(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(54)【発明の名称】動物用パルボウイルス抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220922BHJP
C07K 16/08 20060101ALI20220922BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220922BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220922BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220922BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220922BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220922BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220922BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20220922BHJP
A61K 39/23 20060101ALI20220922BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20220922BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/08 ZNA
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12Q1/70
A61K39/23
A61P31/20
G01N33/569 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505401
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 US2020044302
(87)【国際公開番号】W WO2021022067
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517299032
【氏名又は名称】キンドレッド バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ハンチュン
(72)【発明者】
【氏名】グェン, ラム
(72)【発明者】
【氏名】ラトクリフ, エレン
(72)【発明者】
【氏名】チン, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】リー, シー ジアン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ10
4B063QS33
4B063QX01
4B064AG27
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4B065AA01X
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4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
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4C085AA13
4C085AA14
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4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA29
4H045EA53
4H045FA74
(57)【要約】
例えば、改善された発現特性を有する、イヌ及び/又はネコパルボウイルスに結合する、イヌ化、ネコ化、及びキメラ抗体を含む、パルボウイルス抗体に関する様々な実施態様が提供される。様々な実施態様では、パルボウイルス抗体は、ADCC、ADCP、及び/又はCDCエフェクター機能を有する。様々な実施態様では、そのようなモノクローナルパルボウイルス抗体は、イヌ及びネコなどの対象におけるパルボウイルス感染を予防し及び/又は治療するための方法において使用できる。例えば、提供されるパルボウイルス抗体は、イヌ又はネコパルボウイルスでの感染に対する受動免疫を提供するために使用されうる。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、
(a)(i)配列番号:4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号:5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(iii)配列番号:6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、及び(iv)配列番号:7若しくは配列番号:8のHC-FR1配列;又は
(b)(i)配列番号:42のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号:43のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(iii)配列番号:44のアミノ酸配列を含むCDR-H3、及び(iv)配列番号:45若しくは配列番号:46のHC-FR1配列
を含む、抗体。
【請求項2】
イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、
(a)(i)配列番号:13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(ii)配列番号:14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(iii)配列番号:15のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(iv)配列番号:16のLC-FR1配列;又は
(b)(i)配列番号:52のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(ii)配列番号:53のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(iii)配列番号:54のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(iv)配列番号:55若しくは配列番号:56のLC-FR1配列
を含む、抗体。
【請求項3】
(a)の抗体が配列番号:12のHC-FR4配列を含む、請求項1に記載の単離された抗体。
【請求項4】
(b)の抗体が配列番号:48のHC-FR2配列を含む、請求項1に記載の単離された抗体。
【請求項5】
(b)の抗体が配列番号:50のHC-FR3配列を含む、請求項1又は請求項4に記載の単離された抗体。
【請求項6】
(b)の抗体が配列番号:59のHC-FR3配列を含む、請求項2に記載の単離された抗体。
【請求項7】
(b)の抗体が配列番号:61のHC-F4配列を含む、請求項2又は請求項6に記載の単離された抗体。
【請求項8】
イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、
a)(i)配列番号:4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号:5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号:6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖、又は
b)(i)配列番号:42のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号:43のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号:44のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖
を含むイヌ化又はネコ化抗体である、抗体。
【請求項9】
イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、
a)(i)配列番号:13のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号:14のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号:15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖、又は
b)(i)配列番号:52のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号:53のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号:54のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖
を含むイヌ化又はネコ化抗体である、抗体。
【請求項10】
イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、
a)(i)配列番号:4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号:5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号:6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖、及び
b)(i)配列番号:13のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号:14のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号:15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖
を含むイヌ化又はネコ化抗体である、抗体。
【請求項11】
イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、
a)(i)配列番号:42のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号:43のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号:44のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖、及び
b)(i)配列番号:52のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号:53のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号:54のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖
を含むイヌ化又はネコ化抗体である、抗体。
【請求項12】
抗体がキメラ抗体である、請求項1から11の何れか一項に記載の抗体。
【請求項13】
抗体が、イヌ若しくはネコ定常重鎖領域又はイヌ若しくはネコ定常軽鎖領域を含む、請求項1から12の何れか一項に記載の抗体。
【請求項14】
抗体が
(a)IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-D定常領域から選択されるイヌ重鎖定常領域;又は
(b)IgG1、IgG2a、及びIgG2b定常領域から選択されるネコ重鎖定常領域
を含む、請求項1から13の何れか一項に記載の抗体。
【請求項15】
抗体が、補体結合活性を有する野生型又はバリアントIgG Fcを含む、請求項1から14の何れか一項に記載の抗体。
【請求項16】
抗体が、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有する野生型又はバリアントIgG Fcを含む、請求項1から15の何れか一項に記載の抗体。
【請求項17】
抗体が、抗体依存性細胞食作用(ADCP)活性を有する野生型又はバリアントIgG Fcを含む、請求項1から16の何れか一項に記載の抗体。
【請求項18】
抗体が、
a)配列番号:91の10位に対応する位置にアスパラギン酸又はグルタミン酸;
b)配列番号:91の10位にアスパラギン酸又はグルタミン酸;
c)配列番号:91の103位に対応する位置にアスパラギン酸又はグルタミン酸;
d)配列番号:91の103位にアスパラギン酸又はグルタミン酸;
e)配列番号:91の10位及び/又は103位に対応する位置にアスパラギン酸又はグルタミン酸;
f)配列番号:91の10位及び/又は103位にアスパラギン酸又はグルタミン酸;或いは
g)配列番号:92、配列番号:93、配列番号:94、配列番号:95、配列番号:96、配列番号:97、配列番号:98、又は配列番号:99のアミノ酸配列
を含む、請求項1から17の何れか一項に記載の抗体。
【請求項19】
抗体がイヌκ軽鎖定常領域又はネコκ軽鎖定常領域を含む、請求項1から18の何れか一項に記載の抗体。
【請求項20】
抗体が、一又は複数のN-グリコシル化部位を有さないネコκ軽鎖定常領域を含む、請求項1から19の何れか一項に記載の抗体。
【請求項21】
抗体が、配列番号:1、配列番号:2、及び/又は配列番号:3のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する、請求項1から20の何れか一項に記載の抗体。
【請求項22】
抗体が、バイオレイヤー干渉法により測定して、5×10
-6M未満、1×10
-6M未満、5×10
-7M未満、1×10
-7M未満、5×10
-8M未満、1×10
-8M未満、5×10
-9M未満、1×10
-9M未満、5×10
-10M未満、1×10
-10M未満、5×10
-11M未満、1×10
-11M未満、5×10
-12M未満、1×10
-12M未満、5×10
-13M未満、又は1×10
-13M未満の解離定数(Kd)でイヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する、請求項1から21の何れか一項に記載の抗体。
【請求項23】
抗体が、免疫ブロット分析及び/又はバイオレイヤー干渉法によって決定されて、イヌパルボウイルス又はネコパルボウイルスに結合する、請求項1から22の何れか一項に記載の抗体。
【請求項24】
200μg/mLの濃度の抗体が、少なくとも8000、少なくとも16000、少なくとも32000の赤血球凝集抑制値を有する、請求項1から23の何れか一項に記載の抗体。
【請求項25】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項1から24の何れか一項に記載の抗体。
【請求項26】
(a)配列番号:7、8、45、若しくは46の(HC-FR1)配列;(b)配列番号:9、47、若しくは48のHC-FR2配列;(c)配列番号:10、49、若しくは50のHC-FR3配列;(d)配列番号:11、12、若しくは51のHC-FR4配列;(e)配列番号:16、55、若しくは56の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列;(f)配列番号:17若しくは57のLC-FR2配列;(g)配列番号:18、58、若しくは59のLC-FR3配列;又は(h)配列番号:19、60、若しくは61のLC-FR4配列のうちの一又は複数を含む、請求項1から25の何れか一項に記載の抗体。
【請求項27】
抗体が、
(a)配列番号:20、配列番号:21、配列番号:85、配列番号:86、配列番号:40、配列番号:62、配列番号:63、若しくは配列番号:88の可変重鎖配列;及び/又は
(b)配列番号:22、配列番号:87、配列番号:41、配列番号:64、配列番号:65、若しくは配列番号:89の可変軽鎖配列
を含む、請求項1から26の何れか一項に記載の抗体。
【請求項28】
抗体が、
(a)配列番号:20の可変重鎖配列と配列番号:22の可変軽鎖配列;
(b)配列番号:21の可変重鎖配列と配列番号:22の可変軽鎖配列;
(c)配列番号:85の可変重鎖配列と配列番号:87の可変軽鎖配列;
(d)配列番号:86の可変重鎖配列と配列番号:87の可変軽鎖配列;
(e)配列番号:40の可変重鎖配列と配列番号:41の可変軽鎖配列;
(f)配列番号:62の可変重鎖配列と配列番号:64若しくは配列番号:65の可変軽鎖配列;
(g)配列番号:63の可変重鎖配列と配列番号:64若しくは配列番号:65の可変軽鎖配列;又は
(h)配列番号:88の可変重鎖配列と配列番号:89の可変軽鎖配列
を含む、請求項1から27の何れか一項に記載の抗体。
【請求項29】
抗体が、
(a)(i)配列番号:23、配列番号:24、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:66、配列番号:67、若しくは配列番号:79の重鎖配列;及び/又は(ii)配列番号:25、配列番号:39、配列番号:68、配列番号:69、若しくは配列番号:80の軽鎖配列;又は
(b)(i)配列番号:31、配列番号:40、若しくは配列番号:74の重鎖配列;及び/又は(ii)配列番号:32、配列番号:33、配列番号:41、配列番号:75、若しくは配列番号:76の軽鎖配列
を含む、請求項1から28の何れか一項に記載の抗体。
【請求項30】
抗体が、
(a)配列番号:23若しくは配列番号:24の重鎖配列と配列番号:25の軽鎖配列;
(b)配列番号:31の重鎖配列と配列番号:32若しくは配列番号:33の軽鎖配列;
(c)配列番号:37若しくは配列番号38の重鎖配列と配列番号:39の軽鎖配列;
(d)配列番号:66若しくは配列番号:67の重鎖配列と配列番号:68若しくは配列番号:69の軽鎖配列;
(e)配列番号:66の重鎖配列と配列番号:68の軽鎖配列;
(f)配列番号:67の重鎖配列と配列番号:69の軽鎖配列;
(g)配列番号:74の重鎖配列と配列番号:75若しくは配列番号:76の軽鎖配列;又は
(h)配列番号:79の重鎖配列と配列番号:80の軽鎖配列
を含む、請求項1から29の何れか一項に記載の抗体。
【請求項31】
抗体が、配列番号:24の重鎖配列と配列番号:25の軽鎖配列を含む、請求項1から30の何れか一項に記載の抗体。
【請求項32】
請求項1から31の何れか一項に記載の抗体をコードする単離された核酸。
