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特表2022-541948エソメプラゾール及び炭酸水素ナトリウムを含む安定した薬学的組成物
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  • 特表-エソメプラゾール及び炭酸水素ナトリウムを含む安定した薬学的組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-28
(54)【発明の名称】エソメプラゾール及び炭酸水素ナトリウムを含む安定した薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20220920BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220920BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220920BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P1/04
A61K9/14
A61K9/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505339
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 KR2020009250
(87)【国際公開番号】W WO2021020771
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0091266
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518208484
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ジョン ソ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン スー
(72)【発明者】
【氏名】パク シン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リム ジョン レ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA51
4C076BB01
4C076CC16
4C076DD25
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD51
4C076DD55
4C076DD67
4C076EE06
4C076EE32
4C076FF04
4C076FF27
4C076FF34
4C076FF36
4C076FF63
4C076FF67
4C076GG14
4C076GG17
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA36
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA03
4C086NA06
4C086NA11
4C086ZA68
(57)【要約】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩と、炭酸水素ナトリウムとを含む、安定した薬学的組成物に関する。具体的には、低含有量の炭酸水素ナトリウムを含み、優れた溶出率及びバイオアベイラビリティを有し、高含有量の炭酸水素ナトリウムにより発生する副作用を減少させ、改善された安定性を有する薬学的組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩と、
炭酸水素ナトリウムとを含み、
ここで、前記エソメプラゾールをエソメプラゾール重量換算で40mg含み、
前記炭酸水素ナトリウムを800mg含むことを特徴とする薬学的組成物において、
前記薬学的組成物を投与した際の前記エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩の最高血中濃度到達時間が1時間以内であることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項2】
前記エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩は、ペレットまたは顆粒の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記ペレットまたは顆粒は、コーティング剤でコーティングされることを特徴とする、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩がエソメプラゾールマグネシウムであることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記エソメプラゾールマグネシウム塩がエソメプラゾールマグネシウム塩三水和物であることを特徴とする、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記薬学的組成物は、錠剤であることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記炭酸水素ナトリウムは、湿式顆粒の形態で存在することを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記組成物の投与前24時間において胃内pHが4以下に維持される時間に比べて、投与後24時間において胃内pHが4以下に維持される時間が50%以上減少することを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記組成物の単回投与後50分以内に胃内pHが増加することを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記組成物の反復投与後30分以内に胃内pHが増加することを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記組成物の経口投与後24時間の累積胃酸度(integrated