(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度の制御方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/22 20060101AFI20220921BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20220921BHJP
C08F 14/00 20060101ALI20220921BHJP
C08F 4/30 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C08F2/22
C08F2/00 A
C08F14/00 510
C08F4/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567972
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(85)【翻訳文提出日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 CN2020109529
(87)【国際公開番号】W WO2022000725
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010619099.9
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521495079
【氏名又は名称】中昊晨光化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】余 金龍
(72)【発明者】
【氏名】劉 波
(72)【発明者】
【氏名】鐘 子強
(72)【発明者】
【氏名】張 廷健
(72)【発明者】
【氏名】肖 忠良
【テーマコード(参考)】
4J011
4J015
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011BA03
4J011BA06
4J011BB02
4J011BB09
4J011KA01
4J011KB02
4J011KB03
4J011KB04
4J011KB14
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4J011KB29
4J015BA02
(57)【要約】
本発明は、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度の制御方法を提供する。前記方法は、過酸化物加硫フッ素ゴムの乳化重合過程において、連続追加方式により開始剤溶液を添加し、重合反応が終了する5~10分前までに追加を継続することを含み、そのうち、初期の開始剤溶液の添加量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~2%である。本発明では、開始剤の添加量と添加方式を制御することで、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度の値が所望範囲内に効果的に制御され、変動が小さく、品質が安定で制御可能な過酸化物加硫フッ素ゴムが得られる。また、本発明では、連鎖移動剤を添加する必要がなく、重合過程における助剤の使用量が減少するとともに、重合系の反応活性が高くなり、重合時間が効果的に短縮され、工業生産に有利である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物加硫フッ素ゴムの乳化重合過程において、連続追加方式により開始剤溶液を添加し、重合反応が終了する5~10分前までに、添加を継続することを含み、
初期の開始剤溶液の添加量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、
連続追加される開始剤溶液の量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~2%であることを特徴とする、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度の制御方法。
【請求項2】
前記開始剤溶液が開始剤の水溶液であり、濃度が1~8%であり、好ましくは1~5%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記開始剤溶液を調製する際に、脱イオン水の温度を25~35℃に調整することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記開始剤が過硫酸アンモニウム及び/又は過硫酸カリウムであり、好ましくは、過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムとが(2~5):1の質量比でなる複合開始剤であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記乳化重合過程において、重合温度が90~95℃であり、圧力が2.1~2.5MPaであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
初期の開始剤溶液の添加量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.3%であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
初期の開始剤溶液の添加量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.3%より大きく、かつ0.8%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
初期の開始剤溶液の添加量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.8%より大きく、かつ1.2%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
初期の開始剤溶液の添加量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で1.2%より大きく、かつ1.5%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
初期の開始剤溶液の添加量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量が、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で1.5%より大きく、かつ2.0%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2020年6月30日に出願された発明の名称が「過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度の制御方法」である中国特許出願第202010619099.9号に基づき優先権を主張し、その全開示内容をここに援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、フッ素化学工業の分野に関するものであり、具体的には、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
