(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ステッチされたセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/20 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
G01L1/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504287
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2020070768
(87)【国際公開番号】W WO2021013918
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019120191.8
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269774
【氏名又は名称】ドイチェ インスティチュート フュル テクスティールント ファザーフォルシュング デンケンドルフ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、サラ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン、パウル
(57)【要約】
本発明は、糸(17、19、33)を用いて担体(16)上にそれをステッチすることによって製造されるセンサ(15)に関する。ステッチングにより、第1の電極(18)、第2の電極(20)及び被覆層(32)が形成される。被覆層(32)は、少なくとも力(F)が被覆層(32)に作用して、被覆層(32)の少なくとも一部を第1の電極(18)及び第2の電極(20)の一部に押し付ける場合に、第1の電極(18)と第2の電極(20)との間に導電接続を生成するために使用され得る。この力(F)は、被覆層(32)に局所的に作用する圧力によって、及び/又は被覆層(32)若しくは担体(16)の曲げによって引き起こされ得る。センサ(15)全体、特に、第1の電極(18)、第2の電極(20)及び被覆層(32)は、共通の担体(16)上にステッチされることだけで製造される。このセンサは、特に単純でかつコスト効率の良い方法で製造することができ、堅牢である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ(15)に加えられる力(F)を検出及び/又は測定するように構成されたセンサ(15)であって、
担体(16)と、
前記担体(16)上にステッチされた少なくとも1つの第1の糸(17)によって形成され、導電性の構成要素を含む第1の電極(18)と、
前記担体(16)上にステッチされた少なくとも1つの第2の糸(19)によって形成され、導電性の構成要素を含む第2の電極(20)であって、2つの電極(18,20)が前記担体(16)上に距離を置いて配置されている、第2の電極(20)と、
前記担体(16)上にステッチされた少なくとも1つの第3の糸(33)によって形成され、導電性の構成要素を含む被覆層(32)であって、被覆層(32)の前記少なくとも1つの第3の糸(33)が、複数の接触部位(34、35)において、第1の電極(18)の前記少なくとも1つの第1の糸(17)及び第2の電極(20)の前記少なくとも1つの第2の糸(19)に隣接している、被覆層(32)と、
を備えるセンサ(15)。
【請求項2】
前記担体(16)と前記被覆層(32)との間の距離を規定する少なくとも1つの距離要素が、前記担体(16)上及び/又は前記電極(18、20)に隣接する前記担体(16)に存在することを特徴とする、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの距離要素は、前記担体(16)上に縫い付けられるか又はステッチされる距離糸(45)によって実現されることを特徴とする、請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記センサ(15)は、第1の電極(18)の第1の接続部(22)と第2の電極(20)の第2の接続部(26)との間の総抵抗(RG)を含み、前記総抵抗(RG)の量は、前記被覆層(32)に作用する力(F)に依存することを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記総抵抗(RG)が、第1の電極(18)の前記少なくとも1つの第1の糸(17)と被覆層(32)の前記少なくとも1つの第3の糸(33)との間の第1の接触抵抗(R1)と、第2の電極(20)の前記少なくとも1つの第2の糸(19)と被覆層(32)の前記少なくとも1つの第3の糸(33)との間の第2の接触抵抗(R2)と、に依存することを特徴とする、請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記総抵抗(RG)が、前記少なくとも1つの第3の糸(33)の流れ抵抗(R3)に依存し、前記流れ抵抗(R3)の量が、被覆層(32)の前記少なくとも1つの第3の糸に作用する力(F)に依存することを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記第1の電極(18)及び前記第2の電極(20)は、少なくとも1つの領域において、互いに隣接して予め定めた距離をおいて互いに平行に延在することを特徴とする、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記第1の電極(18)は、第1の基部ゾーン(21)と前記第1の基部ゾーン(21)から離れて延在する複数の第1の電極指(23)とを有し、直接隣接する2つの第1の電極指(23)の間には、それぞれ第1の間隙(24)が形成され、
前記第2の電極(20)は、第2の基部ゾーン(25)と前記第2の基部ゾーン(25)から離れて延在する複数の第2の電極指(27)とを有し、直接隣接する2つの第2の電極指(27)の間には、それぞれ第2の間隙(28)が形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項9】
少なくとも1つの第2の電極指(27)が第1の間隙(24)内に延在し、少なくとも1つの第1の電極指(23)が第2の間隙(28)内に延在することを特徴とする、請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第3の糸(33)が前記担体(16)を貫通するステッチされた前記被覆層(32)の複数の穿孔部位(37)が、前記第1の間隙及び/又は前記第2の間隙(24、28)に配置されていることを特徴とする、請求項8又は請求項9に記載のセンサ。
【請求項11】
被覆層(32)の前記少なくとも1つの第3の糸(33)が、前記第1の電極指(23)の1つの第1の電極指及び前記第2の電極指(27)の1つの第2の電極指の上にそれぞれ延在する複数の橋かけステッチ(36)を含むことを特徴とする、請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
前記第1の電極指(23)の1つの上に延在する前記橋かけステッチ(36)の一部は、直接隣接する2つの第2の電極指(27)の一方の上に延在し、
前記1つの第1の電極指(23)の上に延在する他の橋かけステッチ(36)は、前記直接隣接する2つの第2の電極指(27)のうちの他方の上に延在することを特徴とする、請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
被覆層(32)の前記少なくとも1つの第3の糸(33)が、少なくとも主に前記第1及び第2の電極指(23、27)で、前記少なくとも1つの第1の糸(17)及び前記少なくとも1つの第2の糸(19)の上に延在することを特徴とする、請求項8から請求項12までのいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項14】
前記センサ(15)は、可変抵抗器(46)として構成されることを特徴とする、請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項15】
