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特表2022-541776中空コアファイバの製造方法および中空コアファイバ用プリフォームの製造方法
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  • 特表-中空コアファイバの製造方法および中空コアファイバ用プリフォームの製造方法 図1
  • 特表-中空コアファイバの製造方法および中空コアファイバ用プリフォームの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(54)【発明の名称】中空コアファイバの製造方法および中空コアファイバ用プリフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20220916BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
C03B37/012 A
G02B6/02 466
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502576
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2020070013
(87)【国際公開番号】W WO2021009236
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】19186865.2
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル ローゼンベアガー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヒューナーマン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン トロマー
(72)【発明者】
【氏名】カイ シュースター
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ヴァイマン
【テーマコード(参考)】
2H250
4G021
【Fターム(参考)】
2H250AA52
2H250AC66
2H250AC83
2H250AC94
2H250AC96
4G021BA02
4G021BA03
4G021BA04
4G021EB19
4G021EB24
(57)【要約】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲む内部のクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法が公知である。公知の方法には、被覆管内部ボアと被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管を提供する工程と、複数の反共振要素プリフォームを提供する工程と、反共振要素プリフォームを被覆管壁の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域とクラッド領域とを有する中空コアファイバの一次プリフォームを形成する工程と、一次プリフォームを延伸して中空コアファイバを形成する工程、または一次プリフォームのさらなる加工によって二次プリフォームを形成する工程とが含まれている。これに基づいて、反共振要素の高い精密性および正確な位置決めを、十分に安定した再現可能な仕方で達成するために、工程(c)に従い前記一次プリフォーム(1)をさらに加工する際に、外層シリンダ内側に向かって粘度が上昇する半径方向の粘度プロファイルを有する外層シリンダが使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ前記中空コアを取り囲む内部のクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法であって、
(a) 中空コアファイバのための一次プリフォーム(1)を提供する工程であって、前記中空コアファイバは、被覆管内部ボアおよび被覆管長手方向軸を有する少なくとも1つの被覆管(3)を含み、前記被覆管長手方向軸に沿って、内側および外側によって画定された被覆管壁が延在する、工程と、
(b) 反共振要素のための複数の前段階またはプリフォーム(4)を前記被覆管壁の目標位置に形成する工程と、
(c) 前記一次プリフォーム(1)を、前記中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工する工程であって、前記さらに加工する工程は、外層シリンダ(2)の形態の追加のクラッド材料を一回または反復してコラップスすることを含み、前記外層シリンダ(2)は、前記被覆管(3)に対向する外層シリンダ内側、外層シリンダ外側、および外層シリンダ内側と外層シリンダ外側との間に位置する外層シリンダ壁を有する、工程と、
を備える製造方法において、
工程(c)に従い前記一次プリフォーム(1)をさらに加工するために、前記外層シリンダ内側に向かって粘度が上昇する半径方向の粘度プロファイルを有する前記外層シリンダ(2)が使用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記外層シリンダ内側の領域における粘度は、値η(Z)を有し、被覆管外側の領域における粘度は、粘度η(M)を有し、1250℃の測定温度では、粘度値について(前記粘度を単位dPa・sで対数値として表した場合):η(M)=η(Z)±0.5dPa・s、好ましくは(M)=(Z)±0.3dPa・sが成り立つことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記外層シリンダ壁における前記粘度プロファイルは、粘度最小値η(Zmin)から前記外層シリンダ内側に向かって上昇することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