フッ素ゴム(fluororubber)とは、主鎖または側鎖の炭素原子にフッ素原子を含む合成高分子エラストマーである。有機過酸化物(又はフリーラジカル)で硫化されたフッ素ゴムは、過酸化物加硫フッ素ゴムと呼ばれ、現在、過酸化物加硫フッ素ゴムの加工は、押出加工と圧縮成形加工などに分けられ、ムーニー粘度が20~70程度であり、応用分野に応じてムーニー粘度に対する要求が異なる。
【0004】
現在、過酸化物加硫フッ素ゴムの重合方法は、主に乳化重合であり、一般的な操作は、水中に乳化剤とpH緩衝剤等の助剤を添加し、重合性モノマーを添加して、エマルジョンを形成し、一定の温度と圧力で開始剤と連鎖移動剤を添加して反応させ、エラストマーエマルジョンが得られた後、凝集剤を添加して凝集させ、洗浄、乾燥するものである。そのうち、一般的な開始剤は無機開始剤であり、反応過程において、圧力を一定に保つために、重合性モノマーを添加することがあり、開始速度が遅い場合にも、開始剤を適宜、1回または2回追加することがある。
【0005】
しかし、従来の乳化重合反応により製造される過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度は不安定であり、同じ反応条件でも、ムーニー粘度の値が±25以内で変動する可能性があり、そして、重合反応の時間も長く、工業生産に不利である。
【発明の概要】
【0006】
従来技術に存在する欠陥に対して、本発明は、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度の制御方法を提供する。
【0007】
本発明の実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度の制御方法を提供し、当該方法は、過酸化物加硫フッ素ゴムの乳化重合過程において、連続追加方式により開始剤溶液を添加し、重合反応が終了する5~10分前までに、追加を継続することを含み、初期の開始剤溶液の添加量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~2%である。
【0008】
上記技術案において、前記重合性モノマーの乾燥品の総量とは、乳化重合の全過程において添加されるすべての重合性モノマーの乾燥品としての総量である。
【0009】
多くの研究とパイロット試験を通じて、本発明者は、驚くべきことに、過酸化物加硫フッ素ゴムの乳化重合過程において、開始剤の添加量と添加方式を変更することで、即ち、従来の最初の一括添加を、最初に一部添加し、残りを追加により反応が終了する直前までに継続して添加するように変更することで、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度を予期の品質(20~70)に効果的に制御でき、かつ、変動が±5を超えないこと、また、本発明において、連鎖移動剤を省略でき、助剤の使用量が減少し、コストが低減されるとともに、重合系の反応性が高くなり、重合時間が効果的に短縮され、工業生産に有利であることを見出した。
【0010】
本発明が提案する制御方法は、基本的に、有機過酸化物(またはフリーラジカル)加硫フッ素ゴムを使用するすべての状況に適用でき、重合性モノマーに制限されない。好ましくは、重合性モノマーは、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレンの2種又は複数種であっても良い。具体的には、フッ化ビニリデンとクロロトリフルオロエチレンの重合、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの重合、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンの重合などであっても良い。
【0011】
さらに、前記開始剤溶液は開始剤の水溶液であり、濃度が1~8%であり、好ましくは1~5%である。この濃度であれば、反応を効率的に開始させることを保証できるだけでなく、濃度が高すぎたり、添加速度が速すぎたりすることに起因する反応速度の制御不能を引き起こすこともない。
【0012】
さらに、前記開始剤溶液を調製する際に、脱イオン水の温度を25~35℃に調整する。温度は、開始剤の溶解性と後の開始効果を影響し、温度が高すぎると、開始剤の溶液における溶解・分散効果は良いが、開始剤は事前に分解してしまう。温度が低すぎると、開始剤の溶液における溶解度が低下して分散効果が悪くなり、開始剤の分解も少なく、添加される開始剤の濃度の制御を影響することがある。さらに好ましくは、脱イオン水の温度を25~32℃に制御し、これは開始剤の溶解と開始剤の分解の低減にとってより有利である。
【0013】
さらに、前記開始剤は過硫酸アンモニウム及び/又は過硫酸カリウムであり、好ましくは、過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムとが(2~5):1の質量比でなる複合開始剤である。
【0014】
さらに、前記乳化重合過程において、重合温度は90~95℃であり、圧力は2.1~2.5MPaである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、初期の開始剤溶液の添加量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.3%である。
【0016】
上記技術案では、初期の開始剤溶液の添加量(開始剤で)を重合性モノマーの乾燥品の総量の0.1~0.5%に制御することで、連鎖開始を効果的に制御でき、連続追加される開始剤溶液の量(開始剤で)を重合性モノマーの乾燥品の総量の0.1~0.3%に制御することと組み合わせることで、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度が60~70の範囲内にあることを最終的に実現できる。
【0017】
本発明のもう一つの好ましい実施形態では、初期の開始剤溶液の添加量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.3~0.8%である。当該技術案によれば、得られる過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度を50~60に制御することができる。
【0018】