前記第1の電極(18)の第1の基部ゾーン(21)または前記第2の電極(20)の第2の基部ゾーン(25)が、抵抗ゾーン(47)を形成しており、前記センサ(15)が、第1の電極(18)の第1接続部(22)と第2の電極(20)の第2接続部(26)との間の総抵抗(RG)を含み、前記被覆層(32)に力(F)が作用する位置に応じて前記総抵抗(RG)が変化することを特徴とする、請求項8から請求項14までのいずれか1項に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに作用する力を検出及び/又は測定するように構成されたセンサに関する。このセンサは、好ましくはピエゾ抵抗で動作する。このセンサは、有効圧力又は曲げ力を観察又は測定することができる。それは、特に、例えば、繊維材料(textile material)で作ることができる可撓性の担体上に配置される。例えば、織物繊維材料及び/又は編物繊維材料及び/又は縦編物繊維材料及び/又はフリース材料を、繊維材料として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2016/0328043号明細書には、導電性パターンが可撓性の担体上にステッチされているセンサが記載されている。このセンサは、静電容量型センサとして構成されている。一実施形態では、導電性パターンは導電性ノード点を含む。被覆層は、導電性の対向コンタクトを含む。被覆層と担体との間には、導電性ノード及び対向コンタクトに隣接して中間層が存在し、被覆層に力が作用しない限り、ノードと反対側の対向コンタクトとの間を離間させる。被覆層を押圧している間、対向コンタクトはノードと接触し、電気的接続を提供することができる。このような構成で、例えば、キーボードを形成することができる。
【0003】
米国特許第9816799号明細書には、織物担体上に適用されるか、又は織物担体内に組み込まれる導電性要素を有する変形センサが開示されている。導電性要素のセクションの距離が変化するので、織物担体の変形を認識することができる。導電性要素は、例えば、蛇行形状に配置することができる。あるいは、2つの導電性要素をくし形配置(interdigital arrangement)で設けることもできる。
【0004】
米国特許出願公開第2017/0261388号明細書には、担体上に印刷されたくし形電極の圧力センサが記載されている。電極の印刷は、すべての種類の担体上で容易に可能であるわけではない。担体の構成及び材料によっては、例えば繊維担体の場合には、毛細管現象によって電極の印刷中に欠陥が発生する可能性がある。
【0005】
米国特許第8701578号明細書には、導電性の通信経路を確立するために編みパターンが適用される衣料品が記載されている。これらの編まれた通信経路には、センサを接続することができる。
【0006】
米国特許出願公開第2016/0048235号明細書には、インタラクティブ・テキスタイルが記載されている。これは導電性糸を有する織物であり、静電容量型圧力センサを形成するために多層構成が提案されている。
【0007】
米国特許第7770473号明細書には、導電性繊維と感圧層を有する多層構造糸(multi-layer yarn)から作製された圧力センサが開示されている。このような多層構造糸は、フィラー糸として編物中に導入され得る。これにより、圧力センサは、多層構造糸自体によって形成される。
【0008】
導電性糸の製造方法は、米国特許第8505474号明細書から公知である。これにより、金属繊維は非導電性フィラメントで被覆される。
【0009】
センサを製造するための別の公知の原理は、複数の別個の層のサンドイッチ構造を形成することである。このようなセンサは、例えば、米国特許第7145432号明細書又は米国特許第8661915号明細書又は米国特許第8904876号明細書から公知である。
【0010】
さらに、米国特許出願公開2004/0173028号明細書及び独国特許出願公開第102013001772号明細書は、車両内の表面に圧力センサを一体化する可能性を開示している。
【0011】
インターリンクエレクトロニクス社は、FFR(登録商標)という名称で、可変抵抗を有するタッチセンサを提供している。このセンサは、ラミネートによって接続された複数のポリマー層で構成されている。1つのポリマー層はくし形電極でコーティングされ、その他のポリマー層は、特殊な半導体材料でコーティングされている。圧力印加により、電極は半導体材料を介して並列に接続され得る。
【0012】
繊維ベースのセンサに関するさらなる背景情報は、以下の専門的な文献から得ることができる。
- BOSOWSKI, P., et al., "Design and manufacture of textile-based sensors", Electronic Textiles, Elsevier, 2015, p.75-107.
- MEYER, Jan; LUKOWICZ, Paul; TROSTER, Gerhard, "Textile pressure sensor for muscle activity and motion detection", Wearable Computers, 10th IEEE International Symposium, p.69-72, 2006.
- MEYER, Jan, et al., "Design and modeling of a textile pressure sensor for sitting posture classification", IEEE Sensors Journal 10 (8), p.1391-1398, 2010.
- LINZ, Torsten; GOURMELON, Lena; LANGEREIS, Geert, "Contactless EMG sensors embroidered onto textile", 4th International Workshop on Wearable and Implantable Body Sensor Networks, Berlin, Heidelberg, Springer, 2007, p.29-34.
- MECNIKA, V., et al., "Joining technologies for electronic Textiles", Electronic Textiles, Elsevier, 2015, p.133-153.
- HASANI, M., et al., "Implementation of a dual-interrogation-mode embroidered RFID-enabled strain sensor", IEEE Antennas and Wireless Propagation Letters 12, p.1272-1275, 2013.
- ZHANG, Lanlin, et al., "Embroidered textiles for RF electronics and medical sensors", Wireless Information Technology and Systems (ICWITS),2012 IEEE International Conference, p.1-4, 2012.
- KOO, Hye Ran, et al., "The effect of textile-based inductive coil sensor positions for heart rate monitoring", Journal of medical systems 38 (2), p.2, 2014.
- MECNIKA, Viktorija, et al., "Preliminary Study on Textile Humidity Sensors", Smart SysTech 2015; European Conference on Smart Objects, Systems and Technologies; Proceedings of.VDE9, p.1-9, 2015.
