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特表2022-541997磁性材料の変形を検知するシステム及び方法並びにその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】磁性材料の変形を検知するシステム及び方法並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20220921BHJP
   G01D 5/12 20060101ALI20220921BHJP
   G01R 33/025 20060101ALI20220921BHJP
   G01R 33/10 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G01R33/02 L
G01D5/12 H
G01R33/025
G01R33/10
G01R33/02 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576342
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 US2020039027
(87)【国際公開番号】W WO2021061240
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/864,766
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515062511
【氏名又は名称】カーネギー メロン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】CARNEGIE MELLON UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘレブレッカーズ,テス
(72)【発明者】
【氏名】マジディ,カーメル
【テーマコード(参考)】
2F077
2G017
【Fターム(参考)】
2F077JJ07
2G017AA02
2G017AA08
2G017AB02
2G017AC02
2G017AD51
2G017BA05
2G017BA15
(57)【要約】
【解決手段】柔らかい磁性センサは、ランダムに分散した磁性微粒子を含む軟質材料と、連続した領域での力の推定と接触位置特定とが可能なマグネトメータとを備えている。基準マグネトメータが使用されて、動き及び環境ノイズをフィルタリングすることができる。接触位置を特定して力を決定する方法は、マグネトメータの出力をデータ解析する。幾つかの実施形態では、センサは、接触する前に物体の位置を特定することができる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトメータと、
磁場を有する複合磁性材料と、
を備えており、
前記複合磁性材料は、
変形可能材料と、
前記変形可能材料の中に分散された複数の磁性粒子と、
を備えており、
前記マグネトメータは、前記複合磁性材料の磁場を感知するように構成されている、センサ。
【請求項2】
前記マグネトメータは、前記複合磁性材料の変形によって生じる前記複合磁性材料の磁場の変化を感知するように構成されている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記変形可能材料はエラストマーである、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記磁性材料の磁場から離れた位置に配置されており、バックグラウンドの磁場を感知するように構成された基準マグネトメータを更に備える、請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項5】
前記マグネトメータは、前記複合磁性材料に対して一定の位置に配置されている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項6】
前記マグネトメータは、前記複合磁性材料の変形に応じて、前記複合磁性材料に対して実質的に一定の位置に留まるように構成されている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
前記複合磁性材料は前記マグネトメータに接触している、請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項8】
前記マグネトメータは3軸マグネトメータである、請求項1に記載のセンサ。
【請求項9】
前記複数の磁性粒子は200μm以下である、請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項10】
前記複数の磁性粒子は、実質的に均一な磁気配向を有している、請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項11】
前記複数の磁性粒子は、実質的に不均一な磁気配向を有している、請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項12】
前記複数の磁性粒子は、前記変形可能材料全体に実質的に不均一に分布している、請求項1に記載のセンサ。
【請求項13】
前記複合磁性材料は実質的に伸縮可能である、請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項14】
前記複合磁性材料は、前記変形可能材料の材料特性を保持している、請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項15】
前記マグネトメータに接続された伸縮可能なマグネトメータ回路を更に備える、請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項16】
前記伸縮可能なマグネトメータ回路は、前記複合磁性材料の一部として形成されている、請求項15に記載のセンサ。