1250℃の測定温度における前記粘度最小値η(Zmin)については(粘度を対数値として表した場合):η(M)-η(Zmin)>0.8dPa・s、好ましくは>1dPa・sが成り立つことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記被覆管(3)は、前記被覆管(3)の被覆管外側と前記被覆管(3)の被覆管内側との間において、粘度が内側に向かって漸次的に上昇する、半径方向の粘度プロファイルを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記被覆管(3)は、粘度最大値η(Zmax)を有する粘度プロファイルを有し、工程(b)において、前記反共振要素プリフォーム(4)または前記反共振要素のための前段階の少なくとも一部が管状の反共振要素プリフォーム(4)として存在し、前記反共振要素プリフォーム(4)は、好ましくは、ARE外管(4a)およびその内部に挿入されたARE内管を含む複数の構造要素が相互に入れ子になって構成されている管状の反共振要素プリフォーム(4)として存在し、前記反共振要素プリフォーム(4)がシリカガラスからなり、前記シリカガラスは、1250℃の測定温度において、前記被覆管(3)の前記シリカガラスの最大粘度η(Mmax)に対して、(粘度を対数値として表した場合)少なくとも0.4dPa・sだけ高い粘度、好ましくは少なくとも0.5dPa・sだけ高い粘度を有することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記外層シリンダ(2)は、シリカガラスから作製されており、前記外層シリンダ(2)の粘度プロファイルは、シリカガラスの粘度を低下させる少なくとも一種のドーパントの付加によって生じ、前記ドーパントは、好適にはフッ素、塩素および/または水酸基を含有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記被覆管(3)は、シリカガラスから作製されており、前記被覆管(3)の粘度プロファイルは、シリカガラスの粘度を低下させる少なくとも一種のドーパントの付加によって生じ、前記ドーパントは、好ましくはフッ素、塩素および/または水酸基を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記外層シリンダ(2)および前記被覆管(3)の前記シリカガラスは、ドーパントとして、500~8000重量ppmの濃度のフッ素を含むことを特徴とする、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記被覆管(3)は、垂直方向の線引き法において、成形型を用いずに2段階の延伸プロセスでもって製造され、第1段階では、ガラスからなる出発中空シリンダが、当該出発中空シリンダの最終寸法を調整するために機械的に加工され、前記出発中空シリンダは、長手方向軸を垂直方向に配向させる第1の延伸プロセスにおいては、第1の加熱ゾーン長さを有する第1の加熱ゾーンに連続的に供給され、前記加熱ゾーン内において領域毎に軟化され、前記軟化された領域から、中間シリンダが引き出され、前記中間シリンダは、長手方向軸を垂直方向に配向させる第2の延伸プロセスにおいては、第2のより短い加熱ゾーン長さを有する第2の加熱ゾーンに連続的に供給され、前記第2の加熱ゾーン内において、領域毎に軟化され、前記軟化された領域から、連続管が引き出され、前記連続管を切断することによって、前記被覆管(3)が得られることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
30~90mmの範囲にある外径を有する二次プリフォームが形成される、および/または20mm~70mmの範囲にある外径を有する一次プリフォーム(1)が形成されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)により反共振要素のためのプリフォームを形成することは、前記反共振要素プリフォーム(4)を、前記被覆管壁の内側の目標位置に配置することを含み、前記目標位置に前記反共振要素プリフォーム(4)を位置決めするための保持要素を有する位置決めテンプレートが配置のために使用されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲む内部のクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバのためのプリフォームの製造方法であって、
(a) 前記中空コアファイバのための一次プリフォーム(1)を提供する工程であって、前記中空コアファイバは、被覆管内部ボアおよび被覆管長手方向軸を有する少なくとも1つの被覆管(3)を含み、前記被覆管長手方向軸に沿って、内側および外側によって画定された被覆管壁が延在する、工程と、
(b) 反共振要素のための複数の前段階またはプリフォーム(4)を前記被覆管壁の目標位置に形成する工程と、
(c) 前記一次プリフォーム(1)を前記中空コアファイバのための二次プリフォームにさらに加工する工程であって、前記さらに加工する工程は、外層シリンダ(2)の形態の追加のクラッド材料を一回または反復してコラップスすることを含み、前記外層シリンダ(2)は、前記被覆管(3)に対向する外層シリンダ内側、外層シリンダ外側、および前記外層シリンダ内側と前記外層シリンダ外側との間に位置する外層シリンダ壁を有する、工程と、
を備える製造方法において、
工程(c)に従い前記一次プリフォーム(1)をさらに加工するために、前記外層シリンダ内側に向かって粘度が上昇する半径方向の粘度プロファイルを有する前記外層シリンダ(2)が使用されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法に関し、この製造方法は、
(a) 中空コアファイバのための一次プリフォームを提供する工程であって、中空コアファイバは、被覆管内部ボアおよび被覆管長手方向軸を有する少なくとも1つの被覆管を含み、長手方向軸に沿って、内側および外側によって画定された被覆管壁が延在する、工程と、
(b) 反共振要素のための複数の前段階またはプリフォームを被覆管壁の目標位置に形成する工程と、
(c) 一次プリフォームを、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工する工程と、を有しさらに加工する工程は、外層シリンダの形態の追加のクラッド材料を一回または反復してコラップスすることを含み、外層シリンダは、被覆管に対向する外層シリンダ内側、外層シリンダ外側、および外層シリンダ内側と外層シリンダ外側との間に位置する外層シリンダ壁を有する。
【0002】
さらに本発明は、ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含む、中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバのプリフォームの製造方法に関し、この製造方法は、
(a) 中空コアファイバのための一次プリフォームを提供する工程であって、中空コアファイバは、被覆管内部ボアおよび被覆管長手方向軸を有する少なくとも1つの被覆管を含み、長手方向軸に沿って、内側および外側によって画定された被覆管壁が延在する、工程と、
(b) 反共振要素のための複数の前段階またはプリフォームを被覆管壁の目標位置に形成する工程と、