gastric acidity)減少率(%)が80%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体または薬学的に許容される塩と、炭酸水素ナトリウムとを含む、安定した薬学的組成物に関する。具体的には、低含有量の炭酸水素ナトリウムを含み、優れた溶出率及びバイオアベイラビリティを有し、高含有量の炭酸水素ナトリウムにより発生する副作用を減少させ、改善された安定性を有する薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オメプラゾール(omeprazole)の化学名は、5-メトキシ-2-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)メチル]スルフィニル-1H-ベンゾイミダゾールである。オメプラゾールには、2つの異性体、すなわちR異性体とS異性体が存在する。S異性体は、R異性体に比べて、治療効果及び副作用の面ではるかに優れることが知られている。前記S異性体は、(S)-5-メトキシ-2-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)-メチル]スルフィニル-1H-ベンゾイミダゾールであり、一般にエソメプラゾール(esomeprazole)という。
【0003】
エソメプラゾールは、消化不良、消化性潰瘍疾患(peptic ulcer disease)、胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease)、ゾリンジャー・エリソン症候群(Zollinger-Ellison syndrome)などの治療に用いられる代表的なプロトンポンプ阻害剤(proton pump inhibitor; PPI)である。
【0004】
オメプラゾール、特にエソメプラゾールは酸性及び中性媒質において分解または変形しやすいことが当該技術分野でよく知られており、より具体的には、pH値が3以下の水溶液においてエソメプラゾールの分解半減期は10分未満であることが知られている。よって、エソメプラゾールの分解は、酸性化合物により促進され、水分、熱、有機溶媒及び光にも影響を受ける。
【0005】
よって、安定したエソメプラゾール製剤に対する要求が強く、安定性の問題を解決するために、特許文献1には、エソメプラゾールマグネシウム塩を含むペレットを作製し、次いでそれを腸溶コーティングし、その後賦形剤を添加して錠剤に製剤化する方法が開示されている。前記方法により製造された製剤は、ネキシウム(Nexium)という商品名で現在市販されている。
【0006】
しかしながら、ネキシウムなどの腸溶コーティング錠は、胃ですぐに吸収されるのではなく、腸で溶解及び吸収されるように設計されているので、胃酸関連疾患などの投与後にすぐに治療効果が求められる疾患の治療には適さない。
【0007】
特許文献2には、酸化マグネシウムとポビドンで固体分散体剤形を製造することにより、オメプラゾールの安定性及び物性の問題を改善した腸溶コーティング錠及びカプセル剤が開示されている。
【0008】
特許文献3には、オメプラゾールを有効成分とし、安定化成分としてβ-シクロデキストリン及び水酸化ナトリウムを添加して固体分散体剤形を製造する方法が開示されている。しかしながら、前記特許文献に記載された発明には、人体に有害な水酸化ナトリウムを用いるという問題がある。固体分散体を製造する過程は、有効成分であるオメプラゾールを溶媒に溶解させる過程を含むので、この過程においてオメプラゾールを安定化させるために、水酸化ナトリウムなどの特殊な安定化剤を必要とする。
【0009】
前記問題を解決するために、特許文献4は、オメプラゾールに炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)などの緩衝剤を用いる方法を開示している。
【0010】
しかしながら、多量の炭酸水素ナトリウムを用いると、オメプラゾールの効能が減少し、副作用が生じるという欠点がある。具体的には、多量の炭酸水素ナトリウムを投与すると、胃の膨張により重篤な患者に大きな苦痛を与え、炭酸水素ナトリウムの吸収はげっぷを誘発するが、げっぷが胃酸の上方移動を誘発し、胃食道逆流疾患を悪化させる可能性がある。また、高血圧や心不全などの症状を有する患者は、高血圧症状を引き起こすナトリウム(sodium)の摂取を抑制しなければならないので、そのような症状を有する患者に多量の炭酸水素ナトリウムを投与することは好ましくない。さらに、様々な合併症を有する患者における多量の炭酸水素ナトリウムの投与は、代謝性アルカローシスを引き起こす恐れがある。さらに、胃と尿のpHを変化させる緩衝剤は、薬物吸収、分布及び代謝過程に影響を及ぼすので、多量の炭酸水素ナトリウムをオメプラゾールと共に用いる際は注意を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国登録特許第0384960号公報
