(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(54)【発明の名称】埋め込み可能なマーカー
(51)【国際特許分類】
A61B 90/00 20160101AFI20220916BHJP
【FI】
A61B90/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504505
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2020070548
(87)【国際公開番号】W WO2021013831
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019210963.2
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522028733
【氏名又は名称】ビーアイピー バイオメド. インストゥルメンテ ウント プロダクテ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘスケ,トーマス
(57)【要約】
動物又は人間の体内組織領域をマーキングするための埋め込み可能なマーカーであって、機械的拘束の解除後に、外部の機械的拘束によって与えられる圧縮立体形状に従って取る、整形プロセスによって記憶された立体形状を有する、生体適合材料から製造された少なくとも一つのストランドを有する、埋め込み可能なマーカーが記載される。本発明は、ストランドに記憶された立体形状が、ストランドの少なくとも一つのらせん巻きによってそれぞれ形成され、且つ、それらの形状及び/又は空間的相対位置が、外部の機械的拘束によって与えられる圧縮立体形状と、機械的拘束の解除後の記憶された立体形状とで互いに異なっている少なくとも二つの固定ストランドアイレットを含むことにより特徴づけられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物又は人間の体内組織領域をマーキングするための埋め込み可能なマーカーであって、機械的拘束の解除後に、外部の機械的拘束によって与えられる圧縮立体形状に従って導入され、整形プロセスによって記憶された立体形状を有する、生体適合材料から製造された少なくとも一つのストランドを有する、埋め込み可能なマーカーにおいて、
前記ストランドに記憶された前記立体形状が、前記ストランドの少なくとも一つのらせん巻きによってそれぞれ形成され、且つ、それらの形状及び/又は空間的相対位置が、前記外部の機械的拘束によって与えられる前記圧縮立体形状と、前記機械的拘束の解除後の前記記憶された立体形状とで互いに異なっている少なくとも二つの固定ストランドアイを含むことを特徴とする、埋め込み可能なマーカー。
【請求項2】
前記少なくとも二つの固定ストランドアイが、ストランド部を介して一体的に互いに接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の埋め込み可能なマーカー。
【請求項3】
前記ストランド部が、前記ストランド部を介して一体的に互いに接続された前記固定ストランドアイが、少なくとも前記外部の機械的拘束によって与えられる前記圧縮立体形状において、重なり合うことなく隣り合って配置可能であるように配置及び構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の埋め込み可能なマーカー。
【請求項4】
少なくとも三つの固定ストランドアイが前記ストランドに沿って形成されており、前記少なくとも三つの固定ストランドアイは、前記外部の機械的拘束によって与えられる前記圧縮立体形状において、仮想直線軸に沿って連続して配置されていること、及び、
前記少なくとも三つの固定ストランドアイが、前記機械的拘束の解除後に、前記記憶された立体形状において、前記仮想直線軸に沿った連続配置構成とは立体的に異なる配置構成を取ることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の埋め込み可能なマーカー。
【請求項5】
固定ストランドアイの前記少なくとも一つのらせん巻きの巻回方向が、前記ストランドに沿って配置された二つのストランドアイ間で異なっていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の埋め込み可能なマーカー。
