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特表2022-542214金属連続鋳造設備における金属連続鋳造鋳型、温度測定システムならびにブレークアウト検出のシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(54)【発明の名称】金属連続鋳造設備における金属連続鋳造鋳型、温度測定システムならびにブレークアウト検出のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/16 20060101AFI20220922BHJP
   B22D 11/04 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B22D11/16 104B
B22D11/04 311D
B22D11/04 311F
B22D11/16 A
B22D11/16 104J
B22D11/16 104R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576290
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020067347
(87)【国際公開番号】W WO2020254688
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】BE2019/5408
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520368552
【氏名又は名称】イービーディーエス エンジニアリング
【氏名又は名称原語表記】EBDS ENGINEERING
(71)【出願人】
【識別番号】521556462
【氏名又は名称】シーエスエヌ カール シュライバー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CSN CARL SCHREIBER GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ツリアニ ジアンニ
(72)【発明者】
【氏名】カスティオー エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】メセハ ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004AA03
4E004AA08
4E004MA05
4E004MB20
4E004MC11
4E004MC12
4E004NA01
4E004NB01
4E004NB07
4E004PA05
4E004SC07
(57)【要約】
【要約】
冷却流体の循環によって金属プレートを冷却できるように構成された冷却装置が背後に設けられた金属プレート(22)の組立体からなるタイプのこの金属連続鋳造鋳型(12)は、金属プレート(22)のうち少なくとも1つのプレートの壁の中に延びる少なくとも1つの光ファイバ(28)であって、複数のブラッグ・フィルタを備える光ファイバ(28)と、金属プレート(22)のうち少なくとも1つのプレートの壁に、鋳型の鋳込み軸と平行でない方向に、長さの少なくとも一部に形成された少なくとも1つの溝(24)であって、光ファイバ(28)がその中を延びる、溝(24)と、溝(24)に対してほぼ相補的な形状を有し、溝をその全長にわたって塞ぐストリップ(26)であって、溝(24)とストリップ(26)が、光ファイバ(28)を通すのに適した形状を有する、ストリップ(26)とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却流体の循環によって金属プレート(22)を冷却できるように構成された冷却装置(14)が背後に設けられた前記金属プレート(22)の組立体からなるタイプの金属連続鋳造鋳型(12)であって、
- 前記金属プレート(22)のうち少なくとも1つのプレートの壁の中に延びる少なくとも1つの光ファイバ(28)であって、複数のブラッグ・フィルタ(34)を備える光ファイバ(28)と、
- 前記金属プレート(22)のうち少なくとも1つのプレートの壁に、鋳型(12)の鋳込み軸と平行でない方向に、長さの少なくとも一部に形成された少なくとも1つの溝(24)であって、前記光ファイバ(28)がその中を延びる溝(24)と、
- 前記溝(24)に対してほぼ相補的な形状を有し、前記溝をその全長にわたって塞ぐストリップ(26)であって、前記溝(24)とストリップ(26)が、前記光ファイバを通すのに適した形状を有する、ストリップ(26)と
