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特表2022-541691マルチレベルポーラ符号化変調送信及び受信のための方法及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(54)【発明の名称】マルチレベルポーラ符号化変調送信及び受信のための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/13 20060101AFI20220915BHJP
   H04L 27/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H03M13/13
H04L27/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530009
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2020034383
(87)【国際公開番号】W WO2021079643
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】19306369.0
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
【テーマコード(参考)】
5J065
【Fターム(参考)】
5J065AC02
5J065AD03
5J065AE06
(57)【要約】
本開示は、データストリームを送信デバイス30から受信デバイス40に送信する方法50に関し、データストリームはm個のデータサブストリームを含み、当該方法50は、それぞれのポーラ符号を用いてデータサブストリームを符号化して、m個のポーラ符号化データサブストリームの生成等を行うこと(S51)と、m個のポーラ符号化データサブストリームを、2個の異なるシンボルを定義する、m個のレベルを含むマルチレベル変調のシンボルに変調して、シンボルストリームの生成等を行うこと(S52)と、シンボルストリームを受信デバイス40に送信すること(S53)とを含み、マルチレベル変調の2個のシンボルは、間隔係数Kによって実軸及び複素軸に沿って規則的に間隔を開けて配置されるように複素平面内に分散され、所定のラベリング関数Zは、以下の式のようになっており、
【数1】
この式において、
【数2】
である。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データストリームを送信デバイスから受信デバイスに送信する方法であって、前記データストリームはm個のデータサブストリームを含み、該方法は、
それぞれのポーラ符号を用いて前記データサブストリームを符号化して、m個のポーラ符号化データサブストリームの生成等を行うことと、
それぞれのポーラ符号化データサブストリームからのm個のビットの連続するセットがシンボルストリームを形成する連続するシンボルに変換されるように、シンボルをそれぞれのポーラ符号化データサブストリームからのm個のビットのセットc,...,cに全単射的に関連付ける所定のラベリング関数Zに従って、前記m個のポーラ符号化データサブストリームを、複素平面における2個の異なるシンボルを定義する、m個のレベルを含むマルチレベル変調のシンボルに変調することと、
前記シンボルストリームを前記受信デバイスに送信することと、
を含み、
前記マルチレベル変調の前記2個のシンボルは、間隔係数Kによって前記実軸及び前記複素軸に沿って規則的に間隔を開けて配置されるように前記複素平面内に分散され、
前記所定のラベリング関数Zは、以下の式のようになっており、
【数1】
この式において、
【数2】
である、方法。
【請求項2】
前記使用されるm個のポーラ符号のそれぞれは、バイナリ入力加法性白色ガウス雑音AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記m個のポーラ符号の前記それぞれの符号レートは伝播条件に適合される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記送信デバイスから前記受信デバイスへの前記伝播の間に各データサブストリームが経験する信号対雑音比SNRを求めることと、
各データサブストリームが経験する前記SNRに基づいて、前記使用されるm個のポーラ符号のそれぞれの前記符号レートを選択することと、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記データサブストリーム及び/又は前記データサブストリームのそれぞれは、誤り検出符号を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記マルチレベル変調は16QAM変調であり、前記ラベリング関数は、以下の表によって与えられるか、
【表1】
又は、前記複素平面において前記シンボルのコンスタレーションを90度の倍数角回転することによって、及び/又は前記実軸に対して前記シンボルのコンスタレーションに軸方向反射を適用することによって、及び/又は前記複素軸に対して前記シンボルのコンスタレーションに軸方向反射を適用することによって、及び/又は全ての前記ビット値を反転することによって、上記表を変更したものによって与えられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
プロセッサによって実行されると、請求項1~6のいずれか1項に記載の送信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピュータープログラム製品。
【請求項8】
プロセッサによって実行されると、請求項1~6のいずれか1項に記載の送信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピューター可読記憶媒体。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の送信方法を実行するように構成される処理回路を備える、データストリームを受信デバイスに送信するデバイス。
【請求項10】
受信デバイスによってデータストリームを受信する方法であって、前記データストリームはm個のデータサブストリームを含み、該方法は、
送信デバイスからの前記データストリームを含むシンボルストリームを受信することであって、前記シンボルストリームは、複素平面における2個の異なるシンボルを定義する、m個のレベルを含むマルチレベル変調のシンボルを含むことと、
シンボルをそれぞれのポーラ符号化データサブストリームからのm個のビットのセットc,...,cに全単射的に関連付ける所定のラベリング関数Zの逆関数を適用することによって、m個のポーラ符号化データサブストリームを生成するために前記シンボルストリームの前記シンボルを復調することと、
それぞれのポーラ符号デコーダーを適用することによって、前記m個のポーラ符号化データサブストリームを逐次的に復号化して、m個のデータサブストリームの生成等を行うことと、
を含み、
前記使用されるマルチレベル変調の前記2個のシンボルは、間隔係数Kによって前記実軸及び前記複素軸に沿って規則的に間隔を開けて配置されるように前記複素平面内に分散され、
前記所定のラベリング関数Zは、以下の式のようになっており、
【数3】
この式において、
【数4】
である、方法。
【請求項11】
前記使用されるm個のポーラ符号デコーダーのそれぞれは、バイナリ入力加法性白色ガウス雑音AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号を復号化するように設計される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
使用される各ポーラ符号デコーダーはリストデコーダーである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
プロセッサによって実行されると、請求項10~12のいずれか1項に記載の受信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピュータープログラム製品。
【請求項14】
プロセッサによって実行されると、請求項10~12のいずれか1項に記載の受信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピューター可読記憶媒体。
【請求項15】
