(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-28
(54)【発明の名称】医薬組成物の電子的に監督された非経口投与のための吸入器
(51)【国際特許分類】
A61M 13/00 20060101AFI20220920BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20220920BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20220920BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
A61M13/00
A61K31/137
A61K9/72
A61M15/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021571036
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(85)【翻訳文提出日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2019064244
(87)【国際公開番号】W WO2020239244
(87)【国際公開日】2020-12-03
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515255146
【氏名又は名称】セロン ファーマ エス.アー.
【氏名又は名称原語表記】CELON PHARMA S.A.
【住所又は居所原語表記】ul. Ogrodowa 2A,PL-05-092 Kielpin/Lomianki,Republic of Poland
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】マチェイ ヴィエチョレク
(72)【発明者】
【氏名】アルチュール ヴィエチョレク
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ トラチキエヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】マチェイ マジストローケ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC01
4C076DD41
4C076DD67
4C076FF70
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA29
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA63
4C206MA76
4C206NA10
4C206ZA12
(57)【要約】
乾燥粉末の形態の医薬組成物のための貯蔵手段(410)と、医薬組成物の投与のための投与手段(411)と、貯蔵部(404)およびプロセシング手段(402)と、通信手段(401)と、医薬組成物の投与をブロックするためのコントロールされたブロッキング手段(403)とを含み、吸入器(400)は投与スキーム(11)に対応するデータを受信し、それに割り当てられた許可トークンを有するモバイルデバイス(300)が存在するかどうかを判定し、それに割り当てられた許可トークン(12)を有するモバイルデバイス(300)の存在下で、投与スキーム(11)のみに従って医薬組成物の投与を可能にするように、コントロールされたブロッキング手段(403)をコントロールするように適合される、乾燥粉末医薬組成物の電子的に監視された非経口投与のための吸入器(400)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥粉末医薬組成物の電子的に監督された非経口投与のための吸入器(400)であって、以下:
乾燥粉末の形態の前記医薬組成物のための貯蔵手段(410);
前記医薬組成物の投与のための投与手段(411);
メモリ(404)およびプロセシング手段(402);
通信手段(401);
前記医薬組成物の投与をブロックするためのコントロールされたブロッキング手段(403)
を含み、
前記吸入器(400)は、投与スキーム(11)に対応するデータを受信し、モバイルデバイス(300)自身に割り当てられた許可トークンを有するモバイルデバイス(300)が存在するかどうかを決定し、前記コントロールされたブロッキング手段(403)をコントロールして、それによってモバイルデバイス(300)自身に割り当てられた許可トークン(12)を有する前記モバイルデバイス(300)の存在下で、投与スキーム(11)に準拠してのみ前記医薬組成物の投与を可能にするように適合される、
吸入器(400)。
【請求項2】
前記吸入器(400)は、投与プロセスの最中に前記吸入器(400)内の乾燥粉末医薬組成物投与プロセスの少なくとも1つの物理的特性を、センサユニット(405)を介して、測定し、前記測定された物理的特性を前記モバイルデバイス(300)に通信するようにさらに適合される、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
投与プロセスの最中に前記吸入器(400)内で測定される前記医薬組成物投与プロセスの前記物理的特性は、空気圧、音響インテンシティ、振動マグニチュードまたはそのような物理的特性のいずれかの組合せである、請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記センサユニット(405)は、マイクロフォンを備え、前記測定された物理的特性は、音波の振幅である、請求項2または3に記載の吸入器。
【請求項5】
前記センサは、乾燥粉末医薬組成物が前記吸入の最中に空気と混合される混合チャンバの内部に配置される、請求項2~4のいずれかに記載の吸入器。
【請求項6】
前記コントロールされたブロッキング手段(403)は、前記貯蔵部(410)から前記投与ユニット(411)への前記乾燥粉末医薬組成物の用量の移送をブロックする駆動ユニットおよび活動的作動要素を含む、請求項1~5のいずれかに記載の吸入器。
【請求項7】
ブロッキング状態にある作動要素は、前記貯蔵部(410)から前記投与ユニット(411)への前記医薬組成物の用量の移送をブロックし、開放位置では、コントロールユニット(402)からのコントロールシグナルに応答して前記医薬組成物の投与を可能にする、請求項1~6のいずれかに記載の吸入器。
【請求項8】
前記プロセシングユニット(402)からコントロールシグナルを受信すると、作動要素は、開状態へと移動し、前記医薬組成物の投与を可能にする、請求項1~7のいずれかに記載の吸入器。
【請求項9】
ブロッキング手段(403)は、バルブ、ピン、ボルト、リレー、キー、通常は閉鎖されているスイッチを含む群から選択される要素を含む、請求項1~8のいずれかに記載の吸入器。
【請求項10】
乾燥粉末医薬組成物は、肺経路を介して肺に直接投与することによるうつ病の治療方法において使用するための、ケタミンまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1~9のいずれかに記載の吸入器。
【請求項11】
うつ病の治療方法において使用するためのケタミンまたはその薬学的に許容される塩を含み、ケタミンまたはその薬学的に許容される塩は、乾燥粉末医薬組成物として肺経路によって投与される、請求項1~9のいずれかに記載の吸入器。
【請求項12】
薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩である、請求項10または11のいずれかに記載の吸入器。
【請求項13】
ケタミンは、塩酸エスケタミンである、請求項10~12のいずれかに記載の吸入器。
【請求項14】
前記組成物は、公称単位用量当たりの遊離塩基として計算される2mg~100mgの微粉化ケタミンを含む、請求項10~13のいずれかに記載の吸入器。
【請求項15】
前記組成物は、公称単位用量当たり遊離塩基として計算される2mg~40mgの微粉化ケタミンを含む、請求項14に記載の吸入器。
【請求項16】
前記組成物は、公称単位用量当たり遊離塩基として計算される4mgの微粉化エスケタミンを含む、請求項15に記載の吸入器。
【請求項17】
前記組成物は、前記組成物の総重量に対して、30~95重量%の量の炭水化物増量剤および0.2~3重量%の量の安定剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含む、請求項10~16のいずれかに記載の吸入器。
【請求項18】
前記組成物は、レーザー回折技術によって測定して、1~10μmのメジアン粒径d50、0.2~5μmのd10、および3~35μmのd90を有するケタミンを含む、請求項10~17のいずれかに記載の吸入器。
【請求項19】
1.2mgのケタミン塩酸塩に相当する、遊離塩基として計算される少なくとも1.0mgのケタミンの放出用量を提供するように適合された、請求項14~18のいずれかに記載の吸入器。
【請求項20】
前記肺に送達される前記放出用量の割合5は、少なくとも40%である、請求項19に記載の吸入器。
【請求項21】
肺経路を介して投与するための前記組成物は、予め固定され、個々に密封された複数の個々の公称単位用量を有するブリスターに含まれる、請求項10~20のいずれかに記載の吸入器。
【請求項22】
肺経路を介して投与するための前記組成物は、単一の公称単位用量を有するカプセルに含まれる、請求項10~17のいずれかに記載の吸入器。
【請求項23】
肺経路を介して投与するための前記組成物は、複数用量粉末リザーバに含まれる、請求項10~17のいずれかに記載の吸入器。
【請求項24】
前記投与スキーム(11)は、乾燥粉末ケタミン組成物または製剤の吸入による患者による自己投与を、複数回の単回用量、例えば、少なくとも3回の単回用量の配列からなる一連の投与で提供し、各単回用量は1、2、3または4回のパフ、好ましくは3または4回のパフのような複数回のパフからなり、前記配列は、吸入なしに中断期間によって互いに分離される、請求項10~23のいずれかに記載の吸入器。
【請求項25】
前記投与スキーム(11)は、30分の期間における3回または4回のパフからなるエスケタミン3回の単回投与の配列を含み、単回投与は15分の休止期間によって分離され、各パフは乾燥粉末組成物または製剤中の4mgのエスケタミン公称投与量に対応する、請求項24に記載の吸入器。
【請求項26】
治療を必要とする患者のうつ病を治療するための方法であって、
ケタミンまたはその薬学的に許容される塩を、主治医によって処方された投与スキームに従って、遠隔に指示されコントロールされた方法で、モバイルデバイス(300)自身に割り当てられた許可トークン(12)を有する患者のモバイルデバイス(300)の存在下で、吸入器を介して、乾燥粉末吸入可能医薬製剤として、肺経路によって、前記患者によって自己投与することを含み、
前記吸入器は、投与スキーム(11)に準拠してのみ、かつモバイルデバイス(300)自身に割り当てられた許可トークン(12)を有する患者のモバイルデバイス(300)の存在下で、医薬組成物の投与を可能にするように適合されたコントロールされたブロッキング手段を介して、投与スキームに従って操作される、方法。
【請求項27】
前記投与スキームは、前記処方された自己投与スキームと、コントロール端末(100)を使用して患者のモバイルデバイス(300)に割り当てられた許可トークン(12)とを含むコントロールシグナル(5)を生成する前記主治医によって設定される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記自己投与スキームを有する前記コントロールシグナル(5)は、前記許可トークン(12)の前記吸入器(400)への起動および登録に応答して、前記吸入器(400)によって受信される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記投与は、前記投与スキーム(11)に準拠してのみ、前記コントロールされたブロッキング手段(403)によって許可される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記投与は、遠隔コントロールされたブロッキング手段によって、前記患者または第三者による誤用または乱用から保護される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩である、請求項26~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
