(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】間接式ヒートポンプを含む精留プラントで原油組成物を蒸留する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 3/32 20060101AFI20220921BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20220921BHJP
B01D 5/00 20060101ALI20220921BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B01D3/32 Z
B01D3/14 Z
B01D5/00 A
F25B1/00 396S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022504112
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2020069037
(87)【国際公開番号】W WO2021013529
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515169326
【氏名又は名称】ズルツァー マネジメント アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ズーバー、ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ニ、リン フェン
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076AA13
4D076AA22
4D076BB03
4D076BC02
4D076BC30
4D076CD33
4D076DA04
4D076DA33
4D076EA04Z
4D076EA05Z
4D076EA12Z
4D076HA20
4D076JA04
(57)【要約】
本発明は、原油組成物を精製する方法であって、方法は、ヘッド留分を凝縮するための塔頂凝縮器および底部留分を蒸発させるためのリボイラーを含む精留塔を含む精留プラント内での原油組成物の精留を含み、ヘッド留分の温度と底部留分の温度との間の差が最大で20℃であり、ヒートポンプが塔頂凝縮器とリボイラーとの間で作動し、ヒートポンプは、汚染を防ぐためにプロセスから完全に分離されており、ヒートポンプは、間接式ヒートポンプであり、冷媒として水またはメタノールで作動し、間接式ヒートポンプは、膨張弁および圧縮器を含み、ヒートポンプは、圧縮機の上流に配置された第2の凝縮器を含む、方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油組成物を精製する方法であって、前記方法は、
ヘッド留分を凝縮するための第1の塔頂凝縮器(16)および底部留分を蒸発させるためのリボイラー(14)を備える精留塔(12)を備える精留プラント(10)内での前記原油組成物の精留を含み、
前記ヘッド留分の温度と前記底部留分の温度との間の差が最大で20℃であり、
ヒートポンプ(18)が前記第1の塔頂凝縮器(16)と前記リボイラー(14)との間で作動し、
前記ヒートポンプ(18)は、間接式ヒートポンプ(18)であり、冷媒として水またはメタノールで作動し、
前記間接式ヒートポンプ(18)は、膨張弁(36)および圧縮器(32)を備え、
前記ヒートポンプ(18)は、前記圧縮機(32)の上流に配置された第2の凝縮器(40)を備える、方法。
【請求項2】
