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特表2022-541631レーザ照射による材料加工装置及び材料加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】レーザ照射による材料加工装置及び材料加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/0622 20140101AFI20220915BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20220915BHJP
   B23K 26/073 20060101ALI20220915BHJP
   B23K 26/04 20140101ALI20220915BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220915BHJP
   A61F 9/008 20060101ALI20220915BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20220915BHJP
   A61F 9/01 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B23K26/0622
B23K26/00 N
B23K26/073
B23K26/04
H01S3/00 B
A61F9/008 120A
B23K26/08
A61F9/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504533
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2020070453
(87)【国際公開番号】W WO2021013796
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019120010.5
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522029327
【氏名又は名称】ノヴァンタ ユーロップ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】NOVANTA EUROPE GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グッゲンモス、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ハートマン、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】バッカート、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ミュテル、ファビアン
【テーマコード(参考)】
4E168
5F172
【Fターム(参考)】
4E168CB04
4E168CB07
4E168CB13
4E168CB18
4E168DA45
4E168DA46
4E168DA47
4E168DA52
4E168DA54
4E168EA11
4E168EA15
4E168KA08
5F172NN11
5F172ZZ01
(57)【要約】
本発明は、レーザ放射によって材料を加工する方法、特に材料及び/又は材料特性を修正する方法であって、a)複数のレーザーパルス(L)を発生させるステップと、b)加工されるワークピース(100)に対するレーザーパルス(L)の衝突点を制御するステップと、特にレーザーパルス(L)を偏向させ、及び/又は加工されるワークピース(100)を移動させて、加工されるワークピースの所定の軌道(Z)に沿ってレーザーパルス(L)が誘導されるようにするステップとを含み、-生成された個々のレーザパルス(L)間のパルス間時間間隔(#t)及び/又は-レーザパルス(L)のパルスエネルギー(Pi)及び/又は-レーザパルス(D)のビーム径(D)及び/又は-所定の軌道(Z)が、特にノイズに曝される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ放射によって材料を加工するための方法、特に材料及び/又は材料特性を改質するための方法であって、
a)複数のレーザパルス(L)を発生させるステップと、
b)加工されるワークピース(100)における前記レーザパルス(L)の衝突点を制御する、特に、前記レーザパルス(L)を偏向させ、及び/又は加工される前記ワークピース(100)を移動させて、加工される前記ワークピース(100)上の所定の軌道(Z)に沿って前記レーザパルス(100)が誘導されるように制御するステップとを含み、
