(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(54)【発明の名称】研削ディスクを自動的に取り外すための装置と方法
(51)【国際特許分類】
B24B 45/00 20060101AFI20220916BHJP
B25J 15/04 20060101ALI20220916BHJP
B24B 27/00 20060101ALI20220916BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
B24B45/00 A
B25J15/04 A
B24B27/00 A
B23Q3/155 K
B23Q3/155 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502093
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2020067693
(87)【国際公開番号】W WO2021008837
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】102019119152.1
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515315521
【氏名又は名称】フェルロボティクス コンプライアント ロボット テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Ferrobotics Compliant Robot Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナデラー ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】シナール ヤコブ
【テーマコード(参考)】
3C002
3C034
3C158
3C707
【Fターム(参考)】
3C002EE00
3C002KK04
3C002LL08
3C034AA19
3C034BB51
3C034BB66
3C034BB93
3C034CA22
3C034CA30
3C158AA02
3C158AA11
3C158AA15
3C158AC01
3C158CB03
3C158CB04
3C707AS12
3C707GS01
3C707MT03
3C707MT06
(57)【要約】
【課題】
比較的簡単な方法で研削ディスクを自動的に交換することを可能にする交換ステーションを提供する。
【解決手段】
研削ディスクを保持するための表面を有する保持プレートと、保持プレートに対して第1の位置に引き上げられた可動のクランプ要素と、クランプ要素に結合され、研削ディスクが保持プレートとクランプ要素との間でクランプされるようにクランプ要素が保持プレートに押し付けられる第2の位置へクランプ要素を移動するように構成されたアクチュエータと、研削ディスクが保持プレートの表面に置かれ、押し付けられると作動するように保持プレートと相対的に配置されたトリガー要素と、を有し、トリガー要素が作動されると、アクチュエータがクランプ要素を第1の位置から第2の位置へ移動させるようにトリガー要素とアクチュエータとが結合されている装置が開示されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削ディスク(11)を保持するための表面を有する保持プレート(35)と、
前記保持プレート(35)に対して第1の位置に引き上げられた可動のクランプ要素(34)と、
前記クランプ要素(34)に結合され、前記研削ディスク(11)が前記保持プレート(35)と前記クランプ要素(34)との間でクランプされるように前記クランプ要素(34)が前記保持プレート(35)に押し付けられる第2の位置へ前記クランプ要素を移動するように構成されたアクチュエータ(37)と、
前記研削ディスクが前記保持プレート(35)の表面に置かれ、押し付けられると作動するように前記保持プレート(35)と相対的に配置されたトリガー要素(33)と、
を有し、
前記トリガー要素(33)が作動されると、前記アクチュエータ(37)が前記クランプ要素(34)を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させるように前記トリガー要素(33)と前記アクチュエータ(37)とが結合されている
装置。
【請求項2】
前記研削ディスクが前記保持プレート(35)の前記表面に押し付けられることによって前記トリガー要素(33)が機械的に作動するように、前記トリガー要素(33)が前記保持プレート(35)に相対的に配置されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記トリガー要素(33)が前記保持プレート(35)の前記表面に突き出しており、前記研削ディスク(11)が前記保持プレート(35)の表面に置かれて押し付けられると、前記トリガー要素(33)を作動させる請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記アクチュエータ(37)が、プリロードされたバネ、又は、プリロードされた空気圧式若しくは電気式のアクチュエータ(37)であり、
