(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(54)【発明の名称】医療機器位置通知システム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/095 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
A61M25/095
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504145
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 US2020044183
(87)【国際公開番号】W WO2021021998
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514300557
【氏名又は名称】アヴェント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクミカエル、ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ビエール、ケリー・アール
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB26
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB62
4C267CC07
4C267CC08
4C267CC20
4C267CC21
4C267CC23
4C267CC24
4C267GG02
4C267GG21
4C267HH08
4C267HH11
(57)【要約】
本発明の医療機器位置通知システムは、プロセッサと、プロセッサに接続された表示装置と、患者の体内に挿入されるように構成された医療機器と、医療機器に設けられた少なくとも1つのセンサと、を備える。センサは、電気的接続を介してプロセッサと通信し、センサによって測定された患者の体内における医療機器の位置に関する情報を含む信号を、プロセッサにリアルタイムに送達するように構成されている。表示装置は、医療機器の位置のトレース経路をリアルタイムで表示するように構成されている。また、表示装置は、患者の体内における医療機器の位置に関する通知を表示するように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器位置通知システムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサに接続された表示装置と、
患者の体内に挿入されるように構成された医療機器と、
前記医療機器に設けられた少なくとも1つのセンサと、を備え、
前記センサは、電気的接続を介して前記プロセッサと通信し、前記センサによって測定された前記患者の体内における前記医療機器の位置に関する情報を含む信号を、前記プロセッサにリアルタイムに送達するように構成され、
前記表示装置は、前記医療機器の位置のトレース経路をリアルタイムで表示するように構成され、かつ、
前記表示装置は、前記患者の体内における前記医療機器の位置に関する通知を表示するように構成された、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記プロセッサによって実行されたときに、前記プロセッサに、
(i)前記センサから受信した前記信号を解釈するステップと、
(ii)前記センサから受信した前記信号の解釈に基づいて、前記医療機器の位置が予め定められた位置に到達したか否か、または前記患者の消化管から逸脱したか否かを示す通知を前記表示装置に表示させるステップと、を行わせる命令を格納するメモリ装置をさらに備える、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記センサは、位置センサ、二酸化炭素センサ、真空減衰センサ、光センサ、音センサ、圧力センサ、pHセンサ、湿度センサ、温度センサ、またはそれらの任意の組み合わせを含む、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記センサは、第1のセンサと、1以上の第2のセンサとを含み、
前記第1のセンサからの信号が、前記医療機器の位置が前記患者の消化管から逸脱したことを示すと解釈された場合には、前記医療機器の位置を確認するために、前記第2のセンサからの信号を前記プロセッサに提供し、前記プロセッサによって解釈するように構成された、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、
前記第1のセンサは、位置センサであり、
前記第2のセンサは、二酸化炭素センサ、真空減衰センサ、光センサ、音センサ、圧力センサ、pHセンサ、湿度センサ、温度センサ、またはそれらの任意の組み合わせを含む、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
前記表示装置に表示される前記医療機器の位置に関する前記通知は、ハイライト表示された視覚的シンボルである、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、
前記表示装置に表示される前記医療機器の位置に関する前記通知は、臓器の形をした視覚的シンボルである、システム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムであって、
前記表示装置に表示される前記通知は、前記医療機器が前記患者の身体の右肺内に位置することを前記信号が示す場合には、右肺の画像または輪郭として描かれる視覚的シンボルである、システム。
【請求項9】
請求項7に記載のシステムであって、
前記表示装置に表示される前記通知は、前記医療機器が前記患者の身体の左肺内に位置することを前記信号が示す場合には、左肺の画像または輪郭として描かれる視覚的シンボルである、システム。
【請求項10】
請求項7に記載のシステムであって、
前記表示装置に表示される前記通知は、前記医療機器が前記患者の身体の胃内に位置することを前記信号が示す場合には、胃の画像または輪郭として描かれる視覚的シンボルである、システム。
【請求項11】
請求項7に記載のシステムであって、
前記表示装置に表示される前記通知は、前記医療機器が前記患者の身体の小腸内に位置することを前記信号が示す場合には、十二指腸の画像または輪郭として描かれる視覚的シンボルである、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、
前記表示装置に表示される前記医療機器の位置に関する前記通知は、前記医療機器の位置が予め定められた位置に到達したとき、または前記医療機器の位置が予め定められた経路から逸脱したときに表示される、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、
前記表示装置に表示される前記通知は、前記医療機器が前記予め定められた経路から逸脱したことを前記センサが示す場合には、第1の警告色でハイライト表示される、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、
前記センサは、第1のセンサと、1以上の第2のセンサとを含み、
前記表示装置に表示される前記通知のハイライト表示は、前記第2のセンサのうちの少なくとも1つにより、前記医療機器が前記予め定められた経路から逸脱したことが確認された場合には、前記第1の警告色から第2の警告色に変化する、システム。
【請求項15】
請求項12に記載のシステムであって、
前記予め定められた経路は、前記患者の正中線に沿った経路である、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記表示装置は、前記医療機器の位置が前記正中線の右側または左側に逸脱した場合に、前記患者の体内における前記医療機器の位置に関する前記通知を表示する、システム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムであって、
前記表示装置に表示される前記通知は、前記センサが、前記医療機器が予め定められた位置に到達したことを示す場合には、第1の確認色でハイライト表示される、システム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムであって、
前記表示装置に表示される前記通知は、点滅する視覚的シンボルである、システム。
【請求項19】
医療機器の位置をガイダンスする方法であって、
患者の体内に挿入されるように構成された医療機器、及び前記医療機器に設けられた少なくとも1つのセンサを提供するステップと、
患者の身体の開口部に前記医療機器を挿入するステップと、
有線または無線の電気的接続を介して前記センサをプロセッサに電気的に接続するステップと、
前記センサを作動させるステップであって、前記センサにより、前記患者の体内における前記医療機器の位置に関する情報を測定し、その情報を含む信号を、前記有線または無線の電気的接続を介して前記プロセッサにリアルタイムで送信し、前記プロセッサに接続された表示装置に、前記センサから送信された前記患者の体内における前記医療機器の位置を表示させる、該ステップと、
前記センサを作動させながら、前記患者の体内に位置する前記医療機器を前記患者の身体の前記開口部から離れる方向に向けて前進させるステップと、
前記表示装置上で、前記患者の体内における前記医療機器の位置を観察するステップであって、前記表示装置は、前記患者の体内における前記医療機器の位置に関する通知を表示するように構成されている、該ステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
(i)前記センサから受信した前記信号を解釈するステップと、
(ii)前記センサから受信した前記信号の解釈に基づいて、前記医療機器の位置が予め定められた位置に達したか否か、または前記患者の消化管から逸脱したか否かを示す通知を前記表示装置に表示させるステップと、をさらに含む、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、
