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特表2022-542181呼吸器疾患を常時モニタリングするためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】呼吸器疾患を常時モニタリングするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20220921BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/00 102A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505530
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 US2020044632
(87)【国際公開番号】W WO2021022222
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】62/881,330
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/941,185
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521504902
【氏名又は名称】レズメド コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャヴェド、ファイザン
(72)【発明者】
【氏名】カーンズ、デイヴィッド、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】オドワイヤー、シアラ、アン
(72)【発明者】
【氏名】クリミンズ、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】マッギャン、サラ、テレーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ドス サントス、ホセ、リカルド
(72)【発明者】
【氏名】カークパトリック、ライアン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】クルーゾ、デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038SS01
4C038SS04
4C038SS05
4C038SS08
4C038SV03
4C117XA04
4C117XB04
4C117XB11
4C117XC11
4C117XC13
4C117XE13
4C117XE17
4C117XE20
4C117XE23
4C117XE24
4C117XE26
4C117XE27
4C117XE28
4C117XE29
4C117XE30
4C117XE37
4C117XE75
4C117XF22
4C117XH02
4C117XH15
4C117XH16
4C117XJ03
4C117XJ13
4C117XJ32
4C117XJ34
4C117XJ45
4C117XK33
4C117XL01
4C117XL06
4C117XL08
4C117XP09
4C117XP11
4C117XQ13
(57)【要約】
呼吸器疾患の症状を決定するためのシステムおよび方法が開示されている。このシステムは、患者に装着されたモニタからデータを受信するように動作可能なトランシーバを含む。モニタは、複数のセンサを含み、その複数のセンサのそれぞれが、患者の呼吸に関する生理学的データを出力する。トランシーバには、患者の呼吸の状態、障害、または疾患の症状の発生を決定するために生理学的データを分析する分析プラットフォームが連結されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の呼吸疾患の症状の発生を決定するためのシステムであって、
患者に装着されたモニタからデータを受信するように動作可能なトランシーバであって、前記モニタが複数のセンサを含み、前記複数のセンサのそれぞれが、前記患者の呼吸疾患に関する生理学的データを出力するように構成されている、患者に装着されたモニタからデータを受信するように動作可能なトランシーバと、
前記トランシーバに連結された分析プラットフォームであって、
前記呼吸疾患の症状の前記発生を決定するために前記生理学的データを分析するように構成された分析プラットフォームと、を備える、システム。
【請求項2】
前記複数のセンサが心拍センサと呼吸センサとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記トランシーバから前記生理学的データを受信し、前記生理学的データを前記分析プラットフォームに送信するように動作可能なポータブルコンピューティングデバイスをさらに備える、請求項1~2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記分析プラットフォームが、前記呼吸疾患の前記症状の前記発生を決定する際に、前記患者に関する環境データを分析するようにさらに構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記分析プラットフォームが、前記呼吸疾患の前記症状の前記発生を決定する際に、前記患者に関する人口統計データを分析するようにさらに構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数のセンサが加速度計をさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数のセンサが圧力センサをさらに備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記症状が息切れである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記分析プラットフォームが、
前記圧力センサおよび前記加速度計から決定された呼吸努力と、
前記呼吸センサから決定された呼吸数と、の組み合わせを用いて息切れを決定するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数のセンサは、オーディオセンサを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記分析プラットフォームが、前記オーディオセンサからのデータに基づいて、軽度の喘鳴と他の外来信号とを区別するようにさらに構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記分析プラットフォームが遠隔サーバ上で実行される、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記分析プラットフォームが、前記呼吸疾患の症状の前記発生を決定するために、前記生理学的データにモデルを適用するように構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記モデルが、収集された生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によって構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記分析プラットフォームが、前記患者に該当する公衆衛生要因を基に症状の発生を決定するように構成されている、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記公衆衛生要因が社会的健康決定要因を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記分析プラットフォームが、前記患者の自宅の地理的位置に基づいて前記社会的健康決定要因を推定するようにさらに構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記公衆衛生要因が、前記患者と同様の患者コホート内の別の患者から集められたデータを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記分析プラットフォームが、前記患者の前記呼吸疾患の事象のリスク評価を決定するために前記生理学的データを分析するようにさらに構成されている、請求項1~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記分析プラットフォームが、前記リスク評価を閾値と比較して呼吸イベントを予測するようにさらに構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記分析プラットフォームが、前記予測された呼吸イベントを受けて矯正動作を開始するようにさらに構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記複数のセンサは、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサを含む、請求項19~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記分析プラットフォームが、
前記インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサからのインピーダンス測定値を肺活量と相関させることと、
前記肺活量からフローボリューム曲線を作図することと、
前記フローボリューム曲線から1つ以上の換気量パラメータを抽出することと、
前記換気量パラメータから特徴量を導出することと、
前記リスク評価を決定するために、特徴量にモデルを適用することと、によって前記リスク評価を決定するように構成されている、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記複数のセンサがECGセンサを含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記分析プラットフォームが、前記ECGセンサによる前記インピーダンス測定値から、心臓活動によって生成されたノイズを除去するようにさらに構成されている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記複数のセンサは、加速度計を含む、請求項23~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記分析プラットフォームが、前記加速度計による前記インピーダンス測定値から体動アーチファクトを除去するようにさらに構成されている、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記1つ以上の換気量パラメータが、
呼気時間におけるピーク呼気流量までの時間、
呼気換気量に対するピーク呼気流量の体積、および
ピーク後の呼気流量曲線の傾き、からなる群から抜き出される、請求項23~27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記モデルが、収集された生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によって構成されている、請求項23~28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
患者に装着可能な常時モニタリングデバイスであって、
前記患者に貼着され得る表面を有する筐体と、
複数のセンサであって、それぞれが、前記患者の呼吸の状態、障害、または疾患に関する生理学的データを出力するように構成されている複数のセンサと、
前記生理学的データを記憶するように構成されたメモリと、
前記生理学的データを外部デバイスに送信するように動作可能なトランシーバと、を備える、モニタリングデバイス。
【請求項31】
前記複数のセンサが心拍センサと呼吸センサとを含む、請求項30に記載のモニタリングデバイス。
【請求項32】
前記呼吸センサがインピーダンス・プレチスモグラフィ・センサである、請求項31に記載のモニタリングデバイス。
【請求項33】
電極パッド間の電圧を感知するように構成された1対の電極パッドをさらに備える、請求項32のモニタリングデバイス。
【請求項34】
前記心拍センサが前記1対の電極パッドに連結されている、請求項33に記載のモニタリングデバイス。
【請求項35】
前記インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサが前記1対の電極パッドに連結されている、請求項33~34のいずれか一項に記載のモニタリングデバイス。
【請求項36】
低振幅の高周波電流を注入するために前記インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサが連結されている第2の対の電極パッドをさらに備える、請求項35に記載のモニタリングデバイス。
【請求項37】
前記筐体が、パッチ、リストバンド、ネックレス、およびベストからなる群の中の1つであるフォームファクタを有する、請求項30~36のいずれか一項に記載のモニタリングデバイス。
【請求項38】
前記複数のセンサは、オーディオセンサを含む、請求項30~37のいずれか一項に記載のモニタリングデバイス。
【請求項39】
前記複数のセンサは、加速度計およびジャイロスコープを含む、請求項30~38のいずれか一項に記載のモニタリングデバイス。
【請求項40】
前記複数のセンサは、圧力センサをさらに含む、請求項30~39のいずれか一項に記載のモニタリングデバイス。
【請求項41】
前記筐体が可撓性適合材料から製作されている、請求項30に記載のモニタリングデバイス。
【請求項42】
患者の呼吸疾患をモニタリングするためのシステムであって、
前記患者に装着可能なモニタであって、
複数のセンサであって、それぞれが、前記患者の前記呼吸疾患に関する生理学的データを出力するように構成された複数のセンサと、
前記生理学的データを送信するように構成された第1のトランシーバと、を含む、前記患者に装着可能なモニタと、
前記第1のトランシーバから前記生理学的データを受信するように構成された第2のトランシーバを含む外部デバイスと、
分析プラットフォームであって、前記第2のトランシーバに連結されており、
前記呼吸疾患の症状の発生を決定するために、前記第2のトランシーバから受信した前記生理学的データを分析するように構成された分析プラットフォームと、を備える、患者の呼吸疾患をモニタリングするためのシステム。
【請求項43】
前記複数のセンサが心拍センサと呼吸センサとを含む、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記外部デバイスがポータブルコンピューティングデバイスである、請求項42~43のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記分析プラットフォームが、前記呼吸疾患の前記症状の前記発生を決定する際に、前記患者に関する環境データを分析するようにさらに構成されている、請求項42~44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記分析プラットフォームが、前記呼吸疾患の前記症状の前記発生を決定する際に、前記患者に関する人口統計データを分析するようにさらに構成されている、請求項42~45のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記複数のセンサが加速度計をさらに備える、請求項43に記載のシステム。
【請求項48】
前記複数のセンサが圧力センサをさらに備える、請求項43に記載のシステム。
【請求項49】
前記症状が息切れである、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記分析プラットフォームが、