前記トリガー要素(33)は、前記アクチュエータ(37)の移動をブロックし、前記トリガー要素(33)の作動時に前記アクチュエータ(37)の移動のブロックを解放するように構成されている請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記クランプ要素(34)は、揺動レバー(342)に取り付けられるか、又は前記揺動レバー(342)の一部を形成している請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記アクチュエータが前記揺動レバー(342)に結合され、前記揺動レバー(342)が前記アクチュエータ(37)と前記クランプ要素(34)とを結合している請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記アクチュエータが、前記揺動レバー(342)を往復揺動させ、それによって前記クランプ要素(34)が前記第2の位置に移動し、再び、前記第1の位置に戻るように構成された複動式空気圧シリンダである請求項5又は請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記クランプ要素(34)の前記第1の位置への移動時に、前記クランプ要素(34)に付着している前記研削ディスク(11)を外するように配置された1つ又は複数のピン(38)をさらに有する請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記研削ディスクの方向に圧縮空気を吹き付ける圧縮空気ノズル(32)をさらに有する請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
研削機械(10)に取り付けられた研削ディスク(11)をマニピュレータ(1)により取り外し装置(30)の保持プレート(35)上に置くステップであって、前記研削ディスク(11)を前記保持プレート(35)上に置くことにより前記取り外し装置(30)のトリガー要素(33)が作動されるステップと、
前記保持プレート(35)と、前記トリガー要素の作動に応答して前記保持プレート(35)の方向へ押圧される可動のクランプ要素(34)との間で前記研削ディスク(11)をクランプするステップと、
前記マニピュレータ(1)により前記研削機械(10)を持ち上げ、それにより前記研削機械の支持プレート(12)からクランプされた前記研削ディスクが剥がされるステップと、
を有する方法。
【請求項11】
前記研削ディスク(11)を前記保持プレート(35)の上に置くことにより前記取り外し装置(30)の前記トリガー要素(33)が機械的に作動される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
クランプされた前記研削ディスク(11)を解放するために前記クランプ要素(34)を持ち上げるステップと、
前記研削ディスク(11)が前記クランプ要素(34)に付着している場合に、前記研削ディスク(11)が前記クランプ要素から剥がされるように前記クランプ要素(34)が上昇する際に前記研削ディスク(11)の動きをブロックする1つ又は複数のピン(38)によって前記研削ディスクを剥がすステップと、
をさらに有する請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記クランプ要素(34)が持ち上げられた際に前記ピン(38)が前記クランプ要素(34)の端部にある1つ又は複数の凹部(38´)に入り込むように、前記ピン(38)が前記取り外し装置(30)のハウジングに取り付けられている請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記トリガー要素(33)の作動時に、プリロードされたアクチュエータ(37)の移動が解放され、それによって前記クランプ要素(34)が前記アクチュエータ(37)から前記保持プレート(35)へ向かって移動し、前記保持プレート(35)と前記クランプ要素(34)との間で前記研削ディスク(11)をクランプする請求項10乃至請求項13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記トリガー要素(33)の一端が前記保持プレート(35)の表面から突き出し、前記研削ディスク(11)が前記保持プレート(35)の前記表面に置かれ、押圧されると、前記トリガー要素(33)が作動する請求項10乃至請求項14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記トリガー要素(33)が、阻止爪又は押しボタンである請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット支援型の研削装置において、研削材(研削ディスク等)の自動交換を可能とする交換ステーションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削機械は、産業界や工芸品に広く使われている。