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特表2022-541854老視の治療のための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(54)【発明の名称】老視の治療のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/27 20060101AFI20220916BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20220916BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220916BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
A61K31/27
A61K31/661
A61P27/02
A61K9/08
A61K47/14
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505323
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 US2020043534
(87)【国際公開番号】W WO2021021646
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】62/879,296
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン マイケル アール
(72)【発明者】
【氏名】ディバス モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ゴア アヌラーダー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD22Z
4C076DD23D
4C076DD26Z
4C076DD29R
4C076DD38D
4C076DD43Z
4C076DD49R
4C076FF14
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA34
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA22
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA78
4C206NA14
4C206ZA33
(57)【要約】
本発明は1種または複数の活性成分を含む外用眼科用組成物に関する。外用眼科用組成物中の活性成分としては、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩があるが、これらに限定されない。外用眼科用組成物を使用する老視の治療の方法、老視を有する対象の近見視力を改善する方法、および老視を有する対象の瞳孔径を減少させる方法も本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される1種または複数の活性成分ならびに緩衝剤を含む外用眼科用組成物であって、約3.0~約5.5のpHを有し、増粘成分を含まない、外用眼科用組成物。
【請求項2】
カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される1種または複数の活性成分ならびに緩衝剤を含む外用眼科用組成物であって、約3.0~約5.5のpHおよび約1センチポイズ(cps)~約10cpsの粘度を有する、外用眼科用組成物。
【請求項3】
カルバコールまたはヨウ化ホスホリンが、約0.01%(質量/容量)~約20%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項1または2に記載の外用眼科用組成物。
【請求項4】
カルバコールまたはヨウ化ホスホリンが、約0.01%(質量/容量)~約10%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項3に記載の外用眼科用組成物。
【請求項5】
カルバコールが、約0.03%(質量/容量)~約3.5%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項4に記載の外用眼科用組成物。
【請求項6】
カルバコールが、約0.1%(質量/容量)~約1%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項5に記載の外用眼科用組成物。
【請求項7】
カルバコールが0.6%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項6に記載の外用眼科用組成物。
【請求項8】
ヨウ化ホスホリンが、約0.01%(質量/容量)~約0.25%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項4に記載の外用眼科用組成物。
【請求項9】
ヨウ化ホスホリンが0.06%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項8に記載の外用眼科用組成物。
【請求項10】
緩衝剤が、クエン酸ナトリウム二水和物(dehydrate)緩衝剤、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、ホウ酸クエン酸緩衝剤、および乳酸緩衝剤からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の外用眼科用組成物。
【請求項11】
1種または複数のオスモル濃度剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の外用眼科用組成物。
【請求項12】
1種または複数のオスモル濃度剤が、グリセリン、プロピレングリコール、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびデキストロースからなる群から選択される、請求項12に記載の外用眼科用組成物。
【請求項13】
保存剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の外用眼科用組成物。
【請求項14】
保存剤が、塩化ベンザルコニウムおよび安定化オキシクロロ錯体からなる群から選択される、請求項13に記載の外用眼科用組成物。
【請求項15】
カルバコールを唯一の活性成分として含む、請求項1~7および10~14のいずれか1項に記載の外用眼科用組成物。
【請求項16】
ヨウ化ホスホリンを唯一の活性成分として含む、請求項1~4および8~14のいずれか1項に記載の外用眼科用組成物。
【請求項17】
投与後に、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、および少なくとも約24時間からなる群から選択される期間有効性を持続する、請求項1~16のいずれか1項に記載の外用眼科用組成物。
【請求項18】
1日1回投与される、請求項1~17のいずれか1項に記載の外用眼科用組成物。
【請求項19】
1日2回投与される、請求項1~18のいずれか1項に記載の外用眼科用組成物。
【請求項20】
対象の両眼に投与される、請求項1~19のいずれか1項に記載の外用眼科用組成物。
【請求項21】
対象の非優位眼に投与される、請求項1~19のいずれか1項に記載の外用眼科用組成物。
【請求項22】
対象の優位眼に投与される、請求項1~19のいずれか1項に記載の外用眼科用組成物。
【請求項23】
老視の治療を必要とする対象の老視を治療する方法であって、対象の少なくとも片眼に、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される1種または複数の活性成分を含む治療上有効な量の外用眼科用組成物を投与することを含む、方法。
【請求項24】
近見視力の改善を必要とする老視を有する対象の近見視力の改善の方法であって、対象の少なくとも片眼に、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される1種または複数の活性成分を含む治療上有効な量の外用眼科用組成物を投与することを含む、方法。
【請求項25】
瞳孔径の減少を必要とする老視を有する対象の瞳孔径を減少させる方法であって、対象の少なくとも片眼に、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される1種または複数の活性成分を含む治療上有効な量の外用眼科用組成物を投与することを含む、方法。
【請求項26】
外用眼科用組成物の投与後約30分~約120分の期間にわたり、ベースライン瞳孔径の約20%~約30%の瞳孔径の減少をもたらす、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
外用眼科用組成物の投与後約180分で、ベースライン瞳孔径の約10%の瞳孔径の減少をもたらす、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
