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特表2022-541634疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20220915BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61P25/20
A61P25/02 101
A61P25/04
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504546
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 US2020043047
(87)【国際公開番号】W WO2021016338
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】62/877,573
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522029556
【氏名又は名称】アステラス ファーマ グローバル ディベロップメント,インコーポレーテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ブラフンカ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】マレック,ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】トレイシー,キャセライン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウウェット,マリー ベス
(72)【発明者】
【氏名】スミス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ワルツア,マーク
(72)【発明者】
【氏名】イングリッシュ,マルシ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086GA04
4C086GA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA21
(57)【要約】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法が本出願において提供され、方法は、患者に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法が本出願において提供され、方法は、a)疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を特定することと、b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法が本出願において提供され、方法は、a)疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を選別することと、b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、睡眠障害は、入眠困難性、睡眠不安定性、快適性実感困難性、睡眠維持困難性、熟眠度、当日起床時休息度、当日覚醒困難性、および前夜間睡眠充足度からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、睡眠障害は、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、および内臓疼痛からなる群から選択される疼痛と関連する。いくつかのより具体的な実施形態では、内臓疼痛は、IBS関連疼痛および膀胱疼痛からなる群から選択される。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法であって、式(I)の化合物
【化1】

またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法であって、
a)疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を特定および/または選別することと、
b)ステップa)で特定された前記患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む方法。
【請求項3】
前記式Iの化合物が、臭化水素酸塩の形態である、請求項1または2に記載の方法。
【化2】
【請求項4】
前記方法が、前記式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、患者に毎日投与することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記式(I)の化合物が、睡眠を改善するための治療有効量で投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記式(I)の化合物が、1日当たり約5mg~約45mg、例えば、1日当たり約5mg、1日当たり約10mg、1日当たり約15mg、1日当たり約20mg、1日当たり約25mg、1日当たり約30mg、1日当たり約35mg、1日当たり約40mg、または1日当たり約45mgに等しい量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記式(I)の化合物が、前記疼痛に関連する睡眠障害を治療するのに有効な量で投与され、前記量が、前記疼痛を治療するのに有効ではない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記睡眠障害が、睡眠日誌、手首アクチグラフィー、またはポリソムノグラフィーを使用して測定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記睡眠障害が、睡眠日誌を使用して測定され、前記睡眠障害が、入眠困難性、睡眠不安定性、快適性実感困難性、睡眠維持困難性、熟眠度、当日起床時休息度、当日覚醒困難性、前夜間睡眠充足度からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記睡眠障害が、手首アクチグラフィーまたはポリソムノグラフィーを使用して測定され、前記睡眠障害が、入眠困難性、睡眠不安定性、睡眠維持困難性、熟眠度からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記睡眠障害が、入眠困難性である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記睡眠障害が、睡眠不安定性である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記疼痛が、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、および内臓疼痛からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記内臓疼痛が、IBS関連疼痛および膀胱疼痛からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、(a)ガバペンチノイド(プレガバリン、ガバペンチンを含む)、抗うつ薬[セロトニン再取込み阻害剤を除き、特にデュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、三環系抗うつ薬(特にアミトリプチリンおよびノルトリプチリン)、トラゾドン、ネファゾドン、ミルタザピン、アンフェブタモン]、ケタミン、エスケタミンおよび他のNMDA受容体遮断薬、GABA受容体アゴニスト(ナトリウムオキシベート、バクロフェンを含む)、オピオイド(モルヒネ、フェンタニル、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、ヒドロモルホンおよびトラマドールを含む)、セレコキシブおよびメロキシカム、筋弛緩薬(例えば、シクロベンザプリン)、カンナビスおよびカンナビノイド(特にTHCを含有しているもの)、NSAIDS(アセトアミノフェンまたはアセトアミノフェン含有製剤、イブプロフェン、ナプロキセンを含む)、慢性非麻酔性鎮痛薬(325mg/日までの用量の心臓病予防のためのアスピリン以外)、ならびに局所鎮痛剤(カプサイシンを含む)、からなる群から選択される疼痛緩和剤、(b)脊髄刺激または経皮的電気神経刺激を含む電気刺激、鍼灸、神経ブロック、イオン透過、レーザー治療、圧痛点注射、乾燥針注射、カイロプラクティック治療、運動または理学療法、外科療法、およびバイオフィードバック、からなる群から選択される疼痛緩和のための手段、のうちの1つ以上により治療されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、前記睡眠障害の症状の重症度を低下させる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、前記睡眠障害の症状の重症度を、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%低下させる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記患者の前記睡眠障害に関連する臨床スコアの値を決定することを