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特表2022-542215温度制御式無線周波数共振器及び対応する無線周波数発振器
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  • 特表-温度制御式無線周波数共振器及び対応する無線周波数発振器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(54)【発明の名称】温度制御式無線周波数共振器及び対応する無線周波数発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/30 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
H03B5/30 F
H03B5/30 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576309
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020064923
(87)【国際公開番号】W WO2020254090
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】1906710
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521555731
【氏名又は名称】エコール・ナショナル・スーペリウール・ドゥ・メカニーク・エ・デ・ミクロテクニーク-ウエヌエスエムエム
【氏名又は名称原語表記】ECOLE NATIONALE SUPERIEURE DE MECANIQUE ET DES MICROTECHNIQUES-ENSMM
(71)【出願人】
【識別番号】503466808
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィーク(セーエヌエールエス)
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】バロン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マルタン,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ソウマン,ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】グルソン,ヤニック
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA06
5J079BA02
5J079BA41
5J079CA04
5J079CA12
5J079CB01
5J079FA26
(57)【要約】
本発明は、断熱筐体110を備える温度制御式RF共振器200に関し、当該断熱筐体の内部に、RF入力信号120eが供給されるとRF出力信号120sを送出するように構成される、少なくとも1つの共振素子120と、LF電力供給信号130aliにより給電されると熱筐体内に熱エネルギーを供給するように構成される、前記少なくとも1つの加熱素子130と、熱筐体内の温度に従ってLF電気測定信号140mesを送出するように構成される少なくとも1つの温度プローブ140とが実装される。このようなRF共振器は、少なくとも1つの入出力ポート200es1、200es2であって、断熱筐体を通過し、RF信号120e、120sのうちの1つの信号と、LF電気信号130ali、140mesのうちの他の信号とを少なくとも伝播する、少なくとも1つの入出力ポート200es1、200es2を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱筐体(110)を備える温度制御式無線周波数すなわちRF共振器(200)であって、該断熱筐体(110)の内部に、
RF入力信号(120e)が供給されるとRF出力信号(120s)を送出するように構成される少なくとも1つの共振素子(120)と、ここで、前記RF出力信号は、該少なくとも1つの共振素子の共振周波数を中心としてフィルタリングされた前記RF入力信号に対応しており、
低周波数すなわちLF電力信号(130ali)により給電されると熱エネルギーを前記熱筐体内に供給するように構成される少なくとも1つの加熱素子(130)と、
