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特表2022-541774放射性廃棄物の放射性核種含有量監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(54)【発明の名称】放射性廃棄物の放射性核種含有量監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20220916BHJP
   G01T 1/204 20060101ALI20220916BHJP
   G01T 1/36 20060101ALI20220916BHJP
   G21C 17/06 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
G01T1/167 D
G01T1/167 C
G01T1/204 A
G01T1/36
G21C17/06 080
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502497
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 RU2020000329
(87)【国際公開番号】W WO2021010864
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】2019122722
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516219347
【氏名又は名称】ステート・アトミック・エナジー・コーポレーション・ロスアトム・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ロシアン・フェデレーション
【氏名又は名称原語表記】STATE ATOMIC ENERGY CORPORATION ‘ROSATOM’ ON BEHALF OF THE RUSSIAN FEDERATION
【住所又は居所原語表記】B. Ordynka st., 24 Moscow, 119017 Russia
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】コロトコフ,アレクセイ セルゲイヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ゼレブソフ,アレクサンドル アナトーリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルマノフ,アレクサンドル ウラジーミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルラコフ,アンドレイ ペトローヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】エルシン,ウラジミール フェドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】チュラコブ,アントン コンスタンチノヴィチ
【テーマコード(参考)】
2G075
2G188
【Fターム(参考)】
2G075AA18
2G075CA38
2G075DA08
2G075EA01
2G075FA05
2G075FA06
2G075FB07
2G188AA19
2G188AA23
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188BB15
2G188CC11
2G188EE01
2G188EE07
2G188EE25
2G188EE29
2G188FF30
(57)【要約】
【課題】 本発明は、原子力工学に関するものである。
