IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ モーター ヨーロッパ ナームロゼ フェンノートシャップ/ソシエテ アノニムの特許一覧

特表2022-541951アダプティブクルーズコントロール方法とシステム
<>
  • 特表-アダプティブクルーズコントロール方法とシステム 図1
  • 特表-アダプティブクルーズコントロール方法とシステム 図2
  • 特表-アダプティブクルーズコントロール方法とシステム 図3
  • 特表-アダプティブクルーズコントロール方法とシステム 図4
  • 特表-アダプティブクルーズコントロール方法とシステム 図5
  • 特表-アダプティブクルーズコントロール方法とシステム 図6
  • 特表-アダプティブクルーズコントロール方法とシステム 図7
  • 特表-アダプティブクルーズコントロール方法とシステム 図8
  • 特表-アダプティブクルーズコントロール方法とシステム 図9
  • 特表-アダプティブクルーズコントロール方法とシステム 図10
  • 特表-アダプティブクルーズコントロール方法とシステム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-28
(54)【発明の名称】アダプティブクルーズコントロール方法とシステム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20220920BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20220920BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W60/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505435
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2019070320
(87)【国際公開番号】W WO2021018374
(87)【国際公開日】2021-02-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511312997
【氏名又は名称】トヨタ モーター ヨーロッパ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】ニールズ フェルソン
(72)【発明者】
【氏名】フロラン ガルニエ-フォレ
(72)【発明者】
【氏名】エドアルド ピッツィゴーニ
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241DB02Z
3D241DC02Z
(57)【要約】
走行車両に対するアダプティブクルーズコントロール方法であって、走行車両の速度を取得するステップと、走行車両と、該走行車両の前方で同じ車線で走行している先行車両との間の相対的距離を取得するステップと、目標タイムヘッドウェイを計算するステップであって、タイムヘッドウェイは相対的距離と走行車両速度の比であり、目標タイムヘッドウェイを走行車両速度と結び付ける関係に基づいて、目標タイムヘッドウェイを計算するステップと、第1制御モードとして、目標タイムヘッドウェイに基づいて走行車両のエンジンおよび/またはブレーキを制御するステップと、を有している、方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両に対するアダプティブクルーズコントロール方法であって、
前記走行車両の速度(S)を取得するステップと、
前記走行車両と、前記走行車両の前方で同じ車線において走行している先行車両との間の相対的距離(D)を取得するステップと、
目標タイムヘッドウェイを計算するステップであって、タイムヘッドウェイは前記相対的距離(D)と走行車両速度(S)の比であり、目標タイムヘッドウェイを前記走行車両速度(S)と結び付ける関係に基づいて目標タイムヘッドウェイを計算するステップと、
第1制御モードとして、前記目標タイムヘッドウェイに基づいて、前記走行車両のエンジン(15)および/またはブレーキ(16)を制御するステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記目標タイムヘッドウェイを前記走行車両速度(S)と結び付ける関係は、
THWt=a・S-b+c
ここにおいてTHWtは前記目標タイムヘッドウェイ、
Sは前記走行車両速度、
a、b、およびcは正の実数であるというタイプである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
