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特表2022-541701アルカリベースのプロモーターが導入された燃料極を含む固体酸化物燃料電池
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  • 特表-アルカリベースのプロモーターが導入された燃料極を含む固体酸化物燃料電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(54)【発明の名称】アルカリベースのプロモーターが導入された燃料極を含む固体酸化物燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20220916BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20220916BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20220916BHJP
【FI】
H01M4/86 B
H01M8/12 101
H01M8/1213
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562327
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2021-10-20
(86)【国際出願番号】 KR2020019414
(87)【国際公開番号】W WO2021261692
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0077017
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515238703
【氏名又は名称】コリア アドヴァンスド インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ウチュル
(72)【発明者】
【氏名】リム,デ-カン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジンウク
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018AS02
5H018BB05
5H018BB08
5H018EE01
5H018EE02
5H018EE12
5H126AA02
5H126BB06
5H126GG11
(57)【要約】
本発明による固体酸化物燃料電池は、燃料極にアルカリベースのプロモーターを導入することによって、性能が改善された固体酸化物燃料電池を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極、燃料極、および前記空気極と燃料極との間の電解質を含む固体酸化物燃料電池において、
前記燃料極の気孔の少なくとも一部領域にプロモーターを含み、
前記プロモーターは、アルカリ金属化合物である、
固体酸化物燃料電池。
【請求項2】
前記アルカリ金属化合物は、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、またはそれらの組み合わせである、
請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項3】
前記アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはセシウム(Cs)である、
請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項4】
前記プロモーターは、MO、MOH、またはそれらの組み合わせであり、
前記Mは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはセシウム(Cs)である、
請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項5】
前記燃料極は、金属-セラミック複合体燃料極である、
請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項6】
前記固体酸化物燃料電池の燃料極は、前記プロモーターを含まない固体酸化物燃料電池の燃料極に比べて電極抵抗が低い、
請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の固体酸化物燃料電池の製造方法において、
前記燃料極の気孔の少なくとも一部領域にアルカリ金属の前駆体を注入する段階(段階1);および
前記アルカリ金属の前駆体から前記プロモーターを生成する段階(段階2)を含む、
