(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】バイオインク配合物、バイオプリントされた角膜レンチキュール、およびそれらの用途
(51)【国際特許分類】
A61L 27/40 20060101AFI20220921BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220921BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20220921BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20220921BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20220921BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20220921BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20220921BHJP
A61L 27/26 20060101ALI20220921BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20220921BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20220921BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220921BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220921BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220921BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20220921BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20220921BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20220921BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20220921BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220921BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220921BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220921BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220921BHJP
A61F 2/14 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A61L27/40
A61P27/02
A61L27/38 100
A61L27/36 420
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/24
A61L27/26
A61L27/18
A61L27/16
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K35/12
A61L27/52
C12N5/071
C12N5/0775
C12N5/0735
C12N5/10
C12M1/00 A
B33Y10/00
B33Y70/00
A61F2/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505394
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 IN2020050654
(87)【国際公開番号】W WO2021019563
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】201941030372
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522033896
【氏名又は名称】パンドラム・テクノロジーズ・プライベイト・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Pandorum Technologies Private Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ボウミック,トゥヒン
(72)【発明者】
【氏名】チャンドル,アルン
(72)【発明者】
【氏名】セルバム,シバラム
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル,パリニタ
(72)【発明者】
【氏名】ベン トーマス,ミドゥン
(72)【発明者】
【氏名】ベラー,プラヤグ
(72)【発明者】
【氏名】メノン,ディープト
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C081
4C084
4C087
4C097
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB11
4B065AA93X
4B065BD38
4B065BD39
4B065BD42
4B065CA44
4C081AB21
4C081BA12
4C081BB02
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4C081CA102
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4C081CD152
4C081CD33
4C081CD34
4C081CE11
4C081DA12
4C081DC03
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4C081EA14
4C084AA17
4C084MA58
4C084NA05
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZC751
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087CA03
4C087MA02
4C087MA58
4C087NA05
4C087ZA33
4C087ZC75
4C097AA24
4C097DD05
4C097DD14
4C097DD15
4C097EE16
4C097EE19
4C097MM04
(57)【要約】
本開示は、3Dプリンタを使用してプリントするのに適した異種不含バイオインク配合物を開示する。バイオインク配合物は、1690~5300cPの範囲の最適な粘度を示す。本開示は、バイオインク配合物から得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールを開示する。開示されるバイオプリントされた角膜レンチキュールは、10~500ミクロンの範囲の最適な厚さであり、80~99%の範囲の透過率を示す。本開示はまた、バイオインク配合物を調製するため、またバイオプリントされた角膜レンチキュールを調製するためのプロセスを開示する。さらに、本開示は、角膜欠損を治療するためのインプラントとしてバイオプリントされた角膜レンチキュールを使用して角膜欠損を治療する方法を開示する。バイオプリントされた角膜レンチキュールは、インビトロ薬物テストおよび疾患モデリングのモデルとしてさらに使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオインク配合物であって、
a.30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、
b.10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、
c.50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、前記バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあるゼラチンと、を含むバイオインク配合物。
【請求項2】
バイオインク配合物であって、
a.30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、
b.200~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、
c.50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、前記バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあるゼラチンと、を含むバイオインク配合物。
【請求項3】
バイオインク配合物であって、
a.修飾ヒアルロン酸、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルアルコール、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾アルギネート、絹、および修飾絹からなる群から選択される第1のポリマーと、
b.コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第2のポリマーと、
c.ゼラチン、修飾セルロース、ジェランガム、キサンタムガム、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびアルギネートからなる群から選択される増粘剤と、を含み、前記バイオインク配合物が、1690~5300cPの範囲の粘度を有する、バイオインク配合物。
【請求項4】
前記修飾ヒアルロン酸が、前記バイオインク配合物に対して2~100mg/mlの濃度範囲にあり、前記修飾コラーゲンペプチドが、前記バイオインク配合物に対して10~250mg/mlの濃度範囲にある、請求項1または3に記載のバイオインク配合物。
【請求項5】
前記修飾ヒアルロン酸が、前記バイオインク配合物に対して31~50mg/mlの濃度範囲にあり、前記修飾コラーゲンペプチドが、前記バイオインク配合物に対して80~200mg/mlの濃度範囲にある、請求項4に記載のバイオインク配合物。
【請求項6】
前記修飾ヒアルロン酸が、前記バイオインク配合物に対して2~100mg/mlの濃度範囲にあり、前記修飾コラーゲンが、前記バイオインク配合物に対して0.1~100mg/mlの濃度範囲にある、請求項2または3に記載のバイオインク配合物。
【請求項7】
前記修飾ヒアルロン酸が、メタクリル化ヒアルロン酸およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオインク配合物。
【請求項8】
前記修飾コラーゲンペプチドが、チオール化コラーゲンペプチドおよびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択される、請求項1または3に記載のバイオインク配合物。
【請求項9】
前記修飾コラーゲンが、チオール化コラーゲンおよびメタクリル化コラーゲンからなる群から選択される、請求項2または3に記載のバイオインク配合物。
【請求項10】
光活性剤をさらに含み、前記光活性剤が、前記バイオインク配合物に対して0.005~1mMの範囲の濃度を有するエオシンであるか、または前記光活性剤が、前記バイオインク配合物に対して0.1~50mMの範囲の濃度を有するリボフラビンである、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオインク配合物。
【請求項11】
ヒト角膜間質性幹細胞、ヒト角膜辺縁幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、胎盤間葉系幹細胞、および誘導多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオインク配合物。
【請求項12】
前記幹細胞が、前記バイオインク配合物1ml当たり10万~1億個の細胞の範囲にある、請求項11に記載のバイオインク配合物。
【請求項13】
ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームをさらに含む、請求項1に記載のバイオインク配合物。
【請求項14】
前記プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソームが、角膜間質性幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞に由来するエクソソームである、請求項13に記載のバイオインク配合物。
【請求項15】
前記エクソソームが、前記バイオインク配合物1ml当たり5~250億個のエクソソームの範囲の濃度を有する、請求項13に記載のバイオインク配合物。
【請求項16】
前記バイオインク配合物が、(i)ヒト角膜間質性幹細胞、ヒト角膜辺縁幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、胎盤間葉系幹細胞、および誘導多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、(ii)ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオインク配合物。
【請求項17】
前記バイオインク配合物が、1690~5300cPの範囲の粘度を有する、請求項1または2に記載のバイオインク配合物。
【請求項18】
請求項1に記載のバイオインク配合物を調製するためのプロセスであって、
a.30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンとを接触させて、第1の混合物を得ることと、
b.前記第1の混合物を光活性剤と接触させて、前記バイオインク配合物を得ることと、を含む、プロセス。
【請求項19】
請求項2に記載のバイオインク配合物を調製するためのプロセスであって、
a.30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、200~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンとを接触させて、第1の混合物を得ることと、
b.前記第1の混合物を光活性剤と接触させて、前記バイオインク配合物を得ることと、を含む、プロセス。
【請求項20】
前記修飾ヒアルロン酸と、前記修飾コラーゲンペプチドと、ゼラチンとの接触が、33~38℃の範囲の温度で、30~300分の範囲の時間、暗条件下で行われ、前記第1の混合物を得る、請求項18に記載のプロセス。
【請求項21】
前記修飾ヒアルロン酸と、前記修飾コラーゲンと、ゼラチンとの接触が、33~38℃の範囲の温度で、30~300分の範囲の時間、暗条件下で行われ、前記第1の混合物を得る、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
請求項1~17のいずれか一項に記載のバイオインク配合物を含む、バイオプリントされた角膜レンチキュール。
【請求項23】
バイオプリントされた角膜レンチキュールであって、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつ前記バイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.2~10%の範囲の重量パーセントを有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつ前記バイオプリントされた角膜レンチキュールに対して1~25%の範囲の重量パーセントを有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有し、かつ前記バイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.01~15%の範囲の重量パーセントを有するゼラチンと、を含む、バイオプリントされた角膜レンチキュール。
【請求項24】
バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るためのプロセスであって、
a.請求項1~17のいずれか一項に記載のバイオインク配合物を得ることと、
b.プリントされた角膜構造を得るために、足場上に前記バイオインク配合物をプリントすることと、
c.前記プリントされた角膜構造を、前記バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲の波長を有し、かつ50~150mW/cm
2の範囲の強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む、プロセス。
【請求項25】
前記プリントが、3Dプリンタを使用して行われる、請求項24に記載の請求項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記足場上に前記バイオインク配合物をプリントすることが、22~30℃の範囲の温度、5~80kPaの範囲の押出圧力、および1~20mm/秒の範囲の速度で行われる、請求項24に記載の請求項に記載のプロセス。
【請求項27】
請求項24~26のいずれか一項に記載のプロセスによって得られたバイオプリントされた角膜レンチキュール。
【請求項28】
対象の角膜欠損を治療するための方法であって、
(a)請求項22、23、または27のいずれか一項に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールを得ることと、
(b)前記対象の前記角膜欠損を治療するために、前記角膜欠損の部位に前記バイオプリントされた角膜レンチキュールを移植することと、を含む、方法。
【請求項29】
前記対象が、(a)角膜間質性幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(b)臨床的に承認された点眼配合物と、を含む薬学的に許容され得る量の配合物を投与され、前記投与が、前記バイオプリントされた角膜レンチキュールを移植する前または後に行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記バイオプリントされた角膜レンチキュールが、10~500ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項22、23、または27のいずれか一項に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュール。
【請求項31】
前記バイオプリントされた角膜レンチキュールが、80~99%の範囲で、350~750nmの可視光に対する透過率を有する、請求項22、23、または27のいずれか一項に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュール。
【請求項32】
前記バイオプリントされた角膜レンチキュールが、インビトロ条件下で、30日以内に2~40%の範囲の劣化率を有する、請求項22、23、または27のいずれか一項に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュール。
【請求項33】
前記バイオプリントされた角膜レンチキュールが、100~650kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、請求項22、23、または27のいずれか一項に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュール。
【請求項34】
前記バイオプリントされた角膜レンチキュールが、2~50kPaの範囲の引張強度を有する、請求項22、23、または27のいずれか一項に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュール。
【請求項35】
対象の角膜欠損の治療で使用するための、請求項22、23、または27のいずれか一項に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュール。
【請求項36】
バイオプリントされた角膜レンチキュールの調製で使用するための、請求項1~17のいずれか一項に記載のバイオインク配合物。
【請求項37】
薬物毒性をテストするためのインビトロ研究、および疾患モデリングで使用するための、請求項22、23、または27のいずれか一項に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュール。
【請求項38】
