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特表2022-542148脳動脈からの吸引力を向上させるカテーテルシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】脳動脈からの吸引力を向上させるカテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3207 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
A61B17/3207
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505246
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 CA2020051026
(87)【国際公開番号】W WO2021012058
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】62/878,652
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/029,401
(32)【優先日】2020-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522032763
【氏名又は名称】エムジー ストローク アナリティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ゴヤル マヤンク
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE21
4C160EE30
4C160MM36
(57)【要約】
本発明は、虚血性脳卒中の治療における血管内/神経介入処置中に脳にアクセスするためのカテーテルシステム及び方法について説明する。より具体的には、脳血管への迅速かつ改善されたアクセスと、中血管又は大血管の閉塞による急性虚血性脳卒中の患者の脳血管にアクセスし、そこから血餅を吸引するプロセスの改善とを可能にするカテーテルシステムを説明する。本発明のカテーテルは、患者の脳内の頸動脈及び脳動脈へのアクセスを獲得し、前記脳動脈から頭蓋内血餅を吸引するために、遠位先端区間及び近位区間を有するカテーテル本体を備え、前記カテーテル本体が、120cm超の前記カテーテル本体の長さと、12~30cmの前記遠位先端区間の長さと、6F超10F未満の外径(OD)と、を有する。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脳の頸動脈及び脳動脈へのアクセスを獲得し、前記脳動脈から1つ以上の頭蓋内血餅を吸引するための血管内処置に使用するための遠位入口ポイント(DEP)~脳吸引(D2BA)カテーテルであって、前記DEPと前記脳の前記脳動脈との間の前記患者のヒト血管内に配置するための前記D2BAカテーテルは、
脳動脈のレベル1又はレベル2の動脈セグメント又は同等部位から上頸動脈血管まで伸びるのに十分な遠位長さを有する軟質遠位先端領域であって、前記脳動脈の前記レベル1又はレベル2の動脈セグメントを通る動きを可能にする硬度、及び6F~10Fの外径(OD)を有する、軟質遠位先端領域と、
前記軟質遠位先端領域の硬度よりも大きな硬度を有する近位領域であって、前記DEPを介して前記患者の外側まで伸びるのに十分な長さを有する、近位領域と、
を備え、
前記D2BAカテーテルは、前記D2BAカテーテルを介する吸引を可能にして、前記1つ以上の血餅を除去する、D2BAカテーテル。
【請求項2】
前記軟質遠位先端領域及び前記近位領域が十分な柔軟性と、軸方向及び半径方向の圧縮剛性とを有し、前記軟質遠位先端領域をガイドワイヤ(GW)及び診断用カテーテル(DC)の上で前進させ、外部支持カテーテルなしで前記軟質遠位先端領域の遠位先端を上部頸部/頭蓋底部近傍の位置に配置することができる、請求項1に記載のD2BAカテーテル。
【請求項3】
前記軟質遠位先端領域及び前記近位領域が十分な柔軟性と、軸方向及び径方向の圧縮剛性とを有し、前記軟質遠位先端領域がガイドワイヤ(GW)と診断用カテーテル(DC)の上で前進した上部頸部/頭蓋底部近傍の位置にあるとき、前記ガイドワイヤと前記診断用カテーテルを抜去しても前記D2BAカテーテルが頸動脈から脱出しない、請求項1又は請求項2に記載のD2BAカテーテル。
【請求項4】
前記軟質遠位先端領域及び前記近位領域が十分な柔軟性と、軸方向及び半径方向の圧縮剛性とを有し、前記GW及び前記DCが抜去されたとき、マイクロワイヤ(MW)及び統合型支持カテーテル(ISC)は前記D2BAカテーテルを介して前記遠位先端に前進させることができ、前記D2BAは前記MW及び前記ISCの上で、さらに前進し、前記遠位先端が血餅に隣接する脳動脈壁と実質的に係合する位置に至る、請求項1~3のいずれか一項に記載のD2BAカテーテル。
【請求項5】
前記D2BAカテーテルが0.013インチ以下の肉厚を有する、請求項1に記載のD2BAカテーテル。
【請求項6】
前記D2BAカテーテルの外径(OD)が7Fであり、前記遠位長が上頸動脈血管から中大脳動脈レベル2セグメントまで、又は遠位頸椎動脈から脳底動脈又は同等部位まで伸びる、請求項1~5のいずれか一項に記載のD2BAカテーテル。
【請求項7】
前記遠位長が17~25cmである、請求項6に記載のD2BAカテーテル。
【請求項8】
前記D2BAカテーテルの外径(OD)が8Fであり、前記遠位長が上頸動脈血管から中大脳動脈の遠位レベル1セグメントまで伸びる、請求項1~5のいずれか一項に記載のD2BAカテーテル。
【請求項9】
前記遠位長が15~23cmである、請求項8に記載のD2BAカテーテル。
【請求項10】
前記D2BAカテーテルの外径(OD)が9Fであり、前記遠位長が上頸動脈血管から中大脳動脈の近位レベル1セグメント又は同等部位まで伸びる、請求項1~5のいずれか一項に記載のD2BAカテーテル。
【請求項11】
前記遠位長が13~21cmである、請求項10に記載のD2BAカテーテル。
【請求項12】
前記D2BAカテーテルの外径(OD)が10Fであり、前記遠位長が上頸動脈血管から内頸動脈の遠位セグメント又は同等部位まで伸びる、請求項1~5のいずれか1項に記載のD2BAカテーテル。
【請求項13】
前記遠位長が12~16cmである、請求項12に記載のD2BAカテーテル。
【請求項14】
前記軟質遠位先端領域は、前記D2BAカテーテルの特定の直線位置に対して軸方向の硬度及び柔軟性を提供する組成物を有する少なくとも1つのポリマー区間を備え、
前記近位領域は、前記D2BAカテーテルの特定の直線位置に対して軸方向の硬度及び柔軟性を提供する組成物を有する少なくとも1つのポリマー区間を備える、
請求項1~13のいずれか一項に記載のD2BAカテーテル。
【請求項15】
前記D2BAカテーテルは、前記近位ゾーンに加えられたトルクが前記遠位ゾーンの遠位先端に伝達されて血管内での前記遠位先端の回転運動を可能にするねじり剛性を有し、前記遠位先端が前記D2BAカテーテルの垂直断面に対して10~30°の範囲で斜めの角度を規定する、請求項1~14のいずれか一項に記載のD2BAカテーテル。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のD2BAカテーテルと、
前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有する第二の吸引カテーテルであって、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端に隣接して配置することを可能にし、前記D2BAカテーテル内にある間に前記第二の吸引カテーテルを介して血餅の近位縁に吸引圧力を加えるように構成される前記第二の吸引カテーテルと、
を備える、血管内カテーテルシステム。
【請求項17】
前記第二の吸引カテーテルが近位端と近位端ロックを有し、前記近位端ロックが前記D2BAカテーテルの近位領域と係合可能で、前記第二の吸引カテーテルが前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を越えて伸びるのを防止する、請求項16に記載の血管内カテーテルシステム。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載のD2BAカテーテルと、
前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有する冷却カテーテルであって、前記冷却カテーテルを通して前記D2BAカテーテルの前記遠位先端まで冷却流体を送るように構成された、冷却カテーテルと、
を備え、前記D2BAカテーテルと前記冷却カテーテルを組み合わせることにより、前記断熱カテーテルを通じた冷却流体の有効な流れが生じて血餅除去後の脳組織を有効に冷却できる十分な断熱が提供される、血管内カテーテルシステム。
【請求項19】
前記D2BAカテーテルの外径(OD)が8Fであり、前記冷却カテーテルの外径(OD)が実質的に6Fであり、前記冷却カテーテルが0.020~0.03インチの肉厚、好ましくは0.026インチの肉厚を有する、請求項18に記載の血管内カテーテルシステム。
【請求項20】
前記冷却カテーテルの肉厚が、前記冷却カテーテルの長さに沿って実質的に一定であり、前記冷却カテーテルの前記遠位先端まで断熱性を含む、請求項19に記載の血管内カテーテルシステム。
【請求項21】
請求項1~15のいずれか一項に記載のD2BAカテーテルと、
前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を超える位置まで伸びるのに十分な長さを有する二次D2BAカテーテルであって、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を超える位置までの前記二次D2BAカテーテルの前進を可能にし、前記二次D2BAカテーテルを介して血餅の遠位にある二次血餅の近位縁に吸引圧を加えるように構成された、二次D2BAカテーテルと、
を備える、血管内カテーテルシステム。
【請求項22】
請求項1~15のいずれか一項に記載のD2BAカテーテルと、
前記D2BAカテーテルの頸動脈への前進を内部で支援するための診断用カテーテル(DC)及びガイドワイヤ(GW)と、
前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径と、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を超える位置まで伸びるのに十分な長さと、前記D2BAカテーテルを脳動脈に進める間に前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を支えるための遠位テーパと、を有する統合型支持カテーテル(ISC)と、
前記ISC内で動作するために構成され、前記ISC及び前記D2BAカテーテルを脳動脈内に進めるために前記ISCの遠位先端を超えた位置まで伸びるのに十分な長さを有するマイクロワイヤ(MW)と、
前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を超える位置まで伸びるのに十分な長さを有する二次D2BAカテーテルであって、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を超える位置までの前記二次D2BAカテーテルの前進を可能にし、前記二次D2BAカテーテルを介して血餅の遠位にある二次血餅の近位縁に吸引圧を加えるように構成された、二次D2BAカテーテルと、
前記二次D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記二次D2BAカテーテルの前記遠位先端を超える位置まで伸びるのに十分な長さを有する二次統合型支持カテーテル(ISC)と、
前記二次ISC内で動作するために構成され、前記二次ISCの遠位先端を超える位置まで伸びるのに十分な長さを有する二次マイクロワイヤ(MW)と、
を備える、血管内カテーテルシステム。
【請求項23】
請求項1~15のいずれか一項に記載のD2BAカテーテルと、
前記D2BAカテーテル内で動作するために構成されたステントであって、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端から前記ステントの展開を可能にするために、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を越える位置まで伸びる十分な長さを有する押しワイヤに動作可能に接続された、ステントと、
を備える、血管内カテーテルシステム。
【請求項24】
頸部及び脳動脈にアクセスし、前記脳動脈から頭蓋内血餅を吸引するための血管内処置に使用するためのキットであって、
遠位入口ポイント(DEP)と脳動脈との間のヒト血管系内に配置するために、請求項1~15のいずれか一項に記載のD2BAカテーテルを備える血管内カテーテルと、
少なくとも1つの診断用カテーテル(DC)であって、各DCが前記D2BAカテーテル内に適合してスライドする外径を有し、各DCが大動脈弓の様々な解剖学的構造にアクセスするための予め形成された先端を有し、前記D2BAカテーテルより長い長さを有する、少なくとも1つの診断用カテーテル(DC)と、
前記DC内に適合してスライドする直径を有し、前記DCよりも長い長さを有するガイドワイヤ(GW)と、
を備える、キット。
【請求項25】
内部支持カテーテル(ISC)をさらに備え、前記ISCは、前記D2BAカテーテル内に適合してスライドする外径と、前記D2BAカテーテルを脳動脈に進める間に、きつくカーブした動脈内で前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を支持し移行するためのテーパ付き遠位ゾーンを有する、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
2つ以上のDCを有する、請求項24に記載のキット。
【請求項27】
前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有する吸引カテーテルをさらに備える、請求項24~26のいずれか一項に記載のキット。
【請求項28】
前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有する冷却カテーテルをさらに備える、請求項24~27のいずれか一項に記載のキット。
【請求項29】
前記D2BAカテーテル内に適合する大きさの第二のD2BAカテーテルと、それぞれが前記D2BAカテーテルより大きい長さを有し、前記第二のD2BAカテーテル内に適合する大きさの対応する第二のISC及び第二のMWをさらに備える、請求項24に記載のキット。
【請求項30】
D2BAカテーテルを通して有効量の冷却液を送るための冷却カテーテルであって、前記冷却カテーテルは、前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記D2BAカテーテルの遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有するカテーテルを備え、前記冷却カテーテルは、前記冷却カテーテルを通して前記D2BAカテーテルの前記遠位先端まで冷却流体を送るように構成されており、前記D2BAカテーテルと前記冷却カテーテルを組み合わせることにより、断熱カテーテルを通じた冷却流体の有効な流れが生じて血餅除去後の脳組織を有効に冷却できる十分な断熱性が提供される、冷却カテーテル。
【請求項31】
前記冷却カテーテルの肉厚が、前記冷却カテーテルの長さに沿って実質的に一定であり、前記冷却カテーテルの前記遠位先端まで断熱性を含む、請求項30に記載の冷却カテーテル。
【請求項32】
頸動脈及び脳動脈へのアクセスを得るための血管内方法は、遠位入口ポイント(DEP)と脳動脈との間のヒト血管系内にカテーテルシステムを配置し、前記脳動脈の1つにある脳血餅を吸引するための血管内方法であって、前記血管内方法は、
a)請求項1~15のいずれか一項に記載のD2BAカテーテル、ガイドワイヤ(GW)及び診断用カテーテル(DC)を含むカテーテルシステムを、DEPを介して導入するステップと、
b)前記カテーテルシステムを大動脈弓に前進させるステップと、
c)前記GW及び前記DCを所望の頸動脈まで前進させ、前記GWを所望の頸動脈に操作するステップと、
d)前記D2BAカテーテルを前記DCと前記GWの上にある所望の頸動脈まで前進させるステップと、
e)前記DC及び前記GWを除去するステップと、
f)前記D2BAカテーテルの遠位端を支持するためのテーパ付き遠位区間を有し、脳血管系のきついカーブを通る前記遠位端の移動を容易にするように適合された内部支持カテーテル(ISC)と、ISCマイクロワイヤ(ISC MW)を導入するステップと、
g)前記ISC及び前記ISC MWを前記血餅のある前記脳動脈に前進させるステップと、
h)前記D2BAカテーテルを前記血餅の近位面まで前進させ、前記ISC及び前記ISC MWを抜去するステップと、
i)前記D2BAカテーテルを介して前記血餅の吸引を適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項33】