偏心研削装置は、振動運動に回転軸を中心とした回転運動を重ねた研削装置である。これは、塗装面の表面欠陥のスポット補修など、表面品質への要求が高い表面の仕上げによく使用される。このような要求を実現するためには、研削加工時の不均一性を可能な限り避ける必要がある。実際には、特に少量生産の場合、これらの作業が経験豊富な熟練工によって行われることが一般的である。
【0003】
ロボット支援型の研削装置では、研削工具(例えば、オービタル研削機械)をマニピュレータ、例えば、産業用ロボットがガイドする。研削工具は、マニピュレータのTCP(Tool Center Point)と呼ばれる部分に様々な方法で結合することができ、マニピュレータは工具の位置や向きを実質的に自由に調整することができる。産業用ロボットは通常、位置制御を行い、TCPを目的の軌道に沿って正確に移動させることができる。ロボット支援型の研削において良好な結果を得るためには、多くのアプリケーションで加工力(研削力)の制御が必要となるが、従来の産業用ロボットでは十分な精度を得ることが困難な場合が多い。産業用ロボットはアームが大きく重いため、慣性力が大きく、制御装置(クローズドループ制御装置)が加工力の変動に素早く反応することができない。この問題を解決するために、産業用ロボットに比べて小型のリニアアクチュエータをマニピュレータのTCPと研削工具の間に配置し、マニピュレータのTCPと研削工具を結合させることができる。リニアアクチュエータは加工力(工具とワークの接触力)のみを制御し、マニピュレータは研削工具とリニアアクチュエータを予め設定された軌道に沿って位置制御で移動させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偏心研削機械などの研削機械は、支持プレートに取り付けられた、薄く柔軟で着脱可能な研削ディスクを用いて作業する。研削ディスクは、いわゆるデイジーディスクと呼ばれるものが非常に良く使われる。研削ディスクは、例えば研削粒を塗布した紙(または他の繊維結合材料)を有し、例えば接着剤層や面ファスナ(Hook and Loop Fastener、Velcro(商標)Fastener)を使って支持ディスクに取り付けることができる。ロボット支援型の研削装置でも、摩耗した研削ディスクは手作業で交換することが多い。研削ディスクを交換するためのロボット支援型の交換ステーションのコンセプトはいくつかあるが、既知の解決策は比較的複雑で、費用がかかり、したがって高価である。
【0005】
したがって、本発明の課題は、ロボット支援型の研削装置において、比較的簡単な方法で研削ディスクを自動的に交換することを可能にする交換ステーションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、請求項1に記載の装置及び請求項9に記載の方法によって解決される。異なる実施形態およびさらなる発展は従属請求項の主題である。
【0007】
マニピュレータに搭載された研削機械から研削ディスクを自動的に取り外す装置が記載されている。この装置は、研削ディスクを保持するための表面を有する保持プレートと、前記保持プレートに対して第1の位置に引き上げられた可動のクランプ要素と、前記クランプ要素に結合され、前記研削ディスクが前記保持プレートと前記クランプ要素との間でクランプされるように前記クランプ要素が前記保持プレートに押し付けられる第2の位置へ前記クランプ要素を移動するように構成されたアクチュエータと、前記研削ディスクが前記保持プレートの表面に置かれ、押し付けられると作動するように前記保持プレートと相対的に配置されたトリガー部材と、を有する。前記トリガー要素が作動されると、前記アクチュエータが前記クランプ要素を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させるように前記トリガー要素と前記アクチュエータとが(直接的又は間接的に、電気的又は機械的に)結合されている。
【0008】
さらに、マニピュレータに搭載された研削機械から研削ディスクを自動的に取り外す方法について記載されている。この方法は、研削機械に取り付けられた研削ディスクをマニピュレータにより取り外し装置の保持プレート上に置くステップであって、前記研削ディスクを前記保持プレート上に置くことにより前記取り外し装置のトリガー要素が作動されるステップと、前記保持プレートと、前記トリガー要素の作動に応答して前記保持プレートの方向へ押圧される可動のクランプ要素との間で前記研削ディスクをクランプするステップと、前記マニピュレータにより前記研削機械を持ち上げ、それにより前記研削機械の支持プレートからクランプされた前記研削ディスクが剥がされるステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
