特許文献又は特許開示を複製することには異議を唱えないが、それ以外は全ての著作権を留保する。著作権所有者は、限定ではないが米国特許法施行規則§1.14に従う権利を含め、本特許文献を秘密裏に保持しておく権利のいずれも本明細書によって放棄するものではない。
【0005】
本開示の技術は、一般に無線通信局に関し、具体的には、リアルタイムトラフィックと非リアルタイムトラフィックとの組み合わせを通信する無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)局に関する。
【背景技術】
【0006】
キャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)を利用する現在の無線システムは、ネットワーク全体の高スループットには重点を置いているが、リアルタイムアプリケーション(RTA)を適切にサポートする低遅延能力に欠けている。
【0007】
RTAは低遅延通信を必要とし、最善努力型通信を使用する。RTAから生成されるデータはRTAトラフィックと呼ばれ、送信側局(STA)においてRTAパケットとしてパケット化されるのに対し、非時間依存アプリケーションから生成されるデータは非RTAトラフィックと呼ばれ、送信側STAにおいて非RTAパケットとしてパケット化される。これらのRTAパケットは、一定期間内に配信できる場合にのみ有効であるため、パケット配信に対する高適時性要件(リアルタイム)に起因して低遅延時間を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
STAは、ランダムチャネルアクセスシナリオに起因して、各パケットを送信する前にチャネルアクセスを検知し、これを求めて競合する必要がある。短いチャネル競合時間を取得すればチャネルアクセスは加速するが、パケット衝突の可能性が高くなってしまう。パケット衝突に固有の遅延は、各再送に必要とされるチャネル競合時間に起因して依然として有意である。STAは、パケット衝突を回避してパケット配信成功率を高めるために、パケット衝突後のさらに長いチャネル競合期間の後にパケットを再送し、これによってパケットがさらに遅延する。
【0009】
上記の点から、CSMA/CAシステム又は同様の機構を利用する無線ネットワーク内には、時間依存的なRTAパケットを通信することに伴う著しい遅延時間が存在することが分かる。
【0010】
従って、リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットの取り扱いを強化してパケット遅延時間を大幅に低減するというニーズが存在する。本開示は、このニーズを満たすとともに、これまでの技術を凌駕するさらなる利点をもたらすものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
トラフィックと非RTAトラフィックとが共存するキャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)及び同様の機構をサポートしながら無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)を介して通信するためのリアルタイムアプリケーション(RTA)無線通信回路、方法及びプロトコル。近隣局とスケジューリング情報を共有することで、リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックを送信するためのチャネル時間が、予想されるRTAパケット到着時間に基づいてスケジュールされる。スケジュール時間は、チャネルを求めて競合する複数のRTAトラフィックのチャネル競合衝突を防ぐように、近隣局のスケジュールに基づいて調整される。
【0012】
本開示のRTAパケットは、非RTAパケットよりも高い優先度を有する一方で、RTAパケット自体が優先度ランキングを有しており、優先度の高いパケットの方が優先度の低いRTAパケットよりも早く送信される。このことは、全てのパケット送信間に公平なアクセスを提供することを目的とするCSMA/CAのランダムチャネルアクセススキームに反する。従来のCSMA/CAは、STA間の協調が存在しないような分散型チャネルアクセス機構であり、これによって複数のSTAが同時にチャネルを求めて競合する確率が高くなり、従って競合衝突が生じることによって再送が必要になる。
【0013】
上記に照らして、本開示の装置、方法及びプロトコルは、RTAパケット送信中に遅延時間を低減して衝突を抑えることができる。
【0014】
本明細書の以下の部分では、本明細書で説明する技術のさらなる態様が明らかになり、この詳細な説明は、本技術の好ましい実施形態を制限することなく完全に開示するためのものである。
【0015】
本明細書で説明する技術は、例示のみを目的とする以下の図面を参照することによって十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】CSMA/CAにおける競合ベースチャネルアクセスのフロー図である。
【
図2】RTS/CTSが使用できないCSMA/CAにおけるランダムチャネルアクセスの通信シーケンス図である。
【
図3】送信要求(Request To Send:RTS)フレームのデータフィールド図である。
【
図4】送信可(Clear To Send:CTS)フレームのデータフィールド図である。
【
図5】局がCSMA/CAにおいてRTS/CTS交換を使用することによってチャネルを占有する通信シーケンス図である。
【
図6】本開示の少なくとも1つの実施形態による局(STA)ハードウェアのブロック図である。
【
図7】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って対応されるトポロジ例を示すネットワークトポロジ図である。
【
図8】本開示の少なくとも1つの実施形態による、開放型システム間相互接続(OSI)モデルにおけるRTA及び非RTAトラフィック通信の階層的通信図である。
【
図9】本開示の少なくとも1つの実施形態による、RTAトラフィック通信の事前ネゴシエーションを示す階層的通信図である。
【
図10】本開示の少なくとも1つの実施形態による、送信側のRTAパケットトラフィックを識別するフロー図である。
【
図11】本開示の少なくとも1つの実施形態によるRTAセッション識別情報のデータフィールド図である。
【
図12】本開示の少なくとも1つの実施形態によるヘッダ情報交換の階層的通信図である。
【
図13】本開示の少なくとも1つの実施形態による、受信側のMAC層においてRTAパケットを識別するフロー図である。
【
図14】本開示の少なくとも1つの実施形態による、パケット有効期限の満了に起因してRTAパケットが破棄される通信シーケンス図である。
【
図15】本開示の少なくとも1つの実施形態によるRTAセッション情報のデータフィールド図である。
【
図16】本開示の少なくとも1つの実施形態によるRTA要求開始要求フレームのデータフィールド図である。
【
図17】本開示の少なくとも1つの実施形態によるRTA要求開始応答フレームのデータフィールド図である。
【
図18】本開示の少なくとも1つの実施形態によるRTAセッション開始確認応答(ACK)フレームのデータフィールド図である。
【
図19】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、MAC層の視点からRTAセッションを開始する通信交換図である。
【
図20】本開示の少なくとも1つの実施形態による局間のRTAセッション開始の通信交換図である。
【
図21】本開示の少なくとも1つの実施形態によるリソースブロックの空間、時間周波数図である。
【
図22】本開示の少なくとも1つの実施形態によるRTAビーコンフレームフォーマットのデータフィールド図である。
【
図23】本開示の少なくとも1つの実施形態による、1つのBSS内のAP及びSTAがRTA-SPを実行する、1つのビーコン間隔中にAPがどのようにRTA-SPを調整するかについてのフロー図である。
【
図24】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STAがRTA機能をサポートしているかどうかに応じてAPがSTAに対してチャネル周波数を分離するフロー図である。
【
図25】本開示の少なくとも1つの実施形態による、非RTA送信のみをサポートしている局のチャネル切り替えの通信交換図である。
【
図26】本開示の少なくとも1つの実施形態による、RTA及び非RTAパケット送信のチャネル割り当ての通信交換図である。
【
図27】本開示の少なくとも1つの実施形態によるRTAチャネル割り当て告知フレームのデータフィールド図である。
【
図28】本開示の少なくとも1つの実施形態による、APが1つのチャネルしか操作できない時に実行されるチャネル周波数分離法の通信シーケンス図である。
【
図29】本開示の少なくとも1つの実施形態による、APが複数のチャネルを操作できる時に実行されるチャネル周波数分離法の通信シーケンス図である。
【
図30】本開示の少なくとも1つの実施形態によるアップリンク送信管理のフロー図である。
【
図31】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行されるCBAP中のパケット送信フォーマットの通信シーケンス図である。
【
図32】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って利用されるRTA-SP中のパケット送信フォーマットの通信シーケンス図である。
【
図33】本開示の少なくとも1つの実施形態によるRTA quietフレームのデータフィールド図である。
【
図34】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って利用される、APがSTAをquietに設定するためにRTA quietフレームを送信する通信交換図である。
【
図35】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って利用される、トラフィックタイプに基づくSTA内の節電モード設定の通信シーケンス図である。
【
図36】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って利用される、複数のRTA-SP中にRTAパケット送信間の競合衝突を避けるために一定の競合ウィンドウサイズを使用する通信シーケンス図である。
【
図37】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って利用される、複数のRTA-SP中にRTAパケット送信間の競合衝突を避けるために動的競合ウィンドウサイズを使用する通信シーケンス図である。
【
図38】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って利用される、複数のRTA-SP中の全てのTXOPにおいてチャネルアクセスのために再競合することによる衝突回避の通信シーケンス図である。
【
図39】本開示の少なくとも1つの実施形態によるRTA-RTSフレームフォーマットのデータフィールド図である。
【
図40】本開示の少なくとも1つの実施形態によるRTA-CTSフレームフォーマットのデータフィールド図である。
【
図41】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、AP及びSTAがRTA-SPにわたって予めチャネルを占有するためにRTA-RTS/CTS交換を使用する通信シーケンス図であって、APがSTAにRTA-RTSフレームを送信する場合を示す図である。
【
図42】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って利用される、2つのSTA(非AP)がRTA-SPにわたって予めチャネルを占有するためにRTA-RTS/CTS交換を使用する通信シーケンス図である。
【
図43】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って利用される、2つのSTA(非AP)がRTA-SPにわたって予めチャネルを占有するためにRTA-RTS/CTS交換を使用する第2の例の通信シーケンス図である。
【
図44】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って利用される、将来的なチャネル時間予約のみのためにRTA-CTSを使用する通信シーケンス図である。
【
図45】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って利用される、STAがRTA-SPにわたって予めチャネルを占有するために通常のRTSフレームを送信する通信シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.従来のWLANシステム
1.1.ランダムチャネルアクセススキーム
従来、IEEE802.11ax以前までなどの無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)は、局(STA)がパケット送信及び再送のためにチャネルにランダムアクセスできるようにキャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)機構を使用している。
【0018】
図1に、CSMA/CAにおける競合ベースチャネルアクセスを示す。CSMA/CAシステムでは、送信すべきデータが存在する時にSTAが送信のためのチャネルを検知する。STAは、各送信及び再送前にチャネルを検知し、チャネルアクセスを求めて競合するためにバックオフ時間を設定する必要がある。バックオフ時間は、ゼロと競合ウィンドウ(CW)のサイズとの間の一様なランダム変数によって決定される。
【0019】
STAは、バックオフ時間にわたって待機し、チャネルがアイドルである(占有されていない)ことを検知した後に、チャネル占有を確実にするために送信準備(RTS)フレームを送信すべきであるか否かを決定する。STAがRTSフレームを送信した場合には、送信可(CTS)フレームを受け取った時点でチャネル占有が確実になり、これによってパケットを送信する。STAは、RTSフレームを送信しない場合には直接パケットを送信する。RTSフレームの送信後にCTSフレームが受け取られなかった場合、或いはタイムアウト前にSTAが確認応答(ACK)を受け取らなかった場合には再送が必要である。そうでなければ、送信は成功する。再送が必要である場合、STAはパケットの再送回数をチェックする。再送回数が再試行制限を上回る場合、パケットは破棄されて再送はスケジュールされない。そうでなければ、再送がスケジュールされる。再送がスケジュールされる場合には、この再送のチャネルアクセスを求めて競合するために別のバックオフ時間が必要になる。競合ウィンドウのサイズが上限に達していない場合には、STAが競合ウィンドウのサイズを増やす。STAは、新たな競合ウィンドウのサイズに応じて別のバックオフ時間を設定する。STAは、再送のためのバックオフ時間にわたって待機し、以下同様である。
【0020】
図2に、RTS/CTSが使用できない場合のCSMA/CAにおけるランダムチャネルアクセスの一例を示す。なお、CSMA/CAに関する802.11標準は、OSIネットワーキングスタックにおける2つの最低水準を利用し、これらは物理(PHY)層及び媒体アクセス制御(MAC)層である。送信側STAのMAC層がその上位層からデータを受け取ると、送信側STAは、アクセス権を獲得するためにチャネルを求めて競合する。送信側STAは、チャネルを求めて競合する際に、競合ウィンドウのサイズがnスロットであってゼロまでカウントダウンするバックオフ時間まで待つ必要がある。このカウントダウンプロセスは、そのチャネルを介して他のパケット送信が発生している時に使用中を示すクリアチャネル評価(CCA)などによって中断される。送信側STAは、データを送信するためのチャネルアクセス権を獲得した後に、このデータをパケットにパケット化し、チャネルを介してパケットを送信する。図示のように、初期パケット送信が成功しなかった場合にはパケットの再送が実行される。送信側STAは、チャネルアクセスを求めて競合するために再びバックオフ時間を設定する。今回は、再送に起因して競合ウィンドウのサイズが2倍の2*nスロットである。この競合ウィンドウサイズによって予想バックオフ時間も2倍になる。バックオフ時間が増加すると、他のパケット送信によってカウントダウンプロセスが中断される(すなわち、CCA使用中の)可能性も高くなる。
【0021】
1.2.RTS/CTSによるチャネル占有
CSMA/CAでは、STAが、特に隠れノード問題(状況)において他のノードによる干渉からパケット送信を保護するRTS/CTS交換を使用することによってチャネルを占有することができる。
【0022】
図3に、RTSフレームの内容を示す。フレーム制御(frame control)フィールドは、フレームのタイプを示す。継続時間(duration)フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるネットワーク割り当てベクトル(NAV)情報を含む。受信者アドレス(Recipient Address:RA)フィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。送信者アドレス(Transmitter Address:TA)フィールドは、フレームを送信した局のアドレスを含む。
【0023】
図4に、CTSフレームの内容を示す。フレーム制御フィールドは、フレームのタイプを示す。継続時間フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。
【0024】
図5に、CSMA/CAにおいて局がRTA/CTS交換を使用することによってどのようにチャネルを占有するかについて説明する例を示す。送信側STAは、パケットを送信する前に、最初にパケット送信のためのチャネル占有時間を要求するRTSフレームを送信する。受信側STAは、RTSフレームを受け取ると、送信側STAにCTSフレームを返送して、パケット送信のためにチャネル占有時間が予約されたことを報告することができる。RTS及びCTSフレームを受け取った他のSTAは、この時間を予約するようにネットワーク割り当てベクトル(NAV)を設定し、従って他のSTAは、NAVによって設定された期間中に一切のパケットを送信しない。
【0025】
2.課題の記述
CSMA/CAを使用する現在の無線通信システムは、RTAパケットと非RTAパケットとを識別又は区別することも、RTAトラフィックのために特定のチャネル時間を予約することもない。CSMA/CAの下では、全てのパケットが同じランダムチャネルアクセススキームを使用しなければならない。CSMA/CAにおけるランダムチャネルアクセススキームは、RTAパケット送信のためのチャネル時間を保証することができない。CSMA/CAは、MAC層にデータが到着した後にチャネルアクセスを手配する。ほとんどの場合、データは待ち行列内で送信されるのを待つ必要があり、これによってパケット送信のための待ち行列遅延が発生する。
