IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司の特許一覧

特表2022-541967負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パック、並びに装置
<>
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パック、並びに装置 図1
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パック、並びに装置 図2
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パック、並びに装置 図3
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パック、並びに装置 図4
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パック、並びに装置 図5
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パック、並びに装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パック、並びに装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20220921BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220921BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20220921BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20220921BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544587
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(85)【翻訳文提出日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 CN2020103253
(87)【国際公開番号】W WO2021017944
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】201910689510.7
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】梁成都
(72)【発明者】
【氏名】趙玉珍
(72)【発明者】
【氏名】官英傑
(72)【発明者】
【氏名】温厳
(72)【発明者】
【氏名】黄起森
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB11
5H050DA09
5H050EA23
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本願は、負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パック、並びに装置を提供する。前記負極活性材料は、コア材と、その少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、コア材は、シリコン系負極材料及びスズ系負極材料のうちの一種類又は複数種類を含み、ポリマー改質被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、負極活性材料における硫黄元素の質量比率は、0.2%~4%であり、負極活性材料における炭素元素の質量比率は、0.5%~4%であり、ポリマー改質被覆層は、-S-C-結合を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活性材料であって、
コア材と、その少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、
前記コア材は、シリコン系負極材料及びスズ系負極材料のうちの一種類又は複数種類を含み、
前記ポリマー改質被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、
前記負極活性材料における前記硫黄元素の質量比率は、0.2%~4%であり、
前記負極活性材料における前記炭素元素の質量比率は、0.5%~4%であり、
前記ポリマー改質被覆層は、-S-C-結合を含む、
負極活性材料。
【請求項2】
前記負極活性材料における前記硫黄元素の質量比率は、0.7%~2%である、
請求項1に記載の負極活性材料。
【請求項3】
前記負極活性材料における前記炭素元素の質量比率は、0.9%~3%である、
請求項1又は2に記載の負極活性材料。
【請求項4】
前記ポリマー改質被覆層は、-S-S-結合をさらに含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項5】
前記負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、2μm~12μmであり、選択可能に、3μm~8μmである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項6】
前記負極活性材料の体積粒径分布幅(Dv90-Dv10)/Dv50は、0.5~2.5であり、選択可能に、0.8~2.0である、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項7】
前記負極活性材料の比表面積BETは、0.5m/g~6m/gであり、選択可能に、0.8m/g~5m/gである、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項8】
前記負極活性材料は、5トン(49KNに相当)圧力下で測定された圧密度が1.0g/cm~2.0g/cmであり、選択可能に、1.2g/cm~1.5g/cmである、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項9】
前記負極活性材料は、タップ密度が0.5g/cm~1.5g/cmであり、選択可能に、0.6g/cm~1.2g/cmである、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項10】
前記シリコン系負極材料は、シリコン単体、シリコン炭素複合物、シリコン酸素化合物、シリコン窒素化合物、シリコン合金のうちの一種類又は複数種類から選択され、選択可能に、前記シリコン系負極材料は、シリコン酸素化合物から選択され、
前記スズ系負極材料は、スズ単体、スズ酸素化合物、スズ合金のうちの一種類又は複数種類から選択される、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項11】
負極活性材料の製造方法であって、
(1)ポリマー前駆体を溶媒で溶解し、均一になるまで攪拌して、ポリマー前駆体溶液を取得する工程と、