60~65%の重量パーセントを有するゼラチンが、インビトロ条件下で20~25時間の期間にわたって前記バイオプリントされた角膜レンチキュールから浸出する、請求項24に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、バイオエンジニアリングされた配合物の分野に広く関連し、バイオインク配合物およびバイオプリントされたレンチキュール、ならびにバイオ医療分野におけるその用途を開示する。
【背景技術】
【0002】
生物の器官の眼は、視覚系を表し、様々な光感覚機能を実行する。角膜は、透明な膜のような組織として現れる眼の最外層である。角膜の主な機能は、視力の集中を助けることであり、視界において重要な役割を果たす。単純化された組織構造を持っているように見えるが、この組織は複数の層で構成されている。
【0003】
角膜の層は、上皮、ボーマン膜、間質、デスメ膜、および内皮の順である。これらの組織層のそれぞれは、異なるタイプの細胞を含む。この組織の維持は、房水からの涙液からの栄養素の定期的な供給に依存している。
【0004】
角膜は、外傷、感染症、およびとりわけ、角膜剥離、角膜ジストロフィー、角膜潰瘍、角膜血管新生、フックスジストロフィー、角膜炎、円錐角膜などのいくつかの疾患の影響を受ける可能性がある。これらの症状は、一時的または完全な失明につながる可能性があり、世界の失明の主な原因の1つである。
【0005】
角膜疾患の治療のために一般的に使用される手順のうちのいくつかには、レーザー手術、角膜移植手術、前部層状角膜移植術、内皮層角膜移植手術、および人工角膜の使用が含まれる。これらの治療には、角膜の一部または全体の置き換えが含まれる。これらの治療後の角膜の治癒は、しばしば損なわれるため、より良い効果的な代替法を見つけるための研究が進行中である。角膜の90%超は、間質であり、角膜実質細胞、神経堤起源の静止間葉系細胞によって維持される高度に組織化された透明な結合組織である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
角膜失明は、感染性角膜炎、炎症性障害、遺伝性角膜上皮間質性ジストロフィー、変性症状、および外傷誘発性損傷などの多くの原因因子を伴う失明の4番目の主要な原因である。最も一般的な治療法である角膜移植は、高コスト、移植片拒絶、および臨床グレードの死体ドナー角膜の需要と供給との不均衡という形で課題を提起する。また、ドナー角膜のバッチ間のばらつきの問題がある。したがって、角膜治療の分野におけるニーズに対処するために差し迫った措置が必要であり、本開示は、角膜失明および角膜欠損に関連する問題に対処する。Ulag et al.2020;Euro Pol J.2020;133;109744.10.1016/j.eurpolymj.2020.109744は、人工の3Dプリントされた角膜を開示しているが、公開された研究では、透過率などの望ましいパラメータを満たす人工角膜は提供されていない。したがって、現場で蔓延しているこの問題に対処するためのより良い解決策を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様では、バイオインク配合物であって、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含むバイオインク配合物が提供される。
【0008】
本開示の別の態様では、バイオインク配合物であって、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)200~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、(c)50~325の範囲でのブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含むバイオインク配合物が提供される。
【0009】
本開示の別の態様では、(a)修飾ヒアルロン酸、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルアルコール、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾アルギネート、絹、および修飾絹からなる群から選択される第1のポリマーと、(b)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第2のポリマーと、(c)ゼラチン、修飾セルロース、ジェランガム、キサンタムガム、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびアルギネートからなる群から選択される増粘剤と、を含み、バイオインク配合物が、1690~5300cPの範囲の粘度を有する、バイオインク配合物が提供される。
【0010】
本開示の別の態様では、本明細書に記載のバイオインク配合物を調製するためのプロセスが提供され、上記プロセスは、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンとを接触させて、第1の混合物を得ることと、(b)第1の混合物を光活性剤と接触させて、バイオインク配合物を得ることと、を含む。
【0011】
本開示の別の態様では、本明細書に記載のバイオインク配合物を調製するためのプロセスが提供され、上記プロセスは、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、200~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンとを接触させて、第1の混合物を得ることと、(b)第1の混合物を光活性剤と接触させて、バイオインク配合物を得ることとを含む。
【0012】
本開示の別の態様では、本明細書に記載のバイオインク配合物を含むバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0013】
本開示の別の態様では、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.2~10%の範囲の重量パーセントを有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して1~25%の範囲の重量パーセントを有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.01~15%の範囲の重量パーセントを有するゼラチンと、を含む、バイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0014】
本開示の別の態様では、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.2~10%の範囲の重量パーセントを有する修飾ヒアルロン酸と、(b)200~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して5~50%の範囲の重量パーセントを有する修飾コラーゲンと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.01~15%の範囲の重量パーセントを有するゼラチンと、を含む、バイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0015】
本開示の別の態様では、(a)修飾ヒアルロン酸、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルアルコール、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾アルギネート、絹、および修飾絹からなる群から選択される第1のポリマーと、(b)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第2のポリマーと、(c)ゼラチン、修飾セルロース、ジェランガム、キサンタムガム、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびアルギネートからなる群から選択される増粘剤と、を含む、バイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0016】
本開示の別の態様では、(a)修飾ヒアルロン酸、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルアルコール、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾アルギネート、絹、および修飾絹からなる群から選択される第1のポリマーと、(b)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第2のポリマーと、(c)ゼラチン、修飾セルロース、ジェランガム、キサンタムガム、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびアルギネートからなる群から選択される増粘剤と、(d)ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含む、バイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0017】
本開示の別の態様では、(a)修飾ヒアルロン酸、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルアルコール、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾アルギネート、絹、および修飾絹からなる群から選択される第1のポリマーと、(b)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第2のポリマーと、(c)ゼラチン、修飾セルロース、ジェランガム、キサンタムガム、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびアルギネートからなる群から選択される増粘剤と、(d)ヒト角膜間質性幹細胞、ヒト角膜辺縁幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、胎盤間葉系幹細胞、および誘導多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、を含む、バイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0018】
本開示の別の態様では、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るためのプロセスが提供され、上記プロセスは、(a)本明細書に記載のバイオインク配合物を得ることと、(b)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(c)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲の波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲の強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む。
【0019】
本開示の別の態様では、本明細書に記載のプロセスによって得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0020】
本開示の別の態様では、対象の角膜欠損を治療するための方法が提供され、上記方法は、(a)本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールを得ることと、(b)対象の角膜欠損を治療するために、角膜欠損の部位にバイオプリントされた角膜レンチキュールを移植することとを含む。
【0021】
本開示の別の態様では、対象の角膜欠損の治療で使用するための、本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0022】
本開示の別の態様では、インビトロでの薬物毒性研究および疾患モデリングで使用するための、本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0023】
本開示の別の態様では、バイオプリントされた角膜レンチキュールの取得で使用するための、本明細書に記載のバイオインク配合物が提供される。
【0024】
本主題のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照することにより、よりよく理解されるであろう。この要約は、簡略化された形式で概念の選択を紹介するために提供されている。この要約は、主張された主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、主張された主題の範囲を制限するために使用されることも意図されていない。
【0025】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の態様をさらに説明するために含まれている。本開示は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて図面を参照することによってよりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】バイオプリントされた角膜レンチキュールを調製するための本開示に開示される方法によって調製されたバイオインク配合物の概略図を示す。(A)一般的なプロトコル、(B)光架橋剤(エオシン)溶液を2段階で添加する修正プロトコル、および(C)本開示の実施形態による増粘剤ベースのバイオインク調製。
【
図2】本開示の一実施形態による、HA-MAの異なる分子量、濃度および置換度(DoS)を有する溶液の粘度評価を示す。
【
図3】本開示の一実施形態による、A)50mg/ml RCP-SH(DoS50%)を含む250kDa HA-MA(30%DoS)の異なる濃度、および光開始剤(エオシン)の添加の2つのモードを使用したバイオインクの粘度評価を示す。
【
図4】本開示の一実施形態による、ベースポリマーとしてHA-MA(250kDa、30%DoSおよび50kDa、50%DoS)およびRCP-SH(80mg/ml、50%DoS)と組み合わせて、増粘剤としてメチルセルロースおよびゼラチンを使用したバイオインクの粘度評価を示す。
【
図5】本開示の一実施形態による、本開示に記載のバイオインク、およびバイオエンジニアリングされた角膜実質を発達させるための細胞を使用するバイオプリントプロセスの概略図を示す。
【
図6】A)増粘剤としてメチルセルロースおよびゼラチンを使用したバイオインクのプリント適性評価を示す。B)バイオプリントのフロー要件の表現。図に示されるように、プリントされたレンチキュールの寸法は、本開示の一実施形態によれば、厚さ400ミクロンおよび直径14mmである。
【
図7】50mg/ml RCP-SHを含む250kDa HA-MA(30%DoS)の異なる濃度を有する溶液の圧縮弾性率、および光開始剤(エオシン)の添加の2つのモードを示す。さらに、本開示の一実施形態による、50kDa HA-MA/RCP-SH(35/150mg/mL、両方ともDoS50%)ヒドロゲルの圧縮弾性率に対する増粘剤(60mg/mlゼラチン)の添加の効果が実証されている。
【
図8】PBS中のヒドロゲルHA-MA/RCP-SH(35/150mg/mL、両方ともDoS50%)による可視光透過率を示す。本開示の一実施形態によれば、データは、3つの複製サンプルの平均±SDとして表されている。
【
図9】バイオプリントされたレンチキュールHA-MA/RCP-SH(35/150mg/mL、両方ともDoS50%)の時間に対する膨潤プロファイルを示す。本開示の一実施形態によれば、データは、3つの複製サンプルの平均±SDとして表されている。
【
図10】時間に対するバイオプリントされたレンチキュールHA-MA/RCP-SH(35/150mg/mL、両方ともDoS50%)からのゼラチン放出プロファイルを示す。本開示の一実施形態による、(n=3、±SD)。
【
図11】PBSでのレンチキュールの生分解を示す。データは、本開示の一実施形態による、n=3の反復での平均±SDを表す。
【
図12】CLSCカプセル化バイオインクを使用したバイオプリントされたヒドロゲル配合物(50kDa HA-MA 35mg/ml+RCP-SH 150mg/ml、両方ともDoS50%)の細胞生存率研究を示す。カバースリップ上の細胞を表面で培養した。本開示の一実施形態による、スケールバー=200μm。
【
図13】BM-MSCでカプセル化バイオインクを使用したバイオプリントされたヒドロゲル配合物(50kDa HA-MA 35mg/ml+RCP-SH 150mg/ml、両方ともDoS50%)の細胞生存率研究を示す。下のパネルは、バイオプリントされたヒドロゲル内の細胞の均一な分布を示す。本開示の一実施形態による、スケールバー=200μm。
【
図14】2D培養表面に対してバイオプリントされたレンチキュール(50kDa HA-MA 35mg/ml+RCP-SH 150mg/ml、両方ともDoS50%)にカプセル化されたCLSCによるCD90(赤)およびαSMA(緑)の発現を示す免疫蛍光研究を示す。本開示の一実施形態による、スケールバー=100μm。
【
図15】本開示の一実施形態による、可視光における50/9mg/ml濃度比での50kDa HA-MA(50%DoS)/Col-MAバイオインクおよびその個々の成分の光透過率研究を示す。
【
図16】50kDa HA-MA(50%DoS)/Col-MAバイオインクに50/9mg/mlの濃度比でカプセル化されたCLSCの細胞生存率研究を示す。本開示の一実施形態による、スケールバー=50μm。
【
図17】代表的なPandorumのバイオインク(50kDa HA-MA/250kDa ColMA、50/9mg/ml)にカプセル化されたCLSCによるバイオマーカー発現CD90(赤)およびαSMA(緑)を示し、培養期間の進行に伴う細胞表現型を反映している。本開示の一実施形態による、スケールバー=50μm。
【
図18】本開示の一実施形態による、インビトロでの3日目および13日目の初代ヒト角膜上皮細胞による2Dカバースリップ、Gel-MA(200mg/ml、DoS>95%)、「33kDa」HA-MA/RCP-SH(75/125および75/150mg/ml、両方ともDoS50%)ヒドロゲル表面の上皮化を示す位相差顕微鏡画像(スケールバー=100μm)を示す。
【
図19】「33kDa」HA-MA/RCP-SH(mg/ml、両方ともDoS50%)ヒドロゲル表面およびGel-MA(200mg/ml、DoS>95%)および2D培養表面で培養されたCLSCの細胞生存率研究を示す。本開示の一実施形態による、スケールバー=500μm。
【
図20】「33kDa」HA-MA/RCP-SH(mg/ml、両方ともDoS50%)ヒドロゲルおよびGel-MA(200mg/ml、DoS>95%)にカプセル化されたCLSCの細胞生存率研究を示す。本開示の一実施形態によって、カバースリップ上の細胞を表面上で培養した。
【
図21】2D培養表面に対して代表的な「33kDa」HA-MA/RCP-SH(両方ともDoS50%)ヒドロゲル配合物にカプセル化されたCLSCによるCD90(赤)およびαSMA(緑)の発現を示す免疫蛍光研究を示す。本開示の一実施形態による、スケールバー=100μm。
【発明を実施するための形態】
【0027】
当業者は、本開示が、具体的に記載されたもの以外の変形および修正の対象となることに気付くであろう。本開示は、そのようなすべての変形および修正を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において個別にまたは集合的に言及または示されるそのようなすべてのステップ、特徴、組成物、および化合物、ならびにそのようなステップまたは特徴のいずれかまたは複数の任意およびすべての組み合わせを含む。
【0028】
定義
便宜上、本開示のさらなる説明の前に、本明細書で使用される特定の用語、および例がここに記述されている。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして読み、当業者によって理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、当業者に認識され、知られている意味を有するが、便宜上および完全を期すために、特定の用語およびそれらの意味を以下に示す。
【0029】
冠詞「a」、「an」および「the」は、冠詞の文法的な目的語の、1または1を超えるもの(すなわち、少なくとも1)を指すために使用される。
【0030】
「含む(comprise)」および「含むこと(comprising)」という用語は、包括的でオープンな意味で使用され、追加の要素が含まれる場合があることを意味する。それは、「のみで構成される」と解釈されることを意図したものではない。
【0031】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」という単語、ならびに「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」などの変形は、記載された要素もしくはステップまたは要素もしくはステップのグループを含むことを意味するが、他の要素もしくはステップまたは要素もしくはステップのグループを除外するものではないことを意味することを理解されたい。
