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特表2022-542156オレフィン重合に用いられる触媒系、及びその適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】オレフィン重合に用いられる触媒系、及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20220921BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505317
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2020104513
(87)【国際公開番号】W WO2021018042
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】201910684095.6
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910684053.2
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910684239.8
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910684103.7
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】林潔
(72)【発明者】
【氏名】張暁帆
(72)【発明者】
【氏名】黄庭
(72)【発明者】
【氏名】張軍輝
(72)【発明者】
【氏名】周俊領
(72)【発明者】
【氏名】孫竹芳
(72)【発明者】
【氏名】夏先知
(72)【発明者】
【氏名】趙惠
(72)【発明者】
【氏名】郭子芳
(72)【発明者】
【氏名】趙瑾
(72)【発明者】
【氏名】劉海涛
(72)【発明者】
【氏名】付梅艷
(72)【発明者】
【氏名】張紀貴
(72)【発明者】
【氏名】齊琳
(72)【発明者】
【氏名】厳立安
(72)【発明者】
【氏名】岑為
(72)【発明者】
【氏名】王宇
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA02
4J128AB02
4J128AC03
4J128AC04
4J128AC05
4J128AC06
4J128AC07
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BA02B
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4J128BB01B
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4J128BC15B
4J128BC16B
4J128BC17B
4J128BC25B
4J128BC27B
4J128BC35B
4J128BC36B
4J128CA08A
4J128CA15A
4J128CA16A
4J128CB14C
4J128CB27A
4J128CB27C
4J128CB30A
4J128CB30C
4J128CB35A
4J128CB43A
4J128CB44A
4J128CB45A
4J128CB52C
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB04
4J128EC01
4J128EC02
4J128FA01
4J128FA09
4J128GA12
4J128GA14
4J128GB01
(57)【要約】
本発明はオレフィン重合に用いられる触媒系及びその適用を開示する。該触媒系は主触媒及び助触媒を含み、ここで助触媒は式(M)で示される12員環化合物を含む。本発明の提供する触媒系は特に高い立体規則性、低灰分のポリプロピレン製品を製造することに適し、そして、水素添加量を調整することにより広い範囲で製品のメルトインデックスを調整することができる。本発明の提供する触媒系は共重合系にも適用され、共重合生産性を向上させる。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン重合に用いられる触媒系であって、主触媒及び助触媒を含み、前記助触媒は式(M)に示される12員環化合物を含み、
【化1】

式(M)において、R~R16は同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミン基、アルデヒド基、カルボキシル基、ケトン基、ヒドロカルビルオキシ基及び炭化水素基から選ばれ、ベンゼン環において隣接する2つの基がそれぞれヒドロカルビルオキシ基及び炭化水素基から選ばれる場合、2つの隣接する基の間は任意に相互に環化することができ、前記環は飽和又は不飽和の単環、飽和又は不飽和の多環及びその組み合わせから選ばれ、R17~R24は同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素及びC~C10の炭化水素基から選ばれ、前記アミン基、アルデヒド基、カルボキシル基、ケトン基、ヒドロカルビルオキシ基及び炭化水素基は任意に1つ又は複数の置換基で置換されることができる。
【請求項2】
前記主触媒は(i)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び内部電子供与体化合物を含有する固体触媒成分、及び(ii)有機アルミニウム化合物を含み、任意に(iii)外部電子供与体化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
前記外部電子供与体化合物と前記固体触媒成分中のチタン元素とのモル比は(0~500):1であり、好ましくは(0.01~200):1であり、より好ましくは(0.1~100):1であることを特徴とする請求項2に記載の触媒系。
【請求項4】
式(M)において、R~R16は同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~C10のアルキルアミン基、ビス-C~C10のアルキルアミン基、C~C10のアルデヒド基、C~C10のカルボキシル基、RC(O)-、RO-、C~C20のアルキル基、C~C20のアルケニル基、C~C20のアルキニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基、4~12員ヘテロシクロアルキル基及びC~C20のヘテロアリール基から選ばれ、ベンゼン環において隣接する2つの基がそれぞれRC(O)-、RO-、C~C20のアルキル基、C~C20のアルケニル基、C~C20のアルキニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基、4~12員ヘテロシクロアルキル基及びC~C20のヘテロアリール基から選ばれる場合、2つの隣接する基の間は任意に相互に環化することができ、前記環は飽和又は不飽和の単環、飽和又は不飽和の多環及びその組み合わせから選ばれ、
はC~C20のアルキル基、C~C20のアルケニル基、C~C20のアルキニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基、4~12員ヘテロシクロアルキル基及びC~C20のヘテロアリール基から選ばれ、
17~R24は同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、C~C10のアルキル基、C~C10のアルケニル基、C~C10のアルキニル基、C~Cのシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C20のアラルキル基、4~12員ヘテロシクロアルキル基及びC~C20のヘテロアリール基から選ばれ、
前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びヘテロアリール基のうちのいずれか1つは任意に1つ又は複数の置換基で置換されることができることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項5】
式(M)において、前記置換基はアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基で置換されたアミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基及びヘテロ原子含有基から選ばれ、好ましくは、前記置換基はC~C10のアルキル基、C~C10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~C10のアルキルアミン基、ビス-C~C10のアルキルアミン基、C~C10のアルデヒド基、C~C10のカルボキシル基及びヘテロ原子含有基から選ばれ、より好ましくは、前記置換基はC~Cのアルキル基、C~Cのアルコキシ基、ヒドロキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~Cのアルキルアミン基、ビス-C~Cのアルキルアミン基、C~Cのアルデヒド基及びC~Cのカルボキシル基から選ばれることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項6】
式(M)において、R~R16は同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~Cのアルキルアミン基、ビス-C~Cのアルキルアミン基、C~Cのアルデヒド基、C~Cのカルボキシル基、RC(O)-、RO-、C~Cのアルキル基、C~Cのアルケニル基、C~Cのアルキニル基、C~Cのシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C10のアラルキル基、4~6員ヘテロシクロアルキル基及びC~C10のヘテロアリール基から選ばれ、ここで、RはC~Cのアルキル基、C~Cのアルケニル基、C~Cのアルキニル基、C~Cのシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C10のアラルキル基、4~6員ヘテロシクロアルキル基及びC~C10のヘテロアリール基から選ばれ、
好ましくは、R~R16は、水素、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン、C~Cのアルデヒド基、C~Cのアルコキシ基及びハロゲンで置換されたC~Cのアルコキシ基から選ばれ、
好ましくは、R~R16は、同時に水素ではないことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項7】
式(M)において、R、R、R、R、R、R12、R13及びR16はそれぞれ独立して水素及びC~Cのアルキル基から選ばれ、R、R、R、R、R10、R11、R14及びR15はそれぞれ独立してヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン、C~Cのアルデヒド基、C~Cのアルコキシ基及びハロゲンで置換されたC~Cのアルコキシ基から選ばれることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項8】
式(M)において、R17~R24はそれぞれ独立して水素及びC~C10のアルキル基から選ばれ、好ましくは、水素及びC~Cのアルキル基から選ばれ、より好ましくは、水素及びC~Cのアルキル基から選ばれることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項9】
式(M)に示される12員環化合物は式(N)に示すとおりであり、
【化2】

好ましくは、式(M)に示される12員環化合物は以下の化合物から選ばれる1種又は複数種であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒系。
化合物A:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCH
化合物B:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCHCH
化合物C:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCHCHCH
化合物D:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCH(CH
化合物E:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCHCHCHCH
化合物F:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=OCHCH
化合物G:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=OCHCHCH
化合物H:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=OCHCHCHCH
化合物I:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OH
化合物J:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=OH
化合物K:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=NH
化合物L:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=Cl
化合物M:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=Br
化合物N:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=I
化合物O:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=CHO
化合物P:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=OCHCHCHBr
化合物Q:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCHCHCl
化合物R:式(N)において、R=R=R10=R14=OH、R=R=R11=R15=OCHCH
【請求項10】
前記内部電子供与体化合物は、ジエーテル系化合物、アルコールエステル系化合物、芳香族カルボン酸エステル化合物、コハク酸エステル化合物又はケトン系化合物から選ばれる1種又は複数種であることを特徴とする請求項2~9のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項11】
前記アルコールエステル系化合物は式Bに示されるグリコールエステル化合物であり、
【化3】