【請求項6】
各固定ストランドアイにアイ開口平面を割り当てることができること、
少なくとも一つの固定ストランドアイの前記アイ開口平面が、前記機械的拘束の解除後に、前記記憶された立体形状において、少なくとも一つの別のストランドアイの前記アイ開口平面と平行に配向されていないこと、又は、
前記機械的拘束の解除後に、前記記憶された立体形状において、全てのストランドアイのアイ開口平面が平行に配向されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の埋め込み可能なマーカー。
【請求項7】
前記ストランドの前記生体適合材料が、超音波反射材料から構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の埋め込み可能なマーカー。
【請求項8】
前記ストランドが、少なくとも部分的に超音波を反射する表面パターニングが取り付けられているストランド表面を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の埋め込み可能なマーカー。
【請求項9】
生体適合材料から構成される前記ストランドが、形状記憶特性を有する少なくとも一つの材料を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の埋め込み可能なマーカー。
【請求項10】
生体適合材料からなる前記ストランドが、以下の群:NiTi(「ニチノール」)、NiTiCu、CuZn、CuZnAl、又はCuAlNiの金属形状記憶材料製のワイヤであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の埋め込み可能なマーカー。
【請求項11】
前記少なくとも二つの固定アイを有する前記ストランドが、前記ストランドに前記外部の機械的拘束を及ぼす中空カニューレ内で前記外部の機械的拘束によって与えられる前記圧縮立体形状で配置可能であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の埋め込み可能なマーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物又は人間の体内組織領域をマーキングするための埋め込み可能なマーカーであって、機械的拘束の解除後に、外部の機械的拘束によって与えられる圧縮立体形状に従って取る、整形プロセスによって記憶された立体形状を有する、生体適合材料から製造された少なくとも一つのストランドを有する、埋め込み可能なマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な埋め込み可能なマーカーは、人間又は動物の軟部組織の腫瘍に印を付けるために使用される。例えば、乳房生検によれば、マーカーをカニューレで組織採取部位に導入し、所望の位置に到達した後、スタイレットでカニューレから遠位側で排出することが多い。体内に配置されたマーカーは固定されたままであり、これによって、医師は、イメージング法(imaging procedure)、好ましくは超音波映像に基づいたイメージング法によって、治療及び/又は診断される組織領域を特定し、長期にわたって観察することができる。
【0003】
これについて、米国特許第6,053,925号明細書には、形状記憶金属製の二つのワイヤが互いにねじれた、人体組織用の組織マーカーが記載されている。マーキングするべき組織領域に、できる限り部位が変わらない方法で配置されるマーカーは、このためにリング状又はコイル状の形状を有する。
【0004】
米国特許出願公開第2005/0059888A1号明細書には、体内に入れた生物学的吸収体の部位をマークするマーカーが記載されている。マーカーは、マンモグラフィ、放射線及び超音波検査によって検出可能な材料、例えば、吸収体に取り付けられるワイヤからなる。
【0005】
米国特許出願公開第2001/0023322A1号明細書には、体内挿入型マーカーのためのカニューレ状位置決めユニットが記載されている。マーカーは、形状記憶金属製のワイヤからなり、体内位置決め後、マーキングするべき組織領域に固定的に位置決めすることを目的として、少なくともワイヤの先端をリング状又はコイル状に変形する。
【0006】