外用眼科用組成物がカルバコールを唯一の活性成分として含む、請求項23~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
カルバコールが、約0.01%(質量/容量)~約10%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
カルバコールが、約0.03%(質量/容量)~約3.5%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
カルバコールが、約0.1%(質量/容量)~約1%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
カルバコールが0.6%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
外用眼科用組成物がヨウ化ホスホリンを唯一の活性成分として含む、請求項23~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
ヨウ化ホスホリンが、約0.01%(質量/容量)~約10%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ヨウ化ホスホリンが、約0.01%(質量/容量)~約0.25%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ヨウ化ホスホリンが0.06%(質量/容量)の濃度で存在する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
外用眼科用組成物が、約3.0~約5.5のpHを有する、請求項23~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
外用眼科用組成物が増粘成分を含まない、請求項23~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
実質的に本明細書に記載される通りである、外用眼科用組成物。
【請求項40】
実質的に本明細書に記載される通りである、老視の治療を必要とする対象の老視を治療する方法。
【請求項41】
実質的に本明細書に記載される通りである、瞳孔径の減少を必要とする老視を有する対象の瞳孔径を減少させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩を含むがこれらに限定されない1種または複数の活性成分ならびに緩衝剤を含む外用眼科用組成物を使用する、老視を治療する方法であって、外用眼科用組成物が、約3.0~約5.5のpHを有し、一般に増粘成分(viscosity-enhancing component)を含まない、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コリン作動性アゴニストは、眼内圧(「IOP」)を低下させて原発開放隅角緑内障を治療するために使用されてきた。これらの医薬の例としては、ピロカルピン、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、アセチルコリン、およびそれらのそれぞれの塩形態がある。外用コリン作動性アゴニストは、眼の毛様体中に位置する毛様体筋に作用し(Levin et al., Adler's Physiology of the Eye, 11th edition by Saunders Elsevier (Edinburgh), pp. 56, 57, and 509-510)、それによりそれを収縮させ、次いで線維柱帯を開ける(同上、pp. 44, 45, and 289-291)。これにより房水が眼を離れる速度が促進され得て、最終結果は原発開放隅角緑内障を有する患者の眼内圧(「IOP」)の低下である。ムスカリン介在性の毛様体筋収縮は小帯線維の緩和をもたらし、レンズを厚くさせて、近くの物体の焦点を網膜に合わせる(遠近調節)。これらの薬剤は、虹彩括約筋上に存在するムスカリン性コリン受容体にも作用して、筋を収縮させて瞳孔収縮(すなわち縮瞳)を起こす(Levin et al., Adler's Physiology of the Eye, 11th edition by Saunders Elsevier (Edinburgh), pp. 56, 57, and 509-510)。
【0003】
およそ40歳以上の患者において、主として眼内のレンズの硬直による(特に近距離で)焦点を合わす能力の段階的な減少、老視として知られる屈折状態がある(Levin et al., Adler's Physiology of the Eye E-Book, 11th edition by Saunders Elsevier (Edinburgh), pp. 59-61)。これらの患者におけるコリン作動性アゴニストの適用は、括約筋収縮から生じる縮瞳が、「ピンホール効果」をうみだし、それにより被写界深度を増加させることにより近見および中間視力を改善する可能性があるので有益である。これらのコリン作動性アゴニストはこのように老視の治療に使用できるが、最も有効な投薬頻度および投与濃度は規定されていない。本開示はこの必要性に対処する。さらに、現在利用可能な市販の眼科用製剤は、典型的には、増粘ポリマーと共に製剤化されている(Ritch et al., The Glaucomas, Mosby (St. Louis), p. 517, 1989)。増粘ポリマーは、眼科用組成物の有効成分の角膜滞留時間を増加させて、眼への浸透を増加させるために使用されるが、その理由は、有効成分が涙および鼻涙管ドレナージにより希釈されるからである。しかし、市販されている眼科用製剤中の添加されたポリマーによる粘度は、多くの場合、かすみ目などの有害作用をもたらし、そのような眼科用製剤の使用が制限される(Hall et al., Optom. Vis. Sci., 88, pp. 872-880, 2011)。さらに、場合によっては、添加されたポリマーは、眼痛、眼窩上疼痛(brow ache)、視界不良、光感受性、眼の刺痛、および眼のかゆみなどの眼の不快感を起こす。これらの有害作用は、患者コンプライアンスの低下をもたらす。そのため、治療効力を損なわないと同時に、現在利用可能な市販の眼科用製剤と通常関連する有害作用を減少させるかまたは除去することにより、眼の快適さを最適にし、患者コンプライアンスを改善する、改善された外用眼科用組成物が当技術分野に必要とされている。本開示は、さらにこの必要性に対処する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示される特定の実施形態は、1種または複数の活性成分を含む外用眼科用組成物に関する。外用眼科用組成物中の活性成分は、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩を含み得るが、これらに限定されない。さらに、外用眼科用組成物は、好ましくは緩衝剤を含み、約3.0~約5.5のpHを有し、増粘成分を含まない。
本明細書に開示される特定の実施形態は、1種または複数の活性成分を含む外用眼科用組成物をさらに提供する。外用眼科用組成物中の活性成分は、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩を含み得るが、これらに限定されない。さらに、外用眼科用組成物は好ましくは、約3.0~約5.5のpHおよび約1センチポイズ(cps)~約10cpsの粘度を有する、緩衝剤を含む。
【0005】
本明細書に開示される特定の実施形態は、老視の治療を必要とする対象の老視を治療する方法であって、対象の少なくとも片眼に、1種または複数の活性成分を含む治療上有効な量の1種または複数の外用眼科用組成物を投与することを含む、方法も提供する。外用眼科用組成物中の活性成分は、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩を含み得るが、これらに限定されない。外用眼科用組成物は、好ましくは緩衝剤も含む。
本明細書に開示される特定の実施形態は、近見視力の改善を必要とする老視を有する対象の近見視力の改善の方法をさらに提供する。方法は、対象の少なくとも片眼に、1種または複数の活性成分を含む治療上有効な量の1種または複数の外用眼科用組成物を投与することを含む。外用眼科用組成物中の活性成分は、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩を含み得るが、これらに限定されない。外用眼科用組成物は、好ましくは緩衝剤も含む。
【0006】
本明細書に開示される特定の実施形態は、瞳孔径の減少を必要とする老視を有する対象の瞳孔径を減少させる方法をさらに提供する。方法は、対象の少なくとも片眼に、1種または複数の活性成分を含む治療上有効な量の1種または複数の外用眼科用組成物を投与することを含む。外用眼科用組成物中の活性成分は、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩を含み得るが、これらに限定されない。外用眼科用組成物は、好ましくは緩衝剤も含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ウサギ動物モデルの瞳孔径に対するピロカルピンの効果を示す。