請求項10~12のいずれか1項に記載の受信方法を実行するように構成される処理回路を備える、データストリームを送信デバイスから受信するデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デジタル電気通信システムに関し、より具体的には、マルチレベル(multilevel:多値)ポーラ符号化(polar coded:極符号化)変調方式に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの現代の電気通信システムは、いわゆる符号化変調をもたらす直交振幅変調、すなわち変調(又は少なくとも離散コンスタレーション)及び誤り訂正符号の組み合わせに依拠している。今日、最も一般的なアーキテクチャは、誤り訂正符号の出力とシンボル変調器の入力との間にビットインターリーバーを伴うビットインターリーブ符号化変調(BICM:bit-interleaved coded modulation)と呼ばれるものである。最良の符号化変調方式の探求(60年頃前から)の中で、トレリス符号化変調及びマルチレベル符号化変調等のいくつかの他のアーキテクチャが発明されたが、BICMの主な利点が最終的にはこれらの変調よりも性能が優れており、突破口となる容量を達成する符号(ターボ符号、低密度パリティ検査符号LDPCが必然的に歓迎される。TCM構造は、誤り訂正符号及びシンボル変調器の同時設計を伴い、その複雑度は、ターボ符号又はLDPCのランダム構造の場合に爆発的に増大する。MLCについては、これは、独立した符号間で逐次除去構造を本来的に伴い、この構造は、反復的復号化手法を使用するとき、符号化ビット全体にわたる誤り訂正符号に対して準最適である。
【0003】
シャノンの情報理論は、実際にはデコーダーを実施することができないランダム符号が、チャネル容量を漸近的に達成することを教示している。したがって、主なストラテジーは、実用的なデコーダーの実施を可能にする強い代数構造を有する既製の誤り訂正符号を使用し、可能な限りランダムな構造(例えばランダムインターリービングを有する構造)を導入することによってそれらを組み合わせることであった。デコーダーの複雑度は、確率伝播反復復号化を使用することによって低く保つことができる。1つの重要な難題は、特にBICMチャネル容量であっても近似値でしか知ることができない符号化変調の状況において、そのような誤り訂正符号の性能を予測することである。この難題は、今日、特に小さなデータパケットについて極めて良好な性能に対する主な障害である。備考として、誤り訂正符号は、ほとんどの場合、バイナリ入力加法性白色ガウス雑音AWGNチャネルの場合向けに最適化される。そのような高性能最適化は、その場合に、標準的なバイナリ入力AWGNチャネルでないBICMの状況において使用され、これによって、BICMの状況に準最適性がもたらされる。
【0004】
近年(2009年から)、代数構造にも反復確率伝播にも依拠せず、ランダム構造を有しないが、それでもチャネル容量を実証可能な方法で漸近的に達成する新たなクラスの容量達成誤り訂正符号が発明された。Arikan(非特許文献1)によって発明されたポーラ符号は、情報理論からの構成に依拠している。分割統治手法(例えば高速フーリエ変換と同様)において、並列偏波チャネルを組み合わせ、逐次除去復号化を使用することによって、等価並列偏波チャネルが初期チャネル容量に等しい割合で漸近的(無限長)に完全又はヌル(偏波効果)になることを証明することができる。符号化及び復号化の複雑度は、この誤り訂正符号の分割統治構造のおかげで演算の数において制限される。主な課題は、(送信デバイス及び受信デバイスに既知の)凍結ビットを搬送するヌル容量を有する偏波チャネルの位置を予測できるようにすることである。なぜならば、これらの位置は、送信を目的とした実際のチャネルの特性に従って表面的にはランダムな挙動で変動する可能性があるからである。少数のシンプルなチャネルしか、上記凍結ビットを最適に選ぶことができない。既知のバイナリ入力AWGNチャネルの場合に、それらの数(符号レート)及びAWGNチャネルの信号対雑音比SNRに従って凍結ビットの位置を求める効率的な技法が知られている。したがって、科学文献から、バイナリ入力AWGN用に設計されたポーラ符号ツールボックスを自由に使用することができる(非特許文献2)。このツールボックスは、任意の符号化レート及びデータパケット長の良好な性能を提供することができる。
【0005】
ポーラ符号は、例えば5G標準化に含まれている(非特許文献3)。ポーラ符号は、通常のAWGNチャネル上で高性能を示すだけでなく、符号化変調の設計及びあまり知られていないチャネルへの適用に対して非常に前途有望でもある。ポーラ符号に関して最も重要なことは、以下のことである。
ポーラ符号は、無限データパケット長に対して容量達成型であること;
ポーラ符号に関連したデコーダーは、復号化のレイテンシーがデータパケット長と線形であることを伴うビットの順次処理を伴うこと;これによって、ポーラ符号は、レイテンシーが制約される用途においては、長いパケット長に対して非実用的なものとなる;このことが、ポーラ符号が5G標準化において短いデータパケットについてのみ選択された理由である;
ポーラ符号はエラーフロアを有しないこと。これによって、性能を容易に予測することが可能になり、超高信頼の通信に効果的である10-10に達するパケット誤り率を達成することが可能になる。
【0006】
上記の点から、ポーラ符号は、短いデータパケットについてのみ実用的であるが、大きなデータパケットに効果的でなく、これは矛盾していると結論付けることができる。しかしながら、最初に(及び大きなデータパケットに最適な)逐次除去復号化を使用する代わりに、そのようなデコーダーをリストベースのデコーダー(K優先木探索の一種)に一般化することが提案されている。このアルゴリズムは、1つの偏波チャネルの送信データビットの直接推定の代わりに、候補サバイバーのリストを提供する。その場合に、ポーラ符号の解析は、それらの最小距離が弱いが、それらの2番目に最小の距離が良好であることを示している。したがって、巡回冗長検査(CRC)をデータパケットに含めて、リストデコーダーによって提供される候補間のソートを可能にすることが提案されている。これは、短いデータパケットに対する性能の非常に大きな増大をもたらし、ポーラ符号を他の符号化ストラテジーよりも良好な性能/複雑度トレードオフを提供するものとする。今日現在、短いデータパケット(8000個未満のデータビット)について、ポーラ符号とCRCとリストデコーダーとを組み合わせたものに勝るポーラ符号の他の設計はない。
【0007】
ポーラ符号構造は、情報損失のないマルチレベル符号化及び復号化を提唱する情報理論における連鎖法に基づいている。MLC変調も同じ概念に依拠している。したがって、これは、マルチレベルポーラ符号化変調につながる、MLC変調用のポーラ符号に依拠する良好なストラテジーであるように思われる(非特許文献4及び非特許文献5)。また、リスト復号手法は、ポーラ符号デコーダー間でリストを渡すことによってマルチレベル符号化変調に容易に拡張することができる。複雑度の増大は制限される。確率伝播アルゴリズムを考慮する必要はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】[ARI2009] Arikan, E. (July 2009). “Channel polarization: a method for constructing capacity-achieving codes for symmetric binary-input memoryless channels”, IEEE Transactions on Information Theory.
【非特許文献2】[BIO2019] V. Bioglio, C.Condo, I. Land, “Design of Polar Codes in 5G New Radio”, arXiv:1804.04389v2.
【非特許文献3】[3GPP38212] 3rd Generation Partnership Project (3GPP), “Multiplexing and channel coding”, 3GPP 38.212 V15.3.0, 2018.
【非特許文献4】[SEID2013] M. Seidl, A. Schenk, C. Stierstorfer, and J. B. Huber, “Multilevel polar-coded modulation”, Proceedings of IEEE International Symposium on Information Theory, Munich, Germany, January 2013.
【非特許文献5】[ION2014] C. I. Ionita, M. Mansour, J. C. Roh, and S. Hosur, "On the design of binary polar codes for high-order modulation", Proceedings of IEEE Global Communications Conference, Austin, TX, USA, December 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ポーラ符号の主な欠点は、それらの設計(所与のレートの凍結ビットの選択)が、チャネルの性質の影響を非常に受けやすいということである。したがって、バイナリ入力AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号は、例えば、バイナリ消去チャネルとともに使用されるときに良好な性能を示さない。
