(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】高密度インタリーブ型インバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/487 20070101AFI20220915BHJP
【FI】
H02M7/487
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504537
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 US2020043122
(87)【国際公開番号】W WO2021016382
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522029431
【氏名又は名称】ブレイク エレクトロニクス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ベル、ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース、アーロン
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA02
5H770AA05
5H770BA11
5H770CA05
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA32
5H770DA44
5H770EA01
5H770EA23
5H770JA10X
5H770KA01Y
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA27
(57)【要約】
dc及びac電源と負荷とのインタフェースとなる、インバータが提供される。例示的な用途は、dc電源がソーラ・パネルのアレイである、ソーラ発電システムであり、インバータは、こうしたパネルから供給されるdc電力を、電力会社の配電網に供給されるac電力に変換する。別の実例は、蓄電池のエネルギー貯蔵であり、インバータは、蓄電池のdc電力を配電網に供給されるac電力に変え、また蓄電池を充電するために、配電網からのac電力を変換、すなわち整流することもできる。一実施例では、インバータは、たとえば、3レベルのac電圧を生成する低速スイッチと、後段の複数の高速スイッチング・ハーフブリッジとを備え、高速スイッチング・ハーフブリッジは、複数のac出力電圧に高周波パルス幅変調を導入する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性端子と、
第1のdc入力端子と、
第2のdc入力端子と、
前記中性端子、第1のdc入力端子、及び前記第2のdc入力端子間に結合され、第1の周波数で切り替わる複数のスイッチを備える、低速スイッチ・モジュールと、
並列構成に配置され、前記低速スイッチ・モジュールの出力に結合された複数の高速スイッチ・モジュールであって、前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれが、前記第1の周波数よりも高い第2のスイッチング周波数で切り替わる1対のトランジスタを備え、前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれが、それぞれのac出力端子に結合されている、複数の高速スイッチ・モジュールと、
前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれの、前記1対のトランジスタの動作を制御する論理信号を供給するよう構成された、インバータ用コントローラと
を備える、dc-acインバータ用相モジュール。
【請求項2】
前記複数の高速スイッチ・モジュールが、複数の高速スイッチ・ハーフブリッジ・モジュールを備える、請求項1に記載のインバータ用相モジュール。
【請求項3】
フィルタ用キャパシタが、前記低速スイッチ・モジュールと前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれとの間に配置されている、請求項1に記載のインバータ用相モジュール。
【請求項4】
前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれが、他の高速スイッチ・モジュールに対して位相シフトされている、請求項1に記載のインバータ用相モジュール。
【請求項5】
前記第1の周波数が、前記dc-acインバータ用相モジュールのac出力のライン周波数のプラス又はマイナス20パーセント以内の周波数を含む、請求項1に記載のインバータ用相モジュール。
【請求項6】
フィルタ・モジュールが、前記低速スイッチ・モジュールと前記複数の並列結合された高速スイッチ・モジュールとの間に配置されている、請求項1に記載のインバータ用相モジュール。
【請求項7】
前記フィルタ・モジュールが、低域通過フィルタを備える、請求項6に記載のインバータ用相モジュール。
【請求項8】
前記フィルタ・モジュールが、前記複数の高速スイッチ・モジュールの相対的に高いスイッチング周波数を、前記低速スイッチ・モジュールから分離する、請求項6又は7に記載のインバータ用相モジュール。
【請求項9】
前記インバータ用相モジュールが、前記第1及び第2のdc端子の電圧に対して前記中性端子の電圧を調整するよう構成された中性点モジュールを備え、前記中性点モジュールが、前記インバータ用コントローラと組み合わされるか、又は前記インバータ用コントローラとは別々である、請求項1に記載のインバータ用相モジュール。
【請求項10】
多相インタリーブ型ac-dcインバータであって、
中性端子、
第1のdc入力端子、
第2のdc入力端子、
前記第1及び第2のdc入力端子に結合され、前記多相インタリーブ型ac-dcインバータの第1の相出力を供給するよう構成された第1の相モジュール段であって、前記第1の相モジュールが、