図2】ウサギ動物モデルの瞳孔径に対するカルバコールの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全技術用語および科学用語は、主題が関連する分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。
本明細書および添付される特許請求の範囲で使用される通り、単数形「a(1つの)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。
本発明は1種または複数の活性成分を含む外用眼科用組成物を提供する。本明細書で使用される用語「外用」は、それを必要とする対象の眼の角膜表面への直接適用が意図される組成物を指す。そのような適用は、例えば、点眼液ディスペンサー(eyedrop dispenser)により達成され得る。用語「外用」は対象の眼への注射(例えば、前房注射)を含まない。
本明細書で使用される用語「眼科用組成物」または「本発明の眼科用組成物」は、対象の眼への適用に好適な組成物を指し、それは、1種または複数の活性成分(例えば、カルバコール、ヨウ化ホスホリン)の生物学的活性を有効にすることが可能な形態であり、組成物が投与される対象にとって許容できないほど毒性がある追加成分を全く含まない。そのような眼科用組成物は一般に滅菌されているだろう。そのため、眼への外用適用のために、本発明の眼科用組成物は、一般に、滅菌された水性組成物(例えば、懸濁液、溶液、乳液など)として製剤化され、典型的には少なくとも70質量/容量%、より典型的には80質量/容量%、さらにより典型的には少なくとも90または95質量/容量%の精製水を含むだろう。そのような眼科用組成物は、液体調製物、例えば点眼剤の形態であり得る。眼科用組成物は、単回投与外用適用にも複数回投与(multiple-dose)外用適用にも好適であり得る。多回用量(multi-dose)外用適用に好適な眼科用組成物は、多くの場合、ディスペンサー(例えば点眼器)に分注され、それは、眼科用組成物を(例えば、個別の液滴として)眼の角膜表面に分注できる。
【0009】
本明細書で使用される通り、用語「活性成分」は、本発明の外用眼科用組成物の治療効果の原因である組成物の成分を指すが、組成物の他の成分(例えば、賦形剤、担体、および希釈剤)は、それらが、製剤の一部として必要であるかまたは望まれる他の機能(潤滑、pH制御、乳化、安定化、保存、および他の機能など)を組成物中で有するとしても、組成物の治療効果の原因ではない。一部の実施形態において、活性成分は、老視などの眼の病態の治療のための、または老視を有する対象の近見視力を改善するための、または老視を有する対象の瞳孔径を減少させるための治療活性を有する。
本発明の外用眼科用組成物中の活性成分としては、カルバコールおよびヨウ化ホスホリンがあるが、これらに限定されない。カルバコールはコリン作動性副交感神経刺激薬であり、カルバモイルコリンクロリドまたはカルバミルコリンクロリドと称されることもあり、通常以下の構造により表される:
【0010】
【化1】
カルバコールは、典型的には、上記に描かれるように塩化物対イオンを有する正電荷を帯びた第四級アンモニウム化合物として現れるが、他の塩形態も可能である。
ヨウ化ホスホリンは不可逆性アセチルコリンエステラーゼ阻害剤であり、エコチオフェートまたは(2-メルカプトエチル)トリメチルアンモニウムヨージドO,O-ジエチルホスホロチオエートと称されることもある。それは以下の構造を有する:
【化2】
ホスホリンは第四級アンモニウム塩であり、典型的には上記に描かれるようにヨウ化物対イオンと共に現れるが、他の塩形態も可能である。
【0011】
特定の実施形態において、本発明の組成物中の1種または複数の活性成分の少なくとも1種は、少なくとも約0.01%質量/容量の濃度で存在する。他の実施形態において、1種または複数の活性成分の少なくとも1種は、約0.01%質量/容量未満の濃度で存在する。追加の実施形態において、1種または複数の活性成分は、少なくとも約0.01%質量/容量の濃度でそれぞれ存在する。特定の態様において、1種または複数の活性成分の少なくとも1種は、約0.01%質量/容量~約20%質量/容量の濃度で存在する。他の態様において、1種または複数の活性成分は、約0.01%質量/容量~約20%質量/容量の濃度でそれぞれ存在する。一部の実施形態において、1種または複数の活性成分の少なくとも1種は、約0.01%質量/容量~約10%質量/容量の濃度で存在する。他の実施形態において、1種または複数の活性成分は、約0.01%質量/容量~約10%質量/容量の濃度でそれぞれ存在する。特定の実施形態において、1種または複数の活性成分の少なくとも1種は、約0.03%質量/容量~少なくとも約3%質量/容量の濃度で存在する。他の実施形態において、1種または複数の活性成分は、約0.03%質量/容量~少なくとも約3%質量/容量の濃度でそれぞれ存在する。追加の実施形態において、1種または複数の活性成分の少なくとも1種は、約0.1%質量/容量~少なくとも約1%質量/容量の濃度で存在する。さらなる実施形態において、1種または複数の活性成分は、約0.1%質量/容量~少なくとも約1%質量/容量の濃度でそれぞれ存在する。
【0012】
特定の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物はカルバコールを活性成分として含む。特定の態様において、カルバコールは、本発明の外用眼科用組成物中に存在する唯一の活性成分である。一部の実施形態において、カルバコールは薬学的に許容される塩として存在する。一部の実施形態において、カルバコールが外用眼科用組成物の一部である場合、化合物は、眼の病態の治療または視覚パラメーターの改善のための治療活性を有する唯一の活性成分である。例えば、これは、老視を含むがこれに限定されない眼の病態の治療、または老視を有する対象の近見視力を改善するための、もしくは老視を有する対象の瞳孔径を減少させるための治療を含み得る。特定の態様において、外用眼科用組成物は少なくとも約0.01%(質量/容量)のカルバコールを含む。他の態様において、外用眼科用組成物は約0.01%(質量/容量)未満のカルバコールを含む。一部の実施形態において、外用眼科用組成物は、カルバコールを約0.01%(質量/容量)~約20%(質量/容量)の濃度で含む。他の実施形態において、外用眼科用組成物は、カルバコールを約0.01%(質量/容量)~約10%(質量/容量)の濃度で含む。さらに他の実施形態において、外用眼科用組成物は、カルバコールを約0.03%(質量/容量)~約3%(質量/容量)の濃度で含む。追加の実施形態において、外用眼科用組成物は、カルバコールを約0.1%(質量/容量)~約1%(質量/容量)の濃度で含む。具体的な実施形態において、外用眼科用組成物は、カルバコールを約0.6%(質量/容量)の濃度で含む。使用され得るカルバコールの他の量としては、0.01%(質量/容量)、0.02%(質量/容量)、0.03%(質量/容量)、0.04%(質量/容量)、0.05%(質量/容量)、0.06%(質量/容量)、0.07%(質量/容量)、0.08%(質量/容量)、0.09%(質量/容量)、0.10%(質量/容量)、0.11%(質量/容量)、0.12%(質量/容量)、0.13%(質量/容量)、0.14%(質量/容量)、0.15%(質量/容量)、0.16%(質量/容量)、0.17%(質量/容量)、0.18%(質量/容量)、0.19%(質量/容量)、0.20%(質量/容量)、0.25%(質量/容量)、0.30%(質量/容量)、0.40%(質量/容量)、0.45%(質量/容量)、0.50%(質量/容量)、0.55%(質量/容量)、0.60%(質量/容量)、0.65%(質量/容量)、0.70%(質量/容量)、0.75%(質量/容量)、0.80%(質量/容量)、0.90%(質量/容量)、0.95%(質量/容量)、1.0%(質量/容量)、1.1%(質量/容量)、1.2%(質量/容量)、1.25%(質量/容量)、1.50%(質量/容量)、1.75%(質量/容量)、2.0%(質量/容量)、2.25%(質量/容量)、2.5%(質量/容量)、3.0%(質量/容量)、3.25%(質量/容量)、3.5%(質量/容量)、3.75%(質量/容量)、4%(質量/容量)、4.5%(質量/容量)、5%(質量/容量)、ならびにカルバコールのこれらの選択された量のいずれかの間の範囲および量がある。
【0013】