【0026】
一方で、本開示におけるRTAパケットは、非RTAパケットよりも高い優先度を有する。また、RTAパケット内では、優先度の高いRTAパケットが優先度の低いRTAパケットよりも早く送信されるように構成される。しかしながら、CSMA/CAにおけるランダムチャネルアクセススキームは、優先度の低いパケットが優先度の高いパケットよりも早く送信される機会を平等に有するように、全てのパケット送信間の公平なアクセスを目的としている。CSMA/CAにおけるRTS/CTS交換は、他の全てのSTAにNAVを設定してquiet状態を保つように強いる。この設計は、2つのSTA間のパケット送信を他のSTAによる干渉から保護するが、より重要な送信すべきデータを有している可能性がある他のSTAへのチャネルアクセスを妨げてしまう。
【0027】
従来のCSMA/CAは、STA間の協調が存在しないような分散型チャネルアクセス機構であり、これによって複数のSTAが同時にチャネルを求めて競合する確率が高くなり、従って競合衝突が生じる。チャネル競合衝突が発生するとパケット送信が破損し、従って修復のためにパケットの再送が必要になる。また、従来のWLAN実装によれば、STAは各再送において次第に長くなる競合ウィンドウを使用してチャネルを求めて競合する必要があり、これによってもパケット送信に著しい遅延が加わる。CSMA/CAにおけるランダムチャネルアクセススキームは、RTS/CTSを使用してチャネル競合衝突を回避する。しかしながら、RTS/CTSは、STAのMAC層にパケットが到着し、従って2つの近隣APが同じチャネル時間をパケット送信のためにスケジュールできるようになった後にしか利用することができない。これらのAPが定期的に同じチャネル時間をスケジュールし続けた場合、長期にわたって競合衝突が発生する恐れがある。
【0028】
3.本開示の寄与
開示する技術を利用することにより、STAは、RTAパケットと非RTAパケットとを識別して区別することができる。開示する技術は、STAがそのMAC層におけるRTAトラフィックの到着時点を認識し、将来的なチャネル時間をRTAトラフィック送信のためにスケジュールすることを可能にする。開示する技術は、STAがRTAトラフィック送信のためのチャネルスケジューリングを互いに共有できるようにする。各STAは、RTAトラフィック送信のためにスケジュールされた自機のチャネル時間を、チャネル競合衝突を回避するように調整することができる。開示する技術は、複数のSTAがチャネルを求めて競合すると分かっている時に、STAがチャネル競合衝突の確率を低下させる複数の方法を使用することを可能にする。開示する技術は、STAがRTAパケットの到着前にチャネルを占有することを可能にする。RTAパケットが到着すると、STAは、チャネルのために競合することなくパケットを送信することができる。開示する技術は、レガシーCSMA/CA装置との後方互換性を有するようにも構成される。
【0029】
4.実施形態例
4.1.STAハードウェア構成
図6に、STAにセンサ及びアクチュエータなどへの外部I/OをもたらすI/O経路12に結合されたバス14にコンピュータプロセッサ(CPU)16及びメモリ(RAM)18結合されたハードウェアブロック13内へのI/O経路12を示す、STAハードウェア構成の実施形態例10を示す。プロセッサ16上では、STAが「新規STA」(ネットワークに参加しようと試みる局)又は既にネットワーク内に存在するSTAのうちの1つの機能を実行できるように、通信プロトコルを実装するプログラムを実行するための、メモリ18からの命令が実行される。また、このプログラミングは、現在の通信状況でどのような役割を果たしているかに応じて異なるモード(送信元、中間、宛先、アクセスポイント(AP)及びRTA局など)で動作するように構成されると理解されたい。
【0030】
STAは、単一のモデム及び単一の無線周波数(RF)回路を含むように構成することも、或いは限定ではなく一例として図示のように複数のモデム及び複数のRF回路を含むように構成することもできる。
【0031】
この例では、ホストマシンが、近隣STAとの間でフレームを送受信する複数のアンテナ24a~24n、26a~26n、28a~28nへの無線周波数(RF)回路22a、22b、22cに結合されたミリメートル波(mmW)モデム20を含むように構成されていることが分かる。また、このホストマシンは、(単複の)アンテナ34への無線周波数(RF)回路32に結合されたsub-6GHzモデム30を含むことも分かるが、この第2の通信経路は、本開示を実装するために絶対的に必要というわけではない。
【0032】
従って、このホストマシンは、2つの異なる帯域で通信を行えるように、2つのモデム(マルチバンド)及びその関連するRF回路を含むように構成されていることが分かる。限定ではなく一例として、対象の指向性通信帯には、mmW帯でデータを送受信できるようにミリメートル波(mmW)帯モデム及びその関連するRF回路が実装される。一般に発見帯と呼ばれる他方の帯域は、sub-6GHz帯でデータを送受信できるようにsub-6GHzモデム及びその関連するRF回路を含む。
【0033】
この例では、mmW帯のためのRF回路を3つ示しているが、本開示の実施形態は、所望の周波数帯又はその範囲内のいずれかの任意の数のRF回路に結合されたモデム20を含むように構成することができる。一般に、使用するRF回路の数が多ければ多いほど、アンテナビーム方向のカバレッジが広くなる。なお、利用するRF回路の数及びアンテナの数は、特定の装置のハードウェア制約によって決まると理解されたい。RF回路及びアンテナの中には、STAが近隣STAと通信する必要がないと判断した時に無効にできるものもある。少なくとも1つの実施形態では、RF回路が、周波数変換器及びアレイアンテナコントローラなどを含み、送受信のためにビームフォーミングを実行するように制御される複数のアンテナに接続される。このように、STAは、複数のビームパターンの組を使用して信号を送信することができ、各ビームパターン方向がアンテナセクタとみなされる。
【0034】
従って、ホストマシンは、近隣STAとの間でデータフレームを送信/受信するモデムを収容することが分かる。モデムは、物理信号の生成及び受信を行う少なくとも1つのRFモジュールに接続される。(単複の)RFモジュールは、送受信のためにビームフォーミングを実行するように制御される複数のアンテナに接続される。このように、STAは、複数組のビームパターンを使用して信号を送信することができる。
【0035】
4.2.検討されるSTAトポロジ例
図7に、開示する技術の目的を説明するのに役立つものとしてのネットワークトポロジ例(シナリオ)50を示す。限定ではなく一例として、この例では、本明細書では部屋として例示する所与のエリア68内に2つの基本サービスセット(BSS)から成る8つのSTAが存在するものと想定する。各STAは、同じBSS内の他のSTAと通信することができる。全てのSTAは、ランダムチャネルアクセスのためにCSMA/CAを使用する。第1のBSSには、アクセスポイント(AP)として動作するSTA0 52と、非AP局STA1 54、STA2 56、STA3 58及びSTA4 60とを示す。第2のBSSには、APであるSTA5 62と、STA6 64、STA7 66とを示す。
【0036】
図7に示すように、STA1は、CSMA/CAを使用して全てのパケットを送信するレガシーSTAである。すなわち、このSTAには開示する技術が適用されない。この例の他の全てのSTAは、低遅延通信を必要とするアプリケーション、及び最善努力型通信を利用するアプリケーションの両方をサポートしていると考えられる。低遅延通信を必要とするアプリケーションから生成されるデータはリアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックと呼ばれ、送信側STAにおいてRTAパケットとしてパケット化される。また、非時間依存アプリケーションから生成されるデータは非RTAトラフィックと呼ばれ、送信側STAにおいて非RTAパケットとしてパケット化される。この結果、送信側STAは、RTAトラフィック及び非RTAトラフィックの両方を通信のために生成する。このネットワークトポロジ例の図には、STAの位置及びその送信リンクを示す。
【0037】
STAは、非RTAパケットを送信する際には通常のCSMA/CAスキームに従うことができる。STAは、RTAパケットを送信する際には、予め送信のためのチャネル時間をスケジュールする。開示する技術の1つの目的は、RTAトラフィックの遅延時間を低減することである。
【0038】
4.3.STA層モデル
図8に、一般に開放型システム間相互接続(OSI)モデルに従うRTA及び非RTAトラフィック通信の実施形態例70を示す。OSIモデルには、アプリケーション層、トランスポート層、ネットワーク層(IP)、データリンク層(MAC)及び物理層(PHY)が存在する。本開示では、トランスポート層及びネットワーク層を単に中間の層と呼び、説明するプロトコル(例えば、提案されるIEEE802.11変種/標準)はMAC層及びPHY層を利用する。
【0039】
この節では、トラフィック通信のためのSTA層モデルについて説明する。この例に示すように、STA1 72及びSTA2 74という2つのSTAは、RTAトラフィック及び非RTAトラフィック80、82を生成し、互いにRTAパケット84及び非RTAパケット86を通信する。以下、全体的プロセスについて説明する。
【0040】
RTAトラフィック及び非RTAトラフィックは、いずれもそれぞれの送信側STAのAPP層76a、78aによって生成される。送信側STAのAPP層は、中間の層76b、78bを介して(通じて)RTAトラフィック及び非RTAトラフィックをMAC層76c、78cに受け渡す。MAC層76c、78c及びPHY層76d、78dは、MACヘッダ及びPLCPヘッダ内のさらなる信号フィールドをパケットに添付し、これらのパケットがネットワークのPHY層を介して送信される。
【0041】
受信側STAは、これらのパケットをPHY層において受け取り、復号し、パケットが正しく復号された場合にはそのMAC層に送信し、その後に中間の層を通じて(介して)受信側STAのAPP層にデータが供給される。
【0042】
4.4.RTAパケットと非RTAパケットとを識別する機構
開示する技術は、無線通信システム内のパケットをRTAパケット又は非RTAパケットのいずれかとして分類する。RTAパケットは、開示する技術をパケット送信に使用するのに対し、非RTAパケットは、通常のCSMA/CAスキームを使用することができる。この目的のために、STAは、本節で説明するようにMAC層においてRTAパケットと非RTAパケットとを識別して区別する。
【0043】
図8に示すSTA層モデルによれば、送信側STAのMAC層は、上位層からのRTAトラフィックと非RTAトラフィックとを識別し、これらをそれぞれRTAパケット及び非RTAパケットにパケット化することができる。本節では、送信側STAが事前ネゴシエーションを使用してRTAトラフィックを識別する方法の詳細を示す。
【0044】
図8に示すSTA層モデルによれば、送信側STAは、ネットワークのPHY層を介して受信側STAにパケットを送信する。受信側STAは、MAC層においてパケットを受け取ると、MACヘッダ又は物理層収束プロトコル(PLCP)ヘッダに埋め込まれた情報に基づいて、RTAパケットと非RTAパケットとを識別することができる。本節では、受信側STAがPLCP又はMACヘッダ情報に基づいてRTAパケットを識別する方法の詳細を示す。
【0045】
RTAトラフィックは、データの有効性を保証するために所与の有効期限内に通信される必要がある。換言すれば、この有効期限の満了前にRTAトラフィックが受信側によって受け取られなかった場合、このRTAトラフィックは無効であり、廃棄することができる。STAは、PHY層を通じて送信するためにRTAトラフィックをRTAパケットにパケット化する。従って、RTAパケットは、その送信のための有効期限も有する。本節では、STAがRTAパケットの有効期限の満了にどのように対処するかについての詳細を示す。
【0046】
4.4.1.事前ネゴシエーション
多くの場合、リアルタイムアプリケーション(RTA)は、接続型通信と同様に定期的にトラフィックを生成する。STA間のアプリケーションによって確立されるRTA接続型通信は、RTAセッションと呼ばれる。STAは、ネットワーク内に複数のRTAセッションを有することができる。本開示による各STAは、これらのRTAセッションを適正に管理することができる。
【0047】
RTAセッションがRTAトラフィックの送信を開始する前には、接続を確立するために送信側STAと受信側STAとの間で事前ネゴシエーションが行われる。事前ネゴシエーション中、送信側STA及び受信側STAは、送信側のMAC層におけるRTAトラフィックと受信側のMAC層におけるRTAトラフィックとを識別するために使用できるRTAセッション識別情報を含むRTAセッションを記録する。
【0048】
図8に示すように、送信側においてAPP層がMAC層にトラフィックを受け渡すと、中間の層がトラフィックにヘッダ情報を追加する。送信側STAのMAC層は、上位層からトラフィックを受け取ると、上位層からヘッダ情報を抽出して、事前ネゴシエーションによって作成されたRTAセッション記録を調べる(検索する)。ヘッダ情報が記録内の1つのRTAセッションに一致した場合、このトラフィックはRTAであり、そうでなければこのトラフィックは非RTAであるとみなされる。テーブル1に、RTAトラフィックを識別するために使用できるヘッダ情報をリストする。本節では、事前ネゴシエーションの詳細について説明する。
【0049】
受信側STAは、事前ネゴシエーションの結果に従って、時間、周波数及びその他の指標などのパケット送信のチャネルリソースによってRTAパケットと非RTAパケットとを分類することもできる。RTAパケットのために許可されたチャネルリソースを使用してパケットが受け取られた場合、STAはこれをRTAパケットとして識別する。そうでなければ、このパケットは非RTAパケットである。このシナリオは、パケットがマルチユーザアップリンクモードで送信される際に使用される。
【0050】
図9に、送信側におけるRTAトラフィックパケット100及び受信側におけるパケット102のための送信側92と受信側94との間の事前ネゴシエーションの実施形態例90を示す。なお、1つの事前ネゴシエーションは1つのRTAセッションを確立し、このRTAセッションによって生成される全てのRTAパケットに使用することができると理解されたい。この図には、
図8に示すようなSTA層モデルにおける2つのSTA間でRTAセッションを確立するための事前ネゴシエーションを示す。図示のように、送信側STA92は、層APP96a、中間の層96b、MAC層96c及びPHY層96dを有し、受信側STA94は、同じ層APP98a、中間の層98b、MAC層98c及びPHY層98dを有する。以下、事前ネゴシエーションのプロセスについて説明する。
【0051】
図9を参照すると、以下のステップが見られる。送信側92のAPP層96aが、リソース(例えば、時間、チャネル)ネゴシエーションを要求する(104)。従って、送信側STAではAPP層がRTAセッションを開始し、そのRTAトラフィック送信のために、時間及び帯域幅などのチャネルリソースのネゴシエーションを要求する。このネゴシエーション要求は、APP層の管理エンティティからMAC層内に存在する管理エンティティに送信される。
【0052】
送信側STAのMAC層は、上位層からネゴシエーション要求を受け取って、送信側のリソースの利用可能性をチェックする(106)。また、送信側STAのMAC層は、上位層によって提供される、セッション内のRTAトラフィックを識別するためのRTAセッション識別情報を記録する。識別情報の記録は、テーブル1にリストされるTCP/UDPポート番号、サービスタイプなどの情報から選別(選択)することができる。リソースが利用できないような場合、送信側STAのMAC層は上位層からの要求を拒絶し、又は上位層と再ネゴシエートすることができる。
【0053】
送信側STAのMAC層は、利用可能なリソースを発見した場合、受信側STAのMAC層にネゴシエーション要求フレームを送信する(108)。このネゴシエーションフレームは、受信側が記録して後で使用できるようにRTAセッションの識別情報を含む。
【0054】
受信側STAのMAC層は、ネゴシエーション要求フレームを受け取った後に、MAC層内の管理エンティティからAPP層内の管理エンティティにネゴシエーション要求を送信することによって、そのAPP層にRTAパケットを受け取る準備を整えるように通知する(110)。APP層がRTA送信に利用可能でない場合、このネゴシエーションは失敗することがある。
【0055】
受信側のAPP層は、その層におけるリソースの利用可能性を許可し、この情報をAPP層内の管理層からMAC層内に存在する管理エンティティに送信する(112)。
【0056】
次に、受信側STAのMAC層は、受信側のリソース利用可能性をチェックする(114)。リソースが利用可能でない場合、MAC層は拒絶又は再ネゴシエートすることができる。受信側STAのMAC層は、受信側の全てのネゴシエーション情報を収集して送信側のMAC層に報告する(116)。
【0057】
送信側のMAC層は、ネゴシエーション結果を受け取ってそのAPP層に転送する(118)。ネゴシエーションが成功した場合、APP層は、両STAによって許可されたリソースを使用してRTAトラフィックを送信し始めることができる。
【0058】
送信側STAのMAC層は、事前ネゴシエーションによって作成されたRTAセッション記録に従って、上位層からのヘッダ情報によってRTAトラフィックと非RTAトラフィックとを識別する。APP層がRTAトラフィックを生成すると、このRTAトラフィックは、中間の層によって提供されるヘッダ情報と共にそのMAC層に受け渡される。送信側STAは、事前ネゴシエーションによって作成されたRTAセッションを調べることによって、このヘッダ情報を使用してRTAトラフィックを識別し、このRTAトラフィックをMAC層においてRTAパケットにパケット化することができる。
【0059】
図10に、送信側においてRTAパケットトラフィックを識別する実施形態例130を示す。ルーチンが開始し(132)、送信側STAのMAC層が上位層からトラフィックを受け取る(134)。MAC層は、上位層によって埋め込まれた、RTAトラフィックを識別するための情報を抽出し(136)、サービスタイプ及びTCP/UDPポート番号などの上位層のヘッダ情報をチェックする。
【0060】