【0032】
「含むこと(including)」という用語は、「含むがこれに限定されない」ことを意味するために使用される。「含む」および「含むがこれに限定されない」は、同じ意味で使用される。
【0033】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と同様または同等の方法および材料が本開示の実施またはテストに使用され得るが、例証的な方法および材料がこれから記載される。本明細書に記載されているすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
比率、濃度、量、およびその他の数値データは、本明細書では範囲形式で提示することができる。このような範囲形式は、単に便宜上および簡潔にするために使用され、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、各数値およびサブ範囲が明示的に記載されているかのように、その範囲内に含まれるすべての個々の数値またはサブ範囲を含むように柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。例えば、約2~100の2~100mg/mlの範囲の濃度は、明示的に列挙されている約2~約100の限界だけでなく、10~90、25~75などのサブ範囲、ならびに35.5および45.5などの指定された範囲内の小数を含む個々の量も含むと解釈する必要がある。
【0035】
「脱細胞化細胞外マトリックス(dECM)」という用語は、特定のタイプの細胞集団の脱細胞化後に得られる生体材料を指す。dECMは、特定のタイプの細胞集団がインビトロ細胞培養法によって得られる細胞培養由来のdECMであり得る。関心のある細胞分泌ECM成分のいくつかの例は、ルミカン、デコリン、ケラトカンである。「細胞由来成分」という用語は、細胞に由来する任意の成分または成分の組み合わせを指す。細胞由来の成分は、一般に、エクソソーム、細胞モジュレーター、分泌因子、および他の成分を含む馴化培地から得られる。「馴化培地」という用語は、肝細胞増殖因子(HGF)、角膜実質細胞増殖因子(KGF)、およびチロシンキナーゼ1(sFLT1)のような可溶型、色素上皮由来増殖因子(PEDF)、トロンボスポンジン、miR-10b、miR-21、miR-23a、miR-182、miR-181a、miR-145、および表皮増殖因子(EGF)を含む様々な分子を含むエクソソーム、線維芽細胞増殖因子(FGF)、sFLT1およびホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ホスホグルコムターゼ、エノラーゼ、CD73、CD63およびMMP9などの様々なタンパク質/増殖因子などの細胞分泌因子が豊富な培地を指す。馴化培地の組成は、治療用途に利用することを意図としている。「細胞モジュレーター」という用語は、ECM、増殖因子、広範囲の小分子および高分子を含むエクソソームカーゴ、自然界の多くのタンパク質または核酸などの様々な分泌因子を指す。これらのいくつかには、細胞応答を調節することができるマイクロRNA、mRNA、長鎖ノンコーディングRNA、脂質メディエーターが含まれる。「エクソソーム」という用語は、自然界のタンパク質または核酸のカーゴ分子を含む細胞分泌小胞を指し、20~200nmの範囲で、抗炎症、抗線維化および再生特性などの臨床的に関心のある分子を指すことが多い。
【0036】
「バイオインク配合物」という用語は、本明細書に開示されるような成分を含む配合物/組成物を意味するために使用される。バイオインク配合物は、3Dプリンタを使用してバイオプリントされた角膜レンチキュールをプリントするためのインクとして使用される配合物を意味する。
【0037】
「バイオプリントされた角膜レンチキュール」または「バイオプリントされたレンチキュール」という用語は、本明細書に開示されるバイオインク配合物を3Dプリンタを使用して足場にプリントすることによって得られる合成材料を指す。レンチキュールの寸法は、それを必要とする対象の要件に応じて変化し得る。レンチキュールは、損傷した角膜全体を置き換えるために使用することができるか、または角膜の修復が必要な領域に応じて作製することができる。
【0038】
本開示で開示されるバイオインク配合物は、配合物中で完全に架橋されていないポリマーの混合物である。いくつかの実施によると、バイオインクは、光の存在下で架橋プロセスを開始する光開始剤を含むが、完全な架橋が起こるためには、本開示に開示されるように、光が必要とされる間に高強度への曝露が必要である。完全に架橋されたバイオインクはまた、「ヒドロゲル」と呼ばれ得る。当業者は、圧縮弾性率および引張強度のような特定のパラメータのテストは、ヒドロゲルのような架橋製品でのみ可能であることを理解するであろう。また、バイオプリントされた角膜レンチキュールは、バイオインク配合物を足場にプリントした後、完全な架橋を行うために高強度の白色光に曝露することによって得られた製品である。また、特定のパラメータのテストは、対応するバイオインク配合物の有用性を評価するために、バイオプリントされた製品でのみ行うことができる。
【0039】
「角膜欠損」または「角膜障害」という用語は、医学的介入を必要とする角膜の問題を示すために交換可能に使用されてきた。介入は、本開示に記載のように損傷した角膜をバイオプリントされたレンチキュールで置き換える程度まで行うことができる。
【0040】
本明細書で使用される「コラーゲン」および「コラーゲン配列由来ペプチド」という用語は、上記ポリペプチドおよびタンパク質配列の天然、合成、組換えおよび/または代替バージョンを含むために使用される。
【0041】
「修飾ヒアルロン酸」または「修飾コラーゲンペプチド」または「修飾コラーゲン」または「修飾絹」または「修飾セルロース」または「ポリエチレングリコール」または「修飾ポリビニルアルコール」または「修飾アルギネート」という用語は、それぞれの分子で可能であるあらゆる種類の修飾を意味する。行われた特定の修飾は、提示された開示でカバーされている。例えば、修飾セルロースとは、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、およびヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)などの修飾分子を意味する。
【0042】
「間葉系幹細胞由来の馴化培地」または「MSC-CM」という用語は、MSCの増殖後に得られた培地を指す。このようにして得られた馴化培地は、分泌された細胞モジュレーターおよび組織再生に重要な複数の因子を含む。このようにして得られた馴化培地はまた、セクレトーム、および治療目的に適用することができる前に馴化培地から精製する必要があるエクソソームを含む。本明細書に記載の拡張MSCを得るためのプロセスはまた、MSC-CMの形成につながる。したがって、単一のプロセスは、拡張MSCの集団ならびにMSC-CMの調達につながると言うことができる。「エクソソーム」という用語は、それらを分泌する生物細胞の構成要素(タンパク質、DNA、およびRNAの観点から)を含む細胞外小胞のタイプを指す。本明細書に記載の馴化培地から得られたエクソソームは、治療目的で使用される。
【0043】
「角膜間質性幹細胞由来の馴化培地」または「CSSC-CM」という用語は、角膜間質性幹細胞(CSSC)が増殖する培地を指す。本明細書に記載のCSSC-CMは、当技術分野で知られている方法でCSSCを培養することによって、または本明細書に開示される方法に従ってCSSCを培養することによって得られる。角膜辺縁幹細胞(CLSC)は、以前のPCT出願であるPCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623で説明されているように辺縁リングから分離されている。これらの細胞は、角膜間質性幹細胞(CSSC)と辺縁上皮幹細胞(LESC)との2つの亜集団に分けることができる。PCT出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623は、CSSC分離の方法を開示し、そこで使用されているプロトコルによるLESCを介したCSSC集団の強化を示している。しかしながら、CSSC濃縮画分に残されたLESCの集団が少ない場合、これらの出願ではすべての細胞型をカバーするために、それを「CLSC」と呼んでいる。したがって、そのようなCSSC濃縮集団に由来する馴化培地は、CSSC由来の馴化培地(CSSC-CM)として知られている。簡単にするために、CSSC-CMという用語は、LESCの少数の集団も存在する濃縮CSSCを培養することによって得られた馴化培地を表すためにも使用されることが理解される。
【0044】
本開示に記載される「異種不含」という用語は、非ヒト動物に由来するいかなる生成物も含まない、本明細書に記載のプロセスを指す。異種不含である方法は、臨床応用の妥当性のために重要な利点である。「スケーラブル」という用語は、生産出力多様性を増やす機能を指す。「対象」という用語は、本開示で言及されるような症状に苦しんでいるヒト対象または哺乳動物対象を指す。「治療有効量」という用語は、対象の症状を治療するために必要とされる組成物の量を指す。
【0045】
「足場」という用語は、バイオインクがプリントされる支持体として使用される型または不活性物質を指す。本開示の実施のとおり、プリントは3Dプリンタを使用して行われる。
【0046】
「培養培地」という用語は、MSCが培養される培地を指す。培養培地は、MSC基本培地を含み、MSC基本培地は、培養されているMSCに従って使用される。本開示で言及されるようなMSC基本培地は、商業的に調達された。本開示の目的のために、RoosterBio異種不含培地をBMMSCに使用した。
【0047】
部分的または完全な角膜インプラントは、角膜疾患の治療に最も成功した治療法のうちの1つである。本開示は、効果的かつ効率的なバイオエンジニアリングされたバイオプリントされた角膜レンチキュールを提供することにより、様々な手段による角膜疾患の治療後の角膜の標準以下の治癒に関連する問題に対する解決策を提供する。本開示は、バイオインク配合物であって、(a)コラーゲン(メタクリル化およびチオール化)、コラーゲンペプチド誘導体、ヒアルロン酸およびその修飾物(メタクリル化およびチオール化)、セルロース誘導体(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ならびにそれらのメタクリル化およびチオール化誘導体)、ポリエチレングリコール誘導体(線状およびマルチアーム、メタクリル化およびチオール化)、ポリビニルアルコール(メタクリル化およびチオール化)、ゼラチン(メタクリル化およびチオール化)、キトサン、ならびにアルギネートからなる群から選択されるポリマーと、(b)ゼラチン、ジェランガム、キサンタムガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、およびヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)などのセルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、ならびにアルギネートからなる群から選択される増粘剤とを含むバイオインク配合物を開示する。バイオインク配合物は、3Dプリンタ機を使用して簡単にプリントできるように最適な粘度を有するように配合されており、バイオプリントされた角膜レンチキュールが得られる。バイオプリントされた角膜レンチキュールは、対象の角膜欠損を治療するためにさらに使用することができる。バイオインク配合物、およびバイオプリントされた角膜レンチキュールは、異種不含であり、角膜インプラントの臨床要件を満たすためにスケーラブルである。バイオプリントされた角膜レンチキュールは、5~500ミクロンの範囲の光学的厚さで得られた。
【0048】
PCT出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623は、本開示の出願人から出願され、幹細胞および拡張された幹細胞ならびに幹細胞由来馴化培地を培養する二次元および三次元の方法を開示する。上記のPCT出願はまた、拡張されたプライミングされた間葉系幹細胞および拡張されたプライミングされた間葉系幹細胞に由来する馴化培地を得るための方法を開示している。PCT出願第PCT/IN2020/050622号および同第PCT/IN2020/050623号は完全に本明細書に組み込まれる。
【0049】
現在の治療法によって提起された課題は、生体材料を使用し、3Dバイオプリント技術を採用することで成体幹細胞をその中に組み込むことで対処することができる。これを支持して、本開示はまた、バイオインク配合物であって、ヒト角膜間質性幹細胞、ヒト角膜辺縁幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、および誘導多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞を含むバイオインク配合物を開示する。さらに、本開示はまた、ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームを含むバイオインク配合物を開示する。バイオプリントされたレンチキュールにエクソソームが存在すると、エクソソームの再生能力により、角膜障害の治療に役立つ。本開示はまた、幹細胞ならびにエクソソームを含むバイオインク配合物を開示し、これは、バイオプリントされた角膜レンチキュールの治療可能性をさらに高めることができる。
【0050】
幹細胞またはエクソソームを含むかまたは含まないバイオインク配合物は、光の存在下で光開始剤が架橋し、透明であるバイオプリントされた角膜レンチキュールを生成する。バイオプリントされた角膜レンチキュールは、天然の角膜組織の特性と一致する物理的、機械的、および生物学的特性を備えているため、生体模倣である。また、バイオインク配合物は生体適合性があり、角膜模倣特性を有し、増殖だけでなくヒト角膜上皮細胞の遊走を促進する。
【0051】
眼に存在する天然成分であるヒアルロン酸を使用した透明で縫合可能な3Dバイオプリントされた角膜レンチキュールの開発は、疾患/損傷角膜を部分的または全厚さの移植片で置き換えるための実行可能な治療オプションとして役立ち得る。
【0052】
以下の段落は、請求されたバイオエンジニアリングされた角膜実質組成物および合成角膜実質の実施形態を記述する。さらに、上記バイオエンジニアリングされた角膜実質組成物および合成角膜実質を調製するためのプロセスも示されている。請求されたバイオエンジニアリングされた角膜実質組成物および合成角膜実質を製造するために使用されるバイオインク組成物も提供される。しかしながら、当業者は、必要に応じて条件を採用し、代表的な例に基づいて組成物を調製することができ、そのようなプロセスは、本発明の範囲に含まれるであろう。
【0053】
実施形態はさらに、少なくとも1つの細胞外マトリックス(ECM)模倣ポリマー、および少なくとも1つの架橋剤ポリマーを含む、本明細書に開示されるようなバイオエンジニアリングされた角膜実質組成物を記述する。
【0054】
本開示は、例示のみを目的とする、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。機能的に同等の製品、組成物、および方法は、本明細書に記載されているように、明らかに本開示の範囲内にある。
【0055】
主題は特定の実施形態を参照して説明されてきたが、この説明は限定的な意味で解釈されることを意味するものではない。開示された実施形態の様々な修正、ならびに主題の代替の実施形態は、主題の説明を参照することにより当業者に明らかになるであろう。したがって、そのような修正は、定義された本主題の精神または範囲から逸脱することなく行うことができると考えられる。
【0056】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含む、バイオインク配合物が提供される。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸は、30~300kDa、または40~280kDa、または40~250kDa、または40~200kDa、または40~150kDa、または40~125kDa、または40~100kDa、または40~75kDa、または40~60kDaの範囲の分子量を有し、修飾ヒアルロン酸の置換度が、20~70%、または30~65%、または35~60%、または40~60%の範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドが、20~70kDa、または25~65kDa、または30~60kDa、または35~55kDa、または40~55kDa、または45~55kDaの範囲の分子量を有し、修飾コラーゲンペプチドの置換度が、20~70%、または30~65%、または35~60%、または40~60%の範囲にあり、ゼラチンは、75~300、または100~275、または125~250、または175~225の範囲のブルーム値を有し、ゼラチンは、50~80mg/ml、または55~75mg/ml、または55~70mg/ml、または55~65mg/ml、または0.5~120mg/ml、または5~120mg/ml、または15~100mg/ml、または25~90mg/ml、または40~90mg/mlの範囲の濃度を有する。
【0057】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)50kDaの分子量および50%の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)50kDaの分子量および50%の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含む、バイオインク配合物が提供される。
【0058】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)50kDaの分子量および30~70%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)50kDaの分子量および30~70%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含む、バイオインク配合物が提供される。
【0059】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)50kDaの分子量を有し、バイオインク配合物に対して2~100mg/mlの濃度範囲を有する50%の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)50kDaの分子量を有し、バイオインク配合物に対して10~250mg/mlの濃度範囲を有する50%の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの濃度範囲にあるゼラチンと、を含む、バイオインク配合物が提供される。
【0060】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)50kDaの分子量を有し、バイオインク配合物に対して31~50mg/mlの濃度範囲を有する50%の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)50kDaの分子量を有し、バイオインク配合物に対して80~200mg/mlの濃度範囲を有する50%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの濃度範囲にあるゼラチンと、を含む、バイオインク配合物が提供される。
【0061】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)50kDaの分子量および10~75%、好ましくは50%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)250kDaの分子量および10~75%、好ましくは29%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含むバイオインク配合物が提供される。
【0062】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)33kDaの分子量および30~70%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)50kDaの分子量および30~70%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、ゼラチンが、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含むバイオインク配合物が提供される。