ケタミンは、塩酸エスケタミンである、請求項26~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記組成物は、公称単位用量当たりの遊離塩基として計算される2mg~100mgの微粉化ケタミンを含む、請求項26~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記組成物は、公称単位用量当たり遊離塩基として計算される2mg~40mgの微粉化ケタミンを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物は、公称単位用量当たり遊離塩基として計算される4mgの微粉化エスケタミンを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物は、前記組成物の総重量に対して、30~95重量%の量の炭水化物増量剤および0.2~3重量%の量の安定化剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含む、請求項26~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記組成物は、レーザー回折技術によって測定して、1~10μmのメジアン粒径d50、0.2~5μmのd10、および3~35μmのd90を有するケタミンを含む、請求項26~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
1.2mgのケタミン塩酸塩に相当する遊離塩基として計算される少なくとも1.0mgのケタミンの放出用量を提供するように適合される、請求項34~37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記肺に送達される放出線量のフラクション5は、少なくとも40%である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
肺経路を介して投与するための前記組成物は、予め固定され、個々に密封された複数の個々の公称単位用量を有するブリスターに含まれる、請求項26~39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
肺経路を介して投与するための前記組成物は、単一の公称単位用量を有するカプセルに含まれる、請求項26~30のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
肺経路を介して投与するための前記組成物は、多用量粉末リザーバに含まれる、請求項26~30のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記投与スキーム(11)は、乾燥粉末ケタミン組成物または製剤の吸入による患者による自己投与を、複数回の単独用量、例えば、少なくとも3回の単独用量のシーケンス、からなる投与の配列で提供し、各単回用量は1回、2回、3回または4回のパフ、好ましくは3回または4回のパフなどの複数回のパフからなり、前記配列は、吸入なしに休止期間によって互いに分離される、請求項26~42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記投与スキーム(11)は、30分の期間における3回または4回のパフからなるエスケタミン3回の単独用量のシーケンスを含み、単独用量は、15分の休止期間によって分離され、各パフは乾燥粉末組成物または製剤中の4mgのエスケタミン公称投与量に対応する、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医薬組成物の電子的に監督された非経口投与のための吸入器に関し、特に、うつ病の治療に使用されるケタミンを有する乾燥粉末医薬組成物の乱用および誤用を制限する吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
うつ病、特に大うつ病性障害、双極性障害および治療抵抗性うつ病(TRD)は現代社会において深刻な問題である。うつを治療するために、多くの治療選択肢が開発されており、これには、患者にとって便利な経口投与法における単剤療法または併用療法が含まれる。しかし、既存の抗うつ薬に対して治療抵抗性または部分的または全体的に治療抵抗性を示す患者の割合は比較的高い。実際には現在、このような厳しい場合における唯一の実際の選択は電気ショックであり得る。
【0003】
ケタミンは、麻酔および慢性疼痛の治療に用いられる既知の麻酔薬および鎮痛薬である。ケタミンはキラル化合物であり、ラセミ体およびS-エナンチオマー(エスケタミンとして知られる)またはR-エナンチオマー(アルケタミンとして知られる)として存在することができる。ケタミンは薬学的に許容可能な塩を形成し得、そして薬学的適用において、一般に、好ましい塩酸塩として使用される。鏡像異性体の旋光度は、ケタミンとその塩との間で変化する。例えば、エスケタミン遊離塩基は右旋性S-(+)であるが、塩酸エスケタミンは左旋性S-(-)である。
【0004】
ケタミンおよびそのS-異性体(エスケタミン)の約10年間の抗うつ活性が特に治療抵抗性または治療抵抗性うつ病の治療において探求されている(G. Serafini et al., The Role of Ketamine in Treatment-Resistant Depression: A Systematic Review., Current Neuropharmacology, 2014, 12, 444-461)。治療抵抗性うつ病とは、少なくとも2種類の抗うつ薬を適切な用量で適切な期間投与しても十分な効果が得られない大うつ病性障害の症例を記述するために臨床精神医学で用いられる用語である。
【0005】
これまでに収集されたデータは、ケタミンおよびエスケタミンの例外的な特性を示している。この効果は非常に迅速であり(投与から2~3時間後)、比較的長期間持続し、薬剤の単回用量後数日である。市販されている抗うつ薬の効果は少なくとも2週間後、たとえ3~4週間の日々の投与でも現れるので、臨床効果の迅速性は驚くほど高く、予想外である。したがって、ケタミンまたはエスケタミンは、既存の経口抗うつ薬に抵抗性を示す自殺リスクが高まっている大うつ病患者において、第一選択薬として使用し得た。効果の尺度も非常に高く、治療抵抗性のうつ病患者の約2/3はケタミン治療に反応する。
【0006】
ケタミンの薬理学に関する知識は依然として乏しい。解離性麻酔薬として、本薬は解離・精神模倣作用(DP)を発揮し得る。入手可能なデータから、この効果は本薬の全身濃度と相関することが示されている。解離作用および精神異常発現作用は最も頻繁に観察される副作用のひとち、患者の快適さを著しく低下させる。しかし、DP効果を経験することなくケタミンによる治療に反応する患者群は依然として存在する。したがって、DPを伴わないうつ病の治療におけるケタミンの有効かつ安全な使用のための治療ウィンドウが、狭いにもかかわらず、依然として存在する。
【0007】
ケタミンは肝臓で広範な初回通過効果を受ける。最初に、ノルケタミンが最初の代謝産物として産生される。次いで、ノルケタミンは、さらなる代謝産物に代謝される。ノルケタミンおよびさらなる代謝産物についての知識は、依然として完全ではない。NMDA受容体ノルケタミンに対する作用レベルは、ケタミンよりも何倍も活性が低い。他の代謝産物もまた、ケタミンよりもほとんど活性が低い。さらに、ノルケタミンおよび他の代謝産物の毒性についてはほとんど知られていない。これは、肝酵素の状態に依存するそれらの濃度の高い個々の変動と組み合わせて、原則として、それらを望ましくない化合物にする。また、ケタミンの一部の水酸化代謝物と精神病性および解離性症状との相関についての報告もある。
【0008】
従前の研究では、うつ病の治療にケタミンとエスケタミンが静脈内または鼻腔内投与されていた。経口投与の試みは一般的に成功しなかったか、またはその効果が数週間の投与後にのみ観察された。
【0009】
文献には、投与経路に応じたケタミンの薬物動態の多くの例が記載されている。
【0010】
現在必要最小限の代謝産物が予想される投与経路は、静脈内投与である。ラセミケタミンを0.5mg/kgで40分間静脈内注入した後、親薬物はその全身濃度を約200ng/mlで約40分間維持し、その後、濃度は2時間未満の半減期で急速に低下する。同時に、ノルケタミンはケタミン濃度の10~20%のレベルでその最大濃度に達する。ケタミンに対する曲線下面積(AUC)ノルケタミンの割合は、約20~40%である。
【0011】
経口投与は投与経路であり、その後、代謝産物の最大濃度が予想される。しかし、経口投与後、薬物は速やかにノルケタミンへの代謝を受ける。ノルケタミンレベルは、ケタミンレベルの500~1000%に等しい。ノルケタミンの曲線下面積(AUC)はさらに高く、1000%を超えている。
【0012】
経口投与されたケタミンのバイオアベイラビリティは非常に低い(約16~20%);一方、静脈内投与はケタミンのバイオアベイラビリティの著しい増加をもたらす一方で、多くの欠点(例えば、点滴長時間のさ、患者の不快感、サーベイランスの必要性)も有する。
【0013】
US2007/0287753A1は、治療抵抗性または難治性うつ病を治療するためのケタミンの使用を開示している。試験した唯一の製剤は静脈内注入であり、経皮投与も考えられる。鼻腔内投与は一般的にのみ記載され、これにはケタミンの微粉砕粉末、分散剤および増量剤を含む乾燥粉末エアロゾル製剤の鼻腔内投与が含まれる。しかし、口腔咽頭領域へのケタミンの鼻腔内投与では、有意な量のケタミンが経口経路で患者に嚥下され、望ましくない副作用を引き起こすためにノルケタミンへの全身性代謝を受け得る。
【0014】
DE102007009888は、うつ病の治療における、0.3~1.0mg/kgの用量でのS-ケタミンの使用を開示している。全ての可能な投与経路が一般的に言及されるが、試験される唯一の製剤は好ましいものとして言及される静脈内注入である。
【0015】
WO2013/138322は、治療抵抗性または治療抵抗性うつ病の治療におけるエスケタミンの使用を開示している。エスケタミンの有効性に関する試験は、エスケタミン静脈内注入を用いた予言実施例に記載されている。
【0016】
WO2014/143646およびWO2014/152196は、治療抵抗性または治療抵抗性のうつ病の治療に使用するための、塩酸エスケタミンの水性製剤の形態のエスケタミンの医薬組成物、好ましくは鼻腔投与用を開示している。
【0017】
エスケタミンの粘膜付着性経口形態および経口、経鼻および静脈内投与後のエスケタミンの薬物動態は、WO2014/020155に記載されている。
【0018】
K. Jonkman et al., Anesthesiology 127 (4), 675-683, 10, 2017は、健常なボランティアを対象に、新たなケタミン投与経路として、ネブライズされた塩酸エスケタミン食塩水の吸入によるケタミンの送達の安全性および実現可能性を研究した。吸入されたケタミンのバイオアベイラビリティは用量非依存性の、また用量依存性の肺への取り込み障害の両方によって低下したことがわかっている。これはエスケタミンの高粘度に関連しており、エスケタミンの粘度は水の粘度の3~4倍である。このため、噴霧による投与は不正確であり、信頼できないであろう。
【0019】
Singh et al., Biological Psychiatry 80:424-413, 2016は、エスケタミン0.20mg/kg又は0.40mg/kgのいずれかを40分間静脈内投与したときの治療抵抗性うつ病(TRD)患者において、強固な抗うつ作用の発現が速やかに認められている。低用量であれば、有効性を維持しながらより良好な忍容性が可能になると考えられる。
【0020】
以上のことは、外来での自己投与を含め、患者のコンプライアンスが高いことを保証するために、効果が高く、簡便かつ日常の自己投与が容易な高用量ケタミン製剤の開発が、絶対的な医療ニーズと重要であることを例示する。このような製剤は最初に、治療用ケタミン用量を血液に送達するべきであり、迅速な治療効果、および正確な投与によるDP等の望ましくない効果の低いリスクを含む、高い有効性で特徴付けられるべきである。このような製剤はノルケタミンおよびヒドロキシル化代謝産物のような全身性初回通過代謝産物の最小量のみを可能にすべきであり、特に、実際に投与されたケタミン量の低下および望ましくない代謝産物の影響を回避することの両方の観点から、許容可能な(エス)ケタミン対(エス)ノルケタミン比を保証する。