を備える鋳型(12)。
【請求項2】
前記ストリップ(26)が複数の部品からなる、請求項1に記載の鋳型。
【請求項3】
前記ストリップ(26)が、前記溝(24)を塞ぐ前に全体が形成されたインサートを含む、請求項1または2に記載の鋳型。
【請求項4】
前記溝(24)がほぼ均一な深さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項5】
前記鋳型が銅または銅合金で製作され、前記ストリップ(26)も同じ材料で製作される、請求項1~4のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項6】
前記ストリップ(26)が、たとえば電子ビーム溶接などによって鋳型に溶接されて前記溝(24)を埋める、請求項1~5のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項7】
前記溝(24)が、前記金属プレート(22)のうち少なくとも1つのプレートの少なくとも1つの中央部分に位置する、請求項1~6のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項8】
前記溝(24)が、前記金属プレート(22)のうち少なくとも1つのプレートの全長にわたって延びる、請求項1~7のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項9】
前記光ファイバ(28)が被覆または管を装備する、請求項1~8のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項10】
前記光ファイバ(28)が1.6mm超の直径を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項11】
互いにほぼ平行をなす複数の溝(24)に収められた複数の光ファイバ(28)を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の鋳型。
【請求項12】
薄型スラブを鋳造するタイプのもので、上部に漏斗(23)形部位を備え、前記溝(24)が、少なくとも前記漏斗(23)形部分の全体に位置する、請求項1~11のいずれか一項に記載の鋳型(12)。
【請求項13】
金属連続鋳造システムにおける温度測定システムであって、
- 請求項1~12のいずれか一項に記載の鋳型(12)と、
- 前記光ファイバ(28)に光を送出し、前記鋳型(12)の様々な箇所の温度に関する情報として送受装置で受け取った反射光および伝送光の少なくとも1つを受け取るようにアレンジされた送受装置と、
- 前記送受装置で受け取った前記反射光および伝送光の少なくとも1つに関するデータを前記鋳型の様々な箇所における温度に関する情報に変換するようにアレンジされたプロセッサと、
- 前記プロセッサに接続されたユーザー・インタフェース付き端末と
を備えるシステム。
【請求項14】
請求項13に記載の温度測定システムを備える金属連続鋳造システムのブレークアウト検出システムであって、前記プロセッサが、前記送受装置で受け取った前記反射光および伝送光の少なくとも1つに関するデータをブレークアウト検出に関する情報に変換するようにアレンジされた、システム。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の鋳型の壁の温度を測定することを特徴とする、金属連続鋳造設備におけるブレークアウトの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の連続鋳造設備に関する。より詳細には、本発明は、金属の連続鋳造の鋳型に関する。他の態様によれば、本発明は、金属の連続鋳造設備における温度測定システムならびに金属の連続鋳造設ブレークアウト検出のシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の連続鋳造設備、たとえば鉄鋼の連続鋳造設備は、溶融金属を注ぎ込んでしかるべき形状に凝固させるための鋳型を備えるのが一般的である。たとえば、底なしの鋳型はその1つであり、その場合、金属は冷却されてスラブを形成する。溶融金属を冷却するため、鋳型の壁には、液冷式などの冷却装置がその脇または背後に設けられる。鋳型および冷却装置の設計は、スラブが鋳型を出るとき、スラブ中心部にまだ溶融状態で存在する金属を閉じ込めておくのに十分な厚さでその外側面が凝固しているように、金属の流動速度に合わせた形で行われる。
【0003】