-発生した個々の前記レーザパルス(L)のパルス時間間隔(Δt)、及び/又は
-前記レーザパルス(L)のパルスエネルギー(Pi)、及び/又は
-前記レーザパルス(L)のビーム径(D)、及び/又は
-前記所定の軌道(Z)
が、特にノイズに曝されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記パルス時間間隔(Δt)は、決定されたパルスシーケンス長(LI)の疑似ランダムパルス間隔シーケンス(Ppt)によって変化し、特に、前記疑似ランダムパルス間隔シーケンス(Ppt)が周期的に繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周期的に繰り返される前記疑似ランダムパルス間隔シーケンス(Ppt)が定義され、繰り返し前記疑似ランダムパルス間隔シーケンス(Ppt)のスタートパルスが疑似ランダム値によって時間的にシフトされることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザパルス(L)の前記パルスエネルギー(Pi)は、擬似ランダムパルスエネルギーシーケンス(Ppe)により変化し、特に、前記擬似ランダムパルスエネルギーシーケンス(Ppe)が周期的に繰り返されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項、特に請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザーパルス(L)の前記ビーム径(D)が、特に周期的に繰り返される擬似ランダムパルス径シーケンス(Ppd)によって変化させられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項、特に請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザパルス(L)が導かれる前記所定の軌道(Z)の点は、擬似ランダムパルス軌道シーケンス(Ppz)によりシフトされ、特に、前記擬似ランダムパルス軌道シーケンス(Ppz)が周期的に繰り返されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項、特に請求項1に記載の方法。
【請求項7】
レーザ放射によって材料を加工するための装置、特に材料及び/又は材料特性を改質するための装置であり、好ましくは、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を実行するための材料加工装置であって、
-複数のレーザーパルス(L)を発生させるためのレーザユニット(10)と、
-加工されるワークピース(100)における前記レーザパルス(L)の衝突点を制御するためのユニット、特に、加工される前記ワークピース(100)上の所定の軌道(Z)に沿って前記レーザパルス(L)を偏向させるための偏向ユニット(20)、及び/又は加工される前記ワークピースを移動するための移動ユニットと、
-加工される前記ワークピース(100)上の前記所定の軌道(Z)に沿って前記レーザパルス(L)を表示するための、特にフォーカスするための、任意的な表示ユニット(30)と、ならびに
-前記レーザユニット(10)及び/又は前記レーザパルス(L)の衝突点を制御するためのユニット、特に、前記偏向ユニット(20)及び/又は前記移動ユニット及び/又は前記表示ユニット(30)と通信可能に接続された、前記レーザユニット及び/又は前記レーザパルス(L)の衝突点を制御するためのユニットであるシステムコントローラ(40)とを備え、特に、前記偏向ユニット(20)及び/又は前記移動ユニット及び/又は前記表示ユニット(30)は、前記システムコントローラ(40)によって制御信号による制御が可能であって、
-生成される個々の前記レーザパルス(L)のパルス時間間隔(Δt)、及び/又は
-前記レーザパルス(L)のパルスエネルギー、及び/又は
-前記レーザパルス(L)のビーム径(D)、及び/又は
-前記所定の軌道(Z)
が、少なくとも一つの制御信号を、特にノイズに曝すことによって可変であることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、レーザ照射によって材料を加工する方法、特に材料及び/又は材料特性を修正する方法のみならず、請求項7に記載の、レーザ照射によって材料を加工する装置、特に材料及び/又は材料特性を改質する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザによる材料の加工において、パルスレーザビームは、パルスレーザビームが材料を加工するように、加工される材料に導かれる、及び/又は向けられる場合があり、例えば、特に材料特性を改質する、及び/又は材料を除去するような場合である。