固体酸化物燃料電池の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ金属の前駆体は、アルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ金属の硝酸塩である、
請求項7に記載の固体酸化物燃料電池の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ金属の前駆体は、MCO、またはMNOであり、
前記Mは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはセシウム(Cs)である、
請求項8に記載の固体酸化物燃料電池の製造方法。
【請求項10】
前記段階1は、前記燃料極の表面に前記アルカリ金属の前駆体を含む溶液を塗布するか、または前記アルカリ金属の前駆体を含む溶液に前記燃料極を浸漬する、
請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項11】
前記段階1は、前記燃料極に燃料を注入するガスラインに前記アルカリ金属の前駆体を含む溶液を注入する、
請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項12】
前記段階1は、前記燃料極の表面に前記アルカリ金属の前駆体を含む集電体を接着する、
請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項13】
前記段階2は、前記燃料極に燃料を注入するガスラインに燃料または水分を注入する、
請求項8に記載の固体酸化物燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料極にアルカリベースのプロモーターを導入して、性能が改善された固体酸化物燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池(SOFC;solid oxide fuel cell)は化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換するエネルギー変換装置であって、酸素イオン伝導性電解質と、その両面に位置した空気極(cathode)および燃料極(anode)とからなる。
【0003】
固体酸化物燃料電池の各電極に空気と燃料を供給すれば、空気極では酸素の還元反応が起きて酸素イオンが生成され、生成された酸素イオンが電解質を介して燃料極に移動し、燃料極に供給された水素と反応して水を生成する。この時、燃料極では電子が生成され、空気極では電子が消耗するので、2つの電極を互いに連結すると電気が流れる方式で作動する。
【0004】
固体酸化物燃料電池は高温で作動するため、作動温度を低下させるための研究が進められており、これは、一般に空気極と燃料極の性能に関連する。空気極の場合、高い電子-イオン伝導度を有する多様な素材が開発されているが、燃料極の場合には、現在までNiを代替する優れた素材は開発されていない。
【0005】
そこで、固体酸化物燃料電池の作動温度が低くなる場合でも高い性能を有する燃料極の開発が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、燃料極にアルカリベースのプロモーターを導入して、性能が改善された固体酸化物燃料電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、空気極、燃料極、および前記空気極と燃料極との間の電解質を含む固体酸化物燃料電池において、前記燃料極の気孔の少なくとも一部領域にプロモーター(promoter)を含み、前記プロモーターは、アルカリ金属化合物である、固体酸化物燃料電池を提供する。
【0008】
固体酸化物燃料電池は高温で作動するため、作動温度を低下させるためには、特に空気極と燃料極の性能が改善されなければならず、本発明では、燃料極の性能を改善することに特徴がある。
【0009】
従来は、燃料極の素材や形状などを制御することによって燃料極の性能を改善しようとしていたが、これは、性能向上の幅が制限的であるだけでなく、技術的再現性が困難であるというデメリットがあった。しかし、本発明では、従来用いられる燃料極の素材や形状をそのまま用いながらも、アルカリ金属の前駆体を導入することによって、燃料極の性能を改善する特徴がある。
【0010】
本発明で用いられる「プロモーター」とは、燃料極の性能を向上させるために使用されるものであり、燃料極の成分や形状などの阻害なく燃料極に導入して性能を改善し、この観点から、本発明では、燃料極に導入される成分を「プロモーター」と称する。
【0011】
本発明によるプロモーターは、燃料極の気孔内に存在して、固体酸化物燃料電池が作動する時、燃料極に注入される気体、例えば、水素、炭化水素燃料などが前記プロモーターと接触する。したがって、本発明の「前記燃料極の気孔の少なくとも一部領域にプロモーターを含む」というのは、前記燃料極の気孔の少なくとも一部領域に前記プロモーターが挿入されて、固体酸化物燃料電池が作動する時、燃料極に注入される気体が燃料極内の気孔で前記プロモーターと接触できることを意味する。一方、前記プロモーターを燃料極に導入する方法は後述する。