j)ステップiにおいて血餅を抜去するために吸引を適用した後、前記血餅全体が抜去されたかどうか、及び1つ以上の遠位塞栓が存在するかどうかを決定するためにチェック血管造影を実施するステップと、前記1つ以上の遠位塞栓が存在する場合、
k)第二のISC及び第二のISC MWと一緒に前記D2BAカテーテル内で同軸移動するための大きさの第二のD2BAカテーテルを前記遠位塞栓の近位面まで前進させるステップと、
l)前記第二のD2BAカテーテルに吸引を適用し、吸引又は第二のD2BAカテーテルの抜去により、前記遠位塞栓を抜去するステップと、
をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記DEPが橈骨動脈であり、前記D2BAカテーテルが橈骨動脈穿刺からの前進に適合した近位長を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記DEPが大腿動脈であり、前記D2BAカテーテルが大腿動脈穿刺からの前進に適合した近位長を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
ステップiが、前記D2BAカテーテルを通して1つ以上の第一の圧力パルスを印加して、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を前記血餅に係合させるのを支援し、その後、少なくとも1つの第二の吸引パルスを印加して、前記血餅を吸引することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
吸引ポンプにおいて測定された応答圧力に対して予め定められた圧力パルスを比較し、測定された前記応答圧力に基づいて後続の圧力パルスを調整するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
後続の圧力パルスを調整する前記ステップが、類似の処置から収集され分析された複数の患者からの圧力応答データを考慮する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
吸引が、インターネット及び中央分析コンピュータシステムに作動的に接続された吸引ポンプを介して行われ、異なるポンプからの圧力応答データが前記中央コンピュータシステムによって受信されて、分析され、ポンプ圧力アルゴリズムが前記インターネットを介して前記異なるポンプに更新される、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
ポンプ圧力アルゴリズムが、カテーテルの材料、ブランド及び/又はサイズを考慮する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
吸引が失敗した場合、吸引カテーテルを前記D2BAカテーテルに導入し、前記吸引カテーテルを前記D2BAカテーテルの前記遠位先端まで前進させ、前記D2BAカテーテルを通して吸引を適用するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
吸引が成功した場合、冷却カテーテルを前記D2BAカテーテルに導入し、前記冷却カテーテルを前記D2BAカテーテルの前記遠位先端まで前進させ、前記冷却カテーテルを通して冷却流体を流し、脳組織の冷却を行うステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記冷却カテーテルを通して脳栄養液を流すステップをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記冷却カテーテルが近位断熱性を有するISCであり、前記ISCが抜去され吸引が完了した後、前記ISCを再び導入し、前記ISCを通して脳栄養液を流す、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
フィブリンリッチ領域と赤血球リッチ領域を有する異質な血餅を脳血管から効果的に除去することを可能にする方法であって、
a)請求項1~15のいずれか一項に記載のD2BAカテーテルを、前記脳血管内の血餅の近位縁に隣接して配置するステップと、
b)第一の圧力パルスを印加して、前記血餅の第一の近位領域の吸引を行うステップと、
c)第二の圧力パルスを印加して、前記血餅の第二の遠位領域の吸引を行うステップと、
を含む、方法。
【請求項46】
前記第一の近位領域がフィブリンリッチ領域であり、前記第二の遠位領域が赤血球リッチ領域である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第一の圧力パルスの送達後に第一の戻り圧力波をモニターし、前記第一の戻り圧力波に基づいて前記第二の圧力パルスを調整するステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
冷却カテーテルを通して供給される冷却液の温度を制御するための冷却装置であって、前記冷却装置は、
冷却カテーテルの近位端に冷却液体を供給するための流体冷却モジュールを備え、前記流体冷却モジュールが、
前記冷却カテーテルを通して計算された量の冷却液を送り出すための流体ポンプ及びコントローラを有し、計算された前記量は、前記冷却カテーテルを通る熱伝達のモデリング、患者に対して選択された請求項1~15のいずれか一項に記載のD2BAカテーテルのモデリングデータ、患者データ、及び前記冷却カテーテルの遠位端における所望の冷却液温度に基づく、冷却装置。
【請求項49】
ガイドカテーテルの支持なしに脳動脈にアクセスし、前記脳動脈から1つ以上の頭蓋内血餅に吸引を適用するための請求項1~15のいずれか一項に記載のD2BAカテーテルの使用であって、前記D2BAカテーテルは、遠位入口ポイント(DEP)と脳動脈との間のヒト血管系内に配置するために、
レベル1又はレベル2の動脈セグメント又は同等部位から上頸/頭蓋底部近傍動脈血管まで伸びるのに十分な遠位長を有する軟質遠位先端領域であって、6F~10Fの外径(OD)を有する、軟質遠位先端領域と、
接合部で前記軟質遠位先端領域に接続された近位領域であって、前記DEPを介して前記患者の外側まで伸びるのに十分な長さを有し、前記軟質遠位先端領域の内径と実質的に同様の外径を有する、近位領域と、
を備え、
前記D2BAカテーテルは、前記D2BAカテーテルを介する吸引を可能にして、前記1つ以上の血餅を除去する、使用。
【請求項50】
前記軟質遠位先端領域及び前記近位領域が、互いに均衡した十分な柔軟性と、軸方向及び径方向の圧縮剛性を有し、前記軟質遠位先端領域をガイドワイヤ(GW)と診断用カテーテル(DC)の上で前進させ、外部支持カテーテルなしで前記軟質遠位先端領域の遠位先端を上頸/頭蓋底部近傍の位置に配置できるようにする、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
前記軟質遠位先端領域及び前記近位領域が、互いに均衡した十分な柔軟性と、軸方向及び径方向の圧縮剛性を有し、前記軟質遠位先端領域がガイドワイヤ(GW)と診断用カテーテル(DC)の上で前進した上頸/頭蓋底部近傍の位置にあるとき、前記ガイドワイヤと前記診断用カテーテルを抜去しても前記D2BAカテーテルが頸動脈から脱出しない、請求項49又は50に記載の血管内カテーテル。
【請求項52】
前記軟質遠位先端領域及び前記近位領域が、互いに均衡した十分な柔軟性と、軸方向及び径方向の圧縮剛性を有し、前記GW及び前記DCが抜去されたとき、マイクロワイヤ(MW)及び統合型支持カテーテル(ISC)は前記D2BAカテーテルを介して前記遠位先端に前進させることができ、前記D2BAカテーテルは前記MW及び前記ISCの上で、さらに前進し、前記遠位先端が血餅に隣接する脳動脈壁と実質的に係合する位置に至る、請求項49~51のいずれか一項に記載の使用。
【請求項53】
血管内処置に使用するための血管内カテーテルであって、前記血管内カテーテルは頸動脈及び脳動脈へのアクセスを獲得し、脳動脈から1つ以上の頭蓋内血餅を吸引するための構造を有し、前記血管内カテーテルは遠位入口ポイント(DEP)と脳動脈との間のヒト血管系内に配置するために、
脳動脈のレベル1又はレベル2の動脈セグメント又は同等部位から上頸/頭蓋底部近傍動脈血管まで伸びるのに十分な遠位長を有する軟質遠位先端領域であって、前記軟質遠位先端領域は6F~10Fの外径(OD)を有し、前記軟質遠位先端領域は柔軟性を有し、頸動脈内に配置された診断用カテーテル(DC)とガイドワイヤ(GW)の上に乗り、前記DCと前記GWの脱出を引き起こすことなく、前記大動脈弓を通して前記頸動脈にアクセスでき、前記DCと前記GWを除去すると、前記D2BAカテーテルは脳動脈へとさらに前進できる、軟質遠位先端領域と、
前記軟質遠位先端領域に移行する近位領域であって、前記DEPを介して患者の外部にまで伸びるのに十分な長さを有する近位領域と、を備え、
前記D2BAカテーテルは、ガイドカテーテルの支持なしに前記頸動脈まで前進させることができる、血管内カテーテル。
【請求項54】
6Fより大きい外径と、体外の遠位入口ポイント(DEP)から脳動脈のレベル1又はレベル2セグメント内の血餅まで伸びるのに十分な長さを有する遠位入口ポイント~脳吸引(D2BA)カテーテルであって、前記D2BAカテーテルは、ガイドワイヤ(GW)及び診断用カテーテル(DC)を介して前記DEPから前記GW及び前記DCの遠位先端まで前進するために、前記GW及び前記DCが上部頸部/頭蓋底に近いレベルに配置されているときに、その長さに沿って十分な軸方向の柔軟性/硬度を有し、前記D2BAカテーテルは、前記GW及び前記DCのみによって支持で大動脈弓を通して前進させることができる、D2BAカテーテル。
【請求項55】
前記DEPが橈骨動脈である、請求項54に記載のD2BAカテーテル。
【請求項56】
前記DEPが大腿動脈である、請求項54に記載のD2BAカテーテル。
【請求項57】
カテーテルを備える、遠位入口ポイント~脳吸引(D2BA)カテーテルであって、前記カテーテルが、
6F~10Fの外径と、
体外の遠位入口ポイント(DEP)から脳動脈血餅まで伸びるのに十分な長さと、
前記D2BAカテーテルを前記DEPからガイドワイヤ(GW)及び診断用カテーテル(DC)の上に前進させ、前記GW及び前記DCが上部頸部/頭蓋底部近傍レベルに位置するときに、前記GW及び前記DCの遠位先端まで前進させるためにその長さに沿って、軸方向の柔軟性/硬度を有する軟質遠位先端ゾーンであって、前記血餅が位置する動脈の内径と実質的に一致するように選択された遠位先端外径と、前記血餅から上部頸椎/頭蓋底部近傍レベルまで伸びる長さを有する、軟質遠位先端ゾーンと、
前記D2BAカテーテルを前進させるためにその長さに沿って軸方向の柔軟性/硬度を有する近位ゾーンであって、前記GW及び前記DCによる支持のみで前記軟質遠位先端ゾーンを、大動脈弓を通して前進させることができる、近位ゾーンと、を備える、D2BAカテーテル。
【請求項58】
6Fより大きい外径と、遠位入口ポイント(DEP)から脳のレベル1以上の動脈セグメントまで伸びるのに十分な長さを有する吸引カテーテル(AC)であって、前記ACが遠位領域と近位領域を有し、軸方向の柔軟性と硬度とが組み合わさって、
前記ACは、前記DEPと頸動脈の間に配置された診断用カテーテル(DC)及びガイドワイヤ(GW)の上で、前記DC及び前記GWを脱出することなく、ガイドカテーテル(GC)の支持なしに前進させることと、
前記DCと前記GWは、前記ACを脱出することなく、前記ACを抜去することと、
少なくとも1つのマイクロカテーテル(MC)及びマイクロワイヤ(MW)と共に、レベル1以上の動脈セグメントの血餅まで前記ACを前進させることと、
前記血餅を吸引するために前記ACから吸引することと、
ができる、ACカテーテル。
【請求項59】
6F~10Fの外径と、遠位入口ポイント(DEP)から脳動脈内の血餅まで伸びるのに十分な長さを有するカテーテルを備える吸引カテーテル(AC)であって、前記ACが、前記血餅が位置する脳動脈の内径に実質的に対応する遠位先端外径と、前記血餅から上頸/頭蓋底部近傍まで伸びる長さとを有する遠位先端を有する遠位領域を有し、前記遠位領域と近位領域とは、軸方向の柔軟性と硬度とが組み合わさって、
前記ACが、前記DEPと頸動脈の間に配置された診断用カテーテル(DC)及びガイドワイヤ(GW)の上で、前記DC及び前記GWを脱出することなく、ガイドカテーテル(GC)の支持なしに前進させることと、
前記DCと前記GWが、前記ACを脱出することなく、前記ACを抜去することと、
少なくとも1つのマイクロカテーテル(MC)又は統合型支持カテーテル(ISC)及びマイクロワイヤ(MW)と共に、レベル1以上の動脈セグメントの血餅まで前記ACを前進させることと、
前記遠位先端が前記血餅のすぐ近くで、前記血餅を吸引するために前記ACから吸引することと、ができる、ACカテーテル。
【請求項60】
請求項1~15のいずれか一項に記載のD2BAカテーテルの前進を支援するための統合型支持及び冷却カテーテル(ISCC)であって、前記ISCCは、前記D2BAを通じた血餅の吸引後に前記ISCCを通じて冷却液を流すことを可能にし、前記ISCCは、患者の脳血管の蛇行区間を通過する際に前記D2BAの遠位先端を支持するためのテーパ付き遠位ゾーンと、冷却液を前記ISCCの近位端に1~3℃で導入し、前記冷却液が前記ISCCから2~8℃で排出することを可能にする断熱近位ゾーンとを有するカテーテルを備える、ISCC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚血性脳卒中の治療における血管内/神経介入処置中に脳にアクセスするためのカテーテルシステム及び方法について説明する。より具体的には、脳血管への迅速かつ改善されたアクセスと、中血管又は大血管の閉塞による急性虚血性脳卒中の患者の脳血管にアクセスし、そこから血餅を吸引するプロセスの改善とを可能にするカテーテルシステムを説明する。
【背景技術】
【0002】
人体は、全身に血液を循環させるための静脈系と動脈系を含む広範囲な血管のネットワークである。循環系内の流れに対する制約が発生及び/又は進展すると、重大な病状をもたらし、その最も重大なものは、心筋梗塞及び虚血性脳卒中である。この2つの疾患(及び循環器系に関係するその他の疾患)の治療は、様々な治療を行うために多くの新しい技術及び機器が利用され、進化し続けている。
【0003】
既知のように、脳内の血餅閉塞によって引き起こされる虚血性脳卒中は、問題を治療するために様々な処置を開始できる患部までカテーテルシステムを前進させることによって治療され得る。既知の処置は、血餅にアクセスして除去するために、様々な設計のカテーテルを単独で、及び/又は他のカテーテル、ステント及び血餅回収装置と組み合わせて配備することを含む。
【0004】
背景として、患者が重大な虚血性脳卒中事象を経験するとき、血液供給の劇的な減少を経験する閉塞から遠位の脳のそれらの部分は、ニューロンの大きな領域の機能に影響を及ぼすであろう。この血液供給の減少により、患者は症状を呈し、脳の領域が死滅する可能性があり、及び/又は、迅速に治療されないと脳の領域が死滅する危険性がある。閉塞の位置及び大きさによって、患者に広範囲の症状が生じ、重症度によって、最終的に医師が介入するか否かを決定することができる。
【0005】
治療の効果における時間の遅れは、典型的には、より多くのニューロンの死をもたらすことになる。表1は、急性虚血性脳卒中の特定の場合において、典型的な大血管テント上急性虚血性脳卒中における神経回路喪失のペース又は速度が非常に速くなり得ることを示す。
表1:典型的な大血管、テント上急性虚血性脳卒中における神経回路喪失の推定速度
【表1】
【0006】
上記に提示された数値は平均を表し、一般に、側副血行路を介した虚血領域への利用可能な血液供給に依存して、上記の数値に高い変動性があることもまた知られている。意思決定の時間遅延、血管内処置を開始する際の時間遅延、及び処置中の遅延を含むいくつかの要因は、そのいずれもがわずか数分のオーダーであり得るが、神経回路の損失及び最終的に患者の転帰に大きな影響を及ぼし得る。
【0007】
参照により本明細書に組み込まれる論文(非特許文献1)は、高速再灌流によって患者の転帰に決定的な改善があることを定量的に示している。特に、この研究は、「積極的な時間目標が効率的なワークフロー環境に寄与している可能性がある」と結論付けている。さらに、この研究は、特に、迅速に治療した場合(すなわち、脳卒中発症から2時間半以内)、患者の機能的自立度が有意に高かったことを定量的に示している。
【0008】
重要なことに、再疎通処置中の効率的なワークフロー(処置の有効性と効率性が重要である)がより良い結果をもたらすことが、現在知られていることである。
【0009】
最初に、可能な治療法を評価するための虚血性脳卒中の診断において、医師は、血管の閉塞がどこにあり、その閉塞がどの程度の大きさであり、死んだ脳組織(「コア」)がどこにあり、虚血事象の影響を受けたかもしれないが、救える可能性のある脳組織(「ペナンブラ」)がどの程度の大きさでどこにあるか知ることが重要である。
【0010】
ペナンブラは、虚血事象の周囲の組織であり、側副動脈によるこの組織の灌流によって、虚血事象の後、数時間生き続けることができる可能性があるものである。側副動脈は、ペナンブラ組織に十分な酸素、栄養素及び/又は洗浄を供給して、この組織が一定期間死ぬのを防止することができる。
【0011】