関係THWt=a・S-b+cにおいて、項bは0.5と1との間であり、好ましくは0.6と0.8との間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記目標タイムヘッドウェイを前記走行車両速度(S)と結び付ける関係は、運転者の挙動に従って調整可能な挙動ファクタに基づいて決定される少なくとも項を含んでいる、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
関係THWt=a・S-b+cにおいて、項aとcは、
a=m1・B+q1
c=m2・B+q2
ここにおいてBは、運転者の挙動に従う0と100との間で調整可能な挙動ファクタ、
1とq1は正の実数、
2とq2は正の実数であるという関係に基づいて決定される、
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記先行車両の速度(SPV)を取得するステップを更に有し、
前記第1制御モードは、先行車両速度(SPV)が前記走行車両速度(S)とほぼ等しい場合のみに選択される、
請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記走行車両のエンジン(15)および/またはブレーキ(16)は、前記先行車両速度(SPV)が前記走行車両速度(S)より少なくとも2km/h速いとき、または、先行車両が検出されないときに第3制御モードで制御され、
前記第3制御モードでは、前記走行車両速度(S)は上げられ目標速度(St)で一定に保たれる、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
走行車両に対するアダプティブクルーズコントロールシステムであって、
前記走行車両の速度(S)を決定するように構成されている走行車両速度決定ユニット(12)と、
前記走行車両と、前記走行車両の前方で同じ車線において走行している先行車両との間の相対的距離(D)を決定するように構成されている相対的距離決定ユニット(11)と、
目標タイムヘッドウェイを計算するように構成されている計算ユニット(14)であって、タイムヘッドウェイは前記相対的距離(D)と走行車両速度(S)の比であり、目標タイムヘッドウェイを前記走行車両速度(S)と結び付ける関係に基づいて目標タイムヘッドウェイを計算するように構成されている計算ユニット(14)と、
前記目標タイムヘッドウェイに基づいて、前記走行車両のエンジン(15)および/またはブレーキ(16)が制御される少なくとも第1制御モードを有している制御ユニット(14)と、
を備えている、アダプティブクルーズコントロールシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のアダプティブクルーズコントロールシステム(1)を備えている、車両。
【請求項10】
コンピュータにより実行されると、請求項1から7の何れか1項に記載の方法のステップを実行するための命令を有している、コンピュータプログラム。
【請求項11】
コンピュータにより読み取り可能で、請求項10に記載のコンピュータプログラムを記録している、記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行車両に対するアダプティブクルーズコントロール(adaptive cruise control)方法、走行車両に対するアダプティブクルーズコントロールシステム、そのような制御システムを備えている車両、そのような方法のステップを実行するための命令を備えているコンピュータプログラム、およびそのようなコンピュータプログラムを記録している記録媒体に関する。
【0002】
そのようなアダプティブクルーズコントロール方法は、自動化運転の間に距離を先行車両に自然な方法で適応させるために有用である。そのようなアダプティブクルーズコントロールは、完全に自動化された、または単に走行制御システムを装備している何れの走行車両に対しても使用できる。
【背景技術】
【0003】
走行制御システムは、運転者により設定された一定の速度を維持するために動力車両の速度を自動的に制御する、よく知られているシステムである。そのようなシステムは、現代の自動車のほとんどにおいて実現されており、特に、主要幹線道路上を運転しているときに運転者に相当な運転の快適さを提供する。
【0004】
しかし、そのようなシステムの最初の世代は、同じ車線において走行車両に先行する他の車両の存在にも拘わらず、速度を一定に維持するという欠点を有していた。従って、先行車両に衝突することを回避するために走行車両の運転者は手動でブレーキをかけなければならず、そのため走行制御の動作をキャンセルしなければならなかった。
【0005】
そのような欠点を回避するために、アダプティブクルーズコントロールシステムがより最近になって設計された。そのようなシステムは先行車両を検出でき、先行車両との安全な距離で追従するように走行車両の速度を調整できる。従って、先行車両が検出されないときは、走行車両の速度は設定された速度に一定に維持され、そして、先行車両が検出されると、先行車両に安全に追従するように走行車両の速度は落とされる。そして結局、先行車両が車線から離れ、または加速してもはや検出されなくなると、走行車両の速度は設定された速度に再び到達するように上げられる。