【解決手段】 放射性廃棄物(RAW)の放射性核種含有量を監視する方法は、放射性廃棄物の流れが識別され、その放射性核種ベクトルが定められる準備ステップを含む。放射性廃棄物の流れの中の放射性核種のベクトルを定めるために、サンプルが収集される。基準放射性核種の活性に関連して、それらの固有の活性および前記サンプルの活性の標準不確かさが定められる。基準放射性核種として鉛冷却材の活性化生成物207Biを使用し、その比放射能を0.662keV線に沿って8%以上の解像度を持つガンマ線スペクトロメトリックス複合体を用いて測定し、210Pb、202Pb、205Pbを核種ベクトルのターゲット難検出性放射性核種(HD-RN)のリストに含める。液体シンチレーションスペクトロメーターの測定値の処理には、検査試料中のガンマ線を放出する放射性核種の活性に関するデータが使用されます。処理は、一般化された最小二乗法を用いて行われ、基準放射性核種の比放射能測定値の不確かさ値とHD-RNの不確かさ値の両方を測定値の重みとして考慮する。本発明により、RAWのHD-RN含有量を測定する際の選択性、精度、感度を向上させることが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れの中のRAWを日常的に特性評価する後続段階では、流れの中の核種ベクトルを定めるためのテストサンプルを作成するためにサンプルが採取され、テストサンプル中の放射性核種の比放射能はガンマ線を伴って崩壊し、ガンマ・スペクトロメトリ分析を用いて定められる。基準放射性核種と対象となる難検出性放射性核種(HD-RN)を選択し、それらの比放射能と基準放射性核種の放射能に対する比放射能の標準不確かさを決定し、RAWの特性評価の段階では、RAW中の基準放射性核種のみの比放射能をガンマスペクトロメトリによる非破壊測定で測定し、準備段階で得られた特定された核種ベクトルの特性に基づいて、RAWの流れの中のターゲットHD-RNの放射能を計算するが、その際、鉛冷却材の放射化生成物207Biを参照放射性核種として使用し、その比放射能を0.662keV線に沿って8%以上の解像度でガンマ線スペクトロメトリ複合体を用いて測定し、 662keV線に沿って8%以上の解像度でガンマ線スペクトル複合体を用いてその比放射能を測定し、アルファ線とベータ線を伴う崩壊をする210Pb、202Pb、205Pbを核種ベクトルのターゲットリスト(HD-RN)に含め、液体シンチレーション分光計を用いてその比放射能を測定し、テストサンプル中のガンマ線放出核種の比放射能に関するデータを液体シンチレーション分光計の測定値の処理に使用する一方、処理は,一般化された最小二乗法を用いて行われ,測定値の重みとして基準放射性核種の比放射能の測定の不確かさ値とHD-RNを同時に考慮することを特徴とする液体鉛冷却器を備えた高速炉の使用済み核燃料(NSF)を処理する際に生成されるRAWの放射性核種含有量を監視する方法であって、RAWの流れを特定し、その核種ベクトルを定める準備段階を含む方法。
【請求項2】
ガンマ分光計を用いて基準放射性核種207Biの比放射能を測定する際に、569.7keVおよび1063.7keVのガンマ放射線エネルギーに相当するする2つの完全吸収ピークにおけるパルスカウントレートの測定を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基準放射性核種として60Соを使用して、構造用鋼55Fe、59Ni、63Niの放射化生成物の含有量を追加で監視することを特徴としており、その結果、基準放射性核種の比放射能の測定の不確かさ値と、測定値の重みとしてのHD-RNを同時に考慮した一般化された最小二乗法を用いて処理されること特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
核燃料90Sr; 99Тс; 93Мо, 129I, 135Csの分裂生成物の含有量を、娘137mВаまたは137Cs (137mВа)の137Csを基準放射性核種として用いて監視することを特徴としており、その結果は、基準放射性核種の比放射能の測定の不確かさの値と、HD-RNを測定値の重みとして同時に考慮した一般化された最小二乗法を用いて処理されること特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力工学に関するものであり、使用済み核燃料(SNF)の処理中に発生する放射性廃棄物(RAW)の放射性核種含有量を監視する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の具体的な使用範囲は、液体鉛冷却材を備えた高速炉と閉核燃料サイクル生産を備えた発電ユニットからなる新世代エネルギー複合体である。
【0003】
RAWの放射線危険性、ひいてはRAWの取り扱いや処分の方法は、その放射性核種の組成や個々の放射性核種の比活性によって定められ、放射性核種の比活性や放射線因子によるRAWのカテゴリーは、その認証時に確立されなければならない。これらの放射性核種の多くは、いわゆる難検出性放射性核種(HD-RN)に関連しており、その放射能を直接測定するには、サンプルの採取、準備、測定、分析などの技術的に複雑な手順が必要となる。