最後に、欧州特許第1871266B1号明細書には、人間又は動物組織用の一般的なマーカーが記載されており、このマーカーは、予めプログラム可能な材料、好ましくはニッケルチタン合金から、リング状に製造されており、これに与えられた縦方向の伸張後に解放された後、予めプログラムされたリング形状に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,053,925号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0059888A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2001/0023322A1号明細書
【特許文献4】欧州特許第1871266B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
全ての既知である一般的なマーカー、特に上記で説明したリング状マーカーは、それらの材料特性により超音波反射体であるが、既知のマーカーは、超音波がマーカーと相互作用する超音波処理の方向によって、超音波映像に基づいて、浮かび上がる強さが異なる。そのリング平面が伝播超音波の扇平面に対して直交する方向を向いた、先に述べたリングマーカーに、大抵扇形に伝播する超音波場が衝突する場合、超音波場がリング状マーカーに対して傾いた際にリング輪郭を再現する、点状の二つの超音波反射信号のみが浮かび上がる。一方、扇形の超音波場がリング平面に平行な方向を向いている場合、超音波画像上で生じ得る反射信号は、リングマーカーの直径に相当する長さの線を形成する。
【0009】
そのため、その寸法が数ミリの範囲にあるこのようなそれ自体既知のマーカーを、空間的に、生体組織環境内部で空間的に解像して、明確に識別するためには、多くの経験が必要である。
【0010】
本発明は、動物又は人間の体内組織領域をマーキングするための埋め込み可能なマーカーであって、機械的拘束の解除後に、外部の機械的拘束によって与えられる圧縮立体形状に従って導入され、整形プロセスによって記憶された立体形状を有する、生体適合材料から製造された少なくとも一つのストランドを有する、埋め込み可能なマーカーを埋め込みされたマーカーの視認性が超音波検査中の医師に対して著しく改善されるべき方法でさらに開発するという課題に基づく。特に、マーカーは、超音波ヘッドによって照射される方向に関係なく、略等方的な高い超音波反射率を特徴とするべきであり、従って医師が超音波に基づくイメージングメソッドを用いて、視覚的に明確に、且つ容易にマーカーの位置を特定できるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明が基づく課題の解決手段は、請求項1に記載されている。本発明の思想を有利にさらに発展させる特徴は、従属請求項の特徴、及び図と関連する例示的な実施形態を参照した明細書に読み取れる。
【0012】
解決手段によれば、請求項1の前提部の特徴を有する埋め込み可能なマーカーは、ストランドに記憶された立体形状(three-dimensional shape impressed upon strand)が、ストランドの少なくとも一つのらせん巻きによってそれぞれ形成され、且つ、それらの形状及び/又は空間的相対位置が、外部の機械的拘束によって与えられる圧縮立体形状と、機械的拘束の解除後の記憶された立体形状とで互いに異なっている、少なくとも二つの固定ストランドアイを含むことにより特徴づけられる。
【0013】
「固定ストランドアイ」とは、結び目理論から借用した用語で、ストランドに沿って円が形成されていることを特徴とする、単純な幾何学的形状を表す。ここで、ストランドは少なくとも一回らせん状に巻回され、巻回の重なり部分でストランドが接するらせんピッチを有する。閉鎖のリング形状とは異なり、固定アイは横方向の超音波照射を受けた際に一定の線厚の直線としてではなく、楔形又は二重楔形として現れ、単一らせん巻きの場合のその最大楔幅はストランド幅の二倍に相当する。複数のらせん巻きから構成される固定ストランドアイを横から超音波処理すると、相応により明瞭な超音波信号が構成される。
【0014】