式Bにおいて、R及びRは同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC~C20のアルキル基、C~C20のアルケニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアルキルアリール基、C~C20のアラルキル基及びC10~C20の縮合環アリール基から選ばれ、好ましくはそれぞれ独立してC~C10のアルキル基、C~C10のアルケニル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C10のアルキルアリール基、C~C10のアラルキル基及びC10~C15の縮合環アリール基から選ばれ、前記アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基及び縮合環アリール基は、C~C10のアルキル基、C~C10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~Cのアルキルアミン基、ビス-C~Cのアルキルアミン基、アルデヒド基、カルボキシル基及びヘテロ原子から選ばれる1つ又は複数の置換基で任意に置換され、Mは二価の連結基であり、好ましくはC~C20のアルキレン基、C~C20のシクロアルキレン基及びC~C20のアリーレン基から選ばれ、前記アルキレン基、シクロアルキレン基及び/又はアリーレン基は、C~C20のアルキル基、C~C20のアルコキシ基及びハロゲンから選ばれる置換基で置換されかつ置換基は任意に1つ又は複数の環に結合され、M中の炭素原子又は/及び水素原子は窒素、酸素、硫黄、ケイ素、リン又はハロゲン原子で任意に置換され、
前記ジエーテル系化合物は式Eに示される1,3-ジエーテル化合物であり、
【化4】

式Eにおいて、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C20のアルキル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基及びC~C20のアルキルアリール基から選ばれ、RVII及びRVIIIは同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC~C20のアルキル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基及びC~C20のアルキルアリール基から選ばれ、ここで、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルキルアリール基のうちのいずれか1つは、任意に1つ又は複数の置換基で置換されることができ、前記1つ又は複数の置換基はヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~C10のアルキルアミン基、ビス-C~C10のアルキルアミン基、アルデヒド基、カルボキシル基及びヘテロ原子から選ばれ、又は、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIのうちの2つ又は2つ以上が互いに結合し、飽和又は不飽和の単環又は多環、例えばフルオレン環を形成し、
前記芳香族カルボン酸エステル系化合物の構造は式Fに示すとおりであり、
【化5】

式Fにおいて、各Rは同一であるか又は異なり、独立してC~Cのアルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C15のアリール基、C~C15のアルキルアリール基又はC~C15のアラルキル基であり、前記C~Cのアルキル基、C~C10の分岐鎖アルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C15のアリール基、C~C15のアルキルアリール基又はC~C15のアラルキル基の炭素上の水素は、アルカン及びハロゲン原子から選ばれる置換基で任意に置換されることができ、好ましくはC~Cのアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、R~Rは同一であっても異なってもよく、水素、ハロゲン、C~Cのアルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアルキルアリール基又はC~C20のアラルキル基であり、前記C~Cのアルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C15のアリール基、C~C15のアルキルアリール基又はC~C15のアラルキル基中の炭素上の水素は、アルカン及びハロゲン原子から選ばれる置換基で任意に置換されることができ、好ましくはC~Cのアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
前記コハク酸エステル化合物の構造は式Gに示すとおりであり、
【化6】

式Gにおいて、R及びRは同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC~C20のアルキル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアリールアルキル基又はC~C20のアルキルアリール基から選ばれ、任意にヘテロ原子を含有し、R、R、R及びRは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、C~C20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はアルキルアリール基から選ばれ、任意にヘテロ原子を含有し、かつ基間は環として接続されることができることを特徴とする請求項10に記載の触媒系。
【請求項12】
前記外部電子供与体化合物は、シラン系化合物、エステル系化合物、エーテル系化合物又はケトン系化合物から選ばれる1種又は複数種であることを特徴とする請求項2~11のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項13】
前記シラン系化合物の構造は式Dに示すとおりであり、
【化7】

式Dにおいて、R~Rは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、C~C10のアルキル基、C~C10のアルケニル基、C~C10のアルコキシ基、C~C10のアルケニルオキシ基、C~C10のアルキニル基、C~C10のアルキニルオキシ基、C~C10のシクロアルキル基、C~C15のアリール基、C~C10のシクロアルコキシ基、C~C15のアリールオキシ基及びアミノ基から選ばれ、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基及びアミノ基は、ハロゲン、C~Cのアルキル基、C~Cのシクロアルキル基、C~C10のアリール基及びアミノ基から選ばれる1つ又は複数の置換基で任意に置換されることができ、
前記エーテル系化合物は式Eに示される1,3-ジエーテル化合物であり、
【化8】

式Eにおいて、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C20のアルキル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基及びC~C20のアルキルアリール基から選ばれ、RVII及びRVIIIは同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC~C20のアルキル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基及びC~C20のアルキルアリール基から選ばれ、ここで、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルキルアリール基のうちのいずれか1つは、任意に1つ又は複数の置換基で置換されることができ、前記1つ又は複数の置換基はヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~C10のアルキルアミン基、ビス-C~C10のアルキルアミン基、アルデヒド基、カルボキシル基及びヘテロ原子から選ばれ、又は、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIのうちの2つ又は2つ以上が互いに結合し、飽和又は不飽和の単環又は多環、例えばフルオレン環を形成することを特徴とする請求項12に記載の触媒系。
【請求項14】
前記式(M)に示される12員環化合物と前記外部電子供与体化合物とのモル比は1:100~100:1であり、好ましくは1:50~50:1であり、より好ましくは1:20~20:1であることを特徴とする請求項2~13のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項15】
前記有機アルミニウム化合物はアルキルアルミニウム化合物であり、好ましくは、前記アルキルアルミニウム化合物の一般式はAlRであり、ここで、各Rはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C20のアルキル基、C~C20のアルコキシ基又はハロゲン化C~C20のアルキル基から選ばれ、3つのRは少なくとも1つがC~C20のアルキル基であり、より好ましくは、前記アルキルアルミニウム化合物の一般式はAlRであり、ここで、各Rはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C10のアルキル基、C~C10のアルコキシ基又はハロゲン化C~C10のアルキル基から選ばれ、3つのRは少なくとも1つがC~C10のアルキル基であり、
さらに好ましくは、前記アルキルアルミニウム化合物は、トリエチルアルミニウム、トリn-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn-ヘキシルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム、モノヒドロジエチルアルミニウム、モノヒドロジイソブチルアルミニウム、モノクロロジエチルアルミニウム、モノクロロジイソブチルアルミニウム、ジクロロエチルアルミニウム、Al(n-C13及びAl(n-C17のうちの1種又は複数種であることを特徴とする請求項2~14のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項16】
前記式(M)に示される12員環化合物とアルミニウムで計算される有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(0.1~500)であり、好ましくは1:(1~200)であり、チタン元素で計算される固体触媒成分とアルミニウムで計算される有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(5~5000)であり、好ましくは1:(20~2000)であることを特徴とする請求項2~15のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の触媒系とオレフィンを予備重合させて得られたプレポリマーを含み、好ましくは前記プレポリマーの予備重合倍数は0.1~1000gのオレフィン重合体/g固体触媒成分である、オレフィン重合に用いられる予備重合触媒組成物。
【請求項18】
オレフィンを請求項1~16のいずれか一項に記載の触媒系及び/又は請求項17に記載の予備重合触媒組成物の存在下で重合させることを含み、前記オレフィンの一般式はCH=CHRであり、ここで、Rは水素又はC~Cのアルキル基であり、好ましくは水素又はC~Cのアルキル基である、オレフィン重合に用いられる方法。
【請求項19】
前記オレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン及び1-ヘキセンから選ばれる1種又は複数種であり、好ましくはエチレン、プロピレン又はエチレンとプロピレンの混合物であることを特徴とする請求項18に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は2019年7月26日に提出された出願書類の優先権を享受することを請求する。
1、「12員環化合物及びその適用」という中国特許出願CN201910684095.6。
2、「オレフィン重合に用いられる触媒系、及びその適用」という中国特許出願CN201910684053.2。
3、「オレフィン重合に用いられる触媒及びオレフィン重合方法」という中国特許出願CN201910684239.8。
4、「オレフィン重合反応に用いられる触媒系及び予備重合触媒組成物」という中国特許出願CN201910684103.7。
上記書類の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は石油化学工業の分野に属し、具体的には、オレフィン重合に用いられる触媒系、及びオレフィン重合方法に関するものである。
【0003】
〔背景技術〕
周知のように、マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体化合物を基本成分とする固体チタン系触媒成分は、オレフィン重合反応に用いられる場合、電子供与体によっては異なる特性を有するため、ある触媒系は高い触媒活性を有し、ある触媒系は高い水素調整感度(hydrogen modulation sensitivity)を有し、ある触媒系は高い立体特異性を有する。ポリオレフィンの工業製造では、優れた総合性能を有し、特に高い活性、高い水素調整感度を有すると同時に、高い立体特異性を有する触媒が必要とされている。触媒の立体特異性はポリマーのアイソタクティシティ指数を決定し、アイソタクティシティ指数はポリマーの重要な性能指標の1つであり、ポリプロピレンのアイソタクティシティ指数が高いほど、その規則性、結晶化度が高くなり、製品の硬度、剛性、モジュラス、破断及び降伏強さ等の機械的特性がいずれも増加し、融点、熱安定性、耐老化性及び耐放射線性も対応して向上する。したがって、触媒の立体特異性を向上させるために、研究者らは常に大量の研究作業を行っている。いくつかの研究において2種類(又は2種以上)の電子供与体を複合配合することにより単一の電子供与体の不足を補い、それにより触媒の性能を向上させるようにしている。しかし、複合配合の効果は、複数種の電子供与体の性能の簡単な重畳ではない。例えば、WO03002617には、モノカルボン酸エステルとジカルボン酸エステルを配合して使用して得られた、オレフィン重合に用いられる触媒成分及び触媒が開示されており、該触媒の水素調整感度が高いが、立体特異性及び重合活性が依然として高いものではない。
【0004】
したがって、総合性能に優れた触媒、即ち、高い活性を保持すると同時に高い立体特異性を有し、オレフィン重合体が高いアイソタクティシティ指数及び低い灰分含有量を有するような触媒の開発は、依然として解決すべき課題である。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明者らは、オレフィン重合過程において特定の構造を有する12員環化合物を助触媒として導入し、チーグラーナッタ型主触媒と配合して使用することにより、触媒の重合活性及び立体特異性を顕著に向上させることができることを見出した。その知見に基づいて、本発明を提供する。
【0006】
第1の局面において、本発明はオレフィン重合に用いられる触媒系であって、主触媒及び助触媒を含み、助触媒は式(M)に示される12員環化合物を含み、
【0007】
【化1】
【0008】
