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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】高温複合ハニカム
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/12 20060101AFI20220921BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20220921BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20220921BHJP
   F02C 7/24 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
B32B3/12 B
G10K11/172
G10K11/16 110
F02C7/24 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504283
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 US2020041756
(87)【国際公開番号】W WO2021015971
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】16/518,528
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503308494
【氏名又は名称】ヘクセル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュ、ロバート チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ハイレ、メリド ミナッセ
(72)【発明者】
【氏名】アイル、アール フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】スミス、クラーク ラッセル
【テーマコード(参考)】
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AK49A
4F100AK50A
4F100AK53A
4F100BA01
4F100CB00A
4F100DC01A
4F100DG01A
4F100DG12A
4F100DH02A
4F100GB31
4F100JA13A
4F100JH01A
4F100JJ03A
4F100JL11A
4F100YY00A
5D061AA06
5D061AA22
5D061BB13
5D061DD11
(57)【要約】
狭い曲率半径および/または複合曲率を有し、高温環境での使用に適した複合ハニカム構造を形成するように輪郭成形することができる複合ハニカムが開示される。複合ハニカムの製造方法は、高温プリプレグを用いて、複合ハニカム前駆体に形成される可撓性複合ハニカムを製造することを含む。複合ハニカム前駆体に高温コーティング樹脂を適用して高温複合ハニカムを形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温環境での使用に適した複合ハニカムであって、前記複合ハニカムは、長手方向、幅方向および厚み方向を有し、前記複合ハニカムは、前記長手方向で測定された長手方向剪断強度および前記幅方向で測定された幅方向剪断強度を有し、前記複合ハニカムは、
第1の複数の交互の上部チャネルおよび上部ノードを含む複数の上部波形リボンであって、前記第1の複数が前記長手方向に延在し、前記上部チャネルの各々および前記上部ノードの各々が前記厚み方向に延在し、前記上部波形リボンの各々が第1の繊維状支持体および第1の高温樹脂マトリックスを含む、複数の上部波形リボンと、
第2の複数の交互の下部チャネルおよび下部ノードを含む複数の下部波形リボンであって、前記第2の複数が前記長手方向に延在し、前記下部チャネルの各々および前記下部ノードの各々が前記厚み方向に延在し、前記下部波形リボンの各々が第2の繊維状支持体および第2の高温樹脂マトリックスを含み、前記上部波形リボンおよび下部波形リボンが、前記幅方向に積み重ねられた上部波形リボンおよび下部波形リボンの交互層を含むハニカム構造を形成し、前記上部波形リボンのチャネルが、高温ノード接着剤を用いて前記下部波形リボンのノードに接着され、前記下部波形リボンのチャネルが、高温ノード接着剤を用いて前記上部波形リボンのノードに接着され、そうすることで複数のハニカムセルが形成され、前記ハニカムセルの各々が、前記厚み方向に延在し、前記ハニカムセルがそれぞれ、左側および右側を有し、前記ハニカムセルの各々が、ハニカムセル壁によって画定され、前記ハニカムセル壁が、前記ハニカムセルの前記左側と前記右側との間に延在する下壁と、前記ハニカムセルの前記左側と前記右側との間にも延在する上壁とを含み、前記下壁が、下側凹状左端部、下側凹状右端部、および前記下側凹状左端部と前記下側凹状右端部との間に位置する下側中央凸状部を含み、前記上壁が、上側凸状左端部、上側凸状右端部、および前記上側凸状左端部と前記上側凸状右端部との間に位置する上側中央凹状部を含み、前記下側凹状左端部および前記上側凸状左端部は、前記セルの左側に沿って左側接合部を形成するように接続され、前記下側凹状右端部および前記上側凸状右端部は、前記セルの右側に沿って右側接合部を形成するように接続され、前記ハニカム構造体は、未コーティングのハニカム密度を有する、複数の下部波形リボンと、
前記ハニカム壁を覆う高温コーティング樹脂であって、前記高温コーティング樹脂が、前記複合ハニカムの総重量の10~25重量%に等しい量で存在し、前記複合ハニカムが、3~6ポンド/立方フィート(48~96キログラム/立方メートル)の密度を有し、幅方向剪断強度が、前記長手方向剪断強度の少なくとも60%である、高温コーティング樹脂と
を含む、複合ハニカム。
【請求項2】
前記高温コーティング樹脂が、前記可撓性複合ハニカムの総重量の18~22重量%に等しい量で存在する、請求項1に記載の複合ハニカム。
【請求項3】
