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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(54)【発明の名称】生物学的製剤のための賦形剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/18 20060101AFI20220916BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A61K47/18
A61K9/08
A61K9/10
A61K39/395 N
A61K38/21
A61K38/19
A61K38/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502033
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2020069494
(87)【国際公開番号】W WO2021009020
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】19186002.2
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521523383
【氏名又は名称】ルートヴィヒ-マクシミリアン-ウニヴェルズィテート ミュンヘン
(71)【出願人】
【識別番号】522012662
【氏名又は名称】ダンマークス テクニスク ユニバーシテット(ディティーユー)
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ウィンター ゲーアハルト
(72)【発明者】
【氏名】トストルフ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ペーテルス ギュンター
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA16
4C076BB11
4C076CC29
4C076DD51Z
4C076DD52Q
4C076DD67
4C076FF63
4C084AA30
4C084BA44
4C084DA19
4C084DA22
4C084DA59
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA03
4C085AA14
4C085EE05
4C085EE07
4C085GG01
(57)【要約】
本発明は、活性剤、特に、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ウイルス、ウイルス様粒子、プロトンポンプ阻害剤および抗生物質を安定化させるための賦形剤に関する。賦形剤は、当該薬剤を含む製剤における凝集体および/または粒子形成を減少させる。賦形剤は、少なくとも1つのN-Hアミド基、少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシエチルアミド基および/または少なくとも1つの非置換N-ヒドロキシメチルアミド基を含むジカルボン酸のジアミドである。特に、賦形剤は、N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸のジアミドの活性剤の安定化剤としての使用であって、
前記ジアミドは、少なくとも1つのN-Hアミド基、少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシエチルアミド基および/または少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシメチルアミド基を含み、
前記活性剤は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ウイルスまたはウイルス様粒子、プロトンポンプ阻害剤および抗生物質から選択される、
使用。
【請求項2】
請求項1の使用であって、前記ジアミドは式(I)の化合物であり:


式中、各Rは、HおよびC-C10炭化水素残基から独立に選択され、前記炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
2つのRは一緒になって環を形成してもよく、
但し、少なくとも1つのR、例えば、Rのうちの1、2、3または4個は、H、式(II)の基または式(III)の基であり:

式中、各Rは、HおよびC1-8炭化水素残基、特にC-C炭化水素残基から独立に選択され、前記炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
Aは、直鎖、分岐または環状C-C24炭化水素残基、特に、直鎖または分岐C-C炭化水素残基または環状C-C残基から選択され、前記炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、
使用。
【請求項3】
請求項1または2の使用であって、
前記活性剤は、液体製剤において、特に水溶液において、特に、(i)製剤中の活性剤の濃度が約0.01mg/ml~約300mg/ml、約0.1mg/ml~約200mg/mlまたは約1mg/ml~約150mg/mlの範囲内である場合、および/または、(ii)製剤中のジアミドの濃度が約1μmol/l~約1mol/l、約100mmol/l~約500mmol/l、約1mmol/l~約250mmol/lまたは約10mmol/l~約100mmol/lの範囲内である場合に、安定化される、
使用。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項の使用であって、
前記活性剤は、抗体、例えば、IgG抗体、抗体誘導体、免疫グロブリン融合タンパク質、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、インターロイキンおよびインターロイキン受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト、TNFファミリーおよびTNFファミリー受容体のメンバーのアゴニストおよびアンタゴニスト、サイトカイン、および酵素から選択される、
使用。
【請求項5】
請求項4の使用であって、
前記活性剤は、トラスツズマブ、リツキシマブ、オマリズマブ、インターフェロン-α、G-CSFおよびアナキンラから選択される、
使用。
【請求項6】
医薬、化粧品、診断、および/または分析学の分野における安定化剤としての、請求項1から5のいずれか一項の使用。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項の使用であって、
前記ジアミドは、20℃で、少なくとも約0.02%(w/v)、少なくとも約0.05%(w/v)、少なくとも約0.1%(w/v)、少なくとも約0.5%(w/v)または少なくとも約1%(w/v)の水中溶解度を有する、
使用。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項の使用であって、