【請求項33】
請求項31に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項34】
請求項32の宿主細胞を培養することと、抗体を単離することとを含む、抗体を産生する方法。
【請求項35】
請求項1から30の何れか一項に記載の一又は複数の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項36】
薬学的に許容される担体がリン酸緩衝生理食塩水である、請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
イヌ又はネコパルボウイルスに結合する治療有効量のモノクローナル抗体を対象に投与することを含む、イヌ又はネコパルボウイルスでの感染に対して対象に受動免疫を提供する方法。
【請求項38】
モノクローナル抗体が、イヌ又はネコパルボウイルスへの曝露前に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
モノクローナル抗体が、イヌ又はネコパルボウイルスへの曝露後に投与される、請求項37又は請求項38に記載の方法。
【請求項40】
モノクローナル抗体が、イヌ又はネコパルボウイルスでの感染後に投与される、請求項37から39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
対象が、発熱、嘔吐、下痢、リンパ球減少症、及び敗血症から選択される少なくとも一の症状を示した後に、モノクローナル抗体が投与される、請求項37から40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
例えば陽性のケージサイドSNAP試験によって決定されて、イヌ又はネコパルボウイルスが糞便中に検出された後にモノクローナル抗体が投与される、請求項37から41の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
対象に以前にパルボウイルスワクチンが投与されている、請求項37から42の何れか一項に記載の方法。
【請求項44】
対象に以前にはパルボウイルスワクチンが投与されていない、請求項37から42の何れか一項に記載の方法。
【請求項45】
イヌ若しくはネコパルボウイルスに対する母性由来の抗体の欠如、又はイヌ若しくはネコパルボウイルスに対する抗体の受動伝達の失敗のため、対象が出生時に保護されていない、請求項37から44の何れか一項に記載の方法。
【請求項46】
対象が子飼いで、対象の母親が乳汁を産生しない、又は対象がパルボウイルスに対する抗体を産生することができない、請求項37から45の何れか一項に記載の方法。
【請求項47】
対象が、イヌ又はネコパルボウイルスで汚染された環境に住んでいる、請求項37から46の何れか一項に記載の方法。
【請求項48】
イヌ又はネコパルボウイルスに結合する治療有効量のモノクローナル抗体を対象に投与することを含む、対象におけるイヌ又はネコパルボウイルス感染症を治療する方法。
【請求項49】
対象が、発熱、嘔吐、下痢、リンパ球減少症、及び敗血症から選択される少なくとも一の症状を示した後にモノクローナル抗体が投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
例えば陽性のケージサイドSNAP試験によって決定されて、イヌ又はネコパルボウイルスが糞便中に検出された後にモノクローナル抗体が投与される、請求項48又は請求項49に記載の方法。
【請求項51】
対象に以前にパルボウイルスワクチンが投与されている、請求項48から50の何れか一項に記載の方法。
【請求項52】
対象に以前にはパルボウイルスワクチンが投与されていない、請求項48から50の何れか一項に記載の方法。
【請求項53】
対象が、イヌ又はネコパルボウイルスで汚染された環境に住んでいる、請求項48から52の何れか一項に記載の方法。
【請求項54】
対象がイヌ又はネコである、請求項48から53の何れか一項に記載の方法。
【請求項55】
対象がヒトである、請求項48から53の何れか一項に記載の方法。
【請求項56】
方法が、配列番号:1、配列番号:2、及び/又は配列番号:3のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する治療有効量のモノクローナル抗体を対象に投与することを含む、請求項37から55の何れか一項に記載の方法。
【請求項57】
方法が、
(a)(i)配列番号:42のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号:43のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号:44のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖;並びに
(b)(i)配列番号:52のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号:53のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号:54のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖
を含む治療有効量のモノクローナル抗体を対象に投与することを含む、請求項37から56の何れか一項に記載の方法。
【請求項58】
方法が、請求項1から31の何れか一項に記載の抗体又は請求項35又は請求項36に記載の薬学的組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、請求項37から57の何れか一項に記載の方法。
【請求項59】
抗体又は薬学的組成物が非経口的に投与される、請求項37から58の何れか一項に記載の方法。
【請求項60】
抗体又は薬学的組成物が、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、動脈内経路、滑液中経路、くも膜下腔内経路、静脈内、又は吸入経路によって投与される、請求項37から59の何れか一項に記載の方法。
【請求項61】
抗体又は薬学的組成物が静脈内投与される、請求項37から60の何れか一項に記載の方法。
【請求項62】
抗体又は薬学的組成物が皮下投与される、請求項37から60の何れか一項に記載の方法。
【請求項63】
対象が、1週齢未満、2週齢未満、3週齢未満、4週齢未満、5週未満、6週齢未満、6週齢未満、7週齢未満、8週齢未満、9週齢未満、10週齢未満、11週齢未満、12週齢未満、6か月齢未満、0から12週齢、0から10週齢、0から8週齢、0から6週齢、0から4週齢、0から2週齢、4から12週齢、6から12週齢、10から12週齢、4週から6か月齢、2か月から6か月齢、4か月から6か月齢、6か月から1歳、13週齢を超え、又は1歳を超える、請求項37から62の何れか一項に記載の方法。
【請求項64】
対象が13週齢以上である、請求項37から63の何れか一項に記載の方法。
【請求項65】
抗体が、1用量当たり0.01mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲の量で投与される、請求項37から64の何れか一項に記載の方法。
【請求項66】
抗体が、1用量当たり5mg/kg体重の量で投与される、請求項37から65の何れか一項に記載の方法。
【請求項67】
抗体又は薬学的組成物が単一用量として投与される、請求項37から66の何れか一項に記載の方法。
【請求項68】
抗体又は薬学的組成物が、少なくとも2週又は3週連続して週一回など、繰り返し投与される、請求項37から67の何れか一項に記載の方法。
【請求項69】
方法が、治療有効量の請求項1から31の何れか一項に記載の二以上の異なる抗体を対象に投与することを含み、二以上の異なる抗体が同時に又は逐次的に投与され、場合によっては、二以上の異なる抗体の投与が一日以上離れている、請求項37から68の何れか一項に記載の方法。
【請求項70】
抗体又は薬学的組成物の投与前に赤血球凝集抑制アッセイによって決定されて、対象が20未満の赤血球凝集抑制力価を有する、請求項37から69の何れか一項に記載の方法。
【請求項71】
抗体又は薬学的組成物の投与前に赤血球凝集抑制アッセイによって決定されて、対象がパルボウイルス力価陰性である、請求項37から70の何れか一項に記載の方法。
【請求項72】
抗体又は薬学的組成物の投与後、対象がイヌ又はネコパルボウイルスによる感染から生き延びる、請求項37から71の何れか一項に記載の方法。
【請求項73】
細胞のパルボウイルス感染を低下させる方法であって、抗体のパルボウイルスへの結合を許容する条件下で、請求項1から31の何れか一項に記載の抗体又は請求項35又は請求項36に記載の薬学的組成物を細胞に曝露することを含む、方法。
【請求項74】
細胞がインビトロで抗体又は薬学的組成物に曝露される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
細胞が、哺乳動物細胞、ヒト細胞、イヌ細胞、又はネコ細胞である、請求項73又は請求項74に記載の方法。
【請求項76】
対象からのサンプルにおけるパルボウイルス感染を検出するための方法であって、抗体のパルボウイルスへの結合を許容する条件下で、請求項1から31の何れか一項に記載の抗体又は請求項35若しくは請求項36に記載の薬学的組成物とサンプルを接触させることと、抗体とサンプル中のパルボウイルスとの間に複合体が形成されるかどうかを検出することとを含む、方法。
【請求項77】
サンプルが、イヌ、ネコ、又はヒトから得られた生物学的サンプルである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
a)配列番号:91の10位に対応する位置にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸;
b)配列番号:91の10位にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸;
c)配列番号:91の103位に対応する位置にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸;
d)配列番号:91の103位にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸;
e)配列番号:91の10位及び/又は103位に対応する位置にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸;又は
f)配列番号:91の10位及び/又は103位にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸
を含む、バリアントIgG Fcポリペプチド。
【請求項79】
請求項78に記載のバリアントIgG Fcポリペプチドを含むポリペプチド。
【請求項80】
配列番号:92、配列番号:93、配列番号:94、配列番号:95、配列番号:96、配列番号:97、配列番号:98、又は配列番号:99のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項81】
請求項78から80の何れか一項に記載のポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項82】
請求項81に記載の核酸を含む宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
この出願は、各々があらゆる目的のためにその全体について出典明示によりここに援用される、2019年7月30日出願の米国仮出願第62/880650号、2020年1月31日出願の米国仮出願第62/968970号、及び2020年5月26日出願の米国仮出願第63/030123号の利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
この発明は、例えば、改善された組換え産生性並びにイヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスへの結合中和性を有する単離されたイヌパルボウイルス抗体、並びに例えば、イヌ又はネコパルボウイルスによる感染に対して受動免疫を提供し、及び/又はイヌ及びネコなどのコンパニオンアニマルにおけるパルボウイルス感染症を治療するために、前記抗体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イヌパルボウイルス(CPV)は、世界中でイヌに感染する最も重要な腸内ウイルスである1。CPVビリオンは非エンベロープ型DNAウイルスである。CPV-2a、CPV-2b、及びCPV-2cを含む、元のCPVの複数の変異株がある。CPV-2の変異株は、ほんの僅かなアミノ酸だけが互いに異なる2。環境内に非常に残留性であるので、CPVは何か月も感染性を維持しうる。CPVは、直接及び間接の接触を介して広がる3。口腔粘膜と接触すると、CPVは局所リンパ管内で複製を開始し、全身に広がる。4から14日間の潜伏期間で、CPVは、骨髄、リンパ球及び腸陰窩上皮細胞を含む、体の急速に分裂する細胞を標的とする。
【0004】
臨床疾患は、発熱と鬱病、それに続く嘔吐、下痢(大量かつ血性)、リンパ球減少症、脱水症並びにかなり頻繁に続発性敗血症並びに死亡として顕在化する。死亡率は子犬において70%を超える場合がある
3。感染は、移行抗体が衰え始めるので、離乳後の子犬において最も好発する。ワクチンは直ぐに入手でき、CPV-2の全ての変異株から効果的に保護する。
適切なタイミングでのワクチン接種は保護的であるが、パルボウイルス感染は依然として問題である。感染しやすいイヌの主要集団には、母性由来の抗体が非防御レベルに減弱し、ワクチン接種がなされる前の易感染域にいる子犬が含まれる(
図1を参照)。24週齢未満の子犬は、CPV疾患のリスクが最も高くなる。加えて、母性由来の抗体の受動伝達が失敗した子犬は、別の脆弱集団である。集団発生は、素朴な犬舎や避難所の集団でも発生し続けている。
【0005】
この時点までのCPV感染の治療は、大部分が支持的であった。治療には、典型的には、静脈内輸液、制吐薬、及び敗血症から保護するための広域スペクトル抗生物質が含まれる。抗ウイルス薬や過免疫血漿を含む様々な他の治療が試みられたが失敗している4。入院が典型的には推奨されるが、多くの飼い主にとって法外な費用がかかり、安楽死させる決定につながりうる。CPV感染症のイヌを入院させるには、厳格な隔離プロトコルが必要である。これは、獣医施設とスタッフにとってロジスティクス上の困難であることが分かっている5。而して、予防及び治療処置に対する満たされていない医学的必要性が存在する。
【0006】
現在、特にCPVのためにUSDA又はFDAが承認した治療法はない。ここに記載のパルボウイルスモノクローナル抗体は、CPVの重症度を低下させ又はCPVに関連する罹患率及び死亡率を排除するために、活動性CPV感染に罹患したイヌへの治療的介入として投与されるであろう。加えて、ここに記載のパルボウイルスモノクローナル抗体は、CPV感染の発症を防ぐために、CPV感染したイヌに曝露されたイヌの予防的処置剤として利用されるであろう。
【発明の概要】
【0007】
実施態様1. イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、(a)(i)配列番号:4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号:5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(iii)配列番号:6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、及び(iv)配列番号:7若しくは配列番号:8のHC-FR1配列;又は(b)(i)配列番号:42のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号:43のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(iii)配列番号:44のアミノ酸配列を含むCDR-H3、及び(iv)配列番号:45若しくは配列番号:46のHC-FR1配列を含む、抗体。
実施態様2. イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、(a)(i)配列番号:13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(ii)配列番号:14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(iii)配列番号:15のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(iv)配列番号:16のLC-FR1配列;又は(b)(i)配列番号:52のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(ii)配列番号:53のアミノ酸配列を含むCDR-L2、(iii)配列番号:54のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び(iv)配列番号:55若しくは配列番号:56のLC-FR1配列を含む、抗体。
実施態様3. (a)の抗体が配列番号:12のHC-FR4配列を含む、実施態様1の単離された抗体。
実施態様4. (b)の抗体が配列番号:48のHC-FR2配列を含む、実施態様1の単離された抗体。
実施態様5. (b)の抗体が配列番号:50のHC-FR3配列を含む、実施態様1又は実施態様4の単離された抗体。
実施態様6. (b)の抗体が配列番号:59のHC-FR3配列を含む、実施態様2の単離された抗体。
実施態様7. (b)の抗体が配列番号:61のHC-F4配列を含む、実施態様2又は実施態様6の単離された抗体。
実施態様8. イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、a)(i)配列番号:4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号:5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号:6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖、又はb)(i)配列番号:42のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号:43のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号:44のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖を含むイヌ化又はネコ化抗体である、抗体。