前記患者の身体の前記開口部は、鼻または口である、方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法であって、
前記患者の体内における前記医療機器の位置に関する前記通知は、前記医療機器が前記患者の消化管から逸脱したときに前記表示装置に表示される、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
前記患者の体内における前記医療機器の位置に関する前記通知は、前記センサから受信した前記信号が、前記医療機器が前記患者の気管及び/または肺に入ったことを示すときに前記表示装置に表示される、方法。
【請求項24】
請求項19に記載の方法であって、
前記表示装置に表示される前記医療機器の位置に関する前記通知は、臓器の形をした視覚的シンボルである、方法。
【請求項25】
請求項19に記載の方法であって、
前記センサは、第1のセンサと、1以上の第2のセンサとを含み、
当該方法は、
前記第1のセンサからの信号が、前記医療機器の位置が前記患者の消化管から逸脱したことを示すと前記プロセッサによって解釈された場合には、前記医療機器の位置を確認するために、前記第2のセンサからの信号を前記プロセッサに提供し、前記プロセッサによって解釈するステップをさらに含む、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、
前記第1のセンサは、位置センサであり、
前記第2のセンサは、二酸化炭素センサ、真空減衰センサ、光センサ、音センサ、圧力センサ、pHセンサ、湿度センサ、温度センサ、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年7月30日出願の米国特許願第16/526、038号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明の主題は、概して、患者の体内における医療装置の位置を通知するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医師や他の医療提供者は、患者の治療にカテーテルを頻繁に使用する。既知のカテーテルには、患者の体内に挿入されるチューブが含まれる。特定のタイプのカテーテルは、患者の消化管を治療するために、患者の鼻または口から挿入される。このようなカテーテルは、経腸カテーテルとも呼ばれ、通常は栄養チューブを含む。栄養チューブは、胃や腸まで挿入され、栄養バッグに充填された液体栄養剤、液体薬剤、またはそれら2つの組み合わせを患者に供給する。
【0004】
他のタイプのカテーテルは、心血管系を治療するために、患者の静脈または動脈に挿入される。このような血管内カテーテルには、とりわけ、中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、及び末梢挿入型中心静脈カテーテルが含まれる。このようなカテーテルには、患者の静脈または動脈に挿入される比較的小さなチューブが含まれる。用途に応じて、医療提供者は、血管内カテーテルを使用して、血管閉塞を除去したり、血管内にインサートを挿入したり、患者に一定期間(ときには数週間以上)にわたって薬剤、薬物、液体、栄養剤、または血液製剤を注入したりすることができる。
【0005】
このような既知の経腸カテーテルや血管内カテーテルを使用するときは、カテーテルの遠位先端部を患者の体内における適切な位置に配置することが重要である。カテーテルの遠位先端部の配置位置を誤ると、患者を傷つけたり、患者に害を与えたりする恐れがある。例えば、医療提供者が、栄養剤または薬剤を送達するために経腸カテーテルを食道及び胃を経由して消化管の所望の位置に挿入するところを、誤って、経腸カテーテルを患者の気管、肺、または呼吸器系の他の領域に挿入してしまった場合には、液体等が肺に導入され、有害な結果、さらには致命的な結果をもたらす恐れがある。とりわけ、消化管の食道と呼吸器系の気管とは互いに近接しており、患者の体内へのカテーテルの挿入中は医療提供者から見えないため、カテーテルの配置を誤る恐れがある。また、医療提供者が誤って血管内カテーテルを心血管系の間違った血管に配置すると、患者に感染症、負傷、または有害な閉塞をもたらす恐れがある。
【0006】
場合によっては、医療提供者は、X線装置を使用して患者の体内におけるカテーテルの位置に関する情報を収集する。しかし、X線装置を使用することには、いくつかの欠点がある。例えば、X線装置は、比較的大きくて重く、比較的多量のエネルギを消費し、かつ、患者を比較的高い程度のX線放射に曝す。また、X線装置は、その大きさに起因して、通常、特別なX線室に設置されているため、一般的に、容易に使用することができない。また、X線室は、患者の部屋から遠く離れていることがある。そのため、医療提供者は、カテーテル挿入処置を行うためにX線装置を使用することは不便であると感じることがある。さらに、内臓器官の自然で継続的な動きは、医師がX線を解釈してカテーテルの遠位先端部の実際の位置を確認することを困難にするので、X線装置を使用しても、カテーテルの遠位先端部の位置を必ずしも正確に求めることはできない。加えて、X線技術の使用は、高価であり、また、患者に重要な栄養剤を供給するのに不必要な遅延を生じさせる時間のかかる作業である。
【0007】
別の既存のカテーテル位置の位置検出システムは、カテーテルの内側に配置された電磁コイルと、患者の体外に配置された電磁コイル位置受信機とを使用することを含む。電磁コイルは、一般的に、カテーテル内に挿入されるスタイレットまたはガイドワイヤに組み込まれる。電磁コイル位置受信機は、該受信機からの電磁コイルまでの距離、及び、患者の体内での電磁コイルの深さを求めるために使用することができる。また、電磁コイル位置受信機は、表示装置と通信して、該表示装置上に、患者の身体の参照画像と、参照画像上に表示された電磁コイルの画像とを示すことができる。しかしながら、このような既存のシステムにも、いくつかの欠点がある。例えば、電磁コイル位置受信機は、患者の体外の正確な位置に配置しなければならない大型の装置であり、個々の患者の解剖学的な大きさまたは形状に応じた調節を許容しない。しかしながら、栄養チューブの挿管を受けている患者は、興奮状態にあり、突然動くことが予想されるため、電磁コイル位置受信機が移動する恐れがあり、したがって、カテーテルの位置検出において位置の誤差が生じたり複雑な問題が生じたりする可能性が増加する。加えて、このような既存のシステムは、個々の患者の特定の解剖学的構造を参照することなく、非対象者(すなわち、一般的な患者)の身体の参照画像上に電磁コイルの位置を表示することができるだけである。したがって、このような既存のシステムは、患者の体内の意図された経路からのカテーテルの逸脱が推定された場合に、一般的な警告またはアラートを生成することができるだけである。このような一般的な警告またはアラートは、カテーテルの位置に関する具体的な実際の情報をほとんど提供せず、医療提供者の注意を十分に引きつけないため、医療提供者にあっさりと無視される。したがって、医療提供者は、電磁コイル及び電磁コイル位置受信機を使用してカテーテルの位置を推定することはできるが、特定の患者の解剖学的構造を推定したり見たりしたりすることはできない。
【0008】
そのため、より正確なカテーテル配置を確実にするために、患者の体内における医療装置の位置をユーザにリアルタイムで通知するシステムが求められている。特に、医療装置が不適切に配置された場合に視覚的な逸脱警報を提供する通知システムがあれば有用であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、医療機器位置通知システムに関する。本発明の医療機器位置通知システムは、プロセッサと、プロセッサに接続された表示装置と、患者の体内に挿入されるように構成された医療機器と、医療機器に設けられた少なくとも1つのセンサと、を備える。センサは、電気的接続を介してプロセッサと通信し、センサによって測定された患者の体内における医療機器の位置に関する情報を含む信号を、プロセッサにリアルタイムに送達するように構成されている。表示装置は、医療機器の位置のトレース経路をリアルタイムで表示するように構成されている。さらに、表示装置は、患者の体内における医療機器の位置に関する通知を表示するように構成されている。
【0010】
特定の一実施形態では、本発明の医療機器位置通知システムは、プロセッサによって実行されたときに、プロセッサに、(i)センサから受信した信号を解釈するステップと、(ii)センサから受信した信号の解釈に基づいて、医療機器の位置が予め定められた位置に到達したか否か、または患者の消化管から逸脱したか否かを示す通知を表示装置に表示させるステップと、を行わせる命令を格納するメモリ装置をさらに備える。
【0011】
別の実施形態では、センサは、位置センサ、二酸化炭素センサ、真空減衰センサ、光センサ、音センサ、圧力センサ、pHセンサ、湿度センサ、温度センサ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0012】
1以上の実施形態では、センサは、第1のセンサと、1以上の第2のセンサとを含み、当該システムは、第1のセンサからの信号が、医療機器の位置が患者の消化管から逸脱したことを示すと解釈された場合には、医療機器の位置を確認するために、第2のセンサからの信号をプロセッサに提供し、プロセッサによって解釈するように構成されている。さらに、一実施形態では、第1のセンサは、位置センサであり、第2のセンサは、二酸化炭素センサ、真空減衰センサ、光センサ、音センサ、圧力センサ、pHセンサ、湿度センサ、温度センサ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0013】
別の実施形態では、表示装置に表示される医療機器の位置に関する通知は、ハイライト表示された視覚的シンボルである。
【0014】
