IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 湖南方升泰医薬科技有限公司の特許一覧

<>
  • 特表-金属錯体の新規応用 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(54)【発明の名称】金属錯体の新規応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/555 20060101AFI20220916BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220916BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20220916BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A61K31/555
A61P25/02 101
A61P25/06
A61P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577521
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2020097507
(87)【国際公開番号】W WO2020259447
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】201910547684.X
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521565844
【氏名又は名称】湖南方升泰医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】謝方
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086DA31
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA21
4C086ZB11
(57)【要約】
疼痛を治療する式I構造の薬物成分である。この薬物は、経口、経皮、直腸、静脈、皮
下、舌下、腹腔などの方法で動物体に投与され、その鎮痛作用を発揮することができる。
薬物の活性成分は、製造が便利で、鑑別同定が容易であり、その化学構造は、既存の他の
鎮痛薬とは異なり、新規で、有効な鎮痛化合物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iの化合物の疼痛を治療する薬物の製造における使用。
式I
(式中、M´=VO(IV)、Co2+、Zn2+、MoO2(IV)又はPt2+で
あり、X1=O又はSであり、X2=O又はSであり、Y=O又はNR4であり、R1、
R2、R3又はR4はH、ヒドロキシ基、メルカプト基、C1~C14アルキル基、ヒド
ロキシC1~C14アルキル基、C1~C14アルコキシ基、メルカプトC1~C14ア
ルキル基、C1~C14アルキルチオ基、アリール基又はアリールC1~C14アルキル
基である。)
【請求項2】
一般式IIIの化合物の疼痛を治療する薬物の製造における使用。
式III
(式中、Y=Oであり、R1、R2及びR3はそれぞれヒドロキシ基、メルカプト基、
ヒドロキシC1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、メルカプトC1~C4アル
キル基、C1~C4アルキルチオ基、フェニル基又はフェニルC1~C4アルキル基であ
り、又はY=NR4であり、R3=Hであり、R1、R2及びR4はそれぞれヒドロキシ
基、メルカプト基、ヒドロキシC1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、メルカ
プトC1~C4アルキル基、C1~C4アルキルチオ基、フェニル基又はフェニルC1~
C4アルキル基である。)
【請求項3】
一般式IVの化合物の疼痛を治療する薬物の製造における使用。
式IV
(式中、R1=H、R2=Meであり、又はR1=H、R2=-CH2CH3であり、
又はR1=-CH2OH、R2=Hである。)
【請求項4】
式I、式III又は式IVの化合物が、
ビス(マルトラト)白金
ビス(マルトラト)亜鉛
ビス(マルトラト)ジオキソモリブデン
ビス(コジャト)ジオキソモリブデン(VI)
ビス(マルトラト)オキソバナジウム
ビス(エチルマルトラト)オキソバナジウム
ビス(コジャト)オキソバナジウム
ビス(3-ヒドロキシ-1-メチル-4-ピリジノナト)オキソバナジウム(IV)
ビス(3-ヒドロキシ-2-メチル-4-ピリジノナト)Co(II)
から選ばれる請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疼痛を治療するための方法及び医薬成分に関し、特に急性疼痛(acute
pain)、慢性疼痛(chronic pain)、炎症性疼痛、癌性疼痛及び癌治
療による疼痛、内臓痛、神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害による疼痛(diabeti
c neuropathy)、帯状疱疹後神経痛(post-herpetic pai
n)、片頭痛、線維筋痛症(fibromyalgia)、三叉神経痛(trigemi
