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特表2022-541640光学材料としての安定的なポリシクロオレフィン重合体および無機ナノ粒子組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】光学材料としての安定的なポリシクロオレフィン重合体および無機ナノ粒子組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 232/08 20060101AFI20220915BHJP
   C08F 4/26 20060101ALI20220915BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08F232/08
C08F4/26
C08F2/44 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504638
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 US2020043364
(87)【国際公開番号】W WO2021016503
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】62/878,383
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/013,028
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】303043461
【氏名又は名称】プロメラス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】ブルトヴィ, オレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ウェイ
【テーマコード(参考)】
4J011
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA01
4J011AA05
4J011CA01
4J011FB05
4J015DA23
4J015DA26
4J100AR09P
4J100AR09Q
4J100AR11P
4J100AR11Q
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BA22P
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC44P
4J100BC48P
4J100BC49P
4J100BC66P
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100FA03
4J100FA18
4J100JA01
4J100JA43
(57)【要約】
本発明による実施態様は、1種以上の単量体と共にオルガノ-ルテニウム潜在触媒、オルガノ-ルテニウム化合物、およびピリジン化合物を含有する組成物を含み、当該組成物は、80℃~150℃、またはそれ以上の温度に加熱したとき、開環メタセシス重合(ROMP)を引き起こして実質的に透明なフィルムを形成する。本発明の組成物に好適な照射を加えることによっても重合を引き起こすことができる。当該組成物に使用される単量体は、1.4~1.6の範囲の屈折率を有するので、様々な屈折率を有する透明フィルムを形成するように本発明の組成物を調整することができる。本発明の組成物は透明フィルムを形成し、当該組成物の屈折率をさらに増加させる無機ナノ粒子をさらに含む。したがって、本発明の組成物は、光電子分野での各種の用途の中でも、特にコーティング、カプセル化剤、充填材、レーベリング剤に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
a)式(I)の1つ以上の単量体:
【化1】
(ここで、
mは、0、1または2の整数であり、
、R、R、Rは、同一または異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C16)アルキル、パーフルオロ(C-C12)アルキル、ヒドロキシ(C-C16)アルキル、(C-C12)シクロアルキル、(C-C12)ビシクロアルキル、(C-C14)トリシクロアルキル、(C-C10)アリール、(C-C10)アリール(C-C)アルキル、パーフルオロ(C-C10)アリール、パーフルオロ(C-C10)アリール(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルコキシシリル、および下記の式(A)の基からなる群より選択され、
-Z-Aryl (A)
ここで、
Zは、結合または(CR、O(CR、(CRO、(CR-O-(CR、(CR-O-(SiR、(CR-(CO)O-(CR、(CR-O(CO)-(CR、(CR-(CO)-(CRからなる群より選択される基であり、aおよびbは、同一または異なり、それぞれ独立して1~12の間の数であってもよい整数であり、
およびRは、同一または異なり、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキルオキシ、アセトキシ、(C-C)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖もしくは分岐状のヒドロキシ(C-C)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択され、
Arylは、フェニル、またはメチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキルオキシ、アセトキシ、(C-C)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖もしくは分岐状のヒドロキシ(C-C)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択される1つ以上の基で置換されたフェニルである)、
b)式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物:
【化2】
(ここで、
Xは、塩素、臭素、ヨウ素からなる群より選択されるハロゲンであり、
およびRは、同一または異なり、それぞれ独立してメチル、エチル、イソプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、置換または未置換シクロヘキシル、置換または未置換フェニル、置換または未置換ビフェニル、および置換または未置換ナフチルからなる群より選択され、
およびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含有する(C-C)炭素環を形成し;
ArおよびArは、同一または異なり、それぞれ独立して置換または未置換フェニル、置換または未置換ビフェニル、および置換または未置換ナフチルからなる群より選択される);
c)式(III)のオルガノ-ルテニウム化合物:
((RP)RuCl (III)
(ここで、
は、置換または未置換フェニルおよび置換または未置換シクロヘキシルからなる群より選択される)、
d)式(IV)の化合物または式(V)の化合物:
【化3】
(ここで、
nは、0~4の整数であり、
各R10は、独立してメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、およびtert-ブチルからなる群より選択され、
11は、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、(C-C10)アリール、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルコキシ、(C-C10)アリールオキシ、およびハロゲンからなる群より選択される)を含み、
前記置換基は、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、およびフェニルからなる群より選択され、
式(I)の前記単量体は、屈折率が少なくとも1.5であり、前記組成物は、室温で透明な液体である、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、式(I)で表され、互いに異なる第1の単量体および第2の単量体を含み、前記第1の単量体および第2の単量体の一方は少なくとも1.5の屈折率と100センチポアズ未満の粘度を有し、前記第1の単量体は、前記第2の単量体と完全に混和して透明溶液を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、80℃~150℃の温度に加熱したとき、実質的に透明なフィルムを形成する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記フィルムは、可視光線の90%以上の透過率を有する請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記フィルムは、可視光線の95%以上の透過率を有する請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
式(I)の前記単量体は、
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
からなる群より選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
式(II)の前記オルガノ-ルテニウム化合物において、
Xは、塩素であり、
およびRは、同一または異なり、それぞれ独立してメチル、エチル、イソプロピル、およびシクロヘキシルからなる群より選択され、
およびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、シクロペンチル環、シクロヘキシル環またはシクロヘプチル環を形成し、
ArおよびArは、同一または異なり、それぞれ独立してフェニル、2,6-ジメチルフェニル、2,6-ジエチルフェニル、2,6-ジ(イソプロピル)フェニル、および2,4,6-トリメチルフェニルからなる群より選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
式(II)の前記オルガノ-ルテニウム化合物は、
【化5-1】
【化5-2】
からなる群より選択される請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
式(III)の前記オルガノ-ルテニウム化合物において、Rは、フェニル、4-メチルフェニル、4-エチルフェニル、4-イソプロピルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、シクロヘキシル、および4-メチルシクロヘキシルからなる群より選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