【0006】
しかし、そのようなアダプティブクルーズコントロールシステムが効果的に運転の安全性を向上しても、運転者は現在利用できるアダプティブクルーズコントロールシステムには完全には満足していない。実際、現在のシステムは、実際の自然な追従挙動を模倣していないということが観察されている。特に、現在のシステムにおいては、目標追従距離は目標追従距離マップから検索されるが、このマップは、運転者が先行車両に追従するときの実際の運転者の挙動を正確には模倣していない。
【0007】
従って、アダプティブクルーズコントロールシステムが先行車両を追従するときに、運転者は完全には安心してはいない。結果として、安全性に対する感じと運転の快適さは完全には満足されるものではない。
【0008】
結果として、少なくとも部分的には、上記の既知のシステムの欠点のないアダプティブクルーズコントロール方法、アダプティブクルーズコントロールシステム、車両、コンピュータプログラム、および記録媒体に対する現実的な需要がある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、走行車両に対するアダプティブクルーズコントロール方法に関し、走行車両の速度を取得するステップと、走行車両と、その走行車両の前方で同じ車線で走行している先行走行車両との間の相対的距離を取得するステップと、目標タイムヘッドウェイを計算するステップであって、タイムヘッドウェイ(time headway)は相対的距離と走行車両速度の比であり、目標タイムヘッドウェイを走行車両速度と結び付ける関係に基づいて、目標タイムヘッドウェイを計算するステップと、第1制御モードとして、目標タイムヘッドウェイに基づいて走行車両のエンジンおよび/またはブレーキを制御するステップと、有している。
【0010】
従って、本開示においては、アダプティブクルーズコントロールの追従挙動は、追従距離(following distances)の所定のマップに基づくのではなく、目標タイムヘッドウェイの計算に基づいている。実際、発明者により、基本的には、両方の車両を分離している時間であるそのような目標タイムヘッドウェイは、相対的距離よりも監視すべきより適切なパラメータであるということが決定されている。
【0011】
特に、発明者は実際の運転者の自然な追従挙動を理解するために、10万を超える実際の追従ケースに基づいて詳細な統計的研究を実行した。この研究により、発明者は解析された追従ケースにおける共通の傾向を識別し、そのような自然な追従挙動を模倣する関係を設計した。
【0012】
従って、目標タイムヘッドウェイを結び付けるそのような関係は、自然な追従挙動を正確に模倣することを可能にする。従って、これは車両がそのような関係に基づいて制御されるときに、運転者に対する自然な感じという結果になり、そのため、自動化された運転システムにおいて運転者だけでなく同乗者に対しても高められた信頼性という結果になる。結果として、このアダプティブクルーズコントロール方法により、安全性の感じと運転の快適さが増大される。
【0013】
幾つかの実施形態においては、目標タイムヘッドウェイを走行車両速度と結び付ける関係は、
THWt=a・S-b+c
ここにおいてTHWtは目標タイムヘッドウェイ、
Sは走行車両速度、
a、b、およびcは正の実数であるというタイプである。
【0014】
この関係は、発明者により実行された統計的研究において識別されているように、実際の運転者の自然な追従挙動を高い精度で模倣することを可能にする。
【0015】
幾つかの実施形態においては、関係THWt=a・S-b+cにおいて、項bは0.5と1との間であり、好ましくは0.6と0.8との間である。
【0016】
幾つかの実施形態においては、関係THWt=a・S-b+cにおいて、項aは1と20との間であり、好ましくは4と13との間である。
【0017】
幾つかの実施形態においては、関係THWt=a・S-b+cにおいて、項cは0.1と1.5との間であり、好ましくは0.2と1.1との間である。
【0018】
幾つかの実施形態においては、目標タイムヘッドウェイを走行車両速度と結び付ける関係は、運転者の挙動に従って調整可能な挙動ファクタに基づいて決定される少なくとも項を含んでいる。そのような挙動ファクタは、運転者の自然な挙動に可能な限り近く一致させる努力において、運転者の運転攻撃性(driving aggressiveness)を考慮することを可能にする。従って、追従制御は単に平均の運転者に基づくのではなく、異なる運転者のプロファイルの挙動を模倣できる。典型的には、より攻撃的な運転者は、より短い相対的距離という結果になる攻撃的設定を選択でき、一方、それほど攻撃的でない運転者は、より長い相対的距離という結果になる安全設定を選択できる。
