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特表2022-541759低いGWPを有するフッ素化化合物を使用する熱交換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(54)【発明の名称】低いGWPを有するフッ素化化合物を使用する熱交換方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20220916BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220916BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220916BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20220916BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20220916BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20220916BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220916BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20220916BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
C09K5/10 E ZAB
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/653
H01M10/615
H01M10/617
H01M10/6556
H01M10/6568
H01L23/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502051
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2020069155
(87)【国際公開番号】W WO2021008949
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】19187012.0
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】トルテッリ, ヴィート
(72)【発明者】
【氏名】アンテヌッチ, エマヌエーラ
(72)【発明者】
【氏名】モンツァーニ, クリスティアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ブラガンテ, レタンツィオ
(72)【発明者】
【氏名】カペリュシュコ, ヴァレーリー
【テーマコード(参考)】
5F136
5H031
【Fターム(参考)】
5F136CB01
5F136CB27
5F136DA41
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
本発明は、伝熱流体を使用することを含む、物体と熱を交換するための方法であって、前記伝熱流体が下記一般式を有する1種以上の化合物を含む、方法に関する:
【化1】
(式中:
- R、R、R、Rは、C1~C6炭素鎖を有する同じ又は異なる直鎖又は分岐の部分的にフッ素化されているアルキル基であってよい)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱流体を使用することを含む、物体と熱を交換するための方法であって、前記伝熱流体が下記一般式を有する1種以上の化合物を含む方法:
【化1】
(式中:
- R、R、R、Rは、C1~C6炭素鎖を有する同じ又は異なる直鎖又は分岐の部分的にフッ素化されているアルキル基であってよい)。
【請求項2】
一般式(I)の前記1種以上の化合物が前記伝熱流体の少なくとも5重量%、好ましくは50重量%超、より好ましくは90重量%超を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記伝熱流体が、60未満、好ましくは50未満、より好ましくは30未満の、HodnebrogらのReview of Geophisics、51/2013,p300-378において報告された方法に従って決定されるGWP100を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記物体が電子コンピューティング機器である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電子コンピューティング機器が1つ以上のサーバである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電子コンピューティング機器が1つ以上の電子回路基板を含み、前記方法が、前記電子回路基板を前記伝熱流体と直接接触させる工程を含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
単相浸漬冷却の方法である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記物体がバッテリー、好ましくは再充電可能なバッテリーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記再充電可能なバッテリーが再充電可能な車両用バッテリーである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記物体が半導体デバイスである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