前記ヘッド留分の温度と前記底部留分の温度との間の前記差は、最大で15℃、好ましくは最大で10℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記底部留分の温度は、80℃~150℃、好ましくは85℃~105℃、より好ましくは90℃~100℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘッド留分の温度は、65℃~130℃、好ましくは75℃~95℃、より好ましくは80℃~90℃である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記原油組成物は、精製される成分として、シラン、好ましくはメチルクロロシラン、より好ましくはメチルトリクロロシランを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の塔頂凝縮器(16)は、シェルアンドチューブ流下膜式蒸発器(16)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記リボイラー(14)は、シェルアンドチューブ流下膜式蒸発器(14)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記間接式ヒートポンプ(18)は、前記第1の塔頂凝縮器(16)のチューブ側を前記リボイラー(14)のシェル側に接続する蒸気ライン(28)と、前記リボイラー(14)のシェル側を前記第1の塔頂凝縮器(16)のチューブ側に接続するコンデンセートライン(30)とを備え、前記蒸気ライン(28)は、圧縮機(32)を備え、前記コンデンセートライン(30)は、膨張弁(36)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記圧縮機(32)は、1つまたは複数のターボファン(32)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
入口ライン(38)が前記第1の塔頂凝縮器(16)のチューブ側を第2の凝縮器(40)に接続し、出口ライン(42)が前記第2の凝縮器(40)を前記第1の塔頂凝縮器(16)のチューブ側に接続し、残りの蒸気が前記第2の凝縮器(40)に送られ、凝縮され、コンデンセートが前記第1の塔頂凝縮器(16)に送り返されるようにする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記圧縮機(32)は、1つまたは複数のターボファンを含み、水またはメタノールの小さな液滴が前記ターボファン(32)を通って流れる蒸気に噴霧されて前記蒸気(32)の過熱を軽減するようにする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ヘッド留分を凝縮するための第1の塔頂凝縮器(16)、底部留分を蒸発させるためのリボイラー(14)、および前記第1の塔頂凝縮器(16)と前記リボイラー(14)との間で作動するヒートポンプ(18)を備える精留塔(12)を備える精留プラント(10)であって、前記ヒートポンプ(18)は、膨張弁(36)および圧縮器(32)を備える間接式ヒートポンプ(18)であり、前記ヒートポンプ(18)は、前記圧縮機(32)の上流に位置する第2の凝縮器(40)、前記第1の塔頂凝縮器(16)を前記第2の凝縮器(40)に接続する入口ライン(38)、および前記第2の凝縮器(40)を前記第1の塔頂凝縮器(16)に接続する出口ライン(42)を備える、精留プラント(10)。
【請求項13】
前記圧縮機(32)は、1つまたは複数のターボファン(32)を備える、請求項12に記載の精留プラント。
【請求項14】
前記第1の塔頂凝縮器(16)は、シェルアンドチューブ落下膜式蒸発器(16)であり、前記リボイラー(14)は、別のシェルアンドチューブ落下膜式蒸発器(14)である、請求項12または13に記載の精留プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精留プラントの塔頂凝縮器とリボイラーとの間で作動するヒートポンプを含む精留プラントにおける原油組成物の蒸留または精留を含む原油組成物を精製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
精留は、混合物の成分の揮発性の違いの効果的利用に基づく、選択的な沸騰および凝縮によって液体混合物から成分を分離するよく知られたプロセスである。精留は、例えば化学および石油化学産業で広く使用されている。精留中、精留塔のサンプに集まる液体留分はリボイラーで連続的に蒸発し、一方、精留塔のヘッドに集まる蒸気留分は凝縮器で連続的に凝縮される。
