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特表2022-541628高速マルチ係数CMOSクロック分周器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】高速マルチ係数CMOSクロック分周器
(51)【国際特許分類】
   H03K 3/354 20060101AFI20220915BHJP
   G06F 1/08 20060101ALI20220915BHJP
   H03K 3/03 20060101ALI20220915BHJP
   H03K 5/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H03K3/354 B
G06F1/08 510
H03K3/03
H03K5/00 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504499
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 US2020043272
(87)【国際公開番号】W WO2021016455
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】16/935,240
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/877,341
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(71)【出願人】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
(72)【発明者】
【氏名】ロバート コーラガン タフト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニースラジ ラジャパン ネア
【テーマコード(参考)】
5J039
5J300
【Fターム(参考)】
5J039AC15
5J039KK01
5J039KK27
5J039MM03
5J300AA04
5J300AA22
5J300LL01
(57)【要約】
入力信号の周波数を分周するための高速CMOS論理回路である電子回路(200)が提供される。この電子回路はリング発振器(201)を含む。リング発振器(201)は複数のゲートインバータを含む。ゲートインバータ(290)の少なくとも1つが、2つの相補入力において発振信号(281)と制御信号とを受信するように構成されている。電子回路(200)は、分周比が選択可能となるように部分的にゲートされるように構成されている。クロック部分ゲーティングと、開ループクロックバッファリングと、データパスにおける低速ゲートロジックを回避することとにより、非常に高速のマルチ係数クロック分周器が達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング発振器を含む高速CMOS論理回路である電子回路であって、
前記リング発振器が複数のゲートインバータを含み、前記ゲートインバータの少なくとも1つが、2つの相補入力において発振信号及び制御信号を受信するように構成され、分周比が選択可能であるように前記電子回路が部分的にゲートされるように構成されている、
電子回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路であって、前記電子回路がクロック分周器であり、分周比が選択可能である、電子回路。
【請求項3】
請求項1に記載の電子回路であって、前記リング発振器が少なくとも3つのゲートインバータを含み、前記少なくとも3つのゲートインバータが直列接続で配置され、前記ゲートインバータの各々の出力が前記ゲートインバータの後続の入力に印加される、電子回路。
【請求項4】
請求項1に記載の電子回路であって、前記制御信号が第1の信号及び第2の信号を含み、前記第1の信号及び前記第2の信号が互いに反対である電子回路。
【請求項5】
請求項4に記載の電子回路であって、少なくとも1つのゲートインバータが、入力信号の論理状態に応じて論理高又は論理低を出力し、PMOS又はNMOSのいずれかに部分ゲーティングを適用することによって選択可能であるように、部分的にゲートされる、電子回路。
【請求項6】
請求項1に記載の電子回路であって、前記制御信号のデューティサイクルが0.5より大きい、電子回路。
【請求項7】
請求項1に記載の電子回路であって、直列接続に配置される少なくとも4つのゲートインバータを含み、前記ゲートインバータの各々の出力が前記ゲートインバータの後続の入力に印加され、前記電子回路が前記ゲートインバータのうちの少なくとも2つの間の少なくとも1つの相互接続を含み、前記相互接続がPMOS及びNMOSのうちの少なくとも1つを含む、電子回路。
【請求項8】