前記ジアミドは、N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸(adipinic acid)アミドである、
使用。
【請求項9】
凝集および/または粒子形成に対する安定化剤としての、特に、凍結/融解ストレス、振とうストレスおよび/または撹拌ストレスによる凝集および/または粒子形成に対する安定化剤としての、請求項1から8のいずれか一項の使用。
【請求項10】
活性剤および式(I)の化合物を含む製剤であって:

式中、各Rは、HおよびC-C10炭化水素残基から独立に選択され、前記炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
2つのRは一緒になって環を形成してもよく、
但し、少なくとも1つのR、例えば、Rのうちの1、2、3または4個は、H、式(II)の基または式(III)の基であり:

各Rは、HおよびC1-8炭化水素残基から独立に選択され、例えば、Rのうちの1、2、3または4個はHであり、前記炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
Aは、直鎖、分岐または環状C-C24炭化水素残基、特に、直鎖または分岐C-C炭化水素残基または環状C-C残基から選択され、前記炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
活性剤は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ウイルスまたはウイルス様粒子、プロトンポンプ阻害剤および抗生物質から選択される、
製剤。
【請求項11】
液体製剤、特に水溶液である、請求項10の製剤。
【請求項12】
式(I)の化合物が、N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドである、請求項10または11の製剤。
【請求項13】
前記活性剤が、請求項4または5のいずれか一項によって定義される、請求項10から12のいずれか一項の製剤。
【請求項14】
界面活性剤、特に、ポリソルベート、ポロキシマー、ソルトール(solutol)HS15またはSDSから選択される界面活性剤を含まない、請求項10から13のいずれか一項の製剤。
【請求項15】
医薬における使用のための、請求項10から14のいずれか一項の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子、特にペプチド、ポリペプチド、核酸、ウイルス、ウイルス様粒子、および他のタイプの薬剤、例えば抗生物質を安定化するための新規の賦形剤に関する。当該賦形剤は、上記生体分子および薬剤を含む製剤における凝集体および/または粒子形成を減少させる。
【0002】
本出願につながるプロジェクトは、Marie Sklodowska-Curie助成金協定番号675074の下で欧州連合のHorizon2020リサーチおよびイノベーション・プログラムから資金を受けている。
【背景技術】
【0003】
ペプチド、ポリペプチド、核酸、ウイルス、ウイルス様粒子および他の感受性生体分子は、例えば医薬での活性剤として、診断におけるバイオマーカーの検出のために[1]、または複数の技術分野における酵素として[2]、頻繁に用いられる。医薬での使用のための生体分子の例は、抗体および抗体誘導体、インターフェロン、VIII因子などの凝固因子、エリスロポエチン、インターロイキン、血管内皮増殖因子、アデノ随伴ウイルスおよび腫瘍溶解性ヘルペスウイルスを含む。診断での使用のための生体分子の例は、抗体[3]を含む。工業用酵素としての使用のためのタンパク質および(ポリ)ペプチドの例は、リパーゼ[4]またはセルラーゼ[5]を含む。
【0004】
生体分子は、凍結/融解、振とう、熱、せん断力および/または光のような特定のストレス条件に曝されると、粒子または凝集体を形成する傾向がある[6]。そのような粒子または凝集体の存在は、種々な理由のため好ましくない。一方で、凝集はしばしば生体分子を不活性化させるので、生体分子はその所望の機能をもはや満たさない[7]。他方で、薬品中の粒子または凝集体の存在は、有害な免疫応答の発生と関連することが多い。医薬製品の場合では、用量あたりの凝集体の数に関して厳格な規制制限がある[8]。
【0005】
したがって、活性剤、例えば生体分子を、室温において安定である方法で処方することが望ましい。特に、生産、取り扱いまたは輸送中に生じ得る振とうストレスに対して耐性である必要である。
【0006】
活性剤、例えば生体分子の安定性は、製剤の種々のパラメーター、例えば、pH、バッファー物質およびイオン強度によって影響を受け得る。さらに、種々のメカニズムを介して活性剤を安定化するのを助ける賦形剤を添加することが可能である。
【0007】
原理的に、種々のタイプの賦形剤が、生体分子および他のタイプの薬剤の安定剤として適切である[9]。例えば、ヒト血清アルブミンのようなタンパク質が安定剤として頻繁に用いられている。しかしながら、それらは安定化されるべき生体分子の分析学を妨害し得るので、種々の理由から望ましくないことが見いだされている。それらはまた高価であり‐組換えで生産されない限り‐血液から生産されるので生物学的リスクを伴う。ポリソルベートまたはポロキシマーのような界面活性剤もしばしば、生体分子の製剤中に存在する。それらは化学的に異種であり、揮発性の不純物プロファイルを有する傾向があり、生体分子を酸化的に変性させ得る[10、11]。さらに、長期の研究において、ポリソルベートは遊離脂肪酸へと分解し、粒子として沈殿することが示された[12]。結果として、界面活性剤は、適切な代替が見つからないので安定性を確実にする必要がある場合に安定剤として用いられることが非常に多いが、ポリソルベートを除くこと、および/または、代替の安定剤によって置き換えることが、製剤科学者の集団において非常に強く望まれている。他の一般に用いられる賦形剤は、アミノ酸類、糖類および塩類を含む。
【0008】
生体分子の安定化に関する広範囲の従来技術が利用可能である。しかしながら、実際には、ほんの数種類の賦形剤が用いられている。これらの賦形剤は、ほぼ例外なく、アミノ酸類、糖類および糖アルコール類および界面活性剤から選択される。しかしながら、安定化における何十年もの経験および何百もの刊行物および特許にもかかわらず、液体製剤中の生体分子の安定化は、未だ困難を伴っている。特定の生体分子は、十分に安定化することが全くできず、または、凍結乾燥後でさえも制限された安定性を示すのみであり、特に、再構成後に短時間安定であるだけである。非常に多くの製剤が特定の不純物をさらに示し、該不純物は「ベッドサイド濾過(bedside filtration)」によってのみ除去することができる。他の製剤は、粒子、ナノ粒子および/または凝集体のような不純物を示し、該不純物は当局および薬局方が設定する限度を超えず、したがって許容される。そのような不純物の公知の免疫原性を考慮すると、それらの品質は最適ではなく、改善されるべきである。
【0009】