(c) 一次プリフォームを、中空コアファイバのための二次プリフォームにさらに加工する工程と、を有し、さらに加工する工程は、外層シリンダの形態の追加のクラッド材料を一回または反復してコラップスすることを含み、外層シリンダは、被覆管に対向する外層シリンダ内側、外層シリンダ外側、および外層シリンダ内側と外層シリンダ外側との間に位置する外層シリンダ壁を有する。
【0003】
中実材料から作製される従来のシングルモード光ファイバは、低屈折率のガラスからなるクラッド領域により取り囲まれたガラス製のコア領域を有している。このとき、光の伝搬は、コア領域とクラッド領域間の全反射に基づいている。しかし、導波光と中実材料の相互作用は、データ伝送時の遅延時間の増大や、エネルギー放射線に対する損傷のしきい値の相対的低下に結びついている。
【0004】
これらの欠点は、コアがガスまたは液体を充填した真空の空洞部からなる「中空コアファイバ」によって回避されるか、もしくは軽減される。中空コアファイバでは、光とガラスの相互作用が中実コアファイバの場合よりも減少する。コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも小さいため、全反射による光の伝搬は不可能であり、通常光はコアからクラッドに漏れ出ると考えられる。光の伝搬の物理的メカニズムに応じて、中空コアファイバは、「フォトニックバンドギャップファイバ」と「反共振反射ファイバ」に区別される。
【0005】
「フォトニックバンドギャップファイバ」では、中空コア領域が、小さな中空チャネルを周期的に配置したクラッドによって取り囲まれている。クラッド内の中空チャネルの周期的構造には、半導体技術に依る「フォトニックバンドギャップ」と呼ばれる効果があり、これにより、クラッド構造に散乱する特定の波長領域の光はブラッグ反射に基づいて中心の空洞部で構造的に干渉するため、クラッド内で横方向に広がることはできない。
【0006】
「反共振中空コアファイバ」(「antiresonant hollow-core fibers」;ARHCF)と呼ばれる中空コアファイバの実施形態では、中空のコア領域が内部のクラッド領域によって取り囲まれており、いわゆる「反共振性要素」(または「反共振要素」;略号:「AREs」)の中に配置されている。中空コア周辺に均等に分散された反共振要素の壁は、反共振に作動されるファブリ・ペロー空洞として機能し、この空洞は入射光を反射し、ファイバコアに通すことができる。
【0007】
このファイバ技術により、光減衰を軽減することができ、透過スペクトルが非常に広くなり(紫外線または赤外線の波長帯域でも)、データ伝送時の遅延時間も少なくなる。
【0008】
中空コアファイバの潜在的用途は、データ伝送、材料加工などに用いる高性能ビーム制御、モーダルフィルタリング、特に超紫外線波長帯域から赤外線波長帯域までのスーパーコンティニウムを発生させる非線形光学の分野にある。
【0009】
背景技術
反共振中空コアファイバの欠点は、高次モードが自動的に抑制されないため、長い伝達距離にわたって純粋なシングルモードにならないことが多く、出力光線の品質が悪化することにある。
【0010】
Francesco Poletti「Nested antiresonant nodeless hollow core fiber」;Optics Express,Vol.22,No.20(2014);DOI:10.1364/OE 22.023807の文献では、反共振要素が単純な単一構造要素として形成されているのではなく、互いに入れ子になった(英語:nested)複数の構造要素から構成されたファイバ設計が提案されている。入れ子になった反共振要素は、高次コアモードがクラッドモードに位相整合されて抑制されるが、基本コアモードは抑制されないように設計されている。これにより、基本コアモードの伝搬が常に保証され、限定された波長帯域にわたって中空コアファイバを効率的にシングルモードにすることができる。
【0011】
効率的なモード抑制は、伝搬光の中心波長の他に、中空コアの半径および反共振要素内で入れ子になっているリング構造の直径差といったファイバ設計の構造パラメータにも左右される。
【0012】
EP3136143A1から、コアが基本モード以外に別のモードも伝搬することができる反共振中空コアファイバ(「バンドギャップのない中空コアファイバ」と呼ばれる)が公知である。この目的のため、コアは、反共振モードと高次モードの位相整合を提供する「非共振要素」を有する内部クラッドによって取り囲まれている。中空コアファイバの製造は、いわゆる「スタック&ドロー法」によって行われ、そこでは出発要素を軸平行の集合体になるように並べ、固定することによってプリフォームを形成し、続いてそのプリフォームを延伸する。ここでは、内側断面が六角形の被覆管が使用され、被覆管の内縁部には、いわゆる「AREプリフォーム」(反共振要素プリフォーム)が6個固定される。このプリフォームを2段階に分けて線引きすることによって中空コアファイバを形成する。
【0013】
国際特許出願2018/169487A1から、反共振中空コアファイバのプリフォーム製造方法が公知であり、ここでは第1のクラッド領域が多数のロッドから構成され、第2のクラッド領域は、外側の被覆管によって取り囲まれている多数の管から構成されている。ロッド、管、被覆管は「スタック&ドロー」法によって接合され、プリフォームが形成される。プリフォームを延伸する前に、プリフォーム端部に封止材を塗布して封止が行われる。封止材としては、例えばUV接着剤が使用される。
【0014】
発明が解決しようとする課題
反共振中空コアファイバや、特に入れ子になっている構造要素を持つそのようなファイバは複雑な内部形状を有するため、これを正確かつ再現可能に製造することは困難である。さらに、共振条件または反共振条件を満たすには伝搬させる光の動作波長の大きさに僅かな寸法許容差があっても許されないため、このことは一層困難なものとなる。目標形状からの逸脱は、ファイバプリフォームの構成時にその原因が作られるおそれがあるが、ファイバ線引きプロセス時にも縮尺に沿わない不適切な変形によって生じる可能性がある。
【0015】
公知の「スタック&ドロー」法では、多数の要素が正確な位置に接合されなければならない。例えば、冒頭に述べた文献から公知の「NANF」設計の中空コアファイバを製造するには、それぞれが反共振要素外管(略号:ARE外管)からなる6つの反共振要素プリフォームと、ARE外管の内側クラッド面の片側に溶接されている反共振要素内管(略号:ARE内管)とを被覆管の内側に取り付けなければならない。
【0016】