【0003】
プロセスのエネルギー消費を削減するために、すなわちプロセスのエネルギーバランスを改善するために、直接式ヒートポンプを使用できる場合がある。この配置では、蒸気ヘッド留分の凝縮中に凝縮器で生成される熱の一部が、リボイラー内の液体サンプ留分を蒸発させるために使用される。これは、蒸気ヘッド留分を引き出し、それを圧縮機に導き、そこで圧縮し、次にそれを圧縮機からリボイラーに導き、そこで圧縮された蒸気ヘッド留分は、熱をサンプ留分に伝達することによって凝縮し、それによってサンプ留分は蒸発する。しかしながら、このプロセスには、蒸気ヘッド留分が圧縮機に入らなければならないという主な欠点があり、これは、蒸気ヘッド留分、すなわち、精留プロセスの分離生成物のわずかな汚染をもたらす可能性がある。しかしながら、精留によって精製された複数の物質については、それらの物質のその後の適用のために非常に高い純度が必要とされる。例えば、メチルトリクロロシランなどのメチルクロロシランなどのシランは、重合プロセスで使用され、非常に高い純度である必要があり、さもなければ品質の問題につながるためである。
【0004】
このような不利な点を回避するために、間接式ヒートポンプを使用することが提案されている。このような間接式ヒートポンプは、冷凍ユニットで見られるのと同様の方法で使用することができ、冷媒としてアンモニアまたは他の化学物質を使用して作動することができる。しかしながら、特に精留プラントなどの大規模な工業システムで必要とされる大量の在庫を考慮すると、通常使用される冷媒は高価である。さらに、通常使用される冷媒の蒸発エンタルピーはかなり低く、それがかなり大きな質量流量を使用しなければならない理由である。さらなる特別な課題は、精留塔の底部温度とヘッド温度の差、すなわちヘッド留分の露点と底部留分の沸点の差は重要であり、メチルトリクロロシランなどのメチルクロロシランなどのシランの精留の場合のように、かなり低くなければならない中で、精留プロセス用のこのような間接式ヒートポンプを経済的に実現することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を考慮して、本発明の根底にある目的は、蒸気ヘッド留分凝縮器とサンプ留分リボイラーとの間でヒートポンプを使用することによって、装置の境界内でのエネルギー必要量が削減され、同等の低投資コストの精留プラントを必要とし、メチルトリクロロシランなどのメチルクロロシランなどのシランの精留において精留塔の底部温度とヘッド温度の差がかなり低い精留プロセスに特に適しているが、それにもかかわらず、非常に高い純度の精留生成物をもたらす、精留によって原油組成物を精製するためのプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、原油組成物を精製する方法であって、方法は、ヘッド留分を凝縮するための第1の(塔頂)凝縮器および底部留分を蒸発させるためのリボイラーを含む精留塔を含む精留プラント内での原油組成物の精留を含み、ヘッド留分の温度と底部留分の温度との間の差が最大で20℃であり、ヒートポンプが第1の(塔頂)凝縮器とリボイラーとの間で作動し、ヒートポンプは、間接式ヒートポンプであり、冷媒として水またはメタノールで作動し、間接式ヒートポンプは、膨張弁および圧縮器を含み、ヒートポンプは、圧縮機の上流に配置された第2の(好ましくはトリム)凝縮器を含む、方法を提供することによって満たされる。
【0007】