ロボット支援型の研削装置において、比較的簡単な方法で研削ディスクを自動的に交換することを可能にする交換ステーションを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ロボット支援型の研削装置の一例を示した図である。
【0011】
【
図2】取り外し装置で研削ディスクを自動的に取り外す際のロボットに搭載された研削機械を示す図である。
【0012】
【
図3】ロボットに搭載された研削機械から研削ディスクを自動的に取り外すのに適した取り外し装置の一例を示す図である。
【0013】
【
図4】
図3に示す取り外し装置の内部をより詳細に示す断面図である。
【0014】
【
図5】
図4の実施形態において研削ディスクをクランプした状態を示す図である。
【0015】
【0016】
【
図7】ロボット支援型の研削機械からの研削ディスクを自動的に取り外す方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に示す実施形態を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。図解は必ずしも縮尺通りではなく、本発明は図示された態様に限定されるものではない。むしろ、発明の根底にある原理を説明することに重点が置かれている。
【0018】
本発明の様々な実施形態を詳細に説明する前に、まず、ロボット支援による研削装置の一般的な例を説明する。この装置は、産業用ロボットなどのマニピュレータ1と、回転する研削工具とを備えた研削機械10(例えばオービタル研削機械)とを有している。そして研削工具は、リニアアクチュエータ20を介してマニピュレータ1のいわゆる工具中心点TCP(Tool-Center-Point)に結合されている。また、6自由度を有する産業用ロボットの場合、マニピュレータは、それぞれジョイント3a、3b、3cによって接続された4つのセグメント2a、2b、2c、2dから構成され得る。第1セグメントは、通常、基礎41に固定的に連結されている(これは必ずしもそうでなくても良い)。ジョイント3cは、セグメント2dとセグメント2dとを連結している。ジョイント3cは、2軸的であってもよく、セグメント2cが水平方向の回転軸(仰角)と垂直方向の回転軸(方位角)を中心に回転できるようにしてもよい。ジョイント3bは、セグメント2bとセグメント2cとを連結し、セグメント2cの位置に対してセグメント2bの旋回運動を可能にする。ジョイント3aはセグメント2aとセグメント2bとを連結している。ジョイント3aは2軸的とすることができ、したがって(ジョイント3cと同様に)2方向への旋回運動を可能にする。TCPは、セグメント2aに対して固定された相対位置を有しており、セグメント2aは、通常、セグメント2aの長手方向軸(
図1において一点鎖線で示され、研削工具の回転軸に対応)を中心とした旋回運動を可能にする回転ジョイント(図示せず)を含んでいる。ジョイントの各軸には、アクチュエータ(例えば、電気モータ)が割り当てられ、これらのアクチュエータにより、それぞれのジョイントの軸を中心とした回転運動が引き起こされ得る。ジョイントのアクチュエータは、ロボット制御部4によってロボットプログラムに従って制御される。
【0019】
マニピュレータ1は、通常、位置制御されており、すなわち、ロボット制御部は、TCPの姿勢(位置及び向き)を決定し、TCPを予め定義された軌跡に沿って移動させることができる。アクチュエータ20がエンドストップにある場合、TCPの姿勢は、研削機械の姿勢も規定する。最初に述べたように、アクチュエータ20は、研削加工中に工具とワークピース40との間の接触力(加工力)を所望の値に設定する。マニピュレータ1による直接的な力の制御は、通常、研削用途にはあまりにも不正確である。それは、マニピュレータ1のセグメント2a乃至2cの高い質量慣性により、力のピークの迅速な補正(例えば、研削工具をワークピース40上に配置するとき)が、従来のマニピュレータでは実質的に不可能であるからである。このため、ロボット制御部は、マニピュレータのTCPの姿勢を制御し、力の制御はもっぱらアクチュエータ20が行うように構成されている。
【0020】
既に述べたように、研削加工の間、工具(研削機械10)とワークピース40との間の接触力FKは、研削工具とワークピース40との間の接触力が所定の値に対応するように、(リニア)アクチュエータ20と力制御(これは、例えば、制御部4において実現することができる)とにより設定することができる。その際の接触力は、リニアアクチュエータ20がワークピースの表面を押すアクチュエータ力に対する反作用である。ワークピース40と工具との間に接触がない場合、アクチュエータ20は、ワークピース40への接触力の欠落によりエンドストッパへ移動する。マニピュレータ1の位置制御(これも制御部4で実現可能)は、アクチュエータ20の力制御とは完全に独立して実行され得る。アクチュエータ20は、研削機械10の位置決めのために用いられるのではなく、研削プロセス中に所望の接触力を設定および維持すること、ならびに工具とワークピースとの間の接触を検出することのみに用いられる。アクチュエータは、空気圧アクチュエータ、例えば複動式空気圧シリンダであってもよい。しかし、他の空気圧アクチュエータ、例えばベローズシリンダやエアマッスルなどを使用することも可能である。代替として、電動ダイレクトドライブ(ギアレス)も考えられる。