式(III)の前記オルガノ-ルテニウム化合物は、
【化6】
からなる群より選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
式(IV)の前記化合物において、
nは、0~2の整数であり、
各R10は、独立してメチル、エチル、イソプロピル、およびtert-ブチルからなる群より選択され、
11は、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、フルオリン、および塩素からなる群より選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
式(IV)の前記化合物は、
N,N-ジメチルピリジン-4-アミン;
N,N-ジエチルピリジン-4-アミン;
N,N-ジイソプロピルピリジン-4-アミン;
N,N-ジ-tert-ブチルピリジン-4-アミン;
N,N-ジメチル-2-メチルピリジン-4-アミン;
N,N-ジ-tert-ブチル-2-メチルピリジン-4-アミン;
2-メトキシ-N,N-ジメチルピリジン-4-アミン;
2-フルオロ-N,N-ジメチルピリジン-4-アミン;
N,N-ジメチルキノリン-4-アミン;
N,N,2-トリメチルキノリン-4-アミン;
2-メトキシ-N,N-ジメチルキノリン-4-アミン;および
2-クロロ-N,N-ジメチルキノリン-4-アミンからなる群より選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
組成物であって、
a)式(I)の1つ以上の単量体:
【化7】
(ここで、
mは、0、1または2の整数であり、
、R、R、Rは、同一または異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C16)アルキル、パーフルオロ(C-C12)アルキル、ヒドロキシ(C-C16)アルキル、(C-C12)シクロアルキル、(C-C12)ビシクロアルキル、(C-C14)トリシクロアルキル、(C-C10)アリール、(C-C10)アリール(C-C)アルキル、パーフルオロ(C-C10)アリール、パーフルオロ(C-C10)アリール(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルコキシシリル、および下記の式(A)の基からなる群より選択され、
-Z-Aryl (A)
ここで、
Zは、結合または(CR、O(CR、(CRO、(CR-O-(CR、(CR-O-(SiR、(CR-(CO)O-(CR、(CR-O(CO)-(CR、(CR-(CO)-(CRからなる群より選択される基であり、aおよびbは、同一または異なり、それぞれ独立して1~12の間の数であってもよい整数であり、
およびRは、同一または異なり、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキルオキシ、アセトキシ、(C-C)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖もしくは分岐状のヒドロキシ(C-C)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択され、
Arylは、フェニル、またはメチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキルオキシ、アセトキシ、(C-C)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖もしくは分岐状のヒドロキシ(C-C)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択される1つ以上の基で置換されたフェニルである)、
b)式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物:
【化8】
(ここで、
Xは、塩素、臭素、ヨウ素からなる群より選択されるハロゲンであり、
およびRは、同一または異なり、それぞれ独立してメチル、エチル、イソプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、置換または未置換シクロヘキシル、置換または未置換フェニル、置換または未置換ビフェニル、および置換または未置換ナフチルからなる群より選択され、
およびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含有する(C-C)炭素環を形成し;
ArおよびArは、同一または異なり、それぞれ独立して置換または未置換フェニル、置換または未置換ビフェニル、および置換または未置換ナフチルからなる群より選択される);
c)必要に応じて式(III)のオルガノ-ルテニウム化合物:
((RP)RuCl (III)
(ここで、
は、置換または未置換フェニルおよび置換または未置換シクロヘキシルからなる群より選択される)、
d)式(IV)の化合物または式(V)の化合物:
【化9】
(ここで、
nは、0~4の整数であり、
各R10は、独立してメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、およびtert-ブチルからなる群より選択され、
11は、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、(C-C10)アリール、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルコキシ、(C-C10)アリールオキシ、およびハロゲンからなる群より選択され、
前記置換基は、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、およびフェニルからなる群より選択される)、
e)ナノ粒子を含む分散液
を含む、組成物。
【請求項14】
前記のナノ粒子は、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム-ジルコニウム、および酸化チタン-ジルコニウムのうちの少なくとも1種を含む請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
実質的に透明なフィルムを形成するキットであって、
a)式(I)の1つ以上の単量体:
【化10】
(ここで、
mは、0、1または2の整数であり、
、R、R、Rは、同一または異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C16)アルキル、パーフルオロ(C-C12)アルキル、ヒドロキシ(C-C16)アルキル、(C-C12)シクロアルキル、(C-C12)ビシクロアルキル、(C-C14)トリシクロアルキル、(C-C10)アリール、(C-C10)アリール(C-C)アルキル、パーフルオロ(C-C10)アリール、パーフルオロ(C-C10)アリール(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルコキシシリル、および下記の式(A)の基からなる群より選択され、
-Z-Aryl (A)
ここで、
Zは、結合または(CR、O(CR、(CRO、(CR-O-(CR、(CR-O-(SiR、(CR-(CO)O-(CR、(CR-O(CO)-(CR、(CR-(CO)-(CRからなる群より選択される基であり、aおよびbは、同一または異なり、それぞれ独立して1~12の間の数であってもよい整数であり、
およびRは、同一または異なり、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキルオキシ、アセトキシ、(C-C)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖もしくは分岐状のヒドロキシ(C-C)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択され、
Arylは、フェニル、またはメチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキルオキシ、アセトキシ、(C-C)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖もしくは分岐状のヒドロキシ(C-C)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択される1つ以上の基で置換されたフェニルである)、
b)式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物:
【化11】
(ここで、
Xは、塩素、臭素、ヨウ素からなる群より選択されるハロゲンであり、
およびRは、同一または異なり、それぞれ独立してメチル、エチル、イソプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、置換または未置換シクロヘキシル、置換または未置換フェニル、置換または未置換ビフェニル、および置換または未置換ナフチルからなる群より選択され、
およびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含有する(C-C)炭素環を形成し;
ArおよびArは、同一または異なり、それぞれ独立して置換または未置換フェニル、置換または未置換ビフェニル、および置換または未置換ナフチルからなる群より選択される);
c)必要に応じて式(III)のオルガノ-ルテニウム化合物:
((RP)RuCl (III)
(ここで、
は、置換または未置換フェニルおよび置換または未置換シクロヘキシルからなる群より選択される)、
d)式(IV)の化合物または式(V)の化合物:
【化12】
(ここで、
nは、0~4の整数であり、
各R10は、独立してメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、およびtert-ブチルからなる群より選択され、
11は、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、(C-C10)アリール、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルコキシ、(C-C10)アリールオキシ、およびハロゲンからなる群より選択される)を含み、
前記置換基は、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、およびフェニルからなる群より選択される、キット。
【請求項16】
ナノ粒子を含む分散液をさらに含有し、前記のナノ粒子は、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム-ジルコニウム、および酸化チタン-ジルコニウムのうちの少なくとも1種を含む請求項15に記載のキット。