【0021】
目標は、患者にとってより便利な投与経路を用いて40分間持続する0.20mg/kgの静脈内注入で、Sing et al.によるものと同様のケタミン血漿濃度、したがって同様の抗うつ効果を達成し、より少ない悪影響を生じさせることであった。
【0022】
上記の課題は、肺投与経路によるうつ病の治療方法に使用するための高用量で安定な乾燥粉末ケタミン医薬組成物を、信頼性があり、再現性があり、便利な様式で提供する本発明によって解決された。
【0023】
しかしながら、医学においては、医学的状況の広い範囲のために、神経系、特に脳、末梢神経、および脊髄に関する条件に対して典型的に処方される薬物および医薬等の薬物の適切な摂取をコントロールおよび/または監視する必要性がしばしば存在する。この範囲内には、FDA(米国食品医薬品局)により、オピオイド等の疼痛緩和を目的とした投薬を含む、神経系薬剤および神経系薬剤として記載され、かつ関連する効果の厳密な管理およびモニタリングの必要性がある薬剤および医薬がある。疼痛緩和を目的とした医薬品については、鎮静剤と同様に、鎮静剤、半合成鎮静剤、合成鎮静剤、内因性鎮静剤の4つのサブカテゴリーを本書面で紹介する。
【0024】
上記の医薬品および医薬は手術後、癌治療、ならびに以下のような脳および神経系の条件に関する様々なタイプの患者の条件に対して、大きな適用スペクトルを有し得る:アルツハイマー病、注意欠陥多動性障害(ADHD)、手根管症候群、ハンチントン病、認知症、記憶喪失、多発性硬化症、筋ジストロフィー、パーキンソン病、トゥレット症候群、およびその他、これら全てが、関連する処方およびその効果を注意深く追跡する必要がある。
【0025】
米国食品医薬品局の神経・神経系用薬承認リストには、「処方薬」または「処方強薬」と考えられる医薬品等、医師が患者に処方することが想定される複数の種類の医薬品が含まれており、以下のものが含まれる:
オピオイド:メサドン、モルヒネ、オキシコドン(オキシコンチン)、フェンタニル、スフェンタニル、レボルファノール、オキシモルホン、ヒドロモルフォン、メペリジン(デメロール)、トラマドール等の鎮痛薬。
【0026】
鎮静剤系鎮痛薬と併用できる処方薬。このような医薬品は、通常、患者の症状を治療する疼痛薬の性能を助けるために処方されるか、または特定の種類の疼痛に対して特異的に処方される。これらの薬物にはビスフォスフォネート(デキサメタゾン、プレドニゾン等)、抗炎症性薬物やコルチコステロイド、局所麻酔薬物(リドカイン、カプサイシン等、皮膚や組織の痛みを和らげる薬物)、抗けいれん薬物、抗うつ薬物等、同じような作用を目的とする薬物が含まれるが、これらだけではない。上記の薬は、それぞれの患者さんの特定の状態に応じていくつかの方法で投与され、一般的には経口投与される。例えば、いくつかの状況において、患者がカプセルを飲み込むのが困難であったり、関連する問題を抱えている場合には、これらの種類の医薬品がより速やかな疼痛緩和が必要な場合を含め、他のいくつかの方法で服用することができる。
【0027】
一般に、これらの薬剤を経口で服用する一般的な方法は以下の通りである:ピル、カプセル、錠剤、液体、および舌の上または舌の下で、ならびに口および呼吸器系を介して体内に吸収されるエアロゾルを介して溶解する薬剤によって;皮膚パッチを使用する:パッチは皮膚を通して体内に吸収される薬剤を組み込む薬剤を有する;直腸坐剤:例えば、ピル、またはカプセルであって、直腸内に入れられ、体内に吸収される;針:例えば、注射、または静脈(IV-静脈内)。患者が静脈注射で薬を服用すると、患者管理鎮痛(PCA)ポンプを使用することができる。PCAポンプは、患者が限られた方法で鎮痛薬をコントロールできるようにする。
【0028】
これらのタイプの医薬品の特異性のために、定義された医学的処方に従わないものを含め、その誤用の危険な状況に関連し、かつ以下の主要な不良モードによって起こり得る患者への潜在的な問題およびリスクがある:
1) 医薬品組成物の誤用に該当する特定の医薬品又は処方せんに応じて投与されるオピオイドを含有する医薬品の摂取頻度および/または摂取量に関する患者の自己管理の欠如;
2) 医学的に処方された量および/または周波数のうち、オピオイドを含有する特定の医薬品または医薬品の患者による故意に誤った摂取は、医薬組成物の乱用として分類される;
3) 医療処方に従った特定の医薬品または医薬品の意図した患者および使用者でない個人による無意識の吸気、または意図的に意識した吸気。
【0029】
したがって、医薬組成物の監督されていない投与または自己投与は投与スキームまたはプロトコルの乱用または違反の状況においてさえ、それらの効果がある程度予測可能であり、健康被害の危険が限定される、限定された効果を有する医薬組成物に限定される。この問題は薬物または医薬組成物の投与のためのコントロールされた条件を確立するために、多くの異なる方法で先行技術において対処された。
【0030】
EP1973593公報には、薬物剤形を患者に投与するための薬物貯蔵および投与装置が開示される。分配装置は、分配装置をロックするためのプログラマブルロックアウト機能を有し、ユーザのアイデンティティを検出することができる。本発明はさらに、本発明の分配デバイスを使用して薬物剤形を対象に投与することによる、対象の処置のための方法を提供する。
【0031】
US2017/242976には、a)分配される製品の少なくとも1つのユニットを受け入れるためのキャビティを有する容器上に、またはその開口部の上および/または周囲に取り付けるための再閉鎖可能な開口部と、b)再閉鎖可能な開口部の開口部をコントロールするように適合されたコントローラと、c)ユーザ認証信号を受け入れるように適合された受信機と、d)コントローラおよび受信機に電力を供給するための電源と、を備え、ディスペンサは受信機がユーザ認証信号を受け入れると、再閉鎖可能な開口部の開口部のみを許可する、ディスペンサが開示されている。この公報はまた、分配システム、分配方法、およびそのようなディスペンサーを含む部品のキットを開示している。本発明は意図された受取人のみに医薬品を分配するために、また投薬計画の遵守を確実にするために特に適している。
【0032】
US2010/100237は、ディスペンサーに収容された丸剤のバルク供給から所望の数の丸剤を分配する手段を有するディスペンサーを開示している。ディスペンサは丸剤のバルク供給を有し、計数区画に空になる排出口を有する貯蔵区画を備える。計数区画は第1および第2の速度で移動する第1および第2のコンベヤを含み、第2の速度は第1の速度よりも速く、それによって、ピル分離を可能にし、第2のコンベヤは、パイルを分配区画内に排出する。センサは、コンベアに沿って戦略的に配置され、分配コンパートメント内に排出された丸剤を計数する。分配サイクルの完了時にコンベヤ上に残っている丸薬を回収し、回収された丸薬を将来の分配サイクルで使用するために貯蔵コンパートメント内に戻して堆積させる手段を有する丸薬回収システムおよび装置が、ディスペンサの内側に配置される。ディスペンサーを収容するためのレセプタクルを有するドッキングステーションが提供される。ドッキングステーションには、パーソナルコンピュータとの双方向通信を許可する通信ポートがある。ディスペンサは、入口および出口におけるロック機構と、ディスペンサの内部時計およびディスペンサと通信リンクしているリモートサーバから発生する「ディスペンサを使用不能にする」電子信号に応答する内部回路とを含む複数のセキュリティ機能を有する。
【0033】
US2013/226339は、使用者による薬剤の誤用の可能性を検出するためのシステムおよび方法を開示する。このシステムは、分配デバイスと通信可能に結合されたコンピュータを含む。コンピュータは分配デバイスによって示されるように、ユーザによる薬剤の使用パターンと、ユーザによる薬剤の実際の消費と相関する試験の結果とを受信する。使用形態に基づいて、コンピュータは、少なくとも1つの所定の試験に対応する試験の推定結果を計算する。推定結果と試験結果との間の比較に基づいて、ユーザが薬剤を誤用した可能性があるかどうかに関する判定が行われる。
【0034】
US2014/297028は、バッテリ駆動の再充電可能なハンドヘルドデバイスがコントロールされた方法で医療用フィルムストリップを分配することを開示する。デバイスはパスワード保護され、用量を制限し、医師および薬剤師がデバイスを監視することができるようにサーバホストと無線通信し、デバイスが紛失、盗難、または改ざんされた場合、薬剤を遠隔的に破壊することができる。デバイスは、GPS位置によって追跡可能である場合がある。ソフトウェアは規制の遵守を保証するために、医師のキャスロードと同様にデバイスを追跡することができる。このデバイスは人間の要素を取り除き、プログラムされたレジメンに従うように患者に強制するために精巧な電子機器を使用する自動化されたデバイスである。このデバイスはまた、医師のための監視および追跡のプロセスを単純化する。偶発的な子供露光の問題は排除される。薬物の乱用および分流の問題は、効果的にコントロールされ、制限される。実際には、人間の解釈や多様性には何も残されていない。
【0035】
WO2019/038580は、ユーザに薬剤を送達するための薬剤ディスペンサーを開示しており、医療ディスペンサーは1つ以上の薬剤を格納するための1つ以上の内部ストレージと、前記1つ以上の内部ストレージにアクセスし、所定の投薬プロトコルに基づいて薬剤を投薬するように構成された投薬単位と、ユーザ認証データを収集するように構成されたユーザ認識単位を備えるコントロール単位と、前記ユーザ認証データと、前記所定の投薬プロトコルに関連付けられた送達コントロールデータとをリモートサーバに送信/受信するように構成された通信モジュールとを備え、前記コントロール単位は、前記ユーザ認証データと前記送達コントロールデータとに基づいて前記投薬単位を有効/無効にするように構成されている。また、そのユーザ状態の認証および確認時に医薬ディスペンサと共に使用するための医薬再充填装置が開示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
上記に示されるように、投与プロセスをコントロールする責任を負う認可されたエンティティの直接的なコントロールを伴わない医薬組成物の投与は、患者の健康に対する責任の感覚のみに依存する治療の一部である。医薬組成物の管理されていない投与はまた、医薬組成物の誤用または乱用につながる主要な因子である。医薬組成物は、割り当てられたプロトコールに従わない患者によって計画された計画外で投与されることが多いので、適用される治療が有効でない主な理由でもある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明は、請求項1に記載の吸入器を提供する。
【0038】
本発明によるシステムは、投与スキームをコントロールする安全な方法を提供し、従来技術に存在する問題を除去する。認可トークンを使用することにより、個人認証の時間コントロール、コンピューティング係合手段の必要性が排除される。これにより、個人の生体認証データを保存する必要がなくなり、パスワードや複雑な認証手順が記憶される。
【0039】
本発明は、肺投与によるうつ病の治療方法に使用するための医薬品としてケタミンまたはその薬学的に許容される塩を含む乾燥粉末医薬品組成物を有する吸入器を提供する。
【0040】
別の態様では、本発明がうつ病の治療方法に使用するためのケタミンまたはその薬学的に許容される塩を有する吸入器であって、ケタミンまたはその薬学的に許容される塩が乾燥粉末医薬製剤として肺経路によって投与される吸入器を提供する。
【0041】
本発明による吸入器は投与スキームをコントロールする安全な方法を提供し、従来技術に存在する問題を除去する。認可トークンを使用することにより、個人認証の時間コントロール、コンピューティング係合手段の必要性が排除される。これにより、個人の生体認証データを保存する必要がなくなり、パスワードや複雑な認証手順が記憶される。
【0042】
パーソナルデバイスを使用して確保許可を提供することは、携帯電話が常に人に存在するデバイスであるときに観察される新しい行動パターンを利用する。
【0043】
本発明によるシステムのさらなる利点は、医師に高品質のモニタリングデータを提供するシステムを提供することであり、このモニタリングデータは、薬物を投与することが薬物の適切な投与に等しいという従来技術に見られる仮定を排除する投与プロセスに言及する。