【0010】
チャネル推移確率が非自明であるとき、凍結ビットを良好に選択することができる唯一の可能性は、すなわち、各データビットレベルにおいて等価チャネル推移確率を求めるために誤り訂正符号の構造内で推移確率を伝播させるいわゆる密度進化を計算することである。これは、バイナリの場合に既に極めて複雑であり、マルチレベル変調の場合にはより一層複雑である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、少なくともいくつかの実施の形態において、高性能を有する実施をシンプルに保つ方法でマルチレベルポーラ符号化変調方式を提案することを目的とする。特に、本開示は、チャネルがAWGNチャネルでないときであっても、及び、「モノのインターネット」(IoT:Internet of Things)に適用される状況で特に対象となる短いデータパケットを用いるときであっても、良好な性能を提供することができるマルチレベルポーラ符号化変調方式を提案することを目的とする。
【0012】
このために、第1の態様によれば、本開示は、データストリームを送信デバイスから受信デバイスに送信する方法に関し、前記データストリームはm個のデータサブストリームを含み、該方法は、
それぞれのポーラ符号を用いて前記データサブストリームを符号化して、m個のポーラ符号化データサブストリームの生成等を行うことと、
それぞれのポーラ符号化データサブストリームからのm個のビットの連続するセットがシンボルストリームを形成する連続するシンボルに変換されるように、シンボルをそれぞれのポーラ符号化データサブストリームからのm個のビットのセットc,...,cに全単射的に関連付ける所定のラベリング関数Zに従って、前記m個のポーラ符号化データサブストリームを、複素平面における2個の異なるシンボルを定義する、m個のレベルを含むマルチレベル変調のシンボルに変調することと、
前記シンボルストリームを前記受信デバイスに送信することと、
を含む。
【0013】
前記マルチレベル変調の前記2個のシンボルは、間隔係数Kによって前記実軸及び前記複素軸に沿って規則的に間隔を開けて配置されるように前記複素平面内に分散され、
前記所定のラベリング関数Zは、以下の式のようになっており、
【数1】
この式において、
【数2】
である。
【0014】
特定の実施の形態において、前記送信方法は、単独又は任意の技術的に可能な組み合わせのいずれかで考えられる以下の特徴のうちの1つ以上を更に含むことができる。
【0015】
特定の実施の形態において、前記使用されるm個のポーラ符号のそれぞれは、バイナリ入力加法性白色ガウス雑音AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号である。
【0016】
特定の実施の形態において、前記m個のポーラ符号の前記それぞれの符号レートは伝播条件に適合される。
【0017】
特定の実施の形態において、前記送信方法は、
前記送信デバイスから前記受信デバイスへの前記伝播の間に各データサブストリームが経験する信号対雑音比SNRを求めることと、
各データサブストリームが経験する前記SNRに基づいて、前記使用されるm個のポーラ符号のそれぞれの前記符号レートを選択することと、
を含む。
【0018】
特定の実施の形態において、前記データサブストリーム及び/又は前記データサブストリームのそれぞれは、誤り検出符号を含む。
【0019】
特定の実施の形態において、前記マルチレベル変調は16QAM変調であり、前記ラベリング関数は、以下の表1によって与えられるか、又は、前記複素平面において前記シンボルのコンスタレーションを90度の倍数角回転することによって、及び/又は前記実軸に対して前記シンボルのコンスタレーションに軸方向反射を適用することによって、及び/又は前記複素軸に対して前記シンボルのコンスタレーションに軸方向反射を適用することによって、及び/又は全ての前記ビット値を反転することによって、表1を変更したものによって与えられる。
【0020】
特定の実施の形態において、前記マルチレベル変調は64QAM変調であり、前記ラベリング関数は、以下の表2によって与えられるか、又は、前記複素平面において前記シンボルのコンスタレーションを90度の倍数角回転することによって、及び/又は前記実軸に対して前記シンボルのコンスタレーションに軸方向反射を適用することによって、及び/又は前記複素軸に対して前記シンボルのコンスタレーションに軸方向反射を適用することによって、及び/又は全ての前記ビット値を反転することによって、表2を変更したものによって与えられる。
【0021】
特定の実施の形態において、前記マルチレベル変調は256QAM変調であり、前記ラベリング関数は、以下の表3によって与えられるか、又は、前記複素平面において前記シンボルのコンスタレーションを90度の倍数角回転することによって、及び/又は前記実軸に対して前記シンボルのコンスタレーションに軸方向反射を適用することによって、及び/又は前記複素軸に対して前記シンボルのコンスタレーションに軸方向反射を適用することによって、及び/又は全ての前記ビット値を反転することによって、表3を変更したものによって与えられる。
【0022】
第2の態様によれば、本開示は、プロセッサによって実行されると、本発明の実施の形態のいずれか1つに記載の送信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピュータープログラム製品に関する。
【0023】
第3の態様によれば、本開示は、プロセッサによって実行されると、本発明の実施の形態のいずれか1つに記載の送信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピューター可読記憶媒体に関する。
【0024】
第4の態様によれば、本開示は、本発明の実施の形態のいずれか1つに記載の送信方法を実行するように構成される処理回路を備える、データストリームを受信デバイスに送信するデバイスに関する。
【0025】
第5の態様によれば、本開示は、受信デバイスによってデータストリームを受信する方法に関し、前記データストリームはm個のデータサブストリームを含み、該方法は、
送信デバイスからの前記データストリームを含むシンボルストリームを受信することであって、前記シンボルストリームは、複素平面における2個の異なるシンボルを定義する、m個のレベルを含むマルチレベル変調のシンボルを含むことと、
シンボルをそれぞれのポーラ符号化データサブストリームからのm個のビットのセットc,...,cに全単射的に関連付ける所定のラベリング関数Zの逆関数を適用することによって、m個のポーラ符号化データサブストリームを生成するために前記シンボルストリームの前記シンボルを復調することと、
それぞれのポーラ符号デコーダーを適用することによって、前記m個のポーラ符号化データサブストリームを逐次的に復号化して、m個のデータサブストリームの生成等を行うことと、
を含む。
【0026】
前記使用されるマルチレベル変調の前記2個のシンボルは、間隔係数Kによって前記実軸及び前記複素軸に沿って規則的に間隔を開けて配置されるように前記複素平面内に分散され、
前記所定のラベリング関数Zは、以下の式のようになっており、
【数3】
この式において、
【数4】
である。
【0027】
特定の実施の形態では、前記受信方法は、単独又は任意の技術的に可能な組み合わせのいずれかで考えられる以下の特徴のうちの1つ以上を更に含むことができる。
【0028】
特定の実施の形態において、前記使用されるm個のポーラ符号デコーダーのそれぞれは、バイナリ入力加法性白色ガウス雑音AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号を復号化するように設計される。
【0029】
特定の実施の形態において、使用される各ポーラ符号デコーダーはリストデコーダーである。
【0030】
第6の態様によれば、本開示は、プロセッサによって実行されると、本発明の実施の形態のいずれか1つに記載の受信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピュータープログラム製品に関する。
【0031】
第7の態様によれば、本開示は、プロセッサによって実行されると、本発明の実施の形態のいずれか1つに記載の受信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピューター可読記憶媒体に関する。
【0032】
第8の態様によれば、本開示は、本発明の実施の形態のいずれか1つに記載の受信方法を実行するように構成される処理回路を備える、データストリームを送信デバイスから受信するデバイスに関する。
【0033】
本発明は、以下の説明を読むことでより良く理解される。以下の説明は、決して限定的なものではなく一例として与えられ、図に関して作成されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】一例示的なマルチレベルポーラ符号化変調方式の概略表現である。