解決手段に係る埋め込み可能なマーカーは、ストランドのそれぞれのらせん巻きによってストランドに沿って形成される、少なくとも二つ、好ましくは三つ以上のストランドアイを有する。必須ではないが、有利な形態では、少なくとも二つの固定ストランドアイは、同一の形状及び寸法を有する。当然ながら、例えば長円形又は楕円形の固定アイなど、円形から逸脱したアイの形状も考えられる。また、ストランドに沿って配置されるストランドアイの形状及び寸法も、互いに異なる可能性がある。さらに、固定ストランドアイの空間的な位置及び割り当ては、それらの互いの距離、及び固定ストランドアイにそれぞれ割り当てることができる平面の向きによって、均一に又は個別に選択することができる。
【0015】
金属形状記憶材料は、ストランドの製造及びストランドに沿った解決手段に係る立体形状の付与及び記憶に特に適しており、これは好ましくは擬弾性挙動を有する、すなわち、形状記憶材料からなるワイヤは、外力の作用下で強く弾性変形しても、高温プロセスによって記憶されたその立体形状に形状保持的に復帰する。特に適した材料は、NiTi(「ニチノール」)、NiTiCu、CuZn、CuZnAl又はCuAlNiである。
【0016】
解決手段に係る埋め込み可能なマーカーの一つの可能な実施形態では、ストランドは、ストランド部を介して一体的に互いに接続された二つの固定ストランドアイを有する。体内で位置決めする目的のために、ストランドは、外部の機械的拘束によって圧縮立体形状に移行し、この圧縮立体形状では、ストランドアイの少なくとも一つのらせん巻きがストランドに沿って作用する引張力によって完全に引き伸ばされ、すなわち巻線が略完全に弾性変形して線状のストランドを構成する。この圧縮形状で、ストランドは中空のカニューレに導入され、そこを通って体内に配置することができる。
【0017】
ストランドの排出は、スタイレットを用いてそれ自体既知の方法で行われる。圧縮立体形状にあるストランドが中空カニューレから遠位側で排出されるとすぐに、ストランドはその記憶された立体形状(its impressed three-dimensional shape)を自発的に取り、二つの固定ストランドアイを自発的に構成する。記憶された立体形状によって、ストランドアイはそれぞれ共通のアイ平面を広げることができる。好ましくは、個々の固定ストランドアイは、それぞれ異なるアイ平面を有するストランドに沿って配向することができ、すなわち、二つの固定ストランドアイを互いに一体的に接続するストランド部に沿って、二つの固定ストランドアイを相対的に互いにねじれた状態で配向させる、材料固有のねじれ材料張力が付与され記憶されている。
【0018】
代替的に、又はストランド部を介して一体的に互いに接続された二つの固定ストランドアイの上記のねじれと組み合わせて、さらなる例示的な実施形態では、二つの固定ストランドアイを一体的に互いに接続するストランド部に沿って局所的に付与され記憶された曲率によって、二つの固定ストランドアイを傾斜又は旋回させる。
【0019】
さらなる例示的な実施形態では、少なくとも二つの固定ストランドアイは、ストランド部を介して一体的に接続されているため、外部の機械的拘束によって与えられる圧縮立体形状において、仮想直線軸に沿って重なり合うことなく隣り合って配置されている。この状態で、少なくとも二つの固定ストランドアイは、アイ径に応じた寸法の中空カニューレに挿入され、すでに上記の例で説明したように、スタイレットを用いて中空カニューレを介して体内の遠位側で埋め込まれる。中空カニューレからの排出直後に、埋め込み可能なマーカーは自発的に弾性変形し、それに記憶されたその立体形状になる。二つの固定ストランドアイがストランド部を介して一体的に互いに接続されている場合、これらは、それらの最初に付与されて記憶された形状及び/又はサイズ、並びにまたそれらの空間的相対位置を個々に取ることができる。
【0020】
さらなる好ましい一実施形態では、少なくとも三つの固定ストランドアイがストランドに沿って構成されており、これらは、外部の機械的拘束によって与えられる圧縮立体形状において、仮想直線軸に沿って連続して配置されている。この圧縮立体形状で、埋め込み可能なマーカーは、適切な寸法の中空カニューレを通して体内に配置することができる。中空カニューレを通ってマーカーに作用する機械的拘束が遠位排出によって解除されるとすぐに、埋め込み可能なマーカーは、仮想直線軸に沿った少なくとも三つの固定ストランドアイの連続配置構成とは大きく異なる、マーカーに最初に付与されて記憶された立体形状を取る。
【0021】
