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特表2022-542029電電気機械内で活性な電磁力を推定するための方法及び装置
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  • 特表-電電気機械内で活性な電磁力を推定するための方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】電電気機械内で活性な電磁力を推定するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20220921BHJP
【FI】
H02P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022503583
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2019069670
(87)【国際公開番号】W WO2021013331
(87)【国際公開日】2021-01-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520467176
【氏名又は名称】シーメンス インダストリー ソフトウェア エヌヴェ
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS INDUSTRY SOFTWARE NV
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ショヴィクール,ファビアン
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501CC01
5H501CC05
5H501DD01
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ17
5H501LL01
5H501LL32
5H501LL35
5H501LL42
5H501LL45
5H501LL47
5H501MM09
(57)【要約】
要約すれば、本発明は、電気機械内で活性の電磁力を推定するための方法及び装置に関する。本方法は、以下のステップを含む。電気機械(20)が少なくとも1つの動作条件下で動作している際、電気機械(20)の少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)を測定するステップ(S1)と、測定された少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)と、記憶された構造/振動-音響モデル(M)によって提供されるそれぞれの第2の動作パラメータとを乗算することで、電気機械(20)の動作中に電気機械(20)内で活性の電磁力(Ftot)を推定するステップ(S2)とを含む。本発明は、電気機械内の電磁力を測定することができ、特に、電気機械の固定子と回転子との間の空隙を測定することができ、その電磁力に起因する障害のノイズ及び/又は振動を特定して、除去することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(20)の動作中に、電気機械(20)内で活性の電磁力(Ftot)を推定する方法(1)であって、
前記電気機械(20)が少なくとも1つの動作条件下で動作している間に、前記電気機械(20)の少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)を測定するステップ(S1)と、
測定された前記少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)と、記憶された構造/振動-音響モデル(M)によって提供される各第2の動作パラメータとを乗算することによって、前記電気機械(20)の動作中に前記電気機械(20)内で活動性の電磁力(Ftot)を推定するステップ(S2)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記記憶された構造/振動音響モデル(M)は、実験的モード解析中で決定された、前記電気機械(20)の少なくとも1つの固有の挙動を用いることで生成及び/又は調整された、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記実験的モード解析は、前記電気機械(20)が静止状態にある際に、前記電気機械(20)に対して実行される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記構造/振動-音響モデル(M)に対して少なくとも1つの単一の力(Fu、i)が適用され、前記少なくとも1つの単一の力(Fu、i)は、前記電気機械(20)の各少なくとも1つの固有の挙動に対応する、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記動作条件は、前記電気機械(20)の複数の所定のトルク・パラメータ及び/又は前記電気機械(20)の複数の所定の速度パラメータを含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記動作条件は、増大又は減少する関数を用いて設定可能である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも第1の動作パラメータ(Ytot)は、
前記電気機械(20)の加速度、
前記電気機械(20)の速度、及び/又は、
前記電気機械(20)の変位、
のうちの少なくとも1つによって引き起こされる、少なくとも音響圧力及び/又は振動値を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
加速度計を用いて、前記振動値を測定する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
マイクロホンを用いて、前記音響圧力を測定する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記構造/振動-音響モデル(M)は、
前記電気機械(20)の形状及び/又は構造、及び/又は、
前記電気機械(20)からの構造の圧力
を含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記実験的モード解析は、