さらに別の実施形態では、表示装置に表示される医療機器の位置に関する通知は、臓器の形をした視覚的シンボルである。さらに、一実施形態では、表示装置に表示される通知は、医療機器が患者の身体の右肺内に位置することを信号が示す場合には、右肺の画像または輪郭として描かれる視覚的シンボルである。また、一実施形態では、表示装置に表示される通知は、医療機器が患者の身体の左肺内に位置することを信号が示す場合には、左肺の画像または輪郭として描かれる視覚的シンボルである。さらに、一実施形態では、表示装置に表示される通知は、医療機器が患者の身体の胃内に位置することを信号が示す場合には、胃の画像または輪郭として描かれる視覚的シンボルである。また、一実施形態では、表示装置に表示される通知は、医療機器が患者の身体の小腸内に位置することを信号が示す場合には、十二指腸の画像または輪郭として描かれる視覚的シンボルである。
【0015】
1以上の実施形態では、表示装置に表示される医療機器の位置に関する通知は、医療機器の位置が予め定められた位置に到達したとき、または医療機器の位置が予め定められた経路から逸脱したときに表示される。さらに、一実施形態では、表示装置に表示される通知は、医療機器が予め定められた経路から逸脱したことをセンサが示す場合には、第1の警告色でハイライト表示される。また、一実施形態では、センサは、第1のセンサと、1以上の第2のセンサとを含み、表示装置に表示される通知のハイライト表示は、第2のセンサのうちの少なくとも1つにより、医療機器が予め定められた経路から逸脱したことが確認された場合には、第1の警告色から第2の警告色に変化する。さらに、一実施形態では、予め定められた経路は、患者の正中線に沿った経路である。また、一実施形態では、表示装置は、医療機器の位置が正中線の右側または左側に逸脱した場合に、患者の体内における医療機器の位置に関する通知を表示する。
【0016】
別の実施形態では、表示装置に表示される通知は、センサが、医療機器が予め定められた位置に到達したことを示す場合には、第1の確認色でハイライト表示される。
【0017】
さらなる実施形態では、表示装置に表示される通知は、点滅する視覚的シンボルである。
【0018】
また、本発明は、医療機器の位置をガイダンスする方法に関する。本発明の方法は、患者の体内に挿入されるように構成された医療機器、及び医療機器に設けられた少なくとも1つのセンサを提供するステップと、患者の身体の開口部に医療機器を挿入するステップと、有線または無線の電気的接続を介してセンサをプロセッサに電気的に接続するステップと、センサを作動させるステップであって、センサにより、患者の体内における医療機器の位置に関する情報を測定し、その情報を含む信号を、有線または無線の電気的接続を介してプロセッサにリアルタイムで送信し、プロセッサに接続された表示装置に、センサから送信された患者の体内における医療機器の位置を表示させる、該ステップと、センサを作動させながら、患者の体内に位置する医療機器を患者の身体の開口部から離れる方向に向けて前進させるステップと、表示装置上で、患者の体内における医療機器の位置を観察するステップであって、表示装置は、患者の体内における医療機器の位置に関する通知を表示するように構成されている、該ステップと、を含む。
【0019】
特定の一実施形態では、本発明の方法は、(i)センサから受信した信号を解釈するステップと、(ii)センサから受信した信号の解釈に基づいて、医療機器の位置が予め定められた位置に達したか否か、または患者の消化管から逸脱したか否かを示す通知を表示装置に表示させるステップと、をさらに含む。
【0020】
別の実施形態では、患者の身体の開口部は、鼻または口である。
【0021】
別の実施形態では、患者の体内における医療機器の位置に関する通知は、医療機器が患者の消化管から逸脱したときに表示装置に表示される。さらに、一実施形態では、患者の体内における医療機器の位置に関する通知は、センサから受信した信号が、医療機器が患者の気管及び/または肺に入ったことを示すときに表示装置に表示される。
【0022】
1以上の実施形態では、表示装置に表示される医療機器の位置に関する通知は、臓器の形をした視覚的シンボルである。
【0023】
さらに別の実施形態では、センサは、第1のセンサと、1以上の第2のセンサとを含み、当該方法は、第1のセンサからの信号が、医療機器の位置が患者の消化管から逸脱したことを示すとプロセッサによって解釈された場合には、医療機器の位置を確認するために、第2のセンサからの信号をプロセッサに提供し、プロセッサによって解釈するステップをさらに含む。さらに、一実施形態では、第1のセンサは、位置センサであり、第2のセンサは、二酸化炭素センサ、真空減衰センサ、光センサ、音センサ、圧力センサ、pHセンサ、湿度センサ、温度センサ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0024】
本発明の上記及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明及び添付された特許請求の範囲を参照することによって、より良く理解できるであろう。添付図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、本発明の実施形態を図示し、本明細書と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0025】
当業者を対象にした本発明の完全かつ実現可能な開示(ベストモードを含む)が、添付図面を参照して、本明細書に説明される。
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の特定の一実施形態による医療機器位置通知システムの概略ブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の医療機器位置通知システムの一実施形態による外部位置検出器を所定位置に配置した様子を示す図である。
【
図3】
図3(A)は、本発明の医療機器位置通知システムの外部位置検出器のハウジングの斜視図である。
図3(B)及び
図3(C)は、
図3(A)のハウジングの底面図である。
【
図4】
図4は、
図3Aの外部位置検出器のエミッタ/レシーバを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の様々な実施形態による、経腸カテーテルの形態の医療機器の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の医療機器の位置検出信号発生器の斜視図である。
【
図7】
図7は、
図5の医療機器の実施形態による、様々なセンサを有する経腸カテーテルチューブの斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の医療機器位置通知システムの概略図であり、医療機器が患者の消化管から気道に逸脱したときに、医療機器の解剖学的位置の通知警告が表示装置に表示された様子を示す。
【
図9】
図9は、本発明の医療機器位置通知システムの概略図であり、医療機器が患者の消化管内の所定位置に到達したときに、医療機器の解剖学的位置の通知が表示装置に表示された様子を示す。
【
図10】
図10は、本発明の医療機器位置通知システムの概略図であり、医療機器が患者の消化管内の所定位置に到達したときに、医療機器の解剖学的位置の通知が表示装置に表示された様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の様々な実施形態及びその1以上の実施例について詳細に説明する。各実施例は、本発明を説明するために提示されたものであり、本発明を限定するものではない。実際、本発明において、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な変更形態及び変形形態が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、或る実施形態の一部として例示または説明された特徴を、別の実施形態と共に用いて、さらなる別の実施形態を創出することもできる。したがって、本発明は、添付された特許請求の範囲及びその均等物の範囲に含まれる限り、そのような変更形態及び変形形態を包含することを意図している。
【0028】
本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、または「略」という用語は、或る値を修飾するために使用する場合、その値の±5%の値も、開示された実施形態の範囲内に含まれることを示す。
【0029】
本明細書で使用するとき、「同じ縮尺(in-scale)」という用語は、すべての部分が互いに対して正確にサイズ調整され、その周囲に比例している物品または画像を示す。
【0030】
概して言えば、本発明は、プロセッサと、プロセッサに接続された表示装置と、患者の体内に挿入されるように構成された医療機器と、医療機器に設けられた少なくとも1つのセンサとを含む医療機器位置通知システムに関する。センサは、電気的接続を介してプロセッサと通信し、センサによって測定された患者の体内における医療機器の位置に関する情報を含む信号を、プロセッサにリアルタイムで送達する。表示装置は、医療機器の位置のトレース経路(追跡経路)をリアルタイムで表示するように構成されている。さらに、表示装置は、患者の体内における医療機器の位置に関する通知を表示するように構成されている。本発明者らは、本明細書でより詳細に説明する本発明の医療機器位置通知システム及び方法は、患者の体内に挿入された医療機器の位置に関して、警告アラート及び/または位置確認通知の形態の優れた通知を提供することを見出した。特に、本発明の医療機器位置通知システムは、患者の体内における医療機器の位置を確認するために患者の体内における医療機器の位置に関する情報を測定する1以上のセンサを備える。また、本明細書で説明するように、2種類以上のセンサを使用することにより、互いに異なる種類の各センサからの信号を解釈することによって、医療機器の位置情報を確認することができる。加えて、本発明者らは、表示装置上に解剖学的形状の視覚的シンボルを患者の解剖学的構造と同じ縮尺で表示することにより、表示画面上に白黒及び/または正確な縮尺ではない一般的な警告を表示する場合と比べて無視される可能性が低い、患者の体内における医療機器の位置に関する優れたフィードバックを医療提供者に提供することを見出した。本発明の医療機器位置通知システムの具体的な特徴は、
