(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(54)【発明の名称】自律車両制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/023 20120101AFI20220916BHJP
G05B 9/02 20060101ALI20220916BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20220916BHJP
B60W 50/035 20120101ALI20220916BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20220916BHJP
B60W 50/04 20060101ALI20220916BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20220916BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20220916BHJP
B60T 8/1755 20060101ALI20220916BHJP
B60T 8/1761 20060101ALI20220916BHJP
B60T 8/96 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
B60W50/023
G05B9/02 C
B60W40/02
B60W50/035
B60W60/00
B60W50/04
B60T7/12 Z
B60T17/18
B60T8/1755
B60T8/1761
B60T8/96
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021571658
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2019064406
(87)【国際公開番号】W WO2020244738
(87)【国際公開日】2020-12-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】タゲソン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲルスカンス,ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】バンディ,ヴィンツェンツ
【テーマコード(参考)】
3D049
3D241
3D246
5H209
【Fターム(参考)】
3D049AA02
3D049AA03
3D049BB01
3D049CC02
3D049CC03
3D049HH02
3D049HH10
3D049HH20
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049KK05
3D049KK07
3D049QQ04
3D241BA64
3D241BB71
3D241BB72
3D246AA12
3D246AA13
3D246AA14
3D246BA02
3D246BA03
3D246DA01
3D246EA02
3D246EA18
3D246GA01
3D246GB01
3D246GB04
3D246GC16
3D246LA32Z
3D246LA33Z
3D246LA72Z
3D246MA19
5H209AA10
5H209BB08
5H209BB09
5H209DD06
5H209GG20
5H209HH12
(57)【要約】
【解決手段】 本開示は、通常動作の間に自律車両の縦方向運動制御及び横方向運動制御を行うように構成される1次制御ユニット10と、緊急モードが有効にされるとバックアップ縦方向運動制御を行うように構成される2次バックアップ制御ユニット20とを備える、自律車両200の運動制御を行う自律車両制御システム100に関する。1次制御ユニットは、緊急モードが有効にされるとバックアップ横方向運動制御を行うように更に構成される。本発明は、自律車両の運動制御を行う方法と、自律車両とに更に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律車両(200)の運動制御を行う自律車両制御システム(100)であって、
通常動作の間に前記自律車両の縦方向運動制御及び横方向運動制御を行うように構成される1次制御ユニット(10)と、
緊急モードが有効にされるとバックアップ縦方向運動制御を行うように構成される2次バックアップ制御ユニット(20)と、
を備え、
前記1次制御ユニットは、前記緊急モードが有効にされるとバックアップ横方向運動制御を行うように更に構成される、
ことを特徴とする、自律車両制御システム。
【請求項2】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記横方向運動制御を伴わずに前記バックアップ縦方向運動制御を行うように構成され、好ましくは、前記バックアップ縦方向運動制御のみを行うように構成される、請求項1に記載の自律車両制御システム。
【請求項3】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記自律車両の制動制御のみを行うように構成される、請求項1又は2に記載の自律車両制御システム。
【請求項4】
前記緊急モードの間に行われる前記バックアップ縦方向運動制御は、前記自律車両を停止状態にするように行われる、請求項1~3の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項5】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記緊急モードが有効にされると、前記自律車両を制動する要求を含む制御信号(CS1、CS2)を、前記自律車両の1次ブレーキシステム(30)及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステム(40)のうちの少なくとも一方に送信するように構成される、請求項1~4の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項6】
前記1次制御ユニットは、通常動作の間、前記自律車両を制動する要求を含む制御信号(CS3)を前記自律車両の1次ブレーキシステムのみに送信するように構成される、請求項1~5の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項7】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記1次制御ユニットの障害を示す該1次制御ユニットからの信号(FS1)と、緊急停止が要求されていることを示す信号(ES)とのうちの少なくとも一方が、前記2次バックアップ制御ユニットによって受信されたときに、前記緊急モードを有効にするように構成される、請求項1~6の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項8】
前記1次制御ユニットは、該1次制御ユニットが利用可能であるときに、ハートビート信号(HS1)を前記2次バックアップ制御ユニットに送信するように構成され、
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記1次制御ユニットからの前記ハートビート信号が受信されないときに前記緊急モードを有効にするように構成される、請求項1~7の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項9】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記緊急モードが有効であることに関する信号(EMS)を送信するように構成され、該信号は、前記自律車両の1次ブレーキシステム及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、それによって、前記信号をルート変更して前記2次バックアップ制御ユニットに戻す接続構成と、前記緊急モードが有効にされたことを前記1次制御ユニットに通知するために前記信号を前記1次制御ユニットに送信する接続構成とのうちの少なくとも一方を、更に備える、請求項1~8の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項10】
縦方向制御コマンド及び横方向制御コマンド(CS4、CS5)を前記1次制御ユニットに送信するように構成され、該制御コマンドは、前記自律車両に設けられた車両周囲知覚センサから受信される情報に基づいている、車両自動化決定制御ユニット(50)を更に備える、請求項1~9の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項11】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記緊急モードが有効であることに関する信号(EMS)を送信するように構成され、該信号は、前記自律車両の1次ブレーキシステム及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、それによって、前記信号を前記車両自動化決定制御ユニットに送信する接続構成を更に備える、請求項10に記載の自律車両制御システム。