前記複合ハニカムが、4~5ポンド/立方フィート(64~80キログラム/立方メートル)の密度を有する、請求項2に記載の複合ハニカム。
【請求項4】
前記幅方向剪断強度が、前記長手方向剪断強度の少なくとも65%である、請求項3に記載の複合ハニカム。
【請求項5】
前記第1の繊維状支持体および前記第2の繊維状支持体がそれぞれ、140~160グラム/平方メートルの目付を有するガラスファブリックを含む、請求項1に記載の複合ハニカム。
【請求項6】
前記第1の繊維状支持体および前記第2の繊維状支持体がそれぞれ、145~155グラム/平方メートルの目付を有するガラスファブリックを含む、請求項4に記載の複合ハニカム。
【請求項7】
前記高温ノード接着剤、前記高温の第1の樹脂マトリックス、前記高温の第2の樹脂マトリックスおよび前記高温コーティング樹脂が、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、シアナートエステル樹脂、高温エポキシ樹脂、ポリイミド、フタロニトリルおよびポリアミドイミドからなる群から選択される、請求項1に記載の複合ハニカム。
【請求項8】
前記高温ノード接着剤、前記高温の第1の樹脂マトリックス、前記高温の第2の樹脂マトリックスおよび前記高温コーティング樹脂が、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、シアナートエステル樹脂、高温エポキシ樹脂、ポリイミド、フタロニトリルおよびポリアミドイミドからなる群から選択される、請求項4に記載の複合ハニカム。
【請求項9】
音響隔壁が、前記ハニカムセルのうちの1つ以上の中に配置されている、請求項1に記載の複合ハニカム。
【請求項10】
高温環境での使用に適した複合ハニカムを製造する方法であって、前記複合ハニカムは、長手方向、幅方向、および厚み方向を有し、前記複合ハニカムは、前記長手方向で測定された長手方向剪断強度および前記幅方向で測定された幅方向剪断強度を有し、前記方法が、
A)以下のものを含むハニカム前駆体を提供するステップであって、
a)第1の複数の交互の上部チャネルおよび上部ノードを含む複数の上部波形リボンであって、前記第1の複数が前記長手方向に延在し、前記上部チャネルの各々および前記上部ノードの各々が前記厚み方向に延在し、前記上部波形リボンの各々が第1の繊維状支持体および第1の高温樹脂マトリックスを含む、複数の上部波形リボンと、
b)第2の複数の交互の下部チャネルおよび下部ノードを含む複数の下部波形リボンであって、前記第2の複数が前記長手方向に延在し、前記下部チャネルの各々および前記下部ノードの各々が前記厚み方向に延在し、前記下部波形リボンの各々が第2の繊維状支持体および第2の高温樹脂マトリックスを含み、前記上部波形リボンおよび下部波形リボンが、前記幅方向に積み重ねられた上部波形リボンおよび下部波形リボンの交互層を含むハニカム構造を形成し、前記上部波形リボンのチャネルが、高温ノード接着剤を用いて前記下部波形リボンのノードに接着され、前記下部波形リボンのチャネルが、高温ノード接着剤を用いて前記上部波形リボンのノードに接着され、そうすることで複数のハニカムセルが形成され、前記ハニカムセルの各々が、前記厚み方向に延在し、前記ハニカムセルがそれぞれ、右側および左側を有し、前記ハニカムセルの各々が、ハニカムセル壁によって画定され、前記ハニカムセル壁が、前記ハニカムセルの前記左側と前記右側との間に延在する下壁と、前記ハニカムセルの前記左側と前記右側との間にも延在する上壁とを含み、前記下壁が、下側凹状左端部、下側凹状右端部、および前記下側凹状左端部と前記下側凹状右端部との間に位置する下側中央部を含み、前記上壁が、上側凸状左端部、上側凸状右端部、および前記上側凸状左端部と前記上側凸状右端部との間に位置する上側中央部を含み、前記下側凹状左端部および前記上側凸状左端部は、前記セルの左側に沿って左側接合部を形成するように接続され、前記下側凹状右端部および前記上側凸状右端部は、前記セルの右側に沿って右側接合部を形成するように接続され、前記ハニカム構造体は、未コーティングのハニカム密度を有する、複数の下部波形リボンと、
を含むハニカム前駆体を提供するステップ;ならびに
B)前記ハニカム壁を高温コーティング樹脂で覆って前記可撓性複合ハニカムを形成するステップであって、前記高温コーティング樹脂が、前記複合ハニカムの総重量の10~25重量%に等しい量で存在し、前記複合ハニカムが、3~6ポンド/立方フィート(48~96キログラム/立方メートル)の密度を有し、幅方向剪断強度が、前記長手方向剪断強度の少なくとも60%である、ステップ
を含む方法。
【請求項11】
前記高温コーティング樹脂が、前記複合ハニカムの総重量の18~22重量%に等しい量で存在する、請求項10に記載の複合ハニカムを製造する方法。
【請求項12】
前記複合ハニカムが、4~5ポンド/立方フィート(64~80キログラム/立方メートル)の密度を有する、請求項10に記載の複合ハニカムを製造する方法。
【請求項13】
前記幅方向剪断強度が、前記長手方向剪断強度の少なくとも65%である、請求項12に記載の複合ハニカムを製造する方法。
【請求項14】
前記第1の繊維状支持体および前記第2の繊維状支持体がそれぞれ、140~160グラム/平方メートルの目付を有するガラスファブリックを含む、請求項10に記載の複合ハニカムを製造する方法。
【請求項15】
前記第1の繊維状支持体および前記第2の繊維状支持体がそれぞれ、145~155グラム/平方メートルの目付を有するガラスファブリックを含む、請求項14に記載の複合ハニカムを製造する方法。
【請求項16】
前記高温ノード接着剤、前記高温の第1の樹脂マトリックス、前記高温の第2の樹脂マトリックスおよび前記高温コーティング樹脂が、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、シアナートエステル樹脂、高温エポキシ樹脂、ポリイミド、フタロニトリルおよびポリアミドイミドからなる群から選択される、請求項10に記載の複合ハニカムを製造する方法。
【請求項17】