図1~10を参照することによって、より良く理解することができるであろう。
【0031】
図1を参照して、本発明の医療機器位置通知システム100は、制御ユニットまたはプロセッサ120と、プロセッサ120に接続されたメモリ装置130と、プロセッサ120に接続された表示装置140と、医療機器200と、医療機器200の位置に関する信号をプロセッサ120に送信するように構成された少なくとも1つのセンサと、を備える。プロセッサ120、メモリ装置130、及び表示装置140は、ハウジング102内に収容されている。また、本発明の医療機器位置通知システム100は、患者の解剖学的形状及び大きさを検出するように構成された外部位置検出器110をさらに備える。外部位置検出器110は、有線接続または無線接続を介してプロセッサ120に接続される。センサは、医療機器200に設けられた1以上のセンサ(第2のセンサ)をさらに含み得る。例えば、医療機器200は、信号発生器222などの位置検出器(位置センサ)、二酸化炭素(CO
2)センサ240、空気圧センサ242、光センサ244、音センサ246、湿度センサ、温度センサ、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1以上を有し得る。センサは、医療機器200の位置に関する情報をリアルタイムで連続的に取得することができる。メモリ装置130は、機械可読命令と、センサによって生成された信号データを処理するためにプロセッサ120によって使用される1以上のコンピュータプログラム(例えば、複数のアルゴリズム132を含み得る)とを格納する。表示装置140は、医療機器200の位置に関する情報を、表示画面142上に、例えば視覚的シンボル150の形態で医療提供者に対して表示するように構成されている(
図8~10参照)。表示装置140は、これに限定しないが、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオードディスプレイ(LED)、陰極線管ディスプレイ(CRT)、またはプラズマスクリーンなどの任意の適切な表示機構であり得る。
【0032】
医療提供者は、本発明の医療機器位置通知システム100を、様々な埋め込み可能な医療機器、例えばカテーテル等の用途で使用することができる。
図2に示す例では、医療機器位置通知システム100は、経腸用途に使用される。
図2に示す例では、医療機器200の一部、この場合は経腸栄養カテーテル(経腸チューブ)が、患者の鼻や口などの患者の開口部70を通して患者の体内に挿入される。医療機器200の遠位先端部212は、最終的に、胃24または小腸26内に配置される。しかしながら、
図2に示すように食道22と気管28とが互いに分岐していることに起因して、経腸カテーテルの挿入には困難さを伴うため、医療機器200の遠位先端部212が、患者の消化管ではなく、患者の気道、例えば気管、気管支、または肺に誤って配置される恐れがある。
図2に示すように、食道22と気管28との分岐は、患者10の鼻孔の入口から或る距離で生じており、その或る距離は、小児患者と成人患者とでは異なることが知られている。所与の患者についてのこの距離と、経腸チューブ210の長さとを知ることにより、ユーザは、経腸チューブ210がどの程度まで(すなわち、どのくらいの長さまで)患者の体内に挿入されたかを判断することができ、これにより、経腸チューブ210の遠位先端部212が、経腸チューブ210が患者の気道内に誤って挿入される恐れがある消化管から気管が分岐する分岐点またはその近くに位置するか否かを知ることができる。一例として、成人の場合、分岐は、一般的に、鼻孔の入口から約18~20cmの位置で生じる。分岐が生じる領域は、分岐部とも称される。
【0033】
医療提供者が医療機器200を患者の胃24に向けて前進させる間、センサは、患者10の体内における医療機器200の位置に関する様々な生体測定データを連続的に測定する。表示装置140は、患者10の体内における経腸チューブ210の遠位先端部212の位置に関する情報と、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者10の体内を通る経路の形状に関する情報とを表示することができる。例えば、以下でさらに詳細に説明するように、医療機器200に設けられた信号発生器222は、相対座標X、Y、Zに関する信号発生器222の位置を測定するために、少なくとも1つの外部位置検出器110、例えば
図2に示すような3つの分散型の外部位置検出器110と動作可能に通信することができる。医療機器位置通知システム100は、医療提供者に支援を提供するために医療機器200の正確な位置または経路を示す必要はないことを理解されたい。
【0034】
3つの分散型の外部位置検出器110は、患者10の外部解剖学的構造上の所定の配置位置に配置することができる。外部位置検出器110の所定の配置位置は、患者の外部解剖学的構造上の複数の所定の外部固定点を含み得る。所定の外部固定点の各々は、
図2に示すように、互いに分散または分離している。所定の外部固定点は、よく知られている外部解剖学的ランドマーク(目印)に基づいて設定することができる。いくつかの実施形態では、よく知られている外部解剖学的ランドマークは、骨のランドマーク(目印)であり得る。その理由は、骨のランドマークは、脂肪組織、浮腫、または他の組織などの患者の身体的特徴に関係なく、患者の解剖学的形状及び大きさに関わらず、視覚的または触覚的に位置を見つけることができるからである。
【0035】
例えば、
図2に示すように、医療機器位置通知システム100を使用して、例えば、経腸栄養カテーテル(経腸チューブ)を挿入するための、患者の上側部分の解剖学的構造内における医療機器200の位置を求める場合、3つの外部位置検出器110を患者10の身体上に配置する。例えば、1つの外部位置検出器110を右鎖骨中央線52などの右上ランドマークに配置し、1つの外部位置検出器110を左鎖骨中央線54などの左上ランドマークに配置し、1つの外部位置検出器110を剣状突起20などの中央ランドマークに配置する。
図2に示すように、剣状突起20は、胸骨30の下端の軟骨部分であり、通常、正中矢状線50に沿って位置しており、どの肋骨32にも結合しておらず、成人のヒトでは徐々に骨化する。右鎖骨中央線52及び左鎖骨中央線54は、それぞれ、左鎖骨16と左鎖骨18との中点を通って患者10の胴体を下側に延びる正中矢状線50に対して略平行な想像線である。しかしながら、右鎖骨中央線52及び左鎖骨中央線54、並びに、剣状突起20は、この目的のために使用することができる唯一のランドマーク(目印)ではない。複数の外部位置検出器110の所定の配置位置は、信頼性の高い医療機器位置通知システムで使用するために、信頼性の高い位置に設定されるかまたは所定のオフセットで設定される患者の身体の他の位置であってもよい。
【0036】
図2~4を参照して、一般的に、複数の外部位置検出器110は、それぞれ、プロセッサ120に動作可能に接続された信号受信器180と、その信号受信器180を収容するハウジング112とを含む。本実施形態によれば、医療機器位置通知システム100は、複数の外部位置検出器110とプロセッサ120との間の有線接続または無線接続を介して、表示装置140上で、患者の解剖学的構造の形状、大きさ、及び向きに関する視聴覚情報を提供するように動作可能である。
【0037】
図3及び
図4に示すように、外部位置検出器110の各々は、信号受信器180と、その信号受信器180を収容するハウジング112とを含む。ハウジング112は、上面114と、下面116と、上面114から下面116までに延びる少なくとも1つの側面118とを有する。例えば、
図3(A)に示すように、上面114及び下面116は、円形または楕円形の形状を有し、ハウジング112は上面114と下面116との間に延びる連続した側面118を有し、これにより、略円筒状のハウジング112が形成される。別の実施形態では(図示せず)、上面114及び下面116は、矩形であってもよく、ハウジング112は、矩形の各辺に対応してそれらの間に延びる4つの側面118を有してもよい。なお、各外部位置検出器110のハウジング112の外形は、実際の信号受信器180の動作にほとんど影響しない。このように、ハウジング112は、医療機器位置通知システム100の特定の用途に基づいて、任意の他の適切な外形を有することができる。
【0038】
各外部位置検出器110のハウジング112は、標準的な心電図リードに概ね匹敵する設置面積(すなわち、下面116の形状及び大きさ)を有する。例えば、ハウジング112は、約1.25~13cm(約0.5~5インチ)の範囲、またはそれらの間の任意の値もしくは範囲、例えば約2.5~7.6cm(約1~3インチ)、または例えば約3.8~6.4cm(約1.5~2.5インチ)の長さの、上面114または下面116の最大幅部分を横切って延びる直径Dを有する。ハウジング112の少なくとも1つの側面118は、約0.63~5.1cm(約0.25~2インチ)の範囲の高さH、またはそれらの間の任意の値もしくは範囲、例えば約0.76~2.5cm(約0.3~1インチ)、または例えば約1.25cm(約0.5インチ)の高さを有する。加えて、各外部位置検出器110は、軽量であり得る。
【0039】