この解決策は、精留プラントの塔頂凝縮器とリボイラーとの間で間接式ヒートポンプを作動させ、間接式ヒートポンプ内で水またはメタノールを冷媒として使用することにより、エネルギー消費量が大幅に削減され、メチルトリクロロシランなどのメチルクロロシランなどのシランの精留など、精留塔の底部温度とヘッド温度の差がかなり小さい精留プロセスに特に適しており、蒸気ヘッド留分などの精留プロセス流とヒートポンプの冷媒などの流体との間に接触がないため、非常に高い純度の精留生成物を得ることができる、原油組成物を精製するプロセスが提供されるという驚くべき発見に基づいている。したがって、直接式ヒートポンプを使用する場合とは異なり、間接式ヒートポンプは蒸気ヘッド生成物ではなく異なる冷媒、つまり、水またはメタノールで作動するため、ヒートポンプの圧縮機内の蒸気ヘッド生成物の汚染は確実に回避される。水とメタノールの両方が比較的高い蒸発エンタルピーを有するので、ヒートポンプでは同等の低質量流量で十分であり、その結果、同等のコンパクトで費用効果の高いヒートポンプを使用することができる。同じ理由で、水またはメタノールで作動する間接式ヒートポンプは、精留プロセスで原油混合物を精製するために使用するのに特に適しており、この場合、ヘッド留分の温度と底部留分の温度の差は、最高で20℃である。したがって、本発明に係るプロセスは、精製される成分として、特にメチルトリクロロシランなどのメチルクロロシランなどのシランを含む原油組成物を精製するのに特に適している。さらに、トリム凝縮器は、ヒートポンプ固有の効率に起因する過剰なエネルギーを除去するために必要な追加の冷却を提供する。従来技術において、トリム凝縮器は、存在する場合、一般的に、冷媒に関する平均温度差を増加させ、それによってトリム凝縮器の必要な表面積を低下させるために、圧縮機の下流に設置される。しかしながら、本発明において、トリム凝縮器を、通常のように圧縮機の下流の代わりに、圧縮機の上流に配置することがより経済的であることが見出された。上流の配置でトリム凝縮器のより大きな表面が必要な場合でも、トリム凝縮器で圧縮される蒸気の流量は大幅に少なくなるため、運転コスト、ひいては精留プラントの総コストが削減される。
【0008】
本発明によれば、間接式ヒートポンプという用語は、冷媒が使用されるヒートポンプを意味し、これは、精留プロセスから派生しない、すなわち、精留プロセスで得られる留分、例えば蒸気ヘッド留分が、冷媒として使用されないヒートポンプである。
【0009】
さらに、本発明によれば、トリム凝縮器という用語は、(塔頂)凝縮器の後またはリボイラーの高温側の後に凝縮負荷を完了するために設置された凝縮器を意味する。文献では「二次凝縮器」と呼ばれることもある。そのサイズと負荷は、一般的に一次(塔頂)凝縮器よりも小さい。その負荷は、システム内の圧力を調整または「トリム」するように制御され得る。本発明において、トリム凝縮器の役務の大部分は、圧縮機によってシステムに追加されたエネルギーを除去することである。塔頂凝縮器とトリム凝縮器を明確に区別するために、塔頂凝縮器は第1の凝縮器または第1の塔頂凝縮器とも呼ばれ、一方でトリム凝縮器は第2の凝縮器とも呼ばれる。
【0010】
本発明によれば、間接式ヒートポンプは、冷媒として水またはメタノールを用いて作動される。冷媒は、好ましくは、水またはメタノールからなる、つまり、吸収された微量のガスを除いて、他の物質を含まない。
【0011】
好ましくは、間接式ヒートポンプは水で作動される。水は無毒であり、さらに75~200℃の範囲の温度で作動する精留に使用するのに適しているので、これは有利である。
【0012】
本発明に係るプロセスは、多数の理論的段階を必要とし、したがって、長い精留塔で実現されなければならない。したがって、塔内の圧力降下と分離タスクは、精留塔の上部と底部の間にこのような大きな温度差があることを示唆している。しかしながら、驚くべきことに、本発明において、このプロセスは、精留塔のヘッド留分の温度と底部留分の温度との差が最大で20℃、より好ましくは最大で15℃、最も好ましくは最大で10℃である精留に特に適していることが見出された。
【0013】
特に、本発明は、底部留分またはサンプ留分の温度がそれぞれ80℃~150℃、より好ましくは85℃~105℃、さらにより好ましくは90~100℃である精留に使用するのに適している。
【0014】
本発明のアイデアのさらなる発展によれば、プロセス中、ヘッド留分の温度は、少なくとも65℃~130℃、より好ましくは75℃~95℃、さらにより好ましくは80~90℃であることが提案される。
【0015】