他の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物はヨウ化ホスホリンを活性成分として含む。特定の態様において、ヨウ化ホスホリンは本発明の外用眼科用組成物中に存在する唯一の活性成分である。一部の実施形態において、ヨウ化ホスホリンは薬学的に許容される塩として存在する。一部の実施形態において、ヨウ化ホスホリンが外用眼科用組成物の一部である場合、化合物は、眼の病態の治療または視覚パラメーターの改善のための治療活性を有する唯一の活性成分である。例えば、これは、眼の病態の治療または視覚パラメーターを改善するための治療を含み得る。特定の態様において、外用眼科用組成物は少なくとも約0.01%(質量/容量)のヨウ化ホスホリンを含む。他の態様において、外用眼科用組成物は約0.01%(質量/容量)未満のヨウ化ホスホリンを含む。一部の実施形態において、外用眼科用組成物は、ヨウ化ホスホリンを約0.01%(質量/容量)~約20%(質量/容量)の濃度で含む。他の実施形態において、外用眼科用組成物は、ヨウ化ホスホリンを約0.01%質量/容量~約10%質量/容量の濃度で含む。追加の実施形態において、外用眼科用組成物は、ヨウ化ホスホリンを約0.01%(質量/容量)~約0.25%(質量/容量)の濃度で含む。具体的な実施形態において、外用眼科用組成物は、ヨウ化ホスホリンを約0.06%(質量/容量)の濃度で含む。使用され得るヨウ化ホスホリンの他の量としては、0.001%(質量/容量)、0.025%(質量/容量)、0.005%(質量/容量)、0.075%(質量/容量)、0.01%(質量/容量)、0.02%(質量/容量)、0.03%(質量/容量)、0.04%(質量/容量)、0.05%(質量/容量)、0.055%(質量/容量)、0.06%(質量/容量)、0.065%(質量/容量)、0.07%(質量/容量)、0.08%(質量/容量)、0.09%(質量/容量)、0.10%(質量/容量)、0.11%(質量/容量)、0.12%(質量/容量)、0.13%(質量/容量)、0.14%(質量/容量)、0.15%(質量/容量)、0.16%(質量/容量)、0.17%(質量/容量)、0.18%(質量/容量)、0.19%(質量/容量)、0.20%(質量/容量)、0.25%(質量/容量)、0.30%(質量/容量)、0.40%(質量/容量)、0.45%(質量/容量)、0.50%(質量/容量)、0.55%(質量/容量)、0.60%(質量/容量)、0.65%(質量/容量)、0.70%(質量/容量)、0.75%(質量/容量)、0.80%(質量/容量)、0.90%(質量/容量)、0.95%(質量/容量)、1.0%(質量/容量)、1.1%(質量/容量)、ならびにヨウ化ホスホリンのこれらの選択された量のいずれかの間の範囲および量がある。
【0014】
外用眼科用組成物は、活性成分の薬学的に許容される塩も含み得る。本明細書で使用される通り、用語「薬学的に許容される塩」は、生体、例えば、外用眼科用組成物を必要とする対象にとって実質的に非毒性である本発明の外用眼科用組成物の1種または複数の活性薬剤の塩を指す。典型的な薬学的に許容される塩としては、本発明の1種または複数の活性成分と、本発明の1種または複数の活性成分に存在する置換基に応じて無機もしくは有機酸または有機塩基との反応により調製される塩がある。
【0015】
活性成分の薬学的に許容される塩を調製するのに使用され得る無機酸としては、塩化水素酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などがあるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩を調製するのに使用され得る有機酸としては、非限定的に、シュウ酸、炭酸、クエン酸、コハク酸などの脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル-ヘテロ原子-置換アルカン酸、脂肪族および芳香族硫酸などがある。そのため、無機または有機酸から調製された薬学的に許容される塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、ヨウ化水素酸塩、フッ化水素酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、およびマレイン酸塩があるが、これらに限定されない。好適な薬学的に許容される塩は、活性成分を、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチンなどの有機塩基と反応させることによっても形成され得る。薬学的に許容される塩としては、活性成分の一部の上に存在し得るカルボキシレートまたはスルホネート基と、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、もしくはカルシウムなどの無機カチオン、またはイソプロピルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、およびイミダゾリウムなどの有機カチオンの間で形成される塩がある。これらの塩は全て、本発明の活性成分から、従来の手段により、例えば、適切な酸または塩基を本発明の活性成分と反応させることにより調製され得る。
【0016】
本発明の外用眼科用組成物は好適な緩衝剤も含む。本明細書で使用される通り、用語「緩衝剤」は、酸またはアルカリが溶液に加えられる場合に溶液のpHの変化に抵抗する溶液の成分を指す。緩衝剤は、典型的には、弱酸または弱アルカリをその塩の1種と共に含む。例えば、緩衝剤は、リン酸水素二ナトリウム七水和物、リン酸二水素ナトリウム一水和物、水酸化ナトリウム、または塩化水素酸の1種または複数を含み得る。特定の実施形態において、緩衝剤は、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムを含む。緩衝剤の質は、その緩衝能、すなわち強酸または強塩基が加えられた場合のpHの変化への抵抗により決まる。言い換えると、緩衝能は、緩衝剤により中和され得るH+またはOH-イオンの量に相当する。緩衝能は緩衝剤濃度に関連する。pHとH+/OH-イオンの添加との関係により記載されるグラフは滴定曲線と呼ばれる。曲線の変曲点は、緩衝剤のpKa値に相当する。緩衝剤の緩衝能はpKa値でその最大である。したがって、緩衝剤のpKa値は、緩衝剤により網羅されるpH範囲の中点に相当し、酸の濃度と塩基の濃度が同じである点を表す。したがって、このpH範囲の領域では、比較的大量のH+/OH-イオンによりpHのごくわずかな変化しかもたらされない。したがって、2つ以上のpKaを有する緩衝剤は、広範囲のH+/OH-イオンにわたり、溶液のpHの変化に抵抗する。2つ以上のpKaを有する緩衝剤の例としては、クエン酸緩衝剤およびリン酸緩衝剤があるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の外用眼科用組成物における使用に好適な緩衝剤は、組成物を低pH(例えば、約3.0~約5.5のpH)に保つことにより保存された組成物を安定化するが、組成物が眼の表面に投与されると素早く生理学的pH(すなわち約7.0のpH)に平衡化するものである。好適な緩衝剤の例としては、クエン酸ナトリウム二水和物(dehydrate)緩衝剤、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、ホウ酸クエン酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、およびクエン酸緩衝剤があるが、これらに限定されない。
特定の実施形態において、緩衝剤は約0.001%(質量/容量)未満の濃度で存在する。他の実施形態において、緩衝剤は少なくとも約0.001%(質量/容量)の濃度で存在する。他の実施形態において、緩衝剤は、約0.001%(質量/容量)~約1%(質量/容量)の濃度で存在する。具体的な実施形態において、緩衝剤はクエン酸ナトリウム二水和物緩衝剤である。特定の態様において、クエン酸ナトリウム二水和物緩衝剤は、約0.01%(質量/容量)~約0.1%(質量/容量)の濃度で存在する。具体的な態様において、クエン酸ナトリウム二水和物緩衝剤は約0.015%(質量/容量)の濃度で存在する。
【0018】
緩衝液は、本発明の外用眼科用組成物のpHを制御し得る。特定の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は、約7.4より低いpHを有する。他の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は、約7.0より低い、約6.5より低い、約6.0より低い、約5.5より低い、約5.0より低い、約4.5より低い、約4.0より低い、約3.5より低い、約3.0より低い、約2.5より低い、約2.0より低い、約1.5より低い、または約1.0より低いpHを有する。特定の態様において、本発明の外用眼科用組成物のpHは、約1.0~約6.5、約1.0~約6.0、約1.0~約5.5、約1.5~約5.5、約2.0~約5.5、約2.5~約5.5、約3.0~約5.5、約3.5~約5.5、約4.0~約5.5、約4.5~約5.5、または約5.0~約5.5の範囲である。特定の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物のpHは約3.0~約5.5の範囲である。具体的な実施形態において、本発明の外用眼科用組成物のpHは5.0である。本発明の眼の外用眼科用組成物のpHは、意外にも、市販の外用眼科用組成物と通常関連する眼の不快感を減少させるか、または除去する。眼の不快症状は、非限定的に、眼痛、眼窩上疼痛、視界不良、光感受性、眼の刺痛、および眼のかゆみを含み得る。
【0019】
