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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】広視野対物レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20220921BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B23/26 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503876
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2020056363
(87)【国際公開番号】W WO2021014248
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】19187218.3
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ツイシュク,ホルジャー
【テーマコード(参考)】
2H040
2H087
【Fターム(参考)】
2H040BA02
2H040DA12
2H040GA02
2H087KA10
2H087LA03
2H087PA05
2H087PA06
2H087PA07
2H087PA18
2H087PA19
2H087PB06
2H087PB08
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA32
2H087QA37
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA32
2H087RA42
2H087RA44
2H087UA01
(57)【要約】
物体側から像側へ順に、夫々が物体側に凸面を向けた第1メニスカスレンズおよび第2メニスカスレンズと、第1集光ユニットと、開口絞りと、第2集光ユニットとを備える対物レンズを提供する。前記第2メニスカスレンズの頂点は、前記第1メニスカスレンズから間隔を置いて配置される。前記第1集光ユニットおよび前記第2集光ユニットに含まれるレンズの総数は4枚以上6枚以下である。前記第1メニスカスレンズの像側の半径をr2で表し、前記第2メニスカスレンズの物体側の半径をr3で表し、前記第2メニスカスレンズの像側の半径をr4で表す場合、以下の3つの条件式の少なくとも2つを満たす。
r2/r4≧1.40
r4/r3≧0.111
r2/r3≧0.16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、
前記物体側に凸面を向けた第1メニスカスレンズと、
前記物体側に凸側を向けた第2メニスカスレンズと、
前記第2メニスカスレンズからの光を集光するように構成された第1集光ユニットと、
開口絞りと、
前記開口絞りからの光を集光するように構成された第2集光ユニットとからなり、
前記第2メニスカスレンズの頂点は、前記第1メニスカスレンズから間隔を置いて配置され、
前記第1集光ユニットおよび前記第2集光ユニットのレンズの総数は、4枚以上6枚以下であり、
前記第1メニスカスレンズの前記物体側の半径をr1で表し、前記第1メニスカスレンズの前記像側の半径をr2で表し、前記第2メニスカスレンズの前記物体側の半径をr3で表し、前記第2メニスカスレンズの前記像側の半径をr4で表す場合、以下の4つの条件式を満たし、
1.98≧r2/r4≧1.40
0.35≧r4/r3
0.65≧r2/r3≧0.16
4.0≦r1/r4≦7.6
さらに以下の条件式を満たす対物レンズ。
r4/r3≧0.152
【請求項2】
以下の条件式の少なくとも1つを満たす請求項1に記載の対物レンズ。
r2/r4≧1.64
r4/r3≧0.19
r2/r3≧0.35
【請求項3】
以下の条件の少なくとも1つを満たす請求項1または請求項2に記載の対物レンズ。
前記第1集光ユニットは、1枚のレンズ、2枚のレンズまたは3枚のレンズを備える。
前記第2集光ユニットは、3枚のレンズまたは4枚のレンズを備える。
【請求項4】
前記対物レンズの視野が225度以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の対物レンズ。
【請求項5】
屈折率を587.6nmの波長で定義する場合に、以下の条件の少なくとも1つを満たす請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の対物レンズ。