【請求項12】
前記2次バックアップ制御ユニットは、該2次バックアップ制御ユニットが利用可能であるときに、ハートビート信号(HS2)を前記1次制御ユニット及び/又は請求項10に記載の車両自動化決定制御ユニットに送信するように構成される、請求項1~11の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項13】
前記2次バックアップ制御ユニットは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)である、請求項1~12の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項14】
自律車両の運動制御を行う方法であって、
前記自律車両は、縦方向運動制御及び横方向運動制御を行う1次制御ユニットと、緊急モードの間にバックアップ縦方向運動制御を行う2次バックアップ制御ユニットとを含む自律車両制御システムを備えたものであり、
通常動作の間に前記1次制御ユニットによって前記自律車両の縦方向運動制御及び横方向運動制御を行うステップを含み、
前記緊急モードが有効にされると前記1次制御ユニットによってバックアップ横方向運動制御を行うステップ(S1)と、
前記緊急モードが有効にされると前記2次バックアップ制御ユニットによってバックアップ縦方向運動制御を行うステップ(S2)と、
を更に含む、
ことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記2次バックアップ制御ユニットによってバックアップ縦方向運動制御を行う前記ステップは、前記横方向運動制御を行わずに実行され、好ましくは、前記バックアップ縦方向運動制御のみを行うことである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記2次バックアップ制御ユニットによってバックアップ縦方向運動制御を行う前記ステップは、前記自律車両の制動制御のみを行うことである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記緊急モードの間に行われる前記縦方向運動制御は、前記自律車両を停止状態にするように行われる、請求項14~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記緊急モードが有効にされると、前記2次バックアップ制御ユニットによって制御信号を、前記自律車両の1次ブレーキシステム及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に送信するステップを更に含み、
前記制御信号は、前記自律車両を制動する要求を含む、請求項15~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
通常動作の間に前記1次制御ユニットによって制御信号を、前記自律車両の1次制動システムにのみ送信するステップを更に含み、
前記制御信号は、前記自律車両を制動する要求を含む、請求項14~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記1次制御ユニットの障害を示す該1次制御ユニットからの信号と、緊急停止が要求されていることを示す信号とのうちの少なくとも一方が、前記2次バックアップ制御ユニットによって受信されたときに、前記緊急モードを有効にするステップを更に含む、請求項14~19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記1次制御ユニットが利用可能であるときに、前記1次制御ユニットによってハートビート信号を前記2次バックアップ制御ユニットに送信し、前記1次制御ユニットからの前記ハートビート信号が受信されないときに、前記2次バックアップ制御ユニットによって前記緊急モードを有効にするステップを更に含む、請求項14~20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記2次バックアップ制御ユニットによって、前記緊急モードが有効であることに関する信号を送信するステップであって、前記信号は、前記自律車両の1次ブレーキシステム及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、前記信号をルート変更して前記2次バックアップ制御ユニットに戻し、及び/又は、前記緊急モードが有効にされたことを前記1次制御ユニットに通知するために前記信号を前記1次制御ユニットに送信するステップを更に含む、請求項14~21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記自律車両制御システムが車両自動化決定制御ユニットを更に備えたものであり、縦方向制御コマンド及び横方向制御コマンドを前記1次制御ユニットに送信するステップを更に含み、該制御コマンドは、前記自律車両に設けられた車両周囲知覚センサから受信される情報に基づいている、請求項14~22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記2次バックアップ制御ユニットによって、前記緊急モードが有効であることに関する信号を送信するステップであって、前記信号は、前記自律車両の1次ブレーキシステム及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、前記信号を前記車両自動化決定制御ユニットに送信するステップを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記2次バックアップ制御ユニットが利用可能であるときに、ハートビート信号を前記1次制御ユニット及び/又は請求項23に記載の車両自動化決定制御ユニットに送信するステップを更に含む、請求項14~24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~13の何れか1項に記載の自律車両制御システム(100)を備える自律車両(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律車両(autonomous vehicle)の運動制御を行う自律車両制御システムに関する。本発明は、さらに、自律車両の運動制御を行う方法と、自律車両制御システムを備える自律車両とに関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス及び建設機器等の大型車両において適用することができる。本発明は、大型トラックについて説明されるが、本発明はこの特定の車両に限定されるものではなく、軽量トラック、トレーラ式ダンプトラック(articulated hauler)、掘削車、ホイールローダ、及びバックホウローダ(backhoe loader)等の他の車両においても使用することができる。
【背景技術】
【0003】
自律車両の自律運転能力と関係がある自律車両技術は、近年急速に発展してきた分野である。自律車両が公道を運転しているのを見るのがますます一般的になる可能性がある。トラック、バス、建設機器車両等の商用車両が、公道及び/又は限られた区域に適合した自律運転能力を有することがより一般的になる可能性もある。
【0004】
特に重要な1つの分野は、運動制御の冗長性を有する確実な自律車両制御システムを提供することである。より詳細には、自律運転中に車両の運動制御能力に影響を及ぼす車両内の或るものが故障した場合に、運動制御を引き継ぎ、車両を安全停止させることができるバックアップシステムが存在することが最も重要である。
【0005】
自律車両の冗長な制御システムの1つの例は、米国特許出願公開第2018/0229738号に見ることができる。その要約書によれば、少なくとも1つの制御ネットワークと、センサと、センサ信号及び通信信号を処理し、横方向制御及び縦方向制御の制御信号を送信する自律運転制御ユニットと、を有する自律道路車両の安全停止デバイスを開示している。1次ブレーキ制御ユニットは、障害の有無について縦方向制御信号を監視し、障害があると判断すると、自律運転制御ユニットから独立して記憶された縦方向制御プロファイルを実行し、停止に向けた制動を行うように構成されている。1次ステアリング制御ユニットが、障害の有無について横方向制御信号を監視し、障害があると判断すると、自律運転制御ユニットから独立して記憶された横方向制御軌道に従うように1次ステアリングアクチュエータを制御し、まだトリガされていない場合には、1次ブレーキ制御ユニットを同時にトリガして、記憶された縦方向制御プロファイルを実行し、横方向制御軌道の実行中に停止に向けた制動を行うようにホイールブレーキを制御する。
【0006】