上に示したように、本発明のプロセスは特に適切であり、したがって、好ましくはシランを精製するために、より好ましくはメチルクロロシランを精製するために、最も好ましくはメチルトリクロロシランを精製するために使用される。メチルトリクロロシランの蒸留には非常に高い純度が必要であり、作動温度は上記の範囲内である。
【0016】
間接式ヒートポンプを精留装置と容易に結合するために、塔頂凝縮器およびリボイラーの少なくとも1つ、より好ましくは両方がシェルアンドチューブ装置であることが特に好ましい。これは、例えば、塔頂凝縮器のチューブ側とリボイラーのシェル側を間接式ヒートポンプの冷媒で作動させ、一方で塔頂凝縮器のシェル側を精留塔の蒸気ヘッド留分で作動させ、リボイラーのチューブ側を精留塔の底部留分で作動させることにより、間接式ヒートポンプを塔頂凝縮器およびリボイラーと簡単に結合することを可能にする。
【0017】
塔頂凝縮器がシェルアンドチューブ流下膜式蒸発器である場合、特に良好な結果が得られる。流下膜式蒸発器のプロセス側では、精留塔のヘッド留分の蒸気が凝縮され、一方、ユーティリティ側では、熱伝達液体(水またはメタノール)が蒸発する。したがって、上部凝縮器は蒸発器でもある。流下膜式蒸発器を使用すると、従来の熱サイフォン式蒸発器よりもチューブ全体の温度差の小さい運転が可能となる。しかしながら、流下膜式蒸発器の投資コストとそれに伴う設備投資はわずかに増加する。しかしながら、圧縮コストおよびそれに伴う運用コストはそれによって劇的に減少するので、流下膜式蒸発器の使用は、全体として、本発明に係るプロセスで使用される精留プラントの全体的なコストを減少させる。好ましくは、プロセス中、流下膜式蒸発器のシェル側とチューブ側との間の平均温度差は、2℃~25℃の間であり、より好ましくは、5℃~12℃の間である。
【0018】
これと同様に、精留塔の底部にあるリボイラーは、シェルアンドチューブ流下膜式蒸発器であることが特に好ましい。好ましくは、プロセス中、リボイラーのシェル側とチューブ側との間の平均温度差は、2℃~25℃の間であり、より好ましくは、5℃~12℃の間である。
【0019】
好ましくは、間接式ヒートポンプは、第1の塔頂凝縮器のチューブ側をリボイラーのシェル側に接続する蒸気ラインと、リボイラーのシェル側を第1の塔頂凝縮器のチューブ側に接続するコンデンセートラインとを含み、蒸気ラインは、圧縮機を含み、コンデンセートラインは、膨張弁を含む。
【0020】
本発明のさらなる、特に好ましい一実施形態によれば、間接式ヒートポンプの圧縮機は、1つまたは複数のターボファンを含む。有利なことに、1つまたは複数のターボファンを使用すると、通常使用されるターボ圧縮機よりもはるかに安価であるため、圧縮機のコストを大幅に削減することができる。ターボファンの圧縮機の上流の圧力で割った圧縮機の下流の圧力として定義される圧力比に応じて、2つ、3つ、またはそれ以上のターボファンを直列に取り付けることができる。したがって、好ましくは、圧縮機は、1~5つ、より好ましくは、2~4つのターボファンを直列に含む。
【0021】
本発明によれば、ヒートポンプは、圧縮機の上流に配置された第2の凝縮器、好ましくはトリム凝縮器を含む。好ましくは、トリム凝縮器は、塔頂凝縮器と直列に配置される。
【0022】
本発明のアイデアのさらなる発展において、精留プラントは、入口ラインおよび出口ラインを含み、入口ラインが塔頂凝縮器のチューブ側をトリム凝縮器に接続し、出口ラインがトリム凝縮器を凝縮器のチューブ側に接続し、残りの蒸気がトリム凝縮器に送られ、凝縮され、コンデンセート(凝縮液)が塔頂凝縮器に送り返されるようにすることが提案される。
【0023】