前記第1メニスカスレンズの屈折率と、前記第2メニスカスレンズの屈折率との合計が3.56以上である。
前記第1メニスカスレンズのアッベ数と、前記第2メニスカスレンズのアッベ数との合計が58以上である。
【請求項6】
前記第1メニスカスレンズの直径が7mm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の対物レンズ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の対物レンズと、
前記対物レンズによってセンサ領域に形成された像を電気信号に光電変換するように構成されたセンサデバイスと、
前記センサ領域を覆うカバーガラスとからなるセンサシステムであって、前記カバーガラスが前記第2集光ユニットと前記センサ領域の間に配置されているセンサシステム。
【請求項8】
前記センサ領域の上に配置された前記第1メニスカスレンズの頂点から8mmに位置するイメージサークルの領域が、前記センサ領域に含まれる請求項7に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記第1メニスカスレンズの頂点から前記センサ領域までの光路長が10mm以下である請求項8に記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記イメージサークルの夫々の位置の主光線角度が30度以下である請求項9に記載のセンサシステム。
【請求項11】
前記イメージサークルの直径をdiで表し、前記対物レンズの視野をFOVで表し、前記第1メニスカスレンズの直径をd1で表し、前記対物レンズのF値をFで表す場合、以下の条件を満たす請求項9または請求項10に記載のセンサシステム。
64≦(di×FOV)/(d1×F)
【請求項12】
管部と前記管部の遠位端にある先端部とを備える内視鏡であって、前記先端部は、請求項7から請求項11のいずれか一つに記載のセンサシステムを備える内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広視野の対物レンズに関する。とりわけ、内視鏡で利用され得る広視野の対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
180度以上の視野(FOV:Field of View)を有する対物レンズを備えた内視鏡が当該技術で知られている。しかしながら、そのような内視鏡は、180度より若干大きい程度の視野を通常有する。より広い視野を有する内視鏡を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、先行技術を改良することを目的とする。すなわち、本発明の態様に応じて、夫々の独立請求項に係る対物レンズが提供されている。さらに、本発明の態様は、先の態様に係る対物レンズから構成されるセンサシステムとセンサシステムから構成される内視鏡とを提供する。夫々の従属請求項においてより詳細が述べられる。
【0004】
本発明のある実施形態では、以下の利点の少なくとも1つが達成され得る。
- 対物レンズは225度より大きい広視野を有する。
- イメージサークル内における最大主光線角度は30度未満であるので、従来の半導体イメージセンサ(CMOSまたはCCD等)が利用され得る。
- 画像は小さなディストーション、とりわけ小さなf/θ-ディストーションを有する。
- 内視鏡に適した小型版であっても、レンズが困難なく作成され得る。
【0005】
更なる利点が以下の詳細な説明から明らかとなる。上述の変形例および以下に述べる実施例は、代替物を除くと明記しない限り、それらの単独または組み合わせでそれらが引用する夫々の態様に適用され得る。
【0006】
更なる詳細、特徴、目的および利点は、添付の図面と併用して考慮されるべきである、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のある実施形態に係る対物レンズの一般的な構成を示す。
図2】本発明のある実施形態に係るセンサシステムの一般的な構成を示す。
図3】本発明に係るセンサシステムの実施形態1を示す。
図4】本発明に係るセンサシステムの実施形態2を示す。
図5】本発明に係るセンサシステムの実施形態3を示す。
図6】本発明に係るセンサシステムの実施形態4を示す。
図7】本発明に係るセンサシステムの実施形態5を示す。
図8】本発明に係るセンサシステムの実施形態6を示す。
図9】本発明に係るセンサシステムの実施形態7を示す。
図10】本発明に係るセンサシステムの実施形態8を示す。
【0008】
