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特表2022-541621可塑化PVCホース及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】可塑化PVCホース及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20220915BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20220915BHJP
   F16L 11/10 20060101ALI20220915BHJP
   F16L 11/08 20060101ALI20220915BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08L27/06
F16L11/04
F16L11/10 B
F16L11/08 B
F16L11/12 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504266
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 IB2020056592
(87)【国際公開番号】W WO2021014270
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019000012819
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509008020
【氏名又は名称】フィット エッセピア
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バッタリア,ルカ
【テーマコード(参考)】
3H111
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111BA34
3H111CB04
3H111CB10
3H111CB11
3H111CB14
3H111CC07
3H111CC12
3H111DB03
3H111EA04
4J002BD041
4J002CD162
4J002CD163
4J002CF032
4J002DE239
4J002DJ009
4J002DJ019
4J002DJ039
4J002DJ049
4J002DL009
4J002EG037
4J002EG047
4J002EH096
4J002EH146
4J002FA089
4J002FD019
4J002FD022
4J002FD026
4J002FD033
4J002FD037
4J002FD038
4J002FD049
4J002FD069
4J002FD079
4J002FD099
4J002FD109
4J002FD169
4J002FD179
4J002FD189
4J002FD209
4J002GT00
(57)【要約】
流体、特に液体を輸送するための可撓性又は螺旋状ホースを製造するための可塑化熱可塑性PVC組成物の使用であって、熱可塑性組成物が、(A)DIN EN ISO 1628-2にしたがって測定されるK値が98以上である懸濁液中の100phrのPVCマトリックスと、(B)100phr~250phrの少なくとも1つの可塑剤と、(C)0.5phr~5phrの少なくとも1つの安定剤と、(D)0.1~10phrの少なくとも1つの補助安定剤と、(E)0~10phrの少なくとも1つの添加剤とから成る、使用。組成物は、UNI EN ISO 868にしたがって測定されるショアA硬度が30 Sh A~60 Sh A、好ましくは30 Sh A~50 Sh Aである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体、特に液体を輸送するための可撓性又は螺旋状ホースを製造するための可塑化熱可塑性PVC組成物の使用であって、前記熱可塑性組成物は、
(A)懸濁液中の100phrのPVCマトリックスと、
(B)100phr~250phrの少なくとも1つの可塑剤と、
(C)0.5phr~5phrの少なくとも1つの安定剤と、
(D)0.1~10phrの少なくとも1つの補助安定剤と、
(E)0~10phrの少なくとも1つの添加剤と、
から成り、
前記PVCマトリックス(A)は、DIN EN ISO 1628-2にしたがって測定されるK値が98以上であり、
前記組成物は、UNI EN ISO 868にしたがって測定されるショアA硬度が30 Sh A~60 Sh A、好ましくは30 Sh A~50 Sh Aである、