【0012】
本発明において、前記プロモーターは、アルカリ金属化合物を意味する。好ましくは、前記アルカリ金属化合物は、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、またはそれらの組み合わせを意味する。
【0013】
具体的には、前記アルカリ金属化合物のアルカリ金属をMとした時、前記アルカリ金属酸化物はMO、アルカリ金属水酸化物はMOHで表すことができる。前記アルカリ金属(M)の例として、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはセシウム(Cs)が挙げられる。
【0014】
理論的に制限されるわけではないが、前記プロモーターは、燃料極の気孔内に存在しかつ燃料極と接しているが、燃料極の表面を部分的に酸化させ、また、水分が燃料極の気孔に注入された時、水分を燃料極の表面に多量吸着する効果を示す。これによって、燃料極と燃料極に注入された水素の強い結合を緩和して、燃料極で水素の酸化反応を促進し、また、水素が反応する面積を広げて燃料極の性能を改善する役割を果たす。さらに、固体酸化物燃料電池が作動する時、燃料極に炭素が沈積されることも抑制可能である。
【0015】
この観点から、本発明では、前記燃料極は、金属-セラミック複合体燃料極が好ましい。より好ましくは、前記金属-セラミック複合体の金属はNiである。最も好ましくは、前記燃料極は、NiとGDC(Gd doped CeO)の複合体である。
【0016】
前記のように、本発明による固体酸化物燃料電池の燃料極は、プロモーターが導入されることによって、前記プロモーターを含まない固体酸化物燃料電池の燃料極に比べて電極抵抗が低いという特徴がある。前記電極抵抗の比較は、プロモーターの導入の有無だけを除けば残りの条件、例えば、固体酸化物燃料電池の構成、作動条件などが同一であることを意味する。
【0017】
好ましくは、前記固体酸化物燃料電池の燃料極の電極抵抗は、前記プロモーターを含まない固体酸化物燃料電池の燃料極の電極抵抗対比、10%以下であり、より好ましくは90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、または5%以下である。
【0018】
また、後述する実施例のように、前記プロモーターの導入による燃料極の電極抵抗は、固体酸化物燃料電池の長時間駆動において安定的に維持されることを確認することができた。
【0019】
さらに、本発明は、上述した固体酸化物燃料電池の製造方法を提供する。具体的には、前記燃料極の気孔の少なくとも一部領域にアルカリ金属前駆体を注入する段階(段階1);および前記アルカリ金属前駆体から前記プロモーターを生成する段階(段階2)を含む、上述した固体酸化物燃料電池の製造方法を提供する。
【0020】
固体酸化物燃料電池の燃料極の気孔内にプロモーターを導入するためには、燃料極の気孔が形成されている状態でプロモーターが導入されなければならないので、プロモーターを燃料極の気孔内に直接導入させることは難しい。そこで、本発明では、アルカリ金属前駆体を燃料極の気孔の少なくとも一部領域に注入した後、化学反応により前記アルカリ金属前駆体からプロモーターを生成する方法を使用する。
【0021】
好ましくは、前記アルカリ金属の前駆体は、アルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ金属の硝酸塩である。上述のように、アルカリ金属をMとした時、前記アルカリ金属(M)の例として、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはセシウム(Cs)が挙げられ、前記アルカリ金属の炭酸塩はMCO、前記アルカリ金属の硝酸塩はMNOで表すことができる。
【0022】
好ましくは、前記段階1は、前記燃料極の表面に前記アルカリ金属の前駆体を含む溶液を塗布するか、または前記アルカリ金属の前駆体を含む溶液に前記燃料極を浸漬して行う。これによって、燃料極の気孔内に前記アルカリ金属の前駆体を含む溶液が注入される。このような方法は、固体酸化物燃料電池の燃料極の製造過程で適用できることはもちろん、固体酸化物燃料電池の駆動を止めて常温に下降した場合に適用可能であるという利点がある。
【0023】
好ましくは、前記段階1は、前記燃料極に燃料を注入するガスラインに前記アルカリ金属の前駆体を含む溶液を注入して行うことができる。固体酸化物燃料電池は燃料極に燃料を注入するガスラインがあるが、このようなガスラインにアルカリ金属の前駆体を含む溶液を注入すれば、前記アルカリ金属の前駆体を含む溶液が燃料極の気孔内に注入される。このような方法は、固体酸化物燃料電池のセルが駆動中に適用可能であるという利点がある。
