(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(54)【発明の名称】組織接着性マトリックスおよびその使用
(51)【国際特許分類】
A61L 27/44 20060101AFI20220916BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20220916BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20220916BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220916BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20220916BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20220916BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A61L27/44
A61L27/18
A61L27/54
C08L101/00
C08L101/02
C08L71/02
C08L67/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504119
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 IL2020050815
(87)【国際公開番号】W WO2021014446
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522028124
【氏名又は名称】ヌラミ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヌセイル マナッサ,ノラ
(72)【発明者】
【氏名】バハール,アミール
(72)【発明者】
【氏名】オマール,ロダイナ
【テーマコード(参考)】
4C081
4J002
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081BB04
4C081CA02
4C081CA16
4C081CA17
4C081CA18
4C081CA20
4C081CA21
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4C081CD01
4C081CE02
4C081CE03
4C081DA04
4J002AA01W
4J002AA03X
4J002AA03Y
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4J002CH05X
4J002CH05Y
4J002GB01
4J002GE00
4J002GK01
(57)【要約】
第1のポリマーと、第2の分岐ポリマーと、第2のポリマーに対して反応性を有する第3のポリマーと、を含む、組成物であって、第2および第3のポリマーのいずれかが、組織接着性基を含み、第2のポリマーおよび第3のポリマーが、少なくとも部分的に架橋されている、組成物が開示される。本発明の組成物および任意選択的に追加のポリマー層を含む、マトリックスが開示される。組成物を製造するためのプロセス、ならびに生体接着および/または損傷した組織の修復のためのその使用もまた開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)第1のポリマーと、
(ii)第2の分岐ポリマーと、
(iii)第3のポリマーであって、前記第2のポリマーに対して反応性を有し、かつ前記第2の分岐ポリマーと少なくとも部分的に架橋されている、第3のポリマーと、を含み、
前記第2および前記第3のポリマーのいずれか1つが、組織接着性基を含む、組成物。
【請求項2】
前記第1のポリマーの平均分子量が、10KDa~900KDaの範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のポリマーが、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアセタール、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリホスホエステル、ポリエーテル、シリコーン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(エチレングリコール)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、多糖類、またはそれらの任意の組み合わせもしくはコポリマーからなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第3のポリマーが、分岐している、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第3のポリマーが、求核基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記架橋が、前記組織接着性基と前記求核基とを反応させることによるものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記分岐が、星型ポリマー、デンドリマー、および超分岐ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記分岐が、3~10本のアームを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組織接着性基が、活性化エステル(例えば、チオエステル、プーオロアルキル(peu-oroalkyl)エステル、ペントオロフェノールエステル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、ハロゲン化アシル、クロロホルメート、無水物、アルデヒド、エポキシド、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、カーボネート、塩化スルホニル、ハロアセトアミド、アシルアジド、イミドエステル、カルボジイミド、ビニルスルホン、オルト-ピリジル-ジスルフィド、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組織接着性基が、前記第2のポリマーのアームに共有結合している、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第2の分岐ポリマー、前記第3のポリマー、またはそれらの両方が、ポリエーテル、ポリエステル、ポリジオキサノン、ポリホスホエステル、ポリウレタン、およびポリアミド、またはそれらの任意の組み合わせもしくはコポリマーからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第2の分岐ポリマー、前記第3のポリマー、またはそれらの両方が、ポリエチレングリコールを含み、前記第1のポリマーが、ポリ乳酸、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリグリコール酸、ポリ(L-グリコール酸)、ポリ(D-グリコール酸)、ナイロン、およびポリカプロラクトン、またはそれらの任意の組み合わせもしくはコポリマーからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2の分岐ポリマー、および前記第3のポリマーの平均分子量が、500Da~100,000Daの範囲である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記第2のポリマーに対する前記第3のポリマーの重量比が、1:1~1:10の範囲である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記第2のポリマーに対する前記第1のポリマーの重量比が、1:1~20:1の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
(i)前記第1のポリマーと、(ii)前記第2の分岐ポリマーおよび前記第3のポリマーのうちの少なくとも1つとが、一緒にブレンドされて、ブレンドポリマー繊維を形成する、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ブレンドポリマー繊維が、生分解性である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記ブレンドポリマー繊維が、0.5~10umの平均繊維径を特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ブレンドポリマー繊維が、50~150℃の融点を特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
組織接着性層を含むマトリックスであって、前記組織接着性層が、請求項16~19のいずれか一項に記載のブレンドポリマー繊維を含む、マトリックス。
【請求項21】
ポリマー繊維の追加の層をさらに含む、請求項20に記載のマトリックス。
【請求項22】
前記追加の層が、前記組織接着性層の安定性を強化する、請求項20または21に記載のマトリックス。
【請求項23】
前記組織接着性層が、0.5~100umの孔径を特徴とする、請求項20~22のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項24】
前記組織接着性層が、少なくとも0.05MPaの引張強度を特徴とする、請求項20~23のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項25】
前記組織接着性層が、1~10Nの接着強度を特徴とし、前記接着強度が、剪断試験に従って測定される、請求項20~24のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項26】
前記組織接着性層が、少なくとも60%の多孔性を特徴とする、請求項20~25のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項27】
前記組織接着性層が、0.5~250umの厚さを特徴とする、請求項20~26のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項28】
前記組織接着性層が、40mmHgの圧力で水性液体に曝露されたときに、1ml/時間/cm
2未満の透水性を特徴とする、請求項20~27のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項29】
医薬活性成分をさらに含む、請求項20~28のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項30】
(i)少なくとも1つの生体組織の生体接着、(ii)血液凝固の促進に使用するための、請求項20~29のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項31】
生体組織の修復および/または置換に使用するための、請求項20~30のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項32】
(i)第1のポリマーおよび第2のポリマーを含むブレンドポリマー繊維と、(ii)前記第2のポリマーに対して反応性を有する第3のポリマーを含む組成物と、を含む、キットであって、前記第2のポリマーおよび前記第3のポリマーが、それぞれ、請求項1~19のいずれか一項に記載の第2の分岐ポリマーまたは第3のポリマーを含む、キット。
【請求項33】
前記第1のポリマーが、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアセタール、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリホスホエステル、ポリエーテル、シリコーン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(エチレングリコール)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、多糖類、またはそれらの組み合わせもしくはコポリマーを含む群から選択される、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記第2のポリマー、前記第3のポリマー、またはそれらの両方が、ポリエチレングリコールを含み、前記第1のポリマーが、ポリ乳酸、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリグリコール酸、ポリ(L-グリコール酸)、ポリ(D-グリコール酸)、ナイロンおよびポリカプロラクトン、またはそれらの任意の組み合わせもしくはコポリマーからなる群から選択される、請求項32または33に記載のキット。
【請求項35】
前記追加の構成成分と接触している前記ブレンドポリマー繊維が、組織接着性層をもたらす、請求項32~34のいずれか一項に記載のキット。
【請求項36】
前記第2のポリマーに対する前記第3のポリマーの重量比が、1:1~1:20の範囲である、請求項32~35のいずれか一項に記載のキット。
【請求項37】
前記第2のポリマーに対する前記第1のポリマーの重量比が、1:1~20:1の範囲である、請求項32~36のいずれか一項に記載のキット。
【請求項38】
請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物、または請求項32~37のいずれか一項に記載のキットのブレンドポリマー繊維を製造するためのプロセスであって、(i)第1のポリマーと、前記第2の分岐ポリマーおよび前記第3のポリマーのうちの少なくとも1つと、を溶媒と混合し、それによって溶液を得ることと、(ii)前記溶液をエレクトロスピニング装置に提供することと、を含む、プロセス。
【請求項39】
前記プロセスが、ポリマー繊維の層を製造するためのものである、請求項38に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月22日に出願された米国仮特許出願第62/876,952号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、組織接着性マトリックス、その調製および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
損傷した組織からの、または損傷した組織への液体または空気の漏出は、生命を脅かす可能性のある状態であり、手術および外傷を含む様々な状況の結果として発生し得る。
【0004】
軟組織は特に損傷を受けやすい。さらに、これらの組織は、液体または空気を保持する様々な区画(例えば、肺、血管、硬膜、膀胱等)を形成することがあり、損傷すると、それらの障害が他の領域にも広がる可能性がある。さらに、これらの組織の機械的性質のために、マトリックスと縫合糸またはステープルとの付着は、それ自体に損傷を引き起こし、例えば、適切な密封を妨げる、細菌感染の可能性を高める、または回復もしくは療養の速度を低下させる可能性がある。そのような軟組織の例として、硬膜、脳組織、網膜、皮膚組織、肝組織、膵臓組織、結合組織、筋肉組織、心臓組織、血管組織、腎臓または泌尿生殖器組織、肺組織、生殖腺組織、造血組織、消化器管組織(結腸または胃等)および脂肪組織が挙げられる。
【0005】
縫合せずに組織に接着することは、細胞成長による付着を促進する(例えば、表面に適用される)接着剤(例えば、成長因子、細胞外マトリックスタンパク質、および/または他のタンパク質)によって提供され得る。重合可能な組成物は、例えば歯科材料として、または再構成要素を所定の位置に保持するための接着剤として、様々な接着剤に使用されてきた。現在入手可能な組織接着剤には、診療所での使用を制限するいくつかの固有の欠点がある。例えば、シアノアクリレートベースの接着剤は、組織に非常に強力に接着するが、重度の炎症反応および弾力性の低下に関連している。一方、ヒドロゲルは安全であると考えられているが、組織を一緒に保持するために必要な接着強度が不足している。その結果、シアノアクリレートの使用は外面に限定され、フィブリン接着剤等のヒドロゲルはシーラントとして機能し、創傷を一緒に保持するのではなく、密封する。したがって、縫合糸およびステープルの実行可能な代替物を提供する新しい接着戦略が大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様では、
第1のポリマーと、
第2の分岐ポリマーと、
第3のポリマーであって、第2のポリマーに対して反応性を有し、かつ第2の分岐ポリマーと少なくとも部分的に架橋されている、第3のポリマーと、を含み、
第2および第3のポリマーのいずれか1つが、組織接着性基を含む、組成物が提供される。
【0007】
一実施形態において、第1のポリマーの平均分子量は、10KDa~900KDaの範囲である。
【0008】
一実施形態において、第1のポリマーは、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアセタール、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリホスホエステル、ポリエーテル、シリコーン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(エチレングリコール)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、多糖類、またはそれらの任意の組み合わせもしくはコポリマーを含む群から選択される。
【0009】
一実施形態において、第3のポリマーは、分岐している。
【0010】
一実施形態において、第3のポリマーは、求核基を含む。
【0011】
一実施形態において、架橋は、組織接着性基と求核基とを反応させることによるものである。
【0012】
一実施形態において、分岐ポリマーは、星型ポリマー、デンドリマー、および超分岐ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0013】
一実施形態において、分岐ポリマーは、3~10本のアームを含む。
【0014】
一実施形態において、組織接着性基は、活性化エステル(例えば、チオエステル、プーオロアルキル(peu-oroalkyl)エステル、ペントオロフェノールエステル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、ハロゲン化アシル、クロロホルメート、無水物、アルデヒド、エポキシド、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、カーボネート、塩化スルホニル、ハロアセトアミド、アシルアジド、イミドエステル、カルボジイミド、ビニルスルホン、オルト-ピリジル-ジスルフィド、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
一実施形態において、組織接着性基は、第2のポリマーのアームに共有結合している。
【0016】
一実施形態において、第2のポリマー、第3のポリマー、またはそれらの両方は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリジオキサノン、ポリホスホエステル、ポリウレタン、およびポリアミド、またはそれらの任意の組み合わせもしくはコポリマーからなる群から選択される。
【0017】
一実施形態において、第2のポリマー、第3のポリマー、またはそれらの両方は、ポリエチレングリコールを含み、第1のポリマーが、ポリ乳酸、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリグリコール酸、ポリ(L-グリコール酸)、ポリ(D-グリコール酸)、ナイロンおよびポリカプロラクトン、またはそれらの任意の組み合わせもしくはコポリマーからなる群から選択される。
【0018】
一実施形態において、第2のポリマーおよび第3のポリマーの平均分子量は、500Da~100,000Daの範囲である。
【0019】
一実施形態において、第2の分岐ポリマーに対する第3のポリマーの重量比は、1:1~1:10の範囲である。
【0020】
一実施形態において、第2の分岐ポリマーに対する第1のポリマーの重量比は、1:1~20:1の範囲である。
【0021】