本発明のもう一つの好ましい実施形態では、初期の開始剤溶液の添加量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.8~1.2%である。当該技術案によれば、得られる過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度を40~50に制御することができる。
【0019】
本発明のもう一つの好ましい実施形態では、初期の開始剤溶液の添加量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で1.2~1.5%である。当該技術案によれば、得られる過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度を30~40に制御することができる。
【0020】
本発明のもう一つの好ましい実施形態では、初期の開始剤溶液の添加量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で1.5~2.0%である。当該技術案によれば、得られる過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度を20~30に制御することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、開始剤の添加量と添加方式を制御することで、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度の値が所望範囲内に効果的に制御され、前記ムーニー粘度の値の変動が小さく、品質が安定で制御可能な過酸化物加硫フッ素ゴムが得られる。また、本発明では、連鎖移動剤を添加する必要がなく、重合過程における助剤の使用量が減少するとともに、重合系の反応活性が高くなり、重合時間が効果的に短縮され、工業生産に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するためのものではない。実施例において、具体的な技術や条件が特に明記されていないものは、当分野の文献に記載の技術や条件に準じて、又は、製品の取り扱い説明書に準じて行う。用いられるメーカーが特に明記されていない試薬や機器は、いずれも正式な販売経路を通じて購入できる通常の製品である。
【0023】
以下の実施例にかかる濃度は、いずれも質量濃度である。
【0024】
ムーニー粘度は、GB/T 1232.1-2000 未加硫ゴム ディスクせん断粘度計による測定を用いて得られたものである。
【0025】
実施例1
本実施例は、下記のステップを含む過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供する。
【0026】
まず、無機開始剤(過硫酸アンモニウム)を30℃の脱イオン水に溶解して、濃度2%の開始剤溶液を調製するステップ;
反応釜に30Lの脱イオン水、35gのpH緩衝剤、および30gの乳化剤を加え、反応釜を真空にし、釜内の温度を90℃まで昇温するステップ;
釜内の圧力が2.3MPaに達するまで、反応釜に重合性モノマーA(フッ化ビニリデン)と重合性モノマーB(クロロトリフルオロエチレン)を加え、600gの開始剤溶液(即ち、初期の開始剤の添加量が12gである)を添加して重合反応を開始させ、反応過程において、重合性モノマーAと重合性モノマーBを適宜追加し、釜内の圧力を維持するステップ;
反応過程において、反応が終了する10min前までに開始剤溶液を連続して追加するステップ;および
エラストマーエマルジョンを得、凝集剤を添加して、洗浄、真空乾燥させ、最後に、過酸化物加硫フッ素ゴムを得るステップ。
【0027】
重合反応時間は2.5hであり、連続追加される開始剤溶液は1100g(すなわち、連続追加される開始剤の量が22g)であり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量は11kgである。
【0028】
得られた過酸化物加硫フッ素ゴムは9.8kgであり、そのムーニー粘度は65である。
【0029】
実施例2
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0030】
無機開始剤が過硫酸カリウムであり、濃度5%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が25gであり、連続追加される開始剤の量が18gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が11.2kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が92℃であり、圧力が2.4MPaであり、重合反応時間が2.5hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.7kgであり、そのムーニー粘度が63であること。
【0031】
実施例3
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0032】
無機開始剤が、質量比が2:1である過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムであり、濃度6%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が26gであり、連続追加される開始剤の量が14gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が10.8kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が94℃であり、圧力が2.4MPaであり、重合反応時間が2.4hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.5kgであり、そのムーニー粘度が68であること。
【0033】
実施例4
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0034】
初期の開始剤の添加量が35gであり、連続追加される開始剤の量が42gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が10.0kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が90℃であり、圧力が2.3MPaであり、重合反応時間が2.2hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.2kgであり、そのムーニー粘度が53であること。
【0035】
実施例5
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0036】