【0021】
空気圧アクチュエータの場合、力制御は、制御弁、制御器(制御部内に実装)、および圧縮空気アキュムレータの助けを借りて、それ自体既知の方法で実現することができる。ただし、具体的な実施方法は、これ以上の説明には重要ではないので、詳細な説明は省略する。アクチュエータ20の代わりに、用途に応じて、バネのような受動的でなめらかな要素を使用することができる。また、力制御がマニピュレータ自体で十分な品質で提供される場合は、アクチュエータ20を省略することも可能である。
【0022】
研削機械10は、支持プレート(バッキングプレート)12に取り付けられた研削ディスク11を有する。支持プレート12の表面又は研削ディスク11の裏面、あるいはその両方は、研削ディスク11が支持プレート12に接触して容易に付着するようなものである。例えば、面ファスナ(Hook and Loop Fastener、Velcro(商標)Fastener)を用いて、研削ディスク11が支持プレートに付着するようにする。面ファスナに代わる一般的な方法として、研削ディスク11の裏面に粘着性のコーティングを施し、支持プレート12の対応する表面に付着させる方法がある。
図2は、マニピュレータに搭載可能な研削機械10の一例を示しており、研削機械10は、研削ディスク11が研削ディスク取り外し装置30の保持プレート35の表面上に(例えば、調整可能な力で)押し付けられるように研削ディスク取り外し装置30に対して位置決めされている。以下、
図3乃至
図6を参照して、研削ディスク取り外し装置30の一実施形態についてより詳細に説明する。
【0023】
図3は、
図2の研削ディスク取り外し装置30の斜視図、
図4は、取り外し装置30のハウジング31の内部に配置された構成要素を示す対応する断面図である。なお、取り外し装置30のハウジング31は、必ずしも密閉型である必要はない。むしろ、ハウジングは、取り外し装置30の他の構成要素を直接的または間接的に、移動可能または移動不可能に取り付けることができる任意の機械的構造であると理解される。ハウジングは、(少なくとも部分的に閉鎖されたハウジングの場合)1つ以上のカバーが取り付けられるフレームを有していてもよい。ここに示す例では、ハウジング31は、ネジによって接続される複数の部品から構成されている。もちろん、リベットやスナップイン接続など、他の接続方法も使用可能である。用途によっては、筐体の形状もここで説明した実施形態とは異なるものとすることができる。図示の例では、ハウジングは、穴311を有するベースプレート310を有する。ベースプレート310(ひいては装置30全体)は、穴311から挿入されるネジ(図示せず)により、床または他の支持体に取り付けられることが可能である。
【0024】
図3から分かるように、取り外し工程中にロボットが研削機械10に取り付けられた研削ディスク11を押し付ける保持プレート35は、トリガー要素33の端部が案内される開口部を有している。トリガー要素33の端部は、保持プレート35の開口部から突出しており、取り外し工程で研削ディスク11が保持プレート35に押し付けられ保持プレート35に対して平らに置かれると、トリガー要素33の突出端部が開口部に押し込まれる(
図4参照、接触圧F
A)。また、開口部はスロットとして構成することも可能である。トリガー要素33の端部は、必ずしも保持プレート35の開口部を通過する必要はない。代替的に、トリガー要素33は、保持プレートの隣に配置することもできる。重要なのは、トリガー要素33が、ロボットが研削ディスク11を保持プレート35の表面に押し付けるときに作動するように配置されていることだけである。
【0025】
トリガー要素33が(研削ディスクが保持プレート35に押し付けられたときに)作動すると、研削ディスク11の端部を保持プレート35とクランププレート34との間でクランプする機構がトリガーされる。ロボットが再び研削機械11を取り外し装置30から遠ざけると、研削機械10の支持プレート12が保持プレート35の表面から持ち上げられる一方、研削ディスク11はクランププレート34によって固定される。支持プレート12を持ち上げることで、(クランプされた)研削ディスク11が支持プレートから離脱される。上述の機構の一例について、
図4および
図5を参照して以下に詳述する。
【0026】