図2】グレイラベリング関数を使用した16QAM変調の相互情報量と、4ビットレベル間の相互情報量の分布とを表すプロットである。
図3】ランダムラベリング関数を使用した16QAM変調の相互情報量と、4ビットレベル間の相互情報量の分布とを表すプロットである。
図4】グレイラベリング関数を使用したときのマルチレベルポーラ符号化変調方式の異なるポーラ符号デコーダーの入力における対数尤度比分布を表すプロットである。
図5】16QAMラベリング関数の好ましい実施形態を表すプロットである。
図6】64QAMラベリング関数の好ましい実施形態を表すプロットである。
図7】256QAMラベリング関数の好ましい実施形態を表すプロットである。
図8図5の16QAMラベリング関数を使用したときのマルチレベルポーラ符号化変調方式の異なるポーラ符号デコーダーの入力における対数尤度比分布を表すプロットである。
図9】16QAMグレイラベリング関数及び図5の16QAMラベリング関数の予想スループット性能を比較するプロットである。
図10】好ましい実施形態による送信方法の主なステップを表す図である。
図11】好ましい実施形態による送信デバイスの概略表現である。
図12】好ましい実施形態による受信方法の主なステップを表す図である。
図13】好ましい実施形態による受信デバイスの概略表現である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
これらの図において、図にわたって同一の参照符号は、同一又は類似の要素を示す。明瞭にするために、図示した要素は、別段の明示の指定がない限り、一律の縮尺でない。
【0036】
上記に示したように、本開示は、マルチレベルポーラ符号化変調方式に関する。
【0037】
図1は、マルチレベルポーラ符号化変調方式を概略的に表している。このマルチレベル変調はm個のレベルを含むと仮定され、これは、対応するコンスタレーションが2個のシンボルを複素平面に含むことを暗に意味する。ただし、これは限定ではない。好ましくは、mは4以上(m≧4)である。好ましくは、mは2の累乗であり、例えば、4、6、8等に等しい。
【0038】
図1によって示すように、各レベルは、m個のポーラ符号エンコーダーがマルチレベル変調のm個の異なるレベルにおいて並列に使用されるようなポーラ符号エンコーダー20を備える。これらのm個のポーラ符号エンコーダーは、同一のものとすることもできるし、異なるものとすることもできる。以下で論述される好ましい任意選択的な実施形態において、m個のポーラ符号エンコーダーのそれぞれの符号レートは、伝播条件に動的に適合することができ、その結果、異なる符号レートを使用するポーラ符号エンコーダーが得られる可能性がある。
【0039】
図1によって示すように、bは、ポーラ符号化データビットcを生成する第iのレベルのポーラ符号エンコーダー20によって符号化されるデータビットを表す。ポーラ符号化データビットの各レベルは、その後、シンボルのストリームを生成するシンボル変調器21に供給される。コンスタレーション変調器は、レベルごとに1つのポーラ符号化データビット、すなわち全部でmビット(c,...,c)を取り入れ、所定のラベリング関数Zに従って1つのシンボルX=Z(c,...,c)を出力する。シンボルXは、実次元及び複素次元における座標セットによって定義され、上述したように、シンボルのコンスタレーションは複素平面に2個の異なるシンボルを含む。ラベリング関数Z(c,...,c)は、m個の符号化データビット(c,...,c)のセットとシンボルX=Z(c,...,c)との間の1対1マッピングを作成することを可能にする。したがって、m個のポーラ符号化データビット(c,...,c)の連続するセットは、シンボルストリーム、すなわちそれぞれのリソース上で送信されるシンボルのベクトルを形成する連続するシンボルを生成する。
【0040】
結局、cは、第iのレベルの1つのポーラ符号化データビットを表す。同じレベルの異なるポーラ符号化データビットを区別する必要がある場合には第2の下付き文字が使用され、ci,tが、第tのリソース上で送信される第tのシンボルを生成するのに使用される第iのレベルのポーラ符号化データビットを表すものとされる。また、bは、第iのレベルの1つのデータビットを表し、
【数5】
は、第iのレベルのいくつかのデータビットを含むベクトルに対応する。同様に、X及びYは、それぞれ1つのシンボル及び1つの観測値を表す。異なるシンボル及び異なる観測値を区別する必要がある場合には下付き文字が使用され、X及びYが、それぞれ第tのリソース上で送信及び観測される第tのシンボル及び第tの観測値を表すものとされる。
【数6】
及び
【数7】
は、それぞれT個の異なるシンボルXを含むベクトル
【数8】
及びT個の異なる観測値Yを含むベクトル
【数9】
を表す。T個のリソースは、異なるタイムスロット、異なる周波数(例えば、直交周波数分割多重通信(OFDM:orthogonal fequency division multiplex)シンボルの異なるサブキャリア)、異なる拡散符号等、又はそれらの任意の組み合わせに対応することができることに留意されたい。各シンボルXは、m個のポーラ符号化データビットのセット(c1,t,...,cm,t)に基づいて取得される。第iのレベルのT個のポーラ符号化データビットを含むベクトル(ci,1,...,ci,T)は、
【数10】
と表される。ポーラ符号化データビットの各ベクトル
【数11】
は、ポーラ符号を用いてデータビットのベクトル
【数12】
を符号化することによって取得される。各ベクトル
【数13】
は、第iのレベルのポーラ符号エンコーダーの符号レートに依存するとともにレベルごとに変化し得る個数のデータビットを含む。
【0041】
シンボルのベクトル
【数14】
は、その後、送信デバイス30によってチャネルを通じて送信され、シンボルのベクトル
【数15】
の観測値
【数16】
が受信デバイス40において取得される。チャネルは、チャネルの推移確率p(Y|c,...,c)によって特徴付けられる統計的挙動に従って各シンボルX=Z(c,...,c)を観測値Yに変更する。例えば、加法性白色ガウス雑音AWGNチャネルを考えたとき、観測値Yは、Z(c,...,c)に、ガウス分布に従った雑音を加えたものの結果である。
【0042】
マルチレベルポーラ符号化変調を適切に設計するために、最初に対象となるものは、情報理論の観点からモデルを特徴付けることである。一般に、チャネル容量は、定義によれば、すなわち、送信デバイス30の構造も受信デバイス40の構造も考慮することなく、チャネル相互情報量I(X;Y)を最大化したものである。符号化構造/復号化構造における要素を加味すると、相互情報量は減少する。例えば、AWGNチャネルでは、シンボルを有限コンスタレーションに属するように制約することによって、相互情報量I(X;Y)は、チャネル相互情報量を最大化する連続的なガウス入力を用いるよりも小さくなる。
【0043】
各シンボルXを有限コンスタレーションに属するように制約することに加えて、本発明者らは、システムをマルチレベル変調構造に制約する。X=Z(c,...,c)と(c,...,c)との間の1対1マッピングは、無損失でI(c,...,c;Y)をここで検討することを可能にする。連鎖法を使用することによって、以下の式が得られる。
【数17】
この式において、I(c;Y|c,...,ci-1)は、条件付き相互情報量に対応する。
【0044】
符号レートI(c;Y|c,...,ci-1)を第iのポーラ符号化レベルに関連付けることによって、逐次除去復号化が受信デバイスにおいて実行される場合には、情報の損失は観測されないことを確認することができる(これは、cを復号化するときに、c,...,ci-1の知識によって示唆される)。相互情報量の定義によれば、符号レートが等価レベルチャネルに適合される場合には、誤りは発生しない。等価レベルチャネルは、単一のポーラ符号化データサブストリームが経験する仮想チャネルに対応し、m個のポーラ符号化データサブストリームはm個の並列の等価レベルチャネル上で送信される。実際には、有限長符号化方式を使用するとき、誤りが発生し、逐次復号化方式を使用するときにレベル間を伝播する。この誤りの伝播は、設計によって可能な限り制限されるべきである。
【0045】
条件付き相互情報量を以下のように表すことができるように、ビットcは等確率である、すなわち確率p(c=0)=p(c=1)=0.5であると仮定する。
【数18】
この式において、
【数19】
は、全ての可能なポーラ符号化データビット{c,...,c}にわたる期待値、すなわち全ての可能なコンスタレーションシンボル{X}に対する期待値である;
【数20】
は、送信シンボルZ(c,...,c)が知られているときの全ての可能な観測値Yにわたる期待値であり、これは、推移確率p(Y|Z(c,...,c))によって完全に特徴付けられる;
総和
【数21】