前記高温ノード接着剤、前記高温の第1の樹脂マトリックス、前記高温の第2の樹脂マトリックスおよび前記高温コーティング樹脂が、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、シアナートエステル樹脂、高温エポキシ樹脂、ポリイミド、フタロニトリルおよびポリアミドイミドからなる群から選択される、請求項14に記載の複合ハニカムを製造する方法。
【請求項18】
前記ハニカムセルのうちの1つ以上の中に音響隔壁を配置する追加のステップを含む、請求項10に記載の複合ハニカムを製造する方法。
【請求項19】
前記ハニカム壁を前記高温コーティング樹脂で覆うことが、前記ハニカム壁に高温コーティング樹脂の第1の層を適用する第1の適用ステップと、前記高温コーティング樹脂の第1の層に高温コーティング樹脂の第2の層を適用する第2の適用ステップとからなる、請求項10に記載の複合ハニカムを製造する方法。
【請求項20】
前記ハニカム壁を前記高温コーティング樹脂で覆うことが、前記ハニカム壁に高温コーティング樹脂の第1の層を適用する第1の適用ステップと、前記高温コーティング樹脂の第1の層に高温コーティング樹脂の第2の層を適用する第2の適用ステップとからなる、請求項17に記載の複合ハニカムを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、一般に、狭い曲率半径および/または複合曲率を有し、高温での使用に適した複合ハニカム構造を形成するように輪郭成形することができる可撓性ハニカムに関する。より詳細には、本発明は、複合ハニカムの製造方法が、高温プリプレグを使用して、複合ハニカム前駆体に形成される可撓性複合ハニカムを製造することを含む、高温複合ハニカムに関する。次いで、複合ハニカム前駆体に高温コーティング樹脂を適用して、高温複合ハニカムを形成する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
複合ハニカムは、比較的強度があり軽量であるため、航空機および航空宇宙ビークルで使用するための一般材料である。複合ハニカムを製造するための1つの方法は、プリプレグを使用して、リボン方向に垂直に延在する交互のチャネルおよびノードを有する波形リボンを形成することを含む。波形リボンは、それらの波形形状を保持するように部分的にまたは完全に硬化されてもよい。プリプレグは、硬化性樹脂が予備含浸された繊維状支持体から構成される周知の材料である。波形プリプレグリボンは、積み重ねられ、整列され、互いに接合され、必要に応じて硬化されてハニカム前駆体を形成する。典型的には、複合ハニカムの様々な機械的特性を高めるために、コーティング樹脂の複数のコートがハニカム前駆体に適用される。
【0003】
ハニカムに典型的に使用される寸法命名法は、厚み方向またはセル深さ;厚み方向を横断する長手方向またはリボン方向;厚み方向および長手方向に垂直な幅方向とを含む。波形複合リボンの複数の交互のチャネルおよびノードは、長手方向またはリボン方向に互いに隣接して配置される。波形プリプレグリボンは、幅方向に積み重ねられる。チャネルおよびノードはそれぞれ、ハニカムの2つの縁部の間で厚み方向に延在して、セル深さを画定する。
【0004】
剪断強度は、複合ハニカムの重要な特性である。剪断強度は、ハニカムの各縁部に固定具を取り付け、固定具を介してハニカム縁部に剪断力を加えることによって測定される。典型的な剪断破壊モードは、剪断力がハニカムの剪断強度に達したときにハニカム壁が座屈するモードである。剪断力は、ハニカムの指向性剪断強度を測定するために、いくつかの異なる方向でハニカム縁部に加えられてもよい。例えば、ハニカムの長手方向剪断強さ(LSR)を測定するために、長手方向に剪断力が加えられる。幅方向の剪断(WSR)を測定するために、幅方向に剪断力が加えられる。複合ハニカムの長手方向縦剪断強さは、典型的には、幅方向剪断強さよりも高い。多くの場合、可撓性複合ハニカムのWSRは、LSRの50%以下に過ぎない。この剪断に対する非対称な耐性は、可撓性複合ハニカムを含む任意の構造を設計する際に重要な考慮事項である。
【0005】
多くの構造設計において、複合ハニカムは、長手方向のより高い剪断強度を利用するように配向される。しかしながら、複合ハニカムの剪断強度が可能な限り対称であることが望ましい、多くの状況が存在する。しかしながら、LSRに対してWSRを増加させようとするいかなる試みも、複合ハニカムを構成する様々な要素間の複雑な関係を考慮に入れなければならない。これらの要素は、プリプレグ繊維状支持体、プリプレグ樹脂マトリックス、波形リボンを互いに接合するために使用されるノード接着剤、およびコーティング樹脂を含む。加えて、複合ハニカムの密度、セルサイズ、セル形状、繊維状支持体重量、樹脂マトリックスの量およびハニカムに適用されるコーティング樹脂の量はすべて、ハニカムの剪断特性を決定する際に主要な役割を果たす。
【0006】
複合ハニカムのLSRとWSRとの関係は複雑で予測不可能である。複合ハニカムのどの要素および/または他の特性がLSRと比較してWSRを増加させるために変化し得るか、またはこのような相対的な増加が所与のタイプの複合ハニカムについて可能でさえあるかについてはほとんど知られていない。状況をさらに複雑にするのは、LSRに対してWSRを増加させようとするいかなる試みも、ハニカム密度を増加させたり、ハニカムの圧縮強度を低下させたり、ハニカムの幅方向の成形性を低下させたりするなど、ハニカムの他の特性に悪影響を与えることなく行う必要があるということである。
【0007】
六角形のセルを有する複合ハニカムは、航空宇宙産業において広く使用されている。このような六角形のハニカムは、剛性を持つ傾向にあり、セル壁を座屈させることなく湾曲した構造体に形成することは困難であり得る。ほとんどの場合、湾曲したハニカム構造体は、六角形の音響ハニカムの複数のセクションを互いに継ぎ合わせることによって作られる。狭い曲率半径および/または複合曲線を有する構造体に形成することができる可撓性ハニカムが利用可能である。Flex-Core(登録商標)ハニカムは、Hexcel Corporation社(アリゾナ州カサ・グランデ)から入手可能な可撓性ハニカムの一種である。Flex-Core(登録商標)ハニカムは、セル壁が凸曲部および凹曲部を含む独自のセル構成を有する。凸状および凹状のセル壁曲部の独自の組み合わせ、ならびにFlex-Core(登録商標)ハニカムの他のセル設計特徴は、ハニカムに可撓性および成形性を付与し、その結果、狭い半径および/または複合曲率を有する構造体を、セル壁を座屈させることなく、低減された背反曲率で形成することができる。