図3に示すように、各外部位置検出器110は、外部位置検出器110を患者の身体に固定するように構成された固定機構115をさらに含む。好ましい実施形態では、外部位置検出器110は、患者10に対する固定された基準点を維持するように、固定機構115によって患者10の身体に直接固定される。したがって、患者10が移動しても、外部位置検出器110は患者10と共に移動するので、これにより、患者10に関する静止基準座標系レームを維持することができる。固定機構115は、外部位置検出器110のハウジング112の下面116に設置され得る。例えば、固定機構115は、外部位置検出器110を患者の皮膚、患者の身体上のパッチ、または患者が着用する衣類に固定するように構成された接着材料117を含む。接着材料117は、その一方の面がハウジング112の下面116に接着し、他方の面が患者の身体または衣服に接着するように、その両面が接着性を有する接着性基材であり得る。固定機構115がハウジング112の下面116に接着された接着材料117(接着性基材)である場合、外部位置検出器110は、接着材料117における患者側の面の全体を覆う剥離可能な保護シート119をさらに含み得る。剥離可能な保護シート119は、接着材料117を患者10の身体または衣服に接着させる前に除去することができる。任意選択で、使用済みの接着材料117をハウジング112から除去して廃棄し、新しい接着材料117を適用してもよい。あるいは、接着材料117は、ハウジング112を患者の皮膚または衣服に取り外し可能に接着させることができる任意の適切な接着手段であってもよい。他の実施形態では、固定機構115は、クリップ、ピン、磁石、フック・アンド・ループシステム、または、外部位置検出器110を患者の身体または衣服に固定するための任意の他の適切な手段であり得る。外部位置検出器110を患者の身体または衣服に固定することができる各外部位置検出器110の固定機構115を使用することによって、各外部位置検出器110の基座標系を、患者の身体に対して静止した状態に維持することができる。したがって、患者の身体の動きに起因して生じる面倒な問題をより少なくすることができるので、医療機器位置通知システム100を使用するときに位置誤差が生じる可能性を、他の医療機器位置通知システムと比較して減少させることができる。
【0040】
図3(A)及び
図4に示すように、各外部位置検出器110は、信号受信器180を含む。一実施形態では、各外部位置検出器110の信号受信器180は、電源(図示せず)に接続された複数のワイヤコイルによって形成された電磁エミッタ182(エミッタコイル)を有する。電源は、ハウジング102内の電源への有線接続または無線接続であってもよいし、または、外部位置検出器110内のバッテリであってもよい。電源がエミッタコイル182に電流を送ると、エミッタコイル182は、電磁レシーバ184(レシーバコイル)によって検出可能な信号または電磁界を送信する。電磁エミッタ182の一例としてエミッタコイルが開示されているが、電磁エミッタ182は、検出可能な電磁エネルギまたは電磁界を発生または生成する任意の適切な機構または装置、例えば、永久磁石、抵抗磁石、または超伝導磁石であってもよいことを理解されたい。
【0041】
また、
図3(A)及び
図4に示すように、各外部位置検出器110の信号受信器180は、他の外部位置検出器110の電磁エミッタ182及び/または医療機器200の信号発生器222によって生成された電磁界または信号を検出することができる電磁レシーバ184(レシーバコイル)を有する。電磁レシーバ184は、電磁エミッタ182によって生成された電磁界が該電磁レシーバに到達したときに、その電磁界に応答して誘導電流を受け取り、誘導電圧を検出するように動作可能な3つのレシーバコイルなどの少なくとも1つのレシーバコイルであり得る。レシーバコイルは、生成された磁場に応答して誘導電流を受け取ることができる任意の適切な構造であってもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、複数の外部位置検出器110は、それぞれ、信号受信器180の一部として、電磁エミッタ182及び電磁レシーバ184の両方を含む。加えて、信号受信器180の内部には、電磁エミッタ182と電磁レシーバ184との間にシールド186が設けられている。シールド186は、信号受信器180の内部での電磁エミッタ182と電磁レシーバ184との間の信号干渉を防止することができる。例えば、シールド186は、導電性材料または磁性材料から形成された、電磁エミッタ182と電磁レシーバ184との間のバリアであり得る。
【0042】
複数の外部位置検出器110が、所定の外部解剖学的ランドマーク(目印)に基づいて患者10の身体上の所定位置に配置される場合、ランドマークの位置は、患者10の身体上に配置される外部位置検出器110の適切な分離を提供する。これにより、各外部位置検出器110の電磁エミッタ182及び電磁レシーバ184が互いに問い合わせること、すなわち、或る外部位置検出器110の電磁エミッタ182が電磁界を放出すること、並びに、或る外部位置検出器110の電磁レシーバ184が他の外部位置検出器110の電磁エミッタ182から放出された電磁界を検出することを可能にする。各外部位置検出器110は、電磁レシーバ184で検出されたコイル電圧を詳述する1以上の信号をプロセッサ120に送信することができる。また、各外部位置検出器110は、電磁エミッタ182で電磁界を生成するために使用された駆動信号を詳述する1以上の信号をプロセッサ120に送信することができる。プロセッサ120は、電磁レシーバ184で検出された各コイル電圧と、電磁エミッタ182で電磁界を生成するために使用された駆動信号とを比較して、外部位置検出器110の電磁レシーバ184の各々の間の距離及び相対的な角度方向を評価及び算出して、電磁的三次元ボリュームを定義することができる。そして、プロセッサ120は、メモリ装置130に格納されたアルゴリズム132を使用することにより、電磁的三次元ボリュームについて収集されたデータを用いて、電磁的三次元ボリューム内の患者の外部及び内部の解剖学的な形状及び大きさを導出することができる。
【0043】
例えば、
図2及び
図8~10に示す実施形態に示すように、医療機器位置通知システム100は、電磁的三次元ボリューム内で患者の上側部分の外部解剖学的形状及び大きさを三角測量して定義するように構成された3つの外部位置検出器110を備える。3つの外部位置検出器110を備えるこの実施形態は、3つの外部位置検出器110の各々が空間内に3つの点のうちの1つを形成してX-Y平面などの単一平面を定義することができるので、有益であり得る。X-Y平面を決定することにより、Z方向の距離を決定することができる。したがって、3つの外部位置検出器110を使用することにより、三次元ボリュームを決定することができる。3つの外部位置検出器110によって定義される3つの点によって、三次元ボリューム内における患者の大きさ及び相対的な解剖学的位置を定義することができる。
【0044】
メモリ装置130は、外部解剖学的構造と、内部解剖学的構造、例えば患者の体内の臓器(器官)との間の一般的に既知の予め定義された人体測定学的関係を定義するアルゴリズム132を格納している。プロセッサ120は、このようなアルゴリズム132を実行することにより、外部位置検出器110によって検出された患者の外部解剖学的構造に基づき、その外部解剖学的構造に関連付けられた臓器の形状及び大きさを近似的に求めることができる。
図2に示す実施形態では、患者の上側部分の外部解剖学的形状及び大きさを用いて、肺、食道、及び胃の形状及び大きさを算出することができる。メモリ装置130は、右肺12、左肺14、食道22、及び胃24の形状のグラフィック表示を三次元ボリューム内のおおよその大きさ及び位置で視覚的にレンダリングし、そのような内部解剖学的構造のレンダリングされたグラフィック表示を適切なモニタまたは表示装置140上に縮尺して表示するためにプロセッサ120が実行することができる画像処理アルゴリズムをさらに格納することができる。したがって、医療機器位置通知システム100は、侵襲性医療機器200の挿入前または挿入中に、患者の内部解剖学的構造のグラフィック表示をレンダリングすることができ、これにより、侵襲性医療機器200を患者の体内の適切な位置に正確に配置することが可能となる。
【0045】
図1~2に示すように、外部位置検出器110は、医療機器200の相対位置を求めるために、医療機器200の位置検出器(位置センサ)、例えば信号発生器222に関連付けられる。
【0046】
次に、
図2、及び、
図5~10を参照して、医療機器200には、経腸チューブ210などのカテーテルが含まれる。経腸チューブ210は、遠位先端部212から近位端部214まで延びており、近位端部214でコネクタ230の遠位端230aに接続される。医療機器200は、位置検出信号発生器アセンブリ220の少なくとも一部を収容するように構成されたチューブアセンブリ228をさらに含む。チューブアセンブリ228の遠位端228aは、コネクタ230の近位端230bに接続される。例えば、
図5に示すように、コネクタ230の遠位端230a及び近位端230b間に延びるルーメン234は、長手方向軸に沿って延びている。コネクタ230の遠位端230a及び近位端230bの両方は、経腸チューブ210及びチューブアセンブリ228をそれぞれ受容し、かつルーメン234と連通するように構成された開口部を有する。任意選択で、コネクタ230は、コネクタ230の近位端230bの開口部を閉じるように構成されたキャップまたはカバー235を含む。加えて、コネクタ230は、ルーメン234及び遠位端230aの開口部と連通するYポート232を含む。Yポート232は、Yポートの近位端232aの開口部を閉じるように構成されたキャップまたはカバー236をさらに含む。Yポート232は、経腸栄養流体、薬剤、または他の流体を、経腸チューブ210を通して送達するためのチューブまたは他の適切な手段を受容するように構成されている。
【0047】
医療機器200に設けられた位置検出器(位置センサ)は、
図6に示すように、1以上の電気ワイヤ(電線)及び/またはケーブルからなるワイヤアセンブリ224を含む電磁界発生システム220であり得る。ワイヤ及び/またはケーブルは、銅、または任意の他の適切な材料で作ることができる。一態様では、2本のワイヤが、ワイヤアセンブリ224の長さに沿って、互いに撚り合わされている。あるいは、ワイヤアセンブリ224は、内側導電性ワイヤと、そのワイヤを取り囲む管状の絶縁層と、その絶縁層を取り囲む管状の導電性シールドとが互いに同軸的に配置されたマイクロ同軸ケーブルなどの同軸ケーブルであってもよい。図示しない一態様では、ワイヤアセンブリ224は、ワイヤアセンブリ224の剛性を高めるために、細長い補強材をさらに含むことができる。細長い補強材は、鋼、半硬質または硬質のポリマー、または任意の他の適切な材料で作ることができる。ワイヤアセンブリ224の構成は、ワイヤアセンブリ224の長さに沿ってワイヤを取り囲む電磁場を低減させるように構成することができる。例えば、2本のワイヤを互いに撚り合わせた構成では、撚り合わせた一対のワイヤの電磁力が互いに打ち消し合うことにより、ワイヤを取り囲むあらゆる電磁界を低減させる。また、同軸ケーブルを有する構成では、導電性シールドにより、同軸ケーブルを取り囲む電磁界を低減させる。したがって、外部位置検出器110の電磁レシーバ184が、ワイヤアセンブリ224によって生成された任意の電磁界からの信号干渉を受ける場合でも、その信号干渉をより少なくすることができる。