エッチャー、アッシャー、ステッパー及びプラズマ強化化学蒸着(PECVD)チャンバーから選択される半導体処理装置の1つ以上を用いる工程を含む半導体デバイスの製造方法であって、前記半導体処理装置が、前記半導体デバイスと熱交換する少なくとも1つの温度制御装置(TCU)を含み、前記TCUが伝熱流体を含み、
前記伝熱流体が下記一般式を有する1種以上の化合物を含む、方法:
【化2】
(式中:
- R、R、R、Rは、C1~C6炭素鎖を有する同じ又は異なる直鎖又は分岐の部分的にフッ素化されているアルキル基であってよい)。
【請求項12】
半導体デバイスの熱衝撃試験方法であって、前記方法が、任意の順に:
i.伝熱流体でできている第1の浴を用いて、前記半導体デバイスを-10℃~-100℃、好ましくは-10℃~-40℃に含まれる温度に冷却する工程と、
ii.伝熱流体で作られた第2の浴を用いて、前記半導体を60℃~250°に含まれる温度に加熱することと、
を含み、
前記第1及び第2の浴の1つ又は好ましくは両方が、下記一般式を有する1種以上の化合物を含む伝熱流体で作られている、方法:
【化3】
(式中:
- R、R、R、Rは、C1~C6炭素鎖を有する同じ又は異なる直鎖又は分岐の部分的にフッ素化されているアルキル基であってよい)。
【請求項13】
半導体デバイスの気相はんだ付け方法であって、
i.はんだ付けペーストを含む半導体デバイスを提供すること、
ii.伝熱流体をその沸点で含む密閉チャンバーを、前記伝熱流体の加熱された蒸気が前記密閉チャンバー内に生成されるように提供すること、
iii.前記半導体デバイスを、前記伝熱流体の前記蒸気と接触させて、前記密閉チャンバーに導入し、それによって前記加熱された蒸気との接触により前記はんだ付けペーストを溶融させること、
を含み、
前記伝熱流体が下記一般式を有する1種以上の化合物を含む、方法:
【化4】
(式中:
- R、R、R、Rは、C1~C6炭素鎖を有する同じ又は異なる直鎖又は分岐の部分的にフッ素化されているアルキル基であってよい)。
【請求項14】
電子コンピューティング機器と伝熱流体とを含む装置であって、前記伝熱流体が下記一般式を有する1種以上の化合物を含む、装置:
【化5】
(式中:
- R、R、R、Rは、C1~C6炭素鎖を有する同じ又は異なる直鎖又は分岐の部分的にフッ素化されているアルキル基であってよい)。
【請求項15】
バッテリー、好ましくは再充電可能なバッテリーと、前記バッテリーのための熱管理システムであって、熱を前記バッテリーと交換する伝熱流体を含む熱管理システムとを含む装置であって、前記伝熱流体が下記一般式を有する1種以上の化合物を含む、装置:
【化6】
(式中:
- R、R、R、Rは、C1~C6炭素鎖を有する同じ又は異なる直鎖又は分岐の部分的にフッ素化されているアルキル基であってよい)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月18日出願の欧州特許出願第19187012.0号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全体内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、低いGWPを有する選択されたフッ素化化合物を伝熱流体として含む組成物を使用して熱を物体と交換するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
伝熱流体は、加熱及び冷却システムにおける用途について当該技術分野で公知である。典型的には、伝熱流体には、水、食塩水、アルコール、グリコール、アンモニア、炭化水素、エーテル、及びこれらの材料の様々なハロゲン誘導体(クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HFC)、(パー)フッ素化ポリエーテル(PFPE)など)が含まれる。
【0004】
伝熱流体を使用して、1つの物体から別の物体、典型的に熱源から放熱子に熱を移動させ、熱源の冷却、放熱子の加熱をもたらすか、又は熱源によって生成される望ましくない熱を取り除く。伝熱流体は、熱源及び放熱子との間の熱経路を提供し、それは、熱流を改良するためのループシステム又は他の流れシステムによって循環され得るか、又はそれは、熱源及び放熱子と直接接触し得る。より簡単なシステムは、伝熱流体として単に空気流を使用し、より複雑なシステムは、システムの一部分で加熱又は冷却され、次いで目標と熱的に接触して供給される特別に設計されたガス又は液体を使用する。
【0005】
コンピュータやサーバなどのコンピューティング機器は、かなりの量の熱を発生させる。サーバファームなどの共有場所で作動する多数のコンピュータを集中させる大規模な開発は、ますます一般的になってきている。サーバファーム、ビットコインマイニングファーム、及びその他のスーパーコンピューティング用途の産業は非常に急速に成長してきている。そのような設備の構築戦略を決定する際の重要な要素は、そのようなコンピューティング機器と熱交換することを可能にする制御システムである。このシステムは、多くの場合「熱管理システム」と呼ばれており、典型的には作動中にコンピューティング機器を冷却するために使用されるが、寒い環境でシステムを起動する際など、加熱にも使用することができる。依然として空気が最も一般的に使用される流体であるものの、空気は電子基板間に大きなエアギャップが必要になるという欠点を有しており、設置面積が非常に大きくなる。空冷には大規模な空調エンジンも必要であり、それらのエネルギー消費量は非常に大きく、そのような設備のランニングコストのかなりの部分を占める。