(2)シリコン系負極材料及びスズ系負極材料のうちの一種類又は複数種類から選択されるコア材を前記ポリマー前駆体溶液に添加し、攪拌して混合スラリーを取得する工程と、
(3)前記混合スラリーを不活性非酸化性ガス雰囲気下で乾燥して、固体粉末を取得する工程と、
(4)前記固体粉末と硫黄粉末とを混合し、不活性非酸化性ガス雰囲気で熱処理を行って、負極活性材料を取得する工程と、
を含み、
前記負極活性材料は、コア材と、その少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記ポリマー改質被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、前記負極活性材料における前記硫黄元素の質量比率は、0.2%~4%であり、前記負極活性材料における前記炭素元素の質量比率は、0.5%~4%であり、前記ポリマー改質被覆層は、-S-C-結合を含む、
製造方法。
【請求項12】
前記ポリマー前駆体は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリ塩化ビニリデンのうちの一種類又は複数種類を含む、
請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記工程(1)において、前記ポリマー前駆体の質量と前記溶媒の体積との比は、0.1g/L~20g/Lであり、選択可能に、0.5g/L~10g/Lである、
請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記工程(2)において、前記コア材とポリマー前駆体との質量比は、7~200であり、選択可能に、12~100である、
請求項11乃至13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記工程(4)において、前記硫黄粉末の質量と前記ポリマー前駆体の質量との比は、1~5であり、選択可能に、2~4である、
請求項11乃至14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理の温度は、250℃~450℃であり、選択可能に、300℃~450℃である、
請求項11乃至15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記熱処理の時間は、2h~8hであり、選択可能に、3h~5hである、
請求項16項に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の負極活性材料、又は、請求項11乃至17のいずれか1項に記載の製造方法により得られる負極活性材料を含む、二次電池。
【請求項19】
請求項18に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項20】
請求項19に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項21】
請求項18に記載の二次電池、請求項19に記載の電池モジュール、又は、請求項20に記載の電池パックのうちの少なくとも一種類を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年07月29日に提出された「負極活性材料及び二次電池」の発明名称の中国特許出願201910689510.7の優先権を主張し、当該出願の全ての内容は、本文に援用される。
【0002】
本願は、電池分野に関し、特に、負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パック、並びに装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電気自動車業界のエネルギー密度要件が高まっているため、大容量の負極活性材料について多くの研究が行われている。そのうち、シリコン系材料やスズ系材料は理論上のグラム容量が大きいことから重視されているが、シリコン系やスズ系の材料は大きな体積効果があり、充放電過程で大きな体積膨張を引き起こし、これにより、充放電過程において、負極活性材料は、壊れて粉砕されやすく、表面に安定したSEI膜を形成することが難しいため、電池の容量低下が早すぎてサイクル性能が低下してしまう。また、半導体材料であるシリコンは、導電率が低いという欠点があり、充放電過程での活性イオンの不可逆性は依然として比較的大きく、電池のサイクル性能にも影響を及ぼしてしまう。
【発明の概要】
【0004】
本願の第1の態様は、負極活性材料を提供するが、前記負極活物質は、、コア材と、その少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記コア材は、シリコン系負極材料及びスズ系負極材料のうちの一種類又は複数種類であり、前記ポリマー改質被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、前記負極活性材料における前記硫黄元素の質量比率は、0.2%~4%であり、前記負極活性材料における前記炭素元素の質量比率は、0.5%~4%であり、前記ポリマー改質被覆層は、-S-C-結合を含む。
【0005】
驚くべきことに、本願の負極活性材料は、コア材と、その少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記コア材は、シリコン系負極材料及びスズ系負極材料のうちの一種類又は複数種類であり、前記ポリマー改質被覆層は、適切な含有量の硫黄元素及び炭素元素を含み、且つ、-S-C-結合を含むことにより、電池の充放電過程における負極活性材料の表面構造の損傷を減少でき、活性イオンの損失を低減でき、電池の容量の損失を低減できるため、電池のクーロン効率を向上させ、電池のサイクル性能を改善することができる。
【0006】
本願の第1の態様の上記任意の実施形態において、前記負極活性材料における前記硫黄元素の質量比率は、0.7%~2%である。負極活性材料における硫黄元素の含有量を上記範囲内にすることで、二次電池のサイクル性能及びエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0007】
本願の第1の態様の上記任意の実施形態において、前記負極活性材料における前記炭素元素の質量比率は、0.9%~3%である。
【0008】
負極活性材料における炭素元素の含有量を上記範囲内にすることで、二次電池のサイクル性能及びエネルギー密度を向上することができる。
【0009】
本願の第1の態様の上記任意の実施形態において、前記ポリマー改質被覆層は、-S-S-結合をさらに含む。ポリマー改質被覆層は、-S-S-結合により比較的高い活性イオン伝導性能を有すると同時に、コア材に対するポリマー改質被覆層の保護作用を保証するため、電池のサイクル性能をさらに改善する。
【0010】
本願の第1の態様の上記任意の実施形態において、前記負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、2μm~12μmであり、選択可能に、3μm~8μmである。
【0011】