急性虚血性脳卒中への対応では、前方循環の大血管閉塞による急性虚血性脳卒中の血管内治療が、ある基準の患者に対して標準的な治療法として行われるようになった。すなわち、特定の症状(特定の重症度の脳卒中症状)を示す患者には、閉塞した血管を開くために、早期かつ迅速な血管内治療が有効である。一般に、血管内治療では、インターベンション専門医が患者の股間から大腿動脈、下行大動脈を経て、大動脈弓に、頸部及び脳動脈系に至る一連のカテーテルを血餅に向かって進めることになる。カテーテルの配置によって血餅へのアクセスが達成された後、血餅回収及び/又は血餅吸引装置がカテーテルを通して展開され、血餅が血餅部位から抜去され、及び/又は吸引される。アクセスは、ますます橈骨動脈を含む他の領域からも得ることも、最小限に頸動脈を介して得ることもできる。
【0012】
虚血性脳卒中の重症度及び最終的な治療に影響を与え得る多くの解剖学的及び状況的考察が存在する。重要なことに、上述したように、血餅が虚血領域への血流に深刻な影響を与える一方で、少なくとも部分的に患部を灌流するために側副動脈が機能していれば、一部の血流が虚血領域に到達する可能性があることである。
【0013】
血管内治療で最も一般的な大血管閉塞は、中大脳動脈(MCA)のM1セグメントである。患者がM1閉塞を有する場合、M1によって供給される領域は、血液供給が劇的に減少する。その結果、遠位の神経細胞がうまく機能しなくなり、患者は症状を呈する。
【0014】
再疎通処置では、血餅にアクセスし、その除去を効果的に行うために、広範な機器及び技術を利用する。一般に、血管内外科医は、広範なガイドカテーテル、バルーンガイドカテーテル、ガイドワイヤ、診断用カテーテル、マイクロカテーテル、マイクロワイヤ、ステント、及び異なる処置及び患者の提示に有効で、個々に特性、特徴及び機能を有する他のツールを含むいくつかのツールを自由に使用することができるようにする。上記のツールは、全てではないにしても、そのほとんどは使い捨てであり、また高価である。したがって、類似又はより良い結果を達成できる限りにおいて、より速い手順(すなわち、より少ない手順で)、より少ない数のツール、及び/又はより低いコストを利用して、これらの目的を達成できる新しいツールを設計し続ける動機がある。さらに、利用されるカテーテルの数を最小化することは、複雑な手順から生じ得るエラー及び/又は望ましくない結果の可能性を低減するのに役立ち得る。
【0015】
上述のように、脳への血管内処置は、一般に、総大腿動脈を穿刺し、動脈シースを挿入することによって、患者の鼠径部から動脈血管系へのアクセスを得ることによって実行される。
【0016】
次に、透視(X線)誘導下で、カテーテルシステム(通常は、ガイドカテーテル(GC)又はバルーンガイドカテーテル(BGC)、診断用カテーテル(DC)及びガイドワイヤ(GW)を含む同軸システム)を下行大動脈を介して大動脈弓に達するまで前進させる。
【0017】
診断用カテーテルは、先端が整形されており、目的の血管を引っ掛けるために使用され、ガイドワイヤの助けを借りて、診断用カテーテルを目的の動脈まで前進させる。その後、ガイドカテーテル/バルーンガイドカテーテルを診断用カテーテルの上で前進させ、GC/BGCの先端が目的の頸動脈に入るようにする。
【0018】
この段階で、GC/BGCが体外から目的の頸動脈への直接の導管となるように、診断用カテーテルとワイヤを除去する。GC/BGCはスペースをとり、外部直径又は外径(OD)及び内部直径又は内径(ID)を有し、GC/BGCを通して進められるすべてのさらなる機器のサイズを制限することに留意する必要がある。GC/BGCの最大外径は、特に、動脈シースの内径によって支配される。
【0019】
その後、頭蓋内アクセス用に設計されたカテーテルは、ガイドカテーテルを通じて進められる。これは、典型的には、2つのアプローチのうちのいずれかからなる。
a.マイクロカテーテル及びマイクロワイヤ、又は
b.遠位アクセスカテーテル(DAC)、マイクロカテーテル、及びマイクロワイヤからなる三軸システム。
【0020】
アプローチaの場合:マイクロカテーテルとマイクロワイヤが血餅を横切ると、マイクロワイヤを取り除き、ステントレトリーバを展開して、血餅をゆっくりと横切る。ガイドカテーテルを通して吸引しながら(BGCを使用する場合はバルーンを膨らませながら)、ステントレトリーバを抜去し、血餅を捕捉して再灌流を確立する。
【0021】
アプローチbの場合:DACは、血餅の近位に配置される。一つのアプローチb1では、マイクロカテーテルを用いて血餅を横切り、マイクロワイヤを取り除いた後、ステントレトリーバを展開する。その後、DACから吸引しながら、ステントレトリーバとDACは、典型的には一緒に抜去される。第二のアプローチb2では、ステントレトリーバを使用せず、直接、血餅を捕捉する試みが、DACから吸引することによってなされる。
【0022】
カテーテル及び/又はステントレトリーバシステムを血餅に進め、患者の解剖学的構造の非常に複雑で可変な物理的寸法を含む処置を実施することには、様々な問題及び/又は制約がある。
【0023】
例えば、一つの特定の考慮事項は、脳卒中は典型的に高齢者に影響を与え、年齢が増すにつれて、通常、大動脈弓の屈曲性が増加し、しばしば頸動脈にアクセスすることが困難になることである。特に、大動脈弓と頸動脈の非常に蛇行した組み合わせのために、カテーテルシステムを進めることが困難である可能性がある。その理由は、高い曲げ角度と摩擦によってカテーテルが上行大動脈に脱出し、したがって、所望の血管を通って進むことができないからである。言い換えれば、カテーテルシステムをきつい屈曲部に押し通す場合、システムは、抵抗が最も少ない経路を探すことになり、結局間違った方向に押されてしまうことがある。さらに、蛇行によって、カテーテルがそれ以上進めなくなる可能性もある。内頚動脈の眼部セグメントによく見られるように、鋭いターンと別の動脈の起点とが組み合わさることで、そのようなカテーテルが引っかかる一般的な場所となり得る。
【0024】
別の考慮事項は、利用可能なカテーテルシステムのサイズと、より小さいカテーテルを前進させるためにGC/BGCサポートを提供する必要性についての問題である。より小さいカテーテルがより大きいカテーテルによって支持される場合、より小さい内部カテーテルのOD/IDは、より大きなサポートカテーテルの内径によって制限される。
【0025】
(カテーテルの性能)
上述のように、脳の処置において用いられる2つのカテゴリーのカテーテルは、すなわち、診断用カテーテルとガイドカテーテルとである。診断用カテーテルは、一般に、着目対象領域へのアクセスが得られるようにするために用いられるのに対し、ガイドカテーテルは、特定の外科的手技のために必要とされ得る診断用カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、ステント、マイクロワイヤなどを含むその他のカテーテル等を含む付加的な機器を支持して、案内するために用いられる。
【0026】
典型的な診断用カテーテルは、4F~6F(フレンチ)の範囲にあり、65~125cmの長さを有する。それらのカテーテルは編組壁構造を有することができ、一般に、先端は柔らかく、特定の容器に引っかかりやすくするために様々な形状が形成されている。DCには様々な硬度を持たせることができ、比較的柔らかいものから硬いものまで設計することができる。
【0027】
ガイドカテーテルは、一般にこれよりも大きく(例えば、6~9F)、80~100cmの長さを有する。ガイドカテーテルは。一般に、列挙したように任意の付加的な機器を前進させるために後退方向(すなわち逆方向)支援をもたらすように、かなり硬いシャフトによって強化された構造を有している。しかしながら、ガイドカテーテルは、一般に頸部の頸動脈までしか進めることができない。その理由は、ガイドカテーテルが硬く、血管が狭く、血管が湾曲していることが相まって、それ以上進むのを妨げているからである。
【0028】
解剖学的な観点からすれば、カテーテルは一般に血管構造の様々なゾーンを通過し、つまり、鼠径部穿刺で体内に入ったカテーテルの例では大腿動脈と大動脈弓との間の腹部及び胸部の血管構造(おおよそ50~75cm)、頸部血管構造(おおよそ15~20cm)、さらには頭部/脳の血管構造(おおよそ10~15cm)を通過する。血管は、大動脈の2.5cmから脳血管の3mm以下まで徐々に狭くなっている。
【0029】
様々な性質及びジオメトリを、診断用カテーテル及びガイドカテーテル双方の設計に加えることもできる。
・追跡可能性(Trackability):特に蛇行した(急カーブの)血管を通してガイドワイヤ上でスライドさせるためのカテーテルの能力。
・プッシャビリティ:ハブからの(すなわち体外)からのオペレータによる入力に基づき、カテーテルの先端又はヘッドを前進させる能力。
・トルク伝達性:オペレータによるハブにおけるツイストに基づき、カテーテルの先端を操る能力。
・ 先端又はヘッドの形状:カテーテルの先端又はヘッドの形状によって、特定の解剖学的特徴を通してカテーテルの遠位先端をナビゲートする際にオペレータがアシストされることになる。例えば、診断用カテーテルは、特に、面一、直線、単純な曲線、複雑な曲線、背向曲線、又は二重曲線の形状を有することができる。このような形状を、単純又は複雑なものとして分類することができる。
・硬度:カテーテルが曲線に沿って曲がり、その中を動くカテーテルを支える能力。
【0030】
(カテーテルの構造)
カテーテルに特定の性質又は機能特性を与える目的で、カテーテルの壁構造内部において様々な構造及び/又は層を有する複数の材料により、各カテーテルを構成することができる。それらには、以下を含むことができる。すなわち、
・表面コーティング:表面コーティングは望ましくは血餅形成を低減し、低い摩擦係数及び/又は抗菌性の特性を有する。
・ 補強材:トルク制御/硬度特性をカテーテルに付与するために、内部ワイヤ編組が用いられる。
・ ポリマー層:カテーテルのボディに様々な構造特性を与えるために、種々のポリマーを用いることができる。例えば、
〇 ポリウレタンを柔らかで曲げやすいものとすることができ、したがって、ガイドワイヤにいっそう効果的に追従することができる。ただし、それらの摩擦係数は比較的高い。
〇 ナイロンは、硬度のために用いることができ、その中を通る液体の比較的高い流速に耐えることができる。
【0031】
特定のカテーテル又はカテーテルシステムの選択は、典型的には、特定のインターベンション専門医の技能、経験及び好みによって決定される。
【0032】
様々なカテーテルのいくつかの典型的な性質を、表2にまとめた。
表2:カテーテルの性質の概要
【表2(1)】
【表2(2)】
【0033】
(虚血性脳卒中を治療するための典型的な血管内処置)
上述のように、血管内外科医が処置を開始するとき、典型的には鼠径部を通して血管構造へのアクセスが得られる。しかしながら、後述するように、橈骨動脈を含む他のアクセス領域がますます使用されている。
【0034】
鼠径部穿刺の後、血管構造を通して着目対象部位まで種々のカテーテルを前進させるために、以下のステップのバリエーションが実施される。典型的には、バルーンガイドカテーテル及びステント(すなわち、血餅回収デバイス)を用いた処置のケースであれば、これらのステップは、以下を含む。
ステップA:大動脈弓へのアクセス
a) 鼠径部穿刺の後、シースを展開させる。シースは体へのアクセスポートとしての役割を果たし、典型的には15cmが大腿動脈へ挿入されることになる。シースは、約8Fの内径を有する。大腿動脈及び腸骨動脈が大きな蛇行している場合は、より長いシース(通常45cm)を使用することができる。
b) ガイドカテーテル(GC)/バルーンガイドカテーテル(BGC)、診断用カテーテル(DC)及びガイドワイヤ(GW)とからなるアセンブリを、大動脈弓に向かって前進させる。GC/BGCは、典型的には8F(シースに一致)の外径を有する。DC(外径4~6F)は、BGC内部に保持され、GW(外径0.035インチ)は、DC内部に保持される。
ステップB:頸動脈及び脳動脈へのアクセス
a)所望の頸動脈へのアクセスが得られるように、DCを操作する。
b)頸動脈へのアクセスが得られた後、GWを閉塞部位(ただし頸部頸動脈内)に向かって典型的には20~30cmまで前進させる。
c) GWを前進させた後(又は同時に、及び/又は順次)、閉塞部位へのアクセスが得られるようにGWの上でDCを前進させる。このことを、特定の患者の詳細な事項に応じて、同時に行われるプロセス及び/又は順次連続して行われるプロセスで、生じさせることができる。しかしながら、このステップには大きな問題があり得る。DCの設計は、関連する血管を引っ掛けることができるようにする。典型的には、先端(遠位5cm)は、事前に成形されており、診断用カテーテルは全体的に硬く、トルクがかかりやすい。これらの特性は、血管を引っ掛けることを可能にするが、その後、DCをワイヤの上で前進させる際に、インターベンション専門医に不利に働くことがある。すなわち、DCの先端が頸動脈内で相対的に硬いため、GW上を滑ることができず、システム全体が上行大動脈に脱出する可能性があるのである。
d) 別のアプローチは、DCを前進させるのではなく、DCを血管の原点の位置に残したままBGCを前進させることである。この解決策が機能することも時々あるが、ガイドカテーテルの硬度のために同じ問題を抱えていることも多々ある。
ステップC:ガイドカテーテル(GC)及びバルーンガイドカテーテル(BGC)の配置
a) 頸動脈、典型的には頸部内頸動脈の直線区間へのアクセスも得られるように、GC/BGCをDC及びGWの上で前進させる。
b)その後、DC及びGWを完全に取り除く。
ステップD:マイクロカテーテル/マイクロワイヤの配置
a) マイクロカテーテル(MC)及びマイクロワイヤ(MW)を、BGCを通して血餅までずっと一緒に案内し、MC及びMWの遠位先端が血餅の遠位縁を過ぎたところに配置されるようにする。
b)MCを配置したならば、MWを取り除く。
ステップE:ステントの配備
a) ステント(すなわち血餅回収デバイス)を、ステントの遠位先端がMCの遠位端に隣接するまで、MCを通して前進させる。
b) ステントを所定のポジションに保持しながら、MC上で引き戻すことによってステントを露出させる。ステントを露出させるときに、血餅と係合するようにステントは血餅まで伸びることになる。
ステップF:血餅除去
a) BGCを膨らませて順行流を停止させ、BGCを通した逆行流(吸引)を発生させる。
b) 同時に、いまや血餅と係合したステントをMCと一緒に、BGCを通して体外に出るように近位方向で引っ張る。
c) 血餅回収が成功したのか否かを調べるため、BGCを通してチェック血管造影を実施する。成功していなければ、ステップE及びFが繰り返される場合もある。
d) 首尾よく再潅流が達成されたならば、BGC、ステント及び血餅を体外へ除去する。
【0035】
(バリエーション)
この処置のバリエーションとして、遠位アクセスカテーテル(DAC)(4~6.0F)を、この処置に加えることができる。これを以下の2つの手法のうちの一方とすることができる。
A:吸引手技
i. この手技によれば、ガイドカテーテル及びDCを用いて頸部内頸動脈へのアクセスを達成した後、BGCであることも、ないこともあるガイドカテーテル(GC)を頸部内頸動脈内に配置する。
ii.DCを取り除く。
iii. DAC(吸引カテーテル)の先端を血餅の表面に到達させることを目的として、DAC、MC、及びMWからなる三軸システムを頭蓋内循環に向けて前進させる。特許文献1に記載され、参照により本明細書に組み込まれる統合型サポートカテーテル(ISC)が、これらの動脈系を通る移動を改善/補助するために使用され得る。これを達成するために、MC及びMWが血餅後方に配置されなければならない場合もあり得る。典型的には、この場合、DACは、6Fの最大サイズを有するであろう。これより大きなサイズのカテーテルは、不可能である。なぜなら、頸部で支持するための大きなガイドカテーテルを必要とし、よりきついカーブをナビゲートできる/通り抜けできる十分な遠位柔軟性がないためである。
iv.MW及びMC(及び/又はISC)を取り除く。
v. DACが血餅の表面にある場合、血餅の回収が成功するまで、又は血管内外科医が別の選択肢となるアプローチを試みる判断を下すまで、DACを通した吸引が適用される。局所的な吸引には、より多くの吸引圧力が血餅に伝達される可能性が高いという利点がある。しかしながら、後述するように、吸引を行った場合、いくつかの可能性がある。DACのその他の欠点については後述する。
Solumbra手技
i. この手技の最初の部分は、吸引手技(すなわち、ステップA(i)~A(iii))と同じである。
ii. ただし、MCが血餅を越えて、DACが血餅表面にあると、MWを取り除いて、血餅を横断してステントを展開する。
iii. 次いで、DACに対し吸引を適用している間に、MC及びステントを抜去する。したがって、吸引圧力は、BGCを用いた場合のように頸部からではなく血餅のすぐ隣りにある。同様にステントも、まだ頭蓋内血管にあるときにDACに入り、これによって血餅が捕捉されたときに血餅を失う可能性が低減される。
【0036】
血餅の除去で、ステントを用いない吸引手技が成功しない場合、BGCを所定の位置に置き、それに続いてGW、MC及びステントを展開することができる。
【0037】