したがって、特に凝集および/または粒子形成に対する安定化の分野において、さらなる新規の安定剤が緊急に必要とされている。これは主に、利用可能な賦形剤の多くが、単独または組み合わせで用いた場合に不利益があるためである。例えば、糖類およびアミノ酸類の効果は、そのような賦形剤の高い濃度に主に関連する。上述のように、界面活性剤、特に、最も広く用いられているポリソルベートは自己分解を示し、不純物の存在に起因して活性剤および他の賦形剤の分解を触媒する。しかしながら、透析または濾過のような作業ステップ中にそれらを枯渇または富化させることは難しいので、それらを投与することは困難である。それらは溶液の発泡をもたらし、表面からの溶出可能成分および抽出可能成分の溶解を強める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、ジカルボン酸ジアミドのクラス由来の化合物が、液体製剤中の抗体またはインターフェロンのような生体分子を安定化することが可能であることを見いだした。特に、例えば凍結/融解ストレス、振とうストレスまたは撹拌ストレスに曝された場合に、生体分子の製剤中のこれらの物質の存在は、賦形剤を含まない製剤または同濃度の公知の賦形剤L-アルギニンまたはD(+)トレハロースを含む製剤と比較して、粒子の量を減少させることが示された。安定化効果はまた、ポリソルベートのような界面活性剤を含まない製剤においても観察された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様は、ジカルボン酸のジアミドの、凝集体および/または粒子の形成を減少させるための液体または乾燥製剤中の活性剤(特に生体分子)の安定化剤としての使用(以下、「ジアミド」)であって、上記ジアミドは、少なくとも1つのN-Hアミド基、すなわちC(=O)-N-H基、少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシエチルアミド基、および/または少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシメチルアミド基を含む。
【0012】
本発明のさらなる態様は、活性剤(特に生体分子)およびジカルボン酸のジアミドを含む製剤、特に水性液体製剤であり、上記ジアミドは、少なくとも1つのN-Hアミド基、すなわちC(=O)-N-H基、少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシエチルアミド基、および/または少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシメチルアミド基を含む。
【0013】
特定の実施態様では、ジアミドは、ヒドロキシアルキルジアミド、すなわち、少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシエチルアミド基、および/または少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシメチルアミド基を含むジアミドである。
【0014】
特定の実施態様では、ジアミドは、式(I)の構造を有する:

式中、各Rは、HおよびC-C10炭化水素残基から独立に選択され、該炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
2つのRは一緒になって環を形成してもよく、
但し、少なくとも1つのRは、H、式(II)の基または式(III)の基であり:
式中、各Rは、HおよびC1-8炭化水素残基から独立に選択され、該炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
Aは、直鎖、分岐または環状C-C24炭化水素残基から選択され、該炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】3回の凍結/融解サイクル後の粒子の量。50mMリン酸バッファー、pH7.0;5mg/ml抗体IgGトラスツズマブ。
図2】撹拌ストレス後の粒子の量。50mMリン酸バッファー、pH7.0;5mg/ml抗体IgGトラスツズマブ。
図3】3回の凍結/融解サイクル後の粒子の量。50mMリン酸バッファー、pH7.0;1mg/mlインターフェロン-α-2a。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、上述のジアミドを添加することによって、液体または乾燥形態における活性剤(特に生体分子)の安定した製剤を生産することが可能である。製剤は、例えば、工業用酵素の触媒作用、診断、化粧品、分析学またはヒト医学および獣医学を含む医学において用いることができる。多くのより可能な用途が存在する。
【0017】
用語「安定した」および「安定化された」とは、上述のジアミドを含む製剤が、ストレスに曝された場合に、賦形剤を含まない製剤よりも、凝集体および/または粒子を形成する可能性が低いことを意味する。本発明は、特に、凍結/融解ストレス、振とうストレスおよび/または撹拌ストレスの場合において安定化する。そのような十分に定義された、とにもかくにも人工的なストレスは、-代用として-製造プロセス、通常の保管時間および取り扱いの一部として生体分子が遭遇するものを代表しているというべきであり、したがって、そのような生体分子およびそのような生体分子を含む製品の品質および安定性に非常に関連している。
【0018】
本発明において言及される「凝集体」および「粒子」とは、典型的に、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)およびFlowCamイメージによって決定して約1nm~約1mmのサイズ範囲内である。
【0019】
本明細書において用いられる用語「活性剤」は、特に、生体分子、例えば、ペプチド(改変または環状ペプチドを含む)、ポリペプチド(非グリコシル化およびグリコシル化、単量体または多量体ポリペプチドを含む)、核酸(オリゴヌクレオチド、DNA、RNAおよび核酸類似体を含む)、ウイルス、ウイルス様粒子および他のタイプの薬剤、例えばプロトンポンプ阻害剤および抗生物質に関する。
【0020】
用語「ペプチド」は、ペプチド結合を介して結合した50個までの天然または非天然アミノ酸の少なくとも1つの鎖を含む化合物を指す。用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して結合した51個以上の天然または非天然アミノ酸の少なくとも1つの鎖を含む化合物を指す。ペプチドまたはポリペプチド鎖は、共有結合および/または非共有の相互作用によって互いと関連または結合することができる。
【0021】