式(M)において、R~R16は同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミン基、アルデヒド基、カルボキシル基、ケトン基、ヒドロカルビルオキシ基及び炭化水素基から選ばれ、ベンゼン環において隣接する2つの基がそれぞれヒドロカルビルオキシ基及び炭化水素基から選ばれる場合、2つの隣接する基の間は任意に相互に環化することができ、前記環は飽和又は不飽和の単環、飽和又は不飽和の多環及びその組み合わせから選ばれ、R17~R24は同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素及びC~C10の炭化水素基から選ばれ、前記アミン基、アルデヒド基、カルボキシル基、ケトン基、ヒドロカルビルオキシ基及び炭化水素基は任意に1つ又は複数の置換基で置換されることができる。
【0009】
本願において、「任意」又は「任意に」は、その説明する対象が存在するか又は存在しないことを意味する。
【0010】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記主触媒は(i)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び内部電子供与体化合物を含有する固体触媒成分、及び(ii)有機アルミニウム化合物を含み、任意に(iii)外部電子供与体化合物を含む。「任意に(iii)外部電子供与体化合物を含む」とは、前記主触媒中に「(iii)外部電子供与体化合」が存在していても存在していなくてもよいことを意味する。
【0011】
本発明に記載の触媒系のいくつかの実施形態によれば、前記主触媒は前記外部電子供与体化合物を含む。本発明に記載の触媒系の他の実施形態によれば、前記主触媒は前記外部電子供与体化合物を含まない。
【0012】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、式(M)において、R~R16は同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~C10のアルキルアミン基、ビス-C~C10のアルキルアミン基、C~C10のアルデヒド基、C~C10のカルボキシル基、RC(O)-、RO-、C~C20のアルキル基、C~C20のアルケニル基、C~C20のアルキニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基、4~12員ヘテロシクロアルキル基及びC~C20のヘテロアリール基から選ばれ、ベンゼン環において隣接する2つの基がそれぞれRC(O)-、RO-、C~C20のアルキル基、C~C20のアルケニル基、C~C20のアルキニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基、4~12員ヘテロシクロアルキル基及びC~C20のヘテロアリール基から選ばれる場合、2つの隣接する基の間は任意に相互に環化することができ、前記環は飽和又は不飽和の単環、飽和又は不飽和の多環及びその組み合わせから選ばれる。
【0013】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、式(M)において、RはC~C20のアルキル基、C~C20のアルケニル基、C~C20のアルキニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基、4~12員ヘテロシクロアルキル基及びC~C20のヘテロアリール基から選ばれる。
【0014】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、式(M)において、R17~R24は同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、C~C10のアルキル基、C~C10のアルケニル基、C~C10のアルキニル基、C~Cのシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C20のアラルキル基、4~12員ヘテロシクロアルキル基及びC~C20のヘテロアリール基から選ばれる。
【0015】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、式(M)において、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びヘテロアリール基のうちのいずれか1つは任意に1つ又は複数の置換基で置換されることができる。
【0016】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、式(M)において、前記置換基はアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基で置換されたアミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基及びヘテロ原子含有基から選ばれ、好ましくは、前記置換基はC~C10のアルキル基、C~C10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~C10のアルキルアミン基、ビス-C~C10のアルキルアミン基、C~C10のアルデヒド基、C~C10のカルボキシル基及びヘテロ原子含有基から選ばれ、より好ましくは、前記置換基はC~Cのアルキル基、C~Cのアルコキシ基、ヒドロキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~Cのアルキルアミン基、ビス-C~Cのアルキルアミン基、C~Cのアルデヒド基及びC~Cのカルボキシル基から選ばれる。
【0017】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、式(M)において、R~R16は同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~Cのアルキルアミン基、ビス-C~Cのアルキルアミン基、C~Cのアルデヒド基、C~Cのカルボキシル基、RC(O)-、RO-、C~Cのアルキル基、C~Cのアルケニル基、C~Cのアルキニル基、C~Cのシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C10のアラルキル基、4~6員ヘテロシクロアルキル基及びC~C10のヘテロアリール基から選ばれ、ここで、RはC~Cのアルキル基、C~Cのアルケニル基、C~Cのアルキニル基、C~Cのシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C10のアラルキル基、4~6員ヘテロシクロアルキル基及びC~C10のヘテロアリール基から選ばれる。
【0018】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、式(M)において、R~R16は同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン、C~Cのアルデヒド基、C~Cのアルコキシ基及びハロゲンで置換されたC~Cのアルコキシ基から選ばれる。
【0019】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、式(M)において、R~R16は同時に水素ではない。
【0020】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、式(M)において、R、R、R、R、R、R12、R13及びR16はそれぞれ独立して水素及びC~Cのアルキル基から選ばれ、R、R、R、R、R10、R11、R14及びR15はそれぞれ独立してヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン、C~Cのアルデヒド基、C~Cのアルコキシ基及びハロゲンで置換されたC~Cのアルコキシ基から選ばれる。
【0021】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、式(M)において、R17~R24はそれぞれ独立して水素及びC~C10のアルキル基から選ばれ、好ましくは、水素及びC~Cのアルキル基から選ばれ、より好ましくは、水素及びC~Cのアルキル基から選ばれる。
【0022】
いくつかの実施例によれば、式(M)において、R17~R24はいずれも水素であり、一般式は以下のとおりである。
【0023】
【化2】
【0024】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、式(M)に示される12員環化合物は式(N)に示すとおりである。
【0025】
【化3】
【0026】
具体的には、式(M)に示される12員環化合物は以下の化合物から選ばれる1種又は複数種であってもよい。
化合物A:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCH
化合物B:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCHCH
化合物C:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCHCHCH
化合物D:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCH(CH
化合物E:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCHCHCHCH
化合物F:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=OCHCH
化合物G:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=OCHCHCH
化合物H:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=OCHCHCHCH
化合物I:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OH
化合物J:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=OH
化合物K:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=NH
化合物L:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=Cl
化合物M:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=Br
化合物N:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=I
化合物O:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=CHO
化合物P:式(N)において、R=R=R10=R14=OCH、R=R=R11=R15=OCHCHCHBr
化合物Q:式(N)において、R=R=R=R=R10=R11=R14=R15=OCHCHCl
化合物R:式(N)において、R=R=R10=R14=OH、R=R=R11=R15=OCHCH
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記内部電子供与体化合物は芳香族カルボン酸エステル化合物、ジエーテル系化合物、アルコールエステル系化合物、コハク酸エステル化合物又はケトン系化合物から選ばれる1種又は複数種である。
【0027】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記内部電子供与体化合物はアルコールエステル系化合物と、及び、ジエーテル系化合物、芳香族カルボン酸エステル化合物、コハク酸エステル化合物又はケトン系化合物から選ばれる1種又は複数種の化合物とを含む。本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記アルコールエステル系化合物と、ジエーテル系化合物、芳香族カルボン酸エステル化合物、コハク酸エステル化合物又はケトン系化合物から選ばれる1種又は複数種の化合物とのモル比は1:(0.02~50)である。
【0028】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記内部電子供与体化合物はコハク酸エステル化合物と、及び、ジエーテル系化合物、芳香族カルボン酸エステル化合物、アルコールエステル系化合物又はケトン系化合物から選ばれる1種又は複数種の化合物とを含む。いくつかの実施例によれば、前記コハク酸エステル化合物と、ジエーテル系化合物、芳香族カルボン酸エステル化合物、アルコールエステル系化合物又はケトン系化合物から選ばれる1種又は複数種の化合物とのモル比は1:(0.02~50)である。
【0029】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記アルコールエステル系化合物は式Bに示されるグリコールエステル化合物であり、
【0030】
【化4】
【0031】
式Bにおいて、R及びRは同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC~C20のアルキル基、C~C20のアルケニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアルキルアリール基、C~C20のアラルキル基及びC10~C20の縮合環アリール基から選ばれ、好ましくはそれぞれ独立してC~C10のアルキル基、C~C10のアルケニル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C10のアルキルアリール基、C~C10のアラルキル基及びC10~C15の縮合環アリール基から選ばれ、前記アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基及び縮合環アリール基は、C~C10のアルキル基、C~C10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~Cのアルキルアミン基、ビス-C~Cのアルキルアミン基、アルデヒド基、カルボキシル基及びヘテロ原子から選ばれる1つ又は複数の置換基で任意に置換され、Mは二価の連結基であり、好ましくはC~C20のアルキレン基、C~C20のシクロアルキレン基及びC~C20のアリーレン基から選ばれ、前記アルキレン基、シクロアルキレン基及び/又はアリーレン基は、C~C20のアルキル基、C~C20のアルコキシ基及びハロゲンから選ばれる置換基で置換されかつ置換基は任意に1つ又は複数の環に結合され、M中の炭素原子又は/及び水素原子は窒素、酸素、硫黄、ケイ素、リン又はハロゲン原子で任意に置換される。
【0032】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、式Bにおいて、R及びRは同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC~C10のアルキル基、C~C10のアルケニル基、C~C10のアルキニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基及びC~C20のアルキルアリール基から選ばれ、前記アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルキルアリール基は、ハロゲン、C~C10のアルキル基及びC~C10のアルコキシ基から選ばれる1種又は複数種の置換基で任意に置換される。