一実施形態において、第1のポリマーと、第2の分岐ポリマーおよび第3のポリマーのうちの少なくとも1つとが、一緒にブレンドされて、ブレンドポリマー繊維を形成する。
【0022】
一実施形態において、ブレンドポリマー繊維は、生分解性である。
【0023】
一実施形態において、ブレンドポリマー繊維は、0.5~10umの平均繊維径を特徴とする。
【0024】
一実施形態において、ブレンドポリマー繊維は、50~150℃の融点を特徴とする。
【0025】
別の態様では、組織接着性層を含むマトリックスが提供され、組織接着性層は、本発明のブレンドポリマー繊維を含む。
【0026】
一実施形態において、マトリックスは、ポリマー繊維の追加の層をさらに含む。
【0027】
一実施形態において、追加の層は、組織接着性層の安定性を強化する。
【0028】
一実施形態において、組織接着性層は、0.5~100umの孔径を特徴とする。
【0029】
一実施形態において、組織接着性層は、少なくとも0.05MPaの引張強度を特徴とする。
【0030】
一実施形態において、組織接着性層は、1~10Nの接着強度を特徴とし、接着強度は、剪断試験に従って測定される。
【0031】
一実施形態において、組織接着性層は、少なくとも60%の多孔性を特徴とする。
【0032】
一実施形態において、組織接着性層は、0.5~250umの厚さを特徴とする。
【0033】
一実施形態において、組織接着性層は、40mmHgの圧力で水性液体に曝露されたときに、1ml/時間/cm2未満の透水性を特徴とする。
【0034】
一実施形態において、マトリックスは、医薬活性成分をさらに含む。
【0035】
一実施形態において、マトリックスは、(i)少なくとも1つの生体組織の生体接着、(ii)血液凝固の促進の使用に使用するためのものである。
【0036】
一実施形態において、マトリックスは、生体組織の修復および/または置換に使用するためのものである。
【0037】
別の態様では、(i)第1のポリマーおよび第2のポリマーを含むブレンドポリマー繊維と、(ii)第2のポリマーに対して反応性を有する第3のポリマーを含む組成物と、を含む、キットであって、第2のポリマーおよび第3のポリマーが、それぞれ、本発明の第2の分岐ポリマーまたは第3のポリマーを含む、キットが存在する。
【0038】
一実施形態において、第1のポリマーは、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアセタール、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリホスホエステル、ポリエーテル、シリコーン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(エチレングリコール)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、多糖類、またはそれらの組み合わせもしくはコポリマーを含む群から選択される。
【0039】
一実施形態において、第2のポリマー、第3のポリマー、またはそれらの両方は、ポリエチレングリコールを含み、第1のポリマーは、ポリ乳酸、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリグリコール酸、ポリ(L-グリコール酸)、ポリ(D-グリコール酸)、ナイロン、およびポリカプロラクトン、またはそれらの任意の組み合わせもしくはコポリマーからなる群から選択される。
【0040】
一実施形態において、追加の構成成分と接触しているブレンドポリマー繊維は、組織接着性層をもたらす。
【0041】
一実施形態において、第2のポリマーに対する第3のポリマーの重量比は、1:1~1:20の範囲である。
【0042】
一実施形態において、第2のポリマーに対する第1のポリマーの重量比は、1:1~20:1の範囲である。
【0043】
別の態様では、本発明の組成物または本発明のキットのブレンドポリマー繊維を製造するためのプロセスであって、(i)第1のポリマーと、第2のポリマーおよび第3のポリマーのうちの少なくとも1つと、を溶媒と混合し、それによって溶液を得ることと、(ii)溶液をエレクトロスピニング装置に提供することとを含む、プロセスが存在する。
【0044】
一実施形態において、プロセスは、ポリマー繊維の層を製造するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図3】エレクトロスピニングされたサンプルのSEM画像を示す。
図3A:対照1.2
図3B:組成物1.2
【
図4】例示的なエレクトロスピニングされたサンプルの繊維径を示す棒グラフを示す。対照はcont.として指定される。
【
図5】例示的なエレクトロスピニングされたサンプルの孔径を示す棒グラフを示す。対照はcont.として指定される。
【
図6】例示的なエレクトロスピニングされたサンプルの引張強度を示す棒グラフを示す。対照はcont.として指定される。
【
図7A-7B】剥離試験によって決定された接着強度を示す棒グラフを示す。
図7Aは、例示的なサンプルおよび対照によって示される平均剥離力を示している。
図7Bは、例示的なサンプルおよび対照によって示される最大の力を示している。対照はcont.として指定される。
【
図8】剪断試験によって決定された、例示的なサンプルおよび対照の接着強度を示す棒グラフを示す。
【
図9】例示的なサンプルおよび対照の破裂圧力強度を示す棒グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
一態様では、本発明は、第1のポリマー、組織接着性基を含む第2のポリマー、および第3のポリマーを含む組成物に関し、第2のポリマーおよび第3のポリマーは、少なくとも部分的に架橋されている。いくつかの実施形態において、本発明は、ブレンドポリマー繊維の形態である組成物に関する。
【0047】
別の態様では、本発明は、本発明のブレンドポリマー繊維を含む組織接着性マトリックスに関する。さらに、本発明は、マトリックスを製造する方法および組織接着等のためのその使用を提供する。
【0048】
本発明は、架橋ポリマーを含む組織接着性マトリックスが、線状組織接着性ポリマーを含むマトリックスと比較して、強化された接着強度を示したという驚くべき発見に一部基づいている。
【0049】
組成物
いくつかの実施形態において、第1のポリマーと、第2の分岐ポリマーと、第3のポリマーであって、第2のポリマーに対して反応性を有し、かつ第2の分岐ポリマーと少なくとも部分的に架橋されている、第3のポリマーと、を含み、第2および第3のポリマーのいずれか1つが組織接着性基を含む、組成物が提供される。
【0050】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは担体ポリマーである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、それを含む組成物に構造的支持を提供する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「構造的支持」という用語は、弾性等の組成物(例えば、ブレンドポリマー繊維)の物理特性に関連する。さらに、第1のポリマーは、本明細書において後に記載する方法のいずれか1つによる(例えば、エレクトロスピニングによる)ポリマー繊維形成を可能にするように選択され得る。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリマー繊維に安定性を提供する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「弾性」および「弾性のある」という用語は、指示された温度または37℃の温度(温度が示されていない状況において)で、応力、例えば、引張応力および/または剪断応力によって変形させた後、材料が元の形状に戻る傾向を指す。弾性は、引張特性で表すことができる。
【0053】
破壊時の伸びは、(例えば、破裂またはネッキングとして)試験材料の破壊が発生する前に、(引張強度に等しい引張応力の適用時に)発生する可能性のある最大ひずみ(伸び)として決定される。
【0054】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは合成ポリマーである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアセタール、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリホスホエステル、ポリエーテル、シリコーン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(エチレングリコール)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、およびそれらの混合物またはコポリマーを含む群から選択される。
【0055】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは生分解性である。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、少なくとも部分的に生分解性および/または生侵食性である。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、実質的に生分解性および/または生侵食性であり、実質的に本明細書に記載される通りである。
【0056】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリ(乳酸)を含むコポリマーである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーはポリ(乳酸)である。いくつかの実施形態において、第1のポリマーはポリエステルを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、少なくとも1つの生分解性ポリエステルを含む。
【0057】
ポリエステルの非限定的な例として、ポリグリコリド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、それらの任意のコポリマーまたは任意の組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリ(アルファ-ヒドロキシ)カルボン酸を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリ(アルファ-ヒドロキシ)カルボン酸を含む第1のポリマーセグメントと、ポリエステルを含む第2のポリマーセグメントとを含むコポリマーである。
【0059】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、複数のポリエステルを含むコポリマーである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン(PCL)から選択されるポリエステルを含み、任意選択的にポリアミド(例えば、ナイロン)を含むコポリマーである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリラクチド-コ-ポリカプロラクトン(PLA-コ-PCL)を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリグリコリド-コ-ポリカプロラクトンを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリグリコリド-コ-ポリカプロラクトン(PLGA-コ-PCL)を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリ(L-グリコリド)-コ-ポリカプロラクトンを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリ(D-グリコリド)-コ-ポリカプロラクトンを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリ(L-ラクチド)-コ-ポリ(ε-カプロラクトン)(PLLA-PCL)、ポリ(D,L-ラクチド)-コ-ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(D-ラクチド)-コ-ポリ(ε-カプロラクトン)またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは生物学的ポリマーである。いくつかの実施形態において、生物学的ポリマーは、多糖、ポリペプチド、ポリ核酸、およびそれらの混合物またはコポリマーを含む群から選択される。いくつかの実施形態において、生物学的ポリマーは、化学的修飾(例えば、架橋、アセチル化、メチル化、加水分解)を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、生物学的ポリマーは多糖である。多糖類の非限定的な例として、酢酸セルロース、アラビアガム、ガティガム、デキストラン、プルラン、アミロペクチン、およびヒアルロン酸が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、生物学的ポリマーは血液凝固を誘発する。いくつかの実施形態において、生物学的ポリマーは、コラーゲン、酸化セルロース、またはそれらの両方を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、10000Da~900,000Da、10000Da~100,000Da、10,000Da~50,000Da、50,000Da~100,000Da、100,000Da~200,000Da、200,000Da~300,000Da、300,000Da~400,000Da、400,000Da~500,000Da、500,000Da~600,000Da、600,000Da~900,000Daの範囲(それらの間の任意の範囲または値を含む)の平均分子量を特徴とする。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、50~70kDa、70~100kDa、100~150kDa、150~200kDa、200~250kDa、250~300kDaの範囲(それらの間の任意の範囲または値を含む)の平均分子量を特徴とする。
【0062】
いくつかの実施形態において、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーのいずれかは、実質的に単一のホモポリマーまたは単一のコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーのいずれかは、粒子状物質(例えば、有機または無機のナノ粒子、マイクロ粒子)を実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーのいずれかは、非生分解性ポリマーおよび/または非生分解性ポリマーセグメントを実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーから本質的になる。いくつかの実施形態において、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーは、本発明の組成物の乾燥含量の、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.9重量%を構成する。いくつかの実施形態において、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーは、本発明のブレンドポリマー繊維の、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.9重量%を構成する。いくつかの実施形態において、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーのいずれか1つは、アクリレート修飾されたPEG-PLLAコポリマーを実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、組織接着性基は、アクリレートを実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、組織接着性基は、ビニルスルホンを実質的に欠いている。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ポリアミノ酸(例えば、ペプチド)を実質的に欠いている。
【0063】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは高分子量ポリマーである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーの平均分子量は、第2および第3のポリマーのいずれか1つの平均分子量よりも、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも900%、少なくとも1000%(それらの間の任意の範囲または値を含む)高い。
【0064】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、第2および第3のポリマーのいずれか1つの引張強度および破壊時の伸びよりも大きい引張強度および破壊時の伸びを特徴とし、より大きいものは上記の通りである。
【0065】
いくつかの実施形態において、組成物の総重量に対する第1のポリマーのw/w比は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0066】
いくつかの実施形態において、組成物の総重量に対する第1のポリマーのw/w比は、最大でも20%、最大でも25%、最大でも30%、最大でも35%、最大でも40%、最大でも45%、最大でも50%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。いくつかの実施形態において、組成物の総重量に対する第1のポリマーのw/w比は、最大でも50%である。
【0067】
いくつかの実施形態において、組成物の総重量からの第1のポリマーのw/w比は、10~60%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
いくつかの実施形態において、第1のポリマーのw/w含有量が20~60%、30~50%、40~50%、または最大でも50%である組成物(例えば、繊維の形態)は、十分な接着強度(例えば、1.1N超)を特徴とし、接着強度は、本明細書に記載される通りである。
【0068】
いくつかの実施形態において、組成物は第2のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは分岐ポリマーである。いくつかの実施形態において、分岐ポリマーは、星型ポリマー、デンドリマー、および超分岐ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、「第2のポリマー」および「第2の分岐ポリマー」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0069】
いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2の分岐ポリマーおよび/または第3のポリマー)は、分岐コアを含む。いくつかの実施形態において、分岐コアは、少なくとも3本のアームに共有結合している。
【0070】
分岐コアの非限定的な例として、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、カリックス[8]アレーン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【化1】
【0071】
いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)は、3本以上のアームに共有結合した分岐コアを含み、アームのそれぞれ1本は同じ化学組成を有する。
【0072】
いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)は、3本以上のアームに共有結合した分岐コアを含み、アームの少なくともいくつかは異なる化学組成を有する。
【0073】
本明細書で使用される場合、「化学組成」という用語は、セグメントのいずれか1つの組成物について説明する(例えば、ポリマーセグメント中のモノマーの化学構造および平均数)。
【0074】
いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)は、3~10本、3~5本、5~7本、7~8本、8~10本(それらの間の任意の範囲または値を含む)のアームを有する。いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)は、3~8本のアームを有する。いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)は、4~8本のアームを有する。いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)は、3~6本のアームを有する。いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)は、4本のアームを有する。いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)は、8本のアームを有する。いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、本発明の第2の分岐ポリマーおよび/または第3のポリマー)は、8本のアームを含む。いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、本発明の第2の分岐ポリマーおよび/または第3のポリマー)の総重量で少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%は、8本のアームを含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)のアームのいずれか1本は、独立してポリマーセグメントを含む。いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)のアームのいずれか1本は、独立して、少なくとも1つのポリマーセグメント、および少なくとも1つの組織結合基を含む。
【0076】
本明細書で使用される場合、「ポリマーセグメント」という用語は、任意の長さのポリマー構造を指す。ポリマー技術の分野では、長いポリマー構造は、しばしばブロックと称され、短いポリマー構造は、しばしばセグメントと称される。これらの従来の意味は両方とも、本明細書で使用される「セグメント」という用語に含まれると理解される。
【0077】
いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)のポリマーセグメントは、複数のポリマーサブユニットを含むコポリマーである。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ブロックコポリマー、交互コポリマー、周期的コポリマー、およびランダムコポリマーからなる群から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)のポリマーセグメントは、ホモポリマーである。
【0079】
いくつかの実施形態において、分岐ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび/または第3のポリマー)のポリマーセグメントは、少なくとも1つの生分解性サブユニットを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーセグメントは、少なくとも1つの生体適合性サブユニットを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーセグメントは、少なくとも1つの生体適合性および生分解性サブユニットを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーセグメントは、少なくとも1つの生分解性サブユニットおよび少なくとも1つの非生分解性サブユニットを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーセグメントは完全に生分解性である。いくつかの実施形態において、ポリマーセグメントは完全に生体適合性である。いくつかの実施形態において、ポリマーセグメントは、生分解性および生体適合性である。
【0080】
本明細書で使用される場合、「生体適合性」という用語は、インビトロで細胞に対して非毒性であり、インビボで投与されたときに、望ましくない長期効果を誘発しない材料を説明することを意図している。
【0081】
本明細書で使用される場合、「生分解性」という用語は、インビボで分解される共有結合を含む材料を説明することを意図し、共有結合の分解は、加水分解を介して起こる。加水分解は、水性媒体との直接反応を伴い得るか、または化学的もしくは酵素的に触媒することができる。「水性媒体」は、水、水溶液、生理学的媒体または生物学的流体(例えば、体液)、および他の薬学的に許容される媒体を指す。好適な加水分解性共有結合は、エステル、アミド、ウレタン、カルバメート、カーボネート、エーテル、アゾ結合、無水物、チオエステル、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0082】
生分解性ポリマーの非限定的な例として、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))、ポリグリコリド、ポリエステル(例えば、ポリ-l-ラクチド(PLLA)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート)、ポリジオキサノン、ポリウレタン、ポリホスホエステル、ポリウレタン、およびポリアミド(例えば、ポリアミノ酸(それらの任意のコポリマーまたは任意の組み合わせを含む)が挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーおよび/または第3のポリマーのポリマーセグメントは、PEGを含む。いくつかの実施形態において、第2のポリマー、第3のポリマー、またはそれらの両方は、ポリエステルを含む。いくつかの実施形態において、第2のポリマー、第3のポリマー、またはそれらの両方は、ポリエーテルを含む。いくつかの実施形態において、第2のポリマー、第3のポリマー、またはそれらの両方は、PEGを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーのポリマーセグメントは、第3のポリマーに対して反応性を有する。いくつかの実施形態において、第2のポリマーのポリマーセグメントは、反応性基を含む。いくつかの実施形態において、第2のポリマーの反応性基は、第3のポリマーの反応性基に対して反応性を有する。いくつかの実施形態において、第3のポリマーの反応性基は、第2のポリマーの反応性基に対して反応性を有する。いくつかの実施形態において、反応性基は、第3のポリマーとの共有結合を形成することができる。いくつかの実施形態において、第2のポリマーの反応性基は、求電子剤である。いくつかの実施形態において、第2のポリマーの反応性基は、組織接着性基である。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、組織接着性基(例えば、求電子剤または求電子性組織接着性基)を含み、組織接着性基は、第3のポリマーに対して反応性を有する。いくつかの実施形態において、第2のポリマーの組織接着性基は、第3のポリマーの反応性基(例えば、本明細書に記載される求核基)に対して反応性を有する。いくつかの実施形態において、第2のポリマーおよび第3のポリマーは、第2のポリマーの組織接着性基と第3のポリマーの反応性基との反応を介して共有結合を形成することができる。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、そのポリマーセグメントに共有結合した組織接着性基を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、反応性基を実質的に欠いており、反応性基は、本明細書に記載される通りである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは実質的に不活性(例えば、非反応性)である。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、第2のポリマーおよび第3のポリマーのいずれかに対して実質的に不活性(例えば、非反応性)である。
【0085】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーのポリマーセグメントは、1つのタイプの組織接着性基またはより多くのタイプの組織接着性基を含む。
【0086】
「組織接着性基」という用語は、生物学的表面(例えば、組織)と相互作用して、共有結合または非共有結合の形成をもたらし得る任意の化学基または官能基を包含する。組織等の生物学的表面は、一般に細胞からなり、その表面にタンパク質分子を含み、これは一般にチオールおよび一級アミン部分を含む。活性化エステル等の多くの官能基は、細胞表面に位置するチオールまたは第一級アミンと反応することにより、生物学的表面に共有結合し得る。共有結合を形成することに加えて、組織接着性基は、生物学的表面と非共有結合を形成し得る。「非共有結合」という用語は、リガンド-受容体相互作用、水素結合、双極子-双極子相互作用、およびファンデルワールス結合、またはそれらの任意の組み合わせを包含する。本発明に関する組織接着性基の使用は、ポリマー材料に生体接着特性を提供する。
【0087】
本明細書で使用される場合、「生物学的表面」という用語は、細胞および/または生物学的分子(例えば、タンパク質、多糖類、脂質、核酸)を含む任意の表面を指す。「生物学的表面」の非限定的な例として、組織表面、合成移植片表面、および器官表面が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
生物学的表面と非共有結合を形成する組織接着性基の非限定的な例として、アミド、カルボキシレート、およびペプチド(例えば、RGD)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
生物学的表面と共有結合を形成する組織接着性基の非限定的な例として、活性化エステル(例えば、チオエステル、プーオロアルキル(peu-oroalkyl)エステル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、カルボン酸、ハロゲン化アシル、クロロホルメート、無水物、アルデヒド、エポキシド、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、カーボネート、塩化スルホニル、ハロアセトアミド、アシルアジド、イミドエステル、カルボジイミド、ビニルスルホン、オルト-ピリジル-ジスルフィド、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態において、組織接着性基は、活性化エステルである。
【0091】
いくつかの実施形態において、組織接着性基は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルである。NHSで官能化されたポリマーが組織タンパク質等のアミン含有材料と反応する機構を以下に示す。
【化2】
【0092】
いくつかの実施形態において、組織接着性基は、ポリマーセグメントの末端基に共有結合している。
【0093】
いくつかの実施形態において、組織接着性基は、ポリマーセグメントの側鎖に共有結合している。
【0094】
いくつかの実施形態において、複数の組織接着性基が、第2のポリマーに生体接着特性を提供する。
【0095】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーのポリマーセグメントは、生物学的表面と共有結合および/または非共有結合を形成して生体接着をもたらす組織接着性モノマーを含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、組成物は第3のポリマーを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーは生分解性である。
【0098】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーは、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))、ポリグリコリド、ポリエステル(例えば、ポリ-l-ラクチド(PLLA)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート)、ポリジオキサノン、ポリウレタン、ポリホスホエステル、ポリウレタン、およびポリアミド(例えば、ポリアミノ酸)またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0099】
いくつかの実施形態において、第2のポリマー、第3のポリマー、またはそれらの両方は、PEGを含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーおよび第2のポリマーの平均分子量は、500~100000Da、500~5000Da、1000~3000Da、1500~2500Da、5000~10000Da、10000~15000Da、15000~18000Da、18000~20000Da、20000~22000Da、22000~25000Da、25000~30000Da、30000~40000Da、40000~60000Da、60000~80000Da、80000~100000Daの範囲、またはそれらの間の任意の範囲である。
【0101】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーおよび第3のポリマーのいずれか1つの平均分子量は、1000~50.000Daである。いくつかの実施形態において、第2のポリマーおよび第3のポリマーのうちの少なくとも1つの平均分子量は、10.000~50.000Da、10.000~20.000Da、20.000~30.000Da、30.000~40.000Da、40.000~50.000Da(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。いくつかの実施形態において、組成物(例えば、繊維)は、第1のポリマーと、第2のポリマーおよび第3のポリマーのうちの少なくとも1つと、を含み、少なくとも1つのポリマーは、10.000~50.000Da、10.000~20.000Da、20.000~30.000Da、30.000~40.000Da、40.000~50.000Da(それらの間の任意の範囲または値を含む)の平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、組成物(例えば、繊維)は、第1のポリマーと、第2のポリマーおよび第3のポリマーから選択される少なくとも1つのポリマーと、を含み、少なくとも1つのポリマーは、少なくとも5.000Da、少なくとも7.000Da、少なくとも8.000Da、少なくとも9.000Da、少なくとも10.000Da、少なくとも12.000Da、少なくとも15.000Da、少なくとも20.000Da(それらの間の任意の範囲または値を含む)の平均分子量を有する。
【0102】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーは分岐ポリマーである。いくつかの実施形態において、分岐ポリマーは、本明細書に上記した通りである。
【0103】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーは、第2のポリマーに対して反応性を有する。いくつかの実施形態において、第3のポリマーは、第2のポリマーと共有結合を形成することができる反応性基を含む。いくつかの実施形態において、第3のポリマーの反応性基(例えば、求核基)は、第2のポリマーの反応性基(例えば、求電子剤)と共有結合を形成することができる。いくつかの実施形態において、第3のポリマーの反応性基は、第2のポリマーの組織接着性基と共有結合を形成することができる。
【0104】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーの反応性基は、求核基(例えば、アミン、チオール、ホスフィン、ヒドロキシル)、ジエン、テトラジン、およびアジド、またはそれらの任意の組み合わせからなる基から選択される。いくつかの実施形態において、第3のポリマーの反応性基は、求核基である。
【0105】
いくつかの実施形態において、共有結合形成は、架橋と称される。
【0106】
いくつかの実施形態において、架橋は相互架橋である。本明細書で定義される場合、「相互」という用語は、同じポリマー鎖内に存在する2つの反応性基間の「内部」結合の形成とは対照的に、2つのポリマー鎖に存在する2つの反応性基間の結合の形成を指す。
【0107】
いくつかの実施形態において、第2および第3のポリマーは、架橋ポリマーを形成するように、少なくとも部分的に架橋されている。いくつかの実施形態において、架橋は、第3のポリマーの組織接着性基と反応性基とを反応させることによって形成される。いくつかの実施形態において、架橋は、アジドアルキン付加環化等の「クリック反応」、または逆ディールスアルダー反応を介して形成される。いくつかの実施形態において、架橋は、第3のポリマーの組織接着性基と求核基とを反応させることによって形成される。いくつかの実施形態において、架橋は、第3のポリマーのアミノ基と第2のポリマーのNHSとを反応させることによって形成されるアミド結合を介する。いくつかの実施形態において、架橋は、第3のポリマーのチオール基と第2のポリマーのnhsとを反応させることによって形成されるチオエステル結合を介する。
【0108】
いくつかの実施形態において、架橋ポリマーは、1%~80%、1%~10%、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%(それらの間の任意の範囲または値を含む)の範囲の架橋度を特徴とする。
【0109】
いくつかの実施形態において、第2および第3のポリマーの架橋度は、最大で80%、最大で60%、最大で50%、最大で40%、最大で30%、最大で20%、最大で10%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるように、架橋は、(i)第1のポリマーと、第2のポリマーおよび第3のポリマーのうちの1つとを含む組成物(例えば、繊維)を、(ii)相補的ポリマー(例えば、第2のポリマーおよび第3のポリマーそれぞれの)を含む組成物と接触させることによってその場で形成される。いくつかの実施形態において、(i)第1のポリマーと、(ii)第2のポリマーおよび第3のポリマーのうちの1つとを含む組成物(例えば、繊維)は、実質的に架橋を欠いている。
【0111】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーと第3のポリマーとの架橋度は、エレクトロスピニング等の本明細書に開示される繊維製造プロセスのいずれか1つによるポリマー繊維の形成を可能にするのに十分である。いくつかの実施形態において、第2のポリマーと第3のポリマーとの架橋度は、安定な組成物(例えば、繊維、マトリックス、または複数の繊維を含む層)を形成するのに十分である。いくつかの実施形態において、第2のポリマーと第3のポリマーとの架橋度は、本明細書に記載されるように、十分な接着強度を特徴とする組成物(例えば、繊維、マトリックス、または複数の繊維を含む層)を形成するのに十分である。
【0112】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーの組織接着性基の少なくとも一部は、生物学的表面(例えば、組織)との十分な量の結合部位(例えば、共有結合)を提供するために、未反応のままである。いくつかの実施形態において、組織接着性基の少なくとも一部は、生物学的表面への結合および/または接着を確立するために、未反応(例えば、非架橋)のままである。いくつかの実施形態において、組織接着性基の少なくとも一部は、本明細書に記載されるように、十分な接着強度を確立するために、未反応のままである。いくつかの実施形態において、組成物(例えば、繊維)内の組織接着性基の少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%が、未反応(例えば、無傷)である。
【0113】
架橋ポリマーには、非架橋ポリマーに比べていくつかの利点がある。
図7および