請求項1に記載の電子回路であって、前記ゲートインバータがバスホルダを有する、電子回路。
【請求項9】
請求項1に記載の電子回路であって、前記電子回路が3係数クロック分周器である、電子回路。
【請求項10】
請求項9に記載の電子回路であって、3、4、及び5に対して少なくとも1の分周比が選択可能である電子回路。
【請求項11】
後に互いに結合される複数のゲートインバータを含むクロック分周器であって、
前記ゲートインバータの少なくとも1つが、発振信号及び制御信号を受信するように構成され、前記クロック分周器が、前記制御信号に基づいて分周比が選択可能であるように構成される、
クロック分周器。
【請求項12】
請求項11に記載のクロック分周器であって、リング発振器が少なくとも3つのゲートインバータを含み、前記少なくとも3つのゲートインバータが直列接続で配置され、前記ゲートインバータの各々の出力が、前記ゲートインバータの後続の入力に印加される、クロック分周器。
【請求項13】
請求項11に記載のクロック分周器であって、前記制御信号が第1の信号及び第2の信号を含み、前記第1の信号と前記第2の信号とが互いに反対であるクロック分周器。
【請求項14】
請求項13に記載のクロック分周器であって、少なくとも1つのゲートインバータが、2つの相補入力を含み、入力信号の論理状態に応じて論理高又は論理低を出力するように部分的にゲートされ、PMOS又はNMOSのいずれかに部分ゲーティングを適用することによって選択可能である、クロック分周器。
【請求項15】
請求項11に記載のクロック分周器であって、前記制御信号のデューティサイクルが0.5より大きい、クロック分周器。
【請求項16】
請求項11に記載のクロック分周器であって、前記クロック分周器が3係数クロック分周器であるクロック分周器。
【請求項17】
請求項16に記載のクロック分周器であって、3、4、及び5に対して少なくとも1の分周比が選択可能である、クロック分周器。
【請求項18】
リング発振器を含む電子回路であって、
前記リング発振器が複数のゲートインバータを含み、前記ゲートインバータのうちの少なくとも1つが、発振信号と付加的入力における少なくとも1つの補助信号とを受信するように構成され、前記電子回路が、複数の相互接続を含み、前記少なくとも1つの補助信号に基づいて選択可能な分周比を提供する、
電子回路。
【請求項19】
請求項18に記載の電子回路であって、3、4、及び5のうちの1つの分周比が、10GHzより高い周波数で10年の寿命にわたって達成可能である、電子回路。
【請求項20】
請求項19に記載の電子回路であって、前記少なくとも1つのゲートインバータが、入力信号の論理状態に応じて論理高又は論理低を出力し、PMOS又はNMOSのいずれかにゲーティングを適用することによって選択可能である、電子回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
入力信号の周波数を分周する電子回路が提供される。
【背景技術】
【0002】
クロック分周器は、入力信号の周波数を、出力信号の、より低減された周波数に変換するために用いられる。入力信号と出力信号の周波数の比が分周比である。クロック分周器は、位相ロックループにおいて広く用いられている。
【0003】
位相ロックループでは、生成されたクロックは、基準クロックと比較するために分周される必要がある。クロック分周器全体をいくつかの段に分けることが知られており、その場合、最初の段が、最も高速であり、そのため設計が最も困難である。
【0004】
クロック分周器のネックは、デバイスのエージング又は劣化が存在する場合のプロセス/電圧/温度(PVT)変動に鑑みて、安定した分周比を提供しつつ、クロック分周器が動作可能である最大速度である。
【0005】
図1は、従来技術に従った、3分周CMOS論理回路の例100の簡略化された概略図である。この回路は、直列に接続された4つのゲートインバータ110、120、130、140で構成される。第2のゲートインバータ120及び第4のゲート反転140の出力は、NANDゲート150の入力152、154に接続され、その出力156は、第1のゲートインバータ110の入力に接続される。各ゲートインバータは相補制御信号入力を有する。一例として、第1のゲートインバータ110は、第1及び第2の相補入力112、114を含む。これらの入力の各々は、非対称クロックドライバ160によって駆動される。非対称クロックドライバ160は、50パーセントより高いデューティサイクルクロックを提供し、そのため、ゲートインバータ内の各PMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタは、クロック周期の50パーセント以上の間オンとなる。これは、動作の最高速度を向上させるためである。いずれにせよ、最大速度は、NANDゲート150を介する伝搬遅延によって制限される。NANDゲート150を高速化するために、そのサイズを増大させることによってその駆動強度を増大させることができるが、これにより、ノードdiv3_stage4 170、特にdiv3_stage2 172に対する負荷が増大し、これが速度ネックとなる。複数の分周比を提供するために単一の分周回路を使用しなければならない場合には、より多くの組み合わせロジックおよびゲートインバータを必要とする回路の複雑さのために、達成可能な最大速度はさらに低下する。