可塑化熱可塑性PVC組成物の使用。
【請求項2】
前記PVCマトリックス(A)は、フィラーを含まない又は最大で5phrのフィラーを含有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記PVCマトリックス(A)が、DIN EN ISO 4610にしたがって測定される以下の粒度分布を有する、請求項1又は2に記載の使用:
-粒子の90%以下が0~063mmメッシュ篩上に残存し、
-粒子の5%以下が0.250mmメッシュ篩上に残存する。
【請求項4】
前記PVCマトリックス(A)は、DIN EN ISO 1628-2にしたがって測定される99又は100に等しいK値を有する、請求項a、2又は3に記載の使用。
【請求項5】
前記PVCマトリックス(A)の粒子は、可塑剤の吸収に関してDIN 53417/1にしたがって測定される、35%~55%、好ましくは40%~50%の多孔度を有する、請求項1、2、3又は4に記載の使用。
【請求項6】
前記PVCマトリックス(A)は、UNI EN ISO 60にしたがって計算されたかさ密度が、0.400g/ml~0.500g/ml、好ましくは0.440g/mlである懸濁液中の樹脂である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記少なくとも1つの可塑剤(B)の含有量が、120phr~250phr、好ましくは130phr~210phrである、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記組成物のUNI EN ISO 527にしたがって測定される破断伸びが、250%~450%、好ましくは300%~400%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
ASTM D 3291規格にしたがって測定される相溶性レベルであって、0又は1、好ましくは0である、前記PVCマトリックス(A)中の前記少なくとも1つの可塑剤(B)の相溶性レベルを前記組成物は有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物は、ASTM D 1043規格にしたがって測定される、-49℃以下、好ましくは-70℃未満、より好ましくは-90℃未満である低温可撓性を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
請求項1から10の一項以上に記載の組成物から作製される少なくとも1つの第1の層を有する可撓性ホース。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1の層は、輸送対象の流体と接触しており、前記可撓性ホースは、前記組成物から作製される、ユーザが把持することができる少なくとも1つの第2の外層をさらに備え、前記可撓性ホースは、前記少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層との間に配置される少なくとも1つの補強織物層をさらに備える、請求項11に記載の可撓性ホース。
【請求項13】
請求項1から10の一項以上に記載の組成物から作製される本体と、前記本体中に埋め込まれる少なくとも1つの補強螺旋と、を備える螺旋状ホース。
【請求項14】
請求項1から10の一項以上に記載の組成物を押し出して前記少なくとも1つの第1の層を得るステップを含む、請求項11又は12に記載の可撓性ホースの製造方法。
【請求項15】
-第1のポリマー材料から作製されるコアと、請求項1から10の一項以上に記載の組成物から作製されるシェルとを有するウェビングを押し出すステップと、
-スピンドル上に前記ウェビングを螺旋状に巻回して螺旋状ホースを得るステップと、
を含む、螺旋状ホースの製造方法。
【請求項16】
押出時に、前記組成物は、以下のステップによって調製された顆粒の形態である、請求項14又は15に記載の方法:
-前記成分(A)~(E)を少なくとも1つの第1の所定温度で混合するステップ、
-混合物を第2の所定の温度で加熱するステップ、
-前記混合物を冷却するステップ、
-冷却された前記混合物を押し出して顆粒を得るステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性又は螺旋状ホースの技術分野に関し、特に、可撓性又は螺旋状ホースを製造するための可塑化PVC組成物の使用、そのようなホースを製造する方法、および、そのような組成物から作製される可撓性又は螺旋状ホースに関する。
【0002】
定義
本明細書において、値「phr」は、樹脂すなわち成分(A)100重量部当たりの成分の重量部を示すために使用される。