【0004】
RAWのHD-RN含有量の監視課題に対する有望な解決策は、核種¬ベクター法またはスケーリングファクタ法と呼ばれるアプローチである[IAEA原子力シリーズNW-T-1.18. IAEA原子力シリーズNW-T-1.18. 原子力発電所における廃棄物特性評価用スケーリング要素の識別と使用。IAEA、 ウィーン, オーストリア、 2009]。同時に、核種ベクトルとは、ある物体の全放射能に対する各放射性核種の放射能の相対的な割合の値を意味する。この値は、特別に代表的な分光・放射性測定の結果に基づいて設定され、共通の材料組成と発生源で結ばれた同様の多数の物体に合理的に帰属される。この方法は、対象物における放射性核種の放射能の相関関係を確立し、参照放射性核種の放射能のみの測定を伴う対象物の放射線監視中に、確立された相関関係を適用することに基づいている。この方法は、原子力発電所の放射性廃棄物を発生源(流れ)ごとに種類分けし、各流れについて相関関係を確立することを意味する。放射性核種の比放射能の相関関係は、流量制限の範囲内で確立され、基準放射性核種の比放射能に対する正規化された検出困難な放射性核種の部分比で数値化されます。現在の監視では、このようなアプローチにより、かなりのエネルギーと崩壊を伴うガンマ線を放出する検出しやすい基準放射性核種の放射能の測定に限定することがでる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RAW放射性核種の監視方法は、核種ベクトル法に基づいて様々な方法が提案されている。特に、ガンマ・スペクトロメトリーの結果に基づいて放射性核種を監視する方法として、同位体244Cmの相関関係を用いる方法が知られている[日本特許第5546174号]。この方法は、鉛冷却型原子炉プラントの運転中に発生する特定の組成のRAWに直接適用することはできず、その特定のHD-RN、特に鉛冷却材の放射化生成物を監視することはできない。
【0006】
鉛冷却炉を備えた発電ユニットに関する核種ベクトル手法の実現可能性も確認されているがこの特殊なタイプのプラントに合わせて改良・適応されることが条件である[ガンマ線核種の存在するマトリックスによる放射化学製造におけるアルファ線核種およびベータ線核種の評価方法。 原子力と放射線の安全」第3号(85)-2017.UDC 621.039.75] を。引用論文に提示され、請求項の方法のプロトタイプとして選択された、液体鉛冷却器を備えた高速炉を備えた発電ユニットの放射性廃棄物の放射性核種含有量を監視する方法は、RAWの流れが特定され、その核種ベクトルが定められる準備段階と、流れの中のRAWのルーチン的な特性評価の後続段階とを含み、流れの中の核種ベクトルを定めるためのテストサンプルを作成するためにサンプルが採取され、テストサンプル中の放射性核種の比活性であって、その崩壊はガンマ線を伴うものである。ガンマ分光分析を用いて,基準放射性核種および標的難検出性放射性核種(HD-RN)を選択し,それらの比放射能および基準放射性核種の放射能に対する比放射能の標準不確かさを定めることを特徴とする。一方、日常的なRAWの特性評価の段階では、RAW中の基準放射性核種のみの比放射能をガンマ・スペクトロメトリクスによる非破壊法で測定し、その後、準備段階で得られた同定された核種ベクターの特性に基づいて、RAWの流れの中のターゲットHD-RNの放射能を計算する。
【0007】
既知のRAW監視方法の欠点は、概念的な形でしか記述されておらず、十分に精緻化されていないことです。特に、方法と装置がどれほど正確で高感度であるか、HD-RNの比放射能の決定に許容できる誤差があるかについての正当性は含まれていない。さらに、公知の方法では、210Pb、202Pb、205Pbの放射性核種の含有量を追跡することができないが、このような監視は、本書で検討されている種類の発電所のRAWを取り扱う際に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体鉛冷却器を備えた高速炉を搭載した発電ユニットの放射性廃棄物の放射性核種含有量の監視の技術的および経済的な特性を改善し、測定の信頼性と精度を向上させるという課題を解決するものである。前述の課題は、核種ベクトルを用いた非破壊的なRAW監視方法の使用範囲の拡大と改善、および前述のタイプの発電ユニットへの適応によって解決される。