【請求項17】
前記複合磁性材料の磁場の変化は変形に応じて生じ、前記変形により、前記複数の磁性粒子のうちの少なくとも1つは、前記マグネトメータに対する相対位置を変化させる、請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項18】
柔らかい磁性材料を含む物体を位置決定する方法であって、
前記磁性材料の測定可能な磁場の範囲内にマグネトメータを通過させる工程と、
最大磁場の測定値を決定して前記磁場の中心軸を位置決定する工程と、
前記マグネトメータを前記中心軸に揃える工程と、
前述のステップを繰り返して二番目の軸を求める工程と、
測定された磁場の強さと前記磁性材料の表面における計算された磁場の強さとの差に基づいて、前記物体の表面と前記マグネトメータとの間の距離を決定する工程と、
を含む方法。
【請求項19】
位置又は接触力を決定するために軟らかい触覚センサを使用する方法において、
マグネトメータからの信号を受信する工程であって、前記信号は、エラストマーと前記エラストマー内に分散された複数の磁性粒子とを含む磁性材料から発せられる磁場の測定値を含む、工程と、
前記信号を較正する工程と、
前記信号を変換する工程と、
前記信号をフィルタリングする工程と、
ニューラルネットワークへの入力のために前記信号をスケーリングするステップと、
ニューラルネットワークを使って位置又は接触力を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項20】
前記信号をフィルタリングする工程は、
基準マグネトメータからのバックグラウンド信号を用いて、前記信号から動き及び環境ノイズを除去する工程
を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2019年6月21日に出願された仮出願第62/864,766について、35 U.S.C.119条に基づく利益を主張するものであり、当該仮出願は、参照により本明細書の一部となる。
【0002】
<連邦政府支援の研究に関する声明>
本発明は、米国海軍研究局が与えたN00014-16-1-2301に基づく政府支援を使ってなされた。政府は、発明に対して何らかの権利を有している。
【0003】
本開示の技術は概してセンシングに関している。より具体的には、本発明は、磁性材料の変形を利用してその環境についてのフィードバックを提供するソフトセンシングに関する。
【背景技術】
【0004】
ウェアラブル技術、ソフトロボティクス、ヒューマンロボットインタラクションなどにおける継続中の開発において、センサへの関心が高まっている。これらの技術では、物体の位置決定における不正確さが、特定の機能を実行する能力に影響を与える可能性がある。例えば、ロボットシステムでは、不正確さは、ロボットがツールなどの物体を見つけてそれを操作することを妨げる。視覚ベースセンシングは、作業現場で物体を見つけることには優れているが、対象物から1乃至2cmよりも近づくと誘導ができない。また、視覚ベースシステムは、カメラが遮られている、或いは、表面が反射する又は透明である場合には、うまく機能しない。
【0005】
視覚ベースシステムの限界を克服するために、触覚センサは、接触力を測定することによって環境に関する重要な情報を提供する。触覚センサは、接触に基づいていることから、物体に接触した後に情報を提供するだけで対象物への接近を助けるものではない。ソフト触覚センサは、触覚センサのサブクラスであって、変形可能でコンプライアントな材料を相互作用面に採用している。ソフトセンサは、豊富な環境情報を提供するだけでなく、ロボット操作、ヒューマンロボットインタラクションや材料分類を成功させるような効果的な機械的特性を与える。ソフト触覚センサは、光学式、抵抗式、静電容量式などの様々な伝達モードを用い得る。ソフト触覚センサは、視覚ベースセンサよりも高い精度を得たらすが、ノンスケーラブルな製造技術、カスタマイズ性の欠如、複雑な統合要件などの理由に起因してソフトセンサの普及は制限されている。例えば、抵抗式又は静電容量式ソフトセンサでは、各ユニットの密度が高くなると、配線のスケーリングを手に負えなくし、また、軟質-硬質の弱い電気的界面での故障に繋がる。加えて、他の触覚センサと同様に、ソフト触覚センサは、物体に接することでのみ情報をもたらす。
【0006】
磁気センシングは、直接的な電気配線への依存が限定されており、磁束又は電磁誘導の何れかの変化を測定することで高分解能で高速なセンシングを提供することから、上記の障害の幾つかを克服する。更に、幾つかの用途では、磁気センシングは、接触する前にセンサ出力をもたらす。他の種類のセンサに比べて優れているものの、磁気センサは環境磁気ノイズの影響を受けやすい。更に、ソフトセンサとして実装すると、硬い磁石とセンサに使用される軟質のエラストマーとの接合部で材料の破損が発生する可能性があることから、この技術は非ソフトセンシング用途に限定されている。例えば、一般的な磁気センサは、ホール効果センシングチップと、2つのエラストマー層の間に浮いた別個の永久磁石とを組み合わせたものである。従って、これらの制限を克服して、シングルポイントでの接触位置特定のための触覚面をもたらして、自由空間における迅速な位置特定と力推定とをもたらすセンシングシステムを開発することは有利であろう。
【発明の概要】
【0007】
詳細な説明に開示される態様は、磁性材料の変形を検知するソフトセンサ及び方法と、その製造方法とを含んでいる。関連する方法及びシステムも開示されている。
【0008】