前記電気機械(20)及び/又は前記電気機械(20)の単一構成要素に対する外部物理力の適用、及び/又は、
前記振動/音響出力の測定、及び/又は、
前記電気機械(20)の固有の挙動の推定
を含む、請求項2乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの単一の力は、前記電気機械(20)の所定の負荷を表す、請求項4乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
電気機械(20)の動作中に電気機械(20)内で活性の電磁力(Ftot)を推定するための装置(10)であって、
前記電気機械(20)が少なくとも1つの動作条件下で動作している間に、前記電気機械(20)の少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)を測定するように構成された測定部(11)と、
測定された前記少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)と、記憶されている構造/振動-音響モデル(M)によって提供される各第2の動作パラメータとを乗算することによって、前記電気機械(20)の動作中に前記電気機械(20)内で活性の電磁力(Ftot)を推定するように構成された推定部(12)と、
を含む装置。
【請求項14】
電気機械(20)の動作中に電気機械(20)内で活性の電磁力(Ftot)を推定するためのシステム(100)であって、
直流電源又は交流によって電力供給される電気モータを備える、電気機械(20)と、
請求項13に記載の装置(10)と、
を含むシステム。
【請求項15】
プログラム・エレメントを含むコンピュータ・プログラム製品であって、
前記プログラム・エレメントが電気装置の記憶装置に格納されると、
前記電気装置に対して、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法に従って電磁力を推定するための方法のステップを実行可能にする、
コンピュータ・プログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械内で活性な電磁力を推定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業では、電気機械、特に回転型電気機械によって引き起こされる望ましくないノイズと振動を抑制することは、重要な研究課題である。そのことは、乗用車の内部では、至る所でますます電化部品が用いられていることから裏付けられている。電気機械内の電磁力は、乗客又はその電気機械の周囲にいる任意の人に対して騒音をもたらし得る高い振動及び/又はノイズの要因となり得る。高い振動及び/又はノイズを低減するためには、特にそれらが生じる領域での電磁力の予測が必要とされる。
【0003】
一般的なセンサ技術を用いて、回転型電気機械中の電磁(EM:electromagnetic)力を測定することは、実現不可能である。その電磁力は、電気機械の固定子と回転子との間で生じるが、特に、回転子の歯と固定子の歯との間で生じる。電磁力を測定するための一般的なセンサ技術は、「力変換器(力トランスジューサ)」として参照されることがある。電気機械内で決定される力は、数十キロニュートンの大きさをもつ。そのため、変換器は30mmよりも大きい寸法が求められるが、固定子と回転子との間の空隙(エアーギャップ)は、通常、0,3mmから3mmまでの間である。このことは、使用上、第一の限界となっている。また、その機能原理(電気抵抗器が歪ゲージを形成する)ことに起因して、上記一般的なセンサの第二の限界がもたらされている。即ち、それらは、上記空隙で生じる磁場に対して感知可能だが、回転型電気機械の上記空隙では著しく高いため、センサ出力に実質的な影響を及ぼし得るためである。
【0004】
図2では、固定子(ステータ)Stと回転子(ロータ)Roとを備える例示的な電気機械が示されている。固定子には、固定子の歯St_Teが形成されている。回転子には、回転子の歯Ro_Teが形成されている。それら固定子の歯と回転子の歯との間には、空隙air_gapが形成されている。その空隙air_gapの大きさは、通常、0,3mmから3mmまでの間である。
【0005】
上記理由により、電磁力は決して測定することができない。最終的に、電磁力を推定するために用いられ得る方法として、静磁気解析用に電磁有限要素モデルに供給され得る多相の電流を測定することがある。しかしながら、この仕方を用いる場合、物理的出力、例えば、そのように推定された力の振動は、物理的入力、例えば電流との間で相関性がないため、電磁力の推定を完全に堅固に、妥当に行うことができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、電気機械内で活性な電磁力を推定することを可能にする、より改善されて、効率的な方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、請求項1の特徴を備える、電気機械の動作中に電気機械内で活性な電磁力を推定するための方法である、本発明の第1の態様に従って提供される。
【0008】
本発明は、第1の態様では、電気機械の動作中に電気機械内で活性な電磁力を推定するための方法を提供するが、この方法は以下のステップを有する。即ち、
電気機械が少なくとも1つの動作条件下で動作している間に電気機械の少なくとも1つの第1の動作パラメータを測定することと、
上記測定された少なくとも1つの第1の動作パラメータと、記憶されている構造/振動-音響モデルから提供されるそれぞれの第2の動作パラメータとを乗算することによって、電気機械の動作中に電気機械内で活性な電磁力を推定することと、を含む。
【0009】
本発明に関連して、電気機械は、電気自動車の牽引に用いることができる。さらなる構成では、電気機械は、車両の補助装置を含むことができ、例えば、空気圧縮機、ハイブリッドブースタ等を含むことができる。また、本発明に係る方法及び装置は、高速の電気機械中の電磁力を推定するために用いることができる。
【0010】
本発明に関連して、「電気機械の動作中」とは、電気機械に接続された動作タスク及び負荷に基づいて、特定の回転速度及び特定のトルク値で、電気機械が動作していることを含む。電気機械は、幾つかの構成可能な回転速度値及び/又は幾つかの構成可能なトルク値で動作可能である。