いずれの手法においても、吸引圧をかけることで様々な結果を得ることができる。一般的に、典型的なDAC(吸引カテーテル)は、DACが0.053~0.068インチの範囲の最大内径(対応する外径は6F)を有するほとんどの血餅よりも小さいが、血餅のサイズ/ODはそれが留まる血管のIDと同じサイズになる(血餅は典型的に、心臓又は頸動脈などより近接したソースからの塞栓で、塞栓サイズが血管サイズと一致するまで遠位に移動し続けることになる)。したがって、DACの遠位先端開口部のサイズと血餅及び/又は血管のサイズとの間には差がある。さらに、ほとんどの頭蓋内血管は非常に蛇行しており、DACが前進するにつれ、カーブの外側にとどまる傾向がある。その結果、DACの遠位先端は、血餅が部分的にDACの外側縁と係合するように、血管壁に対して垂直でなく、及び/又は血管壁から部分的に離間している場合がある。
【0038】
さらに、血餅がDACより「著しく」大きい場合、DACの遠位先端を通る吸引は、一般に血餅の摂取を達成せず、むしろ血餅の最も近位の部分がDACの遠位先端に「詰まり」、ほとんどの血餅がそれほど圧縮性ではないので、吸引中にDACに引き込まれないことになる。
【0039】
重要なことに、血餅の特性は、整合性/剛性/内部凝集力などの点で非常に変化するので、吸引及び/又は近位圧力の究極の適用により、以下のことが起こり得る。
a)血餅の全体がDACに摂取される(望ましい)。
b) 血餅が部分的に1つ以上の小片に分解され、近位の小片は完全にDACに摂取されるが、小片が遠位に移動する可能性がある(望ましくはない)。
c) 血餅がDACに摂取されず、遠位先端を塞ぐため、血餅が部分的にしか摂取されないままDACを抜去する必要がある(最終結果は好ましいが、迅速性に欠ける可能性がある)。
d) c)と同様に、血餅のフィブリンリッチゾーンがDACに詰まることがあり、血餅の一部を除去するためにDACを抜去することが必要となる。場合によっては、血餅はフィブリンリッチでないゾーンを有し、その結果、詰まった部分から離れ、より小さな断片がさらに遠位に移動することがある(好ましくない)。
e) 血餅がDACと完全に係合しない、及び/又は、摂取されないため、血餅がその場に残る(これは、外科医にステントの配備を検討させる可能性があり、あまり好ましくない)。
【0040】
全体として、これら全ての可能性の中で、血餅の完全な摂取は、a)断片化を防ぎ、b)遠位塞栓を防ぎ、c)血餅のより近位の部分がカテーテルに吸い込まれるにつれて、吸引圧が血餅の次の部分に伝達されるので最も望ましい。しかしながら、上述のように、DACは一般にサイズの上限を有しており、その結果、血管/血餅とDACとの間のサイズのミスマッチが大きくなる可能性がある。
【0041】
さらに、血餅が捕捉されたと考えられると、一般に、チェック血管造影が実施されることを可能にするために、DACを身体から完全に引き出すことが必要である。チェック血管造影は、血餅が完全に除去されたかどうかを決定するために、また、より小さな断片が残されていないかどうかを決定するために実施される。
【0042】
前述のように、BGCは、外科医が前向きの血流を止めることを可能にするために使用され、DACが部分的に摂取された血餅とともに抜去されている場合に、血餅が遠位に剪断されて塞栓するリスクを最小化するために必要である。すなわち、血餅(と、ステントを使用する場合は、ステント)の直径はBGCの内腔より大きくなり得るため、DACを抜去する際(ステントの有無にかかわらず)、血餅の一部が剪断され遠位側に塞栓する可能性が高い。そのため、バルーンを膨らませて前向きの流れを止めることで、この危険性を減らすことができる。しかしながら、BGCを使用すると、DACがBGC内にある必要があるので、DACのサイズが小さくなる。
【0043】
それゆえ、単一の大きな外径カテーテル(例えば7F以上)を鼠径部から血餅(例えばM2レベル又はそれ以上)へ進めることが可能で、その結果、より大きな開口部の遠位開口部が、吸引圧のためにその近位端のみを先端で保持するのではなく、それを完全に摂取することで、血餅と完全に係合するために利用可能である限り、遠隔塞栓を引き起こすリスク、吸引処置を完了する時間及びそのような処置を行うためのコストを大幅に削減することが可能である。しかしながら、課題には、大きなODカテーテルを脳動脈に前進させる能力が含まれる。その理由は、きついカーブを通してそのような装置を操作することの難しさ、及びGC/BGC内で使用することの一般的な慣行である。
【0044】
さらに、コロナウイルスの時代には、病院の治療手順は、すべての医療従事者及び患者に対するリスクを最小化するように変更され、その結果、手順の準備及び実施時に人員間の分離がより厳しくなっている。このような分離手順は、医療器具を所定の場所に移動させるのに時間がかかるため、医療行為の効率を低下させることになる。そのため、現在、コロナウイルスによって生じた非効率性を克服するための機器、キット、プロセスを設計するモチベーションが高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】米国特許第10456552号明細書
【非特許文献】
【0046】
【非特許文献1】“Analysis of Workflow and Time to Treatment and the Effects on Outcome in Endovascular Treatment of Acute Ischemic Stroke: Results from the SWIFT PRIME Randomized Controlled Trial” (Radiology. 2016 Jun;279(3):888-97. doi: 10.1148/radiol.2016160204. Epub 2016年4月19日)
【発明の概要】
【0047】
本発明によれば、外科的処置の効率及び有効性を改善するためのシステム及び方法が提供される。
【0048】
第一の態様において、本発明は、患者の脳の頸動脈及び脳動脈へのアクセスを獲得し、前記脳動脈から1つ以上の頭蓋内血餅を吸引するための血管内処置に使用するための遠位入口ポイント(DEP)~脳吸引(D2BA)カテーテルを提供し、前記DEPと前記脳の前記脳動脈との間の前記患者のヒト血管内に配置するための前記D2BAカテーテルは、 脳動脈のレベル1またはレベル2の動脈セグメント又は同等部位から上頸動脈血管まで伸びるのに十分な遠位長を有する軟質遠位先端領域であって、前記脳動脈の前記レベル1またはレベル2の動脈セグメントを通る動きを可能にする硬度、及び6F~10Fの外径(OD)を有する、軟質遠位先端領域と、前記軟質遠位先端領域の硬度よりも大きな硬度を有する近位領域であって、前記DEPを介して前記患者の外側まで伸びるのに十分な長さを有する、近位領域と、を備え、前記D2BAカテーテルは、前記D2BAカテーテルを介する吸引を可能にして、前記1つ以上の血餅を除去する。
【0049】
様々な実施形態において、
・ 軟質遠位先端領域及び近位領域が十分な柔軟性と、軸方向及び半径方向の圧縮剛性とを有し、軟質遠位先端領域をガイドワイヤ(GW)及び診断用カテーテル(DC)の上で前進させ、外部支持カテーテルなしで軟質遠位先端領域の遠位先端を上部頸部/頭蓋底部近傍の位置に配置することができる。
・ 軟質遠位先端領域及び近位領域が十分な柔軟性と、軸方向及び径方向の圧縮剛性とを有し、軟質遠位先端領域がガイドワイヤ(GW)と診断用カテーテル(DC)の上で前進した上部頸部/頭蓋底部近傍の位置にあるとき、ガイドワイヤと診断用カテーテルを抜去してもD2BAカテーテルが頸動脈から脱出しない。
・ 軟質遠位先端領域及び近位領域が十分な柔軟性と、軸方向及び半径方向の圧縮剛性とを有し、GW及びDCが抜去されたとき、マイクロワイヤ(MW)及び統合型支持カテーテル(ISC)はD2BAカテーテルを介して遠位先端に前進させることができ、D2BAカテーテルはMW及びISCの上で、さらに前進し、遠位先端が血餅に隣接する脳動脈壁と実質的に係合する位置に至る。
・D2BAカテーテルは、0.013インチ以下の肉厚を有する。
・D2BAカテーテルの外径(OD)が7Fであり、遠位長が上頸動脈血管から中大脳動脈レベル2セグメントまで、又は遠位頸椎動脈から脳底動脈又は同等部位まで伸びる。
・遠位長は、17~25cmである。
・D2BAカテーテルの外径(OD)が8Fであり、遠位長が上頸動脈血管から中大脳動脈の遠位レベル1セグメントまで伸びる。
・遠位長は、15~23cmである。
・D2BAカテーテルの外径(OD)が9Fであり、遠位長が上頸動脈血管から中大脳動脈の近位レベル1セグメント又は同等部位まで伸びる。
・遠位長は、13~21cmである。
・D2BAカテーテルの外径(OD)が10Fであり、遠位長が上頸動脈血管から内頸動脈の遠位セグメント又は同等部位まで伸びる。
・遠位長は、12~16cmである。
・軟質遠位先端領域は、D2BAカテーテルの特定の直線位置に対して軸方向の硬度及び柔軟性を提供する組成物を有する少なくとも1つのポリマー区間を備える。
・ 近位領域は、D2BAカテーテルの特定の直線位置に対して軸方向の硬度及び柔軟性を提供する組成物を有する少なくとも1つのポリマー区間を備える。
・ D2BAカテーテルは、近位ゾーンに加えられたトルクが遠位ゾーンの遠位先端に伝達されて血管内での遠位先端の回転運動を可能にするねじり剛性を有し、遠位先端がD2BAカテーテルの垂直断面に対して10~30°の範囲で斜めの角度を規定する。
【0050】
別の態様において、本発明は、血管内カテーテルシステムを提供し、前記血管内カテーテルシステムは、D2BAカテーテルと、前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記D2BAカテーテルの遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有する第二の吸引カテーテルであって、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端に隣接して配置することを可能にし、前記D2BAカテーテル内にある間に前記第二の吸引カテーテルを介して血餅の近位端に吸引圧力を加えるように構成される前記第二の吸引カテーテルと、を備える。一実施形態において、第二の吸引カテーテルは近位端と近位端ロックを有し、近位端ロックがD2BAカテーテルの近位領域と係合可能で、第二の吸引カテーテルがD2BAカテーテルの遠位先端を越えて伸びるのを防止する。
【0051】
別の態様において、本発明は、血管内カテーテルシステムを提供し、血管内カテーテルシステムは、D2BAカテーテルと、D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、D2BAカテーテルの遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有する冷却カテーテルであって、冷却カテーテルを通してD2BAカテーテルの遠位先端まで冷却流体を送るように構成された冷却カテーテルと、を備え、D2BAカテーテルと冷却カテーテルを組み合わせることにより、断熱カテーテルを通じた冷却流体の有効な流れが生じて血餅除去後の脳組織を有効に冷却できる十分な断熱が提供される。
【0052】
様々な実施形態では、
・D2BAカテーテルの外径(OD)が8Fであり、冷却カテーテルの外径(OD)が実質的に6Fであり、冷却カテーテルが0.020~0.03インチの肉厚、好ましくは0.026インチの肉厚を有する。
・冷却カテーテルの肉厚が、冷却カテーテルの長さに沿って実質的に一定であり、冷却カテーテルの遠位先端までの断熱材を含む。
【0053】
別の態様において、本発明は、血管内カテーテルシステムを提供し、血管内カテーテルシステムは。D2BAカテーテルと、D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、D2BAカテーテルの遠位先端を超える位置まで伸びるのに十分な長さを有する二次D2BAカテーテルであって、D2BAカテーテルの遠位先端を超える位置までの二次D2BAカテーテルの前進を可能にし、二次D2BAカテーテルを介して血餅の遠位にある二次血餅の近位縁に吸引圧を加えるように構成された、二次D2BAカテーテルと、を備える。
【0054】
別の態様において、本発明は、血管内カテーテルシステムを提供し、前記血管内カテーテルシステムは、D2BAカテーテルと、前記D2BAカテーテルの頸動脈への前進を内部で支援するための診断用カテーテル(DC)及びガイドワイヤ(GW)と、前記D2BAカテーテル内での操作上の移動のために最大化された外径と、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を超える位置まで伸びるのに十分な長さと、前記D2BAカテーテルを脳動脈に進める間に前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を支えるための遠位テーパと、を有する統合型支持カテーテル(ISC)と、前記ISC内で動作するために構成され、前記ISC及び前記D2BAカテーテルを脳動脈内に進めるために前記ISCの遠位先端を超えた位置まで伸びるのに十分な長さを有するマイクロワイヤ(MW)と、前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を超える位置まで伸びるのに十分な長さを有する二次D2BAカテーテルであって、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を超える位置までの前記二次D2BAカテーテルの前進を可能にし、前記二次D2BAカテーテルを介して血餅の遠位にある二次血餅の近位縁に吸引圧を加えるように構成された、二次D2BAカテーテルと、前記二次D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記二次D2BAカテーテルの前記遠位先端を超える位置まで伸びるのに十分な長さを有する二次統合型支持カテーテル(ISC)と、前記二次ISC内で動作するために構成され、前記二次ISCの遠位先端を超える位置まで伸びるのに十分な長さを有する二次マイクロワイヤ(MW)と、を備える。
【0055】
別の態様において、本発明は、血管内カテーテルシステムを提供し、前記血管内カテーテルシステムは、D2BAカテーテルと、前記D2BAカテーテル内で動作するために構成されたステントであって、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端から前記ステントの展開を可能にするために、前記D2BAカテーテルの前記遠位先端を越える位置まで伸びる十分な長さを有する押しワイヤに動作可能に接続された、ステントと、を備える。
【0056】
別の態様において、本発明は、頸部及び脳動脈にアクセスし、脳動脈から頭蓋内血餅を吸引するための血管内処置に使用するためのキットを提供し、キットは、D2BAカテーテルを備える、遠位入口ポイント(DEP)と脳動脈との間のヒト血管系内に配置するための血管内カテーテルと、少なくとも1つの診断用カテーテル(DC)であって、各DCがD2BAカテーテル内に適合してスライドする外径を有し、各DCが大動脈弓の様々な解剖学的構造にアクセスするための予め形成された先端を有し、D2BAカテーテルより長い長さを有する、少なくとも1つの診断用カテーテル(DC)と、DC内に適合してスライドする直径を有し、DCよりも長い長さを有するガイドワイヤ(GW)と、を備える。
【0057】
様々な実施形態において、
・ キットは、内部支持カテーテル(ISC)をさらに含み、ISCは、D2BAカテーテル内に適合してスライドする外径と、D2BAカテーテルを脳動脈に進める間に、きつくカーブした動脈内でD2BAカテーテルの遠位先端を支持し移行するためのテーパ付き遠位ゾーンを有する。
・キットは、2つ以上のDCを有する。
・キットは、吸引カテーテルをさらに含み、吸引カテーテルは、D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、D2BAカテーテルの遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有する。
・キットは、冷却カテーテルをさらに含み、冷却カテーテルは、D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、D2BAカテーテルの遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有する。
・ キットは、D2BAカテーテル内に適合する大きさの第二のD2BAカテーテルと、それぞれがD2BAカテーテルより大きい長さを有し、第二のD2BAカテーテル内に適合する大きさの対応する第二のISC及び第二のMWを含む。
【0058】
別の態様において、本発明は、D2BAカテーテルを通して有効量の冷却液を送るための冷却カテーテルを提供し、冷却カテーテルは、D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、D2BAカテーテルの遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有するカテーテルを備え、冷却カテーテルは、冷却カテーテルを通してD2BAカテーテルの遠位先端まで冷却流体を送るように構成されており、D2BAカテーテルと冷却カテーテルを組み合わせることにより、断熱カテーテルを通じた冷却流体の有効な流れが生じて血餅除去後の脳組織を有効に冷却できる十分な断熱性が提供される。一実施形態において、冷却カテーテルの肉厚は、冷却カテーテルの長さに沿って実質的に一定であり、冷却カテーテルの遠位先端までの断熱を含む。
【0059】