【0019】
幾つかの実施形態においては、関係THWt=a・S-b+cにおいて、項aおよび/または項cは、運転者の挙動に従って調整できる挙動ファクタに基づいて決定される。
【0020】
幾つかの実施形態においては、関係THWt=a・S-b+cにおいて、項aは、
a=m1・B+q1
ここにおいてBは、運転者の挙動に従う0と100との間で調整可能な挙動ファクタ、
1とq1は正の実数であるという関係に基づいて決定される。
【0021】
幾つかの実施形態においては、m1は0.05と0.1との間である。
【0022】
幾つかの実施形態においては、q1は1と10との間である。
【0023】
幾つかの実施形態においては、関係THWt=a・S-b+cにおいて、項cは、
c=m2・B+q2
ここにおいてBは、運転者の挙動に従う0と100との間で調整可能な挙動ファクタ、 m2とq2は正の実数であるという関係に基づいて決定される。
【0024】
好ましくは、Bは上記の両方の関係において同一である。
【0025】
幾つかの実施形態においては、m2は0.001と0.02との間である。
【0026】
幾つかの実施形態においては、q2は0.1と1との間である。
【0027】
幾つかの実施形態においては、挙動ファクタは運転者により設定される。例えば、4通りの設定が可能である。
【0028】
幾つかの実施形態においては、挙動ファクタは、例えば、運転者の運転履歴に基づいて、車両の中央制御ユニットにより設定される。
【0029】
幾つかの実施形態においては、方法は更に、先行車両の速度を取得するステップを有している。従って、先行車両が走行車両より低速または高速で走行しているかを決定できる。
【0030】
幾つかの実施形態において第1制御モードは、先行車両速度が走行車両速度とほぼ等しい場合のみに選択される。特に、先行車両速度が走行車両速度とほぼ2km/hの差で等しいときに、先行車両速度は走行車両速度とほぼ等しいと決定できる。設計された関係の精度は実際には、両方の車両が同じペースで完全に前後に続いて走行しているときにその最高レベルとなる。
【0031】
幾つかの実施形態においては、走行車両のエンジンおよび/またはブレーキは、先行車両速度が走行車両速度より少なくとも2km/h遅いときに第2制御モードで制御される。
【0032】
幾つかの実施形態においては、第2制御モードでは、走行車両速度が先行車両速度にほぼ一致するまで走行車両速度は落とされる。従って、先行車両が検出されると、第1制御モードを使用できる追従状況に到達するために走行車両を減速させることができる。
【0033】
幾つかの実施形態においては、走行車両のエンジンおよび/またはブレーキは、先行車両速度が走行車両速度より少なくとも2km/h速いときに、または、先行車両が検出されないときに第3制御モードで制御される。例えば、そのような状況においては通常の走行制御を再開できる。
【0034】
幾つかの実施形態においては、第3制御モードでは走行車両速度は上げられ、そして、目標速度で一定に保たれる。この目標速度は、例えば、交通情報に基づいて運転者により設定でき、または、車両の中央制御ユニットにより設定できる。
【0035】
幾つかの実施形態においては、相対的距離はミリ波レーダー、カメラ、および/またはライダーにより取得される。
【0036】
幾つかの実施形態においては、第1制御モードでは、走行車両速度に依存する相対的距離のマップは使用されない。
【0037】
本開示はまた、走行車両に対するアダプティブクルーズコントロールシステムにも関し、アダプティブクルーズコントロールシステムは、走行車両の速度を決定するように構成されている走行車両速度決定ユニットと、走行車両と、この走行車両の前方で同じ車線を走行している先行車両との間の相対的距離を決定するように構成されている相対的距離決定ユニットと、目標タイムヘッドウェイを計算するように構成されている計算ユニットであって、タイムヘッドウェイは相対的距離と走行車両速度の比であり、目標タイムヘッドウェイを走行車両速度と結び付ける関係に基づいて、目標タイムヘッドウェイを計算するように構成されている計算ユニットと、目標タイムヘッドウェイに基づいて走行車両のエンジンおよび/またはブレーキが制御される少なくとも第1制御モードを有している制御ユニットと、を備えている。
【0038】
もちろん、このアダプティブクルーズコントロールシステムは、上記の方法の任意の実施形態を実現するために構成されている手段を備えることができる。
【0039】
本開示はまた、上記のアダプティブクルーズコントロールシステムを備えている車両にも関する。
【0040】
本開示はまた、コンピュータプログラムにも関し、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されると上記の方法の任意の実施形態のステップを実行するための命令を有している。
【0041】