少なくとも1つの非限定的な実施形態では、ランダムに分散された磁性微粒子を含む軟質材料と、連続した領域にわたって力を推定し、接触場所を特定することができるマグネトメータとを含む軟質磁気センサである。ある実施例では、センサは、約15乃至40mmの連続領域をカバーする。本明細書で説明される幾つかの実施形態では、マグネトメータの出力をデータ解析する集積回路を使用して、力と局所的な接触とが推定される。幾つかの実施形態では、磁性材料、即ち「スキン」は、磁性微粒子が加えられたシリコーンエラストマーで構成されている。エラストマーが変形すると、埋め込まれた磁性粒子の一部がマグネトメータに対して位置及び/又は向きを変える結果、正味の測定磁場に変化が起こる。ある実施形態では、マグネトメータが磁性材料に埋め込まれて、統合されたセンサが形成されてよい。別の実施形態では、磁性材料とマグネトメータとは別々にされている。マグネトメータが受け取った磁場データが解析されて、力と接触位置特定とに役立つ情報が提供される。マグネトメータの出力を解析する分類アルゴリズムは、98%を超える精度で圧力の位置を特定することができる。幾つかの実施形態では、回帰アルゴリズムは、平均して約3mmの領域に圧力を限定することができる。この点において、センシングスキンなどの磁性材料の変形を検知するシステム及び方法は、ロボット操作、ソフトシステム、ウェアラブルなどの分野で使用され、製造が簡単で、素早く組み合わせることができ、情報が豊富なセンサへの要求の高まりに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、センサの実施形態を示している。
図1B図1Bは、センサの実施形態を示している。
図1C図1Cは、センサの実施形態を示している。
図1D図1Dは、センサの実施形態を示している。
図1E図1Eは、センサの実施形態を示している。
【0010】
図1F図1Fは、データ処理ステップの概要である。
【0011】
図2A図2Aは、センシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
図2B図2Bは、センシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
図2C図2Cは、センシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
図2D図2Dは、センシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
図2E図2Eは、センシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
図2F図2Fは、センシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
【0012】
図3A図3Aは、代替的なセンシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
図3B図3Bは、代替的なセンシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
図3C図3Cは、代替的なセンシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
図3D図3Dは、代替的なセンシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
図3E図3Eは、代替的なセンシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
図3F図3Fは、代替的なセンシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
図3G図3Gは、代替的なセンシングのデモンストレーション結果を示すグラフである。
【0013】
図4A図4Aは、代替的な実施形態に基づくセンサを示している。
図4B図4Bは、代替的な実施形態に基づくセンサを示している。
図4C図4Cは、代替的な実施形態に基づくセンサを示している。
【0014】
図5図5は、分類と回帰の結果を示す一連のグラフである。
【0015】
図6図6は、ロボットアームへの実装例に関するx及びyベクトルである。
【0016】
図7図7は、磁性材料の凹みを可視化したベクトルである。
【0017】
図8図8は、製造方法を示すフロー図である。
【0018】
図9図9は、センサの代替的な実施形態であって、マグネトメータが磁性材料から分離されている。
【0019】
図10図10は、別の代替的な実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ある例示的な実施形態では、センサ100は、磁性材料101と、磁性材料101の変形によって生じる磁性材料101の磁場の変化を感知することができるマグネトメータ102とを備える。図1A及び図1Bに示す例示的な実施形態では、センサ100は、軟質エラストマー103で覆われており、固定された伸縮可能な3軸マグネトメータ102を有する触感スキンとして実装されている。軟質エラストマー103に分散した磁性微粒子104が埋め込こまれることで、磁性材料101が形成されている。複合磁性材料101は、ホストエラストマー103の延伸性及び柔軟性を保持しており、ストレッチャブル回路に適合し得る。代替的な実施形態では、複数のマグネトメータ102が使用されてよい(図1C及び図1D参照)。センサ100の表面が変形すると、磁性微粒子104は、マグネトメータ102の相対的に静止している位置に対して変位する(図1E参照)。マグネトメータ102は、周囲の磁場の変化を測定し、そのデータを分析して、接触の位置及び力を決定する。マグネトメータ102は、その周囲の磁場をx方向、y方向、z方向に測定する。磁性材料101を通して分布する複数の磁性微粒子104は、材料101の変形に関する情報を保存するために最終的に3軸の磁場測定値に還元される入力データを表現する。また、形態学的計算が、材料101自体の固有の次元削減を通じて活用されてよい。例えば、センサ100は、形態学的計算特性を利用して、出力の次元を分析前に本質的に低減することができ、それにより、下にあるマイクロエレクトロニクスチップと配線の高密度なアレイが不要になる。
【0021】