以下、本発明のある実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態の特徴は、それ以外の指示がない限り互いに自由に組み合わせ可能である。しかしながら、ある実施形態の記載は一例として提示されると明白に理解されるべきであり、本発明が開示された詳細に限定されると理解されることを意図してはいない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明のある実施形態に係る対物レンズの一般的な構成を示す。言い換えれば、対物レンズは、物体側から像側へと順に、
各々が物体側に向かって凸側を有する2枚のメニスカスレンズ(第1メニスカスレンズ1および第2メニスカスレンズ2)と、第2メニスカスレンズ2からの光を集光する第1集光ユニット3と、開口絞り4と、開口絞り4からの光を集光する第2集光ユニット5と、を備える。第1集光ユニット3および第2集光ユニット5の夫々は、1枚以上のレンズを備えてもよく、2つの集光ユニット3、5のレンズの総数が4枚以上6枚以下である。第2メニスカスレンズ2の頂点は第1メニスカスレンズ1の像側のレンズ面から間隔を置いて配置される。
【0010】
本発明のある実施形態では、第1メニスカスレンズ1の像側の半径(r2)、第2メニスカスレンズ2の物体側の半径(r3)および、第2メニスカスレンズ2の像側の半径(r4)は、以下の3つの条件式の少なくとも2つを満たす。
r2/r4≧1.40 (1)
r4/r3≧0.111 (2)
r2/r3≧0.16 (3)
【0011】
これらの条件式の意味を以下に示す。
【0012】
条件式(1)によると、第1メニスカスレンズ1および第2メニスカスレンズ2の像側の曲率は、実質的に等しいか、第2メニスカスレンズ2の像側の曲率が第1メニスカスレンズ1の像側の曲率よりも強い。先行技術では、この商は通常1未満であり、このことは、第1メニスカスレンズの像側の曲率が第2メニスカスレンズの像側の曲率よりも強いこと意味する。条件式(1)を満たさない場合、f/θ-ディストーションが増強される。さらに、条件式(1)を満たさない(例えば、r2が減少する一方、r3およびr4が維持される場合)、視野角が115度での1mm当たり150ラインペアの変調伝達関数(MTF@150lp/mm)は減少する。
【0013】
条件式(2)は、第2メニスカスレンズ2の物体側の曲率が第2メニスカスレンズ2の像側の曲率よりはるかに低いことを定義する。しかしながら、条件式(2)は、第2メニスカスレンズ2の物体側の曲率が第2メニスカスレンズ2の像側の曲率に比べて無視できるほどではないことも定義する。
【0014】
先行技術では、広視野を有する対物レンズ(魚眼対物)のような第2レンズは実質的に平凸であり、場合によっては、両凹であってもよい。先行技術とは逆に、本発明のある実施形態では、第2メニスカスレンズ2は、実質的に平凹レンズまたは両凹レンズよりむしろ「真の」メニスカスレンズである。
【0015】
条件式(2)を満たさない場合(例えば、r3が増加する一方、r2およびr4が維持されるために)、視野角115度におけるMTF@150lp/mmは減少する。FOVもまた減少し得る。
【0016】
条件式(3)は、第1メニスカスレンズ1の像側の曲率が第2メニスカスレンズ2の物体側の曲率より強いことを定義する。そのため、第2メニスカスレンズ2の頂点は第1メニスカスレンズ1から間隔を置いて配置される。条件式(3)は、第2メニスカスレンズ2の物体側の曲率が第1メニスカスレンズ1の像側の曲率に比べて無視できるほどではないことも定義する。条件式(2)について言及したように、先行技術では、第2レンズの物体側の面が通常実質的に平坦である(平凹レンズであるか両凹レンズでもある)。本発明のある実施形態では、第2メニスカスレンズ2の物体側の曲率は実質的に平坦であるとみなしてはならない。従って、第1メニスカスレンズ1の像側の面および第2メニスカスレンズ2の物体側の面は、ある種のメニスカス空気レンズを形成する。
【0017】
条件式(3)を満たさない場合(例えば、r2が減少する一方、r3およびr4が維持される場合、またはr3が増加する一方、r2およびr4が維持される場合)、視野角115度におけるMTF@150lp/mmは減少する。FOVもまた減少し得る。
【0018】
好ましくは、以下の条件式(1’)、(2’)および(3’)の少なくとも1つを満たす。
r2/r4≧1.55 (1’)
r4/r3≧0.131 (2’)
r2/r3≧0.20 (3’)
【0019】
より好ましくは、以下の条件式(1”)、(2”)および(3”)の少なくとも1つを満たす。
r2/r4≧1.64 (1”)
r4/r3≧0.152 (2”)