溶融金属が鋳型に流し込まれる際には、鋳型の壁の様々な箇所の温度測定値がリアルタイムでわかっていることが望ましい。たとえば、金属が鋳型の壁に付着することがあるが、それは望ましいことではなく、設備の生産に大きく影響する可能性がある。特にその場合に引き起こされるものとして、よく知られるブレークアウト現象がある。壁への金属の付着は、金属の凝固が適切に行われずに、スラブが鋳型から出たときにその外側面の厚さが足りないゾーンを生じることになる。その結果、そのゾーンに破れを生じ、スラブ中心部のまだ溶融状態の金属がスラブの外に流れ出す。そのため、歩留まりが低下するだけにとどまらず、溶融金属は、そのきわめて高い温度によって設備を損傷する可能性があるばかりか、設備の作業員にも危険を及ぼしかねない。そのため、そうしたブレークアウトをできるだけ早期に検出することにより、スラブの抽出速度を遅くする、設備を一時的に停止するなど、その他あらゆる是正措置を含め、様々な予防措置を講じることができるようにする必要がある。
【0004】
現在の技術では、ブレークアウトが起ころうとしているサインである鋳型の壁への金属の付着がないか検出する方法が知られている。それは、鋳型の壁温度を様々な箇所で測定することを基本としたものである。実際、壁は、そこに金属が付着しているときに固有の温度プロファイルを見せることがわかっている。その温度を測定するための既知の手段の1つは、鋳型の壁に熱電対を規則的に配置して温度の異常を可能な限り早い段階で検出できるようにするというものである。
【0005】
この検出方法は興味深いが、幾つか問題がある。実際、できる限り多くの位置で壁の温度を測定しようとすると、膨大な数の熱電対の設置が必要となる。それは鋳型の製造コストを膨らませるばかりでなく、熱電対の電気接続を複雑にすることにもなる。また、熱電対は常に正確かつ信頼できる形で壁の温度を測定できるというものでもなく、熱電対から出される誤警報、すなわち、実際にはそうでないにもかかわらず、ブレークアウトが起ころうとしているという警報信号は許容範囲を超える数のものとなりかねない。
【0006】
別の問題は、冷却流体の循環によって金属プレートを冷却できるように構成された冷却装置がその背後に設けられた金属プレートの組立体からなるのが通例である鋳型の構成に関連したものである。温度測定を要する鋳型のゾーンに到達するためにはその冷却装置を通り抜ける必要があり、したがって循環水を横断することになって、そのために密閉性や配線の別の問題が生じる。
【0007】
ベルギー特許出願第2018/5193号では、鋳型の少なくとも1つの壁に、複数のブラッグ・フィルタを備える光ファイバが内部に挿入された通路を設けることでその問題を解決することがすでに提案されている。この解決法は注目すべきものであり、上に述べた諸問題に適切な解答を与えるものである。だが、本発明者らは、より迅速かつ安価に実施することができ、鋳型の複雑な構成にも適合できそうな別の方法を開発することを考えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の欠点を直して、ブレークアウトの検出を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明では、冷却流体の循環によって金属プレートを冷却できるように構成された冷却装置が背後に設けられた金属プレートの組立体からなるタイプの金属連続鋳造鋳型において、
- 前記金属プレートのうち少なくとも1つのプレートの壁の中に延びる少なくとも1つの光ファイバであって、複数のブラッグ・フィルタを備える光ファイバと、
- 前記金属プレートのうち少なくとも1つのプレートの壁に、鋳型の鋳込み軸と平行でない方向に、長さの少なくとも一部に形成された少なくとも1つの溝であって、光ファイバがその中を延びる、溝と、
- その溝に対してほぼ相補的な形状を有し、溝をその全長にわたって塞ぐストリップであって、溝とストリップが、光ファイバを通すのに適した形状を有する、ストリップと
を備える鋳型を提供する。
【0010】
混乱を防ぐため、プレートの寸法に関する用語は以下のように定義することを断っておく。プレートの長さおよび幅は、鋳型の鋳込み軸に対して垂直な断面における寸法であり、プレートの深さは鋳型の軸に沿った寸法である。
【0011】
このように、従来技術における熱電対は、ブラッグ・フィルタを備える光ファイバによって置き換えられることになる。ブラッグ・フィルタは、ファイバ内に光ビームを放出し、反射および伝送されるビームの少なくとも1つを検出することによって、各フィルタレベルにおける壁内の温度を測定することができる。溝、光ファイバおよびストリップは、熱電対と比べてはるかに省スペースであり、設置もはるかに簡単であることが理解される。さらに、ブラッグ・フィルタによる温度測定は熱電対によって得られるものよりも正確であり、それによって誤警報の回数も減る。