別の態様では、本発明は、頸動脈及び脳動脈へのアクセスを得るための血管内方法を提供し、遠位入口ポイント(DEP)と脳動脈との間のヒト血管系内にカテーテルシステムを配置し、前記脳動脈の1つにある脳血餅を吸引するための血管内方法であって、前記血管内方法は、
a)D2BAカテーテル、ガイドワイヤ(GW)及び診断用カテーテル(DC)を含むカテーテルシステムを、DEPを介して導入するステップと、
b)前記カテーテルシステムを大動脈弓に前進させるステップと、
c)前記GW及び前記DCを所望の頸動脈まで前進させ、前記GWを所望の頸動脈に操作するステップと、
d)前記D2BAカテーテルを前記DCと前記GWの上にある所望の頸動脈まで前進させるステップと、
e)前記DC及び前記GWを除去するステップと、
f)前記D2BAカテーテルの遠位端を支持するためのテーパ付き遠位区間を有し、脳血管系のきついカーブを通る前記遠位端の移動を容易にするように適合された内部支持カテーテル(ISC)と、ISCマイクロワイヤ(ISC MW)を導入するステップと、
g) 前記ISC及び前記ISC MWを前記血餅のある前記脳動脈に前進させるステップと、
h)前記D2BAカテーテルを前記血餅の近位面まで前進させ、前記ISC及び前記ISC MWを抜去するステップと、
i)前記D2BAカテーテルを介して前記血餅の吸引を適用するステップと、を含む。
【0060】
別の実施形態において、前記方法は、さらに、
j)ステップiにおいて血餅を抜去するために吸引を適用した後、前記血餅全体が抜去されたかどうか、及び1つ以上の遠位塞栓が存在するかどうかを決定するためにチェック血管造影を実施するステップと、前記1つ以上の遠位塞栓が存在する場合、
k)第二のISC及び第二のISC MWと一緒に前記D2BAカテーテル内で同軸移動するための大きさの第二のD2BAカテーテルを前記遠位塞栓の近位面まで前進させるステップと、
l)前記第二のD2BAカテーテルに吸引を適用し、吸引又は第二のD2BAカテーテルの抜去により、前記遠位塞栓を抜去するステップと、を含む。
【0061】
様々な実施形態において、
・ DEPが橈骨動脈であり、D2BAカテーテルが橈骨動脈穿刺からの前進に適合した近位長を有する。
・DEPが大腿動脈であり、D2BAカテーテルが大腿動脈穿刺からの前進に適合した近位長を有する。
・ステップiは、D2BAカテーテルを通して1つ以上の第一の圧力パルスを印加して、D2BAカテーテルの遠位先端を前記血餅に係合させるのを支援し、その後、少なくとも1つの第二の吸引パルスを印加して、血餅を吸引することを含む。
・この方法は、吸引ポンプにおいて測定された応答圧力に対して予め定められた圧力パルスを比較し、測定された応答圧力に基づいて後続の圧力パルスを調整するステップをさらに含む。
・ 後続の圧力パルスを調整するステップは、類似の処置から収集され分析された複数の患者からの圧力応答データを考慮する。
・ 吸引は、インターネット及び中央分析コンピュータシステムに作動的に接続された吸引ポンプを介して行われ、異なるポンプからの圧力応答データが中央コンピュータシステムによって受信されて、分析され、ポンプ圧力アルゴリズムがインターネットを介して異なるポンプに更新される。
・ポンプ圧力アルゴリズムは、カテーテルの材料、ブランド及び/又はサイズを考慮する。
・吸引が失敗した場合、吸引カテーテルをD2BAカテーテルに導入し、吸引カテーテルをD2BAカテーテルの遠位先端まで前進させ、D2BAカテーテルを通して吸引を行う。
・ 吸引が成功した場合、冷却カテーテルをD2BAカテーテルに導入し、冷却カテーテルをD2BAカテーテルの遠位先端まで前進させ、冷却カテーテルを通して冷却流体を流し、脳組織の冷却を行う。
・この方法は、冷却カテーテルを通して脳栄養液を流すステップをさらに含む。
・冷却カテーテルが近位断熱性を有するISCであり、ISCが抜去され吸引が完了した後、ISCを再び導入し、ISCを通して脳栄養液を流す。
【0062】
別の態様において、本発明は、フィブリンリッチ領域と赤血球リッチ領域を有する異質な血餅を脳血管から効果的に除去することを可能にする方法を提供し、前記方法は、
a)D2BAカテーテルを、前記脳血管内の血餅の近位端に隣接して配置するステップと、
b)第一の圧力パルスを印加して、前記血餅の第一の近位領域の吸引を行うステップと、
c)第二の圧力パルスを印加して、前記血餅の第二の遠位領域の吸引を行うステップと、
を含む。
【0063】
様々な実施形態において、
・第一の近位領域はフィブリンリッチ領域であり、第二の遠位領域は赤血球リッチ領域である。
・この方法は、第一の圧力パルスの送達後に第一の戻り圧力波をモニターし、第一の戻り圧力波に基づいて第二の圧力パルスを調整するステップをさらに含む。
【0064】
別の態様において、本発明は、冷却カテーテルを通して供給される冷却液の温度を制御するための冷却装置を提供し、冷却装置は、冷却カテーテルの近位端に冷却液体を供給するための流体冷却モジュールを備え、流体冷却モジュールは、冷却カテーテルを通して計算された量の冷却液を送り出すための流体ポンプ及びコントローラを有し、計算された量は、冷却カテーテルを通る熱伝達のモデリング、患者に対して選択されたD2BAカテーテルのモデリングデータ、患者データ、及び冷却カテーテルの遠位端における所望の冷却液温度に基づく。
【0065】
別の態様において、本発明は、ガイドカテーテルの支持なしに脳動脈にアクセスし、脳動脈から1つ以上の頭蓋内血餅に吸引を適用するためのD2BAカテーテルの使用を提供し、前記D2BAカテーテルは、遠位入口ポイント(DEP)と脳動脈との間のヒト血管系内に配置するために、レベル1又はレベル2の動脈セグメント又は同等部位から上頸/頭蓋底部近傍動脈血管まで伸びるのに十分な遠位長を有する軟質遠位先端領域であって、6F~10Fの外径(OD)を有する、軟質遠位先端領域と、接合部で前記軟質遠位先端領域に接続された近位領域であって、前記DEPを介して前記患者の外側まで伸びるのに十分な長さを有し、前記軟質遠位先端領域の内径と実質的に同様の外径を有する、近位領域と、を備え、前記D2BAカテーテルは、前記D2BAカテーテルを介する吸引を可能にして、前記1つ以上の血餅を除去する。
【0066】
一実施形態において、軟質遠位先端領域及び前記近位領域は、互いに均衡した十分な柔軟性と、軸方向及び径方向の圧縮剛性を有し、軟質遠位先端領域をガイドワイヤ(GW)と診断用カテーテル(DC)の上で前進させ、外部支持カテーテルなしで軟質遠位先端領域の遠位先端を上頸/頭蓋底部近傍の位置に配置できるようにする。
【0067】
別の実施形態において、軟質遠位先端領域及び近位領域は、互いに均衡した十分な柔軟性と、軸方向及び径方向の圧縮剛性を有し、軟質遠位先端領域がガイドワイヤ(GW)と診断用カテーテル(DC)の上で前進した上頸/頭蓋底部近傍の位置にあるとき、ガイドワイヤと診断用カテーテルを抜去してもD2BAカテーテルが頸動脈から脱出しない。
【0068】
別の実施形態において、軟質遠位先端領域及び近位領域が、互いに均衡した十分な柔軟性と、軸方向及び径方向の圧縮剛性を有し、GW及びDCが抜去されたとき、マイクロワイヤ(MW)及び統合型支持カテーテル(ISC)はD2BAカテーテルを介して遠位先端に前進させることができ、D2BAカテーテルはMW及びISCの上で、さらに前進し、遠位先端が血餅に隣接する脳動脈壁と実質的に係合する位置に至る。
【0069】
別の態様において、本発明は、血管内処置に使用するための血管内カテーテルを提供し、前記血管内カテーテルは頸動脈及び脳動脈へのアクセスを獲得し、脳動脈から1つ以上の頭蓋内血餅を吸引するための構造を有し、前記血管内カテーテルは遠位入口ポイント(DEP)と脳動脈との間のヒト血管系内に配置するために、脳動脈のレベル1又はレベル2の動脈セグメント又は同等部位から上頸/頭蓋底部近傍動脈血管まで伸びるのに十分な遠位長を有する軟質遠位先端領域であって、前記軟質遠位先端領域は6F~10Fの外径(OD)を有し、前記軟質遠位先端領域は柔軟性を有し、頸動脈内に配置された診断用カテーテル(DC)とガイドワイヤ(GW)の上に乗り、前記DCと前記GWの脱出を引き起こすことなく、前記大動脈弓を通して前記頸動脈にアクセスでき、前記DCと前記GWを除去すると、前記D2BAカテーテルは脳動脈へとさらに前進できる、軟質遠位先端領域と、前記軟質遠位先端領域に移行する近位領域であって、前記DEPを介して患者の外部にまで伸びるのに十分な長さを有する、近位領域と、を備え、前記D2BAカテーテルは、ガイドカテーテルの支持なしに前記頸動脈まで前進させることができる。
【0070】
別の態様において、本発明は、6Fより大きい外径と、体外の遠位入口ポイント(DEP)から脳動脈のレベル1又はレベル2セグメント内の血餅まで伸びるのに十分な長さを有する遠位入口ポイント~脳吸引(D2BA)カテーテルを提供し、前記D2BAカテーテルは、ガイドワイヤ(GW)及び診断用カテーテル(DC)を介して前記DEPから前記GW及び前記DCの遠位先端まで前進するために、前記GW及び前記DCが上部頸部/頭蓋底近傍レベルに配置されているときに、その長さに沿って十分な軸方向の柔軟性/硬度を有し、前記D2BAカテーテルは、前記GW及び前記DCのみによる支持で大動脈弓を通して前進させることができる。
【0071】
別の態様において、本発明は、カテーテルを備える、遠位入口ポイント~脳吸引(D2BA)カテーテルを提供し、前記カテーテルは、6F~10Fの外径と、体外の遠位入口ポイント(DEP)から脳動脈血餅まで伸びるのに十分な長さと、前記D2BAカテーテルを前記DEPからガイドワイヤ(GW)及び診断用カテーテル(DC)の上に前進させ、前記GW及び前記DCが上部頸部/頭蓋底部近傍レベルに位置するときに、前記GW及び前記DCの遠位先端まで前進させるためにその長さに沿って、軸方向の柔軟性/硬度を有する軟質遠位先端ゾーンであって、前記血餅が位置する動脈の内径と実質的に一致するように選択された遠位先端外径と、前記血餅から上部頸椎/頭蓋底部近傍レベルまで伸びる長さを有する軟質遠位先端ゾーンと、前記D2BAカテーテルを前進させるためにその長さに沿って軸方向の柔軟性/硬度を有する近位ゾーンであって、前記GW及び前記DCによる支持のみで前記軟質遠位先端ゾーンを、大動脈弓を通して前進させることができる、近位ゾーンと、を備える。
【0072】
別の態様において、本発明は、6Fより大きい外径と、遠位入口ポイント(DEP)から脳のレベル1以上の動脈セグメントまで伸びるのに十分な長さを有する吸引カテーテル(AC)を提供し、前記ACが遠位領域と近位領域を有し、軸方向の柔軟性と硬度とが組み合わさって、前記ACは、前記DEPと頸動脈の間に配置された診断用カテーテル(DC)及びガイドワイヤ(GW)の上で、前記DC及び前記GWを脱出することなく、ガイドカテーテル(GC)の支持なしに前進させることと、前記DCと前記GWは、前記ACを脱出することなく、前記ACを抜去することと、少なくとも1つのマイクロカテーテル(MC)及びマイクロワイヤ(MW)と共に、レベル1以上の動脈セグメントの血餅まで前記ACを前進させることと、前記血餅を吸引するために前記ACから吸引することと、ができる。
【0073】
別の態様において、本発明は、6F~10Fの外径と、遠位入口ポイント(DEP)から脳動脈内の血餅まで伸びるのに十分な長さを有するカテーテルを備える吸引カテーテル(AC)であって、前記ACが、前記血餅が位置する脳動脈の内径に実質的に対応する遠位先端外径と、前記血栓から上頸/頭蓋底部近傍まで伸びる長さとを有する遠位先端を有する遠位領域を有し、前記遠位領域と近位領域とは、軸方向の柔軟性と硬度とが組み合わさって、前記ACが、前記DEPと頸動脈の間に配置された診断用カテーテル(DC)及びガイドワイヤ(GW)の上で、前記DC及び前記GWを脱出することなく、ガイドカテーテル(GC)の支持なしに前進させることと、前記DCと前記GWが、前記ACを脱出することなく、前記ACを抜去することと、少なくとも1つのマイクロカテーテル(MC)又は統合型支持カテーテル(ISC)及びマイクロワイヤ(MW)と共に、レベル1以上の動脈セグメントの血餅まで前記ACを前進させることと、前記遠位先端が前記血餅のすぐ近くで、前記血餅を吸引するために前記ACから吸引することと、ができる。
【0074】
別の態様において、本発明は、D2BAカテーテルの前進を支援するための統合型支持及び冷却カテーテル(ISCC)を提供し、前記ISCCは、前記D2BAを通じた血餅の吸引後に前記ISCCを通じて冷却液を流すことを可能にし、前記ISCCは、患者の脳血管の蛇行区間を通過する際に前記D2BAの遠位先端を支持するためのテーパ付き遠位ゾーンと、冷却液を前記ISCCの近位端に1~3℃で導入し、前記冷却液が前記ISCCから2~8℃で排出することを可能にする断熱近位ゾーンとを有するカテーテルを備える。
【図面の簡単な説明】
【0075】
本発明は、図面を参照して説明される。
【0076】
図1A】従来技術に従う典型的な大動脈弓及び関連する血管のスケッチである。
図1B】従来技術に従う中血管閉塞部位(MeVO)を示す概略図である。これらは、一般に、(A):近位M2セグメント、遠位M2セグメント、M3セグメント、A2セグメント、及びA3セグメントを含む前循環における部位として定義される。後循環におけるMeVO部位は、一般に、P2セグメント又はP3セグメント(B)として定義される。
図1C】従来技術に従って、M1セグメントでMCA内に留まった血餅Yの概略図である。
図2A】本発明の一実施形態による、ガイドワイヤ、診断用カテーテル、及びG2BAの大動脈弓を通り、総頸動脈(CCA)への前進を示す概略図である。
図2B】軸方向硬度、半径方向圧縮性、軸方向圧縮性、及びトルク伝達性の構造パラメータを含む、本発明によるG2BAの特徴を示す模式図である。
図3】患者の脳動脈内にG2BAカテーテルを配置するための、本発明の一実施形態による手順のステップを示す概略図である。
図3A】患者の脳動脈内のより高いレベルにG2BAカテーテルを配置するための、本発明の一実施形態による手順の追加ステップを示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態に従って、統合型サポートカテーテル(ISC)の使用が脳空腔の蛇行区間を介してG2BAカテーテルを補助することを示す概略図である。
図4A】本発明の一実施形態に従って、統合型サポートカテーテル(ISC)が脳空腔の蛇行区間を介してG2BAカテーテルを補助するものとして、2つのマイクロカテーテルを用いることを示す概略図である。
図5A】従来技術に従う吸引カテーテルと血餅の潜在的な係合を示す概略図である。
図5B】吸引が適用された後の、従来技術に従う吸引カテーテルと血餅との潜在的な係合を示す概略図である。
図5C】吸引が適用された後の、本発明の一実施形態によるG2BAカテーテルと血餅との潜在的な係合を示す概略図である。
図5D】トルク伝達能力のある斜めの先端を有するG2BAカテーテルを示す概略図である。
図6A】G2BA内に詰まった血餅と、G2BAの遠位先端の近位にある吸引カテーテルとを示す概略図である。
図6B】遠位塞栓の二次吸引を行うために使用されているG2BAカテーテル及び第二のG2BAカテーテルを示す概略図である。
図6C】G2BAカテーテル内の断熱/冷却カテーテルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
(理論的根拠)
本発明者は、脳動脈から血餅を吸引することで、現在のカテーテルの設計及び方法では限界があることを理解した。
【0078】
(用語説明)
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「一つの(a、an)及び「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、複数形も含むように意図されている。本明細書で使用される場合、用語「備える(comprises)」及び/又は「備えている(comprising)」は、述べられた特徴、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連する記載項目の1つ以上の任意のもの及び全ての組合せを含む。
【0079】
「遠位」、「近位」、「前方」、「後方」、「下」、「下方」、「下部」、「上」、「上部」などの空間的相対用語は、図に示されるように、ある要素又は特徴の他の要素又は特徴に対する関係を説明するために、説明を容易にするために本明細書で使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に描かれた向きに加えて、使用又は動作中の装置の異なる向きを包含することを意図していることが理解されよう。例えば、図中の特徴が反転されている場合、他の要素又は特徴の「下方」又は「下」として説明された要素は、その後、他の要素又は特徴の「上」に配向されることになる。したがって、例示的な用語「下」は、上及び下の両方の配向を包含することができる。特徴は、他の向き(90°回転した、又は他の向き)であってもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子は、それに応じて解釈される。同様に、用語「上向き」、「下向き」、「垂直」、「水平」などは、特に指示しない限り、説明の目的でのみ本明細書で使用されている。
【0080】