上述したシステムは、自律車両の運動制御の冗長性を有するが、車両の安全性と妥協しないよりコスト効率の高い確実なシステムを提供することが望ましいことが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0229738号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑み、本発明の目的は、自律車両の運動制御のための確実でコスト効率の高い自律車両制御システムを提供すること、又は、少なくとも既に知られている自律車両制御システムの優れた代替システムを提供することである。さらに、本発明の目的は、自律車両の運動制御の改良された方法及び/又は上記車両制御システムを備える自律車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様によれば、上記目的は、請求項1に記載の自律車両制御システムによって達成される。第2の態様によれば、上記目的は、請求項14に記載の方法によって達成される。第3の態様によれば、上記目的は、請求項26に記載の自律車両によって達成される。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、上記目的は、通常動作の間に自律車両の縦方向運動制御及び横方向運動制御を行うように構成される1次制御ユニットと、緊急モードが有効にされるとバックアップ縦方向運動制御を行うように構成される2次バックアップ制御ユニットと、を備える自律車両の運動制御を行う自律車両制御システムによって達成される。1次制御ユニットは、緊急モードが有効にされるとバックアップ横方向運動制御を行うように更に構成される。
【0011】
本明細書に開示されるような自律車両制御システムを提供することによって、安全性と妥協することなく、コスト効率の高い方法で運動制御の冗長性を達成することができる。一般的な理解は、全ての運動制御の構成要素が、十分な冗長性を提供するために複製される必要があるということである。
しかしながら、これは、多くの部分からなる複雑なシステムをもたらすおそれがあり、これらのシステムは、少なくともいくつかのタイプの自律車両にとって不必要に高価なものとなるおそれもある。このことに鑑み、本発明者らは、限られた区域内で動作している車両等の少なくともいくつかのタイプの自律車両については、本明細書に開示されるような、運動制御の冗長性を有する確実な自律車両制御システム構成をより低コストで提供することを認識している。より詳細には、1次制御ユニットにバックアップ横方向運動制御を導入するとともに、別個の2次バックアップ制御ユニットにバックアップ縦方向運動制御を導入することによって、2次バックアップ制御ユニットは、バックアップ横方向運動制御も行うように構成される場合と比較して、よりシンプルな制御ユニットとすることができる。
加えて、1次制御ユニットにおいてバックアップ横方向運動制御を行うことによって、横方向運動制御用の別個の制御ユニットを追加する必要がない。例示の実施形態によれば、バックアップ横方向運動制御は、1次制御ユニット内の別個のソフトウェアモジュールによって行われ、それによって、ソフトウェア冗長性が提供される。したがって、縦方向運動制御は、ハードウェア冗長性によって実現され、横方向運動制御は、1次制御ユニット内のソフトウェア冗長性によって実現することができる。横方向運動制御の冗長性及び縦方向運動制御の冗長性をこのようにして管理することは、緊急モード中は、横方向運動制御よりも縦方向運動制御を行う方がより重要であるという理解に基づいている。
【0012】
本明細書において使用されるような「通常モード」という用語は、主要なハードウェア障害及び/又はソフトウェア障害が検出されることなく、運動制御が1次制御ユニットによって行われる車両のモードを意味し、任意選択で、緊急要求が出されていないときに、運動制御が1次制御ユニットによって行われる車両のモードも意味する。
【0013】
本明細書において使用されるような「緊急モード」という用語は、通常モードでない車両のモードであって、ハードウェア障害及び/又はソフトウェア障害が検出されている車両のモード、及び/又は、緊急要求が出されているときの車両のモードを意味する。一実施形態によれば、緊急要求は、緊急ボタン等を押すことによって出されてもよい。緊急ボタン等は、車両、及び/又は、車両と無線で通信することができるバックオフィス本部等内の車両から遠隔のロケーションに設けられてもよい。
【0014】
本明細書において使用されるような「縦方向運動制御」という用語は、自律車両の縦方向における車両の運動制御を意味する。通常、縦方向運動制御は、制動制御及び/又は推進制御を含むことができ、制動アクチュエータを制御することによって及び/又は推進手段を制御することによって行うことができる。
【0015】
本明細書において使用されるような「横方向運動制御」という用語は、自律車両が所定の進路に従うことができるようにする車両の横方向における車両の運動制御を意味する。通常、横方向運動制御は、自律車両が前方及び/又は後方への運転中にその横方向位置を変化させるように、ホイール等の車両の地面係合手段を制御するステアリングアクチュエータ等を制御することによって行うことができる。単なる例として、横方向運動制御は、自律車両の前輪及び/又は後輪の向きを変えることによって行うことができる。
【0016】
任意選択で、2次バックアップ制御ユニットは、横方向運動制御を伴わずにバックアップ縦方向運動制御を行うように構成してもよく、好ましくは、バックアップ縦方向運動制御のみを行うように構成してもよい。それによって、2次バックアップ制御ユニットは、より簡単な計算を行うだけでよいことを保証することができ、これによって、ひいては、制御ユニットを、より複雑さの低いものとし、より低コストのものにすることが可能になる。更に任意選択で、2次バックアップ制御ユニットは、自律車両の制動制御のみを行うように構成してもよく、それによって、より複雑さの低い制御ユニット構成の使用がより一層可能になる。更に任意選択で、緊急モードの間に行われるバックアップ縦方向運動制御は、自律車両を停止状態にするように構成してもよい。例えば、緊急モードが有効であるときに自律車両を制動して停止状態にするようにのみ構成される2次バックアップ制御ユニットを有することによって、より複雑でより多くの部分からなるシステム構成を必要とすることなく、高い安全性を提供することができる。より複雑さの低いものにした結果として、より確実でより信頼性の高い縦方向運動制御を、コスト効率の高い方法で提供することができる。
【0017】
任意選択で、2次バックアップ制御ユニットは、緊急モードが有効にされると、自律車両を制動する要求を含む制御信号を、自律車両の1次ブレーキシステム及び自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に送信するように構成してもよい。更に任意選択で、1次制御ユニットは、自律車両を制動する要求を含む制御信号を自律車両の1次ブレーキシステムにのみ送信するように構成してもよい。それによって、2次バックアップ制御ユニットは、自律車両の1次ブレーキシステム及び自律車両の任意選択的な2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に接続されるが、1次制御ユニットは、1次ブレーキシステムにのみ接続されることから、より複雑さを低くすることができる。自律車両の2次バックアップブレーキシステムを設けることによって、バックアップ縦方向運動制御を更に改善することができる。単なる例として、2次バックアップブレーキシステムは、自律車両のブレーキを作動させるように適合されたソレノイドバルブを含むことができる。
【0018】
任意選択で、2次バックアップ制御ユニットは、以下の信号、すなわち、1次制御ユニットの障害を示す1次制御ユニットからの信号と、緊急停止が要求されていることを示す信号とのうちの少なくとも一方が、2次バックアップ制御ユニットによって受信されたときに、緊急モードを有効にするように構成してもよい。
【0019】
したがって、好ましい実施の形態によれば、2次バックアップ制御は、緊急モードを有効にするように構成することができる。本明細書に開示されるような自律車両制御システムを設けることによって、2次バックアップ制御ユニットは、1次制御ユニットよりも確実なものとすることができ、それによって、より複雑な構成を必要とする可能性がある1次制御ユニットではなく、2次バックアップ制御ユニットによって緊急モードを有効にすることによって、改善された運動制御の冗長性を提供することができる。緊急停止が要求されることを示す信号は、例えば、緊急ボタン又は同等の手段が作動されたときに生成することができる。この緊急ボタン又は同等の手段は、自律車両に配置してもよいし、自律車両から遠隔部位に配置してもよい。この信号は、例えば、自律車両の別の関連システムが、緊急停止が必要とされることを示す場合にも生成することができる。例えば、自律車両周囲知覚センサが何らかの理由によって利用不能である場合があり、このことは、緊急停止が要求されることを示す信号をトリガすることができる。
【0020】
任意選択で、1次制御ユニットは、該1次制御ユニットが利用可能であるときに、ハートビート信号を2次バックアップ制御ユニットに送信するように構成してもよく、2次バックアップ制御ユニットは、1次制御ユニットからのハートビート信号が受信されないときに緊急モードを有効にするように構成してもよい。本明細書において使用されるような「ハートビート信号」という表現は、通常動作を示すために提供される、ハードウェア及び/又はソフトウェアによって生成される周期的な及び/又は連続した信号と定義することができる。ハートビート信号がもはや予想通りに送信されない場合に、これは、或るものが機能しなくなっている場合があることの表示である。1次制御ユニットから2次バックアップ制御ユニットにこのようにハートビート信号を送信することによって、2次バックアップ制御ユニットは、ハートビート信号がもはや予想通りに送信されないときに緊急モードを有効にするので、運動制御の冗長性を更に改善することができる。