【0003】
本明細書において、「粒度分布」という用語は、DIN EN ISO 4610にしたがって測定された粒径の寸法分布曲線を示すために使用される。
【0004】
本明細書において、「揮発度」という用語は、表面高さを熱にさらすために、同じ寸法を有する、カレンダ加工によって製造される組成物のシートから得られる、1辺3cm及び2mmに等しい厚さを有する、平面視で正方形の板状の3つのサンプルを使用して決定された、PVC組成物の重量損失の測定値を示すために使用される。サンプルは、重量測定され、その後、所定の温度、この例では80℃に等しい温度の、ATS FAAR Industries srlによって販売されるM250-VFタイプの強制換気オーブン内に配置される。その後、前述の所定の温度で、十分な期間の後、この例では168時間後に、各サンプルの生じ得る重量損失パーセントの平均測定値として、揮発度が計算される。
【0005】
以下は、計算のために使用される式である。
【0006】
【0007】
式中、
-Wは、試験開始時のサンプルの重量であり、
-Wは、試験終了時のサンプルの重量である。
【0008】
本明細書において、用語「PVCマトリックス」及びその派生語は、ポリ塩化ビニルを含有する又はポリ塩化ビニルから成る(consisting of)任意の樹脂又は樹脂の混合物を示すために使用される。
【0009】
本明細書において、用語「可塑剤」及びその派生語は、可塑剤が組み込まれるポリマーの可撓性、加工可能性、及び、伸びを高めることができる化合物又は化合物の混合物を示すために使用される。可塑剤は、混合物の粘度を低下させ、二次相転移温度を低下させ、製品の弾性率を低下させ得る。
【0010】
本明細書において、用語「安定剤」及びその派生語は、ポリマーの分解から生じる小分子(例えばHCl)を捕捉して、より安定な中間体化合物を形成することができる化合物又は化合物の混合物を示すために使用される。
【0011】
本明細書において、「フィラー」という用語及びその派生語は、フィラーの機能を有する、実質的に化学的に不活性な粒子又は線維から作製される固体材料を示すために使用される。
【0012】
本明細書において、用語「添加剤」及びその派生語は、組成物に添加された場合に、組成物の1つ以上の特性を改善する物質を示すために使用される。
【背景技術】
【0013】
可塑化PVCから形成される可撓性ホース及び螺旋状ホースが知られている。
【0014】
前者は、一般に、可塑化PVCから形成される1つ以上の管状層を有し、一般に編組された又はクロスハッチングされた1つ以上の強化織物層を備えていても、備えなくてもよい。可塑化PVC層は押出しによって得られ、一方、編組層又はクロスハッチング層は適切な編組機又はクロスハッチング機によって得られる。このタイプのパイプは、例えば庭及び/又は植物を灌漑するための飲料水の輸送など、様々な用途を有する。
【0015】
螺旋状ホースは、一般に、可塑化PVCから形成される本体を有し、この場合、同様に通常は可塑化PVCから形成される補強螺旋が埋め込まれる。そのようなホースは、補強螺旋を構成する材料から形成されるコアと、本体を構成する材料から形成されるアウターシェルとを有するウェビングを共押し出しした後、円筒状のスピンドル上にウェビングを巻き付け、加工中のホースの対向壁およびウェビングの対向壁を接着してホースを作製することによって得られる。そのようなタイプのホースは、一般に、水泳プール内又はSPA施設内の水の輸送のために使用される。
【0016】
既知の可撓性ホースの欠点は、それらの全体寸法にある。実際のところ、それらの可撓性ホースは、一般に、大きな全体寸法を有する円形コイルで包装されて輸送される。その全体寸法は、使用後の保管中も大きい。実際、この目的のためにトロリー又はサドルが使用され、また、トロリー又はサドル及びホースによって占められる全体の空間はかなり高い。
【0017】
一方、螺旋状ホースは、本質的に地下に敷設され、塩素含有量が高い水と接触する。結果として、厳しい動作条件により、螺旋状ホースが亀裂及び損傷を受け易くなり、その結果、高価で要求の厳しい掘削作業の後に螺旋状ホースを交換しなければならない。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、非常に効果的な可撓性及び/又は螺旋状ホースを提供することによって、上記に示した欠点を克服することである。
【0019】
本発明の他の目的は、最小の全体寸法を有する可撓性ホースを提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、耐久性のある螺旋状ホースを提供することである。