【0006】
最近、伝熱流体、特に液体伝熱流体の使用に基づくサーバの熱管理のための解決策は、エネルギー効率が高く(従来の空調システムよりも少ないエネルギーを使用する)、より狭い空間により多くのサーバ、プロセッサ、及び回路基板を収容できるため、大きな関心を集めている。
【0007】
伝熱流体の他の重要な特殊な用途は、例えば、半導体産業(TCU、恒温槽、気相はんだ付け)、及びバッテリー産業、特に熱管理システムのための車両バッテリー産業で見ることができる。
【0008】
様々な用途において工業的に使用される様々な伝熱流体が存在するが、しかしながら、適切な流体の選択がいくつかの用途において重要であり得る。過去において一般的に使用された伝熱流体のいくつかは、それらの毒性(アンモニア、エチレングリコール)のためにもはや実用的でなく、他には生分解性でないため及び/又は地球のオゾン層に対して有害であり、且つ/若しくは環境中に分散される場合に温室効果ガスとして作用すると考えられるため、それらの環境プロファイルのために段階的に排除されたものもある。
【0009】
フッ素化液体は、非常に有効な伝熱流体である。SolvayのGalden及び3MのFluorinertなどの市販製品が存在し:これらは、誘電性であり、熱容量が高く、粘度が低く、毒性がなく、且つ化学的に不活性な流体であるため、これらは電子基板と直接接触することができ、またほとんどの材料と化学的に相互作用することもない。これまでに使用されているこれらのフッ素化流体に関連した欠点は、それらの高いGWP値である。
【0010】
GWP(地球温暖化係数)は、所与の温室効果ガスがどのくらいの熱を大気中で取り込むことができるかを示す、所与の化合物について決定することができる特質(「1」をCOに見合う基準値と考える)であり、特定の時間的間隔、典型的には100年にわたって計算される(GWP100)。
【0011】
GWP100の決定は、特殊な計算ツールを使用して、化合物の大気寿命に関する実験データとその放射効率とを組み合わせることによって行われ、それは、当技術分野において標準であり、例えばHodnebrogらによってReview of Geophisics,51/2013,p300-378で公開された包括的なレビューに記載されている。CF及びクロロ/フルオロアルカンなどの高度に安定したハロゲン化分子は、非常に高いGWP100(CFについては7350、CFC-11については4500)を有する。
【0012】
長年にわたって、高い値のGWPを有する伝熱流体(エアコンシステムに使用されるクロロ/フルオロアルカンなどの)は、業界によって段階的に廃止され、より低いGWP100値を有する化合物で置き換えられてきているが、可能な限り低いGWP100値を有する伝熱流体への継続的な関心は依然として存在する。
【0013】
ハイドロフルオロエーテル、特に分離型ヒドロフルオロエーテルは、それらの特性の残りが過去に使用されたCFCのそれらと比較できるのに、比較的低いGWP100値を有する傾向があり、こういう訳で、いくつかハイドロフルオロエーテルは、工業的に使用されており、伝熱流体として好評を博しており、例えば、商品名「Novec(登録商標)」で3Mによって市場に出されている。
【0014】
ハイドロフルオロエーテルは、それらが液体であるそれらの幅広い温度範囲のために、及び粘度が動作温度で余りにも高いものであるべきでない二次ループ冷却システムでの使用のための低温二次冷媒としての用途向けにそれらを有用にする、広範囲の温度でのそれらの低い粘度のために伝熱媒体として広く記載されている。
【0015】
フッ素化エーテルは、例えば、米国特許第5713211号明細書に3Mによって、米国特許出願公開第2007/0187639号明細書にDupontによって並びに国際公開第2007/099055号パンフレット及び国際公開第2010034698号パンフレットにSolvay Solexisによって記載されている。
【0016】
しかしながら、CFCよりもはるかに低いが、分離型ハイドロフルオロエーテルのGWP100は、米国特許第5713211号明細書(表5)に示されているように依然として70~500の範囲にある。
【0017】
【表1】
【0018】
他のヒドロフルオロ-オレフィンは、例えば、Chemours(Opteon(商標))及びHoneywell(Solstice(商標))により、伝熱流体として商業化されている。これらの化合物は、約1の非常に低いGWPを有するが、前に言及された化合物と異なり、はるかに燃焼性であり、このため、これは、それらの使用分野を制限する。
【0019】
したがって、良好な熱特性及び誘電特性を有し、広範囲の温度で液体であり、不燃性であり、且つ非常に低いGWP100(60以下)を有する伝熱流体を使用する有効な熱伝達のための方法を開発することが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
一態様では、本発明は、伝熱流体を使用することを含む、物体と熱を交換するための方法であって、前記伝熱流体が下記一般式を有する1種以上の化合物を含む、方法に関する:
【化1】
(式中:
- R、R、R、Rは、C1~C6炭素鎖を有する同じ又は異なる直鎖又は分岐の部分的にフッ素化されているアルキル基であってよい)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