【0021】
任意選択で、2次バックアップ制御ユニットは、緊急モードが有効であることに関する信号を送信するように構成してもよく、この信号は、自律車両の1次ブレーキシステム及び自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、それによって、自律車両制御システムは、信号をルート変更して2次バックアップ制御ユニットに戻す接続構成と、緊急モードが有効にされたことを1次制御ユニットに通知するために信号を1次制御ユニットに送信する接続構成とのうちの少なくとも一方を、更に備える。信号をルート変更して2次バックアップ制御ユニットに戻すことによって、制動要求を開始するための通信に現われ得るあらゆる可能な障害を回避することができる。すなわち、2次バックアップ制御ユニットが制動要求の開始に失敗する場合があり、信号をルート変更することによってそのような失敗を回避することができることが分かっている。
したがって、信号をルート変更することによって、コスト効率の高い方法で運動制御の冗長性を改善することができる。加えて、信号を1次制御ユニットに送信することによって、緊急モードが有効にされたことを1次制御ユニットに通知することができ、この情報に基づいて、1次制御ユニットは、例えば、縦方向制動要求を1次ブレーキシステムに送信することを停止することができる。また更に、信号が1次制御ユニットに送信され、ルート変更もされて2次バックアップ制御ユニットに戻る場合に、双方の制御ユニットが同時に制動要求を開始しないというリスクが大幅に低減される。
【0022】
任意選択で、自律車両制御システムは、車両自動化決定制御ユニットを更に備えてもよく、車両自動化決定制御ユニットは、縦方向制御コマンド及び横方向制御コマンドを1次制御ユニットに送信するように構成され、これらの制御コマンドは、自律車両に設けられた車両周囲知覚センサから受信される情報に基づいている。
【0023】
任意選択で、2次バックアップ制御ユニットは、緊急モードが有効であることに関する信号を送信するように構成してもよく、この信号は、自律車両の1次ブレーキシステム及び自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、それによって、自律車両制御システムは、信号を車両自動化決定制御ユニットに送信する接続構成を更に備える。車両自動化決定制御ユニットへの緊急モードが有効であることの信号は、システムのステータスを通知するのに使用することができる。この情報は、例えば、自律車両が緊急モードに入ったことをバックオフィス本部に通知する等の他の動作を開始するのに使用されてもよい。
【0024】
任意選択で、2次バックアップ制御ユニットが利用可能であるときに、2次バックアップ制御ユニットは、1次制御ユニット及び/又は車両自動化決定制御ユニットにハートビート信号を送信するように構成してもよい。したがって、ハートビート信号は、2次バックアップ制御ユニットが利用可能であり、必要に応じて縦方向運動制御を引き継ぐ準備ができていることを知らせるのに使用されてもよい。ハートビート信号が受信されない場合には、1次制御ユニットによって自律車両を安全停止させる、及び/又は、2次バックアップ制御ユニットが利用不能であることをバックオフィス本部に通知する等の特定の動作を開始することができる。これは、例えば、自律車両がサービスセンタ等に戻るべきであるという動作をトリガすることができる。
【0025】
任意選択で、2次バックアップ制御ユニットは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)であってもよい。そのような制御ユニットは、不要で複雑な計算手段を用いることなく、信頼性のあるバックアップ縦方向運動制御を行うのに適していることが分かっている、シンプルでコスト効率の高い制御ユニットである。更に任意選択で、2次バックアップ制御ユニットは、緊急モードが有効にされると、制動要求のみを実行するように適合してもよい。それによって、2次バックアップ制御ユニットに可能な限り少ない機能を有するだけで、制御ユニットをより確実にすることができ、これによって、ひいては、より信頼性の高い運動制御の冗長性が提供される。更に別の例として、2次バックアップ制御ユニットがPLCである場合に、このPLCは、動作中に確実で信頼性のある既定のセキュリティクラス規格に従って構成される「安全PLC」とすることができる。例えば、「安全PLC」は、規格「IEC 61508 - Functional Safety of Electrical/Electronic/Programmable Electronic Safety-related Systems」を満たすように構成することができる。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、上記目的は、自律車両の運動制御を行う方法によって達成され、自律車両は、縦方向運動制御及び横方向運動制御を行う1次制御ユニットと、緊急モードの間にバックアップ縦方向運動制御を行う2次バックアップ制御ユニットとを備える自律車両制御システムを備え、本方法は、通常動作の間に1次制御ユニットによって自律車両の縦方向運動制御及び横方向運動制御を行うステップを含み、
本方法は、以下のステップ、すなわち、
緊急モードが有効にされると1次制御ユニットによってバックアップ横方向運動制御を行うステップと、
緊急モードが有効にされると2次バックアップ制御ユニットによってバックアップ縦方向運動制御を行うステップと、
を更に含むことを特徴とする。
【0027】
本発明の第2の態様によって提供される利点及び効果は、本発明の第1の態様の実施の形態による自律車両制御システムによって提供されるような利点及び効果と概ね同様である。本発明の第2の態様の全ての実施の形態は、本発明の第1の態様の全ての実施の形態に適用可能であるとともにそれらの実施の形態と組み合わせ可能であり、その逆も同様であることに留意されたい。
【0028】
任意選択で、2次バックアップ制御ユニットによってバックアップ縦方向運動制御を行うステップは、横方向運動制御を行わずに実行してもよく、好ましくは、バックアップ縦方向運動制御のみを行ってもよい。
【0029】
任意選択で、2次バックアップ制御ユニットによってバックアップ縦方向運動制御を行うステップは、自律車両の制動制御のみを行ってもよい。
【0030】
任意選択で、緊急モードの間に行われる縦方向運動制御は、自律車両を停止状態にするように構成してもよい。
【0031】
任意選択で、本方法は、緊急モードが有効にされると、2次バックアップ制御ユニットによって制御信号を、自律車両の1次ブレーキシステム及び自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に送信するステップを更に含んでもよく、制御信号は、自律車両を制動する要求を含む。
【0032】
任意選択で、本方法は、通常動作の間に1次制御ユニットによって制御信号を自律車両の1次制動システムにのみ送信するステップを更に含んでもよく、制御信号は、自律車両を制動する要求を含む。
【0033】
任意選択で、本方法は、以下の信号、すなわち、1次制御ユニットの障害を示す1次制御ユニットからの信号と、緊急停止が要求されていることを示す信号とのうちの少なくとも一方が、2次バックアップ制御ユニットによって受信されたときに、緊急モードを有効にするステップを更に含んでもよい。
【0034】
任意選択で、本方法は、1次制御ユニットが利用可能であるときに、該1次制御ユニットによってハートビート信号を2次バックアップ制御ユニットに送信し、1次制御ユニットからのハートビート信号が受信されないときに、2次バックアップ制御ユニットによって緊急モードを有効にするステップを更に含んでもよい。
【0035】
任意選択で、本方法は、2次バックアップ制御ユニットによって、緊急モードが有効であることに関する信号を送信するステップを更に備えてもよく、この信号は、自律車両の1次ブレーキシステム及び自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、さらに、信号をルート変更して2次バックアップ制御ユニットに戻し、及び/又は、緊急モードが有効にされたことを1次制御ユニットに通知するために信号を1次制御ユニットに送信するステップを更に含んでもよい。
【0036】
任意選択で、自律車両制御システムは、車両自動化決定制御ユニットを更に備えてもよく、本方法は、縦方向制御コマンド及び横方向制御コマンドを1次制御ユニットに送信するステップを更に含んでもよく、これらの制御コマンドは、自律車両に設けられた車両周囲知覚センサから受信される情報に基づいている。
【0037】
任意選択で、本方法は、2次バックアップ制御ユニットによって、緊急モードが有効であることに関する信号を送信するステップを更に含んでもよく、この信号は、自律車両の1次ブレーキシステム及び自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、さらに、信号を車両自動化決定制御ユニットに送信するステップを更に含んでもよい。
【0038】
任意選択で、本方法は、2次バックアップ制御ユニットが利用可能であるときに、ハートビート信号を1次制御ユニット及び/又は車両自動化決定制御ユニットに送信するステップを更に含んでもよい。
【0039】