【0021】
以下でより明らかになるこれら及び他の目的は、本明細書中で記載され及び/又は特許請求の範囲に記載されるものにしたがって、可撓性及び/又は螺旋状ホースを製造するための可塑化PVC組成物の使用によって達成される。
【0022】
一般に、本発明に係る可撓性及び/又は螺旋状ホースは、任意の流体、特に任意の液体を輸送するのに有用であり得る。
【0023】
特に、ホースは、飲料水を輸送するための灌漑用ホース又は園芸用ホースであってもよく、一方、螺旋状ホースは、水泳プール又はSPA施設で水を輸送するための水泳プール用ホースであってもよい。
【0024】
可塑化熱可塑性PVC組成物は、
(A)懸濁液中の100phrのPVCマトリックスと、
(B)100phr~250phrの少なくとも1つの可塑剤と、
(C)0.5phr~5phrの少なくとも1つの安定剤と、
(D)0.1~10phrの少なくとも1つの補助安定剤と、
(E)0~10phrの少なくとも1つの添加剤と、
から成っても(consist of)よい。
【0025】
PVCマトリックス(A)は、DIN EN ISO 1628-2にしたがって測定されるK値が、98以上、好ましくは99又は100であってもよい。
【0026】
既知のように、K値は、PVC樹脂の分子量に直接に関連付けられ得る無次元指数であり、様々なタイプのPVC樹脂を比較するために使用される。
【0027】
さらに、PVCマトリックス(A)は、DIN EN ISO 4610にしたがって測定される以下の粒度分布を有してもよい。
-粒子の90%以下が0~063mmメッシュ篩上に残存し、
-粒子の5%以下が0.250mmメッシュ篩上に残存する。
【0028】
一般に、PVCマトリックス(A)の粒子は、可塑剤の吸収に関してDIN 53417/1にしたがって測定される多孔度が34%~55%、好ましくは40%~50%であってもよい。さらにより好ましくは、そのような多孔度は45%であってもよい。
【0029】
また、PVCマトリックス(A)は、UNI EN ISO 60にしたがって計算されたかさ密度が0.400g/ml~0.500g/mlの範囲内、好ましくは0.440g/mlである、懸濁液中の樹脂であってもよい。
【0030】
前述の可塑化PVC組成物では、任意のタイプのそれ自体公知の可塑剤、例えば、DINP、DOTP、TOTM、DIDP、ポリマー可塑剤、DOA DIDA、DINCh(登録商標)、植物性可塑剤(エポキシ化メチルエステル)などが使用され得る。特に、同じ可塑剤(B)の含有量が130phr~210phrの範囲であってもよい。
【0031】
前述の可塑化PVC組成物では、任意のタイプのそれ自体公知の安定剤、例えばCa-Zn、Ba-Zn型、有機Ca型又はスズ型の安定剤が使用され得る。
【0032】
適切な補助安定剤は、エポキシ化大豆油であってもよく、エポキシ化大豆油は、安定剤と相乗的に作用し得る。好適には、補助安定剤は、好ましくは2phr~6phr、さらにより好ましくは3.5phr~5phrの範囲内で混合物中に存在してもよい。
【0033】
前述の可塑化PVC組成物では、任意のタイプのそれ自体公知の添加剤、例えば、外部及び/又は内部潤滑剤、熱安定剤、UV安定剤、顔料、酸化防止剤、抗菌剤、離型剤、殺菌剤、抗菌剤、プロセスアジュバント、帯電防止剤、フィラーが使用され得る。
【0034】
好適には、前述のPVCマトリックスは、フィラーを含まなくてもよく、又は、最大5phrを含有してもよい。実際のところ、フィラーの使用は、PVCマトリックスによる可塑剤の吸収を減少させる。示された最小量は、組成物、したがって、ホースのコストを下げるために、経済的理由で使用され得る。
【0035】
存在する場合、前述の可塑化PVC組成物では、任意のタイプのそれ自体公知のフィラー、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、マイカ、長石、ウォラストナイト、天然シリカ、セラミック若しくはガラスマイクロスフェア、繊維又は植物フィラーが、出願EP10003776.1の開示にしたがって使用され得る。
【0036】
適切な潤滑剤は、Paraloid Paraloid K-125ER(DOW)及び/又はParaloid K-175(DOW)であり得る。一般に、1つ以上の潤滑剤が約0.3phrの値で存在してもよい。
【0037】
前述の特徴のうちの1つ以上のおかげにより、熱可塑性組成物は、比較的多量の可塑剤を吸収することができ、したがって、それによって得られるホースは、高度に可撓性である。一般に、前述の組成物によって得られたホースの各層は、UNI EN ISO 868にしたがって測定されるショアA硬度が30 Sh A~60 Sh A、好ましくは30 Sh A~50 Sh Aであってもよい。