r2/r3≧0.24 (3”)
【0020】
さらに好ましくは、以下の条件式(1”’)、(2”’)および(3”’)の少なくとも1つを満たす。
r2/r4≧1.64 (1”’)
r4/r3≧0.19 (2”’)
r2/r3≧0.35 (3”’)
【0021】
好ましくは、以下の条件式の少なくとも1つを追加的に満たす。
1.98≧r2/r4 (4)
0.35≧r4/r3 (5)
0.65≧r2/r3 (6)
【0022】
条件式(4)~(6)の少なくとも1つを満たす場合、夫々のレンズを容易に製造し得ることを確実にする。つまり、これらの場合、夫々のレンズ面が半球である必要はない。さらに、条件式(5)および(6)を満たさない場合(例えば、r3が増加する一方、r4およびr2が一定である場合)、視野角が115度におけるMTF@150lp/mmは減少する。また、条件式(4)および(6)を満たさない場合(例えば、r2が増加する一方、r4およびr3が一定である場合)、視野角が115度におけるMTF@150lp/mmは減少し、FOVは口径食のために減少する。
【0023】
より好ましくは、以下の条件式の少なくとも1つを追加的に満たす。
1.94≧r2/r4 (4’)
0.32≧r4/r3 (5’)
0.61≧r2/r3 (6’)
【0024】
さらにより好ましくは、以下の条件式の少なくとも1つを追加的に満たす。
r2/r4≧1.90 (1””)
0.24≧r4/r3 (5”)
0.40≧r2/r3 (6”)
【0025】
本発明のある実施形態では、対物レンズは225度以上の視野を有する。好ましくは、視野は230度以上、または234度以上でもよい。一方、対物レンズの製造を容易にするために、視野は240度以下、好ましくは236度以下でもよい。
【0026】
なお、視野は第1メニスカスレンズの頂点から8mmの距離を有し、直径が2.08mm~2.18mmであるイメージサークルの領域により定義され、イメージサークル内の各位置における主光線角度は28度以下である。そのため、Omnivision(登録商標) OV5670のような従来の半導体イメージセンサが口径食なく画像を取り込むために使用され得る。
【0027】
本発明のある実施形態では、第1メニスカスレンズ1の物体側の半径をr1で表す場合、以下の条件式(7)を満たす。
4.0≦r1/r4≦7.6 (7)
【0028】
より好ましくは、以下の条件式(7’)および(7”)の1つを満たす。
4.0≦r1/r4≦6.0 (7’)
4.5≦r1/r4≦5.5 (7”)
【0029】
対物レンズを容易に内視鏡に組み込むためには、第1メニスカスレンズ1の直径は7mm以上であってはならない。しかしながら、たとえば対物レンズが内視鏡とは異なるものに使用される場合等、一般論としては第1メニスカスレンズ1の直径は制約されない。
【0030】
本発明のある実施形態では、第1メニスカスレンズ1および第2メニスカスレンズ2の屈折率の合計は、3.56以上であり、および/または第1メニスカスレンズおよび第2メニスカスレンズのアッベ数の合計は58以上である。屈折率は、587.6nmの波長に対する値である。アッベ数はvd=(n-1)/(n-n)として定義され、n、nおよびnは夫々、フラウンフォーファのd線、F線およびC線の波長に対する材料の屈折率(夫々587.6nm、486.1nmおよび656.3nm)である。好ましくは、屈折率の合計は、3.8以上またはさらには4以上である。応じて、アッベ数の合計は好ましくは60以上、より好ましくは70以上である。
【0031】
ある実施形態では、第1集光ユニット3は1枚、2枚または3枚のレンズを備える。例えば、第1集光ユニット3は、1枚の両凸レンズを備えてもよい。別の実施例として、第1集光ユニット3は、1枚の両凸レンズと物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとを備えてもよい。これらのレンズは接合されていてもよい。さらに別の選択肢として、第1集光ユニット3は、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズと平凸レンズとを備えてもよい。3枚のレンズの一例として、第1集光ユニット3は、1枚の両凹レンズと2枚の平凸レンズとを備えてもよく、両凹レンズと2枚の平凸レンズの一方とが接合されていてもよい。別の選択肢として、第1集光ユニット3は、平坦面同士が接合されていてもよい一枚の平凹レンズおよび一枚の平凸レンズと、一枚の平凸レンズとを備えてもよい。第1集光ユニットの構成は、これらの例に限定されない。
【0032】