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記臨床スコアが、1つ以上のFMSD項目についてのスコアである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、前記式(I)の化合物の投与後のある時点でのFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と異なることを決定することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、前記式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と異なることを決定することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記式(I)の化合物の投与後のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値から、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%異なる、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と比較して、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%増加し、前記FMSD項目が、熟眠度、当日起床時休息度、および前夜間睡眠充足度からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と比較して、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%減少し、前記FMSD項目が、入眠困難性、睡眠不安定性、快適性実感困難性、睡眠維持困難性、および当日覚醒困難性からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、少なくとも2つのFMSD項目のそれぞれについて、前記式(I)の化合物の投与後のある時点におけるFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と異なることを決定することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、少なくとも2つのFMSD項目のそれぞれについて、前記式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と異なることを決定することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも2つのFMSD項目のそれぞれについて、前記式(I)の化合物の投与後のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値から、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%異なる、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、少なくとも2つのFMSD項目のそれぞれについて、前記式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と比較して、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%増加することを決定することを含み、前記FMSD項目が、熟眠度、当日起床時休息度、および前夜間睡眠充足度からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、少なくとも2つのFMSD項目のそれぞれについて、前記式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と比較して、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%減少することを決定することを含み、前記FMSD項目が、入眠困難性、睡眠不安定性、快適性実感困難性、睡眠維持困難性、および当日覚醒困難性からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月23日に出願された米国特許出願第62/877,573号の優先権を主張するものであり、その開示内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法に関する。具体的には、いくつかの実施形態では、本開示は、疼痛に関連する睡眠障害を治療するための方法であって、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オピオイド誘導性過剰摂取(フェンタニルおよび他のオピオイド)による死亡者の劇的な増加は、NIHの「Helping to End Addiction Over the Long-term」(HEAL)イニシアチブ(Volkow and Collins,2017; Collins et al.,2018)を含む、この危機に対するいくつかの対応を開始させた。HEALイニシアチブの2つの主な要素は、オピオイド使用障害(過剰摂取拮抗介入を含む)の治療を改善することを、および疼痛管理を強化すること、である。慢性的な疼痛に罹患するごく一部の患者がオピオイド中毒になる一方、疼痛管理のためにオピオイドを処方することは、患者の中毒、過剰摂取、および死亡のリスクを増加させる(NIH、2017)。したがって、慢性疼痛症候群に対する新規な非オピオイド治療を開発することは、進行中のオピオイド危機に対処するための1つの重要な方向性を示すものとなる。
【0004】
線維筋痛症は、米国の一般人口の約2.2%に発生する(Queiroz,2013)。それは、疲労および睡眠障害と共にしばしば生じる慢性的な広範囲の疼痛を特徴とする(Wolfe et al.,1990、Wolfe et al.,2010a、Wolfe et al.,2011)。米国食品医薬品局(FDA)は、線維筋痛症の治療のための3つの薬剤:プレガバリン、デュロキセチン、およびミルナシプランを承認している。プレガバリンは、アルファ-2-デルタカルシウムチャネルリガンドであり、デュロキセチンおよびミルナシプランは、セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤である(Arnold et al.,2012)。これらの薬剤が承認されてはいるが、その線維筋痛症に対する有効性の証拠がないにもかかわらず、いくつかのオピオイド鎮痛剤が引き続き使用されている。
【0005】
米国で進行中のオピオイド危機を考慮すると、線維筋痛症および他の種類の疼痛に関連する障害または状態の治療のための、非オピオイド治療が望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法であって、患者に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法であって、
a)疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を特定および/または選別することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む方法が本明細書に提供される。
【0008】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を治療する方法であって、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、患者を治療する方法であって、
a)疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を特定および/または選別することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む方法が本明細書に提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される担体をさらに含む医薬組成物に含まれる。したがって、本明細書の方法のいくつかの実施形態では、その投与ステップでは、患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む組成物が投与される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】二重盲検治療期間およびフォローアップ期間中の、平均1日平均疼痛スコアにおけるベースラインからの変化を示す(完全分析セット)。
図2】二重盲検治療期間およびフォローアップ期間中の、FIQR合計におけるベースラインからの変化を示す(完全分析セット)。
図3A】二重盲検治療期間およびフォローアップ期間中の、FIQRサブスケール(完全分析セット)-症状サブスケールにおける、ベースラインからの変化を示す。
図3B】二重盲検治療期間およびフォローアップ期間中の、FIQRサブスケール(完全分析セット)-全インパクトサブスケールにおける、ベースラインからの変化。
図3C】二重盲検治療期間およびフォローアップ期間中の、FIQRサブスケール(完全分析セット)-機能サブスケールにおける、ベースラインからの変化を示す。