図8に示すように、架橋ポリマー(組成物1.2および1.4)および(組成物2、図示せず)を含むポリマー繊維は、非架橋ポリマー(組成物1.1、対照1.1)を含むポリマー繊維と比較して最も高い接着強度を示した。いずれか特定の機構または理論によって制限されることなく、強化された接着強度は、架橋ポリマーのメッシュ様構造、および任意選択的に、ポリマー繊維の外層に接触する組織に対する組織接着性基の有益な配向に関連し得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、架橋ポリマー(例えば、部分的に架橋されたポリマー)は、生物学的表面と接触すると、追加の架橋を受ける。いくつかの実施形態において、架橋ポリマーは、生物学的表面と接触するとさらにゲルを形成する。いくつかの実施形態において、ゲル形成はさらに、架橋ポリマーを含むマトリックスの強化された接着強度に起因する。いくつかの実施形態において、架橋ポリマーは、非架橋ポリマーの引張強度および接着強度よりも高い引張強度および接着強度を特徴とする。
【0115】
いくつかの実施形態において、組成物内の第2のポリマーに対する第3のポリマーの重量当たりの重量(w/w)比は、10:1~1:10、10:1~8:1、8:1~6:1、6:1~4:1、4:1~2:1、2:1~1:1、1:1~1:1.5、1:1.5~1:2、1:2~1:2.5、1:2.5~1:3、1:3~1:5、1:1~1:5、1:1~1:4、1:1~1:3、1:1~1:2、1:5~1:7、1:7~1:10(それらの間の任意の範囲または値を含む)の範囲である。
【0116】
いくつかの実施形態において、組成物内の第3のポリマーに対する第2のポリマーの重量当たりの重量(w/w)比は、0.8:1~1:10、0.8:1~1:1、1:1~1:1.5、1:1.5~1:2、1:2~1:2.5、1:2.5~1:3、1:3~1:5、1:1~1:5、1:1~1:4、1:1~1:3、1:1~1:2、1:5~1:7、1:7~1:10(それらの間の任意の範囲または値を含む)の範囲である。
【0117】
いくつかの実施形態において、組成物内の第2のポリマーに対する第3のポリマーのw/w比は、1:1~1:2、1:1~1:1.2、1:1.2~1:1.5、1:1.5~1:1.7、1:1.7~1:2、1:2~1:3、1:3~1:5、1:5~1:10(それらの間の任意の範囲または値を含む)の範囲である。
【0118】
いくつかの実施形態において、十分な接着強度および/または十分な機械的特性を特徴とする組成物は、1:1~1:2、1:1~1:1.2、1:1.2~1:1.5、1:1.5~1:1.7、1:1.7~1:2(それらの間の任意の範囲または値を含む)の第2のポリマー(例えば、PEG-NHS)に対する第3のポリマー(例えば、PEG-SHおよび/またはPEG-NH2)のw/w比を含む。いくつかの実施形態において、十分な接着強度および/または機械的特性は、本明細書に記載される通りである。
【0119】
いくつかの実施形態において、1.1Nを超える接着強度を特徴とする組成物は、1:1~1:2の第2のポリマー(例えば、PEG-NHS)に対する第3のポリマー(例えば、PEG-SHおよび/またはPEG-NH2)のw/w比を含む。
【0120】
いくつかの実施形態において、組成物内の第2のポリマーに対する第3のポリマーのモル比は、0.8:1~1:10、0.8:1~1:1、1:1~1:1.5、1:1.5~1:2、1:2~1:2.5、1:2.5~1:3、1:3~1:5、1:1~1:5、1:1~1:4、1:1~1:3、1:1~1:2、1:5~1:7、1:7~1:10(それらの間の任意の範囲または値を含む)の範囲である。いくつかの実施形態において、組成物内の第2のポリマーに対する第3のポリマーのモル比は、1:1~1:2である。いくつかの実施形態において、1.1Nを超える接着強度を特徴とする組成物は、1:1~1:2、1:2~1:3、1:3~1:5、1:5~1:10(それらの間の任意の範囲または値を含む)の第2のポリマー(例えば、PEG-NHS)に対する第3のポリマー(例えば、PEG-SHおよび/またはPEG-NH2)のモル比を含む。
【0121】
第2のポリマーに対する第3のポリマーのモル比は、第3のポリマーの反応性基よりもモル過剰の組織接着性基を保証するように維持されることに留意されたい。いくつかの実施形態において、モル過剰は、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも70モル%、少なくとも90モル%、少なくとも100モル%、少なくとも150モル%、少なくとも200モル%、少なくとも300モル%、少なくとも400モル%、少なくとも500モル%((それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0122】
組織接着性基の少なくとも一部が未反応であることを確実にし、したがって第2のポリマーの組織接着特性を保持することを可能にするために、そのようなモル過剰が必要である。本発明者らによって得られた実験データによれば、PEG-NHSとPEG-SHのw/w比が2:1のPEG-NHSおよびPEG-SHで構成されるポリマー繊維を含む組成物は、PEG-NHSとPEG-SHのw/w比が1:1のPEG-NHSとPEG-SHで構成されるポリマー繊維に比べて好ましい接着強度および安定性を示した。
【0123】
いくつかの実施形態において、組成物内の第2のポリマーに対する第1のポリマーのw/w比は、1:1~20:1、1:1~3:1、3:1~5:1、5:1~8:1、8:1~10:1、10:1~15:1、15:1~20:1の範囲、またはそれらの間の任意の範囲である。
【0124】
いくつかの実施形態において、組成物内の第2のポリマーおよび第3のポリマーの合計w/w含有量は、20~60%、20~30%、30~40%、40~50%、30~55%、50~60%、50~55%、55~60%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0125】
いくつかの実施形態において、組成物内の第2のポリマー(例えば、ポリエーテル-NHS)および第3のポリマー(例えば、ポリエーテル-SH、ポリエーテル-NH2、またはそれらの両方)の合計w/w含有量は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0126】
いくつかの実施形態において、上記のように、第2のポリマーおよび第3のポリマーの合計w/w含有量を含む組成物(例えば、繊維の形態)は、生物学的表面への結合および/または接着を確立するための適切な接着強度を特徴とする。
【0127】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーおよび第3のポリマーの合計w/w含有量が20~70%、30~50%、40~50%である組成物(例えば、繊維の形態の本発明の組成物)は、生物学的表面への結合および/または接着を確立するために、十分な接着強度(例えば、1.1N超)を特徴とし、接着強度は、本明細書に記載される通りである。
【0128】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーおよび第3のポリマーの合計w/w含有量が20~60%である組成物(例えば繊維の形態)は、少なくとも1N、少なくとも1.1N、少なくとも1.2N、少なくとも1.3N、少なくとも1.4N、少なくとも1.5N、少なくとも1.6N、少なくとも1.7N、少なくとも1.8N、少なくとも1.9N、少なくとも2N、少なくとも2.2N、少なくとも2.4N、少なくとも2.5N、少なくとも2.8N、少なくとも3N、少なくとも3.2N、少なくとも4N(それらの間の任意の範囲または値を含む)の接着強度を特徴とし、接着強度は本明細書に記載される通りである。
【0129】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に例示されるように、対照(例えば、市販の製品)と比較して、0.3MPa超、0.5MPa超、0.7MPa超、0.9MPa超、1MPa超、1.5MPa超、2MPa超、2.5MPa超、3MPa超、3.5MPa超、4MPa超(それらの間の任意の範囲または値を含む)の強化された機械的強度(例えば、引張強度)を特徴とする。
【0130】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーおよび第3のポリマーの合計w/w含有量が20~60%、30~50%、40~50%である組成物(例えば、繊維の形態)は、本明細書に例示されるように、対照(例えば、市販の製品)と比較して、0.3MPa超、0.5MPa超、0.7MPa超、0.9MPa超、1MPa超、1.5MPa超、2MPa超、2.5MPa超、3MPa超、3.5MPa超、4MPa超(それらの間の任意の範囲または値を含む)の強化された機械的強度(例えば、引張強度)を特徴とする。
【0131】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は固体である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、固体組成物)は、実質的に溶媒を欠いている。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、微量の残留溶媒を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、固体組成物)は、5%w/w未満、3%w/w未満、2%w/w未満、1%w/w未満、0.5%w/w未満、0.1%w/w未満、0.05%w/w未満、0.01%未満の有機溶媒を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は繊維の形態である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、(本明細書に記載されるように)複数の繊維を含むマトリックスの形態である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、繊維状マットの形態である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、半固体または半液体の形態である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ゲルの形態である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、液体または半液体)は、実質的に均質である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は実質的に安定であり、安定性とは、組成物がその構造的および/または機能的特性(機械的特性、接着性等)を維持する能力を指す。
【0132】
「半液体」または「半固体」という用語は、圧力および/または剪断力の下で流動性である材料を意味することを意図していることを理解されたい。いくつかの実施形態において、半液体組成物は、クリーム、軟膏、ゲル様材料および他の同様の材料を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、31,000~800,000cpsの範囲の粘度を特徴とする半液体組成物である。
【0133】
いくつかの実施形態において、組成物は溶媒をさらに含む。いくつかの実施形態において、溶媒は有機溶媒である。いくつかの実施形態において、溶媒は水性溶媒である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は液体組成物である。いくつかの実施形態において、組成物または液体組成物は、溶媒および繊維を含み、繊維は本明細書に記載される通りである。いくつかの実施形態において、溶媒および繊維を含む組成物は、半固体組成物、または半液体組成物(例えば、ゲル)である。いくつかの実施形態において、組成物内の溶媒のw/w濃度は、5~95%、5~10%、10~20%、20~30%、30~50%、50~70%、70~95%。(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0134】
有機溶媒の非限定的な例として、アルコール(例えば、メタノール、エタノール)、アルカン(例えば、ヘキサン)等の炭化水素、アルケンおよびアルキン、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、エステル、ケトン、油、極性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)、および非極性溶媒(例えば、クロロホルム)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
いくつかの実施形態において、組成物は複数の溶媒を含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、組成物は、ブレンドポリマー繊維(「ポリマー繊維」とも称される)の形態で、第1のポリマーと、(i)第2のポリマーおよび(ii)第3のポリマーのうちの少なくとも1つとを含む。いくつかの実施形態において、ポリマー繊維は、本明細書に記載されるように、第1のポリマー、第2のポリマー、および第3のポリマーを含む。
【0137】
いくつかの実施形態において、ポリマー繊維の少なくとも20重量パーセント(乾燥重量による)は、本発明の1つまたは複数のポリマーからなる。いくつかの実施形態において、ポリマー繊維の少なくとも30重量パーセント(乾燥重量による)は、本発明の1つまたは複数のポリマーからなる。いくつかの実施形態において、ポリマー繊維の少なくとも40重量パーセント(乾燥重量による)は、本発明の1つまたは複数のポリマーからなる。いくつかの実施形態において、ポリマー繊維の少なくとも50重量パーセント(乾燥重量による)は、本発明の1つまたは複数のポリマーからなる。いくつかの実施形態において、ポリマー繊維の少なくとも60重量パーセント(乾燥重量による)は、本発明の1つまたは複数のポリマーからなる。いくつかの実施形態において、ポリマー繊維の少なくとも70重量パーセント(乾燥重量による)は、本発明の1つまたは複数のポリマーからなる。いくつかの実施形態において、ポリマー繊維の少なくとも80重量パーセント(乾燥重量による)は、本発明の1つまたは複数のポリマーからなる。いくつかの実施形態において、ポリマー繊維の少なくとも90重量パーセント(乾燥重量による)は、本発明の1つまたは複数のポリマーからなる。
【0138】
本明細書で使用される「繊維」という用語は、連続フィラメントおよび/または個別の細長い小片でできた、一本の糸に類似したあるクラスの構造要素を説明する。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、ポリマー繊維の安定性を提供するまたは強化する。いくつかの実施形態において、第1のポリマーと、(i)第2のポリマーおよび(ii)第3のポリマーのうちの少なくとも1つとを含むポリマー繊維は、第1のポリマーを実質的に欠いている繊維と比較して強化された安定性を有する。いくつかの実施形態において、繊維が実質的にその構造を維持する場合、ポリマー繊維は安定であると称される。いくつかの実施形態において、実質的に維持することは、少なくとも1日(d)、少なくとも10d、少なくとも20d、少なくとも30d、少なくとも50d、少なくとも100d、少なくとも200d、少なくとも300d、少なくとも1年(y)、少なくとも2y、少なくとも3y(それらの間の任意の範囲または値を含む)の期間にわたる。いくつかの実施形態において、繊維は、生理学的条件下で構造的に無傷のままである(例えば、インビボで分解されず、したがって非生分解性または非生分解性である)場合、安定であると称される。いくつかの実施形態において、繊維は、周囲条件下(例えば、10~60℃の温度および10~99%の水分含有量(それらの間の任意の値を含む))で構造的に無傷のままである場合、安定であると称される。
【0139】
いくつかの実施形態において、ポリマー繊維は、追加の生分解性ポリマーをさらに含む。
【0140】
いくつかの実施形態において、ポリマー繊維は生分解性である。いくつかの実施形態において、ポリマー繊維は、0.5~10um、0.5~1.5um、1~4um、2~4um、4~5um、5~6um、6~7um、7~8um、8~10umの範囲、またはそれらの間の任意の範囲の平均繊維径を特徴とする。
【0141】
いくつかの実施形態において、ポリマー繊維は、50~150℃、50~70℃、70~100℃、100~120℃、120~150℃の融点を特徴とする。
【0142】
本明細書で使用される場合、融点またはガラス転移温度は、好ましくは、示差走査熱量測定に従って、そのような目的のために当技術分野で受け入れられている手順を使用し、毎分10℃の冷却および加熱速度を使用して決定される。ガラス転移は通常、温度の関数としての熱容量のプロットで、2本の線形領域間の交差として現れる。
【0143】
いくつかの実施形態において、ポリマー繊維は織布または不織布である。繊維を紡糸するための多くの好適な技術が当業者に既知であろう。
【0144】
いくつかの実施形態において、ポリマー繊維は不織布である。
【0145】
いくつかの実施形態において、ポリマー繊維はエレクトロスピニングされる。
【0146】
いずれか特定の理論に拘束されることなく、エレクトロスピニングされた繊維、および構造的に類似した繊維は、本明細書において後に記載するような組織接着性層を形成するのに特に適していると考えられる。特に、エレクトロスピニングされた繊維の層は、多種多様な材料から調製することができ、孔径、繊維サイズ、繊維配列、疎水性、弾性、および機械的強度の制御を可能にする。
【0147】
いくつかの実施形態において、ポリマー繊維(例えば、本発明の繊維)は、添加剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、組成物(例えば、本発明の組成物)は、添加剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、組成物(例えば、液体組成物および/または半液体組成物)は、添加剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物内の添加剤のw/w濃度は、5~95%、5~10%、10~20%、20~30%、30~50%、50~70%、70~95%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0148】
添加剤の例として、限定されないが、接着性材料、非接着性材料(例えば、組織および/または他の基質への特に低い付着性を特徴とする材料)、疎水性ポリマー粒子、生物学的および/または生物活性材料、細胞成分(例えば、細胞シグナル伝達タンパク質、細胞外マトリックスタンパク質、細胞接着タンパク質、成長因子、プロテインA、プロテアーゼおよびプロテアーゼ基質)、成長因子ならびに治療活性剤が挙げられる。
【0149】
ポリマー繊維および/または本発明の組成物(例えば、液体または半液体組成物)に有益に組み込むことができる他の添加剤(例えば、治療活性剤)は、天然および/または合成ポリマー(マクロ生体分子、例えば、タンパク質、酵素)ならびに非ポリマー性の(小分子治療薬)天然または合成薬剤を含む。
【0150】
好適な治療活性剤の例として、限定されないが、抗増殖剤、細胞毒性因子、または細胞周期阻害剤(p53等のCD阻害剤、チミジンキナーゼ(「TK」)および細胞増殖を妨害するのに有用な他の薬剤を含む)が挙げられる。
【0151】
抗癌治療を目的とした薬物溶出システムにおいて特に有用な、細胞増殖および/または血管新生を阻害する治療活性剤(抗増殖薬)の例として、パクリタキセル、シロリムス(ラパマイシン)、ファルネシルチオサリチル酸(FTS、サリラシブ)、フルオロFTS、エベロリムス、ゾタロリムス、ダウノルビシン、ドキソルビシン、N-(5,5-ジアセトキシペンチル)ドキソルビシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、マイトマイシンA、9-アミノカンプトテシン、アミノペルチン、アンチノマイシン、N8-アセチルスペルミジン、1-(2-クロロエチル)-1,2-ジメタンスルホニルヒドラジン、ブレオマイシン、タリソムチン(tallysomucin)、エトポシド、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エスペラマイシン、1,8-ジヒドロキシ-ビシクロ[7.3.1]トリデカ-4-エン-2,6-ジイン-13-オン、アンギジン、モルホリノ-ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