は、ポーラ符号化データビット{c’i+1,...,c’}の2m-i個の全てのセットにわたって行われる;このマージナライゼーション(marginalization)によって、推移確率p(Y|Z(c,...,ci-1,c,c’i+1,...,c’))又はp(Y|Z(c,...,ci-1,1-c,c’i+1,...,c’))が出現する;
Z(c,...,ci-1,c,c’i+1,...,c’)は、期待値
【数22】
において選択されるZ(c,...,c)のラベリングのi個の先頭のポーラ符号化データビットと同じ値である(c,...,c)に固定されたそれらのラベリングにおけるi個の先頭のポーラ符号化データビットを有するシンボルである;Z(c,...,ci-1,c,c’i+1,...,c’)のラベリングの(m-i)個の末尾のポーラ符号化データビットは、総和
【数23】
において選択される構成(c’i+1,...,c’)によって設定される;したがって、Z(c,...,ci-1,c,c’i+1,...,c’)は、マルチレベル変調シンボルのうちの1つであり、p(Y|Z(c,...,ci-1,c,c’i+1,...,c’))は、観測値Y及びチャネル推移確率の知識によって容易に計算することができる;
同様に、Z(c,...,ci-1,1-c,c’i+1,...,c’)は、(c,...,ci-1)に等しい(i-1)個の先頭のポーラ符号化データビットを有するラベリングを用いたコンスタレーションシンボルであり、第iのポーラ符号化データビット値は(1-c)であり、末尾の(m-i)個のポーラ符号化データビット値は(c’i+1,...,c’)である。
【0046】
16QAM(16レベルQAM)のグレイラベリングの連鎖法分解が図2に示されている。4ビットレベルのうちの1つにそれぞれ関連付けられた4つのプロットの総和は、ポーラ符号化方式に対する制約を有しない16QAMコンスタレーションの相互情報量に確かに等しい。グレイラベリングは独立しており、実部及び虚部に関して同じであるので、ビット1及び3(すなわち、マルチレベル変調のレベル1及び3)と、ビット2及び4(すなわち、レベル2及び4)との相互情報量は等しいことを確認することができる。16QAMのランダムラベリングの連鎖法分解が図3に示されている。所与の信号対雑音比SNRについて、レート分割がグレイラベリングのレート分割と異なることを確認することができる。しかし、レートの総和は、16QAMコンスタレーションの相互情報量に引き続き等しい。
【0047】
したがって、相互情報量の観点からすれば、シンボルのベクトル
【数24】
のみが性能に影響を与えることに留意することが重要である。ラベリング関数自体は、全体の理論的性能を改善も劣化もさせない。ラベリング関数は、マルチレベルポーラ符号化変調の並列レベル間のレートの再分を変化させるだけである。この認識は、いずれのラベリング関数も情報理論の観点から理論的に同じことを行うことを強調しているので重要である。
【0048】
しかしながら、後で分かるが、実用的なポーラ符号と組み合わされると、この認識はもはや当てはまらない。換言すれば、マルチレベルポーラ符号化変調の状況で実用的なポーラ符号を考えたとき、ラベリングは、マルチレベルポーラ符号化変調の各並列レベルのポーラ符号化ストラテジーを考慮することによってラベリング関数の最適化を行うことができるように、全体的な実際の性能に影響を及ぼすことができる。
【0049】
次に、チャネルはメモリレスであると仮定される。したがって、チャネル効果は、送信リソース間で独立している(例えば、加法性白色ガウス雑音は、通常、時間において独立している)。
【0050】
したがって、尤度
【数25】
は、シンボルベクトル
【数26】
を送信するのに使用されるT個のリソースを通じて、以下の式のように分解することができる。
【数27】
【0051】
その後、エンコーダーがデータビットのベクトル
【数28】
をポーラ符号化データビットのベクトル
【数29】
に変換することを使用することによって、以下の式を記述することができる。
【数30】
【0052】
これは、Y及び(c1,t,...,cm,t)、並びに関連付けられたシンボルX=Z(c1,t,...,cm,t)を処理することによって、
【数31】

【数32】
との間の関係をリソースごとに解析することができることを伴う。ラベリング関数Zの役割は、どのシンボルがポーラ符号化データビットベクトル(c1,t,...,cm,t)に一意に関連付けられるのかを特定することであることを想起されたい。これは、各リソース上で独立して行われるシンボルからビットへの復調(すなわちラベリング関数Zの逆関数)を考慮することによって、デコーダーの複雑度を低減することを可能にする。
【0053】
デコーダーは、最後のレベル(すなわちインデックスmを有するレベル)まで、最初のレベル(すなわちインデックス1を有するレベル)、その後、2番目のレベル(すなわちインデックス2を有するレベル)以降を逐次的に復号化するものと仮定される。例えば、リスト復号化を用いたマルチレベルポーラ符号化変調のデコーダーは、通常、インデックス1を有するレベルからインデックスmを有するレベルに向けてレベルごとに逐次的に実行される以下のステップを伴うことができる。これらのステップは、第iのレベルについて、以下のものを含む。
リスト復号化手順の各生存パスに関連付けられたデータビットベクトル
【数33】
を取得するステップ;
各レベルのポーラ符号エンコーダーに従ってポーラ符号化データビットを再符号化し取得するステップ(これは、
【数34】
の復号化プロセス中にも行うことができる);
インデックスtを有する各送信リソースについて、観測値Yを用いて、取得された再符号化データビット(c1,t,...,ci-1,t)及び2m-i個の全ての可能な構成{c’i+1,...,c’}の尤度p(Y|c1,t,...,ci-1,t,1,c’i+1,...,c’)及びp(Y|c1,t,...,ci-1,t,0,c’i+1,...,c’)を計算するステップ;
全てのインデックスtについて、以下の対数尤度比を計算するステップ:
【数35】
この式において、
【数36】
は、2m-i個の可能な構成{c’i+1,...,c’}にわたる総和に対応し、
【数37】
は、2m-i個の可能な構成{c”i+1,...,c”}にわたる総和に対応する;
各リスト復号化サバイバーの第(i-1)のレベルの復号化から得られる最後の累積メトリックを第iのレベルのデコーダーの入力に供給し、復号化を行って各生存パスのデータビットベクトル
【数38】
及び関連付けられた累積メトリックを取得するステップ。
【0054】
上記ステップは、例示を目的として与えられているものにすぎず、復号化は異なって行うことができることに留意されたい。特に、他の実施形態において、リスト復号化を用いることなく、すなわち、レベルごとに単一のサバイバーのみを計算することによって、シンプルな逐次復号化方式を適用することが可能である。より一般的に言えば、本開示は、特定の復号化プロセスに限定されるものではなく、特定の復号化プロセスの選択は、本開示の一例示的な実施形態を構成するにすぎない。
【0055】
しかしながら、本開示は、異なるレベルがデコーダーにおいて逐次的に復号化され、インデックス1を有するレベルが最初に復号化され、インデックスmを有するレベルが最後に復号化されるという仮定に依拠している。
【0056】
また、逐次復号化方式の上記例示的な実施形態は、実用的な実施態様を考えたときに、逐次復号化方式ごとに大きく変化することが予想されず、システムの全体的な実際の性能を高めるようにラベリング関数を最適化することができる理由の理解を助ける対数尤度比LLRi,tの構造を強調するために与えられたものである。
【0057】
前述したように、ポーラ符号エンコーダー及びデコーダーの実用的な実施態様は、バイナリ入力AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号に対応する。そのようなポーラ符号は、バイナリ入力を有するAWGNチャネル上で使用されることが予想され、その結果、ガウス分布に従うポーラ符号デコーダーの入力において対数尤度比LLRi,tを有することが予想される。
【0058】
しかしながら、グレイラベリングを用いた高次マルチレベル符号化変調(m≧4)を使用するとき、m個のポーラ符号デコーダーのうちの少なくとも1つは、図4に示すようなガウス分布でない入力対数尤度比分布を経験する。これは、性能劣化をもたらす。
【0059】
本発明者らは、ラベリング関数が、異なるレベルの入力対数尤度比分布に影響を与えること、及び、バイナリ入力AWGNチャネル用に設計された既製のポーラ符号を使用するマルチレベルポーラ符号化変調を考えたときに、いくつかのラベリング関数が従来のグレイラベリングよりも性能が優れていることに気付いた。
【0060】
特に、本発明者らは、マルチレベルポーラ符号化変調の全てのレベルについて実質的にガウス分布である入力対数尤度比分布を提供するラベリング関数を見つけることが可能であることを発見した。したがって、相互情報量に影響を与えないにもかかわらず、ラベリング関数は、予想されるガウス分布に従う傾向を有する対数尤度比を有する異なるポーラ符号デコーダーの入力を提供することを可能にする場合に、全体的な実際の性能に影響を与える。