nal neuralgia)を治療する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、組織損傷や潜在的な組織損傷に関連する不快な主観的感覚及び感情的体験であ
る。臨床上、多くの場合、疼痛は患者の主訴である。多くの疼痛は有効な治療が得られな
いため、患者の全体的な能力が低下し、行動が制限され、睡眠が乱れ、生活の質が低下し
てしまう。それだけではなく、疼痛のせいでもっと深刻な結果を引き起こす恐れがあり、
1999年の統計によると、毎日2百万人以上が疼痛のために行動能力を失った[M. Wil
liams, E.A. Kowaluk, and S.P. Arneric, J. Med. Chem. 42,1481-1500(1999)]、例え
ば、癌、関節炎、片頭痛などによる疼痛がある。
【0003】
疼痛のタイプが多種多様であり、病気の経過時間の長さによって疼痛は急性疼痛と慢性
疼痛とに分類でき、発生部位によって内臓痛、関節痛、筋肉痛、片頭痛などに分類できる
。疼痛は炎症性疼痛や神経障害性疼痛などの機序の観点から分類することもできる。しか
しながら、神経障害性疼痛の本質は神経の炎症であり、神経障害性疼痛と炎症性疼痛とは
脱離不能な関係があるとの理論がある。
【0004】
人体の完全性は、免疫系と神経系との2つの系が協調して運行することによって保証さ
れたものである。人体組織が損傷を受けた場合に、この2つの系は、協調して運行するこ
とによって、損傷を受けた部分を感知するだけではなく、協調して損傷のさらなる拡散を
防止し、かつ損傷部分を迅速に修復し、これが炎症の過程である。この過程が免疫系によ
り主に調節されると、体液性炎症(humoral inflammation)と呼ば
れ、神経系によって引き起こされるものは、神経性炎症(neurogenic inf
lammation)と呼ばれる。炎症による疼痛は神経終末の活性化から始まり、神経
終末が感覚ニューロン(sensorial neurons)から構成され、また侵害
受容ニューロン(nociceptor neurons)或いは侵害受容器(noci
ceptors)と呼ばれる。これらの受容器は、組織損傷の信号を脊髄や大脳の疼痛処
理センターに伝達する。(US 2011/0206752 A1及びその引用文献)疼
痛を大脳及び中枢神経に伝達した後、侵害受容器はその伝達機能を発揮し、疼痛を促進し
、炎症を促進する分子を放出し、炎症及び疼痛を誘発し、侵害受容器の興奮性(exci
tability)又は末梢感作(peripheral sensitization
)を変え、炎症部位に知覚刺激の変化、例えば痛覚過敏(hyperalgesia)又
は異痛症(allodynia)を引き起こす。周辺侵害受容器の持続的興奮は脊髄のシ
ナプス変化(synaptic changes)を引き起こし、それにより、中枢感作
の過程を引き起こす。
【0005】
免疫系と疼痛との間の親密な関係は事実上の生物学的証拠があり、生理的条件下でも病
理的条件下でも、侵害受容器には一連の免疫関連受容体、例えばケモカイン(chemo
kine)受容体と免疫グロブリン(Fc)受容体が発現され、これらの受容体はしばし
ば免疫細胞で発見される。[T. Wang and C. Ma, Adv. Exp. Med. Biol. 904, 77-85(201
6)]
【0006】
疼痛に対する従来の治療法は、アスピリン及びイブプロフェンを代表とする非ステロイ
ド系抗炎症薬(NSAIDs)と、モルヒネ系薬物と、その他に抗けいれんと抗うつ薬と
の4種類に大別される。しかし、これらの既存の薬物には大きな制限がある。例えば、非
ステロイド系抗炎症薬の鎮痛作用には上限効果があり、即ち、ある程度まで薬物量を増や
しても疼痛を軽減することができず、また腸管の不快感、長期服用による胃潰瘍を引き起
こす。また、モルヒネ系薬物は広範囲に応用されているが、その副作用、例えば便秘、呼
吸機能低下及び依存症のため、患者に投与される量が厳しく制限されている。
【0007】
要する要するに、既存の薬物はヒトの疼痛コントロールに対する要求、特に慢性疼痛の
治療にははるかに満足できない。新しい標的薬物の開発は特に重要であり、従来の鎮痛薬
の制限性は、それが作用する標的の制限性に起因する可能性が高い。副作用が小さく、持
続的な鎮痛薬或いは疼痛を根治する薬物を探すことは薬物開発の方向である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、化学構造が式Iで示され、即ち遷移金属イオン(例えばn2+、Co2+、
Pt2+)又は酸化金属イオン(例えばVO(IV)、MoO2(VI))とalpha
-ヒドロキシピロン又はalpha-ヒドロキシピリジノン系配位子とからなる金属錯体
であり、該金属錯体の特徴が、2つの同一のalpha-ヒドロキシピロン又はalph
a-ヒドロキシピリジノン系配位子が、1つの遷移金属イオン又は酸化金属イオンと錯化
し、ここで、遷移金属イオン又は酸化金属イオンが、X1及びX2と不飽和の、金属イオ
ンを含む5員環を形成し、X1及びX2はいずれもヘテロ原子である鎮痛薬成分を提供す
る。VO(IV)は
を表し、MoO2(VI)
を表す。
式I
(式中、M´=VO(IV)、Co2+、Zn2+、MoO2(IV)又はPt2+で
あり、X1=O又はSであり、X2=O又はSであり、Y=O又はNR4であり、R1、
R2、R3又はR4はH、ヒドロキシ基、メルカプト基、C1~C14アルキル基、ヒド