【発明の概要】
【0006】
電子回路が提供される。
【0007】
電子回路は、高速CMOS論理回路であってもよいし、高速CMOS論理回路に適するものであってもよい。
【0008】
電子回路はクロック分周器であってもよい。
【0009】
電子回路はリング発振器を含み得る。リング発振器は、複数のゲートインバータを含み得る。ゲートインバータの少なくとも1つが、2つの相補入力において発振信号および制御信号を受信するように構成され得る。電子回路は、分周比が選択可能となるように部分的にゲートされるように構成され得る。
【0010】
リング発振器は、少なくとも3つのゲートインバータを含み得る。少なくとも3つのゲートインバータは、直列接続で配置され得る。各ゲートインバータの出力が、リング発振器のゲートインバータの後続の入力に印加され得る。
【0011】
制御信号は、第1の信号及び第2の信号を含み得る。第1の信号と第2の信号は互いに逆とし得 る。
【0012】
制御信号のデューティサイクルは、0.5より大きくし得る。
【0013】
少なくとも1つのゲートインバータが、入力信号の論理状態に応じて論理高又は論理低を出力するように、部分的にゲートされ得る。出力信号は、PMOS又はNMOSのいずれかに対して部分ゲーティングを適用することによって選択可能とし得る。
【0014】
電子回路は相互接続を含み得る。
【0015】
ゲートインバータはバスホルダを有し得る。
【0016】
電子回路は、3係数(tri-modulus)クロック分周器とし得る。
【0017】
3、4、及び5に対して少なくとも1の分周比が選択可能であり得る。
【0018】
別の態様において、クロック分周器が提供される。クロック分周器は、その後互いに結合される複数のゲートインバータを含み得る。ゲートインバータの少なくとも1つが、発振信号及び制御信号を受信するように構成され得る。クロック分周器は、制御信号に基づいて分周比が選択可能であるように構成され得る。
【0019】
さらに別の態様に従って、電子回路が提供される。電子回路はリング発振器を含み得る。リング発振器は、複数のゲートインバータを含み得る。ゲートインバータの少なくとも1つが、発振信号と付加的な入力における少なくとも1つの補助信号とを受信するように構成され得る。電子回路は、複数の相互接続部を含み得る。電子回路は、少なくとも1つの補助信号に基づいて選択可能な分周比を提供し得る。
【0020】
本願のさらなる態様及び特徴が、添付の図面を参照して好ましい実施例の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来技術に従った、3分周クロック分周器として機能するCMOS論理回路の一例の簡略化された概略図である。
【0022】
図2】マルチ係数クロック分周器として作用するクロック分周器の例の簡略化された概略図である。
【0023】
図3】一例に従ったクロック分周器の処理信号の簡略化した概略図である。
【0024】
図4】改良されたマルチ係数クロック分周器であるクロック分周器の別の例の簡略化された概略図である。
【0025】
図5】ゲートインバータの簡略化された概略図である。
【0026】
図6】一例に従った、クロック分周器の処理信号の簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図2は、クロック分周器200として構成される電子回路の簡略化された概略例である。クロック分周器200は、第1~第6のゲートインバータ205、210、215、220、225、230を含む。第1~第6のゲートインバータ205、210、215、220、225、230は、直列接続で配置され、リング発振器201の一部である。クロック分周器200はまた、必要な分周係数3、4、及び5を得るために、ある組み合わせ論理を有する。
【0028】
破線ボックス290の中にゲートインバータ280の一例がより詳細に示されている。ゲートインバータ280は、その動作状態を制御するための付加的な入力を含む。
【0029】
ゲートインバータ280は、2つのp-金属酸化物半導体トランジスタ283、284、及び2つのn-金属酸化物半導体トランジスタ285、286を含む。第1のPMOS283のドレインは、第2のPMOS284のソースに結合される。第1のNMOS285のソースは、第2のNMOS286のドレインに結合される。一対のPMOS283、284と一対のNMOS285、286との間には、出力信号Yを提供するノード282が配置されている。これは、出力信号Yが、第2のPMOS284のドレインと第1のNMOS285のドレインとの間のノード282に提供されることを意味する。