送信側STAのMAC層は、上位層からのヘッダ情報と、事前ネゴシエーションによって作成されたRTAセッション記録とを比較する(調べる)(138)。ヘッダ情報についてチェック140を行う。上位層からのヘッダ情報が記録内のRTAセッションに一致する場合には、ブロック144に到達してトラフィックがRTAトラフィックであると判定し、そうでなければ、ブロック142に到達してトラフィックが非RTAトラフィックであるとみなし、その後にプロセスは終了する(146)。
【0061】
4.4.2.パケットヘッダ情報
図11に、RTA識別情報フォーマットの実施形態例150を示す。送信側STAは、RTAパケットを生成すると、PLCP又はMACヘッダ内にさらなる信号フィールドを追加する。さらなる信号フィールドがRTAセッション識別情報を含む場合、受信側STAは、PLCP又はMACヘッダ内のRTAセッション識別情報を使用して、MAC層においてRTAパケットと非RTAパケットとを区別することができる。この図には、RTAセッション識別情報の一例を示す。
【0062】
図12に、APP層とMAC層との間のヘッダ情報交換180、182の実施形態例170を示す。送信側STA172は、APP層176a、中間の層176b、MAC層176c及びPHY層176dを有することが分かる。受信側STA174は、同じ層であるAPP層178a、中間の層178b、MAC層178c及びPHY層178dを有することが分かる。
【0063】
この図には、STA層モデルにおける2つのSTA間でこのプロセスがどのように作用するかについての詳細を示す。送信側STAのAPP層は、RTAトラフィックを生成して(184)MAC層に受け渡す。トラフィックは、中間の層を通じて受け渡される際に、サービスタイプフィールド及びTCP/UDPポート番号などのヘッダ情報を追加される。
【0064】
送信側STAのMAC層は、上位層からRTAトラフィックを受け取ると、トラフィックからサービスタイプ及びTCP/UDPポート番号などのヘッダ情報を抽出する。MAC層は、先行技術によって作成されたRTAセッション記録を調べることによって、トラフィックがRTAであることを識別する(186)。
【0065】
次に、送信側STAのMAC層は、トラフィックをRTAパケット180にパケット化し、サービスタイプ及びTCP/UDPポート番号をRTAセッション識別情報としてMACヘッダ又はPLCPヘッダに埋め込む。RTAセッション識別情報の一例については
図11に示した。次に、送信側STAは受信側STAにRTAパケットを送信し(188)、受信側STAはこれをパケット182として受け取る。
【0066】
受信側STAは、そのMAC層においてRTAパケットを受け取ると、PLCP又はMACヘッダ内のRTAセッション識別情報に基づいてRTAパケットを識別することができる(189)。
【0067】
図13に、MAC層の受信側においてRTAパケットを識別するプロセスの実施形態例190を示す。プロセスが開始し(192)、受信側がPHY層においてパケットを受け取る(194)。
図12で説明したように、RTAパケットのMACヘッダ又はPLCPヘッダは、RTAセッションの識別情報を含む。再び
図13を参照して、識別情報が存在するかどうかを判定するチェックを行う(196)。識別情報が存在する場合、実行はブロック200に進み、受信側STAがパケットをRTAパケットであると判定する。一方で、情報が存在しない場合、実行はブロック196から198に進み、パケットは非RTAであると判定される。その後にプロセスは終了する(202)。
【0068】
4.4.3.RTAパケットの有効期限満了
従来のWLANでは、パケットの再送回数が再試行制限を上回った時にパケットの再送が中止されてパケットが破棄される。しかしながら、RTAパケットは、送信されるための有効期限が限られており、複数回の再送試行を通して有効でない場合もある。本開示のシステムは、RTAパケットの有効期限が満了すると、このRTAパケットの再送が停止されてパケットが破棄されるように構成される。
【0069】
RTAトラフィックは、パケット(トラフィック)の情報が有効とみなされる時間を表す有効期限を有する。RTAパケットの有効期限は、パケットが受信側STAによって受け取られた時に、パケットによって伝えられるRTAトラフィックが有効であることを保証するために使用される。従って、RTAパケットの有効期限は、RTAトラフィックの有効期限よりも長くすべきではない。最も単純な事例では、これらの2つの有効期限を同じ値に設定することができる。
【0070】
図14に、とりわけパケット有効期限の満了によってRTAパケットの再送がスケジュールされなかった場合にパケット有効期限の満了によってRTAパケットが破棄される実施形態例210を示す。この図には、送信側STA212及び受信側STA214を示す。送信側STAは、RTAパケットを送信する際に、このパケットを送信するための有効期限を設定する(216)。初期送信が見られる(218)。この図では、値G1が短フレーム間隔(Short Interframe Spaces:SIFS)を表し、G2が分散協調機能(Distributed Coordination Function:DCF)フレーム間隔(DIFS)を表し、G3が確認応答(ACK)タイムアウトを表す。送信側STAは、いずれかのRTAパケットの再送を実行する前に、パケットの有効期限が満了しているかどうかをチェックする。有効期限が満了している場合には再送がスケジュールされず、このパケットは破棄される。この例では、送信側が期間220(G2+G3)の後にバックオフ222を実行し、その後にチャネルを取得して、パケット有効期限が満了していないので、STAは第1の再送224を送信する。その後、送信側はパケット有効期限をチェックし、この例では満了していることが判明し(226)、従って再送を停止してパケットを破棄する。
【0071】
受信側では、パケット有効期限が満了する前にRTAパケットをバッファに記憶することができる。パケット有効期限が満了すると、もはやパケット内のRTAトラフィックは有効でないので、受信側はこのパケットをバッファから削除すべきである。
【0072】
4.5.RTAセッションの作成
本節では、STAがRTAセッションを作成(開始)する方法、及びSTAがそのMAC層において複数のRTAセッションを管理する方法について詳述する。4.4.1節で言及したように、送信側及び受信側STAは、事前ネゴシエーションによって作成されたRTAセッション記録を調べることによって、RTAトラフィック又はパケットを識別することができる。開示する技術は、STAが確立すべきRTAセッションを有する場合にRTAセッションテーブルを作成することを可能にする。STAは、各RTAセッションに関する情報を収集し、この情報をRTAセッションテーブルに記録する。RTAセッションは、テーブルに挿入し、テーブルから除去し、テーブル内で修正することができる。
【0073】
4.5.1.RTAセッション情報
STAは、RTAセッションを記録する際に、このRTAセッションの情報を収集してセッションを追跡するために使用することができる。RTAセッションを追跡するには、以下の要件が満たされなければならない。(a)RTAセッションを識別して他のRTAセッションと区別する情報を識別すること。(b)RTAセッションの最近の状態を報告するステータス情報を収集すること。(c)RTAセッションによって生成されたRTAトラフィックの送信品質要件を示す情報を取得すること。(d)RTAセッションによって生成されたRTAトラフィックに分配されるチャネルリソースを示す送信情報を利用すること。少なくとも1つの実施形態では、このセッション情報がセッションテーブル内に保持される。
【0074】
図15に、RTAセッション情報の実施形態例230を示す。テーブル1に、セッションID(Session ID)、サービスタイプ(Type of Service)、発信元IPアドレス(Source Port)、発信元ポート(Source IP Address)、宛先IPアドレス(Destination IP Address)、宛先ポート(Destination Port)などの、MAC層よりも上位の層の発信元MACアドレス及び宛先MACアドレスなどのMACヘッダからの識別情報をリストする。
【0075】
以下では、セッションステータス(Session Status)、コメント(Comment)及び最終アクティブ時間(Last Active Time)などのステータス情報面について説明する。セッションステータスは、RTAセッションがトラフィックを生成するように設定されているか否かを示す。テーブル2に、考えられるRTAセッションステータスの状態をリストする。RTAセッションステータスがアクティブである場合、RTAセッションは有効であってRTAトラフィックを生成する。RTAセッションステータスが非アクティブである場合、RTAセッションはRTAトラフィックを生成しないようにユーザによって無効化されている。RTAセッションステータスがエラーである場合、RTAセッションはエラーによってRTAトラフィックを生成又は送信することができない。
【0076】
コメントフィールドは、RTAセッションステータスの詳細を示すために使用することができる。コメントフィールドは、警告又はエラーメッセージを伝えるために使用することができる。例えば、セッション内で複数のRTAパケットが破損した場合、コメントは送信品質が良くないことを示すことができる。
【0077】
最終アクティブ時間は、RTAセッションのステータスをチェックすることなどの事象をトリガするために使用することができる。最終アクティブ時間は、RTAセッションのためのRTAパケット送信が行われる度に更新される。この情報を使用して、RTAトラフィックが定期的に生成又は配信されているかどうかをチェックすることができる。最終アクティブ時間が一定期間にわたって更新されていない場合、RTAセッションはRTAトラフィックを生成又は配信していない。少なくとも1つの実施形態では、エラーが発生しているかどうかを判定するためにRTAセッションステータスが定期的にチェックされる。
【0078】
次に、帯域幅要件(Bandwidth Requirement)、遅延要件(Delay Requirement)、ジッタ要件(Jitter Requirement)、周期(Periodic Time)、優先度(Priority)、セッション開始時点(Session Start Time)及びセッション終了時点(Session End Time)を含む要件情報について説明する。帯域幅要件は、送信すべきRTAトラフィックの量を示す。遅延要件は、RTAパケットの送信遅延を示す。ジッタ要件は、各周期的送信時間中におけるRTAパケット遅延の最大差を示す。周期は、RTAセッションにおけるRTA送信間の期間を示す。すなわち、RTAセッションは、「周期」毎にトラフィックを生成する。優先度は、RTAトラフィックの優先度を示す。システムは、優先度の高いRTAトラフィックを最初に送信するように構成される。セッション開始時点及びセッション終了時点は、RTAセッションの開始時点及び終了時点を示す。
【0079】
次に、時間割り当て(Time Allocation)オプション、リソースユニット(RU)割り当て(Resource Unit(RU) Allocation)及び空間ストリーム(SS)割り当て(Space Stream(SS) Allocation)を含む送信情報について説明する。時間割り当てオプションは、APがRTAパケット送信にチャネル時間を割り当てることができる方法のオプションを提供する。例えば、テーブル3に示すように、「柔軟(Flexible)」というオプションは、APがチャネル時間を送信のためにスケジュールする完全な柔軟性を有していることを示す。「固定(Fixed)」というオプションは、APが送信のために一定のチャネル時間を割り当てなければならないことを示す。「ランダム(Random)」というオプションは、割り当てられるチャネル時間が各期間についてランダムに選択されることを示す。「アルゴリズム(Algorithm)」というオプションは、割り当てられるチャネル時間が、選択されたアルゴリズム(プロセス/ルーチン)によって決定されることを示す。RU割り当てオプションフィールドは、チャネルのリソースユニット(RU)が送信のためにRTAセッションにどのように分配されるかについてのオプションを提供する。RUは、IEEE802.11axにおいて使用される用語によれば、どのチャネル周波数を送信に使用するかを決定する、直交周波数分割多元接続(OFDMA)における単位である。このオプションは、時間割り当てオプションにおいて示したものと類似することができる。SS割り当てオプションフィールドは、RTAセッショントラフィック送信のための空間ストリーム割り当てのオプションを示す。SS割り当ては、IEEE802.11において使用されるMIMO用語では単位を表し、或いはビームフォーミング用語では指向性アンテナパターンのインデックスを表すことができる。このオプションは、時間割り当てオプションにおいて示したものと類似することができる。
【0080】
4.5.2.RTAセッションテーブル
テーブル4に、
図7のネットワークトポロジを検討する際にSTA0によって作成されるRTAセッションテーブルの例を示す。このテーブル内のRTAセッションは、
図15にリストした全ての情報、又は要望に応じてさらなるフィールドを含むことができるが、このRTAセッションテーブルには、表現及び理解を単純化するためにそれよりも少ないフィールドを含むように示している。テーブル4に示すようなSTA0(AP)におけるRTAセッションテーブルは、3つのRTAセッションを含む。テーブルの各行はRTAセッションを表し、セッションIDフィールドはインデックス番号(「#」)に単純化している。1行目は、STA2からSTA0にRTAトラフィックを送信するRTAセッション1(単純化されたセッションID)を表す。RTAセッション1は、1ms(セッション開始時点)で開始して900ms(セッション終了時点)で終了する。STA0は、RTAセッションがトラフィックを生成する度に、チャネル時間(時間割り当てオプション)、RU(RU割り当てオプション)及び空間ストリーム(SS割り当てオプション)を割り当てる完全な柔軟性を有する。RTAセッション1の周期は10msであり、すなわちRTAセッション1は10ms毎にRTAトラフィックを生成する。
【0081】
2行目は、STA0からSTA3にRTAトラフィックを送信するRTAセッション2を表す。RTAセッション2は、3msで開始して800msで終了する。STA0は、RTAセッションがトラフィックを生成する度に、チャネル時間(時間割り当てオプション)及びRU(RU割り当てオプション)を割り当てる完全な柔軟性を有するが、この事例では空間ストリーム(SS割り当てオプション)が固定されている。RTAセッション2の周期は20msであり、すなわちRTAセッション2は20ms毎にRTAトラフィックを生成する。
【0082】
3行目は、STA0からSTA4にRTAトラフィックを送信するRTAセッション3を表す。RTAセッション3は、3msで開始して800msで終了する。STA0は、RTAセッションがトラフィックを生成する度に、チャネル時間(時間割り当てオプション)、RU(RU割り当てオプション)及び空間ストリーム(SS割り当てオプション)を割り当てる完全な柔軟性を有する。RTAセッション3の周期は20msであり、すなわちRTAセッション3は20ms毎にRTAトラフィックを生成する。
【0083】
4.5.3.AP及びSTA間の開始
本節では、APとその関連するSTAとの間でどのようにRTAセッションが開始されるかについての詳細を示す。AP及びSTAは、STAがRTAトラフィックを送信する前に、RTAセッション情報を含むRTAセッションを作成する。RTAセッション情報は、AP及びSTAの両方のRTAセッションテーブルに記録され、これを使用してRTAトラフィック及びRTAパケットを識別することができる。APは、RTAセッションテーブルを使用してRTAセッションを管理することができる。4.4.1節で説明したように、RTAセッションは、STA間のRTAトラフィック通信を確立するために事前ネゴシエーションを使用する。この手順中には、STA間でRTAセッション情報を共有するために管理フレーム交換が行われる。
【0084】
図16、
図17及び
図18に、RTAセッションを開始するために使用される管理フレーム250、270、290の実施形態例を示し、
図19に、STAがRTAセッションを開始するためにMAC層においてどのように管理フレームを交換するかについての例を示す。
【0085】
図16には、以下のフィールドを有するRTAセッション開始要求フレームの内容を示す。(a)フレーム制御フィールドは、フレームのタイプを示す。(b)継続時間フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。(c)RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。(d)TAフィールドは、フレームを送信したSTAのアドレスを含む。(e)アクション(Action)フィールドは管理フレームのタイプを示し、この場合は管理フレームがRTAセッション開始要求フレームであることを示す。(f)開始要求情報(Initiation Request Information)フィールドは、フレームがRTAセッション開始要求フレームであることがアクションフィールドによって示される場合にアクションフィールドに後続し、以下のフィールドを含む。(f)(i)
図11に示すような、RTAセッションの識別情報を提供するRTAセッションID。(f)(ii)リソース要件(Resource Requirement)フィールドは、4.5.1.節で説明したようなRTAセッションに関する必要な情報を示し、以下のフィールドを含む。(f)(ii)(A)帯域幅要件フィールドは、送信すべきRTAトラフィックの量を示す。(f)(ii)(B)遅延要件フィールドは、RTAパケットの送信遅延を示す。(f)(ii)(C)ジッタ要件フィールドは、各周期的送信時間中におけるRTAパケット遅延の最大差を示す。(f)(ii)(D)周期は、RTAセッションがRTAトラフィックを1回生成する継続時間を示す。(f)(ii)(E)優先度フィールドは、RTAトラフィックの優先度を示す。(f)(ii)(F)セッション開始時点フィールド及びセッション終了時点フィールドは、それぞれRTAセッションの開始時点及び終了時点を示す。(g)最後のFCSフィールドは、フレームチェックシーケンスを提供する。
【0086】