本発明の第3の態様によれば、上記目的は、本発明の第1の態様の実施の形態のうちの任意の1つによる自律車両制御システムを備える自律車両によって達成される。
【0040】
本発明の第3の態様によって提供される利点及び効果は、本発明の第1の態様の実施の形態による自律車両制御システム及び本発明の第2の態様の実施の形態による方法によって提供されるような利点及び効果と概ね類似している。本発明の第3の態様の全ての実施の形態は、本発明の第1の態様及び第2の態様の全ての実施の形態に適用可能であるとともにそれらの実施の形態と組み合わせ可能であり、その逆も同様であることにも留意されたい。
【0041】
任意選択で、自律車両は、トラック、バス、建設機器車両等のうちの任意のものとしてもよい。更に任意選択で、自律車両は、乗用車等のロードカーとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の一実施形態による自律車両制御システムを備える自律車両を示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による自律車両制御システムの概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による別の自律車両制御システムの概略図である。
【
図4】本発明の例示の実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面を参照して、例として挙げる本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0044】
これらの図面は、本発明の実施形態を例示する図を示し、それゆえ、必ずしも縮尺通りに描かれているとは限らない。図示及び記載される実施形態は、例示であること、及び、本発明は、これらの実施形態に限定されないことを理解されたい。また、図面におけるいくつかの詳細は、本発明をより明確に記載及び図示するために誇張される場合があることに留意されたい。別段に述べられない限り、本明細書全体を通して、同一の参照符号は、同一の要素を指す。
【0045】
図1は、本発明の第3の態様による自律トラック200の側面図を示している。この自律トラックは、ここでは大型トラック(heavy-duty truck)である。このトラックは、本発明の第1の態様による自律車両制御システム100を備える。この自律車両制御システム100については、
図2~
図4を参照して以下で更に説明される。本発明は、公道車両を含む任意のタイプの自律車両に適用可能であるが、物流センタ、港湾、建設現場、鉱業地等内といった限られた区域内で動作する自律車両に特に適していることが示されている。すなわち、本発明者らは、運動制御の冗長性をそのような自律車両について異なる方法で有利に実施することができ、それによって、信頼性のある確実な運動制御の冗長性をよりコスト効率の高い方法で達成することができることを認識している。実際、そのような自律車両の場合に、自律車両の横方向運動制御について、あまり厳しくない冗長性要件を提供することができ、好ましくは、バックアップ縦方向運動制御のみを提供するように構成される別個の2次制御ユニットにおいてこのバックアップを提供することによって、バックアップ縦方向運動制御を改善することができる。
【0046】
図2は、自律車両の運動制御を行う自律車両制御システム100のアーキテクチャの一実施形態の概略を示す説明図である。自律車両制御システムは、複数のレイヤL
0~L
2に分離することができる。例えば、レイヤL
0は、ステアリングシステム80と、1次ブレーキシステム30と、パワートレインシステム70とを備えることができる。ステアリングシステム80は、好ましくは、自律車両200の横方向運動制御を行うステアリングアクチュエータ等の軌道制御エンティティ(図示せず)を含むことができる。1次ブレーキシステム30は、制動アクチュエータ等の縦方向制御エンティティ(図示せず)を含むことができる。1次ブレーキシステム30は、例えば液圧ブレーキシステム又は空気圧ブレーキシステムとすることができる。パワートレインシステム70は、車両の推進力を提供する内燃機関(ICE)を含むことができる。パワートレインシステム70は、もちろん、電気的動力によって、及び、電気的動力とICEとの組み合わせ、すなわちハイブリッドシステム等によって動力を提供する他の手段を含むことができる。
【0047】
図2におけるレイヤL
1は、「車両運動動力管理レイヤ」と表記される場合がある。このレイヤは、通常動作中に自律車両の縦方向運動制御及び横方向運動制御を行うように構成される1次制御ユニット10を備える。さらに、レイヤL
1は、緊急モードが有効にされるとバックアップ縦方向運動制御を行うように構成される2次バックアップ制御ユニット20を備える。1次制御ユニット10は、緊急モードが有効にされるとバックアップ横方向運動制御を行うように更に構成される。緊急モードは、例えば、緊急要求を出すことによって有効にすることができ、緊急要求は、2次バックアップ制御ユニット20に接続された緊急ボタン90を押すことによって出されてもよい。
【0048】
車両運動動力管理レイヤL
1の1次制御ユニット10及び2次バックアップ制御ユニット20は、制御要求をレイヤL
0のシステムに出すように構成される。より詳細には、
図2における制御ユニット10と1次ブレーキシステム30との間の矢印によって示すように、1次制御ユニット10は、自律車両200の通常動作中に縦方向ブレーキ制御要求を1次ブレーキシステム30に出すように構成される。
図2における制御ユニット10とステアリングシステム80及びパワートレインシステム70との間の矢印によって示すように、1次制御ユニット10は、通常動作中に、横方向制御要求をステアリングシステム80に出し、縦方向パワートレイン要求をパワートレインシステム70に出すように更に構成される。
図2で更に分かるように、2次バックアップ制御ユニット20は、縦方向ブレーキ要求を1次ブレーキシステム30に出すように構成され、これは、緊急モードが有効であるとき、例えば、緊急ボタン90が押されたときに行われる。緊急モードが有効である間、1次制御ユニット10は、好ましくは、1次ブレーキシステム30へのあらゆる縦方向ブレーキ要求を行うことを停止する。これは、2次バックアップ制御ユニットが、緊急モードが有効であることを示す信号を1次制御ユニット10に送信するので停止することができる。
したがって、1次制御ユニット10及び2次バックアップ制御ユニット20は互いに通信接続され、それによって、信号をそれらの間で双方向に送信することができる。一方、緊急モードの間、1次制御ユニット10は、バックアップ横方向運動制御を行うように構成される。バックアップ横方向運動制御は、1次制御ユニットが、緊急モードが有効であることを示す信号を2次バックアップ制御ユニットから受信すると、有効にされる。バックアップ横方向運動制御は、好ましくは、1次制御ユニット10の別個のソフトウェアモジュールにおいて行われ、それによって、十分かつ信頼性のあるバックアップ横方向制御が行われる。
【0049】
1次制御ユニット10は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ又は別のプログラマブルデバイスを含むことができる。1次制御ユニット10は、更に又は代わりに、特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ若しくはプログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジックデバイス、又はデジタル信号プロセッサを含んでもよい。1次制御ユニット10が、上述のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はプログラマブルデジタル信号プロセッサ等のプログラマブルデバイスを含む場合には、プロセッサは、プログラマブルデバイスの動作を制御するコンピュータ実行可能コードを更に含んでもよい。1次制御ユニット10は、時に統合ソフトウェアを伴うことがある組み込みハードウェアを備えることができ、この場合に、このハードウェアは密接な物理的関係を示す。物理的関係の例は、ケーシングの共有及び1つ又はいくつかの回路基板に実装された構成要素の共有である。
2次バックアップ制御ユニット20も、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ又は別のプログラマブルデバイスを含むことができる。2次バックアップ制御ユニット20は、更に又は代わりに、特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ若しくはプログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジックデバイス、又はデジタル信号プロセッサを含んでもよい。2次バックアップ制御ユニット20が、上述のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はプログラマブルデジタル信号プロセッサ等のプログラマブルデバイスを含む場合には、プロセッサは、プログラマブルデバイスの動作を制御するコンピュータ実行可能コードを更に含んでもよい。2次バックアップ制御ユニット20は、時に統合ソフトウェアを伴うことがある組み込みハードウェアを備えることができ、この場合に、このハードウェアは密接な物理的関係を示す。物理的関係の例は、ケーシングの共有及び1つ又はいくつかの回路基板に実装された構成要素の共有である。2次バックアップ制御ユニット20は、好ましくはより高度な制御ユニットである1次制御ユニット10と比較して、好ましくは、より複雑ではなく、したがって、より確実な制御ユニットである。単なる例として、2次バックアップ制御ユニットは、上述したようにPLCとすることができる。