【0003】
現状の当該技術については、レーザによって材料を加工するための方法及び装置がこれまで記載されており、例えば、文献DE 102 45 717 A1、DE 10 2009 042 003 B4、及びDE 11 2005 002 987 T5に記載されているように、個々のレーザパルスの時間的な動作過程及び/又はレーザビーム誘導及び/又は個々のレーザパルスの性能レベルについて特に高い精度が達成されることが意図されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3では、当該技術分野の一方法によるワークピースの加工中での、ワークピース100の上面図が示されている。図示された例では、パルスレーザビームは、ワークピース100の表面上の軌道Z´に沿って導かれる。図示された例では、軌道Z´は、座標系x、y、zのx軸に沿って走っており、x軸及びy軸は、ワークピース100のワーク平面にまたがり、z軸は、x軸及びy軸に直交して延びる。ワークピースの焦点と材質によっては、パルスレーザビームがワークピース内の軌道Z´に沿って導かれることもあり得る。
【0005】
レーザパルスによって生成された加工点L´は、さらに図3に示すように、直径D´を有しており、個々のレーザパルスの正確な時間間隔と組み合わせてレーザビームを連続的に誘導及び/又は偏向することにより、レーザパルスによって生成された加工点L´は軌道Z´に沿って互いに一定の間隔を空けて配置されている。その結果、加工点L´の規則的なパターンが生成される。
【0006】
特に、光学系において採用される、光が入射及び/又は導光される材料では、材料を高精度に加工することにより、材料に周期構造が発生したり、材料特性に周期構造が発生したりする。これにより、光が入射すると、望ましくない干渉縞や回折現象が発生する場合がある。
【0007】
本発明は、一方では費用効率が高く、他方では加工されるワークピースの光学特性を最適化する、レーザによる材料加工方法を提供するというタスクに基づいてなされた発明である。特に、上述の課題を回避するための方法及び装置を示すことを意図している。
【0008】
本発明によれば、当該課題は、請求項1及び7に係るタスクによって解決される。さらなる有利な構成は、従属請求項によってもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のタスクは、特に、レーザ放射によって材料を加工するための方法、特に材料及び/又は材料特性を改質するための方法によって解決されるものであって、
a)複数のレーザパルス(L)を発生させるステップと、
b)加工されるワークピース(100)におけるレーザパルス(L)の衝突点を制御する、特に、レーザパルス(L)を偏向させ、及び/又は加工されるワークピース(100)を移動させて、加工されるワークピース(100)上の所定の軌道(Z)に沿ってレーザパルス(100)が誘導されるように制御するステップとを含み、
-発生した個々のレーザパルス(L)のパルス時間間隔(Δt)、及び/又は
-レーザパルス(L)のパルスエネルギー(Pi)、及び/又は
-レーザパルス(L)のビーム径(D)、及び/又は
-所定の軌道(Z)
が、特にノイズに曝される。
【0010】
衝突点は、好ましくは、それぞれのレーザパルスの衝突点である。そして、ステップb)において、複数の衝突点、特に後続のレーザパルスの複数の衝突点が制御される。言い換えれば、ステップb)において、それぞれのレーザパルスの衝突点が制御され、複数のレーザパルスの複数の衝突点が時間的に連続的に制御されてもよい。衝突点は、例えば、レーザパルスによって生成される加工点であってもよい。
【0011】
本発明の本質である思想の核心は、加工後に、ワークピースの加工面が、例えば、コヒーレント光、又はインコヒーレント光による光入射の下で、回折効果等の光学効果を僅かに抑制する、好ましくは全く発生しないように、ワークピースの材料の加工及び/又は改質に影響を与えることである。
【0012】
これは、特にノイズを受けた個々のレーザパルス、又はレーザユニットの複数のパラメータを変化させることによって生じるワークピースの材料の改質の不規則な構造が、ワークピースへの光入射の下での干渉現象又は回折現象につながるのではなく、むしろ発生した不規則な表面構造によって干渉現象又は回折現象が平均化される、という点によって達成されている。
【0013】
レーザビームの軌道、パルス時間間隔、パルスエネルギー、ビーム径などの個別又は複数のパラメータにノイズを与えることにより、レーザパルスによって加工されるワークピースに意図的な凹凸構造を発生させることを実現する。
【0014】