本発明の外用眼科用組成物は、二次緩衝剤(secondary buffering agent)を含むことも含まないこともある。特定の態様において、二次緩衝剤としては、非限定的に、クエン酸緩衝剤および酢酸緩衝剤がある。特定の実施形態において、二次緩衝剤は、約0.001mM未満の濃度で存在する。他の実施形態において、二次緩衝剤は少なくとも約0.001mMの濃度で存在する。一部の実施形態において、二次緩衝剤は、約0.01mM~1Mの濃度で存在する。具体的な実施形態において、二次緩衝剤は、約1mM~約100mMの濃度で存在する。
【0020】
増粘剤は、眼科用組成物の有効成分の角膜滞留時間を増加させ、眼への浸透を増加させるために大多数の外用眼科用組成物に使用されるが、その理由は、有効成分が涙および鼻涙管ドレナージにより希釈されるからである。しかし、増粘剤は、視界不良および場合によって刺激の副作用を有する。そのため、現在利用可能な市販の外用眼科用組成物とは逆に、選定された具体的な実施形態において、本発明の外用眼科用組成物の一部は、増粘成分を含まない。意外にも、本発明の外用眼科用組成物は、増粘成分の使用なしに優れた有効性結果を示した。本明細書で使用される通り、本発明の外用眼科用組成物の用語「粘度」は、液体に通常使用されている通りに使用され、所与の速度での変形に対する液体の抵抗の尺度を意味する。そのため、粘度は、単位距離離れた外用眼科用組成物の平行層が、互いに対して単位速度を有する流れに抵抗する単位面積あたりの力により測定される内部摩擦の規模を表す量である。せん断応力に対する抵抗が全くない流体は、理想または非粘性流体として知られる。零粘度は超流体において極低温でのみ観察される。そうでない場合、熱力学第二法則により、全流体が正の粘度を有することが要求される;そのような流体は、専門的には、粘性がある、または粘性であると言われる。ピッチなどの比較的高い粘度を有する流体は固体のように見えることがある。特定の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は、約1センチポイズ(cps)~約10cpsの粘度を有する。特定の態様において、本発明の外用眼科用組成物は、純水(1cps)に近い粘度を有する。具体的な態様において、本発明の外用眼科用組成物は約1cpsの粘度を有する。
【0021】
本明細書で使用される通り、用語「増粘成分」は、本発明の外用眼科用組成物の粘度を増加させるあらゆる物質を指す。増粘成分は、ヒプロメロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、メチルセルロース4000、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース2906、カルボキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ピロリドン、ポリビニルピロリドン、ゲラン、カラギーナン、アルギン酸、カルボキシビニルポリマー、グリセロール、アクリルポリマー(例えば、カルボマー、ポリカルボフィル)、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピル-グアー(hp-グアー)、キサンタンガム、アルギネート、キトサン、ゲルライト、デキストラン、またはこれらの組合せを含むがこれらに限定されないポリマーであり得る。具体的な実施形態において、上記に列記されたポリマー性増粘剤が増粘以外の別の目的に役立つように使用され得るとしても、本発明の組成物は、化合物のいずれも含まない。他の具体的な実施形態において、上記に列記されたポリマー性増粘剤が増粘以外の別の目的に役立つように使用され得るとしても、本発明の組成物は、化合物のいずれかの痕跡量しか含まない。本明細書で使用される通り、痕跡量は、約100ppm(グラムあたり100マイクログラムまたはミリリットルあたり100マイクログラム)以下の濃度を意味する。他の具体的な実施形態において、上記に列記されたポリマー性増粘剤が増粘以外の別の目的に役立つように使用され得るとしても、本発明の組成物は、化合物のいずれかの少量を、生じる組成物の粘度が、約20cps以下、約15cps以下、約10cps以下、約5cps以下、または約2cps以下であるという条件で含み得る。他の態様において、増粘成分は非ポリマー性であり得る。具体的な実施形態において、上記に列記された非ポリマー性増粘剤が増粘以外の別の目的に役立つように使用され得るとしても、本発明の組成物は、化合物のいずれも含まない。他の具体的な実施形態において、上記に列記された非ポリマー性増粘剤が増粘以外の別の目的に役立つように使用され得るとしても、本発明の組成物は、化合物のいずれかの痕跡量しか含まない。他の具体的な実施形態において、上記に列記された非ポリマー性増粘剤が増粘以外の別の目的に役立つように使用され得るとしても、本発明の組成物は、化合物のいずれかの少量を、生じる組成物の粘度が、約20cps以下、約15cps以下、約10cps以下、約5cps以下、または約2cps以下であるという条件で含み得る。
【0022】
本発明の外用眼科用組成物は、1種または複数のオスモル濃度剤(浸透圧剤)(osmolality agent)を、本発明の外用眼科用組成物をほぼ等張性にする量でさらに含み得る。「オスモル濃度」は、所与の容量の溶液中の溶解している粒子の総数の尺度である。本明細書で使用される通り、用語「オスモル濃度剤」は、外用眼科用組成物のオスモル濃度を調整するのに有用なあらゆる化合物または物質を含む。オスモル濃度剤の例としては、塩、特に塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、プロピレングリコール、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、およびグリセリンなどの有機化合物があるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物のオスモル濃度剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよびデキストロースがあるが、これらに限定されない。
【0023】
「張性」は、半透膜により分離された2つの溶液の水ポテンシャルにより定義される、有効浸透圧勾配の尺度である。言い換えると、張性は、拡散の向きおよび程度を決める、溶液中に溶解している溶質の相対濃度である。その用語は、通常、外液に浸された細胞の反応を記述する際に使用される。浸透圧とは異なり、膜を通過できない溶質のみが有効浸透圧を発揮できるので、張性はこれらにのみ影響される。膜を自由に通過できる溶質は、膜の両側で常に等しい濃度であるので、張性に影響しない。ある溶液が別の溶液に対して有し得る張性の3つの分類:高張性、低張性、および等張性がある。溶液は、その有効なオスモル濃度がもう1つの溶液のオスモル濃度と同じ場合に「等張性」である。生物学では、細胞膜の両側の溶液は、例えば、細胞外の溶質の濃度が細胞内の溶質の濃度と等しい場合に等張性である。
【0024】
特定の実施形態において、1種または複数のオスモル濃度剤は、グリセリン、プロピレングリコール、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびデキストロースからなる群から選択される。オスモル濃度剤の量は、外用眼科用組成物が等張性、高張性、または低張性のいずれであるかにより変わり得る。特定の実施形態において、上記に列記されたものなどのオスモル濃度剤の量は、少なくとも約0.0001%(質量/容量)から約1%(質量/容量)、約2%(質量/容量)、約5%(質量/容量)、約10%(質量/容量)、または約20%(質量/容量)までであり得る。一部の実施形態において、1種または複数のオスモル濃度剤の少なくとも1種は、少なくとも約0.0001%(質量/容量)の濃度で存在する。他の実施形態において、1種または複数のオスモル濃度剤は、少なくとも約0.0001%(質量/容量)の濃度でそれぞれ存在する。一部の実施形態において、1種または複数のオスモル濃度剤の少なくとも1種は、約0.001%(質量/容量)~約20%(質量/容量)の濃度で存在する。他の実施形態において、1種または複数のオスモル濃度剤は、約0.001%(質量/容量)~約20%(質量/容量)の濃度でそれぞれ存在する。追加の実施形態において、1種または複数のオスモル濃度剤の少なくとも1種は、約0.001%(質量/容量)~約5%(質量/容量)の濃度で存在する。さらなる実施形態において、1種または複数のオスモル濃度剤は、約0.001%(質量/容量)~約5%(質量/容量)の濃度でそれぞれ存在する。さらに他の実施形態において、1種または複数のオスモル濃度剤の少なくとも1種は、約0.001%(質量/容量)~約2.5%(質量/容量)の濃度で存在する。追加の実施形態において、1種または複数のオスモル濃度剤は、約0.001%(質量/容量)~約2.5%(質量/容量)の濃度でそれぞれ存在する。さらに他の実施形態において、1種または複数のオスモル濃度剤の少なくとも1種は、約0.001%質量/容量~約1%質量/容量の濃度で存在する。さらなる実施形態において、1種または複数のオスモル濃度剤は、約0.001%(質量/容量)~約1%(質量/容量)の濃度でそれぞれ存在する。特定の実施形態において、オスモル濃度剤は塩化ナトリウムである。特定の態様において、塩化ナトリウムは、約0.1%(質量/容量)~約0.9%(質量/容量)の濃度で存在する。具体的な実施形態において、塩化ナトリウムは約0.37%(質量/容量)の濃度で存在する。