前記圧力センサおよび前記加速度計から決定された呼吸努力と、
前記呼吸センサから決定された呼吸数と、の組み合わせを用いて息切れを判定するように構成されている、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
前記複数のセンサは、オーディオセンサを含む、請求項42~50のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項52】
前記分析プラットフォームが、前記オーディオセンサからのデータに基づいて、軽度の喘鳴と他の外来信号とを区別するようにさらに構成されている、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記分析プラットフォームが遠隔サーバ上で実行される、請求項42~52のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項54】
前記分析プラットフォームが、前記呼吸疾患の症状の前記発生を決定するために、前記生理学的データにモデルを適用するように構成されている、請求項42~53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記モデルが、収集された生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によって構成されている、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記分析プラットフォームが、前記呼吸疾患の呼吸イベントのリスク評価を決定するために、前記生理学的データを分析するようにさらに構成されている、請求項42~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
前記分析プラットフォームが、前記リスク評価を閾値と比較して前記呼吸イベントを予測するようにさらに構成されている、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記分析プラットフォームが、前記予測された呼吸イベントを受けて矯正動作を開始するようにさらに構成されている、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記複数のセンサは、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサを含む、請求項56~58のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項60】
前記分析プラットフォームが、
前記インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサからのインピーダンス測定値を肺活量と相関させることと、
前記肺活量からフローボリューム曲線を作図することと、
前記フローボリューム曲線から1つ以上の換気量パラメータを抽出することと、
前記換気量パラメータから特徴量を導出することと、
前記リスク評価を決定するために、特徴量にモデルを適用することと、によって前記リスク評価を決定するように構成されている、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
前記複数のセンサがECGセンサを含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記分析プラットフォームが、前記ECGセンサによる前記インピーダンス測定値から、心臓活動によって生成されたノイズを除去するようにさらに構成されている、請求項61に記載のシステム。
【請求項63】
前記複数のセンサは、加速度計を含む、請求項60~62のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項64】
前記分析プラットフォームが、前記加速度計による前記インピーダンス測定値から体動アーチファクトを除去するようにさらに構成されている、請求項63に記載のシステム。
【請求項65】
前記1つ以上の換気量パラメータが、
呼気時間におけるピーク呼気流量までの時間、
呼気換気量に対するピーク呼気流量の体積、および
ピーク後の呼気流量曲線の傾き、からなる群から抜き出される、請求項61~64のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項66】
前記モデルが、収集された生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によって構成されている、請求項61~65のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項67】
前記決定されたリスク評価に基づいて前記呼吸疾患の治療計画を修正するように構成された投薬ルールエンジンをさらに備える、請求項56~66のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項68】
前記投薬ルールエンジンが、前記治療計画の一部を形成する薬の投与量を調整するように構成されている、請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
前記投薬ルールエンジンが、前記治療計画の一部を構成する薬のタイプを調整するように構成されている、請求項67に記載のシステム。
【請求項70】
前記分析プラットフォームが、前記リスク評価に基づいてアラートを発するようにさらに構成されている、請求項56~69のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項71】
前記分析プラットフォームから発せられたアラートを受信し、
前記アラートを受信すると人に注意喚起する、ように構成されたアラートデバイスをさらに備える、請求項70に記載のシステム。
【請求項72】
前記アラートデバイスが、前記アラートを受信すると前記人を覚醒させるように構成されている、請求項71に記載のシステム。
【請求項73】
前記アラートデバイスがウェアラブルアラートデバイスである、請求項71~72のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項74】
患者の呼吸疾患の事象を予測する方法であって、
前記患者に装着されたモニタ内の複数のセンサから、前記患者の前記呼吸疾患に関する生理学的データを収集することと、
前記複数のセンサから収集された前記生理学的データに基づいて前記呼吸疾患の事象を予測するためのモデルを適用することと、を含む、患者の呼吸疾患の事象を予測する方法。
【請求項75】
前記複数のセンサが心拍センサおよび呼吸センサを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記複数のセンサが加速度計をさらに備える、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記複数のセンサがジャイロスコープをさらに備える、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記モデルは、患者に関する環境データを考慮する、請求項74~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記モデルは、患者に関する人口統計学的データを考慮する、請求項74~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記モデルが、収集された生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によって構成されている、請求項74~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記事象を予測するとアラートデバイスにアラートを発することをさらに含み、前記アラートデバイスが、人に注意喚起するように構成されている、請求項74~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記モデルが、前記患者に該当する公衆衛生要因の入力情報を含む、請求項74~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記公衆衛生要因が社会的健康決定要因を含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記患者の自宅の地理的位置に基づいて前記社会的健康決定要因を推定することをさらに含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記公衆衛生要因が、前記患者と同様の患者コホート内の別の患者から集められたデータを含む、請求項82~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
予測された呼吸イベントを受けて矯正動作を開始することをさらに含む、請求項74~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記複数のセンサは、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサを含む、請求項74~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサからのインピーダンス測定値を肺活量と相関させることと、
前記肺活量からフローボリューム曲線を作図することと、
前記フローボリューム曲線から1つ以上の換気量パラメータを抽出することと、
前記換気量パラメータから特徴量を導出することと、
リスク評価を決定するために、特徴量にモデルを適用することと、によって前記リスク評価を決定することをさらに含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記複数のセンサがECGセンサを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記ECGセンサによる前記インピーダンス測定値から、心臓活動によって生成されたノイズを除去することをさらに含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記複数のセンサは、加速度計を含む、請求項88~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記加速度計による前記インピーダンス測定値から体動アーチファクトを除去することをさらに含む、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記1つ以上の換気量パラメータが、
呼気時間におけるピーク呼気流量までの時間、
呼気換気量に対するピーク呼気流量の体積、および
ピーク後の呼気流量曲線の傾き、からなる群から抜き出される、請求項88~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
患者の呼吸疾患をモニタリングするためのシステムであって、
前記患者に装着可能なモニタであって、
複数のセンサであって、それぞれが、前記患者の前記呼吸疾患に関する生理学的データを出力するように構成された複数のセンサと、
前記生理学的データを送信するように構成された第1のトランシーバと、を含む、前記患者に装着可能なモニタと、
前記第1のトランシーバから前記生理学的データを受信するように構成された第2のトランシーバを含む外部デバイスと、
分析プラットフォームであって、前記第2のトランシーバに連結されており、
前記呼吸疾患の事象を予測するために、前記第2のトランシーバから受信した前記生理学的データを分析するように構成された分析プラットフォームと、を備える、システム。
【請求項95】
前記複数のセンサが心拍センサと呼吸センサとを含む、請求項94に記載のシステム。
【請求項96】
前記複数のセンサが加速度計をさらに備える、請求項95に記載のシステム。
【請求項97】
前記複数のセンサがジャイロスコープをさらに備える、請求項96に記載のシステム。
【請求項98】
前記モデルは、患者に関する環境データを考慮する、請求項94~97のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項99】
前記モデルは、患者に関する人口統計学的データを考慮する、請求項94~98のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項100】
前記モデルが、収集された生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によって構成されている、請求項94~99のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項101】
前記分析プラットフォームが、前記事象を予測するとアラートデバイスにアラートを発するようにさらに構成されており、前記アラートデバイスが、人に注意喚起するように構成されている、請求項94~100のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項102】
前記モデルが、前記患者に該当する公衆衛生要因の入力情報を含む、請求項94~101のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項103】
前記公衆衛生要因が社会的健康決定要因を含む、請求項102に記載のシステム。
【請求項104】
前記分析プラットフォームが、前記患者の自宅の地理的位置に基づいて前記社会的健康決定要因を推定するようにさらに構成されている、請求項103に記載のシステム。
【請求項105】
前記公衆衛生要因が、前記患者と同様の患者コホート内の別の患者から集められたデータを含む、請求項102~104のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項106】
前記分析プラットフォームが、前記予測された呼吸イベントを受けて矯正動作を開始するようにさらに構成されている、請求項94~105のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項107】
前記複数のセンサは、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサを含む、請求項94~106のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項108】
前記分析プラットフォームが、
前記インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサからのインピーダンス測定値を肺活量と相関させることと、
前記肺活量からフローボリューム曲線を作図することと、
前記フローボリューム曲線から1つ以上の換気量パラメータを抽出することと、
前記換気量パラメータから特徴量を導出することと、
リスク評価を決定するために、特徴量にモデルを適用することと、によって前記リスク評価を決定するように構成されている、請求項107に記載のシステム。
【請求項109】
前記複数のセンサがECGセンサを含む、請求項108に記載のシステム。
【請求項110】
前記分析プラットフォームが、前記ECGセンサによる前記インピーダンス測定値から、心臓活動によって生成されたノイズを除去するようにさらに構成されている、請求項109に記載のシステム。
【請求項111】
前記複数のセンサは、加速度計を含む、請求項108~110のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項112】
前記分析プラットフォームが、前記加速度計による前記インピーダンス測定値から体動アーチファクトを除去するようにさらに構成されている、請求項111に記載のシステム。