本明細書中に記載の生体分子は、例えば、治療的または酵素的に活性の物質、またはウイルスベクターであってよい。生体分子の非限定的な例は、抗体および抗体誘導体、インターフェロン-α、インターフェロン-βおよびインターフェロン-γのようなインターフェロン、VIII因子のような血液凝固因子、エリスロポエチン、サイトカイン、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)(例えばTNF-α)、インターロイキン(例えばインターロイキン2)、インターロイキンおよびインターロイキン受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト、例えばアナキンラ、TNFファミリーおよびTNFファミリー受容体のメンバーのアゴニストおよびアンタゴニスト、増殖因子、例えば、血管内皮増殖因子、インスリン様増殖因子、形質転換増殖因子(TGF)、または骨形成タンパク質、ならびに組み換え融合タンパク質、例えば免疫グロブリン融合タンパク質、酵素、例えばリパーゼ、セルラーゼ、アデノ随伴ウイルスまたは腫瘍溶解性ヘルペスウイルス、任意の種類のウイルス様粒子を含む。生体分子は、さらに、ペグ化またはグリコシル化、別の活性剤とコンジュゲートすることができ、または、異なる方法で改変することができる。
【0022】
上述の全ての生体分子はよく知られており、標準的な方法によって、例えば化学合成によって、または生体系において、例えば、大腸菌、酵母、チャイニーズハムスター卵巣細胞またはベビーハムスター腎細胞のような哺乳類細胞などの細胞系において生産することができ、その後に精製される。
【0023】
本発明の好ましい一実施態様では、生体分子は、種々のクラスの完全抗体、例えばIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、改変抗体、例えば、単鎖抗体、抗体フラグメントおよびそのような抗体のコンジュゲート、例えばレポーター基、薬学的に活性の基、例えば細胞毒性または放射性の基とのコンジュゲートを含む抗体から選択される。例えば、抗体は、トラスツズマブ、リツキシマブまたはオマリズマブのようなIgG抗体である。
【0024】
本発明の別の好ましい実施態様では、生体分子は、免疫グロブリン融合タンパク質、例えば、定常免疫グロブリンドメインとサイトカインまたは増殖因子の融合タンパク質、および、そのような免疫グロブリン融合タンパク質とのコンジュゲート、例えば、レポーター基、薬学的に活性の基、例えば細胞毒性または放射性の基とのコンジュゲートから選択される。
【0025】
本発明の別の好ましい実施態様では、生体分子は、サイトカイン、インターロイキンおよびインターフェロン(インターフェロン-α、インターフェロン-βおよびインターフェロン-γを含む)およびそれらのコンジュゲートから選択される。例えば、サイトカインはG-CSFであり、インターフェロンはインターフェロン-αである。
【0026】
本発明の別の好ましい実施態様では、生体分子は、インターロイキンおよびインターロイキン受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト、TNFファミリーおよびTNFファミリー受容体のメンバーのアゴニストおよびアンタゴニストおよびそれらのコンジュゲートから選択される。例えば、生体分子は、インターロイキン受容体アンタゴニスト、例えばアナキンラである。
【0027】
本明細書において用いられる用語「活性剤」は、上述の生体分子および他のタイプの薬学的活性剤、例えば、プロトンポンプ阻害剤(例えばオメプラゾールまたはパントプラゾール)、または抗生物質(例えばβ-ラクタム系、マクロライド系、アミノグリコシド系、キノロン系/フルオロキノロン系、グリコペプチド系(バンコマイシン)、テトラサイクリン系を含む。
【0028】
ジアミド基由来の本発明の賦形剤は、公知の賦形剤と比較して有利である。それらは例えば、相対的に低い濃度で効果的である。それらは化学的に明確に定義された物質である。それらは、種々の形態のストレス後に生体分子および他のタイプの活性剤の凝集を減少させる。特に好ましいのは、キャビテーションをもたらし得る溶液の振とうストレス、撹拌ストレス、ポンプストレス、霧化ストレス、噴霧ストレス、滴下ストレスまたは落下ストレスのような機械的ストレスの場合における賦形剤の使用である。
【0029】
本明細書において用いられる用語「ジアミド」は、ジカルボン酸のジアミドに関し、ここで、カルボキシ基の両方ともカルボキサミド基として存在し、上記ジアミドは、少なくとも1つのN-Hアミド基、すなわちC(=O)-N-H基、少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシエチルアミド基、および/または少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシメチルアミド基を含む。
【0030】
N-ヒドロキシエチルアミド基 N-ヒドロキシメチルアミド基の置換基は、C-C10炭化水素残基を含み、特にC-C炭化水素残基を含み、より具体的にはC-C炭化水素残基を含み、例えば、ハロ、すなわちF、Cl、Br、またはI;N、O、Sおよび/またはPから選択される、特にOから選択される、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい。炭化水素残基は、置換または非置換アルキル残基から選択されてよく、ここで、用語「アルキル」は特に、メチル、エチル、i-プロピル、n-プロピル、t-ブチル、i-ブチルまたはn-ブチルを含む。炭化水素、例えばアルキル残基は、非置換であってよく、または、ハロ、例えばF、OH、OCH、および/または=Oによって置換されてよい。
【0031】
特定の実施態様では、ジアミドは、例えば、OECD Guidelines,Test No.105に従ったカラム溶出法によって決定して、20℃で、少なくとも約0.02%(w/v)、少なくとも約0.05%(w/v)、少なくとも約0.1%(w/v)、少なくとも約0.5%(w/v)または少なくとも約1%(w/v)の水中溶解度を有する。好ましくは、ジアミドは、参照により本明細書中に援用される欧州薬局方の分類に従って、溶解性(soluble)、溶解良好(well soluble)または溶解自在(freely soluble)と考えられる。
【0032】
特定の実施態様では、ジアミドは、約120Da~約600Da、例えば約150Da~約350Daの範囲内の分子量を有する。
【0033】
特定の実施態様では、ジアミドは、上記に示された範囲内の水中溶解度および分子量の両方を有する。
【0034】
特定の実施態様では、ジアミドは、上述の式(I)の化合物である。
【0035】
式(I)中、Rは、HおよびC-C10炭化水素残基から選択され、特にC-C炭化水素残基から選択され、より具体的にはC-C炭化水素残基から選択され、例えば、ハロ、すなわちF、Cl、Br、またはI;N、O、Sおよび/またはPから選択される、特にOから選択される、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい。炭化水素残基は、置換または非置換アルキル残基から選択されてよく、ここで、用語「アルキル」は特に、メチル、エチル、i-プロピル、n-プロピル、t-ブチル、i-ブチルまたはn-ブチルを含む。炭化水素、例えばアルキル残基は、非置換であってよく、または、ハロ、特にF、OH、OCH、および/または=Oによって置換されてよい。
【0036】
場合により、2つの残基Rは環を形成し、この環は典型的に、炭素環または複素環の3~6員環である。
【0037】