【0008】
ジェットエンジンのナセルのような音響用途では、ハニカム構造に音響材料を加え、ハニカムセルが、エンジンから離れた端部では固体の音不透過性シートまたはスキンで音響的に閉じられ、エンジンに近い端部では多孔質または穴を開けた音透過性カバーで覆われるようにする。このようにしてハニカムセルを音響材料で閉じることにより、ノイズの減衰、制動および/または抑制を提供する音響共振器が作り出される。音響隔壁も、通常、追加のノイズ減衰特性を有する共振器を提供するためにハニカムセルの内部に組み込まれる。
【0009】
Flex-Core(登録商標)ハニカムの固有の可撓性により、狭い曲率半径および/または複合曲率が必要とされるジェットエンジンのナセルなどの音響構造体の製造に使用するための望ましいハニカムが作られる。しかしながら、Flex-Core(登録商標)ハニカムの独特のセル構成は、セル内への隔壁キャップ型音響隔壁の挿入に関して複雑な課題を提示する。米国公開特許出願公開第2019/0024589A1号明細書は、Flex-Core(登録商標)ハニカムセル構成および同様のセル構成を有するハニカムに隔壁キャップ型音響隔壁が挿入される音響パネルを記載している。
【0010】
大型ジェットエンジンは、エンジン内の中央に配置された燃焼部または高温部を含む。高温部は、大量の高温燃焼ガスを生成する。高温部は、空気がはるかに低温で流れる環状通路によって囲まれている。高温部は、典型的には500°F~750°F程度の温度で動作する。
【0011】
高温部の近くに位置する音響ハニカムなどの複合ハニカム構造体は、高い動作温度に耐えることができなければならず、または熱ブランケットなどの断熱構造によって保護されなければならない。熱ブランケットは十分な断熱を提供するが、それらはまた貴重な空間を占め、重量を増加させる。さらに、典型的な熱ブランケットは耐用年数が限られているため、一定の期間ごとに交換しなければならない。熱ブランケットはまた、その下にある構造体の定期的な検査を可能にするために取り外さなければならない。この取り外しおよび再取り付けプロセスは時間がかかり、熱ブランケットが損傷することが多い。損傷した熱ブランケットの修理および/または交換には、かなりの時間およびコストがかかる可能性がある。
【0012】
熱ブランケットおよび他の断熱システムの使用を低減または排除するために、ハニカムは可能な限り高い動作温度を有することが望ましい。金属またはセラミック材料から作製されたハニカムは、非金属または非セラミック複合ハニカムよりも高い温度で動作することができる。しかしながら、非金属または非セラミック複合ハニカムが望まれる多くの状況が存在する。このような複合ハニカムは、350°F~500°Fの温度での長期使用が可能で、700°Fまでの短期使用も可能である。ハニカムは、六角形のセルを有し、プリプレグ樹脂マトリックス、ノード接着剤およびコーティング樹脂のためのポリイミド樹脂系と組み合わせてガラスファブリック繊維状支持体を利用する。このタイプのガラス繊維強化六方晶ポリイミドハニカムは、Hexcel Corporation社(アリゾナ州カサ・グランデ)からHexWeb(登録商標)HRH-327の商品名で入手可能である。
【0013】
HexWeb(登録商標)HRH-327は、350°F~500°Fの動作温度で使用する高温複合ハニカムとして適しており、700°Fまでの短期使用も可能であるが、六角形のセルおよび大量のディップ樹脂は、狭い曲率半径および/または複合曲率を必要とする構造への輪郭形成には剛性が高すぎる。
【0014】
狭い曲率半径および/または複合曲率への成形に必要な可撓性を有するFlex-Core(登録商標)ハニカムは、現在、高い動作温度(350°F~500°F)での使用に適した形態では利用できない。Flex-Core(登録商標)HRP-F35ハニカムは、Hexcel Corporation社(アリゾナ州カサ・グランデ)から現在入手可能な最高温度のFlex-Core(登録商標)ハニカムである。Flex-Core(登録商標)HRP-F35は、プリプレグ樹脂マトリックス、ノード接着剤およびコーティング樹脂のためのフェノール樹脂系と組み合わせてガラスファブリック繊維状支持体を利用する。Flex-Core(登録商標)HRP-F35ハニカムの最大有効使用温度は350°Fである。したがって、この種の可撓性ハニカムは、主に比較的低温の環境で使用されてきた。
【0015】
Flex-Core(登録商標)ハニカムのような、高温環境(350°F~500°F)での動作に適した可撓性ハニカムを提供することが望ましいであろう。また、このような高温可撓性ハニカムは、ハニカムの長手方向剪断強度に対して高い幅方向剪断強度を有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0016】
本発明によれば、高温樹脂系を使用して、Flex-Core(登録商標)ハニカムと同じまたは類似のセル構成を有するハニカムを作製することができ、得られた複合ハニカムが高温環境での動作に適していることが見出された。さらに、ハニカム全体の密度または圧縮強度に影響を与えることなく、高温ハニカムの長手方向剪断強度(LSR)と幅方向剪断強度(WSR)との相対的な差を最小化できることが見出された。ハニカム全体の密度を同じにするために、コーティング樹脂の量を減らし、繊維状支持体の目付(坪量)を増やすと、LSRとWSRとの差が小さくなることが見出された。
【0017】
本発明によれば、高温環境での使用に適した複合ハニカムが提供される。複合ハニカムは、長手方向、幅方向および厚み方向を有する。複合ハニカムは、それぞれが第1の複数の交互の上部チャネルおよび上部ノードを含む複数の上部波形リボンから構成され、ここで、上部チャネルの各々および上部ノードの各々は、厚み方向に延在する。上部波形リボンのそれぞれは、第1の繊維状支持体および第1の高温樹脂から構成される。複合ハニカムは、それぞれが第2の複数の交互の下部チャネルおよび下部ノードを含む複数の下部波形リボンをさらに含み、ここで、下部チャネルの各々と下部ノードの各々は、厚み方向に延在する。下部波形リボンのそれぞれは、第2の繊維状支持体および第2の高温樹脂から構成される。