【請求項113】
前記1つ以上の換気量パラメータが、
呼気時間におけるピーク呼気流量までの時間、
呼気換気量に対するピーク呼気流量の体積、および
ピーク後の呼気流量曲線の傾き、からなる群から抜き出される、請求項108~112のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項114】
患者の呼吸疾患をモニタリングするための装置であって、
前記患者の前記呼吸疾患に関する生理学的データを生成するための複数の手段と、
前記生理学的データを送信するための手段と、
前記呼吸疾患の事象を予測するために、前記送信するための手段から受信した前記生理学的データを分析するための手段と、を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、米国仮特許出願第62/881,330号(出願日:2019年7月31日)および米国仮特許出願第62/941,185号(出願日:2019年11月27日)に対する優先権および同出願の恩恵を主張する。本明細書中、同文献それぞれ全体を参考により組み込まれる。
技術分野
【0002】
本開示は、概して疾病検出システムに関し、より具体的には、喘息などの呼吸器疾患の常時監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
多くの人が、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患を患っている。例えば、喘息は、気道を狭めて呼吸を困難にする一般的な慢性の呼吸疾患である。加えて、喘息は、喘鳴、胸の締め付け、息切れ、咳などを引き起こし得る。喘息の原因となり得るのは、吸入物質に対する過敏で、気管支の気道を収縮させ、締め付ける。また、気道が腫れて粘液を分泌し、空気流をさらに阻み得る。喘息発作中は、命を脅かし得るほどにまで気道が狭まり得る。
【0004】
米国だけでも2500万人を超える人が喘息を患っており、そのうちの700万人が子供である。喘息には治療法がないが、吸入薬で管理され得る。中には、定期的な薬の服用によってほとんどの喘息症状を解消してしまう患者もいる。一般に、喘息治療は、日常的な予防治療と救急薬という2つのカテゴリに細分化され得る。救急薬は概して、気道を拡張して喘息発作時の呼吸のしやすさを改善するために気管支の平滑筋を速やかに弛緩させる気管支拡張薬である。日常的な予防治療の典型例としては、気道における腫れおよび粘液産生を低減し、それに応じて、トリガに対する患者の感受性を下げるステロイドなどの抗炎症剤が挙げられる。予防的な抗炎症剤は、喘息症状の抑制だけでなく、予防にも効果的である。
【0005】
喘息と診断されると、患者は、吸入デバイスによって自己管理され得る予防的な抗炎症剤を処方され得る。ただし、かかる治療法は、喘息を早期に検出できるかどうかにかかっており、現時点では、患者を常時監視して喘息発作を予測し、症状の発現に合わせて予防治療を実施することができない。そのため、医療提供者は、患者が自ら定期検診を受けに来るのを待つしかない。医療従事者は、聴診器を使って検診時に呼吸異常を検出するのが典型的である。そのため、差し迫った喘息発作が検出されずに重症化し、予防治療が手遅れになって救急薬が必要になる可能性が高まり得る。
【0006】
そこで、喘息などの呼吸疾患、障害、疾患を常時監視し、その状態を決定できるシステムが求められている。また、喘息の発作や増悪などの呼吸イベントを予測するために、呼吸数、心拍数、呼吸性状、呼吸音、換気量など複数の生理信号を常時感知できるモニタを含むシステムも必要とされている。加えて、呼吸の状態、障害、または疾患を24時間監視し得る使いやすい身体モニタを提供するシステムも必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Seppa, V.-P., Pelkonen, A. S., Kotaniemi-Syrjanen, A., Makela, M. J., Viik, J., & Malmberg, L. P. (2013). Tidal breathing flow measurement in awake young children by using impedance pneumography. J Appl Physiol, 1725-1731.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示された呼吸器疾患監視システムは、呼吸の状態、障害、または疾患に関連する連続的な信号測定値を提供する。この開示されたシステムは、夜間監視を可能にする。このシステムは、呼吸の状態、障害、または疾患をモニタリングすることに関連するデータを決定するための複数のタイプのセンサを有する使いやすいモニタを含む。このシステムは、かかるデータに基づいて呼吸器疾患の症状を決定し得、喘息発作などの呼吸イベントを予測し得る。
【0009】
開示された一例が、呼吸器疾患の症状を決定するためのシステムである。このシステムは、患者に装着されたモニタからデータを受信するように動作可能なトランシーバを含む。モニタは、複数のセンサを含み、その複数のセンサのそれぞれが、患者の呼吸に関する生理学的データを出力する。トランシーバには、患者の呼吸の状態、障害、または疾患の症状の発生を決定するために生理学的データを分析する分析プラットフォームが連結されている。
【0010】
このシステム例のさらなる実装形態においては、この複数のセンサが、心拍センサと呼吸センサとを含む。別の実装形態においては、このシステムが、トランシーバから生理学的データを受信し、その生理学的データを分析プラットフォームに送信するポータブルコンピューティングデバイスを含む。別の実装形態においては、呼吸疾患の症状の発生を決定する際に、分析プラットフォームが患者に関する環境データを分析する。別の実装形態においては、呼吸疾患の症状の発生を決定する際に、分析プラットフォームが、患者に関する人口統計データを分析する。別の実装形態においては、複数のセンサは、加速度計をさらに含む。別の実装形態においては、複数のセンサは、圧力センサをさらに含む。別の実装形態においては、症状が息切れである。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、圧力センサおよび加速度計から決定された呼吸努力と、呼吸センサから決定された呼吸数と、の組み合わせを用いて息切れを決定するように構成されている。別の実装形態においては、複数のセンサは、オーディオセンサをさらに含む。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、音声センサからのデータに基づいて、軽度の喘鳴と他の外来信号とを区別する。別の実装形態においては、分析プラットフォームが遠隔サーバで実行される。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、呼吸疾患の症状の発生を決定するために、生理学的データにモデルを適用するように構成されている。別の実装形態においては、このモデルが、収集した生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によって構成されている。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、その患者に該当する公衆衛生要因に基づいて症状の発生を決定する。別の実装形態においては、この公衆衛生要因が社会的健康決定要因を含む。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、患者の自宅の地理的位置に基づいて社会的健康決定要因を推定する。別の実装形態においては、公衆衛生要因が、その患者と同様の患者コホート内の別の患者から集められたデータを備える。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、患者の呼吸疾患の事象のリスク評価を決定するために生理学的データを分析する。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、呼吸イベントを予測するために、リスク評価を閾値と比較する。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、予測された呼吸イベントを受けて矯正動作を開始する。別の実装形態においては、この複数のセンサが、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサを含み得る。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサからのインピーダンス測定値を肺活量と相関させることと、肺活量からフローボリューム曲線を作図することと、フローボリューム曲線から1つ以上の換気量パラメータを抽出することと、換気量パラメータから特徴量を導出することと、リスク評価を決定するために、モデルを特徴量に適用することと、によってリスク評価を決定する。別の実装形態においては、この複数のセンサがECGセンサを含む。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、ECGセンサによるインピーダンス測定値から、心臓活動によって生成されたノイズを除去する。別の実装形態においては、この複数のセンサが加速度計を含む。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、加速度計によるインピーダンス測定値から体動アーチファクトを除去する。別の実装形態においては、1つ以上の換気量パラメータが、呼気時間におけるピーク呼気流量までの時間、呼気換気量に対するピーク呼気流量の体積、およびピーク後の呼気流量曲線の傾きからなる群から抜き出される。別の実装形態においては、このモデルが、収集した生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によって構成されている。
【0011】
開示された別例が、患者に装着可能な常時モニタリングデバイスである。このモニタリングデバイスは、患者に貼着され得る表面を有する筐体を含む。このモニタリングデバイスは複数のセンサを含み、その複数のセンサのそれぞれが、患者の呼吸の状態、障害、または疾患に関する患者の種々の生理学的データを常時感知する。メモリが、この生理学的データを記憶する。トランシーバが、感知されたデータを外部デバイスに送信する。
【0012】
このモニタリングデバイス例のさらなる実装形態においては、この複数のセンサが、心拍センサと呼吸センサとを含む。別の実装形態においては、呼吸センサがインピーダンス・プレチスモグラフィ・センサである。別の実装形態においては、このモニタが、電極パッド間の電圧を感知するように構成された1対の電極パッドを含む。別の実装形態においては、心拍センサが、この1対の電極パッドに連結されている。別の実装形態においては、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサが、この1対の電極パッドに連結されている。別の実装形態においては、このモニタが、低振幅の高周波電流を注入するためにインピーダンス・プレチスモグラフィ・センサが連結された第2の1対の電極パッドを含む。別の実装形態においては、筐体が、パッチ、リストバンド、ネックレス、およびベストからなる群の中の1つであるフォームファクタを有する。別の実装形態においては、複数のセンサは、オーディオセンサをさらに含む。別の実装形態においては、この複数のセンサが、加速度計とジャイロスコープとを含む。別の実装形態においては、この複数のセンサが、圧力センサをさらに備える。別の実装形態においては、筐体が、可撓性適合材料から製作される。
【0013】
別例が、患者の呼吸疾患をモニタリングするためのシステムである。このシステムは、患者に装着可能なモニタを含む。モニタは、複数のセンサを含み、その複数のセンサのそれぞれが、患者の呼吸疾患に関する生理学的データを出力する。モニタは、この生理学的データを送信するように構成された第1のトランシーバを含む。このシステムは、第2のトランシーバから生理学的データを受信するための第2のトランシーバを含む外部デバイスを含む。第2のトランシーバには、呼吸疾患の発生を決定するために、第2のトランシーバから受信した生理学的データを分析する分析プラットフォームが連結されている。
【0014】
このシステム例のさらなる実装形態においては、この複数のセンサが、心拍センサと呼吸センサとを含む。別の実装形態においては、外部デバイスがポータブルコンピューティングデバイスである。別の実装形態においては、呼吸疾患の症状の発生を決定する際に、分析プラットフォームが患者に関する環境データを分析する。別の実装形態においては、呼吸疾患の症状の発生を決定する際に、分析プラットフォームが、患者に関する人口統計データを分析する。別の実装形態においては、複数のセンサは、加速度計をさらに含む。別の実装形態においては、複数のセンサは、圧力センサをさらに含む。別の実装形態においては、症状が息切れである。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、圧力センサおよび加速度計から決定された呼吸努力と、呼吸センサから決定された呼吸数と、の組み合わせを用いて息切れを決定する。別の実装形態においては、複数のセンサは、オーディオセンサをさらに含む。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、音声センサからのデータに基づいて、軽度の喘鳴と他の外来信号とを区別する。別の実装形態においては、分析プラットフォームが遠隔サーバで実行される。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、呼吸疾患の症状の発生を決定するために、生理学的データにモデルを適用する。別の実装形態においては、このモデルが、収集した生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によって構成されている。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、呼吸疾患の呼吸イベントのリスク評価を決定するためにこの生理学的データを分析する。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、呼吸イベントを予測するために、リスク評価を閾値と比較する。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、予測された呼吸イベントを受けて矯正動作を開始する。別の実装形態においては、この複数のセンサが、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサを含み得る。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサからのインピーダンス測定値を肺活量と相関させることと、肺活量からフローボリューム曲線を作図することと、フローボリューム曲線から1つ以上の換気量パラメータを抽出することと、換気量パラメータから特徴量を導出することと、リスク評価を決定するために、モデルを特徴量に適用することと、によってリスク評価を決定するように構成されている。別の実装形態においては、この複数のセンサがECGセンサを含む。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、ECGセンサによるインピーダンス測定値から、心臓活動によって生成されたノイズを除去する。別の実装形態においては、この複数のセンサが加速度計を含む。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、加速度計によるインピーダンス測定値から体動アーチファクトを除去する。別の実装形態においては、1つ以上の換気量パラメータが、呼気時間におけるピーク呼気流量までの時間、呼気換気量に対するピーク呼気流量の体積、およびピーク後の呼気流量曲線の傾きからなる群から抜き出される。別の実装形態においては、このモデルが、収集した生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によって構成されている。別の実装形態においては、このシステムが、決定されたリスク評価に基づいて呼吸疾患の治療計画を修正する投薬ルールエンジンを含む。別の実装形態においては、この投薬ルールエンジンが、治療計画の一部を形成する薬の投与量を調整するように構成されている。別の実装形態においては、この投薬ルールエンジンが、治療計画の一部を形成する薬のタイプを調整するように構成されている。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、リスク評価に基づいてアラートを発する。別の実装形態においては、このシステムが、分析プラットフォームによって発せられたアラートを受信し、アラートを受信すると人に注意喚起するアラートデバイスを含む。別の実装形態においては、このアラートデバイスが、アラートを受信すると人を眠りから起こす。別の実装形態においては、このアラートデバイスがウェアラブルアラートデバイスである。