別個に設けられる永久磁石などの従来の磁石とは異なり、磁性材料101の全体的な磁場の強さは小さくなっている。しかしながら、信号の大きさは、センサ100の表面の接触位置を特定し、力を推定するのに十分な大きさを保っている。更に、エラストマー103に微粒子104を混ぜることで、形状、大きさ、又は厚さの制限がほとんどないセンサ100が得られる。また、一部の磁気センサと異なり多層モールド工程を必要としないことから製造が容易である。
【0022】
再び図1C及び図1Dを参照すると、複数のマグネトメータ102を有するセンサ100が示されており、1つのマグネトメータ102は、基準マグネトメータ105として特定される。図1C及び図1Dに示す実施形態では、5つのマグネトメータ102が磁性材料101に隣接して配置されており、基準マグネトメータ105は磁性材料101から離して配置されている。この特定の実施例では、5つのマグネトメータ102は15mm離間して配置されており、これは、磁性材料101の信号が最も近いマグネトメータ102によってもはや検出できなくなる前の範囲である。機能表面をできるだけ大きくしてマグネトメータ102の必要数をできるだけ少なくするために、15mmの範囲の各々は、他のマグネトメータの範囲と2.5mmだけ重なっている。基準マグネトメータ105は、磁性材料101とは異なる磁気信号(即ち、環境磁気ノイズ)を測定するリファレンスとして用いられる。複数のマグネトメータ102と独立した基準マグネトメータ105とにより、センサ100は、環境磁気ノイズと動きをフィルタリング可能となり、システムの増加した非線形性を処理するために出力のデータ分析を組み込むことができる。別の言い方をすれば、基準マグネトメータ105からの信号と主たるマグネトメータ102を組み合わせることで、磁性材料101の変形による磁束の変化を取り出すことができる。磁束信号が評価されて、力及び位置がリアルタイムに推定される。
【0023】
図1C及び図1Dに描かれた例示的実施形態では、信号は、学習済みニューラルネットワークによって評価され、センサ100への接触の力と位置の推定値を提供することができる。図1Fは、接触位置特定及び力推定のための前処理の概要を示す。これらの前処理ステップでは、マグネトメータの生値が個別に較正され、基準信号から変換され、フィルタリングされ、ニューラルネットワークの入力用にスケーリングされる。
【0024】
更に詳細には、ある実施形態では、信号処理は、ニューラルネットワーク入力を生のマグネトメータデータに限定する一方で、較正と前処理とを組み合わせて必要なデータ収集の量を最小限に抑える。各マグネトメータ102は、周囲の磁場に関する3軸データを出力する。図1及び図2に示す実施形態では、6つのマグネトメータ102,105が存在しており、各サンプルについて合計18個のデータポイントがある。事前に較正されたマグネトメータ102,105(オフセットとスケーリングを提供する)について、これらのパラメータは、信号を個別に較正するために生データに適用される。オフセットは、各方向の信号の最大値と最小値の間の平均によって決定される。スケールは、3方向全ての平均コード距離を各方向の平均コード長で割ることで求めることができる。次に、基準マグネトメータ105のアフィン変換が5つのマグネトメータ102に適用される。基準マグネトメータ105が他のマグネトメータ102に対して不動である場合、この変換は、位置及び環境ノイズに起因した動きと環境ノイズの除去を可能にする。ノイズ除去により、データ収集を1つの平面で行うことができる。データは、較正及びフィルタリングされると、平均値を除去してトレーニングデータから求めた単位分散にスケーリングすることで、ニューラルネットの入力用に準備される。このシステムは、有用な情報をもたらす一方で、複数のマグネトメータ102,105のシステムに存在する更なるノイズの影響を受けやすくなる。そのため、MLPRegressorを使用してサイキット(sklearn)に実装された多層パーセプトロンが使用され得る。
【0025】
大きな硬質の磁石を使用する従来の技術とは対照的に、磁気Ne-Fe-Bの微粒子又はナノ粒子を含み得る磁性微粒子104の直径は、約200μmの又はそれより小さいオーダーである。しかしながら、複合磁性材料101が伸縮性又は柔軟性のレベルを維持する限り、意図した用途に応じてサイズや形状が異なる粒子104が使用されてよい。意図した用途と磁性粒子104の量とに応じて、複合磁性材料101は、複合材料101の作製に使用されたエラストマー103と同じ又は類似の特性を有してよい。また、マイクロスケールの磁性粒子104を使用することで、磁性材料101に機械的な負荷が加わる場合における内部応力集中の強度を低減することができ、更に、材料101を柔軟及び/又は伸縮可能にすることができる。例えば、大型の磁石がエラストマーに埋め込まれる場合には、機械的な負荷が加わると、硬い磁石と柔らかいエラストマーの界面で、2つの材料のコンプライアンスの違いに起因して剥離が発生し得る。更に、このような実施形態では、薄い及び/又はシャープな3Dのジオメトリを含むジオメトリを実現できる。
【0026】
ある実施形態では、センサ100は以下の製造工程で作られる(図8参照)。最初に、シリコーンエラストマー103に磁性微粒子104を混ぜて、磁場下で複合材料を硬化させることで、磁性材料101を機能化する。この材料が磁場中で硬化されると、磁性微粒子104は、硬化したエラストマー103中に固定される前に整列して、磁性微粒子104の均質な磁気配向が作り出される。代替的な実施形態では、不均一な磁気配向が使用される。更なる例を挙げると、プレポリマーと架橋剤とを1:1の比で約30秒間、せん断混合してよい。硬化したエラストマー混合物は、磁性粒子104(MQP-15-12;Magnequench)と1:1の重量比で手で混合されて、磁性材料101を形成することができる。続いて、未硬化の磁性材料101はモールドに流し込まれて、5分間脱気されてよい。薄いプラスチックフィルムがモールドの上に置かれて、余分な材料101が絞り出されてよい。次に、モールドが充填されて、永久磁石(N48;Applied Magnets)の表面に逆さまにして配置される。その後、材料101が室温で硬化されて、1時間でモールドから取り出される。最後に、磁性材料101は、市販のマグネトメータ102基板(MLX90393;Sparkfun社製など)の上面に接着されてよい(Silpoxy;Smooth-On)。代替的な実施形態では、エラストマー103としてウレタンフォームが使用されるが、当業者であれば、幾つかのタイプのエラストマー103が使用できることは理解できるであろう。更に別の代替的実施形態では、ポリマー以外の変形可能な材料が、複合磁性材料101の基板として使用されてよい。