【請求項17】
5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、5-(2-([1,1’-ビフェニル]-2-イルオキシ)エチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(NBEtOPhPh)、ビス(2-(2,6-ジエチルフェニル)-3,3-ジメチル-2-アザスピロ[4.5]デカン-1-イル)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(VI)クロライド、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、N,N-ジメチルピリジン-4-アミン;および
5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、5-(2-([1,1’-ビフェニル]-2-イルオキシ)エチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(NBEtOPhPh)、ビス(1-(2,6-ジエチルフェニル)-3,3,5,5-テトラメチルピロリジン-2-イル)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(VI)クロライド、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、N,N-ジメチルピリジン-4-アミンを含有する請求項15に記載のキット。
【請求項18】
5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、5-ノルボルネニルメチル-オイゲノール(EuOHNB)、ビス(2-(2,6-ジエチルフェニル)-3,3-ジメチル-2-アザスピロ[4.5]デカン-1-イル)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(VI)クロライド、N,N-ジメチルピリジン-4-アミン、20nm未満の粒径分布を有するジルコニアナノ粒子を含有する請求項16に記載のキット。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物を含むフィルム。
【請求項20】
請求項13に記載の組成物を含むフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は2019年7月25日に出願された米国仮出願第62/878,383号および2020年4月21日に出願された米国仮出願第63/013,028号の権利を主張し、その全体は両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施態様は、通常、単一成分の塊状重合性ポリシクロオレフィン単量体組成物に関し、必要に応じてそれに分散させた無機ナノ粒子と共に用いられる組成物であり、高い光透過性と好適な屈折率を有する組成物に関する。上記組成物の屈折率は、光学デバイスの中でも特に光学センサ、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)の層が有する屈折率と一致する。より具体的に、本発明は室温で安定的な単一成分の組成物であって、ノルボルネン(NB)系オレフィン単量体を含み、無機ナノ粒子が必要に応じて分散されており、高温条件下で塊状重合を引き起こして、カプセル化剤、コーティング、充填材を含む光電子分野の様々な用途、さらにナノインプリントリソグラフィ(NIL)材料分野の様々な用途で用いられる透明な光学層を形成する組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)は様々な用途、その中でも特に平面TVをはじめとするフレキシブルディスプレイで重要な位置を占める。しかし、既存のOLED、特に下部発光型OLEDは、生成した光子の約半分だけがガラス基板に入射し、そのうち25%が大気中に放出されるという欠点がある。光子の残りの半分は導波してOLEDスタック内部で消滅する。このような光子損失は、主に有機層(n=1.7~1.9)とガラス基板(n=1.5)の屈折率(n)が一致しないことに起因する。基板と有機層との屈折率(n=1.8)を一致させ、カソードまでの発光区域(zone)の距離を伸ばしてプラズモン損失を抑制すると、基板に入射する光子を80~90%に増やすことができる。一例として、G.Gaertner et al., Proc. Of SPIE, Vol. 6999, 69992T pp1-12(2008)を参照されたい。
【0004】
それ以外にも、OLEDはさらに他の課題に直面している。OLEDを有機材料で構成する場合、一般に湿気、酸素、温度、その他の気候条件に非常に敏感になる。したがって、OLEDをこのような過酷な気候条件から保護する必要がある。一例として、米国公開特許第2012/0009393号を参照されたい。
【0005】
当該技術分野が直面している問題をある程度解決するために、米国特許第8,263,235号は、有機発光材料と、芳香環を有さない脂肪族化合物のうちの少なくとも1つから形成され、屈折率は1.4~1.6である発光層を利用する方法を開示している。当該特許に記載の脂肪族化合物は、一般に各種のポリアルキルエーテル類であるが、当該物質が高温で不安定であるということは既知の事実である。一例として、Rodriguez et al., I&EC Product Research and Development, Vol. 1, No. 3, 206-210(1962)を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2018年4月17日に発行された米国特許9,944,818号は、屈折率を所望の範囲に調節することができ、充填材および保護コーティング材として好適であり、各種のOLEDデバイスの製造に使用可能な2成分の塊状重合性組成物を開示している。当該出願が開示する組成物は様々な利点を有しているが、2成分系である欠点はそのままであるだけでなく、有機重合体のみではOLEDに必要な高屈折率を得ることができないという問題点を依然として抱えている。さらに、OLED製造条件はもちろん、室温でも数日間安定性を維持し、相応する高温および/または光分解条件下でも直ちに重合可能な塊状重合性組成物を提供する必要性はそのままである。
【0007】
そのため、OLEDの屈折率を補完しながら、各種の好ましい性質の中でも、特に高透過率および優れた熱的性質を示す充填材に対する需要は依然として存在する。さらに、本明細書に記載の各種の用途の中でも、永久的な保護コーティングを容易に形成し、OLED層に分散される単一成分の組成物として使用可能な有機充填材も優先的な開発対象である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、当該技術分野が直面している問題点を克服することができる有機/無機ナノ粒子複合材料を提供することである。より具体的には、本発明の目的は、OLEDデバイス(またはその他の好ましいデバイス)の製造条件下で塊状重合可能な単一成分の組成物を提供することである。本発明のさらに他の目的は、安定的な単一成分の塊状重合性組成物であって、通常の保管条件あるいはそれ以下の条件で粘度変化を示さず、例えば照射および/または熱処理工程のようなOLEDデバイス(またはその他の好適なデバイス)の最終製造工程条件下でのみ塊状重合を引き起こす組成物を提供することである。
【0009】
本発明のその他の目的および用途の範囲に関しては、下記の詳細説明で後述する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、単一成分の充填材組成物を採用することで、透明光学層としてこれまで得られなかった性質、すなわち1.4~1.8以上の範囲の屈折率、高い無色光透過性、通常、10~20μmの範囲であるが、用途に応じて適正に調節することができる充填材層のフィルム厚さ、OLEDスタック、特にカソード層(OLEDスタックの頂部にある極薄層)との互換性、OLEDスタック状製剤(formulation)重合との互換性(速い重合時間、100℃未満の温度での光分解処理あるいは熱処理可能を含む)、OLEDスタックおよびガラスカバーに対する粘着性などの性質を有する透明光学層を含むOLEDデバイス(その他、選択対象デバイス)の製造が可能であることを見出した。さらに、本発明の組成物は、一般に、低い粘度を求めるOLED層全般での均一な平滑化(leveling)効果を期待することができる。さらに、本発明の組成物は、剛性(rigid)のポリシクロオレフィン構造を含んでいるため、収縮率が非常に低い可能性が高い。また、本発明が開示する成分で高速塊状重合を実施すると、OLEDスタックに損傷を与え得る浮遊小分子(fugitive small molecules)を残さない。一般には、追加的な効果を得るために、その他の小分子添加剤を投入する必要がない。さらに重要な事実は、本発明の組成物は周囲大気条件(ambient atmospheric conditions)で、例えば、数時間から数日間まで最高35℃の温度に露出される条件下で安定性を維持し(すなわち、粘度が変わらない)、80℃以上の高温または光分解条件下でのみ塊状重合を引き起こすということである。当該組成物は、80℃以上の温度で非常に速く硬化し、一般には、1時間以内に硬化する。さらに重要な事実は、本発明の組成物は、数日間、すなわち少なくとも5日から10日の間、初期粘度を維持するという点から、保存寿命の安定性が極めて優れているということである。
【0011】
本発明の組成物は、「ワン ドロップ フィル(one drop fill)」(「ODF」)に対しても互換性を有する。上部発光型OLEDデバイスの製造に広く用いられる通常のODF工程では、特別な光学流体を塗布してデバイスから上部のカバーガラスへの光の透過を強化して、以降、当該流体は、ODF法によって分散される。ODFという名称によって誤認されやすいが、実際には通常、複数の液滴、または複数の材料がシールライン(seal line)内部に分散される。塗布後、当該流体は、上部のガラスの積層によってダイアタッチ型(die-attach)エポキシと似た方式で広がる。当該工程は、空気が内部に閉じ込められることを防止するために、一般に、真空下で実施する。本発明は、速い流れを用いて短時間内に容易かつ均一に基板を被覆する低粘度の物質を提供する。さらに、本発明は、特にODF法において、単一成分の組成物が2成分系を使用するよりもはるかに便利である点から、従来技術が抱えている欠点を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で用いられる用語は、以下の意味を有する。
【0013】
冠詞の「a」、「an」、「the」を使用した場合、明示的に1つの対象に限定されない限り、複数の対象まで含むとみなす。