【0018】
上部波形リボンおよび下部波形リボンは、幅方向に積み重ねられて、上部波形リボンおよび下部波形リボンの交互層から構成されるハニカム構造を形成する。上部波形リボンのチャネルは、下部波形リボンのノードに高温ノード接着剤で接着され、下部波形リボンのチャネルは、上部波形リボンのノードに高温ノード接着剤で接着され、そうすることで複数のハニカムセルが形成され、ここで、前述のハニカムセルのそれぞれは厚み方向に延在する。
【0019】
ハニカムセルはそれぞれ、左側および右側を有する。各ハニカムセルは、ハニカムの縁部の間で厚み方向に延在するハニカムセル壁によって画定される。各セルのハニカムセル壁は、ハニカムセルの左側と右側との間に延在する下壁と、ハニカムセルの左側と右側との間にも延在する上壁とを含む。下壁は、下側凹状左端部、下側凹状右端部、および下側凹状左端部と下側凹状右端部との間に位置する下側中央部を含む。上壁は、上側凸状左端部、上側凸状右端部、および上側凸状左端部と上側凸状右端部との間に位置する上側中央部を含む。下側凹状左端部および上側凸状左端部は、セルの左側に沿って左側接合部を形成するように接続され、下側凹状右端部および上側凸状右端部は、セルの右側に沿って右側接合部を形成するように接続される。
【0020】
3~6ポンド/立方フィート(48~96キログラム/立方メートル)の密度を有するハニカムは、複合ハニカムの総重量の10~25重量%に等しい量で存在する高温コーティング樹脂を含む。このような少量の高温コーティング樹脂を上記のハニカムセル構成と共に使用して、幅方向剪断強度が長手方向剪断強度の少なくとも60%、典型的には少なくとも65~70%である高温可撓性ハニカムを提供できることが見出された。
【0021】
本発明はまた、音響隔壁が複合ハニカムのセルに挿入される音響ハニカム、ならびに複合ハニカムおよび音響パネルを製造するために使用される方法に関する。
【0022】
本発明は、対称的な方向性剪断強度の増加の利点と高温環境で動作する能力とを組み合わせるので、可撓性複合ハニカムに関して特に有利である。これらの利点は、可撓性複合ハニカムの全体密度または圧縮強度に影響を及ぼすことなく達成される。
【0023】
本発明の上記ならびに多くの他の特徴および付随する利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】音響隔壁を含む本発明に従った例示的な高温ハニカムの斜視図を示す。
【0025】
図2図1に示す可撓性ハニカムからの単一セルの断面概略図を示す。
【0026】
図3】高温可撓性ハニカムを形成するために高温コーティング樹脂が適用および硬化される前の例示的なハニカム前駆体の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に従った複合ハニカムは、ハニカム成形性、高温性能および比較的対称的な方向性剪断強度の組み合わせが望まれる任意の状況で使用される。例示的な用途としては、高速航空機、高エネルギーレドームならびに構造的および音響的なジェットエンジンのインレット、ライナーおよびナセルで使用するためのサンドイッチパネルが挙げられる。複合ハニカムは、大型ジェットエンジンの内部や周辺に設置される音響構造体での使用に特によく適している。
【0028】
音響構造に使用するための例示的な高温ハニカムが、図1に全体的に10で示されている。高温音響ハニカム10は、長手方向(L)、幅方向(W)および厚み方向(T)を有する。高温音響ハニカム10は、本発明に従った高温複合ハニカム12と、音響隔壁14とを含む。隔壁14は、ハニカムが音響制動構造の一部として使用されているときにハニカム10に追加される。隔壁14は、多数の平面音響隔壁インサートをハニカムセル20に挿入して音響隔壁キャップを形成することによって形成され、これらの音響隔壁キャップは、最初に定位置で摩擦係止され、次いでセル壁に接着結合されて隔壁14を形成する。ハニカム12と同じセル構成を有するハニカムへの隔壁の挿入の詳細は、公開された米国特許出願公開第2019/0024589号明細書に記載されている。この公開された米国特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態は、ハニカム12が隔壁14を含む音響ハニカム10の一部である実施形態を含む。しかしながら、本発明はまた、隔壁14を含まない非音響複合ハニカムに関し、これを対象に含める。複合ハニカム12は、第1の縁部16と第2の縁部18とを有する。複合ハニカム12は、それぞれが左側22と右側24とを有する複数のセル20を形成する。セル20は、ハニカム12の第1の縁部16と第2の縁部18との間に延在している。
【0030】
ハニカム12は、上部波形リボン26から構成される。上部波形リボン26はそれぞれ、長手方向に互いに隣接して配置された交互の上部チャネル28および上部ノード30を有する。上部チャネル28およびノード30のそれぞれは、厚み方向に延在する。上部チャネル28はそれぞれ、中央に隆起した部分29を含む。上部波形リボン26はそれぞれ、第1の繊維状支持体および第1の高温樹脂マトリックスから構成される。
【0031】
ハニカム12はさらに、下部波形リボン32から構成される。下部波形リボン32はそれぞれ、交互の下部チャネル34と下部ノード36とを有し、これらも長手方向に互いに隣接して配置されている。下部チャネル34およびノード36のそれぞれは、厚み方向に延在する。下部チャネル34はそれぞれ、中央に隆起した部分35を含む。下部波形リボン32はそれぞれ、第2の繊維状支持体および第2の高温樹脂マトリックスから構成される。
【0032】
上部波形リボン26および下部波形リボン32は、上部波形リボン26および下部波形リボン32の交互層から構成されるハニカム12を形成する。これらの層は、上部チャネル28の隆起した中央部29が下部波形リボン32の下部ノード36に高温ノード接着剤で接着され、下部チャネル34の隆起した中央部35が高温ノード接着剤で上部波形リボン26の上部ノード30に高温ノード接着剤で接着されるように、幅方向に整列して積み重ねられる。