【0061】
その目的のために、本発明者らは、適したラベリング関数を特定するのに以下の関数を使用することができることを発見した。
【数39】
【0062】
上記式(1)において、
は、実数xに適用される指数関数に対応する;
|z|は複素数zのモジュラス(又は大きさ)に対応する(すなわち、z、zを実数とし、jを虚数単位とし、z=z+j×zとすると、
【数40】
である);
Kは、複素平面におけるシンボルの間隔係数である;
【数41】
は、ラベリング関数Zによってコンスタレーションの2個のシンボルに全単射的に関連付けられたベクトル(c,...,c)の2個の可能な値にわたる総和である;
【数42】
は、総和
【数43】
によって現在設定されているような特定の値(c,...,c)を除外したときのベクトル(c’,...,c’)の(2m-i+1-1)個の可能な値にわたる総和であり、iの値は総和
【数44】
によって設定される;完全を期すために、i=1の場合に、上記総和においてZ(c,...,ci-1,c’,...,c’)=Z(c’,...,c’)、i=2の場合に、上記総和においてZ(c,...,ci-1,c’,...,c’)=Z(c,c’,...,c’)等であることを強調しておく。
【0063】
より具体的には、上記式(1)において定義される間隔係数Kに関して、この間隔係数は、マルチレベル変調のコンスタレーションの2個のシンボルが、当該間隔係数Kによって実軸及び複素軸に沿って規則的に間隔を開けて配置されるように、複素平面において分散されることを意味する。例えば、2個のシンボルの総和が0に等しい(すなわち、2個のシンボルが複素平面の中心である(0,0)を中心としている)場合に、2個のシンボルは、以下の集合内にある。
【数45】
この式において、
【数46】
は、
m=4(16QAM変調)の場合:k,k’∈{1,2};
m=6(64QAM変調)の場合:k,k’∈{1,2,3,4};
m=8(256QAM変調)の場合:k,k’∈{1,2,3,4,5,6,7,8};
等となるような自然整数の集合に対応する。
【0064】
一般に、関数Φは、マルチレベル符号化変調のレベルごとの各対数尤度比LLRi,t生成において役割を果たす基本距離|Z(c,...,c)-Z(c,...,ci-1,c’,...,c’)|の間の公平性を表す値を生成する関数である。関数Φを最適化することによって、すなわち関数Φを最小化することによって、対数尤度比LLRi,tがマルチレベル符号化変調の全てのレベルについてガウス分布に従う傾向があるラベリング関数Zを取得することが可能である。
【0065】
備考として、この関数Φは、チャネル推移確率を考慮しない。これは、実際のチャネルにかかわらず、バイナリ入力AWGNチャネルの対数尤度比分布を模倣するラベリング関数を求めることを助ける。これは、本発明者らの手法の重要な特徴である。なぜならば、チャネルが送信デバイス30において未知である状況においてラベリングを使用することができるからである。
【0066】
上記に示したように、この関数Φは、異なるレベルが受信デバイス40において逐次的に復号化され、インデックス1を有するレベルが最初に復号化され、インデックスmを有するレベルが最後に復号化されると仮定する。
【0067】
関数Φを最適化するために、例えば以下のステップを実行することによって、例えば遺伝的アルゴリズムに類似のアルゴリズムを実行することが可能である。
ラベリング関数Zを初期化する;例えば、グレイラベリング又は任意のランダムラベリングから開始することが可能である;
BestMetric=Φ(Z)を計算する;
停止基準が確認されるまで以下のステップを繰り返す:
for 全てのj=1...m
for 全ての{c,...,c
ZをZ’にコピーする
ラベリング(c,...,c=0,...,c)及び(c,...,c=1,...,c)を用いてシンボルを見つけ、Z’においてそれらのラベリングを切り替える
Metric=Φ(Z’)を計算する
if Metric<BestMetric
Z’をZsavに保存する
BestMetric=Metricに設定する
end
end
Z=Zsavに設定する
end
【0068】
例えば、停止基準は、BestMetricの改善が2つの反復の間で見られないときに確認されるものと考えることができる。もちろん、他の最適化アルゴリズムを考慮してもよく、他の停止基準を、関数Φを最適化するのに使用してもよい。
【0069】
関数Φを必ずしも最適化することなく、すなわち関数Φを最小化する特定のラベリング関数を必ずしも見つけることなく、本発明者らは、以下の基準を満たすラベリング関数が、そのようなラベリング関数について、対数尤度比LLRi,tがマルチレベル符号化変調の全てのレベルについてガウス分布に従う傾向があるという意味で良好であることに気付いた。
【数47】
この式において、mは、上記で定義したように、マルチレベル変調のレベルの数に対応する。もちろん、とりわけ従来のグレイラベリング関数は、この関数が生成する対数尤度比が全てのレベルについてガウス分布に従わないので、式(2)を満たさない。
【0070】
したがって、
m=4(16QAM変調)の場合:g(4)≒0.9187;
m=6(64QAM変調)の場合:g(6)≒4.7068;
m=8(256QAM変調)の場合:g(8)≒19.5321;
等である。
【0071】
表1は、m=4(16QAM変調)の場合において、上記式(2)を検証するラベリング関数Zの一例を与えている。表1において、jは、虚数単位(j=-1)に対応する。
【0072】
【表1】
【0073】
図5は、複素平面における表1によって与えられるラベリング関数Zを表している。図5では、Kは2に等しいと仮定される。図5に表されるコンスタレーションの90度の倍数の回転、若しくは実軸に対する上記コンスタレーションの軸方向反射、若しくは複素軸に対する上記コンスタレーションの軸方向反射、若しくは全てのビット値の反転、又はそれらの任意の組み合わせは、Φ(Z)の値を変更せず、したがって、等しく良好であるラベリング関数を与えることに留意されたい。
【0074】
表2は、m=6(64QAM変調)の場合において、上記式(2)を検証するラベリング関数Zの一例を与えている。
【0075】
【表2】
【0076】
図6は、複素平面における表2によって与えられるラベリング関数Zを表している。図6では、Kは2に等しいと仮定される。図6に表されるコンスタレーションの90度の倍数の回転、若しくは実軸に対する上記コンスタレーションの軸方向反射、若しくは複素軸に対する上記コンスタレーションの軸方向反射、若しくは全てのビット値の反転、又はそれらの任意の組み合わせは、Φ(Z)の値を変更せず、したがって、等しく良好であるラベリング関数を与えることに留意されたい。
【0077】
表3は、m=8(256QAM変調)の場合において、上記式(2)を検証するラベリング関数Zの一例を与えている。
【0078】
【表3】
【0079】
図7は、複素平面における表3によって与えられるラベリング関数Zを表している。図7では、Kは2に等しいと仮定される。図7に表されるコンスタレーションの90度の倍数の回転、若しくは実軸に対する上記コンスタレーションの軸方向反射、若しくは複素軸に対する上記コンスタレーションの軸方向反射、若しくは全てのビット値の反転、又はそれらの任意の組み合わせは、Φ(Z)の値を変更せず、したがって、等しく良好であるラベリング関数を与えることに留意されたい。
【0080】
図8は、上記表1に与えられる16QAMラベリング関数を使用したときのm個のポーラ符号デコーダーの入力対数尤度比分布を表している。これは、グレイラベリング関数(図4)を使用したときのm個のポーラ符号デコーダーの入力対数尤度比分布と比較される。図8に見て取ることができるように、本発明者らによって確認された特定のラベリング関数によって、入力対数尤度比分布は、m個の全てのポーラ符号デコーダーについて実質的にガウス分布である。これによって、この特定のラベリング関数は、バイナリ入力AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号等の、デコーダーにおいてガウス分布に従う入力対数尤度比を予想する任意のポーラ符号とともに使用されるのに適したものとなる。
【0081】
式(2)を検証するラベリング関数の別の利点は、それらのラベリング関数が、マルチレベルポーラ符号化変調において使用される全てのポーラ符号について簡単な符号レート適合を行うことを可能にするということである。
【0082】