【0012】
有利には、ストリップは複数の部品からなる。
【0013】
そのため、ストリップを構成する部品の数を選ぶことによってストリップの長さを適合させることができる。それにより、鋳型の寸法に合わせることができる。
【0014】
有利には、ストリップは、溝を塞ぐ前に全体が形成されたインサートを含む。
【0015】
そのため、ストリップは、鋳型に設置される前に全体が形成される。つまり、ストリップは、溝を埋めるときにその場で形成されるものではない。それにより、ストリップは、単に溝の中に入れるか、または溝の一端から溝に沿って滑り込ませることによって、鋳型内に設置することが可能であることにより、その設置が容易となる。有利には、溝はほぼ均一な深さを有する。
【0016】
そのため、プレートと光ファイバとの間の熱伝達もまた均一となる。
【0017】
有利には、鋳型は銅または銅合金で製作され、ストリップも同じ材料で製作される。
【0018】
これらの材料は高い熱伝導率を有しており、それによって熱伝達の均一化に寄与する。
【0019】
ストリップは、電子ビーム溶接などによって鋳型に溶接されて溝を埋めることが好ましいが、その他の溶接法、たとえばレーザー溶接、X線溶接、イオン・ビーム溶接や、被覆アーク溶接、非消耗電極式アーク溶接、消耗電極式アーク溶接、サブマージ・アーク溶接、エレクトロガス溶接、拡散溶接を含む、あらゆるタイプのアーク溶接、さらにはろう付け、ソフトろう付けも可能である。
【0020】
それにより、溝を密閉状態で埋めることができる。
【0021】
有利には、溝は、プレートのうち少なくとも1つのプレートの少なくとも1つの中央部分に位置する。
【0022】
それにより、壁の中央ゾーンの温度を測定することができ、そうすることで壁の温度をとりわけ代表する測定値を得ることができる。
【0023】
ある実施形態によれば、溝は、プレートのうち少なくとも1つのプレートの全長にわたって延びる。
【0024】
そうすることで、鋳込まれた金属の温度を数多くの箇所で測定することができ、ブレークアウト検出の信頼性の向上につながる。
【0025】
有利には、光ファイバは被覆または管を装備する。
【0026】
それにより、光ファイバを傷める可能性のある機械的応力から光ファイバが守られる。また、被覆や管は、光ファイバの直径を調整することを可能にする。
【0027】
有利には、光ファイバは1.6mm超の直径を有する。
【0028】
有利には、鋳型は、互いにほぼ平行をなす複数の溝に収められた複数の光ファイバを備える。
【0029】
そうして壁の温度測定箇所の数をさらに増やすことが、ブレークアウト検出の信頼性を一段と高めることにつながる。
【0030】
有利には、鋳型が薄型スラブを鋳造するタイプのもので、上部に漏斗形部位を備えるものである場合、少なくとも漏斗形部分の全体に位置する溝。実際、ベルギー特許出願第2018/5193号で提案されているように、壁とほぼ平行に穿孔した通路に光ファイバを設けるという解決法を、壁の平坦でない部位で実施するのはきわめて困難である。
【0031】
この実施形態が、複雑な形状のあらゆるタイプの鋳型に適合するものであることは容易に理解される。
【0032】
有利には、壁は、漏斗形の中央部分内の溝と、平坦な部分に穿孔された通路とを備え、通路は溝内に開口する。
【0033】
また、本発明では、金属連続鋳造システムにおける温度測定システムにおいて、
- 前述のように定義された鋳型と、
- 光ファイバに光を送出し、送受装置で受け取った反射光および伝送光の少なくとも1つを受け取るようにアレンジされた送受装置と、
- 送受装置で受け取った反射光および伝送光の少なくとも1つに関するデータを鋳型の様々な箇所における温度に関する情報に変換するようにアレンジされたプロセッサと、
- プロセッサに接続されたユーザー・インタフェース付き端末と
を備えるシステムをさらに提供する。
【0034】
本発明では、前述のように定義された温度測定システムを備える金属連続鋳造システムのブレークアウト検出システムにおいて、プロセッサが、送受装置で受け取った反射光および伝送光の少なくとも1つに関するデータをブレークアウト検出に関する情報に変換するようにアレンジされた、システムも提供する。
【0035】
最後に、本発明では、前述のように定義された鋳型の壁の温度を測定することを特徴とする、金属連続鋳造設備におけるブレークアウトの検出方法を提供する。
【0036】