【0152】
ポリマー繊維および/または本発明の組成物(例えば、液体または半液体組成物)に有益に組み込むことができる追加の治療活性剤は抗生物質を含む。好適な抗生物質の非限定的な例として、ゲンタマイシン、セフタジジム、マフェニド過酸化ベンゾイル、オクトピロックス、エリスロマイシン、亜鉛、銀、テトラサイクリン、トリクロサン、アゼラ酸およびその誘導体、フェノキシエタノールおよびフェノキシプロパノール、酢酸エチル、クリンダマイシンおよびメクロサイクリン、フラボノイド等のセボスタット、αおよびβヒドロキシ酸、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドおよび胆汁酸塩、例えば、硫酸シムノールおよびその誘導体、デオキシコール酸ならびにコール酸が挙げられる。
【0153】
ポリマー繊維および/または本発明の組成物(例えば、液体または半液体組成物)に有益に組み込むことができる追加の治療活性剤は、鎮痛剤、麻酔剤、痛み止め剤、疼痛軽減剤等(NSAID、COX-2阻害剤、K+チャネルオープナー、アヘン剤およびモルフィノミメティックを含む)、ならびに止血剤および抗出血剤を含む。
【0154】
マトリックス
いくつかの実施形態において、組織接着性層を含むマトリックスが本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、組織接着性層は、複数のブレンドポリマー繊維を含み、ブレンドポリマー繊維は、本明細書に上記した通りである。
【0155】
いくつかの実施形態において、組織接着性層は、マトリックスに生体接着特性を提供する。いくつかの実施形態において、組織接着性層は、組織と共有結合または非共有相互作用を形成し、マトリックスの組織接着をもたらす。
【0156】
いくつかの実施形態において、組織接着性層の生体接着特性は、水和時に、例えば、湿った組織との接触時に強化される。
【0157】
いくつかの実施形態において、組織接着性層は、細胞の付着および/または増殖を促進する。
【0158】
本明細書で使用される場合、「マトリックス」という用語は、ポリマー繊維の1つまたは複数の層を指す。マトリックスは、層内に組み込まれた、および/または層の間に挿入された任意の材料をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、「マトリックス」および「組織接着性層」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0159】
いくつかの実施形態において、マトリックスは、組織接着性層および追加の層を含む多層マトリックスである。
【0160】
いくつかの実施形態において、追加の層は、弾性層または粘弾性層である。いくつかの実施形態において、追加の層は、組織接着性層の安定性を強化する。いくつかの実施形態において、安定性は本明細書に記載される通りである。いくつかの実施形態において、追加の層は、組織接着性層の機械的強度を強化する。いくつかの実施形態において、追加の層は、マトリックスの少なくとも1つの機械的特性を強化する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの機械的特性は、特定のパーセンテージの伸びでのヤング率、引張強度、破壊ひずみ、降伏点、靭性、破壊までの仕事量、衝撃強度、引裂強度、曲げ弾性率、曲げひずみ、および応力、ならびに摩耗からなる群から選択される。
【0161】
いくつかの実施形態において、追加の層は、組織接着性層に付着しているか、または2つの組織接着性層の間に挿入される。
【0162】
本明細書で使用される場合、「弾性層」という用語は、層が弾性を示す材料の層を指す。本明細書において、「弾性」および「弾性のある」という用語は、本明細書に上記した通りである。
【0163】
本明細書で使用される場合、「粘弾性層」という用語は、層が粘弾性を示す材料の層を指す。
【0164】
この項に記載される実施形態のいずれか1つによる弾性層は、本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれか1つによる粘弾性ポリマー材料および/または粘弾性層と組み合わせることができる。
【0165】
本明細書で使用される場合、「多層」という用語は、少なくとも2つの別個の層の存在を指す。別個の層は、例えば、化学組成、分子形態(例えば、結晶化度の程度およびタイプ)、物理的構造および/または機械的特性において異なる場合がある。
【0166】
本明細書において後に例示するように(実施例の項)、本明細書に記載されるようなマトリックスは、密閉を形成し、組織表面を別の組織に結合し、液体の漏出を防止し、細菌およびウイルス感染を防止するのに適した、かなりの機械的強度、高い接着強度、高度の弾性および柔軟性、高い多孔性(細胞増殖および組織接着を支持し得る)、および高度の水不透過性を示しながら、生分解性および生体適合性材料から形成することができる。
【0167】
いくつかの実施形態において、組織接着性層は、0.5~200μm、0.5~1μm、1~100μm、1~5μm、5~10μm、10~20μm、20~30μm、30~50μm、50~70μm、50~100μm、70~100μm、100~150μm、150~200μm、200~250μm(それらの間の任意の範囲または値を含む)の範囲の厚さを有する。
【0168】
いくつかの実施形態において、組織接着性層は、少なくとも0.05MPa、少なくとも0.5MPa、少なくとも1MPa、少なくとも2MPa、少なくとも3MPa、少なくとも4MPa、少なくとも5MPa、少なくとも7MPa、少なくとも8MPa、少なくとも10MPaの引張強度を特徴とする。いくつかの実施形態において、組織接着性層は、0.05~1MPa、0.5~1MPa、1~2MPA、2~3MPA、3~4MPA、4~5MPa、5~7MPa、7~8MPa、8~10MPa(それらの間の任意の範囲または値を含む)の引張強度を特徴とする。いくつかの実施形態において、組織接着性層は、本明細書で例示されるような引張強度を特徴とする。
【0169】
本明細書に記載される引張特性(例えば、引張強度)は、薄いプラスチックシートの引張特性を試験するためのASTM国際規格D882-12に従って決定される。引張試験は、材料の引張ひずみ(元の長さのパーセンテージとしての引張応力による長さの増加)の関数として、試験された材料に加えられる引張応力の量を特徴づける。
【0170】
引張強度は、試験された材料に加えることができる最大応力として決定されるため、減少した応力で任意のさらなるひずみが得られるか(「ネッキング」として知られる現象)、または引張応力が材料の破裂(例えば、引き裂き、クラッキング)をもたらすために得ることができない。
【0171】
いくつかの実施形態において、組織接着性層は、10~400KPa、10~50KPa、20~50KPa、50~80KPa、80~100KPa、100~200KPa、200~300KPa、300~400KPaの範囲の接着強度を特徴とする。
【0172】
いくつかの実施形態において、組織接着性層は、0.1~2N、0.1~0.3N、0.3~0.5N、0.5~0.7N、0.7~0.9N、0.9~1.0N、1.0~1.2N、1.2~1.5N、1.5~2N(それらの間の任意の範囲または値を含む)の範囲の接着強度を特徴とする。いくつかの実施形態において、接着強度は、剥離試験によって測定された平均剥離力または最大剥離力と称され、剥離試験は本明細書に記載される通りである。
【0173】
いくつかの実施形態において、組織接着性層は、1~5N、1~1.2N、1.2~1.4N、1.4~1.6N、1.6~2N、2~2.5N、2.5~3N、3~3.5N、3.5~4N、4~5N、5~6N、6~10N(それらの間の任意の範囲または値を含む)の範囲の接着強度を特徴とする。いくつかの実施形態において、接着強度は、剪断試験に従って測定される。
【0174】
いくつかの実施形態において、組織接着性層は、少なくとも1N、少なくとも1.1N、少なくとも1.2N、少なくとも1.3N、少なくとも1.4N、少なくとも1.5N、少なくとも1.6N、少なくとも1.7N、少なくとも1.8N、少なくとも1.9N、少なくとも2N、少なくとも2.2N、少なくとも2.4N、少なくとも2.5N、少なくとも2.8N、少なくとも3N、少なくとも3.2N、少なくとも4N、少なくとも5N、少なくとも6N、少なくとも8N、少なくとも10N(それらの間の任意の範囲または値を含む)の接着強度を特徴とする。いくつかの実施形態において、接着強度は、本明細書において後に記載するように、剪断試験によって決定される。
【0175】
接着強度は、本明細書において後に記載するように、剥離試験および剪断試験の2つの異なる方法で決定される。
【0176】
いくつかの実施形態において、組織接着性層は、40mmHgの圧力で水性液体に曝露されたときに、1ml/時間/cm2未満の透水性を特徴とする。いくつかのそのような実施形態において、透水性は、0.3ml/時間/cm2未満である。いくつかの実施形態において、透水性は、0.1ml/時間/cm2未満である。いくつかの実施形態において、透水性は、0.03ml/時間/cm2未満である。いくつかの実施形態において、透水性は、0.01ml/時間/cm2未満である。
【0177】
いくつかの実施形態において、組織接着性層は、添加剤(例えば、医薬活性成分)をさらに含む。いくつかの実施形態において、添加剤は、本明細書に上記した通りである。
【0178】
いくつかの実施形態において、組織接着性層および追加の層のいずれか1つは多孔質層である。本明細書で使用される場合、「多孔質層」という用語は、(例えば、本明細書に記載されるポリマー材料に加えて)空隙を含む層を指し、例えば、ポリマー材料間の空間が、追加の物質によって埋められていない。しかしながら、多孔質層は、空隙の体積の少なくとも一部が追加の物質によって埋められない限り、ポリマー材料間の空間に追加の物質を任意に含むことができる。
【0179】
限定されないが、繊維を紡糸するための様々な技術、発泡体を形成するためのガスの使用、およびポリマーの懸濁液を乾燥(例えば、凍結乾燥)させることを含む、多孔質形態のポリマー材料を調製するための多くの好適な技術が当業者に既知であろう。
【0180】
いくつかの実施形態において、多孔質層(例えば、組織接着性層)は、少なくとも60%(例えば、60~99%)の多孔性を特徴とする。いくつかのそのような実施形態において、多孔質層は、少なくとも70%(例えば、70~99%)の多孔性を特徴とする。いくつかのそのような実施形態において、多孔質層は、少なくとも80%(例えば、80~99%)の多孔性を特徴とする。いくつかのそのような実施形態において、多孔質層は、少なくとも90%(例えば、90~99%)の多孔性を特徴とする。いくつかのそのような実施形態において、多孔質層は、約90%の多孔性を特徴とする。
【0181】
本明細書において、「多孔性」という用語は、空隙からなる物質(例えば、本明細書に記載される組織接着性層)の体積のパーセンテージを指す。
【0182】
いくつかの実施形態において、多孔質層(例えば、組織接着性層)は、0.5~100um、0.5~2um、2~4um、4~6um、6~7um、7~8um、8~10um、10~15um、15~20um、20~30um、30~40um、40~50um、50~70um、70~100umの範囲の孔径を特徴とする。
【0183】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、マトリックス)は、低い膨潤能力を特徴とする。いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、マトリックス)は、約10%の膨潤を特徴とする。本発明者らは、本発明の例示的な組成物の膨潤能力を試験した。たとえ8日後でも、Hemopatch(商標)の65%の膨潤体積と比較して、試験された組成物の膨潤体積は5%未満であった(公開されたデータによる)。いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、マトリックス)は、10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満(それらの間の任意の範囲または値を含む)の膨潤体積を特徴とする。いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、マトリックス)は、有意な吸水能力を特徴とする。いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、マトリックス)は、初期サンプル重量の5~10倍、5~6倍、6~7倍、7~8倍、8~10倍(それらの間の任意の範囲または値を含む)の吸水を特徴とする。
【0184】
本発明の例示的な組成物(例えば、マトリックス)の吸水を、市販のHemopatch(商標)と比較した。試験された本発明の組成物は、それらの初期重量の5~7倍の範囲の流体を吸収する能力を示した。吸水は、対象のインプラント部位内の体液の望ましくない漏出を吸収するために必要とされるため、インプラントにとって重要な特性である。いくつかの実施形態において、厚さが0.35mm未満である試験されたサンプルは、厚さ(2mm)の市販のHemopatch(商標)と同様の吸水能力を示した。
【0185】
キット
別の態様では、ブレンドポリマー繊維および組成物を含むキットが存在する。ブレンドポリマー繊維は、第1のポリマーおよび第2のポリマーを含み、組成物は、第2のポリマーに対して反応性を有する第3のポリマーを含み、第2のポリマーおよび第3のポリマーのいずれか1つは、組織接着性基を含む。いくつかの実施形態において、キットの第2のポリマーおよび第3のポリマーは、それぞれ、本発明の第2の分岐ポリマーまたは本発明の第3のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、キットのブレンドポリマー繊維は、本発明の第1のポリマーおよび第2の分岐ポリマーを含み、キットの組成物は、本発明の第3のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、キットのブレンドポリマー繊維は、本発明の第1のポリマーおよび第3のポリマーを含み、キットの組成物は、本発明の第2の分岐ポリマーを含む。
【0186】
いくつかの実施形態において、キットのブレンドポリマー繊維は、本発明の第2の分岐ポリマーを含み、キットの組成物は、本発明の第3のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、キットのブレンドポリマー繊維は、第3のポリマーを含み、キットの組成は、第2の分岐ポリマーを含む。
【0187】
いくつかの実施形態において、キットの組成物は、担体、添加剤、溶媒、またはそれらの任意の組み合わせを含む薬剤をさらに含み、組成物内の薬剤のw/w濃度は、5~95重量%、5~10重量%、10~20重量%、20~30重量%、30~50重量%、50~70重量%、70~95重量%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。いくつかの実施形態において、担体、添加剤、および溶媒は、本明細書に記載される通りである。
【0188】
いくつかの実施形態において、キットの組成物は液体であり、液体は本明細書に記載される通りである。いくつかの実施形態において、キットの組成物は半液体(例えば、ゲル)であり、半液体は本明細書に記載される通りである。いくつかの実施形態において、キットの組成物は固体である。いくつかの実施形態において、キットの組成物は実質的に均質である。いくつかの実施形態において、本発明(例えば、繊維および/または組成物)のキットは、実質的に安定であり、安定とは本明細書に記載される通りである。
【0189】
いくつかの実施形態において、本発明のキットの組成物は、水溶液または任意の他の薬学的に許容される溶媒を含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、アルコール(例えば、エタノール)または水溶液とアルコールの混合物である。いくつかの実施形態において、キットの組成物のポリマーは液体形態である。いくつかの実施形態において、キットの組成物のポリマーは、粘性のある液体または半液体の形態である。いくつかの実施形態において、キットの組成物のポリマーは、キットの繊維の上に適用するのに十分な粘度を有する。いくつかの実施形態において、キットの組成物のポリマーは拡散可能である。いくつかの実施形態において、キットの組成物のポリマーは、拡散、噴霧、鋳造のいずれかによって、または当技術分野で周知の他の任意の方法によって適用される。いくつかの実施形態において、キットの組成物は、溶媒および/または担体を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、キットの組成物は、本質的にポリマーからなり、ポリマーは本明細書に記載される通りである。
【0190】
いくつかの実施形態において、キットの第1のポリマーは、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアセタール、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリホスホエステル、ポリエーテル、シリコーン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(エチレングリコール)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、多糖類、またはそれらの組み合わせもしくはコポリマーを含むか、またはそれらから選択される。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、本発明の第1のポリマーである。
【0191】
いくつかの実施形態において、第2の分岐ポリマー、第3のポリマー、またはそれらの両方は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリジオキサノン、ポリホスホエステル、ポリウレタン、およびポリアミド、またはそれらの任意の組み合わせを含むか、またはそれらから選択される。
【0192】
いくつかの実施形態において、キットの第2のポリマー(例えば、第2の分岐ポリマーまたは第3のポリマー)は、少なくとも10kDa、少なくとも20kDa、少なくとも15kDa、少なくとも30kDa、少なくとも40kDa(それらの間の任意の範囲または値を含む)の平均分子量(MW)を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも10kDaのMWを有するキットの第2のポリマーを含むブレンドポリマー繊維は、低MWを有するキットの第2のポリマーを含むブレンドポリマー繊維と比較して、強化された機械的特性を特徴とする。いくつかの実施形態において、低MWは、1~5kDa、1~2kDa、2~3kDa、3~5kDa、5~7kDa(それらの間の任意の範囲を含む)である。
【0193】
いくつかの実施形態において、キットのブレンドポリマー繊維内の第2のポリマーのw/w含有量は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0194】
いくつかの実施形態において、キットのブレンドポリマー繊維内の第1のポリマーのw/w含有量は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0195】
いくつかの実施形態において、キット内の第3のポリマーのw/w含有量は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0196】
いくつかの実施形態において、キットの第2のポリマー、キットの第3のポリマー、またはそれらの両方は、ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態において、キットの第2のポリマー、キットの第3のポリマー、またはそれらの両方は、ポリエチレングリコールを含み、第1のポリマーは、ポリ乳酸、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリグリコール酸、ポリ(L-グリコール酸)、ポリ(D-グリコール酸)、ナイロンおよびポリカプロラクトン、またはそれらの任意の組み合わせもしくはコポリマーからなる群から選択される。
【0197】
いくつかの実施形態において、キットの第2のポリマーまたはキットの第3のポリマーは、求核基を含む。いくつかの実施形態において、求核基は、本明細書に記載される通りである。