【0033】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、式Bにおいて、MはC~C10のアルキレン基、C~C10のシクロアルキレン基及びC~C10のアリーレン基から選ばれ、前記アルキレン基、シクロアルキレン基及び/又はアリーレン基は、C~C10のアルキル基、C~C10のアルコキシ基及びハロゲンから選ばれる置換基で任意に置換される。
いくつかの実施例によれば、Rはフェニル基又は置換されたフェニル基であり、例えば、C~Cのアルキル基、C~Cのアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲンで置換されたフェニル基である。
【0034】
いくつかの実施例によれば、Rはフェニル基又は置換されたフェニル基であり、例えば、C~Cのアルキル基、C~Cのアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲンで置換されたフェニル基である。
【0035】
いくつかの実施例によれば、MはC~C10のアルキレン基又は置換されたC~C10のアルキレン基であり、例えば、C~Cのアルキル基、C~Cのアルコキシ基、ヒドロキシ又はハロゲンで置換されたアルキレン基である。
【0036】
いくつかの実施例によれば、Mはベンジリデン基、置換されたフェニレン基、ナフチレン基又は置換されたナフチレン基であり、例えば、C~Cのアルキル基、C~Cのアルコキシ基、ヒドロキシ又はハロゲンで置換されたフェニレン基又はナフチレン基である。
【0037】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、前記アルコールエステル系化合物は式Cに示されるグリコールエステル化合物であり、
【0038】
【化5】
【0039】
式Cにおいて、R及びRは同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC~C10のアルキル基、C~C10のアルケニル基、C~C10のアルキニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基及びC~C20のアルキルアリール基から選ばれ、前記アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルキルアリール基は、ハロゲン、C~Cのアルキル基及びC~Cのアルコキシ基から選ばれる1種又は複数種の置換基で任意に置換され、R、R、R、R及びR~R2nは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C20のアルキル基、C~C10のアルケニル基、C~C10のアルキニル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアルキルアリール基、C~C20のアラルキル基及びC10~C20の縮合環アリール基から選ばれ、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基及び縮合環アリール基は、ハロゲン、C~Cのアルキル基及びC~Cのアルコキシ基から選ばれる1種又は複数種の置換基で任意に置換され、R、R、R、R及びR~R2nはヘテロ原子を任意に含有し、前記ヘテロ原子は窒素、酸素、硫黄、ケイ素、ハロゲン及びリンのうちの1種又は複数種であり、又は、R、R、R、R及びR~R2nのうちの2つ又は2つ以上は互いに結合して、飽和又は不飽和の単環もしくは飽和又は不飽和の多環を形成し、ここで、nは0~10の整数であり、好ましくは1~8の整数であり、より好ましくは2~6の整数であり、nが0である場合、置換基R及びRの炭素原子は置換基R及びRの炭素原子に結合される。当業者であれば理解されるように、中括弧部分
【0040】
【化6】
【0041】
はn個の炭素原子の結合を示し、ここで、各炭素原子に2つの置換基、即ちR、R、R…R2nで構成された部分が接続されている。
【0042】
当業者であれば理解されるように、nが0である場合、式Cは以下に示すとおりである。
【0043】
【化7】
【0044】
当業者であれば理解されるように、nが1、2、3、4、5、6である場合、
【0045】
【化8】
【0046】
はそれぞれ以下に示すとおりである。
【0047】
【化9】
【0048】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、前記アルコールエステル系化合物は、2,4-ペンタンジオールジ安息香酸エステル、3-メチル-2,4-ペンタンジオールジ安息香酸エステル、3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、4-エチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、3,5-ヘプタンジオールジ-p-メチル安息香酸エステル、3,5-ヘプタンジオールジ-o-メチル安息香酸エステル、3,5-ヘプタンジオールジ-p-クロロ安息香酸エステル、3,5-ヘプタンジオールジ-o-クロロ安息香酸エステル、3,5-ヘプタンジオールジ-p-メトキシ安息香酸エステル、3,5-ヘプタンジオールジ-o-メトキシ安息香酸エステル、3,5-ヘプタンジオールジ-m-メトキシ安息香酸エステル、2-メチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、4-メチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、6-メチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、4-エチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、5-エチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、4-プロピル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、4-ブチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、2,4-ジメチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、4,4-ジメチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、6,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、4,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、4,4-ジメチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、6,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、2-メチル-4-エチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、4-メチル-4-エチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、2-メチル-4-プロピル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、4-メチル-4-プロピル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、6-メチル-2,4-ヘプタンジオールジ(p-クロロ安息香酸)エステル、6-メチル-2,4-ヘプタンジオールジ(p-メチル安息香酸)エステル、6-メチル-2,4-ヘプタンジオールジ(m-メチル安息香酸)エステル、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、4-メチル-3,5-オクタンジオールジ安息香酸エステル、4-エチル-3,5-オクタンジオールジ安息香酸エステル、4-プロピル-3,5-オクタンジオールジ安息香酸エステル、4-ブチル-3,5-オクタンジオールジ安息香酸エステル、4,4-ジメチル-3,5-オクタンジオールジ安息香酸エステル、4-メチル-4-エチル-3,5-オクタンジオールジ安息香酸エステル、2-メチル-4-エチル-3,5-オクタンジオールジ安息香酸エステル、2-メチル-6-エチル-3,5-オクタンジオールジ安息香酸エステル、5-メチル-4,6-ノナンジオールジ安息香酸エステル、5-エチル-4,6-ノナンジオールジ安息香酸エステル、5-プロピル-4,6-ノナンジオールジ安息香酸エステル、5-ブチル-4,6-ノナンジオールジ安息香酸エステル、5,5-ジメチル-4,6-ノナンジオールジ安息香酸エステル、5-メチル-4-エチル-4,6-ノナンジオールジ安息香酸エステル、5-フェニル-4,6-ノナンジオールジ安息香酸エステル、4,6-ノナンジオールジ安息香酸エステル及び4-ブチル-3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステル、1,2-フェニレンジ安息香酸エステル、3-メチル-5-t-ブチル-1,2-フェニレンジ安息香酸エステル、3,5-ジイソプロピル-1,2-フェニレンジ安息香酸エステル、3,6-ジメチル-1,2-フェニレンジ安息香酸エステル、4-t-ブチル-1,2-フェニレンジ安息香酸エステル、1,2-ナフタレンジ安息香酸エステル、2,3-ナフタレンジ安息香酸エステル、ジ安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-4-メチル安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-3-メチル安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-2-メチル安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-4-エチル安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-4-n-プロピル安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-4-イソプロピル安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-4-n-ブチル安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-4-イソブチル安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-4-t-ブチル安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-4-フェニル安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-4-フルオロ安息香酸-1,8-ナフチル、ジ-3-フルオロ安息香酸-1,8-ナフチル及びジ-2-フルオロ安息香酸-1,8-ナフチルから選ばれる。
【0049】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記芳香族カルボン酸エステル系化合物の構造は式Fに示すとおりであり、
【0050】
【化10】
【0051】
式Fにおいて、各Rは同一であるか又は異なり、独立してC~Cのアルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C15のアリール基、C~C15のアルキルアリール基又はC~C15のアラルキル基であり、前記C~Cのアルキル基、C~C10の分岐鎖アルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C15のアリール基、C~C15のアルキルアリール基又はC~C15のアラルキル基の炭素上の水素は、アルカン及びハロゲン原子から選ばれる置換基で任意に置換されることができ、好ましくはC~Cのアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、R~Rは同一であっても異なってもよく、水素、ハロゲン、C~Cのアルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアルキルアリール基又はC~C20のアラルキル基であり、前記C~Cのアルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C15のアリール基、C~C15のアルキルアリール基又はC~C15のアラルキル基中の炭素上の水素は、アルカン及びハロゲン原子から選ばれる置換基で任意に置換されることができ、好ましくはC~Cのアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記芳香族カルボン酸エステル化合物はフタル酸カルボン酸エステルである。
【0053】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記芳香族カルボン酸エステル化合物は、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジn-ブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル及びフタル酸ジオクチルから選ばれる少なくとも1種である。
【0054】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記コハク酸エステル化合物の構造は式Gに示すとおりであり、
【0055】
【化11】
【0056】