【0024】
好ましくは、前記段階1は、前記燃料極の表面に前記アルカリ金属の前駆体を含む集電体(current collector)を接着して行うことができる。固体酸化物燃料電池において燃料極は集電体と接する構造からなっているため、集電体にアルカリ金属の前駆体を含むことによって、結果的に燃料極にアルカリ金属の前駆体を導入することができる。この時、前記アルカリ金属の前駆体は、溶媒形態はもちろん、粉末形態も適用することができる。このような方法は、固体酸化物燃料電池を製造する過程で乾式として適用可能という利点がある。
【0025】
好ましくは、前記段階2は、前記燃料極に燃料を注入するガスラインに燃料または水分を注入して行う。前記のように燃料または水分が注入されると、燃料極の気孔内に存在するアルカリ金属の前駆体と反応し、これによって、アルカリ金属の前駆体が上述したプロモーターに変換される。また、前記燃料は、水素を含むことが好ましい。
【0026】
一方、上述した本発明の燃料極を用いることを除いた残りの構成については、従来適用される固体酸化物燃料電池の構成を適用することができる。
【発明の効果】
【0027】
上述のように、本発明によりプロモーターを燃料極に導入すれば、燃料極の素材や形状の変化なくても固体酸化物燃料電池の性能を顕著に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施例1によるXPS結果を示したものである。
図2】本発明の実施例2で用いたHalf Cellの形状および断面図を示したものである。
図3】本発明の実施例2によるHalf Cellでの性能評価を示したものである。
図4】本発明の実施例3においてHalf Cellにプロモーターを注入する方法を図式的に示したものである。
図5】本発明の実施例3によるHalf Cellでの性能評価を示したものである。
図6】本発明の実施例4によるFull Cellでの性能評価を示したものである。
図7】本発明の実施例5によるFull Cellでの性能評価を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例および実験例について詳細に説明する。これらの実施例および実験例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例および実験例に限定されるものではない。
【0030】
実施例1:プロモーター導入の確認
本発明によるプロモーターが燃料極に導入されているか否かを確認すべく、以下の実験を行った。
【0031】
CsNO、NiO、GDC(10% Gd doped CeO)の混合粉末(1:5.4:3.6重量比)を、3%加湿された10%水素雰囲気(3%HO+10%H+87%Ar)下、450℃で10時間熱処理した後のXPS(Cs3d)を測定して、その結果を図1に示した。
【0032】
図1に示されているように、Csが存在することを確認することができ、これから、Cs前駆体が燃料極にプロモーターとして導入されていることを確認することができた。
【0033】
実施例2:Half Cellでの性能評価
段階1)Half Cellの製造
GDC(10% Gd doped CeO)粉末を成形した後、1450℃で5時間焼結した。その後、紙やすりを用いて表面を平坦にしてGDC試験片を製造した。
【0034】
NiOとGDCの6:4重量比の混合粉末、Ink vehicle(Fuelcellmaterials社)、およびエタノールを1:1:0.5の重量比で混合してペーストにした後、前記焼結されたGDC試験片にScreen Printing手法で両面にすべて塗布した後、1400℃で10時間焼結した。最後に、4%水素雰囲気(4%H+96%Ar)下、650℃で還元熱処理して、最終的に多孔性Ni-GDC電極(厚さ約8um)を製造した。製造されたHalf Cellの微細構造は図2の通りであった。
【0035】
段階2)Half Cellでの性能評価
前記製造したHalf Cellに常温(23℃)でCsNOが溶解した水溶液(0.023M)をピペットで10uLを多孔性Ni-GDC電極に直接注入した後、Half Cellを測定システムにローディングして、温度に応じた電極抵抗の変化を観察した。この時、印加されたガス雰囲気は3%加湿された10%水素(3%HO+10%H+87%Ar)を使用しており、測定結果を図3に示した。比較のために、プロモーターを適用しないHalf Cellも併せて測定し、プロモーターを適用しないHalf Cellを「Ni-GDC」、プロモーターを適用したHalf Cellを「p-Ni-GDC」と名付けた。
【0036】
図3に示されているように、プロモーターが適用された電極(p-Ni-GDC)の場合、一般のHalf Cell対照群(Ni-GDC)に比べて抵抗が著しく減少することを確認しただけでなく、450℃で10時間安定した抵抗値を示した。このような方法は、固体酸化物燃料電池のセルが駆動途中に止まり常温に下降した場合に適用可能である。