加工動作後に生成されたワークピースの凹凸構造に衝突した光は、乱反射し、ワークピース上で、例えば、光学格子などの非常に規則的な周期構造や周期構造を有する表面での回折現象や反射や透過による干渉現象が発生しない。
【0015】
ワークピース上に不規則な構造を生成するように、レーザパルスの個々のパラメータが特にノイズにさらされる、この方法によれば、ワークピースを機械的に動かす必要がない実施態様であることにより、本発明の一実施形態に従ってコスト効率のよい方法で実現できる。この場合、例えば、ヒステリシス効果のような限定的な機械的歳差運動によって材料の加工が制限されない処理によって、結果としてワークピースの表面上の凹凸構造が任意に小さくなるように調整され得る。一方で、本実施形態は、例えば、重量物や不動体等と強固に接続しているため、移動させることができないワークピースに適している。この材料の加工方法は、この場合、材料を加工した後のワークピースに光が入射しても、回折現象や干渉現象が発生しないように処理する。
【0016】
本発明においてノイズは、例えば、ガウス過程、ポアソン過程、ホワイトノイズ、又は均等分布ランダム過程等の確率的ノイズ過程に基づく確率信号又は時間離散的な確率信号列であると理解することができる。
【0017】
具体的にノイズを与えるとは、例えば、ガウス過程における平均値や分散など、基本的なノイズ過程の特性パラメータを具体的に選択し、ノイズ過程に基づいて確率信号や時間的に離散的な確率信号列を生成するものと理解される。
【0018】
生成された確率信号又は生成された時間離散確率信号列は、例えば、レーザパルスの衝突点を制御するための制御信号に付加的に加えることができる。
【0019】
ノイズは、特に時間的ノイズの意味でのジッタであると理解してもよく、同様に、例えば、ノイズプロセスに基づくものであってもよい。
【0020】
本発明の更なる及び/又は代替の実施形態において、ワークピースに対するレーザパルスの衝突点の制御は、加工される被加工物を移動させることによって行われる。その際、3方向(x方向、y方向、z方向)に移動可能なワークホルダ、特に座標テーブルを使用することが可能である。このようにワークピースを移動させることで、より複雑なレーザ偏向装置なしに処理することができる。
【0021】
時間的パルス持続時間は、場合や用途に応じて、好ましくはナノ秒(ns)の範囲、より好ましくはピコ秒(ps)の範囲、さらに好ましくはフェムト秒(fs)の範囲であり、レーザパルスの時間経過は、好ましくはガウス形状又はsech2形状で区別される。
【0022】
本方法で使用されるレーザパルスの波長は、用途、材料及び/又はワークピースに対する所望の浸透深さに応じて、紫外線領域(UV)、好ましくは可視領域(VIS)、さらに好ましくは近赤外線領域(NIR)である。
【0023】
本方法で使用されるレーザパルスの空間モードは、好ましくはTEM00モードであり、当該モードは、このモードから逸脱した代替の実施形態であってもよい。
【0024】
レーザパルスLの平均パルス時間間隔Δtは、好ましくは、1kHz~100MHzの範囲に対応する範囲である。
【0025】
レーザパルスLの平均パルスエネルギーPiは、好ましくは、0.1nJ~1mJの範囲である。
【0026】
当該方法の一実施形態では、パルス時間間隔は、決定されたパルスシーケンス長の疑似ランダムパルス間隔シーケンスによって変化させられて、特に、疑似ランダムパルス間隔シーケンスが周期的に繰り返される。疑似ランダムパルス間隔シーケンスにより、パルスシーケンスにジッタ、すなわち時間的ノイズを効果的に作用させることができる。
【0027】
擬似ランダムパルス間隔シーケンスを生成することで、レーザパルスの連続的な偏向により、レーザパルスの軌道のワークピースへの衝突座標又は衝突点が不規則になる。この結果、材料加工において、ワークピースの材料を不規則に改質させることができる。
【0028】
当該方法の好ましい実施形態では、周期的に繰り返される疑似ランダムパルス間隔シーケンスが定義され、繰り返し疑似ランダムパルス間隔シーケンスの開始パルスが疑似ランダム値によって時間的にシフトされる。
【0029】
擬似ランダムなパルス間隔を周期的に繰り返すことで、新しい擬似ランダムなパルス間隔を連続的に計算する必要がないため、計算量を削減することができる。
【0030】
当該方法の一実施形態では、レーザパルスのパルスエネルギーは、擬似ランダムパルス間隔シーケンスによって変化し、特に、擬似ランダムパルス間隔シーケンスは、周期的に繰り返される。
【0031】
レーザパルスのパルスエネルギーを変化させることで、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、ワークピースの材料や光学的特性によっては、パルス間隔ではなく、パルスエネルギーを変化させることが有利な場合がある。これは、例えば、レーザ波長において強く反射する材料の場合に有利である。