図4A】二重盲検治療期間およびフォローアップ期間中の、平均1日平均FMSD項目1:入眠困難性における、ベースラインからの変化(完全分析セット)を示す。
図4B】二重盲検治療期間およびフォローアップ期間中の、平均1日平均FMSD項目2:睡眠不安定性における、ベースラインからの変化(完全分析セット)を示す。
図5】FMSD項目1(入眠困難性)における、ベースラインからの時間経過における変化のMMRM分析を示す。
図6】FMSD項目2(睡眠不安定性)における、ベースラインからの時間経過における変化のMMRM分析を示す。
図7】FMSD項目3(快適性実感困難性)における、ベースラインからの時間経過における変化のMMRM分析を示す。
図8】FMSD項目4(睡眠維持困難性)における、ベースラインからの時間経過における変化のMMRM分析を示す。
図9】FMSD項目5(熟眠度)における、ベースラインからの時間経過における変化のMMRM分析を示す。
図10】FMSD項目6(当日起床時休息度)における、ベースラインからの時間経過における変化のMMRM分析を示す。
図11】FMSD項目7(当日覚醒困難性)における、ベースラインからの時間経過における変化のMMRM分析を示す。
図12】FMSD項目8(前夜間睡眠充足度)における、ベースラインからの時間経過における変化のMMRM分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
「式(I)の化合物」は、以下の式を有する化合物である。
【化1】
【0013】
「式(I)の化合物」という用語は、本明細書および本明細書の図1~12において列挙される「化合物1」と互換的に使用される。
【0014】
式(I)の化合物は、非オピオイド剤であり、異常な神経発火を逆転させるKCa3.1カリウムイオンチャネル開口剤である。生理学的には、KCa3.1は、細胞の興奮性を調節すると考えられており、したがって、異常な神経興奮に関連する疾患において、KCa3.1チャネルを潜在的な治療標的とする。式(I)の化合物は、そのデザインにより脳への浸透が少なく、許容される毒性プロファイル、ならびに非臨床試験における許容される吸収、分布、代謝、および排泄(ADME)プロファイルの両方を有するものであった。
【0015】
式(I)の化合物は、例えば、米国特許第8,981,119号および第9,399,038号に開示されており、これらの各内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0016】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、以下に示す臭化水素塩である。
【化2】
【0017】
「投与」または「投与すること」という用語は、化合物または化合物を含む医薬組成物の所定の投薬量を患者に提供する方法を指す。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。いくつかの実施形態では、患者は非ヒト哺乳動物である。本発明による組成物は、カプセル剤、錠剤、および粉末等の固体剤形にて、またはエリキシル剤、シロップ剤、および懸濁液等の液体剤形にて、経口投与し得る。さらに、治療剤を含有する組成物は、滅菌された液体剤形で非経口的に、固体、液体、またはエアロゾル形態で経粘膜送達によって、またはパッチ構造、クリーム、ローションもしくは軟膏で経皮的に、投与し得る。様々な種類の経粘膜投与が存在し、呼吸器粘膜投与、鼻粘膜投与、経口経粘膜投与(舌下投与およびバッカル投与など)、および直腸経粘膜投与が挙げられる。
【0018】
「治療すること」(または「治療する」もしくは「治療」)という用語は、障害または状態またはその症状を軽減する、弱めるまたは改善すること、更なる症状を予防すること、症状の根本原因を改善すること、障害または状態を抑制すること(例えば、障害または状態の進行を抑えること)、障害または状態を軽減すること、障害または状態の後退を生じさせること、障害または状態によって生じられる状態を軽減すること、または、治療的に障害または状態の症状を停止させること、を指す。例えば、障害に関して「治療すること」という用語は、特定の障害に関連する1つ以上の症状の重症度の低下を包含し得る。
【0019】
いくつかの実施態様では、本明細書で使用される「治療すること」という用語は、睡眠障害の望ましくない症状または睡眠障害の発生率を好転または改善することを指す。いくつかの実施態様において、治療は、睡眠障害の症状の重症度を、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも50%低下させる。いくつかの実施態様において、治療は、睡眠障害の発生率を、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも50%低下させる。いくつかの実施態様では、睡眠障害の症状の重症度の低下は、主観的な患者フィードバックによって測定される。いくつかの実施態様では、睡眠障害の症状の重症度の低下は、客観的測定によって測定される。いくつかの実施形態では、睡眠障害の症状の重症度の低下は、式(I)の化合物の投与後の臨床スコアの値の変化を決定することによって測定される。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「患者」は、診断、予後、または治療が望ましいあらゆる対象、特に哺乳動物対象、例えばヒトを指す。いくつかの実施形態では、患者は、疼痛を治療される患者である。いくつかのより具体的な実施形態では、患者は、オピオイドにより疼痛を治療される患者である。いくつかの実施形態では、患者は、睡眠障害を覚える、疼痛を治療される患者である。いくつかのより具体的な実施形態では、患者は、睡眠障害を覚える、オピオイドにより疼痛を治療される患者である。
【0021】
「治療レジメン」および「投与レジメン」という用語は、式(I)の化合物の投与量および投与時期を指すために互換的に使用される。
【0022】
本明細書で使用されるとき、疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を特定および/または選別することは、患者を特定すること、患者を選別すること、または患者を特定および選別すること、いずれも指す。疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法のいくつかの実施形態では、方法は、患者を特定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、患者を選別することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、患者を特定および選別することを含む。
【0023】
睡眠障害または「疼痛に関連する」障害というときは、睡眠障害または疼痛もしくは疼痛障害に関連する障害を意味する。疼痛障害の例は、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、ならびにIBS関連疼痛および膀胱疼痛等の内臓疼痛である。
【0024】
本明細書における値またはパラメータについて「約」というときは、その値またはパラメータに係る実施形態を含む。例えば、「約X」は、「X」の開示を含む。別段の定めがない限り、「約」という用語は、示された値が変動しうること指し、示された値の実験誤差内のすべての値、または示された値の10パーセント以内の値、のいずれか大きい方の変動を指す。「約」という用語が一定の期間(年、月、週、日など)の文脈で使用されるとき、「約」という用語は、それに従属するある程度の期間をプラスまたはマイナスした期間(例えば、約1年は11~13ヶ月を意味し、約6ヶ月は6ヶ月プラスまたはマイナス1週間を意味し、約1週間は6~8日を意味する、等)、または示された値の10パーセント以内の期間、のいずれか大きいほうを意味する。
【0025】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法であって、患者に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0026】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法であって、
a)疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を特定することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む方法が本明細書に提供される。
【0027】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法であって、
a)疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を選別することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む方法が本明細書に提供される。
【0028】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を治療する方法であって、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0029】
いくつかの実施形態では、患者を治療する方法であって、
a)疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を特定することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む方法が本明細書に提供される。