- GRIES, Thomas; KLOPP, Kai (Hg.), "Joining and Surface Technologies for Textiles: Methods and Applications", original title:["Fugeund Oberflachentechnologien fur Textilien: Verfahren und Anwendungen"], Springer-Verlag, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
公知の従来技術から出発し、本発明の目的は、簡単な手段でコスト効率よく実現可能な、圧力及び/又は曲げ力を検出するセンサを提供することである。
【0014】
この目的は、請求項1の特徴を有するセンサによって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるセンサは、センサに作用する力を検出及び/又は測定するように構成されている。最も単純な場合には、加えられた力のディジタル検出を実施することができる。センサの一実施形態では、加えられた力の量に応じたセンサ値、特に電気的なセンサ値を、センサによって生成することができる。好ましくは、センサは、この目的のためにピエゾ抵抗で動作する。例えば、センサは、圧力センサ又は曲げセンサとして使用することができる。
【0016】
センサは、担体を備えている。担体は、好ましくは可撓性の材料からなる。担体は、実質的に2次元的又は2.5次元的に構成された平坦な要素である。これは、担体が延在する平面における長さ及び幅よりも少なくとも1桁小さい厚さを有する平坦な要素であることを意味する。例えば、織布、編布、縦編布、フリース材料、又はそれらの任意の組合せなどの繊維材料を担体として使用することができる。担体又は担体材料は、好ましくは1層構成である。
【0017】
第1の電極と第2の電極は、ステッチング(stitching)によって担体上に形成される。電極は、ステッチングによって担体上に取り付けられるだけでなく、担体上にステッチされた糸によって形成される。第1の電極は、担体上での少なくとも1つの第1の糸のステッチングによって形成され、第2の電極は、担体上での少なくとも1つの第2の糸のステッチングによって形成される。少なくとも1つの第1の糸及び少なくとも1つの第2の糸は、導電性構成要素を含んでいるか、又はそのような導電性構成要素から構成されている。このような構成要素は、繊維、及び/又は少なくとも1つのフィラメント、及び/又はフィラー、及び/又はコーティングであり得る。少なくとも1つの第1の糸及び少なくとも1つの第2の糸は、糸又は撚り糸として構成することができる。より良好なステッチ性能(stitchability)のためには、撚り糸が好ましい。
【0018】
2つの電極は、少なくとも1つの第1の糸と、少なくとも1つの第2の糸とが互いに直接接触して担体上に配置されないように、担体上に互いに距離をおいて配置される。ステッチングによって形成された電極は、好ましくは担体の共通の面に配置され、好ましくは担体のそれぞれの面に直接、共通の層で配置される。担体が1つの平面内に配向されているか、湾曲しているか、又は屈曲しているかに応じて、第1の電極及び/又は第2の電極は、担体の表面に沿って平面状に又は湾曲して又は屈曲して延在し得る。
【0019】
ステッチされたセンサ(stitched sensor)は、さらに、担体上にステッチされた少なくとも1つの第3の糸によって形成された被覆層を有する。電極の場合と同様に、被覆層は、担体上にステッチングによって取り付けられる別個の要素として構成されておらず、少なくとも1つの第3の糸を用いたステッチングによって形成されている。少なくとも1つの第3の糸は、導電性構成要素を含む。少なくとも1つの第3の糸は、糸又は好ましくは撚り糸によって形成することができる。複数の接触部位において、少なくとも1つの第3の糸は、第1の電極の少なくとも1つの第1の糸及び第2の電極の少なくとも1つの第2の糸に接触している。好ましくは、少なくとも1つの第1の糸又は第2の糸の部分は、少なくとも1つの第3の糸の部分と担体との間の接触部位の各々に配置される。
【0020】
圧力又は曲げによって生じる可能性がある被覆層に作用する力に応じて、センサの第1の電極と第2の電極との間の導電率が変化する。そうすることで、加えられた力を認識及び/又は測定することができる。
【0021】
このように、センサ全体を、ステッチングによって製造することができる。ステッチングは、コストのかかる製造手段を用いずに、ミシンやステッチマシンを使って行うことができる方法である。担体上に糸をステッチングすることにより、2つの電極と被覆層とが形成され、センサが製造される。ステッチングにより製造される電極及び被覆層は、様々な担体材料に適用することができ、また、それらの毛細管現象のために印刷に適していない担体材料にも適用することができる。複数のセンサプライ又はセンサ層の製造と、これに続くセンサプライ又はセンサ層の接続は必要ではない。センサは、1台のミシン又はステッチマシンにおいて連続プロセスで製造することができる。電極と被覆層とのステッチングに異なる糸を使用することは、潜在的に好都合であるだけである。複数のヘッドを有するステッチマシンでは、このような糸の交換は、非常に迅速かつ簡単に行うことができる。
【0022】
好ましくは、少なくともすべての糸、特に、第1の電極を形成するための少なくとも1つの第1の糸、第2の電極を形成するための少なくとも1つの第2の糸が、独自のセンサ特性を備えている訳ではない。本発明によれば、センサ機能は、電極の糸と被覆層との協働によって実現され、複数の糸の1つによって実現されるのではない。
【0023】
好ましくは、少なくとも1つの第3の糸は、少なくとも1つの第1の糸及び/又は少なくとも1つの第2の糸の導電率とは異なる導電率を有する。特に、少なくとも1つの第3の糸は、少なくとも1つの第1の糸及び/又は少なくとも1つの第2の糸の導電率よりも低い導電率を有する。少なくとも1つの第1の糸と少なくとも1つの第2の糸とは、等しい導電率を有することができ、特に同一であることができる。
【0024】
少なくとも1つの第1の糸及び/又は少なくとも1つの第2の糸及び/又は少なくとも1つの第3の糸は、導電性繊維及び/又は導電性フィラー及び/又は少なくとも1つの導電性フィラメント及び/又は導電性コーティングを含むことができる。繊維、フィラー又はフィラメント又はコーティングのための導電性材料としては、銀、ステンレス鋼、カーボン、カーボンブラック、他の公知の材料、又はそれらの組み合わせを使用することができる。
【0025】