図4に示すように、クランププレート34(一般にクランプ要素と呼ばれる)は、ジョイント341によってハウジング31の一部に回転可能に取り付けられた揺動レバー342の第1の端部に取り付けられている。つまり、ロッカーとも呼ばれる揺動レバー342は、回転軸(ジョイント341によって定義される)を中心に揺動することができる。クランププレート34(クランプ要素)は、例えば、1つ以上のネジ342によって揺動レバー341に取り付けられてもよい。他の実施形態では、クランププレート34及び揺動レバー341は、単一部材から作られてもよい。
図4に示す状況では、揺動レバー342は、クランププレート34が保持プレート35から持ち上がるように位置決めされている(第1の位置)。
図5に示す状況では、揺動レバー342は、クランププレート34が保持プレート35の表面に押し付けられるように配置され(第2の位置)、クランププレート35と保持プレート35の表面との間に(保持プレート35上に正しく配置されていれば)研削ディスクが挟み込まれる。
【0027】
揺動レバー342の第1の位置(クランプ解放)から第2の位置(クランプ締付)への移動は、トリガー要素33の作動によって引き起こされる。
図4及び
図5に示す例では、揺動レバー342は、トリガー要素33の対応する保持面に当接するストッパ343を有する。トリガー要素33は、揺動レバー342と同様に、ハウジング31の一部(回転ジョイント331)に回動可能に取り付けられており、
図4に示すように、トリガー要素33の一端が保持プレート35の表面から突出する通常位置においてバネ332によって押圧されている。この通常位置では、トリガー要素33は、揺動レバー342の第2の位置(クランプ締付)への移動を阻止する阻止爪として作用する。揺動レバー342のストップ343が(阻止爪として機能する)トリガー要素33に当接することにより、揺動レバー342の移動はブロックされる。突出したトリガー要素33が、バネ332のバネ力に抗して保持プレート35の表面に向かって押される場合(保持プレート35上に研削ディスクを位置付けする際に)、トリガー要素33は、揺動レバー342のストップ343がトリガー要素33に対してもはや当接しないように揺動し、第2の位置への揺動の移動がもはや阻止されない。
【0028】
図4及び
図5に示す例では、揺動レバー341が第1の位置(クランプ解放、阻止爪による揺動レバーの移動阻止)にあるとき、揺動レバー341に付勢力F
Bが作用する。トリガー要素33が作動/移動されると、阻止爪(トリガー要素)は揺動レバー341を解放し、プリロード力F
Bにより、揺動レバーは、研削ディスクがクランプされる第2の位置に急激に揺動する。この状況は、
図5に示されている。
【0029】
前述のプリロード力F
Bは、異なるプリロード機構によって提供することができる。
図4及び
図5の例では、このプリロード機構は、揺動レバー341の第2の端部とハウジング31の一部(例えば、取付ブラケット311)との間に配置された空気圧シリンダ37を有している。シリンダ37は、取付ブラケット311(ハウジングの一部と見なすことができる)にジョイント374を介して接続され、シリンダに配置されたピストン371のピストンロッドは、揺動レバー341の第2の端部にジョイント373を介して接続されている。
図4及び
図5においてシリンダ室V1に圧縮空気が加えられると、(関連するピストン371を有する)空気圧シリンダ37は、プレテンション力F
Bを発生し、トリガー要素33が作動したときに揺動レバー341を第2の位置に押し込んで研削ディスク11をクランプする。
【0030】
前述のように、研削ディスク11がクランプされた後、研削機械11は再び取り外し装置から遠ざかり、それによって(クランプされた)研削ディスク11が研削機械の支持プレート12から取り外される。その後、揺動レバー341(ひいてはクランププレート34)を第2の位置(クランプ締付、
図5)から第1の位置(クランプ解放、
図4)へ戻さなければならない。この動きは、様々な戻り機構によって実現することができる。
図4および
図5に示す例では、戻り機構は空気圧シリンダ37によって提供される。この場合、プリロード機構と戻り機構は1つのユニットである。シリンダ37は、複動式シリンダであってもよい。つまり、
図4および
図5においてシリンダ室V2に圧縮空気が供給されると、空気圧シリンダ37はプリロード力F
Bと全く逆方向に作用する戻り力F
Rを発生させる。戻り力F
Rにより揺動レバー341が第1の位置に戻る揺動運動を行い、研削ディスクのクランプが解除される。このとき、バネ332がトリガー要素33を通常位置に押し戻し、次の取り外し工程時に再びプリロード力F
Bが作用すると、揺動レバー341の移動が再び阻止される(
図4に示す)。
【0031】
圧縮空気ノズル32により、空気を研削ディスク11にバッフル板312の方向で高速で吹き付けられることができ、研削ディスク11を最終的に下方の例えば容器内に落下させることができる。圧縮空気ノズル32とバッフル板はそれぞれオプションであり、実際には装置30の堅牢性を向上させることができる。研削機械10が取り外し装置30から離れたことをロボット制御部が「知っている」ので、ノズル32からの圧縮空気の吹き出しだけでなく、戻り機構(例えばシリンダ室V1からシリンダ室V2への圧縮空気の切り替え)もロボット制御部(