前記断熱筐体内の温度の関数としてLF電気測定信号(140mes)を送出するように構成される少なくとも1つの温度センサ(140)と
が実装され、
該RF共振器は、前記断熱筐体を横断する少なくとも1つの入出力ポート(200es1、200es2)を備え、
該少なくとも1つの入出力ポートは、
前記RF信号(120e、120s)のうちの1つの信号と、
前記LF電気信号(130ali、140mes)のうちの他の信号と
を少なくとも伝播することを特徴とするRF共振器。
【請求項2】
前記断熱筐体の内部に、
前記RF信号が伝播し、前記少なくとも1つの共振素子が実装され、LF電気成分を遮断するデカップリング手段を備えるRFパス(200crf)
を更に備える、請求項1に記載のRF共振器。
【請求項3】
前記デカップリング手段は、前記少なくとも1つの共振素子を備える、請求項2に記載のRF共振器。
【請求項4】
前記断熱筐体の内部に、
前記LF電力信号が伝搬し、前記少なくとも1つの加熱素子が実装され、RF電気成分を遮断する少なくとも1つの第1のトラップ回路(200cb1)を備える第1のLFパス(200cbf1)、又は
前記LF電気測定信号が伝播し、前記少なくとも1つの温度センサが実装され、RF電気成分を遮断する少なくとも1つの第2のトラップ回路(200cb2)を備える第2のLFパス(200cbf2)、
若しくはこれらの両方を更に備える、請求項2又は3に記載のRF共振器。
【請求項5】
前記RFパスの第1の末端及び前記第1のLFパスの第1の末端は、前記断熱筐体を横断する第1の入出力ポートに電気的に接続される、又は
前記RFパスの第2の末端及び前記第2のLFパスの第1の末端は、前記断熱筐体を横断する第2の入出力ポートに電気的に接続される、
若しくはこれらの両方の接続を有する、
請求項4に記載のRF共振器。
【請求項6】
前記RF共振器は、前記第1のLFパス及び前記第2のLFパスを備え、
前記第1のLFパスの第2の末端及び前記第2のLFパスの第2の末端は、前記断熱筐体を横断する第3の入出力ポート(200es3)に電気的に接続される、
請求項4又は5に記載のRF共振器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のRF共振器(200)を備えるRF発振器。
【請求項8】
前記RF共振器は、請求項5又は6に記載のものであり、
前記第1の入出力ポート(200es1)は少なくとも、
前記RF入力信号及び前記RF出力信号をそれぞれ伝播し、LF電気成分を遮断する第1のデカップリング手段(300md1)を備える前記発振器のRFパスの第1の末端と、
前記LF電力信号を伝播し、RF電気成分を遮断する前記発振器の少なくとも1つの第1のトラップ回路(300cb1)を備える前記発振器の第1のLFパスと
の両方に電気的に接続され、又は
前記第2の入出力ポート(200es2)は少なくとも、
前記RF出力信号及び前記RF入力信号をそれぞれ伝播し、第2のLF電気成分を遮断する第2のデカップリング手段(300md2)を備える前記発振器の前記RFパスの第2の末端と、
前記LF電気測定信号を伝播し、RF電気成分を遮断する前記発振器の少なくとも1つの第2のトラップ回路(300cb2)を備える前記発振器の第2のLFパスと
の両方に電気的に接続される、
若しくはこれらの接続の両方を有する、
請求項7に記載のRF発振器。
【請求項9】
前記RF共振器は、請求項6に記載のものであり、前記第3の入出力ポートは、前記RF発振器の電気アースに電気的に接続されている、請求項7又は8に記載のRF発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、精密周波数源のものである。
【0002】
より詳細には、本発明は、温度制御式無線周波数(すなわちRF)共振器及び対応するRF発振器に関する。
【0003】
よって、本発明は、アナログ用途、例えば精密RF信号の生成を必要とする分野にせよ、デジタル用途、例えば精密クロックの生成を必要とする分野にせよ、多くの用途を有する。例としては、RF通信(例えばセルラ、軍用、宇宙等)、高いクロック精度が求められる銀行取引等が挙げられるが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0004】
周波数源は、アナログ用途(例えばRF搬送波の生成のため)及びデジタル用途(例えばデジタルフリップフロップ回路をクロック制御することを目的としたクロック生成のため)の両方のあらゆる種類の周期信号を生成するために必要である。