このプログラムは任意のプログラミング言語を使用でき、ソースコード、オブジェクトコード、または、部分的にコンパイルされた形状などのような、ソースコードとオブジェクトコードとの中間のコードの形状、または、任意の他の所望される形状を取ることができる。
【0042】
本開示はまた、コンピュータにより読み取り可能で、上記のコンピュータプログラムを記録している記録媒体にも関する。
【0043】
記録媒体は、プログラムを格納できる任意のエンティティまたは装置であることができる。例えば媒体は、例えば、CD ROMまたは超小型電子回路ROMなどのようなROM,または、例えば、ディスケット(フロッピー(登録商標)ディスク)またはハードディスクなどの磁気格納手段などのような格納手段を含むことができる。
【0044】
代替的に、記録媒体は、プログラムが組み込まれている集積回路であることができ、この集積回路は上記の方法を実行し、またはその実行において使用されるように適合されている。
【0045】
上記に言及した特徴と利点、およびその他は、提示されているアダプティブクルーズコントロール方法とシステムの例としての実施形態の下記の詳細な記述を読むことにより明白になるであろう。この詳細な記述は付随する図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
付随する図面は模式的なものであって、何よりも、発明の基本的な考え方を例示することを目的としている。
【0047】
図1】開示に係るアダプティブクルーズコントロールシステムを例示している。
図2】典型的なシナリオに対する走行車両速度のタイムラインである。
図3】このシナリオに対する相対的距離のタイムラインである。
図4】走行車両速度の関数としての目標タイムヘッドウェイのグラフである。
図5】走行車両速度の関数としての相対的距離のグラフである。
図6】統計的研究から得られるタイムヘッドウェイの分布である。
図7】統計的研究から得られる相対的距離の分布である。
図8】タイムヘッドウェイに対する統計的研究の結果を例示している。
図9】相対的距離に対する統計的研究の結果を例示している。
図10】提示されているモデルの正確さを例示しているグラフである。
図11】提示されているモデルの正確さを例示しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明をより具体的にするために、提示されているアダプティブクルーズコントロール方法とシステムの例としての実施形態を付随する図面を参照して下記に詳細に記述する。発明はこの例に制限されないということを思い出すべきである。
【0049】
図1は、個人の自動車などのような走行車両に対する例としてのアダプティブクルーズコントロールシステム1を示している。アダプティブクルーズコントロールシステム1は、ミリ波レーダー11、走行車両速度センサ12、挙動設定ユニット13、走行制御ユニット14、エンジン15、およびブレーキ16を備えている。
【0050】
ミリ波レーダー11は、先行車両、つまり、同じ車線において走行車両の前方で走行している車両の速度SPVを、走行車両と先行車両との間の相対的距離Dと共に測定するように構成されている。
【0051】
走行車両速度センサ12は、走行車両の速度Sを測定するように構成されている。
【0052】
挙動設定ユニット13は、挙動設定を決定および保存するように構成されている。この例においては、そのような挙動設定はマンマシンインタフェースで運転者により選択される。4つの所定の設定、つまり、「遠い」、「中くらいに遠い」、「中くらいに近い」、および「近い」を選択できる。
【0053】
走行制御ユニット14の動作をここにおいて記述する。走行制御ユニット14は、ミリ波レーダー11、走行車両速度センサ12、および挙動設定ユニット13からの入力に基づいて、エンジン15とブレーキ16に制御命令を送るように構成されている電子制御ユニットである。
【0054】
そのように行うために、走行制御ユニット14の1つの機能は、走行車両と先行車両との間のタイムヘッドウェイTHWを計算することであり、そのようなタイムヘッドウェイTHWは、相対的距離Dと走行車両速度Sの比である(つまり、THW=D/S)。
【0055】
走行制御ユニット14においては3つの制御モードがプログラムされており、走行車両と先行車両との間の相対的速度に従って選択される。
-この相対的速度が0±2km/hに等しいときは、走行制御ユニット14は第1制御モードを使用し、
-この相対的速度が2km/hより速い(つまり、先行車両速度SPVが走行車両速度Sより少なくとも2km/h遅い)ときは、走行制御ユニット14は第2制御モードを使用し、
-この相対的速度が2km/hより遅い(つまり、先行車両速度SPVが走行車両速度Sより少なくとも2km/h速い)ときは、走行制御ユニット14は第3制御モードを使用する。
【0056】