【0011】
電磁力は、我々の環境で認めることのできるほとんどの相互作用に関与している。電磁力は、原子核のまわりの軌道中に電子を保持している。これらの電子は他の電子と相互作用して、元素間で電子結合を形成して、分子を生じさせて、最終的には視認可能な物質を生じさせている。電磁力は、ローレンツ力とも呼ばれるが、それによって、動いている荷電粒子と静止している荷電粒子の双方がどのように相互作用するかが説明される。電磁力には、もとは別の電気力と磁力とが含まれる。
【0012】
本発明に関連して、「構造/振動-音響モデル」とは、データの要素を組織化して、これらの要素が互いに対してと、電気機械の特性とに対してどのように関係するのかを標準化する、抽象モデルとして理解することができる。それは、電気機械に関するデータセットを特定の方法で記述することを可能にするとともに、電気機械の機能及び/又は関係について記述及び/又は特定するデータを含むことを可能にする。特に、構造/振動-音響モデルは、更新可能なデータを含む。構造/振動-音響モデルは、局所型又は集中型コンピュータに記憶されたデータベース内に実装することができる。さらに、データベースは、分散サーバシステム又はクラウドシステム上の分散データベースに格納することができる。
【0013】
本発明に係る方法及び装置により、更新されていない電磁モデルに依存することなく、電気機械内に生じる力を推定することを可能にする。さらに、本提案の技術は迅速に行うことができ、ノイズ・シミュレーションを伴う電気機械のシステム・レベルの統合を可能にし、後にリアルタイム環境での状態監視目的を可能にする。
【0014】
さらに、本発明は、電気機械の動作状態を監視する電気機械中の力を推定することによって、電気機械内で未知の電磁力及び/又は望ましくない電磁力が検出された場合に、対処(トラブル・シューティング)を可能にする。
【0015】
さらに、本発明は、適合性が極めて重要である用途で支援することができる。例えば、自動車産業では、不快なノイズ成分に最も寄与する電磁力及び/又は力の形を検出することができる。これらが検出又は特定される場合、電磁力を監視するために幾つかの制御戦略を適用することを可能にするとともに、その電磁力を引き起こす構成要素(部品)及び/又は電気機械の構造を、再考、修正、及び/又は再設計することを可能にする。検出又は特定された電磁力に基づいて、共鳴(レゾナンス)を除去したり、共鳴をより高い周波数にシフトするために、構造の修正を用いることができる。
【0016】
本発明により、どの電磁力が、どの種類の周波数に対して影響を及ぼすかについて検出することが可能になる。そのことは、電気機械と関係する。特に、構造/振動-音響モデルは、更新可能なデータを含む。構造/振動-音響モデルは、局所型又は集中型コンピュータに記憶されたデータベース内で実装することができる。データベースは、分散サーバシステム又はクラウドシステム上の分散データベースにさらに格納することができる。
【0017】
本発明に係る方法及び装置を用いることで、更新されていない電磁モデルに依拠することなく、電気機械内に生じる力を推定することが可能になる。さらに、本提案の技術は迅速に行うことができ、ノイズ・シミュレーションを伴う電気機械のシステムレベルでの統合を可能にし、後にリアルタイム環境で行われる状態監視の目的を可能にする。
【0018】
さらに、本発明は、電気機械の動作状態を監視する電気機械中の力を推定することによって、電気機械内で未知の電磁力及び/又は望ましくない電磁力が検出された場合に、対処を可能にする。
【0019】
さらに、本発明は、適合性が極めて重要である用途を支援することを可能にする。例えば、自動車産業では、不快なノイズ成分に最も寄与する電磁力及び/又は力の形を検出することができる。これらが検出又は特定される場合、電磁力を監視するために幾つかの制御戦略を適用することを可能にするとともに、その電磁力を引き起こす構成要素及び/又は電気機械の構造の再考、修正、及び/又は再設計を可能でする。検出又は特定された電磁力に基づいて、共鳴を除去したり、共鳴をより高い周波数にシフトするために、構造の修正を用いることができる。
【0020】
本発明により、どの電磁力が、どの種類の周波数に対して影響を及ぼすのかを検出することができる。さらなる可能な実施形態では、少なくとも1つの単一の力(一元の力)が、構造/振動-音響モデルに対して加えられて、少なくとも1つの単一の力が、電気機械のそれぞれの少なくとも1つの固有の挙動に対応する。更新された構造/振動-音響モデルは、電気機械の典型的な負荷を表す単一の力の波と共に使用されて、正規化された振動/音響の出力が得られるようにする。力の波は、手動で生成される。全ての力の波は、特定の形の構成要素を表すが、それは、全てまとめられて、全体的な力の波を形成する。力の波の各力の振幅は正規化されて、広帯域スペクトルの全周波数線について単位エネルギー負荷を生じさせる。従って、これらの力を更新されたモデルに適用することで、各力の形状について振動/音響の出力が得られる。
【0021】
さらなる可能な実施形態では、動作条件は、電気機械の複数の所定のトルク・パラメータ及び/又は電気機械の複数の所定の速度パラメータを含む。このようにして、試験段階では、データは、動作条件下で運転中の電気機械から測定されて、実際のデータが受け取られるようにする。受信された実際のデータは、電気機械の所定のトルク・パラメータ及び/又は所定の速度パラメータ内で、ノイズ及び/又は振動の情報を提供する。特定のノイズ又は振動を検出して、分析することができるとともに、検出されたノイズ又は振動から得られる構造的な欠陥及び障害を特定して、改善することができる。動作条件は、設定可能とすることができ、又は静的な値を含むことができる。
【0022】
さらなる可能な実施形態では、動作条件は、増大する機能又は減少する機能を用いることで構成することができる。このように、動作条件は、増大又は減少するように速度を変化させることで動的に構成することができる。
【0023】
さらなる可能な実施形態では、少なくとも第1の動作パラメータは、電気機械の加速によって生じる、少なくとも音響圧力(音圧)及び/又は振動値を含む。電気機械の加速によって生じる音響圧力及び振動値は、測定することができる。加速度は構成可能であり、例えば、音響圧力及び振動を生じさせる各加速度の値を測定することができる。
【0024】