図17には、RTAセッション開始応答フレーム内のフィールドを示す。(a)フレーム制御フィールドは、フレームのタイプを示す。(b)継続時間フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。(c)RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。(d)TAフィールドは、フレームを送信したSTAのアドレスを含む。(e)アクションフィールドは管理フレームのタイプを示し、この場合は管理フレームがRTAセッション開始回答フレームであることを示す。(f)開始応答情報フィールドは、フレームがRTAセッション開始回答フレームであることがアクションフィールドによって示される場合にアクションフィールドに後続し、以下のようなフィールドを含む。(f)(i)RTAセッションIDフィールドは、RTAセッションの情報を識別し、この内容については
図11に示している。(f)(ii)開始結果(Initiation Result)フィールドは、開始が許可されているか否かを示す1ビットのみなどの小フィールドである。このフィールドが第1の状態(例えば、「1」)に設定された場合には、他のSTAによって開始が許可されており、一方でこのフィールドが第2の状態(例えば、「0」)に設定された場合には、開始が許可されていないことを示す。(f)(iii)送信情報(Transmission Information)フィールドは、4.5.1節で説明したようなRTAセッションの送信情報を提供し、以下のサブフィールドを含む。(f)(iii)(A)時間割り当てオプションフィールドは、送信のためにRTAセッションにチャネル時間を分配する割り当て方法のオプションを示す。(f)(iii)(B)RU割り当てオプションフィールドは、チャネルのリソースユニット(RU)を送信のためにRTAセッションに分配する割り当て方法のオプションを示す。(f)(iii)(C)SS割り当てオプションフィールドは、RTAセッションに空間ストリームを分配する割り当て方法のオプションを示す。(f)(iv)ステータス情報フィールドは、4.5.1節で説明したようなRTAセッションのステータス情報を示し、以下のサブフィールドを含む。(f)(iv)(A)セッションステータスフィールドは、RTAセッションのステータスを示す。(f)(iv)(B)コメントフィールドは、RTAセッションステータスのさらなる詳細を示し、例えば開始結果及びその詳細を報告するために使用することができる。(g)最後のFCSフィールドは、フレームチェックシーケンスを提供する。
【0087】
図18には、以下のフィールドを有するRTAセッション開始ACKフレームの内容を示す。(a)フレーム制御フィールドは、フレームのタイプを示す。(b)継続時間フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。(c)RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。(d)TAフィールドは、フレームを送信したSTAのアドレスを含む。(e)アクションフィールドは管理フレームのタイプを示し、この場合は管理フレームがRTAセッション開始ACKフレームであることを示す。(f)開始ACK情報フィールドは、フレームがRTAセッション開始ACKフレームであることがアクションフィールドによって示される時にアクションフィールドに後続し、以下のフィールドを含む。(f)(i)RTAセッションIDフィールドは、RTAセッションに関する情報を提供し、その内容については
図11に示している。(f)(ii)ステータス情報フィールドは、4.5.1節で説明したようなRTAセッションのステータス情報を含み、以下のサブフィールドを含む。(f)(ii)(A)セッションステータスフィールドは、RTAセッションのステータスを示す。(f)(ii)(B)コメントフィールドは、RTAセッションステータスのさらなる詳細を示す。(g)最後のFCSフィールドは、フレームチェックシーケンスを提供する。
【0088】
図19に、AP局(STA0)312と第2の局(STA2)314との間の相互作用を示す、RTAセッションを開始する通信手順の実施形態例310をMAC層の視点から示す。図示のように、STA0は、STA2との間でRTAセッションを開始する。STA0は、最初に自機側のリソース利用可能性をチェックする(316)。次に、STA0は、RTAセッション識別情報及び要件情報を含むRTAセッション開始要求フレーム(RTAInit.REQ)をSTA2に送信する(318)。STA2は、RTAセッション開始要求フレームを受け取り、受け取ったフレーム内の要件情報に従ってリソース利用可能性をチェックする(320)。リソースが利用可能である場合、STA2は、RTAセッション送信情報を含むRTAセッション開始回答フレーム(RTAInit.REP)をSTA0に返送する(322)。リソースが利用可能でない場合、RTAセッション開始回答フレームは開始手順の失敗を示す。STA0は、RTAセッション開始回答フレームを受け取り、RTAセッションステータス情報を含むRTAセッション開始ACKフレーム(RTAInit.ACK)をSTA2に送信する(324)。RTAセッションは、2つのSTA間での情報交換を終了する。両STAは、好ましくはRTAセッション全体についてのセッション情報を収集し、このRTAセッションを自機のRTAセッションテーブルに追加する(326、328)。図示のRTAセッションは、AP又はSTAのいずれかによって開始することができる。テーブル4にリストするRTAセッションは、この開始手順によって作成することができる。
【0089】
4.5.4.STA間における開始
図20に、STA0(AP)334、STA3 332及びSTA4 336間におけるRTAセッション開始の実施形態例330を示す。開示する技術は、同じAPに関連するSTA間でRTAセッションが開始されることも可能にする。この図には、RTAセッション開始手順を実行する例をMAC層の視点から示す。図示のように、STA3がSTA4との間でRTAセッションを開始する。STA3は、最初に自機側のリソース利用可能性をチェックする(338)。次に、STA3は、RTAセッション識別情報及び要件情報を含むRTAセッション開始要求フレーム(RTAInit.REQ)をSTA0(AP)に送信する(340)。STA0は、RTAセッション開始要求フレームを受け取り、受け取ったフレーム内の要件情報に従ってリソース利用可能性をチェックする(342)。リソースが利用可能である場合、STA0は、STA4にRTAセッション開始要求フレームを転送する(344)。STA4は、RTAセッション開始要求フレームを受け取り、受け取ったフレーム内の要件情報に従ってリソース利用可能性をチェックする(346)。リソースが利用可能である場合、STA4は、RTAセッション送信情報を含むRTAセッション開始応答フレーム(RTAInit.REP)をSTA0に返送する(348)。リソースが利用可能でない場合、RTAセッション開始応答フレームは開始手順の失敗を示す。STA0は、RTAセッション開始応答フレームを受け取ってこれをSTA3に転送する(350)。STA3は、RTAセッションステータス情報を含むRTAセッション開始ACKフレーム(RTAInit.ACK)をSTA0に送信し(352)、STA0は、RTAセッション開始ACKフレームをSTA3に転送する(354)。RTAセッションは、2つのSTA間での情報交換を終了する。両STA及びAPは、RTAセッションに関する情報を収集し、このRTAセッションを自機のRTAセッションテーブルに追加する(356、358、360)。
【0090】
テーブル5に、STA3とSTA4との間で新たなRTAセッションが開始された後のSTA0におけるRTAセッションテーブルの例を示す。開始手順前のRTAセッションテーブルについてはテーブル4に示す。ここでは、RTAセッションテーブルに新たなRTAセッション4が挿入されている。セッションIDは、単純化されたRTAセッション識別情報を表す。新たなRTAセッションでは、APが、RTAセッション4によって生成されたトラフィックを送信するために、選択されたプロセス/ルーチンを使用してチャネル時間を割り当てる。APは、チャネルのRU及びSSリソースを割り当てる完全な柔軟性を有する。
【0091】
4.6.RTAチャネルスケジューリング
RTAセッションが定期的にトラフィックを生成する場合、APは、RTAセッションのトラフィック送信のためのチャネルリソース割り当てをスケジュールすることができる。APは、RTAセッションテーブルにリストされた情報に従って、各アクティブなRTAセッションのRTAスケジューリング期間(RTA-SP)を作成する。RTA-SPには、RTAトラフィックを送信するためのチャネル時間の期間が周期毎に割り当てられる。
【0092】
開示する技術は、APがそのRTAセッションテーブル内の情報に基づいてMAC層においてRTA-SPをスケジュールすることを可能にする。各RTA-SPは、特定のRTAセッションのRTAトラフィック又はRTAパケットを送信する責任を負う。STAのMAC層においてRTAトラフィック又はRTAパケットを識別する方法については4.4節において説明した。その後、APは、RTAチャネルスケジューリングテーブルにRTA-SPを記憶し、(APを含む)その近隣STAにテーブル内のRTA-SPを広告する。AP及びSTAは、RTAチャネルスケジューリングテーブル内のリストに従うことによってRTA-SPを実行する。APは、そのRTA-SPを広告する度にRTA-SPを調整し、この調整を広告に含めることができる。
【0093】
4.4.3節で説明したようなRTAパケットの有効期限を考慮すると、RTAパケットを送信するためのチャネル時間の期間が周期毎にRTA-SPに割り当てられる場合には、配信されるパケットの妥当性確認を確実にするように、割り当てられるチャネル時間の継続時間をRTAパケットの有効期限よりも長くすべきではない。
【0094】
4.6.1.チャネルリソースブロック
図21に、RTAスケジュール期間内のRTAトラフィック送信のためのリソースブロックの実施形態例370を示す。RTA-SP中には、特定のチャネル時間、チャネル周波数及びチャネル空間で割り当てられたチャネルリソースを使用してRTAトラフィックを送信することができる。このチャネルリソースの割り当てられた時間、周波数及び空間は、RTA-SP内のRTAトラフィック送信のための個別リソースブロックを生成し、これを図に示す。RTA-SPがチャネルリソースブロックを共有する場合、これらは重複していると言われる。2つのRTA-SPが重複していない場合、一方のRTA-SP中に送信されるパケットは、他方のRTA-SP中に送信されるパケットと決して衝突しない。チャネルスケジューリングスキームは、RTA-SP内で使用される個別リソースブロックに起因して、MIMO及びOFDMAなどのマルチユーザ送信をスケジュールすることができる。
【0095】
4.6.2.RTAチャネルスケジューリングテーブル
APは、そのセッションテーブル内でRTAセッションのためのRTS-SPをスケジュールする際に、全てのRTA-SPをリストしたRTAチャネルスケジューリングテーブルを作成する。テーブル6に、RTAチャネルスケジューリングテーブルの一例を示す。
【0096】
テーブル6には、STA0のRTAチャネルスケジューリングテーブルの例を示す。このテーブル内のRTA-SPは、テーブル5に示すようなRTAセッションテーブルに基づいてスケジュールされる。テーブルの各行は、APによってスケジュールされるRTA-SPを表す。各列の内容の説明は以下の通りである。RTA-SP番号(SP#)は、RTA-SPの順番を表す。セッションID(Sess.ID)は、そのRTA-SPをどのRTAセッションがスケジュールするかを示す。RTAチャネルスケジューリングテーブル内のセッションIDは、RTAセッションテーブル内のセッションIDを示すことができる。例えば、テーブル6内のセッションID1のRTA-SP1は、このRTA-SPがテーブル5内のRTAセッション1のためにスケジュールされていることを意味する。説明を単純にするために、RTAセッション1については、RTA-SP1のRTAセッションと呼ぶ。
【0097】
期間開始時点及び期間終了時点は、RTA-SPの開始時点及び終了時点を表す。RTA-SPの期間は、RTAセッションテーブル内のRTAセッションの周期に等しいものとすることができる。テーブル6には、テーブル5の全てのRTAセッションのためにスケジュールされたRTA-SPをリストしている。RTA-SPの期間開始時点は、そのRTAセッションのセッション開始時点と同じである。
【0098】
周期は、RTA-SPが、周期毎にRTAパケットを送信するための割り当てられたチャネルリソース(例えば、チャネル時間、RU、SS)であるべきことを表す。割り当てられたチャネル時間は、期間開始時点+周期*n(n=1,2、3・・・)において開始し、従って割り当てられたチャネル開始時点の後に1又は2以上の周期を開始する。例えば、RTA-SP1は、1ms、11ms及び21msなどにおいて開始する送信のための1msのチャネル時間を有する。
【0099】
時間割り当て、RU割り当て及びSS割り当ては、それぞれ時間、周波数及び空間の割り当てられたチャネルリソースを示す。時間割り当て、RU割り当て及びSS割り当ては、RTAセッションテーブルに提供される割り当てオプションに従って「固定」、「ランダム」又は「アルゴリズム」とすることができる。テーブルに示すように、このテーブルでは時間割り当てが固定されている。RU割り当て又はSS割り当てがランダムである場合には、RTA-SP中のチャネル状態に従って周波数又は空間のランダムチャネルリソースを使用してRTAパケットを送信することができる。RU割り当て又はSS割り当てが固定されている場合には、RTA-SP中の周波数又は空間の割り当てられたチャネルリソースのみを使用してRTAパケットを送信することができる。例えば、SS1は、SS割り当てのチャネルリソースとして示すものである。RTA-SP2は、その割り当てられたチャネル時間中のRTAパケット送信のみのためにSS1を使用することができる。
【0100】
優先度は、RTA-SPの優先度であり、そのRTAセッションと同じ優先度を有する。高い優先度のRTA-SPは、割り当てられたリソースブロックを送信のために使用する高い優先度を有する。
【0101】
アクティビティは、RTA-SP中にAPが行う動作を表す。この動作は、APがRTAセッションテーブル内のRTAセッションのTxノード及びRxノードをチェックすることによって決定することができる。APは、Txノードである場合には、RTA-SP中にRTAパケットを送信する。APは、Rxノードである場合には、RTA-SP中にRTAパケットを受け取る。APは、TxノードでもRxノードでもない場合には、STA間で開始されるRTAセッションのためにRTA-SPを手配することができる。また、RTA-SPが他のAPによって広告されている場合、APはRTA-SPをリスンすることもできる。
【0102】
4.6.3.RTAチャネルスケジューリング情報の交換
APは、RTAチャネルスケジューリングのためにRTA-SPを作成した後に、自機のRTA-SPを他のAP及びSTAに広告する。このAPに関連するSTAは、広告に従ってRTA-SPを実行する。BSS外のAP及びSTAは、この情報を使用して自機のRTAチャネルスケジューリングの実行及び調整を行うことができる。
【0103】
STA(非AP)は、全てのAPから感知した全てのRTA-SPをリストするための独自のRTAチャネルスケジューリングテーブルを有することもできる。
【0104】
本節では、APがRTAチャネルスケジューリング情報をビーコンフレームに埋め込むことによってどのようにRTA-SPを広告するかを示す例を示す。RTAチャネルスケジューリング情報を伝えるビーコンフレームは、RTAビーコンフレームと呼ばれる。
【0105】
図22に、以下のフィールドを有するRTAビーコンフレームフォーマットの実施形態例390を示す。(a)フレーム制御フィールドは、フレームのタイプを示す。(b)継続時間フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。(c)RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。(d)TAフィールドは、フレームを送信しているSTAのアドレスを含む。(e)BSS IDは、ローカルBSSをネットワーク上の他のBSSと識別するためのラベルである。(f)シーケンス制御(Sequence control)フィールドは、パケットのフラグメント数及びシーケンス番号を含む。(g)通常ビーコンフレーム本体(Regular Beacon Frame Body)フィールドは、通常のビーコンフレームのフレーム本体と同じ内容を有する。(h)RTAスケジューリング広告(RTA Scheduling Advertisement)フィールドは、RTAスケジューリング情報を示し、以下のフィールドを含む。(h)(i)RTA-SP数(Number of RTA-SP)フィールドは、このフレームにRTA-SPが含まれているRTAセッションの数を示す。(h)(ii)各RTA-SPフィールドは、RTA-SPの情報を示し、RTAチャネルスケジューリングテーブルに示すRTA-SP情報と同じセッションID、期間開始時点、期間終了時点、周期、時間割り当て、RU割り当て、SS割り当て、優先度及びアクティビティといった内容を有する。(i)最後のFCSフィールドは、フレームチェックシーケンスを提供する。
【0106】
テーブル7に、STA0(AP)がSTA5(AP)からRTAビーコンフレームを受け取った後のSTA0におけるRTAチャネルスケジューリングテーブルの例を示す。RTAビーコンフレームを受け取る前のRTAチャネルスケジューリングテーブルについてはテーブル6に示している。STA0は、RTAビーコンフレームに従って、STA5が自機側でRTA-SP5及び6をスケジュールしていることが分かる。STA0は、テーブル7に示すようにRTA-SP5及び6をRTAチャネルスケジューリングテーブル内に追加する。近隣STA5からのRTA-SPの開始時点及び終了時点は、RTAビーコンの情報に従ってそのBSSのタイミング同期機能(TSF)において解析することができる。
【0107】
4.6.4.RTAチャネルスケジューリングテーブル
APは、RTAチャネルスケジューリングテーブル内のRTA-SPを調整することができる。この調整の目的は、複数のRTA-SPが同じチャネルリソースブロックを使用するのを避けるためである。
【0108】
図23に、1つのBSS内のAP及びSTAがどのようにRTA-SPを実行するか、並びに1つのビーコン間隔中にAPがどのようにRTA-SPを調整するかについての実施形態例410を示す。このスケジューリング例では、RTA-SPが内部RTA-SP及び外部RTA-SPに分離される。内部RTA-SPは、RTAセッションテーブルに従ってAPによって生成されたRTA-SPである。外部RTA-SPは、他のAPのビーコンフレームから受け取られたRTA-SPである。APは、その内部RTA-SPのみを調整することができる。
【0109】