一実施形態では、センサは、第1の電極の第1の接続部と第2の電極の第2の接続部との間の総抵抗を含み、その量は被覆層に作用する力に依存する。この力は、担体又はセンサの圧力又は曲げによってもたらされ得る。これにより、総抵抗は、第1の電極の少なくとも1つの第1の糸と被覆層の少なくとも1つの第3の糸との間の第1の接触抵抗、及び第2の電極の少なくとも1つの第2の糸と被覆層の少なくとも1つの第3の糸との間の第2の接触抵抗に依存することができる。さらに、総抵抗は、少なくとも1つの第3の糸の流れ抵抗(flow resistance)にも依存することができ、その量は、加えられる力と、それから生じる少なくとも1つの第3の糸の変形とに依存することができる。したがって、総抵抗は、第1の接触抵抗、第2の接触抵抗、及び潜在的に可変な流れ抵抗の少なくとも1つの直列接続によって定義され得る。また、このような直列接続を、複数並列に接続して、第1の接続部と第2の接続部との間の総抵抗を定義することもできる。例えば、これは、力が加えられる部位がどれだけ大きいか、及び力が加わることによって影響される接触位置がどれだけ多いかに依存する。
【0026】
好ましい実施形態では、第1の電極は、第1の基部ゾーンと、第1の基部ゾーンから突出する複数の第1の電極指とを有する。直接隣接する2つの第1の電極指の間には、それぞれ1つの第1の間隙が形成される。これと同様に第2の電極は、第2の基部ゾーンと、第2の基部ゾーンから突出する複数の第2の電極指とを有することができる。直接隣接する2つの第2の電極指の間には、それぞれ第2の間隙が形成される。
【0027】
一実施形態では、第1の電極をステッチングするために複数の第1の糸を使用することができ、第2の電極をステッチングするために複数の第2の糸を使用することができる。そうすることで、第1の電極又は第2の電極の異なる領域は、異なる材料から製造又はステッチされ得る。例えば、基部ゾーンは、第1の電極及び/又は第2の電極の電極指とは異なる糸材料からステッチされ得る。例えば、この構成は、センサが可変抵抗器(potentiometer)のタイプで構成される場合に、特に有利であり得る。
【0028】
第1の電極指は、互いに平行に配向されることが好ましい。第2の電極指は、互いに平行に配向されることが好ましい。第1の電極指と第2の電極指とが互いに平行に延びていれば、更に有利である。それによって、少なくとも1つの第2の電極指が第1の間隙内に延在することができ、少なくとも1つの第1の電極指が第2の間隙内に延在することができる。いわば、2つの電極のくし形配置が実現される。好ましくは、第1の電極指とそれぞれ隣接する第2の電極指との間の距離は等しい。電極指が均一な距離で配置されていると有利である。
【0029】
電極のくし形配置の代わりに、電極は別の形状を有することも可能である。例えば、電極指及び/又は基部ゾーンは、少なくとも1つの湾曲部位及び/又は少なくとも1つの屈曲部位を含むことができる。基部ゾーンは、線状(幅が長さよりも短く、例えば、少なくとも約5分の1~10分の1であり得る)とすることができ、又は領域(例えば、円形領域又は多角形領域)を取り囲むか、又は埋めることもできる。
【0030】
一実施形態では、第1の電極及び第2の電極は、少なくとも被覆層が2つの電極を覆う領域において、互いに実質的に平行に延在することができる。この領域では、2つの電極は、互いに隣接して略一定の距離を置いて配置することができる。電極は、この領域では、1つ又は複数の湾曲部及び/又は曲げ部位及び/又は角部を含むことができる。例えば、2つの電極は、少なくともこの領域において、蛇行するように延在することができる。また、担体上で互いに空間的に分離して配置された複数のそのような領域が存在することができる。この1つ又はこれらの複数の領域において、各電極は、分岐部位なしに延在することができる。このような領域のそれぞれ2つの間には、分岐部位が存在し得る。このような領域の1つ又は複数によって、例えば、形状、記号、文字などを形成することができる。
【0031】
このような構成では、第1の電極及び/又は第2の電極の部分は、直接隣接して互いに平行に延在することができる。一方、くし形配置では、好ましくは異なる電極の電極指が、それぞれ直接隣接して配置される。
【0032】
第1の間隙及び第2の間隙の少なくとも一部は、被覆層の少なくとも1つの第3の糸の穿孔部位(puncture sites)のための十分なスペースが残るような寸法にされることが好ましい。ステッチされた被覆層の、少なくとも1つの第3の糸が担体を貫通する複数の穿孔部位は、電極指に隣接する第1の間隙又は第2の間隙に配置されることが好ましい。少なくとも1つの第3の糸の穿孔部位は、第1の電極の少なくとも1つの第1の糸及び第2の電極の少なくとも1つの第2の糸を貫通しない。
【0033】
被覆層の少なくとも1つの第3の糸は、橋かけステッチ(bridging stitches)として示すことができる少なくとも1つの接触部位をそれぞれ有する複数のステッチを含む。橋かけステッチの各々は、好ましくは少なくとも1つの第1の糸への接触部位と、少なくとも1つの第2の糸への接触部位とを有する。
【0034】
一実施形態では、橋かけステッチの各々は、それぞれ第1の電極指の1つ及び第2の電極指の1つにわたって延在することができる。好ましくは、橋かけステッチは、正確に1つの第1の電極指と正確に1つの第2の電極指にわたって延在する。橋かけステッチは、下に配置された電極指の反対側に配置された2つの穿孔部位の間に延在する。
【0035】
一実施形態では、1つの特定の又は考慮される第1の電極指上に延在する橋かけステッチは、それぞれ直接隣接して配置された第2の電極指の1つの上にのみ延在する。そうすることで、橋かけステッチ群を形成することができ、その穿孔部位は、互いに平行に延びる2つの線上に配置され、これらの線は関連する第1の電極指及び関連する第2の電極指に平行に配向される。代替の実施形態では、直接隣接する2つの第2の電極指との接触は、1つの特定の又は考慮される第1の電極指上に延在する橋かけステッチを介して確立される。このために、これらの橋かけステッチの一部は、第1の電極指及び一方の第2の電極指の上に延在し、他方の橋かけステッチの一部は、第1の電極指及び他方の第2の電極指の上に延在する。橋かけステッチは、電極指の延在方向と直交する方向に互いにオフセットされて配置され、第1の電極指が延在する領域において重なり合っている。
【0036】
考慮される1つの第1の電極指に関連して説明されてきた橋かけステッチの配置は、考慮される第2の電極指に対しても適宜提供され得る。
【0037】
さらに、被覆層の少なくとも1つの第3の糸が、電極指においてのみ、少なくとも1つの第3の糸及び少なくとも1つの第2の糸の上に延在することが好ましい。従って、第3の糸は、第1の基部ゾーン又は第2の基部ゾーンの領域において、第1の電極及び第2の電極上に延在しない。
【0038】
一実施形態では、センサを可変抵抗器として構成することができる。それによって、第1の電極の第1の基部ゾーン又は第2の電極の第2の基部ゾーンが抵抗ゾーンを形成する場合、特に有利である。抵抗ゾーンに沿った抵抗は、電極のそれぞれの接続部を起点として離れる抵抗ゾーンの延在方向に増加することができる。電極指と接続部との間の抵抗は、電極指がそれぞれの接続部から離れるほど、抵抗ゾーンの抵抗が増加するため、より高くなる可能性がある。そうすることで、第1の電極の第1の接続部と第2の電極の第2の接続部との間のセンサの総抵抗は、力の印加によって2つの電極間に導電性又はより良好な導電性の接続が確立される位置に応じて変化し得る。