【0030】
入力信号Aは、ゲートインバータ280の第1のPMOS283及び第2のNMOS286のゲートに結合される。制御信号は、第1の信号CLK及び第2の信号CLKBを含む。第1の信号CLKは、第1のNMOS285のゲートに結合される。第2の信号CLKBは、第2のPMOS284のゲートに結合される。第2の信号CLKBは、第1の信号CLKの逆である。これは、CLKが論理「高」である場合、CLKBが論理「低」であることを意味する。
【0031】
第1及び第2の信号CLKが供給されるゲートインバータ280は、第1の信号CLKが低であり、第2の信号CLKBが高である場合、CLKBは、高インピーダンス構成とし得る。同様に、ゲートインバータ280は、第1の信号CLKが高であり、第2の信号CLKBが低である場合、インバータ構成とし得る。インバータ構成では、ゲートインバータ280は、入力信号Aが低である場合に高を出力することができ、その逆も同様である。ゲートインバータ280は、CLKが低のままであれば、常に高を出力することができる。この構成では、CLKBはトグルすることが予期され、入力信号Aはトグルするか又は低のままである。CLKBと入力信号Aの両方が、ある時間に共に低になることが要求される。ゲートインバータ280は、CLKBが高のままである場合、常に低を出力することができる。この構成では、CLKはトグルすることが予期され、入力信号Aはトグルするか又は高のままである。CLKBと入力信号Aの両方が、ある時間に共に高になることが要求される。
【0032】
供給電圧287が、第1のPMOS283のソースに結合される。第2のNMOS286のソースは、接地288に結合される。クロック分周器200の第2、第4、及び第6のゲートインバータ210、220、230は、ゲートインバータ280に類似している。第1、第3、及び第5のゲートインバータ205、215、225は、第1の信号CLK及び第2の信号CLKBがゲートインバータ280と比較して交換されている点を除き、ゲートインバータ280と同様であるが、。
【0033】
クロック分周器200は、複数の相互接続235、240、245、250を含む。第1の相互接続235は、接地236とノードdivN_stage7 237との間に配置される。第2の相互接続240は、接地236とノードdivN_stage7 237との間に配置される。第3の相互接続245は、接地236とノードdivN_stage7 237との間に配置される。第4の相互接続250は、供給電圧VA11 238とノードdivN_stage7 237との間に配置される。
【0034】
相互接続235、240、245、250は全て、2つのPMOSの直列接続を含む。第2~第4の相互接続240、245、250の1つのPMOSのゲートが、ノードdivN_stage4 239に結合され、従って、これらの相互接続間で共有される。また、第1の相互接続235のゲートが、ノードdivN_stage2 241に結合される。ノードdivN_stage2 241はまた、第4の相互接続250の第2のゲートに結合される。
【0035】
選択信号sel<3>242が、第1の相互接続235の第2のゲートに結合される。選択信号sel<4>243が、第2の相互接続240の第2のゲートに結合される。第3の相互接続245の第2のゲートは、ノードdivN_stage6 244に結合される。
【0036】
安定化、バッファリング、及び/又は実行時間調節のために付加的なインバータ248を適用した後、クロック分周器200のDIVout246がノードdivN_stage3 247において提供される。
【0037】
クロック分周器200の機能的原理は、相互接続235、240、245、250に依存する。第1の相互接続235は、1つの期間(1T)のDIVout高時間を生成する(DIVoutが状態論理「高」であることを意味する)。第2の相互接続240は、2つの期間(2T)のDIVout高時間を生成する。第3の相互接続245は、3つの期間(3T)のDIVout高時間を生成する。第4の相互接続250は、2つの期間(2T)のDIVout低時間を生成する(DIVoutが状態論理「低」であることを意味する)。
【0038】
選択信号sel<3>242及びsel<4>243は、DIVout246における異なる分周比の間で切り換えるために用いられ得る。第1~第3の相互接続235、240、245は同じPMOS(プルアップ)を共有するので、DIVout246の低時間が全ての分周比に対して等しくなるように、すなわち、DIVout246の低時間が、選択信号sel<3>242及びsel<4>243の全ての構成に対して2Tになるように、負荷が低減される。これによって、クロック分周器200によって異なる分周比が提供されることになる。クロック分周器200は3係数であり、そのため、選択信号242、243によって、1/3、1/4、及び1/5の3つの異なった分周比が提供されるようになっている。従って、制御信号は、分周比が異なり得るように、クロック分周器200の動作状態を効率的に改変するために用いられ得る。クロック分周器200は、多数の用途に適用可能である。クロック分周器200は、数MHzからGHzまで、広範囲の入力クロック周波数で動作することができる。クロック分周器200の最大動作速度は、10GHzに近くまで、非常に高くし得る。