【特許文献2】韓国登録特許第1104349号公報
【特許文献3】韓国公開特許第10-1996-0003605号公報
【特許文献4】韓国登録特許第0679767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、低いpHでは不安定なオメプラゾールの安定化のために、炭酸水素ナトリウムを含む製剤を開発した。胃におけるpH値を上昇させるために多量の炭酸水素ナトリウムを用いなければならないという問題を解決するために、低含有量の炭酸水素ナトリウムを用いながらも溶出率及びバイオアベイラビリティに優れる薬学的組成物を開発し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩と、炭酸水素ナトリウムとを含む、改善された安定性を有する薬学的組成物に関する。
【0014】
オメプラゾールの鏡像異性体は、S異性体またはR異性体であるが、S異性体であるエソメプラゾールが好ましい。
【0015】
本発明における「薬学的に許容される塩」とは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウムなどの金属塩やアンモニウム塩などであるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、マグネシウム塩が好ましい。
【0016】
前記オメプラゾール、その鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩は、その溶媒和物であってもよく、溶媒和物は、一水和物、二水和物、三水和物などの水和物であってもよく、無定形であってもよく、結晶形であってもよい。
【0017】
本発明の薬学的組成物は、オメプラゾール、その鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩のオメプラゾール1重量に対して炭酸水素ナトリウムを15~50重量含み、好ましくは20~40重量含む。
【0018】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体または薬学的に許容される塩と、炭酸水素ナトリウムとを含み、前記オメプラゾール、その鏡像異性体または薬学的に許容される塩をオメプラゾール重量換算で20mgまたは40mg含み、炭酸水素ナトリウムを600~1000mg含む薬学的組成物に関する。
【0019】
炭酸水素ナトリウムの含有量が600mg以上であれば、胃液のpHを中性の環境にしてオメプラゾールの分解などを抑制することができ、1,000mg以上では、胃液のpH変化がほとんどない。
【0020】
前記炭酸水素ナトリウムは、好ましくは700~900mgであり、より好ましくは800mgである。
【0021】
本発明は、エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩と、炭酸水素ナトリウムとを含み、ここで、前記エソメプラゾールをエソメプラゾール重量換算で40mg含み、前記炭酸水素ナトリウムを800mg含むことを特徴とする薬学的組成物において、前記薬学的組成物を投与した際の前記エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩の最高血中濃度到達時間が1時間以内であることを特徴とする薬学的組成物に関する。前記エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩は、ペレットまたは顆粒の形態であってもよい。前記ペレットまたは顆粒は、コーティング剤でコーティングされてもよい。
【0022】
本発明の組成物は、単回投与時の前記エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩の最高血中濃度到達時間が1.5時間以内であってもよい。1時間以内であることが好ましい。
【0023】
本発明の組成物は、反復投与時の前記エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩の最高血中濃度到達時間が1.25時間以内であってもよい。1時間以内であることが好ましい。
【0024】
本発明における「ペレット」は、球形白糖に活性成分または賦形剤を含むコーティング液を噴霧することにより製造することができる。
【0025】
本発明における「顆粒」は、結合液を用いる湿式造粒法、または結合液を用いない乾式造粒法により製造することができる。
【0026】
前記エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩がエソメプラゾールマグネシウム塩であることが好ましく、エソメプラゾールマグネシウム塩三水和物であることがより好ましい。
【0027】
本発明の組成物に含まれる炭酸水素ナトリウムは、湿式顆粒の形態で存在してもよい。
【0028】
本発明の組成物を投与すると、投与前24時間において胃内pHが4以下に維持される時間に比べて、投与後24時間において胃内pHが4以下に維持される時間が50%以上減少するようにしてもよい。
【0029】