【0198】
いくつかの実施形態において、キット内の第2のポリマーに対する第1のポリマーの重量比は、1:1~20:1、1:1~20:1、1:1~3:1、3:1~5:1、5:1~8:1、8:1~10:1、10:1~15:1、15:1~20:1の範囲、またはそれらの間の任意の範囲である。
【0199】
いくつかの実施形態において、キット内の第3のポリマーに対する第2のポリマーのモル比は、1:0.8~1:20、1:0.8~1:1、0.8:1~1:1、1:1~1:1.5、1:1.5~1:2、1:2~1:2.5、1:2.5~1:3、1:3~1:5、1:1~1:5、1:1~1:4、1:1~1:3、1:1~1:2、1:5~1:7、1:7~1:10、1:10~1:15、1:15~1:20(それらの間の任意の範囲または値を含む)であり、第2の分岐ポリマーは求核基を含み、第3のポリマーは組織接着性基を含む。
【0200】
いくつかの実施形態において、キット内の第2のポリマーに対する第3のポリマーの重量比は、1:1~1:10、1:1~1:1.5、1:1.5~1:2、1:2~1:2.5、1:2.5~1:3、1:3~1:5、1:1~1:5、1:1~1:4、1:1~1:3、1:1~1:2、1:5~1:7、1:7~1:10(それらの間の任意の範囲または値を含む)の範囲である。いくつかの実施形態において、キット内の第2のポリマー(例えば、アミノ化ポリエーテル、またはチオール化ポリエーテル等の求核基含有ポリマー)に対する第3のポリマー(例えば、ポリエーテル-NHS等の組織接着性基含有ポリマー)の重量比は、1:1~1:1.5、1:1.5~1:2、1:2~1:2.5、1:2.5~1:3(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0201】
いくつかの実施形態において、キット内の第3のポリマー(例えば、ポリエーテル-NHS)に対する第2のポリマー(例えば、アミン化ポリエーテル、またはチオール化ポリエーテル)のモル比は、1:1~1:20、1:1~1:2、1:5~1:7、1:7~1:10、1:10~1:15、1:15~1:20(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0202】
いくつかの実施形態において、キット内の第2のポリマー(例えば、ポリエーテル-NHS)に対する第3のポリマー(例えば、アミン化ポリエーテル、またはチオール化ポリエーテル)のモル比は、1:1~1:20、1:1~1:2、1:5~1:7、1:7~1:10、1:10~1:15、1:15~1:20(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0203】
いくつかの実施形態において、組織接着性基を含むポリマーは、本発明のキット内に、および/または反応性基を含むポリマー(例えば求核剤)に対してモル過剰で本発明の組成物内に存在する。
【0204】
いくつかの実施形態において、追加の構成成分と接触しているブレンドポリマー繊維は、組織接着性層をもたらす。いくつかの実施形態において、組織接着性層は、上記の通りである。いくつかの実施形態において、組織接着性層は、第3のポリマーと少なくとも部分的に架橋された第2の分岐ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、組織接着性層は、第3のポリマーと少なくとも部分的に架橋されたブレンドポリマー繊維を含む。いくつかの実施形態において、架橋は、本明細書に記載される通りである。いくつかの実施形態において、架橋は、組織接着性基と反応性基(例えば、求核基)とを反応させることによるものである。いくつかの実施形態において、キットは、組織接着性層(例えば、架橋組織接着性マトリックス)を形成するためにアミノ化分岐ポリマーを利用するためのものであり、組織接着性層は、本明細書に記載される通りである。いくつかの実施形態において、アミノ化分岐ポリマーは、PEG-NH2等のアミノ化ポリエーテルを含む。
【0205】
いくつかの実施形態において、キットの組成物の第3のポリマー(例えば、本発明の第2の分岐ポリマーまたは第3のポリマー)は、10kDa未満、8kDa未満、7kDa未満、6kDa未満、5kDa未満、3kDa未満、2kDa未満のMWを有する。いくつかの実施形態において、10kDa未満、8kDa未満、7kDa未満、6kDa未満、5kDa未満、3kDa未満、2kDa未満のMWを有する第3のポリマー(例えば、本発明の第2の分岐ポリマーまたは第3のポリマー)を含むキットの組成物は、10kDaを超えるMWを有する第3のポリマーを含む組成物と比較して強化された接着強度を特徴とする組織接着性層をもたらす。
【0206】
いくつかの実施形態において、1.1Nを超える接着強度を特徴とする組織接着性層は、キットの組成物をキットのブレンドポリマー繊維と接触させることによって形成され、キットの第3のポリマー(例えば、PEG-NHS)に対する第2のポリマー(例えば、PEG-SH、および/またはPEG-NH2)のモル比は、は、1:1~1:20、1:1~1:2、1:5~1:7、1:7~1:10、1:10~1:15、1:15~1:20(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0207】
いくつかの実施形態において、キットの第3のポリマー(例えば、PEG-NHS)に対する第2のポリマー(例えば、PEG-SH、および/またはPEG-NH2)のw/w比は、10:1~1:1、10:1~8:1、8:1~6:1、6:1~4:1、4:1~3:1、3:1~2:1、2:1~1:1(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0208】
いくつかの実施形態において、本発明のキットは、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーから本質的になる。いくつかの実施形態において、(i)第1のポリマー、ならびに(ii)第2の分岐ポリマーおよび第3のポリマーのいずれかは、キットのブレンドポリマー繊維の少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.9重量%を構成する。いくつかの実施形態において、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーは、キットのポリマー含有量および/または本発明の組成物の少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.9重量%を構成する。
【0209】
使用
いくつかの実施形態において、マトリックスは医療機器である。いくつかの実施形態において、医療機器は、移植可能な医療機器である。
【0210】
いくつかの実施形態において、医療機器は、一般外科、神経内科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、婦人科/産科、胸腔、歯科/顎顔面、胃腸病学、形成外科、眼科、心臓血管および/または整形外科医学の分野で使用するためのものである。
【0211】
いくつかの実施形態において、本明細書に上記したマトリックスは、少なくとも1つの生物学的表面を接着または密封するためのものである。いくつかの実施形態において、本明細書に上記したマトリックスは、生物学的表面の生体接着または密封を促進または増加するためのものである。いくつかの実施形態において、本明細書に上記したマトリックスは、血液凝固を必要とする対象において血液凝固を促進または増加させるためのものである。
【0212】
いくつかの実施形態において、マトリックスは、生物学的表面の修復および/または置換に使用するためのものである。
【0213】
本明細書で使用される場合、「生物学的表面」という用語は、細胞および/または生体分子(例えば、タンパク質、多糖類、脂質、核酸)を含む任意の表面を指す。「生物学的表面」の非限定的な例として、組織表面、合成移植片表面、および器官表面が挙げられるが、これらに限定されない。
【0214】
いくつかの実施形態において、修復および/または置換される生物学的表面は、軟組織である。いくつかの実施形態において、修復および/または置換される生物学的表面は、結合組織である。いくつかの実施形態において、修復および/または置換される生物学的表面は、膜である(例えば、外傷、ヘルニア、および/または膜の外科的切開後)。いくつかの実施形態において、修復および/または置換される膜は、硬膜である(例えば、外傷および/または硬膜の外科的切開後)。
【0215】
いくつかの実施形態において、マトリックスは、生物学的表面への結合形成に使用するためのものであり、生物学的表面は、それを必要とする対象の組織表面、合成移植片表面、および器官表面からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、マトリックスは、組織表面を別の組織に結合すること、および組織表面を密封することを必要とする対象において、それを行う際に使用するためのものである。いくつかの実施形態において、マトリックスは、創傷治癒を促進/強化することを必要とする対象において、それを行う際に使用するためのものである。いくつかの実施形態において、マトリックスは、創傷閉鎖を必要とする対象において、それを行う際に使用するためのものである。いくつかの実施形態において、マトリックスは、血管等の結合された管状構造を密封することを必要とする対象において、それを行う際に使用するためのものである。いくつかの実施形態において、マトリックスは、肺における空気の漏出を密封することを必要とする対象において、それを行う際に使用するためのものである。
【0216】
本発明によるマトリックスは、体の内面および外面の両方への適用に適しており、すなわち、それらは、体の外面(例えば皮膚)に、または従来の低侵襲手術を含む外科手技中に露出された内臓の表面等の内面に、局所的に適用され得る。いくつかの実施形態において、マトリックスは、体内の外科的切開閉鎖を維持するのに適している。いくつかの実施形態において、マトリックスは、以下の領域における外科的用途に適している:胸腔および心臓血管、一般外科、泌尿器科、神経外科。いくつかの実施形態において、マトリックスは、例えば、肝胆道および膵臓の手術後の、術中および術後の出血および体液の漏出を防止または制限するのに適している。いくつかの実施形態において、マトリックスは、組織修復、組織密封または他の治療を必要とする部位に適用することができる。さらに、本発明に記載される材料は、コーティング、すなわち、表面上に層を形成しながら表面に接着することができる材料としても使用することができる。
【0217】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物またはキットは、組織への薬物または他の治療用物質の局所送達のために使用され得る。
【0218】
「接着剤」という用語は、表面に接着することができる材料を説明するために本明細書で使用されることに留意されたい。「シーラント」という用語は、表面、特に内部組織または器官から、ならびに合成移植片および/またはインプラントからの流体(血液または他の生物学的流体等)の漏出を防止するために表面に接着することができる材料として定義される。シーラントは、自己接着可能な材料とも称される。
【0219】
マトリックスを使用できる治療の他の非限定的な例として、限定されないが、硬膜修復、ヘルニア修復、別の医療用インプラントの指示(乳房再建手術等)、吻合の封鎖、組織間の術後癒着の抑制および止血の促進(例えば、マトリックスがトロンビンおよび/もしくはフィブリノーゲンおよび/もしくはフィブリンでコーティングされているか、または担体ポリマーが止血を機械的に促進する材料で構成されている場合)、ならびに治療的に有効な薬剤の投与(例えば、追加の成分の包含に関連する本明細書に記載される実施形態のいずれかによる、コアマトリックス内および/またはコアマトリックス上に治療的に有効な薬剤を組み込むことによる)が挙げられる。
【0220】
別の実施形態において、本発明は、標的部位における線維症、瘢痕化および/または癒着を防止、阻害または軽減するための方法を提供し、この方法は、(a)本発明の組成物を提供するステップと、(b)組成物を標的部位に適用し、それにより、その場で、標的部位に接着する接着バリアを形成し、それにより、外傷を受けた組織の線維症、瘢痕化および/または癒着を防止、阻害または軽減するステップとを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(b)は、(例えば、本発明の第2の分岐ポリマーと第3のポリマーとの間で)架橋を開始して、本発明の接着バリアまたはマトリックスを形成する。
【0221】
別の実施形態において、本発明は、標的部位における線維症、瘢痕化および/または癒着を防止、阻害または軽減するための方法を提供し、この方法は、(a)キットのブレンドポリマー繊維を提供するステップと、(b)ブレンドポリマー繊維を標的部位に適用するステップと、(c)ブレンドポリマー繊維の上にキットの組成物を適用し、それにより、その場で標的部位に接着する接着バリアを形成し、それにより、外傷を受けた組織の線維症、瘢痕化および/または癒着を防止、阻害または軽減するステップとを含む。
【0222】
別の実施形態において、本発明の方法は、外傷組織に複合材料を適用する前に複合材料を形成するために、ブレンドポリマー繊維とキットの組成物とを混合するステップをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、混合ステップは、(例えば、第2の分岐ポリマーと第3のポリマーとの間で)架橋を開始して、本発明の接着バリアまたはマトリックスを形成する。
【0223】
いくつかの実施形態において、標的部位は手術部位である。いくつかの実施形態において、標的部位は術後の手術部位である。いくつかの実施形態において、標的部位は生物学的表面である。いくつかの実施形態において、線維症、瘢痕化および/または癒着は、外科手技に起因する。いくつかの実施形態において、線維症、瘢痕化および/または癒着は、鈍的外傷または骨折に起因する。
【0224】
癒着は、腹部、婦人科、心臓胸部、脊髄、形成外科、血管、ENT、眼科、泌尿器科、神経、または整形外科の手術を含む、開放的または低侵襲性の外科手技に続くことが多い治癒過程の結果として体内に形成され得る瘢痕組織の異常な線維性バンドとして当技術分野で知られている。癒着は通常、体内の隣接する損傷領域の間に形成される結合組織構造である。簡単に言えば、局所的な損傷領域が治癒反応を引き起こし、それが治癒および瘢痕組織形成に至る。瘢痕化が線維性組織バンドの形成または隣接する解剖学的構造(通常は分離しているべきである)の付着をもたらす場合、癒着形成が起こったと言われる。
【0225】
術後癒着は、切開、焼灼、縫合、または他の機械的外傷手段に続いて、損傷または外傷を受けた組織表面が融合して瘢痕組織を形成する場合に生じる結果である。癒着は、鈍的外傷を受けた領域、または骨折周辺組織でも発生する可能性がある。外傷を受けた領域での癒着形成の機構は、組織滲出液の分泌に基づいており、これが次に線維芽細胞の増殖を誘発し、その結果、コラーゲン性癒着が形成される。これらの癒着は組織を傷つけ、機能不全の軟組織につながる。
【0226】
癒着の形成は、任意の手術または外傷の後に発生する可能性があり、かなりの疾病率の原因となる。例えば、術後の腹腔内および骨盤の癒着は、不妊症、慢性的な骨盤痛、および腸閉塞の主な原因である。組織に形成される癒着はまた、周囲の神経を刺激し、神経伝達を妨害し、感覚または運動機能の有意な低下をもたらす可能性がある。
【0227】
いくつかの実施形態において、癒着の軽減は、癒着形成の軽減を含み、癒着の徴候または症状の完全な緩和を必要とせず、また治癒を必要としない。様々な実施形態において、癒着形成の軽減は、例えば、癒着形成におけるまたは対照と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%またはそれ以上の減少による癒着形成のわずかな減少までも含む。
【0228】
「癒着の軽減」は、本明細書に開示される第1および第2の組成物を投与しない場合に起こるであろう癒着の数、程度、および/または重症度と比較して、癒着の数、癒着の程度(例えば、面積)、および/または癒着の重症度(例えば、厚さ、または機械的もしくは化学的崩壊)の数の減少を引き起こすために、本明細書に開示される第1および第2の組成物を投与することを指す。様々な実施形態において、癒着の軽減は、プロトコルの一部であり得、そしてまた、手技(例えば、癒着を軽減するための後続する手術)を実行することを含み得る。組成物または手技は、癒着促進刺激後の癒着の形成または成長を阻害し得、癒着の進行を阻害し得、かつ/またはそれらの自然退縮後または機械的もしくは化学的破損後の癒着の再発を阻害し得る。
【0229】
本明細書で使用される場合、その任意の文法的形態における「軽減する」という用語は、1つまたは複数の値またはパラメータの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、100%、200%、500%、1000%、またはそれ以上(それらの間の任意の範囲を含む)の減少を含む。
【0230】
本明細書で使用される場合、その任意の文法的形態における「強化する」という用語または「増加する」という用語は、1つまたは複数の値またはパラメータの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、100%、200%、500%、1000%、またはそれ以上(それらの間の任意の範囲を含む)の強化を含む。
【0231】
「癒着の防止」は、特定の傷害、刺激、または状態に応答して癒着が形成される可能性を低減するために、癒着の形成の前に第1および第2の組成物を投与することを指す。様々な実施形態において、癒着の防止は、プロトコルの一部であり得、そしてまた、手技(例えば、癒着を軽減するための手術)を実行することを含み得る。「癒着の防止」は、癒着形成の可能性がゼロに減少することを必要としないことが理解されよう。代わりに、「癒着の防止」は、特定の傷害または刺激後の癒着形成の可能性における臨床的に有意な減少、例えば、特定の傷害、状態、または刺激に応答する癒着の発生率または数の臨床的に有意な減少を指す。
【0232】
様々な実施形態において、癒着バリアは、癒着を軽減、防止または阻害するために、術前、術中、または術後に標的組織部位に投与または適用することができる癒着バリアとして機能することができる。いくつかの実施形態において、癒着バリアは、損傷または外傷を受けた組織が治癒する間、対向する組織表面または組織器官表面を分離するバリアを形成する。したがって、瘢痕組織の成長および癒着バリアに直接隣接する癒着の形成または再形成が防止される。
【0233】
別の実施形態において、標的部位は、切開、乾式、縫合、切除、擦過、挫傷、裂傷、吻合、操作、補綴、掻爬、整形外科、神経外科、心臓血管手術、および形成外科または再建手術を含むがこれらに限定されない組織損傷の部位である。標的部位はまた、本明細書では、隣接する損傷を受けていない組織を含むと理解されたい。別の実施形態において、標的部位は、鈍的外傷または骨折を取り巻く軟組織に曝露された領域である。
【0234】
いくつかの実施形態において、本発明は、様々な外科手技に適用される。別の実施形態において、外科手技は、婦人科の外科手技(開腹術または腹腔鏡による筋腫核出術)である。非限定的な実施形態によれば、子宮筋腫の除去中に、子宮に切開が行われ、子宮と周囲組織との間にバリアを形成して、癒着を防止することができる。
【0235】
別の実施形態において、外科手技は腹部手術である。非限定的な実施形態によれば、癒着バリアを使用して腹膜癒着を防止し、したがって腸閉塞を防止することができる。
【0236】
別の実施形態において、外科手技は心臓手術である。非限定的な実施形態によれば、心臓手術後の術後癒着を防止するためにバリアを使用することができる。
【0237】
別の実施形態において、外科手技は頭蓋顔面手術である。非限定的な実施形態によれば、バリアは、開頭術中に露出された皮質を保護し、頭蓋骨および皮質が付着するのを防止することができる。
【0238】
別の実施形態において、外科手技は筋骨格手術である。非限定的な実施形態によれば、バリアは、腱および周囲組織の付着を防止することができる。
【0239】
いくつかの実施形態において、接着バリアは生体適合性である。すなわち、標的組織部位で実質的な組織刺激または壊死を引き起こさない。
【0240】