本願の第1の態様の上記任意の実施形態において、前記負極活性材料の体積粒径分布幅(Dv90-Dv10)/Dv50は、0.5~2.5であり、選択可能に、0.8~2.0である。負極活性材料のDv50を上記範囲内にすることで、二次電池のサイクル性能をさらに向上することができ、負極フィルムが比較的高い圧密度を有するのにさらに有利であるため、二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0012】
本願の第1の態様の上記任意の実施形態において、前記負極活性材料の比表面積BETは、0.5m/g~6m/gであり、選択可能に、0.8m/g~5m/gである。負極活性材料の比表面積を適切な範囲内にすることで、二次電池の動力性能及び倍率性能の要求を満たすことができると同時に、二次電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0013】
本願の第1の態様の上記任意の実施形態において、前記負極活性材料は、5トン(49KNに相当)圧力下で測定された圧密度が、1.0g/cm~2.0g/cmであり、選択可能に、1.2g/cm~1.5g/cmである。負極活性材料の49KN圧力下で測定された圧密度を上記範囲内にすることで、二次電池のエネルギー密度を向上させるのに有利である。
【0014】
本願の第1の態様の上記任意の実施形態において、前記負極活性材料のタップ密度は、0.5g/cm~1.5g/cmであり、選択可能に、0.6g/cm~1.2g/cmである。負極活性材料のタップ密度を上記範囲内にすることで、二次電池のエネルギー密度を向上させるのに有利である。
【0015】
本願の第1の態様の上記任意の実施形態において、前記シリコン系負極材料は、シリコン単体、シリコン炭素複合物、シリコン酸素化合物、シリコン窒素化合物、シリコン合金のうちの一種類又は複数種類から選択され、前記シリコン系負極材料は、シリコン酸素化合物から選択されることが好ましく、前記スズ系負極材料は、スズ単体、スズ酸素化合物、スズ合金のうちの一種類又は複数種類から選択される。これら材料は、比較的高いグラム容量を有し、それらを使用する二次電池は比較的に高いエネルギー密度を取得することができる。
【0016】
本願の第2の態様は、負極活性材料の製造方法を提供するが、当該方法は、
(1)ポリマー前駆体を溶媒で溶解し、均一になるまで攪拌して、ポリマー前駆体溶液を取得する工程と、
(2)シリコン系負極材料及びスズ系負極材料のうちの一種類又は複数種類から選択されるコア材を前記ポリマー前駆体溶液に添加し、攪拌して混合スラリーを取得する工程と、
(3)前記混合スラリーを不活性非酸化性ガス雰囲気下で乾燥して、固体粉末を取得する工程と、
(4)前記固体粉末と硫黄粉末とを混合し、不活性非酸化性ガス雰囲気で熱処理を行って、負極活性材料を取得する工程と、
を含み、
前記負極活性材料は、コア材と、その少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記ポリマー改質被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、前記負極活性材料における前記硫黄元素の質量比率は、0.2%~4%であり、前記負極活性材料における前記炭素元素の質量比率は、0.5%~4%であり、前記ポリマー改質被覆層は、-S-C-結合を含む。
【0017】
本願の製造方法により得られる負極活性材料は、コア材と、その少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記コア材は、シリコン系負極材料及びスズ系負極材料のうちの一種類又は複数種類であり、前記ポリマー改質被覆層は、適切な含有量の硫黄元素及び炭素元素を含み、且つ、-S-C-結合を含むことにより、電池の充放電過程における負極活性材料の表面構造の損傷を減少でき、活性イオンの損失を減少でき、電池の容量の損失を減少できるため、電池のクーロン効率を向上させ、電池のサイクル性能を改善することができる。
【0018】
本願の第2の態様の上記任意の実施形態において、前記ポリマー前駆体は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリ塩化ビニリデンのうちの一種類又は複数種類を含む。当該ポリマー前駆体による被覆層は、コア材に効果的な保護を提供し、負極活性材料の電子伝導性能を向上することができるため、二次電池のサイクル性能の向上に有利である。
【0019】
本願の第2の態様の上記任意の実施形態において、前記工程(1)において、前記ポリマー前駆体の質量と前記溶媒の体積との比は、0.1g/L~20g/Lであり、選択可能に、0.5g/L~10g/Lである。ポリマーの適切な添加量は、負極活性材料の粒径分布の改善に有利であり、負極活性材料のDv10、Dv50及びDv90を適切な範囲内にすることで、二次電池のエネルギー密度及びサイクル性能を改善することができる。
【0020】
本願の第2の態様の上記任意の実施形態において、前記工程(2)において、前記コア材とポリマー前駆体との質量比は、7~200であり、選択可能に、12~100である。コア材及びポリマー前駆体の質量比を適切な範囲内にすることは、二次電池が比較的に高いエネルギー密度及びサイクル性能を有するのに有利である。
【0021】
本願の第2の態様の上記任意の実施形態において、前記工程(4)において、前記硫黄粉末の質量と前記ポリマー前駆体の質量との比は、1~5であり、選択可能に、2~4である。硫黄粉末とポリマー前駆体との質量比を上記範囲内にすることは、二次電池がより高いサイクル性能を有するのに有利である。
【0022】
本願の第2の態様の上記任意の実施形態において、前記熱処理の温度は、250℃~450℃であり、選択可能に、300℃~450℃である。熱処理の温度を上記範囲内にすることで、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0023】
本願の第2の態様の上記任意の実施形態において、前記熱処理の時間は、2h~8hであり、選択可能に、3h~5hである。
【0024】
本願の第3の態様は、本願の第1の態様の負極活性材料又は本願の第2の態様の製造方法により得られる負極活性材料を含む二次電池を提供する。
【0025】
本願の二次電池は、本願の負極活性材料を利用するため、比較的に高いエネルギー密度、初回のクーロン効率及びサイクル性能を両立させることができる。
【0026】
本願の第4の態様は、本願の第3の態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0027】
本願の第5の態様は、本願の第4の態様の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0028】
本願の第6の態様は、本願の第3の態様の二次電池、本願の第4の態様の電池モジュール、又は本願の第5の態様の電池パックのうちの少なくとも一種類を含む装置を提供する。
【0029】
本願の電池モジュール、電池パック及び装置は、本願の二次電池を含むため、少なくとも、前記二次電池と同じ又は類似した技術効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】二次電池の一実施形態の概略図である。