【0005】
多くのRF周波数源は、1つ(又はそれ以上)の共振素子であって、発振器の内部で維持される周期信号を、当該共振素子の共振周波数を中心としてフィルタリングするための、共振素子の使用に基づく。そのような共振素子の使用は、特に、発振器によって維持される周期信号の位相ノイズ性能を、共振素子によって行われるフィルタリングにより高めることを可能にする。
【0006】
しかしながら、実際に用いられる共振素子(例えば、MEMS(微小電子機械システム(MicroElectroMechanical Systems))、圧電、SAW(表面音波)、BAW(バルク音波)等)の物理的性質により、そのような共振素子の共振周波数は、その温度に依存する。このために、既知の精密周波数源は、実装する共振素子の温度制御を用いる。
【0007】
例えば、図1は、既知の実施態様によるそのような温度制御式RF共振器100を示す。より詳細には、RF共振器100は、断熱筐体110を備え、当該断熱筐体110の内部に、以下のものが実装される。
- RF入力信号120eが供給されるとRF出力信号120sを送出するように構成される共振素子120。より詳細には、RF出力信号120sは、共振素子120の共振周波数RFを中心としてフィルタリングされたRF入力信号120eに対応する。
- 低周波数すなわちLF電力信号130aliにより給電されると熱筐体110内に熱エネルギーを供給するように構成される加熱素子130。例えば、加熱素子130は、電流が通過すると(この場合は電気信号130aliに相当する電流)ジュール効果により熱を発生する抵抗器である。或る特定の共通する実施態様において、電気信号130aliは、連続的、又はDC(「直流」を表す)であることが望ましい。しかしながら、電気信号130aliを生成するために用いられる電源の安定性によっては、当該信号は、LFという用語が本願による理想的なDCの場合を含むことに鑑みて、やはりより一般的にはLFとなる。さらに、いくつかの共通する実施態様において、そのような電気信号130aliは、サーボループによりスレーブ化されることになっている。これは、例えば、図3に関連して後述する発振器300の構成の場合である。このタイプの制御では、電気信号130aliは、サーボループが閉じている瞬間であれ、(例えば、温度センサ140によって測定された温度変化を監視するための)制御設定ポイントの変化中であれ、経時変化する。この実施態様において、電気信号130aliの変化のスペクトルは、サーボループの帯域によって周波数制限されている。よって、当該変化は実際には、共振器100のRF共振周波数とは対照的にLFとなる。
- 熱筐体110内に存在する温度の関数としてLF電気測定信号140mesを送出するように構成される温度センサ140。例えば、温度センサ140は、温度に依存する可変抵抗器である。LF電気測定信号140mesは、この場合、温度センサ140に所与の電位差を与えたとき強度が温度の関数となる電流である。
【0008】
さらに、RF共振器100は、6つの入出力ポート100es1~100es6(所与の入出力ポートは、本願において、単一の電気接続(例えば、様々な入力/出力信号を伝播する単一の導体)を備えるものとして理解される)を備える。6つの入出力ポート100es1~100es6は、様々な上記要素を熱筐体110内で外部の電気回路、例えばRF入力信号120eを生成し維持する発振器に電気的に接続するように断熱筐体110を通過する。より具体的には、
- 入出力ポート100es1は、RF入力信号120eを筐体110の外部から共振素子120へ伝播するために用いられ、
- 入出力ポート100es2は、RF出力信号120sを共振素子120から筐体110の外部へ伝播するために用いられ、
- 入出力ポート100es3及び入出力ポート100es4は、LF電力信号130aliを筐体110の外部の電源から加熱素子130へ、及び加熱素子130から筐体110の外部の電源へそれぞれ伝播するために用いられ、
- 入出力ポート100es5及び入出力ポート100es6は、LF電気測定信号140mesを温度センサ140から筐体110の外部へ、及び筐体110の外部から温度センサ140へそれぞれ伝播するために用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのようなRF共振器100は通常、RF発振器に組み込まれて精密RF信号を生成する。しかしながら、そのような精密周波数源は、例えば、エネルギー自律型であるデバイス、又はそのようなエネルギー資源へのアクセスが限られたデバイスに(例えば、無線通信端末、衛星、ラップトップコンピュータ等に)組み込まれる場合、電力消費基準が重要となる用途にますます使われるようになっている。