いくつかの実施形態において、医療機器は、治療活性剤、例えば、本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによる追加の成分として含まれる薬剤を溶出するように構成される。いくつかのそのような実施形態において、医療機器はステントである。任意選択的に、組成物は、ステントの可撓性スリーブの少なくとも一部を形成する。
【0241】
治療活性剤は、任意選択的に、マトリックス内および/またはマトリックスの表面上に組み込まれ得る。任意選択的に、治療活性剤は、マトリックス内の薬物溶出層内および/またはマトリックスの表面上に組み込まれる。そのような薬物溶出層は、薬物溶出層の分野で既知の任意の好適な物質から形成することができる。
【0242】
本明細書において、「生物学的組織の修復および/または置換」という句は、いずれかの様式で物理的に損傷した組織の修復を指し、損傷した組織をインビボまたはエクスビボで一緒に支持および/または保持すること、ならびに組織の欠如によって形成される間隙を埋めること(組織の置換)を含む。損傷した組織は、例えば、剥離(例えば、断裂、切断)、圧縮応力、引張応力、剪断応力、細胞機能不全および/または細胞死によって損傷を受ける可能性がある。
【0243】
いくつかの実施形態において、生物学的組織を修復および/または置換することを必要とする対象においてそれを行う方法が提供され、この方法は、生物学的組織を本明細書に上記したマトリックス(例えば、医療機器)と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、対象は、動物対象である。いくつかの実施形態において、対象は、ヒト対照である。いくつかの実施形態において、対象は、外傷および/または損傷に苦しめられている。いくつかの実施形態において、対象は手術を受ける。いくつかの実施形態において、対象は、出血に苦しめられている。いくつかの実施形態において、対象は、1つまたは複数の器官からの生物学的流体の喪失に苦しめられている。
【0244】
いくつかの実施形態において、この方法は、マトリックスの少なくとも一部を生体組織内/上に貼付することを含む。いくつかの実施形態において、貼付は、硬化によって行われる。いくつかの実施形態において、硬化は、本明細書に上記したように、組織接着性層との共有結合形成を介して行われる。
【0245】
いくつかの実施形態において、この方法は、少なくとも1つの生物学的表面を接着または密封するためのものである。
【0246】
製造プロセス
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかに従って、ポリマー繊維を製造するためのプロセスが提供される。いくつかの実施形態において、プロセスは、(i)溶媒を、第1のポリマーと混合し、分岐した第2のポリマーおよび第3のポリマーのうちの少なくとも1つと混合し、それによって溶液を得ることと、(ii)溶液をエレクトロスピニング装置に提供することとを含む。いくつかの実施形態において、ポリマー繊維は、上記の通りである(例えば、本発明の組成物および/またはキットの場合)。いくつかの実施形態において、本発明の組成物のポリマー繊維を製造するための方法は、(i)溶媒を、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーと混合し、それによって溶液を得ることと、(ii)溶液をエレクトロスピニング装置に提供することとを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーは、上記の通りである。
【0247】
いくつかの実施形態において、本発明のキットのポリマー繊維を製造するための方法は、(i)溶媒を、第1のポリマーと混合し、第2のポリマーおよび第3のポリマーのうちの1つと混合し、それによって溶液を得ることと、(ii)溶液をエレクトロスピニング装置に提供することと、を含み、第1のポリマー、第2の分岐ポリマー、および第3のポリマーは、上記の通りである。
【0248】
いくつかの実施形態において、本発明のキットの組成物を製造するための方法は、第2の分岐ポリマーまたは第3のポリマーを提供することと、第2の分岐ポリマーまたは第3のポリマーを溶媒と混合し、それによってキットの組成物を得ることとを含む。
【0249】
いくつかの実施形態において、プロセスは、ポリマー繊維の乾燥をさらに含む。いくつかの実施形態において、乾燥は、10~90℃で行われる。
【0250】
いくつかの実施形態において、乾燥は真空乾燥を含む。いくつかの実施形態において、乾燥は、高温ガス流を繊維表面に適用すること等によって、対流乾燥によって行われる。いくつかの実施形態において、乾燥は、除湿されたガス流を表面に適用すること等によって、低温乾燥によって行われる。いくつかの実施形態において、乾燥は、赤外線(IR)乾燥によって行われる。いくつかの実施形態において、乾燥は、マイクロ波乾燥によって行われる。一般に、選択される乾燥方法および正確な乾燥条件は、とりわけ、ポリマー繊維の化学特性および物理特性に依存するであろう。
【0251】
いくつかの実施形態において、プロセスは、ポリマー繊維の層(例えば、本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによる組織接着性層)を製造するためのものである。
【0252】
本明細書に記載される繊維のいずれも、任意選択的に、従来の繊維紡糸技術等の、繊維(マクロサイズの繊維、マイクロサイズの繊維およびナノサイズの繊維を含む)を調製するための任意の好適な技術によって製造することができる。そのような技術には、例えば、溶液紡糸、エレクトロスピニング、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸およびゲル紡糸が含まれる。各紡糸方法は、得られる繊維の特定の物理的寸法および機械的特性を付与し、本明細書に記載される繊維および繊維の層の必要な用途に従って、所望の特性を与えるように調整することができる。
【0253】
簡単に言えば、繊維紡糸技術は、任意選択的に紡糸口金の使用を含む。これらは、原則として、浴室のシャワーヘッドに似ており、1個~数百個の小さな穴を有し得る。フィラメントまたは粗繊維が紡糸口金の穴から出てくると、溶解または液化したポリマーが最初にゴム状の状態に変換され、次いで固化される。「終わりのない」粗繊維の押し出しおよび固化のこのプロセスは、紡糸と呼ばれ、ステープルファイバーの短い小片が撚られて糸になる同名の織物操作と混同されるべきではない。
【0254】
湿式紡糸は、溶媒に溶解されたた繊維形成物質に使用される。紡糸口金を化学浴に浸漬させ、フィラメントが出現すると、それらが溶液から沈殿して固化する。溶液は沈殿液に直接押し出されるため、繊維を作製するためのこのプロセスは湿式紡糸と呼ばれる。このプロセスにより、例えば、アクリル、レーヨン、アラミド、モダクリル、およびスパンデックス等の繊維を製造することができる。
【0255】
乾式紡糸も溶液中の繊維形成物質に使用されるが、希釈または化学反応によってポリマーを沈殿させる代わりに、空気または不活性ガスの流れの中で溶媒を蒸発させることによって固化が達成される。フィラメントが沈殿液と接触しないため、乾燥の必要がなく、溶媒の回収が容易になる。このプロセスは、例えば、アセテート、トリアセテート、アクリル、モダクリル、PBI、スパンデックスおよびビニオンの製造に使用することができる。
【0256】
溶融紡糸では、紡糸口金を通して押し出すために繊維形成物質を溶融し、次いで粗繊維を冷却により直接固化させる。溶融紡糸された粗繊維は、紡糸口金から様々な断面形状(円形、三葉、五角形、八角形等)で押し出すことができる。例えば、ナイロン(ポリアミド)、オレフィン、ポリエステル、サラン、および硫黄等がこの様式で製造される。非ポリマー繊維も、溶融紡糸によって製造することができる。
【0257】
ゲル紡糸は、高強度または他の特殊な繊維特性を得るために使用される特殊なプロセスである。ポリマーは、押し出し中は真の液体状態ではない。真の溶液のように完全に分離されていないため、ポリマー鎖は液晶の形態で様々な点で一緒に結合している。これにより、得られるフィラメントに強い鎖間力が発生し、繊維の引張強度を大幅に高めることができる。さらに、液晶は、押し出し中の剪断力によって繊維軸に沿って整列させられる。フィラメントは、互いに対して異常に高い配向度で出現し、それらの強度を高める。フィラメントが最初に空気を通過し、次いで液体浴でさらに冷却されるため、このプロセスは乾湿紡糸として説明することもできる。例えば、一部の高強度ポリエチレンおよびアラミド繊維は、ゲル紡糸によって製造される。
【0258】
代替として、繊維は、天然または合成起源のものであり得、さらなる操作または調製手順なしで、またはその表面処理時にすぐに使用できるように提供され得る。
【0259】
いくつかの実施形態において、繊維は、エレクトロスピニングされたポリマー材料で形成されている。
【0260】
本明細書で使用される場合、「エレクトロスピン」、「エレクトロスピニング」、「エレクトロスピニングされた」等の用語は、ポリマー溶液から繊維(例えば、ナノ繊維)を製造する技術を指す。このプロセスの間に、本明細書に記載されるポリマー材料の1つまたは複数のポリマーが液化(すなわち、溶融または溶解)され、ディスペンサに入れられる。静電界を用いて、ディスペンサからコレクタに正に帯電したジェットを生成する。したがって、ディスペンサ(例えば、金属針を備えた注射器)は、通常、コレクタが接地されている間、好ましくは正極性の高電圧源に接続され、したがって、ディスペンサとコレクタとの間に静電界を形成する。代替として、コレクタが、好ましくは負極性の高電圧源に接続されている間、ディスペンサを接地することができる。当業者によって理解されるように、上記の構成のいずれも、ディスペンサからコレクタへの正に帯電したジェットの動きを確立する。ディスペンサからコレクタへの負に帯電したジェットの動きを確立するための逆極性も企図される。臨界電圧で、電荷の反発が液滴の表面張力に打ち勝ち始める。帯電したジェットはディスペンサから離れ、静電界内をコレクタに向かって移動する。電極間空間を高速で移動すると、ジェットが伸び、その中の溶媒が蒸発し、したがって繊維を形成し、それが、例えば、繊維の層の形態でコレクタに収集される。
【0261】
いくつかのパラメータが繊維の直径に影響を与える可能性があり、これらには、ディスペンサの分注穴のサイズ、分注速度、静電界の強さ、ディスペンサ間の距離、および/またはエレクトロスピニングされた繊維の製造に使用されるポリマー材料の濃度が含まれる。
【0262】
ディスペンサは、例えば、本明細書に記載される液化ポリマー材料を、例えば、静水圧、機械的圧力、空気圧および高電圧の作用下で押し出すことができる、金属針を備えた注射器、または1つもしくは複数の毛管開口部を備えた浴であり得る。
【0263】
いくつかの実施形態において、コレクタは、エレクトロスピニングされた繊維をその上に収集するのに役立つ回転コレクタである。回転コレクタを用いると、多孔性の連続的な勾配を有するエレクトロスピニングされた繊維の層を生じさせることができる。そのような多孔性勾配は、コレクタの速度の連続的な変化によって、またはディスペンサの縦方向の動きによって達成することができ、これらは、コレクタ上の繊維の密度および/または空間分布の実質的な変化をもたらし、したがって、それぞれ、コレクタの半径方向に沿ったまたは長手方向に沿った多孔性勾配を生じさせる。通常、必須ではないが、回転コレクタは円筒形状(例えば、ドラム)を有する。しかしながら、回転コレクタは、平面形状でもあり得ることが理解されよう。
【0264】
いくつかの実施形態において、コレクタは、エレクトロスピニングされた足場をその上に収集するのに役立つ平坦な接地コレクタである。平坦な接地コレクタを用いることで、ランダムなナノ繊維の収集が可能になる。平坦な接地コレクタは、通常、水平コレクタまたは垂直コレクタであることが理解されよう。
【0265】
いくつかの実施形態において、ポリマー繊維の任意の層(本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによる組織接着性層を含む)は、任意選択的に、連続エレクトロスピニングによって調製される。
【0266】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかに従ってマトリックスを調製するプロセスが提供される。いくつかの実施形態において、プロセスは、ポリマー繊維の層(本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによる)および任意選択的に連続エレクトロスピニングによる追加の層を製造するステップと、それによってマトリックスを形成するステップとを含む。
【0267】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかに従って、多層マトリックスを調製するプロセスが提供される。いくつかの実施形態において、プロセスは、ポリマー繊維の第1の層(例えば、組織接着性層)を提供し、第1の層に平行に追加の層を配置し、第1の層と追加の層を一緒にプレスし、それによって多層マトリックスを形成することを含む。
【0268】
いくつかの実施形態において、第1の層と追加の層を一緒にプレスすることは、少なくとも1グラム/cm2の圧力を加えることを含む。いくつかの実施形態において、圧力は、少なくとも2グラム/cm2である。いくつかの実施形態において、圧力は、少なくとも4グラム/cm2である。いくつかの実施形態において、圧力は、少なくとも8グラム/cm2である。
【0269】
いくつかの実施形態において、プロセスは、層をプレスする前に、それと同時に、および/またはその後に、層のいずれか1つを加熱することをさらに含む。いくつかの実施形態において、加熱は、層を形成するポリマー繊維のガラス転移温度および/または融点(任意選択的にガラス転移温度)を超える温度までである。
【0270】
一般的用語
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0271】
「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語およびこれらの同根語は、「含むが、限定されない」ことを意味する。
【0272】
「からなる」という用語は、「含みかつ限定される」ことを意味する。
【0273】
「から本質的になる」という用語は、組成、方法、または構造が追加の成分、ステップ、および/または部分を含むことができるが、追加の成分、ステップ、および/または部分が請求した組成、方法または構造の基本的かつ新規の特徴を実質的に変えない場合にのみであることを意味する。
【0274】
「例示的」という用語は、本明細書では、「例、事例、または例示として役立つ」ことを意味するために使用される。「例示的」として説明されるいかなる実施形態も、他の実施形態よりも好ましいかもしくは有利であると必ずしも解釈されるべきではなく、および/または他の実施形態からの特色の組み込みを必ずしも除外するものではない。
【0275】
「任意選択的に」という単語は、本明細書では、「いくつかの実施形態において提供され、かつ他の実施形態において提供されない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も、このような特色が矛盾しない限り、複数の「任意選択の」特色を含み得る。「さらに」および「任意選択的に」という単語は、互換的に使用され得る。
【0276】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの化合物」または「少なくとも1つの化合物」という用語は、これらの混合物を含む、複数の化合物を含み得る。
【0277】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、組成物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。
【0278】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示されている場合がある。範囲形式での説明は、単に便宜性および簡潔性のためであり、本発明の範囲への確固たる限定として解釈するべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6等の範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲、ならびに、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0279】
本明細書で数値範囲が示される場合は常に、指示範囲内の任意の引用数字(分数または整数)を含むことを意味している。第1の指示数~第2の指示数「の範囲にある/との間の範囲」および第1の指示数「~」第2の指示数の「範囲にある/範囲」という表現は、本明細書では互換的に使用され、第1および第2の指示数ならびにそれらの間のすべての分数と整数の数字を含むことを意味する。
【0280】
本明細書で使用する場合、「方法」という用語は、化学分野、薬理学分野、生物学分野、生化学分野および医学分野の実務者に既知であるかまたは実務者によって既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発されるかのいずれかである様式、手段、技術および手順を含むがこれらに限定されない、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を指す。
【0281】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療する」という用語は、状態の進行を抑制する、実質的に阻害する、遅延するもしくは後退させる、状態の臨床的もしくは審美的症状を実質的に寛解させる、または状態の臨床的もしくは審美的症状の出現を実質的に防止することを含む。
【0282】
明確にするために、別個の実施形態の文脈において説明される本発明の特定の特徴がまた、単一の実施形態で組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の種々の特色はまた、別々に、または何らかの好適な部分組み合わせで、または本発明の何らかの他の説明された実施形態において好適なものとして提供され得る。様々な実施形態の文脈で説明されている特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは機能しない場合を除いて、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0283】
上記に記述され、かつ以下の特許請求の範囲のセクションで特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的証拠を見出す。
【実施例】
【0284】
ここで、上記の説明と共に、本発明のいくつかの実施形態を非限定的に例示している以下の実施例を参照する。
【0285】
材料
本発明の例示的な組成物の調製に用いられる材料は、表1Aおよび表1Bに要約されている。
【表1】
【表2】
【0286】
方法
1.形態学的特性
エレクトロスピニングされたサンプルの形態の特性評価は、ImageJソフトウェアを使用して、エレクトロスピニングされたサンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を分析することによって得られた。サンプルを金でスパッタコーティングした。タングステンフィラメント(Quonta 200、FEI)を用いた環境制御型走査電子顕微鏡(SEM)を使用して、500~8000倍の倍率でサンプルの外面の画像を撮影した。
【0287】
繊維径および孔径は、SEM画像のスケールバーを使用して較正されたImageJ線形測定ツールを使用して、8000倍のSEM顕微鏡写真上で測定した。繊維および細孔のサイズを各サンプルで平均化した(画像ごとに10本の繊維および細孔の測定値を分析した)。
【0288】
2.機械的特性
引張特性:エレクトロスピニングされた各サンプルの機械的特性は、ASTM D882-12:薄いプラスチックシートの引張特性の標準試験方法に従って、製造された各サンプルの引張強度を測定することによって決定される。試験は、LLOYD LS1一軸引張機(100Nロードセルを装備)を使用して実施した。サンプルをドッグボーン形状に切断し、ドッグボーンの首部に沿った3点で厚さを測定した。次いで、試験サンプルをクランプ力機に取り付けた。各サンプルを破断するまで引き伸ばした。最大引張強度を決定した。
【0289】
3.接着強度
製造された各サンプルの接着強度は、剪断試験および剥離試験の2つの異なる方法で決定される。試験条件の詳細な説明は、本明細書において後に提供される。