【0015】
別例が、患者の呼吸器疾患の事象を予測する方法である。患者に装着されたモニタの複数のセンサから、種々のタイプの呼吸関連生理学的データが収集される。呼吸疾患の事象を予測するためのモデルが適用される。このモデルは、複数のセンサから収集された生理学的データに基づく。
【0016】
この方法例のさらなる実装形態においては、この複数のセンサが、心拍センサと呼吸センサとを含む。別の実装形態においては、複数のセンサは、加速度計をさらに含む。別の実装形態においては、複数のセンサは、ジャイロスコープをさらに含む。別の実装形態においては、モデルは、患者に関する環境データを考慮する。別の実装形態においては、モデルは、患者に関する人口統計学的データを考慮する。別の実装形態においては、この方法が、収集された生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によってこのモデルを構成することを含む。別の実装形態においては、この方法が、事象を予測するとアラートデバイスにアラートを発することを含み、アラートデバイスは、人に注意喚起するように構成されている。別の実装形態においては、このモデルが、患者に該当する公衆衛生要因の入力情報を含む。別の実装形態においては、この公衆衛生要因が社会的健康決定要因を含む。別の実装形態においては、この方法が、患者の自宅の地理的位置に基づいて社会的健康決定要因を推定することを含む。別の実装形態においては、公衆衛生要因が、その患者と同様の患者コホート内の別の患者から集められたデータを備える。別の実装形態においては、この方法が、予測された呼吸イベントを受けて矯正動作を開始することを含む。別の実装形態においては、この複数のセンサが、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサを含み得る。別の実装形態においては、この方法が、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサからのインピーダンス測定値を肺活量と相関させることによってリスク評価を決定することをさらに含む。肺活量に基づいたフローボリューム曲線が作成される。このフローボリューム曲線から、1つ以上の換気量パラメータが抽出される。この換気量パラメータから、特徴量が導出される。リスク評価を決定するために、この特徴量にモデルが適用される。別の実装形態においては、この複数のセンサがECGセンサを含む。別の実装形態においては、この方法が、ECGセンサによるインピーダンス測定値から、心臓活動によって生成されたノイズを除去することを含む。別の実装形態においては、この複数のセンサが加速度計を含む。別の実装形態においては、この方法が、加速度計によるインピーダンス測定値から体動アーチファクトを除去することを含む。別の実装形態においては、1つ以上の換気量パラメータが、呼気時間におけるピーク呼気流量までの時間、呼気換気量に対するピーク呼気流量の体積、およびピーク後の呼気流量曲線の傾きからなる群から抜き出される。
【0017】
開示された別例が、患者の呼吸疾患をモニタリングするためのシステムである。このシステムは、患者に装着可能なモニタを含む。このモニタは、複数のセンサを有する。複数のセンサのそれぞれが、患者の呼吸疾患に関する生理学的データを出力するように構成されている。第1のトランシーバが、この生理学的データを送信するように構成されている。外部デバイスが、第1のトランシーバから生理学的データを受信するように構成された第2のトランシーバを含む。第2のトランシーバには、分析プラットフォームが連結されている。この分析プラットフォームは、呼吸疾患の事象を予測するために、第2のトランシーバから受信した生理学的データを分析する。
【0018】
このシステム例のさらなる実装形態においては、この複数のセンサが、心拍センサと呼吸センサとを含む。別の実装形態においては、複数のセンサは、加速度計をさらに含む。
【0019】
別の実装形態においては、複数のセンサは、加速度計をさらに含む。別の実装形態においては、複数のセンサは、ジャイロスコープをさらに含む。別の実装形態においては、モデルは、患者に関する環境データを考慮する。別の実装形態においては、モデルは、患者に関する人口統計学的データを考慮する。別の実装形態においては、このモデルが、収集した生理学的データおよび呼吸疾患結果データに基づいた機械学習によって構成されている。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、事象を予測すると、人に注意喚起するように構成されているアラートデバイスにアラートを発する。別の実装形態においては、このモデルが、患者に該当する公衆衛生要因の入力情報を含む。別の実装形態においては、この公衆衛生要因が社会的健康決定要因を含む。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、患者の自宅の地理的位置に基づいて社会的健康決定要因を推定する。別の実装形態においては、公衆衛生要因が、その患者と同様の患者コホート内の別の患者から集められたデータを備える。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、予測された呼吸イベントを受けて矯正動作を開始する。別の実装形態においては、この複数のセンサが、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサを含み得る。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、インピーダンス・プレチスモグラフィ・センサからのインピーダンス測定値を肺活量と相関させることによってリスク評価を決定するように構成されている。肺活量に基づいたフローボリューム曲線が作成される。このフローボリューム曲線から、1つ以上の換気量パラメータが抽出される。この換気量パラメータから、特徴量が導出される。リスク評価を決定するために、この特徴量にモデルが適用される。別の実装形態においては、この複数のセンサがECGセンサを含む。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、ECGセンサによるインピーダンス測定値から、心臓活動によって生成されたノイズを除去する。別の実装形態においては、この複数のセンサが加速度計を含む。別の実装形態においては、分析プラットフォームが、加速度計によるインピーダンス測定値から体動アーチファクトを除去する。別の実装形態においては、1つ以上の換気量パラメータが、呼気時間におけるピーク呼気流量までの時間、呼気換気量に対するピーク呼気流量の体積、およびピーク後の呼気流量曲線の傾きからなる群から抜き出される。
【0020】
上記の要旨は、本開示の各実施形態または各態様を示すことを意図していない。すなわち、上記の要旨は、本明細書中に記載の新規の態様および特徴のうちいくつかの例を示すものに過ぎない。上記の特徴および利点ならび本開示の他の特徴および利点は、本発明の実行のための代表的な実施形態および態様の以下の詳細な説明を添付の図面および添付の特許請求の範囲と共に読めば、容易に明らかになる。
【0021】
例示的実施形態に関する以降の説明を添付図面と併せて参照することにより、本開示に対する理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】患者の常時モニタリングデバイス例を含む、呼吸疾患、障害、および疾患を監視し、対応する症状を決定する常時監視システムのブロック図である。
図2図1のシステムの常時モニタリングデバイスの電子部品および他の要素を示すブロック図である。
図3】喘息などの呼吸器疾患の予測モデルを訓練する機械学習プロセス例を示す流れ図である。
図4図1の常時モニタリングデバイスからデータを集め、処理するルーチンの流れ図である。
図5A図1の常時モニタリングデバイスに搭載された種々のセンサの出力用に収集された信号データ例を示すグラフである。
図5B図1の常時モニタリングデバイスに搭載された種々のセンサの出力用に収集された信号データ例を示すグラフである。
図5C図1の常時モニタリングデバイスから分析された分析データに由来する、体動アーチファクトを含む収集信号データ例を示すグラフである。
図5D図1の常時モニタリングデバイスから分析されたデータから心原性ノイズを除去する様子を表すグラフである。
図6図1の常時モニタリングデバイスからデータを収集するシステムにおけるデータの流れを示すブロック図である。
図7図1の常時監視システムを組み込み、サポートする医療システムのブロック図である。
図8A図1のシステムで使用する常時モニタリングデバイス例を示す斜視図である。
図8B図8Aのモニタリングデバイス例の回路図である。
図8C図8Aのモニタリングデバイス例の内部部品の上面斜視図である。
図8D図8Aのモニタリングデバイス例の内部部品の底面斜視図である。
図9図8Aのモニタリングデバイス例の部品のブロック図である。
図10A図8Aのモニタリングデバイス例を適用するための接着性付帯部品例を貼着する前の斜視図である。
図10B】患者の肌に貼着する前に、図10Aの接着性付帯部品の接着剤を図8Aのモニタリングデバイスに貼着する際の連続的なステップを示す。
図11】モニタリングデバイスからのデータの収集およびそのデータに対する予測分析の一例を示す処理フロー図である。
図12】フローボリューム曲線と、かかる曲線から抽出され得る換気量パラメータと、を表す2つのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示には、種々の変形および代替形態がある。図面に例示したいくつかの代表的な実施形態について、本明細書において以下に詳述する。ただし本発明は、開示された特定の形態に限定されることを意図してはいないものと理解すべきであり、本開示はむしろ、添付の請求項によって定義された本発明の精神および範囲内にあるすべての変形、均等物、および代替物を網羅するものである。
【0024】
本発明は、数多くの異なる形態で具現化することできる。代表的な実施形態を図面に示しており、本明細書において以下に詳述する。本開示は、本開示の原理の一例または例示であり、本開示の広範な態様を、例示された実施形態に限定することを意図するものではない。そのため、例えば「要約」、「発明の概要」、「発明を実施するための形態」の各節で開示されていても、請求項に明記されていない要素や制限は、単独でも集合的にも、暗示、推論、または他の方法によって請求項に組み込むべきでない。本明細書中では、特に断りがない限り、単数形は複数形を含み、その逆もある。「~を含む」という語は、「~を含むがそれ(ら)に限定されない」を意味する。さらに、本明細書においては、「概ね」、「略」、「実質的に」、「約」といった近似を表す語を、例えば、「ちょうど」、「付近」、「前後」、「~の3~5%以内」、「許容可能な製造公差の範囲内」、またはそれらの任意の論理的な組み合わせを意味する目的で使用することできる。
【0025】
本開示は、患者の喘息など、呼吸の状態、障害、または疾患をモニタリングするための常時監視システムに関するものである。このシステムは、患者に装着される常時稼働モニタを有する。このモニタは、患者から複数の生理学的読取値を取得するセンサを有する。この読取値から得られたデータは、外部デバイスに送信され得る。このシステムは、呼吸の状態、障害、または疾患の症状を示すデータを分析および決定できる機械学習エンジンを含む。このシステムは、データを使用して、喘息発作などの呼吸イベントを予測し得る。患者またはその家族は、予防措置をとれるように注意喚起され得る。
【0026】
図1は、胸部に常時呼吸モニタリングデバイス110(モニタ)が装着された患者100を示している。下記のとおり、モニタ110は、患者100の身体において、患者100から送られてきた関連する生理学的信号を感知できる任意の箇所に適用することができる。本実施例においては、呼吸モニタ110が、データ送信用の送信機と、呼吸関連信号を感知するためのセンサ(複数可)と、患者100に装着するための接着剤と、を含む。モニタ110は定期的に交換され得るが、小型なので、監視期間中は患者100に装着したままであり得る。モニタ110は、再利用可能でもあり得る。そのため、モニタ110は、呼吸の状態、障害、または疾患をモニタリングするために、患者から連続的なデータを取得し得る。モニタ110が感知したデータは、スマートフォンなどのリモート外部ポータブルデバイス112に送信され得る。ポータブルデバイス112は、インターネットやクラウドなどのネットワークを通じて外部データサーバ114と通信し得る。データサーバ114は、下記のとおり、呼吸イベントを予測することに加え、呼吸の状態、障害、または疾患の症状を決定することにも関連するデータ分析および機械学習のためのアプリケーションを実行し得る。
【0027】
モニタ110は、電源、トランシーバ、メモリ、コントローラ、センサインターフェース、およびセンサエレクトロニクスなどの電子部品を格納する平坦状の保護筐体を概して含む。本実施例においては、この筐体が、ユーザの肌に合わせて撓むように、可撓性シリコンなどの材料から製作されている。センサインターフェース領域(複数可)が、患者の肌と接触するように配置され得る。かかるセンサ接触領域は、ECG電極パッド、インピーダンス電極パッド、音響パッド、またはPPG源および検出器を含み得る。ある電極は、複数のセンサによって使用され得る。モニタ110は、パッチ、リストバンド、ネックレス、ベストなど、種々のウェアラブルフォームファクタを有し得る。
【0028】
図2は、モニタ110、ポータブルデバイス112、および外部サーバ114の電子部品のブロック図である。モニタ110は、コントローラ200と、センサインターフェース202と、トランシーバ204と、メモリ206と、電池208と、を含む。センサインターフェース202は、音声センサ210、心拍センサ212、呼吸センサ214、接触圧力センサ(歪みゲージ)216、および任意選択の加速度計218と通信する。
【0029】
トランシーバ204は、図1のモニタ110とリモート外部ポータブルデバイス112との間でのデータ交換を可能にする。本実施例におけるトランシーバ204は、Wi-Fi(IEEE 802.11)、Bluetooth(登録商標)、他の無線周波数、赤外線(IR)、GSM(登録商標)、CDMA、GPRS、3G、4G、W-CDMA、EDGEまたはDCDMA200および同様の技術を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において公知である任意の適切な無線接続技術を組み込み得る無線リンクである。
【0030】