「電子コンピューティング機器」については、マイクロプロセッサCPU、GPU、SSD、及びDDRメモリを含み、計算作業を実行する任意の個々の又は個々のコンピュータボードのアレイを意図しており、そのため、大規模サーバファーム、インターネットサーバ、ビットコインマイニングファクトリーのいずれも含むのみならず、小さい個々のコンピュータ、インターネットサーバ、コンピュータゲーム機器も含む。大規模と小規模の両方の設備が、本発明の伝熱方法から利益を得ることができる。
【0022】
本発明における用語「半導体デバイス」は、半導体材料の特性を活用する任意の電子デバイスを含む。半導体デバイスは、単一デバイスとして、及び単一半導体基板又は「ウェハー」上で製造され、相互連結された(2から始まって数十億になる)多数のデバイスからなる集積回路としての両方で製造される。用語「半導体デバイス」は、ダイオード及びトランジスタなどの、基本的なビルディングブロック、これらの基本的ブロックから構築される、プロセッサ、メモリチップ、集積回路、回路基板、光電管及び太陽電池、センサ等などの、アナログ、デジタル及び混合信号回路にまで及ぶ複合体構造までの両方を含む。用語「半導体デバイス」は、また、半導体材料ウェハーから誘導される半導体業界の任意の中間体又は未完成製品を含む。
【0023】
本発明は、伝熱流体を使用することを含む、物体と熱を交換するための方法であって、前記伝熱流体が下記一般式を有する1種以上の化合物を含む、方法に関する:
【化2】
(式中:
- R、R、R、Rは、O及びSから選択されるヘテロ原子を鎖の中に含んでいてもよいC1~C6炭素鎖を有する同じ又は異なる直鎖又は分岐の部分的にフッ素化されているアルキル基であってよく、鎖の中にヘテロ原子が存在する場合にはこれは好ましくはOであり;
- 好ましくは、酸素原子がR、R、R、Rのいずれかの中に存在する場合、その置換基は好ましくはC3~C6炭素鎖を有し;
- 好ましくは、酸素原子がR、R、R、Rのいずれかに存在しない場合、置換基RはC2~C4炭素鎖を有し;
- 好ましくは、R、R、R、及びRのそれぞれにおいて、2位のC原子はH原子に結合している)。
【0024】
「部分的にフッ素化されたアルキル基」については、少なくとも1つのC-F結合と少なくとも1つのC-H結合とを有するアルキル基が意図されている。C-O-C又はC-S-C部位を含むアルキル基など、S及びOから選択される鎖内ヘテロ原子を含むアルキル基はこの定義に含まれる。
【0025】
好ましくは、R、R、R、及びRは、鎖内にヘテロ原子を含まず、より好ましくは、R、R、R、及びは、-CF2-CHF2及び-CF2-CHF-CF3から選択される。
【0026】
一般式(I)に含まれるものの中で最も好ましい化合物は、ペンタエリトリトールへのTFE(テトラフルオロエチレン)及び/又はHFP(ヘキサフルオロプロピレン)の付加により得られる誘導体、それぞれC(CH-O-CF-CHF及びC(CH-O-CF-CHF-CFである。
【0027】
全ての実施形態において、熱交換流体は、CFC、HFC、及びHCFCなどの従来の冷媒ガスを本質的に含まないことが好ましい。CFCは、高いGWP100を有し、少量でさえも、式(I)に従ったその主成分を超えて熱交換流体のGWP100に寄与することが知られている。HFC及びHCFCは、改善されたGWP100プロファイルを得るために開発されたものの、それらのGWP100値は、多くの用途において依然としてかなり高い値である。したがって、本発明では、これらの化合物を本質的に含まない熱交換流体を使用することが好ましい。
「本質的に含まない」について、本発明における熱交換流体は、5%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.1%未満(全ての百分率は、熱交換流体の全体の重量パーセントとして表される)の所与の成分を含むことを意図する。
【0028】
本発明の方法は、任意の物体と熱交換するために使用することができる。本発明の方法は、物体が例えばコンピュータサーバなどの電子コンピューティング機器である場合に特に有用である。実際、本発明の方法は、誘電性且つ非腐食性である伝熱流体を使用するため、いわゆる「浸漬冷却」又は「直接接触冷却」を使用するシステムで使用することもできる。これらのシステムでは、流体は電子回路基板と直接接触して配置される。それらの作動温度におけるそのような流体は、気体、液体(単相浸漬冷却)、又は気液平衡(すなわちいわゆる「二相浸漬冷却」における液体の沸点付近)であってもよい。
【0029】
浸漬冷却では、CPU、GPU、メモリ、及び完全なサーバを含む他の電子機器などの電子コンピュータ機器は、熱伝導性の誘電性液体又は冷却液の中に完全に浸され、その温度は循環システムを使用して制御され、循環システムは、配管を通して液体を熱交換器又はラジエータ型の冷却装置にポンプ移送し、冷却液からの熱を排除する。
【0030】
サーバ浸漬冷却は、高価な空調設備をなくすことによってエネルギー使用量を大幅に削減することを可能にすることから、サーバ冷却溶液の一般的な解決策になりつつある。これらのシステムは、効率的な低速液体循環ポンプと、より単純な熱交換器及び/又はラジエーターシステムに置き換えられる。
【0031】
液浸冷却で使用される温度は、浸漬される装置が確実に作動できる最高温度によって決定される。サーバについては、この温度範囲は典型的には15~65℃であるが、場合によってはこの範囲は75℃まで広げられる。
【0032】
浸漬冷却の現在の商業的用途は、コモディティサーバ冷却、サーバクラスター、HPCCアプリケーション、及びビットコインマイニング、並びに主流のクラウドベース及びウェブホスティングアーキテクチャのためのデータセンター指向のソリューションに及ぶ。液浸冷却は、LED、レーザー、X線装置、及び磁気共鳴撮像装置に関連するコンピューティング機器の熱管理においても使用される。