【0032】
当該方法の更なる実施形態では、レーザパルスLのパルス径が、特に周期的に繰り返される擬似ランダムパルス径シーケンスによって変化する。
【0033】
ここでも、単に擬似ランダムなパルス径のシーケンスを周期的に繰り返すことで、新たな擬似ランダムなパルス径のシーケンスを計算する必要がないため、計算量を削減することができる。
【0034】
当該方法の一つの実施形態では、レーザパルスが導かれる所定の軌道の点は、疑似ランダムパルス軌道シーケンスによってシフトされ、特に、前記疑似ランダムパルス軌道シーケンスが周期的に繰り返される。
【0035】
レーザパルスの軌道を擬似ランダムにずらすことで、同様に規則的な構造を回避することができる。この実施形態は、特に、上述の実施形態と組み合わせることが可能な、簡単に使用できる機械的な実施形態を示す。
【0036】
レーザユニットは、シードレーザを含むことが可能である。本発明のそのような実施形態では、シードレーザの周期持続時間よりも小さいノイズ、特に、そのようなジッタを選択することが可能である。
【0037】
本発明によるタスクは、本発明のさらなる態様として、レーザ放射によって材料を加工するための装置、特に材料及び/又は材料特性を改質するための装置によって、好ましくは上述の方法を実行するための装置によって解決されるものであって、
-複数のレーザパルスを発生させるためのレーザユニットと、
-加工されるワークピースにおけるレーザパルスの衝突点を制御するためのユニット、特に、所定の軌道に沿ってレーザパルスを偏向させるための偏向ユニット、及び/又はレーザパルスが加工されるワークピース上で所定の軌道に沿って導かれるように、加工されるワークピースを移動させるための移動ユニットと、
-加工されるワークピース上の所定の軌道に沿ってレーザパルスを表示するための、特にフォーカスするための、任意的な表示ユニット、ならびに
-レーザユニット及び/又はレーザパルスの衝突点を制御するためのユニット、特に、偏向ユニット及び/又は移動ユニット及び/又は表示ユニットと通信可能に接続された、レーザユニット及び/又はレーザパルスの衝突点(L)を制御するためのユニットであるシステムコントローラとを備え、特に、偏向ユニット(20)及び/又は移動ユニット及び/又は表示ユニットは、システムコントローラによって制御信号による制御が可能であって、
-生成される個々のレーザパルスの間のパルス間時間間隔、及び/又は
-レーザパルスのパルスエネルギー、及び/又は
-レーザパルスのビーム径、及び/又は
-所定の軌道
が、少なくとも一つの制御信号を、特にノイズに曝すことによって可変である。
【0038】
偏向ユニットは、例えば、ガルバノスキャナーをベースとすることができる。この場合、レーザパルスの偏向は、レーザパルスのワークピースにおける衝突座標又は衝突点を変化させることを伴う。
【0039】
例えば、望遠鏡、レンズ、レンズアレイ、レンズ配列、放物面鏡、球面鏡は、表示装置と理解することができる。
【0040】
集光ユニットとは、例えば、表示ユニットと理解してもよい。さらに、単純なレンズ配置も表示ユニットとして可能である。
【0041】
レーザユニットは、例えば、シードレーザ、強化ファイバ、音響光学変調器(AOM)、電気光学変調器(EOM)を少なくとも含んで構成することができる。
【0042】
システムコントローラは、例えば、スタートパルスを要求する。EOMとAOMを導通状態、特に開状態に切り替えることにより、増強されたパルス発光が行われる。詳細には、EOMが非導通状態、特に閉状態に切り替えられると、増強される。
【0043】
所望の増強に到達すると、すぐに、EOMとAOMが導通状態、特に開状態に切り替えられてパルス放出が実行される。パルスが要求されていないときは、EOMは開状態、AOMは閉状態である。つまり、AOMはシードレーザのパルス発光を遮断し、EOMは開状態であるため、増強が蓄積されることはない。
【0044】
制御信号は、例えば、TTL(Transistor-Transistor Logic)信号であってもよい。
【0045】
なお、上述した実施形態は、任意に組み合わせることが可能であることを指摘しておく。
【0046】
以下、本発明は、図面によってより詳細に説明される例示的な実施形態に基づき、さらなる特徴及び利点に関しても説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】ワークピースの材料を加工するための本発明の例示的な実施形態による装置の概略図である。
図2】本発明の例示的な実施形態に従ったパルスシーケンスの概略図である。
図3】本技術分野に係る加工中のワークの上面図である。
図4】本発明による例示的な実施形態による処理方法中のワークピースの上面図である。