【0030】
いくつかの実施形態では、患者を治療する方法であって、
a)疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を選別することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む方法が本明細書に提供される。
【0031】
いくつかのより具体的な実施形態では、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、患者に1日2回、1日1回、2日に1回、週3回、週2回、週1回、2週に1回、月2回または月1回投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、患者に1日1回投与することを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、投与される量は、一定期間にわたって低い用量から高い用量に滴定される。いくつかの実施形態では、投与される量は、一定期間にわたって高い用量から低い用量に滴定される。
【0033】
いくつかのより具体的な実施形態では、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、一定期間にわたって患者に投与することを含む。期間は、例えば、患者における疾患のステージ、患者の体重および性別、患者の年齢、臨床試験ガイドライン、および該当する場合、承認された薬物のラベルに記載の情報のうちの1つ以上に基づき得る。いくつかの実施形態では、好適な期間は、1週間~2年間、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、12週間、3ヶ月、24週間、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、もしくは2年間、またはその間の任意の期間であり得る。他の実施形態では、好適な期間は、1ヶ月~10年、例えば、1ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、もしくは10年、またはその間の任意の期間であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、治療有効量で投与される。本明細書に開示される化合物に関して「治療有効量」という用語は、所望の治療効果を達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、睡眠または睡眠障害の1つ以上の症状を改善するための治療有効量で投与される。
【0035】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、1日当たり約5mg~約45mg、例えば、1日当たり約5mg、1日当たり約10mg、1日当たり約15mg、1日当たり約20mg、1日当たり約25mg、1日当たり約30mg、1日当たり約35mg、1日当たり約40mg、または1日当たり約45mgに等しい量で投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、疼痛に関連する睡眠障害を治療するのに有効な量で投与され、その量は、疼痛を治療するのに有効ではない。
【0037】
本明細書で使用されるとき、式(I)の化合物の量は、その量が、疼痛の数値評価スケール(「NRS」)においてベースラインより30%超、40%超、または50%超低下させない場合、疼痛を治療するのに有効ではない。あるいは、式(1)の化合物の量は、疼痛のNRSを1.9ポイント以下、例えば1.8ポイント以下、例えば1.7ポイント以下、例えば1.6ポイント以下、例えば1.5ポイント以下に減少させる量で投与することができる。
【0038】
式(I)の化合物の量は、1日当たりの総量が所望の量となるよう、1回以上の用量で投与されてもよい。例えば、1日当たり15mgの量の式(I)の化合物は、1日当たり15mgの1回の用量で、または1日当たりそれぞれ7.5mgの2回の用量で、または1日当たりそれぞれ5mgの3回の用量で投与してもよい。投薬量または1日当たりの投薬量は、治療される障害または状態の重症度の観察または測定に基づいて、訪問診療毎に、または受診する医師毎に、異なり得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約5mg~約30mg、例えば、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、または約30mgに等しい用量で投与される。
【0040】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、疼痛に関連する睡眠障害を治療するのに有効な用量で投与され、その用量は、疼痛を治療するのに有効ではない。
【0041】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、睡眠障害は、睡眠日誌、手首アクチグラフィー、またはポリソムノグラフィーを使用して測定される。
【0042】
いくつかの実施形態では、睡眠障害は、入眠困難性(difficulty with falling asleep)、睡眠不安定性(restlessness of sleep)、快適性実感困難性(difficulty getting comfortable)、睡眠維持困難性(difficulty staying asleep)、熟眠度(degree of deep sleep)、当日起床時休息度(degree of being rested when waking up for the day)、当日覚醒困難性(difficulty with beginning the day)、および前夜間睡眠充足度(degree of having enough sleep during the previous night)からなる群から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、睡眠障害は、睡眠日誌を使用して測定され、睡眠障害は、入眠困難性、睡眠不安定性、快適性実感困難性、睡眠維持困難性、熟眠度、当日起床時休息度、当日覚醒困難性、および前夜間睡眠充足度からなる群から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態では、睡眠障害は、手首アクチグラフィーまたはポリソムノグラフィーを使用して測定され、睡眠障害は、入眠困難性、睡眠不安定性、睡眠維持困難性、熟眠度からなる群から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態では、睡眠障害は、入眠困難性である。
【0046】
いくつかの実施形態では、睡眠障害は睡眠不安定性である。
【0047】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、方法は、睡眠障害の症状の重症度を低減する。
【0048】
いくつかの実施形態では、睡眠障害は、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、および内臓疼痛からなる群から選択される疼痛と関連する。いくつかのより具体的な実施形態では、内臓疼痛は、IBS関連疼痛および膀胱疼痛からなる群から選択される。
【0049】
したがって、いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法が本明細書に提供され、疼痛は、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、ならびに内臓疼痛、例えばIBS関連疼痛および膀胱疼痛、からなる群から選択され、方法は、患者に対し、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法が本明細書に提供され、疼痛は、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、およびIBS関連疼痛および膀胱疼痛等の内臓疼痛からなる群から選択され、方法は、
a)線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、ならびにIBS関連疼痛および膀胱疼痛などの内臓疼痛からなる群から選択される疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を特定することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法が本明細書に提供され、疼痛は、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、およびIBS関連疼痛および膀胱疼痛等の内臓疼痛からなる群から選択され、方法は、