小さい減衰値と広範な伝播範囲を実現するためには、反共振要素の壁の均等な壁厚の他に、被覆管内部における反共振要素の方位角位置も重要である。このことは、「スタック&ドロー」法では簡単に実現できない。本発明の目的は、従来の製造方法の制限を回避して、反共振中空コアファイバを低コストで実現する製造方法を提供することである。
【0017】
特に本発明の目的は、反共振中空コアファイバの製造方法、および反共振中空コアファイバのためのプリフォームの製造方法を提供することであり、本方法によって、構造要素の高い精密性とファイバ内での反共振要素の正確な位置決めを、十分に安定的で再現可能な仕方で達成することが可能となる。
【0018】
さらに、必要な構造精度、特に反共振要素の均等な壁厚および規定の方位角位置への正確な位置決めが容易に達成できない従来の「スタック&ドロー」法の欠点をできる限り回避しなければならない。
【0019】
発明の概要
反共振中空コアファイバの製造に関して、上記の課題は、冒頭で述べたような方法から出発して、本発明によれば、工程(c)により一次プリフォームをさらに加工するために、外層シリンダ内側に向かって粘度が上昇する半径方向の粘度プロファイルを有する外層シリンダが使用されることによって解決される。
【0020】
反共振中空コアファイバ製造の出発点は、ここでは、「一次プリフォーム」とも呼ばれるプリフォームである。このプリフォームは被覆管を含み、被覆管には中空コアファイバ内に反共振要素を形成するための前段階またはプリフォーム(ここでは短く「反共振要素」と呼ぶ)が含まれている。一次プリフォームは延伸によって中空コアファイバを形成することができるが、通常は、この一次プリフォームをさらに加工して、その一次プリフォームから、ここでは「二次プリフォーム」と呼ばれるプリフォームを作製する。必要に応じて、この二次プリフォームを延伸することにより中空コアファイバが作られる。択一的に、一次プリフォームまたは二次プリフォームを、構成部品の同軸集合体を形成しながら、1つの外層シリンダまたは複数の外層シリンダにより取り囲み、この同軸集合体を直接延伸して中空コアファイバを形成する。この場合、一般的な「プリフォーム」という用語は、中空コアファイバが最終的に線引きされる構成部品または構成部品の同軸集合体の名称と理解される。
【0021】
クラッド材料の付加は、例えば、一次プリフォームへの外層シリンダのコラップスによって行われる。一次プリフォームおよび外層シリンダからなる同軸配置体は、外層シリンダのコラップスの際に延伸されるか、または延伸されない。この際、反共振要素プリフォームの形状または配置が変化するか、または変化しない。
【0022】
工程(c)に記載した熱成形プロセス(以下では、「熱プロセス」とも記す)のうちの1つの実行は、得ようとするファイバ幾何形状の変形および構造誤差をもたらす可能性がある。このことは特に、同一材料からなる、厚壁で微細な複数のプリフォーム構成部品が相互に密に位置しているか、または相互に接している場合に該当する。
【0023】
何故ならば、必要とされる処理温度が、通常の場合、平坦で非常に厚い構成部品、典型的にはプリフォームの外側クラッド領域によって決定されるからである。より小さい構成部品(例えば、反共振要素プリフォームおよびその個々の構造要素)は、同じ温度において、より強く変形する。熱処理の際に、プリフォームは加熱ゾーンにおいて、外側から内側に向かって加熱されるので、プリフォームの中心に最小値を有する半径方向温度経過が、プリフォーム体積部にわたって生じる。このことは、微細な構成部品が、余り微細でない構成部品よりもプリフォームの半径方向で加熱ゾーンにより近くに配置されている場合に、前述の変形の問題をより悪化させる可能性があり、このことは、反共振中空コアファイバのプリフォームでは一般的である。
【0024】
単一成分ガラス、特にシリカガラスの粘度は、ドーピングによって変化させることができる。ドーピングの異なる複数の材料を使用することによって、ひいては適合された粘度を使用することによって、熱処理中に構造維持を保証することができる。ドーピングは、隣接するプリフォーム構成部品の粘度の適合を実現する。特にドーピングは、構成部品の熱安定性を、隣接する構成部品の安定性が優先されるように、低減させるために使用することができる。
【0025】
最も、一次プリフォームを覆うために外層シリンダを使用する場合、一次プリフォームと外層シリンダとの接触面において段状の粘度変化が生じる可能性がある。このような急激な変化は、完成した(二次)プリフォーム、また最終的な中空コアファイバにおいて、内部の機械的応力をもたらし、この機械的応力は、光学的な特性および機械的な特性の両方に悪影響を及ぼす。そのような悪影響には、設計特性からの光学パラメータの逸脱(機械的な応力による屈折率の逸脱)ならびに破損の傾向の上昇が含まれる。
【0026】
本発明の課題は、特に、熱処理の間に、特に微細な構造要素の変形を抑制するために、出発シリンダおよび被覆管に対して異なるドープが施された出発材料の使用を実現するが、しかしながらそれによって、ファイバおよびプリフォームの光学的および機械的な特性に悪影響が及ぼされることないようにすることである。これによって、中空コアファイバにおける反共振要素の幾何形状および位置決めのより高い精度が達成されることになる。
【0027】
このために、少なくとも外層シリンダ、好ましくは被覆管も、共通の接触面に向かってドーパント濃度勾配を示す。このことは、外層シリンダにおいては、その外層シリンダが、外層シリンダ内側に向かって粘度が上昇する半径方向粘度プロファイルを有することによって達成される。
【0028】
これによって、接触面において大きな変化が生じることなく、外層シリンダと被覆管との間の粘度差を維持することができる。何故ならば、これによって、接触面において適合された粘度を有する移行ゾーンが生じ、この移行ゾーンが変形を抑制し、また反共振要素の構造維持に寄与するからである。
【0029】
好適な方式では、外層シリンダ内側の領域における粘度が、値η(Z)を有し、被覆管外側の領域における粘度が、値η(M)を有し、1250℃の測定温度では、粘度値について(粘度を対数値、単位dPa・sとして表した場合):η(M)=η(Z)±0.5dPa・s、好ましくはη(M)=η(Z)±0.3dPa・sが成り立つ。
【0030】
ここで、被覆管外側クラッド面における粘度η(M)は、内側クラッド面の領域における外層シリンダの粘度値η(Z)を中心として可能な限り狭い範囲内にある。ここで、さらに好ましくは、η(M)は、η(Z)よりも大きい。
【0031】
また、外層シリンダ壁における粘度プロファイルが、粘度最小値η(Zmin)から外層シリンダ内側に向かって上昇する場合には好適であることが分かった。
【0032】