実施態様9. イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、a)(i)配列番号:13のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号:14のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号:15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖、又はb)(i)配列番号:52のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号:53のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号:54のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含むイヌ化又はネコ化抗体である、抗体。
実施態様10. イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、a)(i)配列番号:4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号:5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号:6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖、及びb)(i)配列番号:13のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号:14のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号:15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含むイヌ化又はネコ化抗体である、抗体。
実施態様11. イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する単離された抗体であって、a)(i)配列番号:42のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号:43のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号:44のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖、及びb)(i)配列番号:52のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号:53のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号:54のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含むイヌ化又はネコ化抗体である、抗体。
実施態様12. 抗体がキメラ抗体である、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様13. 抗体が、イヌ若しくはネコ定常重鎖領域又はイヌ若しくはネコ定常軽鎖領域を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様14. 抗体が
(a)IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-D定常領域から選択されるイヌ重鎖定常領域;又は
(b)IgG1、IgG2a、及びIgG2b定常領域から選択されるネコ重鎖定常領域
を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様15. 抗体が、補体結合活性を有する野生型又はバリアントIgG Fcを含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様16. 抗体が、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有する野生型又はバリアントIgG Fcを含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様17. 抗体が、抗体依存性細胞食作用(ADCP)活性を有する野生型又はバリアントIgG Fcを含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様18. 抗体が、a)配列番号:91の10位に対応する位置にアスパラギン酸又はグルタミン酸;b)配列番号:91の10位にアスパラギン酸又はグルタミン酸;c)配列番号:91の103位に対応する位置にアスパラギン酸又はグルタミン酸;d)配列番号:91の103位にアスパラギン酸又はグルタミン酸;e)配列番号:91の10位及び/又は103位に対応する位置にアスパラギン酸又はグルタミン酸;f)配列番号:91の10位及び/又は103位にアスパラギン酸又はグルタミン酸;或いはg)配列番号:92、配列番号:93、配列番号:94、配列番号:95、配列番号:96、配列番号:97、配列番号:98、又は配列番号:99のアミノ酸配列を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様19. 抗体がイヌκ軽鎖定常領域又はネコκ軽鎖定常領域を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様20. 抗体が、一又は複数のN-グリコシル化部位を有さないネコκ軽鎖定常領域を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様21. 抗体が、配列番号:1、配列番号:2、及び/又は配列番号:3のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様22. 抗体が、バイオレイヤー干渉法により測定して、5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、1×10-12M未満、5×10-13M未満、又は1×10-13M未満の解離定数(Kd)でイヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様23. 抗体が、免疫ブロット分析及び/又はバイオレイヤー干渉法によって決定されて、イヌパルボウイルス又はネコパルボウイルスに結合する、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様24. 200μg/mLの濃度の抗体が、少なくとも8000、少なくとも16000、少なくとも32000の赤血球凝集抑制値を有する、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様25. 抗体がモノクローナル抗体である、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様26. (a)配列番号:7、8、45、若しくは46の(HC-FR1)配列;(b)配列番号:9、47、若しくは48のHC-FR2配列;(c)配列番号:10、49、若しくは50のHC-FR3配列;(d)配列番号:11、12、若しくは51のHC-FR4配列;(e)配列番号:16、55、若しくは56の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列;(f)配列番号:17若しくは57のLC-FR2配列;(g)配列番号:18、58、若しくは59のLC-FR3配列;又は(h)配列番号:19、60、若しくは61のLC-FR4配列のうちの一又は複数を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様27. 抗体が、(a)配列番号:20、配列番号:21、配列番号:85、配列番号:86、配列番号:40、配列番号:62、配列番号:63、若しくは配列番号:88の可変重鎖配列;及び/又は(b)配列番号:22、配列番号:87、配列番号:41、配列番号:64、配列番号:65、若しくは配列番号:89の可変軽鎖配列を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様28. 抗体が、(a)配列番号:20の可変重鎖配列と配列番号:22の可変軽鎖配列;(b)配列番号:21の可変重鎖配列と配列番号:22の可変軽鎖配列;(c)配列番号:85の可変重鎖配列と配列番号:87の可変軽鎖配列;(d)配列番号:86の可変重鎖配列と配列番号:87の可変軽鎖配列;(e)配列番号:40の可変重鎖配列と配列番号:41の可変軽鎖配列;(f)配列番号:62の可変重鎖配列と配列番号:64若しくは配列番号:65の可変軽鎖配列;(g)配列番号:63の可変重鎖配列と配列番号:64若しくは配列番号:65の可変軽鎖配列;又は(h)配列番号:88の可変重鎖配列と配列番号:89の可変軽鎖配列を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様29. 抗体が、(a)(i)配列番号:23、配列番号:24、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:66、配列番号:67、若しくは配列番号:79の重鎖配列;及び/又は(ii)配列番号:25、配列番号:39、配列番号:68、配列番号:69、若しくは配列番号:80の軽鎖配列;又は(b)(i)配列番号:31、配列番号:40、若しくは配列番号:74の重鎖配列;及び/又は(ii)配列番号:32、配列番号:33、配列番号:41、配列番号:75、若しくは配列番号:76の軽鎖配列を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様30. 抗体が、(a)配列番号:23若しくは配列番号:24の重鎖配列と配列番号:25の軽鎖配列;(b)配列番号:31の重鎖配列と配列番号:32若しくは配列番号:33の軽鎖配列;(c)配列番号:37若しくは配列番号38の重鎖配列と配列番号:39の軽鎖配列;(d)配列番号:66若しくは配列番号:67の重鎖配列と配列番号:68若しくは配列番号:69の軽鎖配列;(e)配列番号:66の重鎖配列と配列番号:68の軽鎖配列;(f)配列番号:67の重鎖配列と配列番号:69の軽鎖配列;(g)配列番号:74の重鎖配列と配列番号:75若しくは配列番号:76の軽鎖配列;又は(h)配列番号:79の重鎖配列と配列番号:80の軽鎖配列を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様31. 抗体が、配列番号:24の重鎖配列と配列番号:25の軽鎖配列を含む、先の実施態様の何れか一の抗体。
実施態様32. 先の実施態様の何れか一の抗体をコードする単離された核酸。
実施態様33. 実施態様31の核酸を含む宿主細胞。
実施態様34. 実施態様32の宿主細胞を培養することと、抗体を単離することとを含む、抗体を産生する方法。
実施態様35. 実施態様1から31の何れか一又は複数の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
実施態様36. 薬学的に許容される担体がリン酸緩衝生理食塩水である、実施態様35の薬学的組成物。
実施態様37. イヌ又はネコパルボウイルスに結合する治療有効量のモノクローナル抗体を対象に投与することを含む、イヌ又はネコパルボウイルスでの感染に対して対象に受動免疫を提供する方法。
実施態様38. モノクローナル抗体が、イヌ又はネコパルボウイルスへの曝露前に投与される、実施態様37の方法。
実施態様39. モノクローナル抗体が、イヌ又はネコパルボウイルスへの曝露後に投与される、実施態様37又は実施態様38の方法。
実施態様40. モノクローナル抗体が、イヌ又はネコパルボウイルスでの感染後に投与される、実施態様37から39の何れか一の方法。
実施態様41. 対象が、発熱、嘔吐、下痢、リンパ球減少症、及び敗血症から選択される少なくとも一の症状を示した後に、モノクローナル抗体が投与される、実施態様37から40の何れか一の方法。
実施態様42. 例えばケージサイドSNAP試験の陽性によって決定されて、イヌ又はネコパルボウイルスが糞便中に検出された後にモノクローナル抗体が投与される、実施態様37から41の何れか一の方法。
実施態様43. 対象に以前にパルボウイルスワクチンが投与されている、実施態様37から42の何れか一の方法。
実施態様44. 対象に以前にはパルボウイルスワクチンが投与されていない、実施態様37から42の何れか一の方法。
実施態様45. イヌ若しくはネコパルボウイルスに対する母性由来の抗体の欠如、又はイヌ若しくはネコパルボウイルスに対する抗体の受動伝達の失敗のため、対象が出生時に保護されていない、実施態様37から44の何れか一の方法。
実施態様46. 対象が子飼い(hand-reared)で、対象の母親が乳汁を産生しない、又は対象がパルボウイルスに対する抗体を産生することができない、実施態様37から45の何れか一の方法。
実施態様47. 対象が、イヌ又はネコパルボウイルスで汚染された環境に住んでいる、実施態様37から46の何れか一の方法。
実施態様48. イヌ又はネコパルボウイルスに結合する治療有効量のモノクローナル抗体を対象に投与することを含む、対象におけるイヌ又はネコパルボウイルス感染症を治療する方法。
実施態様49. 対象が、発熱、嘔吐、下痢、リンパ球減少症、及び敗血症から選択される少なくとも一の症状を示した後にモノクローナル抗体が投与される、実施態様48の方法。
実施態様50. 例えばケージサイドSNAP試験の陽性によって決定されて、イヌ又はネコパルボウイルスが糞便中に検出された後にモノクローナル抗体が投与される、実施態様48又は実施態様49の方法。
実施態様51. 対象に以前にパルボウイルスワクチンが投与されている、実施態様48から50の何れか一の方法。
実施態様52. 対象に以前にはパルボウイルスワクチンが投与されていない、実施態様48から50の何れか一の方法。
実施態様53. 対象が、イヌ又はネコパルボウイルスで汚染された環境に住んでいる、実施態様48から52の何れか一の方法。
実施態様54. 対象がイヌ又はネコである、実施態様48から53の何れか一の方法。
実施態様55. 対象がヒトである、実施態様48から53の何れか一の方法。
実施態様56. 方法が、配列番号:1、配列番号:2、及び/又は配列番号:3のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する治療有効量のモノクローナル抗体を対象に投与することを含む、実施態様37から55の何れか一の方法。
実施態様57. 方法が、(a)配列番号:42のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号:43のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号:44のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖;並びに(b)(i)配列番号:52のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号:53のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号:54のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む治療有効量のモノクローナル抗体を対象に投与することを含む、実施態様37から56の何れか一の方法。
実施態様58. 方法が、実施態様1から31の何れか一の抗体又は実施態様35又は実施態様36の薬学的組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、実施態様37から57の何れか一の方法。
実施態様59. 抗体又は薬学的組成物が非経口的に投与される、実施態様37から58の何れか一の方法。
実施態様60. 抗体又は薬学的組成物が、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、動脈内経路、滑液中経路、くも膜下腔内経路、静脈内、又は吸入経路によって投与される、実施態様37から59の何れか一の方法。
実施態様61. 抗体又は薬学的組成物が静脈内投与される、実施態様37から60の何れか一の方法。
実施態様62. 抗体又は薬学的組成物が皮下投与される、実施態様37から60の何れか一の方法。
実施態様63. 対象が、1週齢未満、2週齢未満、3週齢未満、4週齢未満、5週未満、6週齢未満、6週齢未満、7週齢未満、8週齢未満、9週齢未満、10週齢未満、11週齢未満、12週齢未満、6か月齢未満、0から12週齢、0から10週齢、0から8週齢、0から6週齢、0から4週齢、0から2週齢、4から12週齢、6から12週齢、10から12週齢、4週から6か月齢、2か月から6か月齢、4か月から6か月齢、6か月から1歳、13週齢を超え、又は1歳を超える、実施態様37から62の何れか一の方法。
実施態様64. 対象が13週齢以上である、実施態様37から63の何れか一の方法。
実施態様65. 抗体が、1用量当たり0.01mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲の量で投与される、実施態様37から64の何れか一の方法。
実施態様66. 抗体が、1用量当たり5mg/kg体重の量で投与される、実施態様37から65の何れか一の方法。
実施態様67. 抗体又は薬学的組成物が単一用量として投与される、実施態様37から66の何れか一の方法。
実施態様68. 抗体又は薬学的組成物が、少なくとも2週又は3週連続して週一回など、繰り返し投与される、実施態様37から67の何れか一の方法。
実施態様69. 方法が、治療有効量の実施態様1から31の何れか一の二以上の異なる抗体を対象に投与することを含み、二以上の異なる抗体が同時に又は逐次的に投与され、場合によっては、二以上の異なる抗体の投与が一日以上離れている、実施態様37から68の何れか一の方法。
実施態様70. 抗体又は薬学的組成物の投与前に赤血球凝集抑制アッセイによって決定されて、対象が20未満の赤血球凝集抑制力価を有する、実施態様37から69の何れか一の方法。
実施態様71. 抗体又は薬学的組成物の投与前に赤血球凝集抑制アッセイによって決定されて、対象がパルボウイルス力価陰性である、実施態様37から70の何れか一の方法。