【0063】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)33kDaの分子量および50%の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)50kDaの分子量および50%の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、ゼラチンが、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含むバイオインク配合物が提供される。
【0064】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)33kDaの分子量を有し、バイオインク配合物に対して2~100mg/mlの濃度範囲を有する50%の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)50kDaの分子量を有し、バイオインク配合物に対して10~250mg/mlの濃度範囲を有する50%の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの濃度範囲にあるゼラチンと、を含む、バイオインク配合物が提供される。
【0065】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)33kDaの分子量を有し、バイオインク配合物に対して31~50mg/mlの濃度範囲を有する50%の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)50kDaの分子量を有し、バイオインク配合物に対して80~200mg/mlの濃度範囲を有する50%の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの濃度範囲にあるゼラチンと、を含む、バイオインク配合物が提供される。
【0066】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)200~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、(c)50~325の範囲でのブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含む、バイオインク配合物が提供される。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸は、30~300kDa、または40~280kDa、または40~250kDa、または40~200kDa、または40~150kDa、または40~125kDa、または40~100kDa、または40~75kDa、または40~60kDaの範囲の分子量を有し、修飾ヒアルロン酸の置換度が、20~70%、または30~65%、または35~60%、または40~60%の範囲にあり、修飾コラーゲンが、210~280kDa、または225~260kDa、または235~250kDaの範囲の分子量を有し、修飾コラーゲンの置換度が、20~70%、または30~65%、または35~60%、または40~60%の範囲にあり、ゼラチンは、75~300、または100~275、または125~250、または175~225の範囲のブルーム値を有し、ゼラチンは、50~80mg/ml、または55~75mg/ml、または55~70mg/ml、または55~65mg/mlの範囲の濃度を有する。
【0067】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)修飾ヒアルロン酸、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルアルコール、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾アルギネート、絹、および修飾絹からなる群から選択される第1のポリマーと、(b)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第2のポリマーと、(c)ゼラチン、修飾セルロース、ジェランガム、キサンタムガム、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびアルギネートからなる群から選択される増粘剤と、を含み、バイオインク配合物が、1690~5300cPの範囲の粘度を有する、バイオインク配合物が提供される。本開示の別の実施形態では、バイオインク配合物の粘度は、1700~5000cP、または1800~4900cP、または1900~4800cP、または2000~4500cPの範囲にある。
【0068】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含み、修飾ヒアルロン酸がバイオインク配合物に対して2~100mg/mLの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドがバイオインク配合物に対して10~250mg/mlの濃度範囲にある、バイオインク配合物が提供される。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸は、バイオインク配合物に対して5~90mg/mL、または10~80mg/mL、または15~80mg/mL、または20~70mg/mL、または25~70mg/mL、または30~60mg/mL、または30~55mg/mL、30~50mg/mL、または30~47mg/mLの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドは、20~230mg/ml、または50~200mg/ml、または75~200mg/ml、または90~200mg/ml、または100~200mg/ml、または125~175mg/mlの濃度範囲にある。
【0069】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)200~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含み、修飾ヒアルロン酸がバイオインク配合物に対して2~100mg/mLの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンがバイオインク配合物に対して0.1~100mg/mlの濃度範囲にある、バイオインク配合物が提供される。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸は、バイオインク配合物に対して5~90mg/mL、または10~80mg/mL、または15~80mg/mL、または20~70mg/mL、または25~70mg/mL、または30~60mg/mL、または30~55mg/mL、30~50mg/mL、または30~47mg/mLの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンは、0.5~90mg/ml、または1~80mg/ml、または5~70mg/ml、または7~60mg/ml、または8~50mg/ml、または8~40mg/ml、または8~30mg/ml、または8~20mg/mlの濃度範囲にある。
【0070】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含み、修飾ヒアルロン酸が、メタクリル化ヒアルロン酸およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択され、修飾コラーゲンペプチドが、チオール化コラーゲンペプチドおよびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択される、バイオインク配合物が提供される。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸はメタクリル化ヒアルロン酸であり、修飾コラーゲンペプチドはチオール化コラーゲンペプチドである。
【0071】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)200~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含み、修飾ヒアルロン酸が、メタクリル化ヒアルロン酸およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択され、修飾コラーゲンが、チオール化コラーゲンおよびメタクリル化コラーゲンからなる群から選択される、バイオインク配合物が提供される。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸はメタクリル化ヒアルロン酸であり、修飾コラーゲンはチオール化コラーゲンである。
【0072】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)修飾ヒアルロン酸、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルアルコール、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾アルギネート、絹、および修飾絹からなる群から選択される第1のポリマーと、(b)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第2のポリマーと、(c)ゼラチン、修飾セルロース、ジェランガム、キサンタムガム、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびアルギネートからなる群から選択される増粘剤と、を含み、バイオインク配合物が、1690~5300cPの範囲の粘度を有し、修飾ヒアルロン酸が、メタクリル化ヒアルロン酸およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択され、修飾コラーゲンペプチドが、チオール化コラーゲンペプチドおよびメタクリレートコラーゲンペプチドからなる群から選択され、修飾コラーゲンが、チオール化コラーゲンおよびメタクリル化コラーゲンからなる群から選択される、バイオインク配合物が提供される。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸はメタクリル化ヒアルロン酸であり、修飾コラーゲンペプチドはチオール化コラーゲンペプチドであり、修飾コラーゲンはチオール化コラーゲンである。本開示のさらに別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸は、バイオインク配合物に対して2~100mg/mLの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドは、バイオインク配合物に対して10~250mg/mlの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンは、バイオインク配合物に対して0.1~100mg/mlの濃度範囲にある。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸は、バイオインク配合物に対して、5~90mg/mL、または10~80mg/mL、または15~80mg/mL、または20~70mg/mL、または、25~70mg/mL、または30~60mg/mL、または30~55mg/mL、30~50mg/mL、または30~47mg/mLの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドは、20~230mg/ml、または50~200mg/ml、または75~200mg/ml、または90~200mg/ml、または100~200mg/ml、または125~175mg/mlの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンは、0.5~90mg/ml、または1~80mg/ml、または5~70mg/ml、または7~60mg/ml、または8~50mg/ml、または8~40mg/ml、または8-30mg/ml、または8~20mg/mlの濃度範囲にある。
【0073】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物であって、(a)40~60kDaの範囲の分子量および40~60%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)40~60kDaの範囲の分子量および40~60%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)175~225の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して50~70mg/mlの濃度範囲にあるゼラチンと、を含み、修飾ヒアルロン酸は、25~45mg/mlの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドは125~175mg/mlの濃度範囲にあり、修飾ヒアルロン酸がメタクリル化ヒアルロン酸であり、修飾コラーゲンペプチドがチオール化コラーゲンペプチドである、バイオインク配合物が提供される。
【0074】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物が提供され、バイオインク配合物は、光活性剤をさらに含み、光活性剤は、バイオインク配合物に対して0.005~1mMの範囲の濃度を有するエオシンであるか、または光活性剤は、バイオインク配合物に対して0.1~50mMの範囲の濃度を有するリボフラビンであるかのいずれかである。
【0075】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物が提供され、バイオインク配合物は、バイオインク配合物に対して0.005~1mMの範囲の濃度を有する光活性剤エオシンをさらに含む。本開示の別の実施形態では、エオシンは、バイオインク配合物に対して0.005~1mM、または0.01~1mM、または0.05~1mM、または0.1~1mM、または0.5~1mM、または0.75~1mMの範囲の濃度を有する。
【0076】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物が提供され、バイオインク配合物は、バイオインク配合物に対して0.1~50mMの範囲の濃度を有する光活性剤リボフラビンをさらに含む。本開示の別の実施形態では、リボフラビンは、バイオインク配合物に対して1~45mM、または5~40mM、または10~35mM、または15~30mM、または17~25mMの範囲の濃度を有する。
【0077】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物が提供され、バイオインク配合物は、ヒト角膜間質性幹細胞、ヒト角膜辺縁幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、胎盤間葉系幹細胞、および誘導多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞をさらに含む。本開示の別の実施形態では、幹細胞は、バイオインク配合物1ml当たり10万~1億個の細胞の範囲にある。本開示のさらに別の実施形態では、幹細胞は、バイオインク配合物1ml当たり100万~1億、または1000万~1億、または2000万~9000万、または3000万~8000万、または4000万~9000万、または5000万~1億個の細胞の範囲にある。
【0078】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物が提供され、バイオインク配合物は、ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームをさらに含み、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソームは、角膜間質性幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞に由来するエクソソームである。本開示の別の実施形態では、エクソソームは、バイオインク配合物1ml当たり5~250億個のエクソソームの範囲の濃度を有する。本開示のさらに別の実施形態では、エクソソームは、1ml当たり10~200億、または30~200億、または50~200億、または100~250億個の範囲の濃度を有する。
【0079】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物が提供され、バイオインク配合物は、(i)ヒト角膜間質性幹細胞、ヒト角膜辺縁幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、胎盤間葉系幹細胞、および誘導多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、(ii)ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、をさらに含み、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソームは、角膜間質性幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞に由来する。本開示の別の実施形態では、幹細胞は、0.1~100の範囲にある。バイオインク配合物1ml当たり100万~1億、または1000万~1億、または2000万~9000万、または3000万~8000万、または4000万~9000万、または5000万~1億個の細胞、エクソソームは、1ml当たり5~250億、10~200億、または30~200億、または50~200億、または100~250億個の範囲の濃度を有する。
【0080】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物が提供され、バイオインク配合物は、1690~5300cPの範囲の粘度を有する。本開示の別の実施形態では、バイオインク配合物は、1750~5200cP、または1800~5100cP、または1900~5000cP、2100~4800cP、または2300~5000cP、または2500~5300cP、または2000~5300cPの範囲の粘度を有する。
【0081】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物を調製するためのプロセスが提供され、プロセスは、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンとを接触させて、第1の混合物を得ることと、(b)第1の混合物を光活性剤と接触させて、バイオインク配合物を得ることと、を含む。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸、修飾コラーゲンペプチド、およびゼラチンとの接触は、33~38℃の範囲の温度で、30~300分の範囲の時間、暗条件下で行われ、第1の混合物を得る。本開示のさらに別の実施形態では、接触は、34~38℃、または35~38℃、または36~38℃の範囲の温度で行われ、その時間は、40~280、または50~250、または75~225、または100~200分である。
【0082】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物を調製するためのプロセスが提供され、プロセスは、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、200~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンとを接触させて、第1の混合物を得ることと、(b)第1の混合物を光活性剤と接触させて、バイオインク配合物を得ることと、を含む。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸、修飾コラーゲン、およびゼラチンとの接触は、33~38℃の範囲の温度で、30~300分の範囲の時間、暗条件下で行われ、第1の混合物を得る。本開示のさらに別の実施形態では、接触は、34~38℃、または35~38℃、または36~38℃の範囲の温度で行われ、その時間は、40~280、または50~250、または75~225、または100~200分である。