a)線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、ならびにIBS関連疼痛および膀胱疼痛などの内臓疼痛からなる群から選択される疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を選別することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を治療する方法が本明細書に提供され、疼痛は、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、ならびに内臓疼痛、例えばIBS関連疼痛および膀胱疼痛、からなる群から選択され、方法は、患者に対し、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、患者を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、
a)線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、ならびにIBS関連疼痛および膀胱疼痛などの内臓疼痛からなる群から選択される疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を特定することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、患者を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、
a)線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、ならびにIBS関連疼痛および膀胱疼痛などの内臓疼痛からなる群から選択される疼痛に関連する睡眠障害を有する患者を選別することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、線維筋痛症に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、患者に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、線維筋痛症に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、
a)線維筋痛症に関連する睡眠障害を有する患者を特定することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、線維筋痛症に関連する睡眠障害の治療を必要とする患者において睡眠障害を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、
a)線維筋痛症に関連する睡眠障害を有する患者を選別することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、線維筋痛症に関連する睡眠障害を有する患者を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、患者を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、
a)線維筋痛症に関連する睡眠障害を有する患者を特定することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、患者を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、
a)線維筋痛症に関連する睡眠障害を有する患者を選別することと、
b)ステップa)で特定された患者に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することと、を含む。
【0061】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、患者は、以前に睡眠補助剤を投与された患者である。いくつかの実施形態では、睡眠補助剤は、非ベンゾジアゾペン系鎮静性催眠剤(例えば、ゾルピデム、ザレプロン、エゾプリクロン等)、ベンゾジアゼペン様睡眠補助剤(例えば、テマゼパム、トリアゾラム、ロラゼパム、フルナゼパム、クアゼパム、クロナゼパム等)、メラトニン様睡眠補助剤(例えば、ラメルテオン、メラトニン等)、鎮静性三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、ドキセピン、ノルトリプチリン、イミプラミン等)、低用量の抗精神病薬(例えば、クエチアピン、クロザピン等)、睡眠補助剤として使用される抗うつ薬(例えば、トラゾドン、ミルツァピン等)、二重オレキシン受容体アンタゴニスト(例えば、スボレキサン等)、および/または鎮静性サミン-1受容体アンタゴニスト(例えば、ドリフェン等)とすることができる。
【0062】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、患者は、非ベンゾジアゾペン系鎮静性催眠剤(例えば、ゾルピデム、ザレプロン、エゾプリクロン等)、ベンゾジアゼペン様睡眠補助剤(例えば、テマゼパム、トリアゾラム、ロラゼパム、フルナゼパム、クアゼパム、クロナゼパム等)、メラトニン様睡眠補助剤(例えば、ラメルテオン、メラトニン等)、鎮静性三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、ドキセピン、ノルトリプチリン、イミプラミン等)、低用量の抗精神病薬(例えば、クエチアピン、クロザピン等)、睡眠補助剤として使用される抗うつ薬(例えば、トラゾドン、ミルツァピン等)、二重オレキシン受容体アンタゴニスト(例えば、スボレキサン等)、および/または鎮静性サミン-1受容体アンタゴニスト(例えば、ドリフェン等)による治療が禁忌である患者である。
【0063】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、患者の疼痛は、以下のうちの1つ以上で治療される疼痛である
(a)ガバペンチノイド(プレガバリン、ガバペンチンを含む)、抗うつ薬[セロトニン再取込み阻害剤を除き、デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプランから選択されるセロトニン再取込み阻害剤、三環系抗うつ薬(アミトリプチリンおよびノルトリプチリンから選択される三環系抗うつ薬を含む)、トラゾドン、ネファゾドン、ミルタザピンおよびアンフェブタモンを含む]、ケタミン、エスケタミンおよび他のNMDA受容体遮断薬、GABAB受容体アゴニスト(ナトリウムオキシベートおよびバクロフェンを含む)、オピオイド(モルヒネ、フェンタニル、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、ヒドロモルホンおよびトラマドールを含む)、セレコキシブおよびメロキシカム、筋弛緩薬(シクロベンザプリンなど)、カンナビスおよびカンナビノイド(THCを含有するカンナビノイドを含む)、NSAIDS(アセトアミノフェンまたはアセトアミノフェン含有製剤、イブプロフェンおよびナプロキセンを含む)、慢性非麻酔性鎮痛薬(325mg/日までの用量の心臓病予防のためのアスピリン以外)、ならびに局所鎮痛剤(カプサイシンを含む)、からなる群から選択される疼痛緩和剤、
または
(b)脊髄刺激または経皮的電気神経刺激を含む電気刺激、鍼灸、神経ブロック、イオン透過、レーザー治療、圧痛点注射、乾燥針注射、カイロプラクティック治療、運動または理学療法、外科療法、およびバイオフィードバック、からなる群から選択される疼痛緩和のための手段。
【0064】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、患者は、以下のうちの1つ以上で治療される
(a)ガバペンチノイド(プレガバリン、ガバペンチンを含む)、抗うつ薬[セロトニン再取込み阻害剤を除き、デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプランから選択されるセロトニン再取込み阻害剤、三環系抗うつ薬(アミトリプチリンおよびノルトリプチリンから選択される三環系抗うつ薬を含む)、トラゾドン、ネファゾドン、ミルタザピンおよびアンフェブタモンを含む]、ケタミン、エスケタミンおよび他のNMDA受容体遮断薬、GABAB受容体アゴニスト(ナトリウムオキシベートおよびバクロフェンなど)、オピオイド(モルヒネ、フェンタニル、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、ヒドロモルホンおよびトラマドールを含む)、セレコキシブおよびメロキシカム、筋弛緩薬(シクロベンザプリンなど)、カンナビスおよびカンナビノイド(THCを含有するカンナビノイドを含む)、NSAIDS(アセトアミノフェンまたはアセトアミノフェン含有製剤、イブプロフェンおよびナプロキセンを含む)、慢性非麻酔性鎮痛薬(325mg/日までの用量の心臓病予防のためのアスピリン以外)、ならびに局所鎮痛剤(カプサイシンを含む)、からなる群から選択される疼痛緩和剤、
または
(b)脊髄刺激または経皮的電気神経刺激を含む電気刺激、鍼灸、神経ブロック、イオン透過、レーザー治療、圧痛点注射、乾燥針注射、カイロプラクティック治療、運動または理学療法、外科療法、およびバイオフィードバック、からなる群から選択される疼痛緩和のための手段。
【0065】
また、いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法で使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を本明細書に提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を有すると特定された患者の疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法で使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を本明細書に提供する。