図1、制御部4参照)によって起動することが可能である。あるいは、戻り機構は、トリガー要素33を通常位置で元の方向に傾けることによっても作動させることができる。この目的のために、電気スイッチがトリガー要素33に結合され得、電気スイッチの作動は、シリンダ室V1からシリンダ室V2への圧縮空気の切り替え、およびノズル32からの圧縮空気の吹き出しを起動し得る。バルブ制御を実現するための様々な可能性が専門家の知識の範囲内にあるため、関連するバルブと対応するバルブ制御は図に示されていない。
【0032】
研削ディスクによっては、支持プレート12(
図2参照)に接着剤層によって接着するものもある。このような場合、研削ディスクがクランププレート34に付着することがある。しかしながら、研削ディスクを装置30から(例えばノズル32から流れ出る圧縮空気によって)確実に取り外すことができるようにするために、ハウジング31に(直接的または間接的に)1つまたは複数のピン38を取り付けてもよく、これらのピンは、クランプ板34が第1の位置に戻されたときにクランプ板34に付着した研削ディスク11が押し離されるように配置されている。ピンは、
図4と
図5に示されている。
図5に関連する
図6の上面図では、クランププレート34が第1の位置まで(保持プレート35から離れるように)移動したときにピン38が突く小さな凹部38’を有している。この移動中に研削ディスクがクランププレート34に付着すると、研削ディスクが移動終了時にピン38により押し離されてクランププレート34から解放され、圧縮空気で研削ディスクを搬送できる程度まで離れる。
【0033】
研削機械10から取り出された研削ディスクが実際に取り外し装置30から搬出されたかどうかを確認できるようにするために、取り外し装置30は、センサ36を有することができる。センサ36は、
図4乃至
図6で見ることができ、例えば、反射光バリアとして構成することができる。また、
図6には、光バリア36に属するリフレクタ361が示されている。センサ36(例えば発光ダイオードとフォトダイオードからなるモジュール)とリフレクタ361は、センサ36が発する光ビームが研削ディスクで遮られるように相対的に配置される。その結果、研削ディスクが圧縮空気で運ばれたかどうかを検出することができる。運ばれていない場合は、1つまたは複数のパルスの圧縮空気を、ノズル32により供給することができる。それでも研削ディスクが取り出し口に付着している場合は、警告信号を発し得る。なお、センサ36は、必ずしも光バリアとして構成する必要はない。研削ディスクは通常、特定の色をしているので、光学式カラーセンサを代わりに使って研削ディスクの有無を検出することもできる。あるいは、1つ又は複数のセンサを使用して、研削ディスクが装置30の底部からバッフル板312の下方へ落下するかどうかを監視することもできる。
【0034】
保持プレート35とクランプ要素34(クランププレート)との間で研削ディスク11をクランプする機能、およびトリガー要素33によるクランプ要素の移動の作動は、
図2乃至
図6の例の場合とは異なる方法で実施することも可能である。以下では、取り外し装置30のいくつかの重要な一般的態様を要約し、また、特定の機能が
図2乃至
図6の例とは異なって実施されるさらなる実施形態について説明する。
【0035】
より一般的には、取り外し装置は、研削ディスク11を保持するための表面を有する保持プレート(例えば、
図2及び
図6参照、保持プレート35)を備えている。
図2に示すように、ロボットを用いて、保持プレート35の表面に研削ディスク11を載せることができる。例えば
図6で分かるように、研削ディスク11は保持プレート35の表面上に完全に載る必要はない。研削ディスクの一部が保持プレート35の上に乗っていれば十分である。取り外し装置は、さらに、可動のクランプ要素(例えば
図4及び
図5参照、クランプ要素34)を備え、このクランプ要素は保持プレートに対して第1の位置に上昇させられる。すなわち、第1の位置では、クランプ要素は保持プレートに接触していない。さらに、取り外し装置は、クランプ要素に結合され、クランプ要素が保持プレートに押し付けられ、研削ディスクが保持プレートとクランプ要素との間にクランプされる第2の位置にクランプ要素を移動させるように構成されたアクチュエータを有している(
図5を参照)。トリガー要素は、トリガー要素が作動したときにアクチュエータがクランプ要素を第1の位置から第2の位置に移動させるように、アクチュエータに(アクチュエータが機械的または電気的であるかに従って直接または間接的に)結合されている。トリガー要素は保持プレートの表面に突き出しており、(研削機械に取り付けられた)研削ディスクが保持プレートの表面上に位置し、その表面に向かって移動すると、トリガー要素が作動するようになっている。
【0036】