【0083】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物を調製するためのプロセスが提供され、プロセスは、(a)修飾ヒアルロン酸、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルアルコール、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾アルギネート、絹、および修飾絹からなる群から選択される第1のポリマーと、コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第2のポリマーと、ゼラチン、修飾セルロース、ジェランガム、キサンタムガム、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびアルギネートからなる群から選択される増粘剤と、を接触させることと、(b)第1の混合物を光活性剤と接触させて、バイオインク配合物を得ることと、を含み、バイオインク配合物が、1690~5300cPの範囲の粘度を有する。本開示の別の実施形態では、第1のポリマー、第2のポリマー、および増粘剤との接触は、33~38℃の範囲の温度で、30~300分の範囲の時間、暗条件下で行われ、第1の混合物を得る。本開示のさらに別の実施形態では、接触は、34~38℃、または35~38℃、または36~38℃の範囲の温度で行われ、その時間は、40~280、または50~250、または75~225、または100~200分である。
【0084】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物を含むバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0085】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物を含むバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供され、上記配合物は、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して3.1~5%の範囲の重量パーセントを有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して8~20%の範囲の重量パーセントを有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.01~15%の濃度範囲にあり、好ましくはバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して5~10%の範囲にあるゼラチンと、を含む。
【0086】
本開示の一実施形態では、バイオインク配合物を含むバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供され、上記配合物は、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して3.1~5%の範囲の重量パーセントを有する修飾ヒアルロン酸と、(b)200~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して8~20%の範囲の重量パーセントを有する修飾コラーゲンと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.01~15%の濃度範囲にあり、好ましくは、バイオプリントされた角膜レンチキュールに対して5~10%の範囲にあるゼラチンと、を含む。
【0087】
本開示の一実施形態では、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るためのプロセスが提供され、上記プロセスは、(a)本明細書に記載のバイオインク配合物を得ることと、(b)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(c)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲の波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲の強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む。本開示の別の実施形態では、光の強度は、75~150、または80~140、または90~140、または95~130mW/cm2の範囲であり、時間は、2~12、または4~10、または5~15分の範囲である。
【0088】
本開示の一実施形態では、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るためのプロセスが提供され、上記プロセスは、(i)(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含む、バイオインク配合物を得ることと、(ii)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(iii)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲にある波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲にある強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む。本開示の別の実施形態では、光の強度は、75~150、または80~140、または90~140、または95~130mW/cm2の範囲であり、時間は、2~12、または4~10、または5~15分の範囲である。
【0089】
本開示の一実施形態では、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るためのプロセスが提供され、上記プロセスは、(i)(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)200~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含むバイオインク配合物を得ることと、(ii)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(iii)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲にある波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲にある強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む。本開示の別の実施形態では、光の強度は、75~150、または80~140、または90~140、または95~130mW/cm2の範囲であり、時間は、2~12、または4~10、または5~15分の範囲である。
【0090】
本開示の一実施形態では、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るためのプロセスが提供され、上記プロセスは、(i)(a)修飾ヒアルロン酸、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルアルコール、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾アルギネート、絹、および修飾絹からなる群から選択される第1のポリマーと、(b)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第2のポリマーと、(c)ゼラチン、修飾セルロース、ジェランガム、キサンタムガム、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびアルギネートからなる群から選択される増粘剤と、を含み、1690~5300cPの範囲の粘度を有するバイオインク配合物を得ることと、(ii)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(iii)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲にある波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲にある強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む。別の実施形態では、光の強度は、75~150、または80~140、または90~140、または95~130mW/cm2の範囲であり、時間は、2~12、または4~10、または5~15分の範囲である。
【0091】
本開示の一実施形態では、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るためのプロセスが提供され、上記プロセスは、(a)本明細書に記載のバイオインク配合物を得ることと、(b)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(c)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲の波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲の強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することとを含み、プリントは3Dプリンタを使用して行われる。
【0092】
本開示の一実施形態では、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るためのプロセスが提供され、本明細書に記載の上記プロセスは、足場上に第1の混合物をプリントすることは、22~30℃の範囲の温度、5~80kPaの範囲の押出圧力、1~20mm/秒の範囲の速度で行われる。本開示の別の実施形態では、足場上に第1の混合物をプリントすることは、22~29℃、または22~28℃、または22~27℃、または22~26℃、または22~25℃、または22.2~27℃の範囲の温度、2~18、または5~16、または7~12mm/秒の範囲の速度で行われる。
【0093】
本開示の一実施形態では、(a)本明細書に記載のバイオインク配合物を得ることと、(b)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(c)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲の波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲の強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む、プロセスによって得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。本開示の別の実施形態では、光の強度は、75~150、または80~140、または90~140、または95~130mW/cm2の範囲であり、時間は、2~12、または4~10、または5~15分の範囲である。
【0094】
本開示の一実施形態では、(i)(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含む、バイオインク配合物を得ることと、(ii)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(iii)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲にある波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲にある強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む、プロセスによって得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。本開示の別の実施形態では、光の強度は、75~150、または80~140、または90~140、または95~130mW/cm2の範囲であり、時間は、2~12、または4~10、または5~15分の範囲である。
【0095】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のプロセスによって得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供され、60~65%の重量パーセントを有するゼラチンが、インビトロ条件下で20~25時間の期間にわたってバイオプリントされた角膜レンチキュールから浸出する。別の実施形態では、60~64%のゼラチンは、20~24時間の範囲の時間にわたって浸出する。さらに別の実施形態では、インビトロ条件は、バイオプリントされた角膜レンチキュールが保存される適切な培地を指す。インビトロ条件もまた、適切な培養培地であり得る。
【0096】
本開示の一実施形態では、(i)(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)200~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、を含む、バイオインク配合物を得ることと、(ii)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(iii)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲にある波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲にある強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む、プロセスによって得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。本開示の別の実施形態では、光の強度は、75~150、または80~140、または90~140、または95~130mW/cm2の範囲であり、時間は、2~12、または4~10、または5~15分の範囲である。
【0097】
本開示の一実施形態では、(i)(a)修飾ヒアルロン酸、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルアルコール、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾アルギネート、絹、および修飾絹からなる群から選択される第1のポリマーと、(b)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第2のポリマーと、(c)ゼラチン、修飾セルロース、ジェランガム、キサンタムガム、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびアルギネートからなる群から選択される増粘剤と、を含み、1690~5300cPの範囲の粘度を有するバイオインク配合物を得ることと、(ii)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(iii)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲にある波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲にある強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む、プロセスによって得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。本開示の別の実施形態では、光の強度は、75~150、または80~140、または90~140、または95~130mW/cm2の範囲であり、時間は、2~12、または4~10、または5~15分の範囲である。
【0098】
本開示の一実施形態では、(i)(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、(d)ヒト角膜間質性幹細胞、ヒト角膜辺縁幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、胎盤間葉系幹細胞、および誘導多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、を含むバイオインク配合物を得ることと、(ii)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(iii)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲にある波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲にある強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む、プロセスによって得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0099】
本開示の一実施形態では、(i)(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、(d)ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含む、バイオインク配合物を得ることと、(ii)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(iii)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲にある波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲にある強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む、プロセスによって得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0100】
本開示の一実施形態では、(i)(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲にあり、好ましくは、バイオインク配合物に対して50~100mg/mlの範囲にあるゼラチンと、(d)ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(e)ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含む、バイオインク配合物を得ることと、(ii)プリントされた角膜構造を得るために、足場上にバイオインク配合物をプリントすることと、(iii)プリントされた角膜構造を、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために、420~570nmの範囲にある波長を有し、かつ50~150mW/cm2の範囲にある強度を有する光に、1~15分の範囲の時間曝露することと、を含む、プロセスによって得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0101】
本開示の一実施形態では、対象の角膜欠損を治療するための方法が提供され、上記方法は、(a)本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールを得ることと、(b)対象の角膜欠損を治療するために、角膜欠損の部位にバイオプリントされた角膜レンチキュールを移植することと、を含む。
【0102】
本開示の一実施形態では、対象の角膜欠損を治療するための方法が提供され、上記方法は、(a)本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールを得ることと、(b)対象の角膜欠損を治療するために、角膜欠損の部位にバイオプリントされた角膜レンチキュールを移植することと、を含み、対象は、(i)角膜間質性幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(ii)臨床的に承認された点眼配合物と、を含む薬学的に許容され得る量の配合物を投与され、投与が、バイオプリントされた角膜レンチキュールを移植する前または後に行われる。
【0103】
本開示の一実施形態では、対象の角膜欠損を治療するための方法が提供され、上記方法は、(a)本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールを得ることと、(b)対象の角膜欠損を治療するために、角膜欠損の部位にバイオプリントされた角膜レンチキュールを移植することと、を含み、対象は、(i)角膜間質性幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(ii)臨床的に承認された点眼配合物と、を含む薬学的に許容され得る量の配合物を投与され、投与が、バイオプリントされた角膜レンチキュールを移植する前または後に行われ、エクソソームは、ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択される、エクソソームは、配合物1ml当たり5~250億個のエクソソームの範囲にある濃度を有し、臨床的に承認された配合物は、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、およびアルギネートからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。