【0050】
図2及び
図3に示すような1次制御ユニット10及び2次バックアップ制御ユニット20は、共通のハードウェア構成要素も共有しないように分離される。1次制御ユニット10は、1つ以上の接続されたサブ制御ユニット又は同等のコンピュータリソースによって形成することができ、2次バックアップ制御ユニット20も、1つ以上の接続されたサブ制御ユニット又は同等のコンピュータリソースによって形成することができることに留意されたい。ただし、上記のように、図示するような1次制御ユニット10及び2次バックアップ制御ユニット20は、共通のハードウェア構成要素も共有しないように分離される。
【0051】
図2に示す実施形態で更に分かるように、自律車両制御システム100は、車両自動化決定制御ユニット50を備えるレイヤL
2も備えることができる。この車両自動化決定制御ユニット50は、縦方向制御コマンド及び横方向制御コマンドを1次制御ユニット10に送信するように構成される。これらの制御コマンドは、自律車両200に設けられた車両周囲知覚センサ(図示せず)から受信される情報に基づいている。レイヤL
2は、「交通状況管理レイヤ」と表記される場合があり、動作中に例えば5秒~10秒先までの自律車両の短期的な軌道についての決定を行うように適合することができる。車両周囲知覚センサから受信される情報に基づいて制御コマンドを送信することに加えて、GPS、Glonass(登録商標)、Galileo(登録商標)及び同様のソリューションとすることができるジオロケーション手段等の他の情報源も使用してもよい。単なる例として、車両周囲知覚センサは、カメラ、LIDAR(光検出及び測距:Light Detection and Ranging)システム及びRADAR(無線検出及び測距:Radio Detection and Ranging)システムの形態のものとすることができる。
【0052】
車両自動化決定制御ユニット50は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ又は別のプログラマブルデバイスを含むことができる。車両自動化決定制御ユニット50は、更に又は代わりに、特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ若しくはプログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジックデバイス、又はデジタル信号プロセッサを含んでもよい。車両自動化決定制御ユニット50が、上述のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はプログラマブルデジタル信号プロセッサ等のプログラマブルデバイスを含む場合には、プロセッサは、プログラマブルデバイスの動作を制御するコンピュータ実行可能コードを更に含むことができる。車両自動化決定制御ユニット50は、時に統合ソフトウェアを伴うことがある組み込みハードウェアを備えることができ、この場合に、このハードウェアは密接な物理的関係を示す。物理的関係の例は、ケーシングの共有及び1つ又はいくつかの回路基板に実装された構成要素の共有である。
【0053】
図2における実施形態から更に分かるように、車両自動化決定制御ユニット50は、2次バックアップ制御ユニット20に直接接続されていない。これは、簡素化されたシステムアーキテクチャを提供し、このアーキテクチャは、そこに発生する障害のリスクも低減する。ただし、いくつかの実施形態においては、2次バックアップ制御ユニット20が、緊急モードが有効であることを示す信号を車両自動化決定制御ユニット50に送信することができるように、2次バックアップ制御ユニット20を車両自動化決定制御ユニット50に直接接続することもできることに言及しておく。したがって、この接続構成は、それらのユニット間の一方向直接通信リンクとすることができ、その場合に、2次バックアップ制御ユニット20からの信号のみを車両自動化決定制御ユニット50に送信することができ、逆方向の信号を送信することができない。送信される信号は、例えば、緊急モードが有効にされたことをレイヤL
2に通知するのに使用することができる。この情報は、例えば、車両が緊急モードにあることと、停止状態にされること又はされたこととをリモートバックオフィス本部(図示せず)に通知するのに使用されてもよい。
【0054】
図3は、本発明による自律車両制御システム100の別の実施形態を示し、特に、1次制御ユニット10及び2次バックアップ制御ユニット20がより詳細に示されている。このシステムも、
図2について説明したものと同様に、3つのシステムレイヤL
0~L
2に分割される。レイヤL
0は、
図2について説明したものと同様に、1次ブレーキシステム30と、パワートレインシステム70と、ステアリングシステム80とを備える。このレイヤは、パークブレーキシステム60と、2次ブレーキシステム40とを更に備え、それによって、2次ブレーキシステム40は、1次ブレーキシステム30に対するバックアップシステムとなり、例えば、1次ブレーキシステム30の液圧ブレーキ回路又は空気圧ブレーキ回路(図示せず)に接続されたソレノイドバルブによって構成することができる。緊急モードが有効であるとき、自律車両200が停止状態にされるようにソレノイドバルブをオンさせることによって、自律車両200のブレーキを作動させることができる。
【0055】
図3に示すような1次制御ユニット10は、デフォルトの縦方向及び横方向ダイナミクス制御モジュール11と、バックアップ横方向ダイナミクス制御モジュール12とを備えることができる。そして、それによって、バックアップ横方向ダイナミクス制御モジュール12は、好ましくは、1次制御ユニット10内の別個のソフトウェアモジュールであり、それによって、ソフトウェアの冗長性を提供する。
【0056】
1次制御ユニット10は、デフォルトの縦方向及び横方向ダイナミクス制御モジュール11からの障害を示す信号DS及び/又は2次バックアップ制御ユニット20からのハートビート信号HS2を受信するように構成される診断集計モジュール13を更に備えることができる。診断集計モジュール13は、信号DSが受信されたとき及び/又はハートビート信号HS2が受信されないときに、特定された障害について通知するステータス信号DCSを車両自動化決定制御ユニット50に送信するように更に構成することができる。加えて、診断集計モジュール13は、信号DSが受信されたとき及び/又はハートビート信号HS2が受信されないときに、障害信号FS1を2次バックアップ制御ユニット20に送信するように更に構成することができる。
【0057】
1次制御ユニット10は、リレーロジック及びソースセレクタロジックを備えるアービトレーションモジュール14を更に備えることができる。より詳細には、2次バックアップ制御ユニット20は、ここでは、緊急モードが有効であることに関する信号EMSを送信するように構成される。この信号は、自律車両200の1次ブレーキシステム30及び自律車両200の2次バックアップブレーキシステム40のうちの少なくとも一方に対する制動要求CS1及び/又はCS2を開始するために送信され、それによって、自律車両制御システム100は、緊急モードが有効にされたことを1次制御ユニット10に通知する信号EMSを、1次制御ユニット10のアービトレーションモジュール14に送信する接続構成を更に備える。信号EMSは、リレーロジック141及び142と、ソースセレクタロジック143とに送信することができる。信号EMSがリレーロジック141に送信されると、緊急モードがこの時点で有効であるので、通常動作中に1次ブレーキシステム30に送信されるブレーキシステム要求信号CS3は、リレーロジック141において阻止される。
代わりに、ブレーキ要求信号CS1が、2次バックアップ制御ユニット20によって1次ブレーキシステム30に送信される。信号CS1は、自律車両200のブレーキを作動させるように制御し、それによって、自律車両200は、安全かつ迅速な方法で停止状態にされる。EMS信号は、パワートレイン要求信号CS7がパワートレインシステム70に送信されるのを阻止するリレーロジック142にも送信することができる。
また更に、EMS信号は、ソースセレクタロジック143にも送信することができ、ソースセレクタロジックは、EMS信号を受信すると、デフォルトの縦方向及び横及び横方向ダイナミクス制御モジュールからのステアリングシステム要求CS8の代わりに、バックアップ横方向ダイナミクス制御モジュール12からのステアリング要求信号CS9をステアリングシステム80に送信することを可能にする。
【0058】
加えて、又は代替形態として、EMS信号をルート変更して2次バックアップ制御ユニット20に戻してもよい。すなわち、起こり得る状況として、1次制御ユニット10は、2次バックアップ制御ユニット20が縦方向運動制御を「引き継いでいる」と検知しているが、2次バックアップ制御ユニット20は、何らかの理由からブレーキ要求信号CS1及び/又はCS2を1次ブレーキシステム30及び/又は2次ブレーキシステム40に送信することができない場合があることが分かっている。