最も単純なケースでは、アクチュエータはプリロードされたバネであり得る。空気圧アクチュエータ(空気圧シリンダー・ピストンユニット)は、圧縮空気を充填すると、プリロードされたバネのように作用し得る。いくつかの実施形態では、クランプ要素が作動していない限り、クランプ要素は、アクチュエータ(
図4参照、圧縮空気でプリロードされたシリンダ)の動きをブロックし、トリガー要素が作動したときにクランプ要素を第1の位置(クランプ解放)から第2の位置(クランプ締付)へ急激に移動させる(
図5を参照)。この場合、トリガー要素は純粋に機械的な機械要素であり、本質的にレバーの機能を持つ。クランプ要素を第1の位置に戻すための戻り機構を設けることができる。アクチュエータとして複動式空気圧シリンダを使用した場合、戻り力を発生させ、それに応じてクランプ要素を最初の位置まで戻すことも可能である。単動式空気圧シリンダの場合、バネが戻り力を発生させ、単動式空気圧シリンダが無圧に切り替わったときにバネがクランプ要素を第1の位置まで戻すようにすることもできる。この例では、アクチュエータが単純なプリロードされたバネである場合、戻り力は、例えば、バネに再負荷をかけることができるソレノイドによって生成することができる。2つの(単動)空気圧シリンダからなるユニットも可能で、その場合、一方のシリンダは(プリロード)アクチュエータとして機能し、他方は第1の位置への戻り動作を担う。
【0037】
他の実施形態では、アクチュエータの動きがトリガー要素によって機械的に阻止されている間、アクチュエータはプリロード力を発生させる必要がない。代わりに、アクチュエータは、電気スイッチ(例えば押しボタン)でもあり得るトリガー要素が作動したときに、クランプ要素を第1の位置から第2の位置へ移動させるように積極的に制御される。この電気スイッチは、保持プレートから突き出るように配置され、研削機械に取り付けられた研削ディスクが保持プレートの表面上に置かれたときに「自動的に」作動される。この場合、アクチュエータは、クランプ要素を第1の位置から第2の位置に移動させるように構成された任意のアクチュエータ(電気モータ、リニアモータ、空気圧アクチュエータ、ソレノイドなど)であり得る。押しボタンなどのスイッチの代わりに、研削ディスクが保持プレートに置かれたことを検知できる別のセンサ素子を使用することもできる。
【0038】
ここで説明する実施形態では、クランプ要素が揺動レバーの一端に取り付けられている(
図5参照)。クランプ要素と揺動レバーは一体型であってもよい。この場合、クランプ要素と揺動レバーは1つの部品で作られ得る。クランプ要素は、上述したクランププレートと称した小板として形成することができる。しかし、クランプ要素は必ずしも小板である必要はなく、例えば揺動レバーから突出する複数の短いピンによって形成し、保持プレートに対して研削ディスクをクランプすることも可能である。
【0039】
以下、
図7のフローチャートを用いて、マニピュレータに搭載された研削機械から研削ディスクを取り外す方法の一例をまとめる。
図7の実施形態によれば、この方法は、研削機械に取り付けられた研削ディスクを、マニピュレータによって取り外し装置の保持プレート上に載せるステップを有する(
図7、ステップS1参照)。この状況は、
図4にも示されている。研削ディスクを保持プレート上に置くと、取り外し装置のトリガー要素が作動する(
図4参照、トリガー要素33は阻止爪のように構成されている)。この方法は、さらに、保持プレートと、トリガー要素の作動に反応して保持プレートに向かって押される可動のクランプ要素との間で研削ディスクをクランプするステップを含む(
図7、ステップS2)。この状況は、
図5にも示されている。その後,マニピュレータにより研削機械が持ち上げられ、クランプされた研削ディスクを研削機械の支持プレートから引き抜かれる(
図7、ステップS3参照)。
【0040】
その後、クランプされた研削ディスクを解放するためにクランプ要素が再び持ち上げられる。前述したように、研削ディスクがクランプ要素に付着してしまうことがあり、これは、研削ディスクの取り外しができなくなるため好ましくない。このような場合,研削ディスクは1つまたは複数のピン(
図5、ピン38参照)を用いて取り外すことができる。ピン38は、クランプ要素が持ち上げられると、クランプ要素に付着している研削ディスクの動きを阻害し、研削ディスクをクランプ要素から離脱させる。ピンは、クランプ要素が持ち上げられるとピンがクランプ要素の端にある1つ又は複数の凹部(
図6参照、凹部38´)に入り込むように取り外し装置のハウジングに取り付けられ得る。この方法の様々な他の態様は、
図2乃至
図6に関連して既に上述されているので、上記説明を参照することで繰り返しを避ける。
【符号の説明】
【0041】
10…研削機械
11…研削ディスク
12…支持プレート
30…取り外し装置
32…圧縮空気ノズル
33…トリガー要素
34…クランプ要素
35…保持プレート
37…アクチュエータ
38…ピン
38´…凹部
342…揺動レバー
【国際調査報告】