実施態様72. 抗体又は薬学的組成物の投与後、対象がイヌ又はネコパルボウイルスによる感染から生き延びる、実施態様37から71の何れか一の方法。
実施態様73. 細胞のパルボウイルス感染を低下させる方法であって、抗体のパルボウイルスへの結合を許容する条件下で、実施態様1から31の何れか一の抗体又は実施態様35又は実施態様36の薬学的組成物を細胞に曝露することを含む、方法。
実施態様74. 細胞がインビトロで抗体又は薬学的組成物に曝露される、実施態様73の方法。
実施態様75. 細胞が、哺乳動物細胞、ヒト細胞、イヌ細胞、又はネコ細胞である、実施態様73又は実施態様74の方法。
実施態様76. 対象からのサンプルにおけるパルボウイルス感染を検出するための方法であって、抗体のパルボウイルスへの結合を許容する条件下で、実施態様1から31の何れか一の抗体又は実施態様35又は実施態様36の薬学的組成物とサンプルを接触させることと、抗体とサンプル中のパルボウイルスとの間に複合体が形成されるかどうかを検出することを含む、方法。
実施態様77. サンプルが、イヌ、ネコ、又はヒトから得られた生物学的サンプルである、実施態様76の方法。
実施態様78. a)配列番号:91の10位に対応する位置にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸;b)配列番号:91の10位にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸;c)配列番号:91の103位に対応する位置にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸;d)配列番号:91の103位にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸;e)配列番号:91の10位及び/又は103位に対応する位置にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸;又はf)配列番号:91の10位及び/又は103位にアスパラギン酸若しくはグルタミン酸を含む、バリアントIgG Fcポリペプチド。
実施態様79. 実施態様78のバリアントIgG Fcポリペプチドを含むポリペプチド。
実施態様80. 配列番号:92、配列番号:93、配列番号:94、配列番号:95、配列番号:96、配列番号:97、配列番号:98、又は配列番号:99のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
実施態様81. 実施態様78から80の何れか一のポリペプチドをコードする単離された核酸。
実施態様82. 実施態様81の核酸を含む宿主細胞。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、CPVに対する易感染域の図である。
【0009】
【
図2】
図2は、VP2に結合するMab A v2及びMab B v2を示している。
【0010】
【
図3A】
図3Aは、Mab A群のHIアッセイ力価を示している。
【0011】
【
図3B】
図3Bは、Mab B群のHIアッセイ力価を示している。
【0012】
【
図3C】
図3Cは、Mab A及びMab B群の両方のHIアッセイ力価を示している。
【0013】
【
図4A】
図4Aは、Mab A v2の二相減衰速度を示している。
【0014】
【
図4B】
図4Bは、Mab B v2の二相減衰速度を示している。
【0015】
【
図5】
図5は、実施例15のバリアントイヌIgG-B Fcポリペプチド配列及びイヌCD16の構造モデルを示している。
【所定の配列の説明】
【0016】
表1は、ここで参照される所定の配列のリストを提供する。
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する抗体が提供される。イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する抗体を形成することができる抗体重鎖及び軽鎖もまた提供される。加えて、一又は複数の特定の相補性決定領域(CDR)を含む抗体、重鎖、及び軽鎖が提供される。イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに対する抗体をコードするポリヌクレオチドが提供される。イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに対する抗体を産生し又は精製する方法もまた提供される。イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに対する抗体を使用する、イヌ又はネコパルボウイルスでの感染に対する受動免疫を提供する方法及び/又はパルボウイルス感染の治療方法が提供される。
【0019】
読者の便宜のために、ここで使用される用語に次の定義が提供される。
【0020】
ここで使用される場合、Kdなどの数値用語は、科学的測定に基づいて計算され、従って、適当な測定誤差の影響を受ける。場合によっては、数値用語は、最も近い有効数字に丸められた数値を含みうる。
【0021】
ここで使用される場合、「a」又は「an」は、別段の指定がない限り、「少なくとも一」又は「一又は複数」を意味する。ここで使用される場合、「又は」という用語は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。複数項に従属する請求項の文脈では、他の請求項を引用する際の「又は」の使用は、その代替の請求項のみを引用する。
【0022】
[例示的なパルボウイルス抗体]
パルボウイルスに対する新規抗体、例えば、イヌパルボウイルス及び/又はネコパルボウイルスに結合する抗体が提供される。ここに提供されるパルボウイルス抗体には、限定されないが、モノクローナル抗体、キメラ抗体、イヌ化抗体、及びネコ化抗体が含まれる。
【0023】
またここに提供されるのは、モノクローナルパルボウイルス抗体のアミノ酸配列である。例えば、Mab Aに対する可変重鎖CDR(配列番号:4-6)、可変軽鎖CDR(配列番号:13-15)、可変領域重鎖フレームワーク配列(配列番号:7及び8-11)、及び可変領域軽鎖フレームワーク配列(配列番号16-19)が提供される。また提供されるのは、Mab Bに対する可変重鎖CDR(配列番号:42-44)、可変軽鎖CDR(配列番号:52-54)、可変領域重鎖フレームワーク配列(配列番号:45、47、49、及び51)、及び可変領域軽鎖フレームワーク配列(配列番号:55、57、58、及び60)である。Mab Aの可変重鎖及び可変軽鎖のアミノ酸配列が提供される(それぞれ、配列番号:20及び22)。Mab Bの可変重鎖及び可変軽鎖のアミノ酸配列が提供される(それぞれ、配列番号:62及び64)。
【0024】
加えて、バリアントMab A及びMab B抗体のCDR、フレームワーク配列、可変重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列が提供される。Mab Aバリアント2(v2)の可変重鎖CDR(配列番号:4-6)、可変重鎖フレームワーク領域(配列番号:8-10、及び12)、可変重鎖(配列番号:21)、可変軽鎖CDR(配列番号:13-15)、可変軽鎖フレームワーク領域(配列番号16-19)、及び可変軽鎖(配列番号:22)が提供される。Mab Bバリアント2(v2)の可変重鎖CDR(配列番号:42-44)、可変重鎖フレームワーク領域(配列番号:46、48、50、及び51)、可変重鎖(配列番号:63)、可変軽鎖CDR(配列番号:52-54)、可変軽鎖フレームワーク領域(配列番号:56、57、59、及び61)、及び可変軽鎖(配列番号:65)が提供される。
【0025】
ここにまた提供されるのは、Mab A、Mab B、Mab A v2、及びMab B v2に由来するキメライヌ、キメラネコ、イヌ化、及びネコ化抗体である。幾つかの実施態様では、配列番号:34-41、88、77-80、88、及び89などの、イヌ化及びネコ化Mab A、Mab B、Mab A v2、及びMab B v2のアミノ酸配列が提供される。幾つかの実施態様では、配列番号:23-25、28-33、及び66-76などの、Mab A、Mab B、Mab A v2、及びMab B v2に由来するキメラ抗体のアミノ酸配列が提供される。
【0026】
ここにおける「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、限定されないがモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性(例えば二重特異性T細胞エンゲージャー)及び三重特異性抗体)、及びそれらが所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片(Fab、F(ab’)2、ScFv、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディなど)を含む様々な抗体構造を包含する。イヌ、ネコ、及びウマ種は、多くの哺乳動物によって共有される異なる種類(クラス)の抗体を有している。
【0027】
抗体という用語は、限定されないが、抗原に結合することができる断片、例えばFv、単鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、di-scFv、sdAb(単一ドメイン抗体)及び(Fab’)2(化学的に結合したF(ab’)2を含む)を含む。抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる、それぞれに単一の抗原結合部位がある二つの同一の抗原結合断片と、その名が容易に結晶化するその能力を反映している残りの「Fc」断片が生成される。ペプシン処理により、二つの抗原結合部位を有し、尚も抗原を架橋できるF(ab’)2断片が生成される。抗体という用語はまた、限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びマウス、ヒト、カニクイザル、イヌ、ネコ、ウマなどの様々な種の抗体を含む。更に、ここに提供される全ての抗体コンストラクトに対して、他の生物由来の配列を有するバリアントもまた企図される。従って、抗体のマウス型が開示される場合、当業者には、マウス配列に基づく抗体をネコ、イヌ、ウマなどの配列に変換する方法が分かるであろう。抗体断片はまた、何れかの配向の単鎖scFv、タンデムdi-scFv、ダイアボディ、タンデムtri-sdcFv、ミニボディなどを含む。抗体断片はまた、ナノボディ(sdAb、軽鎖のない重鎖の可変ドメイン対などの単一の単量体ドメインを有する抗体)を含む。抗体断片は、幾つかの実施態様では特定の種であると言うことができる(例えば、マウスscFv又はイヌscFv)。これは、コンストラクト源ではなく、非CDR領域の少なくとも一部の配列を示す。幾つかの実施態様では、抗体は、標識を含むか、又は第二の部分にコンジュゲートされる。
【0028】
「標識」及び「検出可能な標識」という用語は、特異的結合対のメンバー間の反応(例えば、結合)を検出可能にするために抗体又はその分析物に付着させた部分を意味する。特異的結合対の標識されたメンバーは、「検出可能に標識された」と呼ばれる。従って、「標識された結合タンパク質」という用語は、結合タンパク質の同定をもたらす標識が導入されたタンパク質を指す。幾つかの実施態様では、標識は、視覚的又は機器的手段、例えば、放射標識アミノ酸の取り込み又はマークされたアビジン(例えば、光学的又は比色法で検出できる蛍光マーカー又は酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出できるビオチニル部分のポリペプチドへの付着によって検出可能であるシグナルを生成しうる検出可能なマーカーである。ポリペプチドのための標識の例には、限定されないが、次のものが含まれる:放射性同位元素又は放射性核種(例えば、3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、又は153Sm);色素原、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);化学発光マーカー;ビオチニル基;二次レポーター(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)によって認識される予め決められたポリペプチドエピトープ;及びガドリニウムキレートなどの磁性剤。イムノアッセイに一般的に用いられる標識の代表的な例には、光を生じる部分、例えばアクリジニウム化合物と、蛍光を生じる部分、例えばフルオレセインが含まれる。この点に関して、部分自体は検出可能に標識されていないが、更に別の部分との反応時に検出可能になる場合がある。
【0029】
「モノクローナル抗体」という用語は、抗体の実質的に均質な集団の抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる可能な天然に生じる変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して産生されている。更に、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して産生されている。而して、モノクローナル抗体のサンプルは、抗原上の同じエピトープに結合することができる。「モノクローナル」との修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の性質を示し、何らかの特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, 1975, Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されうるか、或いは米国特許第4816567号に記載されたような組換えDNA法によって作製されうる。モノクローナル抗体はまた、例えば、McCafferty等, 1990, Nature 348:552-554に記載された技術を使用して作製されたファージライブラリーから単離されうる。
【0030】
幾つかの実施態様では、モノクローナル抗体は、Mab A、Mab A v2、Mab B、又はMab B v2である。
【0031】
「アミノ酸配列」は、ペプチド又はタンパク質中のアミノ酸残基の配列を意味する。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために交換可能に使用され、最小の長さに限定されない。アミノ酸残基のそのようなポリマーは、天然又は非天然のアミノ酸残基を含み得、限定されないが、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、及び多量体を含む。完全長タンパク質とその断片の両方が定義に包含される。該用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化などを含む。更に、本開示の目的では、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対して欠失、付加、及び置換(一般に性質が保存的)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的変異誘発などによる意図的なものである場合もあれば、タンパク質を産生する宿主の変異やPCR増幅によるエラーなどによる偶発的なものである場合もある。
【0032】
ここで使用される「パルボウイルス」は、任意の天然に生じるパルボウイルス又はパルボウイルスバリアントを指し、CPV-2a、CPV-2b、及びCPV-2cなどのイヌパルボウイルス(CPV)、及びネコパルボウイルス(汎白血球減少症ウイルス)を含む。
【0033】
ここで使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗原結合分子(例えば抗体、抗体断片、又は抗体結合領域を含むスカフォールドタンパク質)が結合する標的分子(例えば抗原、例えばタンパク質、核酸、糖又は脂質)の上の部位を意味する。エピトープは、アミノ酸、ポリペプチド又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面グループを含むことが多く、特定の三次元構造特性並びに特定の荷電特性を有している。エピトープは、標的分子の近接した又は並置された非近接の残基(例えばアミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)の両方から形成されうる。近接した残基(例えばアミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)から形成されたエピトープは、典型的には変性溶媒への曝露で保持される一方、三次フォールディングによって形成されたエピトープは、典型的には変性溶媒での処理で失われる。エピトープは、限定されないが、少なくとも3残基、少なくとも5残基、又は8-10残基(例えばアミノ酸又はヌクレオチド)を含みうる。幾つかの例では、エピトープ長は20残基(例えばアミノ酸又はヌクレオチド)未満、15残基未満又は12残基未満である。二つの抗体は、それらが抗原に対して競合結合性を示す場合は、抗原内の同じエピトープに結合しうる。幾つかの実施態様では、エピトープは、抗原結合分子上のCDR残基に対する所定の最小距離で同定されうる。幾つかの実施態様では、エピトープは上記の距離によって同定され得、更に抗体残基と抗原残基との間の結合(例えば水素結合)に関与するその残基に限定される。エピトープは様々なスキャンによってまた同定することができ、例えばアラニン又はアルギニンスキャンは、抗原結合分子が相互作用しうる一又は複数の残基を示しうる。明示的に示されていない限り、エピトープとしての残基セットは、その他の残基を特定の抗体に対するエピトープの一部であることから排除しない。むしろ、そのようなセットの存在は、エピトープの最小シリーズ(又は種のセット)を表す。従って、幾つかの実施態様では、エピトープとして同定された残基セットは、抗原上のエピトープの残基の排他的なリストというより、抗原に関連する最小エピトープを表わす。
【0034】
幾つかの実施態様では、エピトープは、配列番号:1、配列番号:2、及び/又は配列番号:3のアミノ酸配列を含む。
【0035】
「CDR」という用語は、当業者による少なくとも一つの識別法によって定義される相補性決定領域を意味する。幾つかの実施態様では、CDRはChothia番号付けスキーム、Kabat番号付けスキーム、KabatとChothiaの組合せ、AbM定義、接触定義、又はKabat、Chothia、AbM、若しくは接触定義の組合せの何れかに従って定義することができる。抗体内の様々なCDRは、限定されないがCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含むその適切な番号及び鎖型によって表わすことができる。「CDR」という用語は、ここでは超可変ループを含む「超可変領域」又はHVRをまた包含するように使用される。