また、先行車両が検出されないときは、走行制御ユニット14は第3制御モードを使用する。
【0057】
この点に関して、図2と3は走行車両が先行車両に接触する場合の典型的なシナリオを例示している。
【0058】
シナリオの開始においては、先行車両は検出されておらず、それは走行車両の前方における同じ車線に先行車両が実際に存在していないか、または先行車両はミリ波レーダー11の検出範囲より遠くにあり、従って、走行車両からは無視すべき程度、十分に遠いかの何れかの理由である。従って、この走行局面(cruise phase)においては第3制御モードが選択され、走行車両速度Sは、運転者により設定された目標一定速度Stに一致するように制御される。また、走行車両と先行車両との間の相対的距離Dは、先行車両が検出されないので定義できない。
【0059】
そして、ある車両が走行車両の前方において車線に入ってきたか、または、より低速度の先行車両に走行車両が追い付き、走行車両がミリ波レーダー11の検出範囲に入ったかの何れかの理由で先行車両が検出される。この先行車両の速度SPVは走行車両速度Sよりも少なくとも2km/h遅い。従って、この接近局面(approaching phase)においては第2制御モードが選択され、走行車両速度Sは先行車両速度SPVに到達するように落とされる。従って、接近局面の間、相対的距離Dは着実に減少する。
【0060】
そして、走行車両速度Sが先行車両速度SPVにほぼ2km/hの差で到達すると、追従局面(following phase)が開始して第1制御モードが選択される。この第1制御モードをここでより詳細に記述する。
【0061】
第1制御モードにおいては、目標タイムヘッドウェイTHWtは下記の関係により、走行車両速度Sの関数として計算される。
THWt=a・S-0.71+c
【0062】
この関係においては、aとcは挙動設定ユニット13により保存されている挙動設定に基づいて、0と100の間の挙動ファクタBの関数として決定される実数であり、
a=0.078B+4.482、
c=0.008B+0.232である。
【0063】
この例においては、挙動ファクタ5は挙動設定「遠い」と関連付けられており、挙動ファクタ25は挙動設定「中くらいに遠い」と関連付けられており、挙動ファクタ50は挙動設定「中くらいに近い」と関連付けられており、挙動ファクタ75は挙動設定「近い」と関連付けられている。
【0064】
図4は、4つの提案される挙動設定「遠い」21、「中くらいに遠い」22、「中くらいに近い」23、および「近い」24に対する、目標タイムヘッドウェイTHWtと走行車両速度Sとの間のこの関係を例示している。
【0065】
図5は、4つの提案される挙動設定「遠い」31、「中くらいに遠い」32、「中くらいに近い」33、および「近い」34に対する、上記の目標タイムヘッドウェイTHWtと走行車両速度Sから演繹できる、目標相対的距離Dt、従って、目標追従距離に対応している目標相対的距離Dtを例示している。
【0066】
従って、第1制御モードにおいては、走行制御ユニット14は、実際のタイムヘッドウェイTHWが目標目標タイムヘッドウェイTHWtを満たすようにエンジン15とブレーキ16を制御する。
【0067】
最終的に、先行車両が車線から立ち去ると、ミリ波レーダー11範囲内の走行車両の前方の車線が空になるので、走行制御ユニット14は第1制御モードに戻る。従って、走行車両速度は上げられ、そして目標速度St図3参照)で一定に保たれる。
【0068】
ここで、発明者によりなされた統計的研究の結果を、目標タイムヘッドウェイTHWtを走行車両速度Sと結び付ける上記の関係の正確さを証明するために記述する。
【0069】
この研究は、欧州フィールド運用テスト(EuroFOT)プロジェクトを介して収集された運転データに基づいており、そのようなデータは、581,347kmに対する、38人のプロではないヨーロッパ人の運転者の13,407時間の運転時間を含んでいる。追従場面を識別且つ抽出するために、これらのデータに対して場面検出基準を適用した。特に、相対的速度は2km/h以内であり、走行車両加速度は±0.2m/s2以内である。従って、125,441の追従場面が検出された。
【0070】
欧州フィールド運用テスト(EuroFOT)から抽出可能なデータの制限のある量のために、検出された追従場面の一部のみが抽出されて保持された。具体的には、130km/hを超えるすべての場面(約2,000ケース)に加えて、130km/hまでの各10km/hの範囲に対する約3,700の場面が保持された。そのため、データを削除後は、50,745の場面が保持されて研究された。
【0071】