例えば、外層シリンダのガラスの粘度を低下させ、かつ加熱時に少なくとも部分的に消失することができるドーパントが外層シリンダのガラスに導入されることによって、シリンダ壁において粘度最小値を有する半径方向粘度プロファイルが達成される。ここで好ましくは、フッ素、塩素および/または水酸基が使用される。したがって好ましくは、外層シリンダは、シリカガラスからなり、外層シリンダの粘度プロファイルは、シリカガラスの粘度を低下させる少なくとも一種のドーパントの付加によって生じ、ドーパントは、好ましくはフッ素、塩素および/または水酸基を含む。
【0033】
外層シリンダのシリカガラスが、ドーパントとして、フッ素を500~8000重量ppmの濃度で含む場合には好適であることが分かった。
【0034】
粘度最小値と、接触面の領域における被覆管の粘度との差が大きいと、さらに有利であることが分かった。何故ならば、この差は、通常の場合に(接触面を除いて)所望される、被覆管と外層シリンダとの間の粘度差に対する尺度だからである。したがって、好ましくは、1250℃の測定温度における粘度最小値η(Zmin)については(粘度を対数値として表した場合):η(M)-η(Zmin)>0.8dPa・s、好ましくは>1dPa・sが成り立つ。
【0035】
方法の他の好適な変形形態においては、被覆管が、被覆管外側と被覆管内側との間において、粘度が内側に向かって漸次的に上昇する半径方向粘度プロファイルを有する。
【0036】
被覆管壁内の粘度勾配を調整するために、被覆管がシリカガラスから作製されており、またドーパントとしてフッ素が500~8000重量ppmの濃度で使用される場合には有利であることが分かった。
【0037】
この関係において、被覆管が、粘度最大値η(Zmax)を有する粘度プロファイルを有し、工程(b)において、反共振要素プリフォームまたは反共振要素のための前段階の少なくとも一部が、好ましくは、ARE外管およびその内部に挿入されたARE内管を含む複数の構造要素が相互に入れ子になって構成されている管状の反共振要素プリフォームとして存在し、反共振要素プリフォームがシリカガラスからなり、このシリカガラスが、1250℃の測定温度において、被覆管のシリカガラスの最大粘度η(Mmax)に対して、(粘度を対数値として表した場合)少なくとも0.4dPa・sだけ高い粘度、好ましくは少なくとも0.5dPa・sだけ高い粘度を有する場合には有利であると分かった。
【0038】
外層シリンダおよび被覆管は、最も好適な場合には、シリカガラスからなる。外層シリンダによって提供される追加のクラッド材料のフッ素ドーピングは、被覆管自体のシリカガラスがドーパントを含んでいない場合であっても、被覆管のシリカガラスに対する粘度の十分な低下を実現する。被覆管のシリカガラスが、1250℃の測定温度において、追加のクラッド材料のシリカガラスよりも少なくとも0.5dPa・sだけ高い粘度、好ましくは少なくとも0.6dPa・sだけ高い粘度を有する場合には、好適であることが分かった。ここで、また下記において、粘度差は、単位dPa・sの対数の粘度値で表す。
【0039】
有利な方式では、プリフォームのすべてのプリフォーム構成部品が、異なるシリカガラス品質からなり、それらのシリカガラス品質の粘度は、一次近似で、外側から内側に向かって上昇する。粘度を調整するために、フッ素以外にも、Al、窒素、塩素および水酸基などの別のドーパントが使用されてもよい。しかしながら、最も簡単な場合には、追加のクラッド材料がフッ素含有シリカガラスからなるだけで十分である。
【0040】
さらに好適な方式では、反共振要素のためのプリフォームの少なくとも一部が、好ましくは、ARE外管およびその内部に挿入されたARE内管を含む複数の構造要素が相互に入れ子になって構成されている管状の反共振要素プリフォームとして存在し、反共振要素プリフォームがシリカガラスからなり、このシリカガラスが、1250℃の測定温度において、被覆管のシリカガラスに対して、少なくとも0.4dPa・sだけ高い粘度、好ましくは少なくとも0.5dPa・sだけ高い粘度を有する。
【0041】
ここで、ARE外管のシリカガラスは、例えば窒素またはAlなどの、粘度を上昇させるドーパントを含むことができる。しかしながら、シリカガラスの粘度を低下させるドーパントを含むシリカガラスから被覆管が作製されている場合には特に有利であることが分かった。
【0042】
構造要素が入れ子になっている場合のARE内管の高い熱安定性に関して、1250℃の測定温度においてARE外管のシリカガラスに対して、少なくとも0.4dPa・sだけ高い粘度、好ましくは少なくとも0.5dPa・sだけ高い粘度を有するARE内管の少なくとも一部、好適にはすべてのARE内管がシリカガラスから作製されている場合には有利であることが分かった。
【0043】
被覆管は、好適には、垂直方向の線引き法において、成形型を用いずに2段階の延伸プロセスでもって製造される。第1段階では、ガラスからなる出発中空シリンダが、出発中空シリンダの最終寸法を調整するために機械的に加工される。出発シリンダは、長手方向軸を垂直方向に配向させる第1の延伸プロセスにおいては、第1の加熱ゾーン長さを有する加熱ゾーンに連続的に供給され、その加熱ゾーン内において領域毎に軟化され、軟化された領域から、中間シリンダが引き出される。出発シリンダは、長手方向軸を垂直方向に配向させる第1の延伸プロセスにおいては、第1の加熱ゾーン長さを有する加熱ゾーンに連続的に供給され、その加熱ゾーン内において領域毎に軟化され、軟化された領域から、中間シリンダが引き出される。連続管を切断することによって、被覆管が得られる。
【0044】
特に外側のクラッド領域において比較的低い粘度を有するプリフォーム構成部品を使用することによって、本発明による方法は、比較的大きいプリフォームを熱処理に使用することができる。
【0045】
これに関して、好適には、30~90mmの範囲にある外径を有する二次プリフォームが形成される、および/または20mm~70mm、好ましくは30~70mmの範囲にある外径を有する一次プリフォームが形成される。
【0046】
30~90mmの範囲にあるプリフォームの外径は、現在の技術水準に比べて大きい。プリフォームの外径が大きくなるにつれ、存在する絶対的な形状誤差は、ファイバ線引き時に、より大きくスケールダウンされるので、大きいプリフォームの使用時に、基本的には、中空コアファイバのより精密な製造も実現される。しかしながら、90mmよりも大きい直径では、ファイバ線引きプロセスにおいて、プリフォーム体積部内に、中空コアファイバ内の反共振要素において壁厚の逸脱をもたらす可能性がある温度勾配が生じる。30mmよりも短いプリフォーム外径では、形状誤差のスケールダウンによる特に大きな貢献がもはや得られない。さらに有利には、外径が20~70mmの範囲、好ましくは30~70mmの範囲にある一次プリフォームが形成される。これは、比較的大きい外径である。従来技術では、一次プリフォームの外径は、通常の場合、4~6mmであった。