図2図1の分解図である。
図3】電池モジュールの一実施形態の概略図。
図4】電池パックの一実施形態の概略図である。
図5図4の分解図である。
図6】二次電池を電源とする装置の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本願の負極活性材料及び二次電池を詳細に説明する。
【0032】
簡単化するため、本明細書にはいくつかの数値範囲のみが開示されている。しかしながら、任意の下限を任意の上限と組み合わせて明記しない範囲を形成することができ、任意の下限を他の下限と組み合わせて明記しない範囲を形成することができ、同様に、任意の上限を他の任意の上限と組み合わせて明記しない範囲を形成することができる。なお、明記していないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値はいずれも当該範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は、その自体の下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせるか、或いは、他の下限又は上限と組み合わせて明記しない範囲を形成することができる。
【0033】
本明細書の説明において、特に明記しない限り、「以上」、「以下」は、本数を含み、「一種類又は複数種類」における「複数種類」は2種類又は2種類以上を意味することに留意されたい。
【0034】
本願の上記発明概要は、本願における各開示された実施形態又は各実現形態を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本願の全文の多くの箇所では、一連の実施例によってガイダンスが提供され、これらの実施例は、さまざまな組み合わせで使用できる。各実施例において、列挙は単なる代表的なグループであり、網羅的な列挙として解釈されるべきではない。
【0035】
先ず、本願の第1の態様の負極活性材料を説明する。
【0036】
本願の負極活性材料は、コア材と、その少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記コア材は、シリコン系負極材料及びスズ系負極材料のうちの一種類又は複数種類であり、前記ポリマー改質被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、前記負極活性材料における前記硫黄元素の質量比率は、0.2%~4%であり、前記負極活性材料における前記炭素元素の質量比率は、0.5%~4%であり、前記ポリマー改質被覆層は、-S-C-結合を含む。
【0037】
電池が初めて充電する際に、負極活性材料の表面にはSEI膜が形成されるが、シリコン系負極材料、スズ系負極材料が大きい体積効果を有するため、電池充放電過程で負極活性材料の表面のSEI膜は、破壊及び修復し続け、これは大量の活性イオを消費し、電池のクーロン効率を減少させ、活性イオンの不可逆性の程度を増加させる。また、負極活性材料の表面のSEI膜が破壊された後、露出した負極活性材料は、電解液と直接接触し、負極活性材料の表面の副反応が増加し、また、電解液の侵食により、負極活性材料の構造は破壊されやすく、これは、電池の容量の減衰を加速する。
【0038】
本願は、シリコン系負極材料、スズ系負極材料の表面に一層のポリマー改質被覆層を被覆し、業界の常用の無機炭素層と比べて、本願のポリマー改質被覆層は、より大きい弾性及び靭性を有し、シリコン系負極材料、スズ系負極材料の電池充放電過程での膨張及び収縮にさらに適応し、負極活性材料の表面でのより安定したSEI膜の形成を保証するため、SEI膜が破壊及び修復し続けることにより大量の活性イオンが消費されることを回避できる。さらに、電池の充放電過程でSEI膜が負極活性材料と電解液との直接接触を常に隔離するよう保証でき、負極活性材料の表面の副反応の発生を減少でき、電解液の侵食による負極活性材料の表面構造の破壊を減少できるため、電池の容量の損失を低減できる。
【0039】
本願の負極活性材料において、前記ポリマー改質被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含む。
【0040】
前記負極活性材料における前記硫黄元素の質量比率は、0.2%~4%である。例えば、前記負極活性材料における前記硫黄元素の質量比率は、≦4.0%、≦3.8%、≦3.5%、≦3.2%、≦3.0%、≦2.8%、≦2.5%、≦2.2%、≦2.0%、≦1.8%、又は≦1.5%であってもよい。前記負極活性材料における前記硫黄元素の質量比率は、≧0.2%、≧0.3%、≧0.4%、≧0.5%、≧0.6%、≧0.7%、≧0.8%、≧0.9%、≧1.0%、≧1.1%、≧1.2%、≧1.3%、≧1.4%、又は≧1.5%であってもよい。選択可能に、前記負極活性材料における前記硫黄元素の質量比率は、0.7%~2%、又は0.8%~1.95%などである。
【0041】
前記負極活性材料における前記炭素元素の質量比率は、0.5%~4%である。例えば、前記負極活性材料における前記炭素元素の質量比率は、≦4.0%、≦3.8%、≦3.5%、≦3.2%、≦3.0%、≦2.8%、≦2.5%、≦2.2%、≦2.0%、≦1.8%、又は≦1.5%であってもよい。前記負極活性材料における前記炭素元素の質量比率は、≧0.5%、≧0.6%、≧0.7%、≧0.8%、≧0.9%、≧1.0%、≧1.1%、≧1.2%、≧1.3%、≧1.4%、又は≧1.5%であってもよい。選択可能に、前記負極活性材料における前記炭素元素の質量比率は、0.9%~3%、又は0.95%~2.0%などである。
【0042】
本願のポリマー改質被覆層は、-C-S-結合を含み、ポリマー改質被覆層が高い弾性及び靭性を有するよう保証し、シリコン系材料及びスズ系材料のリチウムの挿入・脱離過程での膨張及び収縮に良く適応でき、SEI膜の破損及び修復による活性イオンの損失を減少できる一方、コア材を保護して、コア材の表面の破壊による容量の損失を減少できる。
【0043】
そのため、本願は、電池の充放電過程での負極活性材料の表面構造の損害を減少でき、活性イオンの損失を低減でき、電池の容量の損失を低減できるため、電池のクーロン効率を良く向上させ、電池のサイクル性能を改善することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記ポリマー改質被覆層は、さらに、-S-S-結合を含む。ポリマー改質被覆層は、-S-S-結合により、高い活性イオン伝導性能を有することができる。電池の充電過程において、-S-S-結合が断裂されて活性イオンと結合して、イオン移動を行い、且つ高い移動速度を有する。電池の放電過程において、活性イオンが脱離されて、-S-S-結合が再結合する。電池の充放電過程で-S-S-結合の断裂及び結合のみが発生し、炭素系骨格の構造は変更されないため、コア材に対するポリマー改質被覆層の保護作用を保証するため、電池のサイクル性能をより良く改善することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記シリコン系負極材料は、シリコン単体、シリコン炭素複合物、シリコン酸素化合物、シリコン窒素化合物、シリコン合金のうちの一種類又は複数種類から選択できる。