AP及びその関連するSTAは、RTAチャネルスケジューリングテーブル内のRTA-SPを実行する。プロセスは、AP及びその関連するSTAがRTAチャネルスケジューリングテーブルを有した後に開始し(412)、これらのテーブルは、APによって生成された内部RTA-SPと、他のAPのビーコンフレームから受け取られた414外部RTA-SPとを含む。AP及びその関連するSTAは、別のAPからRTAビーコンフレームを受け取ると、受け取られたビーコンフレーム内のRTA-SPを抽出し、この外部RTA-SPを自機のRTAチャネルスケジューリングテーブルに追加する(416)。なお、外部RTA-SPが既にテーブル内に存在する場合、AP又はSTAは、必要に応じてテーブル内のRTA-SPを更新するだけでよい。
【0110】
APは、RTAビーコンを送信する前に自機のチャネルスケジューリングテーブル内の内部RTA-SPを調整することはできない。同じチャネルリソースブロックを共有するRTA-SPが複数存在する場合、AP及びその関連するSTAは、競合衝突を避けるためにチャネル競合回避法を使用することができる(418)。競合回避法については4.7節で説明する。
【0111】
APは、RTAビーコンフレームを送信する直前に、その内部RTA-SPに対するチャネルリソースブロック割り当てを調整する(420)。次に、APは、更新されたRTA-SPをビーコンフレームに埋め込み、その近隣STAに内部RTA-SPの調整を広告するためにビーコンを送信する(422)。少なくとも1つの実施形態では、このビーコンに外部RTA-SPも含まれる。
【0112】
AP及びその関連するSTAは、ビーコンの送信後にRTAチャネルスケジューリングテーブル内の内部RTA-SPを更新する(424)。次に、AP及びSTAは、更新されたRTAチャネルスケジューリングテーブルに従って内部RTA-SPを実行する。これらの動作の後にRTA-SP処理は終了する(426)。
【0113】
テーブル8に、APがそのRTAチャネルスケジューリングテーブル内の内部RTA-SPをどのように調整するかについて説明する例を示す。
図23のブロック414、416によれば、STA0(AP)は、STA5(AP)からRTAビーコンフレームを受け取ると、テーブル7に示すように自機のRTAチャネルスケジューリングテーブルに外部RTA-SP5及び6を追加する。テーブル7では、RTA-SP1がRTA-SP5と同じチャネル時間を共有している。RTA-SP4も、RTA-SP6と同じチャネルリソースブロックを共有することができる。STA0は、RTA-SP1及び4が外部RTA-SPと重複するのを避けるために、これらの2つのRTA-SPへのチャネルリソース割り当てを調整する必要がある。テーブル8に示すように、STA0は、RTA-SP1に割り当てられたチャネル時間がRTA-SP5と重複しないように、RTA-SP1の期間開始時点を1msから9msに変更する。また、STA0は、RTA-SP4がRTAパケット送信にRU2を使用するように強制する。RTA-SP4及び5は、別々のRUを使用するため互いに干渉しなくなる。STA0は、RU2におけるチャネル状態がRU1ほど良好でないと認識し、従ってRTA-SP4のRTAパケットが正常に配信されることを確実にするためにRTA-SP4のチャネル時間を3msから4msに延長する。
【0114】
4.7.競合衝突回避
図23のブロック416で分かるように、AP及びその関連するSTAは、APがその内部RTA-SPを更新する前に、複数の方法を使用してチャネル競合衝突を回避することができる。本節では、(a)レガシーCSMA/CA STAとの下位互換性、及び(2)複数のRTA-SP間における重複の発生を考慮する際の競合衝突回避法の複数の例を示す。
【0115】
4.7.1.チャネル周波数分離
チャネル周波数分離の目的は、非RTAトラフィック送信とRTAトラフィック送信との間でいくつかのチャネル周波数を分離することである。RTAトラフィック及び非RTAトラフィックを別々のチャネル周波数で送信することにより、特に非RTAトラフィックのみを送信するレガシーCSMA/CA STAが存在する場合にこれらのトラフィック送信が互いに干渉しなくなる。
【0116】
あるSTAがAPからのRTAチャネルスケジューリングを認識し、このRTAチャネルスケジューリングに従ってパケットを送信する場合、このSTAはRTA機能をサポートしていると言われる。そうでなければ、このSTAはRTA機能をサポートしていない。レガシーCSMA/CAはRTA機能をサポートしておらず、RTAパケットを識別できないので非RTAパケットのみを送信する。
【0117】
図24に、STAがRTA機能をサポートしているかどうかに応じてAPがSTAに対してどのようにチャネル周波数を分離するかについての実施形態例430を示す。プロセスが開始し(432)、APは、チャネル周波数分離法を使用する場合、いくつかのチャネル周波数リソースをRTAパケット送信のために割り当て、他のいくつかのチャネル周波数リソースを非RTAパケット送信のために割り当てる(434)。
【0118】
次に、APは、STAがRTA機能をサポートしているかどうかを判定し(436)、チェックが行われる(438)。STAは、RTA機能をサポートしている場合にはRTAパケットを認識できるので、実行はブロック442に到達し、APは、STAがRTAパケット送信に割り当てられたチャネル周波数を使用することを許可し、その後に実行は終了する(444)。一方で、ブロック438においてSTAがRTA機能をサポートしていないと判定された場合にはブロック440に到達し、STAは、非RTAパケット送信のために割り当てられたチャネル周波数のみを使用することができ、その後に実行は終了する(444)。
【0119】
あるSTAがRTA機能をサポートしており、RTAパケット送信のために割り当てられたチャネル周波数を使用できる場合、このSTAは、APによって広告されたRTA-SPを認識する(知る)ことができる。従って、STAは、RTA-SPに従っていつパケットの送信を控えるべきであるかを認識する。従って、STAは、RTA-SPがスケジュールされていない時にRTAパケット送信のために割り当てられたチャネル周波数を使用して非RTAパケットを送信することができる。STAは、パケット送信のために割り当てられたチャネル周波数を使用することもできる。
【0120】
図25に、AP452が、RTA機能をサポートしていないレガシーCSMA/CA STAであるSTA454に(IEEE802.11に規定される)チャネル切り替え告知フレーム456を送信して、レガシーCSMA/CA STAに特定のチャネル周波数を使用してパケットを送信するように通知する実施形態例450を示す。この告知に応答して、STA1 454から確認応答458が返送される。
【0121】
図26に、STA0(AP)472と、STA2及びSTA3 474として示すRTAをサポートしている局との間のRTAパケット及び非RTAパケット送信のためのチャネル割り当ての実施形態例470を示す。STAは、RTA機能をサポートしている場合、RTAパケット送信のために割り当てられたチャネル周波数を使用することができる。図示のように、APは、近隣STAにRTAチャネル割り当て告知フレーム476を送信してチャネル周波数分離を通知することができ、近隣STAは、受信時にAPに確認応答478を送信する。
【0122】
図27に、RTAチャネル割り当て告知フレームのフレームフォーマットの実施形態例490を示す。STAは、RTAチャネル割り当て告知フレームを受け取ると、RTAパケット送信のためにどのチャネル周波数が割り当てられているか、及び非RTAパケット送信のためにどのチャネル周波数が割り当てられているかを知るようになる。これらのSTAは、RTAパケットを認識し、RTA-SPに従ってパケットを送信することができるので、複数のチャネル周波数を使用するさらなる柔軟性を有する。RTAチャネル割り当て告知フレームの内容は以下の通りである。(a)フレーム制御フィールドは、フレームのタイプを示す。(b)継続時間フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。(c)RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。(d)TAフィールドは、フレームを送信したSTAのアドレスを含む。(e)アクションフィールドは、このフレームがRTAトラフィック及び非RTAトラフィックのためのチャネル周波数分離を通知するために使用されることを示す。(f)RTAサポートチャネル(RTA Supported Channels)フィールドは、RTAトラフィックの送信に割り当てられたチャネルを示す。(g)非RTAサポートチャネル(Non-RTA Supported Channels)フィールドは、非RTAトラフィックの送信のみに割り当てられたチャネルを示す。(h)最後のFCSフィールドは、フレームチェックシーケンスを提供する。
【0123】
図28に、APが1つのチャネルのみを操作できる場合にチャネル周波数分離法がどのように動作するかについての実施形態例510を示す。この例は、
図7に示すようなネットワークトポロジ例について検討するものであり、STA0 512、STA1 514、STA2 516及びSTA3 518間の相互作用を示す。RTA-SPについては、テーブル8において説明している。STA0 512は、1つのチャネルのみを操作できるAPである。STA1 514は、RTA機能をサポートしていないレガシーSTAである。STA2 516は、RTAトラフィックのみを送信し、STA3 518は、RTAトラフィック及び非RTAトラフィックの両方を送受信する。この例では、STA0が、非RTAパケットのみの送信にチャネル1を割り当て、RTAパケット送信にチャネル2及び3を割り当てる。
図25で説明したように、APは、STA1にチャネル1のみで機能させるようにチャネル切り替え告知フレームを送信する。APは、STA2及び3に、チャネル2及び3がRTAパケット送信に割り当てられていることが分かるようにRTAチャネル割り当て告知フレームを送信する。
【0124】
図28の例では、STA2が、RTAトラフィックしか有していないためチャネル2のみで動作することを選択する。STA3は、非RTAパケットの送信にはチャネル1を使用し、RTAパケットの受信にはチャネル3を使用する。以下、異なるチャネル期間におけるAP及び各STAのチャネル切り替えについて説明する。
【0125】
STA2は、RTA-SP1 520中にチャネル2を介してAPにRTAパケットを送信する。APは、STA2からのRTAパケットを受け取るためにチャネル2に切り替える。STA1及び3はチャネル2では動作せず、従ってAPとSTA2との間のRTAパケット送信に干渉しない。
【0126】
APは、RTA-SP2 522中にチャネル3を介してSTA3にRTAパケットを送信する。AP及びSTA3は、パケット送信のためにチャネル3に切り替える。APとSTA3との間のRTAパケット送信は、RTA-SP1の場合と同じ理由で他のSTAによって干渉されない。
【0127】
APは、残り時間にわたって非RTAパケット送信のためにチャネル1を使用する。STA1は、この時間中に非RTAパケットを送受信することができる。STA3も、非RTAパケット送信のために自機のチャネル周波数をチャネル1に切り替える。STA2はRTAトラフィックしか有しておらず、常にチャネル2上で動作するので、他の時点では電力を節約するために自機をスリープモードに設定することができる。
【0128】
図29に、APが複数のチャネルを操作できる場合にチャネル周波数分離法がどのように動作するかを実証する実施形態例530を示す。この例は、
図7に示すようなネットワークトポロジについて検討するものであり、RTA-SPについてはテーブル8において説明している。STA0 534は、複数のチャネルを同時に操作できるAPである。STA1 536は、RTA機能をサポートしていないレガシーSTAである。STA2 538は、RTAトラフィックのみを送信し、STA3 540は、RTAトラフィック及び非RTAトラフィックの両方を送受信する。この例では、STA0が、非RTAパケットのみの送信にチャネル1 532を割り当て、RTAパケット送信にチャネル2を割り当てる。
図25で説明したように、APは、STA1がチャネル1のみを使用して動作するようにSTA1にチャネル切り替え告知フレームを送信する。APは、STA2及び3に、チャネル2がRTAパケット送信に割り当てられていることが分かるようにRTAチャネル割り当て告知フレームを送信する。この例では、STA2及び3がいずれもチャネル2で動作することを選択する。以下、異なるチャネルにおけるAP及び各STAのチャネル切り替えについて説明する。
【0129】
チャネル1では、APがこのチャネルを非RTAパケット送信に使用する。STA1は、常にチャネル1を介して非RTAパケットを送受信することができる。チャネル2では、APがこのチャネルをRTAパケット送信に使用する。STA2は、RTA-SP1 542中にチャネル2を介してAPにRTAパケットを送信する。STA3は、RTA-SP1の存在を認識しているのでパケットの送信を控える。APは、RTA-SP2 544中にチャネル2を介してSTA3にRTAパケットを送信する。STA2は、RTA-SP1の場合と同じ理由でこの期間中にパケットの送信を控える。AP及びSTA3は、残りの時間にわたってチャネル2を非RTAパケット送信に使用する。これらはチャネルを求めて競合し、RTA-SPが存在しない時に非RTAパケットを送信することができる。STA2はRTAトラフィックしか有していないので、電力を節約するために自機をスリープモードに入るように設定することができる。
【0130】
4.7.2.非RTAトラフィックのみのためのトリガベースのアップリンク送信
レガシーCSMA/CA STAの動作に起因する干渉からRTAパケット送信を保護するためには、1つの考えられる方法として、APがレガシーCSMA/CA STAとの間で常にパケット送信を開始するように仕向けることが挙げられる。
【0131】
図30に、STAがRTA機能をサポートしているかどうかに応じてAPがどのようにSTAとのパケット送信手順を決定するかについて詳述する実施形態例550を示す。プロセスが開始し(552)、APは、STAがRTA機能をサポートしているかどうかを判定する(554)。STAがRTA機能をサポートしているかどうかをチェックする(556)。STAは、RTA機能をサポートしている場合にはRTAチャネルスケジューリングを認識できるので、実行はブロック560に到達し、APは、STAがチャネルを求めて競合して単独でパケット送信を開始することを許可し、その後にプロセスは終了する(562)。一方で、チェック556においてSTAがRTAチャネルスケジューリングを認識できないことが判明した場合、実行はブロック558に到達し、STAは、APからトリガフレーム(TF)を受け取った場合にのみ非RTAパケットを送信することができ、その後にプロセスは終了する(562)。
【0132】
図31に、競合ベースのアクセス期間(CBAP)、すなわちSTAがCSMA/CAスキームを使用してチャネルを求めて競合する期間中における複数のパケット送信手順を示す実施形態例570を示す。CBAP571間隔と、STA0(AP)572、STA1(非RTAトラフィックのみ)574、STA2(RTAトラフィックのみ)576及びSTA3(RTAトラフィック及び非RTAトラフィックのみ)578間の通信とを示す。図の最下部には、マルチユーザダウンリンク(MU-DL)モード579a、マルチユーザアップリンク(MU-UL)モード579b、シングルユーザダウンリンク(SU-DL)モード579c、RTAをサポートするシングルユーザアップリンク(SU-UL)モード579d、及びRTAをサポートしないシングルユーザアップリンク(SU-UL)モード579eとしての通信タイプを示す。
【0133】
この図に示すパケット送信は、非RTAトラフィックについては通常の送信手順に従い、APによって開始される。マルチユーザダウンリンク(MU-DL)モード579aでは、STA0が競合を行い、バックオフ580後にチャネルを取得し、リソースユニットRU1及びRU2を介してSTA1及びSTA3に非RTAトラフィックを送信し、これらのSTAがブロックACK(BA)584a、584bを送信する。マルチユーザアップリンク(MU-UL)モード579bでは、STA0がバックオフ586を使用して競合を行ってチャネルアクセス権を取得し、トリガフレーム588を送信し、これに応答してSTA1が非RTAトラフィック590aを送信し、STA3が非RTAトラフィック590bを送信し、これに対してSTA0がブロックACK(BA)592で応答する。
【0134】
シングルユーザダウンリンク(SU-DL)モード579cでは、STA0が図示のバックオフ594を使用して競合を行い、チャネルアクセス権を獲得し、STA1に非RTAパケット598を送信し、STA1が確認応答(ACK)する(602)。なお、STA3もチャネルを求めて競合しようと試み(596)、使用中を検知している(600)。RTAをサポートするシングルユーザアップリンク(SU-UL)モード579dでは、STA3が競合を行い(604)、チャネルアクセス権を獲得してSTA0に非RTAパケット606を送信し、STA0がACK608で応答する。RTAをサポートしていないシングルユーザアップリンク(SU-UL)モード579eでは、STA0が競合を行い(610)、チャネルアクセス権を獲得してトリガフレーム612を送信し、STA1から非RTAパケット614を受信し、これに対してブロックACK(BA)616で応答する。
【0135】
なお、シングルユーザアップリンク(SU-UL)モードでは、STAが、RTA機能をサポートしている場合、いつパケットを送信すべきであっていつパケット送信を控えるべきであるかをRTA-SP情報に基づいて認識する。そうでなければ、STAは、CBAP及びRTA-SPのために割り当てられたチャネル時間を検知できないのでRTA機能をサポートしない。従って、STAは、APからトリガフレームを受け取った後にのみ非RTAパケットを送信することができる。
【0136】
図32に、RTA-SP中のパケット送信手順を示す実施形態例630を示す。RTA-SP632間隔と、STA0(AP)634、STA1(非RTAトラフィックのみ)636、STA2(RTAトラフィックのみ)638及びSTA3(RTAトラフィック及び非RTAトラフィックのみ)640間の通信とを示す。この図を
図31と比較すると、通信を実行する前にチャネルアクセスのために競合する必要がないことに気付くであろう。
【0137】