無機開始剤が過硫酸カリウムであり、濃度5%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が14gであり、連続追加される開始剤の量が65gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が11.6kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が92℃であり、圧力が2.4MPaであり、重合反応時間が2.4hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.9kgであり、そのムーニー粘度が57であること。
【0037】
実施例6
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0038】
無機開始剤が、質量比が3:1である過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムであり、濃度6%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が44gであり、連続追加される開始剤の量が70gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が10.9kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が94℃であり、圧力が2.4MPaであり、重合反応時間が2.8hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.3kgであり、そのムーニー粘度が54であること。
【0039】
実施例7
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0040】
無機開始剤が過硫酸アンモニウムであり、濃度3%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が18gであり、連続追加される開始剤の量が96gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が11.8kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が90℃であり、圧力が2.3MPaであり、重合反応時間が2.6hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.8kgであり、そのムーニー粘度が46であること。
【0041】
実施例8
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0042】
無機開始剤が過硫酸カリウムであり、濃度6%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が42gであり、連続追加される開始剤の量が98gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が11.5kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が92℃であり、圧力が2.4MPaであり、重合反応時間が3.0hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.6kgであり、そのムーニー粘度が48であること。
【0043】
実施例9
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0044】
無機開始剤が、質量比が4:1である過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムであり、濃度6%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が25gであり、連続追加される開始剤の量が110gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が11.7kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が90℃であり、圧力が2.4MPaであり、重合反応時間が2.8hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.8kgであり、そのムーニー粘度が41であること。
【0045】
実施例10
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0046】
初期の開始剤の添加量が12gであり、連続追加される開始剤の量が140gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が11.0kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が90℃であり、圧力が2.3MPaであり、重合反応時間が2.6hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.8kgであり、そのムーニー粘度が35であること。
【0047】
実施例11
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0048】
無機開始剤が過硫酸カリウムであり、濃度5%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が39gであり、連続追加される開始剤の量が138gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が11.2kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が92℃であり、圧力が2.3MPaであり、重合反応時間が2.7hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.6kgであり、そのムーニー粘度が33であること。
【0049】
実施例12
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0050】
無機開始剤が、質量比が4:1である過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムであり、濃度6%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が29gであり、連続追加される開始剤の量が150gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が11.3kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が94℃であり、圧力が2.4MPaであり、重合反応時間が2.5hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.5kgであり、そのムーニー粘度が38であること。