選択可能に、前記シリコン系負極材料は、シリコン酸素化合物から選択できる。そのうち、シリコン酸素化合物の理論グラム容量は、グラファイトの約7倍であり、且つ、シリコン単体と比べて、その充電過程での体積の膨張が大幅に減少し、電池のサイクル安定性が大幅に向上する。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記スズ系負極材料は、スズ単体、スズ酸素化合物、スズ合金のうちの一種類又は複数種類から選択できる。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、2μm~12μmであってもよく、例えば、3μm~8μmである。負極活性材料のDv50を適切な範囲内にすることで、負極の成膜での活性イオンの消費を減少でき、負極での電解液の副反応を減少できるため、二次電池の不可逆容量を低減できる。また、負極活性材料の活性イオン及び電子の伝導性能の向上に有利であり、充放電過程での粒子の破裂又は粉末化を効果的に減少又は防止でき、二次電池のサイクル性能をさらに向上することができる。また、負極活性材料が適切なDv50を有することにより、負極における接着剤の添加量を減少でき、これは、二次電池のエネルギー密度の向上に有利である。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料の体積粒径分布幅(D90-D10)/D50は、0.5~2.5である。選択可能に、前記負極活性材料の(D90-D10)/D50は、0.8~2.0である。負極活性材料の体積粒径分布幅を上記範囲内にすることで、負極フィルム層の副反応を減少でき、電解液の消費を低減でき、充放電過程での粒子の破裂又は粉末化を効果的に減少又は防止でき、材料の構造安定性を向上できるため、電池のサイクル性能も向上できる。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料の比表面積BETは、0.5m/g~6m/gであってもよく、例えば、0.8m/g~5m/gである。負極活性材料の比表面積を適切な範囲内にすることで、材料の表面が多い活性部位を有するようにし、材料の電気化学的性能を向上させることができ、動力性能及び倍率性能に対する二次電池の要求を満たすことができると同時に、負極での電解液の副反応の減少に有利であり、負極の成膜における活性イオンの消費も減少できるため、電池のサイクル性能をさらに向上できる。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料は、5トン(49KNに相当)圧力下で測定された圧密度が1.0g/cm~2.0g/cmであり、例えば、1.2g/cm~1.5g/cmである。負極活性材料の5トン(49KNに相当)圧力下で測定された圧密度を上記範囲内にすることで、二次電池のエネルギー密度の向上に有利である。
【0051】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料のタップ密度は、0.5g/cm~1.5g/cmであり、例えば、0.6g/cm~1.2g/cmである。負極活性材料のタップ密度を上記範囲内にすることで、二次電池のエネルギー密度の向上に有利である。
【0052】
本願において、本分野の周知の機器及び方法を利用して負極活性材料における硫黄元素及び炭素元素の含有量を測定することができる。例えば、中国上海DEKAI機器有限会社のHCS-140型赤外線炭素硫黄分析器を利用して、GB/T 20123-2006/ISO 15350:2000の測定方法に従って測定を行い、検出精度は、計量検証規則JJG 395-1997標準を満たす。
【0053】
本願において、例えばラマン分光法のような本分野の周知の機器及び方法を利用して、負極活性材料のポリマー改質被覆層の化学結合を測定することができる。ラマン分光計(例えば、LabRAM HR Evolution型)を利用して、負極活性材料のラマンスペクトルを取得する。280cm-1~345cm-1のラマンシフト範囲内の負極活性材料の散乱ピークは、-S-C-結合に起因する。-S-C-結合は、被覆層が高い靭性を有するようにする。900cm-1~960cm-1のラマンシフト範囲内の負極活性材料の散乱ピークは、-S-S-結合に起因する。-S-S-結合は、被覆層が高い活性イオン伝導性能を有するようにする。
【0054】
本願において、負極活性材料の粒度分布Dv10、Dv50及びDv90は、本分野の周知の意味であり、本分野の周知の機器及び方法で測定することができる。例えば、英国のマルバーン(MALVERN)社のマスターサイザー 3000(Mastersizer 3000)型レーザー粒子サイズ分析器のようなレーザー粒子サイズ分析器が測定に使用される。
【0055】
ここで、Dv10、Dv50、Dv90の物理的な定義は、以下の通りである。
Dv10:前記負極活性材料の累積体積分布率が10%に達する際の粒径。
Dv50:前記負極活性材料の累積体積分布率が50%に達する際の粒径。
Dv90:前記負極活性材料の累積体積分布率が90%に達する際の粒径。
【0056】
本願において、負極活性材料の比表面積は、本分野の周知の意味であり、本分野の周知の機器及び方法で測定することができる。例えば、GB/T 19587-2004ガス吸着BET法を参照して固体物質の比表面積標準を測定でき、窒素吸着比表面積分析試験法を利用して測定を行い、BET(Brunauer Emmett Teller)法によって計算できる。窒素吸着比表面積分析試験は、米国Micromeritics社のTri StarII 3020型比表面積及び細孔の分析器により測定できる。
【0057】
本願において、負極活性材料のタップ密度は、本分野の周知の意味であり、本分野の周知の機器及び方法で測定することができる。例えば、BT-300型タップ密度測定機のようなタップ密度測定機で便利に測定することができる。
【0058】
本願において、負極活性材料の圧密度は、本分野の周知の意味であり、本分野の周知の機器及び方法で測定することができる。例えば、GB/T24533-2009標準を参照して、UTM7305型電子圧力試験機のような電子圧力試験機によって測定することができる。負極活性材料1gを量り、1.327cmの底面積の金型に入れて、5トン(49KNに相当)までに加圧し、30s圧力を保持した後、圧力を解放して、10s維持し、その後、記録し計算して、負極活性材料の圧密度を取得する。
【0059】
本願の負極活性材料の製造方法は、特に限定されず、一実施例において、前記負極活性材料の製造方法は、(1)ポリマー前駆体を溶媒で溶解し、均一になるまで攪拌して、ポリマー前駆体溶液を取得する工程と、(2)シリコン系負極材料及びスズ系負極材料のうちの一種類又は複数種類から選択されるコア材をポリマー前駆体溶液に添加し、攪拌して混合スラリーを取得する工程と、(3)混合スラリーを不活性非酸化性ガス雰囲気下で乾燥して、固体粉末を取得する工程と、(4)固体粉末と硫黄粉末とを混合し、不活性非酸化性ガス雰囲気で熱処理を行って、負極活性材料を取得する工程と、を含んでもよい。