実際、これらのラベリング関数は、システムの各レベルを、そのレベルがバイナリ入力AWGNチャネルであるかのように挙動させ、そのようなバイナリ入力AWGNチャネルの性能は、容易に予測することができるので、m個のポーラ符号のそれぞれの符号レートを、各レベル上で経験される伝播条件に動的に適合させることが可能である。これは、バイナリ入力AWGNチャネル上の性能を予測する既存のツールを各レベル上で再利用することによって行うことができる。例えば、バイナリ入力相互情報量をAWGNチャネルのSNRの関数として与える関数γを計算することが可能である。関数γを計算するこの公式は、バイナリ入力AWGNチャネルの当業者に既知であると考えられる。その場合に、結局、γ-1で表されるγの逆関数を計算することが可能である。γ-1は、1度計算するだけでよく、その後、送信デバイス30の記憶手段に記憶することができることに留意されたい。第iのレベルのポーラ符号の符号レートを適合させるために、条件付き相互情報量
【数48】
を計算することが可能である。繰り返しになるが、条件付き相互情報量を計算する公式は、バイナリ入力AWGNチャネルの当業者に既知であると考えられる。
【数49】
で表される第iの等価レベルチャネル上で経験されるSNRは、その場合に、
【数50】
として推定することができる。
【数51】
が推定されると、第iのレベルのポーラ符号に使用される符号レートとして、
【数52】
を選ぶことができる。もちろん、バックオフBO、例えば対数スケールにおける(-1)dBを考慮することも可能であり、その場合に、第iのレベルのポーラ符号に使用される符号レートとして、
【数53】
を選ぶことができる。
【0083】
図9は、16QAMグレイラベリング関数及び上記表1に与えられる16QAMラベリング関数の双方について、ともに図1によって表されるようなマルチレベルポーラ符号化変調方式の状況において、ともにバイナリ入力AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号を使用してシミュレーションされた予想スループット性能を概略的に表している。1024個の16QAMシンボルのパケットが送信される。パケットが正しく受信されないときに再送されることを伴う自動再送要求方式が、評価用に考慮される。所与のSNR値について、各SNRのレート分割は、図3に提供されるものであり、上述した手順に従って定義される。4つのポーラ符号のそれぞれの凍結ビットが、そのレートに従って選ばれる。図9は、16QAMマルチレベルポーラ符号化変調の相互情報量、すなわち情報理論によって定義されるような最大達成可能スループットを表している。図9に見て取ることができるように、最適化された16QAMラベリング関数は、従来の16QAMグレイラベリング関数をほぼ1dB上回る利得をもたらす。
【0084】
図10は、データストリームを送信デバイス30から受信デバイス40に送信する方法50の主なステップを概略的に表している。上記データストリームは、送信デバイス30から受信デバイス40に送信されるバイナリ情報を含む1つ又はいくつかのデータパケットに対応する。
【0085】
本開示において、送信デバイス30は、例えば、ユーザー機器、基地局、ラップトップ、タブレット、モバイルフォン、又はデータストリームを受信デバイス40に送信することができる任意の通信物体とすることができる。同様に、受信デバイス40は、例えば、UE、基地局、ラップトップ、タブレット、モバイルフォン、又はデータストリームを送信デバイス30から受信することができる任意の通信物体とすることができる。
【0086】
送信されるデータストリームは、m個のデータサブストリーム(例えばデータビットベクトル
【数54】
)を含むと仮定される。上記データサブストリームは、互いに独立したものとすることもできるし、例えば直並列変換器を使用することによってm個のデータサブストリームに分割された同じデータストリームに対応することもできる。上記に示したように、いくつかの実施形態において、データストリーム及び/又はデータサブストリームは、CRC等の誤り訂正符号を含むことができる。
【0087】
図10によって示すように、上記送信方法50は、送信デバイス30によって実行される以下のステップを含む。
それぞれのポーラ符号を用いてデータサブストリームを符号化し、m個のポーラ符号化データサブストリーム(例えばポーラ符号化データビットベクトル
【数55】
)の生成等を行うステップS51;
それぞれのポーラ符号化データサブストリームからのm個のビットの連続する異なるセットが、シンボルストリーム(例えばベクトル
【数56】
)を形成する連続するシンボルに変換されるように、それぞれのポーラ符号化データサブストリームからのm個のビットのセット(c,...,c)にシンボルを全単射的に関連付ける所定のラベリング関数Zに従って、m個のポーラ符号化データサブストリームを、複素平面における2個の異なるシンボルを定義するm個のレベルを含むマルチレベル変調のシンボルに変調するステップS52;
シンボルストリームを受信デバイスに送信するステップS53。
【0088】
上述したように、マルチレベル変調の2個のシンボルは、間隔係数Kによって実軸及び複素軸に沿って規則的に間隔を開けて配置されるように複素平面内に分散され、ラベリング関数Zは、上記式(2)が検証されるようにするものである。そのようなラベリング関数を使用することによって、バイナリ入力AWGNチャネル用に設計された既製のポーラ符号を使用することが可能である。したがって、使用されるm個のポーラ符号のそれぞれは、好ましい任意選択的な実施形態において、バイナリ入力AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号とすることができる。
【0089】
上記に示したように、特にバイナリ入力AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号を使用するとき、符号レート適合は簡単である。そのような場合には、送信方法50は、好ましい任意選択的な実施形態において、
等価レベルチャネル上での送信デバイス30から受信デバイス40への伝播の間に各データサブストリームが各レベル上で経験するSNRを求めることと、
各データサブストリームが経験するSNRに基づいて、使用されるm個のポーラ符号のそれぞれの符号レートを選択することと、
を含むことができる。
【0090】
例えば、SNR特定及び符号レート選択は、上述したように行うことができる。ただし、本開示の他の実施形態において、他のSNR特定アルゴリズム及び/又は符号レート選択アルゴリズムも考慮してもよい。
【0091】
図11は、送信方法50を実施するのに適した送信デバイス30の一例示的な実施形態を概略的に表している。
【0092】
この例示的な実施形態において、送信デバイス30は処理回路31を備え、この処理回路は、1つ以上のプロセッサと、送信方法50のステップの全て又は一部を実施するために実行される一組のプログラムコード命令の形のコンピュータープログラム製品が記憶される記憶手段(磁気ハードディスク、固体ディスク、光ディスク、電子メモリ等)とを備える。代わりに、又はそれらと組み合わせて、処理回路31は、送信方法50の上記ステップの全て又は一部を実施するように適合された1つ以上のプログラマブルロジック回路(FPGA、PLD等)、及び/又は1つ以上の専用化集積回路(ASIC)、及び/又は一組の離散電子構成要素等を備えることができる。
【0093】
送信デバイス30は、当該送信デバイス30がシンボルストリームを送信することを可能にする、処理回路31に結合された通信ユニット32も備える。通信ユニット32は、好ましくは無線通信ユニットであり、その場合に、通信ユニット32は、当業者に既知と考えられる構成要素(アンテナ、増幅器、局部発振器、ミキサー、アナログ及び/又はデジタルフィルター等)を備える無線周波数回路に対応する。
【0094】
換言すれば、送信デバイス30の処理回路31及び通信ユニット32は、送信方法50のステップの全て又は一部を実施するソフトウェア(特定のコンピュータープログラム製品)及び/又はハードウェア(プロセッサ、FPGA、PLD、ASIC、離散電子構成要素、無線周波数回路等)によって構成される一組の手段を形成する。
【0095】
図12は、受信デバイス40によってデータストリームを受信する方法60の主なステップを概略的に表している。データストリームは、送信方法50を使用することによって送信されるm個のデータサブストリームを含む。
【0096】
図12によって示すように、上記受信方法60は、受信デバイス40によって実行される以下のステップを含む。
データストリームを含むシンボルストリーム(例えばベクトル
【数57】
)を受信するステップS61、
ラベリング関数Zの逆関数を適用することによって、m個のポーラ符号化データサブストリームを生成するためにシンボルストリームのシンボルを復調するステップS62、
m個のポーラ符号化データサブストリームを逐次的に復号化して、それぞれのポーラ符号デコーダーを適用することによって、m個のデータサブストリームの生成等を行うステップS63。
【0097】
復調ステップS62及び復号化ステップS63は、復調/復号化を併せて行うことによって同時に行うことができることに留意されたい。
【0098】