【0039】
すべての実施形態において、第1の電極及び第2の電極に加えて、担体と被覆層との間に配置される少なくとも1つの距離要素を、担体上に設けることができる。距離要素は、第1の電極及び第2の電極に隣接する担体上に(例えば、2つの電極の間に)配置される。少なくとも1つの距離要素によって、被覆層と担体との間の距離、又は被覆層と第1の電極及び第2の電極との間の距離は、被覆層に外力が作用しない初期状態に対して規定され得る。少なくとも1つの距離要素によって、例えば、初期状態における被覆層と第1の電極及び/又は第2の電極との間の容積(content)を防止又は低下させることができる。
【0040】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの距離要素は、少なくとも1つの距離糸(distance thread)によって形成することができる。少なくとも1つの距離糸は、担体上に縫い付けられるか、又はステッチされ得る。
【0041】
距離糸は、少なくとも、被覆層が存在する電極の間又は電極に隣接する領域に配置される。距離糸は、被覆層と担体との間に配置されている。距離糸は、例えば、少なくとも1つの第1の間隙及び/又は少なくとも1つの第2の間隙に配置することができる。距離糸は、好ましくは電気的に非導電性である。距離糸の厚さ又は強度は、少なくとも1つの第1の糸及び少なくとも1つの第2の糸の厚さ又は強度よりも大きいことが好ましい。距離糸によって、少なくとも1つの第3の糸と少なくとも1つの第2の糸との間の接触、又は少なくとも1つの第3の糸と少なくとも1つの第1の糸との間の接触は、センサに力を加えることなく、初期状態で低減することができる。
【0042】
本発明の上記実施形態のうちの1つ又は複数によって、非常に平坦に構成されたセンサが得られる。センサの製造に使用される材料使用量は少なく、製造時に発生する廃棄物はごく僅かである。測定範囲及び/又は測定感度は、以下の特性のうちの1つ又は複数によって定義することができる。
【0043】
-第1の糸及び/又は第2の糸及び/又は第3の糸に使用する糸又は撚り糸の選択
-電極及び/又は被覆層の橋かけステッチの配置
-被覆層の橋かけステッチの配置
-追加の距離糸の統合
【0044】
また、本発明によるセンサは、ミシン又はステッチングマシンにおける共通のプロセスで、1つ又は複数の追加のステッチされたセンサと一緒に(例えば、本発明によるさらなるセンサ又は湿度センサと一緒に)製造することもできる。本発明によるセンサは、ステッチング中に、供給ライン及び/又は加熱装置のような、他のステッチされた電気的機能領域とも組み合わせることができる。
【0045】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項、説明、及び図面から得られる。以下、本発明の好ましい実施形態は、図面に基づいて以下で詳細に説明される。図面には、以下のものが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、担体と第1の糸によって形成された第1の電極と第2の糸によって形成された第2の電極とを示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の担体及び電極と、第1の電極及び第2の電極に接触している第3の糸の被覆層と、を有するセンサの概略説明図である
【
図3】
図3は、
図2によるセンサのさらなる実施形態の概略図であり、被覆層のステッチは、
図2に係る実施形態とは異なるように配置されている。
【
図4】
図4は、
図2によるセンサのさらなる実施形態の概略図であり、被覆層のステッチは、
図2に係る実施形態とは異なるように配置されている。
【
図5】
図5は、第1の電極の第1の糸及び第2の電極の第2の糸の上に延在する被覆層の第3の糸の橋かけステッチの概略的な基本説明図である。
【
図6】
図6は、第3の糸への圧力印加中の
図5の説明図である。
【
図7】
図7は、印加される力に応じて変化する少なくとも1つの第3の糸の橋かけステッチの総抵抗の電気的等価回路を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の電極と第2の電極とがステッチされた担体の概略説明図であり、距離糸が、2つの電極の間の担体上にステッチされるか又は縫い付けられている。
【
図9】
図9は、
図8による実施形態における、第3の糸の橋かけステッチ、第1の糸、第2の糸、及び距離糸の概略的な基本説明図である。
【
図10】
図10は、センサによって形成される可変抵抗器の概略的な基本説明図である。
【
図12】
図12は、第1の糸によって形成された第1の電極及び第2の糸によって形成された第2の電極の担体を示す概略図である。
【
図13】
図13は、
図12の担体及び電極と、第1の電極及び第2の電極と接触する第3の糸の被覆層とを有するセンサのさらなる実施形態の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、ステッチングによって製造することができるセンサ15に関する。
図2~
図4、
図8、及び
図10において、センサ15の様々な実施形態が、それぞれ概略的に示されている。センサ15は、センサ15に作用する力F(
図6)を検出又は測定するように構成されている。これにより、外力印加の有無のみを検出又は判定することができ、あるいは任意選択で、印加される力の量(amount)及び/又は力Fが印加される位置に依存するセンサ値を生成することができる。
【0048】
センサ15は、ステッチされたセンサ(stitched sensor)15と表記することができる。これは、好ましくは織物担体(textile carrier)16として構成された担体16を含んでいる。担体16は一般に2次元構造であり、したがって、担体16は、その延在平面において、その延在平面に直交する担体16の厚さよりも約1桁又は数桁程度大きい長さと幅とを有している。担体16は、プラスチック材料及び/又は天然材料で作製することができる。好ましくは、担体16は、織物担体として、例えば、編布(knitted fabric)及び/又は縦編布(warp knitted fabric)及び/又は織布(woven fabric)及び/又はフリース材料として構成される。担体16は、衣料品又は他の織物表面の一部であってもよい。
【0049】