【0060】
工程(1)において、選択可能に、前記ポリマー前駆体は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリ塩化ビニリデンのうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0061】
工程(1)において、選択可能に、前記溶媒は、水、N-メチルピロリドン、キシレン、トルエン、ジメチルホルムアミドのうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0062】
工程(1)において、選択可能に、前記ポリマー前駆体の質量と前記溶媒の体積との比の値は、0.1g/L~20g/Lであり、例えば、0.5g/L~10g/L、1g/L~8g/L、1g/L~6g/L、1g/L~4.8g/L、又は1.7g/L~3.5g/Lなどである。
【0063】
工程(2)において、選択可能に、前記コア材の質量と前記ポリマー前駆体の質量との比の値は、7~200であり、例えば、12~100、又は20~60などである。ポリマー前駆体の質量の含有量が高いほど、負極活性材料の被覆量が大きく、最終的に、ポリマー改質被覆層における炭素元素の含有量が高い。しかしながら、ポリマー前駆体の質量の含有量が高すぎると、負極活性材料が製造過程で凝集しやすく、充放電過程での活性イオンの伝導に影響を及ぼし、ポリマー前駆体の質量の含有量が低すぎると、均一に被覆する作用及び電解液の侵食を隔離する作用を発揮することが難しくなる。
【0064】
工程(3)において、選択可能に、前記不活性非酸化性ガス雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0065】
工程(3)において、選択可能に、前記混合スラリーの乾燥温度は、80℃~250℃であり、例えば、110℃~200℃、又は175℃~190℃などである。そのうち、昇温速度は、1℃/min~10℃/minであってもよく、例えば、1℃/min~5℃/minである。
【0066】
工程(4)において、選択可能に、前記不活性非酸化性ガス雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0067】
工程(4)において、選択可能に、前記硫黄粉末の質量と前記ポリマー前駆体の質量との比の値は、1~5であり、例えば、2~4、2~3、又は3~4などである。硫黄粉末は、主に、ポリマー前駆体との架橋反応に用いられ、硫黄粉末の質量の含有量が高すぎると、ポリマー改質被覆層に硫黄粉末が残留され、残留された硫黄粉末が活性イオンと完全に不可逆的な化学反応を起こし、電池のサイクル性能に影響を与え、硫黄粉末の質量の含有量が低すぎると、硫黄粉末とポリマー前駆体との架橋反応が不完全になり、ポリマー改質被覆層の電子及びイオンの伝導に影響を与え、電池の分極が増加し続け、電池の性能に影響を与える。
【0068】
工程(4)において、前記熱処理の温度は、250℃~450℃であり、前記熱処理の温度は、300℃~450℃であることが好ましい。熱処理の温度が高すぎると、ポリマー改質被覆層は、完全に炭化する傾向があり、ポリマー改質被覆層の弾性及び靭性が低下し、充放電過程でのシリコン系負極材料、スズ系負極材料の膨張及び収縮に良好に適応することができず、負極活性材料の表面と電解液との隔離を保証することができず、電池のサイクル性能が低下する。
【0069】
工程(4)において、選択可能に、前記熱処理の時間は、2h~8hである。例えば、前記熱処理の時間は、3h~5hである。
【0070】
次に、本願の二次電池を説明する。
【0071】
本願の二次電池パックは、正極シート、負極シート、セパレータ及び電解質などを含む。そのうち、前記負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの面に設けられ、且つ本願の第1の態様の負極活性材料を含む負極フィルムと、を備えてもよい。前記負極フィルムは、負極集電体の一つの面に設けられてもよいし、負極集電体の二つの面に設けられてもよい。本願の第1の態様の負極活性材料以外に、前記負極フィルムは、さらに、例えば炭素材料のような他の負極活性材料を含むことができる。選択可能に、前記炭素材料は、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、メゾカーボンマイクロビーズ、カーボン繊維、カーボンナノチューブのうちの一種類又は複数種類から選択される。前記負極フィルムは、導電剤及び接着剤をさらに含み、そのうち、導電剤及び接着剤の種類及び含有量は、特に限定されず、実際の必要に応じて選択できる。前記負極集電体の種類も特に限定されず、実際の必要に応じて選択できる。
【0072】
本願の二次電池において、前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの面に設けられ、且つ正極活性材料を含む正極フィルムと、を備えてもよい。前記正極フィルムは、正極集電体の一つの面に設けられてもよいし、正極集電体の二つの面に設けられてもよい。前記正極フィルムは、導電剤及び接着剤をさらに含み、そのうち、導電剤及び接着剤の種類及び含有量は、特に限定されず、実際の必要に応じて選択できる。前記正極集電体の種類は特に限定されず、実際の必要に応じて選択できる。
【0073】
なお、本願の二次電池は、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池及び他の任意の本願の第1の態様の負極活性材料を使用する二次電池であってもよい。
【0074】
二次電池がリチウムイオン電池である場合、前記正極活性材料は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩などから選択できるが、本願はこれらの材料に限定されず、その他のリチウムイオン電池の正極活性材料として用いられる従来の周知の材料も使用できる。これら正極活性材料は、単独で、または2種類以上の組み合わせで使用することができる。選択可能に、前記正極活性材料は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、LiNi0.85Co0.15Al0.05、LiFePO(LFP)、LiMnPOのうちの一種類又は複数種類から選択できる。
【0075】
二次電池がナトリウムイオン電池である場合、前記正極活性材料は、遷移金属酸化物NaMO(Mは、遷移金属であり、Mn、Fe、Ni、Co、V、Cu、Crのうちの一種類又は複数種類から選択されることが好ましく、0<x≦1である)、ポリアニオン性材料(リン酸塩、フルオロリン酸塩、ピロリン酸塩、硫酸塩)、プルシアンブルー材料などから選択されてもよいが、本願は、これらの材料に限定されず、その他のナトリウムイオン電池の正極活性材料として用いられる従来の周知の材料も使用できる。これら正極活性材料は、単独で使用してもよく、または2種類以上の組み合わせで使用してもよい。選択可能に、前記正極活性材料は、NaFeO、NaCoO、NaCrO、NaMnO、NaNiO、NaNi1/2Ti1/2、NaNi1/2Mn1/2、Na2/3Fe1/3Mn2/3、NaNi1/3Co1/3Mn1/3、NaFePO、NaMnPO、NaCoPO、プルシアンブルー材料、一般式がA(PO3-xである材料(ここで、Aは、H、Li、Na、K、NH4+のうちの一種類又は複数種類から選択され、Mは、遷移金属カチオンであり、例えば、V、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのうちの一種類又は複数種類から選択され、Yは、ハロゲンアニオンであり、例えば、F、Cl、Brのうちの一種類又は複数種類から選択され、0<a≦4,0<b≦2,1≦c≦3,0≦x≦2である)のうちの一種類又は複数種類から選択できる。