特定の実施態様では、Rは、4~9のpH範囲内の水溶液において、電荷、すなわち正電荷および/または負電荷を有するいかなる基(例えばカルボン酸基またはアミノ基)も含まない。
【0038】
式(I)の特定の実施態様では、Rのうちの2、3または4個は、H、式(II)の非置換または置換ヒドロキシエチルアミド基および/または式(III)の非置換または置換ヒドロキシメチルアミド基から選択される。特定の実施態様では、Rのうちの2、3または4個は、Hから選択される。特定の実施態様では、Rのうちの2、3または4個は、式(II)の基から選択される。特定の実施態様では、Rのうちの2、3または4個は、式(III)の基から選択される。
【0039】
式(I)の特定の実施態様では、Rの4個全てが、H、式(II)の非置換または置換ヒドロキシエチルアミド基および/または式(III)の非置換または置換ヒドロキシメチルアミド基から選択される。
【0040】
式(II)およびまたは式(III)の基において、各Rは、HおよびC-C炭化水素残基、例えばエチルまたはメチル残基から独立に選択されてよく、上記炭化水素残基は、例えば、ハロ、すなわちF、Cl、Br、またはI;N、O、S、および/またはPから選択される、特にOから選択される、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい。特定の実施態様では、式(II)および/または式(III)の基において、各Rまたは少なくとも1つのRは、H、-CH、-OHおよび/または=Oである。
【0041】
特定の実施態様ではRは以下から選択される。

【0042】
特定の実施態様では、Aは、直鎖または分岐C-C炭化水素残基または環状C-C炭化水素残基から選択され、該炭化水素残基は、例えば、ハロ、すなわちF、Cl、Br、またはI;N、O、Pおよび/またはSから選択される、特にOから選択される、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0043】
特定の実施態様では、Rは以下から選択される。

【0044】
特に、m=1~6、例えば1、2、3、4、5または6、より具体的にはm=3、4または5である。m=4である場合、化合物はアジピン酸(adipinic acid)ジアミドである。
【0045】
さらに特定の実施態様では、Rは以下から選択される。



式中、各Rは、H、OHおよびC1-2炭化水素残基、特にHおよびC1-2炭化水素残基から独立に選択され、該炭化水素残基は、N、O、Pおよび/またはSから選択され得る少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい。特に、ヘテロ原子は、存在する場合は、Oである。特定の実施態様では、少なくとも8、例えば8、9または10残基のRがHである。
【0046】
特定の一実施態様では、ジアミドは、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(N,N,N,N-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)-ヘキサンジアミド-CAS#6334-25-4)であり、欧州薬局方の分類によるとそれは溶解良好(well soluble)である:


【0047】
N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドおよび関連化合物の合成はよく知られている(例えば、US6235933B1およびWO2011/110624を参照し、それらの内容は参照により本明細書中に援用される)。
【0048】
ジアミドの他の具体例は以下の化合物を含む:
,N,N,N-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)-ペンタンジアミド(CAS#114690-06-1);
,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-ヘキサンジアミド(CAS#57843-54-6);
,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-ヘキサンジアミド(CAS#1918193-23-3);
,N,N,N-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)-4,4-ジメチル-ヘプタンジアミド(CAS#331862-59-0);および
,N,N,N-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)-ヘキサンジアミド(CAS#57843-53-5)。
【0049】
特定の実施態様では、ジアミドは、製剤中の活性剤の安定剤として用いることができる。製剤は、任意の物理的形態、例えば、液体製剤、例えば溶液、エマルション、懸濁液、またはエアロゾル、または固体または半固体製剤であってよい。ジアミドおよびそれらを含む製剤は、フィルムコーティングまたは他の種類の表面コーティングとしても用いられ得る。
【0050】
ジアミドは通常、水性媒体中に溶解することによって製剤に添加されるが、懸濁液の形態でも添加される。ジアミドおよび安定化されるべき活性剤を組み合わせるための他の可能性のある方法も存在するので、これらの例は、最終的または限定的なものではない。
【0051】
特定の実施態様では、製剤は、液体製剤、特に水性製剤、より具体的には水溶液である。さらに特定の実施態様では、製剤は、例えば、凍結乾燥、風乾、噴霧乾燥、凍結噴霧乾燥、または発泡乾燥(foam drying)によって乾燥された液体製剤である。そのような乾燥製剤は、適切な液体、例えば水性液体によって再構成され得て、再構成後にその使用目的のために最終的に用いられる。
【0052】
製剤は、任意の適切なpHを有してよい。典型的にpHは、約pH4~約pH9または約pH6~約pH8、例えば約pH7である。
【0053】
製剤は、さらなる賦形剤、例えば、防腐剤、洗浄剤、バッファー物質または等張剤をさらに含んでよい。
【0054】
特定の実施態様では、製剤は、安定化剤としてジアミドを含み、さらなる安定化剤を含まない。特定の実施態様では、製剤は、安定化剤としてジアミドを、少なくとも1つのさらなる安定化剤(すなわちジアミドとは異なる安定化剤)と組み合わせて含む。上記少なくとも1つのさらなる安定化剤は、グルコース、スクロースまたはトレハロースのような糖、マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール、NaClのような塩、ヒスチジン、メチオニンまたはアルギニンのようなアミノ酸、および/または、抗酸化剤、例えば、メチオニンのようなチオール基含有薬剤から選択され得る。
【0055】
本発明の特定の実施態様では、製剤は、界面活性剤を含まない。特に、製剤は、ポリソルベート、ポロキシマー、ソルトール(solutol)HS15および/またはイオン界面活性剤、例えばSDSを含まない。
【0056】