少なくとも1つの第1の糸17を使用することによって、第1の電極18が、担体16上でのステッチングにより製造される。図では、担体16上に第1の糸17によって作成される個々のステッチが、担体16の片側から見た状態で概略的に示されている。少なくとも1つの第1の糸17は、導電性の繊維、フィラメント又はフィラーなどの導電性構成要素を含む。導電性材料としては、銀、ステンレス鋼、カーボン、又はこれらの組み合わせを用いることができる。また、少なくとも1つの第1の糸17は、導電性コーティングを含むことができる。
【0050】
少なくとも1つの第2の糸19を使用することによって、第2の電極20が、担体16上でのステッチング、実施例によれば、担体16の同じ側でのステッチングにより製造される。少なくとも1つの第2の糸19は、導電性構成要素を含み、第1の糸17に関して上述したように構成することができる。少なくとも1つの第1の糸17及び少なくとも1つの第2の糸19は、好ましくは等しい導電率を有し、同一であり得る。
【0051】
特に
図1に示すように、第1の電極18及び第2の電極20は、いくつかの実施形態(
図1~
図4、
図8、
図10)ではくし形方式(interdigital manner)で配置される。このために、第1の電極18は、第1の接続部22から離れるように、例えば直線状に離れるように延在する第1の基部ゾーン21を含む。第1の基部ゾーン21に対して交差方向に、好ましくは直交方向に、複数の第1の電極指23が突出している。第1の電極指23は、互いに平行に等間隔で配置されている。直接隣接する2つの第1の電極指23の間には、第1の間隙24が形成されている。第1の電極指23の数、ひいては第1の間隙24の数は、センサの実現寸法に応じて変えることができる。また、基部ゾーン21の長さ又は第1の電極指23の長さも変えることができる。本実施形態では、すべての第1の電極指23が等しい長さを有する。
【0052】
少なくとも1つの第2の糸19から製造される第2の電極は、第1の電極18と同様に構成されている。第2の電極は、第2の接続部26から離れるように、例えば直線状に離れるように延在する第2の基部ゾーン25を含む。第1の基部ゾーン21及び第2の基部ゾーン25は、好ましくは互いに平行に延在し、互いに距離をおいて配置されている。複数の第2の電極指27は、第2の基部ゾーン25から交差方向に、好ましくは直交方向に突出している。第2の電極指27は互いに平行であり、本実施形態では、互いに等間隔で配置されている。第2の電極指27は、好ましくは等しい長さを有する。直接隣接する2つの第2の電極指の間には、それぞれ第2の間隙28が形成されている。
【0053】
基部ゾーン21、25のステッチングと、電極指23、27のステッチングのために、異なる材料の糸が使用され得る。例えば、第1の電極18は、2つの異なる(特に異なる導電性の)第1の糸からステッチされ得る。また、第2の電極20は、2つの異なる(特に異なる導電性の)第2の糸からステッチされ得る。
【0054】
本実施形態では、第1の電極指23と第2の電極指27とは、互いに平行に配置されている。1つ、複数、又はすべての第1の間隙24において、少なくとも1つ、この実施例によれば、正確に1つの第2の電極指27が延在する。1つ、複数、又はすべての第2の間隙28において、少なくとも1つ、この実施例によれば、正確に1つの第1の電極指23が延在する。従って、第1の基部ゾーン21及び第2の基部ゾーン25の延長線に平行な方向において、第1の電極指23と第2の電極指27とが常に交互に配置される。
【0055】
第1の電極18と第2の電極20との間には、少なくとも1つの第1の糸17と少なくとも1つの第2の糸19とが互いに直接接触しないような距離が設けられている。本実施形態では、各第1の電極指23と直接隣接する第2の電極指27との間には、基部ゾーン21、25の延在方向と平行な方向において、第1の距離aが設けられている。電極指23、27の延在方向と平行な方向においては、第1の電極指23の自由端と第2の基部ゾーン25との間には第2の距離bが設けられている。従って、第2の電極指27の自由端に向かって同じ第2の距離bを設けることができる。一実施形態では、第1の距離aと第2の距離bとが等しい量を有する。
【0056】
すでに説明したように、第1の電極18と第2の電極20との間には、直接的な接触及び直接的な導電性接続は存在しない。担体16は、少なくとも電極18、20がその上に配置されるこの領域においては、非導電性であるか、少なくとも2つの電極間に間接的な電気的接触を確立するようには構成されていない。
【0057】
第1の電極18と第2の電極20との間の間接的な接触及び間接的な導電接続は、被覆層32を介して確立され得る。被覆層32は、少なくとも1つの第3の糸33が担体16上にステッチされることによって形成されている。少なくとも1つの第1の糸及び少なくとも1つの第2の糸と同様に、少なくとも1つの第3の糸は、導電性構成要素を含み、第1の糸17に関連して最初に説明したような構成を備えることができる。少なくとも1つの第3の糸33は、少なくとも1つの第1の糸17及び少なくとも1つの第2の糸19とは異なることが好ましい。特に、少なくとも1つの第3の糸33の導電率は、電極18、20の糸17、19の導電率とは異なっている。この実施例によれば、少なくとも1つの第3の糸33の導電率は、少なくとも1つの第3の糸33に外力が加えられていない状態では、第1の糸17及び第2の糸19の導電率よりも低い。一実施形態では、少なくとも1つの第3の糸33は、フィラー及び/又は繊維及び/又はフィラメントなどの導電性構成要素を有し、構成要素間の距離は外部の影響によって変化し、それによって少なくとも1つの第3の糸33の導電率が変化し、好ましくは増加する。
【0058】
少なくとも1つの第3の糸33は、複数の位置で第1の電極18及び第2の電極20の上に延在し、したがって、少なくとも1つの第1の糸17と複数の第1の接触部位34を形成し、少なくとも1つの第2の糸19と複数の第2の接触部位35を形成している。第1の接触部位34の各々は、第1の糸17と第3の糸33との間に第1の接触抵抗R1を有している。第2の接触部位35の各々は、第2の糸19と第3の糸33との間に第2の接触抵抗R2を有している。少なくとも1つの第3の糸33は、可変流れ抵抗R3を有していてもよい。
【0059】
図5~
図7に基づいて概略的に示すように、少なくとも1つの第3の糸33と、少なくとも1つの第1の糸17又は少なくとも1つの第2の糸19との間の接触は、被覆層32上に力Fが加えられたときに、第1の接触抵抗R1及び第2の接触抵抗R2が低くなるように改善することができる。任意選択で、さらに、第3の糸33の流れ抵抗R3は、力の印加によって低下させることができる。例えば、第3の糸33の導電性構成要素が、印加された力Fによって第3の糸33の延在方向に沿って改善された電気接続を互いの間で確立し、それにより第3の糸33の導電率が増加するか、又は第1の接触部位34と直接隣接する第2の接触部位35との間の第3の糸33の流れ抵抗Rが低下する。
【0060】
図2~