以下に図面で示す例示的な実施形態は、超音波に基づくイメージングプロセスを用いて、全ての空間方向からの視認性を向上させることを特徴とする、それに解決手段に従って付与され記憶された立体形状を有する、解決手段に係る埋め込み可能なマーカーの考えられる構成形態の、幅広いバリエーションを示すことができる。
【0022】
埋め込み可能なマーカーの付与され記憶された立体形状が、超音波に基づく検出性の向上を根拠付けることに加えて、好ましくはストランド表面に沿って取り付けられた又は組み込まれた表面パターニングも超音波反射率の向上に寄与し、これは好ましくは、表面の粗面化、又は、ストランド表面上の溝状、溝形状、及び/若しくは切込み状凹部の確率的若しくは規則的な配列の形態で特徴づけられている。
【0023】
金属形状記憶材料からなるワイヤと、その解決手段に従って付与されて記憶されたその立体形状との形態で、解決手段に係る埋め込み可能なマーカーを構成することに代えて、同じ又は類似の形状記憶特性を有する、適切に選択された代替生体適合性材料からストランドを製造することも同様に可能である。例えば、これに関しては形状記憶ポリマー、又はポリマーと形状記憶合金とを組み合わせた複合材料が好適である。
【0024】
本発明を以下に、本発明の一般的な思想を限定することなく、図面を参照して例示的な実施形態により例示的に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】a)は、圧縮立体形状の解決手段に従って構成された埋め込み可能なマーカーの第一の実施形態である。b)及びc)は、記憶された立体形状(impressed three-dimensional shape)を有する
図1aに係る埋め込み可能なマーカーの上面図及び側面図である。
【
図2】a)は、埋め込み可能なマーカーの圧縮立体形状の第二の実施形態である。b)~d)は、記憶された立体形状の
図2aに係る埋め込み可能なマーカーの異なる視野角である。
【
図3】a)~c)は、様々なストランド表面パターニングである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1a~
図1cは、解決手段に従って構成された埋め込み可能なマーカーの第一の実施例を示す。
図1b及び
図1cは、マーカー1を、それぞれその三次元で付与されて記憶された立体形状で、上面図及び側面図で示す。マーカー1は、好ましくはニチノール(NiTi)製の丸線ワイヤ2から製造され、その付与されて記憶された立体形状で二つの固定ストランド又はワイヤアイ3、4を有する。ワイヤアイ3、4は、それぞれニチノール製のワイヤに沿った、単層らせん巻きによって製造されている。二つのワイヤアイ3、4の巻回方向はそれぞれ逆向きである。
【0027】
埋め込み可能なマーカー1を体内で位置決めする目的のために、マーカー1は、外部の機械的拘束によって、
図1aに示す直線的に引き伸ばされた圧縮立体形状に移行する。このために、ニチノールワイヤ2は、
図1b及び
図1cに示されたその記憶された立体形状から、ワイヤの長手方向に引張力の作用を受けて引き伸ばされ、中空カニューレ5内に挿入される。
【0028】
スタイレット6を用いて、圧縮立体形状にあるワイヤ2は、中空カニューレ5の遠位開口部7を通って押し出される。マーカー1が中空カニューレ5の遠位開口部7を通って排出された直後、マーカー1は、
図1b及び
図1cに示されたその記憶された圧縮立体形状を取る。ワイヤ部8を介して一体的に互いに接続された二つの固定ワイヤアイ3、4は、それぞれ描画平面に位置するアイ平面E1、E2を有する。当然ながら、固定ワイヤアイ3、4に割り当てられるアイ平面E1、E2も、互いに傾斜又は回転して方向づけられる。このために、相応に機械的な材料固有の予張力がワイヤ部8に沿って提供される必要があり、この予張力によって、二つの固定ワイヤアイ3、4の互いに相対的なねじれが開始される。これについては
図1bの矢印
図P1を参照されたい。上記のねじれに代えて、又はねじれと組み合わせて、
図1b、
図1cでは直線であるワイヤ部8に沿って、
図1cに明示した矢印
図P2で示唆するように、機械的に予めプログラムされたワイヤ曲率を導入してもよい。
【0029】
図1に示す、埋め込み可能なマーカー1に記憶された立体形状により、埋め込まれたマーカー1の、それぞれ体内で照射される超音波場に対する空間的な向きにかかわらず、超音波に基づくイメージングメソッドによる容易且つ確実な検出が可能となる。