以下では、添付の図面を参照しながら、限定的でない例として取り上げる本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明による鋳型を含む金属連続鋳造設備の全体図である。
図2a図1の設備5の動作を示した図である。
図2b図1の設備5の動作を示した図である。
図3図1の設備の鋳型の断面図である。
図4図3の鋳型の斜視図である。
図5図3の鋳型のプレートの斜視図である。
図5a】鋳型の溝とストリップの様々な形状を示した図である。
図5b】鋳型の溝とストリップの様々な形状を示した図である。
図5c】鋳型の溝とストリップの様々な形状を示した図である。
図5d】鋳型の溝とストリップの様々な形状を示した図である。
図6図5のプレートに含まれる光ファイバの長手方向断面図である。
図7図6の光ファイバの動作を説明した図である。
図8a】ブレークアウトの発現を表した図3の鋳型の断面図である。
図8b】ブレークアウトの発現を表した図3の鋳型の断面図である。
図8c】ブレークアウトの発現を表した図3の鋳型の断面図である。
図8d】ブレークアウトの発現を表した図3の鋳型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に金属連続鋳造設備2を示した。この設備は従来どおりの構成をもつものであり、その構成要素の大半は簡単にしか紹介しない。
【0039】
設備2は、冷却しようとする溶融金属が入った取鍋4を備える。ここでは、取鍋4は2つあり、いずれも機械式アーム6によって支えられている。この機械式アーム6はとりわけ、図1に示す位置まで取鍋4を運ぶ前に、炉や転炉など(図示せず)、取鍋4に溶湯を注入することできる充填ゾーンから、満杯の状態で移送システム(図示されていない天井クレーンなど)によって鋳込みゾーンに運ばれて来た取鍋4を移動させることができる。機械式アーム6はまた、空になった後の取鍋4を、移送システムによって再び引き取られる位置まで持っていくことができ、取鍋4はそこから準備ゾーンに運ばれて再調製された後、充填ゾーンに戻される。
【0040】
設備2は、取鍋4の下方に位置するタンディッシュ、すなわち分配槽8を備える。取鍋4は、タンディッシュ8に溶融金属を流し込むことができる開閉式の底を有する。
【0041】
タンディッシュ8は、溶融金属の流動を制御できるストッパ10で塞ぐことができる湯口を備える。タンディッシュの湯口は、浸漬鋳込みノズル(SEN)11に続いており、鋳型12内に注ぎ込まれる溶融金属を保護することができる。
【0042】
図2aおよび拡大図の図2bを見るとよくわかるように、浸漬鋳込みノズル11は、鋳型12の上部開口部に開口する。これは、鉛直の鋳込み軸を有する底のない鋳型である。鋳型12についてはこの先で詳しく説明する。
【0043】
設備2は、鋳型12の外側面に配置された冷却装置14を備える。これは、液体による冷却装置である。そのため、冷却装置は、水などの冷却流体が流れる管路を備える。冷却流体は、鋳型12内の溶融金属から熱を吸収することで、溶融金属を冷却し、凝固させる。この場合、金属は、液状芯部20を包み込む形で凝固した外側面18を有するスラブを形成するように凝固する。
【0044】
設備2は、鋳型12の下流側にローラ・ガイド16を備える。ガイド16は、外側面18が凝固したスラブを鋳型12の外へ案内することができる。図2aからわかるように、スラブは、ガイド16内を移動するにつれて徐々に凝固する。つまり、鋳型12から遠ざかるにつれて、凝固したスラブの外側面18の体積は増大し、スラブの液状芯部20の体積は減少する。
【0045】
図3に鋳型12をさらに詳細に示した。図では、4枚のプレート22(断面図の位置関係から4枚目は見えない)を有している。プレート22は、熱伝導率が高く、そのために冷却装置14と鋳型12との間の熱交換が容易となる材料である銅または銅合金製である。プレート22は、鋳型12が全体に長方形または正方形の断面を有するようにアレンジされる。しかし、鋳型がそれ以外の断面形状を有するようにプレートをアレンジすることもできる。
【0046】
図4に別アングルの鋳型12を示した。鋳型12の少なくとも上部は、下端が平らにされた浸漬鋳込みノズル11を部分的に受ける漏斗23の形状をなす。この形状は、鋳型が薄いスラブの鋳造用である場合には特に適している。
【0047】
図5に鋳型12のプレート22の1つを示した。プレートは、鋳込み軸と平行でない方向に延びる溝24を有する。この図では、溝は、プレートの全長にわたってほぼ水平な方向に延びている。しかし、溝24は、プレート22の長さの一部に関してのみ、たとえば、薄いスラブ鋳造用の鋳型の場合に、中央部分に関してのみ延びるものであってもよい。溝24は、その全長にわたってほぼ均一な深さを有する。