【0044】
本発明を実施する特徴および方法だけでなく、さらなる利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として提示される好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、実施例1の組成物のNGI寄託データを示す。
【
図2】
図2は、実施例2の組成物のNGI寄託データを示す。
【
図3】
図3は、実施例3の組成物のNGI寄託データを示す。
【
図4】
図4は、実施例4の組成物のNGI寄託データを示す。
【
図5】
図5は、実施例5の組成物のNGI寄託データを示す。
【
図6】
図6は、実施例6の組成物のNGI寄託データを示す。
【
図7】
図7は、実施例2の乾燥粉末組成物の種々の単回用量の投与後の時間に対するエスケタミン血漿濃度を示す。
【
図8】
図8は、実施例2の乾燥粉末組成物の一連の単回投与の投与後の時間に対するエスケタミン血漿濃度を示す。
【
図9】
図9は、実施例2(パートA)の乾燥粉末組成物の投与後に悪影響分布を示す。
【
図10】
図10は、実施例2(パートB)の乾燥粉末組成物の投与後に悪影響分布を示す。
【
図11】
図11は、本発明による吸入器を用いた医薬組成物の電子的に監督された非経口投与のためのシステムの第1の実施形態の模式図である。
【
図12】
図12は、本発明による吸入器をコントロールするためにコントロールステーションによって生成されるコントロールシグナルの模式図である。
【
図14】
図14は、本発明による測定部を有する吸入器の模式図である。
【
図15】
図15は、本発明による吸入器を用いた医薬組成物の電子的に監督された非経口投与のためのシステムにおいて使用するためのランキングマトリックスの模式図である。
【
図16】
図16は、本発明による吸入器を用いた医薬組成物の電子的に監督された非経口投与のためのシステムにおけるランキングマトリックスを使用して、測定された物理的特性に品質尺度の値を割り当てるプロセスの模式図である。
【
図17】
図17は、本発明による吸入器を用いた医薬組成物の電子的に監督された非経口投与のためのシステムの第2の実施形態の模式図である。
【
図18】
図18は、本発明による吸入器の別の実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の一実施形態では、肺投与、すなわち肺経路による投与によるうつ病の治療方法で使用するための医薬品としてケタミンまたはその薬学的に許容される塩を含む乾燥粉末医薬品組成物を有する吸入器である。
【0047】
吸入器はうつ病の治療方法に使用するためのケタミンまたはその薬学的に許容される塩を有することができ、ケタミンまたはその薬学的に許容される塩は、乾燥粉末医薬製剤として肺経路によって投与される。
【0048】
好ましくは本発明による使用において、エスケタミン、特に塩酸エスケタミンは乾燥粉末エスケタミン組成物または製剤の吸入により、少なくとも3回の単回用量(吸入イベント)からなる一連の投与で患者により肺に自己投与され、各吸入イベントは1、2、3または4回のパフ、好ましくは3または4回のパフのような複数のパフからなり、前記一連の配列は吸入なしの吸入(休止期間)によって互いに分離される。好ましくはこのような配列が少なくとも30分間持続し、例えば30分間持続し、そして投与の3つの配列を含み、そしてこれらの間の休止期間は好ましくは等しく、すなわち15分間のブレーク(休止)期間である。
【0049】
好ましくは、本発明による使用において、エスケタミン、特に塩酸エスケタミンは3回の単回投与(吸入イベント)からなる30分間持続する順序で乾燥粉末エスケタミン組成物または製剤を吸入することによって患者によって肺に自己投与され、各吸入イベントは3回または4回のパフからなり、各パフは乾燥粉末組成物または製剤中の4mgのエスケタミン公称投与量に対応する。このような組成物または製剤は、以下の実施例2に記載されている。そのような各吸入イベント(単回用量)の間に、いかなる吸入もない休止期間が提供され、好ましくは、約15分間持続する2つの等しい休止が存在し、すなわち、第1の単回用量が時間0で投与され、第2の単回用量が約15分後に投与され、第3の単回用量が30分で投与される。このようなシーケンスは静脈内注入の従来技術の試験から知られているように、抗うつ効果を有するレベルで血漿濃度注入を提供する血漿濃度プロファイルを得ることを許可する。
【0050】
本発明によれば、「ケタミン」という用語は、遊離塩基およびその薬学的に許容される塩の両方として、ラセミケタミンならびにその鏡像異性体であるエスケタミンおよびマーケタミンを包含する。
【0051】
好ましい態様において、ケタミンはエスケタミンである。
【0052】
別の実施形態において、ケタミンはラセミ体ケタミンである。
【0053】
好ましい薬学的に許容されるケタミン塩は塩酸塩である。
【0054】
最も好ましい実施形態において、本発明の組成物は、エスケタミン塩酸塩を含む。
【0055】
別の実施形態では、本発明の組成物がラセミ体のケタミン塩酸塩を含む。
【0056】
好ましくは本発明による使用において、ケタミン、特にエスケタミン塩酸塩のようなエスケタミンは乾燥粉末ケタミン組成物または製剤を、少なくとも3回の単回投与(吸入イベント)のような複数回の単回投与(各単回投与または吸入イベントは1、2、3または4回のパフのような複数回のパフからなり、好ましくは3または4回のパフであり、前記配列はいかなる吸入(休止期間)もなしに中断によって互いに分離される)からなる配列で吸入することによって、患者によって肺に自己投与される。好ましくはこのような配列が少なくとも30分間持続し、例えば30分間持続し、そして投与の3つの配列を含み、そしてこれらの間の休止期間は好ましくは等しく、すなわち15分間のブレーク(休止)期間である。
【0057】
好ましくは、本発明による使用において、エスケタミン、例えば塩酸エスケタミンは3回の単回投与(吸入イベント)からなる30分間持続する連続での乾燥粉末エスケタミン組成物または製剤の吸入によって患者によって肺に自己投与され、各吸入イベントは3回または4回の膨らみからなり、各膨らみは乾燥粉末組成物または製剤中の4mgのエスケタミン公称投与量に対応する。このような組成物または製剤は、以下の実施例2に記載されている。そのような各吸入イベント(単回用量)の間に、いかなる吸入もないブレーク期間が提供され、好ましくは、約15分間持続する2つの等しい休止が存在し、すなわち、第1の単回用量が時間0で投与され、第2の単回用量が約15分後に投与され、第3の単回用量が30分で投与される。このようなシーケンスは静脈内注入の従来技術の試験から知られているように、抗うつ効果を有するレベルで血漿濃度注入を提供する血漿濃度プロファイルを得ることを許可する。
【0058】
本明細書で使用される「医薬(medicine)」という用語は、「医薬品(medicinal product)」という用語と交換可能に使用することができる。「医薬(medicine)」および「医薬品(medicinal product)」は、本発明に関して本質的に同じ意味を有することを理解されたい。
【0059】
用語「治療抵抗性または治療抵抗性うつ病」(TRD)は当該技術分野において周知であり、一般的に知られている抗うつ療法を用いて、少なくとも2回の十分な抗うつ治療の前試みに反応しない患者におけるうつ病を意味する。この用語は例えば、US8,785,500およびUS2015/0056308に一般的に記載されている。
【0060】
用語「双極性障害」は当該技術分野において周知であり、うつの期間および異常昂揚気分の期間を引き起こす障害を意味する。
【0061】
「大うつ病」という用語は当技術分野で周知であり、ほとんどの状況にわたって存在する少なくとも2週間の低気分を特徴とする障害を意味する。
【0062】
1つの局面において、本発明の組成物は、公称単位用量当たり遊離塩基として計算される2mg~100mgのケタミンを含む。
【0063】
特定の実施形態では、本発明の組成物が公称単位用量当たり、遊離塩基として計算して、2mg~60mgのケタミン、特に2mg~40mgのケタミン、例えば3mg~15mgのケタミンを含む。
【0064】
別の実施形態では、本発明の組成物が組成物の総重量に対して、30~95重量%の量の炭水化物増量剤および0.2~3重量%の量の安定化剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む。
【0065】
組成物は、1~8μm、特に3μm、0.2~5μmのd10および3~35μmのd90のような1~10μmのメジアン粒径d50を有するケタミン、特にエスケタミン塩酸塩を含む。
【0066】
メジアン粒子径d50は、ASPIROSフィーダーを取り付けたSympatec HELOSレーザー回折計を用いて、乾燥分散液によるレーザー回折技術によって得られたパラメータである。測定のために、原料ケタミン、特にエスケタミン塩酸塩を、圧力3.0バールで、サンプル当たり30mgの総量で分散させる。
【0067】
組成物は、乾燥粉末吸入器を使用する投与のための乾燥粉末製剤である。この目的のために、従来の典型的な乾燥粉末吸入器を使用することができる。
【0068】
用語「乾燥粉末」は、当業者に公知であり、患者が吸入装置の作動後に吸入するときに流動化される粒子の固体混合物として、当技術分野において従来の方法で理解されるべきである。
【0069】
本発明による用語「公称単位用量」は、単回投与に向けられた組成物中に存在する(負荷された)ケタミン用量に関する。公称単位用量は、患者が服用する準備ができている乾燥粉末の測定用量、ブリスター中のカプセルまたは単一区画等の単一単位に含まれる用量、または複数用量乾燥粉末リザーバからの送達のために服用される用量とすることができる。
【0070】
用語「放出用量」は、患者による吸入後に装置を出る/出る公称単位用量の割合に関する。
【0071】
本発明に従って使用するための乾燥粉末医薬組成物または製剤はさらなる医薬賦形剤、すなわち、組成物の総重量に対して30~95重量%の量の炭水化物増量剤(担体)および0.2~3重量%の量の安定化剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含んでもよい。
【0072】
適切な炭水化物増量剤(担体)は、ラクトース、D-マンニトール、グルコース一水和物、トレハロース、特にトレハロース二水和物、エリスリトール、デキストロース、マルトース、ソルビトールまたはキシリトールであり得る。特に好都合な増量剤は、適切な粒度測定を有する、乳糖一水和物または無水乳糖、特に乳糖一水和物等の粉砕乳糖である。適切な粒度測定は、d50 30~200μm(Sympatec HELOS)を主粗分率(特に80μm)として有するものとして定義される。好適なラクトース一水和物の商用グレードの例は、Lactohale 200(LH200)、Lactohale 100(LH100)およびLactohale 200LPである。種々のタイプの吸入器は、その性能に最も適したラクトース級の適切な選択を必要とし得る。このような選択は、当業者の共通の技術の範囲内である。
【0073】
本発明の組成物中の増量剤の典型的な量は、組成物の総重量に対して30~95重量%、特に30~80重量%である。
【0074】
医薬賦形剤/添加剤はまた、安定剤(力コントロール剤-FCAとも呼ばれる)、すなわち、接着および結合を減少させる物質を含む。適切な安定剤は例えば、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、およびロイシン等のアミノ酸である。特に好ましい安定剤はステアリン酸MGである。
【0075】
安定剤は小さな粒子間の弱い結合力を「妨害」し、したがって、粒子を分離したままにするのを助け、小さな粒子の自己付着を減少させ、そのような他の粒子が存在する場合には製剤中の他の粒子への付着も減少させ、吸入器の内面への付着を減少させ、ならびに粉末-粉末流動性のレオロジー特性を改善する。
【0076】
本発明の組成物中の安定剤の量は、組成物の総重量に対して0.2~3重量%、特に0.8重量%である。
【0077】
本発明による使用のための組成物または製剤は高剪断ミキサー中で、適切な粒度測定の増量剤/担体を安定剤とブレンドし、次いで適切な粒度測定のケタミン、特に塩酸エスケタミンを添加し、再び高剪断ミキサー中でブレンドすることによって調製される。
【0078】