したがって、EMS信号をルート変更することによって、前記ユニット10と20との間の上記のようなタイプの誤通信を回避することができ、その結果、より安全かつより確実な構成が得られる。加えて、又は代替形態として、EMS信号は、
図2について説明したような車両自動化決定制御ユニット50にも送信することができる。代替の実施形態においては、EMS信号は、緊急モードが有効であるときに信号CS6がパークブレーキシステム60に送信されるのを阻止する別のリレーロジック(図示せず)にも送信することができる。
【0059】
図2について説明したものと同様に構成することができる車両自動化決定制御ユニット50は、縦方向制御コマンドCS4及び横方向制御コマンドCS5を、1次制御ユニット10のデフォルトの縦方向及び横方向ダイナミクス制御モジュール11及びバックアップ横方向ダイナミクス制御モジュール12に送信するように構成される。これらの制御コマンドは、自律車両200に設けられた車両周囲知覚センサから受信される情報に基づいている。信号CS4は縦方向制御コマンドを含み、信号CS5は横方向制御コマンドを含み、デフォルトの縦方向及び横方向ダイナミクス制御モジュール11及びバックアップ横方向ダイナミクス制御モジュール12に送信される一方、信号CS4は、デフォルトの縦方向及び横方向ダイナミクス制御モジュール11にのみ送信される。
【0060】
図3に示すようなパークブレーキシステム60は、デフォルトの縦方向及び横方向ダイナミクス制御モジュール11からパーキングブレーキ要求信号CS6を受信するように構成される。
【0061】
好ましくは1次制御ユニット10と比較して複雑さの低いPLC等の制御ユニットである2次バックアップ制御ユニット20は、デコーダ23と、ORゲート21と、緊急停止制御モジュール22とを備えることができる。ORゲート21は、1次制御ユニット10からの障害信号FS1、ルート変更されたEMS信号、1次制御ユニット10からのハートビート信号HS1が受信されないときのデコーダ23からの信号、及び例えば作動された緊急ボタン90からの緊急要求信号ES等の種々の信号を受信するように構成される。前述の信号のうちの何れか1つがORゲート21によって受信されると、緊急モード有効信号EMSがORゲートから送信される。この信号は、その後、緊急停止制御モジュール22に送信され、緊急停止制御モジュールは、次に、バックアップブレーキ要求信号CS1及びCS2を送信する。それによって、ブレーキ要求信号CS1及び/又はCS2は、緊急モードが有効であるときに自律車両が安全に停止状態にされることを保証する。
【0062】
図4は、本発明の第2の態様による自律車両200の運動制御を行う方法の例示の実施形態のフローチャートを示している。自律車両200は、縦方向運動制御及び横方向運動制御を行う1次制御ユニット10と、緊急モードの間にバックアップ縦方向運動制御を行う2次バックアップ制御ユニット20とを備える自律車両制御システム100を備える。本方法は、通常動作の間に1次制御ユニット10によって、自律車両の縦方向運動制御及び横方向運動制御を行うステップを含む。本方法は、以下のステップ、
S1:緊急モードが有効にされると、1次制御ユニットによってバックアップ横方向運動制御を行うステップと、
S2:緊急モードが有効にされると、2次バックアップ制御ユニットによってバックアップ縦方向運動制御を行うステップと、を更に含む。
【0063】
本発明は、以上で説明し、図面に示した実施形態に限定されるものではない。むしろ、当業者は、添付の特許請求の範囲の適用範囲内で、多くの変更及び修正を行うことができることを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2020-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律車両(200)の運動制御を行う自律車両制御システム(100)であって、
通常動作の間に前記自律車両の縦方向運動制御及び横方向運動制御を行うように構成される1次制御ユニット(10)と、
緊急モードが有効にされるとバックアップ縦方向運動制御を行うように構成される2次バックアップ制御ユニット(20)と、
を備え、
前記1次制御ユニット
(10)は、前記緊急モードが有効にされるとバックアップ横方向運動制御を行うように更に構成さ
れ、該バックアップ横方向運動制御は、前記1次制御ユニット(10)内の別個のソフトウェアモジュールによって行われる、
ことを特徴とする、自律車両制御システム。
【請求項2】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記横方向運動制御を伴わずに前記バックアップ縦方向運動制御を行うように構成され、好ましくは、前記バックアップ縦方向運動制御のみを行うように構成される、請求項1に記載の自律車両制御システム。
【請求項3】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記自律車両の制動制御のみを行うように構成される、請求項1又は2に記載の自律車両制御システム。
【請求項4】
前記緊急モードの間に行われる前記バックアップ縦方向運動制御は、前記自律車両を停止状態にするように行われる、請求項1~3の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項5】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記緊急モードが有効にされると、前記自律車両を制動する要求を含む制御信号(CS1、CS2)を、前記自律車両の1次ブレーキシステム(30)及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステム(40)のうちの少なくとも一方に送信するように構成される、請求項1~4の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項6】
前記1次制御ユニットは、通常動作の間、前記自律車両を制動する要求を含む制御信号(CS3)を前記自律車両の1次ブレーキシステムのみに送信するように構成される、請求項1~5の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項7】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記1次制御ユニットの障害を示す該1次制御ユニットからの信号(FS1)と、緊急停止が要求されていることを示す信号(ES)とのうちの少なくとも一方が、前記2次バックアップ制御ユニットによって受信されたときに、前記緊急モードを有効にするように構成される、請求項1~6の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項8】
前記1次制御ユニットは、該1次制御ユニットが利用可能であるときに、ハートビート信号(HS1)を前記2次バックアップ制御ユニットに送信するように構成され、
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記1次制御ユニットからの前記ハートビート信号が受信されないときに前記緊急モードを有効にするように構成される、請求項1~7の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項9】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記緊急モードが有効であることに関する信号(EMS)を送信するように構成され、該信号は、前記自律車両の1次ブレーキシステム及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、それによって、前記信号をルート変更して前記2次バックアップ制御ユニットに戻す接続構成と、前記緊急モードが有効にされたことを前記1次制御ユニットに通知するために前記信号を前記1次制御ユニットに送信する接続構成とのうちの少なくとも一方を、更に備える、請求項1~8の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項10】
縦方向制御コマンド及び横方向制御コマンド(CS4、CS5)を前記1次制御ユニットに送信するように構成され、該制御コマンドは、前記自律車両に設けられた車両周囲知覚センサから受信される情報に基づいている、車両自動化決定制御ユニット(50)を更に備える、請求項1~9の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項11】
前記2次バックアップ制御ユニットは、前記緊急モードが有効であることに関する信号(EMS)を送信するように構成され、該信号は、前記自律車両の1次ブレーキシステム及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、それによって、前記信号を前記車両自動化決定制御ユニットに送信する接続構成を更に備える、請求項10に記載の自律車両制御システム。
【請求項12】
前記2次バックアップ制御ユニットは、該2次バックアップ制御ユニットが利用可能であるときに、ハートビート信号(HS2)を前記1次制御ユニット及び/又は請求項10に記載の車両自動化決定制御ユニットに送信するように構成される、請求項1~11の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項13】