前記中性端子、第1のdc入力端子、及び前記第2のdc入力端子間に結合された、第1の低速スイッチ・モジュールであって、前記低速スイッチ・モジュールが、第1の周波数で切り替わる複数のスイッチを備える、第1の低速スイッチ・モジュールと、並列構成に配置され、前記低速スイッチ・モジュールの出力に結合された、第1の複数の高速スイッチ・モジュールであって、前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれが、前記第1の周波数よりも高い第2のスイッチング周波数で切り替わる1対のトランジスタを備える、第1の複数の高速スイッチ・モジュールと
を備える、第1の相モジュール段、
前記第1及び第2のdc入力端子に結合され、前記多相インタリーブ型ac-dcインバータの第2の相出力を供給するよう構成された第2の相モジュール段であって、前記第2の相モジュールが、
前記中性端子、第1のdc入力端子、及び前記第2のdc入力端子間に結合された、第2の低速スイッチ・モジュールであって、前記低速スイッチ・モジュールが、第3の周波数で切り替わる複数のスイッチを備える、第2の低速スイッチ・モジュールと、並列構成に配置され、前記低速スイッチ・モジュールの出力に結合された、第2の複数の高速スイッチ・モジュールであって、前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれが、前記第3の周波数よりも高い第4のスイッチング周波数で切り替わる1対のトランジスタを備える、第2の複数の高速スイッチ・モジュールと
を備える、第2の相モジュール段、並びに
前記第1及び第2の複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれのトランジスタの動作を制御する論理信号を供給するよう構成されたコントローラ
を備える、多相インタリーブ型ac-dcインバータ。
【請求項11】
前記インバータが、前記第1及び第2のdc入力端子に結合され、前記多相インタリーブ型ac-dcインバータの第3の相出力を供給するよう構成された第3の相モジュール段であって、前記第3の相モジュールが、
前記中性端子、第1のdc入力端子、及び前記第2のdc入力端子間に結合された、第3の低速スイッチ・モジュールであって、前記低速スイッチ・モジュールが、第5の周波数で切り替わる複数のスイッチを備える、第3の低速スイッチ・モジュールと、並列構成に配置され、前記低速スイッチ・モジュールの出力に結合された、第3の複数の高速スイッチ・モジュールであって、前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれが、前記第5の周波数よりも高い第6のスイッチング周波数で切り替わる1対のトランジスタを備える、第3の複数の高速スイッチ・モジュールと
を備える、第3の相モジュール段をさらに備える、請求項10に記載のインバータ。
【請求項12】
前記コントローラが、前記第3の複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれのトランジスタの動作を制御する論理信号を供給する、請求項11に記載のインバータ。
【請求項13】
前記第1及び第3の周波数が等しく、前記多相インタリーブ型ac-dcインバータのac出力のライン周波数のプラス又はマイナス20パーセント以内である、請求項10に記載のインバータ。
【請求項14】
前記複数の高速スイッチ・モジュールが、複数の高速スイッチ・ハーフブリッジ・モジュールを備える、請求項10に記載のインバータ。
【請求項15】
フィルタ用キャパシタが、前記低速スイッチ・モジュールと前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれとの間に配置されている、請求項10に記載のインバータ。
【請求項16】
前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれが、他の高速スイッチ・モジュールに対して位相シフトされている、請求項10に記載のインバータ。
【請求項17】
フィルタ・モジュールが、前記第1の低速スイッチ・モジュールと前記第1の複数の並列結合された高速スイッチ・モジュールとの間に配置されている、請求項10又は11に記載のインバータ。
【請求項18】
前記フィルタ・モジュールが、低域通過フィルタを備える、請求項17に記載のインバータ。
【請求項19】
前記フィルタ・モジュールが、前記第1の複数の高速スイッチ・モジュールの相対的に高いスイッチング周波数を、前記第1の低速スイッチ・モジュールから分離する、請求項17又は18に記載のインバータ。
【請求項20】
第2のフィルタ・モジュールが、前記第2の低速スイッチ・モジュールと前記第2の複数の並列結合された高速スイッチ・モジュールとの間に配置されている、請求項17に記載のインバータ。
【請求項21】
第3のフィルタ・モジュールが、前記第3の低速スイッチ・モジュールと前記第3の複数の並列結合された高速スイッチ・モジュールとの間に配置されている、請求項20に記載のインバータ。
【請求項22】
dc-acインバータ用相モジュールを制御する方法であって、
中性端子と、
第1のdc入力端子と、
第2のdc入力端子と、
前記中性端子、第1のdc入力端子、及び前記第2のdc入力端子間に結合され、第1の複数のスイッチを備える、低速スイッチ・モジュールと、
並列構成に配置され、前記低速スイッチ・モジュールの出力に結合された複数の高速スイッチ・モジュールであって、前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれが、第2の複数のスイッチを備える、複数の高速スイッチ・モジュールと
を備える、dc-acインバータ用相モジュールを準備するステップ、
前記第1の複数のスイッチを、第1の周波数で切り替えるよう制御するステップ、並びに