本発明のさらに特に好ましい一実施形態によれば、圧縮後の蒸気の温度を下げるために、水またはメタノールの小さな液滴が、圧縮機を通って流れる蒸気にそれぞれ噴霧または注入される。圧縮は、圧縮機の下流で蒸気の過熱を引き起こし、これは、リボイラーにとっては問題であり、特に、過熱蒸気の冷却にはあまり効率的ではない流下膜式蒸発器がリボイラーとして使用される場合、問題である。圧縮機は、より高い設計温度用に設計されていると、圧縮機のコストが増加するため、蒸気をより低い温度で運転することも好ましい。したがって、圧縮された蒸気にそれぞれ水またはメタノールをそれぞれ噴霧または注入することが好ましい。水またはメタノールの液温は、それぞれ、好ましくはその沸点またはそれに近い必要がある。次に、噴霧または注入された液体の水またはメタノールは、それぞれ、高温の過熱された蒸気中で蒸発し、それによって蒸気を過熱解除する。露点に近い蒸気で流下膜式蒸発器として具体化されたリボイラーを作動させる場合、熱伝達が改善される。特に好ましくは、圧縮機は、この実施形態では、1つまたは複数のターボファンを含む。
【0024】
プロセスの開始時に、精留塔の底部留分を蒸発させるためにリボイラーで蒸気を使用することが有利である。特に、外部蒸気を使用することができ、圧縮機を始動する前にプラントを加熱することができる。圧縮機に問題がある場合は、リボイラーを蒸気加熱して精留プラントを作動させることも可能である。凝縮は、トリム凝縮器によって少なくとも部分的に保証され得る。トリム凝縮器に追加の設計予備力があれば、メンテナンス時など、圧縮機が作動していないときに上部蒸気を完全に凝縮することも可能である。
【0025】
本発明のさらなる一態様は、精留塔、ヘッド留分を凝縮するための塔頂凝縮器、底部留分を蒸発させるためのリボイラー、および塔頂凝縮器とリボイラーとの間で作動するヒートポンプを含む、精留プラントであって、ヒートポンプは、膨張弁および圧縮器を含む間接式ヒートポンプであり、ヒートポンプは、圧縮機の上流に位置するトリム凝縮器、塔頂凝縮器をトリム凝縮器に接続する入口ライン、およびトリム凝縮器を塔頂凝縮器に接続する出口ラインを含む、精留プラントである。
【0026】
圧縮機は、1つまたは複数のターボファン、より好ましくは1~5つ、最も好ましくは2~4つのターボファンを直列に含むことが好ましい。
【0027】
さらに、塔頂凝縮器は、ヒートポンプのユーティリティストリームがそのチューブ側にあるシェルアンドチューブ落下膜式蒸発器であり、底部留分を蒸発させるためのリボイラーは、ヒートポンプのユーティリティストリームがそのシェル側にあるシェルアンドチューブ落下膜式蒸発器であることが好ましい。
【0028】
続いて、本発明は、本発明の一実施形態を単に例示するものであり、全く限定するものではない図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、原油組成物を精製するためのプロセスのための精留プラントを概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
唯一の
図1は、例えば、特にメチルトリクロロシランなどのメチルクロロシランなどのシランを精製するための、本発明の一実施形態に係る、原油組成物を精製するためのプロセスのための精留プラント10のスキームを概略的に示している。
【0031】
精留プラント10は、精留塔12、リボイラー14、塔頂蒸気凝縮器16、および間接式ヒートポンプ18を含む。精留塔12は、原油シラン混合物を精留塔12に供給するための供給ライン19、精留塔12のヘッド22を塔頂蒸気凝縮器16に接続するヘッドライン20、ならびに精留塔12のサンプ26をリボイラー14に接続する底部ライン24を含む。リボイラー14と塔頂蒸気凝縮器16の両方は、シェルアンドチューブ流下膜式装置である。
【0032】
間接式ヒートポンプ18は、塔頂蒸気凝縮器16のチューブ側をリボイラー14のシェル側に接続する蒸気ライン28と、リボイラー14のシェル側を塔頂蒸気16のチューブ側に接続するコンデンセートライン30とを含む。圧縮機32が蒸気ライン28に配置されているのに対し、収集容器34および膨張弁36は、コンデンセートライン30に配置されている。圧縮機32は、直列に配置された2つのターボファンを含む。収集容器34は、補給流を供給するためのライン44および通気ライン46を含む。また、間接式ヒートポンプ18は、入口ライン38、トリム凝縮器40、および出口ライン42を含む。入口ライン38は、塔頂蒸気凝縮器16のチューブ側をトリム凝縮器40に接続し、出口ライン42は、トリム凝縮器40を塔頂蒸気凝縮器16のチューブ側に接続する。