【0038】
また、前述の組成物を用いて得られるホースは、優れた機械的特性も有する。前述の組成物によって得られる各ホース層のUNI EN ISO 527にしたがって測定される破断伸びは、実際のところ、250%~450%、好ましくは300%~400%の値を有し得る。
【0039】
また、前述の組成物を用いて得られるホースは長期間にわたって長持ちする。
【0040】
実際のところ、前述の組成物によって得られる各ホース層は、好ましくは、ASTM D 3291規格にしたがって測定されるPVCマトリックス(A)中の可塑剤(B)の相溶性レベルが0又は1、好ましくは0であり得る。
【0041】
さらに、前述の組成物によって得られる各ホース層は、一般に、ASTM D 1043規格にしたがって測定される低温可撓性が-49℃以下、好ましくは-70℃未満、より好ましくは-90℃未満であり得る。
【0042】
また、前述の組成物によって得られる各ホース層は、0.15%~0.20%、好ましくは0.18%に等しい、上記のように測定される揮発度も有し得る。
【0043】
本発明に係る液体を輸送するための可撓性ホースは、前述の熱可塑性組成物から形成される少なくとも1つの第1の層を有し得、それ自体公知の方法で、熱可塑性組成物を押し出すことによって得られ得る。
【0044】
本発明に係る可撓性ホースは、1つ以上の層を含んでもよく、補強されていても、補強されていなくてもよい。多層ホースの場合、複数の層のうちの1つ以上が前述の組成物から形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【発明を実施するための形態】
【0046】
例えば、図1は、液体を輸送するための多層可撓性ホース1を示しており、多層可撓性ホース1は、輸送対象の流体と接触する第1の層2と、ユーザが把持することができる第2の外層3と、第1の層2と第2の層3との間に配置される少なくとも1つの補強織物層4と、を有し得る。第1の層2および第2の層3は、両方とも前述の組成物で形成されてもよい。
【0047】
本発明に係る螺旋状ホース10は、その一部が例えば図2に示されており、前述の組成物から作製される本体20と、この本体中に埋め込まれる少なくとも1つの補強螺旋30と、を含み得る。
【0048】
それ自体公知の方法で、螺旋状ホース10は、第1のポリマー材料、例えば可塑化PVC製のコアと、前述の組成物製のシェルと、を有するウェビングを押し出すことによって形成され得る。
【0049】
その後、それ自体既知の方法で、ウェビングは、その側壁を接合することによってスピンドル上に螺旋巻回され得、それにより、コアが補強螺旋を形成し、シェルが本体を形成する。
【0050】
可撓性ホース1及び螺旋状ホース10の場合にはいずれも、押出時に、前述の組成物が顆粒であってもよく、これは以下のステップ、
-少なくとも1つの第1の所定温度で成分(A)~(E)を混合するステップと、
-混合物を第2の所定温度、好ましくは140℃で加熱するステップと、
-混合物を冷却して顆粒の形成を可能にするステップと、
-155℃~185℃の温度範囲で組成物の顆粒を押し出すステップと、
によって調製され得る。
【0051】
特に、混合するステップ中に、可塑剤(B)が段階的割合で、すなわち、少なくとも40℃で可塑剤(B)の1/3が、80℃~100℃の温度で残りの2/3が添加されてもよい。
【0052】
以下の実施例に関連して本発明をさらに詳しく説明するが、いずれの場合も本発明の保護範囲を限定すると見なされるべきではない。
【実施例
【0053】
実施例1-可塑剤の吸収
前述の組成物が可塑剤(B)を吸収する能力を評価するために、以下で特定されるように、様々なサンプルが調製された。以下の原材料が使用された。
【0054】
(A)PVCマトリックス:
-以下の特徴を有する、VINNOLIT(登録商標)によって販売されるPVC S 100:
○ 99のK値-ISO1628-2にしたがって測定される;
○ 粒子の85%が0.063mmメッシュ篩上に残存し、
粒子の2%が0.250mmメッシュ篩上に残存する、
粒度分布-ISO 4610にしたがって測定される;
○ ISO 4608にしたがって可塑剤の吸収に関して測定される45%に等しい多孔度;
○ 0.440g/mlのかさ密度-ISO 60にしたがって測定される。
-以下の特徴を有する、VINNOLIT(登録商標)によって販売されるPVC S4170:
○ 70のK値-ISO 1628-2にしたがって測定される;