あるいは、適切な粒度測定のケタミン、特にエスケタミン塩酸塩を、高剪断ミキサー中で安定剤と共プロセス(ブレンド)し、次いで増量剤/担体を添加し、再び高剪断ミキサー中で混合する。
【0079】
組成物は、乾燥粉末吸入器を使用する投与のための乾燥粉末製剤である。この目的のために、従来の典型的な乾燥粉末吸入器を使用することができる。
【0080】
製剤は、3つの装置カテゴリー:カプセルのような各用量が使用前に装置に装填される単一単位用量吸入器;複数の用量を有する乾燥粉末のバルク供給が装置に多層装填される複数用量リザーバ吸入器;および複数の単回用量ブリスターキャビティのような別個の区画に個々に密封され、装置が作動されるたびに放出される複数単位用量吸入器によって投与されてもよい。好ましくは、複数の単一用量がブリスター内等で個々に密封され、デバイスが作動されるたびに排出される、複数単位用量吸入器である。
【0081】
上で定義した本発明による使用の一実施形態では、肺経路を介して投与するための医薬品が予め固定され、個別に密封された複数の個々公称単位用量を有するブリスターである。そのような吸入器の1つの好適例は、Diskus型吸入器である。
【0082】
上で定義した本発明による使用の別の実施形態では、肺経路を介して投与するための医薬品が単一の公称単位用量を有するカプセルである。
【0083】
上で定義した本発明による使用の別の実施形態では、肺経路を介して単回用量を投与するための医薬品が複数用量の粉末リザーバである。
【0084】
本発明による使用のための組成物は、遊離塩基として計算して、1.2mgのケタミン塩酸塩に相当する、少なくとも1.0mgのケタミンの放出用量を提供する。
【0085】
本発明による使用のための組成物は、放出された単位用量の少なくとも40%、例えば40~50%、特に40%~60%、特に85%までで肺に直接局所的に送達される用量の割合を提供する。
【0086】
放出用量は、吸入器装置から放出され、エアロゾルとして吸入器装置を離れ、したがって患者に利用可能な公称単位用量の部分である。
【0087】
放出された線量の一部のみが肺に到達し、したがって、肺に送達される線量(微粒子線量-FPDとも呼ばれる)または肺に送達される画分(微粒子画分-FPFとも呼ばれる)として患者の循環血液に到達する。一部は口腔咽頭および経口経路を経て消化管に到達する。すなわち、飲み込まれ、望ましくない第1部の代謝のために到達可能である。
【0088】
肺投与用活性物質の高用量の吸入用ドライパウダー製剤にはよく知られた問題があるにもかかわらず、均一で安定な高用量のケタミン、特に塩酸エスケタミンドライパウダー組成物は肺経路により投与された場合、患者の循環血液中の治療用ケタミンレベル、すなわち、70~100ng/ml、例えば、70~80ng/ml、例えば、約100ng/ml等、少なくとも50~100ng/mlを提供することができることが驚くべきことに分かった。治療用ケタミン量はうつ病、特に治療抵抗性または治療抵抗性うつ病等の大うつ病障害の治療に有効な血液中の量に関連し、対象、性別、年齢、疾患の重症度、吸入器の種類に依存し、ケタミンがラセミケタミンであるかエナンチオマーケタミンであるかに応じて変化し得る。
【0089】
肺に送達される放出用量の割合は放出用量のわずか15~20%が肺に送達される標準である典型的な吸入組成物とは対照的に、驚くほど高い。
【0090】
肺に直接局所的に送達される放出線量の分画(微粒子分画-FPFとも呼ばれる)は、既知の従来の方法およびアッセイを使用して決定することができる。このような方法およびアッセイは、ヨーロッパ薬局方9.0、第2.9.18章、吸入のための調製;微粒子用量の決定のための微粒子の空気力学的評価に記載されるものいずれかを含む。特に、次世代医薬インパクター(NGI)(Ph. Eur. Apparatus E)を使用して、空気力学的粒度分布(APSD)を評価およびコントロールすることができる。NGI装置は、欧州薬局方9.0の333頁の
図2.9.18.-12および2.9.18.-13に示されている。
【0091】
放出線量および微粒子線量および分率(FPFおよびFPD)は2つの要因、すなわち、製剤およびデバイスに強く依存する。デバイスにとって、放出される線量に対する最も識別的な因子は抵抗である。乾燥粉末吸入器(DPI)の抵抗は、吸入チャネル、計量カップおよび空気入口の設計に依存する固有値である。DPIは、4kPaの圧力降下を生じさせるのに必要な吸入流量に関して、4つの抵抗グループ(低、中、中-高、高)に分類することができる。この値は、DPIから放出される用量のin vitro特徴付けのために薬局方によって推奨されるものであるため、選択された。さらに、カプセルベースのDPIについてはカプセルおよびデバイス中の粉末保持によって制限され得、これは放出される用量の低下を導く。
【0092】
放射線用量試験は比較的簡単である。デバイスは、フィルタ上で測定された線量の捕捉を許可するサンプリング装置内に「発射」される。多段縦列衝突、ここでは次世代インパクター(NGI)の技術を用いて、吸入生成物の空気力学的粒度分布を測定する。収集された活性成分の量を、HPLC分析によってさらに決定する。吸入器は所定の流速で試験され、吸入器を横切る圧力損失はPh Eurに沿って4.0kPaである。
【0093】
効率的な粒子捕捉は、段階1~7の各々の粒子収集表面、ならびにMOCおよびプレセパレータ塩基をコーティング物質でコーティングすることによって保証される。予備分離器の中央カップは、適切な希釈剤で満たされる。
【0094】
吸入器4kPaにわたって圧力損失を発生させる流量コントロール時の所要時間分、方法ソレノイド弁を開いて粉末をNGI(1回の解析のためのインパクタあたりの作動回数n=1)に排出した後、以下の操作を行う:
I.ステージ1~7およびMOC。各段階を適切な希釈剤で洗浄する(原薬の抽出)。Copley Gentle Rockerにカップを装填したNGIトレーを10分間穏やかに振盪する。
II.マウスピースアダプター。アダプター上に置いた吸入粉末を、メスフラスコ中の適切な希釈剤ですすぎ、10分間超音波処理する。
III.誘導ポート。誘導口から沈着した吸入粉末を適切な希釈剤ですすぎ、メスフラスコに入れ、10分間超音波処理する。
IV.プレセパレータ。これらの成分からの沈着した吸入粉末を、適切な希釈剤ですすぎ、メスフラスコに入れ、10分間超音波処理する。
【0095】
最後に、インパクターの各段階から収集されたサンプルは、高速液体クロマトグラフィーによって濾過され、分析される
【0096】
本発明に従う使用のための組成物は適宜ケタミン、特にエスケタミン塩酸塩の薬物動態プロフィールを有し、これは、吸入による肺への直接的な肺投与後40分間にわたって、約50~100ng/mlのケタミン血漿濃度の達成を許可する。前記血漿濃度は、抗うつ効果に相当する。この濃度を経時的に維持することは、うつに有効であり、忍容性が良好であることが知られている40分間の静脈内注入を模倣する。
【0097】
ここで、本発明は、限定することを意図しない添付の実施例を参照する。
【実施例】
【0098】
一般的な製造手順:
ラクトース一水和物とステアリン酸マグネシウムの合計を0.25mmメッシュを通してふるいにかけ、高剪断ミキサー中で3分間混合する。得られた混合物を0.5mmメッシュを通して活性物質でふるい分けし、高剪断ミキサー中で5分間混合する。
【0099】
静電荷を除去するために、帯電防止ポリエチレン袋がプロセスの最中に使用される。
【0100】
真空充填工程(ブリスター):
ブリスター充填のために、真空ドラム技術の用量形成プロセスが使用される。ブリスターキャビティは、15~45mm3(特に約30mm3)の体積範囲である。空洞に充填される粉末は、10~30mg(特に23mg)の量である。
【0101】
真空ドラムデバイスのプロセスパラメータの間、以下である:
真空圧力:-0~500mBar、特に50~400mBar
流動化圧力:-0.1~-0.4Bar
流動化時間:50~2000ms、特に50~300ms
充填時間:50~700ms、特に50~400ms
シール時間:100~600ms
【0102】
充填したブリスターの密封試験を真空下で行う。
【0103】
最後に、ブリスター帯は、吸入器の中へ巻かれる。
【0104】
充填工程(カプセル):
充填されるカプセルは、ソケットの閉止端を下にして配置される。粉末は、投与器から排出され、カプセルに直接到達する。カプセルが充填されるべき粉末は、投与器内に配置され、詰め込まれ、カプセル内に放出されてもよい。
【0105】
プロセス中、カプセル充填デバイスのパラメータは以下の通りである:
回転数:170rpm
タンピングハイ:1~10mm
ドーサトール高さ:1~250mm
【0106】
最後に、充填されたカプセルを吸入器に取り付ける。
【0107】
水疱および被カプセル用ケタミン吸入粉末剤
以下の組成物は、上記の一般的な手順に従って、0.9kgのスケールで調製された。
【0108】
実施例1
成分 量(mg/単位)
エスケタミン塩酸塩 3.45(2.99mgエスケタミンに相当)
乳糖一水和物LH200 LP 19.16
ステアリン酸マグネシウム 0.39
【0109】
実施例2
成分 量(mg/単位)
エスケタミン塩酸塩 4.61(4mgエスケタミンに相当)
乳糖一水和物LH200 LP 18.20
ステアリン酸マグネシウム 0.18
【0110】
実施例3
成分 量(mg/単位)
エスケタミン塩酸塩 5.06(4.39mgエスケタミンに相当)
乳糖一水和物LH200 LP 17.581
ステアリン酸マグネシウム 0.359
【0111】
組成物は、Ph.Eur.2.9.40の要件に従って均一であることが見出された。平均エスケタミン塩酸塩含量(n=10)は、公称用量の92.5%~107.5%の範囲であった。
【0112】
そのプロセスは、1.8kgのスケールにスケーラブルであることが見出された。
【0113】
本発明による組成物の実施例1、2および3の組成物の空気力学的粒度分布(APSD)試験。
本発明の実施例1、2および3の組成物を、粉末吸入器のための手順に従って、次世代医薬インパクター(NGI)(Ph. Eur. Apparatus E)を使用して試験した。
【0114】
試験の結果は以下の表1および図面の
図1(実施例1)、
図2(実施例2)および
図3(実施例3)に提示され、ここで、上の図はNGI全体についてのAPSDデータを提示し、下の図はステージ1~7およびMOCについてのAPSDデータを提示する。試験の結果には、以下の略語を使用する:
MA - マウス(口)アダプタ
T- インダクションポート
PS - プレセパレータ
S1-S7 - NGIのステージ
MOC - マイクロオリフィスコレクタ
ISM - インパクタサイズの質量、非サイジング部分を除くインパクタに入る質量
MMAD(μm) - 空気動力学的中央粒子径。質量で50%の粒子がより大きく、50%がより小さくなる直径として定義される。
GSD - 幾何標準偏差。空気力学的粒度分布の広がりの測定値
FPF - 微粒子分率(%)
FPD - 微粒子用量
【0115】
【0116】
得られた結果は、予想される品質特性を有する生成物を示した。
【0117】
本発明の組成物は、適切な均一性および非常に高いレベルの微粒子画分を示した:
FPF>49%、FPD 1.0mg;および放出用量:2.3mg、実施例1について
FPF>47%、FPD 1.7mg;および放出用量:3.6mg、実施例2について、および
FPF>44%、FPD 1.6mg;および放出用量:3.9mg、実施例3について。
【0118】
カプセル用エスケタミン乾燥吸入粉末剤
以下の組成物は、上記の一般的な手順に従って、0.9kgのスケールで調製された。
【0119】
実施例4
成分 量(mg/単位)
エスケタミン塩酸塩 5.00(4.34mgエスケタミンに相当)
乳糖一水和物LH200 LP 19.8
ステアリン酸マグネシウム 0.2
【0120】
実施例5
成分 量(mg/単位)
エスケタミン塩酸塩 10.00(8.67mgエスケタミンに相当)
乳糖一水和物LH200 LP 39.6
ステアリン酸マグネシウム 0.4
【0121】
実施例6
成分 量(mg/単位)
エスケタミン塩酸塩 20.00(17.34mgエスケタミンに相当)
乳糖一水和物LH200 LP 79.2
ステアリン酸マグネシウム 0.8
【0122】
本発明の実施例4、5および6の組成物の空気力学的粒子サイズ分布(APSD)試験。
本発明の実施例4、5および6の組成物を、粉末吸入器のための手順に従って、次世代医薬インパクター(NGI)(Ph. Eur. Apparatus E)を使用して試験した。