【0010】
したがって、既知の共振器と比べて消費電力の少ない温度制御式RF共振器が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施の形態において、断熱筐体を備える温度制御式RF共振器が提案され、断熱筐体の内部に、
- RF入力信号が供給されるとRF出力信号を送出するように構成される少なくとも1つの共振素子と、ここで、RF出力信号は、当該少なくとも1つの共振素子の共振周波数を中心としてフィルタリングされたRF入力信号に対応しており、
- 低周波数すなわちLF電力信号により給電されると熱エネルギーを熱筐体内に供給するように構成される少なくとも1つの加熱素子と、
- 断熱筐体内の温度の関数としてLF電気測定信号を送出するように構成される少なくとも1つの温度センサと
が実装される。
【0012】
そのようなRF共振器は、熱筐体を横断する少なくとも1つの入出力ポートを備え、当該少なくとも1つの入出力ポートは、
- RF信号のうちの1つの信号と、
- LF電気信号のうちの他の信号と
を少なくとも伝播する。
【0013】
したがって、本発明は、温度制御式RF共振器の消費電力を低減するための新規で進歩性のある解決策を提供する。
【0014】
特に、入出力ポート(所与の入出力ポートは、断熱筐体を横断する単一の電気接続(例えば、異なる入力/出力信号を伝播する単一の導体)を備えるものと理解される)を、RF信号及びLF信号の両方を伝播するために再利用することにより、筐体内に存在する開口の数を最小化することができる。こうして熱損失が低減され、それにより筐体の加熱に関連するエネルギー消費が低減される。
【0015】
本発明の一実施の形態によれば、RF共振器は、断熱筐体の内部に、RF信号が伝播し、上記少なくとも1つの共振素子が実装され、LF電気成分を遮断するデカップリング手段を備えるRFパスを更に備える。
【0016】
したがって、LF信号は、対応するLFパスに送られる。そのようなデカップリング手段は、例えば1つ(又はそれ以上)のコンデンサを備える。
【0017】
一実施の形態によれば、デカップリング手段は、少なくとも1つの共振素子を備える。
【0018】
したがって、LF/RFデカップリングは、単純で効率的な方法で達成される。例えば、MEMS、圧電、SAW又はBAW型共振素子が用いられる。これは、そのような共振素子が、LFにおいて自然に容量効果を発揮するからである。
【0019】
本発明の一実施の形態によれば、RF共振器は、断熱筐体の内部に、
- LF電力信号が伝搬し、上記少なくとも1つの加熱素子が実装され、RF電気成分を遮断する少なくとも1つの第1のトラップ回路を備える第1のLFパス、又は
- LF電気測定信号が伝播し、上記少なくとも1つの温度センサが実装され、RF電気成分を遮断する少なくとも1つの第2のトラップ回路を備える第2のLFパス、
若しくはこれらのLFパスの両方を更に備える。
【0020】
したがって、RF信号は、共振器の対応するLFパスに送られる。例えば、トラップ回路(複数の場合もある)は、別個の素子として、又は分散型で(例えばRF周波数でインダクタとして動作するプリント基板の部分により)実装されるインダクタを備える。トラップ回路(複数の場合もある)は、単一のインダクタよりも所与のRF周波数における除去がより良好な、より高次のフィルタ回路として実装することもできる。
【0021】
本発明の一実施の形態によれば、RFパスの第1の末端及び第1のLFパスの第1の末端は、断熱筐体を通して第1の入出力ポートに電気的に接続され、又は、RFパスの第2の末端及び第2のLFパスの第1の末端は、断熱筐体を横断する第2の入出力ポートに電気的に接続される、若しくはこれらの両方の接続を有する。
【0022】
本発明の一実施の形態によれば、RF共振器は、第1のLFパス及び上記第2のLFパスを備える。第1のLFパスの第2の末端及び第2のLFパスの第2の末端は、断熱筐体を横断する第3の入出力ポートに電気的に接続される。
【0023】
したがって、筐体110内に存在する開口の数が更に低減され、熱損失もまた低減される。
【0024】
本発明の一実施の形態において、上記の実施の形態のいずれかによるRF共振器を備えるRF発振器を提供する。