【0039】
さらなる態様に従って、ゲートインバータ205、210、215、220、225、230のデューティサイクルは歪んでいてもよい。これは、より多くの「オン」時間が提供されるように、0.5より大きいデューティサイクルを適用することができることを意味する。これは、非対称プルアップ(PMOS)及びプルダウン(NMOS)強度を有する付加的なインバータによって、クロック信号、すなわち、第1の信号CLK及び第2の信号CLKB、をバッファすることによって達成され得る。これは、クロック分周器200の最大速度(サンプリング時間、クロック分周器200が動作可能である最大周波数)をさらに増大させることにつながる。
【0040】
図3は、クロック分周器200の処理信号300の概略図を示す。x軸上には、ns単位の時間が示されている。y軸は、「高」と「低」を切り替えるそれぞれの信号の振幅を示す。
【0041】
Clk_stg1n3 312及びclkb_stg1n3 314は、クロック分周器200のゲートインバータ205、210、215、220、225、230をゲーティングするために用いられる、クロック信号及び反転クロック信号である。クロック信号周波数は、図3では10GHzである。
【0042】
divN_stage1~divN_stage7 320は、先に説明したように、クロック分周器200のゲートインバータ205、210、215、220、225、230の出力信号である。
【0043】
sel<4>322は、クロック分周器200の異なる分周比Div‐3、Div‐4、及びDiv‐5の間で選択するための選択信号の1つである。従って、ゲートインバータの出力信号、すなわち、信号divN_stage1~divN_stage7 320は、Div‐3、Div‐4、及びDiv‐5の間の異なる時点におけるsel<4>322のスイッチングに対応して変化する。DIVout324は新品のシリコンのシミュレーションの分周出力を示し、DIVout326は10年のエージング後の分周出力を示す。それらは、sel<3>、特にsel<4>322の状態に基づいて、論理「高」と論理「低」との間に異なる比を提供して、クロック分周器200が異なる分周比を提供するようにする。クロック分周器200のDIVout324と「エージングされた」DIVout326との比較から、クロック分周器200は、10年のエージングの後でも1/3の分周比に対して安定した出力信号を提供することが明らかである。これは、1/3の比率に対して、出力信号DIVout326は、「新品の」DIVout324と実質的に同じ(無視できる許容範囲内)であることを意味する。しかし、残りの分周比1/4及び1/5では、DIVout326は、「新品の」DIVout324とは異なる。これは、クロック分周器200が、そのようなデバイスの全ての(物理的に意味のある)プロセス/電圧/温度変動を考慮に入れた10年のシミュレーションされた耐用年数の間、(産業上の必要に応じて)予め定義された許容範囲内で10GHzの入力クロック周波数で一定の分周比を提供することがまだ完全には可能ではないことを意味する。
【0044】
図4は、クロック分周器400として構成された改良された高速CMOS論理回路を示す。この高速分周器400は、非常に高い入力クロックレートであっても、入力クロック信号を3、4、及び5の係数(factor)で分周することができる。それゆえ、これは高速マルチ係数分周器である。
【0045】
クロック分周器400は、第1~第7のゲートインバータ410、415、420、425、430、435、440を含む。クロック分周器400のゲートインバータ410、415、420、425、430、435、440は、クロック分周器200を参照して詳細に説明したものと同様のタイプである。クロック分周器400は、ノードdivN_stage2 416とノードdivN_stage2b 470との間に反対方向に配置される付加的なインバータ460を含み、それ自体が第1のゲートインバータ410の入力に結合される。
【0046】
クロック分周器400はまた、NAND2 445を含み、その第1の入力が、ノードdivN_stage4 426に結合される。NAND2 445の第2の入力は、制御信号clkb_stg1n3 427に結合される。NAND2 445の出力は、第1のゲートインバータ410のPMOS制御入力に結合される。
【0047】