【0048】
ワイヤアセンブリ224の近位端は、コネクタ229を含む。コネクタ229は、電磁界発生システム220をプロセッサ120に動作可能に接続することができる。一実施形態では、電源コネクタ229は、電磁界発生システム220をプロセッサ120の電源に電気的に接続することができる。別の実施形態では、電磁界発生システム220は、バッテリなどの独自の電源を含むことができる。
【0049】
図6に示すように、ワイヤアセンブリ224の遠位端において、ワイヤは、コイルを形成するコイル構造を有する信号発生器222を形成し、それによって、以下に説明するような磁界発生器が形成される。信号発生器コイル222は、その周りに少なくとも1本の電気ワイヤの一部を巻き付けることによって形成される複数の螺旋から形成される。信号発生器コイル222のワイヤを通って電流が伝達されると、その電流はコイルによって定義される円形の経路を進む。このような電流の円形の流れによって、電磁界、Bフィールド、または電磁放射226が生成される。図示した実施形態は、信号発生器222はコイルから構成したが、信号発生器222は、磁気エネルギ、磁場、または任意の他の信号を発生または生成する任意の別の適切な機構または装置であってもよいことを理解されたい。一実施形態では、磁場発生器222は、永久磁石、抵抗磁石、または超伝導磁石などの磁石であり得る。
【0050】
別の実施形態(図示せず)では、信号発生器システム220は、例えば、コイル222及び/またはワイヤアセンブリ224を経腸チューブ210の壁部211に埋め込むことによって、医療機器200に直接組み込んでもよい。
【0051】
動作時、電源が信号発生器コイル222に電流を送り、コイルが各外部位置検出器110の電磁レシーバ184によって検出可能な電磁界226を発生すると、各外部位置検出器110の電磁レシーバ184は、患者の体内の信号発生器コイル222で発生した電磁界226を検出する。そして、プロセッサ120は、表示装置140に、医療提供者による経腸チューブ210の配置作業(挿入作業)を支援することができる少なくとも1つの代表的な画像を生成して表示させる。
【0052】
例えば、
図1~2及び
図8~10に示すように、経腸チューブ210の配置作業中に、医療機器200の信号発生器222と動作可能に通信する外部位置検出器110を有する医療機器位置通知システム100を使用することにより、経腸チューブ210が、消化管(例えば、食道22、胃24、小腸26)を通る所定の経路を進むか否か、または、経腸チューブ210が、気道(例えば、気管28、右肺12または左肺14)に逸脱するか否かを監視することができる。
図8~10に示すように、表示装置140は、外部位置検出器110及び医療機器200の信号発生器222からプロセッサ120に送られた信号と、メモリ装置130に格納されたアルゴリズム132に基づきプロセッサ120によって実行されるデータ及び画像処理とに基づいて、医療機器200の信号発生器222の現在位置144を、患者10の体内を進む経腸チューブ210の移動経路を示す信号発生器222のトレース経路146と共に、表示画面142上にリアルタイムで表示することができる。さらに、
図2に図示した解剖学的図に示すように、食道22は、一般に、身体の正中線に沿って垂直に配向されており、剣状突起20の概ね下側の位置に達するまでは、胃24へ(正中線の右側または左側へ)逸脱することはない。したがって、経腸チューブ210の遠位先端部212の移動経路が、剣状突起20よりも上側で患者の正中線の右側または左側へ逸脱することは、経腸チューブ210が、消化管から気道(例えば、気管28、または、右肺12もしくは左肺14のうちの一方)へ逸脱したことを示す。例えば、
図8は、経腸チューブ210の移動経路が右肺12内に逸脱した場合の、表示装置140の表示画面142を示す。経腸チューブ210が、剣状突起20の下側で、患者の身体の概ね左側に位置している場合、
図9に示すように、経腸チューブ210が胃24内に位置していることを示す。経腸チューブ210が、患者の解剖学的大きさに基づく胃の長さを概ね超えた距離、例えば経腸チューブ210の長さだけ前進した場合、
図10に示すように、経腸チューブ210が小腸26内に位置していることを示す。
【0053】
図1に示すように、医療機器200、例えば上述の経腸チューブ210は、二酸化炭素(CO
2)センサ240、空気圧センサ242、光センサ244、音センサ246、負圧発生器の形態の真空減衰センサ248、湿度センサ、温度センサ、またはそれらの任意の組み合わせなどの追加のセンサをさらに備える。一態様では、
図7に示すように、経腸チューブ210の壁部211に1以上のセンサが埋め込まれる。それに加えてまたはその代わりに、
図6に示す信号発生器222のように、1以上のセンサを経腸チューブ210のルーメン内に配置してもよい。さらに、いくつかの態様では、1以上のセンサを、経腸チューブ210の近位端部214、例えば、Yポート232に配置してもよい。上述した1以上のセンサが経腸チューブ210のルーメン内に配置されるか、または経腸チューブ210の壁部211に埋め込まれる場合、経腸チューブ210の遠位先端部212の開口部からの水分、または患者の体腔からの水分がセンサに接触してセンサ測定値に影響を与えるのを防ぐために、センサは、多孔質フィルタ材料または多孔質フィルタ媒体から形成されたフィルタ250によって覆うか、または取り囲むようにするとよい。例えば、フィルタ250は、水または他の流体が侵入してセンサに接触するのを防止することができ、一方で、空気が経腸チューブ210のルーメン内に浸透することを許可することができる。ここでフィルタ250の構成に目を向けると、本発明によって意図されるフィルタは、気体は通過させるが、液体は通過させない。別の言い方をすれば、フィルタ250は、水蒸気透過性、かつ、液体不透過性である。フィルタ250のための例示的な好適な材料としては、これに限定しないが、網状ポリマー発泡体、膨張ポリマー(例えば、米国ジョージア州フェアバーン所在のポレックス社(Porex Corporation)から入手可能なポレックス(登録商標)発泡ポリマーなど)、膨張PTFE(例えば、米国デラウェア州ニューアーク所在のW・L・ゴア・アンド・アソシエーツ社(W.L. Gore & Associates, Inc.)から入手可能なゴアテックス(登録商標)拡張PTFE)、及び多孔質金属(または粉末金属)が挙げられる。理解されるように、ガスがフィルタ250を通過する速度は、例えば、二酸化炭素センサ240、空気圧センサ242、温度センサ、及び/または湿度センサ(存在する場合)が正確な読み取り値を取得するために十分な量の空気がセンサと接触することを可能にする限り、重要ではない。また、空気の流量は、フィルタ250の組成によって部分的に影響を受けるか、または制御されることが理解されるであろう。それにもかかわらず、ほとんどの実施形態では、フィルタは、一般的に、1時間当たり少なくとも3リットルから5リットルのガスを通過させることができることが望ましい。小児用カテーテルと共に使用する場合、適切な大きさのアダプタ内のフィルタ250は、1時間当たり少なくとも1リットルから2リットルのガスを通過させることができることが望ましい。さらに、フィルタ250は、疎水性または親水性であってもよいことが理解されるであろうが、フィルタまたはフィルタ媒体は、一般的に疎水性であることが望ましい。フィルタ250が疎水性フィルタ媒体であるかまたは疎水性フィルタ媒体を含む場合、または、フィルタ媒体が少なくとも部分的に疎水性処理されている場合、フィルタ媒体は、より大きな孔サイズを有することができ、これにより、フィルタ250は液体を吸収しにくくなり、飽和して液体を通過させにくくなるので、フィルタ媒体を通過する流量は、親水性媒体または親水性処理された媒体と比べて大きくなる。
【0054】
各センサは、以下にさらに詳細に説明するように、医療機器200の位置を検出または確認するために、患者10の体内における医療機器200、例えば経腸チューブ210の位置に関する情報を測定することができる。
【0055】
例えば、二酸化炭素センサ240は、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者の気道内に位置するか、または、消化管(すなわち、食道22、胃24、小腸26)を通る経路に沿って進んでいるかを検出するために、経腸チューブ210が通過する通路内の経腸チューブ210の遠位先端部212における二酸化炭素(CO2)の分圧を検出することができる。経腸チューブ210は既知の長さを有するので、CO2のパターン(患者の呼吸に伴ってCO2の濃度が増減する波形、一般的に、1分間に3~4回の呼吸分)によって、経腸チューブ210が患者の気道へ逸脱したか否かを判定することができる。別の言い方をすれば、患者に挿入された経腸チューブ210の挿入距離(挿入長さ)と、センサ240によって検出されたCO2濃度とによって、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者の気道の付近に位置し、遠位先端部212の目標経路である消化管を通る経路を進むのではなく、患者の気道に入る可能性があるか否かを医療提供者に伝えることができる。経腸チューブ210が食道22と気管28との分岐部の近傍またはそれを超える挿入距離でさらに挿入されるにしたがってCO2濃度が増加する及び/または増加し続ける場合、センサ240からプロセッサ120に送信される信号は、メモリ装置130によって、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者の気道内に入ったかまたは気道に既に入っていることを示すと解釈される。一方、経腸チューブ210が食道22と気管28との分岐部を超えてもCO2濃度が増加しない場合、センサ240からプロセッサ120に送信される信号は、メモリ装置130によって、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者の消化管内に沿った(すなわち、患者の胃24または小腸26へ向かう)正しい経路を進んでいることを示すと解釈される。