【0104】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供され、バイオプリントされた角膜レンチキュールは、10~500ミクロンの範囲の厚さを有する。本開示の別の実施形態では、厚さは、20~490、または50~500、または50~450、または75~400、または100~500、または100~400、または200~400、または250~500ミクロンの範囲にある。
【0105】
本開示の一実施形態では、ゼラチンがレンチキュールから徐々に浸出する、本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。別の実施形態では、60~65%のゼラチンが22~24時間の期間にわたって浸出する。
【0106】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供され、バイオプリントされた角膜レンチキュールは、80~99%の範囲で、350~750nmの可視光に対する透過率を有する。本開示の別の実施形態では、透過率は、82~99%、または84~99%、または86~99%、または88~99%、または90~99%、または92~99%または94~99%の範囲にある。
【0107】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供され、バイオプリントされた角膜レンチキュールは、適切な条件下で30日以内に2~40%の範囲にある劣化率を有する。
【0108】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供され、バイオプリントされた角膜レンチキュールは、100~650kPaの範囲の圧縮弾性率を有する。本開示の別の実施形態では、圧縮弾性率は、150~650、または200~650、または250~650、または300~650、または350~650、または400~650kPaの範囲にある。
【0109】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供され、バイオプリントされた角膜レンチキュールは、2~50kPaの範囲にある引張強度を有する。
【0110】
本開示の一実施形態では、対象の角膜欠損の治療で使用するための、本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0111】
本開示の一実施形態では、薬物毒性をテストするためのインビトロ研究および疾患モデリングで使用するための、本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0112】
本開示の一実施形態では、バイオプリントされた角膜レンチキュールの調製での使用のための、本明細書に記載のバイオインク配合物が提供される。
【0113】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物が提供され、バイオインク配合物は、脱細胞化された細胞外マトリックスからの少なくとも1つの成分をさらに含む。
【0114】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオインク配合物が提供され、バイオインク配合物は、少なくとも1つの細胞由来成分をさらに含む。
【0115】
本開示の一実施形態では、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.2~10%の範囲の重量パーセントを有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して1~25%の範囲の重量パーセントを有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.01~15%の範囲の重量パーセントを有するゼラチンと、を含む、バイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸は、35~250、または35~200kDa、または40~175kDa、または40~150kDa、または40~125kDa、または40~100kDa、または40~75kDaの範囲の分子量、および20~80%、または25~75%、または30~70%、または35~65%、または40~60%の範囲の置換度、およびバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して、0.5~10%、または1~8%、または2~6%、または2.5~5%の範囲の重量パーセントを有する。本開示のさらに別の実施形態では、20~75kDa、または25~70kDa、または30~65kDa、または35~60kDa、または40~60kDaの範囲の分子量、20~70%、または30~60%、または35~60%、または40~60%の範囲の置換度を有し、バイオプリントされた角膜レンチキュールに対して5~25%、または10~25%、または10~20%の範囲の重量パーセントを有する修飾コラーゲンペプチドである。本開示の代替の実施形態では、ゼラチンは、0.05~15%、または2~15%、または5~15%、または5~10%の範囲の重量パーセントを有する。
【0116】
本開示の一実施形態では、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.2~10%の範囲の重量パーセントを有する修飾ヒアルロン酸と、(b)200~300kDaの範囲の分子量および10~75%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して5~50%の範囲の重量パーセントを有する修飾コラーゲンと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.01~15%の範囲の重量パーセントを有するゼラチンと、を含む、バイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0117】
本開示の一実施形態では、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.2~10%の範囲の重量パーセントを有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して1~25%の範囲の重量パーセントを有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.01~15%の範囲の重量パーセントを有するゼラチンと、(d)ヒト角膜間質性幹細胞、ヒト角膜辺縁幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、胎盤間葉系幹細胞、および誘導多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、を含むバイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0118】
本開示の一実施形態では、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.2~10%の範囲の重量パーセントを有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して1~25%の範囲の重量パーセントを有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.01~15%の範囲の重量パーセントを有するゼラチンと、(d)ヒト角膜間質性幹細胞、ヒト角膜辺縁幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、胎盤間葉系幹細胞、および誘導多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、(e)ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含む、バイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【0119】
本開示の一実施形態では、(a)30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.2~10%の範囲の重量パーセントを有する修飾ヒアルロン酸と、(b)10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して1~25%の範囲の重量パーセントを有する修飾コラーゲンペプチドと、(c)50~325の範囲のブルーム値を有し、かつバイオプリントされた角膜レンチキュールに対して0.01~15%の範囲の重量パーセントを有するゼラチンと、(d)ナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、および角膜間質性幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含む、バイオプリントされた角膜レンチキュールが提供される。
【実施例】
【0120】
ここで、本開示は、本開示の実施を説明することを意図し、本開示の範囲に対する制限を暗示することを限定的にとることを意図しない、実施例で説明される。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を、開示される方法および組成物の実施に使用することができるが、例示的な方法、装置および材料は、本明細書に記載される。本開示は特定の方法に限定されず、そのような方法および条件は変化する可能性があるため、記載されている実験条件を理解されたい。
【0121】
実施例1
本開示で使用される材料
本開示で使用されるポリマーおよび他の材料は、商業的に調達された。表1は、材料の商業的供給源を示す。
【表1】
【0122】
メタクリル化ヒアルロン酸(HA-MA)は、CreativePEG Worksから入手し、チオール化組換えコラーゲンペプチド(RCP-SH)は、富士フイルム株式会社から入手した。成分の非限定的なリストが本明細書で言及されているが、当業者は、本開示の目的のために、任意の商業的供給源からの任意の同様の成分を使用することができる。
【0123】
成分の分子量は、商業的ベンダーから提供された分析証明書に基づいている。ベンダーからの情報によると、33kDaのHA-MAは、約50%の置換度を有し、95%の純度を有する。ベンダーからの情報によると、50kDaのHA-MAは、約47%の置換度を有し、95%の純度を有する。
【0124】
バイオプリントされたレンチキュールの一部として使用することができる細胞、または培養して馴化培地を得るために使用することができる細胞、およびエクソソームについては以下で説明する。
【0125】
初代成体幹細胞の供給源:
ヒト角膜間質性幹細胞(社内)、Rooster Bio Inc.の骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)ヒト角膜上皮細胞、Evercyte GmbHの脂肪由来、臍帯由来の歯髄由来およびワルトンゼリー由来のMSC。
【0126】
不死化した成体幹細胞の供給源:
1.テロメア化ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株(BM-MSC/TERT277)は、hTERT遺伝子を保有するプラスミドの非ウイルス遺伝子導入により海綿状骨(胸骨)から単離された間葉系幹細胞から開発された。ネオマイシンホスホトランスフェラーゼを選択マーカーとして使用し、ジェネティシンサルフェートを添加することにより、陽性にトランスフェクトされた細胞を選択した。細胞株は、増殖遅延または複製老化の兆候を示すことなく、25を超える集団倍加のために継続的に培養された。
2.テロメラーゼ化されたヒトワルトンゼリー由来の間葉系幹細胞株(WJ-MSC/TERT273)は、一次組織の脱凝集からhTERTの非ウイルス性転移までの異種不含条件下で樹立された。
【0127】
細胞株は、細胞型特異的マーカーおよび以下のような機能の発現を維持しながら、無制限の増殖を特徴とする。
-典型的な間葉系の形態
-CD73、CD90、およびCD105などの典型的な間葉系幹細胞マーカーの発現
-脂肪細胞、軟骨細胞、骨芽細胞への分化の可能性
-血管新生および抗炎症活性を有する細胞外小胞の産生
【0128】
上記の生物学的細胞は、本開示のいくつかの可能な実施形態にすぎないが、これは非限定的なリストであり、要件に適合する他の任意の細胞を本開示の一部として使用することができる。
【0129】
このセクションの本開示で言及されている分子量、および置換度は、ベンダーによって提供されたそれぞれの成分の分析証明書に記載されている詳細である。例えば、HA-MAの「33kDa」は、ベンダーから提供された分子量33kDaのHA-MAポリマーを指す。同様に、置換度の場合も同様であり、例えば、50%DoSは、ベンダーから提供されたとおり50%置換度を指す。
【0130】
実施例2
バイオインク配合物、およびその調製
本実施例では、3Dプリンタでインクとして機能し、バイオインクおよびバイオプリントされた角膜レンチキュールの望ましい特性を提供するバイオインク配合物を得るために採用された戦略について説明する。
【0131】
一定の直径のノズルを使用してポリマー溶液(バイオインク配合物)をバイオプリントする場合、インク(バイオインク配合物)は、必要な製品(バイオプリントされた角膜レンチキュール)を得るためのプリントパラメータを支持するのに十分な粘性が必要である。分子量および濃度の様々な組み合わせでの2つの主要成分、メタクリル化ヒアルロン酸(HA-MA)とチオール化組換えコラーゲンペプチド(RCP-SH)との混合を評価して、1690cP~5300cPの範囲で十分な粘度を有する望ましいバイオインクを得た。
【0132】
バイオインク配合物の調製
官能化ヒアルロン酸(HA)は、必要な濃度比で官能化RCPと混合し、溶解して生理食塩水中の均質な溶液を得ることができる。第1のアプローチでは、光開始剤をポリマー混合物と単回投与で混合することができ(
図1A)、バイオプリントプロセスの直前に、低粘度の溶液が生成され、バイオインクのプリント適性が制限される。第2のアプローチでは、光開始剤(エオシン溶液)を2段階でポリマーに添加することができる。ここでは、最初にエオシン容量の10%を添加し、ポリマー混合物と一晩インキュベートして、セミゲル溶液を生成する。このセミゲル溶液は粘度が高く、バイオインクのプリント適性を大幅に向上させる。残りの光開始剤の容量は、バイオプリントプロセスの直前に追加される(
図1B)。このアプローチは、バイオプリントのために粘度が低い特定の濃度範囲でのプリント適性の範囲を拡大し、バイオプリントされたレンチキュールの物理的および生物学的特性を復元する。しかしながら、セミゲルアプローチでは、短時間で不安定になったため、一貫性のない結果が観察され、プレゲル溶液はプリントカートリッジ内でゲル化しやすくなった。したがって、増粘剤を使用してポリマー溶液の全体的な粘度を上げてプリント可能な範囲にし、プリント後に容易に浸出させることができる第3の方法を評価した(
図1C)。増粘剤のタイプに応じて、温度を調節したり、洗浄したり、穏やかな化学薬品を使用したりすることで、増粘剤の除去を外部から制御することができる。事実上、ポリマー溶液(バイオインク配合物)のプリント適性は、マトリックスを硬くして細胞の増殖を困難にする生体高分子濃度を上げる必要なしに、増粘剤の濃度を変えることによって簡単に制御することができる。プリント後に除去すると、期待されるマトリックス特性が復元される。
【0133】
バイオインク配合物中のHA-MAおよびRCP-SHの分子量
そのように開発されたバイオインクが、バイオプリントに不可欠な特性を備えていることを確認するために、次の変数に基づいて一連の実験を実行した:HA-MAの分子量(33kDa~250kDa)、メタクリレート基(30%または50%)および異なる濃度のチオール化組換えコラーゲンペプチド(RCP-SH)との組み合わせでの置換度(DoS)。
【0134】
実験に使用したバイオプリンタは、0~200kPaの圧力範囲を有し、粘度が約100,000cP(=1000Pa-s)のバイオインクをプリントすることができるCellink BioX(登録商標)であった。開発されたバイオインクが望ましい粘度を有していることを確認するために、粘度の差が大きいが、Cellink(登録商標)テストインク(65,000CP)およびアルギネート(2%)+ゼラチン(4%)配合物(2126cP)などのプリント可能な2つの参照標準が選択された。
【0135】
ポリマー溶液の粘度は、その分子量および濃度に依存するため、異なる分子量(250kDa、50kDa、33kDa)および置換度(DoS)(30%および50%)のHA-MAを分析した。評価される粘度の範囲は、溶液の安定性および取り扱いの容易さに基づいて決定された。
【0136】
図2は、
図1Aに記載の方法を使用して得られたバイオインク配合物の結果を示している。結果(
図2)は、同じポリマー濃度のバイオインク配合物の場合、粘度がその分子量に正比例することを示している。250kDa HA-MAの40~60mg/mlを使用して調製された溶液は、必要な範囲内の粘度値を示したが、置換度は粘度に最小限の影響しか与えなかった。
【0137】
粘度に基づいて、RCP-SH(約51kDa)を含む250kDa HA-MA(DoS30%)または50kDa HA-MA(50%DoS)の濃度
バイオインク配合物の粘度は、250kDa HA-MA(30%DoS)の濃度を50mg/ml RCP-SH(DoS50%)で変化させることによって評価された。光開始剤(エオシン)添加のモードの影響をさらに研究するために、0.2μLのエオシンをバイオインク配合物に添加し、一晩インキュベートした後、バイオプリントプロセスの前に残りの1.8μLのエオシンを添加した(
図1B)。第2のアプローチでは、2μLのエオシンをバイオプリントの前にのみ追加した(
図1Cで説明)。
【0138】
結果(
図3)は、ポリマー成分を一晩インキュベートすると、溶液(
図1Bに開示された方法で得られたバイオインク)の粘度が大幅に増加することを明らかにした。50mg/ml RCP-SH溶液を含む高濃度のHA-MA(50および60mg/mL)は、粘度を測定する前に不安定でゲル化することがわかった。一方、低濃度(10および20mg/mL)のHA-MAを含む溶液は、それに応じて粘度が低いことがわかった。これにより、プリントおよび架橋プロセス中に型の中心にゲルが蓄積した。30および40mg/mL HA-MAを含む溶液は、エオシンの事前添加の有無で、望ましい範囲内の粘度を示した。
【0139】
上記の方法では、すべての望ましい品質を備えたバイオインク配合物が得られなかったため、さらに2つのアプローチを評価した。第一に、成分を一緒に混合し、それらをより長い時間一緒にインキュベートすることによってより厚い溶液(セミゲル)を形成することを可能にするセミゲル法。これは粘度の増加につながったが、プレゲル混合物は非常に不安定であり、溶液をバイオプリントするための十分な時間を提供しなかった。第2のアプローチは、粘度を改善することは別として、プレゲル溶液に熱応答性の安定性を提供する増粘剤を使用することを含んだ。
【0140】
増粘剤の添加に関する粘度評価の結果(
図4)も、粘度が増粘剤濃度の関数であることを明らかにした。HA-MA(250kDa)/RCP-SHの濃度を30/80(mg/ml)に固定すること、および37℃での溶液の粘度に対するメチルセルロース(MC、14kDa)の添加の影響を評価することは、溶液の粘度を少なくとも2倍に上げるには、MCの濃度が20mg/ml以上でなければならないことを明らかにした。
【0141】
一方、50kDa HA-MAベースのシステムの増粘剤としてゼラチン(中程度のブルーム、40~50kDa)を使用した場合、ゼラチンの濃度に加えて、温度を下げることもバイオインク配合物の粘度に有意な影響を与えることが観察された。バイオインクは、
図1Cに開示されている方法に従って調製された。本明細書で使用されるゼラチンは、175~225の範囲のブルーム値を有する中程度のブルームのものであり、これは、40~50kDaの範囲に変換される。
【0142】
実施例3
バイオインク配合物のプリントおよび増粘剤の効果
バイオインク配合物を使用してバイオプリントされた角膜レンチキュールを得るプロセス
実験に使用したバイオプリンタは、0~200kPaの圧力範囲を有し、粘度が約100,000cP(=1000Pa-s)のバイオインクをプリントすることができるCellink BioX(登録商標)であった。開発されたバイオインクが望ましい粘度を有していることを確認するために、粘度の差が大きいが、Cellink(登録商標)テストインク(65,000CP)およびアルギネート(2%)+ゼラチン(4%)配合物(2126cP)などのプリント可能な2つの参照標準が選択された。
【0143】
図5は、プロセスを概略的に示している。バイオインクを22Gノズルのシリンジ(プリントヘッド)に移した。細胞が必要な場合は、細胞と一緒にバイオインクがシリンジに移される。プリント速度、圧力、形状などのソフトウェアによって提供される入力に基づいて、プリントヘッドはシリンジの内容物を押出す型(足場)上を移動する。プリントされた構造は、波長470~570nmの高強度光(100mW/cm