さらに、クロック分周器400はNAND3 450を含み、第1の入力がノードdivN_stage5 431に結合される。NAND3 450の第2の入力がノードdivN_stage7 441に結合され、ノードdivN_stage7 441は自体は第7のゲートインバータ440の出力に結合される。NAND3 450の第3の入力は、制御信号clk_stg2n4 442に結合される。NAND3 450の出力は、第2のゲートインバータ415のPMOS制御入力に結合される。
【0048】
制御信号480は、クロック信号CLK及び反転クロック信号CLKBならびに選択信号sel<3>481及びsel<4>482に基づいて提供される。この場合も、選択信号sel<3>481及びsel<4>482に基づいて、クロック分周器400の異なる分周比が選択可能である。
【0049】
クロック分周器400のDIVout495は、付加的なインバータ491、492、493を用いて実行時間調節、安定化、及び/又はバッファリングを適用した後、ノードdivN_stage2b 470において提供される。
【0050】
NAND2 445は、2つの期間(2T)のDIVout495高時間を生成する。付加的なインバータ460が、1つの期間(1T)のDIVout495低時間を生成する。ノードdivN_stage5 431は、2つの期間(2T)のDIVout495低時間を生成する。ノードdivN_stage7 441は、3つの期間(3T)のDIVout495低時間を生成する。NAND2 445はクロック分周器400の異なる係数によって共有されるので、異なる分周比は、2つの期間(2T)のDIVout495高時間を有する。
【0051】
さらに、ゲートインバータのPMOSプルアップへのクロックのゲーティングを用いて、任意のサイクル数の間、その出力の低時間を増加させることができる。
【0052】
クロック分周器400は異なる係数(分周比)を提供し、これらは、ゲートインバータ430(「ハーフラッチ」)又はゲートインバータ440内のNMOSに結合されたクロック信号CLK(第1の制御信号)のみをゲーティングすることによって選択可能である。これは、ゲートインバータ430又はゲートインバータ440が、反転クロック信号CLKB(第2の制御信号)として部分的にゲート(ハーフゲート)され、入ってくる入力信号が、PMOSを介して既知の状態にプルすることを意味する。
【0053】
言い換えると、ゲートインバータのPMOS及びNMOS(プルアップ又はプルダウン)クロックの一方のみがゲートされる。その結果、ゲートインバータの片側のみがゲートされるので、ゲートクロッキングのために必要とする駆動強度が一層低いため、電力消費は低い。PMOSサイズはNMOSよりも少なくとも2倍大きいので、駆動強度が等しい場合、NMOSのみがゲートされる場合には、電力消費をさらに低減することができる。ハーフゲーティングを用いることにより、PMOSとNMOSの両方がゲートされる場合と比較して、非常にシンプルでコンパクトである。さらなる態様に従って、両方がゲートされる場合、ゲートインバータは、未定義の出力で「トライステート」になる。例えば、ゲートインバータに入るデータは上下にトグルするので、NMOSのみをゲートすることによって、PMOSは、出力を既知の状態に定期的にプルアップする。つまり、ゲートインバータに入るデータに基づいて、出力信号が定義される。
【0054】
クロック分周器400では、クロック分周器200の場合とは異なるデータ上の組み合わせ論理を用いるのではなく、クロックをゲーティングすることによって3つの異なる係数(分周比)が選択される。クロックは、速度枠(speed box)の突破を可能にするバッファされた「開ループ」とすることができ、すなわち、クロック分周器400が動作可能な最大速度を、クロック分周器200が動作可能な最大速度よりもずっと高くすることが可能となる。
【0055】
本明細書に記載されるクロック分周器200、400は、高周波数、例えば100MHzを超える周波数、好ましくは1GHzを超える周波数、より好ましくは10GHz又は無線周波数に近いかさらに好ましくはそれを超える周波数に対して構成され得る。クロック分周器200、400は、アナログデジタルコンバータ(ADC)又は位相ロックループ(PLL)での使用に適切なものとし得る。
【0056】
クロック分周器200、400は、基礎となる製品の寿命(10年以上)にわたってロバストに機能するように構成され得る。クロック分周器200、400は、そのロバスト性に起因して、デバイスのエージング又は劣化が存在する場合に、全ての(物理的に意味のある)プロセス/電圧/温度(PVT)変動に対して、予め定義された仕様を提供するように構成され得る。特に、クロック分周器400は、デバイスのエージング又は劣化が存在する全ての(物理的に意味のある)PVT変動に対して、65nmトポロジにおいて10GHzを超える周波数で動作するように構成され得る。
【0057】