図示のRTA-SP632は、STA0(AP)とSTA2との間のRTAパケット送信のためのものである。図示のように、マルチユーザダウンリンク(MU-DL)モード614a及びマルチユーザアップリンク(MU-UL)モード614bでは、パケットは通常のフォーマットを使用することができるが、このパケット内でRTAトラフィックを伝える必要がある。例えば、STA0によって送信されるMU-DLパケット642は、STA2にRTAトラフィックを伝え、STA1に非RTAトラフィックを伝える必要があり、これらの両STAはブロックACK(BA)644a、644bで応答することが分かる。MU-ULパケットの通信では、STA0がトリガフレーム646を生成し、STA2から戻ってくる通信がRTAトラフィック646aを伝え、STA2からの通信が非RTAトラフィック646bを伝え、これに対してSTA0がブロックACK(BA)648で応答することを示す。シングルユーザダウンリンク(SU-DL)モード614cでは、RTAパケット650が送信されてSTA2から確認応答が行われ(652)、シングルユーザアップリンク(SU-UL)モード614dでは、STA2からRTAパケット654が送信されてSTA0において受信され、STA0が受信を確認応答する(656)。従って、SU-DL及びSU-ULでは、パケット送信が通常の送信手順に従い、このRTA-SPにわたってRTAトラフィックを伝える。
【0138】
4.7.3.Quietモード
レガシーCSMA/CA STAに起因する干渉からRTAパケット送信を保護するための別のオプションは、RTA-SP中にレガシーCSMA/CA STAがquiet(すなわち、送信なし)状態を保つように仕向けることである。APは、RTA quietフレームを送信することによって、STAをquietモードに設定することができる。
【0139】
図33に、以下の内容を含むRTA quietフレームの実施形態例660を示す。(a)フレーム制御フィールドは、フレームのタイプを示す。(b)継続時間フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。(c)RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。(d)TAフィールドは、フレームを送信したSTAのアドレスを含む。(e)Quiet要素(Quiet element)フィールドは、quiet情報を示す。このフィールドは、IEEE802.11標準の通常のquiet要素と同じものであり、以下のフィールドを含む。(e)(i)要素ID(Element ID)は、Quiet要素フィールドのインデックスである。(e)(ii)長さ(Length)は、Quiet要素フィールドの長さである。(e)(iii)Quietカウント(Quiet Count)は、quiet期間が開始するまでのビーコン送信間隔の数を示す。(e)(iv)Quiet期間(Quiet Period)は、quiet期間の合間のビーコン間隔数を示す。(e)(v)Quiet継続時間(Quiet Duration)は、quiet期間が存続する(広がる)時間単位数を示す。(e)(vi)Quietオフセット(Quiet Offset)は、次のquiet期間が開始するビーコン間隔後の時間単位数を示す。(f)追加Quiet要素数(Extra Number of Quiet elements)フィールドは、このフィールドに後続するさらなるQuiet要素の数を示し、その後にこれらのQuiet要素が続き、その後にフレームチェックシーケンス(FCS)が続く。
【0140】
図34に、quiet期間を設定するためにAP672が関連するSTA674(例えば、STA1、STA2及びSTA3)にRTA Quietフレーム676を送信してこの送信を確認応答する678手順の実施形態例670を示す。フレーム内のQuiet要素は、IEEE802.11標準に規定される通常のQuiet要素と同じものであるため、レガシーCSMA/CA STA(例えば、STA1)は、このフレームを認識してquiet期間を設定することができる。
【0141】
図35に、RTA-SP中にレガシーCSMA/CA STAトラフィックに起因する干渉からRTAパケット送信を保護するためにAPがどのようにSTA間でquiet期間を設定するかを示す実施形態例690を示す。この例は、
図7に示すようなネットワークトポロジについて検討するものであり、RTA-SPについてはテーブル8に示す。
【0142】
STA0 692はAPであり、STA1 694は、RTA機能をサポートしていないレガシーSTAであり、STA2 696はRTAトラフィックのみを送信し、STA3 698は、RTAトラフィック及び非RTAトラフィックの両方を送信する。APは、そのSTA(すなわち、STA1、2、3)に個別にRTA quietフレームを送信する。各STAは、RTA quietフレームを受け取ったことに応答してそのquiet期間を認識する(知る)。この例に示すように、APは常にアクティブである。STA1は、RTA-SP700、702が存在する時には常にquiet状態を保つ。STA2は、RTA-SP1 700中にのみアクティブである。STA2は、残り時間中はquiet状態を保ち又はスリープモードに入る。STA3は、送信又は受信すべきRTAトラフィック及び非RTAトラフィックを両方とも有しているので、常にアクティブな状態を保ち、又はRTA-SP1の発生時にはquiet状態を保つ。STA3は、アクティブ又はquietのいずれの状態を保つかに関わらず、RTA-SP1中はパケットを送信するためにチャネルを求めて競合しない。
【0143】
4.7.4.RTA-SP中の競合ウィンドウ
図23で説明したように、AP及びSTAは、そのチャネルスケジューリングテーブル内に、同時にスケジュールされた複数のRTA-SPを有することができる。この状態は、(1)APが他のAPから外部RTA-SPを受け取ったものの、ビーコンフレームを送信するまでその内部RTA-SPを調整できない場合、又は(2)APが内部RTA-SPに個別のチャネルリソースブロックを割り当てることができない場合、又は(3)非AP STAが他のAPから外部RTA-SPを受け取ったものの、そのAPがこれらを受け取っていない場合に生じることができる。これらの状況のうちの1つが生じると、APは、複数のSTAが同時にチャネルを求めて競合するのを避けるために競合回避法を使用する。同時にスケジュールされた複数のRTA-SPが存在する場合には、複数のSTAが同時にチャネルを求めて競合することが可能である。これらの複数のSTAが同時にチャネルアクセス権を獲得した時にチャネル競合衝突が発生する。STAは、複数の重複するRTA-SPに起因する競合衝突を回避するために、競合ウィンドウを使用して衝突を回避するようにバックオフ時間を設定する。
【0144】
RTA-SP中には、4.7.1節、4.7.2節及び4.7.3節で説明した方法を使用することによって、非RTAパケットに起因するチャネル競合を回避することができる。本節における方法は、RTAパケット間のチャネル競合衝突回避に焦点を当てる。
【0145】
RTA-SP中に競合ウィンドウサイズに従ってバックオフ時間を設定する方法は、CSMA/CAの場合と同様に利用することができる。しかしながら、RTA-SPにおける競合ウィンドウサイズはCSMA/CAの場合と同じではない。3.1節で説明したように、CSMA/CAでは競合ウィンドウサイズが予め固定されている。この競合ウィンドウサイズは、同じエリア内の全てのSTA間のチャネル競合衝突を回避するために使用される。一方で、RTA-SPにおける競合ウィンドウは、重複するRTA-SPを同時に有するSTA間のチャネル競合衝突を回避するためのものにすぎない。
【0146】
図36に、競合ウィンドウを使用してRTAパケット送信間の競合衝突を回避する1つの考えられる解決策の実施形態例710を示す。この例では、STAが、チャネルを求めて競合するためにRTA-SP中に一定の競合ウィンドウサイズを使用する。
図7のトポロジ例に示すように、STA0及びSTA5はAPであり、STA2及びSTA6は、それぞれSTA0及びSTA5に関連するSTAである。
【0147】
この例では、同時にスケジュールされた複数(3つ)の重複するRTA-SP712が存在する場合のシナリオについて検討する。第1のRTA-SPは、STA2 716のためにスケジュールされたものであり、STA2は、バックオフ722bを使用した競合後にSTA0 714にRTAパケット724を送信し、STA0がACK728で応答する。なお、図示のSTA0及びSTA5 720も、バックオフ722a、722cを使用してチャネルアクセスのために競合しようと試みているが、これらのSTAは、STA2がチャネルを取得した後にCCA使用中726a、726bを設定する。
【0148】
第2のRTA-SPは、STA5 720のためにスケジュールされたものであり、STA5は、バックオフ730bを使用した競合後に、STA6 718にRTAパケット734を送信するためにチャネルにアクセスする。なお、STA0 714もチャネルを求めて競合しようと試みている(730a)が、STA0 714及びSTA2 716はCCA使用中732a、732bを設定する。ACKが見られないため、パケットは受け取られていない。その後の再送では、バックオフ736bの後に、STA5 710がSTA6 718にRTAパケット737を送信してACK740を受け取る。この場合も、STA0 714はチャネルを求めて競合しようと試みており736a、STA0 714及びSTA2 716はCCA使用中738a、738bを設定していることが分かる。
【0149】
第3のRTA-SPは、STA0 714による送信のためにスケジュールされたものであり、チャネルアクセス742の後にSTA2 716にRTAパケット744が送信されてSTA2がACK748で応答する。なお、STA6 718及びSTA5 720は、CCA使用中746a、746bを設定する。
【0150】
4.6.3節で説明したように、AP及びSTAは、これらの複数のRTA-SPを互いに共有することができる。STA0、STA2及びSTA5は、nによって示す重複するRTA-SPの数に基づいて競合ウィンドウサイズを設定する。値Diは、RTA-SPセッションiの遅延時間要件を表し、競合ウィンドウサイズを決定(計算)するために使用することができる。競合ウィンドウサイズを計算する関数は、f(n,Di)によって示される。例えば、1つの考えられる競合ウィンドウサイズの計算はf(n,Di)=2n+Di/cであり、cは定数である。
【0151】
STAは、f(n,D
i)によって計算される一定の競合ウィンドウサイズを使用してRTA-SP中のバックオフ時間を設定する。
図36に示すように、STA0は、RTAセッション0によって生成されるRTAパケットを送信するために、自機の競合ウィンドウサイズをf(3,D
i)に設定する。バックオフ時間は、0~f(n,D
i)の一様な確率変数によって決定することができる。STAは、パケットを送信する前に、常にバックオフ遅延だけ待機してチャネルにアクセスする。例えば、STA5は、RTAセッション5によって生成されるRTAパケットを再送するために、チャネルを求めて競合するための同じ競合ウィンドウサイズf(3、D
5)を2倍に設定する。
【0152】
図37に、競合ウィンドウを使用してRTAパケット送信間の競合衝突を回避する別の考えられる解決策を示す実施形態例750を示す。この例は、重複するRTA-SPの数及びその他のパラメータの変化に従って競合ウィンドウサイズを動的に計算できる点を除き、上記の例と同じものである。
【0153】
図示のように、RTAパケットの再送回数を表すRTAパケットの再試行カウントをrによって示す。競合ウィンドウサイズを計算する関数は、f(n,Di,r)で示される。例えば、1つの考えられる競合ウィンドウサイズの計算はf(n,Di,r)=2n+Di/c×rであり、cは定数である。
【0154】
RTA-SP752の最初には、同時にチャネルを求めて競合する3つのRTA-SP、具体的にはSTA0 754、STA2 756及びSTA5 760に関連するRTA-SPが存在し、これらのSTAは、n=3に設定することによって自機の競合ウィンドウサイズを決定し、これらのバックオフは、762a、762b及び762cであることが分かる。これらの全てのRTAパケットは初めて送信されるので、関数f(n,Di,r)においてr=1に設定する。図示のように、STA2が最初にチャネルアクセス権を獲得してSTA0 754にRTAパケット764を送信し始め、一方でSTA6 758及びSTA5 760は、マークCCA使用中766a、766bを設定する。STA0は、受信後にST2 756にACK768を送信する。
【0155】
この図では、次にSTA0 754及びSTA5 760がバックオフ770a、770bを使用してチャネルを求めて競合することが分かる。STA5は、チャネルアクセス権を獲得する第2のSTAであってSTA6 758にRTAパケット772を送信し、STA0 754及びSTA2 756は、CCA使用中774a、774bを設定する。ACKの不在によって示すように、STA6への初期送信は失敗している。
【0156】
次に、STA5は、RTAパケットを再送するためにチャネルを求めて再競合する必要がある。今回、STA5は、STA2がRTA-SPを終了しており、チャネルを求めて競合しているRTA-SPが2つしか存在しないことを認識している。STA5は、n=2及びr=2である関数f(n,Di,r)を使用して競合ウィンドウサイズを計算する。従って、STA0及びSTA5の両方がバックオフ766a、766bを使用してチャネルを求めて競合することが分かる。STA5 760は、チャネルを取得してSTA6 758にパケット778を送信し、その時間中にSTA0及びSTA2はCCA使用中780a、780bを有する。STA6は、パケットの受信後にACK782で応答する。
【0157】
この時点でSTA0のみがパケットを有しており、n=1及びr=1であるバックオフ784の後に直ちにチャネルにアクセスしてSTA2にRTAパケット786を送信し、一方でSTA5及びSTA6はCCA使用中788a、788bである。STA2 756は、パケットの受信時にSTA0 754にACK789を返送する。
【0158】
図38に、複数の重複するRTA-SP792において競合ウィンドウを使用してRTAパケット送信間の競合衝突を回避する第3の解決策である実施形態例790を示す。この例では、STAが競合に勝つ度に、このSTAが1回のRTAパケット送信を終了した後に全てのSTAが自機のバックオフ時間をリセットしてチャネルのために再競合する。
【0159】
この例では、
図36に示すシナリオと同じシナリオについて検討する。競合ウィンドウサイズを計算する関数f(n,D
i)は、
図36に示すものと同じとすることができるが、要望に応じて
図37に示すような関数f(n,D
i,r)又はその他の関数を使用することもできる。
【0160】
全てのSTAは、あるSTAがチャネルを取得する度に競合ウィンドウサイズに基づいてバックオフ遅延を設定し、チャネルを求めて同時に競合し始める。バックオフ時間の最も短いSTAがチャネルアクセス権を獲得してRTAパケットを送信する。このSTAがパケット送信を終了した後に、全てのSTAがバックオフ時間をリセットしてチャネルを求めて競合し、以下同様である。
【0161】
図38に示すように、STA0 794、STA2 796及びSTA5 800は、図示のバックオフ802a、802b及び802cを使用して自機の競合ウィンドウサイズをそれぞれf(3,D
0)、f(3,D
2)及びf(3,D
5)に設定する。バックオフ遅延は、ゼロ(0)と競合ウィンドウサイズとの間の一様な確率変数によって決定することができる。STA2のバックオフ遅延が最も短かったため、STA2が競合に勝ってSTA0 794にRTAパケット804を送信し、一方でSTA6 798及びSTA5 800は、CCA使用中806a、806bを有する。STA0は、RTAパケットを受け取ると受信をACK(確認)する(808)。
【0162】
STA0及びSTA5は、この最初の送信に成功すると、競合ウィンドウサイズf(2,D0)及びf(2,D5)を使用して自機のバックオフ時間をリセットし、この図にはそれぞれバックオフ810a、810bを示す。この期間では、STA5がチャネルアクセス権を獲得してSTA6 798にRTAパケット812を送信し、一方でSTA0及びSTA2はCCA使用中814、816を有する。しかしながら、このパケット送信は失敗しており、STA0及びSTA5は、チャネルを求めて競合するRTA-SPが未だ2つ存在すると認識している。これらの局は、STA5が送信を終了した(すなわち、ACKタイムアウト)後に競合ウィンドウサイズf(2,D0)及びf(2,D5)を使用して自機のバックオフ時間をリセットし、この図にはそれぞれバックオフ818a、818bを示す。STA5は、再びチャネルアクセス権を獲得してSTA6 798にRTAパケット820を再送し、一方でSTA0及びSTA2はCCA使用中状態822a、822bにある。この送信は成功し、STA6はACK823で応答する。
【0163】
その後、STA0は、自機がチャネルを求めて競合している唯一のSTAであると認識してバックオフ遅延を除外して824、STA2にRTAパケット826送信し始め、一方でSTA6及びSTA5はCCA使用中状態828a、828bにある。STA2は、パケットを受け取るとACK830で応答してパケット送信を完了する。
【0164】
4.7.5.将来的なチャネル時間予約
本節では、STAが予めチャネルアクセス権を獲得してRTA-SPのためにチャネルを予約できることについて説明する。本節では、RTA-SPの開始前にSTAがチャネルアクセス権を獲得することを可能にする1つの方法を示す。開示する技術は、RTA-SPにおけるパケット送信のためにSTAが予めチャネルを占有することを可能にするために、RTA-RTS/CTS交換を使用することができる。RTA-RTS/CTS交換は、STAにおけるNAVを設定することによってチャネルを占有し、RTS/CTS交換に類似している。RTA-RTS/CTS交換は、通常のRTS/CTS交換に比べて以下の特徴を有する。STAは、RTA-RTSフレームを送信すると、チャネル占有の成功を示すRTA-CTSを受け取る。RTA-RTS/CTSフレームは、RTA-RTS/CTS交換によって占有されるチャネルを使用して送信されるトラフィック情報を伝える。CTSを送信するSTAは、RTS/CTS交換の最後とRTA-SPの開始との間の間隔中に、チャネルをCCA使用中に保つために複数の信号フォーマットを添付することができる。本節では、RTA-RTS/CTS交換の詳細、及びこれをチャネル占有のためにどのように使用できるかについて説明する。
【0165】