【0036】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、(a)配列番号:4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号:5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;又は(c)配列番号:6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、(a)配列番号:13のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号:14のアミノ酸配列を含むCDR-L2;又は(c)配列番号:15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む。
【0037】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、(a)配列番号:42のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号:43のアミノ酸配列を含むCDR-H2;又は(c)配列番号:44のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、(a)配列番号:52のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号:53のアミノ酸配列を含むCDR-L2;又は(c)配列番号:54のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む。
【0038】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、(a)配列番号:4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、又はCDR-H1の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアント;(b)配列番号:5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、又はCDR-H2の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアント;及び/又は(c)配列番号:6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、又はCDR-H3の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアントを含む重鎖を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、(a)配列番号:13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、又はCDR-L1の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアント;(b)配列番号:14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、又はCDR-L2の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアント;及び/又は(c)配列番号:15のアミノ酸配列を含むCDR-L3、又はCDR-L3の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアントを含む軽鎖を含む。
【0039】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、(a)配列番号:42のアミノ酸配列を含むCDR-H1、又はCDR-H1の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアント;(b)配列番号:43のアミノ酸配列を含むCDR-H2、又はCDR-H2の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアント;及び/又は(c)配列番号:44のアミノ酸配列を含むCDR-H3、又はCDR-H3の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアントを含む重鎖を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、(a)配列番号:52のアミノ酸配列を含むCDR-L1、又はCDR-L1の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアント;(b)配列番号:53のアミノ酸配列を含むCDR-L2、又はCDR-L2の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアント;及び/又は(c)配列番号:54のアミノ酸配列を含むCDR-L3、又はCDR-L3の1、2、又は3のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されているそのバリアントを含む軽鎖を含む。
【0040】
ここで使用される「可変領域」という用語は、少なくとも三のCDRを含む領域を意味する。幾つかの実施態様では、可変領域は三のCDRと少なくとも一のフレームワーク領域(「FR」)を含む。「重鎖可変領域」又は「可変重鎖」という用語は交換可能に使用され、少なくとも三の重鎖CDRを含む領域を意味する。「軽鎖可変領域」又は「可変軽鎖」という用語は交換可能に使用され、少なくとも三の軽鎖CDRを含む領域を意味する。幾つかの実施態様では、可変重鎖又は可変軽鎖は少なくとも一のフレームワーク領域を含む。幾つかの実施態様では、抗体は、HC-FR1、HC-FR2、HC-FR3、及びHC-FR4から選択される少なくとも一の重鎖フレームワーク領域を含む。幾つかの実施態様では、抗体は、LC-FR1、LC-FR2、LC-FR3、及びLC-FR4から選択される少なくとも一の軽鎖フレームワーク領域を含む。フレームワーク領域は軽鎖CDRの間、又は重鎖CDRの間に並置されていてもよい。例えば、抗体は次の構造:(HC-FR1)-(CDR-H1)-(HC-FR2)-(CDR-H2)-(HC-FR3)-(CDR-H3)-(HC-FR4)を有する可変重鎖を含みうる。抗体は次の構造:(CDR-H1)-(HC-FR2)-(CDR-H2)-(HC-FR3)-(CDR-H3)を有する可変重鎖を含みうる。抗体は次の構造:(LC-FR1)-(CDR-L1)-(LC-FR2)-(CDR-L2)-(LC-FR3)-(CDR-L3)-(LC-FR4)を有する可変軽鎖を含みうる。抗体は次の構造:(CDR-L1)-(LC-FR2)-(CDR-L2)-(LC-FR3)-(CDR-L3)を有する可変軽鎖をまた含みうる。
【0041】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、(a)配列番号:7又は配列番号:8の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列、(b)配列番号:9のHC-FR2配列、(c)配列番号:10のHC-FR3配列、(d)配列番号:11又は配列番号:12のHC-FR4配列、(e)配列番号:16の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列、(f)配列番号:17のLC-FR2配列、(g)配列番号:18のLC-FR3配列、又は(h)配列番号:19のLC-FR4配列の一又は複数を含む。
【0042】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、(a)配列番号:45又は配列番号:46の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列、(b)配列番号:47又は配列番号:48のHC-FR2配列、(c)配列番号:49又は配列番号:50のHC-FR3配列、(d)配列番号:51のHC-FR4配列、(e)配列番号:55又は配列番号:56の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列、(f)配列番号:57のLC-FR2配列、(g)配列番号:58又は配列番号:59のLC-FR3配列、又は(h)配列番号:60のLC-FR4配列の一又は複数を含む。
【0043】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、配列番号:22、配列番号:87、配列番号:41、配列番号:64、配列番号:65、配列番号:89、配列番号:82、又は配列番号:84の可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:85、配列番号:86、配列番号:40、配列番号:62、配列番号:63、配列番号:88、配列番号:81、又は配列番号:83の可変重鎖配列を含む。
【0044】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、配列番号:20の可変重鎖配列と配列番号:22の可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、配列番号:21の可変重鎖配列と配列番号:22の可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、配列番号:85の可変重鎖配列と配列番号:87の可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、配列番号:86の可変重鎖配列と配列番号:87の可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、配列番号:40の可変重鎖配列と配列番号:41の可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、配列番号:62の可変重鎖配列と配列番号:64又は配列番号:65の可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、配列番号:63の可変重鎖配列と配列番号:64又は配列番号:65の可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、配列番号:88の可変重鎖配列と配列番号:89の可変軽鎖配列を含む。
【0045】
ここで使用される「定常領域」という用語は、少なくとも三の定常ドメインを含む領域を意味する。「重鎖定常領域」又は「定常重鎖」という用語は交換可能に用いられ、少なくとも三の重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む領域を意味する。非限定的な例示的重鎖定常領域には、γ、δ、α、ε、及びμが含まれる。各重鎖定常領域は、抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体はIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体はIgD抗体であり、α定常領域を含む抗体はIgA抗体であり、μ定常領域を含む抗体はIgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体はIgE抗体である。所定のアイソタイプはサブクラスに更に細分割することができる。例えば、IgG抗体は、限定されないが、(γ1定常領域を含む)IgG1、(γ2定常領域を含む)IgG2、(γ3定常領域を含む)IgG3、及び(γ4定常領域を含む)IgG4抗体を含み;IgA抗体は、限定されないが、(α1定常領域を含む)IgA1及び(α2定常領域を含む)IgA2抗体を含み;IgM抗体は、限定されないが、IgM1及びIgM2を含む。「軽鎖定常領域」又は「定常軽鎖」という用語は交換可能に使用され、軽鎖定常ドメインCLを含む領域を意味する。非限定的な例示的軽鎖定常領域には、λ及びκが含まれる。ドメイン内の機能を変化させない欠失及び変化は、他に指定されない限り、「定常領域」という用語の範囲内に包含される。イヌ及びネコは、IgG、IgA、IgD、IgE、及びIgM等の抗体クラスを有する。イヌIgG抗体クラスの中にはIgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-Dがある。ネコIgG抗体クラスの中にはIgG1、IgG2a、及びIgG2bがある。
【0046】
「キメラ抗体」又は「キメラ」という用語は、重鎖又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来する一方、重鎖又は軽鎖の残りの少なくとも一部が異なる供給源又は種に由来する抗体を意味する。幾つかの実施態様では、キメラ抗体は、第一の種(例えばマウス、ラット、カニクイザル等々)からの少なくとも一の可変領域と第二の種(例えばヒト、イヌ、ネコ、ウマ等々)からの少なくとも一の定常領域を含む抗体を意味する。幾つかの実施態様では、キメラ抗体は少なくとも一のマウス可変領域と少なくとも一のイヌ定常領域を含む。幾つかの実施態様では、キメラ抗体は少なくとも一のマウス可変領域と少なくとも一のネコ定常領域を含む。幾つかの実施態様では、キメラ抗体の可変領域の全てが第一の種からのものであり、キメラ抗体の定常領域の全てが第二の種からのものである。幾つかの実施態様では、キメラ抗体はコンパニオンアニマルからの定常重鎖領域又は定常軽鎖領域を含む。幾つかの実施態様では、キメラ抗体はマウス可変重鎖及び軽鎖、並びにコンパニオンアニマルの定常重鎖及び軽鎖を含む。例えば、キメラ抗体はマウス可変重鎖及び軽鎖、並びにイヌ定常重鎖及び軽鎖を含み得;キメラ抗体はマウス可変重鎖及び軽鎖、並びにネコ定常重鎖及び軽鎖を含み得;或いはキメラ抗体はマウス可変重鎖及び軽鎖、並びにウマ定常重鎖及び軽鎖を含みうる。
【0047】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、(a)(i)配列番号:23の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:25の軽鎖アミノ酸配列;若しくは(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖配列;(b)(i)配列番号:24の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:25の軽鎖アミノ酸配列;若しくは(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖配列;(c)(i)配列番号:31の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:32の軽鎖アミノ酸配列;若しくは(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖配列;(d)(i)配列番号:31の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:33の軽鎖アミノ酸配列;若しくは(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖配列;(e)(i)配列番号:66の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:68の軽鎖アミノ酸配列;若しくは(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖配列;(f)(i)配列番号:67の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:69の軽鎖アミノ酸配列;若しくは(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖配列;(g)(i)配列番号:74の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:75の軽鎖アミノ酸配列;若しくは(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖配列;又は(h)(i)配列番号:74の重鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号:75の軽鎖アミノ酸配列;若しくは(iii)(i)のような重鎖アミノ酸配列と(ii)のような軽鎖配列を含むキメラ抗体を含む。
【0048】
「イヌキメラ」、「キメライヌ」、又は「イヌキメラ抗体」は、イヌに由来する重鎖の一部又は軽鎖の一部を少なくとも有するキメラ抗体を意味する。「ネコキメラ」、「キメラネコ」、又は「ネコキメラ抗体」は、ネコに由来する重鎖の一部又は軽鎖の一部を少なくとも有するキメラ抗体を意味する。幾つかの実施態様では、イヌキメラ抗体は、マウス又はラット可変重鎖及び軽鎖、並びにイヌ定常重鎖及び軽鎖を含む。幾つかの実施態様では、ネコキメラ抗体は、マウス又はラット可変重鎖及び軽鎖、並びにネコ定常重鎖及び軽鎖を含む。
【0049】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-D定常領域から選択されるイヌ重鎖定常領域を含む。
【0050】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、IgG1、IgG2a、及びIgG2b定常領域から選択されるネコ重鎖定常領域を含む。
【0051】