【0033】
本発明の方法は、好ましくはいわゆる「単相浸漬冷却」に適している。本発明の化合物は、広範囲の温度で液体として存在し、そのため、熱交換組成物が作動の全ての段階で液体のままである開放浴系に適している。典型的には、伝熱流体は外部の熱交換器にポンプで送られ、そこで冷却(又は必要な場合には加熱)され、浴の中に再循環される。程度の差はあるが、流体の瞬間温度及び各瞬間の流体温度を最適化するサーバの温度を制御するために、精巧な制御システムが存在し得る。Rf鎖が長い化合物ほど蒸気圧が低いため、化合物の蒸発及び損失を最小限に抑えることができる。
【0034】
さらに、コンピュータ機器の冷却の分野では、本発明の方法は、熱交換流体が閉鎖系で循環され、熱伝導性材料(「モジュールループ」の名称でEbullientにより製造されたサーバ冷却溶液など)のプレートを介してプロセッサと熱的に接触する非浸漬冷却システムにおいても使用することができる。漏れのリスクが常に存在し、導電性液体が電子機器に破壊的な影響を与える可能性があることから、誘電性流体の使用はいずれにせよ有益である。
【0035】
本発明の方法は、例えば半導体デバイスの製造中の温度制御が非常に重要である半導体産業においても有用な場合がある。この場合、伝熱流体と熱を交換する物体は半導体デバイスである。温度制御装置(TCU)は、全て、半導体デバイスの製作のための生産ラインに沿って用いられ、ウェハーエッチング及び堆積プロセス、イオン注入並びにリソグラフィックプロセスのような工程中に望ましくない熱を除去するために伝熱流体を使用する。伝熱流体は、典型的には、温度制御を必要とするウェハー取付台及び各プロセスツールを通して循環させられ、それ自体の個別のTCUを有する。
【0036】
TCUを含む特に重要ないくつかのツールは、シリコンウェーハエッチャー、ステッパー、及びアッシャーである。エッチングは、70℃~150℃の範囲の温度で反応性プラズマを使用して行われ、ウェハーの温度は、プラズマ処理の間中、精密に制御されなければならない。プラズマ処理の後に、エッチされた部品は、エッチされた部分を除去する溶媒中に普通は浸漬される。この第2の工程は、それが穏和な又は周囲温度で行われるため、普通は温度制御を必要としない。本出願において「エッチャー」に言及する場合、それは、高温でのプラズマ処理が行われる及びそれ故TCUを必要とする装置を意図する。
【0037】
ステッパーは、網線を形成するためのウェハーのフォトリソグラフィーに使用され、それらは、次いで感光性マスクを露光するために使用される。このプロセスは、40℃~80℃の温度で実施されるが、温度制御は、良好な結果を確保するためにプロセスに沿ってウェハーが精密な固定温度(±0.2℃)に維持される必要があるので極めて重要である。
【0038】
アッシングは、感光性マスクがウェハーから除去される40℃~150℃の温度で行われるプロセスである。システムはプラズマを使用し、ここでもまた、精密な温度制御は特に重要である。
【0039】
別の関連プロセスは、酸化ケイ素、炭化ケイ素及び/又は窒化ケイ素の膜がチャンバー内でウェハー上に成長するプラズマ強化化学蒸着(PECVD)である。この場合にもまた、この工程が行われる温度は50℃~150℃の範囲で選択することができるが、蒸着プロセスの間中、ウェハーは、選択された温度で一様に保たれなければならない。
【0040】
半導体デバイス製造施設において、典型的には、各エッチャー、アッシャー、ステッパー及びプラズマ強化化学蒸着(PECVD)チャンバーは、伝熱流体が再循環される、独自のTCUを有する。
【0041】
伝熱流体が半導体デバイスの製造に使用される別のプロセス工程は、気相リフロー(VPR)はんだ付けである。これは、表面実装デバイス、マルチチップモジュール及びハイブリッド構成要素を回路基板に結び付けるために用いられる最も一般的な方法である。この方法において、はんだ付け材料はペースト形態で適用され、そのとき半導体デバイス、例えば未完成回路基板は、その気相と平衡にあるその沸点での伝熱流体が入った密閉チャンバー中に置かれる。気相の流体は、熱をはんだ付けペーストに伝え、ペーストはそのとき溶融し、接点を安定させる。この場合に、流体は、回路基板と直接接触するので、流体は、誘電性で且つ非腐食性でなければならない。この用途のために、伝熱流体は、はんだ付けペーストを溶融させるのに十分な沸点を有する組成物を含むことが重要である。
【0042】
多くの半導体デバイスの製造プロセスの重要な部分である別のシステムは、熱衝撃試験である。熱衝撃試験において、半導体デバイスは、2つの非常に異なる温度で試験される。異なる標準が存在するが、一般に、試験は、半導体デバイスを高温及び低温にし、次いでデバイスの物理的及び電子的特性を試験することにある。典型的には、試験される半導体デバイスは、高温浴(それは、60℃~250℃の温度にあることができる)及び低温浴(それは、典型的には-10℃~-100℃又は-10~-40℃の温度にあることができる)に交互に直接浸漬される。2つの浴間を移動させる時間は、一般的には10秒未満の、最小限にされなければならない。またこの試験において、浴を構成する流体はデバイスと直接接触し、それ故、誘電性で、且つ、非腐食性でなければならない。加えて、浴の汚染を回避するために、同じ流体が低温浴に及び高温浴に両方で使用されることが非常に好ましい。それ故、広範囲の温度で液体として存在する伝熱流体が好ましい。
【0043】
半導体デバイスの製造で使用するための伝熱流体は、典型的には、誘電性であり、非腐食性であり、且つ、それらを容易にポンプ送液可能にする比較的低い粘度を持った、広い温度範囲において液体状態で存在する液体である。