図4に概略的に示されているように、被覆層32の少なくとも1つの第3の糸33は、担体16上でのステッチングにより、橋かけステッチ36として示すことができる複数のステッチを形成している。橋かけステッチ36は、それぞれの場合において第1の接触部位34及び第2の接触部位35を含み、実施形態においてそれぞれ第1の電極指23及び直接隣接する第2の電極指27上に延在する。橋かけステッチ36の各々が、正確に1つの第1の電極指23及び正確に1つの第2の電極指27の上に延在する場合が好ましい。そうすることで、橋かけステッチ36は、その2つの穿孔部位37の間で非常に短く保つことができる。
【0061】
2つの穿孔部位37の間の橋かけステッチ36が、
図5及び
図6に概略的に示されている。
図2~
図4は、被覆層32の橋かけステッチ36を配置するために使用することができる様々なステッチパターンを示している。
図2に示される実施形態では、正確に1つの第2の電極指27が、共通電極指対(common electrode finger pair)を形成する各第1の電極指23に対して割り当てられている。電極指対23、27は、複数の橋かけステッチ36の1つの橋かけステッチ群によってブリッジされる。異なる電極指対の電極指を互いに接続する橋かけステッチ36は存在しない。例えば、共通電極指対23、27に割り当てられた橋かけステッチ36は、穿孔部位37が2本の平行な線に沿って配向するように配置され、これらの線は電極指対の電極指23、27に平行に延在する。このように、橋かけステッチ36は、各電極指対に対してそれぞれ1つの橋かけステッチ群を形成し、橋かけステッチ群は、基部ゾーン21、25の延在方向に平行な方向に重なり合わず、互いに接触して隣接するか、又は互いに距離をおいて隣接している。
【0062】
図3及び
図4には、代替的な実施形態が示されている。橋かけステッチ36は、基部ゾーン21、25の延在方向に平行に互いにオフセットして配置されている。オフセットして配置することで、第2の間隙28内に延在する第1の電極指23は、複数の橋かけステッチ36によって1つの直接隣接する第2の電極指27と結合されると共に、複数の他の橋かけステッチ36によって、それぞれの他の直接隣接する第2の電極指27と結合される。そうすることにより、被覆層32を介した第1の電極18と第2の電極20との間の電気的接続を、少なくとも力を加える間、改善することができる。
【0063】
橋かけステッチ36のステッチ密度は変化させることができる。
【0064】
図3による実施形態と
図4による実施形態との間の違いは、
図3による実施形態では、基部ゾーン21、25の延在方向に直交する1列又は1ラインに配置された橋かけステッチ36が、実質的に互いに距離をおかずに隣接しているが、
図4による実施形態では、基部ゾーン21、25の延在方向に直交する方向で、橋かけステッチ36が互いに距離をおいていることである。
【0065】
橋かけステッチ36の配置を除いて、
図2及び
図4による実施形態は同一に構成されている。
【0066】
本開示で図示する好ましい実施形態では、橋かけステッチ36の各々は、第1の間隙24及び第2の間隙28に位置する少なくとも1つの穿孔部位37を含む。すべての穿孔部位37は、それぞれの電極指23、27に隣接して配置され、少なくとも1つの第1の糸17も少なくとも1つの第2の糸19も貫通しない。
【0067】
いくつかの実施形態(
図1~
図4、
図8及び
図10)において、被覆層32は、電極指23、27の延在方向において、第1の基部ゾーン21と第2の基部ゾーン25との間の領域に限定されている。好ましくは、第3の糸33は、第1の基部ゾーン21上にも第2の基部ゾーン25上にも延在しない。第1の接触部位34及び第2の接触部位35は、少なくとも1つの第3の糸33が電極18、20上に延在する電極指23又は27にだけ存在する。
【0068】
図7には、第1の糸17と第2の糸19との間の抵抗の電気的等価回路が概略的に示されている。これらは、1つの単一の橋かけステッチ36を介して正確に1つの第1の接触部位34と正確に1つの第2の接触部位35とによって互いに接続されている。この抵抗は、第1の接触抵抗R1、流れ抵抗R3、及び第2の接触抵抗R2の直列回路によって形成される。しかしながら、この直列接続の個々の抵抗R1、R3、R2のすべての量、少なくとも2つの接触抵抗R1、R2の量は、印加される力Fに応じて可変である。
【0069】
図6に模式的に示すように、力Fの印加は、例えば、指38の先端で被覆層32を押圧することによって生じさせることができる。このように、力Fは、被覆層32の1つの単一の橋かけステッチ36に作用するのではなく、複数の橋かけステッチ36に作用する。そうすることにより、
図7に模式的に示すように、第1の接触抵抗R1、流れ抵抗R3、及び第2の接触抵抗R2の複数の直列接続は、複数の橋かけステッチ36に作用することにより、並列に接続される。そして、複数の直列接続の並列接続によって、第1の接続部22と第2の接続部26との間の総抵抗RGが得られるが、そのうちの1つが
図7に模式的に示されている。
【0070】
また、総抵抗RGは、
図7によれば、外力Fを加えることなく2つの電極18、20間に被覆層32を介して導電性接続がすでに確立されている場合には、外力Fを加えることなく、並列接続された複数の直列接続39によって形成され、その総抵抗RGは、力Fを加えることによって変更することができ、特に減少させることができる。
【0071】
外力Fを加えることなく、既に2つの接続部22、26間の導電性接続が確立されている場合には、電気的接続の無遮断状態(interruption-free condition)も、外力Fを加えることなく、確認することができる。
【0072】
図12及び
図13には、センサ15の実施形態のさらなる例が示されており、
図12では明確性を改善するために被覆層32が省略されて、電極18、20のみが示されている。2つの電極18、20は、少なくとも担体上に被覆層32が適用される領域において、実施形態では蛇行線状に又は蛇行しながら、互いに略平行に距離をおいて延在している。この実施例によれば、この蛇行した延在部は、第1の電極18の2つの平行な延在部から第2の電極20の略平行な延在部までの間に配置される。電極18、20の正確な延在及び形状は変更することができ、例えば、文字、数字、又は記号を形成することができる。被覆層32の橋かけステッチ36は、それらの延在部に沿って第1の電極18及び第2の電極20の上にそれぞれ延在している。
図13では、センサ構成の原理を示すために、低い密度の橋かけステッチ36を有する被覆層32が模式的に示されている。橋かけステッチ36の密度は、より高くすることも可能である。
【0073】
被覆層32の橋かけステッチ36の穿孔は、
図13に示す実施形態では、同じ電極18又は20の2つの部分に隣接して、又はそれらの間に配置される。電極18、20の延在部の形状に応じて、橋かけステッチ36のステッチ密度を高くしたり低くしたりするための、十分なスペースを設けることができる。橋かけステッチ36の穿孔部位間の距離は、表面を最適に使用するために可能な限り短いことが好ましい。しかしながら、橋かけステッチ36の穿孔部位は、その下に配置された電極18、20を損傷したり、意図せずに短絡したりしてはならない。