さらなる可能な実施形態では、少なくとも第1の動作パラメータは、電気機械の速度によって生じる、少なくとも音響圧力及び/又は振動値を含む。電気機械の速度によって生じる音響圧力及び振動値は、測定することができる。速度は構成可能であって、例えば、音響圧力及び/又は振動を生じさせる各加速度の値を測定することができる。
【0025】
さらなる可能な実施形態では、少なくとも第1の動作パラメータは、電気機械の変位によって生じる、少なくとも音響圧力及び/又は振動値を含む。電気機械の変位によって生じる音響圧力及び振動値は、測定することができる。このように、電気機械の変位によって生じる音響圧力及び振動を測定することができる。
【0026】
さらに可能性な実施形態では、振動値を測定するために加速度計(加速度センサ)が用いられる。加速度計は、加速度を測定するセンサである。これは、通常、試験質量に作用する慣性力を決定することで行われる。従って、例えば、速度の増大又は減少が存在しているか否かについて、決定することができる。加速度の推定は、加速度計の技術に依存し得る。通常、圧電(PE:Piezoelectric)加速度計が用いられるが、その際、PE素子上の瞬間的なストレス(加速度の変化によって生じるもの)が、加速度に比例する電荷(チャージ)を生成するという事実を利用する。この電荷は、センサの電気端子(ターミナル)に至り、デジタル信号を測定するための電圧を与える。このように、加速度を測定して、デジタル信号として提供することができる。
【0027】
さらなる可能な実施形態では、音響圧力を測定するためにマイクロホンが用いられる。マイクロホンは、音圧振動としての空気伝播音を、マイクロホン信号として対応する電気電圧変化に変換する音響変換器(サウンド・トランスデューサ)である。このように、音響圧力を測定して、デジタル信号として提供することができる。
【0028】
さらなる可能な実施形態では、構造/振動-音響モデルは、電気機械の形状を含む。形状はモード形状とすることができ、形状と固有振動数とを参照することができる。通常、形状と固有振動数とは、システム(電気機械又は電気装置)のいわゆる運動方程式を解くことにで得られる。それらは数学系の固有ベクトルと固有振動数とを形成する。
【0029】
さらなる可能な実施形態では、構造/振動-音響モデルは、電気機械の構造を含む。その構造は、一体に組み立てられた電気機械の部品(固定子、回転子、巻線、ハウジング等)を記述する。これらは、用いられるモデルに応じて、独立して又は一体としてモデル化される。また、モデルは、各構成要素の材料の機械的特性(剛性、質量、減衰)を必要とする。
【0030】
さらなる可能な実施形態では、構造/振動-音響モデルは、電気機械からの構造の圧力を含む。機械の振動は、その周囲の媒体(通常は、空気)に振動を生じさせ、これが圧力変動を生じさせて、最終的に音響ノイズとなる。次に、音響圧力モデルは、周囲の媒質特性を必要とするが、通常、それは、機械から離れて計算される。
【0031】
さらなる可能な実施形態では、実験的モード解析は、電気機械に対する外的な物理的力の適用を含む。このように、電気機械の反応、特に外的な物理力に対する反応を観察して、測定することができる。外的な物理的な力は、電気機械に対するハンマー又はシェーカーによって引き起こされる物理的なストレス(応力)によって起こされ得る。実験的モード解析は、技術と環境との間の機能的関係に関する。実験的モード解析は、挙動の記述、説明、予測及び制御を行うために用いられる。挙動は、挙動の関数と、挙動が生じる内容とによって理解することができる。
【0032】
さらなる可能性な実施形態では、実験的モード解析は、電気機械の単一の構成要素に対する外的な物理的力の適用を含む。このようにして、特に、外的な物理的な力によって引き起こされる影響に起因する、電気機械の単一部品の反作用を測定することができる。
【0033】
さらなる可能な実施形態では、実験的モード解析は、電気機械の振動/音響出力を測定することを含む。記憶された構造/振動-音響モデルを更新するために、実験的モード解析が用いられる。実験的モード解析では、二つの態様(実験とモデル)の間での形状と周波数とが相関させられる。
【0034】
さらに、記憶された構造/振動-音響モデルは、正規化された振動/音響出力を得るために、単一の力と共に用いられる。記憶された構造/振動-音響モデルに対して単一の力を適用することで、各力の形状について振動/音響出力を求めることができる。
【0035】
さらなる可能な実施形態では、実験的モード解析は、電気機械の固有の挙動を推定することを含む。各構造は、力に依存しない、任意の固有の挙動を有している。記憶された構造/振動-音響モデルを更新するために、固有の挙動を用いることができる。
【0036】
さらなる可能な実施形態では、少なくとも1つの単一の力は、電気機械の所定の負荷を表す。それら単一の力は、一つのニュートン振幅の力を含む。それら単一の力は、特定の形状で生じて、記憶された構造/振動-音響モデルに対して適用される。このように、各適用された単一の力について、特定の力の形状に応じて、1つの振動応答が供給される。その特定の力の形状から、電磁力を再構成することができる。
【0037】
以上、特許請求の範囲に記載の方法の発明に関して、本発明について説明した。それらの特徴、利点又は代替的実施形態は、他の特許請求の範囲に記載された対象(例えば、コンピュータ・プログラム又は装置、即ち、装置又はコンピュータ・プログラム製品)に対しても適用することができる。その逆も同様である。換言すると、装置に関して特許請求の範囲又は明細書で記載された発明主題は、方法に関して特許請求の範囲又は明細書で記載された特徴を用いて改善することができる。その逆も同様である。この場合、方法の機能的特徴は、システムの構造単位によって実装することができる。その逆も同様である。一般に、コンピュータ技術では、ソフトウェアによる実装と、それに対応するハードウェアによる実装とは等価である。従って、例えば、データを「記憶(格納)」するための方法のステップは、記憶部(メモリ)と、その記憶部にデータを書き込むための各命令とによって実行することができる。以下、記載の重複を避けるため、本装置は、本方法に関して説明した代替的実施形態を用いて使用可能だとしても、その装置に係る実施形態については、改めて明示的に説明しないものとする。
【0038】
本発明は、さらに、請求項13に記載の特徴を備える電気機械の動作中に電気機械内で活性な電磁力を推定するための装置である、本発明の第2の態様に従って提供される。