メモリ206は、本明細書に記載されているモニタ110の機能を実装するようにコントローラ200を構成するためのコンピュータモジュールまたは他のソフトウェアを記憶し得る。加えて、メモリ206は、モニタ110と関連付けられた様々なセンサによって収集されたデータを記憶し得る。このデータは、関連付けられた長期記憶用デバイスに継続的に送信されたり、別のデバイスをモニタ110に接続することによってダウンロードされるまで、メモリ206に記憶されたりし得る。
【0031】
本実施例においては、音声センサ210が、肺からの音を検出する。かかる音は、呼吸の状態、障害、または疾患の症状を示し得るとともに、発生する呼吸イベントを予測し得る。例えば、喘鳴や咳の音は、将来の喘息発作を予測し得る。かかる予測は、心拍数などのデータと組み合わせた音声データからも行われ得る。本実施例においては、心拍センサ212が、2本リードの心電図(ECG)センサである。本実施例においては、呼吸センサ214が、2本の電圧リードと2本の電流リードとを有するインピーダンスプレチスモグラフィ(IPG)センサである。モニタ例110は、オプションの圧力センサ216と任意選択の加速度計218とを含む。本実施例においては、異なるセンサ210、212、214、216、および218からのデータが、呼吸の状態、障害、または疾患の症状を決定し、呼吸イベントを予測する目的で分析され得る。例えば、圧力センサ216および加速度計218からのセンサデータは、肺の換気量を決定するのに使用され得る。圧力センサ216からの圧力データは、呼吸努力を測定するのに使用され得る。換気量と呼吸努力とを勘案することにより、喘息発作などの呼吸イベントが予測され得る。
【0032】
他のセンサは、モニタ110の一部であり得る。かかるセンサとしては、ドップラーレーダモーションセンサ、温度計、体重計、またはフォトプレスチモグラフィ(PPG)センサなどがあり、いずれも、患者100から測定されたさらなる生理学的データ(それぞれ、生体運動、体温、体重、酸素飽和度)を提供するように構成されている。さらなるセンサが、さらなるタイプのデータを提供するのに使用され得る。そのデータは、呼吸の状態、障害、または疾患の症状を決定し、呼吸イベントを予測するために、単独で、または他のタイプのデータと一緒に分析され得る。さらなるセンサまたはセンサ210、212、および214は、心拍数変動(HRV)の監視など、他の目的でも使用され得る。また、環境センサ130などの外部センサから取得されるデータも存在し得る。かかる環境センサ130は、予測分析を支援するために、外気温度、湿度、または花粉数などのデータをポータブルデバイス112またはサーバ114に送信し得る。
【0033】
リモート外部ポータブルデバイス112は、モニタ110からデータを収集、分析、および表示するためのアプリケーションを実行し得るスマートフォンやタブレットなどのポータブルコンピューティングデバイスであり得る。リモート外部ポータブルデバイス112は、CPU 230と、GPSレシーバ232と、トランシーバ234と、メモリ236と、を含み得る。メモリ236は、データを収集および分析するためのアプリケーション240を含み得る。メモリ236はまた、モニタ110から受信した収集データ242を記憶する。呼吸の状態、障害、または疾患の症状を決定し、呼吸イベントを予測する際に使用され得る患者固有のデータや環境データなどの付加データもメモリ236に格納され得る。付加データは、アプリケーション240によって分析され、まとめられ得る。リモート外部ポータブルデバイス112は、他のモニタおよび対応する患者からの「ビッグデータ」を含むデータベース250にアクセスし得る。患者アプリケーション240は、患者またはその家族に、喘息発作の予測など、呼吸イベントを制御するための実行可能な洞察および推奨を提供するように動作可能であり得る。
【0034】
また、サーバ114もデータベース250にアクセスし得る。サーバ114は、外部ポータブルデバイス112から受信したデータを分析し、患者の呼吸疾患をモニタリングするように機械学習によって構成されている分析プラットフォーム252の一部として、1つ以上の分析アルゴリズムを実行し得る。サーバ114はまた、収集されたデータから症状を決定すること、および呼吸イベントを予測することの両方を行うための分析アルゴリズム(複数可)を構成する機械学習モジュール254を実行し得る。
【0035】
呼吸の状態、障害、または疾患をモニタリングするためのアルゴリズム(複数可)は、センサ210、212、および214からのデータ、またはセンサ210、212、および214からのデータを改良したり組み合わせたりした結果として作り出されるデータを分析し得る。上記のとおり、このアルゴリズムは、呼吸の状態、障害、または疾患の症状を決定する。このアルゴリズムは、患者アプリケーション240によって実行され得るか、分析プラットフォーム252によって実行され得る。分析の結果は、ポータブルデバイス112上のアプリケーション240によって生成されたインターフェースを介して、患者またはその家族に直接提供され得る。アプリケーション240はまた、服薬、医療従事者への電話、治療努力の中止など、提案された矯正動作を、患者またはその家族に提供し得る。当然のことながら、これらの決定はサーバ114にも提供され得る。
【0036】
下記のとおり、呼吸イベントを予測するための予測アルゴリズムも、サーバ114によって実行され得る。かかるアルゴリズムは、ポータブルデバイス112上のアプリケーション240によって実行されるアルゴリズムをさらに分析し得る。予測分析は、患者またはその家族の許可に基づいて、医療提供者など他の関係者に提供され得る。予測分析は、患者のための行動を策定するなど種々の目的で使用され得る。かかる行動は、アルゴリズムによって予測された呼吸イベントの深刻度に基づいて投薬を推奨すること、投薬の頻度を増減させること、または活動の変更に対して助言すること、を含み得る。
【0037】
図1に示すとおり、親などの家族120は、ポータブルデバイス112を操作して、患者100に関する情報および推奨事項を受信し得る。例えば、家族120は、患者100の状態に関するアラートを受信し得る。代替として、家族120は、スマートウォッチ、ブレスレット、ネックレス、またはヘッドバンドなど、ポータブルデバイス112またはサーバ114のどちらかからアラートを受信するネットワーク接続型ウェアラブルアラートデバイス122を有し得る。例えば、呼吸イベントが、ポータブルデバイス112によって予測または検出されるか、サーバ114によって実行されるアルゴリズムによって決定されると、家族120にアラートが発せられ得る。このアラートは、家族120と関連付けられたポータブルデバイス112に送信され得る。代替または追加で、家族120がアラートをより確実に受信するために、アラートがネットワーク接続型ウェアラブルアラートデバイス122に送信され得る。これにより、家族120が、特に夜間に患者100の状態に関する通知を、ネットワーク接続型ウェアラブルアラートデバイス122上で動作するアプリケーションを介して、より確実に受けられるようになる。この通知またはアラートは、家族120に近接しており、視覚、聴覚、触覚または他の同様の手段によって家族に注意を喚起するように構成されているスマートホーム機器またはモノのインターネット(IoT)ネットワーク接続型機器(例えば、照明、目覚まし時計、乳児モニタ、CPAPデバイス、スマートマットレス)によっても受信され得る。
【0038】
そのため、外部ポータブルデバイス112またはサーバ114のどちらかにおいて動作するアルゴリズムは、呼吸の状態、障害、または疾患の症状を決定し得、呼吸イベントを予測し得る。例えば、このアルゴリズムは、呼吸努力と呼吸数との組み合わせを用いて息切れの症状を決定し得る。呼吸努力は、圧力センサ216の読取値および加速度計218から取得される胸部移動の強度、または呼吸センサ214から決定され得る。症状の別例が、呼気に対する吸気の比率の変化を決定することであり、これは、喘息発作などの呼吸イベントの早期指標となり得る。喘息発作に至る前に、呼気に対する吸気の比率が低下する。つまり、炎症を起こした肺から出す空気を増やすために、吸気が短くなり、患者は、呼気の時間を長くする傾向がある。呼気に対する吸気の比率は、音声センサ210および呼吸センサ214を用いて測定され得る。
【0039】
また、これらのアルゴリズムは、呼吸イベントを予測するために、肺活量の変化を決定し得る。肺活量の変化は、音声信号または心拍数データ、もしくは呼吸データに関連し得る。肺活量は、音声センサ210を使用せず、心拍数と呼吸データだけを用いて測定され得る。肺活量の変化は、IPGセンサ214によって決定されたインピーダンスの変化と相関し得る。
【0040】
IPGセンサ214からのインピーダンス信号が、腹式呼吸を決定するのに用いられ得る。腹式呼吸は、上胸部の動きに比べて肺の気道が狭まり、パターンが非同期になっていることを示す。そのため、腹式呼吸は、気道や肺の炎症やうっ血のために患者が呼吸に苦労している合図である。このアルゴリズムは、心拍センサ212からのデータに基づいて心拍数変動も決定し得る。心拍数は、自律神経の目安として相関性があり得る。心拍数変動は、交感および副交感神経系の状態を表す目安であり、不安およびストレスの度合いを測定するのに利用できる。気管支拡張剤を使用すると心拍数が増えることが多いため、心拍数は、薬の服用状況を検出するのに使用することもできる。
【0041】
これらのアルゴリズムは、動き、心拍数、および呼吸の組み合わせを用いて、夜間覚醒など、睡眠の質を示す指標も決定し得る。これらのアルゴリズムは、動きを示す加速度計218からの読取値、呼吸センサ214からの呼吸数データ、および心拍センサ212から決定された心拍数の変動を相関させ得る。
【0042】
また、これらのアルゴリズムは、軽度の喘鳴と他の外来信号とを区別するために、音声センサ210から出力された音声信号を分析し得る。そのため、これらのアルゴリズムは、喘鳴の強さとタイミング(吸気または呼気)を決定することができる。喘鳴音の強度およびタイミングは、状態、疾患または微恙の症状有る場合がある。かかる音の強さおよびタイミングの変化は、呼吸イベントを予測する目的でも使用され得る。
【0043】
これらのアルゴリズムは、重度の喘息の合図である「サイレントチェスト」を拾うために、複数のセンサ信号を組み合わせ得る。サイレントチェスト状態とは、音声センサ210が信号を一切拾わないにもかかわらず、センサ212および214からの心拍数や呼吸数などの他のバイタルサインが非常に高く、変動が大きい状態のことである。これらの信号の組み合わせにより、このアルゴリズムは、重度の喘息発作などの呼吸イベントの発生を決定または予測することができる。さらに、このアルゴリズムは、複数のセンサを使用して、センサ210、212、および214から収集された音声、心拍数、および呼吸データからのマルチセンサアプローチに基づき、軽度の喘息から重度の喘息まで、喘息の全範囲での呼吸疾患の症状を決定し得る。
【0044】
これらのアルゴリズムおよびモニタ110は、吸入器などの治療デバイスと組み合わせられ得る。これらのアルゴリズムは、例えば、吸入器の使い方が適切かどうかを検出して、薬を正しく服用させることができ得る。このアルゴリズムは、例えば、Reciprocal Labs社の米国特許第9,550,031号に記載されているアドヒアランスモニタからの入力情報を吸入器と組み合わせて、吸入器のクリックのタイミングを、モニタ110のセンサからの呼気/吸入と比較できるようにし得る。
【0045】
モニタ110のデータ出力情報も、モニタ110に対して外部である他のセンサからの入力情報など、他のソースから収集したデータと組み合わせられ得る。例えば、これらのアルゴリズムは、GPS受信機232またはポータブルデバイス112の内蔵GPSセンサから取得された位置情報に基づいた、当地の気象条件に関するデータと相関性のある環境トリガへの曝露についてのアラートを検討し得る。
【0046】
決定された症状の組み合わせにより、喘息発作などの呼吸イベントの発生確率など、個別化されたリスク評価が生成され得る。かかるリスク評価は、患者の履歴や臨床上の推奨事項など、手動で入力されたデータも考慮し得る。このリスク評価はその後、患者、患者の家族、または医療従事者にリスク評価を出力する目的で使用され得る1組の範囲に変換することができる。得られた範囲は、例えば、ポータブルデバイス112上のユーザインターフェースに表示され得る。
【0047】
モニタ110および同様の患者の他のモニタから収集されたこのデータは、同様の患者が同様の環境に対して取り得る対応、治療計画、および同様の患者において呼吸イベントを誘発する要因の予測指標となり得る。分析プラットフォーム252は、モデルを使用して、種々のデータ入力を基に呼吸イベントを予測する。このモデルは、既知のモデルであり得るか、機械学習モジュール254によって構成されたモデルであり得る。予測データは、喘息発作など緊急性の高い呼吸イベントの場合に、システムが患者またはその家族にアラートを発せられるようにする目的で使用され得る。この予測データは、治療計画を評価および変更するため、またはかかる呼吸イベントに対する予防的な投薬を推奨するために、医療提供者に提供され得る。
【0048】
図3は、呼吸イベントを予測するために、例えばニューラルネットワークなどの呼吸疾患モデルを訓練するためのルーチン例である。このルーチン例は、図1のサーバ114によって実行される機械学習モジュール254の一部であり得る。本実施例においては、図3のルーチンが、センサからのデータと、人口統計データおよび患者の呼吸疾患に基づく結果データなど、患者固有のデータに基づいた教師なし学習である。このルーチンは、多数の患者に装着されたモニタ用のモニタ110のセンサ210、212、および214などのセンサのそれぞれから、センサデータを入力情報として収集する(300)。このルーチンはその後、人口統計データなど、対応する患者固有データをさらなる入力情報として収集し、対応する患者の呼吸イベントなどの結果データを出力情報として収集する(302)。このルーチンは、収集されたデータを基に、呼吸イベントを予測する潜在的な1組の入力因子を決定する(304)。このルーチンはその後、これらの入力因子に重みを割り当てる(306)。このルーチンはその後、この重み付けされた入力因子を基に、出力された呼吸イベントを予測しようとする(308)。このルーチンはその後、予測の精度を評価する(310)。精度が所望のレベルを満たしていない(312で「いいえ」の)場合、このルーチンは重みを調整し(314)、予測ステップ(308)に戻る。精度が所望のレベルを満たしている(312で「はい」の)場合、このルーチンはその重みを記憶し(316)、得られたモデルは、モニタ110などのモニタからの入力センサ信号に基づいた分析を提供するために展開され得る。
【0049】
このようにして、本実施例におけるニューラルネットワークに、モニタ110などのモニタによって患者の各々から収集された呼吸関連データが提供され得る。加えて、患者固有データが、ポータブルデバイス112などの患者コンピューティングデバイスで行われた問い合わせから収集されたり、電子医療記録データベースからインポートされたりし得る。モニタ110などのモニタから収集されたデータに基づいて、さらなる情報が記憶され得る。加えて、人口統計情報、医療履歴、遺伝子構造など、他の患者についての患者固有データが、ニューラルネットワークに提供され得る。
【0050】
このセンサ情報は、受信したセンサデータに基づいてパターンを決定し得るニューラルネットワークによって処理され得る。加えて、他の要素もこのモデルに提供され得る。また、ニューラルネットワークは、地理的位置、天候、医療履歴、および環境要因など、呼吸疾患、疾患、または障害に関する患者の人口統計に関するデータに基づいてパターンを決定し得る。加えて、ニューラルネットワークは、呼吸イベントの頻度および重症度に対する投薬および治療の効果を示すパターンを決定することができ得る。
【0051】