【0044】
本発明の方法は、半導体デバイスが伝熱流体と熱交換することを必要とする半導体デバイスの製造の工程全てで使用することができる。エッチャー、アッシャー、ステッパー及びプラズマ強化化学蒸着(PECVD)チャンバーなどの半導体処理装置を用いる場合に特に、これらの装置のそれぞれは、精密な温度制御及び/又は放熱を必要とし、それ故、それらは、本発明の方法の選択された伝熱流体を含むことができる温度制御装置(TCU)を装備している。
【0045】
加えて、半導体デバイス製造の不可欠な部分である熱衝撃試験では、試験に合格したデバイスのみがさらに処理されるため、半導体デバイスは、伝熱流体で作られた少なくとも2つの浴(典型的には-10~-100℃又は-10~-40℃の温度の低温浴と典型的には60℃~250℃の温度の高温浴)を使用して冷却及び加熱される。有利には、本発明の方法を使用して、浴のための伝熱流体を構成する適切な一般式(I)による化合物又は化合物のブレンドを選択することができる。好ましくは、伝熱流体は、流体が液体状態である広い温度範囲のおかげで両方の浴で同じ伝熱流体を使用できるように選択されるべきであり、その結果、浴の相互汚染のリスクがない。
【0046】
本発明の方法は、また、気相はんだ付けにおいて用途を見出すことができ、実際に、本発明の方法の選択された伝熱流体は、はんだ付けペーストの沸点に沿った沸点を有するように調合することができ、その結果さらに「硬化させられ」なければならないはんだ付けペーストを含む半導体デバイスを、その加熱された気相と平衡にあるその沸点での本発明の方法の選択された伝熱流体を含有する密閉チャンバーに導入することができる。加熱された蒸気は、半導体デバイスに熱を伝え、それによってはんだ付けペーストを溶融させ、それ故必要に応じて接点を固定するであろう。
【0047】
追加の利点は、全体の半導体デバイス製造施設にわたってただ一つの伝熱流体の使用を潜在的に可能にする、ただ一つの伝熱流体を多数の用途に使用できることである。
【0048】
本発明の方法が有用な可能性がある別の分野は、バッテリー、特に自動車、路面電車、列車などの車両用バッテリーなどの再充電可能なバッテリーの熱管理である。
【0049】
最近、全業界において、再充電可能なバッテリーの分野での開発の大部分は、異なるタイプのリチウム塩をベースとするリチウムイオン系バッテリーに焦点を当てている。リチウムマンガン酸化物、リチウム鉄リン酸塩及びリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物をベースとするバッテリーは、例えば、車両、電動工具、電動自転車等に応用されている。リチウムコバルト酸化物をベースとするバッテリーは、典型的には、携帯電話、ポータブルコンピュータ及びカメラなど、より小さいサイズであり、且つそれほど集約的でない用途において使用される。リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びリチウムチタン酸塩をベースとするバッテリーは、電動パワートレイン及びグリッドストレージなど、高い電力及び/又は容量を必要とする用途において検討されている。当然のことながら、リチウムイオン系バッテリーの領域外の新技術も探求されており、絶えず開発されている。本発明の方法は、特定のバッテリー技術に関連付けられておらず、現在及び次世代の両方のバッテリーシステムに適用可能である。
【0050】
従来の電力システムと異なり、バッテリー及び特に再充電可能なバッテリーは、それらの運転環境のための厳しい要件を有する。バッテリーは、比較的狭い温度範囲内の最良の条件で動作する傾向がある。
【0051】
一般的に、低い温度は、バッテリーの化学的特性に影響を与え、反応速度を緩慢にし、したがって充電又は放電時に電気の流れを低下させる。高い温度は、反応速度を増加させると共に、同時にまたエネルギー散逸を増加させ、したがってさらに一層過剰な熱を生成し、場合により温度の制御されていない上昇を引き起こし、セルに対して不可逆的な損傷をもたらし得る。典型的なLiイオンバッテリーでは、その構造物の一部のみでも80℃を超える温度は、バッテリーのさらなる温度上昇を引き起こす発熱化学反応を開始し得、最終的にバッテリーの完全な破壊をもたらし、火災及び爆発の危険がある。
【0052】
他方では、バッテリーの実際の適用は、はるかにより広い温度範囲でそれらが効率的であることを必要とする。例えば、車両のバッテリーは、人々がそれらを使用することが予想される任意の環境において適切に機能する必要があり、そのため、それらは、-20℃~+40℃以上の温度範囲において動作する必要がある。それに加えて、バッテリーの充電及び放電サイクルは、バッテリー自体において熱を生成し得、バッテリーを許容範囲の温度範囲内に維持することをより一層難しくする。
【0053】
典型的なLiイオンバッテリーの表示数字は、使用可能な範囲が通常-20℃~60℃であるが、良好な電力出力は0℃~40℃で得られるにすぎず、ここで、最適な性能は、20°~40℃で得られるにすぎないことを示す。また、温度は、バッテリーの持続時間に影響を与え、実際、消耗したと考えられるまでバッテリーが耐えることができる充電/放電サイクル数は、10℃未満においてアノードめっきのために、且つ60℃超において電極材料の劣化のために急速に低下する。最適な性能のための温度範囲は、異なるバッテリー化学及び構造のために異なり得るが、しかしながら、全ての現在の商用バッテリーは、それらの性能が最適である比較的狭い温度領域を共有する。バッテリー全体は、その寿命及び安全性を低下させ得るため、高温又は低温領域を有さずに同じ温度に均一に保持されることを確実にすることが一般的に同じく重要である。