○ 粒子の97%が0.063mmメッシュ篩上に残存し、
粒子の1%が0.250mmメッシュ篩上に残存する、
粒度分布-ISO 4610にしたがって測定される;
○ ISO 4608にしたがって可塑剤の吸収に関して測定される34%に等しい多孔度;
○ 0.480g/mlのかさ密度-ISO 60にしたがって測定される。

(B)可塑剤:POLYNTによって販売されるTOTMであるDIPLAST(登録商標)TM/ST;
EXXONMOBILによって販売されるDINPであるJayflex(商標)DINP可塑剤;
EASTMANよって販売されるDOTPであるEastman168(商標)ノンフタレート可塑剤;

(C)安定剤:TITANSTUCによって販売されるCa-Zn安定剤であるONE-PACK1;

(D)添加剤:補助安定剤:AMIK PLASTIFICANTI SRLよって販売されるエポキシ化大豆油であるKIMASOL DB。
【0055】
サンプルは、それ自体公知のタイプのBrabenderミキサーを使用して調製された。ショアA硬度は、UNI EN ISO 868にしたがってそれぞれのサンプルごとに測定された。
【0056】
結果が表1に示される。その表は、PVCマトリックス(A)及び可塑剤(B)に関して混合物の含有量の値を示す。それぞれのサンプルに、混合物中に、1.23phrの安定剤及び5phrの補助安定剤が存在する。全てのサンプルはフィラーを含まない。
【0057】
表の1行目はPVCマトリックスのタイプ(K70又はK100)を示し、2行目は可塑剤のタイプを示す。
【0058】
【0059】
表1は、50 Sh A未満の硬度を有する組成物を得るには、100に等しいK値を有するPVCマトリックス(A)及び少なくとも130phrの可塑剤(B)を使用する必要があることを示す。
【0060】
実施例2-室温での機械的特性
機械的特性を比較するために、以下のサンプルが調製された。
【0061】
サンプルA:EXXONにより販売されるSantoprene(登録商標)201-64

サンプルB:PVC K100 100phr
DOTP 115phr
Ca-Zn 1.5phr
エポキシ化大豆油 5phr

サンプルC:PVC K100 100phr
DOTP 82phr
Ca-Zn 1.5phr
エポキシ化大豆油 5phr

サンプルD:PVC K70 100phr
DOTP 83phr
Ca-Zn 1.5phr
エポキシ化大豆油 5phr
【0062】
サンプルは、UNI EN ISO 527及びUNI EN ISO 868にしたがって製造された。
【0063】
使用された材料は、実施例1で言及された材料と同じであった。サンプルA-Dのそれぞれに対して、UNI EN ISO 868規格にしたがって硬度が測定され、UNI EN ISO 527-1規格にしたがって引張強度、極限強度、及び、破断伸びが測定された。
【0064】
測定は、ATS FAAR Industries srlによって販売されるM250-VFタイプの強制換気オーブン内における80℃での168時間にわたる加速エージングの前および後に行なわれた。
【0065】
測定の結果が表2に示され、表2には、前述の加速エージングの前および後における前述の各サンプルについて、5つの試料で測定された値の平均値が示されている。
【0066】
【0067】
表は、サンプルB及びC(PVC K100)が、TPE(サンプルA)と一致する又はそれよりも良好な機械的特性を有するとともに、いずれの場合にも可撓性又は螺旋状ホースの製造に許容可能であることを示す。
【0068】
図3及び図4は、UNI EN ISO 527-1規格にしたがった前述の各サンプルの応力-ひずみ曲線を示す。
【0069】
定性的な比較から、同じ硬度(サンプルC及びD)を考慮すると、PVC K100及びPVC K70は基本的に同じ挙動を示し、一方、より低い硬度(サンプルB)に関して、PVC K100の挙動は、実際の熱可塑性樹脂の挙動よりもTPEの挙動により類似していることが明確に分かる。
【0070】
さらに、前述のサンプルA-Dのそれぞれについて、収縮率レベルも評価された。
【0071】
特に、それらのサンプルのそれぞれに関して、カレンダ加工によって製造された1つ以上の組成物シートから、長さ75mm、幅10mm、及び、厚さ2mmの、平面視で長方形の3つのサンプルが形成される。
【0072】
各サンプルの初期長Lが、ATS FAAR Industries srlによって販売されるM250-VFタイプの強制換気オーブン内への80℃で168時間にわたる導入前に、評価される。
【0073】
その後、各サンプルの最終的な長さLが、オーブンから出る際に評価される。