ニューラルネットワークがパターンを確立し、モデルを作成したら、モニタ110によって収集されたデータ、およびその患者の位置データや患者固有のデータなど他の情報が、ニューラルネットワークによって処理され得る。したがって、ニューラルネットワークは、複数のタイプのデータに基づいて、呼吸疾患、疾患、または障害の症状を決定し、呼吸イベントを予測するモデルを提供し得る。この出力データは、医療従事者、患者の家族、または患者により、予防措置または治療の指針として利用され得る。例えば、アプリケーションが、特定の患者に対する呼吸イベントの高リスク要因を示すレポートを作成するのにこの出力データを使用し得る。かかるレポートは、外部ポータブルデバイス112に送られたり、別の方法で患者に伝えられたりし得る。
【0052】
例えば、ニューラルネットワークは、特定の環境または箇所が、呼吸疾患、疾患、または障害を悪化させたり、呼吸イベントを引き起こしたりする可能性が高いと決定し得る。例えば、患者が新しい箇所に移動しているとする。患者が目的地に到着すると、関連付けられた外部ポータブルデバイス112が、ニューラルネットワークに入力するための位置データをサーバ114に送り得る。その結果、ニューラルネットワークはその後、同様の患者が、その地域や同様の条件下でかかる事象を経験したことから、呼吸イベントが発生する可能性が高いと決定し得る。このモデルは、モニタ110などのモニタおよび他のソースからの新しい入力データ、ならびに発生した呼吸症状によって常時更新され得る。よって、分析プラットフォーム252の利用拡大により、モデルの高精度化が可能になり得る。
【0053】
図4は、図2に示すシステムにおけるデータの収集および分析のためのルーチン例である。このルーチンはまず、モニタ110からセンサデータを収集する(400)。収集されたセンサデータは、経時的な肺音の音声信号、経時的な心拍数、または経時的な呼吸数などの要約形式であり得る。アクチメトリ、インピーダンスプレチスモグラフィ、または温度など、1つ以上のセンサ出力から、さらなるデータが導出される。このルーチンは、医療記録データベースから患者固有データを収集する(402)。このルーチンはその後、湿度、高度、花粉数などの関連環境データを収集する。(404).かかる環境データは、モニタ110またはポータブルデバイス112のどちらかにあるデータベースまたはセンサから取得され得る。
【0054】
この関連データはその後、呼吸疾患モデルに入力される(406)。このモデルは、図3の機械学習プロセスによって決定された重み付けに従って、この関連データを評価する。このモデルは、呼吸イベントのリスク評価を出力する(408)。このルーチンはその後、リスク評価が所定の閾値を超えたかどうかを判定する(410)。リスク評価が所定の閾値を超えていない(410で「いいえ」の)場合には、このルーチンが引き続きデータを収集する(400)。
【0055】
リスク評価が所定の閾値を超えた(410で「はい」の)場合、つまり呼吸イベントが予測された場合には、このルーチンが、その予測に至った分析の元となった異常データを記憶する(412)。この異常データは、さらなる分析または処置のために、医療従事者または他のアプリケーションに転送され得る。この異常データは、患者健康記録に追加されることもある。このルーチンはその後、矯正動作を開始する(414)。矯正動作は、患者もしくはその家族、または医療従事者へのアラートを含み得る。
【0056】
図3図4の流れ図は、呼吸イベントを予測するためにデータを収集および分析するための機械可読命令例を表している。本例において、機械可読命令は、以下によって実行されるアルゴリズムを含む:(a)プロセッサ、(b)コントローラ、および/または(c)1つ以上の他の適切な処理デバイス(単数または複数)。アルゴリズムは、有形媒体(例えば、フラッシュメモリ、CD-ROM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードドライブ、デジタルビデオ(バーサタイル)ディスク(DVD)または他のメモリデバイス)上に保存されたソフトウェア中に埋設され得る。しかし、当業者であれば、アルゴリズム全体および/またはその一部を、プロセッサ以外のデバイスによって実行しかつ/またはファームウェアまたは専用ハードウェア中に周知の様態で埋設してもよい(例えば、これは、特定用途向け集積回路[ASIC]、プログラマブル論理デバイス[PLD]、フィールドプログラマブル論理デバイス[FPLD]、フィールドプログラマブルゲートアレイ[FPGA]、個別論理によって実行され得る)ことを理解する。例えば、インターフェースのコンポーネントのうちいずれかまたは全てを、ソフトウェア、ハードウェアおよび/またはファームウェアによって実行することができる。また、フローチャートによって示される機械可読命令のうちいくつかまたは全てを手動で実行してもよい。さらに、例示的なアルゴリズムについて図3図4中に示すフローチャートを参照して述べているが、当業者であれば、例示的な機械可読命令を実行するための他の多数の方法も用いられ得ることを容易に理解する。例えば、ブロックを実行する順序を変更しかつおよび/または記載のブロックのうちいくつかを変更、除去または組み合わせてもよい。
【0057】
図5Aは、図2の種々のセンサ210、212、および214の出力に基づくモニタ110からの波形例であって、重度の喘息発作の発症などの呼吸イベントを予測するためにアルゴリズムによって使用され得る波形例を示している。図5Aの波形に示されたデータは、複数の異なるセンサデータに基づいて呼吸イベントを予測する例である。図5Aは、初期段階の肺の音声波形500、初期段階の心拍波形510、および初期段階の呼吸波形520を示している。初期段階の出力波形500、510、および520は、呼吸疾患、疾患、または障害の症状を決定するために、上記のルーチンにより、組み合わせて使用され得る。センサ210、212、および214の出力の波形データは、ポータブルデバイス112などの外部クライアントデバイスが取り出せるようにモニタ110に記憶されており、ポータブルデバイス112はその後、分析ルーチンを実行するサーバ114などのサーバにそのデータを送信する。
【0058】
本実施例においては、初期段階の肺の音声波形500が、肺からの喘鳴音を示すピーク502および504を示している。後期段階の肺の音声波形530は、音声信号が欠落しており、重度の喘息発作を示す「サイレントチェスト」の可能性を表している様子を示している。初期段階の心拍波形510は、比較的短い一貫したピークを示している。対照的に、後期段階の心拍波形540では、拍動が大きく、心拍の変動が大きいことから、重度の喘息発作によるストレスの指標である交感神経系の活動が多いことがわかる。初期段階の呼吸波形520は、ピーク間の大きさの変動が比較的小さいことを示している。対照的に、後期段階の呼吸波形550では、大きなピーク間の変動が大きいことから、肺の気道が狭いために患者が呼吸に苦労していることがわかる。後期段階の波形530、540、および550のデータの組み合わせにより、アルゴリズムが喘息発作の発症をより正確に予測することができ得る。このデータにより、発作の深刻度の決定も可能となり得、より高度な対応が可能となり得る。
【0059】
図5Bは、音声波形例560である。上記のとおり、この学習アルゴリズムは、呼吸イベントを予測するために、種々の信号を相関させ得る。例えば、この学習アルゴリズムは、具体的なシグネチャ562および564がそれぞれ喘鳴音および咳音を表すと決定し得る。シグネチャ562および564は、呼吸障害の症状と相関し得る。そのため、このアルゴリズムは、単一のタイプのデータのみ、または単一のタイプのデータを他の異なるタイプのデータと組み合わせて呼吸イベントを予測することもし得る。
【0060】
呼吸数および肺活量を測定するために、他の分析も実行され得る。例えば、肺活量はインピーダンス測定値と相関され得る。以下に詳述するとおり、肺活量に対する呼吸流量を図式化することによって作図されるフローボリューム曲線からパラメータが決定され得る。
【0061】
図5Cは、常時モニタリングデバイス110から分析されたデータに由来する体動アーチファクトを含む収集信号データ例を示すグラフである。本実施例においては、インピーダンスデータ570が、図2の呼吸センサ214から取得される。インピーダンスデータ570は、加速度計218などの加速度計によって検出された体動によって生成される体動アーチファクトを除去するように処理され得る。特定のピーク572は、インピーダンスデータ570の分析において無視され得る体動を示している。
【0062】
図5Dは、常時モニタリングデバイス110から分析されたデータから心原性ノイズを除去する様子を表すグラフである。本実施例においては、図2のセンサ214から取得されたインピーダンスデータが、トレース580として図式化されている。このインピーダンスデータは、心拍センサ212などのECGセンサによって検出された心臓活動によって生成されたノイズを除去するように処理され得る。このようにして、インピーダンス波形580の特定のピークが、心拍センサ212によって検出される心原性ノイズを最小化するために、修正されたトレース582にフィルタリングされ得る。一実装形態においては、ECGセンサからのRピークがトリガとして使用され得る。
【0063】
図6は、患者100などの患者の呼吸疾患、疾患、または障害をモニタリングするためのシステム600におけるデータフローのブロック図である。図6に示すとおり、モニタ110からのデータが、ポータブルデバイス112で実行されるアプリケーションによって収集される。さらなる患者固有の医療情報または人口統計情報が、患者またはその家族120によって手動でポータブルデバイス112へと入力され得る。かかる情報は、医療記録データベースからも取得され得る。ポータブルデバイス112は、上記のとおり、収集されたデータに基づく情報を、種々のインターフェースで患者またはその家族に提供し得る。
【0064】
ポータブルデバイス112は、モニタ110からの収集データを直接送信し得、かつ/またはインターネットやクラウドなどのネットワークを介して、サーバ114などのサーバ上で実行される分析プラットフォームに分析データを送信し得る。上記のとおり、この分析プラットフォームは、呼吸疾患、疾患、または障害の症状と、呼吸イベントに関する予測分析データと、を提供し得る。この出力は、医療提供者システム610に送信され得るデータレポートの形態で行われ得る。医療提供者システム610は、さらなる洞察を、患者またはその家族に直接提供し得るか、医療従事者620に提供し得る。本実施例においては、医療従事者620が、吸入器などの治療デバイスに加え、抗炎症剤などの予防薬も患者100に発送し得る供給システム630から予防薬を処方し得る。
【0065】
いくつかのインターフェースが、患者デバイス112に表示され得る。これらのインターフェースには、決定された症状および呼吸イベントのリスク評価が表示され得る。例えば、あるインターフェースには、交通信号システムが表示され得、収集されたデータに基づき、緑は通常リスク、橙はリスクの増大、赤は高リスクを示す。このように、インターフェース例が情報をわかりやすく提供して、患者100の家族に安心感を与え得る。他のインターフェースでは、患者またはその家族が医療従事者に連絡を取ることや、分析されたデータを医療従事者に送ることができ得る。
【0066】
図7は、図1のモニタ110など、装着されたモニタを有する患者からデータを取得するための医療システム例800のブロック図である。ヘルスケアシステム800は、データサーバ114、電子医療記録(EMR)サーバ814、健康または在宅医療プロバイダ(HCP)サーバ816、外部ポータブルデバイス112、および図1のモニタ110を含む。本実施例においては、ポータブルデバイス112およびモニタ110が患者100と共存している。システム800において、これらのエンティティは全て、広域ネットワーク140(例えば、インターネット)へ接続されかつ広域ネットワーク830を介して相互通信するように構成される。広域ネットワーク830への接続は、有線型であってもよいし、無線型であってもよい。EMRサーバ814、HCPサーバ816、およびデータサーバ114は全て、別の場所における別個のコンピューティングデバイス上において実行され得、あるいは、これらのエンティティのうち2つ以上の任意の部分的組合せが、同一コンピューティングデバイス上において共に実行され得る。
【0067】
ポータブルデバイス112は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータなどのデバイスであり得る。ポータブルデバイス112が、広域ネットワーク830を経て、患者100とシステム800の遠隔所在エンティティとの間を仲介するように構成されている。図7の具現例において、この仲介は、ポータブルデバイス112上において実行するソフトウェア・アプリケーション・プログラムまたはアプリケーション240により、達成される。患者プログラム240は、「患者アプリ」と称される専用アプリケーションであってもよいし、あるいは、健康プロバイダまたは在宅医療プロバイダによって提供されるウェブサイトと対話するウェブブラウザであってもよい。代替として、モニタ110は、ローカルの有線ネットワークや、Bluetooth(登録商標)などのプロトコルに基づく無線ネットワーク(非図示)を介してポータブルデバイス112と通信し得る。システム800は、それぞれのモニタ822およびポータブルデバイス824を通じてデータを提供する他の患者820を含み得る。システム800内の患者は全員、データサーバ114によって管理され得る。
【0068】
上記のとおり、モニタ110および/またはポータブルデバイス112からのデータは、データサーバ114上の分析プラットフォーム252を介して呼吸イベントを予測するために収集され得る。先述のとおり、親120などの家族が、ポータブルデバイス112と同様のネットワーク接続型ウェアラブルアラートデバイス122を介して、患者100についてのアラートを受信し得る。代替として、家族120は、ポータブルデバイス112またはデータサーバ114からアラートを受信するためにアラートデバイス122を装着し得る。分析プラットフォーム252は、症状を決定し、呼吸イベントを予測するために、図4のルーチンを使用して、収集されたデータの分析を提供し得る。予防措置または治療の効果の追跡や、睡眠の質、不安、およびストレスの追跡など他の目的で、モニタ110からさらなるデータが収集され得る。呼吸数、心拍数、体位など、モニタ110に搭載された複数のセンサに由来する生理学的信号の組み合わせを使用して、睡眠/覚醒を検出し、睡眠段階を分類することができる。これらの生理学的信号をさらに使用して無呼吸および低呼吸を検出することができ、睡眠呼吸障害の診断に役立てることができる。心拍センサ212などのECGセンサからのECG信号は、心拍数変動(HRV)の周波数分析を通じて交感および副交感神経系の反応をモニタリングするためにさらに使用され得る。HRVは、精神的回復力を測る有望なバイオマーカであり、柔軟性およびストレスへの適応能力の指標である。
【0069】
かかるデータは、モニタ110またはポータブルデバイス112のどちらかによってデータサーバ114に送信され得る。また、データサーバ114は、機械学習モジュール254を実行して、データを呼吸イベントと相関させるためのモデルをさらに改良し、分析プラットフォーム252の予測の精度を高め得る。
【0070】
本実施例においては、モニタ110が、種々の呼吸関連センサの常時監視から得た生理学的データを、無線プロトコルを介してポータブルデバイス112に送信するように構成されており、ポータブルデバイス112はそのデータを、患者プログラム240の一部として受信する。それからポータブルデバイス112は、プルオアプッシュ(pull or push)モデルに従って、データをデータサーバ114へ送信する。データサーバ114は、「プル」モデルに従って生理学的データをポータブルデバイス112から受信し得、これにより、ポータブルデバイス112は、データサーバ114からのクエリに応答して生理学的データを送信する。あるいは、データサーバ114は、「プッシュ」モデルに従って生理学的データを受信し得、これにより、ポータブルデバイス112は、所定の期間の後に生理学的データが利用可能になり次第、生理学的データをデータサーバ114へ送信する。データサーバ114は、収集および分析されたデータを記憶するために、データベース250などのデータベースにアクセスし得る。