【0025】
本発明の外用眼科用組成物は強酸または強塩基をさらに含み得る。強酸および強塩基の例は当技術分野に周知であり、非限定的に、NaOH、KOH、HCl、およびH2SO4を含む。具体的な態様において、本発明の外用眼科用組成物はNaOHまたはHClをさらに含む。
本発明の外用眼科用組成物はホウ酸も含み得る。特定の実施形態において、ホウ酸は、約0.01%(質量/容量)~約5%(質量/容量)の濃度で存在する。追加の実施形態において、ホウ酸は、約0.1%(質量/容量)~約1.5%(質量/容量)の濃度で存在する。具体的な実施形態において、ホウ酸は約1%(質量/容量)の濃度で存在する。
【0026】
本発明の外用眼科用組成物は単回使用のために包装され得て、保存剤を全く含まないか、または保存剤を基本的に全く含まない。あるいは、本発明の外用眼科用組成物は複数回使用のために包装され得て、複数回の使用にわたり汚染を防ぐ好適な保存剤を含む。本明細書で使用される通り、用語「保存剤」は、本発明の外用眼科用溶液中の細菌または真菌の成長の形態の汚染を防ぐかまたは妨げるあらゆる物質を意味する。好適な保存剤の例としては、塩化ベンザルコニウム(BAK)、ポリクオタニウム-1(Polyquad(登録商標))、クロロブタノール、ならびに亜塩素酸塩、塩素酸塩、および二酸化塩素を含む安定化オキシクロロ錯体(別名安定化二酸化塩素)があるがこれらに限定されない。安定化オキシクロロ錯体は、Purite(登録商標)としても知られ、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)の水溶液として記載され得る。参照により本明細書に全体として組み込まれる米国特許第5,424,078号は、外用眼科用組成物の保存剤としての安定化オキシクロロ錯体の使用をさらに議論している。
【0027】
特定の実施形態において、保存剤は少なくとも約1ppmの濃度で存在する。他の実施形態において、保存剤は約1ppm未満の濃度で存在する。一部の態様において、保存剤は、約1ppm~約1000ppmの濃度で存在する。他の態様において、保存剤は、約10ppm~約300ppmの濃度で存在する。他の実施形態において、保存剤は、約10ppm~約200ppmの濃度で存在する。特定の態様において、保存剤は約0.001%(質量/容量)未満の濃度で存在する。他の態様において、保存剤は少なくとも約0.001%(質量/容量)の濃度で存在する。特定の実施形態において、保存剤は、約0.001%(質量/容量)~約1%(質量/容量)の濃度で存在する。特定の態様において、保存剤は塩化ベンザルコニウムである。一部の態様において、塩化ベンザルコニウムは、約0.002%(質量/容量)~約0.02%(質量/容量)の濃度で存在する。具体的な態様において、塩化ベンザルコニウムは約0.0075%(質量/容量)の濃度で存在する。
【0028】
本発明の外用眼科用組成物は当業者に公知である技法により調製され得る。本発明の外用眼科用組成物は、水溶液でも、乳液でも、懸濁液でもよく、乾燥調製物でもよい。一部の態様において、本発明の外用眼科用組成物は、保存または製剤目的のために、例えば凍結乾燥または噴霧乾燥により乾燥または凍結乾燥され得る。特定の態様において、本発明の固体組成物は、その後に、それを必要とする対象への投与前に適切な液体担体の添加により液体組成物に再構成される。
本発明は、眼の病態の治療を必要とする対象の眼の病態を治療する方法であって、1種または複数の本発明の外用眼科用組成物を投与することを含む、方法にさらに関する。本明細書で使用される通り、用語「眼の病態」は、眼または眼の部分もしくは領域の1つを冒すかまたは含み、眼の屈折異常を起こす視覚上の問題を含むあらゆる病態、疾患、または障害を指し得る。眼の病態としては、老視、近視、進行性近視、病的近視、弱視、毛様体筋麻痺、散瞳、アレルギー性結膜炎、結膜充血、赤目、緑内障、高眼圧、屈折手術後の夜間視力症状(例えば、グレア、ハロ、または光の周りのスターバースト)、調節性内斜視、緑内障、高眼圧、調節不全、遠視、瞳孔不同、乱視、弱視、アディー緊張性瞳孔、または副交感神経切除の他の原因、屈折手術後に生じる合併症、例えば、レーシックまたはピーアールケー後の偏心照射、レーシック矯正不足、レーシック矯正過多、角膜の瘢痕、混濁(hazing)、および屈折異常などがあるが、これらに限定されない。具体的な実施形態において、眼の病態は老視である。
【0029】
本発明は、老視の治療を必要とする対象の老視を治療する方法をさらに提供する。方法は、対象の少なくとも片眼に、1種または複数の活性成分を含む治療上有効な量の1種または複数の外用眼科用組成物を投与することを含む。外用眼科用組成物中の活性成分としては、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩があるが、これらに限定されない。外用眼科用組成物は緩衝剤も含む。特定の態様において、外用眼科用組成物は、約3.0~約5.5のpHを有する。他の態様において、外用眼科用組成物は増粘成分を含まない。
「老視」は、典型的には中年および老年で起こる、眼のレンズの弾力性の喪失により起こる遠視である。それは、(特に近距離で)はっきりと焦点を合わす能力を次第に悪化させる、眼の加齢と関連する病態である。症状としては、小さい活字を読むのが困難なこと、読みものを遠くに持たなくてはならないこと、頭痛、および眼精疲労がある。ほとんどの人々は、老視の作用を、40歳を過ぎたころに認識し始め、電話のテキストメッセージを含む小さな活字をはっきり見ることに苦痛を持ち始める。これらの対象におけるコリン作動性アゴニスト(縮瞳薬)の適用は、括約筋収縮から生じる縮瞳が「ピンホール効果」をうみだし、それにより被写界深度を増加させることにより近見および中間視力を改善する可能性があるので有益である。これらのコリン作動性アゴニストはこのように老視の治療に使用され得るが、最も有効な投薬頻度および投与濃度は規定されていない。
【0030】
本明細書で使用される通り、用語「治療すること」は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)処置の両方を指すが、その目的は、疾患(例えば、老視)の進行を予防し、遅くさせ(減少させ)、または改善することである。有益または所望の臨床結果としては、症状の緩和、疾患の程度の低下、疾患の安定した(すなわち悪化しない)状態、疾患進行の遅延または緩徐化、病態の改善または軽減、および疾患の逆転(部分的でも全体的でも)があるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用される通り、用語「対象」は、診断、予後、または療法が望まれるあらゆる個体、例えば哺乳動物を指す。用語「対象」は、眼の病態または疾患に罹患した、罹患しそうな、または罹患したと疑われるヒトまたは非ヒト哺乳動物を意味し得る。本明細書に提供される外用眼科用組成物は、主としてヒトへの投与に好適な組成物を対象にするが、当業者は、そのような組成物が一般に全種類の対象への投与に好適であることを理解するだろう。特定の態様において、対象は哺乳動物である。一部の態様において、哺乳動物は、非限定的に、ヒト、サル、および類人猿などの霊長類、ならびに実験動物、スポーツ動物、家畜、および家庭用ペットを含む飼育動物(domestic animals)(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、畜牛、乳牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス)、ならびに野生動物、鳥などの非飼育動物などの非霊長類を含む。
【0032】
本明細書で使用される通り、用語「それを必要とする対象」は、本発明の外用眼科用組成物の投与から利益を得るだろう哺乳動物の対象などの対象を含む。治療を必要とする対象は、非限定的に、病態または障害を既に有するものならびに病態もしくは障害を有する傾向があるもの、または病態もしくは障害を予防、改善、もしくは逆転すべきものを含む。
「治療上有効な」は、処方または指示された通りに使用される場合、プラセボと比べて、外用眼科用組成物が統計的に有意な医学的に有益な効果を発揮できることを意味する。
例えば本発明の外用眼科用組成物を必要とする対象に当てはまる場合の用語「投与する」または「投与すること」は、例えば、本発明の外用眼科用組成物の、対象の少なくとも片眼への接触を指す。細胞の状況では、投与は、本発明の外用眼科用組成物の細胞への接触(例えば、インビトロまたはエクスビボ)ならびに本発明の外用眼科用組成物の、細胞と接触している流体への接触を含む。
【0033】
特定の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物はそれを必要とする対象の片眼にのみ投与される。他の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は、対象の少なくとも片眼に投与される。さらに他の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は対象の両眼に投与される。