前記第2の複数のスイッチを、前記第1の周波数よりも高い第2の周波数で切り替えるよう制御するステップ
を含む、方法。
【請求項23】
前記複数の高速スイッチ・モジュールのそれぞれが、他の高速スイッチ・モジュールに対して位相シフトされている、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2019年7月22日に出願された、米国仮特許出願第62/877,287号の利益を主張し、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、光発電用途向けストリング・インバータ、及び蓄電池又は他のdc要素と送電網とのインタフェースとなるインバータを含む、高い電力密度を有するDC-ACインバータに関する。
【背景技術】
【0003】
大規模なソーラ発電設備において、一般的に、2種類のインバータが使用されている。集中型インバータ(central inverter)の電力定格は大きく、多くの場合数メガワットである。集中型インバータは、サイズ及び重量が大きいので、一般的に、クレーンを使用してコンクリートの受け台に取り付けられる。対照的に、ストリング・インバータの電力定格は小さく、数十キロワットから約125kWであり、手作業で設置できるサイズ及び重量である。集中型インバータは、規模の経済により、定格ワットあたりの初期コストが最も低く、一方ストリング・インバータは、設置及び保守がより簡単で、より低コストである。
【0004】
ストリング・インバータの電力定格を増やし、ストリング・インバータが手作業で設置できる状態を維持しながら、規模の経済を通じてストリング・インバータのコストを削減することは有益であろう。これは、ストリング・インバータの電力密度、すなわち、ストリング・インバータの単位重量あたり及び単位体積あたりの定格電力を増やすことによって実現することができる。インバータのリアクタンス要素のサイズ及びコストを削減することも有益であろう。IGBTを採用しているインバータは、一般的に、10kHz付近のスイッチング周波数で動作するが、IGBTのスイッチング速度及び関連するIGBTのスイッチング損失によって制限される。10kHzでのリアクタンス要素(フィルタ用インダクタ及びキャパシタ)は非常に大きく、コストがかかり、通常、組立体に手作業で挿入する必要がある。
【0005】
ストリング・インバータは、典型的には、1~10kHzの範囲、又は最大数十kHzの周波数で切り替わる、シリコン絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Si IGBT:silicon insulated-gate bipolar transistor)を採用している。Si IGBTは、フィルタ要素として従来の巻線型磁気素子を採用しており、巻線型磁気素子のサイズは、このスイッチング周波数によって変わる。インバータの電力密度を向上させるには、スイッチング周波数を上げることが望まれるが、これはSi IGBTの能力を超える。
図1は、Si IGBTを採用した、よく知られた中性点クランプ型3レベル・インバータ回路の、1相の電源回路を示している。この回路は、正のdc入力端子411、負のdc入力端子412、ac出力相端子414、中性点413、フィルタ用インダクタ434、並びにフィルタ用キャパシタ451、452、及び453を含む。IGBT411、414、417、420、431、及び435の制限されたスイッチング速度によって、スイッチング・ノード465での電圧波形は、この相対的に低いスイッチング周波数を示す。その結果、フィルタ要素434、451、452、及び453は、価格が高くサイズが大きい。
【0006】
ストリング・インバータのサイズ及び重量に影響を与える重要な電気要素は、ストリング・インバータの磁気及び容量要素、並びにヒートシンク及び冷却システムのサイズに影響を与える、ストリング・インバータの効率である。高効率且つ低コストで高電力密度を実現させることは、多くのインバータ用途における重要な課題である。
【0007】
最近、シリコンではなく炭化ケイ素(SiC:silicon carbide)又は窒化ガリウム(GaN:gallium nitride)などの広バンドギャップ材料を採用する、新しいパワー・トランジスタが市販されてきた。これらのデバイスは、より高い電圧及びより高いスイッチング速度で動作することができる。たとえば、炭化ケイ素金属酸化物電界効果トランジスタ(SiC MOSFET:silicon-carbide metal-oxide field effect transistor)は、600V~10kVの定格電圧で利用可能であり、1200V SiC MOSFETを数百kHzのスイッチング周波数で動作させることができる。ただし、これらの広バンドギャップ・トランジスタは、より古いSi IGBTよりもかなり高価である。既存のストリング・インバータで、Si IGBTをSiC MOSFETへ力任せに置き換えると、効率の改善度が増す可能性はあるが、許容できないほどのコストの増加が生じる。電力密度、効率、及びコストの必要な改善を完全に実現するには、新しいインバータの手法が必要である。具体的には、リアクタンス要素のコストを大幅に削減し、SiC MOSFETのコスト増加を完全に相殺し、システム全体のコスト削減を実現する手法が必要である。
【0008】
さらなる課題は、電磁干渉(EMI:electromagnetic interference)の伝導が生じることである。商業用途では、規制により、通常、150kHzを超える周波数で電力会社のシステムに伝導されるEMIの量が制限される。したがって、一般的な設計上の選択は、スイッチング周波数を150kHz未満に選択して、EMIフィルタのサイズを小さくすることである。スイッチング周波数の選択が150kHzの制限によって制約されないように、スイッチング周波数の電流成分の発生を低減することが望ましいはずである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で提示される実施例は、dc及びac電源と負荷とのインタフェースとなるインバータに関する。例示的な用途は、dc電源がソーラ・パネルのアレイである、ソーラ発電システムであり、インバータは、このパネルから供給されるdc電力を、電力会社の配電網に供給されるac電力に変換する。別の実例は、蓄電池のエネルギー貯蔵であり、インバータは、蓄電池のdc電力を配電網に供給されるac電力に変え、また蓄電池を充電するために、配電網からのac電力を変換(整流)することもできる。