本発明において用いられるジアミドの適切な量は、平均的な当業者によって容易に決定され得る。典型的に、液体製剤中のジアミドの濃度は、約1μmol/l~約1mol/l、約100mmol/l~約500mmol/l、約1mmol/l~約250mmol/lまたは約10mmol/l~約100mmol/lの範囲内であってよい。
【0057】
本発明において用いられる活性剤の適切な量は、平均的な当業者によって容易に決定され得る。典型的に、液体製剤中の活性剤の濃度は、約0.01mg/ml~約300mg/ml、約0.1mg/ml~約200mg/mlまたは約1mg/ml~約150mg/mlの範囲内の活性剤であってよい。特に好ましい実施態様では、活性剤の濃度は、10mg/ml~100mg/mlである。より高い濃度の活性剤では、凝集に対する安定化が非常に重要であり、これもまた、この新規の賦形剤によって提供され得る。
【0058】
以下の例示的な実施態様は、本明細書の一部である:
1.ジカルボン酸のジアミドの活性剤の安定化剤としての使用であって、該ジアミドは、少なくとも1つのN-Hアミド基、少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシエチルアミド基および/または少なくとも1つの非置換または置換N-ヒドロキシメチルアミド基を含み、
活性剤は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ウイルスまたはウイルス様粒子、プロトンポンプ阻害剤および抗生物質から選択される。
2.項目1の使用であって、ジアミドは式(I)の化合物であり:



式中、各Rは、HおよびC-C10炭化水素残基から独立に選択され、該炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
2つのRは一緒になって環を形成してもよく、
但し、少なくとも1つのRは、H、式(II)の基または式(III)の基であり:

式中、各Rは、HおよびC1-8炭化水素残基から独立に選択され、該炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
Aは、直鎖、分岐または環状C-C24炭化水素残基から選択され、該炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい。
3.項目1または2の使用であって、活性剤は、液体製剤、特に水溶液中で安定化される。
4.項目3の使用であって、製剤中の活性剤の濃度は、約0.01mg/ml~約300mg/ml、約0.1mg/ml~約200mg/mlまたは約1mg/ml~約150mg/mlの範囲内である。
5.項目3~4のいずれかの1つの使用であって、製剤中のジアミドの濃度は、約1μmol/l~約1mol/l、約100mmol/l~約500mmol/l、約1mmol/l~約250mmol/lまたは約10mmol/l~約100mmol/lの範囲内である。
6.項目1~5のいずれか1つの使用であって、活性剤は、ペプチドおよびポリペプチドから選択される。
7.項目6の使用であって、活性剤は、抗体、例えばIgG抗体、免疫グロブリン融合タンパク質、インターフェロン、例えばインターフェロン-α、インターロイキン、インターロイキン受容体、インターロイキンおよびインターロイキン受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト、TNFファミリーおよびTNFファミリー受容体のメンバーのアゴニストおよびアンタゴニスト、サイトカイン、および酵素から選択される。
8.項目7の使用であって、活性剤は、トラスツズマブ、リツキシマブ、オマリズマブ、インターフェロン-α、G-CSFおよびアナキンラから選択される。
9.医薬、化粧品、診断、および/または分析学の分野における安定化剤としての、項目1~8のいずれか1つの使用。
10.項目2~9のいずれか1つの使用であって、Rのうちの2、3または4個は、H、式(II)の基および/または式(III)の基である。
11.項目2~10のいずれか1つの使用であって、Rのうちの2、3または4個は、式(II)の基である。
12.項目2~11のいずれか1つの使用であって、式(II)および/または式(III)の基において、各Rは、HおよびC1-2炭化水素残基から独立に選択され、該炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい。
13.項目12の使用であって、式(II)および/または式(III)の基において、各RはHである。
14.項目2~13のいずれか1つの使用であって、式(I)の化合物において、Aは、直鎖または分岐C-C炭化水素残基または環状C-C炭化水素残基から選択され、該炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい。
15.項目1~14のいずれか1つの使用であって、ジアミドは、20℃で、少なくとも約0.02%(w/v)、少なくとも約0.05%(w/v)、少なくとも約0.1%(w/v)、少なくとも約0.5%(w/v)または少なくとも約1%(w/v)の水中溶解度を有する。
16.項目1~15のいずれか1つの使用であって、ヒドロキシアルキルアミドは、N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドである。
17.凝集および/または粒子形成に対する安定化剤としての、項目1~16のいずれか1つの使用。
18.凍結/融解ストレス、振とうストレスおよび/または撹拌ストレスによる凝集および/または粒子形成に対する安定化剤としての、項目1~17のいずれか1つの使用。
19.活性剤および式(I)の化合物を含む製剤であって:


式中、各Rは、HおよびC-C10炭化水素残基から独立に選択され、該炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
2つのRは一緒になって環を形成してもよく、
但し、少なくとも1つのRは、H、式(II)の基または式(III)の基であり:



式中、各Rは、HおよびC1-8炭化水素残基から独立に選択され、該炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
Aは、直鎖、分岐または環状C-C24炭化水素残基から選択され、該炭化水素残基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
活性剤は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ウイルスまたはウイルス様粒子、プロトンポンプ阻害剤および抗生物質から選択される。
20.液体製剤、特に水溶液である、項目19の製剤。
21.項目19または20の製剤であって、式(I)の化合物は、項目10~15のいずれか1つによって定義される。
22.項目19~21のいずれか1つの製剤であって、式(I)の化合物は、N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドである。
23.項目19~22のいずれか1つの製剤であって、活性剤は、項目6~8のいずれか1つによって定義される。