通常、対象は優位眼および非優位眼を有する。「優位眼」は、より良い視力を有し、したがって、深視力(depth vision)を支配する眼である。「非優位眼」は、通常、周辺および空間視力を支配する。それらの相互作用により、脳が三次元画像を受け取る。通常、優位眼は、顕微鏡、カメラをのぞくのに使用されるか、または片眼だけが使用される作業に使用される眼である。特定の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は、対象の非優位眼に投与される。他の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は、対象の優位眼に投与される。さらに他の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は、対象の非優位眼および優位眼の両方に投与される。
本発明の外用眼科用組成物は、治療レベルを維持するためにいくつかの間隔で投与される。例えば、本発明の外用眼科用組成物は、1日1回、1日2回(BID)、1日4回(QID)、またはより頻回に投与され得る。一部の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は1日1回投与される。他の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は1日2回投与される。
【0034】
特定の態様において、本発明の外用眼科用組成物は、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、ならびに全中間時点の作用持続時間を有する。具体的な実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は、10時間を超える、例えば12時間、またはさらには24時間の作用持続時間を有する。本明細書で使用される通り、用語「作用持続時間」は、投与された外用眼科用組成物が、それを必要とする対象における少なくとも1つの視覚パラメーター(例えば近見視力の改善)、または眼の病態(例えば老視)、または瞳孔径の減少に対して効果を有する継続期間を指す。特定の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は、投与後に、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、および少なくとも約24時間からなる群から選択される期間有効性を持続する。
【0035】
本発明の外用眼科用組成物は、それを必要とする対象に投与される場合、かすみ目を起こさないか、または著しくは起こさない。さらに、対象に投与される場合、本発明の外用眼科用組成物は、眼のかすみ、眼の不快感、眼痛、眼窩上疼痛、視界不良、光感受性、眼の刺痛、および眼のかゆみがあるがこれらに限定されない1種または複数の有害作用を起こさないか、または著しくは起こさない。
特定の実施形態において、本発明の外用眼科用組成物は、増粘成分ならびにカルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその任意の薬学的に許容される塩からなる群から選択される1種または複数の活性成分を含む第2の眼科用組成物の外用投与と比べて、少なくとも1種の有害作用の発生率を減少させる。特定の場合に、有害作用は、非限定的に、眼のかすみ、眼の不快感、眼痛、眼窩上疼痛、視界不良、光感受性、眼の刺痛、および眼のかゆみを含む。
【0036】
特定の態様において、本発明の外用眼科用組成物を投与することと関連する改善された快適さは組成物の粘度の減少によるものである。他の態様において、本発明の外用眼科用組成物を投与することと関連する改善された快適さは組成物の酸性pHによるものである。さらに他の態様において、本発明の外用眼科用組成物を投与することと関連する改善された快適さは、組成物の粘度減少および酸性pHの両方によるものである。
本発明は、老視を有するその治療を必要とする対象の近見視力の改善の方法にさらに関する。方法は、対象の少なくとも片眼に、1種または複数の活性成分を含む治療上有効な量の1種または複数の外用眼科用組成物を投与することを含む。外用眼科用組成物中の活性成分としては、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩があるが、これらに限定されない。外用眼科用組成物は緩衝剤も含む。特定の態様において、外用眼科用組成物は、約3.0~約5.5のpHを有する。他の態様において、外用眼科用組成物は増粘成分を含まない。
【0037】
本発明は、老視を有するその治療を必要とする対象の近くを読む速度(near reading speed)を改善する方法をさらに提供する。方法は、対象の少なくとも片眼に、1種または複数の活性成分を含む治療上有効な量の1種または複数の外用眼科用組成物を投与することを含む。外用眼科用組成物中の活性成分としては、カルバコール、ヨウ化ホスホリン、およびその薬学的に許容される塩があるが、これらに限定されない。外用眼科用組成物は緩衝剤も含む。特定の態様において、外用眼科用組成物は、約3.0~約5.5のpHを有する。他の態様において、外用眼科用組成物は増粘成分を含まない。
本発明は、老視を有するその治療を必要とする対象の瞳孔径を減少させる方法にさらに関する。方法は、対象の少なくとも片眼に、治療上有効な量の1種または複数の本発明の外用眼科用組成物を投与することを含む。
成人の正常な瞳孔サイズは、明るい光の中の直径2~4mmから暗所での4~8mmに変化する。瞳孔は、一般にサイズが等しい。それらは、直接照明(直接反応)および反対の眼への照明(同感反応)で収縮する。瞳孔は暗所で広がる。眼が近くの物体に焦点を合わせるとき両瞳孔は収縮する(調節反応)。
【0038】
特定の実施形態において、本発明の方法は、本発明の外用眼科用組成物の投与後に約10分~約180分の期間にわたり、ベースライン瞳孔径の少なくとも約10%の瞳孔径の減少をもたらす。他の実施形態において、本発明の方法は、本発明の外用眼科用組成物の投与後に約10分~約180分の期間にわたり、ベースライン瞳孔径の少なくとも約80%の瞳孔径の減少をもたらす。追加の実施形態において、本発明の方法は、本発明の外用眼科用組成物の投与後に約10分~約180分の期間にわたり、ベースライン瞳孔径の約10%~約90%の瞳孔径の減少をもたらす。具体的な実施形態において、本発明の方法は、本発明の外用眼科用組成物の投与後に約30分~約120分の期間にわたり、ベースライン瞳孔径の約20%~約30%の瞳孔径の減少をもたらす。他の実施形態において、本発明の方法は、本発明の外用眼科用組成物の投与後約180分で、ベースライン瞳孔径の約10%の瞳孔径の減少をもたらす。
本発明は、視覚パラメーターの改善を必要とする対象の少なくとも1つの視覚パラメーターを改善する方法であって、対象の少なくとも片眼に、1種または複数の本発明の外用眼科用組成物を投与することを含む、方法をさらに提供する。本明細書で使用される通り、用語「視覚パラメーター」は、測定可能であり、本明細書に記載される外用眼科用組成物および方法により改善される余地がある対象の視力のあらゆる特性を指す。視覚パラメーターとしては、近見視力、中間視力、遠見視力、夜間視力、昼間視力、光学収差(例えば、グレア、光散乱)、および未矯正屈折異常があるが、これらに限定されない。視覚パラメーターの追加の例としては、非限定的に、夜間のグレア、レーシック後の「スターバースト」グレア、光源の周囲に見られる視覚的な「ハロ」、および調節不全がある。
【0039】
近見、中間、および/または遠見視力を含むがこれらに限定されない「視覚パラメーターを改善すること」という用語は、例えば、全てベースラインからの(すなわち治療前からの)、投薬後の任意の時点で正しく読まれた文字の数の増加、平均文字変化(average letter change)の増加、または2ラインもしくは3ライン改善(2-line or 3-line improvement)に反映され得る。夜間視力改善は、薄暗いまたは暗い照明(例えば、薄明視または暗所視条件下)での対象の視力改善に反映され得る。昼間視力改善は、昼光時間の間または日光に見られる明るい照明の中の(例えば明所視条件下)対象の視力改善に反映され得る。本明細書に記載される方法を使用する視力改善は、老眼鏡、レンズ調節医薬(lens modifying medications)、および眼内レンズ(IOL)を含む手術による老眼選択肢を含むがこれらに限定されない他の視覚補助具および装置(例えば老視を治療するために使用されるもの)と組み合わせても、それらを使用する場合にも達成され得る。
【0040】
特定の実施形態において、本明細書に記載される外用眼科用組成物を使用する治療の方法は、明所視の高コントラスト裸眼近見視力(high contrast uncorrected near visual acuity)(UNVA)の条件下で、ベースラインからの少なくとも2ライン改善をもたらす。本明細書で使用される通り、用語「明所」視は、充分な照明がある条件下(輝度レベル10から108カンデラ/m2)での眼の視力である。ヒトおよび他の動物において、明所視は、錐体細胞により媒介された色の認知を、ならびに暗所視(低光量条件下での目の視力;輝度レベル10-3から10-6カンデラ/m2)で利用可能であるより著しく高い視力および時間分割能を可能にする。