【0025】
いくつかの実施の形態によれば、RF発振器のRF共振器は、第1のLFパス及び/又は第2のLFパス(RF共振器が当該第1のLFパス及び/又は第2のLFパスを備える上記の実施の形態のいずれかに記載のもの)を備える。これらの実施の形態において、
- 第1の入出力ポートは少なくとも、
* RF入力信号及びRF出力信号をそれぞれ伝播し、LF電気成分を遮断する第1のデカップリング手段を備える発振器RFパスの第1の末端と、
* LF電力信号を伝播し、RF電気成分を遮断する発振器の少なくとも1つの第1のトラップ回路を備える第1の発振器LFパスと
の両方に電気的に接続され、又は
- 第2の入出力ポートは少なくとも、
* RF出力信号及びRF入力信号をそれぞれ伝播し、LF電気成分を遮断する第2のデカップリング手段を備える発振器RFパスの第2の末端と、
* LF電気測定信号を伝播し、RF電気成分を遮断する少なくとも1つの第2の発振器トラップ回路を備える第2の発振器LFパスと
の両方に電気的に接続される、
若しくはこれらの両方の接続を有する。
【0026】
いくつかの実施の形態によれば、RF共振器の第1のLFパスの第2の末端及びRF共振器の第2のLFパスの第2の末端は、断熱筐体を横断する第3の入出力ポートに電気的に接続される。関連する実施の形態において、第3の入出力ポートは、RF発振器の電気アースに電気的に接続される。
【0027】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、例示的で非限定的な例となるように、図に関連して行われる以下の説明を読むことで、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】「背景技術」のセクションに関連して既に上述しており、既知の実施態様による温度制御式RF共振器を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による温度制御式RF共振器を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による図2の温度制御式RF共振器を備えるRF発振器を示す図である。
図4a図3の発振器について得られた位相ノイズ性能を、図1の既知のRF共振器を備える発振器に対して示す図である。
図4b図3の発振器について得られた位相ノイズ性能を、図1の既知のRF共振器を備える発振器に対して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一般原理は、温度制御式RF共振器の1つ(又は複数)の入出力ポートを、RF共振器の断熱筐体内に存在する素子のうちのいくつかにより用いられるRF信号(例えばRF入力信号120e又はRF出力信号120s)及びLF信号(例えばLF電力信号130ali又はLF電気測定信号140mes)の両方を伝播するために再利用することに基づく。こうして熱損失が低減され、それにより筐体の加熱に関連するエネルギー消費が低減される。
【0030】
ここで図2に関連して、本発明の一実施形態による温度制御式RF共振器200を説明する。
【0031】
RF共振器200は、図1に関連して上述したRF共振器100の構成要素のうちのいくつかを用いる。より詳細には、RF共振器200もまた、断熱筐体110を備え、この断熱筐体110の内部に、RF入力信号120eが供給されるとRF出力信号120sを送出するように構成される共振素子120が実装される。図1に関連して上述したように、RF出力信号120sは、共振素子120の共振周波数RFを中心としてフィルタリングされたRF入力信号120eに対応する。他の実施形態において、解決策のサイズに影響はあるものの、いくつかの共振素子を用いてRF信号のフィルタリングを改善し、よってノイズ性能を改善する。
【0032】
図2に戻ると、筐体110内には、LF電力信号130aliにより給電されると熱エネルギーを熱筐体110内に供給するように構成される加熱素子130も実装される。図1に関連して上述したように、加熱素子130は、例えば、この場合は電気信号130aliに相当する電流が通過するとジュール効果により熱を発生する抵抗器である。他の実施形態において、いくつかの加熱素子が、例えば筐体110内にて分散型で用いられて、均一な温度を与える。
【0033】