24.項目19~23のいずれか1つの製剤であって、約pH4~約pH9または約pH6~約pH8のpHを有する。
25.項目19~23のいずれか1つの製剤であって、安定化剤としてジアミドを含み、さらなる安定化剤を含まない。
26.項目19~23のいずれか1つの製剤であって、安定化剤としてジアミドを、グルコース、スクロースまたはトレハロースのような糖、マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール、NaClのような塩、ヒスチジン、メチオニンまたはアルギニンのようなアミノ酸、および/または、抗酸化剤、例えばメチオニンのようなチオール基含有薬剤から選択され得る少なくとも1つのさらなる安定化剤と組み合わせて含む。
27.項目19~26のいずれか1つの製剤であって、界面活性剤、特に、ポリソルベート、ポロキシマー、ソルトールHS15またはSDSから選択される界面活性剤を含まない。
28.項目19~27のいずれか1つの製剤であって、乾燥されており、再構成されていてもよい。
29.請求項28の製剤であって、
(a)凍結乾燥、
(b)風乾、
(c)噴霧乾燥、
(d)凍結噴霧乾燥、または
(e)発泡乾燥
によって乾燥されている。
30.医薬、化粧品、診断、および/または分析学の分野における使用のための、項目19~29のいずれか1つの製剤。
31.医薬における使用のための、項目30の製剤。
【0059】
本発明は、以下の実施例および図面によってより詳細に説明される。
【実施例
【0060】
[実施例1:材料および方法]
試験溶液の生産:緩衝液は、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)からなっていた。タンパク質ストック溶液を、潜在的な不純物および界面活性剤を除去するためのIEXクロマトグラフィーおよびそれらの容量の100~200倍の緩衝液中での24時間にわたる透析によって、他の賦形剤から遊離させた(liberated)。緩衝液を、3時間後および14時間後に新しくした。試験賦形剤のストック溶液を、必要な量の90%の緩衝液中に500mMの賦形剤を溶解することによって生産した。その後に、pHを調整し、緩衝液の残りの容量を加えた。それから、溶液を0.22μmフィルターで濾過した。対応する量のタンパク質ストック溶液を加えた。十分な均質化を提供した。
【0061】
凍結/融解-サイクル:タンパク質を含む溶液を、清澄化された2Rバイアル中に充填し、圧着した(crimped)。サンプルを、Christ 2D-6凍結乾燥器内で2K/分の速度で、3サイクルで20℃から-50℃まで凍結させて、それから、サンプル全体が液体状態に到達するまで室温で解凍してから、サイクルを再度開始した。
【0062】
撹拌ストレス:タンパク質を含む溶液を、清澄化され2Rバイアル中に充填して、圧着した。その後に、マグネチックスターラー(Variomag Poly 15,Thermofisher,3mmポリテトラフルオロエチレンでコーティングされた撹拌バー)を用いて200rpmで2時間、サンプルを撹拌した。
【0063】
フローイメージング顕微鏡:165μlのサンプル溶液を、フローイメージング顕微鏡(FlowCam,Fluid Imaging Technologies,Inc.,Scarborough,ME,USA)を用いて10×倍率で測定した。
【0064】
サイズ排除クロマトグラフィー(抗体):Dionex Summitクロマトグラフィーシステムによってサンプルを分析した。固相として、Superdex 200 Increase 10/300 GLカラム(GE Healthcare)を用いた。移動相は、pH7.0の200mM NaClを含む50mMリン酸溶液であった。単量体の溶出を、280nmの波長におけるUVシグナルの吸収を用いて検出した。回収は、ストレス前後の単量体ピークの吸収曲線の下の面積の割合として定義した。
【0065】
サイズ排除クロマトグラフィー(インターフェロン-α-2a):Dionex Summitクロマトグラフィーシステムによってサンプルを分析した。固相として、Superose 12 10/300 GLカラム(GE Healthcare)を用いた。移動相は、pH7.0の200mM NaClを含む50mMリン酸溶液であった。タンパク質濃度を、280nmの波長におけるUVを用いて検出した。
【0066】
[実施例2:N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドによる、IgG抗体(トラスツズマブ)の安定化]
N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(Ark Pharm Inc.)、Lアルギニン(J.T.Baker)またはD(+)トレハロース(Sigma-Aldrich)をそれぞれ試験賦形剤として組み換えIgG抗体トラスツズマブを含む水溶液に添加し、生じた溶液は5mg/mlのIgG濃度を有し、50mMの賦形剤を含んでいた。生じた溶液を凍結/融解ストレスおよび撹拌ストレスに曝した。
【0067】
N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(化合物A)を含むストレスが付与された製剤は、グリセロール、NaCl、またはD(+)トレハロースのような標準的な賦形剤を含む製剤またはいかなる賦形剤も含まない製剤よりも少ない粒子を含むこと示された(L-アルギニンと同様)。ポリソルベート20は、凍結/融解実験後、さらにより少ない粒子をもたらすが、このクラスの賦形剤は好ましくない(図1および2)。
【0068】
[実施例3:N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドによる、インターフェロン-α-2aの安定化]
N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを、インターフェロン-α-2aを含む水溶液に添加し、生じた溶液は1mg/mlのタンパク質濃度を有しており、50mMの賦形剤を含んでいた。生じた溶液を凍結/融解ストレスに曝した。N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(化合物A)を含むストレスが付与された製剤は、いかなる賦形剤も含まない製剤およびアルギニンまたはポリソルベート20を含む製剤よりも少ない粒子を含むこと、および、トレハロースと同様の量であることが示された(図3)。
【0069】
[実施例4:N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドによる、IgG抗体オマリズマブおよびリツキシマブの安定化]
試験溶液の生産:緩衝液は、20mMヒスチジンバッファー(pH6.0)からなっていた。タンパク質ストック溶液を、それらの容量の100~200倍の緩衝液中で24時間にわたる透析によって、他の賦形剤から遊離させた。緩衝液を、6時間後および20時間後に新しくした。試験賦形剤のストック溶液を、必要な量の90%の緩衝液中に500mMの賦形剤を溶解することによって生産した。その後に、pHを調整し、緩衝液の残りの容量を加えた。それから、溶液を0.22μmフィルターで濾過した。対応する量のタンパク質ストック溶液を加えた。十分な均質化を提供した。