【0047】
方法の好適な変形形態では、工程(b)により反共振要素のためのプリフォームを形成することは、反共振要素プリフォームを、被覆管壁の内側の目標位置に配置することを含み、目標位置に反共振要素プリフォームを位置決めするための保持要素を有する位置決めテンプレートが配置のために使用される。
【0048】
位置決めテンプレートは、例えば、被覆管内部ボアに突出し、かつ半径方向外側に向けられた複数の保持アームの形態の保持要素が設けられているシャフトを有する。
【0049】
保持要素の構造的に規定された星形配置は、各目標位置における反共振要素プリフォームの正確な位置決めおよびその固定を容易にする。この場合、位置決めテンプレートは、好適には被覆管端面の領域にのみ使用され、好適には両方の被覆管端面の領域に使用される。
【0050】
被覆管の内側クラッド面におけるプリフォームの位置決めの精度は、被覆管の内側が切削加工によって、特に穴あけ加工、フライス加工、研削加工、ホーニング加工および/または研磨加工によって形成されることによって改善される。
【0051】
好適な方法では、管状の構造要素が提供され、そのうちの少なくとも一部は0.2~2mmの範囲の壁厚を有し、好ましくは0.25~1mmの範囲の壁厚を有することによって、被覆管におけるプリフォームの位置決め精度をさらに改善する。このとき、被覆管は外径が90~250mmの範囲のもの、好ましくは外径が120~200mmの範囲のものが提供される。これらの構成部品はそれぞれ少なくとも1mの長さがあり、反共振要素を形成するための比較的体積の大きな構造要素である。これにより、取扱いが容易になる。さらに、被覆管と構造要素が垂直に配置されており、好ましくは上述の封止材または接合材を使用して、例えば構造要素がそれぞれ上部の端面で目標位置に位置決めされ、固定されている場合は、構造要素長手方向軸の平行性と垂直方向への整列が重力によってサポートされる。
【0052】
中空コアファイバのためのプリフォームの製造に関して、上記の課題は、冒頭で述べたような方法から出発して、本発明によれば、工程(c)により一次プリフォームをさらに加工するために、外層シリンダ内側に向かって粘度が上昇する半径方向粘度プロファイルを有する外層シリンダが使用されることによって解決される。
【0053】
プリフォームは反共振中空コアファイバ製造に対する出発点である。プリフォームの延伸によって、反共振中空コアファイバが直接的に線引きされるか、または半製品が形成され、その半製品から続いて反共振中空コアファイバが線引きされる。プリフォームの製造は、追加のクラッド材料を一次プリフォームにコラップスすることを含み、このために、外層シリンダ内側に向かって粘度が上昇する半径方向粘度プロファイルを有する外層シリンダが使用される。
【0054】
これによって、接触面における大きな変化が生じることなく、外層シリンダと被覆管との間の粘度差を維持することができる。プリフォームを製造するための措置は、中空コアファイバの製造に関連して上記に詳しく説明されており、それらの説明がここに引用される。
【0055】
定義
これまでに述べた明細書の個々の工程と用語について、以下に補足的に定義する。これらの定義は本発明の明細書の構成要素である。以下の定義のいずれかと残りの明細書との間で実質的な矛盾がある場合、残りの明細書の中で言及していることが優先される。
【0056】
反共振要素
反共振要素は、中空コアファイバの単純な構造要素または入れ子構造要素であってよい。これは、中空コアの方向から見て負の曲率(凸部)を持つか、曲率を持たない(平面、直線)少なくとも2つの壁を有している。通常、反共振要素は動作光に対して透明な材料、例えばガラス(特にドープしたSiOまたはドープしないSiO)、プラスチック(特にポリマー)、複合材料または結晶材料からなる。
【0057】
反共振要素プリフォーム/反共振要素前段階
反共振要素プリフォームとは、主にファイバ線引きプロセスにおける単純な線引きによって中空コアファイバ内で反共振要素になる構成部品またはプリフォームの構成部品である。反共振要素前段階とは、変形によって初めて反共振要素プリフォームまたは直接的に反共振要素になる構成部品またはプリフォームの構成部品である。反共振要素プリフォームは、単純な構成部品または入れ子になっている構成部品であってよく、これに追加的に位置決め補助を固定することができる。反共振要素プリフォームは、もともと一次プリフォームの中に存在する。
【0058】
入れ子の反共振要素プリフォームは、中空コアファイバの中で入れ子になっている反共振要素を形成する。これは、1本の外管と、外管の内部ボア内に配置されている少なくとも1つのさらなる構造要素とから構成されている。さらなる構造要素は、外管の内側クラッド面に接しているさらなる管であってよい。外管は「反共振要素外管」または略して「ARE外管」と呼ばれ、さらなる管は「反共振要素内管」または略して「ARE内管」または「入れ子になっているARE内管」とも呼ばれる。
【0059】
入れ子になっているARE内管の内部ボアの中には、反共振要素プリフォームが何重にも入れ子になっている場合、少なくとも1つのさらなる構造要素、例えば入れ子になっているARE内管の内部クラッド面に接する第3の管を配置してもよい。
【0060】
反共振要素プリフォームが何重にも入れ子になっている場合は、ARE外管の中に配置されている複数の管を区別するため、必要に応じて「入れ子になっている外側のARE内管」と「入れ子になっている内側のARE内管」とが区別される。
【0061】
シリンダ形の反共振要素プリフォームおよびそれらのシリンダ形構造要素に関連する「断面」という用語は、常に、それぞれのシリンダ長手方向軸に対して垂直の断面を示し、特に指定がない限り、管状構成部品における外部輪郭の断面を示すものである(内部輪郭の断面ではない)。
【0062】
一次プリフォームのさらなる加工により、とりわけ熱成形処理により、元の反共振要素プリフォームが初期形状に対して変化した形状で存在する中間製品を作ることができる。ここでは、変化した形状も同様に反共振要素プリフォームまたは反共振要素前段階と呼ぶ。
【0063】
プリフォーム/一次プリフォーム/二次プリフォーム/コアプリフォーム(ケーン)