【0074】
電極18、20の蛇行形状により、電極18、20によって覆われた領域全体に被覆層32を設け、感圧面として使用する可能性が存在する。単位面積当たりの橋かけ部位の数は、例えば
図1~
図4に示すように、前述のくし形配置よりも少ない。
【0075】
センサ15の別の可能な構成が、
図8及び
図9に概略的に示されており、この構成はセンサ15のすべての実施形態と組み合わせることができる。この実施形態では、距離糸45が担体16にステッチされている。距離糸45は、担体16の、第1の電極18及び第2の電極20と同じ側又は同じ平面上に配置されている。距離糸45の強度又は直径は、少なくとも1つの第1の糸17及び少なくとも1つの第2の糸19の強度又は直径よりも大きい。距離糸45は、担体16上の、少なくとも被覆層32が配置される位置にステッチされている。好ましくは、被覆層32の橋かけステッチ36の各々は、距離糸45の部分にわたって延在する。外力を加えなくても、橋かけステッチ36の第3の糸33の担体16までの最大距離は、距離糸45を用いないバリエーションと比較して増加し、第1の接触抵抗R1及び第2の接触抵抗R2が増加する。第1の接触抵抗R1及び/又は第2の接触抵抗R2は、それによって、通常センサに使用される電圧及び電流の場合に、第1の接続部22と第2の接続部26との間に測定可能な電流が生じないような方法で増加させることができ、第1の接触抵抗R1及び/又は第2の接触抵抗R2は、接触部位34、35において、外力が加わっていない状態で第3の糸33と第1の糸17又は第2の糸19との間に距離が存在すれば、いわば無限に高くすることができる。
【0076】
糸束を形成する電極18、20のステッチに複数の糸が使用される場合には、少なくとも1つの距離糸45又複数の距離糸45の距離糸束が使用され、その総厚さは第1の糸17又は第2の糸19の繊維束の総厚さよりも大きくなることを理解されたい。
【0077】
ステッチング技術によって、可変抵抗器(potentiometer)46(
図10)を形成するセンサ15も製造することができる。可変抵抗器46において、少なくとも1つの基部ゾーン、この実施例によれば、第1の基部ゾーン21は、抵抗ゾーン47として構成されている。抵抗ゾーン47は、第1の電極18の残りの部分よりも低い導電率を有する。これは、例えば、抵抗ゾーン47が、第1の電極指23をステッチするために使用される糸よりも低い導電率を有する糸からステッチされることにより実現することができる。第1の接続部22の反対側では、第3の接続部48が抵抗ゾーン47と電気的に接続されている。第1の接続部22と第3の接続部48との間では、したがって、抵抗ゾーン47によって可変抵抗器の最大抵抗が形成される。
【0078】
第1の基部ゾーン21に関連して説明したように、第1の電極指23は、異なる位置で抵抗ゾーン47から延在している。第2の電極20は、上述した実施形態と同様に構成されている。
【0079】
印加位置49において被覆層32上に力Fが印加される場合、少なくとも1つの第1の電極指23と少なくとも1つの第2の電極指27との間に電気的結合が生じる。印加位置49が抵抗ゾーン47の延在方向Eのどこに位置するかに応じて、第1の接続部22と第2の接続部26との間の可変総抵抗RGが変化する。
図11において、
図10の可変抵抗器46の等価回路が模式的に示されている。総抵抗RGは、抵抗ゾーン47の、印加位置49と第1の接続部22との間に延在する部分によって実質的に形成される。
【0080】
第1の接続部22と第3の接続部48との間に第1の電圧U1が印加される場合、延在方向Eにおける印加位置49の位置に依存する第2の電圧U2が、第2の接続部26と第3の接続部48との間で測定され得る。それにより、下記式が適用される。
【0081】
【0082】
本発明は、担体16上に糸17、19、33でステッチすることによって製造されるセンサ15に関する。ステッチングにより、第1の電極18、第2の電極20、及び被覆層32が形成される。被覆層32を介して、少なくとも力Fが被覆層32に作用し、被覆層32の少なくとも一部を第1の電極18及び第2の電極20の一部に押し付けると、第1の電極18と第2の電極20との間に導電接続が確立され得る。この力Fは、被覆層32上に局所的に加えられる圧力によって、及び/又は被覆層32若しくは担体16の曲げによって発生させることができる。センサ15全体、特に第1の電極18、第2の電極20及び被覆層32は、もっぱら共通の担体16上へのステッチングによって製造される。このセンサは、特に簡単かつ安価な方法で製造することができ、堅牢である。
【0083】
また、本発明によれば、非常に平面的に構成されたセンサ20を得ることができる。センサ15の製造のための材料使用量は少なく、製造中に発生する廃棄物は僅かである。第1の糸及び/又は第2の糸及び/又は第3の糸として使用する糸又は撚り糸の選択によって、センサ15の測定範囲及び測定感度を選択することができる。測定範囲及び測定感度は、電極18、20の配置及び/又は被覆層32の橋かけステッチ36に起因して変化し得る。本実施例により例示される電極18、20のくし形配置の代わりに、電極18、20を形成するための他の任意の形状も可能である。例えば、電極指23、27は、少なくとも1つの湾曲及び/又は屈曲した部位を有することもできる。基部ゾーン21、25は、必ずしも直線に沿って延在する必要はなく、少なくとも1つの湾曲した部位及び/又は少なくとも1つの屈曲した部位を含むこともできる。また、基部ゾーン21、25は、ある領域、例えば円形又は多角形の領域を取り囲むか又は覆うことができる。また、本発明のセンサは、ミシン又はステッチングマシン上の共通のプロセスにおいて、1つ又は複数の追加のステッチされたセンサと一緒に(例えば、本発明による別のセンサ又は湿度センサと一緒に)製造することができる。本発明によるセンサは、ステッチング中に、供給ライン及び/又は加熱装置のような他のステッチされた電気的機能領域と組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0084】
15 センサ
16 担体
17 第1の糸
18 第1の電極
19 第2の糸
20 第2の電極
21 第1の基部ゾーン
22 第1の接続部
23 第1の電極指
24 第1の間隙
25 第2の基部ゾーン
26 第2の接続部
27 第2の電極指
28 第2の間隙
32 被覆層
33 第3の糸
34 第1の接触部位
35 第2の接触部位
36 橋かけステッチ
37 穿孔部位
38 指
39 直列接続
45 距離糸
46 可変抵抗器
47 抵抗ゾーン
48 第3の接続
a 第1の距離
b 第2の距離
E 抵抗ゾーンの延在方向
F 力
R1 第1の接触抵抗
R2 第2の接触抵抗
R3 流れ抵抗
RG 総抵抗
Rmax 可変抵抗器の最大抵抗
【国際調査報告】