【0056】
同様に、空気圧センサ242は、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者の気道内に位置するか、または、消化管(すなわち、食道22、胃24、小腸26)を通る経路に沿って進んでいるかを検出するために、経腸チューブ210が通過する通路内の経腸チューブ210の遠位先端部212における空気圧を検出することができる。経腸チューブ210は既知の長さを有するので、空気圧のパターン(患者の呼吸に伴って圧力が増減する波形、一般的に、1分間に3~4回の呼吸分)によって、経腸チューブ210が患者の気道へ逸脱したか否かを判定することができる。別の言い方をすれば、患者に挿入された経腸チューブ210の挿入距離(挿入長さ)と、センサ242によって検出された空気圧とによって、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者の気道の付近に位置し、遠位先端部212の目標経路である消化管を通る経路を進むのではなく、患者の気道に入る可能性があるか否かを医療提供者に伝えることができる。経腸チューブ210が食道22及び気管28の分岐部の近傍またはそれを超える距離でさらに挿入されても、空気圧が所定の波形パターンを維持する場合、センサ242からプロセッサ120に送信される信号は、メモリ装置130によって、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者の気道内に入ったかまたは気道に既に入っていることを示すと解釈される。一方、経腸チューブ210が食道22と気管28との分岐部を超えても空気圧が所定の波形パターンを示さない場合、センサ242からプロセッサ120に送信される信号は、メモリ装置130によって、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者の消化管内に沿った(すなわち、患者の胃24または小腸26へ向かう)正しい経路を進んでいることを示すと解釈される。
【0057】
同様に、音センサ246は、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者の気道内に位置するか、または、消化管(すなわち、食道22、胃24、小腸26)を通る経路に沿って進んでいるかを検出するために、経腸チューブ210が通過する通路内で、経腸チューブ210の遠位先端部212の開口部を通過する空気によって発生する音波を検出することができる。例えば、音センサ246は、経腸チューブ210の遠位先端部212またはその近くに配置されたマイクロフォンの形態であり得る。音声データは、マイクロフォン246によって捕集することができ、捕集された音声データの信号(音声信号)は、プロセッサ120に送信される。メモリ装置130に格納された情報、例えば、少なくとも1つのアルゴリズム132を用いて音声信号を処理することによって、不要なノイズを除去し、関心のある周波数、例えば、呼吸音の既知の周波数を増幅することができる。したがって、この音声信号を解釈することによって、呼吸の既知の音波周波数が存在するか否かを判定することができ、これにより、経腸チューブ210の遠位先端部212が気道内に位置しているか否かを判断することができる。呼吸の既知の音波周波数が検出されない場合、音声信号は、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者の消化管内に沿った(すなわち、患者の胃24または小腸26へ向かう)正しい経路を進んでいることを示すと解釈される。
【0058】
加えて、医療機器位置通知システム100は、経腸チューブ210の遠位先端部212またはその近くに配置され、経腸チューブ210の遠位先端部212の付近の空気の温度及び/または相対湿度を測定する温度及び/または湿度センサ(図示せず)を備えることができる。温度及び/または湿度センサは、測定された温度及び/または相対湿度データを含む信号をプロセッサ120に送信することができる。所定時間後にプロセッサ120に送信される一定の温度プロファイル、一定の相対湿度プロファイル、または、一定の温度プロファイルと一定の相対湿度プロファイルの両方は、経腸チューブ210が患者の消化管(例えば、患者の食道22、胃24、腸26、または消化管の他の解剖学的領域)内に位置していることを示す。一方、所定時間後にプロセッサ120に送信される非一定のまたは変化するプロファイル(例えば、正弦波、方形波のプロファイル)は、経腸チューブ210が患者の気道内(例えば、気管28、または、右肺12もしくは左肺14)に位置していることを示す。
【0059】
加えて、pHセンサを医療機器200と共に使用することによって、医療機器200の経腸チューブ210の遠位先端部212が気道または消化管のどちらに位置しているかを識別することができ、さらには、遠位先端部212が消化管におけるどの部分(例えば、食道22、胃24、または小腸26)に位置しているかを識別または確認することができる。気道(例えば、気管28、右肺12、左肺14)は、一般に、血液のpH値またはそれに近いpH値(通常は約7.38~約7.42)を維持する。対照的に、食道22の正常なpH値は、通常は約7.0であるが、逆流したとき、すなわち、胃酸が食道に入ったときは、食道22のpH値は、より低い値に変化する。胃24内のpH値は、一般に約1.5~約3.5である胃酸の低いpH値に起因して、一般に約1.5~約4.0である。小腸26内のpHは値、胃24内のpH値より高く、一般に十二指腸(すなわち、胃24に隣接している)のpH値の約6.0から、小腸26の回腸末端のpH値の約7.4まで徐々に上昇する。経腸チューブ210は既知の長さを有するので、pH値により、経腸チューブ210が患者の気道へ逸脱したか否かを判定することができる。別の言い方をすると、患者に挿入された経腸チューブ210の挿入距離(挿入長さ)と、pHセンサによって検出されたpH値とによって、経腸チューブ210の遠位先端部212が患者の気道の付近に位置し、遠位先端部212の目標経路である消化管を通る経路を進むのではなく、患者の気道に入る可能性があるか否かを医療提供者に伝えることができる。
【0060】
また、光センサ244を医療機器200と共に使用することによって、医療機器200の経腸チューブ210の遠位先端部212が気道または消化管のどちらに位置しているかを識別することができる。消化管の各器官(例えば、食道22、胃24、及び/または小腸26)と、気道の各器官(例えば、気管28、右肺12、左肺14)との構造的な相違により、各器官の光反射量は異なる。一般に、消化管などでのように光源が体組織に直接接しているかまたは非常に近い場合には、より多い量の光が光源から光センサに反射されるが、呼吸器官などでのように光源がより開放的な環境にある場合には、より少ない量の光が光源から光センサに反射される。一態様では、光センサ244は、光源及び/または電源、例えばライトボックスから、経腸チューブ210の遠位先端部212まで延びる2本の光ファイバケーブルから形成することができ、第1の光ファイバケーブルは、ライトボックスに接続される。ライトボックスは、第1の光ファイバケーブルを介して、
図7において光センサ244として示されている経腸チューブ210の遠位先端部212に光を伝送する。第2の光ファイバケーブルは、第1の光ファイバケーブルと並行して延び、光センサ244で終端する。光が第1の光ファイバケーブルを通って照射されると、光は、患者の体内の身体組織で反射される。そして、経腸チューブ210の遠位先端部212において第1の光ファイバケーブルに隣接する第2の光ファイバケーブルによって吸収された光の量を測定し、その測定結果をプロセッサ120に送信する。第1の光ファイバケーブルを通って照射された光が直ちに反射され、第2の光ファイバケーブルを通って戻る場合、経腸チューブ210の遠位先端部212が、例えば食道22などの消化管内に位置し、患者の胃24または小腸26へ向かう正しい経路上に位置することを示す。対照的に、第1の光ファイバケーブルを通って照射された光が第2の光ファイバケーブルを通って直ちに戻らない場合、及び/または第2の光ファイバケーブルを通って戻った光が弱い場合、経腸チューブ210の遠位先端部212が気管28または右肺12もしくは左肺14内に位置しており、経腸チューブ210の挿入をやり直す必要があることを示す。さらに、光の反射量または光の強度の差異により、食道22、胃24、及び小腸26における、経腸チューブ210の遠位先端部212の位置をさらに識別することができる。
【0061】
加えて、負圧発生器の形態の真空減衰センサ248を医療機器200と共に使用することによって、医療機器200の遠位先端部212が気道または消化管のどちらに位置しているかを識別することができる。食道22は、重要な構造支持体を含まないので、負圧が加えられると容易につぶれる。逆に、気管28は、半剛性軟骨で補強されているので、中程度の陰圧下でさえ、気道の開存性(開通性)を維持することができる。したがって、負圧発生器の形態の真空減衰センサ248を使用することによって、経腸チューブ210の配置中に経腸チューブ210を通して負圧を加えることにより、上記の解剖学的差異に基づいて経腸チューブ210の遠位先端部212の位置を識別することができる。例えば、真空減衰センサ248の負圧発生器は、経腸チューブ210のアクセスポート、例えばYポート232に接続された、
図5に示すようなシリンジバルブ、シリンジ、吸引チューブ、または任意の他の適切な真空発生器であってもよい。他の態様では、負圧発生器248は、経腸チューブ210に直接接続してもよい。負圧発生器248、例えば、