同様に第2集光ユニット5は、2枚、3枚または4枚のレンズを備えてもよい。例えば、第2集光ユニット5は、接合され得る2枚または3枚のレンズを備える一個のユニット(接合レンズ)から構成されてもよい。このユニットは、色収差を修正し、主光線角度を確実に30度、好ましくは28度のような所定値以下にするためにも有益である。
【0033】
さらに、第2集光ユニット5は、単一レンズまたは二重レンズを備えるさらに別のユニットを備えてもよく、その別のユニットは、前述のユニットよりも開口絞り側に配置される。第2集光ユニットの構成は、これらの例に限定されない。
【0034】
本発明のある実施形態では、対物レンズは小さなディストーションを有する。例えば、1mm当たり300ラインペアでの変調伝達関数(MTF@300lp/mm)は、視野角が0度で13%よりも大きく(好ましくは15%よりも大きく)、MTF@150lp/mmは、視野角が115度で22%よりも大きく(好ましくは25%よりも大きく)、MTF@100lp/mmは、全視野角で45%よりも大きい(好ましくは50%よりも大きい)。
【0035】
本発明のある実施形態に係るセンサシステムは、上記した対物レンズと、対物レンズによってセンサ領域(感光領域)7上に形成された像を電気信号に変換するためのセンサデバイスとを含む。例えば、センサデバイスは、アレイ状に配置された多数の画素を含むCCDデバイスまたはCMOSデバイスでよい。画素のピッチは0.9μm~1.4μmでもよく、とりわけ1.12μmがよい。
【0036】
一般に、センサ装置は、センサ領域7を覆うカバーガラス6によって覆われる。この場合、カバーガラス6は、第2集光ユニット5とセンサ領域7との間に位置する。
【0037】
第1メニスカスレンズ1の頂点からセンサ領域7までのレンズを介した長さは、10mmを越えてはならない。このため、このセンサシステムはとりわけ内視鏡に適している。センサシステムは第1メニスカスレンズ1の頂点の8mm手前に位置する球面を撮像するように最適化され得る。この場合、イメージサークルはセンサ装置のセンサ領域7に適合するべきである。つまり、イメージサークルはセンサ領域7に含まれる。ある実施例では、イメージサークルは、2.08mm以上2.20mm以下の直径を有してもよい。
【0038】
しかしながら、ある実施例では、イメージサークルは、センサ領域7全体を含んでもよく、または、センサ領域7の大部分とイメージサークルとが一部重複(例えば70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上)してもよい。ある実施形態では、イメージサークルの直径をdiで表し、対物レンズの視野をFOVで表し、第1メニスカスレンズ1の直径をd1で表し、対物レンズのF値をFで表す場合、以下の条件式(8)を満たし得る。
55≦(di×FOV)/(d1×F) (8)
【0039】
さらに、以下の条件式(9)を満たし得る。
(di×FOV)/(d1×F)≦140 (9)
【0040】
ある実施形態では、条件式(8)の下限は、好ましくは60または64でもよい。ある実施例では、条件式(9)の上限は好ましくは135または131でもよい。
【0041】
条件式(8)によると、空間が特に有効に使用される。
【0042】
すでに数回述べるように、対物レンズとセンサ装置とは、管部と先端部とを備える内視鏡に使用され得る。先端部は管部の遠位端に配置される。先端部は前述のセンサシステムを含んでもよい。
【0043】
本願の文脈では、レンズという語を、前面と、後面と、1より大きい実効屈折率を有する媒体とを有する透明な物体であると定義する。屈折率はレンズ全体で(実質的に)均一である。通常、レンズ面は球面である。しかしながら、レンズ面は、夫々の半径の10%以下(好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下)だけ球面から外れる限り、非球面でもよい。通常、レンズの材料はガラスである。しかしながら、ある実施形態では、1枚以上のレンズはプラスチック製でもよい。
【0044】
前方のレンズ(第1メニスカスレンズ)は、好ましくは耐酸性および/または耐塩基性を有するべきである。前方のレンズは、好ましくは耐引っ掻き性を有するべきである。
【0045】
1枚以上のレンズが反射防止コーティング、耐酸性コーティング、耐塩基性コーティングおよび/または耐引っ掻き性コーティングを有してもよい。通常はこれらのコーティングはレンズの他の部分とは異なる屈折率を有するが、このコーティングがレンズの最大厚みの10%(好ましくは5%、より好ましくは1%)を超えない限り、コーティングもレンズの定義に含める。
【0046】