【0123】
試験の結果は、以下の表2および図面の
図4(実施例4)、
図5(実施例5)および
図6(実施例6)に提示され、ここで、より高い図はNGI全体についてのAPSDデータを提示し、より低い図はAPSDデータステージ1~7およびMOCを提示する。
【0124】
【0125】
得られた結果は、予想される品質特性を有する生成物を示した。
【0126】
本発明の配合は、適宜均一性および非常に高いレベルの微粒子画分を示した:
FPF>59%、FPD 2.4mg;放出用量:4.2mg、実施例4について
FPF>54%、FPD 3.9mg;放出用量:7.1mg、実施例5について、および
FPF>51%、FPD 7.9mg;放出用量:16.5mg、実施例6について。
【0127】
本発明の乾燥粉末医薬組成物は、放出エスケタミン塩酸塩用量を、放出エスケタミン用量について、公称用量の85%まで、および微粒子画分(肺に送達される画分)の少なくとも40%等、97%までのレベルで提供した。
【0128】
実施例7
健常人における吸入エスケタミンドライパウダーの薬物動態
実施例2のエスケタミン塩酸塩乾燥粉末製剤を、健常なボランティアの肺に、すなわち乾燥粉末吸入器(DPI)(自己投与による)を使用して肺に直接投与した。
【0129】
1パフの乾燥粉末製剤は、4mgのエスケタミン遊離塩基に対応する4.6mgのエスケタミン塩酸塩と、18.22mgのラクトース一水和物および0.18mgのステアリン酸マグネシウムとを含有した。
【0130】
単回投与は、1~6パフ、すなわち4~24mgのエスケタミン遊離塩基公称用量からなる吸入イベントであった。
【0131】
本試験のパートAでは、単施設単回漸増投与としてデザインされ、18例の健常志願者に本剤を1日1回(連続最大6回)単回投与した。被験者を6つのコホートに分け、1回の投与(吸入イベント)でそれぞれ1、2、3、4、5または6回のパフを投与したコホートとした。
【0132】
エスケタミンおよびエスノルケタミン濃度の測定および薬物動態パラメーターの算出のための血液サンプルの収集を、試験開始後24時間まで行った。
【0133】
本試験の目的は、0.20mg/kg 40分間の静脈内注入の場合と同様に抗うつ効果を得るのに十分な血漿濃度を得るのに必要なパフの量を測定することであった。文献データに基づいて、これは、約60~100ng/mlの間の40分間の注入での濃度に対応することが予測され得る。有害な精神模倣および解離効果を誘発する重要な因子と考えられる血漿濃度の鋭いピークを回避することを許可するパフの数を決定することも目的であった。
【0134】
試験のパートAの結果を
図7に示すが、これは実施例2の乾燥粉末組成物の種々の単回投与後の経時的なエスケタミン血漿濃度を示す。図からわかるように、抗うつ薬に十分なプラズマエスケタミン濃度を得ることを可能にし、前記濃度の鋭いピークを伴わないパフの数は、4~16mgのエスケタミン遊離塩基公称用量に対応する1~4パフであると決定された。
【0135】
従って、1~4回の吸入からなる単回用量(吸入イベント)を、試験の次のパートBについて選択した。
【0136】
試験のパートBでは、実施例2の組成物を、30分の期間に単回投与(吸入イベント)を3回行うという投与順序で、各コホートを4つの異なる単回投与(すなわち、それぞれ1、2、3または4パフからなる各単回投与)に分けて、12人の健常なボランティア被験者に4つのコホートに分けて投与した。吸入イベントの間に15分間の休薬期間があった。すなわち、最初の単回投与は0分で投与した第2の単回用量を15分で投与し、第3の単回用量を30分で投与した。
【0137】
パートBの目的は健康被験者を対象に様々な投与計画に従ったエスケタミンの薬物動態特性を検討し、40分間の静脈内注入を模倣する適宜血漿中濃度の経時的達成を許可する計画を決定することであり(パートB)。
【0138】
試験のパートBの結果を
図8に示すが、これは実施例2の乾燥粉末組成物の種々の単回用量を、30分間の単回用量の3回投与の配列で投与した後の、経時的なエスケタミン血漿濃度を示す。
図8はまた、0.2mg/kg 40分静脈内注入後のエスケタミン血漿濃度のシミュレーション(2つの太い黒線の間の面積)を示す。
【0139】
図8から分かるように、3回または4回のパフからなる3回の単回投与の配列は、抗うつ薬に対応するレベルでの非常に良好なエスケタミン静脈内注入を模倣する血漿濃度プロフィールを得ることを可能にした。
【0140】
試験のパートAおよびパートBのいずれにおいても、悪影響をモニタリングし、精神科医による評価を行った。副作用の概要を
図9に示す。分かるように、重篤な影響は観察されず、すべての悪影響は温和な、時に中等度と評価された。精神模倣効果は一過性で、投与後30分まで持続した。有害作用や毒性による中止例はなかった。
【0141】
上記は、エスケタミンの肺内投与、すなわち肺への直接投与が、患者による簡便な自己投与によりうつ病、特にTRDを治療する有望な方法であることを示す。血漿濃度プロフィールは非常に滑らかであり、標的プロフィールと一致し、そして慢性投与に安全である。
【0142】
本発明による医薬組成物の電子的に監督された投与のためのシステムは、薬剤耐性うつの治療に使用される乾燥粉末吸入器に関する非限定的な実施形態において開示される。
【0143】
本発明による吸入器を有する医薬組成物の電子的に監督された非経口投与のためのシステムは、デジタル通信手段と、認可されたエンティティのためのコントロール端末と、医薬組成物の投与のための吸入器とを含む。好ましくは、吸入器が吸入器の内部の観点から投与プロセスを特徴付ける少なくとも1つの物理的特性を測定するためのセンサを備えることができ、さらに、システムは測定された物理的値を変換し、それを投与プロセスの品質尺度値に変換するように適合されたプロセシングステーションを備えることができる。
【0144】
図11に示すシステムの実施形態では、システム1がいくつかのノード、すなわち、認可されたエンティティのためのコントロール端末100と、プロセシングステーション200と、医薬組成物を投与するための吸入器400と、患者のモバイルデバイス300とを備える。
【0145】
通信手段は、システムノード間の通信リンク、好ましくはTLS/SSL暗号化プロトコルの使用による安全な暗号化通信リンクを確立することができる通信システムの要素である矢印によって記号的に描かれている。
【0146】
通信手段はシステムのノード間でメッセージフレームを送信することができる、当技術分野で知られているデジタル通信の任意の標準的な通信手段とすることができ、これには、インターネット通信プロトコルTCP/IPをサポートするケーブル、無線、接地または衛星通信システムが含まれる。通信手段は、NFC、Bluetooth等の近距離通信システムも対象とする。これらは、患者のモバイルデバイス300と吸入器400との間の通信リンクを確立するのに特に適している。
【0147】
モバイルデバイス300は、モバイル電話、タブレット、電子時計、バンド、またはユーザインタフェース、メモリ、プロセシング手段、および通信手段を有する任意の他のハンドヘルドまたはウェアラブル装置である。モバイルデバイスには、このデバイスを他のデバイスと区別できるように、一意の識別データを提供する必要がある。
【0148】
本発明の第1の実施形態では、コントロール端末装置100が認可されたエンティティとコントロール端末装置100との対話を許可するユーザインタフェースを備えたコンピュータ端末装置である。認可されたエンティティは、本発明によるシステム1の一部である吸入器400を使用して実施される必要がある患者に対する特定の治療を選択した医師であってもよい。しかしながら、認可されたエンティティはまた、ローカルヘルスケアシステム内の機関または多数の機関であってもよい。例えば、認可されたエンティティは、医師が通常の処方箋を発行することによって患者のための治療を選択すること、患者に吸入器を発行することになるドラッグストアで働く薬剤師、または医薬組成物が装填された吸入器を製造する製薬会社を含むことができる。認可されたエンティティの共通の特徴は、エンティティ内の少なくとも1人の人が吸入器400内に分配された医薬組成物の使用を伴う治療のために特定の識別された患者を認可する認可を有し、投与スキーム11を有するコントロールシグナル5と、患者のモバイルデバイス300に割り当てるための認可トークン12とを生成している少なくとも1つの端末が存在することである。好ましくは認可エンティティが1人の人間、例えば、処方箋を発行する医師であってもよいが、上述の機能の分散認可エンティティも同様に実現可能である。
【0149】
図12はコントロールシグナル5を示し、コントロールシグナル5は、投与スキーム11が患者のために選択されたときに生成される。コントロールシグナル5は、投与スキーム11と、患者のモバイルデバイスに割り当てるための認可トークン12と、セキュリティブロック13とを有する、コントロールシグナルの固有の識別データ10を備える。投与スキーム11に対応するデータと、モバイルデバイス300のための認可トークン12との両方を生成することによって、システム1は、認可されたエンティティがモバイルデバイス300とのみ通信することを要求されるので、簡略化される。認可されたエンティティは、医療デバイス400とさらに直接通信する必要はない。投与スキーム11および認可トークン12に対応するデータを同じ信号で提供することによって、システム1は、1つの信号5のみが必要とされるので単純化される。
【0150】
識別データ10はコントロールシグナル5のIDコードであってもよいし、タイムスタンプ、コントロールシグナルのシリアル番号、処方箋番号等を含む信号IDヘッダーであってもよい。識別ブロック10の主な機能は、コントロールシグナル5の発電の事象を一意に識別することである。
【0151】
投与スキーム11は、患者に処方された医薬組成物および投与パラメータを識別するコントロールシグナル5の一部である。投与スキーム11は単に、認可された標準治療の識別子、または医薬組成物、投与レジメン、用量等を示すデータのセットであってもよく、または投与スキームが患者の治療ニーズに従って個別化されている間に医薬組成物を識別するデータのセットであってもよい。好ましくは、コントロール端末100が認可された範囲で投与スキームの個人化されたパラメータをクロスチェックするクロスチェック機能を備える。
【0152】
認可トークン12はコントロールシグナルに固有であり、患者による処方された医薬組成物の使用の認可を表すコントロールシグナルの一部である。これは、許可された認可の一意のシリアル番号またはハッシュであってもよかった。認可トークンは純粋な電子コードであってもよいし、あるいは、3Dコード、2Dコード、QRコード、NFCタグ等、モバイルデバイスによって可読署名付きで提供されるステッカーまたはタグの物理的な形態を有してもよかった。したがって、認可トークン12は、コントロールシグナル5とは別個に提供されてもよい。
【0153】
セキュリティブロック13はコントロールシグナル5の一体性の検証を可能にし、コントロールシグナル5を発行した認可されたエンティティを識別することを許可するデータを含む。これは、コントロールシグナル5を生成した許可された機関のデジタル証明書と、デジタル証明書を使用してコントロールシグナル5のために生成されたハッシュブロックとを含むブロックとすることができる。セキュリティブロックは、任意の実現可能な完全性コントロールシステムを実装することができる。
【0154】
好ましくは、コントロールシグナル5は暗号化され、通信手段は例えば、既知のプロトコル及び暗号化方式を用いて、安全な通信チャネルを実現する。
【0155】
コントロールシグナル5は単一のデータパケット/メッセージであってもよいし、上述したような一体性と機能性を提供する方法でリンクされた独立したパケットまたはメッセージの回収であってもよい。例えば、投与スキーム11は識別子と共に吸入器400のメモリに格納された多数の異なる標準的な投与スキームのうちの1つであってもよく、一方、医師によって生成されるコントロールシグナル5は適用されるべき投与スキームを示す識別子のみを含む。あるいは、コントロールシグナル5が医師によって発行された処方箋に基づいて薬剤師によって生成され、投与スキームの識別子と、吸入器内で医薬組成物を製造する責任を負う製薬会社によって発行された認可トークンとを含む。
【0156】