ロキシC1~C14アルキル基、C1~C14アルコキシ基、メルカプトC1~C14ア
ルキル基、C1~C14アルキルチオ基、アリール基又はアリールC1~C14アルキル
基である。)
【0009】
式Iで示される金属錯体を形成する配位子であるalpha-ヒドロキシピロン又はa
lpha-ヒドロキシピリジノン系化合物は、式IIで示されてもよい。これらの化合物
の共通の特徴は、ヒドロキシ基(又はメルカプト基)が一つのカルボニル基(又はチオカ
ルボニル基)に隣接していることである。
式II
(式中、X1=O又はSであり、X2=O又はSであり、Y=O又はNR4であり、R
1、R2、R3及びR4はそれぞれH、ヒドロキシ基、メルカプト基、ヒドロキシC1~
C14アルキル基、C1~C14アルコキシ基、C1~C14アルキル基、メルカプトC
1~C14アルキル基、C1~C14アルキルチオ基、アリール基又はアリールC1~C
14アルキル基である。)
【0010】
さらに好ましいalpha-ヒドロキシピロン系配位子又はalpha-ヒドロキシピ
リジノン系配位子と上記遷移金属イオン又は酸化金属イオンによって形成された金属錯体
(式Iに示す)は、式IIIで示されてもよい。
式III
(式中、M´=VO(IV)、Co2+、Zn2+、MoO2(IV)又はPt2+で
あり、Y=Oであり、R1、R2及びR3はそれぞれヒドロキシ基、メルカプト基、ヒド
ロキシC1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、メルカプトC1~C4アルキル
基、C1~C4アルキルチオ基、フェニル基又はフェニルC1~C4アルキル基であり、
又はY=NR4であり、R3=Hであり、R1、R2及びR4はそれぞれヒドロキシ基、
メルカプト基、ヒドロキシC1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、メルカプト
C1~C4アルキル基、C1~C4アルキルチオ基、フェニル基又はフェニルC1~C4
アルキル基である。)
【0011】
さらに好ましい化合物は、式IVで示されるalpha-ヒドロキシピロン系金属錯体
である。
式IV
(式中、M´=VO(IV)、Co2+、Zn2+、MoO2(IV)又はPt2+で
あり、R1=H、R2=Meであり、又はR1=H、R2=-CH2CH3であり、又は
R1=-CH2OH、R2=Hである。)
【0012】
上記配位子は、通常の化学合成技術により合成することができる。これらの配位子の金
属錯体は、通常、適当な金属塩(例えば、ZnSO4、K2PtCl4、VOSO4、C
o(NO3)2、(NH4)2Mo2O7等)と配位子(例えば、マルトール、エチルマ
ルトール、コウジ酸等)とを混合することによってワンポット法で合成することができ、
ここで、マルトールの分子構造はR1=R3=H、R2=Me、X1=X2=Y=Oの式
IIであり、エチルマルトールの分子構造はR1=R3=H、R2=-CH2CH3、X
1=X2=Y=Oの式IIであり、コウジ酸の分子構造はR2=R3=H、R1=-CH
2OH、X1=X2=Y=Oの式IIである。
【0013】
本発明は、次の化合物であることが特に好ましい。
【0014】
ビス(マルトラト)白金[bis(maltolato)platinum]
該化合物は、公知文献に報告されている方法により調製することができる[S.D. Kushc
h,E.N. Izakovich, O.S. Roshchunkina, V.M. Nichvoloda, and M.L. Khidekel, Bull. A
cad. Sci.,Div. Chem. Sci. 30,681-682(1981)参照]。
【0015】
ビス(マルトラト)亜鉛[bis(maltolato)zinc]
該化合物は、公知文献に報告されている方法により調製することができる[B.S. Parjo
n-Costa and E.J. Baran, Spectrochim. Acta Part A: Mol. and Biomol. Spectro.113,
337-339(2013)参照]。
【0016】
ビス(マルトラト)ジオキソモリブデン[Bis(maltolato)dioxom
olybdenum(VI)]
該化合物は、公知文献に報告されている方法により調製することができる[S.J. Greav
es and W.P. Griffith. Polyhedron, 7, 1973 (1988)参照]。
【0017】
ビス(5-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-4-ピロナト)ジオキソモリブデン(
VI)又はビス(コジャト)ジオキソモリブデン
[Bis(5-hydroxy-2-hydroxymethyl-4-pyrona
to)dioxomolybdenum(VI),Bis(kojato)oxovan
adium(IV), MoO2(ka)2]
該化合物は、公知文献に報告されている方法により調製することができる[S. J. Lord
, N. A. Epstein, R. L. Paddock, C. M. Vogels, T. L. Hennigar, M. J. Zaworotko, N
. J. Taylor, W. R. Driedzic, T. L. Broderick, and S. A. Westcott, Can. J. Chem.