【0071】
ポータブルデバイス112から受信されたデータは、患者100と一意に関連付けられることによってシステム800中の任意の他の患者820から収集された生理学的データから区別可能であるように、データサーバ114によって保存およびインデックス付けされる。データサーバ114は、モニタ110から受信されたデータからの概要データを計算するように、構成され得る。データサーバ114は、ポータブルデバイス112からデータを受信するようにも構成され得る(例えば、患者100または患者の家族が入力したデータ、患者についての挙動データ、または要約データ)。
【0072】
EMRサーバ814は、電子医療記録(EMR)を含む(すなわち、患者100について特異的な電子医療記録(EMR)と、患者100と類似の疾患を有する患者からなるより大きな母集団に対して包括的な電子医療記録(EMR)との両方)。EMRは、電子健康記録(EHR)とも呼ばれ、典型的には、患者の医療履歴(例えば、前回の状態、治療、合併症および現在の状態)を含む。EMRサーバ814は、例えば患者100が前回治療を受けた病院に配置され得る。EMRサーバ814は、恐らくはデータサーバ114からのクエリ受信に応答してEMRデータをデータサーバ114へ送信するように構成される。
【0073】
本例において、HCPサーバ816は、患者100の治療およびケアについて、例えば、呼吸治療について責任を負う健康/在宅医療プロバイダ(これは、個々のヘルスケア専門家または組織であり得る)と関連付けられる。HCPは、DMEまたはHME(国内/家庭用医療機材プロバイダ)とも呼ばれ得る。HCPサーバ816は、プロセス854をホストし得る。プロセス854について、以下により詳細に説明する。HCPサーバプロセス854の1つの機能として、データサーバ114からのクエリ受信に応答して、患者100に関連するデータをデータサーバ114へ送信することがある。
【0074】
いくつかの具現例において、データサーバ114は、HCPサーバ816と通信して、HCPの代行者(例えば、看護婦)への通知またはアクション推奨をトリガするかまたは多様な報告のサポートを行うように、構成される。実行されたアクションの詳細は、従事データの一部としてデータサーバ114によって保存される。HCPサーバ816は、分析プラットフォーム252および患者プログラム240と通信するHCPサーバプロセス854をホストする。
【0075】
例えば、HCPサーバプロセス854は、治療薬または吸入器などのデバイスの使用に関して、30日などのコンプライアンス期間における必須吸入器使用量を、そのコンプライアンス期間内で21日間といった最少日数で4回などの最小投与回数で指定するコンプライアンスルールを用いて患者を監視できることを含み得る。概要データの後処理において、使用データと順守規則からの最低持続時間とを比較することにより、最近の数字が順守セッションであるかが決定され得る。かかる後処理の結果は、「コンプライアンスデータ」と称される。このような順守データは、吸入器および他の機構を含み得る治療をヘルスケアプロバイダが個別調整する際に、用いられ得る。他の関係者(例えば、支払人)は、患者に対して償還が存在し得るかを決定するために、順守データを用い得る。HCPサーバプロセス854は、多数の患者からのデータ収集に基づいて薬剤の全体的な使用状況を決定するなど、他の健康管理機能を有し得る。支払者にとって、コンプライアンスデータは、表現型の不適合患者を支援し得るとともに、生物製剤などの代替治療の実施を推奨するのに役立ち得る。
【0076】
理解されるように、データサーバ114、EMRサーバ814、およびHCPサーバ816中のデータは、患者100に関連する機密データであることが多い。典型的には、機密データを別の当事者へ送る許可を患者100または患者の家族構成員120から提供する必要があることが多い。このような許可は、サーバ114、814、および816間のデータ転送に必要であり得る(ただし、このようなサーバが異なるエンティティによって操作されている場合)。
【0077】
図7のシステムにおける常時監視は、喘息、COPD、嚢胞性線維症、気管支拡張症など様々な呼吸障害に用いられ得る。ただし、上記の原則は、かかる用途に限定されないものと理解すべきである。
【0078】
図8Aは、図1に示すモニタ110として使用され得るパッチ型モニタ例900の斜視図である。図8Bは、モニタリングデバイス例900の回路図である。図8Cは、モニタリングデバイス例900の内部部品の上面斜視図である。図8Dは、モニタリングデバイス例900の内部部品の底面斜視図である。モニタリングデバイス900は、経時的な生理学的データ信号を患者から収集し、そのデータを、図1のポータブルデバイス112などのポータブルデバイスに送るという点で、モニタ110と同様の機能を有する。このようにして、モニタ例900は、患者の胸部から心肺信号を収集し、オンボードメモリに記憶する。記憶されたデータは、そのメモリからBluetooth(登録商標)を介してスマートフォン/タブレットにダウンロードすることができる。
【0079】
モニタリングデバイス900は、上面912と下面914とを有する筐体910を含む。本実施例においては、筐体910がシリコーンシェルのケーシングであるが、肌の動きに合わせて撓む他の適切な可撓性適合材料も使用され得る。本実施例においては、筐体910の長さが90mmで幅が20mmだが、他の適切な寸法および形状もこの筐体に使用され得る。後述するとおり、底面914は、底面914に塗布されている接着剤を有する層918に貼着された接触面である。層918は、その下面にも、層918を患者に貼着するように構成されている接着剤を有する。下記のとおり、層918は、本技術の一実装形態において、モニタ筐体910を患者の胸部に接着するのに使用され得る接着性付帯部品の一部である。モニタ900は、患者の胸部の中央上部に水平に取り付けられることを想定しているが、水平に対して45度など他の向きや、左上もしくは右上の胸部、または右脇もしくは左脇の下の肋骨など、他の箇所も想定される。上面912は、円筒形の電池収容部916を含む。
【0080】
図8Bは、筐体910に収容されている回路基板920を示している。回路基板920は、センサ、メモリ、トランシーバ、マイクロプロセッサ、信号プロセッサなど、本明細書において説明する電子部品のすべてを含む。トレース922が、筐体910の底面914に形成されている環状電極パッド930、932、934、および936に取り付けられている。一実装形態においては、底面914が、モニタリングデバイス900を肌に保持するために接着剤でコーティングされている。4つの電極パッド930、932、934、および936は、接着剤内のハイドロゲルパッチを通じて肌に接続されている。電池収容部916は、図8Cに示すとおり、回路基板920の上に搭載されているコイン型電池938を保持する。本実施例においては、電池938が、非充電式コイン型電池(例えば、CR-2032電池)である。当然のことながら、充電池など他の電源も、モニタ900に電力を供給するのに使用され得る。
【0081】
図9は、モニタリングデバイス例900の電子部品のブロック図である。モニタリングデバイス900は、マイクロプロセッサ960と、2つの書き込み可能メモリ962および964と、Bluetooth(登録商標)トランシーバ/アンテナ966と、信号プロセッサ回路968と、を含む。モニタ900は、心電図(ECG)センサ970と、インピーダンスセンサ972と、加速度計974と、ジャイロスコープ976と、をさらに含む。マイクロプロセッサ960は、ルーチンを実行するためのファームウェアを記憶する内蔵型永続メモリを含む。メモリ962および964の両方が、モニタ900によって収集されたデータを記憶する。本実施例においては、これらのメモリが、少なくとも80時間分のデータを記憶することができる。収集されたデータは、トランシーバ966から送信され得る。代替として、コンピューティングデバイスとの接続部を有するドッキングステーションが設けられ得る。このドッキングステーションは、充電式電池を充電するための接点に加え、コンピューティングデバイスにデータを送れるようにするためのデータ接点を含む。
【0082】
本実施例においては、信号プロセッサ回路968が、マキシム・インテグレーテッド社製ASIC(MAX30001)であり、4つの電極パッド930、932、934、および936から受信した信号を用いて患者のECGおよび胸部インピーダンスを測定する。本実施例においては、ECGセンサ970が、ECG用の電圧信号を決定するために、パッド932および934に連結されている。インピーダンスセンサ972は、電圧信号を測定するためにパッド932および934に連結されており、低振幅(例えば92マイクロアンペア)高周波(例えば80kHz)の交流電流を注入してインピーダンスを決定するためにパッド930および936に連結されている。パッド932および934は、ECGセンサ970とインピーダンスセンサ972との間で時間多重化される。
【0083】
センサ970および972、加速度計974、ならびにジャイロスコープ976からのデータ信号が、マイクロプロセッサ960によって収集される。このデータから、心拍数、呼吸数、換気量、体位、および体の向きなどの生理学的信号が抽出され得る。データの抽出または改良は、モニタ900に搭載されたファームウェアによって、またはモバイルデバイスもしくはクラウドベースのサーバなどの外部デバイスで実行され得る。本明細書に記載のとおり、収集されたデータは、患者の健康状態を分析するために種々の処理で使用され得る。本実施例においては、収集された生理学的データが、換気量、呼吸数、分換気量、(強制ではない)安静呼吸のフローボリューム曲線、およびこの曲線から導出可能なパラメータを決定するのに使用され得る。収集されたインピーダンス値は、肺活量と相関し得る。この呼吸流量は、肺活量の時間微分から取得され得る。気道閉塞を示す換気量パラメータは、肺活量に対する呼吸流量を図式化することによって作図されたフローボリューム曲線から導出され得る。
【0084】
図12には、フローボリューム曲線と、かかる曲線から抽出され得る換気量パラメータと、を表す2つのグラフが描かれている。上側のグラフのトレース1200は、患者に装着されたモニタ900から収集されたデータから作図されたフローボリューム曲線を表している。下側のグラフのトレース1250は、フローボリューム曲線1200を作図するのに使用されたデータと同じデータから作図された呼吸流量対時間のプロファイルを表している。フローボリューム曲線1200は、呼吸サイクルの呼気部分から作図されており、肺活量測定の慣例に従い、呼吸流量(縦軸ラベルでは「流量」と略されている)の正の値が呼気流量を表している。プロファイル1250も同様に、呼気流量を縦軸上で正として表している。プロファイル1250は、呼気流量が急増して、TPTEFとラベル付けされた時期に、PTEFとラベル付けされたピーク値に達した後、ゼロに向かってゆっくりと減少し、TEとラベル付けされた呼気時期にゼロに達することを示している。傾きSの破線1260は、ピーク後の呼気流量の減少と直線的に近似している。フローボリューム曲線1200は反時計回りに延びており、肺活量が呼気の換気量VEに等しい極値から始まって、短時間で呼気流量のピーク値PTEFに達する。この時点で肺活量はVPTEFに減少しており、その後、肺活量がゼロであると定義される呼気の終了まで徐々に減少する。
【0085】
換気量パラメータは、トレース1200および1250から抽出され得る。3つの例を以下に示す。
呼気時間における呼気流量ピークまでの時間(TPTEF/TE)
呼気換気量に対するピーク呼気流量の体積(VPTEF/VE)
ピーク後の呼気流量曲線の傾き(S)
【0086】
上記3例などの換気量パラメータは、患者の呼吸疾患、特に気道閉塞の状態を示している。上記の各換気量パラメータ例においては、値の増大が気管支拡張と関連付けられ、値の減少は気管支閉塞と関連付けられている。この生理学的データからは、バイタルキャパシティなど他のパラメータも導出され得る。従来の肺活量測定ではできない、上気道の閉塞と下気道の閉塞とを区別できるパラメータが導出され得る。
【0087】
図10Aは、モニタリングデバイス例900を患者に貼着するための接着性付帯部品例1000を貼着する前の斜視図である。図10Bは、患者の肌に貼着する前に、接着性付帯部品1000内の接着剤をモニタリングデバイス900に貼着する際の連続ステップを示している。接着性付帯部品1000は、中間層1012(図10Bに図示)を支持する保護底部層1010を含む。中間層1012は、中間層1012に適切に取り付けられたときにモニタ900の底面914上の電極パッド930、932、934、および936の位置に対応する4つのハイドロゲルを有する。スカート部1018とモニタ900の形状の切取部1022とを備える上部保護層1014が中間層1012を覆う。
【0088】
図10Bの第1のステップ1020に示すとおり、ハイドロゲル1016およびその周囲の接着剤を有する中間層1012を露出させるために、上部層1014の切取部1022が剥がされている。切取部1022は、モニタ900の形状になっており、上部層1014のスカート部1018を所定の位置に残す。接着性付帯部品1000の下側図である図10Bのステップ1030に示すとおり、モニタ900は、切取部1022が取り除かれた場所に当てられ、接着剤によって中間層1012に取り付けられる。これにより、中間層1012上のハイドロゲル1016は、モニタ900の底面914上の電極パッド930、932、934、および936と接触し、半透明の底面層1010を通じて視認できる。底部層1010はその後、ステップ1040で中間層1012から取り除かれ、ハイドロゲル1016およびその周囲の接着剤を有する中間層1012を露出させる。露出した接着剤とハイドロゲル1016とを有する中間層1012はその後、ハイドロゲル1016、ひいては電極パッド930、932、934、および936が、肌と電気的に接触するように、接着剤を介して患者の胸部の適切な箇所に取り付けられる。中間層1012が正しく取り付けられた後、上部層1014のスカート部1018が剥がされ得、モニタ900と、図8Aにおいて層918で識別され得る中間層1012と、を肌に残す。
【0089】
モニタ900は、音声センサなど他のセンサも含み得る。モニタ900は、図7の健康管理システム800で実行されるデータ収集および分析処理において、モニタ110の代わりに使用され得る。予測分析のためのモニタ900からのデータ収集の処理フロー例が図11に示されている。ECGセンサ970、インピーダンスセンサ972、加速度計974、およびジャイロスコープ976から、読取値をサンプリングおよび相関させてデータが収集される。そのデータはモニタ900に記憶され、ポータブルデバイス112などの外部デバイスに繰り返し送信される。
【0090】
収集されたデータは、予測分析用の分析データを作成するために分析され得る。図11に示すとおり、インピーダンスセンサ972からのインピーダンスデータは、呼吸数、換気量、呼吸流量、および吸気/呼気を決定するのに使用され得る。ECGセンサ970からのECGデータは、患者の心拍数、心拍数変動、心臓カップリングおよび動きを決定するのに使用され得る。加速度計974からの加速度計データは、体位および体の動きを決定するのに使用され得る。ジャイロスコープ976からのデータは、体の向きを決定するのに使用され得る。
【0091】