「イヌ化抗体」は、非イヌ可変領域の一部における少なくとも一のアミノ酸がイヌ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている抗体を意味する。幾つかの実施態様では、イヌ化抗体は少なくとも一のイヌ定常領域(例えばγ定常領域、α定常領域、δ定常領域、ε定常領域、μ定常領域等々)又はその断片を含む。幾つかの実施態様では、イヌ化抗体は抗体断片、例えばFab、scFv、(Fab’)2等である。「イヌ化」という用語は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は非イヌ免疫グロブリンの最小配列を含むその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、若しくは抗体の他の抗原結合配列)である非イヌ(例えばマウス)抗体の形態をまた示す。イヌ化抗体は、レシピエントのCDRからの残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギ等の非イヌ種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されたイヌ免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含みうる。ある場合には、イヌ免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非イヌ残基によって置き換えられる。更に、イヌ化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されないが、抗体性能を更に改良し最適化するために含められる残基を含みうる。
【0052】
幾つかの実施態様では、ラット若しくはマウス可変重鎖又はラット若しくはマウス可変軽鎖の一部における少なくとも一のアミノ酸残基が、イヌ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている。幾つかの実施態様では、修飾された鎖が、イヌ定常重鎖又はイヌ定常軽鎖に融合される。
【0053】
「ネコ化抗体」は、非ネコ可変領域の一部における少なくとも一のアミノ酸がネコ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている抗体を意味する。幾つかの実施態様では、ネコ化抗体は少なくとも一のネコ定常領域(例えばγ定常領域、α定常領域、δ定常領域、ε定常領域、μ定常領域等々)又はその断片を含む。幾つかの実施態様では、ネコ化抗体はFab、scFv、(Fab’)2等の抗体断片である。「ネコ化」という用語は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は非ネコ免疫グロブリンの最小配列を含むその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、若しくは抗体の他の抗原結合配列)である非ネコ(例えばマウス)抗体の形態をまた示す。ネコ化抗体は、レシピエントのCDRからの残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギ等の非ネコ種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されたネコ免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含みうる。ある場合には、ネコ免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ネコ残基によって置き換えられる。更に、ネコ化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されないが、抗体性能を更に改良し最適化するために含められる残基を含みうる。
【0054】
幾つかの実施態様では、マウス可変重鎖又はマウス可変軽鎖の一部における少なくとも一のアミノ酸残基が、ネコ可変領域からの対応するアミノ酸で置き換えられている。幾つかの実施態様では、修飾された鎖が、ネコ定常重鎖又はイヌ定常軽鎖に融合される。
【0055】
「断片結晶化可能ポリペプチド」又は「Fcポリペプチド」は、エフェクター分子及び細胞と相互作用する抗体分子の部分である。それは、免疫グロブリン重鎖のC末端部分を含む。ここで使用される場合、Fcポリペプチドは、Fcポリペプチド全体の一又は複数の生物学的活性を有するFcドメインの断片を含む。Fcポリペプチドの「エフェクター機能」は、刺激に応答して任意の抗体によって全体的又は部分的に実施される作用又は活性であり、補体結合及び/又はADCC(抗体依存性細胞傷害)誘導及び/又はADCP(抗体依存性細胞食作用)を含みうる。
【0056】
幾つかの実施態様では、Fcポリペプチドの生物学的活性は、FcRnに結合する能力である。幾つかの実施態様では、Fcポリペプチドの生物学的活性は、C1qに結合する能力である。幾つかの実施態様では、Fcポリペプチドの生物学的活性は、CD16に結合する能力である。幾つかの実施態様では、Fcポリペプチドの生物学的活性は、プロテインAに結合する能力である。
【0057】
「IgX Fc」という用語は、Fc領域が特定の抗体アイソタイプ(例えばIgG、IgA、IgD、IgE、IgM等々)に由来することを意味し、ここで「X」は抗体アイソタイプを意味する。従って、「IgG Fc」はγ鎖のFc領域を意味し、「IgA Fc」はα鎖のFc領域を意味し、「IgD Fc」はδ鎖のFc領域を意味し、「IgE Fc」はε鎖のFc領域を意味し、「IgM Fc」はμ鎖のFc領域を意味する等々である。幾つかの実施態様では、IgG Fc領域はCH1、ヒンジ、CH2、CH3、及びCL1を含む。「IgX-N-Fc」はFc領域が抗体アイソタイプの特定のサブクラス(例えばイヌIgGサブクラスA、B、C、若しくはD;又はネコIgGサブクラス1、2a、若しくは2b)に由来することを意味し、ここで「N」はサブクラスを意味する。幾つかの実施態様では、IgX Fc又はIgX-N-Fc領域は、イヌ又はネコ等のコンパニオンアニマルに由来する。幾つかの実施態様では、IgG Fc領域は、IgG-A、IgG-B、IgG-C、若しくはIgG-D等のイヌγ重鎖から単離される。幾つかの例では、IgG Fc領域は、IgG1、IgG2a、若しくはIgG2b等のネコγ重鎖から単離される。IgG-A、IgG-B、IgG-C、若しくはIgG-DのFc領域を含む抗体は、組換え産生系において高い発現レベルを提供しうる。
【0058】
「IgX Fc」及び「IgX Fcポリペプチド」という用語は、他に示されない限り、野生型IgX Fcポリペプチド及びバリアントIgX Fcポリペプチドを含む。
【0059】
幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、コンパニオンアニマル種のバリアントIgG Fcポリペプチドを含む。幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、バリアントイヌIgG Fcポリペプチド又はネコIgG Fcポリペプチドを含む。幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fcポリペプチド(例えば、バリアントイヌIgG-A Fcポリペプチド、バリアントイヌIgG-C Fcポリペプチド、又はバリアントイヌIgG-D Fcポリペプチド、バリアントネコIgG1a Fcポリペプチド、バリアントネコIgG1b Fcポリペプチド、又はバリアントネコIgG2 Fcポリペプチド)は、参照(例えば、野生型)ポリペプチドが実質的に欠いている活性を有している。
【0060】
抗体は、その半減期を延長又は短縮するように改変されうる。より高用量の抗体を含む幾つかの実施態様では、より短い半減期が急性治療に望ましい場合がある。より低い用量の抗体を含む幾つかの実施態様では、より長い半減期が長期治療のために望ましい場合がある。例えば、以下で検討されるように、FcRn相互作用に影響を与えるIgG Fcの変異が導入されうる。
【0061】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、補体結合活性(又は補体依存性細胞傷害(CDC))を有する野生型又はバリアントIgG Fcを含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有する野生型又はバリアントIgG Fcを含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、抗体依存性細胞食作用(ADCP)活性を有する野生型又はバリアントIgG Fcを含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、補体結合活性及び/又はADCC活性及び/又はADCP活性を有する野生型又はバリアントIgG Fcを含む。IgG Fcポリペプチドは、エフェクター機能を有するように、又は増強されたエフェクター機能を有するように改変されうる。
【0062】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、低pHでイヌFcRnに結合する野生型又はバリアントIgG Fcを含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルスは、C1qに結合する野生型又はバリアントIgG Fcを含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルスは、CD16に結合する野生型又はバリアントIgG Fcを含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルスは、一又は複数の脱フコシル化グリカンを含むバリアントIgG Fcを含む。
【0063】
幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fc(例えば、バリアントイヌIgG Fcポリペプチド又はバリアントネコIgG Fcポリペプチド)は、参照ポリペプチドと比較して改変されたFcRn結合親和性を有する。幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fcは、参照ポリペプチドと比較して、酸性pH(例えば、約5.0から約6.5の範囲のpH、例えば、約5.0のpH、約5.5のpH、約6.0のpH、又は約6.5のpH)において増加したFcRn結合親和性を有する。FcRn結合親和性が増加した例示的なバリアントIgG Fcポリペプチドは、出典明示によりその全体がここに援用される国際公開第2020/082048号に開示されている。
【0064】
幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fc(例えば、バリアントイヌIgG Fcポリペプチド又はバリアントネコIgG Fcポリペプチド)は、参照ポリペプチドと比較して改変されたC1q結合親和性を有する。幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fcは、参照ポリペプチドと比較して、増加したC1q結合親和性を有する。増加したC1q結合親和性を有する例示的バリアントIgG Fcポリペプチドは、出典明示によりその全体がここに援用される国際公開第2020/139984号(例えば、実施例2)に開示されている。
【0065】
幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fc(例えば、バリアントイヌIgG Fcポリペプチド又はバリアントネコIgG Fcポリペプチド)は、参照ポリペプチドと比較して改変されたCD16結合親和性を有する。幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fcは、参照ポリペプチドと比較して、増加したCD16結合親和性を有する。増加したCD16結合親和性を有する例示的バリアントIgG Fcポリペプチドは、出典明示によりその全体がここに援用される国際公開第2020/139984号(例えば、実施例2)に開示されている。
【0066】
幾つかの実施態様では、バリアントイヌIgG Fcは、参照ポリペプチドと比較して増強されたCD16結合親和性を有する。幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fcは、a)配列番号:91の10位に対応する位置にアスパラギン酸又はグルタミン酸;b)配列番号:91の10位にアスパラギン酸又はグルタミン酸;c)配列番号:91の103位に対応する位置にアスパラギン酸又はグルタミン酸;d)配列番号:91の103位にアスパラギン酸又はグルタミン酸;e)配列番号:91の10位及び/又は103位に対応する位置にアスパラギン酸又はグルタミン酸;f)配列番号:91の10位及び/又は103位にアスパラギン酸又はグルタミン酸を含む。幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fcは、配列番号:92、配列番号:93、配列番号:94、配列番号:95、配列番号:96、配列番号:97、配列番号:98、又は配列番号:99のアミノ酸配列を含む。
【0067】
幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fc(例えば、バリアントイヌIgG Fcポリペプチド又はバリアントネコIgG Fcポリペプチド)は、参照ポリペプチドと比較して改変されたプロテインA結合親和性を有する。幾つかの実施態様では、バリアントIgG Fcは、参照ポリペプチドと比較して、増加したプロテインA結合親和性を有する。増加したプロテインA結合親和性を有する例示的バリアントIgG Fcポリペプチドは、出典明示によりその全体がここに援用される国際公開第2020/139984号(例えば、実施例2)に開示されている。
【0068】
「親和性」という用語は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の全体の強さを意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(KD)で表すことができる。親和性は、例えば、イムノブロット、ELISA KD、KinEx A、バイオレイヤー干渉法(BLI)、又は表面プラズモン共鳴装置などの当該技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。
【0069】
「KD」、「Kd」、「Kd」又は「Kd値」という用語は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すために交換可能に使用される。幾つかの実施態様では、抗体のKDは、Octet(登録商標)システム(Pall ForteBio LLC, Fremont, CA)などのバイオセンサーをサプライヤーの説明書に従って使用するバイオレイヤー干渉アッセイを使用することによって測定される。簡単に説明すると、ビオチン化抗原がセンサー先端に結合され、抗体の結合が90秒間モニターされ、解離が600秒間モニターされる。希釈及び結合工程の緩衝液は、20mMのリン酸、150mMのNaCl,pH7.2である。ドリフトを補正するために、緩衝液のみのブランク曲線が差し引かれる。データは、ForteBioデータ解析ソフトウェアを使用して2:1結合モデルに適合させて、結合速度定数(kon)、解離速度定数(koff)、及びKdを決定する。平衡解離定数(Kd)は、koff/konの比として計算される。「kon」という用語は、抗体が抗原に結合する際の速度定数を指し、「koff」という用語は、抗体が抗体/抗原複合体から解離する際の速度定数を指す。
【0070】
抗原又はエピトープへ「結合する」という用語は、当該技術分野でよく理解されている用語であり、そのような結合性を決定する方法もまた当該技術分野でよく知られている。分子は、それが特定の細胞又は物質に対して反応し、会合し、又は親和性を有し、反応、会合、又は親和性が、例えば、当該技術分野で知られている一又は複数の方法、例えばイムノブロット、ELISA KD、KinEx A、バイオレイヤー干渉法(BLI)、表面プラズモン共鳴装置などによって検出可能である場合、「結合性」を示すと言われる。
【0071】
「表面プラズモン共鳴」は、例えば、BIAcoreTMシステム(BIAcore International AB, a GE Healthcare company, Uppsala, Sweden and Piscataway, N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより、リアルタイムの生体分子特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を示す。更なる説明については、Jonsson等 (1993) Ann. Biol. Clin. 51: 19-26を参照のこと。
【0072】
「バイオレイヤー干渉法」は、バイオセンサー先端上の固定化タンパク質の層と内部参照層から反射した光の干渉パターンを分析する光学分析技術を指す。バイオセンサー先端に結合した分子の数の変化が、リアルタイムで測定できる干渉パターンのシフトを引き起こす。バイオレイヤー干渉法のための非限定的で例示的な装置は、Octet(登録商標)システム (Pall ForteBio LLC)である。例えば、Abdiche等, 2008, Anal. Biochem. 377: 209-277を参照のこと。