【0010】
様々な実施例が提示される。例示的な実施例は、以下を可能にする。
・規模の経済による、ストリング・インバータのコスト削減
・磁気素子、キャパシタ、及び半導体デバイスのサイズ及びコストを最小限に抑えるよう最適化された、コンバータ回路によるコストの削減
・高効率を維持し、且つ電磁干渉(EMI)の伝導が生じるのを低く抑えながら、スイッチング周波数を大幅に、典型的には100kHz以上に高めた動作を可能にする、回路の革新によるストリング・インバータの電力密度の増加
・自動化された手段による製造性
・ストリング・インバータの定格電力をさらに高める道、及び関連する規模の経済を実現する、モジュラ式手法
【0011】
一実施例では、インバータは、3レベルのac電圧を生成する低速スイッチと、後段の複数の高速スイッチング・ハーフブリッジとを備え、高速スイッチング・ハーフブリッジは、複数のac出力電圧に高周波パルス幅変調を導入する。一実例では、このパルス幅変調のスイッチング周波数は、約100kHz又は数百kHzであり得る。このac出力電圧は、高周波フィルタ用インダクタを介して、共通の出力ac相に接続されている。ハーフブリッジのパルス幅変調は位相シフトされるため、出力ac相の電流のスイッチング高調波が減少し、伝導されるEMIを減少させる。高速スイッチング・ハーフブリッジの高周波により、フィルタ用インダクタを比較的小さくすることができ、ハーフブリッジの位相シフトされた変調によって生じる電流高調波の減少により、フィルタ用キャパシタ及びEMIフィルタのサイズを小さくすることができ、したがって、電力密度の向上につながる。
【0012】
制御システムは、出力ac相の電流の波形及び大きさを制御するために、低速及び高速スイッチのスイッチングを調節する。3相インバータは、かかる3つのインバータ回路を1相に1つずつ使用することにより得られる。システムの中性点を制御するために、第4の相が望ましい場合がある。高速スイッチング・ハーフブリッジは、SiC MOSFETを使用して実現でき、dc入力電力は、太陽光発電パネルから供給され得る。
【0013】
本発明をより完全に理解するために、以下の説明及び添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来技術の、中性点クランプ型3レベル・インバータの、1相を示す図である。
【
図2】例示的なインバータ回路の、高度の構成図である。
【
図3a】dc入力端子で3n次電圧高調波(triple-n voltage harmonics)を減衰させるための大きなフィルタ用キャパシタを含む、例示的な3相インバータ・モジュールの高度の構成図である。
【
図3b】このキャパシタを中性点制御モジュールに置き換えた、例示的な3相インバータ・モジュールの高度の構成図である。
【
図4】例示的な単相インバータ・モジュールの回路図である。
【
図5】各PCBが、PCBの平面型磁気素子を含む単相インバータ・モジュールを収容する、例示的なモジュール式インバータ・システムの組立体の図である。
【
図6】例示的な並列の位相シフトされた高速スイッチング・ハーフブリッジ・ブロックの、測定された波形の図である。
【
図7】中性点制御モジュールの実施例の回路図である。
【
図8】蓄電池のバンクと電力会社の配電網とのインタフェースとなる、例示的なシステムの高度の構成図である。
【
図9】蓄電池のバンクと電力会社の配電網とのインタフェースとなる、実施例の1つの3相インバータ・モジュールの、高度の構成図である。
【
図10】IGBTに印加される高周波電流を低減するために、さらなるフィルタ処理が追加された、単相インバータ・モジュールの別の例示的な実施例の図である。
【
図11】実現された実験用42kW単相インバータ・モジュールの写真である。
【
図12】共通のバックプレーンに接続された、6つの42kW単相モジュールを備える、実験用250kWインバータ・システムの写真である。
【
図13】125kWで600Vの3相ac出力を生成するよう一体に動作する、3つの42kW単相モジュールを備える125kWインバータ・システムの、動作波形のオシロスコープでのグラフである。この実例では、3相正弦波出力電圧が上部に示されている。真ん中の波形は、インバータのうちの1つの、1つのSiC MOSFETモジュールのインダクタ電流である。下の波形は、1つのSiC MOSFETモジュールの、パルス幅変調されたスイッチ・ノードの電圧である。
【
図14】鋸歯状のインダクタの電流波形及びパルス幅変調されたスイッチ・ノードの電圧波形を含む、
図13の波形の拡大図である。
【
図15】125kWインバータの試作品を測定した、効率データのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、光発電ストリング・インバータ用途に向けた、高密度インバータ100の一実施例の高度の構成図である。直列及び並列に接続された光発電パネル160のアレイは、インバータ回路110のdc入力において、正のdc入力端子111及び負のdc入力端子112に接続されている。acシステムの中性点への接続用に、中性点接続部113も設けられている。インバータ110は、中性点113に対して、111及び112の電圧を制御する。インバータ用コントローラ130は、PVアレイ160がPVアレイ160の最大電力点で動作するように、端子111と112との間の電圧を制御することができる。インバータ110は、光発電アレイからのdc入力電力を、ac相114、115、及び116に供給される3相出力電力に変換する。これらの相は、EMIフィルタ140を介して、3相acの電力会社のシステム150及び電力会社のシステムの3つの相151、152、及び153に接続されている。