【0048】
溝24が取り得る様々な形状を図5a~図5dに示した。溝24は、溝に対してほぼ相補的な形状のストリップ26によって全長にわたって塞がれる。ストリップ26は、プレート22と同じ材料で、すなわち銅または銅合金によって製作されることが好ましい。ストリップ26は、溝24を塞ぐ前に全体が形成されたインサートを含む。そのため、ストリップ26は、鋳型12に設置される前に全体が形成される。つまり、ストリップ26は、溝24を埋めるときにその場で形成されるものではない。
【0049】
溝24およびストリップ26は、この先で説明する機能をもつ光ファイバを通すのに適した形状を有する。特にこの場合、図5a~図5dを見るとわかるように、溝24もしくはストリップ26(またはその両方)は、光ファイバを収容するための小溝27を有する。光ファイバを溝の中に収めた後、溝24をその全長にわたって埋めるようにストリップ26をたとえば電子ビーム溶接などによって溶接する。
【0050】
変形実施形態では、ストリップ26は、溝24をストリップ26によって埋める前に互いに溶接された複数の部品から構成される。そうすることで、ストリップ26の長さを調整することと、特に溝24の長さに応じて、ストリップ26を構成する部品の数を選ぶことによって調整することができる。
【0051】
図5aの実施形態では、溝24とストリップ26は曲線的な輪郭を有しており、小溝27をもつのはストリップ26である。
【0052】
図5bの実施形態では、溝24とストリップ26は曲線的な輪郭を有しており、小溝27をもつのは溝24である。
【0053】
図5cの実施形態では、溝24とストリップ26は直線的な輪郭を有しており、小溝27をもつのは溝24である。
【0054】
図5dの実施形態では、溝24とストリップ26はテーパ状又は円錐台形の断面を有しており、小溝27をもつのは溝24である。とりわけ、溝24の断面は、深くなるにつれて溝が広がる格好になっている。そのため、溝24の形状は、ストリップ26をそのいずれか一方の端部から溝24に沿って滑り込ませるなどして溝24の中に一旦収めると、ストリップ26を定位置に保持することを可能にする。そうすることで、ストリップ26を鋳型12に溶接する必要がなくなり、経済的に有利となる。溝24内へのストリップ26の挿入が一段と容易になるようにするため、たとえば溝レベルで、プレート22の反対側に位置する溝24と平行な軸の周りにプレートをごくわずかに湾曲させることができる。すると、溝24が開いた形になり、ストリップ26を、難なく溝の中に滑り込ませることができる。好ましくは、その湾曲は、銅プレートの弾性変形限度を超えることなく行われる。
【0055】
図6および図7を参照すると、溝24の中に光ファイバ28が収められている。光ファイバ28は、クラッド30と、クラッド30によって囲まれたコア32とを備える。光ファイバ28は、そのコア32の中に複数のブラッグ・フィルタ34を備える。光ファイバ28は、1メートル当たり少なくとも10個のブラッグ・フィルタを備え、好ましくは1メートル当たり少なくとも20個のブラッグ・フィルタを、より好ましくは1メートル当たり少なくとも30個のブラッグ・フィルタを、さらに好ましくは1メートル当たり少なくとも40個のブラッグ・フィルタを備える。
【0056】
光ファイバ28は、溝24内に収められるときは、むき出しのままであっても、保護被覆付きであっても、または設置前に管に挿入されてもよい。その被覆または管は、光ファイバ28の半径を増大させる役割を果たすことができ、それによって溝24の直径のすべて、またはほとんどすべてを埋め合わせることができる。光ファイバは、時に上述のような被覆や管がありうることを考慮しつつ、1.6mm超の直径を有することが好ましい。
【0057】
図7に光ファイバ28の動作を示す。ブラッグ・フィルタ34は、フィルタ製造者による調節が可能な反射波長と呼ばれる、所定の値にセンタリングした波長帯域で光を反射させることができるフィルタである。この所定の値はまた、特にフィルタが置かれている温度の関数でもあり、その関係は各々のフィルタについて次式のように書くことができる。
λ反射=f(λ,T)
ここで、λ反射はフィルタによって有効に反射される波長、fは既知の関数、Tはフィルタの温度、λは所定の温度、たとえば周囲温度でフィルタによって反射される波長である。
【0058】