【0073】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、バイオレイヤー干渉法により測定して、5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、又は1×10-12M未満の解離定数(Kd)でイヌパルボウイルス又はネコパルボウイルスに結合する。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、バイオレイヤー干渉法により測定して、5×10-6Mと1×10-6Mの間、5×10-6Mと5×10-7Mの間、5×10-6Mと1×10-7Mの間、5×10-6Mと5×10-8Mの間、5×10-6Mと1×10-8Mの間、5×10-6Mと5×10-9Mの間、5×10-6Mと1×10-9Mの間、5×10-6Mと5×10-10Mの間、5×10-6Mと1×10-10Mの間、5×10-6Mと5×10-11Mの間、5×10-6Mと1×10-11Mの間、5×10-6Mと5×10-12Mの間、5×10-6Mと1×10-12Mの間、1×10-6Mと5×10-7Mの間、1×10-6Mと1×10-7Mの間、1×10-6Mと5×10-8Mの間、1×10-6Mと1×10-8Mの間、1×10-6Mと5×10-9Mの間、1×10-6Mと1×10-9Mの間、1×10-6Mと5×10-10Mの間、1×10-6Mと1×10-10Mの間、1×10-6Mと5×10-11Mの間、1×10-6Mと1×10-11Mの間、1×10-6Mと5×10-12Mの間、1×10-6Mと1×10-12Mの間、5×10-7Mと1×10-7Mの間、5×10-7Mと5×10-8Mの間、5×10-7Mと1×10-8Mの間、5×10-7Mと5×10-9Mの間、5×10-7Mと1×10-9Mの間、5×10-7Mと5×10-10Mの間、5×10-7Mと1×10-10Mの間、5×10-7Mと5×10-11Mの間、5×10-7Mと1×10-11Mの間、5×10-7Mと5×10-12Mの間、5×10-7Mと1×10-12Mの間、1×10-7Mと5×10-8Mの間、1×10-7Mと1×10-8Mの間、1×10-7Mと5×10-9Mの間、1×10-7Mと1×10-9Mの間、1×10-7Mと5×10-10Mの間、1×10-7Mと1×10-10Mの間、1×10-7Mと5×10-11Mの間、1×10-7Mと1×10-11Mの間、1×10-7Mと5×10-12Mの間、1×10-7Mと1×10-12Mの間、5×10-8Mと1×10-8Mの間、5×10-8Mと5×10-9Mの間、5×10-8Mと1×10-9Mの間、5×10-8Mと5×10-10Mの間、5×10-8Mと1×10-10Mの間、5×10-8Mと5×10-11Mの間、5×10-8Mと1×10-11Mの間、5×10-8Mと5×10-12Mの間、5×10-8Mと1×10-12Mの間、1×10-8Mと5×10-9Mの間、1×10-8Mと1×10-9Mの間、1×10-8Mと5×10-10Mの間、1×10-8Mと1×10-10Mの間、1×10-8Mと5×10-11Mの間、1×10-8Mと1×10-11Mの間、1×10-8Mと5×10-12Mの間、1×10-8Mと1×10-12Mの間、5×10-9Mと1×10-9Mの間、5×10-9Mと5×10-10Mの間、5×10-9Mと1×10-10Mの間、5×10-9Mと5×10-11Mの間、5×10-9Mと1×10-11Mの間、5×10-9Mと5×10-12Mの間、5×10-9Mと1×10-12Mの間、1×10-9Mと5×10-10Mの間、1×10-9Mと1×10-10Mの間、1×10-9Mと5×10-11Mの間、1×10-9Mと1×10-11Mの間、1×10-9Mと5×10-12Mの間、1×10-9Mと1×10-12Mの間、5×10-10Mと1×10-10Mの間、5×10-10Mと5×10-11Mの間、1×10-10Mと5×10-11Mの間、1×10-10Mと1×10-11Mの間、1×10-10Mと5×10-12Mの間、1×10-10Mと1×10-12Mの間、5×10-11Mと1×10-12Mの間、5×10-11Mと5×10-12Mの間、5×10-11Mと1×10-12Mの間、1×10-11Mと5×10-12Mの間、又は1×10-11Mと1×10-12Mの間のKdでイヌパルボウイルス又はネコパルボウイルスに結合する。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、イムノブロット分析によって決定されて、イヌパルボウイルス又はネコパルボウイルスに結合する。
【0074】
「野生型」は、天然に生じるポリペプチドの非変異型、又はその断片を指す。野生型ポリペプチドは組換えにより産生されてもよい。
【0075】
「バリアント」とは、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して最大パーセントの配列同一性を達成した後、如何なる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しないで、天然配列ポリペプチドと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを意味する。そのようなバリアントには、例えば、ポリペプチドのN末端又はC末端に一又は複数のアミノ酸残基が付加され、欠失されているポリペプチドが含まれる。
【0076】
幾つかの実施態様では、バリアントは、異なるアミノ酸によって置換された少なくとも1、2、3、4、又は5のアミノ酸を有する。
【0077】
幾つかの実施態様では、バリアントは、配列を整列させ、必要に応じて最大パーセントの配列同一性を達成するためにギャップを導入した後、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しないで、参照核酸分子又はポリペプチドと少なくとも約50%の配列同一性を有する。そのようなバリアントには、例えば、ポリペプチドのN末端又はC末端に一又は複数のアミノ酸残基が付加され、欠失されているポリペプチドが含まれる。幾つかの実施態様では、バリアントは、参照核酸又はポリペプチドの配列と少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約65%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する。
【0078】
ここで使用される場合、「n位に対応する位置」(ここで、nは任意の数である)は、対象及び参照ポリペプチドのアミノ酸配列を整列させ、ギャップを導入した後、参照ポリペプチドのn位と整列する対象ポリペプチドのアミノ酸位置を指す。対象ポリペプチドの位置が参照ポリペプチドのn位に対応するかどうかの目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、CLUSTAL OMEGA、ALIGN、又はMEGALIGNTM(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当該技術分野の技量の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される二つの配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のパラメーターを含む、アラインメントのための適切なパラメーターを決定することができる。幾つかの実施態様では、対象ポリペプチド及び参照ポリペプチドは、異なる長さである。
【0079】
「点変異」は、単一のアミノ酸残基を含む変異である。変異は、アミノ酸の喪失、一アミノ酸残基の別のアミノ酸残基への置換、又は追加のアミノ酸残基の挿入でありうる。
【0080】
「アミノ酸置換」は、ポリペプチド中の一アミノ酸を別のアミノ酸で置換することを指す。幾つかの実施態様では、アミノ酸置換は保存的置換である。非限定的で例示的な保存的アミノ酸置換を表2に示す。アミノ酸置換は目的の分子に導入され得、生成物が所望の活性、例えば、抗原結合性の保持/改善、免疫原性の減少、又はADCC又はCDCの改善又は薬物動態の増強についてスクリーニングされうる。
【0081】
【0082】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従ってグループ分けされうる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0083】
非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0084】
「ベクター」という用語は、クローン化されたポリヌクレオチド又は宿主細胞内で増殖することができるポリヌクレオチドを含むように操作することができるポリヌクレオチドを記述するために使用される。ベクターは、次のエレメントの一又は複数を含みうる:複製起点、目的のポリペプチドの発現を調節する一又は複数の制御配列(例えば、プロモーター又はエンハンサーなど)、又は一若しくは複数の選択可能なマーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子及び比色分析において使用できる遺伝子、例えば、βガラクトシダーゼなど)。「発現ベクター」という用語は、宿主細胞において目的のポリペプチドを発現させるために使用されるベクターを指す。
【0085】
「宿主細胞」は、ベクター又は単離ポリヌクレオチドのレシピエントでありうるか、又はレシピエントであった細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞でありうる。例示的な真核細胞には、哺乳動物細胞、例えば霊長類又は非霊長類の動物細胞;真菌細胞、例えば酵母;植物細胞;及び昆虫細胞が含まれる。非限定的で例示的な哺乳動物細胞には、限定されないが、NS0細胞、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell)、293細胞、及びCHO細胞、並びにそれらの派生体、例えば、293-6E、DG44、CHO-S、及びCHO-K細胞が含まれる。宿主細胞には単一の宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、自然の、偶発的、又は意図的な変異のために、必ずしも元の親細胞と(形態又はゲノムDNA相補鎖において)完全に同一であるとは限らない。宿主細胞は、ここに提供されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドでインビボでトランスフェクトされた細胞を含む。
【0086】
ここで使用される「単離された」という用語は、それが典型的には天然に見出されるか又は産生される成分の少なくとも幾つかから分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドは、それが産生された細胞の成分の少なくとも幾つかから分離される場合、「単離された」と呼ばれる。ポリペプチドが発現後に細胞によって分泌される場合、ポリペプチドを含む上清を、それを産生した細胞から物理的に分離することは、ポリペプチドを「単離する」ことと考えられる。同様に、ポリヌクレオチドは、それが典型的には自然界に見出されるより大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合はゲノムDNA又はミトコンドリアDNA)の一部ではないか、或いは例えばRNAポリヌクレオチドの場合、それが産生された細胞の成分の少なくとも幾つかから分離される場合、「単離された」と呼ばれる。従って、宿主細胞内のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、「単離された」と呼ばれる場合がある。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAカラムクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、及びCHTクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを使用して精製される。
【0087】
「低減させる」又は「阻害する」とは、参照と比較して、活性、機能、又は量を減少させ、低減させ、又は停止させることを意味する。幾つかの実施態様では、「低減させる」又は「阻害する」とは、20%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施態様では、「低減させる」又は「阻害する」とは、50%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施態様では、「低減させる」又は「阻害する」とは、75%、85%、90%、95%、又はそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施態様では、上記の量は、同じ期間にわたり対照用量(プラセボなど)と比較して、ある期間にわたって阻害され又は減少される。ここで使用される「参照」とは、比較目的で使用される任意のサンプル、標準、又はレベルを指す。参照は、健康な又は罹患していないサンプルから取得されうる。幾つかの例では、参照は、コンパニオンアニマルの非罹患又は未治療のサンプルから得られる。幾つかの例では、参照は、試験又は治療されている動物ではない特定の種の一又は複数の健康な動物から得られる。
【0088】
ここで使用される「実質的に低減された」という用語は、当業者が二つの値の差を、該値によって測定される生物学的特性の文脈において統計的に有意であるとみなすような、数値と参照数値との間の十分に高度な低減を意味する。幾つかの実施態様では、実質的に低減された数値は、参照値と比較しておよそ10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の何れか一よりも多く低減される。
【0089】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、イヌ又はネコにおけるパルボウイルス力価を、赤血球凝集抑制(HI)アッセイ又はウイルス中和(VN)アッセイによって測定し、抗体の非存在下でのパルボウイルス力価と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%減少させることができる。幾つかの実施態様では、パルボウイルス力価の低下は、10%と15%の間、10%と20%の間、10%と25%の間、10%と30%の間、10%と35%の間、10%と40%の間、10%と45%の間、10%と50%の間、10%と60%の間、10%と70%の間、10%と80%の間、10%と90%の間、10%と100%の間、15%と20%の間、15%と25%の間、15%と30%の間、15%と35%の間、15%と40%の間、15%と45%の間、15%と50%の間、15%と60%の間、15%と70%の間、15%と80%の間、15%と90%の間、15%と100%の間、20%と25%の間、20%と30%の間、20%と35%の間、20%と40%の間、20%と45%の間、20%と50%の間、20%と60%の間、20%と70%の間、20%と80%の間、20%と90%の間、20%と100%の間、25%と30%の間、25%と35%の間、25%と40%の間、25%と45%の間、25%と50%の間、25%と60%の間、25%と70%の間、25%と80%の間、25%と90%の間、25%と100%の間、30%と35%の間、30%と40%の間、30%と45%の間、30%と50%の間、30%と60%の間、30%と70%の間、30%と80%の間、30%と90%の間、30%と100%の間、35%と40%の間、35%と45%の間、35%と50%の間、35%と60%の間、35%と70%の間、35%と80%の間、35%と90%の間、35%と100%の間、40%と45%の間、40%と50%の間、40%と60%の間、40%と70%の間、40%と80%の間、40%と90%の間、40%と100%の間、45%と50%の間、45%と60%の間、45%と70%の間、45%と80%の間、45%と90%の間、45%と100%の間、50%と60%の間、50%と70%の間、50%と80%の間、50%と90%の間、50%と100%の間、60%と70%の間、60%と80%の間、60%と90%の間、60%と100%の間、70%と80%の間、70%と90%の間、70%と100%の間、80%と90%の間、80%と100%の間、又は90%と100%の間である。
【0090】
[例示的な薬学的組成物]
「薬学的製剤」及び「薬学的組成物」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になることを可能にするような形態であり、製剤が投与される対象に対して容認できないほど毒性のある追加の成分を含まない調製物を指す。
【0091】
「薬学的に許容される担体」とは、対象への投与のための「薬学的組成物」を一緒に含む治療剤と共に使用するための、当該分野で一般的な非毒性固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、又は担体を指す。薬学的に許容される担体は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、製剤の他の成分と適合性がある。薬学的に許容される担体は、用いられる製剤に適切である。薬学的に許容される担体の例には、アルミナ;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、イヌ又は他の動物アルブミン;緩衝液、例えばホスフェート、シトレート、トロメタミン又はHEPES緩衝液;グリシン;ソルビン酸;ソルビン酸カリウム;飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物;水;塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、又は三ケイ酸マグネシウム;ポリビニルピロリドン、セルロース系物質;ポリエチレングリコール;スクロース;マンニトール;又はアルギニンを含むがこれに限定されないアミノ酸が含まれる。
【0092】
薬学的組成物は、凍結乾燥形態で保存することができる。従って、幾つかの実施態様では、調製方法は、凍結乾燥工程を含む。次に、凍結乾燥された組成物は、イヌ、ネコ、又はウマへの投与の前に、典型的には非経口投与に適した水性組成物として、再処方されうる。他の実施態様では、特に抗体が熱的及び酸化的変性に対して非常に安定である場合、薬学的組成物は、イヌ、ネコ、又はウマに直接又は適切な希釈で投与されうる液体として、すなわち水性組成物として保存されうる。凍結乾燥された組成物は、注射用滅菌水(WFI)で再構成することができる。抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールなどの静菌試薬)が含まれる場合がある。従って、本発明は、固体又は液体形態の薬学的組成物を提供する。
【0093】
薬学的組成物のpHは、投与される場合、約pH5から約pH8の範囲でありうる。本発明の組成物は、それらが治療目的で使用される場合、無菌である。無菌性は、除菌濾過膜(例えば、0.2ミクロン膜)による濾過を含む、当該技術分野で知られている幾つかの手段の何れかによって達成することができる。無菌性は、抗菌剤の有無にかかわらず維持されうる。
【0094】
幾つかの実施態様では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は、5.0から6.2、5.0から6.0、又は5.3から5.7のpHを有する。幾つかの実施態様では、薬学的担体は、リン酸緩衝生理食塩水,pH7.2である。幾つかの実施態様では、薬学的担体は、50mMのクエン酸ナトリウムpH7、150mMのNaClである。
【0095】
幾つかの実施態様では、薬学的に許容される担体又は薬学的組成物は抗菌剤を含む。
【0096】
[抗体及び薬学的組成物の例示的使用]
本発明の抗体又は抗体を含む薬学的組成物は、パルボウイルスによる感染に対して受動免疫を提供するため、及び/又はパルボウイルス感染症を治療するために有用でありうる。ここで使用される場合、「パルボウイルス感染症」は、パルボウイルス感染に関連し、それによって引き起こされ、又はそれによって特徴付けられる状態を意味する。そのような状態には、限定されないが、ケージサイドELISA試験、赤血球凝集アッセイ(HA)、病理組織診断、ウイルス単離又はウイルス力価、又はPCRによって確認された感染症が含まれる。パルボウイルスでの感染症には、しばしば、発熱、嘔吐、下痢、リンパ球減少症、脱水症、及び/又は続発性敗血症が含まれる。
【0097】