図2に戻ると、筐体110内には、熱筐体110内の温度に比例するLF電気測定信号140mesを送出するように構成される温度センサ140も実装される。図1に関連して上述したように、温度センサ140は、例えば、温度に依存する可変抵抗器である。LF電気測定信号140mesは、この場合、温度センサ140に所与の電位差を与えたとき強度が温度の関数となる電流である。他の実施形態において、いくつかの温度センサが、例えば筐体110内にて分散型で用いられて、より良い温度推定値を与える。
【0034】
図2に戻ると、RF共振器200は、断熱筐体110を横断する2つの入出力ポート200es1及び200es2を含み、当該2つの入出力ポートのそれぞれは、RF信号120e又は120sとLF信号130ali又は140mesとを伝播する。したがって、RF信号120e又は120sとLF信号130ali又は140mesとの両方を伝播するために入出力ポート200es1及び200es2を再利用することにより、筐体110内に存在する開口の数を最小化することができる。こうして熱損失が低減され、それにより筐体110の加熱に関連するエネルギー消費が低減される。実際、エネルギー消費は、筐体110の内部と外部との間の様々なアクセスによる熱損失を補うために供給される電力に本質的に関連している。
【0035】
そのような損失には、いくつかの原因がある。すなわち、熱伝導、放射、及び対流である。対比として、発振回路の電力消費の大きさは、数十マイクロワット~数百マイクロワットであり得るのに対し、筐体110内に存在する素子の電力消費は100mW程度である。
【0036】
一般に、既知の産業実装において、共振素子120は真空に置かれるため、対流が制限されている。放射は、設定温度に維持されるゾーンを取り囲むハウジングの裏張りによって制御される。熱伝導は、加熱されるゾーン及び筐体110の外部をつなぐ様々な物理的要素によるものである。これらの要素は、電線及び機械的支持体である。例えば、直径25μmの金ワイヤボンディングワイヤは、26MK.W-1.m-1の比抵抗を有する。この比抵抗を、共振器を実装するために必要なワイヤの数で割る。例えば、400μm×100μmの表面上の厚さ100μmの機械的ガラス支持体を検討する場合、2.5kK.W-1の熱抵抗が得られ、3つの長さ1mmのワイヤ(例えば図2の構成)で1.9kK.W-1.m-1、及び5つのやはり長さ1mmのワイヤ(例えば図1の構成)で1.7kK.W-1.m-1の同等の抵抗を与える。したがって、筐体110内の温度変化が145Kである場合に5つのワイヤによる消費電力は85.5mW、3つのワイヤを有する構成の消費電力は75mWと推定することができ、5つの入出力ポートから3つの入出力ポートにすることで電力消費が12%削減される。長さ100μmのワイヤについて同じ計算を行うと、5つの入出力ポートから3つの入出力ポートにすることで電力消費が33%削減される。
【0037】
また、起動時間(すなわち、RF共振器200の素子を所望の温度にし、よってその共振周波数を所望の周波数に正確に安定させるために必要な時間)は、RF共振器200の熱質量、とりわけ熱漏洩に関連する。よって、RF共振器200の起動時間もまた、既知のRF共振器100の起動時間と比較して削減される。
【0038】
他の実施形態において、単一の入出力ポートが、筐体110を通してRF信号及びLF信号の両方を伝播するために再利用される。この場合、いくつかの入出力ポートが再利用される図2の場合と比べて、少なくはなるものの熱損失に関して利得がなお得られる。
【0039】
図2に戻ると、入出力ポート200es1は、RF入力信号120e及びLF電力信号130aliの両方を伝播する。このために、RFパス200crf(RFパス200crfは、共振素子120が実装され、図中の点線矢印200crfに示すようにRF信号が筐体110内を伝播するパスである)の第1の末端及び第1のLFパス200cbf1(第1のLFパス200cbf1は、加熱素子130が実装され、図中の点線矢印200cbf1に示すようにLF電力信号130aliが筐体110内を伝播するパスである)の第1の末端は、入出力ポート200es1に電気的に接続される。
【0040】
同様に、入出力ポート200es2は、RF出力信号120s及びLF電気測定信号140mesの両方を伝播する。このために、RFパス200crfの第2の末端及び第2のLFパス200cbf2(第2のLFパス200cbf2は、温度センサ140が実装され、図中の点線矢印200cbf2に示すようにLF電気測定信号140mesが筐体110内を伝播するパスである)の第1の末端は、入出力ポート200es1に電気的に接続される。