【0051】
実施例13
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0052】
無機開始剤が過硫酸アンモニウムであり、濃度3%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が22gであり、連続追加される開始剤の量が180gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が11.8kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が90℃であり、圧力が2.3MPaであり、重合反応時間が2.3hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.8kgであり、そのムーニー粘度が22であること。
【0053】
実施例14
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0054】
無機開始剤が過硫酸カリウムであり、濃度6%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が35gであり、連続追加される開始剤の量が192gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が11.6kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が92℃であり、圧力が2.4MPaであり、重合反応時間が2.5hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.8kgであり、そのムーニー粘度が27であること。
【0055】
実施例15
本実施例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、実施例1との相違は以下の通りである。
【0056】
無機開始剤が、質量比が2:1である過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムであり、濃度6%の開始剤溶液に調製したこと;
初期の開始剤の添加量が36gであり、連続追加される開始剤の量が185gであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量が11.7kgであること;
乳化重合過程において、重合温度が94℃であり、圧力が2.2MPaであり、重合反応時間が2.8hであること;および
最後に得られた過酸化物加硫フッ素ゴムが9.5kgであり、そのムーニー粘度が28であること。
【0057】
直感的に比較するため、各実施例の重合時間、ムーニー粘度、および開始剤の割合を表1に示す。
【0058】
【0059】
以上の結果から、本発明の実施例の方法を採用し、連続追加される開始剤の添加量を調整することで、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー値を、一定範囲内に効果的に制御できることが明らかになった。重合性モノマーに占める追加開始剤の割合が(0.1~0.3)%である場合、ムーニー粘度の値が60~70の範囲に制御され、重合性モノマーに占める追加開始剤の割合が(0.3~0.8)%である場合、ムーニー粘度の値が50~60の範囲に制御され、重合性モノマーに占める追加開始剤の割合が(0.8~1.2)%である場合、ムーニー粘度の値が40~50の範囲に制御され、重合性モノマーに占める追加開始剤の割合が(1.2~1.5)%である場合、ムーニー粘度の値が30~40の範囲に制御され、重合性モノマーに占める追加開始剤の割合が(1.5~2.0)%である場合、ムーニー粘度の値が20~30の範囲に制御される。
【0060】
比較例1
実施例1と比較すると、その相違は、開始剤が一括添加され、添加量が34gであることである。その結果、重合反応時間は4.5hであり、ムーニー粘度は89である。ムーニー粘度の値が制御範囲を超えており、重合時間が長く、工業生産にとって不利である。
【0061】
比較例2
本比較例は、過酸化物加硫フッ素ゴムの調製方法を提供するが、具体的には、以下のとおりである。
【0062】
反応釜に30Lの脱イオン水、35gのpH緩衝剤、および30gの乳化剤を加え、反応釜を真空にし、釜内の温度を90℃まで昇温した;
釜内の圧力が2.3MPaに達するまで、反応釜に重合性モノマーA(フッ化ビニリデン)と重合性モノマーB(クロロトリフルオロエチレン)を加え、連鎖移動剤であるマロン酸ジエチル32gを添加し、開始剤48gを添加し、重合反応を開始させ、反応過程において、重合性モノマーAと重合性モノマーBを適宜追加して、釜内の圧力を維持した;
エラストマーエマルジョンが得られ、凝集剤を添加して、洗浄、真空乾燥させ、最後に、過酸化物加硫フッ素ゴムを得た。重合反応時間は3.5hであり、全反応過程において添加される重合性モノマーの乾燥品の総量は10.8kgである。
【0063】
得られた過酸化物加硫フッ素ゴムは10.2kgであり、そのムーニー粘度は27である。当該方法では、連鎖移動剤を添加する必要があり、開始剤の使用量も多く、そして、当該方法は数回繰り返される。その結果、得られた製品のムーニー粘度は15、ひいては44にまで変動した。一方、実施例1の方法を数回繰り返しても、その結果は基本的に変化せず、変動は±5以内である。
【0064】
上記において、一般的な説明及び具体的な実施形態で本発明を詳しく説明したが、本発明に基づき、いくつかの補正や改善を行い得ることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明の趣旨から逸脱しない範疇で行われるこれらの補正や改善は、いずれも本発明が保護しようとする範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度の制御方法を提供する。前記方法は、過酸化物加硫フッ素ゴムの乳化重合過程において、連続追加方式により開始剤溶液を添加し、重合反応が終了する5~10分前までに、追加を継続することを含み、そのうち、初期の開始剤溶液の添加量は、重合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~0.5%であり、連続追加される開始剤溶液の量は、合性モノマーの乾燥品の総量に対して、開始剤で0.1~2%である。本発明では、開始剤の添加量と添加方式を制御することで、過酸化物加硫フッ素ゴムのムーニー粘度の値が所望範囲内に効果的に制御され、変動が小さく、品質が安定で制御可能な過酸化物加硫フッ素ゴムが得られる。また、本発明では、連鎖移動剤を添加する必要がなく、重合過程における助剤の使用量が減少するとともに、重合系の反応活性が高くなり、重合時間が効果的に短縮され、工業生産に有利であり、良好な経済的価値と使用の見通しを有する。
【国際調査報告】