【0027】
ストレッチャブル回路106の設計及び製造に関して、ストレッチャブル回路106は、マグネトメータ102(MLX90393;Melexis)及び5つの出力線を含んでよい(図1B)。追加の出力線は第2の3.3ボルトのライン用とされてよく、これは、ストレッチャブル回路106の単層設計のために有用であり得る。銅とクロムの薄膜がPDMS(Sylgard 184;Dow Corning)の表面にスパッタリングされて、レーザーでパターニングされて回路トレースが残る。共晶ガリウムインジウム(EGaIn)は、NaOHの浴中に浸されると残った銅のトレースに選択的に濡れる。その後、回路コンポーネント106が液体金属トレース上に直接置かれて、追加のPDMS層で封止されてよい。
【0028】
例えば、このように構成されたセンサ100は、磁性材料101の変形と、マグネトメータ102が感知する磁性材料101から発せられる磁場の変化とに起因した圧力データなどのデータを収集することができる。幾つかの実施形態では、磁性材料101内の粒子104の不均一な分布が固有の磁場を形成することができることから、データドリブン技術を使用して、磁性材料101で発生している変形の位置を区分して、そのような変形の深さを推定することができる。特に、3つの離散的な深さを有する3mmの分解能の5×5グリッドと5mmの放射状の円の両方について、98%の精度で位置を区分することができる。回帰アルゴリズムは、3mmの領域に接触を限定することができる。この点に関して、本明細書で開示されている幾つかの実施形態は、製造が簡単で、素早く組み合わせでき、適応可能なジオメトリを備えた、連続的で柔らかい触覚面の要請に対応するアプローチを提供する。
【0029】
位置検出のデモンストレーションとして、5×5グリッドで構成された実施形態では、力と磁場の変化が、3mmの分解能の5×5グリッド上で3mmの深さまでで合計25個のクラスで収集された(図2A参照)。これらの25箇所の位置で2750の接触サンプルが均一なランダム分布を用いて収集された。各クラス(全25個)には、夫々約100個のサンプルが含まれる。
【0030】
以下に示すように、幾つかの異なる分類アルゴリズムは、25箇所の位置を正確に区別することができた。これに関して、二次判別分析(QDA)を使用した分類結果が、パフォーマンスの様々な側面を説明するために説明される。誤分類の場合、予測されたクラスは真の位置に隣接している(図2B-位置13のQDA分類を参照)。全ての位置の分類精度を図2Cに示す(クラスでグループ化された全QDA分類結果)。図2D及び図2Eは夫々、x、y位置については位置でグループ化された線形回帰による平均絶対誤差を、力についてはKNN回帰による平均絶対誤差を示している。
【0031】
位置を推定するために、25個の離散的な位置はそれらの座標位置に変換された。5×5グリッドと線形回帰の実験では、x位置の平均誤差は1.1mmであり、y位置の平均誤差は3.8mmである。センサ100の縁付近の出力推定値は、精度が低く、標準偏差が高くなることがある。磁気信号と距離の関係とが1/d3であることから、信号の質は距離とともに低下することが予想できる。縁に沿ったこれらのポイントでは、粒子のランダムな分布が、加えられた変形よりも出力信号に大きな影響を与え始めることがある。これは、通常とは異なる信号の変化を引き起こす可能性があり、ある非限定的な実施形態では、関数フィッティングアプローチではなく、データドリブン技術がより有用である理由となり得る。
【0032】
位置と深さの検知のデモンストレーションとして、円形センサ100で構成される実施形態について、8つの異なるXY位置と3つの異なる深さ(dZ=1,2,or 3mm)について、磁場の力制御(force-controlled)変化を測定した(図3A参照)。これらの24箇所のXYZ位置について2850個の接触サンプルが均一なランダム分布を用いて収集された。各クラス(全24個)は夫々約110個のサンプルを有していた。ここに示すように、二次判別分析(QDA)を使用して、XY位置と深さの両方に基づいて位置を分類することができる。予測されたクラスが間違っている場合は、隣接するクラスとして予測できる(図3B-位置3及び深さ1mmのQDA分類結果を参照)。隣接する位置間の誤分類は、隣接する深さよりも多いことがある。z軸方向の磁場と圧力との大きな相関関係が用いられて、深さを区別することができる。全ての試験位置が5×5の実験よりもマグネトメータ102に近いことから、微粒子104からの同じ導入ノイズが観察されない、又は存在しない可能性がある。全ての場所について分類精度を図3Cに示す。一般に、加えた圧力が小さい(深さ=1)と、信号の変化が小さくなって、精度は低下する。このサンプルでは、位置3及び深さ1の分類精度が低かった。これは、図3D(x座標の位置ごとに分類した線形回帰出力からの平均絶対誤差)及び図3E(y座標)の位置2、3、及び4の誤差が大きいことからもわかるように、位置ずれの組合せで右側の信号が小さくなったことが原因と考えられる。図3Fはz位置について平均絶対誤差を示しており、図3Gは、力の位置でグループ化したKNN回帰による平均絶対誤差を示す。
【0033】