この2つの性質により、光ファイバ28を温度センサとして使用することが可能となる。まず、たとえば5ナノメートルずつずらして選んだそれぞれ異なる反射波長の値λを有するブラッグ・フィルタ34を光ファイバ28内に配設する。続いて、多色スペクトル35aの光ビーム、たとえば白色光を光ファイバ28内に送出し、次いで反射ビームのスペクトル35bに現れる波長のピークを決定する。各ピークについて、測定値λ反射と周囲温度における反射波長の理論値λとを比較し、関数fによって当該のフィルタの温度Tを計算する。別の方法として、光ファイバ28が収まる溝24(通路24)の構成上可能であれば、伝送されてくるビーム35cのスペクトルの谷をもとに、それらのステップを行うこともできる。
【0059】
このように、鋳型12のプレート22の1つに光ファイバ28を設置することで、そのプレートの所定の位置における温度を測定し、その経時的な変化をたどることができる。十分な数の測定箇所を得るため、向かい合わせの2つのプレート22内に、望むらくは鋳型12の4つのプレート22の各々に、少なくとも1つの光ファイバ28を設置することが好ましい。
【0060】
また、鋳型12の温度を異なる2つの高さで測定できるように、プレート22ごとに2つの光ファイバ28を設置することも好ましい。たとえば、各々のプレートに2つの光ファイバ28を互いに平行かつ15~25センチメートルの間隔となるように設置することができる。
【0061】
ブレークアウトの検出は以下のようにして行う。
【0062】
鋳型12内の金属が鋳型のプレート22に付着するゾーン36の伝播を、図8a~図8dに示した。図の右下にあるグラフはそれぞれ、上方の光ファイバ28aのブラッグ・フィルタ34で測定した温度の時間的推移(上の曲線)と、下方の光ファイバ(28b)のブラッグ・フィルタ34で測定した温度の時間的推移を示している。
【0063】
図8aおよび図8bのグラフからわかるように、上方の光ファイバ28aは、ゾーン36における鋳型12への金属の付着に対応する温度の異常な上昇を検出している。これは、ブレークアウトが切迫していることを示す第1のサインである。
【0064】
続いて、図8cおよび図8dのグラフからわかるように、下方の光ファイバ28bは、上方の光ファイバ28aによってそれ以前に検出されていた温度の異常上昇を検出する。これは、ブレークアウトが切迫しているという第2のサインであり、ブレークアウトが回避できそうもないことを確認するものである。
【0065】
光ファイバ28aおよび28bによって検知された情報が設備2の利用者に通知されるようにするため、設備は、
- 光ファイバに光を送出し、光ファイバによる反射光および伝送光の少なくとも1つを受け取るようにアレンジされた送受装置と、
- 送受装置で受け取った反射光および伝送光の少なくとも1つに関するデータを鋳型の様々な箇所における温度に関する情報に変換するようにアレンジされたプロセッサと、
- プロセッサに接続されたユーザー・インタフェースを備える端末と
を備える。
【0066】
プロセッサは、また、送受装置で受け取った反射光および伝送光の少なくとも1つに関するデータをブレークアウト検出に関する情報に変換するようにアレンジされる。
【0067】
それらの要素(わかりやすくするために図示していない)により、光ファイバ28による温度測定値を、設備2の利用者にわかりやすいブレークアウトの検出または不検出の情報に変換することが可能となる。つまり、光ファイバ28を装備した鋳型12、送受装置、プロセッサおよび端末によって、ブレークアウト検出システムが形成される。ブレークアウト有の検出結果が出た場合は、利用者は、ブレークアウトによって引き起こされる損害を抑える、さらには損害を未然に防ぐための措置を講じることができる。
【0068】
本発明は、説明した実施形態だけに限定されるものではなく、当業者であれば、それ以外の実施形態も明らかに思い浮かぶであろう。
【0069】
特に、鋳型については、より従来型の、漏斗なしの直線的な形状のものを計画することができよう。
【0070】
鋳型には、互いにほぼ平行をなす複数の溝に収められた複数の光ファイバを装備することを計画できよう。
【符号の説明】
【0071】
2 設備(金属連続鋳造設備)
4 取鍋
6 機械式アーム
8 タンディッシュ
10 ストッパ
11 鋳込みノズル
12 鋳型
14 冷却装置
16 ガイド
18 凝固した外側面
20 液状芯部
22 プレート
23 漏斗
24 溝
26 ストリップ
27 小溝
28 光ファイバ
30 クラッド
32 コア
34 ブラッグ・フィルタ
35a 多色スペクトル
35b 反射ビームのスペクトル
36 ゾーン
図1
図2a-2b】
図3
図4
図5
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
【国際調査報告】