【0076】
本願の二次電池において、前記セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設置されて、隔離の役割を果たす。そのうち、前記セパレータの種類は特に限定されず、従来の電池で用いられる任意のセパレータ材料であってもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン及びそれらの多層複合膜であってもよいが、これらに限定されない。
【0077】
本願の二次電池において、前記電解質の種類は特に限定されず、液体電解質(電解液とも呼ばれる)であってもよいし、固体電解質であってもよい。選択可能に、前記電解質は、液体電解質を使用する。そのうち、前記液体電解質は、電解質塩及び有機溶媒を含んでもよく、電解質塩及び有機溶媒の種類は特に限定されず、実際の必要に応じて選択できる。前記電解質は、さらに、添加剤を含んでもよく、前記添加剤の種類は特に限定されず、負極成膜添加剤であってもよく、正極成膜添加剤であってもよく、電池のある性能を改善できる添加剤であってもよく、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などである。
【0078】
本分野の常用の方法により、二次電池を製造することができる。例示として、正極活性材料と選択可能な導電剤及び接着剤を溶媒で分散させ、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体上に塗布して、乾燥、冷圧などの工程を経た後、正極シートを得るが、溶媒は、N-メチルピロリドンであってもよい。負極活性物質と選択可能な導電剤、接着剤及び増粘剤とを溶媒で分散させ、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体上に塗布して、乾燥、冷圧などの工程を経た後、負極シートを得るが、溶媒は、脱イオン水であってもよい。正極シート、セパレータ、負極シートを順次に巻き取って(又は積層して)、隔離の役割を果たすように、セパレータを正極シートと負極シートとの間に配置して、電極アセンブリを取得し、電極アセンブリを外装内に配置し、電解液を注入して、二次電池を取得する。
【0079】
本願は、二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、四角形又はその他の任意の形状であってもよい。図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0080】
いくつかの実施例において、二次電池は、外装を含んでもよい。当該外装は、正極シート、負極シート及び電解質を封止するのに用いられる。
【0081】
いくつかの実施例において、図2を参照すると、外装は、ハウジング51及びカバープレート53を含んでもよい。そのうち、ハウジング51は、底板と底板に接続された側板とを含み、底板と側板とで囲んで収納室が形成される。ハウジング51は、収納室に連通された開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーするように配置されて、前記収納室を密閉する。
【0082】
正極シート、負極シート及びセパレータは、巻き取り工程又は積層工程を経て、電極アセンブリ52を形成する。電極アセンブリ52は、前記収納室に封止される。電解質は、電解液を使用してもよく、電解液は、電極アセンブリ52を浸潤している。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の個数は、一個又は数個であってもよく、必要に応じて調節できる。
【0083】
いくつかの実施例において、二次電池の外装は、硬質ケース,例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケースなどであってもよい。二次電池の外装は、例えば袋状ソフトバッグのようなソフトバッグであってもよい。ソフトバッグの材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの一種類又は複数種類を含む。
【0084】
いくつかの実施例において、二次電池は、電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の個数は、数個であってもよく、具体的な個数は、電池モジュールの適応及び容量によって調節できる。
【0085】
図3は、一例としての電池モジュール4である。図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順次に配列されてもよい。勿論、他の任意の方法で配置してもよい。さらに、ファスナーによって複数の二次電池5を固定してもよい。
【0086】
選択可能に、電池モジュール4は、さらに、収納空間を有するハウジングを含んでもよく、複数の二次電池5は、当該収納空間に収納される。
【0087】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールは、電池パックとして組み立てられ、電池パックに含まれる電池モジュールの個数は、電池パックの適応及び容量に応じて調節できる。
【0088】
図4及び図5は、一例としての電池パック1である。図4及び図5を参照すると、電池パック1は、電池ボックスと電池ボックスに設けられた複数の電池モジュール4とを含んでもよい。電池ボックスは、上部ボックス2及び下部ボックス3を含み、上部ボックス2は、下部ボックス3をカバーするように配置されて、電池モジュール4を収納するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方法で電池ボックスに配置されることができる。
【0089】
本願は、本願の二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一種類を含む装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記装置の電源としてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとしてもよい。前記装置は、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気車両(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電気スクーター、電気ゴルフ車両、電気トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0090】