本発明の組成物は、単回投与後50分以内に胃内pHが増加するようにしてもよい。また、本発明の組成物は、反復投与後30分以内に胃内pHが増加するようにしてもよい。
【0030】
本発明の組成物は、経口投与後24時間の累積胃酸度(integrated gastric acidity)減少率(%)が80%以上であってもよい。
【0031】
本発明の組成物は、ペレット、カプセル剤、錠剤(単層錠、二層錠、内核錠などを含む)、顆粒剤などに剤形化されるが、これらに限定されるものではない。本発明の剤形は、錠剤であることが好ましい。
【0032】
前記本発明による製剤は、当該技術分野で公知の任意の経口用固形製剤、具体的には顆粒、ペレット、カプセルまたは錠剤の製造方法により製造することができる。
【0033】
具体的には、本発明は、(a)エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩を含む1次コーティング液でコアをコーティングして1次コーティング物を作製するステップと、(b)コーティング剤を含む2次コーティング液で前記1次コーティング物をコーティングして2次コーティング物を作製するステップと、(c)前記2次コーティング物を炭酸水素ナトリウムと混合して混合物を得るステップと、(d)前記混合物を打錠して裸錠を得るステップと、(e)前記裸錠を3次コーティング液でコーティングし、その後乾燥させてコーティング錠を得るステップとを含む前記薬学的製剤の製造方法に関する。一実施形態において、ステップ(c)の炭酸水素ナトリウムは、湿式造粒後にコーティング物と混合される。他の実施形態において、前記コアは、球形白糖であってもよい。
【0034】
前記コーティング剤は、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、エチルセルロース及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から少なくとも1つ選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
また、本発明は、(a)エソメプラゾールまたはその薬学的に許容される塩を湿式造粒または乾式造粒して顆粒物を得るステップと、(b)前記顆粒物を炭酸水素ナトリウムと混合して混合物を得るステップと、(c)前記混合物を打錠して裸錠を得るステップと、(d)前記裸錠をコーティング液でコーティングし、その後乾燥させてコーティング錠を得るステップとを含む前記薬学的製剤の製造方法を提供する。一実施形態において、ステップ(a)の顆粒物は、炭酸水素ナトリウムを含んでもよく、ここで、炭酸水素ナトリウムは、製剤に含まれる炭酸水素ナトリウム総重量に対して0~75重量%、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下の割合で含まれる。
【0036】
一実施形態において、ステップ(b)の炭酸水素ナトリウムは、湿式造粒後に顆粒物と混合される。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体またはその薬学的に許容される塩と、炭酸水素ナトリウムとを含む、安定性が改善された薬学的組成物に関する。本発明の薬学的組成物は、改善された安定性を有し、少量の炭酸水素ナトリウムを含むので、優れた溶出率及びバイオアベイラビリティを有し、副作用が減少するという効果を有する。また、炭酸水素ナトリウムを湿式造粒し、その後エソメプラゾールペレットまたは顆粒と混合することにより製造した薬学的組成物においては、エソメプラゾールの溶出速度が増加するという効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】試験例3における試験薬(40/800mg及び40/900mg錠剤)と対照薬(ネキシウム錠)の単回投与時のエソメプラゾールの濃度を示すグラフである。
図2】試験例3における試験薬(40/800mg及び40/900mg錠剤)と対照薬(ネキシウム錠)の反復投与時のエソメプラゾールの濃度を示すグラフである。
図3】炭酸水素ナトリウムを湿式造粒し、その後エソメプラゾールペレットと混合して打錠した錠剤と、炭酸水素ナトリウムをエソメプラゾールペレットと単純混合して製造した錠剤のエソメプラゾール溶出率を示すグラフである。
図4】炭酸水素ナトリウムを湿式造粒し、その後エソメプラゾールペレットと混合して打錠した錠剤と、炭酸水素ナトリウムをエソメプラゾールペレットと単純混合して製造した錠剤のエソメプラゾール溶出率を示すグラフである。
図5】試験例6における試験薬(40/800mg錠剤)と対照薬(ネキシウム錠(D026 40mg))の単回投与時の24時間pHモニタリング(monitoring)結果を示すグラフである。
図6】試験例6における試験薬(40/800mg錠剤)と対照薬(ネキシウム錠(D026 40mg))の反復投与時の24時間pHモニタリング結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明についての理解を助けるために提供するものであり、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
800mgの炭酸水素ナトリウムを含むエソメプラゾール錠剤の製造
エソメプラゾールと炭酸水素ナトリウムを含む錠剤を次の方法で製造した。
【0041】
1.1次ペレットコーティング