【0039】
本発明は、さらに、第2の態様では、電気機械の動作中に電気機械内で活性な電磁力を推定するための装置を提供するが、この装置は以下を有する。即ち、
電気機械が少なくとも1つの動作条件下で動作する間に、電気機械の少なくとも1つの第1の動作パラメータを測定するように構成された測定部(測定ユニット)と、
少なくとも1つの第1の動作パラメータと、記憶された構造/振動-音響モデルによって提供される各第2の動作パラメータとを乗算することによって、電気機械の動作中に電気機械内で活性な電磁力を推定するための推定部(推定ユニット)と、を備える。
【0040】
本発明は、さらに、請求項14に記載の特徴を備える電気機械の動作中に電気機械内で活性な電磁力を推定するためのシステムである、本発明の第3の態様に従って提供される。
【0041】
本発明は、さらに、第3の態様では、電気機械の動作中に電気機械内で活性な電磁力を推定するためのシステムを提供するが、このシステムは以下を有する。即ち、
直流電源又は交流によって電力供給される電気モータを備える、電気機械と、
請求項13に記載の装置と、を備える。
【0042】
本発明は、さらに、請求項15に記載の特徴を備える電気機械の動作中に電気機械内で活性な電磁力を推定するためのコンピュータ・プログラム製品である、本発明の第4の態様に従って提供される。
【0043】
本発明は、さらに、第4の態様では、コンピュータ・プログラムを有するコンピュータ・プログラム製品を提供するが、このコンピュータ・プログラムは、計算機(コンピュータ)の記憶部(メモリ)内に搭載可能であって、その計算機内でコンピュータ・プログラムが実装されると、本発明の第1の態様に従って、電気機械の動作中に、電気機械内で活性な電磁力を推定するための方法を計算機に対して実行させるためのプログラムコード・セクション(区間)を含む。
【0044】
本方法のすべてのステップが、同じ部品又はコンピュータで実装されるとは限らないことと、異なるコンピュータで実装されることとは、本発明の一部を成すものとする。
【0045】
さらに、分散システムとして、上記方法の個々のステップを一つの装置で実装するとともに、残りのものを他の装置で実装することは、可能である。
【0046】
上述した本発明の特性、特徴及び利点、並びにそれらが達成される仕方は、以下に記述される説明と実施形態とを参照することでより明確になり、理解が容易になるだろう。それらは、図面を参照して詳述されている。なお、以下の説明は、関連する実施形態の発明に限定されない。また、複数の図で、同じ構成要素又は部品については、同じ参照符号が付けられている。概して、図面は、実際の大きさに合わせられていない。さらに、本発明の好適な実施態様は、従属請求項の任意の組み合わせ、又は独立請求項と対応する上記実施形態の任意の組み合わせであってもよい。
【0047】
本発明に係る上記態様と、他の態様とは、後述する実施形態を参照して明らかになり、解明可能になるであろう。
以下、添付した図面を参照して、本発明の各態様に関する可能な実施形態について、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、電気機械の動作中に電気機械内で活性の電磁力を推定するための方法の可能な例示的な実施形態をフローチャートで例示する図である。
図2図2は、電気機械の例示的ブロック図である。
図3図3は、電気機械の動作中に電気機械内で活性の電磁力を推定するための装置の可能な例示的な実施形態をブロック図で例示する図である。
図4図4は、電気機械の動作中に電気機械内で活性の電磁力を推定するためのシステムの可能な例示的な実施形態をブロック図で例示する図である。
図5図5は、電気機械の動作中に電気機械内で活性の電磁力を推定するための方法及び装置の動作を説明するための具体例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、電気機械の動作中に、電気機械内で活性な電磁力を推定するための方法について、可能な例示的実施形態をフローチャートとして概略的に例示する図である。活性な電磁力とは、電気機械20が電流及び電圧下にあると共に稼働中である(即ち、動作中である)際に生じる力として理解されるものとする。この動作は、電気機械20と接続された負荷があろうがなかろうがかかわらないものとする。
【0050】
この方法は、図示された例示的な実施形態では、幾つかの主要なステップ(工程)を含む。第1のステップS1では、電気機械20が少なくとも1つの動作条件下で動作している際に、電気機械20の少なくとも1つの第1の動作パラメータYtotが測定される。周波数ωに依存する少なくとも1つの第1の動作パラメータYtotは振動応答を記述するが、これは、例えば、加速度、速度、変位、又は音響応答を含む振動応答を記述し、例えば、それは、電気機械20の動作中に、電気機械20の外面と電気機械20の周囲とで測定される圧力である。周波数ωは、本発明に従う方法の測定及びシミュレーションが評価される際の周波数(単位:rad/s)である。
【0051】
さらなるステップS2では、測定された少なくとも1つの第1の動作パラメータYtotと、記憶されている構造/振動-音響モデルMによって提供される各第2の動作パラメータとを乗算することによって、電気機械20の動作中に電気機械20内で活性な電磁力Ftotが推定される。記憶された構造/振動-音響モデルMによって提供される第2の動作パラメータは、適用される単一の力Fu、Iと、記憶された構造/振動-音響モデルMとを用いて実行される、振動-音響解析から得られた振動又は音響応答を含んでいてもよい。適用される単一の力Fu、Iは、同様に、周波数ωに依存する。単一の力Fu、Iは、記憶された構造/振動-音響モデルMに対して適用される振幅1Nの単一の力であり、1、2、3、…ローブをそれぞれ有する空間形状に対応する。電磁力Ftotは、動作条件下で適用される、全ての推定された力を含む。
【0052】
図3は、電気機械20の動作中に、電気機械20内で活性の電磁力を推定するための装置10について、可能な例示的な実施形態をブロック図で概略的に例示している。
【0053】
図3のブロック図から理解可能なように、装置10は、電気機械20の動作中に、電気機械20内で活性の電磁力Ftotを推定するために用いられる。
【0054】