【0067】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を治療するための医薬品の製造における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を本明細書に提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を有すると特定された患者の疼痛に関連する睡眠障害を治療するための医薬品の製造における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を本明細書に提供する。
【0069】
またいくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法で使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が本明細書に提供され、疼痛は、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、ならびに内臓疼痛、例えば、IBS関連疼痛および膀胱疼痛からなる群から選択される。
【0070】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法で使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が本明細書に提供され、疼痛は、疼痛に関連する睡眠障害を有すると特定された患者の線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、ならびに内臓疼痛、例えばIBS関連疼痛および膀胱疼痛からなる群から選択される。
【0071】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を治療するための薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用が本明細書に提供され、疼痛は、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、ならびに内臓疼痛、例えば、IBS関連疼痛および膀胱疼痛からなる群から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明では、疼痛に関連する睡眠障害を治療するための薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用が本明細書に提供され、疼痛は、疼痛に関連する睡眠障害を有すると特定された患者における、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、ならびに内臓疼痛、例えば、IBS関連疼痛および膀胱疼痛からなる群から選択される。
【0073】
またいくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法で使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩も本明細書に提供され、睡眠障害は、睡眠日誌、手首アクチグラフィー、またはポリソムノグラフィーを使用して測定される。
【0074】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法で使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が本明細書に提供され、睡眠障害は、入眠困難性、睡眠不安定性、快適性実感困難性、睡眠維持困難性、熟眠度、当日起床時休息度、当日覚醒困難性、および前夜間睡眠充足度からなる群から選択される。
【0075】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法で使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が本明細書に提供され、睡眠障害は、睡眠日誌を使用して測定され、睡眠障害は、入眠困難性、睡眠不安定性、快適性実感困難性、睡眠維持困難性、熟眠度、当日起床時休息度、当日覚醒困難性、および前夜間睡眠充足度からなる群から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法で使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が本明細書に提供され、睡眠障害は、手首アクチグラフィーまたはポリソムノグラフィーを使用して測定され、睡眠障害は、睡眠日誌を使用して測定され睡眠障害は、入眠困難性、睡眠不安定性、睡眠維持困難性、熟眠度からなる群から選択される。
【0077】
疼痛に関連する睡眠障害を治療するための方法で使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩のいくつかの実施形態では、睡眠障害は、入眠困難性である。
【0078】
疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法で使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩のいくつかの実施形態では、睡眠障害は、睡眠不安定性である。
【0079】
疼痛に関連する睡眠障害を治療する方法で使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩のいくつかの実施形態では、睡眠障害は、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、および内臓疼痛からなる群から選択される疼痛に関連する。いくつかのより具体的な実施形態では、内臓疼痛は、IBS関連疼痛および膀胱疼痛からなる群から選択される。
【0080】
またいくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害を治療するための薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用も本明細書に提供され、睡眠障害は、睡眠日誌、手首アクチグラフィー、またはポリソムノグラフィーを使用して測定される。
【0081】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の、疼痛に関連する睡眠障害を治療するための医薬品の製造への使用が本明細書に提供され、睡眠障害は、入眠困難性、睡眠不安定性、快適性実感困難性、睡眠維持困難性、熟眠度、当日起床時休息度、当日覚醒困難性、および前夜間睡眠充足度からなる群から選択される。
【0082】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の、疼痛に関連する睡眠障害を治療するための医薬品の製造における使用が本明細書に提供され、睡眠障害は、睡眠日誌を使用して測定され、睡眠障害は、入眠困難性、睡眠不安定性、快適性実感困難性、睡眠維持困難性、熟眠度、当日起床時休息度、当日覚醒困難性、および前夜間睡眠充足度からなる群から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の、疼痛に関連する睡眠障害を治療するための薬剤の製造における使用が本明細書に提供され、睡眠障害は、手首アクチグラフィーまたはポリソムノグラフィーを使用して測定され、睡眠障害は、入眠困難性、睡眠不安定性、睡眠維持困難性、熟眠度からなる群から選択される。
【0084】
疼痛に関連する睡眠障害を治療するための薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用のいくつかの実施形態では、睡眠障害は、入眠困難性である。
【0085】
疼痛に関連する睡眠障害を治療するための薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用のいくつかの実施形態では、睡眠障害は、睡眠不安定性である。
【0086】
疼痛に関連する睡眠障害を治療するための薬剤の製造における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用のいくつかの実施形態では、睡眠障害は、線維筋痛症、神経障害性疼痛、変形性関節症、および内臓疼痛からなる群から選択される疼痛に関連する。いくつかのより具体的な実施形態では、内臓疼痛は、IBS関連疼痛および膀胱疼痛からなる群から選択される。
【0087】
疼痛に関連する睡眠障害の重症度は、例えば、睡眠障害に関連する臨床スコアの値を測定することによって決定され得る。同様に、いくつかの実施形態では、疼痛に関連する睡眠障害の治療の有効性は、例えば、治療後の、睡眠障害に関連する臨床スコアの値を測定することによって決定され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法は、患者における、睡眠障害に関連する臨床スコアの値を決定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、式(I)の化合物の投与後のある時点での臨床スコアの値が、投与前または投与時の臨床スコアの値と異なることを決定することを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、臨床スコアは、1つ以上のFMSD(線維筋痛症睡眠日誌)の項目のスコアである。FMSD(Kleinman et al.,2014)は、入眠、睡眠維持、十分な睡眠のドメインにわたる、線維筋痛症患者に特有の睡眠障害を評価する、8項目の患者報告アウトカムである(Kleinman et al.,2014)。起床後、患者を毎日、前夜の睡眠の質を、11ポイントの数値整数評価スケール(NRS)で評価する。各項目は、「まったくない」に相当する0から、「非常に」に相当する10までの、11ポイントのNRSで評価される。