モニタ900に搭載されたセンサからの分析データ、および任意選択で、外部ソースからのさらなるデータが、1組の生理学的データ1110、1組の活動データ1112、および1組の睡眠データ1114に分類され得る。分類されたデータは、平均値、中央値、パーセンタイル、標準偏差など、統計学的な特徴量をこれらのデータから導出する特徴量抽出モジュール1120に入力される。この特徴量セットはその後、事象予測1140を出力する機械学習分類器1130に入力される。図4に関して上述したとおり、事象予測1140は、リスク評価を所定の閾値と比較した結果であり得る。
【0092】
事象予測1140は、はい/いいえの2値指標(予測された/予測されなかった事象)であり得るか、軽度、中等度、重度など、予測された呼吸イベントの重症度に基づいて等級付けされ得る。一実装形態においては、事象予測1140が、「薬を服用する時刻」や「医療従事者に医学的な助言を求める」、「救急外来に行く」など種々の矯正動作に至り得る種々のゾーンへと変換され得る。
【0093】
さらなる出力情報として、生理学的データに基づいて本人に合わせた服薬リマインダおよび投与量調整などが挙げられ得る。かかるリマインダおよび本人に合わせた動的な薬物治療計画による調整は、図1に示すシステムなどで行われる患者の健康状態の常時監視に基づいて決定され得る。データを収集するための他の機能は、
特に、定期的な肺活量測定検査を実行できない5歳以下の子供に対して臨床医が行う喘息の診断および管理を支援することと、
疾病を確実に抑制するための投薬の有効性、または投薬量およびタイプを段階的に上げ下げする必要性を評価することと、
急性喘息後に退院した患者の再入院率の低減を支援することと、を含み得る。
【0094】
喘息に対する従来の薬物治療計画は、予防薬要素および救急薬要素という2つの要素を有する。予防薬要素は、症状にかかわらず、一定間隔で(例えば1日1回)服用する一定量(例えば1包)の予防薬(例えば抗炎症剤)を処方するものである。救急薬要素は、息切れや喘鳴などの症状が発生した場合に、一定量(例えば1包)を服用し、その後、症状が軽減しなければ一定間隔で(例えば4時間おきに)服用する救急薬(例えば気管支拡張剤)を処方するものである。この計画では、救急薬を一定回数以上服用しても症状が軽減しなければ、医師や病院を受診する。
【0095】
本人に合わせた生理学的信号の一例が、図1のモニタ110内の他のセンサ、または患者100に装着された他のモニタから取り込まれた、特定の肺、心臓、運動などのセンサの読取値であり得る。このデータは、上記のとおり、患者の疾病管理およびリスク評価を提供するために分析され得る。決定されたリスク評価は、データサーバ114によって実行された投薬ルールエンジンおよび投与量計算機により、本人に合わせた治療を患者に提供するのに使用され得る。かかるセンサの読取値は、吸入器など、接続された薬物投与デバイスから集められた、投与の有無を示すデータと連携してもしなくてもよい。同様の方法で、運動やその他の身体活動など、患者の活動も監視され得る。この情報は、例えば、呼吸疾患が患者の活動レベルを制限しているかどうか、および患者に正常な活動レベルをもたらすために投薬を増やす必要があるかどうかを評価するのに使用することができる。
【0096】
投薬ルールエンジンおよび投与量計算機の例は、図1の外部ポータブルデバイス112またはサーバ114などのコンピューティングデバイスによって実行されるアプリケーションであり得る。投薬ルールエンジンは、患者またはその家族が投薬管理状況をチェックするための簡素なリマインダおよび指示を含み得る。代替として、投薬ルールエンジンは、センサデータを使用して、薬が服用されなかったり、適切に服用されなかったりしたことを決定し得る。かかる実施例においては、呼吸プロファイルを吸入器の摂取量と照合して吸入器のクリックが吸入と同期していたことを確認することにより、このことを決定することができる。投薬前の生理学的データを投薬後の生理学的データと比較することにより、投薬の有効性を測定することができる。投薬ルールエンジンは、センサから取得した、投薬がもたらしている効果またはその欠如を示すデータに基づいて、服用頻度の増減を指示し得る。同様に、投薬ルールエンジンは、現在の服用量の効果または効果の欠如に対処するために、服用量の増減および/または薬のタイプ(例えば、予防薬、救急薬、別の薬など)を指示し得る。
【0097】
患者またはその家族に対する指示は、医療提供者の通知の有無にかかわらず行われ得る。例えば、OTC(店頭販売)薬または処方薬は、医療提供者が介入しなくても、一定の制限内で自動的に服用量を調整する投薬ルールエンジンに従って監督承認を受け得る。この薬は、吸入器、錠剤、薬物送達パッチなど、任意の適切な薬物送達形式を提供するデバイスによって監督され得る。投薬ルールエンジンは、息切れ、喘鳴、咳、活動減少、夜間覚醒など、患者が報告した症状も取り入れ得る。本実施例においては、この投薬および投薬ルールエンジンが、喘息やCOPDなどの呼吸疾患のみを対象とし得るが、他の状態は他の投薬ルールエンジンを有し得る。
【0098】
現在の汎用かつ静的な計画とは対照的に、同じ処理が、パーソナライズされ得る他のタイプのルーチンおよびプランと組み合わせて用いられ得る。例えば、かかる計画として、本人に合わせた動的な活動および運動計画、本人に合わせた動的な認知および行動計画、本人に合わせた動的な食品および栄養計画、ならびに本人に合わせた大気暴露計画が挙げられ得る。かかるルーチンおよび計画を繰り返し調整することにより、本人に合わせた動的な最適化が行われ得る。患者の治療、健康、および生活の質の面は、個々の患者に合わせてカスタマイズし、患者および環境の条件に適合させればよい。また、健康な状態からの逸脱の原因も分析され得る。患者が、自身の基準と、かかる基準に対する個々の閾値を学習する適応アルゴリズムと、を有することが一例であり得る。この場合には、患者自身の基準からの逸脱が、年齢別の健康正常値からの逸脱よりも懸念され得る。
【0099】
図1のデータサーバ114によって実行される分析モジュール例は、喘息抑制および増悪予測アルゴリズムにおける公衆衛生要因も含み得る。喘息などの呼吸器疾患には地域性および季節性があることから、公衆衛生要因は、より正確な予測を提供し得る。図1の例に関して説明したとおり、症状を決定し、喘息抑制から逸脱したり、発作などの増悪を起こしたりする個人のリスクを決定するために、関心のある生理学的信号が収集される。処理には、患者の履歴/健康記録、例えば接続された吸入器を通じて捕捉された服薬遵守に関する任意のデータと、サードパーティから取得した、一般的な患者集団のメンバーごとの地理的/自宅位置関連データと、に基づく環境条件(汚染物質を含む空気の質やアレルゲンなど)が考慮され得る。かかる分析は、室内の空質モニタを通じて、または屋外のセンサから、当地の環境データを動的に捕捉することを含み得る。
【0100】
呼吸器疾患の増悪の分析は、図2のデータベース250の患者記録に記憶され得る公衆衛生要因も考慮し得る。かかる要因としては、個人ごとに捕捉されるか、地理的/自宅位置に基づいて計算/推定される社会的健康決定要因(食料や住居の危険性に対するリスク、経済的なトラブル、家庭でのストレスなど)が挙げられ得る。加えて、時節も用いて呼吸分析をさらに調整し得る。例えば、学校再開時期など、既知の喘息急増期が存在する。この分析は、上記の様々なデータに基づいてリスクを定量化するために事前に患者を階層化するのに用いられ得る。
【0101】
特定の患者に関するこの具体的な分析は、一般的な集団またはこの患者に類似する具体的なコホートの分析と比較され得る。例えば、個々の患者が、同様の社会経済的特徴および民族的特徴を有する他の患者に動的にグループ化され得る。その後、そのグループ内の他者について集められた任意の履歴データまたは新規データが、個々の患者の呼吸イベントの予測に影響を与える目的で使用され得る。例えば、入院患者に関する共有EMRデータ、健康データ(兆候および症状)、入院患者の自宅住所/郵便番号が、類似患者群を決定し、予測を改善するのに使用できる可能性がある。
【0102】
また、監視および関連治療慣例を遵守するインセンティブを患者および家族の両者に提供することにより、監視体験も改善され得る。これは、患者およびその家族の両者の体験をゲーム化することによって実行され得る。例えば、小児患者とその家族が、図1のモニタ110などのモニタリングデバイスを使用することに対して、ポイント、バッジ、お金などの報酬を受け取り得る。かかる報酬は、モニタの着用、モニタの充電、提案された治療行為の実施に対して得られ得る。
【0103】
子供と親がチームになり、室内空質モニタなどの賞品を獲得するために他のチームと競い合うことができ得る。かかるプログラムは、無料または割引のサービスを、インセンティブとして他のパートナー(政府から民間企業や非営利団体まで)に提供してもらってもよい。これらのインセンティブは、喘息と直接関係がなくてもよく、無料の食事やカウンセリングなど、上記のような社会的健康決定要因に基づくこともでき得る。例えば、このゲーム化アプリケーションは、参加している健康食レストランで食事を無料提供したり、患者が治療を完了したときや、運動などの日課を守ったときに寄付ができるようにしたりし得る。また、モニタ110を装着することによって日課を守ることにより、福祉活動に寄付できるようにすることが、パートナーのネットワークによって可能となり得る。このシステムは、保険会社やHMEに、患者の集団を引き受けるインセンティブを提供し得る。例えば、保険会社/HMEが、ある患者集団に保険をかけると、健康関連の慈善事業または他の福祉への寄付金が計上され得る。患者、患者の親、または保険会社など他の存在に対するインセンティブは、社会的および環境的な要因の変化に基づいて変わり得る。例えば、遵守されないリスクが高いと、報酬が増え得る。例えば、晴天の日には、汚染物質やアレルゲンが少ないときに屋外で活動したときに一定の報酬が提供され得る。増悪のリスクが高い高汚染日には、この報酬が減らされる。
【0104】
本出願で使用される「部品」、「モジュール」、「システム」などの用語は、ハードウェア(例えば、回路)、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、ソフトウェア、または1つ以上の具体的な機能を有する動作機械に関するエンティティのいずれかであるコンピュータ関連エンティティを概して指す。例えば、部品は、プロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ)上で実行される処理、プロセッサ、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、プログラム、および/またはコンピュータであり得るが、これらに限定されない。例として、コントローラと、コントローラ上で動作するアプリケーションの両方が部品であり得る。1つ以上の部品が、プロセスおよび/または実行スレッド内に存在し得、ある部品が、1台のコンピュータ上でローカライズされたり、2台以上のコンピュータ間で分散されたりし得る。さらに、「デバイス」は、特別に設計されたハードウェア、具体的な機能の実行を可能にするソフトウェアの実行によって特殊化された被汎用化ハードウェア、コンピュータ可読媒体に記憶されたソフトウェア、またはこれらの組み合わせの形態をとることができる。
【0105】
本明細書中に用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定的なものではない。本明細書で使用している単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかな場合を除き、複数形も含むことが意図されている。さらに、発明を実施するための形態および特許請求の範囲において、「含む」、「有する」、またはそれらの活用形が使用されており、これらの用語は、「備える」という用語と同様に包括的であることが意図されている。
【0106】
他に明記しない限り、本明細書中の全ての用語(技術用語および科学用語を含めて)は、当業者が一般的に理解するような意味と同じ意味を持つ。さらには、広く使用されている辞書で定義されているような用語は、当該技術分野の文脈における意味と一致するように解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されている場合を除き、理想化された意味や過剰に形式的な意味で解釈されることはない。
【0107】
以上、本発明の様々な実施形態について説明してきたが、それらは例示目的でのみ提示されており、限定ではないものと理解すべきである。本発明について、1つ以上の実装形態に関して例示および説明してきたが、本明細書および添付の図面を読み、理解する上で、等価の変更および修正が生じるか、他の当業者に公知であろう。加えて、本発明の特定の特徴は、いくつかの実装形態のうちの1つのみに関して開示されたかもしれないが、かかる特徴は、任意の所与または特定の用途に対して所望かつ有利となるように、他の実装形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせられ得る。したがって、本発明の幅と範囲は、上記実施形態のいずれによっても制限されるべきでない。むしろ、本発明の範囲は、以下の請求項およびその均等物に従って定義されるべきである。
ラベルリスト
【符号の説明】
【0108】
100 患者
110 モニタ
112 ポータブルデバイス
114 データサーバ
120 家族構成員
122 アラートデバイス
130 環境センサ
200 コントローラ
202 センサインターフェース
204 トランシーバ
206 メモリ
208 バッテリ
210 センサ
212 センサ
214 センサ
216 センサ
218 加速度計
230 CPU
232 GPSレシーバ
234 トランシーバ
236 メモリ
240 アプリケーション
242 データ
250 データベース
252 分析プラットフォーム
254 機械学習モジュール
300 ステップ
302 ステップ
304 ステップ
306 ステップ
308 ステップ
310 ステップ
312 ステップ
314 ステップ
316 ステップ
400 ステップ
402 402
406 ステップ
408 ステップ
410 ステップ
412 ステップ
414 ステップ
500 初期段階の肺の音声波形
502 ピーク
510 初期段階の心拍波形
520 初期段階の呼吸波形
530 後期段階の肺の音声波形
540 後期段階の心拍波形
550 後期段階の呼吸波形
560 音声波形例
562 シグネチャ
570 データ
572 ピーク
580 トレース
582 トレース
600 システム
610 医療提供者システム
620 医療従事者
630 供給システム
800 システム
814 EMRサーバ
816 HCPサーバ
820 患者
822 それぞれのモニタ
824 ポータブルデバイス
830 広域ネットワーク
854 HCPサーバプロセス
900 モニタ
910 筐体
912 上面
914 下面
916 バッテリハウジング
918 層
920 回路基板
922 トレース
930 電極パッド
932 電極パッド
934 電極パッド
936 電極パッド
938 バッテリ
960 マイクロプロセッサ
962 メモリ
964 メモリ
966 トランシーバ
968 信号プロセッサ回路
970 ECGセンサ
972 インピーダンスセンサ
974 加速度計
976 ジャイロスコープ
1000 接着性付帯部品
1010 底部層
1012 中間層
1014 上部層
1016 ハイドロゲル
1018 スカート
1020 ステップ
1022 切取部
1030 ステップ
1040 ステップ
1110 生理学的データ
1112 活動データ
1114 睡眠データ
1120 特徴量抽出モジュール
1130 機械学習分類器
1140 事象予測
1200 フローボリューム曲線
1250 プロファイル
1260 破線
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
図11
図12
【国際調査報告】