【0033】
ハニカムセル20のそれぞれは、ハニカムの縁部の間で厚み方向に延在するハニカムセル壁によって画定される。図2に示すように、ハニカムセル壁は、ハニカムセル20の左側22と右側24との間で長手方向に延在する下壁38と、またハニカムセル20の左側22と右側24との間で長手方向に延在する上壁40とを含む。
【0034】
下壁38および上壁40は、凸部および凹部を含む。上側および下側のセル壁内の様々な部分間の移行部のおおよその位置は、図2のハッシュマーク「w」、「x」、「y」および「z」によって示される。下壁38は、下側凹状左端部42、下側凹状右端部44、および下側凹状左端部42と下側凹状右端部44との間に位置する下側中央凸状部46を含む。上壁40は、上側凸状左端部48、上側凸状右端部50、および上側凸状左端部48と上側凸状右端部50との間に位置する上側中央凹状部52を有する。下側凹状左端部42および上側凸状左端部48は、前述のセルの左側に沿って左側接合部54を形成するように接続され、下側凹状右端部44および上側凸状右端部50は、右側接合部56を形成するように接続される。
【0035】
本発明の複合ハニカムは、ハニカム成形のいわゆる「コルゲート法」(“corrugation method”)を用いて作製されることが好ましい。コルゲート法は、プリプレグを波形複合リボンの層に形成することを含む。波形複合リボンがそれらの形状を保持することを保証するために、必要に応じて波形複合リボンを部分的に硬化させる。波形リボンは、様々な層のノードおよびチャネルが整列し、ノード接着剤と共に接合されてハニカム前駆体を形成するように積み重ねられる。コーティングまたはディップ樹脂をハニカム前駆体に適用して、狭い半径および/または複合曲率を有する構造を形成するように輪郭形成することができるように十分に可撓性であるコーティングされたハニカム前駆体を形成する。所望のハニカム形状が達成されると、コーティングされたハニカム前駆体が硬化されて、最終的な複合ハニカムが製造される。
【0036】
例示的な複合ハニカム前駆体12Pを図3に示す。図1に示す複合ハニカム12は、複合ハニカム前駆体12Pにコーティング樹脂を適用し、得られたコーティング済み前駆体を硬化させて複合ハニカム12を形成したものである。図3に示される複合ハニカムが図1に示される複合ハニカム12の前駆体12Pであることを示すために、図3の番号が「P」を含むことを除いて、図3および図1の識別番号は同じである。
【0037】
コーティング樹脂の適用に先立って、前駆体12Pは、未コーティングのハニカムの密度を有する。未コーティングのハニカムの密度と複合ハニカム12の密度との差(ΔD)は、コーティング樹脂の量によって決まり、その量に等しい。コーティング樹脂は、典型的には、所望のコーティング樹脂の溶液を含む浸漬槽に未コーティング前駆体12Pを浸漬することによって適用される。コーティングされた前駆体を浸漬槽から取り出し、次いで硬化させる。この浸漬手順は、所望の量のコーティング樹脂が適用されるまで繰り返される。
【0038】
各浸漬サイクルに必要な硬化プロセスは、時間がかかり、費用がかかる。したがって、浸漬サイクルの数は、1~4回の浸漬サイクルに限定されることが好ましく、2回の浸漬サイクルが特に好ましい。3~6ポンド/立方フィート(48~96キログラム/立方メートル)の密度を有する複合ハニカムの場合、ΔDは、0.3~1.5ポンド/立方フィート(4.8~24キログラム/立方メートル)の範囲であることが好ましい。4~5ポンド/立方フィート(64~80キログラム/立方メートル)の密度を有する複合ハニカムの場合、好ましいΔDは、0.4~1.2ポンド/立方フィート(6.4~19キログラム/立方メートル)である。ハニカムの総重量に関して、コーティング樹脂は、ハニカムの総重量の10~25重量%に等しい量で存在すべきである。好ましくは、コーティング樹脂の量は、ハニカムの総重量の18~22重量%に等しい。
【0039】
上下の波形リボンを作製するために用いられるプリプレグは、繊維状支持体と未硬化の高温樹脂とを含む。上部波形リボンの第1の繊維状支持体は、下部波形リボンの第2の繊維状支持体と同じであることが好ましい。繊維状支持体は、高温(350°F~700°F)に耐えることができなければならない。適切な繊維状支持体としては、炭素繊維、ガラス繊維およびセラミック繊維が挙げられる。ガラス繊維(glass fibers)が好ましい。繊維状支持体は、織布または不織布の形態であってもよい。ガラス繊維の織布(woven glass fibric)が好ましい。4~5ポンド/立方フィート(64~80キログラム/立方メートル)の密度を有するハニカムの場合、好ましいガラスファブリック(glass fibric)は、140~160グラム/平方メートル(gsm)の目付、より好ましくは145~155gsmの目付を有する。
【0040】
上下の波形リボンに用いられる未硬化の高温樹脂は同じであることが好ましい。高温樹脂は、350°F~500°F、好ましくは350°F~700°Fの使用温度に耐えることができなければならない。適切な高温樹脂としては、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、シアナートエステル樹脂、高温エポキシ樹脂、ポリイミド、フタロニトリルおよびポリアミドイミドが挙げられる。例示的なポリイミドは、商品名SKYBOND(登録商標)700および705でIndustrial Summit Technology Corporation社(ニュージャージー州パーリン)から入手可能である。他の例示的なポリイミドは、Unitech RP46およびRP50であり、これらはUnitech Corporation社(バージニア州アーリントン)から入手可能である。例示的なポリアミドイミドは、商品名Torlon(登録商標)A-10でSolvay Specialty polymers社(ジョージア州アルファレッタ)から入手可能である。