精製水とヒドロキシプロピルセルロースを入れて溶解させ、その後アルギニン、シメチコン、エソメプラゾールマグネシウム三水和物(エソメプラゾール換算で40mg)、酸化マグネシウム及びタルクを入れて分散させることにより、1次コーティング液を調製した。流動層コーティング機に球形白糖を入れて前記1次コーティング液を噴霧することにより、1次ペレットコーティング工程を行った(1次コーティング物)。
【0042】
2.2次ペレットコーティング
調製タンクに精製水、ポリビニルアルコール、タルク、酸化チタン、グリセロールモノカプリロカプレート及びラウリル硫酸ナトリウムを入れて分散させることにより、2次コーティング液を調製した。流動層コーティング機に前記1次コーティング物を入れて2次コーティング液を噴霧することにより、2次ペレットコーティング工程を行った(2次コーティング物)。
【0043】
3.後混合(単純混合法)
前記2次コーティング物を混合機に入れ、炭酸水素ナトリウム(800mg)を入れた。ここで、水分含有量に応じて精製水を含んでもよい。ここに、さらにコポビドン、クロスポビドン及びフマル酸ステアリルナトリウムを入れて混合した(最終混合物)。
【0044】
4.打錠
最終混合物を打錠機で打錠した(裸錠)。
【0045】
5.3次コーティング
調製タンクにポリビニルアルコール、タルク、酸化チタン、グリセロールモノカプリロカプレート、ラウリル硫酸ナトリウム、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄及び精製水を入れて溶解させることにより、3次コーティング液を調製した。コーティング機に前記裸錠を入れて3次コーティング液でコーティングし、その後乾燥させて最終コーティング錠を得た。
【実施例2】
【0046】
900mgの炭酸水素ナトリウムを含むエソメプラゾール錠剤の製造
実施例1のステップ3において、炭酸水素ナトリウムを900mg用いることを除いて、実施例1と同様にエソメプラゾール錠剤を製造した。
【実施例3】
【0047】
湿式造粒した800mgの炭酸水素ナトリウムを含むエソメプラゾール錠剤の製造
エソメプラゾールと炭酸水素ナトリウムを含む錠剤を次の方法で製造した。
【0048】
1.1次ペレットコーティング
精製水とヒドロキシプロピルセルロースを入れて溶解させ、その後アルギニン、シメチコン、エソメプラゾールマグネシウム三水和物(エソメプラゾール換算で40mg)、酸化マグネシウム及びタルクを入れて分散させることにより、1次コーティング液を調製した。流動層コーティング機に球形白糖を入れて前記1次コーティング液を噴霧することにより、1次ペレットコーティング工程を行った(1次コーティング物)。
【0049】
2.2次ペレットコーティング
調製タンクに精製水、ポリビニルアルコール、タルク、酸化チタン、グリセロールモノカプリロカプレート及びラウリル硫酸ナトリウムを入れて分散させることにより、2次コーティング液を調製した。流動層コーティング機に前記1次コーティング物を入れて2次コーティング液を噴霧することにより、2次ペレットコーティング工程を行った(2次コーティング物)。
【0050】
3.後混合(湿式造粒法)
別途の容器にコポピドンと水で結合液を調製し、その後炭酸水素ナトリウム(800mg)と練り合わせて乾燥させることにより、練合物を製造した。その後、混合機に前記練合物と2次コーティング物を入れ、コポビドン、クロスポビドン及びフマル酸ステアリルナトリウムを入れて混合した(最終混合物)。
【0051】
4.打錠
最終混合物を打錠機で打錠した(裸錠)。
【0052】
5.3次コーティング
調製タンクにポリビニルアルコール、タルク、酸化チタン、グリセロールモノカプリロカプレート、ラウリル硫酸ナトリウム、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄及び精製水を入れて溶解させることにより、3次コーティング液を調製した。コーティング機に前記裸錠を入れて3次コーティング液でコーティングし、その後乾燥させて最終コーティング錠を得た。
【実施例4】
【0053】
湿式造粒した900mgの炭酸水素ナトリウムを含むエソメプラゾール錠剤の製造
実施例3のステップ3において、炭酸水素ナトリウムを900mg用いることを除いて、実施例3と同様にエソメプラゾール錠剤を製造した。
【実施例5】
【0054】
次の製造方法により実施例5の製剤(エソメプラゾール40mg,炭酸水素ナトリウム800mg)を製造した。
【0055】
1.混合
エソメプラゾールマグネシウム三水和物及び微結晶セルロースを入れてHigh Speed Mixerで混合した。
【0056】
2.第1混合部の製造(湿式顆粒)
精製水にヒドロキシプロピルセルロースを入れて溶解させることにより、結合液を調製した。前記混合物に結合液を入れ、練り合わせて乾燥させることにより、第1混合部の湿式顆粒を製造した。
【0057】
3.第2混合部の製造、混合及び潤滑
混合機に前記第1混合部の湿式顆粒、炭酸水素ナトリウム、コポビドン及びクロスカルメロースナトリウムを入れて混合し、その後フマル酸ステアリルナトリウムを入れて潤滑することにより、最終混合物を製造した。ここで、前記第1混合部を除く部分が第2混合部を形成する。
【0058】
4.打錠及びコーティング
最終混合物を打錠機で打錠した(裸錠)。調製タンクにポリビニルアルコール、酸化チタン、ポリエチレングリコール、タルク及び精製水を入れて溶解させた。コーティング機に前記裸錠を入れてコーティングし、その後乾燥させてコーティング錠を得た。