図3図10およびそれに対応する表1~8において、本発明の実施形態1~8をより詳細に特定する。これらの図の夫々は、本発明のある実施形態に係る対物レンズを備えたセンサシステムの断面図を示す。さらに、中央の光路とFOV周縁部の光路とを図示する。表は夫々のレンズのパラメータを示す。半径、面間隔および正味の直径をmm単位で示す。表9は、実施形態1~8に関する発明の該当するパラメータをいくつか集約する。表10は、本発明の実施形態1~8に関して使用されたガラスの屈折率とアッベ数とを示す。しかしながら、本発明はこれらのガラスに限定されない。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】
【0054】
【表8】
【0055】
【表9】
【0056】
【表10】
【0057】
以下の態様は当初発明に属する。
1.物体側から像側へ順に、
前記物体側に凸面を向けた第1メニスカスレンズと、
前記物体側に凸側を向けた第2メニスカスレンズと、
前記第2メニスカスレンズからの光を集光するように構成された第1集光ユニットと、
開口絞りと、
前記開口絞りからの光を集光するように構成された第2集光ユニットとからなり、
前記第2メニスカスレンズの頂点は、前記第1メニスカスレンズから間隔を置いて配置され、
前記第1集光ユニットおよび前記第2集光ユニットのレンズの総数は、4枚以上6枚以下であり、
前記第1メニスカスレンズの前記像側の半径をr2で表し、前記第2メニスカスレンズの前記物体側の半径をr3で表し、前記第2メニスカスレンズの前記像側の半径をr4で表す場合、以下の3つの条件式の少なくとも2つを満たす対物レンズ。
r2/r4≧1.40
r4/r3≧0.111
r2/r3≧0.16
2.以下の条件式の少なくとも1つを満たす第1の態様に記載の対物レンズ。
1.98≧r2/r4
0.35≧r4/r3
0.65≧r2/r3
3.以下の条件式の少なくとも1つを満たす第1の態様または第2の態様に記載の対物レンズ。
r2/r4≧1.64
r4/r3≧0.19
r2/r3≧0.35
4.以下の条件の少なくとも1つを満たす第1の態様から第3の態様のいずれか一つに記載の対物レンズ。
前記第1集光ユニットは、1枚のレンズ、2枚のレンズまたは3枚のレンズを備える。
前記第2集光ユニットは、3枚のレンズまたは4枚のレンズを備える。
5.前記対物レンズの視野が225度以上である第1の態様から第4の態様のいずれか一つに記載の対物レンズ。
6.前記第1メニスカスレンズの物体側の半径をr1で表す場合、以下の条件式を満たす第1の態様から第5の態様のいずれか一つに記載の対物レンズ。
4.0≦r1/r4≦7.6
7.屈折率を587.6nmの波長で定義する場合に、以下の条件の少なくとも1つを満たす第1の態様から第6の態様のいずれか一つに記載の対物レンズ。
前記第1メニスカスレンズの屈折率と前記第2メニスカスレンズの屈折率との合計が3.56以上である。
前記第1メニスカスレンズのアッベ数と前記第2メニスカスレンズのアッベ数との合計が58以上である。
8.前記第1メニスカスレンズの直径が7mm以下である第1の態様から第7の態様のいずれか一つに記載の対物レンズ。
9.第1の態様から第8の態様のいずれか一つに記載の対物レンズと、
前記対物レンズによってセンサ領域に形成された像を電気信号に光電変換するように構成されたセンサデバイスと、
前記センサ領域を覆うカバーガラスとからなるセンサシステムであって、前記カバーガラスが前記第2集光ユニットと前記センサ領域の間に配置されているセンサシステム。
10.前記センサ領域の上に配置された前記第1メニスカスレンズの頂点から8mmに位置するイメージサークルの領域が、前記センサ領域に含まれる第9の態様に記載のセンサシステム。
11.前記第1メニスカスレンズの頂点から前記センサ領域までの光路長が10mm以下である第10の態様に記載のセンサシステム。
12.前記イメージサークルの夫々の位置の主光線角度が30度以下である第11の態様に記載のセンサシステム。
13.前記イメージサークルの直径をdiで表し、前記対物レンズの視野をFOVで表し、前記第1メニスカスレンズの直径をd1で表し、前記対物レンズのF値をFで表す場合、以下の条件式を満たす第11の態様または第12の態様に記載のセンサシステム。
64≦(di×FOV)/(d1×F)
14.管部と、前記管部の遠位端にある先端部とを備える内視鏡であって、前記先端部は、第9の態様から第13の態様のいずれか一つに記載のセンサシステムを備える内視鏡。
図1
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【国際調査報告】