もちろん、使用されるポーラ符号デコーダーは、送信デバイス30によって使用されるポーラ符号エンコーダーに適合される。したがって、好ましい実施形態において、使用されるm個のポーラ符号デコーダーのそれぞれは、バイナリ入力AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号を復号化するように設計される。好ましい実施形態において、復号化ステップS63において使用される各ポーラ符号デコーダーは、リストデコーダーである。リストデコーダーは、当業者に既知であると考えられる。
【0099】
図13は、受信方法60を実施するのに適した受信デバイス40の一例示的な実施形態を概略的に表している。
【0100】
この例示的な実施形態において、受信デバイス40は処理回路41を備え、この処理回路は、1つ以上のプロセッサと、受信方法60のステップの全て又は一部を実施するために実行される一組のプログラムコード命令の形のコンピュータープログラム製品が記憶される記憶手段(磁気ハードディスク、固体ディスク、光ディスク、電子メモリ等)とを備える。代わりに、又はそれらと組み合わせて、処理回路41は、受信方法60の上記ステップの全て又は一部を実施するように適合された1つ以上のプログラマブルロジック回路(FPGA、PLD等)、及び/又は1つ以上の専用化集積回路(ASIC)、及び/又は一組の離散電子構成要素等を備えることができる。
【0101】
受信デバイス40は、当該受信デバイス40がシンボルストリームを受信することを可能にする、処理回路41に結合された通信ユニット42も備える。通信ユニット42は、好ましくは無線通信ユニットであり、その場合に、通信ユニット42は、当業者に既知と考えられる構成要素(アンテナ、増幅器、局部発振器、ミキサー、アナログ及び/又はデジタルフィルター等)を備える無線周波数回路に対応する。
【0102】
換言すれば、受信デバイス40の処理回路41及び通信ユニット42は、受信方法60のステップの全て又は一部を実施するソフトウェア(特定のコンピュータープログラム製品)及び/又はハードウェア(プロセッサ、FPGA、PLD、ASIC、離散電子構成要素、無線周波数回路等)によって構成される一組の手段を形成する。
【0103】
上記説明は、本発明の様々な特徴及びそれらの特徴のそれぞれの利点によって、本開示が本発明について設定された目標に到達することを明らかに示している。特に、マルチレベルポーラ符号化変調の全てのレベルのガウス分布に従う対数尤度比の生成等を行うラベリング関数を最適化することによって、バイナリ入力AWGNチャネル用に設計された既製のポーラ符号を使用することができる簡単で効率的なマルチレベルポーラ符号化変調方式を有することが可能である。また、そのようなマルチレベルポーラ符号化変調方式は、必要に応じて、簡単な符号レート適合を可能にするのに適したレベルのそれぞれにおいて予測可能な性能を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データストリームを送信デバイスから受信デバイスに送信する方法であって、前記データストリームはm個のデータサブストリームを含み、mは4以上であり、該方法は、
それぞれのポーラ符号を用いて前記データサブストリームを符号化して、m個のポーラ符号化データサブストリームの生成等を行うことと、
それぞれのポーラ符号化データサブストリームからのm個のビットの連続するセットがシンボルストリームを形成する連続するシンボルに変換されるように、シンボルをそれぞれのポーラ符号化データサブストリームからのm個のビットのセットc1,...,cmに全単射的に関連付ける所定のラベリング関数Zに従って、前記m個のポーラ符号化データサブストリームを、複素平面における2m個の異なるシンボルを定義する、m個のレベルを含むマルチレベル変調のシンボルに変調することと、
前記シンボルストリームを前記受信デバイスに送信することと、
を含み、
前記マルチレベル変調の前記2m個のシンボルは、間隔係数Kによって前記実軸及び前記複素軸に沿って規則的に間隔を開けて配置されるように前記複素平面内に分散され、
前記所定のラベリング関数Zは、以下の式のようになっており、
【数1】
この式において、
【数2】
である、方法。
【請求項2】
前記使用されるm個のポーラ符号のそれぞれは、バイナリ入力加法性白色ガウス雑音AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記m個のポーラ符号の前記それぞれの符号レートは伝播条件に適合される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記送信デバイスから前記受信デバイスへの前記伝播の間に各データサブストリームが経験する信号対雑音比SNRを求めることと、
各データサブストリームが経験する前記SNRに基づいて、前記使用されるm個のポーラ符号のそれぞれの前記符号レートを選択することと、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記データサブストリーム及び/又は前記データサブストリームのそれぞれは、誤り検出符号を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記マルチレベル変調は16QAM変調であり、前記ラベリング関数は、以下の表によって与えられるか、
【表1】
又は、前記複素平面において前記シンボルのコンステレーションを90度の倍数角回転することによって、及び/又は前記実軸に対して前記シンボルのコンステレーションに軸方向反射を適用することによって、及び/又は前記複素軸に対して前記シンボルのコンステレーションに軸方向反射を適用することによって、及び/又は全ての前記ビット値を反転することによって、上記表を変更したものによって与えられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
プロセッサによって実行されると、請求項1~6のいずれか1項に記載の送信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピュータープログラム製品。
【請求項8】
プロセッサによって実行されると、請求項1~6のいずれか1項に記載の送信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピューター可読記憶媒体。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の送信方法を実行するように構成される処理回路を備える、データストリームを受信デバイスに送信するデバイス。
【請求項10】
受信デバイスによってデータストリームを受信する方法であって、前記データストリームはm個のデータサブストリームを含み、mは4以上であり、該方法は、
送信デバイスからの前記データストリームを含むシンボルストリームを受信することであって、前記シンボルストリームは、複素平面における2m個の異なるシンボルを定義する、m個のレベルを含むマルチレベル変調のシンボルを含むことと、
シンボルをそれぞれのポーラ符号化データサブストリームからのm個のビットのセットc1,...,cmに全単射的に関連付ける所定のラベリング関数Zの逆関数を適用することによって、m個のポーラ符号化データサブストリームを生成するために前記シンボルストリームの前記シンボルを復調することと、
それぞれのポーラ符号デコーダーを適用することによって、前記m個のポーラ符号化データサブストリームを逐次的に復号化して、m個のデータサブストリームの生成等を行うことと、
を含み、
前記使用されるマルチレベル変調の前記2m個のシンボルは、間隔係数Kによって前記実軸及び前記複素軸に沿って規則的に間隔を開けて配置されるように前記複素平面内に分散され、
前記所定のラベリング関数Zは、以下の式のようになっており、
【数3】
この式において、
【数4】
である、方法。
【請求項11】
前記使用されるm個のポーラ符号デコーダーのそれぞれは、バイナリ入力加法性白色ガウス雑音AWGNチャネル用に設計されたポーラ符号を復号化するように設計される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
使用される各ポーラ符号デコーダーはリストデコーダーである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
プロセッサによって実行されると、請求項10~12のいずれか1項に記載の受信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピュータープログラム製品。
【請求項14】
プロセッサによって実行されると、請求項10~12のいずれか1項に記載の受信方法を実行するように前記プロセッサを構成する命令を含む、コンピューター可読記憶媒体。
【請求項15】
請求項10~12のいずれか1項に記載の受信方法を実行するように構成される処理回路を備える、データストリームを送信デバイスから受信するデバイス。
【国際調査報告】