【0014】
本明細書、および本明細書に添付された特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを示す数字、数値および/または式は、当該数字、数値および/または式を得るために直面する測定の不確定要素を反映しているので、別途の記載がない限り、全部「約(about)」という表現を含む事例であるとみなす。
【0015】
本明細書で数字範囲が開示される場合、上記範囲は連続的であり、当該範囲の最大値と最小値、さらに上記最大値と最小値との間のすべての値を含むとみなす。上記範囲が整数値に関する場合、範囲の最大値と最小値との間のすべての整数を含むことになる。さらに、特徴または特性を説明する目的で、複数の範囲が提示される場合、上記複数の範囲を組み合わせることも可能である。言い換えれば、別途の指示がない限り、本明細書に開示されるすべての範囲は、当該範囲が含むすべての下位範囲を網羅する。例えば「1ないし10」という範囲を提示した場合、当該範囲は最小値1と最大値10との間のすべての下位範囲を含むとみなすべきである。1と10との間の下位範囲の例としては、1~6.1、3.5~7.8、5.5~10などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0016】
本明細書において「ヒドロカルビル」は、炭素および水素原子を含有している基を示し、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリル、アルケニルなどを挙げることができる。「ハロヒドロカルビル」は、少なくとも1つの水素をハロゲンに置き換えたヒドロカルビル基である。「パーハロカルビル」とは、すべての水素をハロゲンに置き換えたヒドロカルビル基である。
【0017】
本明細書において「アルキル」は、定められた数の炭素原子を有する飽和、直鎖、または分岐鎖の炭化水素置換基を意味する。特に、アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチルなどである。「アルコキシ」、「チオアルキル」、「アルコキシアルキル」、「ヒドロキシアルキル」、「アルキルカルボニル」、「アルコキシカルボニルアルキル」、「アルコキシカルボニル」、「ジフェニルアルキル」、「フェニルアルキル」、「フェニルカルボキシアルキル」、および「フェノキシアルキル」などの派生表現も同様に解釈することができる。
【0018】
本明細書において「シクロアルキル」は、既知の環状基をすべて含む。「シクロアルキル」の代表的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどを挙げることができるが、これに限定されない。「シクロアルコキシ」、「シクロアルキルアルキル」、「シクロアルキルアリール」、「シクロアルキルカルボニル」などの派生表現も同様に解釈されるべきである。
【0019】
本明細書において「パーハロアルキル」は、上記で定義したアルキルであり、当該アルキル基内の水素原子がすべてフッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択されるハロゲン原子に置換されていることを表す。例示としては、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、トリヨードメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタブロモエチル、ペンタヨードエチル、および直鎖もしくは分岐状のヘプタフルオロプロピル、ヘプタクロロプロピル、ヘプタブロモプロピル、ノナフルオロブチル、ノナクロロブチル、ウンデカフルオロペンチル、ウンデカクロロペンチル、トリデカフルオロヘキシル、トリデカクロロヘキシルなどを挙げることができる。「パーハロアルコキシ」のような派生表現も同様に解釈されるべきである。また、本明細書に記載の一部のアルキル基、例えば、「(C-C)アルキル」は、部分的にフッ素化することができる。すなわち、当該アルキル基内の水素原子の一部のみをフッ素原子に置き換えてもよいという意味であり、派生表現も同様に解釈される。
【0020】
本明細書において「アシル」は、「アルカノイル」と同じ意味であり、構造式「R-CO-」で示すことができる。ここで、Rは、本明細書で定義したように、定められた数の炭素原子を有する「アルキル」を意味する。さらに、「アルキルカルボニル」は、本明細書で定義する「アシル」と同じ意味である。具体的に、「(C-C)アシル」は、ホルミル、アセチル、エタノイル、プロパノイル、n-ブタノイルなどを意味することができる。「アシルオキシ」および「アシルオキシアルキル」などの派生表現も同様に解釈されるべきである。
【0021】
本明細書において「アリール」は、置換または未置換フェニルまたはナフチルを示す。置換フェニルまたは置換ナフチルの具体的な例としては、o-、p-、m-トリル、1,2-、1,3-、1,4-キシリル、1-メチルナフチル、2-メチルナフチルなどを挙げることができる。さらに、「置換フェニル」または「置換ナフチル」は、本明細書で定義されるような、可能な置換基のいずれか、または当該技術分野で知られているものなどを含むとみなす。
【0022】
本明細書において「アリールアルキル」は、本明細書が定義するアリールが、本明細書で定義されるアルキルに結合されていることを示す。代表的な例としては、ベンジル、フェニルエチル、2-フェニルプロピル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチルなどを挙げることができる。
【0023】
本明細書において「アルケニル」は、定められた数の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む非環式の直鎖もしくは分岐状の炭化水素鎖を意味し、エテニル、および直鎖もしくは分岐状のプロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどを含む。「アリールアルケニル」および5員または6員の「ヘテロアリールアルケニル」などの派生表現も同様に解釈されるべきである。代表的な例としては、フラン-2-エテニル、フェニルエテニル、4-メトキシフェニルエテニルなどを挙げることができる。
【0024】
本明細書において「ヘテロアリール」は、知られているすべての芳香族ラジカル含有ヘテロ原子を示す。代表的な5員のヘテロアリールラジカルにはフラニル、チエニル、チオフェニル、ピロリル、イソピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリルなどが含まれる。代表的な6員のヘテロアリールラジカルとしては、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルなどのラジカルを挙げることができる。二環式ヘテロアリールラジカルの代表的な例には、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ピリドフラニル、ピリドチエニルなどのラジカルが含まれる。
【0025】
「ハロゲン」または「ハロ」は、クロロ、フルオロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
【0026】
広義で、「置換」は、有機化合物の許容可能な置換基をすべて含むと解釈することができる。本明細書に開示された一部の特定の実施態様において、「置換」は、独立して、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)パーフルオロアルキル、フェニル、ヒドロキシ、-COH、エステル、アミド、(C-C)アルコキシ、(C-C)チオアルキル、および(C-C)パーフルオロアルコキシからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されることを意味する。しかし、当該実施態様では、当業者に知られている適切なその他の置換基を使用することもできる。
【0027】
本文、図解、実施例、および表において原子が原子価(valence)を満たすことができない場合、当該原子価を満たす適切な数字の水素原子を有するとみなすこととする。
【0028】
本明細書において「潜在オルガノ遷移金属触媒」は、特定の温度(一般に、周囲大気条件下の温度)で触媒活性をほとんど、あるいは全く示さないが、熱、光または両方ともを加えたときに触媒反応が活性化されるオルガノ遷移金属化合物を意味する。一般に、触媒の触媒活性は、長期間の潜在状態を維持することができ、当該基間は、特に室温以下で暗所に保管した場合、5日以上になることもある。それより高い温度および/または光は、触媒活性を加速化することができる。
【0029】
本明細書において「由来(derived)」は、重合体繰り返し単位を、例えば、式(I)または(IV)による多環ノルボルネン型単量体から重合(形成)することを意味する。この場合、結果的に、得られた重合体は、開環メタセシス重合(ROMP)されたものであり、例えば、下記のようにノルボルネン型単量体の2、3二重結合が開環重合されて形成される。
【0030】
【化1】
【0031】
したがって、本発明においては、単一成分の組成物であって、
a)式(I)の1つ以上の単量体:
【化2】
(ここで、
mは、0、1または2の整数であり、
、R、R、Rは、同一または異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C16)アルキル、パーフルオロ(C-C12)アルキル、ヒドロキシ(C-C16)アルキル、(C-C12)シクロアルキル、(C-C12)ビシクロアルキル、(C-C14)トリシクロアルキル、(C-C10)アリール、(C-C10)アリール(C-C)アルキル、パーフルオロ(C-C10)アリール、パーフルオロ(C-C10)アリール(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルコキシシリル、および下記の式(A)の基からなる群より選択され、
-Z-Aryl (A)
ここで、
Zは、結合または(CR、O(CR、(CRO、(CR-O-(CR、(CR-O-(SiR、(CR-(CO)O-(CR、(CR-O(CO)-(CR、(CR-(CO)-(CRからなる群より選択される基であり、aおよびbは、同一または異なり、それぞれ独立して1~12の間の数であってもよい整数であり、
およびRは、同一または異なり、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキルオキシ、アセトキシ、(C-C)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖もしくは分岐状のヒドロキシ(C-C)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択され、