【0016】
高密度インバータ100は、それぞれが、別個の最大電力点追従を実現させるために別個に制御される、複数のdc入力PVゾーンを含むことができる。
図2は、高密度インバータ100が、別個のインバータ110及び120にそれぞれ接続された、2つの入力PVゾーン160及び170を含有する実施例を示している。これらのインバータのac出力は、EMIフィルタ140を介して3相acシステム150に並列接続されている。
【0017】
図3は、インバータ110の、2種類のモジュール式での実現を示している。インバータ120及びどの追加のインバータ・ブロックも、同じやり方で実現される。インバータ110は、相モジュール210、220、及び230を含み、それぞれが、インバータの3相出力のうちの1相を生成する。さらに、インバータ110は、
図3bに示されているように、111、112、及び113の電圧を制御する、中性点制御モジュール240を含むことができる。モジュール240はまた、ノード111及び112に現れる3n次電圧高調波を低減する。別法として、
図3aに示されているように、コントローラ130が中性電位に対するこれらのノードの電圧を調整する、ノード111及び112における3n次高調波をフィルタ処理するために、大きなフィルタ用キャパシタ250が、インバータ110のdc入力端子に配置されてもよい。
【0018】
図4は、相モジュール210の電力段の回路図を示している。この実施例では、モジュール220及び230は同一である。相モジュールは、dcフィルタ用キャパシタ351及び352、低速スイッチ・ブロック310、複数の高速スイッチ・ブロック330、340、及び場合によってはそれ以上、acフィルタ用キャパシタ353、並びにac出力相114を含む。
【0019】
モジュール310は、acライン周波数で切り替わる低速スイッチ311、314、317、及び310を含有する。
図4は、これらのデバイスをSi IGBTとして表しており、60Hzでの電力会社との接続では、これらのデバイスは60Hzで切り替わる必要がある。ac相の端子114の電圧が中性点に対して正のとき、トランジスタ311及び317がオンになり、一方トランジスタ314及び320がオフになる。逆並列ダイオード312及び318は、ac出力相の電流の極性に応じて、この時間中に順方向バイアスになり得る。したがって、正のバス361の電圧は、111の正の入力電圧に等しく、負のバス362の電圧は、113の中性電位に等しい。この議論では、導電性半導体デバイスの両端間の電圧降下は無視される。
【0020】
114のac出力相の電圧が負のとき、コントローラは、デバイス311及び317をオフにし、デバイス314及び320をオンにする。ダイオード315及び321は、ac出力相の電流の極性に応じて、この期間中に順方向バイアスになり得る。この期間に、ノード361の電圧は、113の中性点の電圧に等しく、ノード362の電圧は、ノード112の負のdc入力電圧に等しくなる。インバータ用コントローラ130は、論理信号323、324、325、及び326によってこの機能を命じ、絶縁型ゲート駆動回路313、316、319、及び322に、それぞれのトランジスタをこのように動作させるよう命令する。
【0021】
高速スイッチング・ハーフブリッジ・ブロック330は、はるかに高い周波数で切り替わることができるトランジスタ331及び335を含む。逆並列ダイオード332及び336は、個別の高速スイッチング・ダイオードであってもよく、別法として、デバイス331及び335に内蔵されたボディ・ダイオードであってもよい。
図4は、この機能を実行する、SiC MOSFETの使用法を示している。一実施例では、たとえば、100kHzを超える周波数で切り替わることができる、1200VのSiC MOSFETが使用される。スイッチ・ノード365は、フィルタ用インダクタ334を介してac出力相114に接続されている。コントローラ130はまた、トランジスタ331及び335の導通状態を制御する、絶縁型ゲート・ドライバ333及び337に、論理信号327及び328を供給する。コントローラがトランジスタ331をオンにし、トランジスタ335をオフにするよう命令したとき、スイッチ・ノード365の電圧は、ノード361のバス電圧に等しい。逆に、コントローラがトランジスタ331をオフにし、トランジスタ335をオンにするよう命令したとき、スイッチ・ノード365の電圧は、ノード362のバス電圧に等しい。コントローラは、これらの信号のパルス幅変調を採用して、インダクタ334の電流の波形を制御する。コントローラは、最も一般的には、この電流を出力端子114のac電圧に比例し、同相になるよう調整し、結果として力率が1の反転が生じる。このac電流の振幅も制御され、これは、PVアレイから引き出され、ac電力会社へ供給される電力量を制御する。このパルス幅変調制御は、ac出力電圧に対するインダクタ電流の位相シフトを調節することもでき、インバータが、ac出力への無効電力の供給を可能にする。
【0022】
相モジュール210は、少なくとも2つの並列接続された高速スイッチング・ハーフブリッジ・ブロックを含有する。
図4は、これらのうちの2つが同一の回路を有することを示している。コントローラ130は、同期したスイッチング周波数で、ただし位相シフトした制御によって、これらを動作させる。たとえば、