プリフォームは、反共振中空コアファイバが線引きされる構成部品である。これには、一次プリフォームまたは一次プリフォームのさらなる加工によって作製される二次プリフォームがある。一次プリフォームは、少なくとも1本の被覆管と、その中に緩くまたは堅固に固定された状態で収納されている、反共振要素のためのプリフォームまたは前段階とからなる集合体であってよい。一次プリフォームを、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工することは、
(i) 延伸、
(ii) コラップス、
(iii) コラップスおよび同時延伸、
(iv) 追加のクラッド材料のコラップス、
(v) 追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi) 追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行されることを含む。
【0064】
文献においてコアプリフォーム(英語:ケーン、Cane)とは、一次プリフォームのコラップスおよび/または延伸によって得られるプリフォームである。通常、コアプリフォームは、中空コアファイバの線引き前または線引き時に追加のクラッド材料により覆われる。
【0065】
延伸/コラップス
延伸では、一次プリフォームが長く伸ばされる。この延伸は、同時コラップスなしで行ってよい。延伸は一定の縮尺に従って行うことができるため、例えば一次プリフォームの構成部品の形状および配置は延伸した最終製品に反映されている。しかし、延伸では、一次プリフォームが寸法どおりに線引きされず、幾何形状が変化する可能性もある。
【0066】
コラップスでは内部ボアを狭くしたり、管状構成部品間の環状の隙間を塞いだり、狭くしたりする。このコラップスは、通常、延伸と平行して行われる。
【0067】
中空コア/内部クラッド領域/外部クラッド領域
少なくとも1つの被覆管と、その中に緩くまたは堅固に固定された状態で収納されている反共振要素のプリフォームまたは前段階とからなる集合体を、ここでは「一次プリフォーム」とも呼ぶ。この一次プリフォームは、中空コアとクラッド領域から構成される。このクラッド領域は、例えば集合体へのコラップスによって形成された「外部クラッド領域」が存在しており、これらのクラッド領域を区別する必要がある場合は、「内部クラッド領域」とも呼ばれる。「内部クラッド領域」と「外部クラッド領域」という名称は、中空コアファイバや一次プリフォームのさらなる加工によって得られる中間製品の該当する領域に対しても使用される。
【0068】
「管内側」という名称は「管の内部クラッド面」の同義語としても用いられ、「管外側」という名称は「管の外部クラッド面」の同義語としても用いられる。管に関連した用語「内部ボア」は、内部ボアが穴あけ作業によって形成されたことを意味するものではない。
【0069】
切削加工
加工物を分離加工するための機械的製造方式であり、特に旋盤加工、切断加工、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工または研磨加工を意味する。この加工により、被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造が得られ、これは反共振要素プリフォームの位置決め補助として用いられる。長手方向構造は被覆管内側からアクセスできるようになっており、被覆管壁全体を通って外側まで延びていてもよい。
【0070】
粒度および粒度分布
SiO粒子の粒度および粒度分布は、D50値に基づき特徴付けられる。この値は、SiO粒子の累積量を粒度に応じて示す粒度分布曲線から読み取られる。粒度分布は、それぞれのD10値、D50値、D90値に基づき特徴付けられることが多い。このとき、D10値はSiO粒子の累積量の10%に達しない粒度を示し、対応して、D50値およびD90はSiO粒子の累積量の50%または90%に達しない粒度を示す。粒度分布は、ISO13320に準拠した散乱光およびレーザー回折分光法によって検出される。
【0071】
実施例
以下に、実施例に基づき、図を用いて本発明を詳しく説明する。詳細は図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】半径方向の断面図に基づき、外層シリンダおよび一次プリフォームを同軸に配置した管を示し、一次プリフォームは、被覆管と、その内部に位置決めされて固定された反共振要素プリフォームから構成されている。
図2】外層シリンダおよび被覆管における、フッ素濃度および粘度の半径方向経過のグラフを示す。
図3】中空コアファイバ用のプリフォームの、理想的な半径方向濃度プロファイルまたは粘度プロファイルを説明するための図を示す。
【0073】
中空コアファイバまたは中空コアファイバ用のプリフォームの製造では、多数の構成部品を相互に接続しなければならない。さらに、熱成形プロセスを実行する場合、プリフォームに存在している隙間やチャネルを封止することは有益である。独国特許出願公開第102004054392A1から公知のように、接合または封止には、SiOベースの封止材または接合材が使用される。このとき、シリカガラス粉粒体の湿式製粉によって、約5μmのD50値および約23μmのD90値によって特徴付けられている粒子サイズ分布を有する非晶質SiO粒子を含む水性スラリーが生成される。このベーススラリーに、約5μmの中等度の粒度を持つ非晶質SiO粒子が混合される。接合材として使用されるスラリーは、90%の固形物含有量を有し、少なくとも99.9重量%はSiOから構成されている。
【0074】
図1は、外層シリンダ2と、被覆管壁を有する被覆管3とを同軸に配置した管1を概略的に示し、被覆管壁の内側面には、事前に規定された方位角位置において、反共振要素プリフォーム4が、この実施例では6個のプリフォーム4が均等な間隔で固定されており、図示していない別の好適な実施形態では、奇数個のプリフォームが存在する。
【0075】
被覆管3は、27mmの外径および20mmの内径を有する。反共振要素プリフォーム4は、ARE外管4aおよびARE内管4bが互いに入れ子になった構造要素の集合体として存在する。ARE外管4aは、6.2mmの外径を有し、ARE内管4bは、2.5mmの外径を有する。両方の構造要素(4a;4b)の壁厚は等しく、0.3mmである。すべての管状構成部品2、3、4a、4bは、700mmの長さを有する。
【0076】
反共振要素プリフォーム4は、被覆管3の内壁において、SiOベースの接合材を用いて固定される。接合材は、被覆管の内側クラッド面において、端面側の端部領域に局所的に塗布され、反共振要素プリフォーム4は、それら個々の反共振要素プリフォーム4のための保持アームが構造的に規定されて星形に配置されている位置決めテンプレートを使用して、接合材5の上に載置される。位置決めテンプレートの作用は、ここでは、被覆管の端面側両端部付近の領域に限定されている。この方式によって、被覆管3と反共振要素プリフォーム4との間で正確で再現可能な接続が行われる。固定のためには、300℃以下の低温で接合材が硬化されれば十分であり、それによって、周囲領域が強く加熱されて、したがって反共振要素プリフォーム4の変形が回避される。