Arylは、フェニル、またはメチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキルオキシ、アセトキシ、(C-C)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖もしくは分岐状のヒドロキシ(C-C)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択される1つ以上の基で置換されたフェニルである)、
b)式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物:
【化3】
(ここで、
Xは、塩素、臭素、ヨウ素からなる群より選択されるハロゲンであり、
およびRは、同一または異なり、それぞれ独立してメチル、エチル、イソプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、置換または未置換シクロヘキシル、置換または未置換フェニル、置換または未置換ビフェニル、および置換または未置換ナフチルからなる群より選択され、
およびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含有する(C-C)炭素環を形成し;
ArおよびArは、同一または異なり、それぞれ独立して置換または未置換フェニル、置換または未置換ビフェニル、および置換または未置換ナフチルからなる群より選択される);
c)式(III)のオルガノ-ルテニウム化合物:
((RP)RuCl (III)
(ここで、
は、置換または未置換フェニルおよび置換または未置換シクロヘキシルからなる群より選択される)、
d)式(IV)の化合物または式(V)の化合物:
【化4】
(ここで、
nは、0~4の整数であり、
各R10は、独立してメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、およびtert-ブチルからなる群より選択され、
11は、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、(C-C10)アリール、メトキシ、エトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルコキシ、(C-C10)アリールオキシ、およびハロゲンからなる群より選択される)を含み、
上記置換基は、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、およびフェニルからなる群より選択され、
式(I)の上記単量体は、屈折率が少なくとも1.5であり、上記組成物は、室温で透明な液体である、組成物を提供する。
【0032】
本明細書において、上記アリールは、
【化5】
をさらに含んでもよく、ここで、各場合のRは、独立してメチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C12)アルキルまたは(C-C10)アリールから選択される。
【0033】
上述のように、式(I)の単量体は、屈折率が少なくとも1.5である。当該組成物は、室温で透明な液体である。上述のように、本発明の組成物は、室温以下で安定性を維持し、保存寿命が非常に長いという利点を有する。本明細書において「安定性」とは、本発明の組成物を室温以下の温度で、特に暗所、例えば、光が当たらない琥珀色の容器に入れて直射日光を避けて保管すると、粘度が増加することなく、透明な状態を維持することを意味する。したがって、一実施態様において、本発明の組成物は、35℃未満の温度で少なくとも4日以上保存した場合、粘度変化が起きない。一実施態様において、本発明の組成物は、35℃未満の温度で少なくとも4日以上保存した場合、粘度の増加率が2%未満にとどまる。一実施態様において、本発明の組成物は、35℃未満の温度で4~10日の間保存した場合、粘度の変化率が10%未満にとどまる。
【0034】
本発明の組成物に使用される単量体は、参考文献に記載の周知の単量体であってもよく、当該または類似単量体の製造に用いられる本技術分野における周知の方法で調製することができる。
【0035】
さらに、本明細書に記載の単量体は、容易に塊状重合を引き起こすことができる。言い換えれば、溶媒を一切使用していない純粋な(neat)形態であるとき、特定の遷移金属触媒、例えば、オルガノ-ルテニウムおよびオルガノ-オスミウム化合物を使用して、塊開環メタセシス重合(ROMP)条件下で重合を実施すると、塊状重合を引き起こす。一例として、R. H. Grubbs et al., Handbook of Metathesis, Ed.:Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2003, R. H. Grubbs et al., Acc. Chem. Res. 2001, 34, 18-29, R. H. Grubbs et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 3760-3765を参照されたい。本明細書に関連部分が組み込まれている米国特許第6,838,489号を参照することができる。本明細書において「塊状重合」とは、当該技術分野において一般に通用される概念を意味する。言い換えれば、実質的に溶媒なしに進行される重合反応を示す。しかし、場合によっては、反応媒体内に溶媒が少量存在することもある。例えば、少量の溶媒を潜在触媒および/または活性化剤を溶解するために、あるいは、反応媒体に潜在触媒および/または活性化剤を運ぶために使用することができる。一部の溶媒は、単量体の粘度を下げるために使用されてもよい。反応媒体内に存在する溶媒の量は、単量体の総重量に対して0~5重量%の範囲であってもよい。触媒、活性化剤および/または単量体を溶解することができるならば、溶媒の種類は限定されない。当該溶媒の例としては、アルカン、シクロアルカン、トルエン、THF、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどを挙げることができる。
【0036】
発明者らは、1種以上の単量体自体を、潜在触媒および活性化剤の溶解に使用して溶媒を使用する手間を省くことができることを見出した。さらに、一方の単量体が他方の単量体の溶媒として機能することで、追加的な溶媒を使用する必要性を排除することも可能である。例えば、式(I)の第1の単量体が室温で固体である場合、室温で液体である式(I)の第2の単量体を、固体である式(I)の第1の単量体の溶媒として使用することができ、その逆も同じである。したがって、上記のような状況では、複数の単量体を本発明の組成物に使用することができる。
【0037】
発明者らは、式(I)の単量体が、組成物を所望の基板上に塗布するときとは異なる温度および/または条件で塊状重合を実施して得られた重合体フィルムに高い屈折率を付与する高屈折率材料として機能することを見出した。一般に、本発明に好適な式(I)の単量体は少なくとも1.5の屈折率を有する。一実施態様において、式(I)の単量体の屈折率は1.5よりも高い。さらに他の実施態様において、式(I)の単量体の屈折率は、約1.5~1.6の範囲である。さらに他の実施態様において、式(I)の単量体の屈折率は、1.55よりも高く、1.6よりも高く、1.65よりも高い。さらに他の実施態様においては、1.7よりも高くてもよい。
【0038】
一般に本発明の組成物は、粘度が低く、100センチポアズ未満かつそれ以上であってもよい。一実施態様において、本発明の組成物は90センチポアズ未満の粘度を有する。さらに他の実施態様において、本発明の組成物は、約10~100センチポアズの範囲の粘度を有する。さらに他の実施態様において、本発明の組成物は、80cP未満、60cP未満、40cP未満、20cP未満の粘度を有する。さらに他の実施態様においては、10cP未満であってもよい。
【0039】
本発明の組成物が2種以上の単量体を含有する場合、例えば、屈折率変更、粘度変更または両方の所望の効果が得られる好ましい量で単量体を含有することができる。したがって、式(I)の第1の単量体と式(II)の第2の単量体とのモル比は、1:99~99:1の範囲になる。一実施態様において、式(I)の第1の単量体と式(II)の第2の単量体とのモル比は、5:95~95:5の範囲であり、さらに他の実施態様においては、10:90~90:10、20:80~80:20、30:70~70:30、60:40~40:60、50:50などである。同様に、式(I)が示す異なる2種以上の単量体を使用する場合にも、所望の結果を得ることができるのであれば、単量体のモル比は制限されない。
【0040】
一般に、本発明による組成物は、上記の式(I)の単量体を1種以上含有し、後述のように、互いに異なる式(I)の単量体が追加的に必要な場合、様々な実施態様の組成物を選択して所望の用途に好適かつ適切な性質を当該実施態様に付与することで、各種の特定用途に合わせて当該実施態様を調整することができる。
【0041】
例えば、上述のように、異なる式(I)の単量体を適切に組み合わせることで、所望の屈折率、粘度、光透過性を有するように組成物を調整することができる。さらに、後述のように、その他の重合体物質または単量体物質、例えば、最終用途によって異なる好ましい光学的性質を提供する無機ナノ粒子を含有することが好ましい。したがって、本発明の組成物は、所望の利点を創出することができるその他の高屈折性重合体物質および/またはナノ粒子をさらに含んでもよい。当該重合体の例としては、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(ビニル-トルエン)、α-メチルスチレンとビニル-トルエンとの共重合体などを挙げることができるが、これに限定されない。ナノ粒子の例は後述する。
【0042】
本発明の組成物は、単量体をさらに含有することができることが見出された。一実施態様において、本発明の組成物は、式(VI)の単量体から選択される1種以上の単量体をさらに含有することができる。
【0043】
式(VI)の単量体は、
【化6】
ここで、
oは、0~2の整数であり、
Dは、SiR212223、または、
-(CH-O-SiR212223 (E);
-(CH-SiR212223 (F);
-(SiR2122-O-SiR212223 (G)
から選択される基であり、cは、1~10の整数であり、1つ以上のCHは、必要に応じて、(C-C10)アルキル、(C-C10)パーフルオロアルキルまたは(C-C14)アリールで置換され、
18、R19、R20は、同一または異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロカルビルから選択され、ヒドロカルビルは、メチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C12)アルキル、(C-C12)シクロアルキル、(C-C12)ビシクロアルキル、(C-C14)トリシクロアルキル、(C-C10)アリール、(C-C10)アリール(C-C)アルキル、(C-C12)アルコキシ、(C-C12)シクロアルコキシ、(C-C12)ビシクロアルコキシ、(C-C14)トリシクロアルコキシ、(C-C10)アリールオキシ(C-C)アルキルまたは(C-C10)アリールオキシから選択され、