図39に、以下のフィールドを有するRTA-RTSフレームの実施形態例850を示す。(a)フレーム制御フィールドは、フレームのタイプを示す。(b)継続時間フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。(c)RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。(d)TAフィールドは、フレームを送信したSTAのアドレスを含む。(e)RTAトラフィック指示(Indication of RTA Traffic)フィールドは、本明細書では1ビットフィールドとして例示する、RTA-RTS/CTS交換後のパケット送信がRTAであるか否かを示す短いフィールドである。このビットが第1の状態(例えば「1」)に設定された場合、パケット送信はRTAである。一方で、このビットが第2の状態(例えば「0」)に設定された場合、パケット送信は非RTAパケット送信である。(f)RTA Session ID(RTAセッションID)フィールドは、RTAセッションの識別情報を示す。このフィールドの内容は、
図11に示す。このフィールドは、RTA-SPにマッピングするために使用することができる。(g)優先度フィールドは、RTA-RTS/CTS交換後に送信されるRTAトラフィックの優先度を示す。(h)このフレームは、フレームチェックシーケンス(FCS)で終了する。
【0166】
図40に、以下のフィールドを有するRTA-CTSフレームの実施形態例870を示す。(a)フレーム制御フィールドは、フレームのタイプを示す。(b)継続時間フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。(c)RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。(d)RTAトラフィック指示フィールドは、RTA-RTS/CTS交換後のパケット送信がRTAであるか否かを示す1ビットフィールドなどの短いフィールドである。このビットが第1の状態(例えば「1」)に設定された場合、パケット送信はRTAである。一方で、第2の状態(例えば「0」)に設定された場合、このパケット送信は非RTAパケット送信である。(e)RTAセッションIDフィールドは、RTAセッションの識別情報を示す。このフィールドの内容は、
図11に示す。このフィールドは、RTA-SPにマッピングするために使用することができる。(f)優先度フィールドは、RTA-RTS/CTS交換後に送信されるRTAトラフィックの優先度を示す。(g)このフレームは、フレームチェックシーケンス(FCS)で終了する。
【0167】
以下の図には、RTA-SPにわたるチャネル占有のためにどのようにRTA-RTS/CTS交換を使用するかについて説明する5つの例を示す。全ての例は、
図7に示すようなネットワークトポロジについて検討するものである。少なくとも1つの実施形態では、これらの例のRTA-RTS/CTSフレームを通常のRTS/CTSフレームに置き換えることができる。
【0168】
図41に、AP及びSTAがRTA-RTS/CTS交換を使用してRTA-SPにわたって予めチャネルを占有する実施形態例890を示す。この例には、STA2 892、STA0 894、スリープ中のSTA896及びその他のSTA898が見られる。この例では、APがSTAにRTA-RTSフレームを送信する場合のシナリオについて検討する。なお、RTA-RTS/CTS交換は、STAによってRTA-RTSフレームが送信される場合と同じである。
【0169】
この例に示すように、STA2は、RTA-SP1にわたって予めチャネルを占有すると決定する。テーブル8で説明したように、STA0(AP)は、RTA-AP1の最中は受信側である。STA2は、RTA-SP1 910にわたるチャネル占有要求を示すトラフィック情報を伝えるRTA-RTSフレーム900を生成してSTA0 894に送信する。STA0は、STA2からRTA-RTSフレームを受け取り、RTA-RTSフレームによって伝えられるトラフィック情報を抽出して、自機のRTAチャネルスケジューリングテーブルにリストされたRTA-SPと比較する。STA0は、RTA-RTSフレームがRTA-SP1にわたるチャネル占有を要求していると認識し、STA2にRTA-CTSフレーム902を返送する。STA2がRTA-CTSフレームを受け取ると、チャネルは正常に占有される。
【0170】
他の(起動中の)STA898は、STA2がRTA-RTS900を送信した後に、NAVをRTA-RTS904に設定し、STA0からの応答後にNAVをRTA-CTS907に設定する。
【0171】
RTA-RTS/CTS交換が行われる時にいくつかのSTA896がスリープモードである場合、これらのSTAは、RTA-RTS/CTSフレームの感知(受信)も自機のNAVの設定も行わないことができる。その場合、これらのスリープ中のSTAは、RTA-CTSフレームの最後とRTA-SPの開始との間の間隔中に起動してパケット送信を開始することができる。この状況を防ぐために、少なくとも1つの実施形態(モード)では、受信側STAがRTA-CTSフレームの後にパケット拡張(PE)906を追加することができる。この図には、スリープ中のSTA896がPE906中に起動時間908を有し、これに応答してCCA使用中909を設定することを示す。PEは、チャネルを介してCCA使用中を生じるいずれかのタイプの信号とすることができる。例えば、PEは、(a)RTA-CTSフレームのパディング信号、(b)RTA-CTSフレームの後の別のMACフレーム(これらの2つのフレームはPLCPヘッダを共有して1つのA-MPDUパケットを構成する)、(c)別の独立パケット、又は(d)ランダムノイズとすることができる。また、この間隔時間は、送信側STAが受信側STAにいずれかのパケット送信又はノイズを送信するために使用することもできる。この例では、STA2が、チャネルのために競合することなくRTA-SP1 910の開始時にRTAパケット912を送信することが分かる。STA0は、パケット送信を受け取って確認応答する(914)。
【0172】
図42に、2つのSTA(非AP)がRTA-RTS/CTS交換を使用してRTA-SPにわたって予めチャネルを占有する例の実施形態例930を示す。テーブル8で説明したように、STA3とSTA4との間のRTAパケット送信のためにRTA-SP4がスケジュールされる。図示のように、STA3は、RTA-SP4の開始前にチャネルを占有するためにSTA4にRTA-RTSフレームを送信する。RTA-RTS/CTS交換の手順は
図41のものと同じであり、具体的には以下の通りである。
【0173】
AP STA0 932は、これらの通信に関与しない。STA3 934は、RTA-SP1にわたるチャネル占有要求を示すトラフィック情報を伝えるRTA-RTSフレーム942を生成してSTA4 936に送信する。STA4は、STA3からRTA-RTSフレームを受け取り、そこからトラフィック情報を抽出し、これを自機のRTAチャネルスケジューリングテーブルにリストされたRTA-SPと比較する。STA4は、RTA-RTSフレームがRTA-SP4にわたるチャネル占有を要求していると認識し、STA3にRTA-CTSフレーム944を返送する。STA3がRTA-CTSフレームを受け取ると、チャネルは正常に占有される。
【0174】
他の(起動中の)STA940は、STA3がRTA-RTS942を送信した後にNAVをRTA-RTS952に設定し、STA3からの応答後にNAVをRTA-CTS950に設定する。
【0175】
RTA-RTS/CTS交換が行われる時にいくつかのSTA938がスリープモードである場合、これらのSTAは、RTA-RTS/CTSフレームの感知(受信)自機のNAVの設定も行わず、従って受信側によってパケット拡張(PE)948が送信される。従って、この図には、スリープ中のSTA938が起動してCCA使用中954を設定することを示す。この例のSTA3は、チャネルのために競合することなくRTA-SP4 956の開始時にRTAパケット958を送信することが分かる。STA4は、パケット送信を受け取って確認応答する(960)。
【0176】
図43に、2つの非AP STAが、APからの協力を伴ってRTA-RTS/CTS交換を使用して通信してRTA-SPにわたって予めチャネルを占有できる別の方法の実施形態例970を示す。この例におけるネットワークシナリオは、前回の例のものと同じである。図示のように、STA0(AP)972は、STA3 974の代わりにチャネルを占有するためにSTA4 976にRTA-RTSフレーム982を送信する。この結果、STA4 976はRTA-CTSフレーム984を返送する。RTA-RTSフレーム及びRTA-CTSフレームは、いずれもRTAセッション情報を伝えているので、STA3は、これらのフレームがRTAパケット送信(すなわち、RTA-SP4 996)にわたってチャネルを占有するために使用されると認識する。STA3は、これらの2つのフレームを受け取った後にNAVを設定しない。他のSTA980は、RTA-RTS982を受け取ったことに応答してNAV(RTA-RTS)986を設定し、RTA-CTS984を受け取った後にNAV(RTA-CTS)990を設定する。PE988中に、スリープ中のSTA978のうちの1つ又は2つ以上が起動して(992)CCA使用中994を設定することが分かる。STA3 974は、RTA-SP4 996の到着時にRTAセッション4においてRTAパケット998を送信し、STA4からACK1000を受け取る。
【0177】
図44に、将来的なチャネル時間予約のみのためにRTA-CTSを使用する実施形態例1010を示す。受信側STAは、そのRTA-SPにわたって予めチャネルを占有することのみのためにRTA-CTSフレームを使用することができる。この例におけるネットワークシナリオは、
図41のものと同じである。図示のように、STA0 1014は、RTA-SP1 1030にわたって予めチャネルを占有するためにRTA-CTSフレーム1020を送信する。STA2 1012は、RTA-SP1中に自機が送信機であると認識してNAVを設定しないが、他のSTA1018は、NAV(RTA-CTS)1024を設定してRTA-SP1中にquiet状態を保ち、スリープ中のSTA1016は、PE間隔1022中などに起動する1026場合、CCA使用中1026を設定する。この例における方法は、APとSTAとの間のRTA-SP、及びSTA(非AP)間のRTA-SPにわたる将来的なチャネル時間を予約するために利用することができると理解されたい。STA2 1012は、この例を完了するために、RTA-SP1 1030の開始時にRTAパケット1032を送信し、その後にSTA0 1014からACK1034を受け取ることが分かる。
【0178】
図45に、STAが通常のRTSフレームを送信してRTA-SPにわたって予めチャネルを占有する実施形態例1050を示す。この例におけるネットワークシナリオは、
図41のものと同じである。
図45に示すように、STA2 1052は、AP STA0 1054に通常のRTSフレーム1060を送信する。その結果、STA0は、近い将来にRTA-SP1がスケジュールされると認識し、従ってRTA-SP1 1072の情報を伝えるRTA-CTSフレーム1062をSTA2に返送する。STA2は、RTA-CTSフレームを受け取り、このフレームがRTA-SP1にわたってチャネルを占有するために使用されると認識する。他のSTA1058は、RTS1060に応答してNAV(RTS)1064を設定し、RTA-CTS1062を受け取った後にNAV(CTS)1067を設定し、RTA-SP1中にquiet状態を保つのに対し、スリープ中のSTA1056は、PE間隔1066中などに起動する1068場合、CCA使用中1070を設定する。STA2 1052は、この例を完了するために、RTA-SP1 1072の時間になるとRTAパケット1074を送信し、その後にSTA0 1054からACK1076を受け取る。
【0179】
5.実施形態の一般的範囲
提示した技術の説明した強化は、様々な無線通信回路内に容易に実装することができる。また、無線通信回路が、1又は2以上のコンピュータプロセッサ装置(例えば、CPU、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、コンピュータ対応ASICなど)、及び命令を記憶する関連するメモリ(例えば、RAM、DRAM、NVRAM、FLASH(登録商標)、コンピュータ可読媒体など)を含むように実装されることにより、メモリに記憶されたプログラム(命令)がプロセッサ上で実行されて、本明細書で説明した様々なプロセス法のステップを実行することが好ましいと理解されたい。
【0180】
当業者は、無線パケット通信に関連するステップを実行するコンピュータ装置の使用を認識しているため、簡略化のために図にはコンピュータ及びメモリデバイスを示していない。提示した技術は、メモリ及びコンピュータ可読媒体が非一時的であり、従って一時的電子信号を構成しない限り、これらに関して限定するものではない。
【0181】
本明細書では、コンピュータプログラム製品としても実装できる、本技術の実施形態による方法及びシステム、及び/又は手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式又はその他の計算表現のフローチャートを参照して本技術の実施形態を説明することができる。この点、フローチャートの各ブロック又はステップ、及びフローチャートのブロック(及び/又はステップ)の組み合わせ、並びにあらゆる手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現は、ハードウェア、ファームウェア、及び/又はコンピュータ可読プログラムコードの形で具体化された1又は2以上のコンピュータプログラム命令を含むソフトウェアなどの様々な手段によって実装することができる。理解されるように、このようなあらゆるコンピュータプログラム命令は、以下に限定するわけではないが、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ、又は機械を生産するための他のあらゆるプログラマブル処理装置を含む1又は2以上のコンピュータプロセッサ上によって実行して、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で実行されるコンピュータプログラム命令が、(単複の)特定される機能を実施するための手段を生み出すようにすることができる。
【0182】
従って、本明細書で説明したフローチャートのブロック、並びに手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現は、(単複の)特定の機能を実行する手段の組み合わせ、(単複の)特定の機能を実行するステップの組み合わせ、及びコンピュータ可読プログラムコードロジック手段の形で具体化されるような、(単複の)特定の機能を実行するコンピュータプログラム命令をサポートする。また、本明細書で説明したフローチャートの各ブロック、並びに手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現、及びこれらの組み合わせは、(単複の)特定の機能又はステップを実行する専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、又は専用ハードウェアとコンピュータ可読プログラムコードとの組み合わせによって実装することもできると理解されるであろう。
【0183】
さらに、コンピュータ可読プログラムコードなどの形で具体化されるこれらのコンピュータプログラム命令を、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置に特定の態様で機能するように指示することができる1又は2以上のコンピュータ可読メモリ又はメモリ装置に記憶して、これらのコンピュータ可読メモリ又はメモリ装置に記憶された命令が、(単複の)フローチャートの(単複の)ブロック内に指定される機能を実施する命令手段を含む製造の物品を生産するようにすることもできる。コンピュータプログラム命令をコンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置によって実行し、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で一連の動作ステップが実行されるようにしてコンピュータで実施される処理を生成し、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で実行される命令が、(単複の)フローチャートの(単複の)ブロック、(単複の)手順、(単複の)アルゴリズム、(単複の)ステップ、(単複の)演算、(単複の)数式、又は(単複の)計算表現に特定される機能を実施するためのステップを提供するようにすることもできる。
【0184】
さらに、本明細書で使用する「プログラム」又は「プログラム実行文」という用語は、本明細書で説明した1又は2以上の機能を実行するために1又は2以上のコンピュータプロセッサ実が行できる1又は2以上の命令を意味すると理解されるであろう。命令は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで具体化することができる。命令は、装置の非一時的媒体に局所的に記憶することも、又はサーバなどに遠隔的に記憶することもでき、或いは命令の全部又は一部を局所的に又は遠隔的に記憶することもできる。遠隔的に記憶された命令は、ユーザが開始することによって、或いは1又は2以上の要因に基づいて自動的に装置にダウンロード(プッシュ)することができる。
【0185】
さらに、本明細書で使用するプロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、中央処理装置(CPU)及びコンピュータという用語は、命令、並びに入力/出力インターフェイス及び/又は周辺装置との通信を実行できる装置を示すために同義的に使用されるものであり、プロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、CPU及びコンピュータという用語は、単一の又は複数の装置、シングルコア装置及びマルチコア装置、及びこれらの変種を含むように意図するものであると理解されるであろう。
【0186】
本明細書の説明から、本開示は、限定ではないが以下の内容を含む複数の実施形態を含むと理解されるであろう。
【0187】