【0041】
他の実施形態において、RF共振器200のRFポートの役割は、RF共振器200をそのRFパス200crfの視点から見て対称に逆転される。この場合、1つの入出力ポートがRF出力信号及びLF電力信号の両方を伝播し、他の入出力ポートがRF入力信号120e及びLF電気測定信号140mesの両方を伝播する。
【0042】
図2に戻ると、RFパス200crfは、LF電気成分を遮断するデカップリング手段を含む。こうして、LF電力信号130aliは、第1のLFパス200cbf1に送られる。同様に、LF電気測定信号140mesは、第2のLFパス200cbf2に送られる。
【0043】
検討中の実施形態において、当該デカップリング手段は、共振素子120そのものを備える。実際、MEMS、圧電、SAW又はBAW等のいくつかの共振素子は、LF電気成分を遮断する自然な容量効果を有する。他の実施形態において、デカップリング手段は、例えば別個の素子の形態で実装される1つ(又はそれ以上)のコンデンサを備える。他の実施形態において、デカップリング手段は、或る特定のLF周波数の除去を改善した、より高次のハイパス回路を備える。
【0044】
図2に戻ると、第1のLFパス200cbf1は、LF電気成分を遮断する第1のトラップ回路200cb1を含む。同様に、第2のLFパス200cbf2は、RF電気成分を同じく遮断する第2のトラップ回路200cb2を含む。したがって、RF信号120e及び120sは、LFパス200crfに送られる。
【0045】
本実施形態において、第1のトラップ回路200cb1及び第2のトラップ回路200cb2は、別個の素子として、又は分散型で(例えばRF周波数においてインダクタとして動作するプリント基板の部分により)実装されるインダクタを備える。他の実施形態において、第1のトラップ回路200cb1及び/又は第2のトラップ回路200cb2は、複数の素子(別個の又は分散型の)を備えて、単一のインダクタよりも所与のRF周波数における除去がより良好な、より高次のフィルタ回路を提供する。
【0046】
図2に戻ると、第1のLFパス200cbf1の第2の末端及び第2のLFパス200cbf2の第2の末端は、第3の入出力ポート200es3に電気的に接続される。したがって、筐体110内に存在する開口の数は更に低減され、熱損失もまた低減される。
【0047】
他の実施形態において、複数の入出力ポートを用いて、RF共振器200において実装される様々なLF信号の筐体110の外部へのリターンパスを実装する。
【0048】
次に図3に関連して、RF共振器200を備えるRF発振器300を説明する。
【0049】
より詳細には、RF共振器200は、例えば位相ノイズに関してより良い性能を達成するために、発振器のアクティブ部分310によって維持される発振信号をフィルタリングさせる。
【0050】
また、アクティブ部分310は、温度センサ140によって送出されたLF電気測定信号140mesも測定し、電気信号140mesの測定値に従って加熱素子130のLF電力信号130aliを生成する。他の実施形態において、LF電気信号140mesの測定機能及びLF電気信号130aliの生成機能は、この場合はRF振動の生成及び維持のために、専用のアクティブ部分310からずれている。
【0051】
図3に戻ると、入出力ポート200es1は、
- RF入力信号120eを伝播し、LF電気成分を遮断する第1のデカップリング手段300md1を備える、発振器300のRFパスの第1の末端と、
- LF電力信号130aliを伝播し、RF電気成分を遮断する発振器300の第1のトラップ回路300cb1を備える、発振器300の第1のLFパスと
の両方に電気的に接続される。
【0052】
さらに、入出力ポート200es2は、
- RF出力信号120sを伝播し、LF電気成分を遮断する第2のデカップリング手段300md2を備える、発振器300のRFパスの第2の末端と、
- LF電気測定信号140mesを伝播し、RF電気成分を遮断する発振器300の第2のトラップ回路300cb2を備える、発振器300の第2のLFパスと
の両方に電気的に接続される。
【0053】