21、R22、R23は、それぞれ独立してメチル、エチル、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルキル、置換または未置換(C-C14)アリール、メトキシエトキシ、直鎖もしくは分岐状の(C-C)アルコキシまたは置換または未置換(C-C14)アリールオキシである。
【0044】
本発明の上記態様において、発明者らは、式(VI)の単量体がさらなる利点を組成物に付与することを見出した。言い換えれば、式(VI)の単量体は、当該単量体の性質に応じて、組成物の屈折率を高めたり、下げたりして、用途に応じて屈折率を調整することができる。さらに、式(VI)の単量体は、一般に粘着性を向上させ、「粘着改質剤」として使用することもできる。最後に、式(VI)の単量体は、他の様々な利点の中でも、特に潜在触媒および/または活性化剤に対して低粘度および優れた溶解性を示し得る。
【0045】
したがって、式(I)の単量体の範囲にある単量体であれば制限なく本発明の組成物に使用することができる。式(I)の単量体の代表的な例は次のとおりであるが、これに限定されない。
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【化7-5】
【0046】
本発明のさらに他の実施態様において、当該組成物は、本明細書に記載のように、ROMP条件下で塊状重合を引き起こす潜在触媒を、種類を問わず含有する。一般に好適な潜在触媒の例としては、周知の多数のオルガノ遷移金属錯体を挙げることができるが、その中でもオルガノ-ルテニウムまたはオルガノ-オスミウム化合物が挙げられる。本明細書において「潜在」とは、本発明の組成物を周囲大気温度以下の条件、例えば、35℃未満で保管したとき、本発明の組成物に用いられたオルガノ-ルテニウム触媒が長期にわたって非活性状態を維持することを示す。したがって、一実施態様において、オルガノ-ルテニウム触媒は、35℃未満の温度で少なくとも4日以上保存した場合、潜在状態を維持する。一実施態様において、オルガノ-ルテニウム触媒は、35℃未満の温度で4~10日の間保存した場合、潜在状態を維持する。
【0047】
一般に、式(I)の単量体の開環メタセシス重合を引き起こす式(II)のオルガノ-ルテニウム潜在触媒であれば、種類を問わず本発明の組成物に使用することができる。より具体的に、周囲温度でほとんど活性化されないオルガノ-ルテニウム化合物を使用することができる。言い換えれば、室温または室温に近い温度で安定的な潜在触媒が本発明の組成物により好適であるとも言える。上述のように、潜在触媒は、各種の条件下で活性化することができ、これには熱活性化、酸活性化、光活性化、化学的活性化が含まれるが、これに限定されない。化学的活性化は、熱酸発生剤または光酸発生剤の使用を含んでもよい。
【0048】
本発明の組成物に好適な潜在触媒は、参考文献に記載の周知の触媒であってもよく、本技術分野における周知の方法のいずれかで容易に調製することができる。一例として、Grubbs, et al., Organometallics, 2011, 30 (24):6713-6717;Sutar et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 764-767;Leitgeh, et al., Monatsh Chem(2014) 145:1513-1517;van Hensbergen, et al., J. Mater. Chem. C. 2015, 3, 693-702;Grubbs, et al., J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 203802039;Zak, et al., Eur. J. Inorg. Chem., 2014, 1131-1136;Gawin, et al., ACS Catal. 2017, 7, 5443-5449を参照されたい。その他の例は、本明細書に関連部分が組み込まれている米国特許第9,328,132号を参照することができる。
【0049】
したがって、一実施態様において、本発明の組成物は式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物を含有し、ここで、
Xは、塩素であり、
およびRは、同一または異なり、それぞれ独立してメチル、エチル、イソプロピル、およびシクロヘキシルからなる群より選択され、
およびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、シクロペンチル環、シクロヘキシル環またはシクロヘプチル環を形成し、
ArおよびArは、同一または異なり、それぞれ独立してフェニル、2,6-ジメチルフェニル、2,6-ジエチルフェニル、2,6-ジ(イソプロピル)フェニル、および2,4,6-トリメチルフェニルからなる群より選択される。
【0050】
式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物の範囲にある潜在触媒の一部の例示は、
【化8-1】
【化8-2】
からなる群より選択することができるが、これに限定されない。
【0051】
一実施態様において、本発明の組成物は、式(III)の化合物を含有し、ここで、Rは、フェニル、4-メチルフェニル、4-エチルフェニル、4-イソプロピルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、シクロヘキシル、および4-メチルシクロヘキシルからなる群より選択される。
【0052】
上記のような式(III)のオルガノ-ルテニウム化合物は、
【化9】
からなる群より選択することができるが、これに限定されない。
【0053】
上述のように、本発明の組成物は、式(IV)の化合物または式(V)の化合物も含有する。式(IV)または(V)の化合物の範囲にある化合物であれば、何ら制限なく本発明の組成物に使用することができる。一実施態様において、本発明の組成物は、式(IV)の化合物または式(V)の化合物を含有し、
nは、0~2の整数であり、
各R10は、独立してメチル、エチル、イソプロピル、およびtert-ブチルからなる群より選択され、
11は、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、フルオリン、および塩素からなる群より選択される。
式(IV)の化合物または式(V)の化合物の例としては、
N,N-ジメチルピリジン-4-アミン;
N,N-ジエチルピリジン-4-アミン;
N,N-ジイソプロピルピリジン-4-アミン;
N,N-ジ-tert-ブチルピリジン-4-アミン;
N,N-ジメチル-2-メチルピリジン-4-アミン;
N,N-ジ-tert-ブチル-2-メチルピリジン-4-アミン;
2-メトキシ-N,N-ジメチルピリジン-4-アミン;
2-フルオロ-N,N-ジメチルピリジン-4-アミン;
N,N-ジメチルキノリン-4-アミン;
N,N,2-トリメチルキノリン-4-アミン;
2-メトキシ-N,N-ジメチルキノリン-4-アミン;および
2-クロロ-N,N-ジメチルキノリン-4-アミンからなる群より選択される化合物を挙げることができるが、これに限定されない。
【0054】
本発明のさらに他の態様において、本明細書に記載の組成物として、ナノ粒子の分散液を含む組成物を提供することができる。本発明の当該態様において、発明者らは、上述の式(III)の化合物を全く添加する必要がないことを見出した。言い換えれば、当該態様において、本発明の組成物は、1種以上の式(I)の単量体、上述の式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物、式(IV)の化合物または式(V)の化合物、およびナノ粒子の分散液のみを含む。当該組成物に、例えば、約80℃~約100℃以上の高温を加えると、塊開環メタセシス重合(ROMP)を引き起こして透明なフィルムを形成する。
【0055】
参考文献に記載の、上述のような変化を引き起こすことができるナノ粒子であれば、種類を問わず本発明の当該態様で用いることができる。一例として、本明細書にも関連部分が組み込まれている米国特許第8,592,511号は、本発明の当該態様に好適な特定のナノ粒子を開示している。上記のナノ粒子は、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム-ジルコニウム、および酸化チタン-ジルコニウムのうちの少なくとも1種を含むが、これに限定されない。
【0056】
本発明の一実施態様において、発明者らは、各種の酸化ジルコニウムナノ粒子が、本明細書に開示されているように、透明フィルムを容易に形成することができる本発明の組成物に好適であることを見出した。
【0057】
また、式(II)の化合物、式(IV)の化合物または式(V)の化合物、およびナノ粒子の分散液を適切に組み合わせる場合、当該組成物に昇温または適切な照射を加えたとき、単量体の塊状重合を引き起こすことができるという事実も見出した。
【0058】
本発明の組成物において所望の結果を得ることができたら、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物の含有量に何ら制限はない。一般に、単量体と式(II)の化合物とのモル比は、10,000:1~5,000:1の範囲、またはそれ以下である。一実施態様において、単量体と式(II)の化合物とのモル比は、15,000:1、20,000:1、またはそれ以上である。
【0059】
同様に、本発明の組成物において所望の結果を得ることができたら、式(III)の化合物の含有量に何ら制限はない。一般に、式(II)の化合物と式(III)の化合物とのモル比は、1:5以上である。一実施態様において、式(II)の化合物と式(III)の化合物とのモル比は、1:2、1:2.5、1:3などである。
【0060】
本発明の組成物において所望の結果を得ることができたら、式(IV)の化合物または式(V)の化合物の含有量に何ら制限はない。一般に、式(II)の化合物と式(IV)または(V)の化合物とのモル比は、1:50以上である。一実施態様において、式(II)の化合物と式(IV)または(V)の化合物とのモル比は、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:40などである。
【0061】
上述のように、ナノ粒子を使用する場合、式(III)の化合物を使用する必要がない場合がある。しかし、一実施態様において、式(III)の化合物は、上述のように、ナノ粒子の分散液を含有する組成物で必要に応じて添加剤として使用することもできる。