77, 1249-1261(1999)参照]。
【0018】
ビス(マルトラト)オキソバナジウム[Bis(maltolato)oxovana
dium(IV),VO(ma)2]
該化合物は、公知文献に報告されている方法により調製することができる[P. Caravan
, L. Gelmini, N. Glover, F. G. Herring, H. Li, J. H. McNeill, S. J. Rettig, I. A
. Setyawati, E. Shuter, Y. Sun,A. S. Tracey, V. G. Yuen; and C. Orvig, J. Am. Ch
em. Soc. 117, 12759-12770(1995)参照]。
【0019】
ビス(エチルマルトラト)オキソバナジウム[Bis(ethylmaltolato
)oxovanadium(IV),VO(ema)2]
該化合物は、公知文献に報告されている方法により調製することができる[K.H. Thomp
son, B.D. Liboiron, Y. Sun, K.D.D. Bellman, I.A. Setyawati, B.O. Patrick, V. Kar
unaratne, G. Rawji, J. Wheeler, K. Sutton, S. Bhanot, C. Cassidy, J.H. McNeill,
V.G. Yuen, and C. Orvig, J. Biol. Inorg. Chem. 8, 66-74(2003)参照]
【0020】
ビス(コジャト)オキソバナジウム[Bis(kojato)oxovanadium
(IV), VO(ka)2]
該化合物は、公知文献に報告されている方法により調製することができる[V. G. Yuen
, P. Caravan, L. Gelmini, N. Glover, J.H. McNeill, I.A. Setyawati, Y. Zbou, and
C. Orvig, J. Inorg. Biochem. 68, 109-116(1997)参照]。
【0021】
ビス(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-メチル-4-ピリジノナト)オキソバナジウ
ム(IV)
[Bis(3-hydroxy-1-methyl-2-methyl-4-pyri
dinonato)oxovanadium(IV),VO(mmp)2]
該化合物は、公知文献に報告されている方法により調製することができる[A. Katoh,
M. Yamaguchi, K. Taguchi, R. Saito, Y. Adachi, Y. Yoshikawa, and H. Sakurai, Bio
med. Res. Trace Elements 17, 1-10 (2006) 及び本明細書で引用した文献を参照]。
【0022】
ビス(3-ヒドロキシ-2-メチル-4-ピリジノナト)Co(II) [Bis(3
-hydroxy-2-methyl-4-pyridinonato)Cobalt(
II), Co(mpp)2]
該化合物は、公知文献に報告されている方法により調製することができる[C. Queiros
, M.J. Amorim, A. Leite, M. Ferreira, P. Gameiro, B. de Castro, K. Biernacki, A.