図5】本発明の例示的な実施形態による概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1において、レーザユニット10が示されており、これは、増幅器領域12の方向に光パルスを放出するように設計されたシードレーザユニット11を含み、第1光学変調器13、特に電気光学変調器(EOM)は増幅器領域12の下位に相当し、この変調器は、光パルスが増幅器領域を離れられるようにする第1の状態、及び光パルスが循環する際に増幅するように増幅器領域内で循環する第2の状態を有している。
【0049】
さらに、レーザユニット10は、第1光学変調器13の後段に、レーザユニット10から光パルスを出射させる第1の状態と、レーザユニット10の光パルスを出射させず残留させる第2の状態とを有する第2光学変調器14、特に音響光学変調器(AOM)を備えている。
【0050】
レーザユニット10から出射された光パルスは、表示ユニット30、特にレーザユニット10の後段に配置された集光ユニットによって、加工対象のワークピース100の方向に所定の軌道Zに沿って表示される。表示ユニット30は、この場合、望遠鏡、レンズ、レンズアレイ、放物面鏡もしくは球面鏡、またはこれらの要素の2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0051】
ビーム位置又はワークピース100への衝突点に影響を与えるために、偏向ユニット20が表示ユニット30とワークピースの間に配置されている。偏向ユニット20は、加工対象のワークピース100上の所定の軌道Zに沿ってレーザパルスLを偏向させるという目的を果たす。図1において、ビームの平均偏向角は約90°である。しかしながら、本発明によれば、当該装置は、この平均偏向角に制限されない。
【0052】
さらに、図1には、x、y、zの座標系が図示されており、x軸とy軸はワークピース100の平面にわたり、z軸はワークピース平面と直交するように走っている。
【0053】
システムコントローラ40は、第1変調器13及び第2変調器14を介して、どの時点でレーザユニットからレーザパルスを出射するかを決定し、表示ユニット30をワークピース100に対するフォーカス位置に関して制御し、偏向ユニット20を介してレーザパルスの所定の軌道Zを制御し、ワークピース100に対するビーム位置を制御する。
【0054】
これにより、システムコントローラは、生成された個々のレーザパルスのパルス間隔、及び/又はレーザパルスのパルスエネルギー、及び/又はレーザパルスのビーム径、及び/又は所定の軌道のパラメータを具体的にノイズの対象とし、前述の材料加工における問題を回避することができる。
【0055】
さらなる例示的な実施形態において、システムコントローラが、シードレーザ11の光パルスの時間的な発光をノイズの対象とすることも可能である。
【0056】
図2において、本発明の例示的な一実施形態によるパルスシーケンスの模式図が示されている。時間tにわたるパルスエネルギーPiが描かれている。個々のパルスは、本実施例では、少なくとも実質的に一定のエネルギーレベルを有するガウスパルスである。さらに、図2には、個々のレーザパルスが繰り返される期間の持続時間を表す反復率Tが描かれている。図2に示す例示的な実施形態では、パルス間隔は、単一のパルス間隔Δtがパルスごとに変化するような疑似ランダムパルス間隔シーケンスによって変化させられる。
【0057】
図4では、本発明の方法によるワークピース100の加工中の上面図が表されている。示された例示的な実施形態において、パルスレーザビームは、ワークピース100の表面上の軌道Zに沿って導かれる。
【0058】
この例示的な実施形態では、軌道Zは、座標系(x、y、z)のx軸に沿って走り、x軸及びy軸は、ワークピースのワークピース平面にわたり、z軸は、x軸及びy軸に直交して走る。フォーカスとワークの材料の質によっては、パルスレーザビームをワーク内の軌道Zに沿って誘導することができる。
【0059】
図4には、レーザパルスによって生成された加工点Lが示されているが、この加工点は直径Dを有している。パルスレーザビームは、軌道Zに沿って連続的に誘導、及び/又は偏向されるが、レーザパルスの時間間隔は時間的に異なるため、加工点Lのパターンは被加工物上に不規則に現れることになる。
【0060】
同様に、レーザパルスのさらなるパラメータは、特に追加的に、例えば、疑似ランダムパルスエネルギーシーケンス、パルス直径シーケンス、及び/又はパルス軌道シーケンスによって、変化させることができる。
【0061】
図5は、本発明の例示的な一実施形態によるフローチャートである。ステップS0では、特に時間的ノイズ、いわゆるジッタを受けた制御信号が生成される。制御信号は、例えば、低電圧値、例えば0.2V以下、高電圧値、例えば2V以上を有するTTL信号であってよい。