その段階において、発明者は、幾つかの場面は長い目標タイムヘッドウェイTHW(3.3秒において90番目のパーセンタイル(90th percentile at 3.3s))および/または長い相対的距離D(69mにおいて90番目のパーセンタイル)を示したことに気づき、幾つかの抽出された場面は、結局は実際の追従場面ではないのではという懸念を持った。特に、抽出された場面の元々のセットに基づいて、発明者は、これらの場面の大部分に対して、タイムヘッドウェイTHWは走行車両速度が速くなると突然長くなることに気づいた。これは、そのような場面は、先行車両が走行車両の挙動に実際に影響を与える実際の追従場面ではないことを示している。
【0072】
従って、発明者は、先行車両速度が走行車両速度に影響を与える場合、つまり、場面が実際の追従場面である場合は、先行車両速度における変化は走行車両速度における変化という結果になるという仮説を立てた。結果として、上記の仮設を満たす追加的条件に基づいて、第2の選択を実行した。特に、先行車両は少なくとも±4km/hの速度の変化を有し、走行車両はその速度を、これもまた±4km/h変えることにより、先行車両の速度変化の-2秒から5秒の間に反応した。そのため、これらの追加的条件のもとでは、20,046の検証された追従場面が保持された。
【0073】
図6と7は、タイムヘッドウェイTWHと相対的距離Dそれぞれに対する、検証された場面の分布を例示している。タイムヘッドウェイTWHに関しては、中央値41は1.28秒、平均値42は1.52秒、25番目のパーセンタイル43は0.9秒、そして75番目のパーセンタイル44は1.86秒である。累積分布45もまた示されている。相対的距離Dに関しては、中央値51は15m、平均値52は18.78m、25番目のパーセンタイル53は9.29m、そして75番目のパーセンタイル54は23.5mである。累積分布55もまた示されている。
【0074】
ここで、図8は、5km/hから45km/hまでの各5km/hの範囲、および、45km/hから135km/hまでの各10km/hの範囲に対する、この速度範囲における検証されたサンプルの数と、幾つかのパーセンタイル、つまり、10番目のパーセンタイル61、25番目のパーセンタイル62、50番目のパーセンタイル63、75番目のパーセンタイル64、および90番目のパーセンタイル65に対するタイムヘッドウェイTWHの値を示している。
【0075】
同様に、図9は、5km/hから45km/hまでの各5km/hの範囲、および、45km/hから135km/hまでの各10km/hの範囲に対する、この速度範囲における検証されたサンプルの数と、幾つかのパーセンタイル、つまり、10番目のパーセンタイル71、25番目のパーセンタイル72、50番目のパーセンタイル73、75番目のパーセンタイル74、および90番目のパーセンタイル75に対する相対的距離Dの値を示している。
【0076】
従って、発明者により設計された関係により計算された目標タイムヘッドウェイTHWtの曲線21~24は、この統計調査により明らかになった実際のタイムヘッドウェイTWHの曲線61~65のプロファイルと正確に一致しているように見える。
【0077】
同様に、発明者により設計された関係から演繹された目標相対的距離Dtの曲線31~34は、この統計調査により明らかになった実際の相対的距離Dの曲線71~75のプロファイルと正確に一致している。
【0078】
特に、発明者により設計された関係の全体的な正確さは、一方では、決定方法の係数を通して、および、他方では、二乗平均平方根誤差法を通して測定された。この場合において、設計されたモデルとしての関係は、挙動ファクタBが統計分布のパーセンタイルに対応するように適合されているということに留意すべきである。別の言い方をすれば、挙動ファクタBとのモデルとしての関係は、B番目のパーセンタイルに対する実際の統計結果と適合するように設計されている。
【0079】
そのため、図10は、20と80との間の各パーセンタイルに対する、実際の統計データに関してのモデルとしての関係の決定の係数(R2)を示している。従って、決定のこれらの係数は、すべてのパーセンタイルに対して0.99よりも大きいように見える。また、図11は、20と80との間の各パーセンタイルに対する、実際の統計データ関してのモデルとしての関係の二乗平均平方根誤差(RMSE)を示している。別の言い方をすれば、この誤差はタイムヘッドウェイTWH値に対して発生した誤差に対応している。従って、最も大きい誤差は0.06秒を超えることはほとんどないように見える。
【0080】
本発明は、特別な例としての実施形態に関して記述されてきたが、これらの例は、請求項で定義されるような発明の範囲から逸脱することなく修正できるということは明白である。特に、異なる提示されている実施形態の個々の特徴は、追加的な実施形態において組み合わせることができる。結果として、記述と図面は、制限的ではなく例として考えられるべきである。
【0081】
方法に関して記述されているすべての特徴は、個々に、または組合わせて装置に移すことが可能であり、逆もまた可能であるということも明白である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】