Magalh&atilde;es, J. Burgess, and M. Rangel, Eur. J. Inorg. Chem. 1131-140(2011
)参照]。
【0023】
上記化合物は、1~20個の結晶水又はDMSO、エタノール、イソプロパノール、ピ
リジン等の他の溶媒分子を含んでいてもよい。
【0024】
しかしながら、これらの化合物は知られているものの、鎮痛に関する報告はない。
【0025】
上記化合物は、経口投与以外にも、経皮、直腸、静脈、皮下、舌下、腹腔等の通常の方
法で投与することができる。適切な配位子の選択は、その骨格及び環上の置換基から考え
る必要がある。
【0026】
経口投与の場合、所謂「適合」の基準とは、全体錯体の溶解性である。錯体は、全体と
して電気的に中性であることが好ましく、その水溶性は少なくとも0.1mM、好ましく
は少なくとも0.2mMであり、経口吸収が可能である(胃腸吸収効率が良好であること
が好ましい)。配位子は一般から強いまでの錯化能力を備えるべきである(例えば、錯化
定数は2≦log&#7838;2≦30であり、好ましくは5~22である)。
【0027】
医薬製剤の組成は、カプセル剤、錠剤、被覆錠剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、坐剤等
の通常の形態であり、粘度調整剤、緩衝液、調味剤、懸濁剤、安定剤、その他の添加剤等
の通常の製剤の補助剤や賦形剤を用いることができる。
【0028】
本発明の医薬組成物は、添加した他の治療用試薬、例えば鎮痛試薬(例えばアスピリン
など)を含んでもよい。また、他の鎮痛薬と配合し、併用治療を行うこともできる。
【0029】
金属錯体は、投与対象、体調及び投与経路によって、通常、毎日体重1kgあたりに0
.00001~1500mg(金属原子換算)の投与量で投与される。まず、このように
投与量が広いのは、哺乳動物によって有効量が異なり、マウスとの有効量の差が大きいた
めであり、例えば、ヒトの有効量は、10倍、20倍、30倍、又はそれ以上の倍数でマ
ウスの有効量(単位体重)より低くすることができる。投与経路の違いは、投与量にも影
響を与える。例えば、経口投与量は、注射投与量の10倍とすることができる。マウスの
場合、好ましい投与量の範囲は、毎日体重1kgあたりに0.01~300mg(金属原
子換算)である。ヒトの場合、好ましい投与量の範囲は、毎日体重1kgあたりに0.0
0005~5mg(金属原子換算)である。
【0030】
薬物単位用量は、0.001mg~1000mg(金属原子換算)であり、好ましくは
0.1mg~300mg(金属原子換算)である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図l】ビス(マルトラト)オキソバナジウム(S1)、ビス(エチルマルトラト)オキソバナジウム(S2)及びビス(コジャト)オキソバナジウム(S3)による疼痛抑制効果を示す図である。ここで、横軸は時間であり、縦軸は疼痛閾値であり、陽性対照群に用いた鎮痛薬はアスピリンである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
薬物鎮痛活性試験
マウスに対する3種類のバナジウム化合物(ビス(マルトラト)オキソバナジウム、ビ
ス(エチルマルトラト)オキソバナジウム、ビス(コジャト)オキソバナジウ)の鎮痛実
験を以下に列挙する。一部の結果を図1に示し、図中、S1はビス(マルトラト)オキソ
バナジウムであり、S2はビス(エチルマルトラト)オキソバナジウムであり、S3はビ
ス(コジャト)オキソバナジウであり、陽性群(即ち陽性対照群)はアスピリン群である
【0033】
完全フロイントアジュバント(CFA)10μlをマウス(♂昆明マウス、22~40
g)の左後足に注射して、炎症を生じさせた。Von Frey試験を注射から24時間
後に行い、疼痛閾値を測定し、即ちDixonのUp-Down方法の指導下で、Von
Frey線維でマウスの機械的な足逃避を誘発し、データを収集し、その50%の足逃
避閾値(即ち50%paw withdrawal threshold、足逃避閾値又
はPWTと略称し、即ち疼痛閾値)を計算した。次に、マウスを生理食塩水群、陽性対照
群及び薬物群に分け、生理食塩水0.4ml、濃度が20mg/mlのアスピリン(アセ
チルサリチル酸又はASA)Tris-buffer溶液0.4ml及び被検化合物とセ
ルロース溶液(1%)との混合液0.4mlをそれぞれ腹腔内注射した。その後、疼痛閾
値の変化をVon Frey試験で監視測定した。
【0034】
試験1:ビス(マルトラト)オキソバナジウム[Bis(maltolato)oxo
vanadium(IV),VO(ma)2]の鎮痛活性測定