【実施例6】
【0059】
次の製造方法により実施例6の製剤(エソメプラゾール40mg,炭酸水素ナトリウム800mg)を製造した。
【0060】
1.混合及び潤滑
エソメプラゾールマグネシウム三水和物、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム及びクロスポビドンを入れて混合し、その後フマル酸ステアリルナトリウムを入れて潤滑することにより、混合物を得た。
【0061】
2.第1混合部の製造(乾式顆粒)
前記混合物をスラッグ打錠機でスラッグ打錠することにより、第1混合部を製造した。
【0062】
3.第2混合部の製造、混合及び潤滑
前記第1混合部、炭酸水素ナトリウム、コポビドン及びクロスポビドンを入れて混合し、その後フマル酸ステアリルナトリウムを入れて潤滑することにより、最終混合物を製造した。ここで、第1混合部を除く部分が第2混合部を形成する。
【0063】
4.打錠及びコーティング
最終混合物を打錠機で打錠した(裸錠)。調製タンクにヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、ポリエチレングリコール及び精製水を入れて溶解させた。コーティング機に前記裸錠を入れてコーティングし、その後乾燥させてコーティング錠を得た。
【実施例7】
【0064】
1.第1混合部の製造
エソメプラゾールマグネシウム三水和物、マンニトール、コポビドン、クロスポビドン及びフマル酸ステアリルナトリウムを均一に混合することにより、第1混合部を製造した。
【0065】
2.第2混合部の製造
炭酸水素ナトリウム、コポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムを均一に混合することにより、第2混合部を製造した。
【0066】
3.打錠
第1混合部及び第2混合部を打錠機で打錠した(裸錠)。
【0067】
4.コーティング
調製タンクにポリビニルアルコール、酸化チタン、ポリエチレングリコール、タルク及び精製水を入れて溶解させた。コーティング機に前記裸錠を入れてコーティングし、その後乾燥させてコーティング錠を得た。
【0068】
〔実施例8及び9〕
実施例7の製造方法により実施例8及び9の製剤を製造したが、前記製造方法のステップ1の第1混合部の製造工程において、炭酸水素ナトリウムをさらに混合し、炭酸水素ナトリウムが第1混合部及び第2混合部に含まれるようにした。
【0069】
実施例8及び9の第1混合部には、それぞれ製剤全体の炭酸水素ナトリウム(800mg)重量に対して5及び10重量%の炭酸水素ナトリウムが含まれる。
【0070】
〔実施例10~14〕
実施例5の製造方法により実施例10~14の製剤を製造したが、前記製造方法のステップ1の混合工程において、炭酸水素ナトリウムをさらに混合し、炭酸水素ナトリウムが第1混合部及び第2混合部に含まれるようにした。実施例8~12の製剤の第1混合部には、それぞれ製剤全体の炭酸水素ナトリウム(800mg)重量に対して10、30、40、50及び75重量%の炭酸水素ナトリウムが含まれる。
【0071】
[試験例1]各pHにおけるエソメプラゾール及びオメプラゾールの安定性試験
緩衝液100mLに20mg/mLの濃度のエソメプラゾール及びオメプラゾール溶液2mLをそれぞれ添加して各pHにおける含有量を分析した。分析方法は次の通りである。
<分析方法>
ア)検出器:紫外可視吸光光度計(測定波長:280nm)
イ)カラム:Inertsil C8-3(4.6×150mm,5μm)またはそれと同等のカラム
ウ)注入量:20μl
エ)流量:1.5mL/分
オ)カラム温度:40℃付近の一定温度
カ)サンプル温度:10℃付近の一定温度
キ)分析時間:6分
ク)移動相:pH7.6の緩衝液とアセトニトリルの混合液(65:35)
【0072】
前記pH7.6の緩衝液は、リン酸二水素ナトリウム一水和物(NaH2PO4・H2O)0.725g及びリン酸水素二ナトリウム無水物(Na2HPO4)4.472gを秤量し、容量1Lのフラスコに入れて精製水に溶解し、次いで標線まで希釈した液を250mL採取し、容量1Lのフラスコに入れて精製水で標線まで希釈し、次いでリン酸でpH7.6になるように調整した液である。
【0073】
前記分析結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示すように、pH7.0以上であれば、エソメプラゾール及びオメプラゾールが少なくとも2時間は安定性を示すことが確認された。
【0076】
[試験例2]炭酸水素ナトリウムの各容量における人工胃液のpH確認試験
炭酸水素ナトリウムの含有量を設定するために、薬物放出条件及び胃液条件を次のように設定した。具体的には、1)空腹の胃液量は一般に20~50mLであり、2)胃液分泌量は約2L/day(約83mL/hr)であり、3)薬物(製剤)と反応する胃液の総量は約200mLであると仮定し、4)薬物服用時に水と共に服用し、その際の水の量は200mLとした。
【0077】
よって、人工胃液200mLに精製水200mLを入れた溶液(37℃)における炭酸水素ナトリウムの容量を変更してpHを測定した。測定の結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示すように、炭酸水素ナトリウムの容量が増加するにつれてpHの値が上昇し、炭酸水素ナトリウムが1,000mg以上ではpHがほとんど変化しないことが確認された。また、人工胃液200mLを中和してpHを中性にする炭酸水素ナトリウムの量は、少なくとも600mg以上であることが確認された。