式Gにおいて、R及びRは同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC~C20のアルキル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアリールアルキル基又はC~C20のアルキルアリール基から選ばれ、任意にヘテロ原子を含有し、R、R、R及びRは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、C~C20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はアルキルアリール基から選ばれ、任意にヘテロ原子を含有し、かつ基間は環として接続されることができる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態によれば、式Gにおいて、R及びRは同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC~C10のアルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C10のアリールアルキル基又はC~C10のアルキルアリール基から選ばれ、任意にヘテロ原子を含有し、R、R、R及びRは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、C~C10のアルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C10のアリールアルキル基又はC~C10のアルキルアリール基から選ばれる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記コハク酸エステル化合物は、2,3-ビス(2-エチルブチル)コハク酸ジエチルエステル、2,3-ジエチル-2-イソプロピルコハク酸ジエチルエステル、2,3-ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステル、2,3-ジ-tert-ブチルコハク酸ジエチルエステル、2,3-ジイソブチルコハク酸ジエチルエステル、2,3-(ビストリメチルシリル)コハク酸ジエチルエステル、2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルコハク酸ジエチルエステル、2,3-ジネオペンチルコハク酸ジエチルエステル、2,3-ジイソアミルコハク酸ジエチルエステル、2,3-(1-トリフルオロメチル-エチル)コハク酸ジエチルエステル、2-イソプロピル-3-イソブチルコハク酸ジエチルエステル、2-tert-ブチル-3-イソプロピルコハク酸ジエチルエステル、2-イソプロピル-3-シクロヘキシルコハク酸ジエチルエステル、2-イソアミル-3-シクロヘキシルコハク酸ジエチルエステル、2,2,3,3-テトラメチルコハク酸ジエチルエステル、2,2,3,3-テトラエチルコハク酸ジエチルエステル、2,2,3,3-テトラプロピルコハク酸ジエチルエステル、2,3-ジエチル-2,3-ジイソプロピルジコハク酸ジエチルエステル、2,3-ビス(2-エチルブチル)コハク酸ジイソブチルエステル、2,3-ジエチル-2-イソプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3-ジイソプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3-ジ-tert-ブチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3-ジイソブチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3-(ビストリメチルシリル)コハク酸ジイソブチルエステル、2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3-ジネオペンチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3-ジイソアミルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3-(1-トリフルオロメチル-エチル)コハク酸ジイソブチルエステル、2-イソプロピル-3-イソブチルコハク酸ジイソブチルエステル、2-tert-ブチル-3-イソプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2-イソプロピル-3-シクロヘキシルコハク酸ジイソブチルエステル、2-イソアミル-3-シクロヘキシルコハク酸ジイソブチルエステル、2,2,3,3-テトラメチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,2,3,3-テトラエチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,2,3,3-テトラプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3-ジエチル-2,3-ジイソプロピルジコハク酸ジイソブチルエステルから選ばれ、好ましくは2,3-ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステル、2,3-ジ-tert-ブチルコハク酸ジエチルエステル、2,3-ジイソブチルコハク酸ジエチルエステル及び2,3-ジイソプロピルコハク酸ジイソブチルエステルから選ばれる。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、前記外部電子供与体化合物は、シラン系化合物、エステル系化合物、エーテル系化合物好ましくはジエーテル系化合物又はケトン系化合物から選ばれる1種又は複数種である。
【0060】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記シラン系化合物の構造は式Dに示すとおりであり、
【0061】
【化12】
【0062】
式Dにおいて、R~Rは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、C~C10のアルキル基、C~C10のアルケニル基、C~C10のアルコキシ基、C~C10のアルケニルオキシ基、C~C10のアルキニル基、C~C10のアルキニルオキシ基、C~C10のシクロアルキル基、C~C15のアリール基、C~C10のシクロアルコキシ基、C~C15のアリールオキシ基及びアミノ基から選ばれ、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基及びアミノ基は、ハロゲン、C~Cのアルキル基、C~Cのシクロアルキル基、C~C10のアリール基及びアミノ基から選ばれる1つ又は複数の置換基で任意に置換されることができる。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によれば、式Dにおいて、R~Rは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、C~Cのアルキル基、C~Cのシクロアルキル基、C~C10のアリール基及びアミノ基から選ばれ、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアミノ基は、ハロゲン、C~Cのアルキル基、C~Cのシクロアルキル基、C~C10のアリール基及びアミノ基から選ばれる1つ又は複数の置換基で任意に置換されることができる。
【0064】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記シラン系化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルプロポキシシラン、ビニルジメトキシシラン、ビニルジエトキシシラン、ビニルジプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、アリルメトキシシラン、アリルエトキシシラン、アリルプロポキシシラン、アリルジメトキシシラン、アリルジエトキシシラン、アリルジプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、アミノトリメチルシラン、アミノトリエチルシラン、アミノトリプロピルシラン、アミノトリn-ブチルシラン、アミノトリイソブチルシラン、メチルアミノトリメチルシラン、メチルアミノトリエチルシラン、メチルアミノトリプロピルシラン、メチルアミノトリn-ブチルシラン、メチルアミノトリイソブチルシラン、エチルアミノトリメチルシラン、エチルアミノトリエチルシラン、エチルアミノトリプロピルシラン、エチルアミノトリn-ブチルシラン及びエチルアミノトリイソブチルシランから選ばれる少なくとも1種である。
【0065】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、内部電子供与体化合物及び/又は外部電子供与体化合物として使用可能なジエーテル系化合物は式Eに示される1,3-ジエーテル化合物であり、
【0066】
【化13】
【0067】
式Eにおいて、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C20のアルキル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基及びC~C20のアルキルアリール基から選ばれ、RVII及びRVIIIは同一であるか又は異なり、それぞれ独立してC~C20のアルキル基、C~C20のシクロアルキル基、C~C20のアリール基、C~C20のアラルキル基及びC~C20のアルキルアリール基から選ばれ、ここで、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルキルアリール基のうちのいずれか1つは、任意に1つ又は複数の置換基で置換されることができ、前記1つ又は複数の置換基はヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ-C~C10のアルキルアミン基、ビス-C~C10のアルキルアミン基、アルデヒド基、カルボキシル基及びヘテロ原子から選ばれ、又は、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIのうちの2つ又は2つ以上が互いに結合し、飽和又は不飽和の単環又は多環、例えばフルオレン環を形成する。
【0068】
本発明の好ましい実施形態によれば、式Eにおいて、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C18のアルキル基、C~C18のシクロアルキル基、C~C18のアリール基、C~C18のアラルキル基及びC~C18のアルキルアリール基から選ばれる。
【0069】
本発明の好ましい実施形態によれば、式Eにおいて、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C10のアルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C10のアラルキル基及びC~C10のアルキルアリール基から選ばれる。
【0070】
本発明の好ましい実施形態によれば、式Eにおいて、RVII及びRVIIIは同一であるか又は異なり、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C10のアルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C10のアラルキル基及びC~C10のアルキルアリール基から選ばれる。
【0071】
本発明の好ましい実施形態によれば、式Eにおいて、RVII及びRVIIIはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C10のアルキル基、C~C10のシクロアルキル基、C~C10のアリール基、C~C10のアラルキル基及びC~C10のアルキルアリール基から選ばれる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態によれば、式Eにおいて、RIIIとRIVは互いに結合して、飽和又は不飽和の単環又は多環を形成する。
【0073】
本発明の好ましい実施形態によれば、式Eにおいて、RVII及びRVIIIはそれぞれ独立してC~C10のアルキル基である。
【0074】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ジエーテル化合物は、2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシプロパン、2-(2-エチルヘキシル)1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-sec-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2-フェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2-(2-フェニルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(2-シクロヘキシルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(p-クロロフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(ジフェニルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(1-ナフチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(2-フルオロフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジエチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-プロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-ベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-エチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-フェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(p-クロロフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(2-シクロヘキシルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-(2-エチルヘキシル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジフェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-(1-メチルブチル)-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-(1-メチルブチル)-2-sec-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-sec-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-tert-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジネオペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-フェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2-フェニル-2-sec-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-ベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-シクロペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロペンチル-2-sec-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-sec-ブチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-sec-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-シクロヘキシルメチル-1,3-ジメトキシプロパン、1,1-ビス(メトキシメチル)-シクロペンタジエン、1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5,-テトラメチルシクロペンタジエン、1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5,-テトラメチルシクロペンタジエン、1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5,-テトラフェニルシクロペンタジエン、1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5,-テトラフルオロシクロペンタジエン、1,1-ビス(メトキシメチル)-3,4-ジシクロペンチルシクロペンタジエン、1,1-ビス(メトキシメチル)インデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3-ジメトキシインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,6,7-テトラフルオロインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-4,5,6,7-テトラフルオロインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)4,7-ジメチルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-3,6-ジメチルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-4-フェニルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-4-フェニル-2-メチルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-4-テトラシクロヘキシルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-7-(3,3,3-トリフルオロプロピル)フェニルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-7-シクロペンチルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-7-イソプロピルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-7-シクロヘキシルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-7-tert-ブチルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-7-tert-ブチル-2-メチルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-7-フェニルインデン、1,1-ビス(メトキシメチル)-2-フェニルインデン、9,9-ジ(メトキシメチル)フルオレン、9,9-ジ(メトキシメチル)-2,7-ジシクロペンチルフルオレン、9,9-ジ(メトキシメチル)-1,8-ジクロロフルオレン、9,9-ジ(メトキシメチル)-1,8-ジフルオロフルオレン、9,9-ジ(メトキシメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロフルオレン、9,9-ジ(メトキシメチル)-4-tert-ブチルフルオレン、1,1-ビス-(メトキシメチル)-2,5-シクロヘキサジエン、1,1-ビス-(メトキシメチル)-ベンゾナフタレン、7,7-ビス-(メトキシメチル)-2,5-ノルボルナジエン、9,9-ビス-(メトキシメチル)-1,4-メタンジヒドロナフタレン、9,9-ビス-(メトキシメチル)-1,4-メタンジヒドロアントラセン、4,4-ビス-(メトキシメチル)-1-フェニル-1,4-ジヒドロナフタレン、4,4-ビス-(メトキシメチル)-1-フェニル-3,4-ジヒドロナフタレン、5,5-ビス-(メトキシメチル)-1,3,6-シクロヘプタトリエン及び1-メトキシメチル-1-(1’-メトキシエチル)-2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエンから選ばれる少なくとも1種である。
【0075】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記式(M)に示される12員環化合物と前記外部電子供与体化合物とのモル比は1:100~100:1であり、好ましくは1:50~50:1であり、より好ましくは1:20~20:1である。
【0076】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記有機アルミニウム化合物はアルキルアルミニウム化合物である。本発明の好ましい実施形態によれば、前記アルキルアルミニウム化合物の一般式はAlRであり、ここで、各Rはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C20のアルキル基、C~C20のアルコキシ基又はハロゲン化C~C20のアルキル基から選ばれ、3つのRは少なくとも1つがC~C20のアルキル基又はハロゲン化C~C20のアルキル基である。本発明の好ましい実施形態によれば、前記アルキルアルミニウム化合物の一般式はAlRであり、ここで、各Rはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C~C10のアルキル基、C~C10のアルコキシ基又はハロゲン化C~C10のアルキル基から選ばれ、3つのRは少なくとも1つがC~C10のアルキル基又はハロゲン化C~C10のアルキル基である。具体的には、前記有機アルミニウム化合物は、好ましくはトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、モノアルキルアルミニウムジクロライド、アルキルアルミノキサンから選ばれる1種又は複数種である。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記アルキルアルミニウム化合物は、トリエチルアルミニウム、トリn-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn-ヘキシルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、モノヒドロジエチルアルミニウム、モノヒドロジイソブチルアルミニウム、モノクロロジエチルアルミニウム、モノクロロジイソブチルアルミニウム、ジクロロエチルアルミニウム、Al(n-C13及びAl(n-C17のうちの1種又は複数種である。
【0077】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記式(M)に示される12員環化合物とアルミニウムで計算される有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(0.1~500)であり、好ましくは1:(1~200)である。
【0078】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、チタン元素で計算される固体触媒成分とアルミニウムで計算される有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(5~5000)であり、好ましくは1:(20~2000)である。
【0079】
本発明に記載の触媒系のいくつかの実施形態によれば、前記外部電子供与体化合物と前記固体触媒成分中のチタン元素とのモル比は(0~500):1であり、好ましくは(0.01~200):1であり、より好ましくは(0.1~100):1である。
【0080】
本発明に記載の触媒系の実施形態によれば、前記固体触媒成分中のチタン元素、マグネシウム元素、内部電子供与体化合物の重量比は1:(5~25):(2~15)である。
本発明によれば、前記固体触媒成分はチタン、マグネシウム及び内部電子供与体を含み、チタン化合物、マグネシウム化合物及び内部電子供与体の反応生成物である。
【0081】
本発明において、固体触媒成分を製造する方法は、本分野の一般的な使用方法に応じて行えばよく、例えば、CN1506384、CN1091748、CN85100997、CN102399326A、US4540679等に開示された方法を参照することができ、本発明は引用によりそれらの開示された内容をここに組み合わせる。
【0082】
本発明において、固体触媒成分の製造方法は、以下の方法を含むが、それらに限定されない。
方法1:マグネシウム化合物を不活性溶媒に加え、さらに有機エポキシ化合物及び有機リン化合物を加え、溶解した後に析出助剤及びチタン化合物を加え、固体物を析出させ、内部電子供与体を加え、それを固体物に付着させ、さらに四ハロゲン化チタン及び不活性希釈剤で処理して得られる。
方法2:デカン又はトルエン等の不活性溶媒において、固体マグネシウム化合物を例えば2-エチルヘキサノールのような有機アルコール化合物に溶解し、溶解した後に析出助剤及びチタン化合物を加え、固体物を析出させ、内部電子供与体を加え、それを固体物に付着させ、さらにチタン化合物及び不活性希釈剤で処理して得られる。
方法3:ハロゲン化マグネシウムアルコラートを低温(例えば-5℃以下)のチタン化合物に分散させ、さらに高温(例えば50℃以上)に昇温し、昇温過程で内部電子供与体化合物を加え、濾過し、得られた沈殿物をチタン化合物で処理し、沈殿物を洗浄し、前記固体触媒成分が得られる。
方法4:アルコキシマグネシウム担体及び不活性希釈剤を懸濁液に調製し、その後、チタン化合物と不活性希釈剤で形成された混合物と反応させ、濾過し、得られた沈殿物をチタン化合物及び内部電子供与体化合物と接触反応させ、沈殿物を洗浄し、前記固体触媒成分が得られる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態によれば、-15℃~40℃に予冷されたチタン化合物又はチタン化合物と不活性溶媒(例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン等の不活性溶媒)との混合物と、マグネシウム化合物とを混合し、段階的に混合物の温度を90~110℃に昇温し0.1~2時間維持し、昇温過程において内部電子供与体を加える。その後に固液分離し、得られた固相をチタン化合物で再度少なくとも2回処理し、溶媒で洗浄し、最後に真空乾燥して前記固体触媒成分が得られる。
【0084】
本発明によれば、前記マグネシウム化合物は本分野でオレフィン重合触媒の製造に一般的に使用される様々なマグネシウム化合物であってもよく、例えば、前記マグネシウム化合物は、ジハロゲン化マグネシウム、アルコキシマグネシウム、アルキルマグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムの水和物、ジハロゲン化マグネシウムのアルコラート及びジハロゲン化マグネシウム分子中の1つのハロゲン原子がヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン化ヒドロカルビルオキシで置換された誘導体から選ばれる少なくとも1種であってもよい。本発明の好ましい実施形態によれば、前記マグネシウム化合物はジハロゲン化マグネシウムのアルコラートである。
【0085】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ジハロゲン化マグネシウムのアルコラートは式(I)に示される球状マグネシウムアルコラートを有し、
MgX・m(R’OH)・nE・qHO 式(I)
式(I)において、Xは塩素又は臭素であり、R’はC~Cのアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基)であり、mは0.5~4.0であり、Eはエーテル類又はエステル類電子供与体化合物であり、nは0~1.0であり、ここで、前記エーテル類又はエステル類は本分野の公知の、電子供与体とすることができるエーテル類又はエステル類であってもよく、本発明に使用される内部電子供与体及び/又は外部電子供与体であってもよい、qは0~0.8である。
【0086】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(I)において、Xは塩素又は臭素であり、R’はC~Cのアルキル基であり、mは1.5~3.5であり、n及びqは共に0である。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記マグネシウム化合物はMgCl・m(CHCHOH)であり、mは1.5~3.5である。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ジハロゲン化マグネシウムのアルコラートの製造方法は本分野の公知の方法に従って製造することができ、例えば、CN1330086Aに開示された方法を参照して製造することができる。
【0088】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ジハロゲン化マグネシウムのアルコラートの製造方法は、(1)無水ジハロゲン化マグネシウムとアルコール化合物(R’OH)を混合し、90~140℃で反応させてハロゲン化マグネシウムのアルコラートが得られること、(2)前記ハロゲン化マグネシウムのアルコラートを分散媒体中で剪断し、剪断した後に不活性媒体中で冷却し、前記球状ハロゲン化マグネシウムのアルコラートが得られることを含む。ここで、前記無水ジハロゲン化マグネシウムとアルコール化合物との混合比率は実際の必要に応じて前記無水ジハロゲン化マグネシウムに担持させるアルコール化合物の割合に応じて決定することができる。ここで、前記分散媒体は炭化水素系不活性溶媒、例えばケロシン、ホワイトオイル、シリコーンオイル、パラフィンオイル、ワセリン油等を採用することができる。前記不活性媒体はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、抽残油等から選択することができる。ここで、前記剪断とは、外部の剪断力により前記ハロゲン化マグネシウムのアルコラートを剪断することであり、例えば、高速撹拌法(例えばCN1330086)、スプレー法(例えばUS6020279)及び超重力回転床(例えばCN1580136A)及び乳化機法(CN1463990A)等である。
【0089】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記マグネシウム化合物の純度をさらに向上させるために、得られた前記球状ハロゲン化マグネシウムのアルコラートはさらに洗浄及び乾燥のステップを行う。
【0090】