【0009】
この効果は,RAW中のHD-RN含有量を測定する際の選択性,精度,感度が大幅に改善されたことであり,この非破壊監視手法を,α線およびβ線による崩壊を伴い,従来はこの手法では識別できなかったHD-RNにも適用できるようになったことである。 この効果は、基準放射性核種として207Biを使用し、ガンマスペクトロメータと液体シンチレーションスペクトロメータによる同時測定を行い、これら2つの実験データから独立して得られた測定結果を共同処理する新しい方法を適用することで、監視の信頼性を大幅に向上させ、不確かさや誤差の値を低減させたことによります。 また、本方法は高い選択性を有しているため、検討されているタイプの発電所のRAWを取り扱う際に必要となる、アルファ線およびベータ線を放出する放射性核種210Pb、202Pb、205Pbの含有量を監視することができる。同時に、選択された基準放射性核種(207Vi)の物理的特徴である、2つの独立したガンマ線ピークの存在を利用することで、本発明による測定の感度と精度のさらなる向上が達成される。
【0010】
本発明の効果は、液体鉛冷却器を備えた高速炉の使用済み核燃料(NSF)を処理する際に生成されるRAWの放射性核種含有量を監視する方法であって、RAWの流れを特定し、その核種ベクトルを定める準備段階を含む方法により達成されるものである。流れの中のRAWを日常的に特性評価する後続段階では、流れの中の核種ベクトルを定めるためのテストサンプルを作成するためにサンプルが採取され、テストサンプル中の放射性核種の比放射能はガンマ線を伴って崩壊し、ガンマ・スペクトロメトリ分析を用いて定められる。基準放射性核種と対象となる難検出性放射性核種(HD-RN)を選択し、それらの比放射能と基準放射性核種の放射能に対する比放射能の標準不確かさを決定し、RAWの特性評価の段階では、RAW中の基準放射性核種のみの比放射能をガンマスペクトロメトリによる非破壊測定で測定し、準備段階で得られた特定された核種ベクトルの特性に基づいて、RAWの流れの中のターゲットHD-RNの放射能を計算するが、その際、鉛冷却材の放射化生成物207Biを参照放射性核種として使用し、その比放射能を0.662keV線に沿って8%以上の解像度でガンマ線スペクトロメトリ複合体を用いて測定し、 662keV線に沿って8%以上の解像度でガンマ線スペクトル複合体を用いてその比放射能を測定し、アルファ線とベータ線を伴う崩壊をする210Pb、202Pb、205Pbを核種ベクトルのターゲットリスト(HD-RN)に含め、液体シンチレーション分光計を用いてその比放射能を測定し、テストサンプル中のガンマ線放出核種の比放射能に関するデータを液体シンチレーション分光計の測定値の処理に使用する一方、処理は,一般化された最小二乗法を用いて行われ,測定値の重みとして基準放射性核種の比放射能の測定の不確かさ値とHD-RNを同時に考慮する。
【0011】
本発明の効果は、ガンマ分光計を用いて基準放射性核種207Biの比放射能を測定する際に、569.7keVおよび1063.7keVのガンマ放射線エネルギーに相当する2つの完全吸収ピークにおけるスペクトルの登録およびパルスカウントレートの測定によっても達成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本方法のもう一つの実施例は、基準放射性核種として60Соを使用して、構造用鋼55Fe、59Ni、63Niの放射化生成物の含有量を追加で監視することを特徴としており、その結果、基準放射性核種の比放射能の測定の不確かさ値と、測定値の重みとしてのHD-RNを同時に考慮した一般化された最小二乗法を用いて処理される。
【0013】
この方法のさらに別の実施例は、核燃料90Sr; 99Тс; 93Мо, 129I, 135Csの分裂生成物の含有量を、娘137mВаまたは137Cs (137mВа)の137Csを基準放射性核種として用いて監視することを特徴としており、その結果は、基準放射性核種の比放射能の測定の不確かさの値と、HD-RNを測定値の重みとして同時に考慮した一般化された最小二乗法を用いて処理される。
【0014】
本発明の方法は以下のように実施される。
液体鉛冷却器を備えた高速炉の運転中、RAWの放射性核種含有量の電流監視は、核種ベクトル法を用いたルーチン特性評価段階で実施される。このメインステージの前には、ルーチン特性評価ステージを正当化し準備するために、RAWの流れや核種ベクトルパラメータの特定を含む一連の予備調査を行う準備ステージがある。
【0015】
流れの特定とは、廃棄物をその化学的および物理的特性によってグループ化し、流れごとに基準放射性核種のリストと放射線的に有意なHD-RNを定めることを意味する。本発明では、鉛冷却材の放射化生成物(α線を伴う210Pb、β線を伴う202Pbおよび203Pb)で汚染された、一次系機器の圧縮不燃廃棄物構造材およびその他の固体放射性廃棄物に関連するRAWの流れを監視対象とする。
【0016】
所定のRAWストリームの核種ベクトルは、国際的な規制を含む放射性核種活動監視の分野における現行の規制に従って確立される[IAEA原子力シリーズNW-T-1.18. IAEA原子力シリーズNW-T-1.18. 原子力発電所における廃棄物特性評価用スケーリング要素の識別と使用。IAEA、 ウィーン, オーストリア、 2009]、[ISO 21238-2007 原子力発電所で発生する低・中レベル放射性廃棄物パッケージの放射能を定めるためのスケーリング要素法]などがある。放射性核種の放射能の比は、測定結果を数学的に処理して得られる関数で記述される。
【0017】
放射性核種の比放射能の相関関係は、流れの中で確立され、評価されるHD-RNの部分比放射能と参照放射性核種の比放射能のセットによって数値的に表現される。その結果、日常的な特性評価の段階では、エネルギーと崩壊が大きく、検出が容易なガンマ線を放出する基準放射性核種(60Со、137Cs、207Biなど)の放射能の測定に限定することが可能となる。
【0018】
廃棄物発生時の廃棄物放射性核種の比放射能は、相当数の独立した確率変数の総和として表すことができる。この場合、確率論の中心極限定理によれば、正規分布を持つことになります。実験データが示すように、単一の放射源から生成されたRAWの場合、単一の放射性核種の比放射能の分布は、正規または対数正規の形をとる。信頼度0.95で全不確かさを計算し、約2の拡張係数を得るためには、20から30サンプルの測定値を統計解析に使用する必要があります。
【0019】
このように、本発明によれば、流入核種ベクトルを定めるためのテストサンプルを作成するためにサンプルを採取し、ガンマ分光分析を用いて、崩壊がガンマ線を伴うテストサンプル中の放射性核種の比活性を決定し、基準放射性核種およびターゲットの難検出性放射性核種(HD-RN)を選択する。 この方法では、鉛冷却材の放射化生成物群の基準核種として207Biを割り当て、α線を伴う崩壊の210Pb、β線を伴う崩壊の202Pbおよび203Pbをターゲット核種としている。原子炉では冷却材として液体鉛が使用されており、これが放射化されると放射性核種210Ро、207Ро、205Ро、203Ро、206Bi、207Bi、208Bi、210Bi、210Pb、202Pb、205Pbなどが生成されるため、207Bi同位体を基準放射性核種とすることができる。[ホラサノフG.L.、ブローキンA.I.、先進的原子力発電所のための同位体濃縮を伴う低放射化鉛冷却材の創製の基礎。 原子力工学と工学の課題。原子力定数シリーズ2001, 第1号]に記載されている。半減期32年、ベータ線エネルギー限界765keVの放射性核種207Biの特徴は、ガンマ線スペクトルに569.7keVと1063.7keVの2本の主線が存在することです。 基準放射性核種207Biの比放射能を測定する際には、569.7keVと1063.7keVのガンマ線エネルギーに相当する全吸収ピーク、すなわち、それぞれN1とN2, с-1でパルスカウントレートを測定する。 2つのピークを使用することにより、放射線の確率的な性質に起因するタイプAの相対標準不確かさを低減することで、207Biの放射能(Bq)の測定値の不確かさを低減することができ、次の式で計算される。
【数1】
2ピークの統計情報を使用する場合
【数2】
【0020】
基準放射性核種のガンマ線スペクトルは、0,662keVの線に対して少なくとも8%の解像度でガンマスペクトロメーターを用いて測定される。これは、RAWには、137Co (662 keV)、 134Co (569 keV. 605 keV)、 207Bi (569,7 keV)等のガンマ線エネルギーに類似した放射性核種が多数存在するためである。
【0021】