【0054】
この理由のため、特にバッテリーの安全性、信頼性及び寿命が重要な関心の対象であるとき、バッテリー熱管理システム(BTMS)を商用バッテリー組立体内に組み込むことが現在では通例である。これらのBTMSは、バッテリーのタイプに応じて、程度の差はあっても複雑であり得るが、しかしながら、1つの共通の要素は、バッテリーと熱を交換し、したがってそれを加熱又は冷却するガス又は液体などの伝熱流体の存在である。
【0055】
したがって、バッテリー熱管理システム(BTMS)は、車両のバッテリーなど、高い電力及び高い信頼性を必要とする用途において特に非常に重要である。BTMSは、用途に応じて、程度の差はあっても複雑であり得るが、各々のBTMSは、バッテリーと熱を交換する伝熱流体を典型的に使用して、その温度が非常に高い場合にバッテリーを冷却する機能を、その温度が非常に低い場合にバッテリーを加熱する機能を少なくとも有する。BTMSの他の一般的な特徴は、バッテリー温度への外部環境の影響を低減するための絶縁システム及びバッテリーパック内に生じ得る危険ガスを散逸させることを促進する換気システムである。しかしながら、本発明の方法は、具体的には、BTMSの熱交換機能に関し、任意のBTMSに容易に適用され得、他の機能及び特徴を組み込むことができる。
【0056】
液体は、より大きい熱量をガスよりも急速に移動させることができるため、液体を伝熱流体として使用するBTMSが一般的である。典型的には、流体は、バッテリー並びに流体を所望の温度に加熱及び/又は冷却する機能を有する第2のシステムと熱接触している密閉システム内でポンプによって循環される。この第2のシステムは、冷却システムと加熱システムとの任意の組合せを含むことができるか、又はヒートポンプ内で加熱機能と冷却機能とを組み合わせることができる。循環流体は、熱をバッテリーから吸収するか又は熱をバッテリーに放出し、次いで、それは、前記第2のシステム内で循環され、流体を所望の温度に戻す。流体のその温度と、各瞬間の流体の温度を最適化するバッテリーの温度とを制御する、程度の差はあるが、精巧な制御システムが存在し得る。
【0057】
いくつかのシステムにおいて、システム内で循環される流体は、したがって、その中に浸漬されるバッテリーセルと直接接触することができる。これらの場合、明らかに、流体は、バッテリーセル及びそれらの電子部品を保護するために誘電性でなければならない。他の場合伝熱流体は、例えば、金属又は他の熱伝導性材料から製造される熱交換プレートによる間接的接触によって単に熱を交換する別個の密閉システム内で循環される。密閉システムは、いずれにしても漏れの危険が高いため、誘電性流体は、このタイプのシステム内でも有利であり得る。
【0058】
特に高出力バッテリーについては、流体、特に液体に基づく熱管理システムが使用されており、本発明の方法は、低下したGWP100における改善された熱管理を提供する。
【0059】
列挙された用途を超えて、本発明の方法は、任意の熱交換方法、例えば航空機、車両、又は船の基板上のものを含む加熱又は冷却コンパートメント(例えば食品コンパートメント)、工業生産設備の加熱又は冷却、作動中のバッテリーの加熱又は冷却、サーモスタット浴の形成のための、熱交換方法にも適合させることができる。
【0060】
序論で言及したように、これらの分野で使用される伝熱流体には、フルオロ化合物が含まれる。特にハイドロフルオロエーテルは、それらの化学的不活性、誘電性、それらが液体であり、且つ、ポンプ送液可能である(使用の温度で1~50cpsの粘度を典型的には有する)幅広いT範囲、低い可燃性及び比較的低いGWPのためにこれらの分野において用途が見出されている。
【0061】
これらの分野での使用のための市販のハイドロフルオロエーテルは、例えば、全てのこれらの特性を約70~300の比較的低いGWP100と組み合わせている3MのNovec(商標)シリーズからのものである。
【0062】
さらに、GWPは、規制環境に起因して近年の重要な特性でもあり、そのため、現在商業化されているハイドロフルオロエーテルよりもさらに低いGWPを有する新しい熱交換流体を開発することが常に求められている。
【0063】
本出願人は、意外にも、本発明の方法に用いられる伝熱流体が、不燃性であり、効率的な伝熱を提供し、幅広い温度範囲にわたって使用することができ、且つ、伝熱流体として商業化された他のハイドロフルオロエーテルに対して等しい又は改善された誘電特性を有することを見出した。意外にも、本発明に使用される伝熱流体は、それが実験の部において下に示されるように、一般に50よりも低い及びいくつかの材料については30よりもさらに低い、極めて低いGWP100を有する。これは、特に予想外の結果であり、実際に、上で引用されたHodnebrog et.al.などの先のレビューは、ペンタエリトリトール誘導体を低GWP化合物として研究又は提案していなかった。
【0064】
したがって、一般式(I)に従ってこれらの選択された化合物を使用して、50未満、好ましくは30未満のGWP100値を有する伝熱流体を配合することができる。本発明による伝熱流体は、毒性も低く、全範囲で良好な伝熱特性と比較的低い粘度を示す。また、本発明の流体は、優れた電気適合性を有する、すなわち、それらは、非腐食性であり、高い絶縁耐力、高い体積抵抗率、及び極性材料に対する低い溶解力を有する。本発明の流体の電気特性は、回路と直接接触したエレクトロニクス用の浸漬冷却システムで並びにループ及び/又は導電性プレートを使用する間接接触用途でそれらが使用できるようなものである。
【0065】