ある要素が、他の要素に「上にあり」、「取り付けられ」、「接続され」、「結合され」、「接触して」などと言及される場合、他の要素に直接的に、その上にある、取り付けられている、接続されている、結合されている、接触している、又は介在要素も存在し得ることが理解されるであろう。これに対し、ある要素が、例えば、他の要素に「直上にあり」、「直接的に取りつけられ」、「直接的に接続され」、「直接的に結合され」、又は「直接的に接触して」と言及される場合、介在要素は存在しない。
【0081】
「第一の」、「第二の」等の用語を使用して様々な要素、構成要素等を本明細書で説明することもあるが、これらの要素、構成要素などは、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、ある要素、構成要素などを別の要素、構成要素から区別するためにのみ使用される。したがって、本明細書で論じた「第一の」要素、又は構成要素は、本発明の教示から逸脱することなく、「第二の」要素、又は構成要素と称することも可能である。さらに、操作の順序(又はステップ)は、特に断らない限り、特許請求の範囲又は図に示される順序に限定されない。
【0082】
「軸方向硬度」、「半径方向圧縮性」、「軸方向圧縮性」及び「トルク伝達性」などの構造パラメータは、当業者に理解されるように、血管内処置中の人体におけるカテーテルの性能又は挙動に関連するカテーテルの種々の機能特性に関するものとして説明することができる。すなわち、本明細書に記載されるようなカテーテルは、他の機器(様々な機器の部品の不在を含む)を品揃えて使用する複雑な医療処置において使用される医療機器の高度な部分であり)、数値範囲を利用した特定の定義とは対照的に、その性能という点でより明確かつ広範に定義されている。
【0083】
本明細書に記載されている以外、又は特に明示的に指定されていない限り、本明細書及び添付の請求項の以下の部分において、材料の量、元素の含有量、時間及び温度、量の比などに関する数値範囲、量、値及びパーセントのすべては、「約」という語がその値、量、又は範囲とともに明示されていない場合でも、「約」が前に付いているかのように読み取られることがある。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性によって変化し得る近似値である。各数値パラメータは、少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、報告された有効数字の桁数に照らして、通常の丸め技術を適用することによって、少なくとも解釈されるべきものである。一般に、カテーテルの外径はフレンチ(FR)単位で表記されるのに対し、カテーテルの内径(ID)はインチ単位で表記される。「シース」の寸法に言及する場合、フレンチ単位は内径について言及するために使用される。
【0084】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0085】
ここで、図を参照しながら本発明の様々な態様を説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるように提供されている。さらに、図面は、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、正確な寸法よりも動作原理を強調することを意図している。
【0086】
(はじめに)
図1Aは、典型的な大動脈弓5と、上行大動脈5a、下行大動脈5b、左鎖骨下動脈5c、総頸動脈5d、腕頭動脈5e、右鎖骨下動脈5f及び内頸動脈5gなどの関連脈管とを示している。図1Bは、中血管閉塞部位(MeVO)を示す概略図である。これらは、一般に、近位M2セグメント、遠位M2セグメント、M3セグメント、A2セグメント、及びA3セグメントを含む前循環の部位(A)と定義される。後循環のMeVO部位(B)は、一般にP2セグメント又はP3セグメントと定義される。図1Cは、MCAのM1セグメントで留まった血餅の概略図である。関連血管には、総頸動脈(CCA)、眼動脈(OA)、内頸動脈(ICA)、前大脳動脈(ACA)、M1セグメントとM2セグメントを含む中大脳動脈(MCA)を含む。
【0087】
本発明に従って、図2A及び図3を参照しながら、ラージサイズ吸引(LSA)カテーテル10を説明するが、これは、1)中大脳動脈及び脳底動脈(又はそれ以上)のレベル2セグメント(集合的に「標的レベル」)を含む脳血管系の特定のゾーン内の典型的な血餅に隣接して配置されることができる遠位端10bを有する遠位ゾーン10aと、2)LSAカテーテルが大動脈弓を通って頸動脈に進められるときに外部(例えば、ガイドカテーテル(GC)又はバルーンガイドカテーテル(BGC)を介して)サポートを必要としない近位端10dを有する近位ゾーン10cと、3)6フレンチ超で10フレンチ以下である外径(OD)と、を有する。
【0088】
本明細書の文脈において、様々な実施形態において、LSAカテーテルは、脳血管内処置を実施するための最も一般的なアクセスポイント(すなわち鼠径部)を指す鼠径部から脳への吸引カテーテル(G2BA)と称されている。しかしながら、LSAカテーテルは、また、脳カテーテル(D2BA)への遠位入口点(DEP)とも称され、大腿動脈(鼠径部)と橈骨動脈の両方を含む遠位入口ポイントを想定している。すなわち、鼠径部以外の脳血管内処置のための他の入口ポイントが、本発明に従って企図されることが理解される。一般に、以下に記載するように、D2BAの近位ゾーンの長さ寸法は、鼠径部入口ポイント対橈骨動脈入口ポイントからのそれぞれの距離に配慮を有するDEPに基づいて調整される。このように、LSA、G2BA及びD2BAカテーテルへの言及は、本明細書内で使用される。
【0089】
一般に、G2BAカテーテルは、より大きな外径(7~10F)と、近位端10dから遠位端10bまで伸びる対応する大きな内腔(内径)とを有する脳内の血管内処置を行うために有用なカテーテルとして定義され、内腔のIDは0.066インチ~0.105インチの範囲である(好ましくは0.072インチ~0.105インチ、より好ましくは意図する標的レベルに基づいて決定される0.078インチ~0.105インチである)。
【0090】
一般に、G2BAカテーテルの遠位端での外径は、標的血管の内腔径と密接に一致することが期待され、G2BAの内径は、本明細書に記載の吸引処置を行うために必要な剛性をもたらす可能な限り最大の(すなわち最小の肉厚を有する)ものである。
【0091】
このように、本発明は、1つのレベルにおいて、血餅とG2BAカテーテルとの間の直径差を最小にすることによって、吸引による血餅捕捉を促進しようとするものである。この点に関して、G2BAカテーテルのIDは(カテーテル肉厚のために)血管内腔に等しくなり得ないが、この差を最小にすることによって、血餅捕捉が実質的に改善され得ることが認識される。さらに、血餅は通常ある程度の圧縮性を有し、標的血管と実質的に同じ外径を有するカテーテルの配置は、以下で詳述されるように、血餅への吸引圧を改善する標的血管内でカテーテルが効果的に楔状となることも認識される。また、G2BA内腔が大きいと、血管内膜を損傷することなく、より高い吸引力を適用することができることも認識されている。
【0092】
重要なことに、過去において、より大きなサイズの吸引カテーテルを脳内に進めることは、しばしば不可能であった。その理由は、吸引カテーテルを進める際に吸引カテーテルを外部から支持するために、より大きなガイドカテーテルを頸部に進める必要があるためである。外付けのガイドカテーテルを使用することにより、ガイドカテーテルを介して進めることができる吸引カテーテルの有効サイズが小さくなってしまう。また、従来は、吸引カテーテルは、そのようなカテーテルが相対的に遠位で硬いために、DC/GWの上で吸引カテーテルを前進させることができなかった。さらに、従来は、そのような血管(例えば、眼動脈)が蛇行しており、その遠位先端が相対的に硬いために、吸引カテーテルを前進させることが困難であった。特許文献1は、脳血管の蛇行部を通る特定のカテーテルの前進が内部支持カテーテル(ISC)を利用して改善できることを教示しているが、吸引カテーテルの構造には、限界がある。
【0093】
表3に示すように、G2BAは、脳の特定のレベルへのアクセスを可能にする異なる長さ及び外径(すなわち、フレンチサイズ;「カテーテルサイズ」と称する)で設計されている。これらのパラメータは、表3において特定され、議論される。
表3:G2BAの特徴及び特性
【表3(1)】
【表3(2)】
【表3(3)】
【0094】
重要なことに、近位ゾーンと遠位ゾーンの間の移行は好ましくは急激ではなく、移行ゾーンは、近位ゾーンと遠位ゾーンの特性の間の移行を提供する多数のサブゾーンを含んでもよいことが理解されることである。すなわち、遠位ゾーンの軸方向硬度は近位方向に徐々に増加してもよく、その結果、G2BAの物理的特性が4~8+cmのセグメントにわたって特性が一致するサブゾーンを有し、その後、異なる特性を有する異なるサブゾーンにステップする。近位ゾーンについては、これらは、P1、P2及びP3(硬度がP1-P3から増加する場合がある)として、遠位ゾーンについては、D1、D2及びD3(硬度がD1-D3から減少する場合がある)として代表的に示されている。このように、遠位ゾーンと近位ゾーンとの間の移行点は、一般に、移行点が高頚動脈である遠位先端からの(特定の標的レベルに対する)測定距離であると考えられている。いくつかの実施形態において、特定の放射線不透過性マーカー40aを移行点に組み込んで、医師に移行点の位置と放射線不透過性遠位先端マーカー40とを視覚化するのを支援することができる。
表4:カテーテルの典型的なOD及びIDのサイズ
【表4】
【0095】
G2BAカテーテルの相対的なサイズと、遠位先端が血管の内径と実質的に係合し、血餅に近接するレベルまでG2BAを展開する能力は、過去のシステムに比べて多くの利点をもたらし、特にアクセスまでの時間と、吸引による血餅捕捉の能力とを向上させる。
【0096】
G2BAカテーテルは、処置中の順行性流及びそれに伴う微小塞栓が運び去られるリスクを防止(又は実質的に停止)することにより、GC又はBGCを不要にする。すなわち、血管のIDに対するG2BAの有効サイズは、標的血管内での遠位先端部の穏やかな楔により、G2BAカテーテルが配置された後の逆行性流を実質的に防ぐことができる。
【0097】
(G2BAの構築)
脳の領域にアクセスするために使用されるカテーテルは、押し出し性、トルク伝達性、追跡可能性及び硬度を含む所望の性能特性をカテーテルに与えるために様々な技術を使用して構築される。一般に、カテーテルは、ポリウレタン、ナイロン、シリコーンゴム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ラテックス、熱可塑性エラストマー、ポリイミドを含むエンジニアリングポリマーから構築されることがある。ポリマーや金属のマイクロフィラメントを組み込んでもよい。
【0098】
典型的には、カテーテルは、鋳造及び/又はマンドレル上の組み立てを含む広範囲の技術を使用して押出成形、熱成形及び/又は熱硬化されたポリマーの種々の配合物の小さい部分の集合体から製造される。各配合は、異なる特性を含むように設計されている。したがって、異なるサブゾーンは、例えば、上述のように近位ゾーン又は遠位ゾーンのいずれかの長さに沿ってわずかに異なる硬度特性を有する場合がある。
【0099】
(展開の方法及び使用)
本発明の方法に従って、G2BAカテーテルを導入するプロセスについて、図2A図3及び図3Aを参照しながら説明する(「G2BA法」と呼ぶ)。説明のために、図2A図3及び図3Aは、大腿動脈からのアクセス及びICAを介したM1セグメントへの所望のアクセスを想定している。また、図3及び3Aにおける各機器の長さは、特に縮尺通りに描かれておらず、具体的には、以下に概説する各ステップにおいて一貫した全体の長さを示すために、明確化するために、体外の各機器の区間は描かれていないことに注意すべきである。
【0100】
はじめに、動脈穿刺後、シース20を展開する(ステップ1)。大腿動脈シースは、約12F(典型的には9~10F)の最大内径を有することになる。橈骨動脈又は上腕動脈を介したアクセスは、約7F~8Fの最大内径を有するシースを利用する。
【0101】
その後又は同時に、G2BA10、先端24aを有する診断用カテーテル(DC)24及びガイドワイヤ(GW)26(典型的には0.035インチ)のアセンブリを組み立て、シースの中に徐々に導入し(ステップ2)、大動脈弓まで前進させる。G2BA、DC及びGWの選択されたアセンブリは、大動脈弓アクセス血管の医師の評価及び患者の大動脈弓の解剖学/可変性とともに、血餅の位置に基づくであろう。すなわち、処置を計画する際に、医師は血餅の位置と血餅へのアクセスをどのように行うかを決定しているであろう。この例では、血餅が総頸動脈(CCA)及びICAを介するアクセスを必要とするM1レベルにある場合、8FのG2BAは、CCAにアクセスするための好ましいDCと組み合わせて選択され得る。あるいは、血餅が右鎖骨下を介するアクセスを必要とする脳底部システムのP1レベルに位置する場合、より小さい(例えば、7Fの)G2BAと異なるDCが選択され、組み立てられ得る。
【0102】
GW及びDCが大動脈弓まで前進すると、G2BAの遠位先端部10bも前進し、典型的には、後方20cm以内の位置に保持される。
【0103】
DCとGWを操作して、所望の頸動脈にアクセスする(ステップ2)。GWは、一般に、頸動脈へのアクセスが得られているステップの間、DCと実質的に同じ位置に保持される。このステップの間、DCの先端を所望の血管に引っ掛けるために、DCとGWは、トルクをかけられ、押され、及び/又は、引っ張られる。DC/GWが所望の血管に入ったら、GWとDCを組み合わせて前進させることにより、両者を頭蓋底まで前進させることができる(ステップ3)。例えば、内頚動脈(ICA)の起始部に重度の蛇行や狭窄、閉塞がある場合、外頚動脈(ECA)への最初のアクセスを得ることも可能である。特定の状況において、医師がシステムにサポートを提供するのを支援するために、第二の「バディワイヤ」、すなわち第二のGWを使用して、展開されることがある。
【0104】
GW及びDCが頭蓋骨のほぼ基部に保持されている状態で、G2BAの遠位先端がDC及びGWの遠位先端に隣接するまでG2BAがDC及びGWに従うように、G2BAもDC/GW上に前進される(ステップ3)。G2BAは、遠位端が柔らかく、形状が決まっていないため、DCとGWに追従しやすくなっている。この時点で、柔らかい遠位端は完全に頸動脈内にあり、G2BAの硬い近位部分は頸動脈内にあり、大動脈弓を過ぎて約10cm(8~12cm)にある。GW及びDCは、典型的には、頭蓋底を越えて進められず、除去されるであろう(ステップ4)。
【0105】
重要なことに、G2BAの硬い部分が頸動脈内にあり、DC及びGWが除去されているため(ステップ4)、G2BAにさらなる機器が導入された場合に、上行大動脈へのG2BAの脱出の危険性が実質的に排除されることである(ステップ5)。
【0106】
ステップ5では、マイクロカテーテル(MC)又は統合型支持カテーテル(ISC)28とマイクロワイヤ(MW)30を導入して血餅Yまで進める。MC又はISCとMWで血餅に到達したら、G2BA10をMC又はISCの上で血餅の面まで前進させる。以下に説明する理由により、ISCを使用することが好ましい。図4に示すように、ISC28は、遠位テーパ28a、直線区間28b、及び近位テーパ28cを有すること(種々の実施形態において、ISCは近位テーパを有さず、直線区間28bはISCの近位長全体に沿って伸びていてもよい)を特徴とし、カテーテルの遠位端10bとマイクロカテーテルの間の有効な移行を支援し、そうでなければ、提供して、カテーテルの遠位端10bの滑らかな延長を形成する。すなわち、ISCは、G2BAカテーテルの遠位端を満たし、特にカテーテルアセンブリが血管系50のきついカーブエリアを通って移動されるときに、カテーテルに滑らかな延長を提供する。血管壁50と伸びて係合することによって、血管壁は、ISCがG2BAの遠位先端10bに対して力F2を及ぼすように、ISCを介して伝達される力F1を及ぼし、それは次に、G2BAが血管50内でより効果的に押し出されることを可能にするように、G2BAの位置を合わせる。このように、G2BA、ISC及びMWのそれぞれを選択的に操作することによって、医師は、G2BAを蛇行部を越えて前進させることができる。
【0107】
医師は、G2BAが詰まる可能性は低いと考えることができるため、ISCは必要とされないが、ほとんどの場合、G2BAが詰まる可能性を見越して、MCの代わりにISCを導入することが好ましい。
【0108】
さらに、図4Aに示すように、代替案は、医師が2つ以上のマイクロカテーテル(29a、29b)を使用して、きついカーブの周りでG2BAを緩和することであってもよい。この場合、各MCは、G2BAの遠位先端から短い距離を選択的に前進することができ、G2BAがスタックするのを防ぐための位置合わせを提供することができる。
【0109】
MC/ISC及びMWは前方に押し出され、G2BAの遠位先端から伸びる。MC又はISCとMWとG2BAは、それぞれを順次操作することにより、徐々に血餅まで進む。
【0110】
重要なことに、過去の吸引カテーテルと比較して、G2BAの外径が大きく、比較的に大きな遠位先端がさらに前進していることに改めて注目すべきである。
【0111】