【0074】
したがって、それぞれのサンプルごとに、長手方向収縮率が以下の式を使用して計算される。
【0075】
式中、
-Lは、オーブン内への導入前のサンプルの長さであり、
-Lは、オーブン内への導入後のサンプルの長さである。
【0076】
3つの異なるサンプルで検出された値の平均が計算される。表3は、3つのサンプルのそれぞれで得られた試験の結果、および、各サンプルA-Dについて得られた平均値を示し、それらから、100に等しいK値を有するPVCマトリックス(A)を含有する組成物の良好な機械的挙動を観察することができる。
【0077】
【0078】
実施例3-可塑剤との相溶性
前述のそれぞれのサンプルB-Dについて、ASTM D 3291規格にしたがって、可塑剤の相溶性レベルが測定された。
【0079】
【0080】
上記に照らして、100に等しいK値と30~60 Sh Aの硬度とを有するPVCマトリックスを含有する組成物では、マイグレーションがほぼゼロの値に等しいことが明確に分かる。
【0081】
実施例4-可塑剤の揮発度
前述の各サンプルA-Dに対して可塑剤の揮発度が測定された。
【0082】
特に、揮発度は、表面高さを熱にさらすために、同じ寸法を有する、カレンダ加工によって製造される組成物のシートから得られた、1辺3cmで、2mmに等しい厚さ有する、平面視で正方形の板状の3つのサンプルを使用して決定された。サンプルは、重量測定され、その後、所定の温度、この例では80℃に等しい温度の、ATS FAAR Industries srlによって販売されているM250-VFタイプの前述の強制換気オーブン内に配置される。その後、前述の所定の温度で、十分な期間の後、この例では168時間後に、各サンプルの生じ得る重量損失パーセントの平均測定値として、揮発度が計算される。
【0083】
以下は、計算のために使用される式である。
式中、
-Wは、試験開始時のサンプルの重量であり、
-Wは、試験終了時のサンプルの重量である。
【0084】
得られた結果が表5に示され、それらの結果は、高い可塑剤含有量にもかかわらず、100に等しいK値及び48又は60 Sh Aに等しい硬度を有するPVCマトリックス(A)を含む組成物が、Santoprene(登録商標)を含有する組成物と同等であることを示している。
【0085】
【0086】
実施例5-低温での機械的特性
サンプルE及びFは、実施例1の材料を使用して、以下の配合にしたがって調製された。
【0087】
サンプルE:PVC K100 100phr
DINP 90phr
Ca-Zn 1.5phr
エポキシ化大豆油 5phr

サンプルF:PVC K100 100phr
DINP 170phr
Ca-Zn 1.5phr
エポキシ化大豆油 5phr
【0088】
図5は、-20℃~100℃でDIN ISO 815-1規格方法Aにしたがって測定された圧縮変形のチャートを示す。
【0089】
そのチャートは、高温ではサンプルEとサンプルFとの間の挙動が類似しているが、低温ではサンプルFがかなり良好な挙動を有することを示す。
【0090】
サンプルG~Lは、実施例1の材料を使用して以下の配合にしたがって調製された。
【0091】
サンプルG:PVC K70 100phr
DINP 50phr
Ca-Zn 1.5phr
エポキシ化大豆油 5phr

サンプルH:PVC K70 100phr
DINP 90phr
Ca-Zn 1.5phr
エポキシ化大豆油 5phr

サンプルI:PVC K100 100phr
DINP 120phr
Ca-Zn 1.5phr
エポキシ化大豆油 5phr

サンプルL:PVC K100 100phr
DINP 210phr
Ca-Zn 1.5phr
エポキシ化大豆油 5phr
【0092】
そのようなサンプルに関して、前述のサンプルFと共に、動的-機械熱分析(DMTA)法を用いてガラス転移温度が評価された。
【0093】
動的機械分光法としても知られるそのような分析方法は、既知のように、サンプルに小さなサイクル(周期的)変形を加え、その結果として生じる応力応答を測定する、又は同等に、サンプル自体にサイクル(周期的)応力を与え、その結果として生じる変形応答を測定する。
【0094】
図6は、温度上昇の関数としての弾性率の推移を示す。
【0095】
K値が100に等しいPVCマトリックス(A)を含有する組成物の弾性率は、幅広い温度範囲でほぼ一定のままであることが明確に分かる。
【0096】
低温で高い可撓性及び良好な機械的特性という結果が得られ、非常に低い温度にさらされた場合に亀裂に対するより大きな耐性を有し得る同じ材料を使用するという点でかなりの利点がある。
【0097】