【0089】
FMSDの項目には以下が含まれる。
-入眠困難(改善が測定値の減少として示される)
-睡眠不安定性(改善が測定値の減少として示される)
-快適性実感困難性(改善が測定値の減少として示される)
-睡眠維持困難性(改善が測定値の減少として示される)
-熟眠度(改善が測定値の増加によって示される)
-当日起床時休息度(改善が測定値の増加によって示される)

-当日覚醒困難性(改善が測定値の減少として示される)
および
-前夜間睡眠充足度(改善が測定値の増加によって示される)。
【0090】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法は、患者における、1つ以上のFMSD項目の値を決定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、式(I)の化合物の投与後のある時点でのFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と異なることを決定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と異なることを決定することを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも2つのFMSD項目のそれぞれについて、式(I)の化合物の投与後のある時点でのFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と異なることを決定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも2つのFMSD項目のそれぞれについて、式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と異なることを決定することを含む。
【0092】
例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と比較して、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%改善されることを決定することを含む。
【0093】
例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも2つのFMSD項目のそれぞれについて、式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と比較して、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%改善されることを決定することを含む。
【0094】
例えば、いくつかの実施形態では、方法は、
(a)熟眠度、当日起床時休息度、および前夜間睡眠充足度からなる群から選択されるFMSD項目について、式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と比較して、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%増加すること、
および
(b)入眠困難性、睡眠不安定性、快適性実感困難性、睡眠維持困難性、および当日覚醒困難性からなる群から選択されるFMSD項目について、式(I)の化合物の投与後、少なくとも1週間、例えば1週間~13週間のFMSD項目の値が、投与前または投与時のFMSD項目の値と比較して、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%減少すること、を決定することを含む。
【0095】
疼痛に関連する睡眠障害の重症度は、例えば、客観的な臨床バイオマーカーのレベルを決定すること(例えば、アクチグラフィー、ポリソムノグラフィー、または他の睡眠試験)によって決定され得る。
【実施例
【0096】
実施例1
線維筋痛症患者における式(I)の化合物の鎮痛効果および安全性を評価するために、米国内の24の地点で、フェーズ2a、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並列群試験を実施した。本臨床試験は、ウォッシュアウト期間および7日間のベースラインダイアリーランインを含む最大42日間のスクリーニング期間、57日間の二重盲検ランダム化治療期間、1日目、15日目、29日目、および57日目の受診訪問、および2週間後の受診訪問および4週間後の電話からなる4週間のフォローアップ期間、で構成した。この試験は、ヘルシンキ宣言に従って実施され、関連する施設審査委員会によって承認された。すべての参加者は、いずれの試験手順を開始する前にも、書面によるインフォームドコンセントを提供した。
【0097】
18~80歳の男性および女性の患者で、スクリーニング時に1990および2010年の米国リウマチ学会(ACR)の線維筋痛症診断基準を満たしている場合に、治験に含めた(Wolfe et al.,1990; Wolfe et al.,2010b)。線維筋痛症のコアとなる診断基準は、1990年基準(Wolfe et al.,1990)によって定義されており、ACRは新しい基準を発表してはいるが、1990年版は依然として臨床試験で一般的に利用されている。ACR1990の基準を満たすためには、患者は、少なくとも3ヶ月間、身体の右側および左側の痛み、腰の上下の痛み、ならびに軸骨格(頸椎、前胸、胸椎、または腰)の痛みの存在、として定義される広範囲の痛みを有していなければならなかった(Wolfe et al.,1990)。また、彼らは約4kgの力で行われるデジタル触診の18箇所の圧痛部位のうち、少なくとも11箇所に痛みを有していなければならなかった。ACR2010の基準を満たすためには、患者は、7以上の広範囲の疼痛指数(WPI)スコアおよび5以上の症状重症度(SS)スケールスコア、またはWPIスコア3~6および9以上のSSスケールスコアを有する必要があった(Wolfe et al.,2010b)。症状は少なくとも3ヶ月間同様のレベルで存在しなければならず、患者は痛みを説明しうるその他の障害を有していなければならなかった。さらに、患者は、ベースラインダイアリーランイン期間中に、スクリーニング時の線維筋痛症影響評価アンケート改訂版(FIQR)疼痛項目の疼痛スコアが4以上である一方で、11ポイント(0~10)の数値評価スケール(NRS)において平均1日平均疼痛スコアが4~9(上下限値含む)でなければならず、また平均1日平均疼痛スコアの事前指定基準を満たしていなければならなかった(Bennett et al.,2009)。
【0098】
治療
適格な患者を、インタラクティブ応答技術を使用して1:1に無作為化し、それぞれ朝に1日1回、食物の有無にかかわらず、8週間にわたって、式(I)の化合物を15mg(3つの5mgカプセル)またはそれに対応するプラセボカプセルを経口摂取させた。
【0099】
エンドポイントおよび評価
疼痛の一次有効性エンドポイントは、数値評価スケール(NRS、0~10スケール)によって評価した、1日平均疼痛スコアにおけるベースラインから8週目にかけての変化とした。NRSは、一般的な疼痛評価ツールであり、過去24時間にわたって1日の平均疼痛を11段階(0=痛みなし、10=これまで経験したことのないひどい痛み)で記録するよう患者に求める単一の質問から構成されている。患者は、1日の平均疼痛NRSスコアを報告し、救急薬の使用をキャプチャするために手持ちのe-ダイアリーを使用し、これらのデータは、中央データベースに自動的に送信された。患者は、ベースラインランイン期間から、毎日夕方に、第10週まで、毎日NRSを完了させた。
【0100】
二次有効性エンドポイントには、ベースラインから8週目までおよび治療終了(EOT:57日目)までに、NRS(0~10スケール)によって評価された1日平均疼痛スコアの平均30%以上または50%以上の減少を達成した患者数、FIQR機能、症状、および全体的な影響のサブスケールにおける、ベースラインから2週目、4週目、8週目、およびEOTにかけての変化、ならびに2週目、4週目、8週目、およびEOTにおける、患者の全体的な印象の変化(PGIC)(Rampakakis et al.,2015)によって評価した全体的改善、を含めた。
【0101】
FIQRやPGICなどの有効性に関するアンケートは、治験訪問中に完了した。FIQRは、線維筋痛症および治療に対する反応に関連する問題の全範囲を網羅し、日常生活の活動、全体的影響、および症状にまで及ぶ(Bennett et al.,2009)。患者は、過去7日間のリコール期間にわたり、または活動が実施された最後のときに(7日間のリコール期間内に活動が実施されなかった場合に、身体機能ドメイン)、11ポイントのNRSで各質問に回答した。PGICは、線維筋痛症を評価するよう患者に依頼する、自己作成による、ベースラインと比較した7ポイントでのLikertスケール(「非常に改善された」から「非常に悪い」)である(Rampakakis et al.,2015)。