或る使用例において、電子回路をPLL内のクロック分周器200、400として実装することができる。PLL生成されたクロックは、基準クロックと比較するために分周する必要がある場合がある。遅くするために、クロック分周器全体が数段階に分けられてもよく、ここで、第1の段階は最高速度(この段階が動作可能であり得る動作周波数)を有し得、設計が最も困難である。PLLの特定の使用例では、第1の段階のクロック分周器(プリスケーラ)は、1/3、1/4、及び1/5の選択可能な分周比を提供する3係数であることが要求され得る。例示のクロック分周器200、400を表す本電子回路は、これらの要件を満たすように構成され得る。
【0058】
しかしながら、電子回路は一般的なものであり、従って、ADC又はPLLにおける実装に限定されない。
【0059】
図5は、バスホルダを含むゲートインバータの簡略概略図である。
【0060】
ボックス510では、ゲートレベル表示に従ってゲートインバータが示されている。ボックス530では、ゲートインバータがトランジスタ表現に従って示されている。
【0061】
ノード512に続くボックス510には、第1のインバータ516及び第2のインバータ518を含むリング構成が示されている。ノード514で出力信号Yが提供される。
【0062】
ボックス530において、トランジスタ表現に従って、第1のインバータ516及び第2のインバータ518が示されている。第1及び第2のインバータ516、518の各々は、PMOS536、540及びNMOS538、542を含む。
【0063】
いずれの場合においても、第1及び第2のインバータ516、518は、容量効果を提供する。従って、ゲートインバータの出力514、534が弱まったり、その値を変化させたりすることなく、クロックを停止することができる。従って、クローバ(crow-bar)電流が回避される。
【0064】
クロック分周器200及びクロック分周器400の全てのゲートインバータはバスホルダを含んでいる。しかしながら、一般に、バスホルダは任意選択であり、クロック分周器200、400には必須ではない。
【0065】
図6は、クロック分周器400に従った例の処理信号600の簡略概略図である。図6の原理的レイアウトは、クロック分周器200の処理信号300を示す図3に対応する。従って、これらの図の比較は、クロック分周器200、400の両方の例の性能の尺度を提供する。この場合も、x軸上に、ns単位の時間が示されている。y軸は、「高」と「低」の間で切り替わるそれぞれの信号の振幅を示す。
【0066】
Clk_stg1n3 612及びclkb_stg1n3 614は、ゲートインバータをゲーティングするために用いられるクロック信号及び反転クロック信号である。クロック信号周波数は、図6では11GHzである。
【0067】
divN_stage1~divN_stage7 620は、クロック分周器400のゲートインバータ410、415、420、425、430、435、440の出力信号である。
【0068】
sel<4>622は、クロック分周器400の、異なる分周比Div‐3、Div‐4、及びDiv‐5の間で選択するための選択信号の1つである。従って、ゲートインバータの出力信号、すなわち、信号divN_stage1~divN_stage7 620は、Div‐3、Div‐4、及びDiv‐5の間の異なる時点のスイッチングsel<4>に対応して変化する。DIVout626は、新品のシリコンのシミュレーションの分周出力を示し、DIVout628は、10年のエージング後の分周出力を示す。それらは、sel<3>及び特にsel<4>622の状態に基づいて、論理「高」と論理「低」との間で異なる比を提供して、クロック分周器400が異なる分周比を提供するようにする。
【0069】
「エージングされた」DIVout628と「新品の」DIVout626との比較から明らかなように、両方の信号は、シミュレートされた10年の寿命及び全ての(物理的に意味のある)PVT変動の後でも、全ての分周比1/3、1/4、及び1/5について実質的に同じである。これは、遅い組み合わせ論理がデータに適用されることを回避することによって、ゲートインバータをハーフゲーティングすることのみによって、及び、「開ループ」クロックバッファ構成に従ってクロック分周器400を構築することによって、クロック分周器400が高速最大速度を達成することを意味する。クロック分周器400は、11GHzを超える周波数で動作可能であり、10年以上の寿命の間(無視し得る許容範囲内で)、これらの周波数で一定の分周比を提供する。従って、デバイスのエージング又は劣化が存在する全ての(物理的に意味のある)プロセス/電圧/温度(PVT)変動に対してさえも、これらの周波数で分周比が提供される。
【0070】
本開示は、特定の例を参照して上述されているがこれらの例に限定されるものではなく、当業者であれば、特許請求の範囲に記載されたクロック分周器の範囲内でさらなる代替例を思いつくであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】