さらに、表6は、60 Sh A未満の硬度を有するとともに異なるタイプのPVCマトリックス(A)及び可塑剤(B)を含有するサンプルに関して、ASTM D1043規格にしたがって測定された低温可撓性の温度を示す。これらの各サンプルに関して、Ca-Zn型の安定剤を1.5phr使用し、エポキシ化大豆油の補助安定剤を5phr使用した。使用される材料は、上記の実施例1のものである。
【0098】
【0099】
50 Sh Aより高い硬度の場合、低温可撓性温度が異なる組成物間で類似しているように見えるが、50 Sh Aより低いショア硬度値を考慮すると、K値が100に等しいPVCマトリックス(A)でより高い性能が得られることが明確に分かる。
【0100】
これにより、K値が100のPVC組成物の最適な挙動がさらに確認される。
【0101】
実施例6-可撓性ホースの製造
以下の表7にしたがって、前述の組成物(サンプルA~D)を使用して様々なホースサンプルが形成された。提供される各ホースサンプルは、輸送対象の流体と接触する内層と、ユーザが把持することができる外層と、それらの2つの層の間に配置される補強織物層と、を有する。
【0102】
【0103】
そのようなサンプルS1、S2、S3、S4、S5、S7は、特に、上記にしたがって、サンプルを80℃のオーブン内に168時間にわたって保持して、加速エージング後のその収縮率レベルを評価するために、いくつかの試験に供された。表8は得られた結果を示す。
【0104】
【0105】
内層と外層の両方に、50 Sh Aより低い硬度および100に等しいK値を有するPVCマトリックス(A)を有するサンプルでは、70のK値を有するPVCマトリックス(A)を含有する組成物により得られたホースよりも収縮率が良好であることが分かる。
【0106】
表9は、前述の条件下で、前述のサンプルS1、S2、S5、S7に対して行なわれた揮発度試験の結果を示す。
【0107】
【0108】
揮発度試験において、特にK値が70に等しいPVCマトリックスに対して、K値が100に等しいPVCマトリックス(A)を含有する組成物が良好な挙動を示すことが明確に分かる。
【0109】
図7は、ホースを形成する複数の層の間で検出される平均接着度を示す。
【0110】
接着度は、UNI EN ISO 8033及びUNI ISO 6133にしたがって測定された。
【0111】
観察され得るように、K値が100に等しく、内側ホース層及び外側ホース層の硬度が48 Sh Aに等しいPVCマトリックス(A)を含有する組成物は、組成物中に存在する可塑剤の割合が高いにもかかわらず、優れた相互接着を示す。
【0112】
表10は、BS EN 12568:2010にしたがって実施された穿孔試験の結果を示し、これは、60 Sh Aよりも高い硬度を有するPVCマトリックスに対して、100に等しいK値及び48 Sh Aに等しい硬度を有するPVCマトリックス(A)を含有する組成物の最良の結果を示している。
【0113】
【0114】
長さ約1mのホースに3バールの内圧で水を充填して実施した摩耗試験に関する結果も示される。
【0115】
そのようなホースは、図8に示されるように、室温で、屋外床上で引きずられた。
【0116】
特に、引きずり速度は2000m/hであり、水充填ホースの1メートル当たりの重量は160g/mに等しく、被覆引きずり距離は1000mに等しい。
【0117】
その後、摩耗度を、図9の項目内に示される摩耗度と比較することによって、サンプルが視覚的に検査された。図9の項目において、特定された許容限界は4に等しい。
【0118】
摩耗試験は、前述の方法にしたがって実施されたサンプルの加速エージングの前および後に行なわれた。
【0119】
特に、図10Aは、加速エージング試験の前に摩耗試験に供されたホースを示し、一方、図10Bは、サンプルの加速エージング後に摩耗試験に供されたホースを示す。
【0120】
両方の結果は、サンプルが5に等しい摩損度を有することを示し、したがって、図9の項目にしたがって定義可能な「摩耗していない」状態を示す。
【0121】
実施例7-螺旋状ホースの製造
上記のサンプルCの組成物は、硬質PVC補強螺旋を有する螺旋状ホースの製造のために試験された。
【0122】
具体的には、内径152mmおよび76mmの螺旋状ホースが作製された。
【0123】
上記に照らして、ホースが、良好な低温可撓性を有し、したがって、そのようなタイプの性能を必要とする用途で使用され得ることが明確に分かる。例えば、このホースは、水泳プール又はSPA施設で使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
【国際調査報告】