前記2次バックアップ制御ユニットは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)である、請求項1~12の何れか1項に記載の自律車両制御システム。
【請求項14】
自律車両の運動制御を行う方法であって、
前記自律車両は、縦方向運動制御及び横方向運動制御を行う1次制御ユニットと、緊急モードの間にバックアップ縦方向運動制御を行う2次バックアップ制御ユニットとを含む自律車両制御システムを備えたものであり、
通常動作の間に前記1次制御ユニットによって前記自律車両の縦方向運動制御及び横方向運動制御を行うステップを含み、
前記緊急モードが有効にされると前記1次制御ユニットによってバックアップ横方向運動制御を行うステップ
であって、該バックアップ横方向運動制御は、前記1次制御ユニット内の別個のソフトウェアモジュールによって行われる、ステップ(S1)と、
前記緊急モードが有効にされると前記2次バックアップ制御ユニットによってバックアップ縦方向運動制御を行うステップ(S2)と、
を更に含む、
ことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記2次バックアップ制御ユニットによってバックアップ縦方向運動制御を行う前記ステップは、前記横方向運動制御を行わずに実行され、好ましくは、前記バックアップ縦方向運動制御のみを行うことである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記2次バックアップ制御ユニットによってバックアップ縦方向運動制御を行う前記ステップは、前記自律車両の制動制御のみを行うことである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記緊急モードの間に行われる前記縦方向運動制御は、前記自律車両を停止状態にするように行われる、請求項14~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記緊急モードが有効にされると、前記2次バックアップ制御ユニットによって制御信号を、前記自律車両の1次ブレーキシステム及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に送信するステップを更に含み、
前記制御信号は、前記自律車両を制動する要求を含む、請求項15~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
通常動作の間に前記1次制御ユニットによって制御信号を、前記自律車両の1次制動システムにのみ送信するステップを更に含み、
前記制御信号は、前記自律車両を制動する要求を含む、請求項14~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記1次制御ユニットの障害を示す該1次制御ユニットからの信号と、緊急停止が要求されていることを示す信号とのうちの少なくとも一方が、前記2次バックアップ制御ユニットによって受信されたときに、前記緊急モードを有効にするステップを更に含む、請求項14~19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記1次制御ユニットが利用可能であるときに、前記1次制御ユニットによってハートビート信号を前記2次バックアップ制御ユニットに送信し、前記1次制御ユニットからの前記ハートビート信号が受信されないときに、前記2次バックアップ制御ユニットによって前記緊急モードを有効にするステップを更に含む、請求項14~20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記2次バックアップ制御ユニットによって、前記緊急モードが有効であることに関する信号を送信するステップであって、前記信号は、前記自律車両の1次ブレーキシステム及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、前記信号をルート変更して前記2次バックアップ制御ユニットに戻し、及び/又は、前記緊急モードが有効にされたことを前記1次制御ユニットに通知するために前記信号を前記1次制御ユニットに送信するステップを更に含む、請求項14~21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記自律車両制御システムが車両自動化決定制御ユニットを更に備えたものであり、縦方向制御コマンド及び横方向制御コマンドを前記1次制御ユニットに送信するステップを更に含み、該制御コマンドは、前記自律車両に設けられた車両周囲知覚センサから受信される情報に基づいている、請求項14~22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記2次バックアップ制御ユニットによって、前記緊急モードが有効であることに関する信号を送信するステップであって、前記信号は、前記自律車両の1次ブレーキシステム及び前記自律車両の2次バックアップブレーキシステムのうちの少なくとも一方に対する制動要求を開始するために送信され、前記信号を前記車両自動化決定制御ユニットに送信するステップを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記2次バックアップ制御ユニットが利用可能であるときに、ハートビート信号を前記1次制御ユニット及び/又は請求項23に記載の車両自動化決定制御ユニットに送信するステップを更に含む、請求項14~24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~13の何れか1項に記載の自律車両制御システム(100)を備える自律車両(200)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上述したシステムは、自律車両の運動制御の冗長性を有するが、車両の安全性と妥協しないよりコスト効率の高い確実なシステムを提供することが望ましいことが分かっている。
米国特許出願公開第2019/009797号は、その要約書によれば、自律運転車両を制御するシステム、方法及び装置に関する。この方法の特定の実施形態は、ハートビート信号及び/又は通信データをマスタ制御端末デバイスに周期的に送信し、マスタ制御端末デバイスが故障しているか否かを判断することと、マスタ制御端末デバイスの故障の判断に応答して、スタンバイセンサによって収集されたデータを取得し、このデータを解析して制御命令を生成し、生成された制御命令を電子コントローラに送信して、電子コントローラが自律運転車両を制御することを可能にすることとを含む。これを実施することによって、自律運転車両の信頼性が改善される。
欧州特許出願公開第3421308号は、その要約書によれば、自律運転システムを有する自律車両の自律制動操作を作動させるための自律車両によって実行される方法に関する。自律車両は、車両が或る速度において第1の自律運転モードにあるときに、車両の自律制動操作の少なくとも1つのユーザ開始要求を検出する。この自律制動操作は、減速又は停止のうちの少なくとも一方である。この要求が検出されると、自律車両は、減速し及び/又は車両を制動して停止させる車両の自律制動操作を作動させる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本明細書に開示されるような自律車両制御システムを提供することによって、安全性と妥協することなく、コスト効率の高い方法で運動制御の冗長性を達成することができる。一般的な理解は、全ての運動制御の構成要素が、十分な冗長性を提供するために複製される必要があるということである。
しかしながら、これは、多くの部分からなる複雑なシステムをもたらすおそれがあり、これらのシステムは、少なくともいくつかのタイプの自律車両にとって不必要に高価なものとなるおそれもある。このことに鑑み、本発明者らは、限られた区域内で動作している車両等の少なくともいくつかのタイプの自律車両については、本明細書に開示されるような、運動制御の冗長性を有する確実な自律車両制御システム構成をより低コストで提供することを認識している。より詳細には、1次制御ユニットにバックアップ横方向運動制御を導入するとともに、別個の2次バックアップ制御ユニットにバックアップ縦方向運動制御を導入することによって、2次バックアップ制御ユニットは、バックアップ横方向運動制御も行うように構成される場合と比較して、よりシンプルな制御ユニットとすることができる。
加えて、1次制御ユニットにおいてバックアップ横方向運動制御を行うことによって、横方向運動制御用の別個の制御ユニットを追加する必要がない。本発明によれば、バックアップ横方向運動制御は、1次制御ユニット内の別個のソフトウェアモジュールによって行われ、それによって、ソフトウェア冗長性が提供される。したがって、縦方向運動制御は、ハードウェア冗長性によって実現され、横方向運動制御は、1次制御ユニット内のソフトウェア冗長性によって実現することができる。横方向運動制御の冗長性及び縦方向運動制御の冗長性をこのようにして管理することは、緊急モード中は、横方向運動制御よりも縦方向運動制御を行う方がより重要であるという理解に基づいている。
【国際調査報告】