【0290】
4.破裂圧力強度:
本発明の接着性組成物の耐破裂性も評価して、Hemopatch(商標)等の利用可能な組織接着性材料と比較した。試験はASTMF2392に基づいて行われた。コラーゲンストリップを基質として使用し、剪断試験に記載されるように調製した。各コラーゲン片の中央に直径3.0mmの穴を形成し、15×15mm片(n=10)のプロトタイプサンプルをコラーゲン穴の上に配置し、160グラム未満の重量下で15分間、プロトタイプサンプルをコラーゲンに押し付けて接着させた。次いで、結合/付着した小片を、中央の穴が中心にくるように破裂用固定具に取り付けて固定し、ASTMF2392に記載されているように一定速度の生理食塩水に曝露した。破裂強度は、サンプルの漏出を引き起こすのに必要な最大圧力の平均によって定義される。
【0291】
5.膨潤および吸水特性
乾燥パッチ(直径4×4cmの長方形)の重量を計量し、次いで、飽和するまで37℃の水に1時間浸漬した。サンプルを水から取り出し、清潔な乾いた紙を使用してそれらの表面をやや乾燥させ、各時点で再計量する。パッチの寸法を、乾燥状態と湿潤状態の両方で、各期間ごとにキャリパーを使用して測定する。
吸水率(%)=(Wf-Wi)/Wi×100%;Wi=初期重量、Wf=最終重量(水に浸漬した後)。
【0292】
実施例1
例示的な組成物および対照の調製
ブレンドポリマー繊維(本発明および対照の例示的な組成物)は、以下のように調製した:
エレクトロスピニングプロセスは、23±5℃の温度および35±10%の相対湿度で、シリンジポンプ、22ゲージ針(内径約0.51mm)、および高電圧(30kV max)DC電源を使用して行った。溶液の流量は、6±2kVの電圧供給下、および5~8cmのチップからコレクタまでの距離で2.6ml/時間であった。310rpmで回転する直径51mm、幅45mmのアルミニウム製垂直ホイールにパッチを収集した。調製したパッチの厚さは200±30μmであり、残留溶媒から室温で24時間真空乾燥させた。
【0293】
活性化PEGポリマーを含むPLCL繊維の調製
対照1.1:それぞれ1:0.333(w/w)の比率[それぞれ、6.67E-06モル、1.65E-05モル]のメトキシ-PEG-NHS(Mw=20K)を含むブレンドPLCLをエレクトロスピニングする。ポリマーをDMF:ジオキサン:THFの25:25:50(w/w)混合物に溶解し、室温で最終濃度約15%(w/w)のPLCL溶液を形成した。
【0294】
対照1.2:対照1.1に記載されるような、それぞれ1:0.333:0.167(w/w/w)の比率[それぞれ、6.67E-06モル、1.65E-05モル、8.35E-06モル]のメトキシ-PEG-NHS(20K Mw)およびメトキシ-PEG-チオール(Mw=20K)を含むブレンドPLCLをエレクトロスピニングする。
【0295】
対照1.3:対照1.1に記載されるような、1:0.333:0.167[それぞれ、6.67E-06モル、1.65E-05モル、8.35E-06モル]の比率のメトキシ-PEG-NHS(20K Mw)およびメトキシ-PEG-NH2(Mw=2KDa)を含むブレンドPLCLのエレクトロスピニング。
【0296】
組成1.1:対照1.1に記載されるような、それぞれ1:0.33の比率[それぞれ、6.67E-06モル、8.25E-06モル]の4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=40K)のブレンドPLCLをエレクトロスピニングする。
【0297】
組成1.2:それぞれ1:0.333:0.167の比率[それぞれ、6.67E-06モル、8.25E-06モル、8.35E-06モル]の、4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=40K)、および4 Arm PEG-SH(Mw=20K)を含むブレンドPLCLをエレクトロスピニングする。対照1.1に記載されるように、溶液および最終パッチを生成した。
【0298】
組成物1.3:それぞれ1:0.333:0.167の比率[それぞれ、6.67E-06モル、8.25E-06モル、8.35E-05モル]の、4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=40K)、およびmPEG-NH2(Mw=2KDa)を含むブレンドPLCLをエレクトロスピニングする。対照1.1に記載されるように、溶液および最終パッチを生成した。
【0299】
組成物1.4:それぞれ2:1の比率の、4 Arm-PEG-NH2、より好ましい8 Arm PEG-NH2(Mw=40K)を含むブレンドPLCLをエレクトロスピニングする。対照1.1に記載されるように、溶液および最終パッチを生成する。最終的なポリマー濃度は約15%である。4アーム-NHS-2KDa液、より好ましい8ARM-NHS-2KDaを充填した1つまたは複数の注射器またはアンプルで供給されるパッチは、その場で組織に適用される。
【0300】
活性化PEGポリマーを含むPDLCL繊維の調製
組成物2.1:それぞれ2.5:2.5:1の比率の、4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=2KDa)および4 Arm-PEG-SH、より好ましい8 Arm PEG-SH(Mw=20KDa)を含むブレンドPDLCLをエレクトロスピニングする。対照1.1に記載されるように、溶液および最終パッチを生成する。最終的なポリマー濃度は約25%である。
【0301】
活性化PEGポリマーを含むPDLCフィルムの調製
組成物3.1:4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=10KDa)を含むブレンドPDLCの4:1の比率の溶液をPLCL繊維層上に拡散する。最終的なポリマー濃度は約20%である。
【0302】
これは、薄膜アプリケータを使用して、ポリマー混合物の薄膜層をPLCL層上に拡散するか、または2層のPLCL繊維と150ミクロンのPDLCを付着させることによって行った。これはまた、ポリマー混合物を剥離紙の上に拡散してPLCL繊維のパッチに付着させるか、またはブレンド溶液を繊維上にエレクトロスプレーすることによっても行うことができる。活性化PEGとPLCL繊維のパッチとの間の共有結合を改善するために、PLCL繊維の外層を化学的に官能化することができる。PLCL繊維の外面の化学的活性化は、プラズマ、オゾン、γ線、電子ビーム、レーザー、およびUV光で処理することによって生成することができる。その後、残留溶媒から室温で少なくとも12時間、パッチを真空乾燥させる。
【0303】
組成物3.2:4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=40KDa)、および4 ArmPEG-SH(Mw=20KDa)を含むブレンドPDLCの20:5:1の比率の溶液(約20%)を、上記のようにPLCL繊維またはPLCL繊維層のパッチ上に拡散する。
【0304】
組成物3.3:4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=2KDa)を含むブレンドPDLCの1:1の比率の溶液(約20%)を、組成物3.1に記載されるようにPLCL繊維またはPLCL繊維層のパッチ上に拡散する。
【0305】
組成物3.4:4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=2KDa)、および4 Arm PEG-SH(Mw=20KDa)を含むブレンドPDLCの2.5:2.5:1の比率の溶液(約25%)を、組成物3.1に記載されるようにPLCL繊維のパッチ上に拡散する。
【0306】
組成物3.5:4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=2KDa)、および4 Arm PEG-SH(Mw=20KDa)を含むブレンドPDLCの1.5:1.5:1の比率の溶液(約30%)を、組成物3.1に記載されるようにPLCL繊維のパッチ上に拡散する。
【0307】
活性化PEGポリマーでコーティングされたPLCL繊維層の調製
組成物4.1:4 Arm-PEG-NHS(Mw=40KDa)、より好ましい8 Arm-PEG-NHS(Mw=40KDa)をPLCL繊維パッチの表面上に分布させる。これは、PLCL繊維パッチの一部をPEGポリマーメルトに指定時間浸漬してから冷却するか、またはPEG混合物を、組成物3.1に記載される繊維パッチのようなPLCL繊維パッチの表面/PLCL繊維パッチ上に拡散された別のPDLCフィルムの表面上に拡散させることによって行うことができる。PEG混合物は、例えば、パッチを40℃で1~2時間加熱して溶融することにより、パッチ/PDLCLフィルムの表面上に固定することができる。
【0308】
組成物4.2:20mgの4 ARM-PEG-NHS(40KDa)、より好ましい8 ARM-PEG-NHS(Mw=40KDa)の粉末を、組成物4.1に記載されるように2.5cm×4.0cmの表面上に均一に分布させる。
【0309】
組成物4.3:30mgの4 ARM-PEG-NHS(40KDa)、より好ましい8 ARM-PEG-NHS(Mw=40KDa)、および4 ARM-PEG-SH(Mw=20KDa)の混合物(2:1)を、組成物4.1に記載されるように2.5cm×4.0cmの表面上に均一に分布させる。
【0310】
組成物4.4:20mgの4 ARM-PEG-イソシアネート(Mw=20KDa)を、組成物4.1に記載されるように、2.5cm×4.0cmの表面上に均一に分布させる。
【0311】
組成物4.5:30mgの4 ARM-PEG-NHS(Mw=40KDa)、より好ましい8 ARM-PEG-NHS(Mw=40KDa)+4 ARM-PEG-NH2(Mw=40KDa)の混合物(2:1)を、組成物4.1に記載されるように2.5cm×4.0cmの表面上に均一に分布させる。
【0312】
組成物4.6:0.2mlの4 Arm-PEG-NHS(Mw=2KDa)、より好ましい8 Arm-PEG-NHS(Mw=2KDa)と0.1mlの4 Arm-PEG-SH(Mw=2KDa)、より好ましい8 Arm-PEG-SH(Mw=2KDa)とを混合し(2:1の比率)、PLCL繊維パッチの4.0cm×5.0cm表面上に、または2層パッチのPDLCLフィルム(繊維性PLCLおよびPDLCフィルム)上に注ぐ。
【0313】
組成物4.7:組成物3.1に記載されるように、yje PLCL繊維パッチ上にPDLC)30%)溶液のみを拡散し、続いて、20mgの4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=40KDa)の粉末を2.5cm×4.0cmの表面上に均一に分布させる。
【0314】
組成物4.8:組成物3.1に記載されるように、PLCL繊維パッチ上にPDLC)30%)溶液のみを拡散し、続いて、30mgの4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=40K Da)および4 Arm PEG-SH(Mw=20KDa)の混合粉末(2:1)を、2.5cm×4.0cmの表面上に均一に分布させる。
【0315】
組成物4.9:組成物3.1に記載されるように、PLCL繊維パッチ上にPDLC)30%)溶液のみを拡散し、続いて、30mgの4 Arm-PEG-NHS、より好ましい8 Arm PEG-NHS(Mw=40KDa)および4 Arm PEG-NH2(Mw=40KDa)の混合粉末(2:1)を、2.5cm×4.0cmの表面上に均一に分布させる。
【0316】
組成物4.10:組成物3.1に記載されるように、PLCL繊維パッチ上にPDLC)30%)溶液のみを拡散し、続いて、20mgの4 Arm-PEG-ISOCYANATE(Mw=20KDa)の粉末を2.5cm×4.0cmの表面上に均一に分布させる。
【0317】
追加の例示的な繊維または組成物(表2)が調製および試験されており、上記の対応する繊維または組成物と同様の繊維の厚さ、孔径、引張強度および接着強度(データは示さず)等の特性を示している。
【表3】
【0318】
マルチアームPEGを含む上記の組成物は、本発明のいくつかの実施形態によるエレクトロスピニングされた繊維の例示的なマトリックスに言及する。上記の対照は、とりわけ、シングルアームPEGを含むエレクトロスピニングされた繊維のマトリックスに言及する。
【0319】
本発明のエレクトロスピニングされた繊維の例示的なマトリックス層の構造画像を示すSEM顕微鏡写真を
図3に示す。すべてのサンプルのSEM画像は、繊維の形態に対する各プロトタイプの溶液組成の有意な影響のない、滑らかで均一なビーズのない繊維を示した。
図4に示すように、1.08~2.7μmの繊維サイズのシングルアームPEGで構成されるエレクトロスピニングされた繊維(対照1.1~1.3)は、1.22~4.88μmの範囲の繊維サイズのマルチアームPEGで構成されるエレクトロスピニングされた繊維(組成物1.1~1.3)よりも細い。一方、組成物1.1~1.3のより大きな繊維径は、
図5に見られるように、サンプルの全体的な孔径に影響を与えず、シングルアームPEGで構成される繊維(対照1.1~1.3)およびマルチアームPEGで構成される繊維(組成物1.1~1.3)で7.44~9.72μmの範囲の同様の孔径を表している。
【0320】
実施例2
剥離試験手順
エレクトロスピニングされた繊維の各マトリックス層のサンプルを15mm×30mmのストリップに切断し、ストリップの半分を生理食塩水で湿潤させ、残りの半分を乾いた状態に維持した。
図1に見られるように、各ストリップを湿った15mm×30mmのコラーゲンストリップの上に平行に配置して、15×15mmの最小結合領域を作成した。各サンプルの湿った半分をコラーゲンストリップに2分間押し付け、残りの半分をコラーゲンに結合させずに、剥離アームを作成した。取り扱いやすいように、すべてのサンプルを室温で乾燥させた。コラーゲンとサンプルとの間の結合を破壊するのに必要な力は、万能試験機LLOYD LS1を使用して測定した。剥離アームを10mm/分の速度で引き離し、結合を破壊するのに必要な力を測定する。接着強度は、試験中に記録された剥離力と最大力の平均によって定義される。
【0321】
剪断試験手順
図2に見られるように、湿ったコラーゲンストリップを薄片化し、湿ったサンプルをコラーゲンに2分間押し付けることにより、薄片化した箇所で結合させた。接合部を破壊するのに必要な力は、万能試験機LLOYD LS1を使用して、コラーゲンストリップを10mm/分の速度で伸ばすことによって測定する。接着強度は、接合点でコラーゲンストリップを分離するのに必要な最大力を結合面積で割ったものによって定義される。Hemopatch(商標)等の市販の組織接着剤も、対照として機能するように試験した。
【0322】
剥離試験法および剪断試験法で決定された接着強度を、それぞれ
図7および
図8に示す。両方の試験において、組成物1.2および組成物2(図示せず)は、他のサンプルと比較して最も高い接着強度を示した。その結果、エレクトロスピニング溶液にマルチアーム活性化PEGをブレンドすると、シングルアーム活性化PEGと比較して接着強度の向上がもたらされる(
図7の組成物1.1を除く)。さらに、組成物1.1と比較して組成物1.2の接着強度の有意な増加を示す
図7によって表される結果によれば、本発明の繊維内の第2の分岐ポリマーおよび第3のポリマーの組み合わせ(例えば、組成物1.2)が、第2の分岐ポリマー単独(組成物1.1)よりも有利である。試験したすべてのサンプルと比較して、Hemopatch(商標)は、剥離試験で決定された最低の接着強度を有すると考えられる。本発明のいくつかの実施形態による、湿潤および乾燥後もその弾性を維持する繊維構造を有するすべての例示的なマトリックスは、両方の試験において同様の結果を示した。
【0323】
エレクトロスピニングされた繊維(対照1.1~1.3および組成物1.1~1.4)の引張強度値を
図6に示す。ブレンドポリマー繊維のサンプルとPLCL繊維のサンプルの間には明確な違いが見られる。活性化PEGを含むエレクトロスピニングされたブレンドポリマー繊維は、より低い応力で機能しなくなると考えられる。このことは、エレクトロスピニングされたPLCL繊維の機械的強度が、活性化PEGの添加によって損なわれていることを示している。しかしながら、組成物1.3は、その対照(対照1.3)と比較して、より高い引張強度を示した。より多くの官能基(NHS)を提示した組成物1.3のエレクトロスピニング溶液にm-PEG-NH2をブレンドすることにより、NHS遊離基とNH2遊離基との間に共有結合架橋がもたらされ、結果として、その対照(対照1.3)と比較して、より強い繊維およびより高い引張強度が得られたと推測される。マルチアームPEG-NH2およびマルチアームPEG-NHSを含む組成物1.4も、マルチアームPEG-NHSのみが提示される組成物1.1に匹敵する高い引張強度(平均3.6MPa)を示した。
【0324】
試験したすべての例示的な本発明の組成物の引張強度が、0.084~0.131MPaの範囲であるDuraGen(市販の人工硬膜)の引張強度よりも有意に高く、また、Hemopatch(商標)の引張強度(0.118MPa)よりも高いことは注目に値する。
【0325】
要約すると、試験した例示的な本発明の組成物の引張強度および破断点の伸び(データは示さず)等の引張特性は、現在使用されているコラーゲン製品の特性よりも依然として有意に高い。
【0326】
図8によって表される剪断試験の結果は、マルチアームPEG-SHを含むマルチアームPEG-NHSで構成される、試験した例示的な本発明の組成物が、調製したすべてのプロトタイプ(例えば、組成物1.2および組成物4.3)よりも好ましい接着強度を有することを示唆している。PEG-NH2またはPEG-SH等のマルチアームPEG試薬の添加は、試験した組成物の凝集強度を増加させる(
図9)。
【0327】
PEG-NH2はNHS基と直ちに反応するため、エレクトロスピニングされた繊維を得ることはほとんど不可能であった。この制限を克服するために、第1のポリマー(PDCLまたはPLCL)と分岐PEG-NHSまたは分岐PEG-NH2との組み合わせによって形成されるエレクトロスピニングされた繊維を含むキットが、本発明者らによって首尾よく利用された。上記のように(組成物1.4)組織反応性成分(マルチアームPEG-NHS)を、マルチアームPEG-NH2およびPLCLのエレクトロスピニングによって形成された繊維層の上にその場で適用した。
図8および
図9に見られるように、組成物1.4の達成された接着強度の結果は、好ましい結果の範囲内であった。
【0328】
図9に示すように、マルチアームPEG-SHは、
図7および
図8の両方に提示される接着強度試験で見られるように、例2~4で調製したプロトタイプの接着強度を損なうことなく、凝集強度を向上させる。マルチアームPEG-SHおよびPEG-NHSの組み合わせをPLCL繊維のパッチにブレンドすると、最高の接着強度(組成物1.2)が得られ、達成された結果は、剥離試験で提示された組成物1.2の有意な接着強度によっても裏付けられたと結論付けることができる(
図7)。
【0329】
また、PLCLベースの繊維内に組織反応性ポリマー(官能化PEG試薬)を組み込むと、コーティング/分配法と比較してより良い接着結果が得られるが、これは、最適な組織接着のためにPLCLベースの繊維構造によって提供される大きな表面接触面積によるものであり得ると結論付けることもできる。達成されたすべての結果が、PEG試薬でコーティングされたコラーゲンスポンジ構造で構成される市販の対照であるHemopatch(商標)と比較されたことは言及に値する。Hemopatch(商標)の平均接着強度は約1.15Nであった。著者らは、エレクトロスピニングされた繊維ベースの接着性層が、現在入手可能な市販の製品と比較して、ウェットティッシュ(1.15N超)に対する接着特性を強化することを証明することができた。さらに、PDLC/PLCL(組成物3.1~4.1)とブレンドされた官能化PEGポリマーのキャストフィルム層は、本発明のエレクトロスピニングされた繊維ベースの接着性層と比較して、損なわれた接着強度を示した。
【0330】
本発明は具体的に記載されているが、当業者は、多くの変形および修正を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、具体的に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、本発明の範囲および概念は、以下の特許請求の範囲を参照することによってより容易に理解されるであろう。
【国際調査報告】