本明細書で使用される通り、用語「裸眼近見視力」(UNVA)は、視覚補助具(眼鏡またはコンタクトレンズなど)を全く使用せずに、体から腕の距離内にある(例えば、眼から33~41cm先)物体の細部をみる対象の能力を指す。
一部の実施形態において、本明細書に記載される外用眼科用組成物を使用する治療の方法は、明所視の高コントラストUNVAの条件下で、ベースラインからの少なくとも3ライン改善をもたらす。他の実施形態において、本明細書に記載される方法は、明所視の高コントラストUNVAの条件下で、ベースラインからの平均文字変化の増加をもたらす。
【0041】
用語「ベースラインからの改善」は、特定の治療後の時点で正しく読まれた文字の数の、治療前からの増加を指す。本明細書で使用される通り、用語「ベースラインからの2ライン改善」または「ベースラインからの3ライン改善」またはベースラインからの類似の改善は、本発明の外用眼科用組成物による治療後に、標準的なチャート(例えば、スネレン、ETDRS、対数視力表など)上で、治療前の読むことが可能なライン数と比べて、さらに2または3ライン多い文字を読む対象の能力を指す。
特定の実施形態において、本明細書に記載される外用眼科用組成物を使用する治療の方法は、薄明視の高コントラストUNVAの条件下で、ベースラインからの少なくとも2ライン改善をもたらす。本明細書で使用される通り、用語「薄明」視は、光量が少ないが完全に暗いのではない照明状態の明所視と暗所視の組合せを指す。薄明視の光レベルは、およそ0.001~3カンデラm-2の輝度の範囲である。ほとんどの夜間屋外および交通信号のシナリオは薄明視の範囲にある。ヒトの眼は、低光量条件下で暗所視を使用し、中間の状態で薄明視を使用する。ヒトは、異なる光レベルで異なるように見る。これは、典型的な日中の高い光レベル下では(明所視)、眼が錐体細胞を使用して光を処理するからである。電気照明のない月が出ていない夜に相当する非常に低い光レベル下では(暗所視)、眼は桿体細胞を使用して光を処理する。多くの夜間レベルでは、錐体細胞と桿体細胞の組合せが視力を支えている。明所視が優れた色彩識別能力を促進する一方で、暗所視では色は識別不能である。薄明視はこれらの両極端の間に位置する。ほとんどの夜間環境において、真の暗所視を妨げる充分な周囲の光が夜間にある。
【0042】
一部の実施形態において、本明細書に記載される外用眼科用組成物を使用する治療の方法は、薄明視の高コントラストUNVAの条件下で、ベースラインからの少なくとも3ライン改善をもたらす。他の実施形態において、本明細書に記載される方法は、薄明視の高コントラストUNVAの条件下で、ベースラインからの平均文字変化の増加をもたらす。
特定の実施形態において、本明細書に記載される外用眼科用組成物を使用する治療の方法は、明所視の高コントラスト裸眼遠見視力(UDVA)の条件下で、ベースラインからの少なくとも2ライン改善をもたらす。本明細書で使用される通り、用語「裸眼遠見視力」(UDVA)は、視覚補助具(眼鏡またはコンタクトレンズなど)を全く使用せずに、体から腕を伸ばした距離より遠い(例えば、眼から4メートル超先の)物体の細部を見る、対象の能力を指す。
一部の実施形態において、本明細書に記載される外用眼科用組成物を使用する治療の方法は、明所視の高コントラストUDVAの条件下で、ベースラインからの少なくとも3ライン改善をもたらす。他の実施形態において、本明細書に記載される方法は、明所視の高コントラストUDVAの条件下で、ベースラインからの平均文字変化の増加をもたらす。
【0043】
特定の実施形態において、本明細書に記載される外用眼科用組成物を使用する治療の方法は、薄明視の高コントラスト遠方矯正下近見視力(DCNVA)の条件下で、ベースラインからの少なくとも2ライン改善をもたらす。本明細書で使用される通り、用語「遠方矯正下近見視力」(DCNVA)は、遠見視力問題を矯正する眼鏡またはコンタクトレンズなどの視覚補助具を使用して、体から腕の距離内の(例えば眼から33~41cm先)物体の細部を見る対象の能力を指す。
一部の実施形態において、本明細書に記載される外用眼科用組成物を使用する治療の方法は、薄明視の高コントラストDCNVAの条件下で、ベースラインからの少なくとも3ライン改善をもたらす。他の実施形態において、本明細書に記載される方法は、薄明視の高コントラストDCNVAの条件下で、ベースラインからの平均文字変化の増加をもたらす。さらに他の実施形態において、本明細書に記載される方法は、明所視の高コントラストDCNVAの条件下で、ベースラインからの少なくとも3ライン改善をもたらす。追加の実施形態において、本明細書に記載される方法は、明所視の高コントラストDCNVAの条件下で、ベースラインからの少なくとも2ライン改善をもたらす。さらなる実施形態において、本明細書に記載される方法は、明所視の高コントラストDCNVAの条件下で、ベースラインからの平均文字変化の増加をもたらす。
【0044】
特定の実施形態において、本明細書に記載される外用眼科用組成物を使用する治療の方法は、薄明視の高コントラスト遠方矯正下中間視力(DCIVA)の条件下で、ベースラインからの少なくとも2ライン改善をもたらす。本明細書で使用される通り、用語「遠方矯正下中間視力」(DCIVA)は、遠見視力問題を矯正する眼鏡またはコンタクトレンズなどの視覚補助具を使用して、中間距離の物体の細部を見る対象の能力を指すように使用され得る。
一部の実施形態において、本明細書に記載される外用眼科用組成物を使用する治療の方法は、薄明視の高コントラストDCIVAの条件下で、ベースラインからの少なくとも3ライン改善をもたらす。他の実施形態において、本明細書に記載される方法は、薄明視の高コントラストDCIVAの条件下で、ベースラインからの平均文字変化の増加をもたらす。さらに他の実施形態において、本明細書に記載される方法は、明所視の高コントラストDCIVAの条件下で、ベースラインからの少なくとも2ライン改善をもたらす。追加の実施形態において、本明細書に記載される方法は、明所視の高コントラストDCIVAの条件下で、ベースラインからの少なくとも3ライン改善をもたらす。さらなる実施形態において、本明細書に記載される方法は、明所視の高コントラストDCIVAの条件下で、ベースラインからの平均文字変化の増加をもたらす。
【実施例
【0045】
(実施例1)
本発明の外用眼科用組成物
以下の表は本発明の外用眼科用組成物の実施例を与える。
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
(実施例2)
ウサギ動物モデルにおける瞳孔径に対するピロカルピンの効果
0.25%~4%ピロカルピンの濃度範囲を有する投与溶液を調製し、ウサギに投与した。瞳孔径に対する効果を測定し、ベースラインからの変化として記録した。1.25%質量/質量の投与は、0.5~2時間にわたりベースライン瞳孔径からの20~30%減少をもたらし、3時間までベースラインからおよそ10%の減少をもたらした(図1)。
【0049】
(実施例3)
ウサギ動物モデルにおける瞳孔径に対するカルバコールの効果
0.03%~3%カルバコールの濃度範囲を有する投与溶液を調製し、ウサギに投与した。瞳孔径に対する効果を測定し、ベースラインからの変化として記録した。結果は、実施例2においてピロカルピンに関して測定した最適な用量反応(0.5~2時間にわたるベースライン瞳孔径からのおよそ20~30%減少と3時間までのベースラインからのおよそ10%減少)に最も近く合致するだろうカルバコールの投与量範囲がおよそ0.6%質量/質量に相当することを示す。上述の瞳孔サイズ減少をもたらすカルバコールの予測される効能のある範囲は、およそ0.1~1%質量/質量カルバコールに相当するだろう(図2)。
【0050】
(実施例4)
ヨウ化ホスホリンの有効投与量
実施例2においてピロカルピンに関して測定した最適な用量反応(0.5~2時間にわたるベースライン瞳孔径からのおよそ20~30%減少と3時間までのベースラインからのおよそ10%減少)に最も近く合致するだろうヨウ化ホスホリンの有効投与量はおよそ0.06%質量/質量に相当する。したがって、上述の瞳孔サイズ減少をもたらすヨウ化ホスホリンの予測される効能のある範囲は、およそ0.01~0.25%質量/質量ヨウ化ホスホリンに相当する。
【0051】
本発明の特定の実施形態を記載したが、他の実施形態も存在し得る。本明細書は詳細な説明を含むが、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲により示す。さらに、本明細書は構造的特徴および/または方法論的行為(methodological acts)に特有な用語で記載したが、特許請求の範囲は、上述の特徴にも行為にも限定されない。むしろ、上述の具体的な特徴および行為は、本発明の実例的な態様および実施形態として開示する。本明細書の説明を読み取った後に、本発明の趣旨または特許請求の範囲に記載した主題の範囲から逸脱することなく当業者に連想され得る、種々の他の態様、実施形態、変更形態、およびその均等形態。
図1
図2
【国際調査報告】