【0080】
[試験例3]薬物動態的特性(PK)評価
それぞれ実施例3及び4で製造したエソメプラゾール/炭酸水素ナトリウムを40/800mg含む錠剤と、40/900mg含む錠剤を試験薬(T)とし、市販されているネキシウム錠(登録商標)40mgを対照薬(R)とし、それらを被験者に経口投与し、その後エソメプラゾールの血中濃度を測定した。
【0081】
ランダム配置、wash-out 7日以上、3×3のクロスオーバー臨床試験を行い、各薬物群の被験者を6人とし、当該薬物を単回/反復投与した。
【0082】
各薬物において得られたエソメプラゾールの血中濃度時間曲線を図1及び図2に示す。図1及び図2のグラフからAUC値を測定した。対照薬(R)に対する各試験薬(T)の比率(T/R ratio)及びその90%信頼区間を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
表3、図1及び図2の結果から、本発明による試験薬40/800mg及び40/900mg錠剤は、ネキシウム錠とAUCが同等の範囲にあることが確認された(すなわち、T/R比が0.96~1.13)。よって、試験薬は、対照薬であるネキシウム錠とAUC値が生物学的に同等であることが確認された。
【0085】
特に、エソメプラゾール/炭酸水素ナトリウムを含む市販の錠剤(製品名:エソデュオ(登録商標))はその含有量が20/800mgであることを考慮すると、エソメプラゾールを40mgに増加する場合は、炭酸水素ナトリウムも増量するのが一般的であろう。しかしながら、驚くべきことに、これらの結果から、本発明の40/800mg錠剤は、40/900mg錠剤と同程度のAUC値を示すと共に、対照薬と生物学的同等性を有することが確認された。
【0086】
これらの結果から、本発明の錠剤は、エソメプラゾールを増量する場合も(例えば、2倍)、炭酸水素ナトリウムを増量することなく、低含有量で用いることができ、炭酸水素ナトリウムの多量使用による副作用をもたらすことなく、優れた溶出率及びバイオアベイラビリティを示すことが確認された。
【0087】
[試験例4]薬力学的特性(PD)評価
37人の被験者を対象にした臨床試験において、エソメプラゾール/炭酸水素ナトリウムを40/800mg含む実施例3の錠剤を試験薬(T)とし、7日間1日1回反復及び単回経口投与し、その後24時間の累積胃酸度(Integrated Gastric Acidity)を評価した。その結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
表4に示すように、試験薬の7日間反復経口投与後24時間のベースライン(baseline)からの累積胃酸度(integrated gastric acidity)減少率(%)は約90%であり、単回経口投与後の累積胃酸度減少率は約87%であることが確認された。
【0090】
[試験例5]炭酸水素ナトリウムの各製造方法におけるエソメプラゾールの溶出率評価
炭酸水素ナトリウムの含有量は800mgと錠剤重量の中で大きな比重を占めるので、炭酸水素ナトリウムの物性がエソメプラゾール放出速度に影響を及ぼす。本試験例においては、炭酸水素ナトリウムをエソメプラゾールペレットと単純混合して製造した錠剤(実施例1)と、炭酸水素ナトリウムを湿式造粒して製造した錠剤(実施例3)のエソメプラゾール溶出率を比較した。
【0091】
次のパドル法条件で溶出率を比較した。その結果を図3に示す。
<溶出試験条件>
1)溶出法:大韓民国薬典第2法(パドル法)
2)溶出液:pH7.4の液(水酸化ナトリウム1.56gとリン酸二水素カリウム6.8gを1Lの精製水に溶解した溶液),900mL
3)溶出温度:37±0.5℃
4)回転速度:75rpm
5)試験時間:45分
<分析条件>
1)検出器:紫外吸光光度計(測定波長:302nm)
2)カラム:Capcell Pak C18(4.6×150mm,5μm)またはそれと同等のカラム
3)注入量:20μl
4)流量:1.0mL/分
5)カラム温度:30℃付近の一定温度
6)サンプル温度:10℃付近の一定温度
7)移動相:アセトニトリル、pH7.3の緩衝液及び水の混合液(350:500:150)
*pH7.3の緩衝液:1mol/Lのリン酸二水素ナトリウム溶液10.5mLと0.5mol/Lのリン酸水素二ナトリウム溶液60mLをそれぞれ採取し、容量1Lのフラスコに入れて精製水で標線まで希釈した液
-4法の溶出率(ng/mL)
【0092】
次のFlow Through Cell法条件で溶出率を比較した。その結果を図4に示す。
<溶出試験条件>
1)溶出法:大韓民国薬典第3法(Flow Through Cell法)
2)溶出液:pH1.2→pH4.0
3)溶出温度:37±0.5℃
4)流速:2mL/分
5)試験時間:pH1.2(15分)→pH4.0(15分)
6)Cellの大きさ:22.4mm
<分析条件>
1)検出器:紫外吸光光度計(測定波長:302nm)
2)カラム:Capcell Pak C18(4.6×150mm,5μm)またはそれと同等のカラム
3)注入量:20μl
4)流量:1.0mL/分
5)カラム温度:30℃付近の一定温度
6)サンプル温度:10℃付近の一定温度
7)移動相:アセトニトリル、pH7.3の緩衝液及び水の混合液(350:500:150)