本発明の方法での使用のための伝熱流体は、好ましくは5重量%超、より好ましくは50重量%超、さらに好ましくは90重量%超の上の式(I)に従った1種以上の化合物を含む。一実施形態において、伝熱流体は、上の一般式に従った1種以上の化合物から完全に構成される。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の伝熱流体は、式(I)に従った化合物のブレンドを含む。
【0067】
本発明の方法は、伝熱流体を使用する任意の加熱及び/又は冷却システム、特に本明細書に例示されている全てのものに適用することができる。特に電子コンピューティング機器の温度制御のためには、電子回路基板が液体に直接浸漬されるそのような機器の浸漬冷却と、金属や金属合金などの熱伝導性材料のプレートなどの基板と熱を交換することができる冷却要素に流体が分配される分配システムの両方である。
【0068】
他の用途は、バッテリー、特に例えば、車、路面電車、電車などの車両用の再充電可能なバッテリーの熱管理である。
【0069】
エッチャー、アッシャー、ステッパー、及びPECVDチャンバー用の温度制御ユニット(TCU)、熱衝撃試験用の恒温槽、及び気相はんだ付けなどの、熱交換の対象が半導体デバイスである半導体産業において、さらなる用途が見出される。
【0070】
別の態様では、本発明は、電子コンピューティング機器と、一般式(I)を有する1種以上の化合物を含む伝熱流体とを含む装置も包含する。
【0071】
さらなる態様では、本発明は、バッテリー、好ましくは充電式バッテリーと、前記バッテリーの熱管理システムとを含む装置であって、前記バッテリーの前記熱管理システムが前記バッテリーと熱を交換する伝熱流体を含み、前記伝熱流体が一般式(I)を有する1種以上の化合物を含む装置に関する。
【0072】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0073】
本発明をこれから以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、その目的は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0074】
標準:
電気特性の測定は、以下の標準:
体積抵抗率-ASTM D5682-08[2012]
絶縁耐力-ASTM D877/D877M-13
誘電率-ASTM D924-15
に従って行った。
【実施例
【0075】
実施例1-C(CH2-O-CF2-CHF2)4(HFE4)の合成
1.12Lの無水アセトニトリルと182gの2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(PENTA試薬グレード)を2Lの撹拌されているステンレス鋼製加圧反応器の中に入れた。次いで、75gのKOH水酸化カリウムを添加し、反応器を閉じ、窒素で4回フラッシュした。その後、合計600gのTFE(テトラフルオロエチレン)を、温度制御によって内部温度を約65℃に調整しながら、7barで平均速度36g/分で反応器に供給した。3.3時間後、次いで、25℃に冷却しながら反応器からTFEを除去し、窒素で4回フラッシュした。
【0076】
1580gの液体混合物を反応器から取り出した。この液体混合物に8Lの脱塩水を入れ、撹拌されている10Lのガラス容器内で25℃で約4時間洗浄した。その後、混合物を一晩静置したままにした。
【0077】
次いで、745gの有機液体を下層として分離した。40cmのVigreuxカラムとクライゼンコンデンサーとを備えた1リットルの丸底フラスコ中で蒸留して、この液体から残留アセトニトリルを分離した。純粋なヒドロフルオロエーテルを、0.5mbarの真空下で90℃のヘッド温度で回収した。この生成物は、19F-NMRスペクトル(-138.6ppmのダブレットオブトリプレット、J=53Hz、J=5Hz、Int.=1;-93.7ppmのカルテット、J=5Hz、Int.=1)及び1H-NMRスペクトル(4.21ppmのシングレット、Int.=2;6.24ppmのトリプレットオブトリプレット、J=53Hz、J=3Hz、Int.=1)及びGC-MSDマススペクトルから同定した。CP-SIL8CB 0.45micのキャピラリカラムでのGC-TCD分離は、単一のピークの99.5%のシグナル面積を溶出させる。
【0078】
640gのヒドロフルオロエーテルである純粋なC(CH-O-CF-CHF(HFE4)が得られた。
【0079】
GWP測定
C(CH-O-CF-CHF(HFE4)についてのGWP100は、領域3500~500cm-1にわたる赤外スペクトルの積分された吸収断面積、OHラジカルとの反応のキネティックを測定すること、結果としての大気寿命及び放射強制効率を計算することによって、確立された手順に従ってUniversity of Osloで決定された。これらの測定の結果として、28のGWP100が得られた。赤外線吸収断面積は、B3LYP/6-31G量子化学計算で予測した。OHラジカルとのHFE4の反応は、大気圧及び298Kで以下の通りに決定した:
HFE4+OH=0.9510-14cm分子-1-1
参照としてNovec7200を採用した。
【0080】
他の市販のハイドロフルオロエーテルと比べた電気及び熱特性:
【0081】
【表2】
【0082】
本発明による化合物の他の物理的特性:
【0083】
【表3】
【0084】
結果は、同様の目的に使用される既存の市販の材料と比較した場合に、本発明の化合物が全体としてどの程度同等又は改善された特性を有し、低いGWPを有するかを示している。これらの化合物を含む伝熱流体は、電子コンピューティング機器、バッテリー、又は半導体デバイスとの熱交換を含む、言及した全ての用途で使用することができる。
【国際調査報告】