【0062】
発明者らは、一般に80℃~100℃またはそれ以上、例えば、150℃または200℃、あるいは、その他の温度で塊状重合を実施すると、本発明による組成物が実質的に透明なフィルムを形成することを見出した。言い換えれば、本発明の組成物を特定の温度まで加熱すると、単量体は塊状重合を引き起こして可視光線に対して実質的に透明なフィルムを形成する。すなわち、ほとんどの可視光線が当該フィルムを透過する。一実施態様において、本発明の組成物から形成されたフィルムは、可視光線の90パーセント以上の透過率を示した。さらに他の実施態様において、本発明の組成物から形成されたフィルムは、可視光線の95パーセント以上の透過率を示した。塊状重合を実施するのに好適な温度であれば、特に制限なく本発明に使用することができ、当該温度は、例えば、上記80℃~100℃に設定することができる。80℃未満または100℃超の温度であってもよい。一実施態様において、温度は50℃、60℃、70℃、80℃、90℃であり、あるいは120℃を超える温度である。
【0063】
一実施態様において、本発明の組成物は、好適なUV照射で露光すると、塊状重合を引き起こして実質的に透明なフィルムを形成する。さらに他の実施態様において、本発明の組成物は、50℃~100℃の温度で好適なUV照射で露光すると、塊状重合を引き起こして実質的に透明なフィルムを形成する。
【0064】
本発明のさらに他の実施態様において、本発明の組成物は、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、5-(2-([1,1’-ビフェニル]-2-イルオキシ)エチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(NBEtOPhPh)、ビス(2-(2,6-ジエチルフェニル)-3,3-ジメチル-2-アザスピロ[4.5]デカン-1-イル)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(VI)クロライド、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、N,N-ジメチルピリジン-4-アミンを含有する。
【0065】
本発明のさらに他の実施態様において、本発明の組成物は、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、5-(2-([1,1’-ビフェニル]-2-イルオキシ)エチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(NBEtOPhPh)、ビス(1-(2,6-ジエチルフェニル)-3,3,5,5-テトラメチルピロリジン-2-イル)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(VI)クロライド、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、N,N-ジメチルピリジン-4-アミンを含有する。
【0066】
本発明のさらに他の実施態様において、本発明の組成物は、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、5-ノルボルネニルメチル-オイゲノール(EuOHNB)、ビス(2-(2,6-ジエチルフェニル)-3,3-ジメチル-2-アザスピロ[4.5]デカン-1-イル)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(VI)クロライド、N,N-ジメチルピリジン-4-アミン、20nm未満の粒径分布を有するジルコニアナノ粒子を含有する。
【0067】
本発明のさらに他の態様において、本発明は実質的に透明なフィルムを形成するキットを提供する。本発明の組成物は、当該キット内に分散される。したがって、一実施態様において、式(I)の単量体の1種以上、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物、式(III)の化合物、および式(IV)または(V)の化合物を分散させたキットを提供する。ただし、式(III)の化合物は、必要に応じて任意に追加し、または省略することができる。
【0068】
したがって、本発明の実施態様において、本発明によるキットは、式(I)の単量体の1種以上、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物、および式(IV)または式(V)の化合物を含む。
【0069】
さらに他の実施態様において、本発明によるキットは、式(I)の単量体の1種以上、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物、式(IV)または式(V)の化合物、および上述のナノ粒子の分散液を含む。
【0070】
一実施態様において、上記のキットは、本明細書に記載の互いに異なる式(I)の単量体を2種以上含む。さらに他の実施態様において、本発明のキットは、少なくとも2種の単量体を含み、第1の単量体は、第2の単量体および/または本明細書に記載の潜在触媒と添加剤との溶解を促進する。本明細書に記載の式(I)の単量体であれば、種類を問わず本実施態様で用いることができる。これらの成分に含有された式(I)の第1の単量体と第2の単量体とのモル比は、固定されておらず、1:99~99:1、10:90~90:10、20:80~80:20、30:70~70:30、60:40~40:60、50:50、あるいはその他の範囲であってもよい。さらに他の実施態様において、キットは、互いに異なる式(I)の単量体の2週以上が分散されている組成物を含む。さらに、上述のように、式(I)の第1の単量体は、式(I)の第2の単量体に完全に溶解され、室温で透明な溶液を形成する。一実施態様において、単量体混合物は、塊状重合を引き起こす前に、例えば30℃、40℃または50℃のようにわずかに昇温した温度で、透明な溶液になる。本発明のさらに他の実施態様において、本発明の組成物は、十分な時間をかけて50℃~100℃の温度に加熱すると、塊状重合を引き起こして重合体フィルムを形成する。言い換えれば、本発明の組成物をカプセル化すべき基板上または表面上に注ぎ、50℃~100℃の温度に加熱して単量体を重合させると、透明フィルムの形態である固形の透明重合体を形成する。上述のように、重合は一般に50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、あるいはそれ以上の温度で実施することができる。さらに、重合を開始するために加熱を段階的に実施することも可能である。例えば、60℃で5分間加熱した後、70℃で15分間加熱して重合を開始することである。本発明を実施することで、上記基板上に実質的に透明なフィルムである重合体フィルムを形成することができる。本明細書において「実質的に透明なフィルム」とは、本発明の組成物から形成されたもので、可視光線で光学的に透明なフィルムを示す。したがって、本発明の一実施態様において当該フィルムは、少なくとも90パーセントの可視光線透過率を有し、さらに他の実施態様において、本発明の組成物から形成されたフィルムは少なくとも95パーセントの可視光線透過率を有する。
【0071】
一実施態様において、上記のキットは、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、5-(2-([1,1’-ビフェニル]-2-イルオキシ)エチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(NBEtOPhPh)、ビス(2-(2,6-ジエチルフェニル)-3,3-ジメチル-2-アザスピロ[4.5]デカン-1-イル)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(VI)クロライド、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、N,N-ジメチルピリジン-4-アミンを含有する本発明の組成物を含む。
【0072】
さらに他の実施態様において、上記キットは、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、5-(2-([1,1’-ビフェニル]-2-イルオキシ)エチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(NBEtOPhPh)、ビス(1-(2,6-ジエチルフェニル)-3,3,5,5-テトラメチルピロリジン-2-イル)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(VI)クロライド、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、N,N-ジメチルピリジン-4-アミンを含有する本発明の組成物を含む。
【0073】
さらに他の実施態様において、上記キットは、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、5-ノルボルネニルメチル-オイゲノール(EuOHNB)、ビス(2-(2,6-ジエチルフェニル)-3,3-ジメチル-2-アザスピロ[4.5]デカン-1-イル)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(VI)クロライド、N,N-ジメチルピリジン-4-アミン、20nm未満の粒径分布を有するジルコニアナノ粒子を有する本発明の組成物を含む。
【0074】
本発明のさらに他の態様において、本発明は光電子デバイスの製造に用いられる実質的に透明なフィルムを形成する方法として、式(I)の単量体の1種以上、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物、式(III)の化合物、式(IV)または(V)の化合物、および必要に応じて上述のナノ粒子を含有する分散剤を含む均一かつ透明な組成物を形成し、上記組成物で好適な基板をコーティングしたり、好適な基板に上記組成物を注いでフィルムを形成し、当該フィルムを好適な温度に加熱して上記単量体の重合を開始する、方法を提供する。ただし、ナノ粒子を含有する分散剤を使用する場合、式(III)の化合物を必ずしも使用しなくてもよい。
【0075】
本発明の組成物でフィルムを組成するための所望の基板のコーティングは、本明細書に記載される、および/または当該技術分野における当業者に周知のコート法、例えばスピンコート法で実施することができる。その他の好適なコーティング法には、スプレーコート、ドクターブレード、メニスカスコート、インクジェットコート、スロットコートが含まれるが、これに限定されない。混合物を基板上に注いでフィルムを形成することもできる。好適な基板であれば特に制限はないが、電気デバイス、電子デバイスまたは光電子デバイスに用いられる基板、例えば半導体基板、セラミックス基板、ガラス基板であってもよい。