上記のデモンストレーションを引き続き参照すると、24個のクラスは、位置推定のためにそれらの真の(x、y、z)座標に変換された。8点円及び線形回帰の場合、x座標の平均絶対誤差は1.2mmであり、y位置の平均絶対誤差は全てのクラスで3.4mmであった。x座標とy座標の誤差の違いは、この試験での小さな位置合わせ不良を示唆しており、これはまた、図3D及び図3Eの位置での誤差の変化に示されている可能性がある。z位置の誤差は比較的小さいが(0.03mm)、これは深さ1mmの変化に伴う信号の変化が大きいためと考えられる(図3F)。
【0034】
力の推定には、時系列データとk最近傍(KNN)回帰を用いることができる。入力は、各時間ステップにおける磁場のBx、By、Bz成分、マグネトメータの内部温度Bt、及びロードセルの出力であってよい。5×5グリッドのデモンストレーションでは,力の推定値の平均誤差は0.44Nであった(図2F)。8点の円については、力の推定値の平均誤差は約0.25Nであった(図3G)。磁場のx軸成分と圧力の相関が最も強く、力の推定を比較的正確にした。しかしながら、良好な信号変化は変形量に依存し得る。それ故に、磁性材料101に使用するエラストマー103のヤング率が高ければ、力の分解能を高くできるであろう。両方の試験で加えられた力の範囲は約0乃至2.5Nであって、最大深さは3mmに制限されていた。
【0035】
センサ100の機能のデモンストレーションとして、図4Aにシンプルな4方向キーのゲームパッドが示されている。図4Aに示されているように、センサ100の表面には4つのアクリル製の矢印が貼り付けられており、方向コマンドを入力するために圧力をかける位置をユーザーが特定できるようになっている。4つのコマンドは、磁場のX、Y、Z成分の変化によって識別できる。この例では分類器は使用されておらず、ボタンの間隔が十分に空いている場合、単純な閾値処理で十分であることがわかっている。X及びYの正負の変化は、キーボードの4つの矢印キーにマッピングされて、ウェブブラウザでMs.Pac-Manをプレイすることができる。また、図4Aには、ゲームの各方向のデータ例が示されている。
【0036】
5×5グリッド分類器の速度及び精度を実証するために,図4Bに示すように,ロボット制御の円筒圧子を用いてマインスイーパの短いゲームを行った。25個のグリッドの各位置は、画面上のマウス位置にマッピングされている。信号の長さ(つまり、加えられた圧力の持続時間)は、ユーザーが升を表示するために左クリックするか、フラグを配置するために右クリックするかを示す。信号が休止状態に戻った直後に、QDA分類器が用いられて位置が予測されて、適切なアクションが実行される。生データ及び分類結果が図4Bに示されている。
【0037】
センサ100は伸縮可能で柔軟であることから、既存のストレッチャブル回路技術と組み合わせることができる。4つのキーパッドと同様に、4つのキーボードコマンド(ctrl+left,ctrl+right,ctrl+up,ctrl+down)を4つの位置(previous,next,volume up,volume down)にベクトル閾値を介してマッピングして、音楽のプレイリストを閲覧した(Fig.4C)。アクリルの矢印がないと、ユーザー入力が位置によって異なり、データのノイズが大きくなることがある。加えて、ユーザーの手や肌が、磁気スキンと一緒に変形することもある。これらの要因の両方は更なるノイズに寄与するが、システムは、接触の象限を決定するために、約4つの基本的な閾値で機能して接触の象限を決定することができる。
【0038】
更なる実施形態では、センサ100又は磁性材料101の製造プロセスを調整することと、トレーニング手順を変更することと、又は、更なるマグネトメータ102を追加することとによって、力及び接触位置の範囲及び解像度を向上させることができる。本明細書で説明されるセンサ100は、ソフトロボティクス、医療機器、マニピュレーション、触覚面のような用途に使用することができる。更に、幾つかの非限定的な実施形態では、センサ100はホストシステムの形状に合わせてモールドされて、所定の機械的負荷又は変形に応答するように磁気的にプログラムすることができる。
【0039】
本明細書で説明される幾つかの実施形態に関して、時系列データは、一組の代表特徴量として表される。更に、21個の特徴量は、自動化特徴選択方法の代わりに、手動で特定された。21個の特徴量は、サンプルの各軸の最小値、最大値、平均値、標準偏差、中央値、合計値(18個の特徴)と、3軸間のスカラー比(3つの特徴)を含む。接触終了時に、接触時間中に収集したデータから特徴量が算出されて、分類結果と回帰結果が即座に出力された。このように、本明細書で述べられているように、ランダムに分散した磁性粒子104の変形によって、再現性のある分離可能な信号を作り出すことができる。
【0040】
マグネトメータ102から受け取ったデータを解析する場合、磁場強度は、逆3乗の関係でマグネトメータ102までの距離に応じて減衰するとして推定される。
mag = Belastomer/r
【0041】
手法に関しては、Python scikit-learnツールキットの分類アルゴリズムが評価された(利用可能な全ての分類アルゴリズムと実装の詳細の完全な比較については、図5を参照)。その結果、比較的小さなデータセットを用いて複数のクラスをうまく区別できる一方で、パラメータの調整が低減される。大がかりなハイパーパラメータの調整を必要としない教師付き学習アルゴリズムが使用され、これは、マルチクラス分類に適していた。
【0042】
この点について、以下の分類アルゴリズムが使用された。
・LDA:線形判別分析は、各クラスが平均と同じ共分散と有する多変量ガウス密度であるという仮定のもとで、線形決定境界を見つけることを目的とした分類器である。我々は、特異値分解(SVD)を使用し、収縮、事前分布、又は次元削減は使用しなかった。
・QDA:同様に、二次判別分析は、各クラス間の二次決定境界を見つけることを目的とした分類器である。各クラスはガウス密度としてモデル化され、出力予測はベイズの法則を最大化するクラスである。LDAとの大きな違いは、QDAは各クラスが同じ共分散行列を持っていると仮定していないことである。