例示された実施形態では、装置10は、測定部11と、推定部12とを備えている。測定部11は、電気機械20が少なくとも1つの動作条件下で動作している際に、電気機械20の少なくとも1つの第1の動作パラメータYtotを測定するのに適している。推定部12は、測定された少なくとも1つの第1の動作パラメータYtotと、記憶されている構造/振動-音響モデルMによって提供される各第2の動作パラメータとを乗算することによって、電気機械20の動作中に電気機械20内で活性な電磁力Ftotを推定するのに適している。
【0055】
電気機械20の動作中に電気機械20内で活性の電磁力Ftotを推定するための装置は、コンピュータ(計算機)、PC(パーソナル・コンピュータ)又はコンピュータネットワーク内のワークステーションであってもよく、そして、中央処理装置と、システム・メモリと、システム・バスとを有するが、システム・バスは、システム・メモリを含む様々なシステムの構成要素を中央処理装置に対して結びつける。システム・バスは、複数の種類のバス構造のうちの任意のものでもよく、その中には、メモリ・バス又はメモリ・コントローラ、周辺バス、及び様々なバス構造のうちの任意のものを用いるローカル・バスが含まれ得る。システム・メモリは、読み出し専用メモリ(ROM)及び/又はランダムアクセスメモリ(RAM)を含むことができる。ROM内には、基本入出力システム(BIOS)を格納(記憶)することができるが、それは、起動時等で、PC内の構成要素間で情報の転送を助ける基本ルーチンを含む。また、コンピュータは、ハードディスク・ドライブを含むことができ、ハードディスクでの読み書きを可能にしてもよい。ハードディスク・ドライブは、ハードディスク・ドライブ・インターフェーを介して、システム・バスと結合されていてもよい。ドライブ及びその関連する記憶媒体は、コンピュータ用に、機械可読命令、データ構造、プログラム・モジュール及び他のデータのために不揮発性の記憶部(ストレージ)を提供する。本明細書に記載の例示的な環境ではハードディスクを用いているが、当業者であれば、上記の記憶装置の代わりに、又はそれに加えて、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク、複数のランダムアクセスメモリ(RAMs)、複数の読み出し専用メモリ(ROM)等の、他の種類の記憶媒体を利用できることを理解するであろう。ハードディスク、ROM又はRAM上には、複数のプログラム・モジュールを記憶することができ、例えば、オペレーティング・システム、1つ以上のアプリケーション・プログラム、例えば、推定するための方法、及び/又は他のプログラム・モジュール、及び/又はプログラム・データ等を記憶することができる。
【0056】
測定部11及び推定部12は、中央処理装置上で、単一の事例(装置)として、又は異なる事例として実装することができる。さらなる実施例では、測定部11及び推定部12は、それら測定部11及び推定部12を組み込むように構成されたコンピュータ及び/又はチップの異なる中央処理装置上で実装することができる。
【0057】
さらなる実施形態では、装置10は、加速度計と接続されて、振動値を測定してもよく、及び/又は、マイクロホンを接続されて、音響圧力(音圧)を測定してもよいように、インターフェースを備えることができる。
【0058】
さらなる実施形態では、装置10は、構造/振動-音響モデルMを記憶するためのメモリ(記憶装置)を含むことができる。
【0059】
図4は、電気機械20の動作中に、電気機械20内で活性の電磁力を推定するためのシステム100の可能な例示的な実施形態について、ブロック図で例示している。
【0060】
図4のブロック図から理解可能なように、システム100は、電気機械20の動作中に、電気機械20内で活性の電磁力Ftotを推定するために用いられる。
【0061】
システム100は、電気機械20を含む。電気機械20は、一実施形態では、直流電源にから電力供給される電気モータを備える。代替の実施形態では、電気機械20は、交流から電力供給される電気モータを備える。さらに、システム100は、本発明に従う装置10を備える。
【0062】
図5には、電気機械20の動作中に、電気機械20内で活性の電磁力を推定するための方法1と装置10の動作を例示する具体例について、概略図が示されている。
【0063】
図5では、本発明に係る方法1の動作は、4つの動作ステップ(操作ステップともいう)a~dを含むことが例示されている。本発明に係る方法は、試験段階とシミュレーション段階とを組み合わせている。試験段階は、動作ステップa及びbを含み、シミュレーション段階は、動作ステップcを含む。試験段階とシミュレーション段階の結果ら、動作ステップdでは電磁力Ftotを推定することが可能になる。動作ステップa~cの順序は、必要に応じて、変えることができる。
【0064】
動作ステップaでは、少なくとも1つの動作条件下で、評価対象の電気機械20に特有の振動データ及び/又は音響データが、実験的に収集される。動作条件は、電気機械20の複数の所定のトルク・パラメータ及び/又は電気機械20の複数の所定の速度パラメータを含むことができる。動作ステップaは、電流及び電圧下で稼働中の電気機械を用いて実行され、その際、動作条件は構成可能であって、増大又は減少する関数を用いて構成することができる。有利には、動作ステップaは、電気機械20から実際のデータを提供することができる。動作ステップaが実行されている間、少なくとも1つの第1の動作パラメータYtotを測定することができる。少なくとも1つの第1の動作パラメータYtotは、少なくとも音響圧力及び/又は振動値を含むことができる。第1の動作パラメータYtotは、周波数に基づく。第1の動作パラメータYtot(ω)は、動作中の電気機械の外面及び電気機械の周囲で測定された振動応答(加速度、速度、変位)又は音響応答(圧力)である。周波数ωは、測定とシミュレーションとが評価される際の周波数(単位:rad/s)である。音響圧力及び/又は振動値は、電気機械20の加速度、電気機械20の速度、及び/又は電気機械20の変位の少なくとも1つによって引き起こされてもよい。電気機械の加速度は、例えば、加速度計によって測定することができ、そして、音響圧力は、例えば、マイクロホンによって測定することができる。このマイクロホンは、電気機械20の周囲に配置されるものとする。動作ステップaでは、電気機械20の速度及びトルクの変化を含む試験が行われて、障害に相当する振動とノイズを伴う求められている動作点を探し出す。動作ステップaは、方法のステップのS1にて実行されてもよい。
【0065】