図4において、327に供給されるPWM論理信号は、スイッチング周期の開始時にトランジスタ331をオンにする、立ち上がりエッジを示すことができる。357に供給されるPWM論理信号は、スイッチング周期の半分の後にトランジスタ341をオンにする、立ち上がりエッジを示すことになる。これにより、インダクタ334及び344のスイッチング・リップルは、ほぼ位相がずれ、電流のスイッチング高調波の一部又はすべてが出力相端子114でキャンセルされる。N個の高速スイッチング・ハーフブリッジ・ブロックの、この並列の位相シフトした動作により、合計ac出力電流が約N分の1に減少することが示され得る。さらに、同様の要因によって低減されるべき、フィルタ用キャパシタ353のスイッチング電流リップルの実効値が減少する。許容出力電流リップルが与えられた場合、これに応じて、インダクタ及び/又はフィルタ用キャパシタのサイズを小さくすることができる。
【0023】
図5は、例示的な高密度インバータ・システムの電子回路の組立体の図である。この実施例では、各PCBは、PCBの平面型磁気素子及びセラミック・キャパシタを含む、210などの相モジュールを収容する。これらのPCBは、システムのヒートシンクに熱を伝導する冷却板上に取り付けられている。この図は、
図3などの3つの3相インバータ・モジュールを備える、合計12枚のPCBを示している。
【0024】
図6は、上記のように位相シフトを伴って300kHzで動作する、2つの並列接続された高速スイッチング・ハーフブリッジ・ブロックについて測定された波形を示している。下部の2つのトレースは、ゲート駆動論理信号327及び357を測定した。中央の2つのトレースは、結果として得られたインダクタ334及び344の電流波形であり、スイッチング・リップルの形状は同様であるが、相互に位相シフトされていることがわかる。上部の2つのトレースは、スイッチ・ノードの電圧である。
【0025】
一実施例では、dc-acインバータ用相モジュール210は、定格42kWであり、単一のプリント回路基板(PCB:printed circuit board)上に製作されている。端子111と112との間のPV入力電圧は、定格最大1500Vdcである。低速スイッチ311、314、317、及び320は、定格1200VのSi IGBTである。高速スイッチング・トランジスタ331及び335は、定格1200V、オン抵抗40mΩ、300kHzのスイッチング周波数で動作するSiC MOSFETである。これらのMOSFETのボディ・ダイオードが使用されているため、さらなる逆並列ダイオードは追加されていない。インダクタ334は、プリント回路基板に統合された平面型磁気素子を使用して実現される。相モジュール210は、330で示される種類の4つの同一の高速スイッチング・ハーフブリッジ・ブロックを含有する。各平面型インダクタ334は、Epcosの材料N97を使用するEILPフェライト平面型コアを採用しており、平面型インダクタ334の巻線は4ターンで構成され、各ターンは、57グラム(2オンス)の銅を使用した、PCBの1つの層である。平面型コアには、15μHのインダクタンスを得るために間隙が作られている。
【0026】
相モジュール210、220、及び230の入力端子に流れる電流は、dc成分だけでなく、acライン周波数の3n倍の成分(たとえば、60Hzのライン周波数の場合の、360Hz)も含有する。これらの低周波電流高調波は、低周波電流高調波が入力光発電アレイに印加される電圧を大幅に乱さないように、フィルタ処理される。これを行う1つのやり方は、
図3aに示されているように、PVゾーンのdc入力端子間に大きなフィルタ用キャパシタ250を接続することである。これらのキャパシタは、3n次電流高調波が流れる低インピーダンス経路を設ける。さらに、PVアレイの正及び負の電圧は、中性端子に対して制御され得る。これは、インバータの入力電流を制御することにより行われ得る。別法として、
図3bに示されているように、中性点制御モジュール240が採用されてもよい。このモジュールは、3n次電流高調波の循環経路を設け、中性点の電圧並びに/又は正及び負のdc入力電圧の相対値を制御することができる。このモジュールのリアクタンス要素は、フィルタ250のリアクタンス要素よりも大幅に小さくすることができる。
【0027】
図7は、中性点制御モジュール240の実施例である。この実施例では、モジュールは、高速スイッチ511、531、535、及び520を含み、これらは、モジュール210で使用されるのと同じSiC MOSFETを使用して実現され得る。これらのトランジスタは、トランジスタの導通状態を制御するために、絶縁型ゲート・ドライバ513、527、537、及び522に命令する、コントローラ130から受信する論理信号523、527、528、及び526に従って切り替えられる。ダイオード515及び518は、トランジスタによって遮断される電圧が、それぞれ、キャパシタ351及び352の電圧を、確実に超えないようにする。コントローラ130は、トランジスタのデューティ・サイクルを調節して、キャパシタ351及び352の両端間の電圧が等しくなるよう調整する。スイッチング周期中の第1の期間において、トランジスタ511及び531はオン状態にあり、トランジスタ535及び520はオフ状態にある。インダクタ534は、端子111と113との間に接続される。スイッチング周期中の第2の期間において、トランジスタ511及び531はオフ状態にあり、トランジスタ535及び520はオン状態にある。インダクタ534は、次いで、端子112と113との間に接続される。スイッチングの遷移は、外側のトランジスタが最初にオフになり、続いてそれぞれの内側のトランジスタがオフになるという順序で行われ得る。オンになる遷移では、最初に内側のトランジスタがオンになり、続いて外側のトランジスタがオンになる。短い不動作時間が、遷移する間に挿入される。
【0028】
図4の高密度インバータ回路は、他の用途でも同様に採用することができる。
図8は、エネルギー貯蔵蓄電池システムと電力会社の配電網とのインタフェースとなる、高密度インバータ・システムの実例である。インバータ700は、蓄電池システムの充電と放電との両方に必要な、双方向の電力の流れに対応している。インバータ710は、力率1、又は配電網に無効電力を供給するために力率1未満のいずれかで、電力会社の配電網を駆動することができる。