遠位先端部の直径が大きいことは、一般に、G2BAがそれの入っている血管を本質的に閉塞し、したがって、血管壁からの支持圧力により、図5Aに示すようにわずかに偏向するのとは反対に、図5Cに示すようにG2BAの遠位先端が血管に対して垂直に整列する可能性がより高くなることを意味している。すなわち、図5Aに示すように、血管よりも小さい従来技術によるACは、カテーテルの内側縁及び外側縁に沿って加えられる押力が等しくないことがあり、その結果、より大きな力F3がある外側縁が、内側縁及び力F4と比較して、遠位先端ACの片側を、血管を通ってさらに延ばし、遠位先端を角度θに偏向させる。図5Aに示すように、遠位先端ACtが整列していない場合、吸引圧P1をかけると、P2及びP3で示すように、血液がカテーテル内に逆流する可能性があるので、有効な圧力があまりかけられない結果となり得る。
【0112】
さらに、より小さいACで血餅捕捉を改善する技術は、ACに吸引を導入するステップと、血餅がACと潜在的に整列すること及び/又はACの遠位先端と係合するように変形することを可能にするための期間(通常90秒)を待機するステップとを含む。しかしながら、図5Bに示すように、吸引圧P1の印加は、血餅YをACの周囲に変形させ、したがって、血餅が吸引されるのを阻止させる可能性、及び/又は血餅を断片化させる可能性がある。
【0113】
図5Cに示すように、G2BAの遠位先端が血餅と整列する可能性がより高く、これは多くの状況において血餅捕捉の可能性を向上させることになる。
【0114】
G2BAは、その遠位先端開口部が大きく、したがって、血管に対して垂直である可能性が改善されているので、血管壁に対して整列し密閉される可能性がより高い。したがって、遠位先端周辺からの「漏れ」がより少ないという点で、吸引の適用がより効果的であり得る。
【0115】
(血餅断片化/新規領域における塞栓の防止方法)
他の態様において、本発明は、血餅断片化を低減する方法及び/又は新規領域における塞栓を低減する方法を提供する。周知のように、血餅は、血餅の全体的な剛性/凝集力に影響を及ぼす異なる組成を有する異なるゾーン又はセグメントで構成され得る。一般に、血餅は、組成及び一貫性において、より堅いフィブリンリッチゾーン/断片と、これらのゾーン間の凝集力が比較的強く又は比較的弱くあり得るより柔らかいゾーン/断片との間に及ぶことがある。フィブリンリッチゾーンは一般に血餅を保持する凝集力が強いのに対し、他のゾーンは凝集力が弱く、断片化しやすい。小型の吸引カテーテルを使用する場合、及び/又は血餅がフィブリンリッチな場合、血餅がカテーテルの先端で「詰まり」、吸引によってカテーテル内に抜去できなくなることは、頻繁にある。血餅が詰まった場合、ACの抜去が必要となるが、これには2つの主な潜在的欠点がある。第一に、抜去という行為によって、体位が崩れ、必要に応じて体位を回復するのに時間がかかる。第二に、抜去という行為は、血餅の断片化を引き起こす可能性があり、血餅の一部/断片のみが抜去され、血餅の一部/断片が血餅部位に残される。この血餅の断片は、より小さく、遠位血管に入り込む可能性があり、回収がさらに困難になる。また、血餅を抜去する際に、他の太い血管の起始部に出くわすことがある。例えば、カテーテルがMCAから抜去されるとき、ACAの起始部を横切ることになるが、このとき血餅は断片化し、血餅の一部がACAに入り、新たな脳卒中、一般にINT(新規領域における梗塞(INT:infarct in new territory)と呼ばれるものを引き起こし得る。
【0116】
断片化が生じた場合、最初のピースを抜去した後、ACを血餅の表面に戻して、1つ以上の残りの断片を除去する必要があり、このため、再灌流に大きな時間的遅れが生じる。
【0117】
このように、G2BAはまた、G2BAの意図されたレベルで血餅に加えられる吸引力を改善することによって、血餅の断片化を低減する方法も提供する。これは、血餅を完全に摂取する可能性が高く、断片化を引き起こす可能性のあるG2BAの抜去を必要とする可能性を低減する。
【0118】
同様に、完全に吸引又は抜去されなかった血餅は、遠位部位に移動する1つ又は複数の追加のピース/塞栓に断片化される可能性がある。したがって、G2BAは、さもなければ遠位塞栓を生じさせるであろうあらゆる小さい断片が血餅の主要な断片とともに吸引される可能性を増大させる改良された吸引圧力を血餅に加えることによって、新規領域における塞栓を減少させる方法も提供する。
【0119】
(斜めのG2BA先端及びトルク伝達可能なG2BA)
図5Aは、ACの先端が、遠位先端が血管壁に対して角度θを有し得るようなカーブの周りを押すときに、偏向し得ることを示している。遠位先端の特定の方向及び血餅の特定の近位表面に応じて、遠位先端と血餅との間のこの接触角は、吸引を支援することも、あるいは代わりに吸引に悪影響を及ぼすこともある。例えば、遠位先端が楕円形の開口部を形成し、遠位先端が血餅との接触角を改善するように配向される場合、吸引は促進され得るが、斜めの表面が血餅の近位表面に対して「平行」でない場合、遠位先端と血餅との接触角が同様に吸引を害する可能性がある。一般に、斜めの表面は接触表面積を増加させ、血餅を摂取する機会をさらに増加させる可能性がある。過去において、吸引カテーテルは、トルクをかけるように設計されていなかったので、接触角を制御又は変更することができるように設計されていなかった。
【0120】
現在のカテーテルは、柔らかい材料で作られているので、トルクを伝達できず、カテーテルの本体外部にある部分でトルクをかける(回転力を加える)と、遠位端に力を伝達できず、代わりにカテーテル自体が損傷する。
【0121】
一実施形態では、G2BAは、約100~120+cmの近位部分がトルク伝達可能であり、したがって、トルク力が伝達されるのは、より柔らかい遠位部分の15~20+cmだけであり、トルク力を加えることで遠位先端を回転させるのに成功する可能性がより高いように構築される。図5Dは、斜めの遠位先端と血餅との間の接触角を改善するためにトルクをかけることができる斜めの遠位先端10bを有するトルク伝達可能な遠位部分を有するG2BA10を示す。一般に、多くの場合、外側遠位先端がカーブの外側に配置されること、及び/又は血餅の最も近位縁に隣接して配置されることを確実にすることが望ましい。遠位先端の配置を視覚化できるようにするために、電波不透過性マーカー40を視覚先端に配置する。
【0122】
場合によっては、医師は血管に対する遠位先端の位置を十分に知らないことがあり、吸引圧力下での斜め先端の回転運動が、血管内で先端部の最も好ましい配向を引き起こし、血餅の突然の摂取を引き起こす。
【0123】
(さらなる遠位処置)
他の実施形態において、詰まった血餅の捕捉を強化する方法を説明する。一例では、G2BAで血餅を吸引しようとした後、血餅が遠位先端で詰まっている場合がある。医師は、G2BAを抜去することを選択し、G2BAが抜去された場合、血餅が断片化しないこと及び/又は遠位塞栓をもたらさないことを望み得る。図6Aに示すように、G2BAが提供する1つの解決策は、G2BAの遠位先端及び詰まった血餅に到達するように、G2BA10を通してさらなる吸引カテーテルACを走らせるオプションである(詰まった血餅を保持するために小さいACを通して負/吸引圧を維持しながら)。典型的なG2BA配置では、G2BAは8Fカテーテルであり、したがって、約6FのACをG2BAの上に走らせることができる。好ましくは、6Fのカテーテルは、カテーテルがG2BAから突出できないようにして、したがって、先端で詰まっている血餅が誤って外れることがないように、設計されている。重要なことに、図6Aに示すように、6FのACをコルク栓の上に置くことによって、6FのACを介して実質的に大きな吸引力P5を適用することができることである。詰まった血餅の中心でより高い吸引圧をかけることで、より小さなカテーテルに、吸引する能力を高めることができる。また、小さいカテーテルに吸引できなくても、吸引力が加わることで、先端でしっかりと保持され、6Fカテーテルを抜去する際に、血餅全体が大きいカテーテルに摂取されるプロセスを促進することができる。したがって、この追加の吸引圧の適用と6F ACの抜去により、詰まった血餅が8FのG2BA内に緩和され、その後、G2BA内の全通路を通って抜去すること、又はアセンブリ全体を抜去することができる。一実施形態では、吸引中に血餅がG2BA内で詰まった場合、ACをG2BA内で前進させて吸引圧をかけ、位置を失うことなく血餅を潜在的に取り除く、及び/又は引き出すのを補助することが可能である。
【0124】
さらなる実施形態において、血餅の吸引後、標準的な処置は、血餅の全体が除去されたかどうかを決定するためにチェック血管造影を実施することである。場合によっては、血餅の断片が塞栓し、チェック血管造影によって検出されるような遠位に移動していることがある。この場合、二次的な遠位処置が実施され得る。
【0125】
例えば、図3A及び6Bに示すように、M1セグメントから8Fカテーテル10を介して血餅Yを吸引する際に、所定の位置にあるG2BAで実施したチェック血管造影が、小さい塞栓Y1が分離してM3セグメント内で遠位に留まっていると決定した場合、医師は以下のステップに従う代替の二次遠位処置を行うことに決定することができる。
a)第一のG2BA10を所定の位置に保持したまま、第二の長いG2BA11(外径約5Fを有する)を、第二のISC(及び第二のMW;11a図3A)と一緒に、第一のG2BA内を通して前進させる。第二のG2BA11は、第一のG2BA内で同軸に移動できる大きさであり、最初は第一のG2BAの遠位先端まで前進させる。
b)第二のMW及び第二のISCは、塞栓Y1の近位面に到達するまで、第二のISC、第二のMW及び第二のG2BAの選択的操作によって、第一のG2BAの遠位先端を越えて前進する。
c)第二のISC及び第二のMWを除去する。
d)ポンプを介して第二のG2BAに吸引P6を行い、第二のG2BAに塞栓を吸引する。吸引が成功しないが、血液が戻ってこない場合は、血餅が遠位端に係合している可能性があるが、第二のG2BAには吸引されない。この場合、第二のG2BAを(係合した血餅片Y1とともに)第一のG2BAに引き込み、第二のG2BAを第一Gの2BAを通して抜去することができる。
e)チェック血管造影を行う。
f)明確である場合、第一のG2BA(及び、まだ所定の位置にある場合には第二のG2BA)を除去する。
g)明確でない場合、さらなるオプションを評価することができる。
【0126】
G2BAは小児症例にも使用することができ、その場合、患者の相対的な身長/サイズに基づいて、適切に小さいG2BAカテーテルを使用する。
【0127】
(下部狭窄)
別の用途では、定期的に、血餅を除去すると同時に、下部狭窄をステントすることが要求されることがある。ステントは、頸動脈又は頭蓋内血管のきつい狭窄のために必要とされ得る。ステントは比較的硬いので、血管のカーブや蛇行を越えて、これらのステントを押し込むのは問題となり得る。また、ステントの外径が従来の吸引カテーテルやガイドシースより大きい場合、システムを大きくするためにこれらを抜去しなければならない。そのため、これらの処置で、G2BAを使用するメリットがある。この場合、G2BAを通過できるようにするために、より長いプッシュワイヤを有するステントが必要となる。つまり、現在のステントは、より長いG2BAカテーテルを通して展開できるように、より長いプッシュワイヤを必要とする。
【0128】
(橈骨動脈アクセス)
前述のように、DEPは橈骨動脈であってもよい。橈骨動脈から頸動脈にアクセスするには、橈骨動脈、上腕動脈を経て大動脈弓に移動する必要があり、これは、典型的には、所望の頸動脈を引っかけるためにDC/GWを180°回転させる必要がある。そのため、G2BAは、設置した場合、G2BAの遠位区間がGW/DCの上に乗りやすく、大動脈弓で急旋回することができるため、従来のAC/GCシステムよりもメリットがある。
【0129】
(脳の冷却)
脳が酸素不足になったとき、脳を冷やすと神経保護効果があることが知られている。脳梗塞の場合、血餅除去の前又は後に脳を冷却することが検討されている。患者の全身を冷却することは、一般に震えの影響により全身麻酔薬や筋弛緩剤が必要となるため、複雑である。そのため、血餅を除去した後に、同じカテーテルシステムを用いて、冷却した流体を、カテーテルを通して脳に導入し、脳を直接冷却することが試みられている。しかしながら、冷たい流体(典型的には冷たい生理食塩水)を、カテーテルを通して脳に直接導入することは、冷たい流体が脳に移動する間、導入点から暖かい身体から十分に断熱することができないので、成功していない。例えば、吸引カテーテルとして使用される6Fのカテーテルは、冷却流体を直接脳に運ぶのに十分な断熱性を備えておらず、したがって、効果を発揮するためには、さらなる断熱が必要である。しかしながら、6Fのカテーテルでは、冷却流体を運ぶための2Fの内腔を有する約4Fのカテーテルしか運ぶことができない。典型的な吸引カテーテルの長さを考えると、冷たい流体(例えば、約1℃で導入)がカテーテルの長さを移動するまでに、効果的な冷却効果を得るには、まだ不十分な断熱材が存在している。つまり、注入された液体は、カテーテルから出るとき、15℃以上になっている可能性があり、効果的な冷却を行うには不十分である。さらに、流体量の増加は肺水腫を含む他の効果を引き起こす可能性があるため、導入可能な流体量には限界があり、より大量の流体を導入することによって、この問題を解決することはできない。
【0130】
さらに、カテーテル壁に断熱材を加えると、その性質が変化し、硬くなる。そのような断熱カテーテルは、一般に、6Fカテーテルを通して押されるとき、脳血管に到達するために様々なカーブを越えて通り抜けることができない。また、断熱材がスペースを取るので、内腔はかなり小さく、そのため、カーブを乗り越えるのを容易にするために、ISCのためのスペースを確保できない。
【0131】
遠位15cmがより薄く、断熱性ないが、近位部分は剛性の問題を克服するために断熱されているカテーテルを設計する試みがなされてきた。しかしながら、その場合でも、最後の15cmで冷たい生理食塩水が加熱されるために、冷却効率の実質的な損失がある。しかしながら、脳内のG2BAカテーテルが大きくなれば、断熱に利用できる量が増える。さらに、断熱性を冷却カテーテルの先端まで運ぶことができる。その理由は、冷却カテーテルは移動する量が大きく、遠位部分にも柔軟性を組み込むことができ、断熱性を向上するからである。例えば、8FのG2BAカテーテルをMCAのM1セグメント内に配置し、血餅を吸引するために使用した後、より大きな断熱壁を有する断熱6FカテーテルをG2BAに挿入し、G2BAの遠位先端まで走らせる。断熱性が高いので、1~3℃で導入された流体は、脳の冷却に十分有効な2~8℃の温度で出てくる可能性がある。
【0132】
断熱カテーテルは、G2BAカテーテルと実質的に同じ長さ(名目上長い)であり、G2BA内に適合するような大きさにされる。図6Cに模式的に示すように、8FのG2BA10は0.105インチの外径と0.013インチの典型的な肉厚を有し、6Fの断熱カテーテル13がその中を移動することができるようになる。断熱カテーテルは0.079インチの外径を有し、0.026インチの範囲の壁の厚さを有することができ、したがって、0.027インチの内腔を有する。厚い壁は、冷たい流体をG2BAの遠位先端まで運び、脳循環に入れるのに十分な追加の断熱性を提供する。1.5Fの内腔サイズは、十分な量の流体を搬送するためのおおよその最小内腔サイズである。
【0133】
一実施形態において、流体冷却モジュールは、冷却カテーテルの近位端に冷却液体を送達するために利用される。一般に、流体冷却モジュールは、冷却カテーテルを通して計算された量の冷却液体を送り出すための流体ポンプ及びコントローラを含む。計算された量は、冷却カテーテルを通る熱伝達のモデリング、患者のために選択されたD2BAカテーテルのモデリングデータ、患者データ、及び冷却カテーテルの遠位端における所望の冷却液体温度に基づいて決定される。
【0134】
一実施形態において、ISCは、統合型支持及び冷却カテーテル(ISCC)と呼ばれる冷却カテーテルとしても使用される。この場合、近位断熱性を有するISCCは、G2BAカテーテルを前進させるために使用されるであろう。ISCCを抜去して、吸引処置を行った後、ISCCを再び導入して、冷却液の流れを導入する。ISCCは、ISCと同様に、患者の脳血管の蛇行部位を通過する際にG2BAの遠位先端を支持するためのテーパ付き遠位ゾーンと、ISCCの近位端に冷却液を導入するこのできる断熱近位ゾーンとを含む。性能面では、近位端に1~3℃の冷却流体を導入すると、ISCCから2~8℃で排出される。
【0135】
(吸引及び吸引パルス)
G2BAを所定の位置に配置すると、吸引効率を向上させるために、他の手順及び装置を採用することができる。
【0136】
吸引パルスの適用は、また、G2BAと血餅との係合を改善するためにも使用することができる。血管壁との密閉性が高い可能性が高いので、短い圧力パルス又はパルスは、G2BA又は血餅を他方に近づけ、より迅速な係合及び/又は摂取を引き起こし、したがって、カテーテルと血餅とが係合するまでの期間を待つ必要がなくなる可能性がある。例えば、より大きな圧力パルスに続く1~3個の短い低圧パルスの適用は、血餅を完全に取り込むより高い圧力パルスに続いて、血餅を連続的に整列させること、又は部分的に摂取させることが可能である。
【0137】
さらに、ポンプでの圧力波の測定値を利用して、印加された圧力波とポンプで測定された応答とを比較することによって、吸引プロセスの有効性を定量化することができる。応答の分析を使用して、供給される圧力を動的に調整することができる。すなわち、圧力波がポンプによって生成され、G2BAから戻って受信された圧力/流れ波形の測定値を比較して、血餅及び/又は血餅の吸引に対するG2BAの着座おける吸引圧の有効性を決定することができる。