ビス(マルトラト)オキソバナジウム[Bis(maltolato)oxovana
dium(IV),VO(ma)2]の入手:文献の方法で合成したものであるか、又は
上海笛柏化学品技術有限公司から購入したものである。
9mg/kg(約0.03mmol/kg)の投与量で腹腔内へ注射した後、7匹のマ
ウスはすべてこの化合物に反応し、疼痛閾値は一般的に高くなった。
【0035】
試験2:ビス(エチルマルトラト)オキソバナジウム[Bis(ethylmalto
lato)oxovanadium(IV), VO(ema)2]の鎮痛活性測定
ビス(エチルマルトラト)オキソバナジウム[Bis(ethylmaltolato
)oxovanadium(IV), VO(ema)2]の入手:文献の方法で合成し
たものであるか、又は湖北鴻&#37995;瑞宇精細化工有限公司から購入したものである。
10mg/kg(約0.03mmol/kg)の投与量で腹腔内へ注射した後、7匹の
マウスはすべてこの化合物に反応し、疼痛閾値は一般的に高くなった。
【0036】
試験3:ビス(コジャト)オキソバナジウム[Bis(kojato)oxovana
dium(IV), VO(ka)2]の鎮痛活性測定
ビス(コジャト)オキソバナジウム[Bis(kojato)oxovanadium
(IV), VO(ka)2]の入手:文献の方法で合成したものである。
11mg/kg(約0.03mmol/kg)の投与量で腹腔内へ注射した後、7匹の
マウスはすべてこの化合物に反応し、疼痛閾値は一般的に高くなった。
【0037】
CFAを注射した24時間後、マウスの足逃避閾値は有意に低下し(図1)、機械的痛
覚過敏として示され、炎症性疼痛の形成を示した。この場合に、薬物、即ちビス(マルト
ラト)オキソバナジウム(図1におけるS1)、ビス(エチルマルトラト)オキソバナジ
ウム(図2におけるS2)又はビス(コジャト)オキソバナジウム(図1におけるS3)
を注射すると、炎症性疼痛のマウスの足逃避閾値は大きく上昇した。投与30分後、S1
、S2又はS3はそれぞれ炎症性疼痛のマウスの足逃避閾値を(0.072±0.007
6)から(0.74±0.17)(P<0.01,n=7)、(0.45±0.15)(
P<0.01,n=7)及び(0.52±0.23)(P<0.01,n=7)まで上昇
させ、アスピリンと類似又はより強い鎮痛作用を示した。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iの化合物の疼痛を治療する薬物の製造における使用。
式I
(式中、M´=VO(IV)、Co2+、Zn2+、MoO2(IV)又はPt2+で
あり、X1=O又はSであり、X2=O又はSであり、Y=O又はNR4であり、R1、
R2、R3又はR4はH、ヒドロキシ基、メルカプト基、C1~C14アルキル基、ヒド
ロキシC1~C14アルキル基、C1~C14アルコキシ基、メルカプトC1~C14ア
ルキル基、C1~C14アルキルチオ基、アリール基又はアリールC1~C14アルキル
基である。)
【請求項2】
一般式IIIの化合物の疼痛を治療する薬物の製造における使用。
式III
(式中、Y=Oであり、R1、R2及びR3はそれぞれヒドロキシ基、メルカプト基、
C1~C4アルキル基、ヒドロキシC1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、メ
ルカプトC1~C4アルキル基、C1~C4アルキルチオ基、フェニル基又はフェニルC
1~C4アルキル基であり、又はY=NR4であり、R3=Hであり、R1、R2及びR
4はそれぞれヒドロキシ基、メルカプト基、C1~C4アルキル基、ヒドロキシC1~C
4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、メルカプトC1~C4アルキル基、C1~C4
アルキルチオ基、フェニル基又はフェニルC1~C4アルキル基である。)
【請求項3】
一般式IVの化合物の疼痛を治療する薬物の製造における使用。
式IV
(式中、R1=H、R2=Meであり、又はR1=H、R2=-CH2CH3であり、
又はR1=-CH2OH、R2=Hである。)
【請求項4】
式I、式III又は式IVの化合物が、
ビス(マルトラト)白金
ビス(マルトラト)亜鉛
ビス(マルトラト)ジオキソモリブデン
ビス(コジャト)ジオキソモリブデン(VI)
ビス(マルトラト)オキソバナジウム
ビス(エチルマルトラト)オキソバナジウム
ビス(コジャト)オキソバナジウム
ビス(3-ヒドロキシ-1-メチル-4-ピリジノナト)オキソバナジウム(IV)
ビス(3-ヒドロキシ-2-メチル-4-ピリジノナト)Co(II)
から選ばれる請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。


【国際調査報告】