動作ステップbでは、実験的モード解析が実行される。実験的モード解析に関し、構造/振動-音響モデルMが生成及び/又は更新される。構造/振動-音響モデルMは、実験的モード解析中に決定される電気機械20の少なくとも1つの固有の挙動を用いて生成される。実験的モード解析は、電気機械20が静止状態にある間に実行われる。実験的モード解析では、いかなる力にも依存しない構造物(電気機械20)の固有の挙動が試験される。固有の挙動は、その機械が静止状態にある間、特定の条件下での電気機械20の特定の挙動を記述する。静止状態では、電気機械20には電流及び電圧がなく、かついかなる動きも存在しない。特定の状態(図5では閃光状に示されている)は、例えば、ハンマーによって引き起こされる上記構造上での物理的応力(ストレス)を含み得る。電気機械の固有の挙動を検出するために、他の道具及び/又は作用を用いることは可能である。例えば、ハンマーを用いる場合、電気機械又は構造物と衝突した後で、電気機械によって生じた振動データ及び/又は圧力データが検出されて、収集されてもよい。その検出されて、収集された振動データ及び/又は圧力データに対して、ソフトウェア・アルゴリズム及び解析アルゴリズムを用いて、対応する形状(楕円又は長円形)を決定してもよい。その形状は、異なる周波数ωで決定される。その形状と周波数ωは、更新に用いられる。構造/振動-音響モデルMは、局所的又は集中的にデータベースに記憶することができる。
【0066】
動作ステップcでは、構造/振動-音響モデルMの更新が実行されて(円の矢印)、その結果、構造/振動-音響モデルMは、動作ステップbで測定されたものと正確に適合する。正確な形状と周波数ω、特に動作ステップbで測定された構造の固有振動数は、構造/振動-音響モデルM中に含められる。さらに、動作ステップcでは、構造/振動-音響モデルMに対して、単一の力Fu、I(ω)が適用される。単一の力Fu、I(ω)は、動作ステップbで生じた同様の形状に対応する、特定の形状を用いて手動で生成される。単一の力Fu、I(ω)は、構造/振動-音響モデルMに対して適用された振幅1Nの単一の力であって、空間形状に対応する。例えば、形状1、2及び3が決定されると、構造/振動-音響モデルMに対して、3つの単一の力Fu、1(ω)、Fu、2(ω)、及びFu、3(ω)が適用される。
【0067】
動作ステップcでは、正規化された振動/音響の出力を得るために、電気機械20の典型的な負荷を表す単一の力の波Fu、I(ω)と共に、更新された構造/振動-音響モデルMが用いられる。手動で生成された力の波は、すべて合わせて、全体的な力の波を形成する、特定の形状の構成要素を表す。そのことは、力が形状から再構成できることを意味する。各力の振幅が正規化されて、広帯域スペクトルの各周波数ω線について、単位エネルギー負荷を生じさせる。従って、更新された構造/振動-音響モデルMに対して、単一の力Fu、I(ω)を適用することで、各力の形状について、振動/音響の出力Yu、I(ω)が得られる。このため、対応する形状の数に応じて、振動又は音響応答Yu、1(ω)、Yu、2(ω)、…、Yu、I(ω)が求められる。Yu、I(ω)とは、単一の力Fu、I(ω)と、記憶された構造/振動-音響モデルMとを用いて実行された振動-音響解析から得られた振動又は音響応答のことである。
【0068】
動作ステップdでは、動作ステップaの第1の動作パラメータYtotを構成する動作負荷に対して、振動/音響出力Yu、I(π)を乗算することによって、電磁力Ftotを推定することができるが、それぞれ逆算される.動作条件下で適用する、全体的に推定された力としてのFtot(ω)は、次式を用いて逆振動合成を実行することで推定可能である。
tot(ω)=FK(ω)×Yu、I(ω)。
【0069】
K(ω)とは、動作条件下で適用される形状Kの、推定された力の構成要素である。この数式から、振動応答は、各力の形状について、振動又は音響応答と共に、推定された力との和(合計)から推定可能である。次を集めるために、反転行列を用いることができる。
tot(π)=ΣFK(π)。
電磁力Ftot(ω)を推定するために、行列の反転性を確保するため、Ytot(ω)の大きさで表される、測定された出力の数について特に注意する必要がある。
【0070】
以上、要約すれば、本発明は、電気機械内で活性の電磁力を推定するための方法及び装置に関する。本方法は、以下のステップを含む。即ち、
電気機械(20)が少なくとも1つの動作条件下で動作している際に、電気機械(20)の少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)を測定するステップ(S1)と、
測定された少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)と、記憶された構造/振動-音響モデル(M)によって提供される各第2の動作パラメータとを乗算することによって、電気機械(20)の動作中に電気機械(20)内で活性の電磁力(Ftot)を推定するステップ(S2)と、を含む。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、電気機械内の電磁力を測定することができ、特に、電気機械の固定子と回転子との間の空隙を測定することができ、そして、その電磁力に起因する障害のノイズ及び/又は振動を特定して、除去することが可能になる。
【符号の説明】
【0072】
10 装置(電気機械内で活性の電磁力を推定するための装置)
11 測定部
12 推定部
20 電気機械
100 システム(電気機械内で活性の電磁力を推定するためのシステム)
air_gap 空隙
Ro 回転子(ロータ)
Ro_Te 回転子の歯
St 固定子(ステータ)
St_Te 固定子の歯
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-03-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
米国特許出願公開第2012/048026号明細書(特許文献1)からは、逆ダイナミックのキャリブレーションを用いて負荷(ロード)を決定する方法が公知となっている。さらに、米国特許出願公開第2009/276197号明細書(特許文献2)、中国特許出願公開第104362918号明細書(特許文献3)、日本国特許出願公開第H11-160145号明細書(特許文献4)、米国特許出願公開第2009/204355号明細書(特許文献5)、及び米国特許出願公開第2013/298690号明細書(特許文献6)からは、それぞれ、負荷の決定の態様が公知となっている。