本発明に記載の前記アルコキシマグネシウムは、金属マグネシウム、エタノール、イソオクタノール(2-エチルヘキサノール)及び混合ハロゲン化剤を不活性雰囲気下で反応させて製造される。前記混合ハロゲン化剤はハロゲンとハロゲン化合物の組み合わせであり、前記ハロゲンとハロゲン化合物は、ヨウ素、臭素、塩素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、エトキシヨウ化マグネシウム、メトキシヨウ化マグネシウム、イソプロピルヨウ化マグネシウム、塩化水素、クロロアセチルクロリド等から非限定的に選ばれる。
【0091】
本発明によれば、前記チタン化合物は本分野のオレフィン重合触媒の製造に一般的に使用される様々なチタン化合物である。本発明の好ましい実施形態によれば、前記チタン化合物は式(II)に示される構造を有し、
Ti(OR’’)4-k式(II)
式(II)において、R’’はC~C20のアルキル基であり、XはF、Cl又はBrであり、kは0~4の整数である。
【0092】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(II)において、R’’はC~C10のアルキル基である。
【0093】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(II)において、R’’はC~Cのアルキル基である。
【0094】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、式(II)において、R’’はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソアミル、ネオペンチルである。
【0095】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(II)において、XはClである。
【0096】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記チタン化合物は四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、テトラブトキシチタン、テトラエトキシチタン、モノクロロトリブトキシチタン、ジクロロジブトキシチタン、トリクロロモノブトキシチタン、モノクロロトリエトキシチタン、ジクロロジエトキシチタン、トリクロロモノエトキシチタン及び三塩化チタンから選ばれる少なくとも1種である。
【0097】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記チタン化合物は四塩化チタンである。
第2の局面において、本発明は、オレフィン重合に用いられる予備重合触媒組成物をさらに提供し、それは第1の局面に記載の触媒系とオレフィンを予備重合させて得られたプレポリマーを含む。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プレポリマーの予備重合倍数は0.1~1000gのオレフィン重合体/g固体触媒成分である。
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、前記プレポリマーの予備重合倍数は0.2~500gのオレフィン重合体/g固体触媒成分である。
【0099】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、前記プレポリマーの予備重合倍数は0.5~20gのオレフィン重合体/g固体触媒成分である。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記予備重合の温度は-20~80℃であり、重合圧力は好ましくは0~5MPaである。
【0101】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、前記予備重合の温度は0~50℃である。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記予備重合は液体中又は気相中で行われる。
第3の局面において、本発明は、オレフィン重合に用いられる方法をさらに提供し、オレフィンを第1の局面に記載の触媒系及び/又は第2の局面に記載の予備重合触媒組成物の存在下で重合させることを含む。
【0103】
本発明の前記オレフィン重合に用いられる方法の実施形態によれば、前記オレフィンの一般式はCH=CHRであり、ここで、Rは水素又はC~Cのアルキル基であり、好ましくは水素又はC~Cのアルキル基である。好ましくは、前記オレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン及び1-ヘキセンから選ばれる1種又は複数種である。いくつかの実施例によれば、前記オレフィンは、エチレン、プロピレン又はエチレンとプロピレンの混合物である。
【0104】
本発明によれば、本発明に記載の触媒系は、反応器に直接入れ重合過程に用いられてもよく、又は、前記触媒系とオレフィンを予備重合して予備重合触媒が得られた後に反応器に入れ重合反応を行ってもよい。
【0105】
本発明によれば、前記オレフィン重合反応は、公知の重合方法に従って行ってもよく、液相又は気相で行ってもよく、液相及び気相重合段階を組み合わせた操作で行ってもよく、従来の技術、例えばスラリー法、気相流動床等を採用してもよい。
【0106】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、前記重合の条件は、温度が0~150℃であり、時間が0.2~5時間であり、圧力が0.01~10MPaであることを含む。
【0107】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、前記重合の条件は、温度が50~90℃であり、時間が0.3~2時間であり、圧力が0.02~5MPaであることを含む。
【0108】
本発明によれば、前記重合は、溶媒の存在下で行ってもよい。ここで、固体触媒成分中のチタン元素に対して、前記触媒系の溶媒中の濃度は0.1×10-5~5×10-5モル/リットルであってもよい。
【0109】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、固体触媒成分中のチタン元素に対して、前記触媒系の溶媒中の濃度は0.2×10-5~2×10-5モル/リットルであってもよい。
【0110】
本発明において、炭化水素基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基及びアルキルアリール基から選ばれてもよい。
【0111】
本発明において、アルキル基とは、直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基を意味し、その非限定的な実例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、テトラヒドロゲラニル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基及びn-イコシル基を含む。
【0112】
本発明において、アルケニル基の実例としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、オクテニル基を含むが、それらに限定されない。
【0113】
本発明において、アルキニル基の実例としては、エチニル基及びプロパルギル基を含むが、それらに限定されない。
【0114】
本発明において、シクロアルキル基の実例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-n-プロピルシクロヘキシル基、4-n-ブチルシクロヘキシル基、シクロウンデシル基及びシクロドデシル基を含むが、それらに限定されない。
【0115】
本発明において、ハロゲンの実例としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含むが、それらに限定されない。
【0116】
本発明において、アリール基の実例としては、フェニル、メチルフェニル、エチルフェニル、4-t-ブチルフェニル、ナフチルを含むが、それらに限定されない。
【0117】
本発明において、アラルキル基とは、アリール置換基を有するアルキル基を意味し、実例として、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルn-プロピル基、フェニルn-ブチル基、フェニルt-ブチル基及びフェニルイソプロピル基を含むが、それらに限定されない。
【0118】
本発明において、アルキルアリール基とは、炭素数が7~20の、アルキル置換基を有するアリール基を意味し、その実例としては、メチルフェニル基、エチルフェニル基を含むが、それらに限定されない。
【0119】
本発明において、アルコキシ基の実例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、tert-ペントキシ基及びヘキシルオキシ基を含むが、それらに限定されない。
【0120】
本発明において、縮合環アリール基の実例としては、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基を含むが、それらに限定されない。
本発明において、前記ヘテロ原子とは、ハロゲン原子、炭素原子及び水素原子以外の、分子構造に一般的に含まれる原子、例えばO、N、S、P、Si及びB等を意味する。
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0121】
本発明の提供する触媒系がオレフィン重合に用いられる場合、立体特異性、触媒活性及び水素調整感度はいずれも良好である。本発明の提供する触媒の以上の特徴によれば、本発明の提供する触媒系は特に高い立体規則性、低灰分のポリプロピレン製品を製造することに適し、そして、水素添加量を調整することにより広い範囲で製品のメルトインデックスを調整することができる。本発明の提供する触媒系は共重合系にも適用され、共重合生産性を向上させる。
【0122】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明するが、当業者であれば理解されるように、以下の実施例は単に本発明を説明するために用いられ、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。実施例において具体的な条件を明記しないものは、通常の条件又は製造元の提案の条件に応じて行う。使用された試薬又は機器は製造業者を明記しないものは、いずれも市販から通常の製品を入手できる。
【0123】
(試験方法)
1、触媒の重合活性:一定の時間内に得られた重合体の量(kgで計算する)を加えた触媒の量(gで計算する)で割る。
2、重量平均分子量:高温ゲルパーミエーションクロマトグラフは、標準GB/T36214.4-2018を参照して測定する。
3、ポリマーのアイソタクティシティ指数:標準GB/T 2412-2008を参照して行う。
4、エチレン含有量:フーリエ赤外線分光計VERTEX70で測定して得られる。
【0124】
(製造例1)
3,4-ジメトキシベンジルアルコール(5g)/ジクロロメタン(20mL)混合溶液をトリフルオロ酢酸(25mL)のジクロロメタン(200mL)溶液に滴下し、滴下が完了した後に続けて氷浴で4時間反応させる。水酸化ナトリウム溶液で反応液を中和し、有機相を分離しそれを完全に抽出する。得られた生成物を水及び有機溶媒で複数回洗浄し、クロロホルム(80mL)/ベンゼン(30mL)で再結晶させ、2.5gの化合物Aが得られる。
【0125】
【化14】
【0126】
(製造例2)
本製造例は、マグネシウム化合物の製造を説明するために用いられる。
無水塩化マグネシウムとエタノールを1:2.6のモル比で混合し、120℃まで昇温し反応させ塩化マグネシウムアルコラート溶融体を生成し、分散媒体であるホワイトオイル及びシリコーンオイルで高速撹拌した後に冷却されたヘキサンに加え、球状塩化マグネシウムアルコラート粒子を形成し、洗浄し、乾燥させた後に球状塩化マグネシウムアルコラート担体が得られる。
【0127】
(製造例3)
本製造例は、固体触媒成分の製造を説明するために用いられる。
【0128】
高純度の窒素ガスで十分に置換された300mlの撹拌付きのガラス反応フラスコに、100mlの四塩化チタンを加え、-20℃に冷却し、8gの製造例2で製造された球状塩化マグネシウムアルコラートを加え、110℃まで徐々に昇温し、昇温過程で6mmolの2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシプロパンを加え内部電子供与体とし、110℃で0.5h恒温した後、液体を濾過除去し、四塩化チタンを加え2回処理し、その後にヘキサンで5回洗浄し、真空乾燥した後にチタン含有固体触媒成分Z1が得られ、チタン含有量が2.4wt%である。
【0129】
(製造例4)
本製造例は、固体触媒成分の製造を説明するために用いられる。
【0130】
高純度の窒素ガスで十分に置換された300mlの撹拌付きのガラス反応フラスコに、100mlの四塩化チタンを加え、-20℃に冷却し、8gの製造例2で製造された球状塩化マグネシウムアルコラートを加え、110℃まで徐々に昇温し、昇温過程で3mmolの2,4-ペンタンジオールジ安息香酸エステル及び3mmolの2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシプロパンを加え内部電子供与体とし、110℃で0.5h恒温した後、液体を濾過除去し、四塩化チタンを加え2回処理し、その後にヘキサンで5回洗浄し、真空乾燥した後にチタン含有固体触媒成分Z2が得られ、チタン含有量が2.7wt%である。
【0131】
(製造例5)
本製造例は、固体触媒成分の製造を説明するために用いられる。
【0132】
高純度の窒素ガスで十分に置換された反応器に、6.0gの塩化マグネシウム、119mlのトルエン、5mlのエピクロロヒドリン、15.6mlのリン酸トリブチル(TBP)を順に加え、撹拌しながら50℃まで昇温し、2.5時間維持し、固体を完全に溶解させる。1.7gの無水フタル酸を加え、続けて1時間維持する。溶液を-25℃以下に冷却し、1時間をかけてTiClを70ml滴下して80℃まで徐々に昇温し、昇温過程で固体物を徐々に析出させる。6mmolの3-メチル-2,4-ペンタンジオールジ安息香酸エステルを加え内部電子供与体とし、温度を1時間維持し、濾過した後、80mlのトルエンを加え、2回洗浄し、固体沈殿物が得られる。その後に60mlのトルエン、40mlのTiClを加え、100℃に昇温し、2時間処理し、濾液を排出した後、さらに60mlのトルエン、40mlのTiClを加え、100℃に昇温し、2時間処理し、濾液を排出する。60mlのトルエンを加え、沸騰状態で3回洗浄し、さらに60mlのヘキサンを加え、沸騰状態で2回洗浄し、60mlのヘキサンを添加し、常温で2回洗浄した後、固体触媒成分Z3が得られ、チタンの含有量が2.5wt%である。
【0133】
(製造例6)
本製造例はアルコキシマグネシウムの製造を説明するために用いられる。
【0134】
窒素ガスで撹拌機付きの16L耐圧反応器を十分に置換した後、反応器に10Lのエタノール、300mLの2-エチルヘキサノール、11.2gのヨウ素、8gの塩化マグネシウム及び640gのマグネシウム粉末を加える。撹拌しながら体系を75℃まで昇温させ、水素が排出されなくなるまで還流反応させる。反応を停止させ、3Lのエタノールで洗浄し、濾過し、乾燥させ、アルコキシマグネシウムが得られる。