【0138】
圧力波形は、G2BAのコンプライアンスを補償することもできる。
【0139】
さらなる実施形態では、吸引ポンプをwifi対応にすることができ、したがって、吸引パルスデータを捕捉し、圧力パルスを改善するためのベースのアルゴリズムに基づく機械学習及び人工知能ベースのアルゴリズムを通じてそのデータを使用することと、過去の実績の継続的に成長しているデータベースから開発されたAIアルゴリズムに基づいて、最初の圧力パルスから得られた情報を使用して次の圧力パルスを改善することができる。
【0140】
さらに、吸引ポンプの吸引圧は、G2BAの直径が大きくなると、より高くなることもある。
【0141】
好ましくは、吸引ポンプは、吸引された任意の血餅を捕捉するフィルタを含む。吸引ポンプでの血餅の目視検査は、G2BAを通る流量データと一緒に、又はそれとは別に、循環が確立されたかどうか、処置が成功したかどうかに関する有効な情報を提供することが可能である。
【0142】
脈圧アルゴリズムは、上記のさらなる遠位処置にも適用することができる。
【0143】
(G2BAキット)
キットが標的レベル(ここではレベル1~4と呼ばれ、レベル1はより深く(例えば、レベル2セグメント)、レベル4は血管系でより低い)に基づいて組み立てられる表5に要約されるように、様々なキットが提供され得る。
表5:G2BA/DC及びISCキット
【表5】
【0144】
一般に、外科医は、標的レベル及び血餅における血管径の理解に基づいて、キットを選択する。さらに、キットは、患者の大動脈弓の外科医の診断評価に基づいて選択された特定のDC/GWの組み合わせで提供され得る。表5は、DCを一般的なプレースホルダーA、B、Cで示し、各DCは特定の先端/硬度/形状の特徴を有する。
【0145】
DCと、ISC及びG2BAとの間のコスト差が大きいので、キットには複数のDCが含まれることがある。
【0146】
さらなる別のキットを以下に説明する。
a)二次遠位処置を行うために表5に示すキットと組み合わせて使用するか、又はそれに含まれる、適切な直径の第二のG2BA、ISC、及びMWを含むキット。
b)G2BA内に適合するサイズのACを追加した表5に示すキット。このACは、G2BAの遠位先端から出ないような長さを有する。
c)冷却カテーテルを一緒に含む前述の任意のキット。
【0147】
(利点のまとめ)
G2BA及びG2BAの展開方法をISCと共に使用することにより、特に以下の利点を実現する。
a)カテーテルが少なくなる(GCやBGCがないことが重要)。
b)少ないステップで、より速くなる。
c)カテーテルがより大きくなる。
d)困難な区間を通って前進できる。
e)吸引を適用するとき、先端の位置合わせがしやすい。
f)洗浄が不十分なカテーテルを使用することが少ないため、循環系に気泡が混入する可能性が低い。
g)鼠蹊部シースを大きくする必要性を減らすことができる。
h)ステントレトリーバの必要性がなくなる可能性があるため、特に処置費用を削減できる。
i)再灌流率を向上させ、患者の予後を改善する。
j)人から人への機器の受け渡しを減らすことにより、コロナウイルスに起因する手術室の遅延の可能性を減らす。
k)より硬いDCの上に乗ることができるより柔らかいG2BA遠位ゾーンを提供することにより、より硬いDCを使用して行われる処置の速度を向上させる。これにより、外科医は、適切な頸動脈の起始部に係合するために、より適したDCを選択するようになり得る。
l)血餅を完全に摂取することができるため、血餅の断片化する可能性が減少する。
m)非均質な血餅を吸引する能力を全体的に向上させる。血餅の中には、異なる組成を有するものがあり、異なる組成を有する領域間で断片化することがある。吸引カテーテルが血餅(及び血管)に近いサイズであることで、血餅を吸引できる可能性が非常に高くなる。血餅全体が密閉される可能性が高く、より強いパルス圧をかけることができるため、繊維質・非繊維質の血餅をより効果的に摂取することができる。
n)二次G2BAとISCを使用して、二次的な遠位塞栓にアクセスし、遠位塞栓の除去の速度を向上させる。
o)二次的な遠位塞栓を引き起こす可能性を減少させる。
p)橈骨動脈からのアクセス性が向上する。
q)頭蓋内又は頸動脈のアテローム性動脈硬化症の場合に、硬いステントシステムへのアクセスを容易にする。
r)虚血領域の場合、局所低体温症の冷却液を供給するための断熱カテーテルへのアクセスを容易にする。
【0148】
以上から、D2BAカテーテルの構造的及び機能的特性が他のカテーテルの特性より区別されることに注目することが重要である。すなわち、吸引機能の実行を可能にするカテーテルと、様々な物理的サイズ及び硬度を有するカテーテルは類似しているように見えるが、サイズ、長さ及び性能特性の組み合わせの違いは、物理的及び機能的特性の組み合わせが、患者に現実の利益をもたらす新しい処置の実行を可能にするという点で重要である。さらに、物理的特性と機能的特性のユニークな組み合わせを持つカテーテルを提供するために、幅広い製造技術と材料をさまざまな方法で組み合わせることができるため、所望の最終機能的能力を提供するためにカテーテル構造に使用できる材料の特定の機械特性及び化学特性のバランスを取る必要性を理解することが重視される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図3A
図4
図4A
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
【手続補正書】
【提出日】2022-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脳内の頸動脈及び脳動脈へのアクセスを獲得し、前記脳動脈から頭蓋内血餅を吸引するために、遠位先端区間及び近位区間を有するカテーテル本体を備える、カテーテルであって、前記カテーテル本体が、
120cm超の前記カテーテル本体の長さと、
12~30cmの前記遠位先端区間の長さと、
6F超10F未満の外径(OD)と、
を有する、カテーテル。
【請求項2】
前記遠位先端区間は、前記遠位先端区間が外部支持なしに大動脈弓を越えて前記大動脈弓を通って配置されたガイドワイヤ(GW)及び診断用カテーテル(DC)を乗り越えることを可能にする硬度を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記遠位先端区間の硬度が前記近位区間の硬度よりも小さい、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記外径(OD)が7Fであり、前記遠位先端区間の長さが、上頸動脈から中大脳動脈のレベル2セグメントまでの距離、又は遠位頸部椎骨動脈から脳底動脈若しくは同等部位までの距離に対応する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記遠位先端区間の長さが17~25cmである、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記ODが8F超で、前記遠位先端区間の長さが、上頸動脈血管から中大脳動脈の遠位レベル1セグメントまでの距離に対応する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記遠位先端区間の長さが15~23cmである、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記ODが9F超で、前記遠位先端区間の長さが、上頸動脈血管から中大脳動脈の近位レベル1セグメント又は同等部位までの距離に対応する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記遠位先端区間の長さが13~21cmである、請求項8に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記外径(OD)が10Fであり、前記遠位先端区間の長さが上頸動脈血管から内頸動脈又は同等物の遠位セグメントまで伸びる、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記遠位先端区間の長さが12~16cmである、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記遠位先端区間が放射線不透過性マーカー付きの遠位先端を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記カテーテル本体が、前記遠位先端区間と前記近位区間との間の移行点に放射線不透過性メーカーを有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記カテーテル本体が前記近位区間と前記遠位先端区間との間に移行ゾーンを含み、前記移行ゾーンが異なる硬度特性を有するサブゾーンを含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
患者の脳の頸動脈及び脳動脈へのアクセスを獲得し、前記脳動脈から1つ以上の頭蓋内血餅を吸引するための血管内処置に使用するための遠位入口ポイント(DEP)~脳吸引(D2BA)カテーテルであって、ガイドワイヤ(GW)と診断用カテーテル(DC)のみの上で、前記DEPと前記脳の前記脳動脈との間の前記患者のヒト血管系内で前進させるための前記D2BAカテーテルは、
脳動脈のレベル1又はレベル2の動脈セグメント又は同等部位から上頸動脈血管まで伸びるのに十分な遠位長さを有する軟質遠位先端領域であって、前記脳動脈の前記レベル1又はレベル2の動脈セグメントを通る動きを可能にする硬度、及び6F超10F以下の外径(OD)を有する、軟質遠位先端領域と、
前記軟質遠位先端領域の硬度よりも大きな硬度を有する近位領域であって、前記軟質遠位先端領域が前記大脳動脈内にあるとき、前記DEPを介して前記患者の外側まで伸びるのに十分な長さを有する、近位領域と、
を備え、
前記GW及び前記DCの除去後、前記D2BAカテーテルは、前記D2BAカテーテルを介する吸引を可能にして、前記1つ以上の血餅を除去する、D2BAカテーテル。
【請求項16】
頸動脈及び脳動脈にアクセスし、前記脳動脈から頭蓋内血餅を吸引するための血管内処置に使用するためのキットであって、
遠位入口ポイント(DEP)と脳動脈との間のヒト血管系内に配置するために、D2BAカテーテルを備える血管内カテーテルであって、前記D2BAカテーテルが、
遠位先端区間及び近位区間を有するカテーテル本体であって、前記カテーテル本体が、
120cm超の前記カテーテル本体の長さと、
12~30cmの前記遠位先端区間の長さと、
6F超10F未満の外径(OD)と、
を有する、血管内カテーテルと、
少なくとも1つの診断用カテーテル(DC)であって、各DCが前記D2BAカテーテル内に適合してスライドする外径を有し、各DCが大動脈弓の様々な解剖学的構造にアクセスするための予め形成された先端を有し、前記D2BAカテーテルより長い長さを有する、少なくとも1つの診断用カテーテル(DC)と、
前記DC内に適合してスライドする直径を有し、前記DCよりも長い長さを有するガイドワイヤ(GW)と、
を備える、キット。
【請求項17】
内部支持カテーテル(ISC)をさらに備え、前記ISCは、前記D2BAカテーテル内に適合してスライドする外径と、前記D2BAカテーテルを脳動脈に進める間に、きつくカーブした動脈内で前記D2BAカテーテルの遠位先端を支持し移行するためのテーパ付き遠位ゾーンを有する、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
2つ以上のDCを有する、請求項16に記載のキット。
【請求項19】
前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記D2BAカテーテルの遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有する吸引カテーテルをさらに備える、請求項16に記載のキット。
【請求項20】
前記D2BAカテーテル内で動作するために最大化された外径を有し、前記D2BAカテーテルの遠位先端と実質的に同等の位置まで伸びるのに十分な長さを有する冷却カテーテルをさらに備える、請求項16に記載のキット。
【請求項21】
前記D2BAカテーテル内に適合する大きさの第二のD2BAカテーテルと、それぞれが前記D2BAカテーテルより大きい長さを有し、前記第二のD2BAカテーテル内に適合する大きさの対応する第二のISC及び第二のMWをさらに備える、請求項16に記載のキット。
【請求項22】
頸動脈及び脳動脈へのアクセスを得るための血管内方法は、遠位入口ポイント(DEP)と脳動脈との間のヒト血管系内にカテーテルシステムを配置し、前記脳動脈の1つにある脳血餅を吸引するための血管内方法であって、前記血管内方法は、
)D2BAカテーテル、ガイドワイヤ(GW)及び診断用カテーテル(DC)を含むカテーテルシステムを、DEPを介して導入するステップと、
b)前記カテーテルシステムを大動脈弓に前進させるステップと、
c)前記GW及び前記DCを所望の頸動脈まで前進させ、前記GWを所望の頸動脈に操作するステップと、
d)前記D2BAカテーテルを前記DCと前記GWの上にある所望の頸動脈まで前進させるステップと、
e)前記DC及び前記GWを除去するステップと、
f)前記D2BAカテーテルの遠位端を支持するためのテーパ付き遠位区間を有し、脳血管系のきついカーブを通る前記遠位端の移動を容易にするように適合された内部支持カテーテル(ISC)と、ISCマイクロワイヤ(ISC MW)を導入するステップと、
g)前記ISC及び前記ISC MWを前記血餅のある前記脳動脈に前進させるステップと、
h)前記D2BAカテーテルを前記血餅の近位面まで前進させ、前記ISC及び前記ISC MWを抜去するステップと、
i)前記D2BAカテーテルを介して前記血餅の吸引を適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
j)ステップiにおいて血餅を抜去するために吸引を適用した後、前記血餅全体が抜去されたかどうか、及び1つ以上の遠位塞栓が存在するかどうかを決定するためにチェック血管造影を実施するステップと、前記1つ以上の遠位塞栓が存在する場合、
k)第二のISC及び第二のISC MWと一緒に前記D2BAカテーテル内で同軸移動するための大きさの第二のD2BAカテーテルを前記遠位塞栓の近位面まで前進させるステップと、
l)前記第二のD2BAカテーテルに吸引を適用し、吸引又は第二のD2BAカテーテルの抜去により、前記遠位塞栓を抜去するステップと、
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップiが、前記D2BAカテーテルを通して1つ以上の第一の圧力パルスを印加して、前記D2BAカテーテルの遠位先端を前記血餅に係合させるのを支援し、その後、少なくとも1つの第二の吸引パルスを印加して、前記血餅を吸引することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
吸引ポンプにおいて測定された応答圧力に対して予め定められた圧力パルスを比較し、測定された前記応答圧力に基づいて後続の圧力パルスを調整するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
後続の圧力パルスを調整する前記ステップが、類似の処置から収集され分析された複数の患者からの圧力応答データを考慮する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
吸引が、インターネット及び中央コンピュータシステムに作動的に接続された吸引ポンプを介して行われ、異なるポンプからの圧力応答データが前記中央コンピュータシステムによって受信されて、分析され、ポンプ圧力アルゴリズムが前記インターネットを介して前記異なるポンプに更新される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
ポンプ圧力アルゴリズムが、カテーテルの材料、ブランド及び/又はサイズを考慮する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
吸引が失敗した場合、吸引カテーテルを前記D2BAカテーテルに導入し、前記吸引カテーテルを前記D2BAカテーテルの遠位先端まで前進させ、前記D2BAカテーテルを通して吸引を行うステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
吸引が成功した場合、冷却カテーテルを前記D2BAカテーテルに導入し、前記冷却カテーテルを前記D2BAカテーテルの遠位先端まで前進させ、前記冷却カテーテルを通して冷却流体を流し、脳組織の冷却を行うステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記冷却カテーテルを通して脳栄養液を流すステップをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記冷却カテーテルが近位断熱性を有するISCであり、前記ISCが抜去され吸引が完了した後、前記ISCを再び導入し、前記ISCを通して脳栄養液を流す、請求項30に記載の方法。
【国際調査報告】