【0076】
次に、コーティング基板をベークする。言い換えれば、例えば50℃~100℃の温度で約1~60分間基板を加熱することで塊状重合を促進する。例示以外の好適な加熱温度および加熱時間を適用することができる。一実施態様において、当該基板を約60℃~約90℃の温度で2~10分間ベークする。さらに他の実施態様において、当該基板を約60℃~約90℃の温度で5~20分間ベークする。
【0077】
形成されたフィルムの光学的性質を当該技術分野で周知の各種の方法で評価する。例えば、可視スペクトルでのフィルムの屈折率はエリプソメトリーで測定することができる。フィルムの光学的品質は、目視観察で判定する。透過率は、可視分光法によって定量的に測定する。本発明により形成されたフィルムは一般に高い光透過性を示し、本明細書に記載のように望ましい屈折率を有するように調整することができる。
【0078】
したがって、本発明の一実施態様において、本発明は、本明細書に記載の組成物の塊状重合で得られた光学的に透明なフィルムを提供する。さらに他の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の本発明の透明フィルムを含む光電子デバイスを提供する。
【0079】
本発明のさらに他の一実施態様において、本発明の組成物を好適な放射線または熱にイメージ方式で露出させると、熱パターンまたは光パターンを形成することができる。同様に、本発明の組成物は好適な基板に光または熱インプリントを形成する際にも有用である。言い換えれば、本発明の組成物は各種の光誘導または熱誘導ナノインプリントリソグラフィ(NIL)に用いることができる。例えば、露光したパターン化のデジタルビデオディスク(DVD)に本発明の組成物を注ぎ、コーティングされた表面に好適な放射線または熱を加えると、パターン化のDVDを複製することができる。露光後、固形化したフィルムを基板から剥離すると、下記の特定実施例で説明するように、元のディスクの複製物が得られる。
【0080】
したがって、一実施態様において本発明の組成物は、好適な温度、一般に約90℃~約300℃の温度または好適なUV照射に露出されると、塊状重合を引き起こす。
熱処理に要する時間は数分から数時間程度まで多様である。例えば、一実施態様において、熱処理にかかる時間は約30分~2時間である。さらに他の一実施態様において、100℃~250℃の温度で45~90分間熱硬化を実施してインプリントを形成する。フィルム形態(厚さは、約1ミクロン~100ミクロン)、薄いまたは厚い層(厚さは、約0.1ミリメートル~10ミリメートル)、あるいは様々な大きさのその他の3次元形態に固体化された重合体は、その他の単量体または揮発性オリゴマー生成物を実質的に含まない。結果的に、得られた固形物は基板の形態であり、イメージ方式露光とそれから形成されたイメージの現象で光パターンを形成することができる。一実施態様において、固形物はインプリントを形成する基板の形状そのまま熱インプリントされる。
【0081】
下記の実施例は、本発明の特定の化合物/単量体、重合体、組成物の調製および利用方法を詳細に説明するものである。詳細な調製方法は、上述の一般的な調製方法の範囲にあり、さらにその例示に該当する。実施例は、説明のみを目的とし、本発明を限定するものではない。実施例および本明細書において、単量体と触媒の割合はモル比である。
【実施例
【0082】
次の略語は本明細書において本発明の特定の実施態様を説明するために使用された一部の化合物、器具および/または方法を記述するのに用いられる。
【0083】
PENB:5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン;
NBEtOPhPh:5-(2-([1,1’-ビフェニル]-2-イルオキシ)エチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン;
EuOHNB:5-ノルボルネニルメチル-オイゲノール;
Ru-I:ビス(2-(2,6-ジエチルフェニル)-3,3-ジメチル-2-アザスピロ[4.5]デカン-1-イル)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(VI)クロライド;
Ru-II:ビス(1-(2,6-ジエチルフェニル)-3,3,5,5-テトラメチルピロリジン-2-イル)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(VI)クロライド;
錯体A:ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II);
DMAP:N,N-ジメチルピリジン-4-アミン;
TGA:熱中量分析
【0084】
本発明で用いられる各種の単量体は市販のものであるか、2016年9月1日に出願して現在同時係属中の米国特許出願第15/253,980号に記載の方式で容易に調製することができる。
【0085】
下記の実施例は、本発明の組成物が35℃で数日間安定性を維持し、以下に記載の温度に加熱すると、非常に容易に塊状重合を引き起こすことができることを立証する。
【0086】
実施例1
PENB/NBEtOPhPhの塊状重合
ガラス瓶1で、Ru-I(1モル部)、錯体A(2.5モル部)、DMAP(20モル部)をPENBおよびNBEtOPhPhの混合物(10g、PENB:NBEtOPhPh=モル比22:78、17,000モル部)に溶解して透明な溶液を形成された。当該溶液の一部を1時間かけて100℃に加熱した。溶液は固体に変わって完全重合が起きたことを示し、これをTGAで確認した。熱処理後、等温TGA(100℃で1時間)で取得された残存率は、>99.5%であった。未加熱溶液の粘度は、35℃で4日間変化しなかった。35℃で4日間保管した後、等温TGA(100℃で1時間)で取得された残存率は、>99.5%であった。これはRu-IとDMAPおよび錯体Aとの組み合わせが昇温で優れた反応性を維持しながら、保管中のレイテンシー(latency)を提供する。100℃で1時間かけて加熱した後、当該組成物から形成されたフィルムの屈折率は1.61(波長589nm)であった。
【0087】
実施例2
PENB/NBEtOPhPhの塊状重合
Ru-I 0.5モル部、錯体A 1.25モル部、DMAP 10モル部を混合すること以外は、実施例1の過程を実施例2でも同様に繰り返した。溶液の粘度は、35℃で4日間放置したとき、100cPから104cPまで増加した。0日目に等温TGA(100℃で1時間)で取得された残存率は99.25%であった。溶液を4日間35℃で保管した後、等温TGAで取得された残存率は、>99.45%であった。このような結果もまた、本発明の組成物が少なくとも4日間35℃で安定性を維持し、100℃に加熱することで容易に塊状重合を引き起こすことができることを示している。
【0088】
実施例3
PENB/EuOHNB/ZrOナノ粒子の塊状重合
PENBおよびEuOHNBの混合物(5g、モル比50:50、44,000モル部)を酢酸エチル(10g)中のZrOナノ粒子(20nm未満、PCPG-50-ETA Pixelligent)溶液50wt.%に溶解した。60℃(10torr)でロータリーエバポレータを使用して溶媒を除去し、PENB/EuOHNBにZrOナノ粒子を分散させたクリアで透明な溶液が得られた。溶液の屈折率をアッベ屈折計を使用して測定したところ、1.61(波長589nm)であった。Ru-I(1モル部)およびDMAP(40モル部)を室温で1時間かけて超音波処理することによりナノ粒子溶液に溶解した。反応混合物を1時間かけて100℃で加熱した。
熱処理後、等温TGA(100℃で1時間)で取得された残存率は、>99.0%であった。溶液の粘度は、35℃で4日間120cPから140cPにしか変化しなかった。35℃で4日間保管した後、等温TGA(100℃で1時間)で取得された残存率は、>99.5%であった。これはRu-IとDMAPとの組み合わせが昇温で優れた反応性を維持しながら、保管中のレイテンシーを提供する。当該組成物から形成されたフィルムの屈折率は1.64(波長589nm)であった。硬化サンプルの有機残存物は大気中で600℃の温度下に動的TGAで測定したところ、55wt.%であった。
【0089】
実施例4
PENB/EuOHNB/ZrOナノ粒子の塊状重合
酢酸エチル(40g)中のZrOナノ粒子(20nm未満、PCPG-50-ETA Pixelligent)溶液50重量%を用いること以外は、実施例3の過程を実施例4でも同様に繰り返してZrOナノ粒子の比重を80重量%まで引き上げた。当該組成物から形成されたフィルムの屈折率は1.75(波長589nm)であった。
【0090】
実施例5~6
EuOHNB/ZrOナノ粒子の塊状重合
EuOHNB(5g)のみを、実施例5では比重50%のZrOナノ粒子(50重量%溶液の10g)とともに使用し、実施例6では比重65%のZrOナノ粒子(50重量%溶液の15.4g)とともに使用したこと以外は、実施例3の過程を実施例5および6でも同様に繰り返した当該組成物から形成されたフィルムの屈折率は、実施例5の場合1.77、実施例6の場合1.86(波長589nm)であった。
【0091】
実施例7~9
PENB/EuOHNB/ZrOナノ粒子組成物のUV-NIL
デジタルビデオディスク(DVD、Verbatim)のパターン化部分をかみそりの刃で分離し、メタノールで洗浄してチャンネルパターン化表面が表われるようにした。実施例3、5、6で形成された組成物をガラス基板上に注ぎ、溶液と対向するDVDの露出チャネルパターン化表面で覆った。挟持されたガラス基板とDVDとを100℃に加熱し、1時間かけて当該温度を維持した。その間、フィルムは硬化して固まった。硬化フィルムをDVDとガラス基板とから剥離した。剥離されたフィルムを光学顕微鏡で観察した。概ね、フィルム上のパターンは本来のパターン化DVDとほぼ同じであった。
【0092】
比較例1~2
比較例1ではRu-II 1モル部と錯体A 2.5モル部を、比較例2ではRu-II 0.5モル部と錯体A 1.25モル部を使用したこと以外は、実施例1の過程を比較例1~2でも同様に繰り返した。比較例1および2ではDMAPを使用しなかった。35℃で4日間保管した後の粘度変化およびTGA結果を表1にまとめた。
【0093】
【表1】
【0094】
表1のデータから、DMAPがない場合、本発明の化合物は安定性を欠き、35℃のように低い温度でも塊状重合を容易に引き起こすということが分かる。
【0095】
上記の特定の実施形態で本発明を説明したが、本発明がその実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、上記で開示された一般的な領域を包含するものとみなされるべきである。本発明の趣旨及びカテゴリーを逸脱しない範囲内であれば、本発明を変更したり、各種の実施形態を作ったりしてもよい。
【国際調査報告】