【0030】
図2a~
図2dは、解決手段に係る埋め込み可能なマーカー1の構成のための好ましいさらなる変形例を示し、その記憶された立体形状は、
図2b~
図2dにおいて異なる視野角から示されている。
【0031】
この場合、埋め込み可能なマーカー1は、五つの固定ストランド又はワイヤアイ9~13を有し、これらはそれぞれ一体的に、好ましくはニチノールワイヤ2から製造されている。埋め込み可能なマーカー1を異なる遠近法の視野角度で示す
図2b~
図2dから、固定ワイヤアイ10及び12がそれぞれ一つ超のらせん巻きを設けていることが分かる。固定ワイヤアイを製造する巻数は可変に任意に選択することができる。また、ワイヤ2に沿ったワイヤアイの数、並びにそれらの互いの距離及び向きも任意に選択することができる。
【0032】
図2aでは、固定ワイヤアイ9~13が、中空カニューレ5の内部に挿入できるように、外部の機械的な引張圧力によって仮想直線軸14に沿って直線的に配置されている、埋め込み可能なマーカー1の圧縮立体形状を示す。圧縮立体形状にあるマーカー1が、遠位側でスタイレット6を用いて中空カニューレ5から押し出されるとすぐに、マーカー1は突然、すなわち自発的に、
図2b~
図2dに示される記憶された立体形状を取る。ここで、固定ワイヤアイ9~13は、ワイヤ部8と共に3次元に規定された構造又は立体形状を形成し、これが超音波場との相互作用により、超音波画像上で視覚的に有意に現れる有意な反射信号を生成する。さらに、
図2aに示される圧縮立体形状から
図2b~
図2dに示される記憶された立体形状への突然の移行により、解決手段に従って構成された埋め込み可能なマーカー1は、マーカー1を囲む生体組織と、密接な且つ機械的に安定した接続状態に入ることができるため、組織内での埋め込まれたマーカー1の望ましくない移動を初めから除外することができる。
【0033】
単に完全を期すために、
図2b~
図2dに示された埋め込み可能なマーカー1の記憶された立体形状とは異なって、ねじれ又は湾曲がそれぞれワイヤ部8に沿って導入されてもよいことに留意すべきであり、
図1b、
図1cの矢印
図P1、P2を参照されたい。
【0034】
解決手段に係る埋め込み可能なマーカー1の超音波反射率を向上させるために、マーカー1を構成するストランド又はワイヤ2の表面15を構造化することができる。ストランド又はワイヤ2の考えられる表面パターニングは、
図3a~
図3cに示されている。
図3aは、ストランド又はワイヤ表面15に沿って延びる溝形状の刻み17を示す。
図3bにおいて、ストランド表面15には、超音波反射率の増加をもたらす多数の局所的な切込み18が設けられている。
図3cでは、ストランド又はワイヤ表面15に沿った溝付き表面パターニング19が設けられている。
【0035】
個々の例示的な実施形態から見て取れる個々の特徴は、任意に組み合わせることができる。また、
図2a~
図2dにおけるワイヤ部8のそれぞれが同一の寸法を有する長さは、その際超音波反射率に関する不利を甘受することなく、個別に寸法を設定することができる。
【0036】
図2bの上面図から見て取れるワイヤアイは、正三角形D上に投影して位置するため、数学的に定義された、又は幾何学的に規定された認識パターンを表し、とりわけ自律画像評価に特に適してはいるが、埋め込み物1に付与されて記憶される立体形状の以下の設計パラメータを、任意に選択することができる。
- ワイヤアイの直径d、
- ワイヤ部の長さL、
- ワイヤ部8間の角度α、β、
図2c、
図2d参照、
- ワイヤアイごとのらせん巻き数
- 各ワイヤアイの幾何学的形状:円形、楕円形、長円形、n角形
- らせん巻きの巻回方向
【符号の説明】
【0037】
1 埋め込み可能なマーカー
2 ストランド又はワイヤ
3 固定アイ
4 固定アイ
5 中空カニューレ
6 スタイレット
7 遠位開口部
8 ストランド部、ワイヤ部
9 固定アイ
10 固定アイ
11 固定アイ
12 固定アイ
13 固定アイ
14 仮想直線軸
15 ストランド表面又はワイヤ表面
16 溝形状刻み
17 局所的切込み
18 溝付き表面パターニング
D 正三角形
d 固定アイの直径
L ストランドワイヤ部の長さ
α ワイヤ部間の角度
β ワイヤ部間の角度
【手続補正書】
【提出日】2022-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】