2)に総時間4~5分間曝露され、バイオプリントされた角膜レンチキュールが生成された。これを型から取り出し、培養培地に移して、カプセル化された細胞(細胞が使用される場合)を必要な生理学的状態に維持することができる。
【0144】
バイオインク配合物のプリント適性評価
増粘剤を様々な濃度で生体高分子溶液に添加して、様々なバイオインク配合物を得て、それらのプリント適性を評価した(表2および3、
図6A)。バイオインクとして30mg/mlの250kDa HA-MA(30%DoS)および80mg/mlの50kDa RCP-SH(50%DoS)を含む異なる濃度のMCを使用してプリントされたレンチキュールは、形状を保持することができず、型から取り外すと崩壊する柔らかくて脆いレンチキュールになった(
図6A(I))。光開始剤の添加により溶液が粘性になりすぎて不安定になったため、生体高分子濃度をさらに上げることはできなかった。したがって、低分子量のHA-MAを使用し、必要に応じて濃度範囲を上げることができた。60mg/mlゼラチン(中程度のブルーム、40~50kDa)と50mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)および80mg/mlの50kDa RCP-SH(50%DoS)との組み合わせをバイオインクとして使用してプリントされたレンチキュールは、様々な温度で優れたプリント適性を提供したが、脆かった(
図6A(II))。
【0145】
一方、生体高分子の組み合わせを35mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)および150mg/mlの50kDa RCP-SH(50%DoS)に変更すると、無傷のレンチキュールが型から正常に取り外された(
図6A(III))。10分間の連続プリントで得られたレンチキュールは、同じ出力を得るために断続的にわずかな温度変化のみ必要とした。バイオプリント中に層流を達成するために、それに応じてプリントパラメータを調整した。バイオプリントプロセスにおける層流の重要性は、
図6Bに図式的に表されている。
図6A(I、II、およびIII)に示すように、プリントされたレンチキュールは、厚さが約400ミクロン、直径が14mmだった。
【表2】
【表3】
【0146】
表2および3から観察することができるように、そのゼラチンは、所望のバイオインク配合物で使用されるのに好ましい増粘剤であった。表3では、そこに記載されているプリント温度を観察すると、バイオインクがプリントされた温度が重要な役割を果たしたことが理解することができる。22.5℃および25℃の温度は、所望のバイオプリントされた角膜レンチキュールを提供した。一方、高温では、インクはプリントできなかった(
図6A(III))。さらに、35mg/mlのHA-MA(50kDa、DoS50%)および150mg/mlのRCP(50kDa、DoS50%)を使用して得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールが最高の結果をもたらしたことを観察することができる。
【0147】
バイオプリントされた角膜レンチキュールの圧縮弾性率
バイオインク配合物を調製する際の実施例1で述べた修正と同様に、最終製品(バイオプリントされた角膜レンチキュール)の物理的特性(圧縮弾性率)に対する、ポリマー溶液への光開始剤(エオシン)の添加の様々なモードの影響を評価した。
【0148】
圧縮研究は、BiSSメカニカルテスターを使用して、最大ひずみ50%まで1mm/分の速度で実施された。次に、圧縮弾性率は、応力(kPa)対ひずみ(ミリメートル/ミリメートル)曲線上の線形領域(0.1~0.2mm/mmひずみ)の勾配から計算された。
【0149】
ヒドロゲル形成の直前にエオシンを添加したサンプルと比較した場合、成分にエオシンを一晩添加しても、圧縮弾性率は実質的に増加しなかった(
図7)。最高の圧縮弾性率は、250kDa HA-MAの40mg/mLで観察され、20および30mg/mLのHA-MAは、天然の角膜よりも弾性が高いことがわかったが、圧縮弾性率は低くなった(約300kPa)。
【0150】
35/150mg/ml濃度の50kDa HA-MAおよびRCP-SHを有するヒドロゲルの圧縮弾性率は、ゼラチン(中程度のブルーム、40~50kDa、60mg/ml)の添加により増加した。この研究はまた、プリントされたレンチキュールから増粘剤を除去した後でも、弾性率はその完全性を維持し、必要な物理的機能を実行するのに十分であることを示している。上記のスクリーニング実験に基づいて、HA-MA(50kDa)およびRCP-SHベースのバイオインクの増粘剤としてゼラチンを使用すると、材料要件を満たすとともに、プリント適性の再現性が得られた。したがって、可能な実施形態の1つとして、50kDaのHA-MA/RCP-SH(35/150mg/mL)および60mg/mlのゼラチンヒドロゲル/バイオプリントされたレンチキュールを使用して、さらなる特徴付けを実行したが、他の組み合わせも記載されている。
【0151】
実施例4
50kDa RCP-SH(50%DoS、150mg/mL)およびゼラチン(中程度のブルーム、40~50kDa、60mg/ml)を含む50kDa HA-MA(50%DoS、35mg/ml)で構成されるバイオインクの物理化学的特性
本実施例は、35mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)、150mg/mlの50kDa RCP-SH(50%DoS)、および60mg/mlのゼラチン(中程度のブルーム-40~50kDa)を含むバイオインク配合物の異なるパラメータを説明する。バイオインク配合物は、
図1Cおよび実施例2に記載の方法を使用して調製された。
【0152】
本実施例は、35mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)、150mg/mlの50kDa RCP-SH(50%DoS)、および60mg/mlのゼラチン(中程度のブルーム-40~50kDa)を含むバイオインク配合物によって得られたバイオインク配合物およびそれぞれのバイオプリントされた角膜レンチキュールを記載し、30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸、10~80kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチド、および50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲であるゼラチンを含むバイオインク配合物を使用することができることが企図され得る。当業者は、上記の範囲内にある任意の配合物を使用することができる。良好な結果をもたらさない配合物は、表2および3において、すでに説明されている。例えば、バイオインク配合物は以下:
40mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)、100mg/mlの50kDa RCP(50%DoS)、および20~100mg/mlの中程度のブルームゼラチン、または
45mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)、120mg/mlの50kDa RCP(50%DoS)、および30~75mg/mlの中程度のブルームゼラチン、または
35mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)、90mg/mlの50kDa RCP(50%DoS)、中程度のブルームゼラチン60mg/ml、または
32mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)、180mg/mlの50kDa RCP(50%DoS)、および30~75mg/mlの中程度のブルームゼラチンを含むか、あるいは所望のバイオインク配合物およびそれぞれのバイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために使用することができる。同様に、ポリマーの分子量もニーズに合わせて変えることができる。
【0153】
透過率の研究
透過率の研究では、
図1Cに記載され、実施例2で説明された方法を使用して得られたバイオインク配合物。バイオインク配合物は、35mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)、150mg/mlの50kDa RCP-SH(50%DoS)、および60mg/mlのゼラチン(中程度のブルーム-40~50kDa)を使用して調製した。コントロールとして、ゼラチンを使用しないバイオインク配合物も調製した。バイオインクを96ウェルプレート(n=3)のウェル内に注ぎ、光に曝露してヒドロゲルを形成した。本明細書で使用されるヒドロゲルは、バイオインクの架橋形態を指し、架橋は、100~150mW/cm
2の範囲の強度を有する白色光に曝露することによって行われた。吸光度スキャンは、ブランクとしてヒドロゲルと同じ量の生理食塩水を使用して、350~750nmの範囲で行われた。最後に、吸光度の読み取り値は、式-%T=10^(2-Abs)を使用して透過率に変換され、グラフで表される(Wang et al.,2015.Biomacromolecules 2014,15,9,3421-3428.https://doi.org/10.1021/bm500969dで言及されているプロトコルに従って)。ゼラチンの有無に関係なく、ヒドロゲルは1X PBSと比較して可視光に対して85~99%の透過率を示した(
図8)。平均透過率の値は、可視光範囲の両方の研究グループで>94%のままだった(表4)。
【表4】
【0154】
膨潤プロファイル研究
膨潤の研究は、Sani,E.S. et al.,2019.Sutureless repair of corneal injuries using naturally derived bio-adhesive hydrogels.Science advances,5(3),p.eaav1281で公開された方法に従って、バイオプリントされたレンチキュールで実行された。
【0155】
結果を(
図9)に示す。PBSでインキュベートしたときのヒドロゲルの最大膨潤は、6時間以内に25.07%であることが観察され、その後はそれ以上膨潤しなかった。その後、すべての複製で明らかに重量が減少した。これは、ヒドロゲルからのゼラチンの放出に起因する可能性がある。
【0156】
ゼラチン放出プロファイル
ゼラチン放出プロファイルは、本実施例で研究されたバイオインク配合物から得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールで(Raut et al.,2019.Journal of Materials Science volume 54,pages10457-10472https://doi.org/10.1007/s10853-019-03643-0で公開された方法に基づいて)研究された。バイオプリントされたレンチキュールからゼラチンの放出は、相放出プロファイルに従い、第
1段階では、最初の30分間でバースト放出パターンを有し、その後3時間かけて徐々に増加し、その後着実に減少し、最終的には6時間以降安定した。合計で、63.9%のゼラチンが22時間でレンチキュールから放出された(
図10)。得られた結果は、タンパク質成分(RCP-SH)の放出による定量へのいかなる干渉を避けるために、ゼラチンを含まないHA-MA/RCP-SH(35/150mg/mL)ヒドロゲルからの正規化された値である。
【0157】
生分解研究
図11は、バイオインク配合物のヒドロゲルの分解プロファイルを示す。簡潔には、一定量のヒドロゲルを調製し、凍結乾燥し、秤量した(Wi)。次に、複製ヒドロゲルを、37℃でpH約7.4のPBSまたは生理食塩水中でインキュベートし、オービタルシェーカーで振とうした。特定の時点で、ヒドロゲルを取り出し、凍結乾燥し、秤量し(Wd)、質量を重量損失または分解(%)=(Wi-Wd)/Wi×100(Li 2006,Biomaterials https://dx.doi.org/10.1016%2Fj.biomaterials.2005.07.019)として計算した。
【0158】
ヒドロゲルの分解は、最初の3日間は遅く、その後速度が増加し、7日目までにヒドロゲルの質量の30.8%が分解され、その後も速度はほぼ安定していた(
図11)。
【0159】
生体適合性-インビトロ研究
調製したヒドロゲル配合物は、プレゲルミックス内にカプセル化されたドナー由来のCLSC(1ml当たり300万個の細胞)(
図12)およびBM-MSC(
図13)を培養し、インクを細胞とバイオプリントすることにより、角膜組織の再生を誘発する適合性を評価した。細胞はヒドロゲル内に均一に分布し、それによって約80%のカプセル化された細胞が培養期間を通して生きていた。細長い形態を示す細胞の集団は、9日目から現れ始め、その後、CLSCを含むバイオインクでわずかに増加した。一部のカプセル化された細胞は底に向かって移動し、ヒドロゲル表面に単層を形成した。一方、BM-MSC培養では、7日目にいくらかの細胞の細長い形態が観察された。
【0160】
欠損部位での完全な組織再生のためには、間質性幹細胞がその表現型を維持し、徐々に分化した状態に到達しながら、創傷の瘢痕のない治癒を助けることが最も重要である。インビトロ条件では、この段階的な分化のプロセスは、細胞のライフサイクルの特定の段階に固有のバイオマーカーの発現をチェックすることによって評価することができる。CD90は、間質性幹細胞によって発現されるそのようなバイオマーカーの1つであるが、細胞によるαSMAの発現は角膜実質細胞または筋線維芽細胞への分化状態を反映する。得られた結果(
図14)は、CLSCを含むバイオインクが17日間培養で維持された場合、CD90を発現し、αSMAを発現しなかったことを示している。一方、2D表面で培養された細胞は、αSMAの顕著な発現を示し、それらの分化した表現型を示している。本明細書に示されるように、結果は、筋線維芽細胞の分化を抑制でき、したがって角膜組織の瘢痕のない創傷治癒を支援する可能性があるという点で、バイオプリントされたレンチキュール(本実施例のバイオインク配合物から得られる)に大きな利点を提供する。
【0161】
実施例5
50kDa HA-MA(50%DoS)とコラーゲンMA(250kDa ColMA、DoS29%)を含むバイオインクの物理化学的特性
本実施例は、50kDa HA-MA(50%DoS)、250kDa Col-MA(29%DoS)(ゼラチンなし)を含むバイオインク配合物によって得られたバイオインク配合物およびそれぞれのバイオプリントされた角膜レンチキュールを記載し、30~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸、200~300kDaの範囲の分子量および10~80%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲン、および50~325の範囲のブルーム値を有するゼラチンであって、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲であるゼラチンを含むバイオインク配合物を使用することができることが企図され得る。ゼラチンを含まないヒドロゲル配合物は、透過率および生体適合性に関して望ましい結果を与えており(本実施例の結果)、当業者は、上記の範囲内にある任意の配合物を使用することができる。しかしながら、バイオインク配合物の望ましい粘度を達成するためにゼラチンが必要であり、同じものをプリントして、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得ることができる。したがって、バイオインク配合物は以下:
60mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)、10mg/mlの250kDa Col-MA(29%DoS)、および20~100mg/mlの中程度のブルームゼラチン、または
80mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)、20mg/mlの250kDa Col-MA(29%DoS)、および40~100mg/mlの中程度のブルームゼラチン、または
60mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)、10mg/mlの250kDa Col-MA(29%DoS)、および20~100mg/mlの中程度のブルームゼラチン、または
10mg/mlの50kDa HA-MA(50%DoS)、5mg/mlの50kDa Col-MA(50%DoS)、および30~75mg/mlの中程度のブルームゼラチンを含むか、あるいは望ましいバイオインク配合物とそれぞれのバイオプリントされた角膜レンチキュールを得るために使用することができる。
【0162】
透過率
機能要件を満たすための任意の角膜模倣材料の重要な特性は、光の透過率である。
図15は、1Xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)をブランクとして使用した場合の、個々の成分に対する代表的なバイオインクによる可視範囲(400~700nm)の光の透過率を示している。結果から、個々の成分および組み合わせ、すなわち、50/9mg/ml濃度のHA-MA/ColMAバイオインクは、PBSと同等の透過率を示すことが明らかである。
【0163】
生体適合性-インビトロ研究
CLSCをヒドロゲル(50mg/mlの50kDa HA-MAと50%DoS、および9mg/mlの250kDa Col-MAと29%DoS)内にカプセル化して、ポリマー混合物と架橋プロセスと天然のヒト角膜に見られる細胞との適合性を確認した。
図16は、生細胞と死細胞の染色を表している。結果は、ヒドロゲルマトリックスが高度に細胞適合性であり、組成物がカプセル化された細胞の付着を支持することを示した。
【0164】
欠損部位での完全な組織再生のためには、間質性幹細胞がその表現型を維持し、徐々に分化した状態に到達しながら、創傷の瘢痕のない治癒を助けることが最も重要である。インビトロ条件では、この段階的な分化のプロセスは、細胞のライフサイクルの特定の段階に固有のバイオマーカーの発現をチェックすることによって評価することができる。CD90は、間質性幹細胞によって発現されるそのようなバイオマーカーの1つであるが、細胞によるαSMAの発現は角膜実質細胞または筋線維芽細胞への分化状態を反映する。得られた結果(
図17)は、HA-MA/ColMAバイオインク(50%DoSを含む50kDa HA-MAの50mg/ml、および29%DoSを含む250kDa Col-MAの9mg/ml)で培養されたCLSCが、CD90のより良い発現およびαSMAの弱い発現を示していたことを示す。一方、2D表面(ガラスカバースリップを参照)で培養された細胞は、培養6日以内にαSMAの顕著な発現を示し、それらの分化した表現型を示している。HA-MA/ColMAバイオインクは、筋線維芽細胞の分化を抑制し、角膜組織の瘢痕のない創傷治癒を支援する可能性がある。
【0165】
実施例6
「33kDa」HA-MA(50%DoS)/50kDa RCP-SH(50%DoS)を含むバイオインク配合物を使用した研究
33kDa HA-MA(50%DoS)および50kDa RCP-SH(50%DoS)の75/125および75/150mg/ml濃度比を有する調製されたヒドロゲル配合物は、角膜組織再生を誘発するそれらの適合性について評価された。本実施例によるヒドロゲルは、ゼラチンなしで調製されたが、ゼラチンを含むヒドロゲルも同様の結果を提供すると企図され得る。最初に、ヒドロゲル表面上の辺縁または角膜上皮細胞(LECまたはCEC)を使用した再上皮化能力が研究された。第二に、間質の再生を実証するために、CLSCはヒドロゲル内にカプセル化され、それらの生存率、増殖能力、および表現型がインビトロで研究された。
【0166】
再上皮化研究
HA-MA/RCP-SHヒドロゲル配合物(「33kDa」、75/125および75/150mg/mlの比率で、HA-MA(33kDa)/RCP-SH(50kDa)を含む配合物)の生体適合性を実証するため、初代ヒトCECをヒドロゲルの表面に播種し、培養した。上皮細胞はヒドロゲルの表面に付着して増殖し、2週間の終わりまでにコンフルエントな単層を生成した(
図18)。この観察結果は、ポジティブコントロールとして使用された2Dカバースリップ表面およびGel-MA(200mg/ml)ヒドロゲルに匹敵した。このデータは、HA-MA/RCP-SHヒドロゲルが、インビボでの角膜創傷治癒/再生を促進できる角膜模倣バイオエンジニアリング材料として機能することを示している。
【0167】
間質再生:ヒドロゲルへのCLSCのカプセル化
ヒドロゲルのCLSCへの適合性は、最終的にヒドロゲルの間質再生能力を示し、ヒドロゲル表面でCLSCを培養し、続いてカプセル化研究を行うことによって評価された。