検討中の実施形態において、発振器300の第1のトラップ回路300cb1及び第2のトラップ回路300cb2は、別個の素子として、又は分散型で(例えばRF周波数においてインダクタとして動作するプリント基板の部分により)実装されるインダクタを備える。他の実施形態において、発振器300の第1のトラップ回路300cb1及び/又は発振器300の第2のトラップ回路300cb2は、(別個の又は分散型の)複数の素子を備えて、単純なインダクタよりも所与のRF周波数におけるより良好な除去を示す、より高次のフィルタ回路を提供する。
【0054】
図3に戻ると、第1のデカップリング手段300md1及び第2のデカップリング手段300md2は、例えば別個の素子として実装される1つ(又はそれ以上)のコンデンサを備える。他の実施形態において、第1のデカップリング手段300md1及び/又は第2のデカップリング手段300md2は、或る特定のLF周波数の改良された除去を可能にする、より高次のハイパス回路として実装される。
【0055】
筐体110を通してRF信号及びLF信号の両方を伝播するために単一の入出力ポートが再利用されるRF共振器200の上記実施形態において、当該入出力ポートのみが、上述した対応する手段を介して発振器300のRFパスとLFパスのうちの一方との両方に接続される。他の入出力ポートは、対応するRF又はLFパスに既知の方法で接続される。
【0056】
図3に戻ると、入出力ポート200es3は、発振器300の電気アースに電気的に接続される。
【0057】
いくつかの入出力ポートを用いて、RF共振器200において実装される異なるLF信号の全部又は一部の筐体110の外部へのリターンパスを実装する上記実施形態において、当該入出力ポートは、発振器300の電気アースにそれぞれ電気的に接続される。
【0058】
次に図4a及び図4bに関連して、418MHzで共振するように構成されている構成の発振器300について得られる或る特定の位相ノイズ性能(NΦ)を説明する。
【0059】
より具体的には、
- 曲線400a2(図4a)は、発振器300について測定された位相ノイズを、共振器200の共振周波数からずらした周波数の関数として、筐体110内の所与の温度(ここでは62℃)について示し、
- 曲線400a1(図4a)は、RF共振器200の代わりに使用される既知のRF共振器100を除いて発振器300と同一の構成要素を有する基準発振器について測定した位相ノイズを示す。ここで、位相ノイズは同様に、共振器100の共振周波数からずらした周波数の関数として、筐体110内の同一の所与の温度(ここでは62℃)について測定される。
【0060】
曲線400a1及び400a2を比較することにより、発振器300の位相ノイズ性能の劣化は、基準発振器と比較してわずか(すなわち、実際には20%未満)であることに留意されたい。この結果は、共振器200内及び発振器300内に実装される異なる付加的要素(トラップ回路200cb1、200cb2、300cb1、300cb2及びデカップリング手段300md1、300md2)が存在しても有効である。
【0061】
筐体110内の温度の関数として得られた位相ノイズ性能を観測することによって同一の結論を導くことができる。より具体的には、
- 曲線400b1及び400b2(図4b)は、それぞれ発振器300及び基準発振器について、当該発振器内に実装される共振器の共振周波数からずらした100Hzで、温度の関数として測定された位相ノイズ(曲線400b1及び400b2のそれぞれは、28.5℃での曲線400b2の値に対して正規化される)を示し、
- 曲線400b3及び400b4(図4b)は、それぞれ発振器300及び基準発振器について、当該発振器内に実装される共振器の共振周波数からずらした1kHzで、温度の関数として測定された位相ノイズ(曲線400b3及び400b4のそれぞれは、28.5℃での曲線400b4の値に対して正規化される)を示し、
- 曲線400b5及び400b6(図4b)は、それぞれ発振器300及び基準発振器について、当該発振器内に実装される共振器の共振周波数からずらした10kHzで、温度の関数として測定された位相ノイズ(曲線400b5及び400b6のそれぞれは、28.5℃での曲線400b6の値に対して正規化される)を示す。
【0062】
曲線400b1及び400b2を互いに、次いで曲線400b3及び400b4を、最後に曲線400b5及び400b6を比較することにより、発振器300の位相ノイズ性能の劣化は、ここでは、筐体110内で考慮する温度に関係なく、基準発振器に対してわずか(すなわち、実際には20%未満)であることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4a
図4b
【国際調査報告】