1.ネットワークにおける無線通信装置であって、(a)自機の受信エリア内のローカルエリアネットワーク(WLAN)上の少なくとも1つの他の無線局と少なくとも1つのチャネルを介して無線で通信するように構成された無線通信回路と、(b)WLAN上で動作するように構成された局内の、前記無線通信回路に結合されたプロセッサと、(c)プロセッサが実行できる命令を記憶した非一時的メモリとを備え、(d)前記命令は、プロセッサによって実行された時に、(d)(i)リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックと非RTAトラフィックとが共存するキャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)をサポートするネットワークを介した通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケットの通信及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするように構成されたWLAN局として前記無線通信回路を動作させることと、(d)(ii)リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、(d)(iv)予想されるRTAパケット到着時間に基づいて、リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックを送信するためのチャネル時間をスケジュールすることと、(d)(v)スケジュールされたチャネル時間情報を近隣無線局と共有することと、(d)(vi)複数のRTAトラフィックがチャネルを求めて競合している時にチャネル競合衝突を防ぐために、近隣無線局の少なくとも1つのスケジュールされたチャネル時間に基づいて、スケジュールされたチャネル時間を調整することと、を含むステップを実行する、装置。
【0188】
2.ネットワークにおける無線通信装置であって、(a)自機の受信エリア内のローカルエリアネットワーク(WLAN)上の少なくとも1つの他の無線局と少なくとも1つのチャネルを介して無線で通信するように構成された無線通信回路と、(b)WLAN上で動作するように構成された局内の、前記無線通信回路に結合されたプロセッサと、(c)プロセッサが実行できる命令を記憶した非一時的メモリとを備え、(d)前記命令は、プロセッサによって実行された時に、(d)(i)リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックと非RTAトラフィックとが共存するキャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)をサポートするネットワークを介した通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケットの通信及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするように構成されたWLAN局として前記無線通信回路を動作させることと、(d)(ii)事前ネゴシエーション情報又はパケットヘッダ情報を使用することに応答して、リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、(d)(iv)予想されるRTAパケット到着時間に基づいて、リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックを送信するためのチャネル時間をスケジュールすることと、(d)(v)スケジュールされたチャネル時間情報を近隣無線局と共有することと、(d)(vi)複数のRTAトラフィックがチャネルを求めて競合している時にチャネル競合衝突を防ぐために、近隣無線局の少なくとも1つのスケジュールされたチャネル時間に基づいて、スケジュールされたチャネル時間を調整することと、(d)(vii)RTAトラフィック送信のためのチャネル時間をスケジュールするプロセス中に、RTAパケット送信のためのスケジュールされたチャネル時間中に非RTAパケットの送信を控えることと、を含むステップを実行する、装置。
【0189】
3.ネットワークにおける無線通信の実行方法であって、装置は、(a)リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックと非RTAトラフィックとが共存するキャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)をサポートするネットワークを介した通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケットの通信及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするように構成されたWLAN局として無線通信回路を動作させることと、(b)リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、(c)予想されるRTAパケット到着時間に基づいて、リアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィックを送信するためのチャネル時間をスケジュールすることと、(d)スケジュールされたチャネル時間情報を近隣無線局と共有することと、(e)複数のRTAトラフィックがチャネルを求めて競合している時にチャネル競合衝突を防ぐために、近隣無線局の少なくとも1つのスケジュールされたチャネル時間に基づいて、スケジュールされたチャネル時間を調整することと、を含む方法。
【0190】
4.CSMA/CAが適用され、システム/装置内にリアルタイムアプリケーション(RTA)トラフィック及び非RTAトラフィックが共存する場合にパケットの送信を実行する無線通信システム/装置であって、(a)RTAトラフィックと非RTAトラフィックとを区別することと、(b)予想されるRTAパケットの到着に基づいて、RTAトラフィックを送信するためのチャネル時間をスケジュールすることと、(c)スケジュールされたチャネル時間を近隣STAと共有することと、(d)近隣STAのスケジュールされたチャネル時間に基づいて、スケジュールされたチャネル時間を調整することと、(e)複数のRTAトラフィックがチャネルを求めて競合している時にチャネル競合衝突を回避することと、を含む無線通信システム/装置。
【0191】
5.前記命令は、リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別するようにプロセッサによって実行された時に、事前ネゴシエーション情報又はパケットヘッダ情報を使用することに応答してRTAトラフィックと非RTAトラフィックとを区別することを含むステップをさらに実行する、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0192】
6.前記命令は、プロセッサによって実行された時に、無線局がアクセスポイント(AP)として動作し、スケジュールされたチャネル時間情報をそのビーコンにおいて発行して、スケジュールされたチャネル時間を自機の近隣無線局に広告することを含むステップをさらに実行する、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0193】
7.前記命令は、プロセッサによって実行された時に、近隣無線局のスケジュールされたチャネル時間を受け取り、情報を無線局のBSSのタイミング同期機能(TSF)において解析することを含むステップをさらに実行する、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0194】
8.前記命令は、プロセッサによって実行された時に、RTAトラフィックを送信するためのチャネル時間をスケジュールするプロセス中に、RTAパケット送信のためのスケジュールされたチャネル時間中に非RTAパケットの送信を控えることを含むステップをさらに実行する、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0195】
9.前記命令は、プロセッサによって実行された時に、チャネル競合衝突を回避しながらチャネルのための競合をいつ開始すべきであるかを決定するためにRTA内部タイマを利用することを含むステップをさらに実行する、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0196】
10.前記命令は、RTA内部タイマを利用するプロセッサによって実行された時に、RTAパケットの目標遅延時間に基づいて前記RTA内部時間をランダム化することをさらに含む、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0197】
11.前記命令は、プロセッサによって実行された時に、短い送信機動作期間(TXOP)で送信要求(RTS)形態のシグナリングを利用して、RTAパケット送信のための将来的なチャネル時間を予約することを含むステップをさらに実行する、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0198】
12.事前ネゴシエーション情報又はパケットヘッダ情報を使用することに応答して、RTAトラフィックと非RTAトラフィックとを区別することをさらに含む、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0199】
13.無線局がアクセスポイント(AP)として動作し、スケジュールされたチャネル時間情報をそのビーコンにおいて発行して、スケジュールされたチャネル時間を自機の近隣無線局に広告することを含む、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0200】
14.近隣無線局のスケジュールされたチャネル時間を受け取り、情報を無線局のBSSのタイミング同期機能(TSF)において解析することをさらに含む、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0201】
15.RTAトラフィックを送信するためのチャネル時間をスケジュールするプロセス中に、RTAパケット送信のためのスケジュールされたチャネル時間中に非RTAパケットの送信を控えることをさらに含む、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0202】
16.チャネル競合衝突を回避しながらチャネルのための競合をいつ開始すべきであるかを決定するためにRTA内部タイマを利用することをさらに含む、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0203】
17.RTAパケットの目標遅延時間に基づいて前記RTA内部時間をランダム化することをさらに含む、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0204】
18.短い送信機動作期間(TXOP)で送信要求(RTS)形態のシグナリングを利用して、RTAパケット送信のための将来的なチャネル時間を予約することをさらに含む、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0205】
19.事前ネゴシエーションに関する情報又はパケットヘッダ情報に基づいてRTAトラフィックと非RTAトラフィックとを区別することをさらに含む、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0206】
20.自機のスケジュールされたチャネル時間をその近隣STAに広告するAPが、そのビーコンにおいて情報を発行できることをさらに含む、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0207】
21.近隣のスケジュールされたチャネル時間を受け取ったSTAが、情報を自機のBSSのタイミング同期機能(TSF)において解析する、いずれかの先行する実施形態のいずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0208】
22.RTAパケットを送信するSTAが、スケジュールされたチャネル時間とは異なる方法でチャネル時間を使用する、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0209】
23.RTAトラフィック送信のためのチャネル時間をスケジュールするSTAが、RTAパケット送信のためのスケジュールされたチャネル時間中に非RTAパケットの送信を控える、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0210】
24.チャネル競合衝突を回避するSTAが、チャネルを求めて競合し始めるためにRTAパケットの目標遅延時間に基づいて値をランダム化できるRTA内部タイマを使用する、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0211】
25.チャネル競合衝突を回避するSTAが、短いTXOPでRTS様の信号を使用して、RTAパケット送信のための将来的なチャネル時間を予約する、いずれかの先行する実施形態の装置又は方法。
【0212】
本明細書で使用する単数形の「a、an(英文不定冠詞)」及び「the(英文定冠詞)」は、文脈において別途明確に示されていない限り複数形の照応を含む。ある物体に対する単数形での言及は、明確にそう述べていない限り「唯一」を意味するものではなく、「1又は2以上」を意味する。
【0213】
本明細書で使用する「組(set)」という用語は、1又は2以上の物体の集合を意味する。従って、例えば物体の組は、単一の物体又は複数の物体を含むことができる。
【0214】
本明細書で使用する「実質的に(substantially)」及び「約(about)」という用語は、わずかな変動の記述及び説明のために使用するものである。これらの用語は、事象又は状況に関連して使用した時には、これらの事象又は状況が間違いなく発生する場合、及びこれらの事象又は状況が発生する可能性が非常に高い場合を意味することができる。これらの用語は、数値に関連して使用した時には、その数値の±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下などの、±10%以下の変動範囲を意味することができる。例えば、「実質的に」整列しているということは、±5°以下、±4°以下、±3°以下、±2°以下、±1°以下、±0.5°以下、±0.1°以下、又は±0.05°以下などの、±10°以下の角度変動範囲を意味することができる。
【0215】
また、本明細書では、量、比率及びその他の数値を範囲形式で示すこともある。このような範囲形式は、便宜的に簡素化して使用するものであり、範囲の限界として明確に指定された数値を含むが、この範囲に含まれる全ての個々の数値又は部分的範囲も、これらの各数値及び部分的範囲が明確に示されているかのように含むものであると柔軟に理解されたい。例えば、約1~約200の範囲内の比率は、約1及び約200という明確に列挙した限界値を含むが、約2、約3、約4などの個々の比率、及び約10~約50、約20~約100などの部分的範囲も含むと理解されたい。
【0216】
本明細書の説明は多くの詳細を含んでいるが、これらは本開示の範囲を限定するものではなく、現在のところ好ましい実施形態の一部を例示するものにすぎないと解釈すべきである。従って、本開示の範囲は、当業者に明らかになると考えられる他の実施形態も完全に含むと理解されるであろう。
【0217】
本開示内の「A、B及び/又はC」などの表現構造は、A、B又はCのいずれか、或いは項目A、B及びCのいずれかの組み合わせが存在し得ることを表す。「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」の後にリストされた一群の要素が続くものなどを示す表現構造は、該当する際にはこれらのリストされた要素のいずれかの考えられる組み合わせを含む、これらの一群の要素のうちの少なくとも1つが存在することを示す。
【0218】
本明細書における「ある実施形態」、「少なくとも1つの実施形態」又は同様の実施形態という言い回しについて言及する参照は、説明する実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造又は特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを示す。従って、これらの様々な実施形態の表現は、必ずしも全てが同じ実施形態、又は説明されている他の全ての実施形態とは異なる特定の実施形態を意味するわけではない。実施形態という表現は、所与の実施形態の特定の特徴、構造又は特性を、開示する装置、システム又は方法の1又は2以上の実施形態においていずれかの好適な形で組み合わせることができることを意味するものとして解釈すべきである。
【0219】
当業者に周知の本開示の実施形態の要素の構造的及び機能的同等物も、引用によって本明細書に明確に組み入れられ、本特許請求の範囲に含まれるように意図される。さらに、本開示の要素、構成要素又は方法ステップは、これらが特許請求の範囲に明示されているかどうかにかかわらず、一般に公開されるように意図するものではない。本明細書における請求項の要素については、その要素が「~のための手段」という表現を使用して明確に示されていない限り、「ミーンズプラスファンクション」の要素として解釈すべきではない。また、本明細書における請求項の要素については、その要素が「~のためのステップ」という表現を使用して明確に示されていない限り、「ステッププラスファンクション」の要素として解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0220】
130 実施形態例
132 送信側においてRTSトラフィックを識別
134 MAC層が上位層からトラフィックを受信
136 RTAトラフィックを識別するために上位層によって埋め込まれた情報を抽出
138 事前ネゴシエーションによって作成されたRTAセッション記録を調べる
140 既存のRTAセッションを発見?
142 トラフィックは非RTAである
144 トラフィックはRTAである
146 終了
テーブル1
送信側においてRTAトラフィックを識別するためのヘッダ情報
テーブル2
RTAセッションステータスのリスト
テーブル3
チャネルリソースのための割り当てオプションのリスト
テーブル4
STA0におけるRTAセッションステータス
割り当て:Flex=柔軟、Fixed=固定、Ran=ランダム
セッションステータス:Act=アクティブ
テーブル5
STA0におけるSTA間RTAセッションの追加
割り当て:Flex=柔軟、Fixed=固定、Algo=アルゴリズム、Ran=ランダム
セッションステータス:Act=アクティブ
テーブル6
時点0msにおけるSTA0のRTAチャネルスケジューリングテーブル
割り当て:Ran=ランダム、RUn=リソースユニット「n」、SSn-空間ストリーム「n」
アクティビティ:Rx=受信、Tx=送信、Arr=準備中
テーブル7
STA5からのビーコン受信(Rx)後のSTA0におけるRTAチャネルスケジューリングテーブル
割り当て:Ran=ランダム、RUn=リソースユニット「n」、SSn-空間ストリーム「n」
アクティビティ:Rx=受信、Tx=送信、Lis=リスン中、Arr=準備中
テーブル8
RTA-SP調整後のSTA0におけるRTAチャネルスケジューリングテーブル
割り当て:Ran=ランダム、RUn=リソースユニット「n」、SSn-空間ストリーム「n」
アクティビティ:Rx=受信、Tx=送信、Lis=リスン中、Arr=準備中
【国際調査報告】