・KNN:K最近傍は、ある距離指標によって最も近いk個のサンプルを使って新しい入力を分類する。これは、データをクラスタリングするためによく使われる手法である。均一な重み、マンハッタン距離(l1ノルム)、及びk=5が、本明細書で説明される幾つかの実験で使用された。
・RF:ランダムフォレスト分類器は、データセットのサブサンプルに決定木をフィッティングする。データセットをランダムに分割することによって、分類器はこのサブセットの中から最適な特徴を選択する。
・DT:決定木(DT)分類器は二分木を作成し、最大の情報を保持する特徴に基づいてノードを分割する。本明細書で説明される態様では、決定木は、CART(Classification And Regression Tree)アルゴリズムを用いて使用された。
・GB:勾配ブースティング(GB)は,指定された損失関数の勾配にn本の回帰木を適合させるアンサンブル分類器である。ここで説明する幾つかの態様では、100個の推定量、逸脱損失、学習率0.1が使用された。
【0043】
回帰アルゴリズムについては、以下の回帰アルゴリズムが選択されてXY座標位置が推定された。上述の幾つかの態様を参照すると、回帰アルゴリズムの一部は、先の分類で得られた同じ特徴及びサンプルを用いて学習されていた(図6参照)。
・LR:線形回帰は、残差平方和を最小にする一方で、特徴量を係数として用いて直線をフィッティングする。
・SVR:サポートベクトル回帰は、指定されたソフトマージンεを最小化することで、カーネル関数をフィッティングする。このε境界内の誤差はゼロとみなされて、この境界から始まってL1損失が計算される。ここで紹介する幾つかのケースでは、ε=0.1及びrbfカーネルが使用された。
・DTR:決定木回帰器は、決定木を構築して情報の最大化に基づいてノードを分割することにより、決定木分類と同じ原則に従う。この回帰器では、しかしながら、出力は連続的である。
・KNN回帰器:KNN回帰器は、連続的な距離関数の加重平均を用いて、KNN分類方式を連続的な出力に拡張する。
【0044】
本明細書で述べた5×5グリッドのデモンストレーションでは、幾つかのアルゴリズムは98%の精度で25個のクラスを区別することができる。特に、QDAは、この精度を達成するために、他のアルゴリズムと比較してより多くのサンプルを必要とする。これは、最初の1000個のサンプルが特徴の分散を捉えていないことに起因している可能性がある。LDAによる分類の精度は、サンプルサイズが大きくなるにつれて低下する。このことは、サンプルが増えるとノイズが増えるために特徴量が線形分離できなくなることを意味している可能性がある。これらの特徴の空間を増やして、より線形分離できるようにする可能性があるかもしれない。
【0045】
8点円のデモンストレーションでは、幾つかのアルゴリズムは、24個のクラスを区別することができる。概ね、決定木ベースのアプローチは良い結果をもたらす。5×5グリッドの結果と同様に、QDAは、CART、RF及びGBoostのアプローチと同等の性能を得るまでにより多くのサンプルを必要とする。KNNもまたこれらのケースでは良い結果を出した。このことは、z方向の磁場がクラス[0,7]、[8,15]、及び[16,23]を大きく分けていることに起因しているかもしれない。これにより、クラスターは、既に問題を8つのオプションにまで素早く減らすことができる。円の半径が5×5グリッドよりも小さいことから、同じノイズは、前述の材料の粒子分布からは見られない。
【0046】
線形回帰アルゴリズム(linear、ridge、lasso、elastic)は全て、連続した出力を有しており、X位置を約1.1mmの平均誤差で、Y位置を約2.5mmの平均誤差で推定することができる。KNN及びDTの結果は、データ入力の準離散的な性質の影響を受けて、準離散的な出力につながる可能性がある。しかしながら、表面全体を連続的にサンプリングしてもよい。
【0047】
5×5グリッドの生ベクトルについて、マグネトメータ102は、出力ベクトルの大きさ及び方向によって決定することができる内部座標フレームを有してよい。例えば、マグネトメータ102のx軸が図6にて横切っており、出力は負から正に変化し得る。信号の周りの各象限は、それらの位置に基づいて正しい符号を反映することができ、信号の大きさは、マグネトメータ102からの距離とともに減少する。しかしながら、このパターンからの幾つかの不一致が、グリッド実験の端に現れる可能性がある。
【0048】
図7では、10mm/minで25箇所に3mmのへこみをつけた場合におけるグリッドパターンの各位置について、最大のBx及びBtのベクトルがプロットされている。図7では、不一致にはアスタリスクが付けられている。内側の9つの位置信号は端に比べて非常に大きく、完全なベクトルはフレームに表示されないことに留意のこと。しかしながら、内側の9つの位置は、マグネトメータ102のx軸成分及びy軸成分の予想される符号に従うことは明らかである。具体的には、Xベクトルは、Y軸を横切る際に左から右へ(正、負、負)のパターンに従う。同様に、Yベクトルは、x軸を横切る際に上から下へと(負、正、正)のパターンに従う。これらのパターンは、近似理論から予想され、それに基づいている。
【0049】
端の場合は少し異なっている。例えば、位置15と位置20のXベクトル(赤)について考えてみる。それらはx軸の負の側にあって、中央の9つの位置で示されているが、信号は正である。この矛盾は、端の位置でのみ現れる。これは、サンプルの不均一性が、マグネトメータ102から離れたこの距離で加えられた変形に勝ったためと考えられる。逆3乗則により、信号は距離とともに非常に速く減衰する可能性がある。言い換えると、圧子の下での凝集粒子の変位は、バルク変位よりも正味の磁場変化に大きな影響を与える可能性がある。同様の効果は、位置20と位置24のYベクトル(緑)で見ることができ、ここでは、信号は正であるべきだが、相対的に小さく負である。これらの比較的予測不可能な不一致は、モデルベースの手法ではなくデータドリブン技術の使用を動機付ける可能性がある。