例示的なベンゾオキサジンとしては、Huntsman社(テキサス州ウッドランズ)から入手可能なXU35910ベンゾオキサジンが挙げられる。例示的なビスマレイミドとしては、Huntsman社(テキサス州ウッドランズ)からも入手可能なMATRIMIDビスマレイミドが挙げられる。例示的なシアナートエステル樹脂としては、Lonza社(ジョージア州アルファレッタ)から入手可能なPRIMASETシアナートエステル樹脂が挙げられる。例示的な高温エポキシ樹脂としては、Cotronics Corporation社(ニューヨーク州ブルックリン)から入手可能なDURALCO4703が挙げられる。例示的なフタロニトリル樹脂は、公開された米国特許出願第2014/0378942号明細書に記載されている。例示的なフタロニトリル樹脂は、商品名MVK-3でMaverick社(オハイオ州ブルー・アッシュ)から市販されている。例示的なフタロニトリル樹脂は、Renegade Materials Corporation社(オハイオ州スプリングボロ)およびJFC Technologies社(ニュージャージー州バウンド・ブルック)からも入手可能である。
【0041】
波形リボンを形成するために使用されるプリプレグ中の高温樹脂の量は、複合ハニカムの波形リボン中の高温樹脂マトリックスの量が波形リボン重量の15~20重量%であるような量でなければならない。典型的には、プリプレグ中の未硬化の高温樹脂の重量(樹脂含有量)は、ハニカム波形リボン中の高温樹脂マトリックスの重量の量(樹脂マトリックス含有量)とほぼ同じになる。プリプレグの好ましい樹脂含有量は15~30重量%である。20~25のプリプレグ樹脂含有量が特に好ましい。
【0042】
複合波形リボンチャネルを波形リボンノードに結合するために使用されるノード接着剤は、350°F~500°F、好ましくは350°F~700°Fの使用温度に耐えることができる高温ノード接着剤でなければならない。プリプレグ樹脂として用いられる上記の例示的な高温樹脂は、高温ノード接着剤として用いられてもよい。必要に応じて、プリプレグ樹脂と同じ高温樹脂をノード接着剤として使用してもよい。
【0043】
コーティング樹脂はまた、350°F~500°F、好ましくは350°F~700°Fの使用温度に耐えることができる高温コーティング樹脂でなければならない。プリプレグ樹脂として使用される例示的な高温樹脂は、高温コーティング樹脂として使用されてもよい。必要に応じて、プリプレグ樹脂と同じ高温樹脂をノード接着剤およびコーティング樹脂として使用してもよい。プリプレグ樹脂、ノード接着剤、およびコーティング樹脂が同じでない例示的な組み合わせには、ポリイミドプリプレグ樹脂/ポリイミドノード接着剤/ポリアミドイミドコーティング樹脂;およびポリアミドイミドプリプレグ樹脂/ポリイミドノード接着剤/ポリイミドコーティング樹脂が含まれる。
【0044】
3~6ポンド/立方フィート(48~96キログラム/立方メートル)の密度を有するハニカムの場合、セルの断面積は、典型的には、0.5平方インチ~0.2平方インチの範囲である。音響用途では、セルの深さ(ハニカムまたはコアの厚みT)は、一般に0.25~3インチの範囲である。波形リボンの壁厚は、通常、0.005~0.01インチの範囲である。ジェットエンジンのナセルの場合、複合ハニカムセルは、典型的には、約0.1~0.5平方インチの断面積、約0.025~0.05インチの壁厚、および約1.0および2.0インチの深さを有する。好ましい高温複合ハニカムは、4~5ポンド/立方フィート(64~80キログラム/立方メートル)の密度を有し、0.08~0.12平方インチのセルサイズを有し、これは、幅方向における1フィート長に30~40個のセルに相当する。
【0045】
音響インサート14がハニカム12に含まれる場合、音響インサートは、隔壁キャップを形成するために使用され得る標準的な音響材料のいずれかであり得る。これらの音響材料は、典型的には、比較的薄いシートに穴を開けたものや、多孔質のものであったり、またはノイズの減衰を提供するように設計されたオープンメッシュファブリックであったりする。隔壁が複合ハニカムセル内に配置される前または後のいずれかに、中実シート材料に穿孔が形成される。350°F~500°F、好ましくは350°F~700°Fの使用温度に耐えることができるのであれば、任意の適切な金属、セラミック、またはプラスチックの音響材料を使用することができる。音響材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)または高温用途に適した同様の耐化学性ポリマー材料であることが好ましい。PEEKのシートまたはフィルムは、VICTREX(登録商標)PEEK(商標)ポリマーの商品名でPEEKのシートを製造するVictrexUSA社(サウスカロライナ州グリーンビル)などのいくつかの供給元から入手可能である。PEEKフィルムの代わりにKAPTON(登録商標)ポリイミドフィルムを使用してもよい。KAPTON(登録商標)ポリイミドフィルムは、DuPont Chemical Company社(ミシガン州ミッドランド)から入手可能である。
【0046】
隔壁材料として中実フィルムを使用する場合、キャップの平面部分の全境界内でフィルムに穴が開けられる。穴は、レーザーまたは他の適切な穴開けシステムを使用して開けられてもよい。PEEK製のオープンメッシュモノフィラメントファブリックは、高温用途に好ましい。オープンメッシュモノフィラメント音響ファブリックのシートは、SEFAR PETEX、SEFAR NITEXおよびSEFAR PEEKTEXの商品名でSEFAR America Inc.社(ニューヨーク州バッファロー)から入手可能である。
【実施例
【0047】
例は以下の通りである。
【0048】
プリプレグの繊維状支持体が目付150gsmのガラス繊維の織布である複合ハニカムを調製した。プリプレグ用の高温樹脂は、約500°Fの最高使用温度を有するTorlon(登録商標)A-10ポリアミドイミド(PAI)であった。プリプレグの樹脂含有量(RC)は、プリプレグの総重量に対して23重量%であった。このプリプレグを用いて、ハニカム前駆体を形成する際に上下両方の波形リボンとして用いられる波形リボンを作製した。プリプレグのシート(29インチ×20インチ)を、Flex-Core(登録商標)HRPハニカムで使用されるのと同じ構成である、図1および図3に示す波形構成と一致する波形リボン構成に形成した。波形プリプレグを520°Fで120分間部分硬化させて波形形状を設定した。