【0102】
毎日の線維筋痛症睡眠日誌(FMSD)応答(Kleinman et al.,2014)における、ベースラインから各週(1~8週目)にわたる、およびベースラインからEOTにわたる変化を用いて、睡眠障害を探索的エンドポイントとして評価した。FMSDは、入眠、睡眠維持、十分な睡眠のドメインにわたる、線維筋痛症患者に特有の睡眠障害を評価する、8項目の患者報告アウトカムである(Kleinman et al.,2014)。患者を毎日、起床後、携帯e-ダイアリーを用いて、前夜の睡眠の質を、11ポイントのNRSで評価する。各項目は、「0-まったくない」および「10-非常にある」で固定された11ポイントのNRSで評価する。
【0103】
無作為化された患者184名(98.9%)がSAFおよびFASに含まれ、173名(93.0%)がプロトコルに従うセットに含まれた。プロトコルのセットから除外された主な理由は、現在の、未治療の中等度または重度のうつ病性障害/精神病性の病歴および/または双極性障害(n=8)に起因していた。全体として、183人の患者(n=93がプラセボ、n=90が式(I)の化合物)をフォローアップ期間に含めた。無作為化前に臨床試験を離脱した主な理由は、スクリーニングの失敗、患者の離脱、および「その他」であった。合計で、156名(83.9%)の患者が計画された二重盲検治療期間を完了し、168名(90.3%)の患者が計画されたフォローアップ期間を完了した。二重盲検治療期間中の離脱に関して、治療群とプラセボ群との間に差はなかった。
【0104】
治療群はまた、線維筋痛症関連のベースライン特性に関して類似していた。ベースライン1日平均疼痛スコアの平均は、両治療群で6.32であったが、重度のベースライン1日平均疼痛スコア(≧7~10)を有する患者の割合は、式(I)の化合物群では、プラセボ群よりも高かった(31.1%対22.3%)。線維筋痛症疼痛および他の種類の疼痛を治療するために使用された以前の薬剤は、式(I)の化合物群およびプラセボ群で類似していた。
【0105】
効能の結果
ベースラインから8週目まで、式(I)の化合物対プラセボの、平均1日平均疼痛スコア(一次エンドポイント)においては、式(I)の化合物が若干良い傾向を示しただけで、統計的に有意な変化はなかった(-1.60対-1.26;処理の違い[SE]:-0.34〔0.25〕;両側90%CI:0.76,0.07;P=0.086)。感度およびプロトコルごとのセットの両方の分析において、同様の結果を得た(データ示さず)。しかしながら、プラセボと比較して、式(I)の化合物に有利な統計的に有意な処理差が、ベースラインから第2、6および7週目にかけての平均1日平均疼痛スコアの変化において観察された(図1)。
【0106】
式(I)の化合物とプラセボ群との間では、平均1日平均疼痛スコアの反応者分析において、またはPGICによって評価された患者全体の改善に関して、統計的有意差はなかった。プラセボと比較して、式(I)の化合物に有利な統計的有意差が、4週目のFIQRの症状サブスケール(図3A)および全体的な影響サブスケール(図3B)で見られたが(それぞれ、LS平均差:-3.73;P=0.039およびLS平均差:-1.34;P=0.018)、FIQR機能では見られなかった(LS平均差:-2.97;P=0.103;図3C)。第4週目の総スコアにおけるベースラインからの減少には統計的有意差があったが(LS平均差:-4.14;P=0.033)、第8週目のFIQR総スコアにおけるベースラインからの減少には統計的有意差は見られなかった。式(I)の化合物は、プラセボと比較して数値的に改善があったが、FIQR機能、症状サブスケール、または全体的な影響サブスケールにおいて、ベースラインから8週目までの減少(改善)については統計的有意差はなかった。
【0107】
FIQR合計スコアのベースラインからの改善は、式(I)の化合物治療群では、すべての時点でプラセボ群と比較して数値的に高かった。MMRM分析では、ベースラインから8週目までの減少(改善)において、式(I)の化合物とプラセボとの間に統計的有意差はなかったが(LS平均差:-3.27;P=0.093)、ANCOVA分析では、ベースラインから8週目までのFIQR全スコアの改善において、mBOCF代入を使用した(LS平均差:-4.10;P=0.036)、およびEOTまでについてはLOCF代入を使用した(LS平均差:-3.75;P=0.050)、式(I)の化合物とプラセボとの統計的有意差が見られた。
【0108】
上記の疼痛スコアのほとんどで統計的有意差が観察されないこととは対照的に、プラセボと比較して式(I)の化合物に有利な統計的に有意な改善が、FMSD、すなわち線維筋痛症睡眠日誌のいくつかの項目で見られた。図1~4を参照すると、図1は、数値評価スケール(NRS)によって評価される1日の平均疼痛スコアを示しており、これは、患者に、過去24時間にわたって11ポイントの尺度(0=痛みなし、から10=これまで経験したことのないひどい痛み)により1日の平均疼痛を記録するよう求める単一の質問からなる。二重盲検期間からのデータは、LS平均±標準誤差として表し、フォローアップ期間からのデータは、平均±標準誤差として表す。図中のアスタリスク(*)は、P<0.05の値を示す。
【0109】
図2は、FIQR合計スコアにおけるベースラインからの変化を示す。FIQR合計スコアは、症状、機能、および全体的影響、の3つのサブスケールスコアの合計を表す。症状サブスケールが総合スコアの50%、機能サブスケールが30%、全体的影響サブスケールが20%を占める。二重盲検期間からのデータは、LS平均±標準誤差として表し、フォローアップ期間からのデータは、平均±標準誤差として表す。図中のアスタリスク(*)は、P<0.05の値を示す。
【0110】
図3A、3B、および3Cは、平均FIQRサブスケールスコアにおけるベースラインからの変化を示す。(A)症状、(B)機能、および(C)全体的影響を示す。各サブスケールのすべての質問は、0~10までの11段階の数値で評価され、10が最悪である。二重盲検期間からのデータは、LS平均±標準誤差として表し、フォローアップ期間からのデータは、平均±標準誤差として表す。図中のアスタリスク(*)は、P<0.05の値を示す。
【0111】
図4Aは、FMSDの項目1、すなわち入眠困難性のベースラインからの変化を示す。図4Aは、FMSDの項目2、すなわち睡眠不安定性のベースラインからの変化を示す。患者は、e-ダイアリーの「0-まったくない」から「10-非常にある」までの11ポイントの数値評価スケールで、前夜の入眠困難性または睡眠不安定性を評価した。二重盲検期間からのデータは、LS平均±標準誤差として表し、フォローアップ期間からのデータは、平均±標準誤差として表す。図中のアスタリスク(*)は、P<0.05の値を示す。
図1~4を参照して、以下の略語を使用する。FIQR:線維筋痛症影響評価アンケート改訂版、LS:最小二乗法、FMSD:線維筋痛症睡眠日誌)
【0112】
第2週目(入眠困難性、P=0.032[図4Aを参照])、第3週目(睡眠不安定性、P=0.013[図4Bを参照];快適性実感困難性、P=0.007;睡眠維持困難性、P=0.013)、および第6週目(熟眠度、P=0.035;および当日覚醒困難性、P=0.040)において、統計的に有意な改善が見られた。式(I)の化合物については、8週目での入眠困難性(P=0.018)および睡眠不安定性(P=0.033)、ならびにEOTでの入眠困難性(P=0.008)、睡眠時不安定(P=0.009)、および当日覚醒困難性(P=0.044)について、プラセボと比較し、統計的に有意な改善が見られた。
【0113】
図5~12は、以下のFMSD項目の、ベースラインからの経時的なさらなる変化のプロットを示す。
図5:入眠困難性
図6:睡眠不安定性
図7:快適性実感困難性
図8:睡眠維持困難性
図9:熟眠度
図10:当日起床時休息度
図11:当日覚醒困難性
および
図12:前夜間睡眠充足度。
【0114】
図5~12の各々において、FMSD項目の各スコアは、0~10の範囲である。図5~8および11については、負の変化はベースラインからの改善を示す。図9~10および12については、正の変化はベースラインからの改善を示す。全ての場合において、アスタリスクは、片側試験を用い、有意水準0.05で統計的に有意であることを示す。
【0115】
以下の表は、FMSD項目スコアのベースラインから8週目およびEOT(治療終了)までの変化を示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】
【0116】
参照による援用
本明細書で言及される特許文献および科学論文の各々の開示全体は、すべての目的において参照により組み込まれる。
【0117】
均等物
本開示は、その趣旨または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化することができる。したがって、上述の実施形態は、あらゆる点において例示的であると見なされるべきであり、本明細書に説明される開示を限定するのではない。したがって、本開示の範囲は、上述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および均等物の範囲内に含まれるすべての変更は、その中に包含されることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】