医師が、本発明による吸入器を介して医薬組成物による治療のために患者を適格とする場合、投与スキームが選択される。これにより、コントロールシグナル5の第1要素が作成されている。この時点で、医師は薬局で収集される吸入器400の処方箋を発行することができ、あるいは、患者に吸入器400を提供することができる。吸入器400が患者に提供されると、認可トークン12が患者のモバイルデバイス300に割り当てられる。あるいは、認可トークン12が吸入器400の処方箋が医師によって発行されたときに、患者のモバイルデバイス300に割り当てられる。
【0157】
モバイルデバイス300への認可トークン12の割り当ては、モバイルデバイス300のメモリに認可トークン12を転送する工程を含む。この転送は例えば、モバイルデバイス300のソフトウェアによってさらに復号され、モバイルデバイス300のメモリに記憶される、モバイルデバイスのカメラによって製薬会社によって生成された認可トークンでQRコードをスキャンすることによって、いくつかの形態をとることができる。さらに、モバイルデバイス300への認可トークン12の割り当ては、コントロールシグナル5を発行した認可されたエンティティにモバイルデバイス300の識別データと共に認可トークン12を転送する工程を含む。
【0158】
割り当てステップを実施するために、患者のモバイルデバイス300はモバイルデバイスのメモリに認可トークン12を転送することを可能にし、さらに、コントロールシグナル5を生成する責任を負う認可されたエンティティのプロセシングステーション200にモバイルデバイス300の識別データで認可トークン12を通信するソフトウェアアプリケーションを備える必要がある。プロセシングステーション200は、モバイルデバイスの識別データを使用して認可トークン12をモバイルデバイス300に割り当て、モバイルデバイス300を認可トークン12とリンクする。プロセシングステーション200は認可トークン12と共にモバイルデバイス300を割り当てるという確認を生成し、この確認をモバイルデバイス300に送り返す。モバイルデバイス300はまた、プロセシングステーション200から、認可トークン12をモバイルデバイス300に割り当てることの確認を受信するように適合される。
【0159】
図13に示される本発明による吸入器400は、通信ユニット401と、時計を備えるプロセシングユニット402と、コントロールされたブロッキングユニット403と、メモリ404と、医薬組成物貯蔵部410と、医薬組成物投与ユニット411とを備える。
図14に示すように、吸入器400は、医薬組成物の投与プロセスの物理的特性を測定するように適合されたセンサを備える測定部405を備えることが好ましい。センサ部405はマイクロホンを含んでもよく、測定される物理特性は音波の振幅であってもよい。マイクロフォンは、乾燥粉末医薬組成物が吸入中に空気と混合される混合チャンバ内に配置されてもよい。
【0160】
吸入器400は、医薬組成物が予め装填され、医薬組成物を所定の用量で投与するように適合された装置である。好ましくは、吸入器400は密封吸入器である。これは、医薬組成物のための記憶ユニット410の含有量を補充したり、開いたり、修正したりすることができないことを意味する。あるいは、吸入器400がコントロールされた様式で、記憶ユニット410の含有量を交換することを許可するように適合される。
【0161】
吸入器400を受け取り、認可トークン12を患者のモバイルデバイス300に割り当てられた患者は、モバイルデバイス300に割り当てられた認可トークン12を吸入器400に登録する。モバイルデバイス300に割り当てられた認可トークン12の登録は、患者のモバイルデバイス300に割り当てられた認可トークン12を吸入器400のメモリに転送することを意味する。あるいは、吸入器400が認可トークン12が患者のモバイルデバイス300に割り当てられたという確認を登録する。これは、吸入器400とモバイルデバイス300との間に通信チャネルを確立する通信手段を介して行うことができる。好ましくは通信チャネルが近距離または近距離通信チャネルであるか、または通信チャネルはモバイルデバイス300と吸入器400との間の測距を許可する。
【0162】
モバイルデバイス300に割り当てられた認可トークン12の吸入器400への登録に応答して、吸入器400は、投与スキーム11をプロセスする。投与スキームをプロセスすることは、吸入器400が投与スキーム11を活投与スキームにし、投与スキーム11によって示される時間ウィンドウにおける医薬組成物の用量の投与を許可することを意味する。投与スキームに従うために、吸入器400は、貯蔵部410から投与ユニット411への医薬組成物の用量の移動を効果的にブロックするコントロールされたブロッキング手段403を備え、プロセシングユニット402からコントロールシグナルを受信すると、貯蔵部410から投与ユニット411への医薬組成物の用量の移動を許可する。
【0163】
ブロッキング手段403は例えば、バルブ、ピン、ボルト、リレー、キー、通常は閉鎖されているスイッチ、または、貯蔵部410から投与ユニット411への医薬組成物の用量の移動をブロックするブロッキング位置にあり、コントロールユニット402からのコントロールシグナルに応答して医薬組成物の投与を許可する開放位置に配置され得る任意の形態のアクチュエータを備える。ブロッキング手段403は通常は閉じており(通常閉鎖されたタイプである)、活投与スキーム12に準拠してのみ開く。コントロールされたブロッキング手段403は、貯蔵部410から投与ユニット411への乾燥粉末医薬組成物の用量の移動をブロックする駆動ユニットおよび活作動要素を備えてもよい。ブロッキング状態にある作動要素は、貯蔵部410から投与ユニット411への医薬組成物の用量の移動をブロックすることができ、開放位置では、コントロールユニット402からのコントロールシグナルに応答して医薬組成物の投与を許可する。プロセシングユニット402からコントロールシグナルを受信すると、作動要素は開放状態に移動し、医薬組成物の投与を許可することができる。
【0164】
さらに、吸入器400は、コントロールされたブロッキング手段403が投与スキーム11に準拠してのみ、かつ、認可トークン12が割り当てられた患者のモバイルデバイス300の存在下で、ストレージ410に格納された医薬組成物の投与を許可するように適合される。患者のモバイルデバイス300の存在はモバイルデバイス300が吸入器400の近傍にある、すなわち、これらの2つのデバイス間の距離が10メートル未満、好ましくは5m未満、最も好ましくは2m未満であると理解されるべきである。モバイルデバイス300に認可トークン12を提供し、モバイルデバイス300が存在することを要求することによって、システム1は、患者が医療デバイス400上で直接自分自身を認証することを要求するシステムよりも安全である。これは、医薬組成物が医療デバイス400の存在のみを必要とするのではなく、モバイルデバイス300が存在する場合にのみ投与され得るからである。その結果、システム1は例えば、許可されていない人が医療デバイス400及び患者のパスコードを有する場合であっても、安全である。
【0165】
したがって、吸入器400は、吸入器400の近傍におけるモバイルデバイス300の存在をクロスチェックするように適合される。これは、多くの方法、例えば近距離通信手段を使用することによって達成することができる。そのような解決策では吸入器400とモバイルデバイス300との間の通信接続の欠如が2つの装置の位置範囲外であると理解され、したがって、2つの装置間の距離は予想よりも大きい。
【0166】
あるいは、吸入器400が吸入器400とモバイルデバイス300との間の距離を能動的または受動的に決定するレンジファインダ、例えば、レーザーレンジファインダ、音響レンジファインダ、時間遅延測定システム、位相シフトレンジファインダ等を備える。
【0167】
モバイルデバイス300と吸入器400との間の距離が規定の上限よりも大きい場合、これは医薬組成物の投与のための条件のうちの1つを失わせ、したがって、プロセシングユニット402はコントロールされたブロッキング手段403にコントロールシグナルを送信しておらず、これは医薬組成物の投与を可能にしない。医薬組成物の投与は、両方の条件、即ち以下が満たされる場合にのみ可能である:
a) コントロールユニット402の時計が、活投与スキーム11による用量の投与の時間窓内に入る時間を指示する、および
b) 割り当てられた認可トークン12を有する患者のモバイルデバイス300が、吸入器400の近位にある。
【0168】
本発明によるシステム1は、これらの2つの条件を組み合わせることによって、医薬組成物の乱用および誤用をコントロールするための有効な方法を提供する。第1に、患者のモバイルデバイス300に認可トークン12を割り当てることは、吸入器400が許可された人によってのみ起動され得ることを保証する。これは、感情的なレベルで人をモバイルデバイスに強く結びつける、観察された新しい現象の事実によるものである。
【0169】
図14に示すように、吸入器400は、医薬組成物の投与プロセスの物理的特性を測定するように適合されたセンサを備える測定部405を備えることが好ましい。投与プロセスの最中に吸入器400内で測定される医薬組成物投与プロセスの物理的特性は、空気圧、音響インテンシティ、振動マグニチュード、またはそのような物理的特性のいずれかの組合せである。吸入器内部で起こる内部物理的プロセスのこの測定は用量が投与されたことを確認する情報、および投与プロセスの品質に関する情報、すなわち、このプロセスが正しいものであったか、または失敗したものであったかを得ることを許可する。投与量が投与されたという事実および投与プロセスの品質に関する情報は医薬組成物が患者によって吸入された空気によって励起される乾燥粉末吸入器の場合であるように、投与プロセスが患者の積極的な参加を必要とする場合に、患者の投与スキームへの準拠および患者の性能の品質を評価することができる貴重な情報である。このようなプロセスの質は、服用時に患者が発生する気流に依存する。
【0170】
管理プロセス中に収集されたデータは、認可されたエンティティのプロセシングステーション200に通信される。プロセシングステーション200は、測定された物理的特性を表す変換データを、管理プロセスの品質尺度に変換するように適合される。好ましくは、品質尺度が0または1等の要約書指数の値、または0と10との間の自然数からなる等級、または管理プロセスの品質を表すことができる任意の他の値の尺度である。この値は、時間領域、周波数領域、又は形成される任意の適切な変換における物性又は特性の測定値によって供給される、単一変数又は多変数、微分方程式又は方程式の組に基づく関数に基づいて計算することができる。
【0171】
好ましくは、品質測度の値が品質測度の値を時間領域または周波数領域における測定された物理特性の表現であるパターンに割り当てることを許可する発見的観察に基づいて選択される。発見的観察のプロセス内で、
図15に示すように、ランキングマトリックス500が生成されることが好ましい。ランキングマトリックス500は上述したように、物理的特性の測定値を表すパターン420を含むフィールドのセットを含む。ランクマトリックス内のフィールドは固形境界501によって分割された2つの領域に編成され、各パターンは管理プロセスの割り当てられた品質尺度を有して受信される。ランキングマトリックス内のフィールドを、異なる品質値を有する2つの別個の領域に編成する必要はなく、ランキングマトリックス500は分散されてもよく、フィールドは、中実の境界を有する連続した領域を生成する必要はない。ランキングマトリックス500は、特定のパターンを有する行列502の各分野及び全ての分野が割り当てられた品質値を有する限り機能する。例えば、分野503は0の割り当てられた品質値504を有し、分野505は、1の割り当てられた品質値506を有する。
【0172】
図16は、吸入器400内で測定されたパターン420について、ランキングマトリックス500から品質尺度値を得るプロセスを示す。物理的特性の測定値を表すパターン420は類似性の尺度を確立するために、ランキングマトリックス500のフィールド内のパターンと比較される。類似性の尺度は、平均二乗誤差、最小二乗等の類似性を確立する公知方法を使用して選択される。例えば、平均二乗誤差が最小で最良の類似性尺度が識別されるランキングマトリックス500内のパターンは、最良適合とみなされ、このフィールドに割り当てられた品質値510がこのプロセスの結果として返される。このプロセスは、品質尺度の値を選択するための最良適合ルールとして説明することができる。