【0062】
ステップS1では、具体的にジッタを受けた制御信号がレーザユニット10に送信される。ステップS2では、レーザユニット10において、レーザパルスを照射すべきか否かが制御信号によって判断される。これは、閾値比較、例えば制御信号の電圧値が1.8V以上であるか否かによりトリガされてもよい。
【0063】
ステップS2において、レーザパルスをトリガすべきとの判断がなされた場合、ステップS3において、レーザユニット10のEOMが閉鎖される。それによって、反転、すなわち、シードレーザユニット11のレーザ信号の強化がレーザユニット10で増進される。反対に、ステップS2において、例えば制御信号の電圧値が1.8V未満である場合、レーザパルスをトリガすべきでないという判断がなされると、当該方法はステップS1に戻る。
【0064】
ステップS4では、シードレーザユニット11のレーザ信号の所望の強化に達するように、一定の反転時間が経過したか否かの問合せが行われる。
【0065】
一定の反転時間が経過した場合、ステップS5において、EOM及びAOMの両方が開放される。これにより、今度はレーザユニット10からレーザパルスが出射され、被加工物に照射される。
【0066】
更なるステップS6では、レーザパルスが出射された後、EOMが閉じられる。EOMを閉じた後、AOMも閉じられるが、AOMを閉じる処理は、EOMを閉じる処理よりも遅い。
【0067】
ここで、当該方法はステップS2に戻り、レーザパルスを再び放射すべきかどうか、トリガ信号によって決定される。
【0068】
図1図5に表される例示的な実施形態とは独立に、本発明のさらに別の可能な適用分野においても参照される。本発明による方法及び/又は装置の適用可能な分野は、例えば、レーザ、特に超短パルス(USP)レーザによる眼、特に人間の眼の角膜の治療である。
【0069】
目の角膜を治療するための技術水準として知られている方法において、周期的な構造は、結果としてここに形成される。これらの方法は、特に、Femto-LASIK(Laser-assisted in situ keratomileusis supported by femtosecond lasers)アプリケーション、及びFLEX(femtosecond LASER lenticular extraction)アプリケーションに採用されている。
【0070】
レーザ、特に超短パルスレーザは、それによって組織内にキャビテーションバブルの構造を生成し、生成された分離層に沿って組織の一部を互いに分離することができる。
【0071】
技術水準による治療に続き、治療による周期的構造に起因する回折効果は、明るい光源を見たときに虹の構造を知覚するという結果を患者に対してもたらす。この効果は、技術水準が高い上述の方法における副作用として、「rainbow glare」という呼称で知られている。
【0072】
本発明により、加工において組織内に周期的構造を形成することなく分離層を生成することができる方法及び/又は装置が提供される。この結果、回折効果を抑制することができ、したがって、上述の用途における副作用を低減することができる。
【0073】
すなわち、請求項1に記載のステップを含む、レーザ放射によって眼、特に人間の眼の角膜を加工する方法が、本発明の可能な実施形態において提案される。眼球は、この場合、加工される被加工物と定義される。
【0074】
本発明の更なる実施形態における、従属請求項に記載の方法ステップは、眼の角膜を処理する際にも適用される。
【0075】
本発明の更なる態様は、請求項7に記載の構成要素を含む、レーザ放射によって眼、特に人間の眼の角膜を加工するための装置に関するものである。眼は、この場合、加工される被加工物であると定義される。
【符号の説明】
【0076】
10 レーザユニット
11 シードレーザユニット
12 増幅エリア
13 第1光学変調器
14 第2光学変調器
20 偏向ユニット
30 表示ユニット
40 システムコントローラ
100 ワークピース
D ビーム径
D´ レーザパルスのビーム径
L レーザパルス(レーザパルスによって生成される加工点)
L´ 技術水準でのレーザパルス(レーザパルスによって生成される加工点)
Pi パルスエネルギー
S0 ノイズの影響を受けた制御信号を生成する
S1 レーザユニットへの制御信号の送信
S2 レーザパルスを照射するか否かの問い合わせ
S3 シードレーザユニットの強化の増進(反転)
S4 所望の反転時間に達したかどうかの問い合わせ
S5 EOM及びAOMの開放
S6 EOM及びAOMの閉鎖(遅延を含む)
Δt パルス間隔
T 反復率
Z 軌道
Z´ 技術水準での軌道
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】