図2では、固定子(ステータ)Stと回転子(ロータ)Roとを備える例示的な電気機械が示されている。固定子には、固定子の歯St_Teが形成されている。回転子には、回転子の歯Ro_Teが形成されている。それら固定子の歯と回転子の歯との間には、空隙air_gapが形成されている。その空隙air_gapの大きさは、通常、0,3mmから3mmまでの間である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(20)の動作中に、電気機械(20)内で活性の電磁力(Ftot)を推定する方法(1)であって、
前記電気機械(20)が少なくとも1つの動作条件下で動作している間に、前記電気機械(20)の少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)を測定するステップ(S1)と、
測定された前記少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)と、記憶された構造/振動-音響モデル(M)によって提供される各第2の動作パラメータとを乗算することによって、前記電気機械(20)の動作中に前記電気機械(20)内で活動性の電磁力(Ftot)を推定するステップ(S2)と、
を含む方法であって、
前記記憶された構造/振動-音響モデル(M)は、実験的モード解析中で決定された、前記電気機械(20)の少なくとも1つの固有の挙動を用いることで生成及び/又は調整され、
前記構造/振動-音響モデル(M)は、更新可能なデータを含み、
前記実験的モード解析によって、前記構造/振動-音響モデル(M)に対して少なくとも1つの単一の力(F u、i )が適用されて、更新された前記構造/振動-音響モデル(M)が得られるようにし、
前記少なくとも1つの単一の力(F u、i )は、前記電気機械(20)の各少なくとも1つの固有の挙動に対応する、方法
【請求項2】
前記実験的モード解析は、前記電気機械(20)が静止状態にある際に、前記電気機械(20)に対して実行される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記動作条件は、前記電気機械(20)の複数の所定のトルク・パラメータ及び/又は前記電気機械(20)の複数の所定の速度パラメータを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記動作条件は、増大又は減少する関数を用いて設定可能である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも第1の動作パラメータ(Ytot)は、
前記電気機械(20)の加速度、
前記電気機械(20)の速度、及び/又は、
前記電気機械(20)の変位、
のうちの少なくとも1つによって引き起こされる、少なくとも音響圧力及び/又は振動値を含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
加速度計を用いて、前記振動値を測定する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
マイクロホンを用いて、前記音響圧力を測定する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記構造/振動-音響モデル(M)は、
前記電気機械(20)の形状及び/又は構造、及び/又は、
前記電気機械(20)からの構造の圧力
を含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記実験的モード解析は、
前記電気機械(20)及び/又は前記電気機械(20)の単一構成要素に対する外部物理力の適用、及び/又は、
前記振動/音響出力の測定、及び/又は、
前記電気機械(20)の固有の挙動の推定
を含む、請求項乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの単一の力は、前記電気機械(20)の所定の負荷を表す、請求項乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
電気機械(20)の動作中に電気機械(20)内で活性の電磁力(Ftot)を推定するための装置(10)であって、
前記電気機械(20)が少なくとも1つの動作条件下で動作している間に、前記電気機械(20)の少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)を測定するように構成された測定部(11)と、
測定された前記少なくとも1つの第1の動作パラメータ(Ytot)と、記憶されている構造/振動-音響モデル(M)によって提供される各第2の動作パラメータとを乗算することによって、前記電気機械(20)の動作中に前記電気機械(20)内で活性の電磁力(Ftot)を推定するように構成された推定部(12)と、
を含む装置であって、
前記記憶された構造/振動-音響モデル(M)は、実験的モード解析中で決定された、前記電気機械(20)の少なくとも1つの固有の挙動を用いることで生成及び/又は調整され、
前記構造/振動-音響モデル(M)は、更新可能なデータを含み、
前記実験的モード解析によって、前記構造/振動-音響モデル(M)に対して少なくとも1つの単一の力(F u、i )が適用されて、更新された前記構造/振動-音響モデル(M)が得られるようにし、
前記少なくとも1つの単一の力(F u、i )は、前記電気機械(20)の各少なくとも1つの固有の挙動に対応する、装置
【請求項12】
電気機械(20)の動作中に電気機械(20)内で活性の電磁力(Ftot)を推定するためのシステム(100)であって、
直流電源又は交流によって電力供給される電気モータを備える、電気機械(20)と、
請求項11に記載の装置(10)と、
を含むシステム。
【請求項13】
プログラム・エレメントを含むコンピュータ・プログラム製品であって、
前記プログラム・エレメントが電気装置の記憶装置に格納されると、
前記電気装置に対して、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法に従って電磁力を推定するための方法のステップを実行可能にする、
コンピュータ・プログラム製品。
【国際調査報告】