【0050】
その他の非限定的な実施形態では、マグネトメータ102は、動作中に複合磁性材料101に対して相対的に移動している間に、複合磁性材料101の変形を感知するように構成されてよい。例えば、少なくとも1つの非限定的な実施形態では、複合磁性材料101はロボットアームのグリッパ又はハンドに配置される一方で、マグネトメータ102はロボットアームの別の部分、例えば、肘、肩、ベースなどの他の位置に配置されてよい。そのような例示的な実施形態の動作中、グリッパ又はハンドが、マグネトメータ102を含む特徴を含むロボットアームの他の特徴と同時に移動することで、複合磁性材料101とマグネトメータ102の両方が互いに相対的に移動してよい。この点において、マグネトメータ102は、動作中に移動されている間における複合磁性材料101の変形を感知するように構成されてよい。更に他の実施形態では、マグネトメータ102は、ロボットアームによって操作される物体の上などの、複合磁性材料に接続されるロボットアームのようなデバイスとは異なる位置に配置されてよい。
【0051】
図9に示す実施形態では、磁性材料101はキーに取り付けられており、マグネトメータ102はロボットグリッパの一部となっている。ロボットグリッパに搭載されたマグネトメータ102は、キー上の磁性材料101にsum-mmの精度で配置することができ、ロボットが毎回同じ位置で同じ方法で物体をピックアップすることを可能にしている。更に、ロボットは、接触する前でも、繰り返し可能な握りと物体のポーズとを一貫して特定できる。マグネトメータ104は、小型(7×7×2mm)であり、高速サンプリングレート(>100Hz)をもたらし、シリアル通信を介してシステムに容易に組込みできる。
【0052】
図10は、磁性材料101から分離されているマグネトメータ102を備えており、3D位置特定が可能なセンサ100の代替的実施形態を示している。磁性材料101とマグネトメータ102を分離することで、ロボットは自由に動いて、運動と変形の両方に起因した周囲の磁束変化を測定することができる。センサ100は、視覚ベースの物体位置特定を補完することができる。構成要素が分離されているセンサ100の一実施形態例では、3軸マグネトメータ102は、SDA、SCL、3.3V、及びGNDの4本の入力線を持つ回路基板に取り付けられている。この4本の配線により、マグネトメータ102は、エンドエフェクタ、即ちグリッパに取り付けられた小型のマイクロコントローラとi2cを使って通信することができる。
【0053】
図9及び図10に示されたセンサ100では、位置特定と力フィードバックは、電磁気学のマクスウェルの方程式によって支配される。幾つかのアプリケーションでは、磁性材料101の磁場の形状を2Dガウシアンとして推定することで、プロセスを簡略化することができる。 この基準を使用して、磁性材料101の表面での磁場のz成分を、マグネトメータ102によって決定及び測定することができる。例えば、2mmの厚さの場合、この例示的な実施形態で使用される磁性材料101は、3500から4500μTの範囲であってよく、最小二乗フィッティングのための合理的な境界として機能する。
【0054】
ロボットグリッパ及びマグネトメータ102が磁性材料101の近くを通過すると、最大磁場に遭遇した場合におけるグリッパの位置が記録される。この位置にグリッパを移動させると、磁性材料101をその軸でセンタリングすることになるであろう。これを別の方向に繰り返すことで、ロボットグリッパを磁性材料101の中央に置くことができる。
【0055】
或いは、相補的な視覚ベースシステムは、磁性材料101が付けられた物体の近くにあるロボットグリッパの位置を特定することができるが、スキャン方向に関する情報は有さないであろう。このような状況では、任意の方向に短距離スキャンを行って、非線形最小二乗法による最適化でデータポイントに1Dガウシアンをフィッティングすることができる。その後、このプロセスは第2の軸に対して繰り返されてよい。これらのステップを実行すると、ロボットグリッパは、ガウシアンの推定ピークに位置することができる。マグネトメータ102を含むロボットグリッパが中心軸に配置されると、マクスウェル方程式を用いて磁性材料101の表面の位置を推定することができる。その後、ロボットグリッパは少しずつ動かされて、磁性材料101の表面に近づけられてよい。
【0056】
更なる実施形態では、システムは、複合磁性材料101の変形又は変形を感知するために、任意の数の場所にて複数のマグネトメータを含んでもよい。更に別の実施形態では、複数の磁性粒子104は、ネオン(Ne)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、コバルト(Co)、及びそれらの任意の適切な組合せなどの材料を含んでよい。更に、幾つかの非限定的な実施形態では、複数の磁性粒子には、10-7.5メートルから10-4.5メートルの範囲の寸法を有する粒子と、0.5μm(マイクロメートル)から0.5mm(ミリメートル)の範囲の寸法を有する粒子を含む微粒子と、及び/又は、700nm(ナノメートル)未満の寸法を有する粒子を含むナノ粒子とが挙げられる。
【0057】
前述の説明、特許請求の範囲、又は添付の図面に開示されている特徴は、それらの具体的な形態で、開示された機能を実行するための手段として、開示された結果を達成するための方法又はプロセスの形態として適切に表現されており、別々に、又はそのような特徴の任意の組合せで、本発明をその多様な形態で実現するために利用することができる。特に、本明細書に記載されている何れかの実施形態における1又は複数の特徴は、本明細書に記載されている他の実施形態の1又は複数の特徴と組み合わせられてよい。
【0058】
保護はまた、本開示と合わせて参照にされる及び/又は組み込まれる任意の1又は複数の公開文書に開示される任意の特徴に対して求められ得る。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】