図9は、
図4又は
図10のインバータ用相モジュールを採用する、インバータ・ブロック710の一実施例の構成図を含有する。
図3bのように、中性点制御モジュール240を組み込むこともできる。コントローラ730は、前述のようにゲート駆動論理信号を生成し、さらに、蓄電池の充電及び放電アルゴリズムを実施する。
【0029】
図4を参照すると、高速スイッチング・ハーフブリッジ・モジュール330、340、...は、高周波電流を中間バス361及び362に注入する。こうした電流は、高速スイッチング・ハーフブリッジのスイッチング周波数fsの高調波を含有する。たとえば、相モジュール210が、それぞれ時間0、Ts/4、Ts/2、及び3Ts/4だけ位相シフトされる4つの高速スイッチング・ハーフブリッジ・モジュールを含み、ここでTsが、スイッチング周期Ts=1/fsである場合、総バス電流は、4fs及び4fsの高調波の周波数を有するようになる。fs=300kHzのスイッチング周波数の場合、バス電流は、基本周波数4fs=1.2MHzを有するようになる。この電流のピークの大きさは、インダクタの電流のピークの大きさに等しい。
【0030】
この注入されたバス電流は、2つの経路間で分割される。注入されたバス電流は、近くのフィルタ用キャパシタ338、348、...を通って流れることができるか、又は低速スイッチングIGBTネットワーク310並びにdc入力フィルタ用キャパシタ351及び352を通って流れることができる。電流は、2つの経路の相対インピーダンスに従って分割される。
【0031】
高周波IGBTデバイスにかかる高周波電流を流すことは、不得策である可能性がある。たとえば、10kHzのIGBTの設計者は、振幅が大きい1.2MHzの電流を、10kHzのIGBTが伝導することを予期しておらず、かかるIGBTのデータシートはこの状況に対処していない。実際に、かかる状況下で、実験での失敗が観察された。これは、IGBTデバイスに印加される高周波電流の大きさを十分に低減するために、低域通過フィルタを使用する場合があることを示唆している。
図10は、高周波フィルタ・モジュール390が、低速スイッチングIGBTモジュール310と高速スイッチング・ハーフブリッジ・モジュール330、340...との間に挿入される解決策を示している。このモジュールは、低速スイッチング・モジュール310に加えられる高周波電流リップルの量を大幅に低減するインダクタ391及び392を含み、含有される高周波電流は、キャパシタ393、338、348、...を通って流れる。これにより、IGBTデバイスの信頼性の高い動作を実現することができる。高周波フィルタ・モジュール390は、高速スイッチング・ハーフブリッジ330、340、...及び高速スイッチング・ハーフブリッジの制御を、低速スイッチング・モジュール310のスイッチングから効果的に切り離す。これらのモジュールの制御は効果的に切り離され、別個に最適化され得る。
【0032】
図11は、定格42kWであるDC-ACインバータ用相モジュール210の実験的に実現した写真を含有する。この相モジュールは、低速スイッチング・モジュール310、及び4つの高速スイッチング・ハーフブリッジ・モジュール330、340、...を含む。モジュールは、最大1500VのdcのPV入力電圧で動作し、50/60Hz3相実効値600V出力のうちの1相を生成する。インダクタ334、344、...は、プリント回路基板に統合された平面型磁気素子として実現されており、写真の左上と左下とで確認できる。プリント回路基板の下はヒートシンクであり、パワーIGBT及びSiC MOSFETは、プリント回路基板の下に取り付けられている。ゲート・ドライバ回路及びセラミック・キャパシタのフィルタ回路は、プリント回路基板の上部で確認できる。DC-ACインバータ用相モジュール210のすべてのキャパシタは、この基板上に配置されたセラミック・キャパシタとして実現されている。高周波フィルタ・モジュール390は、このプリント回路基板の下側に取り付けられており、インダクタ391及び392は、表面実装型パワー・インダクタを使用して実現されている。
【0033】
図12は、発明者等の実験室で構築された250kWインバータの試作品を示している。6つの42kW DC-ACインバータ用相モジュールが、
図8にあるように、相モジュールをdc光発電源及びac3相出力と相互接続する、電力バックプレーンに差し込まれる。バックプレーンは、高密度インバータ・システム100を実現するために、
図2に示されたように、コントローラ130及びEMIフィルタ140を含む。インバータ用相モジュールのうちの3つを組み合わせて、定格125kWのDC-3相ACインバータ及びPVゾーンを実現し、他の3つの相モジュールを組み合わせて、第2の125kWインバータ及びPVゾーンを実現する。インバータのAC出力は、
図2に示されたように並列接続され、合計250kWのac出力電力を供給する。
【0034】
図13は、1050Vのdc入力電圧、及び実効値600Vの3相ac出力ライン間電圧で動作する、125kWのPVゾーンのac動作波形を示している。上部の波形は、60Hzで動作するac出力ライン~中性点間の電圧である。中央の波形は、1つのインバータ用相モジュールの、高速スイッチング・ハーフブリッジ・モジュールのうちの1つの、インダクタの電流である。このインダクタの電流は、このハーフブリッジ・モジュールの60Hz ac出力に加えて、インダクタの電流に重畳された高周波スイッチング・リップルによって生じた、包絡線を含んでいる。ハーフブリッジ・スイッチング周波数は、この試作品では、ac出力波形に沿って150kHzから300kHzの間で変化する。下部のトレースは、ハーフブリッジ・スイッチ・ノード電圧365である。これは、パルス幅変調された矩形の波形であり、デューティ・サイクル及びスイッチング周波数は、所望の、電流の低周波数正弦波成分が実現するように、ac正弦波に沿って変化する。