前記装置は、使用ニーズに応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択できる。
【0091】
図6は、一例としての装置である。当該装置は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。二次電池に対する当該装置の高電力及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0092】
他の一例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどであってもよい。当該装置は、通常、軽薄化を必要とし、二次電池を電源として使用することができる。
【0093】
以下、実施例と組み合わせて、本願をさらに説明する。これらの実施例は、本願を説明するためにのみ使用され、本願の範囲を限定するものではないことは理解されたい。
【0094】
実施例1
【0095】
先ず、負極活性材料を製造する。
【0096】
(1)1gのポリアクリロニトリルを1000mLのジメチルホルムアミドに添加して、ポリアクリロニトリルが全部溶解されるまで攪拌する。
(2)100gの一酸化ケイ素を工程(1)で得られた溶液に添加し、攪拌して、混合スラリーを取得する。
(3)混合スラリーをアルゴンガス雰囲気下で190℃に加熱し、保温下で2h乾燥して、固体粉末を取得する。
(4)3gの硫黄粉末を量って工程(3)で得られた固体粉末と混合し、アルゴンガス雰囲気下で450℃まで昇温させ、4h熱処理した後に冷却して、必要な負極活性材料を取得する。
【0097】
その後、製造された負極活性材料と人造グラファイトとを3:7の質量比に従って混合した後、さらに、導電剤であるSuper P、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)と88:3:3:6の質量比で混合し、溶媒の脱イオン水を添加し、攪拌機でシステムが均一になるまで攪拌して、スラリーを取得する。スラリーを負極集電体の銅箔の表面に均一に塗布した後、真空乾燥オーブンに移動して完全に乾燥させ、その後、ロールプレスとパンチングを行って、特定の面積の小さなウェーハを取得する。
【0098】
その後、金属リチウムシートを対極とし、Celgard 2400をセパレータとし、電解液を注入し、組み立ててボタン式電池を取得する。電解液は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の体積比で混合して、均一な有機溶媒を取得した後、LiPFを上記有機溶媒に溶解させて、添加剤としてのフルオロエチレンカーボネート(FEC)を添加して得ることができるが、ここで、LiPFの濃度は、1mol/Lであり、電解液におけるFECの質量比率は、6%である。
【0099】
実施例2~9及び比較例1~4のボタン式電池は、実施例1と同じ方法で製造され、具体的な相違を表1に示す。
【0100】
実施例1~9及び比較例1~4の負極活性材料の製造パラメータ
【表1】
【0101】
続いて、負極活性材料及びボタン式電池の性能試験を説明する。
【0102】
(1)硫黄元素及び炭素元素の含有量測定
【0103】
赤外線吸収法によって負極活性材料における硫黄元素及び炭素元素の含有量を測定し、結果を表2に示し、そのうち、硫黄元素の含有量とは、負極活性材料における硫黄元素の質量比率を指し、炭素元素の含有量とは、負極活性材料における炭素元素の質量比率を指す。
【0104】
(2)ボタン式電池の初回クーロン効率及びサイクル性能試験
【0105】
25℃であり、且つ常圧環境下で、ボタン式電池を0.1Cの倍率の定電流で電圧が0.005Vになるまで放電し、さらに、0.05Cの倍率の定電流で電圧が0.005Vになるまで放電し、この際の放電比容量を記録して、初回リチウム挿入容量とする。その後、0.1Cの倍率の定電流で電圧が1.5Vになるまで充電し、この際の充電比容量を記録して、初回リチウム脱離容量とする。ボタン式電池を上記方法で50回サイクル充放電試験を行い、毎回のリチウム脱離容量を記録する。
【0106】
負極活性材料の初回クーロン効率(%)=初回のリチウム脱離容量/初回のリチウム挿入容量×100%
【0107】
負極活性材料のサイクル容量保持率(%)=50回目のリチウム脱離容量/初回のリチウム脱離容量×100%
【0108】
実施例1~9及び比較例1~4の性能試験結果
【表2】
【0109】
表2の試験結果から、実施例1~9により製造されるボタン式電池が改善された初回クーロン効率及びサイクル性能を有することが分かる。
【0110】
比較例1においては、常用のポリマー改質被覆層を使用し、ポリマー自体の絶縁性質がリチウムイオンの充放電過程での伝導に影響を及ぼすため、ボタン式電池の初回クーロン効率が比較的に低く、サイクル性能も比較的に悪い。
【0111】
比較例2においては、ポリマー前駆体を1200℃の高温下で熱処理しており、ポリマーがほぼ完全に炭化しているため、シリコン酸素化合物の表面のポリマー改質被覆層はほぼ無機炭素層であり、ボタン式電池の初回クーロン効率が一定に改善される。しかしながら、無機炭素層は弾性及び靭性が低く、充放電過程でシリコン酸素化合物の膨張及び収縮に良好に適応することができず、負極活性材料の表面のポリマー改質被覆層が破壊しやすい。同時に、充放電過程で、負極活性材料の表面のSEI膜も破壊及び修復し続け、大量のリチウムイオンを消費する一方、露出した負極活性材料と電解液とが直接接触し、負極活性材料の表面の副反応も増加するため、ボタン式電池のサイクル性能が比較的に悪い。
【0112】
比較例3においては、負極活性材料を製造する際に、過多の硫黄粉末を使用し、ポリマー改質被覆層には大量の硫黄粉末が残留され、残留した硫黄粉末とリチウムイオンとは、完全に不可逆的な化学反応を起こし、これにより製造されるボタン式電池は、初回クーロン効率が比較的に低く、サイクル性能も比較的に悪い。
【0113】
比較例4においては、負極活性材料を製造する際に、ポリマー前駆体の質量の含有量が高すぎ、負極活性材料の被覆量が大きすぎ、ポリマー改質被覆層における炭素元素及び硫黄元素の含有量はいずれも高すぎ、負極活性材料が製造過程で凝集が発生しやすく、負極活性材料の表面で一部が被覆されていない状況が発生する。充放電サイクル過程で、負極活性材料の粒子が膨張し、凝集した負極活性材料の粒子が徐々に分散して、大量の新しい非被覆表面が露出され、リチウムイオンの消費を加速し、ボタン式電池の初回クーロン効率を低下させ、ボタン式電池のサイクル性能を悪化させた。
【0114】
当業者であれば、前述の明細書の開示及び教示に基づいて、上記実施形態をさらに変更及び修正することができる。そのため、本願は、上記で開示及び説明された特定の実施形態に限定されず、本願に対するいくつかの修正及び変更も、本願の特許請求の範囲内に含まれるべきである。なお、本明細書では特定の用語を使用しているが、これらの用語は説明の便宜上のものであり、本願を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】