【0033】
精留プラントの運転中、メチルトリクロロシランを含む原油混合物は、供給ライン19を介して精留塔12に供給され、そこで蒸留される。ヘッド留分、すなわち蒸気は、塔頂蒸気凝縮器16のシェル側への熱入力として、ヘッドライン20を介して入る。ヘッド留分の蒸気の露点は、精留塔12のサンプからリボイラー14に底部ライン24で圧送されたサンプ留分の液体の沸点よりも高いので、塔頂凝縮器16内のヘッド留分の蒸気とリボイラー14内の底部留分の液体との間の間接的な熱伝達が可能となり、それによってヘッド留分の蒸気の熱を利用することによって底部留分の液体を蒸発させるようにする。ヒートポンプ18の冷媒としての水は、精留塔12のヘッド22から来るヘッドライン20の蒸気の露点よりも水の沸点が低いため、塔頂凝縮器16のチューブ側で蒸発する。結果として、水は塔頂凝縮器16のチューブ側で蒸発する。チューブ側の液体循環は、ポンプがチューブ側の底部で液体を取り、それをチューブの上部に循環して戻すことによって保証される。そのように形成された蒸気は、蒸気ライン28を通って圧縮機32に流れる。蒸気の大部分は圧縮機32に吸い込まれる。圧縮機32は、リボイラー14のシェル側での凝縮を可能にするのに十分に高い露点温度に対応する圧力で蒸気を圧縮する。圧縮比(圧縮機の下流の圧力を圧縮機の上流の圧力で割ったものとして定義される)は、この場合、1.70~3.20の間、好ましくは2.10~2.70の間である。冷媒として水の代わりにメタノールを選択し、熱交換器で同じ温度差を使用する場合、圧縮比はわずかに小さくなる。リボイラー14および塔頂蒸気凝縮器16は、ほぼ同じ絶対負荷を有する。圧縮機32の効率は100%より低いので、塔頂蒸気凝縮器16で生成されたすべての蒸気を圧縮する必要はない。エネルギーの一部は、圧縮機32の非効率性によって提供され、次に、蒸気ライン28を通って流れる蒸気で運ばれる。顕熱の一部を潜熱に変換し、リボイラーのシェル側での熱交換を容易にするために、水が圧縮機32に注入される。残りの蒸気はトリム凝縮器40で除去される。
【0034】
圧縮された蒸気は、リボイラー14のシェル側に圧送される。リボイラー14と塔頂凝縮器16の両方は、シェルアンドチューブ流下膜式装置である。一方で塔頂蒸気凝縮器16のシェル側とチューブ側との間の平均温度差、および他方でリボイラー14のシェル側とチューブ側との間の平均温度差は、2℃~25℃の間、好ましくは5℃~12℃の間である。リボイラー14において、熱は、リボイラー14のシェル側を流れる蒸気から、リボイラー14のチューブ側を流れるサンプ留分の液体に伝達され、それにより、蒸気は凝縮し、サンプ留分の液体は蒸発する。チューブ側では、精留サンプ26の液体は、ポンプによってライン24を通ってリボイラー14内のチューブの上部へと循環される。シェル側のコンデンセートは、収集容器34に収集される。そこから、液体は、コンデンセートライン30を通って、膨張弁36を通って、塔頂蒸気凝縮器16のチューブ側に圧送される。塔頂蒸気凝縮器16のチューブ側の圧力は大気圧よりも低いので、いくらかの空気漏れが予想されなければならず、トリム凝縮器40はライン41を通して真空ユニットに通気されなければならない。それによって失われた冷媒は、収集容器34に供給される補給流44によって補償される。蒸気ライン28を介して圧送される蒸気に含まれ、大気圧より低い不活性ガス(主に空気漏れ)は、リボイラー14のシェル側で凝縮しない。したがって、それらは、通気ライン46を介して収集容器34から通気される必要がある。
【符号の説明】
【0035】
10 精留プラント
12 精留塔
14 リボイラー/(流下膜式)蒸発器
16 塔頂蒸気凝縮器/シェルアンドチューブ流下膜式蒸発器
18 間接式ヒートポンプ
19 供給ライン
20 ヘッドライン
22 精留塔のヘッド
24 底部ライン
26 サンプ
28 蒸気ライン
30 コンデンセートライン
32 圧縮機/ターボファン
34 収集容器
36 膨張弁
38 入口ライン
40 トリム凝縮器
41 真空ユニットへの通気ライン
42 出口ライン
44 補給流
46 通気ライン
【国際調査報告】