【0037】
実施例3:Half Cellでの性能評価
実施例2の段階1のHalf Cellを測定システムにローディングした後、これを駆動する過程でHalf CellにCsNOが溶解した水溶液(0.1M)2mLをSyringe Pumpを用いてガスラインに直接注入する方式を適用して性能を評価した。
【0038】
まず、図4に示されているように、初期に3%加湿された10%水素(3%HO+10%H+87%Ar)を注入し、120℃以上に加熱されたガスラインに対照群として先に蒸留水2mLを注入した。
【0039】
図5に示されているように、水による抵抗の変化(空色:薄色)は現れなかった。その後、同一の条件を作るために、装置内部を乾燥した後、同一の条件でCsNOが溶解した水溶液(0.1M)2mLを注入し、電極抵抗(青色:濃色)は急激に減少して、対照群対比100倍以上の抵抗減少を示した。
【0040】
図5の右側のNyquist plotの場合、それぞれ蒸留水とCsNOが溶解した水溶液を注入して10時間後の値を示したもので、急激な性能向上(抵抗減少)を確認することができた。このような方法は、固体酸化物燃料電池のセルが駆動中の状態で適用可能である。
【0041】
実施例4:Full Cellでの性能評価
段階1)Full Cellの製造
【0042】
NiOとGDCを6:4の質量比でボールミル(72時間、200rpm)により燃料極製造用混合粉末を製造した。製造された混合粉末を少量(約0.4g)小分けして、モールドと圧縮機を用いて一軸加圧(2MPa)で成形体を製造した。その後、900℃で1時間熱処理して仮焼結した。電解質製造のために、GDC粉末を分散剤とバインダーが含有されたエタノールベースの溶媒とボールミル(48時間、180rpm)により混合した後、電解質にDrop Coating手法で電解質層を積層した。その後、1500℃で5時間熱処理して内部に存在する有機物を除去し、約10umの厚さの緻密な電解質を製造した。その後、空気極製造用物質(PrBa0.5Sr0.5Ce1.5Fe0.55+δ)をScreen Printing手法で空気極層を作った後、900℃で10時間焼結して約10umの厚さの空気極を製造して、最終的にFull Cellを製造した。
【0043】
段階2)Full Cellでの性能評価
SOFC Full Cellの燃料極と外部から連結されたWireとの接触抵抗を最小化するために、集電体として用いられるSilver Pasteに少量のCsNO粉末を混合電極に接着した。このために、CsNO 30mgとSilver Pasteを乳鉢を用いて均一に混合した後、筆を用いて燃料極の表面を全て覆う程度に塗布した。Full Cellを測定システムにローディングし、一般に使用されるガスの条件として、空気極には空気を注入し、燃料極には3%加湿された水素(3%H+97%H)を供給し、作動温度に応じた性能を評価し、その結果を図6および下記表1に示した。比較のために、CsNO粉末を使用しないFuel Cellも併せて測定し、CsNO粉末を使用しないFuel Cellを「Fuel Cell」、CsNO粉末を使用したFuel Cellを「Promoted Fuel Cell」と名付けた。
【0044】
【表1】
【0045】
図6および前記表1に示されているように、プロモーターの適用の有無により、作動温度450℃で約19%の性能が向上し、特に温度が減少するに伴ってプロモーターによる性能向上が目立った。特に、中低温領域である400℃以下で50%以上の高い性能向上を示した。この方法は、固体酸化物燃料電池を製造してローディングする時、乾式として適用可能である。
【0046】
実施例5:Full Cellでの性能評価
実施例4で製造したFuel CellとPromoted Fuel Cellに対して、以下のように性能を評価した。
【0047】
450℃で先に3%加湿された水素(3%HO+97%H)で性能の安定を確認した後、3%加湿されたメタン(3%HO+97%CH)に燃料を変換して性能の変化を確認した。この時、0.8Vのバイアスを印加し、その結果を図7に示した。
【0048】
図7に示されているように、対照群であるFuel Cellの場合、5時間内に性能が低下して駆動が難しかったが(緑色:薄色(Ni-GDC))、プロモーターが適用されたPromoted Fuel Cellは安定した性能を示した(赤色:濃色(p-Ni-GDC))。また、各燃料極を観察した結果、対照群であるFuel Cellの場合、カーボン沈積によってカーボンファイバーが多く生成されたが、プロモーターが適用されたPromoted Fuel Cellは駆動時間内にカーボン沈積が発生しなかった。これから、本発明によるプロモーターにより燃料極内の炭素沈積も抑制されることを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】