図5に示すようなシリンジバルブは、経腸チューブ210内に負圧を発生させるために、手動でまたは機械的に圧縮した後に解放される。経腸チューブ210の遠位先端部212の位置確認は、次のようにして行うことができる:(1)バルブが再膨張しない場合、経腸チューブ210の遠位先端部212は食道22内に位置する。したがって、経腸チューブ210の消化管への挿入を継続することができる。(2)バルブが再膨張する場合、経腸チューブ210の遠位先端部212は気道、例えば気管28内に位置する。したがって、経腸チューブ210の挿入をやり直す必要がある。
図5に示すように、負圧発生器248は、医療提供者が手動で圧縮し、観察することができ、これにより、医療機器200の真空減衰、ひいては、経腸チューブ210の遠位先端部212の位置を判定することができる。図示しない他の態様では、負圧発生器248は、プロセッサ120に電気的に接続され、機械的に制御されて、経腸チューブ210内に負圧を発生させる。次いで、例えば、空気圧センサ242を使用して、経腸チューブ210内の真空が減衰するか否かを検出する。そして、真空減衰に関する情報を有する信号をプロセッサ120に送信し、プロセッサ120で解釈し、表示装置140上に表示する。
【0062】
本発明のいくつかの態様では、CO2センサ240及び真空減衰センサ248、例えば負圧発生器は、互いに組み合わせて、経腸チューブ210の遠位先端部212において負圧を発生する単一ユニットとして構成してもよい。このような単一ユニットは、経腸チューブ210の遠位先端部212の付近のCO2の存在を判定するために空気を収集するのに必要な真空を発生させるために使用することができる。
【0063】
使用時は、上記の1以上のセンサから送られた信号の解釈に基づいて、患者の体内に挿入された医療機器200が患者の体内の所定の位置に到達したか否か、及び/または、医療機器200が患者の消化管から逸脱したか否かを判定することができる。そして、医療機器位置通知システム100は、表示装置140に表示される通知などの、患者の体内における医療機器200の位置に関する通知を生成することができる。この通知は、医療機器200が消化管などの所定の経路から逸脱したか否かを示すことができる。例えば、医療機器位置通知システム100は、医療提供者への警告として、警告通知を表示装置140に表示させることができる。それに加えてまたはその代わりに、医療機器位置通知システム100は、確認通知を表示装置140に表示させることによって、医療機器200が患者の体内の所定の位置に到達したことを示すことができる。
【0064】
上述した
図1~2及び
図8~10に示すように、医療機器200の外部位置検出器110及び位置検出信号発生器222からプロセッサ120に送られた信号は、メモリ装置130に格納された情報、例えばアルゴリズム132を用いて、プロセッサ120によって解釈することができる。プロセッサ120は、さらに、医療機器200の信号発生器222の現在位置144と、患者の体内に挿入された医療機器200の移動経路を示す信号発生器222のトレース経路146とを同時に示す表示画面142をリアルタイムで生成するように表示装置140に指示するために、メモリ装置130に格納された情報を用いて画像処理をさらに行うことができる。一般に、人間の目は、約200ミリ秒以上のタイムラグを時間遅延として知覚することができると理解されている。別の言い方をすれば、表示画面142上に表示されたトレース経路146を、医療機器200の信号発生器222の現在位置144を、約300ミリ秒以内(例えば約200ミリ秒以内、または例えば約150ミリ秒以内)の精度で表示することにより、表示画面142は、医療機器200の挿入及び/または配置中に実質的な、例えば知覚可能なタイムラグを生じることなく、医療機器200の信号発生器222の現在位置144及びトレース経路146を表示することができる。例えば、信号発生器222の現在位置144は、表示装置140がカラー表示画面142を生成することができる場合には、表示画面142中に、第1の明確な色で、または、第1のパターン、シェーディング、もしくは輝度レベルで表示することができる。例えば、
図8~10に示すように、現在位置144は、明るい緑色の点(ドット)として示すことができる。トレース経路146は、現在位置144とは異なる色で示してもよいし、または、現在位置1144と同じ色で示してもよい。あるいは、トレース経路146は、現在位置144と比較して、より暗い表示、または、よりシェーディングされた表示で示してもよい。例えば、
図8~10に示すように、トレース経路146は、現在位置144の明るい緑色の点(ドット)よりも低い輝度を有する薄黄色の線として示すことができる。
【0065】
加えて、
図8~10に示すように、表示装置140は、患者の体内における医療機器200の位置に関する少なくとも1つの通知150を表示画面142に表示するように構成される。通知150は、視覚的シンボル、例えば、医療機器200が位置すると解釈される身体器官の視覚的シンボルの形態とすることができる。他の態様では、視覚的シンボル150は、医療機器200が位置すると解釈される身体器官の一般的な解剖学的領域におけるライトアップ形状であってもよい。そのような形状は、任意の適切な形状、これに限定しないが、例えば、円形、長方形、三角形、星形、台形、または他の任意の適切な形状であり得る。視覚的シンボルは、下記の感嘆符、警告記号、チェックマーク、または、一般的に警告または確認を表すと解釈されるその他のグラフィック画像であってもよい。
【0066】
【0067】
例えば、表示装置140は、医療機器200に設けられた少なくとも1つのセンサが、医療機器200が所定の経路から逸脱したことを示す場合、例えば、上述の
図8に示すように、消化管ではなく気道に逸脱したことを示す場合に、警告またはアラートを意図する通知150を生成する。警告またはアラートの通知は、少なくとも1つのセンサが、医療機器200が所定の経路から逸脱したことを示す場合、第1の警告色、例えば、オレンジ色、赤色、黄色、または、警告と解釈されるのに適した明るい他の色であり得る。
【0068】
さらに、少なくとも1つのセンサが、医療機器200が所定の経路から逸脱したことを示す場合、例えば、位置検出信号発生器222と外部位置検出器110とが、医療機器200が、
図2及び
図8に示すように、剣状突起20の上側で患者の正中線の右側または左側に逸脱したことを示す場合、メモリ装置130に格納されたアルゴリズム132は、例えば、CO
2センサ240、空気圧センサ242、光センサ244、音センサ246、真空減衰センサ248、温度センサ、湿度センサ、及び/またはpHセンサなどの上述した1以上の追加的なセンサ(第2のセンサ)から患者の体内における医療機器200の位置を確認することができる追加的な情報を収集するようにプロセッサ120に指示することができる。そして、1以上の第2のセンサが、医療機器200が所定の経路から逸脱したこと、例えば、気道内に位置することを示すと、警告通知のための視覚的シンボル150は、第1の警告色から第2の警告色、例えば、明るい赤または任意の他の適切な警告色に変化するか、点滅を開始するか、またはその両方がなされる。所定の時間が経過しても、医療機器200が依然として経路から逸脱した位置にあると解釈される場合、視覚的シンボル150の追加的な色変化、追加的なシンボルの表示、警告テキスト、または他の視覚的警告などの追加の警告通知を表示画面142に表示することができる。
【0069】
加えて、表示装置140は、上述の少なくとも1以上のセンサによって収集された情報に基づいて、医療機器200が目標の所定の位置に到達したことを表示画面142上に示すことができる。例えば、医療機器200、例えば経腸チューブ210の遠位先端部212を患者の胃24に到達させることを意図している場合、表示装置140は、
図9に示すように、医療機器200の遠位先端部212が胃24に到達したときに、患者の胃24の形状の視覚的シンボル150を、確認色、例えば、緑色、青色、または他の任意の適切な非警告色で点灯または表示することができる。同様に、
図10に示すように、医療機器200を患者の小腸26に到達させることを意図している場合、表示装置140は、医療機器200の遠位先端部212が小腸26に到達したときに、患者の小腸26またはその一部の形状の視覚的シンボル150を、確認色、例えば、緑色または青色、または他の任意の適切な非警告色で点灯または表示することができる。特に、いくつかの態様では、光センサ244、真空減衰センサ248、及び/またはpHセンサと共に外部位置検出器110によって収集された情報は、経腸チューブ210の遠位先端部212が、食道22、胃24、及び小腸26のうちのどれに位置しているかを識別するのに特に有用であり得る。いずれにしても、医療機器200のいずれかのセンサから収集された情報は、医療機器200が患者の体内の目標所定位置に到達したか否かの判定に役立つことができる。
【0070】
上述した実施形態は、カテーテルの遠位先端部の配置に関連するが、本発明の医療機器位置通知システムは、ステント留置、アブレーション、閉塞除去、熱処理、外科的処置、流体送達、または任意の他の適切な侵襲的処置の過程において、任意の医療機器または挿入可能な構成要素の哺乳動物の体内への配置を支援することができることを理解されたい。また、上記の任意の医療処置のために、任意のタイプのカテーテルを使用することができることを理解されたい。また、カテーテルの代わりに、任意の適切な侵襲的または挿入可能な医療機器を使用することができることを理解されたい。
【0071】
本明細書は、実施例を用いて、最良の実施の形態(ベストモード)を含む本発明の内容を開示し、かつ本発明を当業者が実施(任意の装置またはシステムの作製及び使用、並びに組み込まれた任意の方法の実施を含む)することを可能にしている。本発明の特許される技術範囲は、特許請求の範囲の請求項の記載によって定義され、当業者が想到可能な別の実施形態も含まれ得る。そのような別の実施形態は、各請求項の文言と相違しない構成要素を含む場合、または、各請求項の文言とは実質的に相違しない均等な構成要素を含む場合、その請求項の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】