【0035】
150kHzから300kHzの間のスイッチング周波数の変化は、システム効率のさらなる最適化を可能にする。ライン・サイクルの正の半分については、電流の包絡線の最小値を負にする(ゼロ電圧スイッチングになる)か、又は正であっても小さくすることによって、スイッチング・エネルギー損失が低減される一方で、電流の包絡線の最大値が大きい場合は、導通損失が増加する。インダクタが飽和すると、実際の、電流の包絡線の最大値も制限される。スイッチング周波数を下げることにより、電流の包絡線のサイズが大きくなり得る。したがって、ライン電流波形の所与のポイントで、インダクタの飽和を回避しながら損失を最小限に抑えるスイッチング周波数の選択があり、このスイッチング周波数は、正弦波に沿って変化する。この試作品では、スイッチング周波数は正弦波のピークで150kHz、正弦波のゼロ交差で300kHzである。スイッチング周波数は、正弦波に沿ってこれらの両極値間で、acライン電圧に比例して変化する。
【0036】
図14は、acライン電圧のピークとゼロ交差との間の時間の一部に関する、
図13の波形の拡大図を含有する。この図では、スイッチ・ノードの電圧波形(下)が、本来パルス幅変調されていることを含め、より明確に確認できる。インダクタ電流は、低周波(平均)成分に加えて、高周波スイッチング・リップルを含有していることも、明確に確認できる。
【0037】
図15は、この125kW試作品を測定した、効率データを示している。この測定は、1050Vの固定dc入力電圧、及び60Hzでライン間実効値600Vの固定3相ac出力で行われた。大部分の効率ポイントは、98.5%~99.0%の範囲内にある。
【0038】
複数の並列接続されたハーフブリッジ高速スイッチング・モジュール330、340、...を使用することにより、さらなるシステム効率の改善が可能である。低電力では、高速スイッチング・ハーフブリッジ・モジュールのうちの1つ又は複数を停止させることで効率が向上する、位相シェディング(phase shedding)が採用され得る。これは、中央コントローラのプログラミングによって、簡単に実現することができる。
図15の効率データでは、12.5kWの低電力ポイントは、相モジュールごとに4つの高速スイッチング・ハーフブリッジ・モジュールのうちの1つだけを動作させることにより取得した。MOSFETのスイッチング損失及びインダクタのac損失は、出力電流にほとんど依存しないので、低電流において1つ又は複数のハーフブリッジ・モジュールを停止させると、システムの効率が向上する。同様に、25kWのデータポイントは、相ごとに4つのハーフブリッジ・モジュールのうちの2つを動作させることにより取得した。より高い電力ポイントでは、それぞれの相モジュールで、4つのハーフブリッジ・モジュールすべてを動作させた。したがって、コントローラは、システム効率が向上するように、低電力状態でハーフブリッジ・モジュールを停止させるようプログラムされている。
【0039】
実験用試作品では、330などの各高速スイッチング・ハーフブリッジは、EILP64フェライト平面型コア(EpcosのEILP64/10/50 N49)を使用して実現された、平面型インダクタ334を含む。インダクタの巻線は6ターンで構成され、重量85グラム(3オンス)の銅を有する6層プリント回路基板で実現されている。合計インダクタンスが12uHになるように、インダクタの空隙が含まれている。炭化ケイ素のMOSFET331及び335は、定格が32ミリオームのオン抵抗及び1200Vの、CreeのC3M0032120Kデバイスである。ダイオード332及び336は、MOSFET331及び335に内蔵されたボディ・ダイオードである。高速スイッチングSiC MOSFETゲート・ドライバ333及び337は、定格が10A及び絶縁耐圧3kVの絶縁型ゲート・ドライバであるTIのUCC5390であり、これらは小型の絶縁電源から給電される。IGBT311、314、317、及び320は、MicrosemiのAPT100GN120B2Gである。これらのデバイスの温度上昇を制限するために、2つのかかるIGBTを、デバイス311及び320に並列接続した。低速スイッチング・ダイオード312、315、318、及び321は、定格が1200Vで120Aのディスクリート整流デバイスの、IXYSのDSEI120/12Aである。要素338、351、及び352などのフィルタ用キャパシタは、複数の並列接続された、定格が1000V、0.1uF X7RであるKemetのC1812C104KDRACTUなどの積層セラミック・キャパシタを使用して実現し、それぞれが12uFの合計バス容量となった。
【0040】
実施態様が、ある程度の特殊性をもって上記で説明されてきたが、当業者は、この発明の精神又は範囲から逸脱することなく、開示された実施例に多くの変更を加えることができる。すべての方向への言及(たとえば、上の、下の、上向きの、下向きの、左、右、左側の、右側の、上部、下部、より上に、より下に、垂直の、水平の、時計回りの、及び反時計回りの)は、読者の本発明への理解を助けるための識別目的でのみ使用され、とりわけ本発明の位置、向き、又は使用法に関する制限を生じさせるものではない。接合することへの言及(たとえば、付着される、結合される、接続される、など)は、広義に解釈されるべきであり、要素の接続部間にある中間部材及び要素間の相対的な動きを含むことができる。したがって、接合することへの言及は、2つの要素が直接接続され、互いに固定された関係にあることを必ずしも暗示するものではない。上記の説明に含まれているか又は添付図面に示されているすべての事項は、例示にすぎず、制限しないものとして解釈されることを意図している。詳細な、又は構造上の変更は、添付の特許請求の範囲で定義されている本発明の精神から逸脱することなく行うことができる。
【国際調査報告】