この方法の特徴は、試料中の放射性核種の比放射能比を測定する段階で、液体シンチレーション分光計を用いてα線およびβ線を放出するHD-RNの放射能を測定し、スペクトル処理の先験情報として、α線またはβ線とガンマ線の両方の崩壊を伴う基準放射性核種の試料をガンマ分光計で測定した放射能値を用いることです。これにより、混合放射線スペクトルの評価と2つの測定方法の相互検証により、精度を大幅に向上させることができる。
【0022】
この方法のもう一つの特徴は、基準放射性核種の放射能測定値の不確かさだけでなく、HD-RNの放射能測定値の不確かさも試料分析時に推定し、その値を試料中の平均放射能比の計算や実験データの相関・回帰分析時に「重み」として使用することである。
【0023】
相関係数R Aが以下の基準値以上であれば、難検出性核種の比放射能と基準核種の比放射能の相関が確認される。
【数3】
ここで、Ai,k - k番目のサンプルに含まれるi番目の検出困難な放射性核種の放射能、Ar,k - k番目のサンプルに含まれる参照放射性核種の放射能、п - サンプル数。
【0024】
基準値は、HD-RNの比放射能の決定に必要な精度に基づいて設定される。同様の手法を用いているほとんどの国では、0.7に設定されている[IAEA原子力シリーズNW-T-1.18. IAEA原子力シリーズNW-T-1.18. 原子力発電所における廃棄物特性評価用スケーリング要素の識別と使用。IAEA、 ウィーン, オーストリア、 2009]。
【0025】
HD-RNの比放射能と基準放射性核種との相関関係を確立するために、一連の実験データの個々の値が他の値から著しく離れているため、幾何平均を使用した。本発明の方法では、HD-RNの比放射能と基準放射性核種の幾何学的加重平均を用いて数値関係を確立する。この方法では、各測定値の不確かさを「重み」として考慮することができる。i番目の放射性核種について、比の幾何学的加重平均は次の式で求められる。
【0026】
【数4】
ここで,Кi,k = Аi,k /Аr,k - k番目の試料におけるi番目の放射性核種と基準放射性核種の放射能の比。
u_(K_(i,k) )=√(u_(A_(i,k))^2+u_(A_(r,k))^2 ) k番目のサンプルにおけるi番目の放射性核種の計算された比率の相対標準不確かさ、 u_(A_(i,k) )、u_(A_(r,k) ) - k番目のサンプルにおけるi番目のHD-RNと基準放射性核種の比放射能の相対的な標準不確かさで、測定値の重み付けとして使用される。
【0027】
監視対象の廃棄物に含まれるi番目のSDRの比放射能と基準放射性核種との間に信頼できる相関関係がない(RAが基準値よりも小さい)場合には、それらの対数の比を以下のように定めることが提案される。
【数5】
ここで、а, b - 定数。
【0028】
HD-RNと基準放射性核種の比放射能の対数で表される実験データの相関-回帰分析には、一般化された最小二乗法が適用される[セイデルR.M. 最小二乗法における回帰パラメータ誤差の推定 - 原子力、 1994、第77番、第6号. モスクワ, 1994, ページ463-466]を適用することで,核種ベクトルを構築する際に,これら2つの放射性核種の放射能測定の不確かさを同時に考慮することができる。 同時に、解(ln(a)とbの値と対応する不確かさ)は、ニュートン-ラプソン法による反復計算を用いて求める。
【0029】
本発明の新しい核種ベクトル構築法を用いることで、液体鉛冷却器を備えた高速炉のSNFを処理する際に生成されるRAWにおけるHD-RN監視の精度と感度が大幅に向上した。
【0030】
この方法では、本発明の核種ベクトル計算スキームを用いて、他のRAWの流れの中の放射性核種含有量を追加で監視することが可能である。特に、構造用鋼55Fe、59Ni、63Niの放射化生成物を評価する必要がある場合には、60Coを参照核種として割り当て、参照核種の比放射能測定の不確かさ値と測定値の重みとしてのHD-RNを同時に考慮した一般化された最小二乗法を用いて結果を処理する。
【0031】
この方法のもう一つの実施例は、核燃料の分裂生成物に含まれる90Sr; 99Тс; 93Мо, 129I, 135Csの含有量を、137Cs と娘の137mВаまたは137Cs (137mВа)を基準核種として用いて監視し、その結果を一般化された最小二乗法を用いて処理することを特徴としている。この際、基準核種の比放射能の測定の不確かさの値と、測定値の重みとしてのHD-RNを同時に考慮する。
【国際調査報告】