【0077】
そのようにして得られた一次プリフォームは、シリカガラスからなる外層シリンダ2によって覆われる。外層シリンダ2は、63.4mmの外径および17mmの壁厚を有する。被覆管3に外層シリンダ2をコラップスする際に、それと同時に、同軸配置管が延伸される。このために、被覆管3および外層シリンダ2を同軸に配置した管が、長手方向軸を垂直に配向させて、温度制御された加熱ゾーンに下から案内され、その加熱ゾーン内で、同軸配置管の上端からゾーン毎に軟化される。加熱ゾーンは、±0.1℃の制御精度でもって1580℃の目標温度に維持される。これによって、熱成形プロセスにおける温度変動を±0.5℃未満に抑えることができる。
【0078】
コラップスプロセスおよび延伸プロセスにおいて形成された二次プリフォームは、約50mmの外径と、外側クラッドおよび内側クラッドを合わせて、16.6mmのクラッド壁厚とを有する。続いて、二次プリフォームが線引きされて、反共振中空コアファイバが形成される。事前に、すべての反共振要素プリフォームが、封止材または接合材で閉じられる。閉鎖材は、ファイバ線引きプロセスの際に上方に向けられている、反共振要素プリフォームの端面にのみ塗布されている。この端面は、シリカガラス製の保持管に接続され、この保持管は、それと同時にガス接続口としても利用される。保持部は、封止材または接合材を用いて、外層シリンダ2および被覆管3に固定される。
【0079】
ファイバ線引きプロセスでは、二次プリフォームが、長手方向軸を垂直に配向させて、温度制御された加熱ゾーンに上から案内され、その加熱ゾーン内で、下端からゾーン毎に軟化される。それと同時に、コア領域(中空コア)にガスが供給されることで、コア領域には、4mbarの内圧が生じる。加熱ゾーンは、±0.1℃の制御精度でもって、2080℃の目標温度に維持される。これによって、熱成形プロセスにおける温度変動を±0.5℃未満に抑えることができる。
【0080】
プリフォームを線引きして中空コアファイバを形成することによって、存在する絶対的な幾何学的誤差がスケールダウンされるので、中空コアファイバにおいては、反共振要素プリフォームから得られた反共振要素の壁厚の最大偏差が(平均壁厚を基準にして)3.5%未満になる。
【0081】
壁厚の誤差が小さいことは、一方では、比較的大きい二次プリフォームの使用、またそれに付随する、元から存在する絶対的な幾何学誤差のスケールダウンによるものであり、他方では、熱成形プロセス(延伸およびコラップス)の際の比較的低い処理温度によるものである。またプロセス温度が比較的低いのは、フッ素がドープされているシリカガラスから外層シリンダ2および被覆管3が作製されているからである。これらの構成部品は、それらの同軸配置体1において、面状の非常に厚い構成部品であり、プロセス温度に決定的な影響を及ぼす。二次プリフォームの面状の非常に厚い構成部材をフッ素でドーピングすることによって、必要とされるプロセス温度を低下させることができ、これによって、反共振要素プリフォーム4が熱成形プロセスの際により低い温度に晒されることによって、さらに内部に位置する反共振要素プリフォーム4の相対的な剛性および熱安定性を間接的に改善することができる。
【0082】
以下の表1には、同軸に配置された構成部品または二次プリフォームの構成部品の材料についての記述がまとめられている。
【0083】
【表1】
【0084】
フッ素がドープされたシリカガラス管(2;3)は、管壁の中心においてフッ素濃度の最大値を有する、フッ素濃度プロファイルを有する。表1の「材料」の列に記載された、シリカガラスのフッ素濃度についてのデータは平均値である。
【0085】
図2のグラフは、被覆管C(M)に関して、また外層シリンダC(Z)“において測定されたフッ素濃度プロファイルC(単位、重量ppm)、ならびに1250℃の温度に関する濃度プロファイルから算出された、半径方向の位置座標(位置P(単位mm))に沿った粘度プロファイルη(単位:lg dPa・s)を示す。
【0086】
シリカガラスにおけるフッ素濃度経過は、赤外線分光法によって求められる。粘度は、所定の温度について、フッ素濃度でもってスケーリングされており、ドープされていないシリカガラスについての基準値(η=11.8dPa・s(100%に相当))から、次式に基づいて算出される:
1250℃における粘度の検査:重量%フッ素あたり12%(±2%)
【0087】
表2には、(1250℃の測定温度に関して)市販のシリカガラス品質のフッ素含有量についての粘度値が示されている。
【0088】
【表2】
【0089】
図2は、外層シリンダη(Z)の粘度が、被覆管η(M)の粘度よりも低いことを示す。2つのシリカガラス管において、管の中心における粘度は最小値を有し、この最小値は、被覆管では、約1011.45dPa・sであり、外層シリンダでは、約1010.65dPa・sである。したがって、最小値(単位lg dPa・s)の粘度差は、約0.80dPa・sである。被覆管の外側の領域における被覆管の粘度(約1011.5dPa・s)と、外層シリンダにおける粘度最小値との差は、約0.85(単位lg dPa・s)である。
【0090】
プリフォームにおいては、被覆管の外側クラッド面および外層シリンダの内側クラッド面が、共通の接触面を形成する。粘度プロファイルにプロットされた接触面の局所的な位置は、グラフにおいて2つの四角形「K」によって示唆されている。これらの位置において、外層シリンダおよび被覆管の粘度についての以下の値が生じる:
被覆管:約11.5 lg(dPa・s)
外層シリンダ:約11.15 lg(dPa・s)
したがって、接触面の領域における粘度差は、約0.35dPa・s(単位lgd Pa・s)である。
【0091】
反共振要素プリフォーム(4)の構造要素(4a;4b)は、ドープされていないシリカガラスから作製され、約1011.8dPa・sの粘度を有する。
【0092】
図3は、二次プリフォームの壁部にわたる、半径方向のドーパント濃度経過の理想的な形態を示す。y軸には、位置座標P(相対単位)に対するフッ素濃度C(相対単位)がプロットされている。接触面「K」において、外層シリンダに由来する、フッ素がドープされたシリカガラスのドーパント濃度C(Z)は、理想的には、被覆管に由来する、フッ素がドープされたシリカガラスの濃度C(M)と同程度に高い。したがって、被覆管および外層シリンダの粘度の相応の粘度プロファイルは、接触面Kにおいては両面とも同じ粘度を示す。
図1
図2
図3
【国際調査報告】