*pH7.3の緩衝液:1mol/Lのリン酸二水素ナトリウム溶液10.5mLと0.5mol/Lのリン酸水素二ナトリウム溶液60mLをそれぞれ採取し、容量1Lのフラスコに入れて精製水で標線まで希釈した液
【0093】
図3及び図4に示すように、炭酸水素ナトリウムを湿式造粒した錠剤において、炭酸水素ナトリウムを単純混合した錠剤に比べて、エソメプラゾールの溶出率が高いことが確認された。これは、炭酸水素ナトリウムをエソメプラゾールペレットと単純混合したものにおいて、適正摩損基準(0.5%以下)以内になるように打錠すると、高い打錠圧により薬物の放出が遅くなるからである。それに対して、炭酸水素ナトリウムを湿式造粒し、その後エソメプラゾールペレットと混合して打錠したものにおいては、相対的に低い打錠圧により適正摩損基準内の好適な打錠が可能であるので、薬物の放出が速くなる。
【0094】
[試験例6]エソメプラゾール及び炭酸水素ナトリウム複合剤の臨床試験-Tmax測定
健康成人を対象に、実施例1の錠剤(エソメプラゾール40mg/炭酸水素ナトリウム800mg)と対照薬としてのネキシウム錠(D026 40mg)を単回投与及び反復投与し、その後薬物動態及び薬力学的特性と安定性を比較評価するために、ランダム配置、公開、反復投与、2×2のクロスオーバー設計で表5のように臨床試験を行った。
【0095】
【表5】
【0096】
全ての対象者は、午前中の同じ時間に臨床試験用医薬品(RまたはT)を服用し、約1時間後に所定の標準食事(700~800kcal,脂肪5~25%含有)を開始し、20分以内に食事を終了するようにした。
【0097】
対象者には、第1期にベースライン24時間pHモニタリングを行い、その後第1期の1日目から配置された各群の臨床試験用医薬品を1日1回ずつ、計7日間投与した。全ての対象者は、臨床試験用医薬品投与の約1時間後に所定の標準食事を開始し、20分以内に終了するようにした。
【0098】
第1期の最後の投薬後に7日以上の休薬期を設け、その後再度入院させて第2期の臨床試験を行った。第2期の臨床試験は、第1期と同様に、ベースライン24時間pHモニタリングを行い、その後第2期の1日目から配置された各群の臨床試験用医薬品を1日1回ずつ、計7日間投与した。しかしながら、第1期とは異なり、グループAの対象者には対照薬を、グループBの対象者には実施例1の錠剤を所定の時間に投与し、投薬の約1時間後に所定の標準食事を開始し、20分以内に終了するようにした。
【0099】
実施例1の錠剤と対照薬の薬物動態的特性を比較するために、単回投与後の薬物動態採血は第1期及び第2期のそれぞれ1日目に、反復投与後の薬物動態採血は第1期及び第2期のそれぞれ7日目に、投与直前と、投与0.17(=10min)、0.33(=20min)、0.5、0.75、1、1.25、1.5、2、2.5、3、3.5、4、5、6、8、10、12h後に(各期毎に18回ずつ)行った。採血した血液から分離した血漿におけるエソメプラゾールの濃度を測定し、最高血中濃度到達時間(Tmax)の中央値を分析した。それを表6に示す。
【0100】
【表6】
【0101】
単回投与と反復投与の両方において、実施例1の錠剤の最高血中濃度到達時間は、対照薬と比較して、はるかに短かった。よって、実施例1の錠剤は、迅速にエソメプラゾールを放出することにより、迅速に薬効を示すことが確認された。
【0102】
[試験例7]エソメプラゾール及び炭酸水素ナトリウム複合剤の臨床試験結果-胃内pH測定
試験例6の臨床試験において、24時間pHモニタリングにより胃内pHを測定した。単回投与後の24時間pHモニタリングは第1期及び第2期のそれぞれ1日目に、反復投与後の24時間pHモニタリングは第1期及び第2期のそれぞれ7日目に行い、胃内pH測定はMMS Ohmega R pHを用いた。pH meterカテーテルにより標準溶液を用いてcalibrationを行い、calibrationが正常に完了したカテーテルとpH検査機のみ24時間胃内pH検査に用いられるように準備した。その後、カテーテルに潤滑用ゲルまたは水を十分に塗布して違和感を減らし、次いで鼻腔から胃内に挿入してpHを測定した。単回投与後の24時間pHモニタリングの結果を図5に示し、反復投与後の24時間pHモニタリングの結果を図6に示す。
【0103】
実施例1の錠剤は単回投薬後約30分経過した時点からpHが増加するのに対して、対照薬は単回投薬後1時間経過した時点からpHが増加することが確認された。
【0104】
また、実施例1の錠剤は反復投薬後約20分経過した時点からpHが増加するのに対して、対照薬は反復投薬後30分経過した時点からpHが徐々に増加することが確認された。
【0105】
すなわち、実施例1の錠剤は、投薬されると胃内のpHを迅速に上昇させることが分かる。
【0106】
[試験例8]エソメプラゾール及び炭酸水素ナトリウム複合剤の臨床試験結果-胃内pH測定
試験例7において各臨床試験用医薬品投与後に24時間観察した胃内pHのうちpH≦4が維持される時間分率(%)を測定し、医薬品投与前に24時間観察した胃内pHのうちpH≦4が維持される時間分率(%)と比較して差を算出したところ、単回投与においては54.36%、反復投与においては65.81%減少することが確認された。
【0107】
よって、実施例1の錠剤は、投与されると胃内pHが4以下に維持される時間が短縮されることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】