【0135】
(製造例7)
本製造例は固体触媒成分の製造を説明するために用いられる。
【0136】
10gの製造例6のアルコキシマグネシウム化合物、50mLのトルエン、3mmolの2,3-ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステル及び3mmolの3,5-ヘプタンジオールジ安息香酸エステルを懸濁液に調製する。高純度の窒素ガスで繰り返し置換された300mLの反応釜に、40mLのトルエン及び60mLの四塩化チタンを加え、80℃に昇温し、その後に、調製された懸濁液を釜に入れ、1時間恒温し、110℃まで徐々に昇温し、2時間恒温し、加圧濾過した後に78mLのトルエンと52mLの四塩化チタンの混合液を加え110℃で1時間撹拌処理し、このように3回処理する。加圧濾過した後にヘキサンで4回洗浄し、毎回150mLであり、加圧濾過し、乾燥すれば、固体触媒成分Z4が得られ、チタン含有量は2.5wt%である。
【0137】
(製造例8)
3,4-ジエトキシベンジルアルコール(5.8g)/ジクロロメタン(20mL)混合溶液をトリフルオロ酢酸(25mL)のジクロロメタン(200mL)溶液に滴下し、滴下が完了した後に続けて氷浴で4時間反応させる。水酸化ナトリウム溶液で反応液を中和し、有機相を分離しそれを完全に抽出する。得られた生成物を水及び有機溶媒で複数回洗浄し、クロロホルム(80mL)/ベンゼン(30mL)で再結晶させ、1.5gの化合物Bが得られる。
【0138】
【化15】
【0139】
(製造例9)
3-メトキシ-4-臭化プロポキシベンジルアルコール(7g)/ジクロロメタン(20mL)混合溶液をトリフルオロ酢酸(25mL)のジクロロメタン(200mL)溶液に滴下し、滴下が完了した後に続けて氷浴で4時間反応させる。水酸化ナトリウム溶液で反応液を中和し、有機相を分離しそれを完全に抽出する。得られた生成物を水及び有機溶媒で複数回洗浄し、クロロホルム(80mL)/ベンゼン(30mL)で再結晶させ、1.7gの化合物Pが得られる。
【0140】
【化16】
【0141】
(製造例10)
3-ヨード-4-メトキシベンジルアルコール(23g)/エチルエーテル混合溶液にP(57.5g)を含有するエチルエーテル溶液(100mL)を撹拌しながら滴下し、還流して撹拌を停止し、3日後にエチルエーテルをスピンドライする。得られた生成物をジクロロメタンで溶解しカラムに通過させ、濾液をスピンドライした後にエチルエーテル/ジクロロメタン(95/5)混合液で再結晶させ、1.3gの化合物Nが得られる。
【0142】
【化17】
【0143】
(製造例11)
-80℃の25mLのTHF溶液(0.5gの化合物Nを含む)にn-BuLiを含有するトルエン溶液2mL(ここでn-BuLiが5mmol)を加え、反応液を1時間後に0℃に上昇させ、室温で1時間撹拌した後、-70℃まで迅速に冷却し、2mLのクロロギ酸エチルを加える。反応液を室温に戻して3時間撹拌する。残りのn-BuLiはNHClで中和する。酢酸エチルで有機相を抽出し、乾燥した後に0.14gの化合物Oが得られる。
【0144】
【化18】
【0145】
(実施例1)
48チャンネルの平行圧力反応器(反応体積20ml)に4mNL(mNLはミリ標準リットルを意味する)の水素ガスを加える。プロピレンガスを1mPaになるまで充填し、液体プロピレン5mlを添加する。トリエチルアルミニウム(アルミニウム元素で計算する):化合物A:固体触媒成分Z1(チタン元素で計算する)のモル比が500:20:1の割合でトリエチルアルミニウム、化合物A、固体触媒成分Z1のヘプタン溶液を順次添加し、混合液を調製する。一定量の混合液(固体触媒成分0.02mgを含む)を取り反応器に注入する。70℃で1時間反応させる。
【0146】
反応生成物を吐出し、ポリマーの重量を秤量し、触媒活性を算出する。同時にポリマーのアイソタクティシティ指数を測定し、その結果は表1に示すとおりである。
【0147】
(実施例2)
実施例1と基本的に同じであり、相違点は、水素添加量が20mNLであることのみである。結果を表1に示す。
【0148】
(実施例3)
実施例1と基本的に同じであり、相違点は、化合物Aを等モルの化合物Pに置き換えることのみである。結果を表1に示す。
【0149】
(実施例4)
実施例2と基本的に同じであり、相違点は、化合物Aを等モルの化合物Nに置き換えることのみである。結果を表1に示す。
【0150】
(比較例1)
実施例1と基本的に同じであり、相違点は、化合物Aを添加しないことのみである。結果を表1に示す。
【0151】
(比較例2)
実施例2と基本的に同じであり、相違点は、化合物Aを添加しないことのみである。結果を表1に示す。
【0152】
(比較例3)
実施例2と基本的に同じであり、相違点は、化合物Aを等モルのC-Donorに置き換えることのみである。結果を表1に示す。
【0153】
(実施例5)
比較例3と基本的に同じであり、相違点は、C-Donorと等モルの化合物Aを追加して添加することのみである。結果を表1に示す。
【0154】
(比較例4)
実施例1と基本的に同じであり、相違点は、化合物Aを等モルのDonor1に置き換えることのみである。結果を表1に示す。
【0155】
(実施例6)
比較例4と基本的に同じであり、相違点は、Donor1と等モルの化合物Bを追加して添加することのみである。結果を表1に示す。
【0156】
(実施例7)
実施例6と基本的に同じであり、相違点は、固体触媒成分をZ1からZ2に置き換え、Donor1を等モルのC-Donorに置き換えることのみである。結果を表1に示す。
【0157】
(比較例5)
実施例7と基本的に同じであり、相違点は、化合物Bを添加しないことのみである。結果を表1に示す。
【0158】
(実施例8)
実施例7と基本的に同じであり、相違点は、固体触媒成分をZ2からZ4に置き換え、水素添加量を20mNLに変更することのみである。結果を表1に示す。
【0159】
(比較例6)
実施例8と基本的に同じであり、相違点は、化合物Bを添加しないことのみである。結果を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
備考:
C-Donor シクロヘキシルメチルジメトキシシラン
Donor 1 2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシプロパン
表1から分かるように、外部電子供与体又は外部電子供与体を含まない触媒系について、プロピレン重合に用いられる場合、式(M)に示される12員環化合物を助触媒として添加すると、いずれも触媒の活性を顕著に向上させることができる、また、重合生成物のアイソタクティシティ指数も改善される。
【0162】
(実施例9)
実施例1と基本的に同じであり、相違点は、化合物Aを等モルの化合物Bに置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0163】
(比較例7)
実施例1と基本的に同じであり、相違点は、化合物Aを等モルのC-Donorに置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0164】
(実施例10)
実施例2と基本的に同じであり、相違点は、一部の化合物Aを等モルのC-Donorに置き換えることのみである。本実施例において、化合物AとC-Donorとのモル比は1:1である。結果を表2に示す。
【0165】
(実施例11)
実施例2と基本的に同じであり、相違点は、一部の化合物Aを等モルのC-Donorに置き換えることのみである。本実施例において、化合物AとC-Donorとのモル比は1:9である。結果を表2に示す。
【0166】
(実施例12)
実施例10と基本的に同じであり、相違点は、化合物Aを等モルの化合物Bに置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0167】
(実施例13)
実施例12と基本的に同じであり、相違点は、C-Donorを等モルのDonor 1に置き換え、水素添加量を4mNLに変更することのみである。結果を表2に示す。
【0168】
(実施例14)
実施例2と基本的に同じであり、相違点は、固体触媒成分をZ1からZ2に置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0169】
(実施例15)
実施例10と基本的に同じであり、相違点は、固体触媒成分をZ1からZ2に置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0170】
(実施例16)
実施例9と基本的に同じであり、相違点は、固体触媒成分をZ1からZ2に置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0171】
(実施例17)
実施例16と基本的に同じであり、相違点は、水素添加量を20mNLに変更することのみである。結果を表2に示す。
【0172】
(実施例18)
実施例13と基本的に同じであり、相違点は、固体触媒成分をZ1からZ2に置換し、Donor1を等モルのC-Donorに置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0173】
(実施例19)
実施例18と基本的に同じであり、相違点は、水素添加量を20mNLに変更することのみである。結果を表2に示す。
【0174】
(比較例8)
比較例5と基本的に同じであり、相違点は、水素添加量を20mNLに変更することのみである。結果を表2に示す。
【0175】
(実施例20)
実施例9と基本的に同じであり、相違点は、固体触媒成分をZ1からZ3に置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0176】
(実施例21)
実施例20と基本的に同じであり、相違点は、水素添加量を20mNLに変更することのみである。結果を表2に示す。
【0177】
(実施例22)
実施例21と基本的に同じであり、相違点は、化合物Bを等モルの化合物Oに置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0178】
(比較例9)
実施例20と基本的に同じであり、相違点は、化合物Bを等モルのC-Donorに置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0179】
(比較例10)
比較例9と基本的に同じであり、相違点は、水素添加量を20mNLに変更することのみである。結果を表2に示す。
【0180】
(実施例23)
実施例21と基本的に同じであり、相違点は、固体触媒成分をZ3からZ4に置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0181】
(実施例24)
実施例12と基本的に同じであり、相違点は、固体触媒成分をZ1からZ4に置き換えることのみである。結果を表2に示す。
【0182】
【表2】
【0183】
備考:
C-Donor シクロヘキシルメチルジメトキシシラン
Donor 1 2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシプロパン
表2から分かるように、本発明の提供する触媒系はオレフィン重合、特にプロピレン重合に用いられる場合、立体特異性、触媒活性及び水素調整感度はいずれも良好である。外部電子供与体としてシラン系化合物又はジエーテル系化合物を含む触媒系と比較して、式(M)で示される12員環化合物を助触媒として含有する触媒系の水素調整感度が改善され、重合活性が明らかに向上し、重合体のアイソタクティシティ指数が良好である。触媒系にシラン系化合物又はジエーテル系化合物を添加して外部電子供与体とすると、生成物のアイソタクティシティ指数がより向上する。本発明の提供する触媒の以上の特徴によれば、本発明の提供する触媒系は特に高い立体規則性、低灰分のポリプロピレン製品を製造することに適し、そして、水素添加量を調整することにより広い範囲で製品のメルトインデックスを調整することができる。
【0184】
(実施例25)
48チャンネルの平行圧力反応器(反応体積20ml)に水素ガスで反応器を置換する。プロピレンガスを1mPaになるまで充填し、液体プロピレン5mlを添加する。トリエチルアルミニウム(アルミニウム元素で計算する):化合物A:固体触媒成分(チタン元素で計算する)のモル比が250:25:1の割合でトリエチルアルミニウム、化合物A、固体触媒成分Z1のヘプタン溶液を順次添加し、混合液を調製する。一定量の混合液(固体触媒成分0.02mgを含む)を取り反応器に注入する。70℃で40分間反応させる。エチルプロピレン混合ガス(エチレンとプロピレンの体積比が1:1である)で体系を置換し、80℃で圧力を0.7mpaに制御して20分間反応させる。
【0185】
反応生成物を吐出し、ポリマーの重量を秤量し、触媒活性を算出する。同時にポリマーのエチレン含有量を測定し、その結果は表3に示すとおりである。
【0186】
(比較例11)
実施例25と基本的に同じであり、相違点は、化合物Aを等モルのC-donorに置き換えることのみである。結果を表3に示す。
【0187】
(実施例26)
実施例25と基本的に同じであり、相違点は、一部の化合物Aを等モルのC-Donorに置き換えることのみである。本実施例において、化合物AとC-Donorとのモル比は1:1である。結果を表3に示す。
【0188】
(実施例27)
実施例26と基本的に同じであり、相違点は、化合物AとC-Donorのモル比が1:9であることのみである。結果を表3に示す。
【0189】
(実施例28)
実施例25と基本的に同じであり、相違点は、固体触媒成分Z1を固体触媒成分Z2に置き換えることのみである。結果を表3に示す。
【0190】
(実施例29)
実施例28との相違点は、化合物Aを等モルの化合物Bに置き換えることのみである。結果を表3に示す。
【0191】
(比較例12)
実施例28との相違点は、化合物Aを等モルのC-donorに置き換えることのみである。結果を表3に示す。
【0192】
【表3】
【0193】
備考:
C-Donor シクロヘキシルメチルジメトキシシラン
エチレン含有量とは、重合体中のエチレン単量体に由来する-CHCH-単位の含有量を意味する。
【0194】
表3から分かるように、本発明の提供する触媒系はオレフィン共重合、特にエチレンとプロピレンの共重合に用いられる場合、C-Donorを外部電子供与体とする場合と比較して、式(M)で示される12員環化合物を助触媒とする触媒系で得られた共重合体はエチレン含有量が相当し、重合活性が向上する。本発明の提供する触媒の以上の特徴によれば、本発明の提供する触媒系は共重合系にも適用され、共重合生産性を向上させる。
【0195】
注意すべきことは、以上に記載の実施例は本発明を説明するだけに用いられ、本発明を何ら制限するものではない。規定により本発明の請求項の範囲内で本発明を変更することができ、また本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明を改訂することができる。説明された本発明は特定の方法、材料及び実施例に係るが、本発明がその中に開示された特定の例に限定されるものではなく、逆に、本発明はその他の全ての同様な機能を有する方法及び適用に拡張することができる。
【国際調査報告】