【0173】
プロセシングステーション200は、コントロール端末装置100が医薬組成物による治療のために患者に資格を与えた医師によって操作されるとき、管理プロセスの品質尺度の値510をコントロール端末装置100に通信するように適合される。コントロール端末はユーザインタフェースを使用して、医師または認可されたエンティティに、医薬組成物投与プロセスの受信された品質尺度を提示するように適合される。このフィードバックループは、投与スキームによる患者のコンプライアンスを評価することを許可する。このような情報は医薬組成物の投与が正しかったにもかかわらず、現在の治療が効果を欠いている場合、本医薬組成物の投与スキームを修正するために、または異なる医薬組成物に切り替えるために使用することができる。
【0174】
プロセシングステーション200は好ましくは投与プロセスの品質尺度の値510を患者のモバイルデバイス300に返し、これは、患者の自己コントロールを改善し、患者に品質尺度に直面することによって患者のモチベーションをサポートする。これら全ての因子は患者の投与スキームのコンプライアンスを改善し、良好な治療効果を有する。
【0175】
好ましくは、プロセシングステーション200が移動電話、パーソナル・コンピュータ、メインフレーム・コンピュータ、クラウド・コンピューティング・システム、またはそのようなコンピューティング・デバイスと、コントロールされたアクセスで、デジタル信号を処理し、データベース動作を処理するのに適した通信、処理、および記憶能力との任意の組合せを含む処理装置のグループから選択される。上述のように、プロセシングステーション200は、本発明によるシステム内で2つの機能を実施する。プロセシングステーション200は患者のモバイルデバイスに認可トークンを割り当てており、さらに、プロセシングステーション200は、測定された物理的特性を、医薬組成物の投与プロセス/事象の品質を表す値の品質尺度に変換している。
【0176】
医薬組成物の電子的に管理された非経口投与のためのシステムを適所に有することにより、それを必要とする患者における疾病治療のための新しい方法が得られる。この方法はそれに割り当てられた認可トークン12を有する患者のモバイルデバイス300の存在下で、主治医によって処方された自己投与スキーム11に従って遠隔的に指示されコントロールされた方法で、医療デバイスを介して前記患者による医薬組成物の非経口自己投与を含み、前記医療デバイスは、それに割り当てられた認可トークン12を有する患者のモバイルデバイス300の存在下で、投与スキーム11に準拠してのみ医薬組成物の投与を許可するように適合されたコントロールされたブロッキング手段403を介して、自己投与スキーム11に従って動作される。
【0177】
管理プロセスは投与スキームに準拠し、認可トークン12が割り当てられた患者のモバイルデバイス300の存在下でのみ、コントロールされたブロッキング手段403によって許可される。この2つのレベルのコントロールは、医薬組成物の投与に関する監督を電子システムに委任する。
【0178】
投与は、コントロールされたブロッキング手段403によって、患者または第三者による誤用または乱用から保護されるので、過去に有資格者の個人的な監督を必要とした物質の範囲に安全に適用することができる。
【0179】
図17に示す本発明の第2の実施形態ではシステム1がコントロールシグナルを吸入器に送信するように適合されたプロセシングステーション200を備え、吸入器は認可トークンの吸入器への登録に応答して、プロセシングステーションから投与スキームを伴うコントロールシグナルを受信する。この代替経路は、医師がコンピュータを有していないか、または通信ネットワークが治療のために患者に資格を与えるときに認可トークンを生成するために必要な安定性を提供しない国において、より便利であり得る。このスキームは、医師が管理タスクから解放される必要がある場合にも適用することができる。
【0180】
システムの第2の実施形態は同じレベルのセキュリティを提供し、サードパーティ相互参照に対して等しくロバストである。第2の実施形態では、プロセシングステーション200がコントロールステーション100から通信機能を引き継ぐ。コントロール局100とプロセシングステーション200との間の通信チャネルは、プロセシングステーション200とモバイルデバイス300との間に確立された通信チャネルとは異なる特性のものであってもよい。
【0181】
図18は、うつ病の治療に使用するための本発明による吸入器400の別の実施形態を示す。この吸入器は、乾燥粉末医薬組成物の単一用量のブリスターを保持する貯蔵部410を含む。この実施形態では、医薬組成物が乾燥粉末組成物の形態のエスケタミンである。吸入器400はまた、投与ユニット411を含む。投与ユニット411は、混合チャンバおよび気流チャネルを備える。投与単位411は、装填ハンドル412によってコントロールされ、ハンドル412を引っ張ると、乾燥粉末医薬組成物の用量が投与単位411の混合チャンバ内に放出される。乾燥粉末医薬組成物の用量が混合チャンバ内にあるとき、吸入器400は、患者によって使用される準備ができている。
【0182】
図18は、通信手段401と、コントロール手段402と、ブロック手段403と、メモリ404と、好ましくは測定部405とを備えるコントロールモジュールを備えた本発明による吸入器400を示す。
【0183】
図18は、貯蔵または輸送に適した閉鎖構成の吸入器400を示す。この構成では、吸入器400が医薬組成物の投与を可能にしない。吸入器400を開放形態に開放するために、貯蔵部410および投与ユニット411は、コントロールモジュールの外に回転される必要がある。閉じた構成では、投与ユニット411が投与ユニット411へのアクセスをブロックするコントロールモジュールによってカバーされる。貯蔵部410および投与単位411をコントロールモジュールから回転させると、投与単位411が患者に露出される。閉鎖構成では、ブロッキング手段403が管理ユニット411を有する貯蔵部410の回転を阻止する。ボルトの形態のブロッキング手段403は吸入器400を閉鎖構成から開放構成に変換する間に、貯蔵部410および投与ユニット411が回転されるときにハンドル412が移動するチャネル内に延在する。ブロッキング手段403はこのようにして、貯蔵部410および投与ユニット411の回転を効果的にブロックし、このようにして、ブロッキング手段403は、吸入器が開放構成に変換されることを可能にせず、したがって、医薬組成物を投与することを可能にしない。
【0184】
吸入器400のコントロールモジュールは通信手段401、コントロール手段402、ブロッキング手段403、メモリ404、好ましくは測定部405を含み、ブロッキング手段(図示せず)を作動させるための電源および駆動ユニットもコントロールモジュール内にある。
【0185】
吸入器400のコントロール手段402は患者のモバイルデバイス300に割り当てられた認可トークン12の吸入器400における登録に応答して、投与スキーム11をプロセスし、一方、コントロールされたブロッキング手段403は、認可トークン12が割り当てられた患者のモバイルデバイス300の存在下で、投与スキーム11に準拠してのみ乾燥粉末医薬組成物の投与を許可する。
【0186】
吸入器300に割り当てられた認可トークン12の登録は、患者のモバイルデバイス300に割り当てられた認可トークン12を吸入器400のメモリ404に転送することを意味する。あるいは、吸入器400が認可トークン12が患者のモバイルデバイス300に割り当てられたという確認を登録する。これは、吸入器400とモバイルデバイス300との間の通信チャネルを確立する通信手段401を介して行うことができる。好ましくは、通信チャネルが近距離または近距離通信チャネルであり、あるいは通信チャネルはモバイルデバイス300と吸入器400との間の測距、例えば、NFCまたはBluetooth(登録商標)を許可する。
【0187】
この実施形態における投与スキーム11は、吸入器400のメモリ404に予め記憶されている。しかしながら、それは、認可トークン12と共に送信され、次いで、吸入器400のメモリ404に記憶されることができる。
【0188】
投与スキーム11を備えたコントロール手段402は、吸入器400を閉鎖構成から開放構成に変換することができる時間スロットを決定する。この場合にはエスケタミンである医薬組成物の乱用および誤用に対する第2のレベルの保護として、コントロールユニット402は、それに割り当てられた認可トークン12を有する患者のモバイルデバイス300が吸入器400の近くに存在するかどうかを確認する。
【0189】
したがって、吸入器400は、モバイルデバイス300の存在と、それに割り当てられた認可トークン12とを、吸入器400の近傍でクロスチェックする。これは、近距離通信手段を使用することによって行われる。吸入器400とモバイルデバイス300との間の通信接続が不足していることは2つの装置の範囲外の位置であると理解され、従って、2つの装置の間の距離は予想されるよりも大きい。
【0190】
コントロールユニット402は2つの条件を同時にフルフィールドにして、ハンドル412が移動するチャネルから阻止手段403を引き出すためのコントロールシグナルを駆動ユニットに供給し、このようにして、吸入器400を閉構成から開構成に変換することを許可する。
【0191】
医薬組成物の電子的に監督された投与のためのシステム1を、それを必要とする患者におけるうつ病の治療のための方法に置いておくと、認可トークン12が割り当てられた患者のモバイルデバイス300の存在下で、主治医によって処方された投与スキーム11に従って、吸入器400を介した乾燥粉末吸入可能医薬製剤として、前記患者によるケタミンまたはその薬学的に許容される塩の肺経路による自己投与を含む方法を、遠隔的に指示され、コントロールされた様式で実施することができる。本発明による方法では、前記吸入器400が認可トークン12が割り当てられた患者のモバイルデバイス300の存在下で、投与スキーム11に準拠してのみ医薬組成物の投与を許可するように適合されたコントロールされたブロッキング手段403を介して、投与スキーム11に従って動作される。
【0192】
吸入器400はうつ病の治療方法に使用するためのケタミンまたはその薬学的に許容される塩を含むことができ、ケタミンまたはその薬学的に許容される塩は、乾燥粉末医薬組成物として肺経路によって投与される。薬学的に許容される塩は、塩酸塩であり得る。ケタミンは、塩酸エスケタミンであってもよい。
【0193】
組成物は、公称単位用量当たりの遊離塩基として計算して2mg~100mgの微粉化ケタミンを含んでもよい。組成物は、公称単位用量当たりの遊離塩基として計算して2mg~40mgの微粉化ケタミンを含んでもよい。組成物は、公称単位用量当たり遊離塩基として計算して4mgの微粉化エスケタミンを含んでもよい。組成物は、組成物の総重量に対して、30~95重量%の量の炭水化物増量剤および0.2~3重量%の量の安定剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含んでもよい。組成物はレーザー回折技術によって測定されるように、1~10μmのメジアン粒径d50、0.2~5μmのd10、および3~35μmのd90を有するケタミンを含み得る。吸入器は、1.2mgのケタミン塩酸塩に対応する、遊離塩基として計算された少なくとも1.0mgのケタミンの放出用量を提供するように適合され得る。肺に送達される放出線量の割合5は、少なくとも40%であり得る。
【0194】
肺経路を介する投与のための組成物は、予め固定され、個々に密封された複数の個々の公称単位用量を有するブリスターに含まれてもよい。肺経路を介する投与のための組成物は、単一の公称単位用量を有するカプセルに含まれ得る。肺経路を介する投与のための組成物は、複数用量の粉末リザーバに含まれてもよい。
【0195】
投与スキーム11は乾燥粉末ケタミン組成物または製剤の吸入による患者による自己投与を、複数回の単回用量、例えば、少なくとも3回の単回用量の配列からなる投与の配列で提供することができ、各単回用量は1、2、3または4回のパフ、好ましくは3または4回のパフのような複数回のパフからなり、前記配列は、吸入なしに中断期間によって互いに分離される。投与スキーム11は30分の期間における3回または4回のパフからなるエスケタミンの3回の単回投与の配列を含んでもよく、単回投与は15分の中断期間によって分離され、各パフは乾燥粉末組成物または製剤中の4mgのエスケタミン公称投与量に対応する。
【国際調査報告】