【0049】
Torlon(登録商標)A-10ポリアミドイミド(PAI)を、部分的に硬化した波形プリプレグの適切なノードに適用した。PAIノード接着剤を、ノードに沿って約0.3ポンド/立方フィートの速度で適用した。部分的に硬化した波形プリプレグを積み重ね、整列させ、400°Fで30分間硬化させて、ハニカム前駆体を形成した。ハニカム前駆体は、3.55ポンド/立方フィート(pcf)(56.9キログラム/立方メートル(Kg/m))の密度を有していた。ハニカム前駆体を、N-メチルピロリドン(NMP)に溶解したPAIを含む溶液に浸漬することにより、ハニカム前駆体に高温コーティング樹脂を適用した。この溶液からハニカム前駆体を取り出し、400°Fで90分間乾燥/硬化させた。
【0050】
浸漬/乾燥手順を2回行うことで、密度4.0pcf(64Kg/m)の第1のハニカム例(第1の例)を形成した。コーティングステップ中により重いコーティングを適用しながら浸漬/乾燥手順を2回行うことで、4.7pcf(75Kg/m)の密度を有する第2の例示的なハニカム(第2の例)を形成した。第1のハニカムにおけるコーティング樹脂の密度は、0.45pcf(7.2Kg/m)であり、全複合ハニカム重量の11重量%(コーティング樹脂含有量11%)であった。第2のハニカムにおけるコーティング樹脂の密度は、1.15pcf(18.4Kg/m)であり、全複合ハニカム重量の24重量%(コーティング樹脂含有量24%)であった。繊維状支持体の目付(gsm)とコーティング樹脂の含有量(第1の例示ハニカムについてのcoating resin content:CRC)との比は、13.6:1であった。第2の例示的なハニカムについての繊維状支持体の目付(gsm)とCRCとの比は(6.2:1)であった。
【0051】
2つの例示的な複合ハニカムの長手方向剪断強度(LSR)、幅方向剪断強度(WSR)および安定化圧縮強度(SCR)を、標準的な剪断評価手順(ASTM C273)および安定化圧縮試験(ASTM C365)を用いて室温で測定した。第1の例示的なハニカムの場合では、SCRは約480ポンド/平方インチ(psi)であり、LSRは約210psiであり、WSRは約140psiであった。WSRはLSRの約67%であった。第2の例示的なハニカムについて、SCRは約750psiであり、LSRは約260psiであり、WSRは約170psiであった。WSRはLSRの約65%であった。
【0052】
比較のために、Flex-Core(登録商標)HRP-F35-4.5複合ハニカムもSCR、LSRおよびWSRについて試験した。Flex-Core(登録商標)HRP-F35-4.5ハニカムは、長手方向に35セル/フィート長および4.5pcf(72Kg/m)の密度を有する。HRP-F35-4.5ハニカムを作製するために使用されるプリプレグは、107gsmの目付を有するガラス繊維の織布および350°Fの上限温度を有するフェノール樹脂から構成される。コーティング樹脂として同じフェノール樹脂を使用し、ノード接着剤としてポリアミドイミドを使用した。HRP-F35-4.5ハニカムのコーティング樹脂含有量(CRC)は、平均で約28重量%(コーティング樹脂含有量28%)である。繊維状支持体の目付(gsm)とFlex-Core(登録商標)HRP-F35-4.5複合ハニカムのCRCとの比は3.8:1であった。
【0053】
Flex-Core(登録商標)HRP-F35-4.5複合ハニカムのSCRは約600psiであり、LSRは約300psiであり、WSRは約145psiであった。WSRはLSRの約48%であった。
【0054】
HRP-F35-4.5ハニカムのLSRは、HRP-F35-4.5ハニカムのコーティング樹脂含有量(CRC)がより高いことから予想されるように、2つの例示的な高温複合ハニカムのLSRよりも高かった。しかしながら、2つの例示的な複合ハニカムのWSRがHRP-F35-4.5ハニカムのWSRよりも高いことは予想外であった。その結果、2つの例示的なハニカムは、HRP-F35-4.5ハニカム(WSR=LSRの48%)よりも方向性剪断強度において実質的に対称性が高かった(WSR=LSRの65またはLSRの67%)。
【0055】
本発明に従って対称方向性剪断強度を達成するために、繊維状支持体重量(gsm)とコーティング樹脂の重量%との比(FAW:CRC)は、15:1~5:1の範囲であるべきである。上記の例から分かるように、第1の例は、13.6:1のFAW:CRCを有する比較的高い対称剪断強度(WSR=LSRの67%)を提供する。第2の例はまた、6.2:1のFAW:CRCを有する比較的高い対称剪断強度(WSR=LSRの65%)を提供する。CRCが比較的小さいため、第1の例のSCR(480psi)は、第2の例(SCR=750psi)よりも実質的に低かった。したがって、比較的高いSCRが望まれる場合、高温複合ハニカムのFAW:CRCは、範囲の下端、好ましくは10:1~6:1であることが好ましい。
【0056】
繊維状支持体およびCRCの目付は、高温複合ハニカムのFAW:CRCが高い対称剪断強度および高いSCRの組み合わせを提供するようなものであることが好ましい。高い対称剪断強度と高いSCRとを組み合わせて得るための例示的なFAW:CRC範囲は、8:1~7:1である。複合リボンが異なる目付を有する繊維状支持体から構成される状況では、ハニカムのFAWは、異なる繊維状支持体の目付の加重平均である。
【0057】
このように本発明の例示的な実施形態を説明してきたが、当業者であれば、開示内は例示的なものにすぎず、本発明の範囲内で様々な他の代替形態、適合形態、および修正形態を行うことができることに留意されたい。したがって、本発明は、上述の実施形態によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】