【0070】
凍結/融解-サイクル:タンパク質を含む溶液を、清澄化された6Rバイアル中に充填して、圧着した。サンプルを、凍結器内で、5サイクルで20℃から-70℃まで凍結させて、それから、サンプル全体が液体状態に到達するまで室温で解凍してから、サイクルを再度開始した。
【0071】
撹拌ストレス:タンパク質を含む溶液を、清澄化された6Rバイアル内に充填して、圧着した。その後に、マグネチックスターラー(Variomag Poly 15,Thermofisher,5mmポリテトラフルオロエチレンでコーティングされた撹拌バー)を用いて200rpmで2時間、サンプルを撹拌した。
【0072】
目視検査:それぞれの製剤の3つのバイアルを、欧州薬局方に記載される方法に従って目視検査した。特に、濁度の検出に重点を置いた。
【0073】
N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(Ark Pharm Inc.)、D(+)トレハロース(Sigma-Aldrich)、スクロース、および、メチオニン(Sigma-Aldrich)とトレハロースまたはスクロースの混合物を、それぞれ、試験賦形剤として、組み換えIgG抗体(リツキシマブまたはオマリズマブのいずれか)を含む水溶液に添加した。生じた溶液は、10mg/mlのIgG濃度を有しており、75mMの賦形剤を含んでいた。メチオニンとスクロースまたはトレハロースの混合物の場合、糖濃度は50mMであり、メチオニン濃度は20mMであった。生じた溶液を凍結/融解ストレスおよび撹拌ストレスに曝した。
【0074】
N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(化合物A)を含むストレスが付与された製剤は、D(+)トレハロースまたはスクロースのような標準的な賦形剤を含む製剤、または、メチオニンとトレハロースもしくはメチオニンとスクロースの混合物を含む製剤よりも、少ない粒子を含み、より混濁していないことが分かった。
【0075】
[実施例5:N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドおよびさらなる賦形剤の混合物による、IgG抗体リツキシマブおよびオマリズマブの安定化]
試験溶液の生産、凍結/融解-サイクル、撹拌ストレスの測定および目視検査を、実施例4に記載のとおりに行なった。
【0076】
30mMの濃度のD(+)トレハロース(Sigma-Aldrich)、または30mMの濃度のスクロースのいずれかと、30mMの濃度のN,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(Ark Pharm Inc.)の混合物をそれぞれ、水性試験賦形剤溶液として調製し、20mMヒスチジンバッファーpH6.0中のリツキシマブまたはオマリズマブのいずれかの組み換えIgG抗体を、これらの溶液中へ透析した。比較として、トレハロースまたはスクロースのいずれかを、両方とも30mMまたは60mMのいずれかの濃度で含む溶液を調製し、20mMヒスチジンバッファーpH6.0中の抗体をこれらの溶液中へ透析した。生じた溶液は、10mg/mlのIgG1濃度を有しており、60mMの賦形剤を含んでおり、これを凍結/融解ストレスおよび撹拌ストレスに曝した。
【0077】
トレハロースまたはスクロースとの混合でN,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(化合物A)を含むストレスが付与された製剤は、D(+)トレハロースまたはスクロースなどの標準的な賦形剤を単独で含む製剤よりも、少ない粒子を含んでおり、より混濁していないことが分かった。
【0078】
[実施例6:N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドによる、G-CSFの安定化]
試験溶液の生産、凍結/融解-サイクル、撹拌ストレスの測定および目視検査を、実質的に実施例4に記載のとおりに行なった。
【0079】
緩衝液は、10mM酢酸バッファー(pH4.5)からなっており、4時間後および16時間後に新しくした。凍結/融解サイクルおよび撹拌ストレスの測定のために、2Rバイアルを用いた。
【0080】
N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(Ark Pharm Inc.)、D(+)トレハロース(Sigma-Aldrich)、スクロース、および、メチオニン(Sigma-Aldrich)とトレハロースまたはスクロースの混合物をそれぞれ試験賦形剤として、組み換えG-CSFを含む水溶液に添加した。生じた溶液は、1mg/mlのG-CSF濃度を有しており、50mMの賦形剤を含んでいた。メチオニンとスクロースまたはトレハロースの混合物の場合、糖濃度は50mMであり、メチオニン濃度は20mMであった。生じた溶液を凍結/融解ストレスおよび撹拌ストレスに曝した。
【0081】
N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(化合物A)を含むストレスが付与された製剤は、D(+)トレハロース、またはスクロースのような標準的な賦形剤を含む製剤、またはメチオニンとトレハロースもしくはメチオニンとスクロースの混合物を含む製剤よりも、少ない粒子を含んでおり、より混濁していないことが分かった。
【0082】
[実施例7:N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドによる、アナキンラの安定化]
試験溶液の生産、凍結/融解-サイクル、撹拌ストレスの測定および目視検査を、実質的に実施例4に記載のとおりに行なった。
【0083】
緩衝液は、20mMクエン酸バッファー(pH6.5)からなっていた。サンプルを3時間撹拌した。
【0084】
N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(Ark Pharm Inc.)、D(+)またはトレハロース(Sigma-Aldrich)、またはポリソルベート80を試験賦形剤として、組み換えアナキンラを含む水溶液に添加した。生じた溶液は、50mg/mlのアナキンラ濃度を有しており、50mMの賦形剤を含んでいた。ポリソルベート80の場合、その濃度は0、05%であった。生じた溶液を凍結/融解ストレスおよび撹拌ストレスに曝した。
【0085】
N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド(化合物A)を含むストレスが付与された製剤は、トレハロースを含む製剤よりも少ない粒子を含んでおり、より混濁しておらず、ポリソルベート80を含む製剤よりも、ほぼ同様に少ない量の粒子を含み、ほぼ同様に低い濁度であることが分かった。
【0086】
[参考文献一覧]
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図1
図2
図3
【国際調査報告】