【0168】
図19は、ヒドロゲル表面で5日間培養した場合のCLSCの生存率評価を表している。結果から明らかなように、細胞は急速な増殖を示し、5日以内にヒドロゲル表面を覆った。また、緑色に染色された細胞質によってマークされた生細胞集団は、培養環境が細胞の増殖に適合していることを示している。HA-MA/RCP-SHヒドロゲル表面での細胞増殖は、Gel-MAでの細胞増殖よりも高かったのに対し、ポジティブコントロールとして使用されたカバースリップ上の細胞と同様だった。
【0169】
CLSCの生存率も、ヒドロゲルマトリックスに細胞をカプセル化して1週間評価した。
図20で緑色を表示している細胞(生細胞によるカルセイン-AMの取り込みによる)は、生細胞の集団を表している。HA-MA/RCP-SHヒドロゲルにカプセル化されたCLSCは、培養期間全体にわたって生存可能であり、生存可能な集団は2Dカバースリップと同様であり、Gel-MA(20%w/vまたはDoSが95%を超える200mg/ml)よりも高かった。また、HA-MA/RCP-SHヒドロゲルの3日目の画像の挿入は、一部の細胞が細長い形態になり始めたことを示している。これは、2D表面で培養された細胞によって示された。
図21は、HA-MA/RCP-SHヒドロゲルマトリックスで培養されたCLSCがCD90のより良い発現とαSMAの弱い発現を示し、2D表面で培養された細胞がαSMAの顕著な発現を示したことを示している。HA-MA/RCP-SHヒドロゲル筋線維芽細胞の分化を抑制し、角膜組織の瘢痕のない創傷治癒を支援する可能性がある。
【0170】
実施例7
エクソソームを含むバイオインクおよびそれぞれのバイオプリントされた角膜レンチキュール
本開示の実施として、ポリマーHA-MA、RCP-SH、および増粘剤ゼラチンとともに幹細胞の存在下でエクソソームを含むバイオインク配合物およびそれぞれのバイオプリントされた角膜レンチキュールが本明細書で提供される。以前の例から、バイオインク配合物およびヒドロゲルは幹細胞の増殖を可能にし、生体適合性があることが理解できる。したがって、幹細胞の増殖を助け、傷跡のない方法で創傷の治癒を助けるためにエクソソームを含めることが考えられる。
【0171】
別の実施として、バイオインク配合物、およびポリマーHA-MA、RCP-SHを含むそれぞれのバイオプリントされた角膜レンチキュール、ならびに幹細胞の非存在下でのエクソソームを伴う増粘剤ゼラチンもまた、本明細書とともに開示され、望ましい結果を提供すると考えられる。
【0172】
実施例8
本開示のバイオインク配合物と既知のバイオインク配合物との比較
本実施例は、本開示に開示のバイオインク配合物の特定のパラメータを、既知のバイオインク配合物のパラメータと比較する。
【表5】
【0173】
表5から、本開示で開示されるバイオインク配合物は、言及した先行技術(Ulag et.al.,2020)において公開された人工角膜と比較して、制御された膨潤、より少ない分解、およびより高い透過率を有するはるかに優れたヒドロゲル/バイオプリントされた角膜レンチキュールをもたらすことが観察され得る。
【0174】
実施例9
幹細胞を培養し、精製されたエクソソームを得る方法
本開示はまた、大量の増殖した幹細胞を得るために二次元または三次元の方法で幹細胞を培養する態様、および生物医学的用途のための馴化培地を開示する。
【0175】
馴化培地は、高品質のエクソソームを精製するために使用された。このようにして得られたエクソソームは、本開示に開示されているように、バイオインク配合物に使用された。
【0176】
細胞培養法はまた、角膜辺縁幹細胞の培養に由来する馴化培地(角膜間質性幹細胞由来の馴化培地と呼ばれる)で間葉系幹細胞をプライミングすることを含み、プライミング法によって得られた間葉系幹細胞の馴化培地は、本開示のバイオインク配合物で使用されるエクソソームを精製するために使用される。
【0177】
増殖した幹細胞を得るための幹細胞の培養の態様、および細胞培養馴化培地を得るための、さらに、馴化培地のセクレトームからエクソソームを得るためのプロセスは、PCT出願(PCT/IN2020/050622、およびPCT/IN2020/050623は、本開示にその全体が組み込まれている)に開示されている。
【0178】
実施例10
角膜欠損のある対象を治療する方法
本開示に開示されるようなバイオプリントされた角膜レンチキュールは、角膜欠損を有する対象を治療するためにさらに使用することができる。角膜欠損または障害は、感染性角膜炎、炎症性障害、遺伝性の角膜上皮間質ジストロフィー、変性症状、および外傷誘発性損傷からなる群から選択され得る。角膜失明を引き起こす可能性のある角膜障害は、本開示に開示されているように、バイオプリントされた角膜レンチキュールで治療することができる。この方法は、バイオプリントされた角膜レンチキュールを、それを必要とする対象に移植することを含む。バイオプリントされた角膜レンチキュールは、Islam,et al.Biomaterials-enabled cornea regeneration in patients at high risk for rejection of donor tissue transplantation.npj Regen Med 3,2(2018)に記載されている方法に従って、患者に縫合することができる。https://doi.org/10.1038/s41536-017-0038-8。
【0179】
治療方法は、(i)角膜間質性幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(ii)臨床的に承認された点眼配合物と、を含む配合物を提供するステップを含んでよく、または含まなくてよい。臨床的に承認された点眼配合物は、以下からなる群から選択することができる。
1.Tearhyl(登録商標)(ヒアルロン酸ナトリウム、0.1~0.3%溶液)
2.Refresh Optive(登録商標)(カルボキシメチルセルロース、0.5%溶液)
3.Systane Ultra(登録商標)(ポリエチレングリコール、MW400、0.4%溶液)
4.Leader(登録商標)人工涙液(ポリビニルアルコール、1.4%溶液)
5.Systane Balance(登録商標)(プロピレングリコール、0.6%溶液)
6.MIKELAN(登録商標)LA(アルギネートベース)
【0180】
さらに、治療の方法は、独立した治療オプションとして配合物を提供することを含み得る。
【0181】
本開示の利点
本開示は、生体模倣、生体適合性、および生分解性であるという望ましい特徴を備えた、バイオエンジニアリングされたバイオインクおよびバイオプリントされた角膜実質レンチキュールを提供する。また、本明細書に記載のように、バイオインク配合物は、バイオプリントされた角膜レンチキュールを得るための3Dプリントの容易さを可能にするために好ましい粘度範囲にある。バイオインクならびにバイオプリントされた角膜レンチキュールは、瘢痕のない角膜治癒を促進し、それにより、本開示に記載の移植後の透明な角膜をもたらす。他の重要な利点の1つは、本開示が、眼に存在する天然成分であるヒアルロン酸を使用した透明で縫合可能な3Dバイオプリントされた角膜レンチキュールの開発は、疾患/損傷角膜を部分的または全厚さの移植片で置き換えるための実行可能な治療オプションとして役立つことを開示することである。したがって、バイオプリントされた角膜レンチキュールは、生体模倣レンチキュールであり、これは、治療の観点から確かに有利である。バイオプリントされた角膜レンチキュールにエクソソームおよび/または幹細胞を含めることで、広範な角膜欠損のある対象に再生治療の選択肢を提供するのにさらに役立つ。本明細書に記載のバイオプリントされた角膜レンチキュールは、PCT出願第PCT/IN2020/050622号に開示された三次元細胞培養のプロセス、およびPCT出願第PCT/IN2020/050623号に開示された間葉系幹細胞のプライミングの態様は、それを必要とする多くの対象の要件に潜在的に対応できる可能性がある。
【0182】
バイオプリントされた角膜レンチキュールは生体模倣であるため、薬物毒性を研究するためのモデルとしても使用することができる。また、レンチキュールを使用して、様々な角膜の疾患/欠損を研究および理解し、研究の進歩に役立てることもできる。本明細書に開示されるバイオプリントされた角膜レンチキュールは、薬物の毒性を研究するためのツールとして、また、疾患の進行およびメカニズムを理解するためのツールとして使用することができる(疾患モデリング)。
【0183】
本開示は、生体模倣、生体適合性、および生分解性であるという望ましい特徴を有する、バイオエンジニアリングされたバイオインク配合物およびバイオプリントされた角膜レンチキュールを開示する。バイオインク配合物であって、(a)修飾ヒアルロン酸、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルアルコール、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾アルギネート、絹、および修飾絹からなる群から選択される第1のポリマーと、(b)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第2のポリマーと、(c)ゼラチン、修飾セルロース、ジェランガム、キサンタムガム、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびアルギネートからなる群から選択され、増粘剤と、を含み、バイオインク配合物が、1690~5300cPの範囲の粘度を有する、バイオインク配合物が、本開示で開示される。
【0184】
30~100kDaの範囲の分子量、30~70%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、30~70kDaの範囲の分子量、30~70%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、50~325の範囲のブルーム値を有し、バイオインク配合物に対して0.1~150mg/mlの濃度範囲を有するゼラチンと、を含む、バイオインク配合物もまた、本明細書に開示される。バイオインク配合物は、ポリマーの架橋を開始するための光開始剤(0.5~1Xエオシン)をさらに含む。一定の強度の白色光がバイオインクに照射され、架橋プロセスがさらに完了する。バイオインク配合物は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞からなる群から選択される幹細胞をさらに含み、角膜辺縁幹細胞由来の馴化培地は、間葉系幹細胞をプライミングした。さらに、バイオインク配合物はまた、角膜間質性幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブな間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームを含む。バイオインク配合物はまた、幹細胞の存在なしにエクソソームを含むことができる。また、本明細書に開示されるのは、バイオインク配合物を得るためのプロセスである。さらに、本開示は、本明細書に記載のバイオインク配合物を含むバイオプリントされた角膜レンチキュールを提供する。上記のバイオインク配合物から得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールは、制御された膨潤、および高い引張強度を提供する。さらに、バイオプリントされた角膜レンチキュールは、生分解にも耐性があり(インビトロ条件下で30日以内に2~40%)、93%を超える透過率を示す。このようにして得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールは、幹細胞の増殖を促進し(生体適合性)、上皮化と間質再生を促進し、角膜組織の瘢痕を治癒する機会を提供する。また、バイオプリントされた角膜レンチキュールおよび/またはヒドロゲルは筋線維芽細胞の分化を抑制し、したがって角膜組織の瘢痕のない創傷治癒を支援する可能性がある。ヒドロゲル/角膜レンチキュール内のエクソソームの存在は、再生治療をさらに支援する。したがって、本開示は、瘢痕のない創傷治癒を促進するために対象の角膜欠損を治療するために使用することができる、引張強度、圧縮弾性率、透過率、制御された膨潤および劣化に対する耐性の所望の特性を有するバイオインク配合物および対応するバイオプリントされた角膜レンチキュールを提供する。
【0185】
40~70kDaの範囲の分子量、30~70%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、30~70kDaの範囲の分子量、20~70%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、175~225の範囲のブルーム値を有し、バイオインク配合物に対して40~80mg/mlの濃度範囲を有するゼラチンと、を含む、バイオインク配合物もまた、本明細書に開示される。バイオインク配合物は、ポリマーの架橋を開始するための光開始剤(0.5~1Xエオシン)をさらに含む。一定の強度の白色光がバイオインクに照射され、架橋プロセスがさらに完了する。バイオインク配合物は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞からなる群から選択される幹細胞をさらに含み、角膜辺縁幹細胞由来の馴化培地は、間葉系幹細胞をプライミングした。さらに、バイオインク配合物はまた、角膜間質性幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブな間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームを含む。バイオインク配合物はまた、幹細胞の存在なしにエクソソームを含むことができる。また、本明細書に開示されるのは、バイオインク配合物を得るためのプロセスである。さらに、本開示は、本明細書に記載のバイオインク配合物を含むバイオプリントされた角膜レンチキュールを提供する。上記のバイオインク配合物から得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールは、制御された膨潤、および高い引張強度を提供する。さらに、バイオプリントされた角膜レンチキュールは、生分解にも耐性があり(インビトロ条件下で30日以内に2~40%)、93%を超える透過率を示す。このようにして得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールは、幹細胞の増殖を促進し(生体適合性)、上皮化と間質再生を促進し、角膜組織の瘢痕を治癒する機会を提供する。また、バイオプリントされた角膜レンチキュールおよび/またはヒドロゲルは筋線維芽細胞の分化を抑制し、したがって角膜組織の瘢痕のない創傷治癒を支援する可能性がある。ヒドロゲル/角膜レンチキュール内のエクソソームの存在は、再生治療をさらに支援する。したがって、本開示は、瘢痕のない創傷治癒を促進するために対象の角膜欠損を治療するために使用することができる、引張強度、圧縮弾性率、透過率、制御された膨潤および劣化に対する耐性の所望の特性を有するバイオインク配合物および対応するバイオプリントされた角膜レンチキュールを提供する。
【0186】
30~50kDaの範囲の分子量、30~70%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、30~70kDaの範囲の分子量、20~70%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、175~225の範囲のブルーム値を有し、バイオインク配合物に対して40~80mg/mlの濃度範囲を有するゼラチンと、を含む、バイオインク配合物もまた、本明細書に開示される。バイオインク配合物は、ポリマーの架橋を開始するための光開始剤(0.5~1Xエオシン)をさらに含む。一定の強度の白色光がバイオインクに照射され、架橋プロセスがさらに完了する。バイオインク配合物は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞からなる群から選択される幹細胞をさらに含み、角膜辺縁幹細胞由来の馴化培地は、間葉系幹細胞をプライミングした。さらに、バイオインク配合物はまた、角膜間質性幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブな間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームを含む。バイオインク配合物はまた、幹細胞の存在なしにエクソソームを含むことができる。また、本明細書に開示されるのは、バイオインク配合物を得るためのプロセスである。さらに、本開示は、本明細書に記載のバイオインク配合物を含むバイオプリントされた角膜レンチキュールを提供する。上記のバイオインク配合物から得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールは、制御された膨潤、および高い引張強度を提供する。さらに、バイオプリントされた角膜レンチキュールは、生分解にも耐性があり(インビトロ条件下で30日以内に2~40%)、93%を超える透過率を示す。このようにして得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールは、幹細胞の増殖を促進し(生体適合性)、上皮化と間質再生を促進し、角膜組織の瘢痕を治癒する機会を提供する。また、バイオプリントされた角膜レンチキュールおよび/またはヒドロゲルは筋線維芽細胞の分化を抑制し、したがって角膜組織の瘢痕のない創傷治癒を支援する可能性がある。ヒドロゲル/角膜レンチキュール内のエクソソームの存在は、再生治療をさらに支援する。したがって、本開示は、瘢痕のない創傷治癒を促進するために対象の角膜欠損を治療するために使用することができる、引張強度、圧縮弾性率、透過率、制御された膨潤および劣化に対する耐性の所望の特性を有するバイオインク配合物および対応するバイオプリントされた角膜レンチキュールを提供する。
【0187】
35~70kDaの範囲の分子量、30~70%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、230~270kDaの範囲の分子量、20~40%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンと、175~225の範囲のブルーム値を有し、バイオインク配合物に対して40~80mg/mlの濃度範囲を有するゼラチンと、を含む、バイオインク配合物もまた、本明細書に開示される。バイオインク配合物は、ポリマーの架橋を開始するための光開始剤(0.5~1Xエオシン)をさらに含む。一定の強度の白色光がバイオインクに照射され、架橋プロセスがさらに完了する。バイオインク配合物は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、ワルトンゼリー由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞からなる群から選択される幹細胞をさらに含み、角膜辺縁幹細胞由来の馴化培地は、間葉系幹細胞をプライミングした。さらに、バイオインク配合物はまた、角膜間質性幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブな間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームを含む。バイオインク配合物はまた、幹細胞の存在なしにエクソソームを含むことができる。また、本明細書に開示されるのは、バイオインク配合物を得るためのプロセスである。さらに、本開示は、本明細書に記載のバイオインク配合物を含むバイオプリントされた角膜レンチキュールを提供する。上記のバイオインク配合物から得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールは、制御された膨潤、および高い引張強度を提供する。さらに、バイオプリントされた角膜レンチキュールは、生分解にも耐性があり(インビトロ条件下で30日以内に2~40%)、93%を超える透過率を示す。このようにして得られたバイオプリントされた角膜レンチキュールは、幹細胞の増殖を促進し(生体適合性)、上皮化と間質再生を促進し、角膜組織の瘢痕を治癒する機会を提供する。また、バイオプリントされた角膜レンチキュールおよび/またはヒドロゲルは筋線維芽細胞の分化を抑制し、したがって角膜組織の瘢痕のない創傷治癒を支援する可能性がある。ヒドロゲル/角膜レンチキュール内のエクソソームの存在は、再生治療をさらに支援する。したがって、本開示は、瘢痕のない創傷治癒を促進するために対象の角膜欠損を治療するために使用することができる、引張強度、圧縮弾性率、透過率、制御された膨潤および劣化に対する耐性の所望の特性を有するバイオインク配合物および対応するバイオプリントされた角膜レンチキュールを提供する。本開示に記載されるバイオプリントされた角膜レンチキュールは、ゼラチンがインビトロ条件(緩衝液または培養培地の存在下)で、20~25時間で約60~65重量%に浸出する特性を有する。
【国際調査報告】