ここで使用される場合、「治療」は、有益な又は望ましい臨床結果を得るためのアプローチである。ここで使用される「治療」は、ヒト及びコンパニオンアニマル(例えば、イヌ又はネコ)を含む哺乳動物のような対象における疾患のための治療薬の任意の投与又は適用を包含する。この開示の目的では、有益な又は望ましい臨床結果には、限定されないが、以下の何れか一又は複数が含まれる:一又は複数の症状の緩和、死亡の予防、疾患の程度及び重症度の減少、疾患の拡大の予防又は遅延化、ウイルス排出の排除又は期間の短縮化、疾患の再発の予防又は遅延化、ウイルスの細胞傷害活性の予防又は減少、疾患進行の遅延化又は緩徐化、病状の改善、疾患又は疾患進行の阻害、疾患の臨床徴候の解決、疾患又はその進行の阻害又は緩徐化、その発生の抑止、及び寛解(部分又は完全)。また「治療」に包含されるものは、増殖性疾患の病理学的帰結の減少である。ここに提供される方法は、治療のこれらの態様の何れか一又は複数を企図している。上記と一致して、治療という用語は、障害の全ての態様の100パーセントの除去を必要としない。
【0098】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体又はそれを含む薬学的組成物は、感染パルボウイルスに対する受動免疫を提供するため、及び/又はパルボウイルス感染を治療するために、ここの方法に従って利用されうる。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体又は薬学的組成物は、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ又はネコ)又はヒトなどの対象に投与されて、パルボウイルスでの感染に対する受動免疫を提供し、及び/又はパルボウイルス感染を治療する。
【0099】
物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの「治療上有効な量」は、治療される疾患のタイプ、疾患状態、個々の対象の免疫状態、遭遇した毒性ウイルス負荷、ウイルス血症の重症度と程度、疾患の重症度と経過、治療目的のタイプ、以前の治療法、臨床歴、以前の治療への反応、母性由来の抗体受動伝達状態、個々の動物の以前の免疫状態、主治医の裁量、対象の年齢、性別、及び体重、並びに対象において所望の応答を誘発する物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの能力などの要因に応じて変化しうる。治療上有効な量は、物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの毒性又は有害な効果よりも治療上有益な効果が上回る量でもある。治療上有効な量は、一又は複数回の投与で送達されうる。治療上有効な量とは、所望の治療又は予防結果を達成するために、必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。
【0100】
幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体又はパルボウイルス抗体を含む薬学的組成物は、皮下投与、静脈内注入、又は筋肉内注射によって非経口的に投与される。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体又はパルボウイルス抗体を含む薬学的組成物は、単回用量又は複数回用量のボーラス注射として投与される。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体又はパルボウイルス抗体を含む薬学的組成物は、筋肉内、静脈内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、動脈内、関節滑液嚢内、くも膜下腔内、又は吸入経路によって投与される。
【0101】
ここに記載のパルボウイルス抗体は、1用量当たり0.01mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、1用量当たり0.5mg/kg体重から50mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、1用量当たり0.1mg/kg体重から10mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、1用量当たり0.1mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、1用量当たり1mg/kg体重から10mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、1用量当たり0.5mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、1mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、5mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、10mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、20mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、50mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲、1mg/kg体重から10mg/kg体重の範囲、5mg/kg体重から10mg/kg体重の範囲、0.5mg/kg体重から10mg/kg体重の範囲、0.01mg/kg体重から0.5mg/kg体重の範囲、0.01mg/kg体重から0.1mg/kg体重の範囲、又は5mg/kg体重から50mg/kg体重の範囲の量で投与されうる。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、0.5mg/kg体重の量で投与されうる。
【0102】
パルボウイルス抗体又はパルボウイルス抗体を含む薬学的組成物は、ヒト又はコンパニオンアニマル(例えば、イヌ又はネコ)のような対象に単一用量として、一度に又は一連の治療にわたって投与されうる。例えば、パルボウイルス抗体又はパルボウイルス抗体を含む薬学的組成物は、少なくとも一回、一回より多く、少なくとも二回、少なくとも三回、少なくとも四回、又は少なくとも五回投与されうる。
【0103】
幾つかの実施態様では、用量は、少なくとも二週間又は三週間連続して週に一回投与され、幾つかの実施態様では、この治療サイクルは二回以上繰り返され、場合によっては一又は複数週の無治療期間が散在する。他の実施態様では、治療上有効な用量は、二から五日間連続して一日一回投与され、幾つかの実施態様では、この治療サイクルは、二回以上繰り返され、場合によっては、一又は複数の日又は週の無治療期間が散在する。
【0104】
幾つかの実施態様では、用量は、1週齢未満、2週齢未満、3週齢未満、4週齢未満、5週齢未満、6週齢未満、6週齢未満、7週齢未満、8週齢未満、9週齢未満、10週齢未満、11週齢未満、12週齢未満、6か月齢未満、0から12週齢の間、0から10週齢の間、0から8週齢の間、0から6週齢の間、0から4週齢の間、0から2週齢の間、4から12週齢の間、6から12週齢の間、10から12週齢の間、4週齢から6か月齢の間、2か月齢から6か月齢の間、4か月齢から6か月齢の間、6か月齢から1歳の間、13週齢を超え、又は1歳を超えるヒト又はコンパニオンアニマル(例えば、イヌ又はネコ)のような対象に投与される。
【0105】
パルボウイルス感染に対する受動免疫を提供するために、パルボウイルス抗体又はパルボウイルス抗体をコードする核酸を出生前及び/又は出生後の乳仔対象に送達することが有利である場合がある。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、ヒト又はコンパニオンアニマル(例えば、イヌ又はネコ)などの妊娠中又は授乳中の母体対象に投与される。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、妊娠中の対象の胎盤に投与される。
【0106】
幾つかの実施態様では、イヌ又はネコパルボウイルスによる感染に対して乳仔対象に受動免疫を提供する方法は、妊娠中又は授乳中の母体対象に、イヌ又はネコパルボウイルスに結合する治療的有効量のモノクローナル抗体を投与することを含む。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、妊娠中の対象の胎盤に投与される。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は、授乳中の対象に投与される。
【0107】
ここに提供されるのは、パルボウイルス感染の検出、診断、及びモニタリングのためにパルボウイルス抗体、ポリペプチド、及びポリヌクレオチドを使用する方法である。ここに提供されるのは、対象がパルボウイルス抗体療法に応答するかどうかを決定する方法である。幾つかの実施態様では、本方法は、ウイルス血清中和を含む。幾つかの実施態様では、本方法は、パルボウイルス抗体を使用して、対象がパルボウイルスを発現する細胞を有するかどうかを検出することを含む。幾つかの実施態様では、検出の方法は、サンプルを抗体、ポリペプチド、又はポリヌクレオチドと接触させ、結合のレベルが参照又は比較サンプル(対照など)のレベルと異なるかどうかを決定することを含む。幾つかの実施態様では、本方法は、ここに記載の抗体又はポリペプチドが対象にとって適切な治療剤であるかどうかを決定するために有用でありうる。
【0108】
幾つかの実施態様では、サンプルは生物学的サンプルである。「生物学的サンプル」という用語は、生体又は以前生体であったものからのある量の物質を意味する。幾つかの実施態様では、生物学的サンプルは、細胞残屑を含むスワブ、細胞又は細胞/組織可溶化物である。幾つかの実施態様では、生物学的サンプルは、限定されないが、血液(例えば、全血)、血漿、血清、尿、滑液、リンパ組織及び上皮細胞を含む。
【0109】
幾つかの実施態様では、細胞又は細胞/組織可溶化物をパルボウイルス抗体と接触させ、抗体と細胞の間の結合を決定する。試験細胞が同じ組織型の参照細胞と比較して結合活性を示す場合には、対象がパルボウイルス抗体での処置から恩恵を受けるであろうことが示されうる。幾つかの実施態様では、試験細胞は、対象、例えばヒト又はコンパニオンアニマル(例えば、イヌ又はネコ)の組織からのものである。
【0110】
特異的抗体-抗原結合を検出するための当該技術分野で知られている様々な方法を使用することができる。実施できる例示的なイムノアッセイには、蛍光分極イムノアッセイ(FPIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、比濁阻害イムノアッセイ(NIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及びラジオイムノアッセイ(RIA)が含まれる。指示薬部分、又は標識グループは、対象抗体に結合させることができ、アッセイ装置の入手可能性及び適合するイムノアッセイ手順によって決定されることが多い様々な方法の使用の必要性に合致するように選択される。適切な標識には、限定されはないが、放射性核種(例えば125I、131I、35S、3H、又は32P)、酵素(例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、又はb-グラクトシダーゼ)、蛍光性部分又はタンパク質(例えばフルオレセイン、ローダミン、フィコエリスリン、GFP、又はBFP)、又は発光部分(例えばQuantum Dot Corporation,Palo Alto,Calif.によって供給されるQdotTMナノ粒子)が含まれる。上記の様々なイムノアッセイを実施する際に使用される一般的な技術は、当業者に知られている。
【0111】
診断の目的では、抗体を含むポリペプチドは、限定しないが、放射性同位体、蛍光標識、及び当該分野で知られている様々な酵素-基質標識を含む検出可能な部分で標識することができる。標識を抗体にコンジュゲートさせる方法は当該技術分野で知られている。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体は標識される必要はなく、その存在は、第一のパルボウイルス抗体に結合する第二の標識化抗体を使用して検出することができる。幾つかの実施態様では、パルボウイルス抗体を、競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイ等の任意の既知のアッセイ法において用いることができる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp. 147-158 (CRC Press, Inc. 1987)。パルボウイルス抗体及びポリペプチドは、インビボイメージング等のインビボ診断アッセイにもまた用いることができる。一般に、抗体又はポリペプチドは、目的の細胞又は組織の位置がイムノシンチオグラフィーを使用して特定されうるように、放射性核種(例えば111In、99Tc、14C、131I、125I、3H、又はここに概略を示したものを含む任意の他の放射性核種標識)で標識される。抗体は当該技術分野で周知の手法を使用して病理学における染色試薬としても使用してもよい。
【0112】
幾つかの実施態様では、第一の抗体は診断用に使用され、第二の抗体は治療剤として使用される。幾つかの実施態様では、第一の抗体と第二の抗体は異なる。幾つかの実施態様では、第一の抗体と第二の抗体は別々のエピトープに結合することによって、両方とも同時に抗原に結合しうる。
【0113】
次の実施例は、開示の特定の態様を例示するものであり、決して開示を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0114】
実施例1
キメライヌ抗体Mab A及びMab Bの調製
8つの異なる中和モノクローナル抗体からの抗体断片と複合体を形成したイヌパルボウイルス及びネコパルボウイルスの構造解析が、Hafenstein S.等, J Virol. 2009 Jun, 83(11):5556-66において報告された。不完全なアミノ酸配列情報が、ラットMab E及びMab F Fab断片について提供され、これはインビトロアッセイでイヌパルボウイルスの中和を示した。Mab Eの可変重鎖及び可変軽鎖の不完全なアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:81及び82である。Mab Fの可変重鎖及び可変軽鎖の不完全なアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:83及び84である。
【0115】
三次元タンパク質構造解析を実施して、Mab E及びMab Fの重鎖及び軽鎖の両方について再デザインされた第一フレームワーク領域を構築した。Mab A及びMab Bと命名された再デザインされたモノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号:20(Mab A重鎖)、配列番号:22(Mab A軽鎖)、配列番号:62(Mab B重鎖)、及び配列番号:64(Mab B軽鎖)である。
【0116】
キメラ抗体をコードするDNA配列を、Mab A VH(配列番号:20)及びMab B VH(配列番号:62)のイヌ定常IgG-B重鎖並びにMab A VL(配列番号:22)及びMab B LC(配列番号:64)のイヌ定数κ軽鎖への融合体に対してデザインし、配列番号:23(キメラA HC IgG-B)、配列番号:66(キメラB HC IgG-B)、配列番号:25(キメラA LC κ)、及び配列番号:68(キメラB LC κ)を得た。重鎖及び軽鎖ヌクレオチド配列を化学的に合成し、哺乳動物宿主細胞へのトランスフェクションに適した発現ベクターに挿入した。重鎖及び軽鎖ベクター対を細胞にトランスフェクトして培養した後、CaptivA(登録商標)プロテインAアフィニティー樹脂(Repligen)を使用して培地から抗体をアフィニティー精製した。精製されたキメライヌMab A及びMab B抗体を、SDS-PAGE分析によって確認した(データは示さず)。
【0117】
Mab A VH(配列番号:20)及びMab B VH(配列番号:62)のイヌ定数IgG-A、IgG-C、及びIgG-D重鎖への融合体に基づいて、キメラ抗体をまたデザインし、調製できる。
【0118】
実施例2
キメライヌ抗体Mab A及びMab B活性
精製されたキメライヌMab A及びMab B(200μg/mLでPBS,pH7.2に処方)の両方を、赤血球凝集抑制(HI)アッセイを使用して抗イヌパルボウイルス活性を評価するために使用した。アッセイは、本質的にCarmichael等, Am J of Vet Res. 1980 May, 41 (5):784-91に記載されているようにウィスコンシン大学のコンパニオンアニマルワクチン及び免疫診断サービス研究所において実施した。CPVと共にインキュベートしたキメライヌMab A及びキメライヌMab Bのサンプルの段階希釈液を調製した。次に、ブタ赤血球を加えた。イヌパルボウイルスは、ブタ赤血球の凝集を誘導する。キメライヌMab AとキメライヌMab Bの両方が凝集を防いだ。両方の抗体は40960のCPV-2b HIをもたらしたが、無関係なイヌIgGは<20のHIをもたらした。殆どのワクチン接種したイヌは、1280前後の抗体HIを有していると理解される。
【0119】
更に、生CPVが細胞に感染し細胞を破壊するのを防ぐ抗体の活性を、ウイルス血清中和アッセイを使用して分析した。
【0120】
実施例3
キメライヌMab A及びMab Bの発現の増強のためのバリアントVH及びVL配列
キメライヌMab A及びMab Bは、一過性CHOS又は安定なCHOK1細胞において一貫して不十分に発現された。発現レベルを高めるために、修飾に適したVH及びVLアミノ酸残基を特定するために三次元タンパク質構造解析を実施した。VH及びVLに様々な変異を持つ複数のコンストラクトを作製した。イヌIgG-BとVH及びVLバリアントの組合わせを有する抗体の発現レベルを試験した。
【0121】
増強された発現バリアントを、イヌパルボウイルスHIアッセイによってそれらの比活性について分析した。これらの実験では、試験した各抗体バリアントは、200μg/mLのPBS,pH7.2に処方した。キメライヌMab A(配列番号:23及び25)及びキメライヌMab B(配列番号:66及び68)の両方が10240のCPV-2b HIを示した。増強された発現バリアントのキメライヌMab A v2(配列番号:24及び25)及びキメライヌMab B v2(配列番号:67及び69)は、同じHI値10240を維持したが、他のバリアントはより低い比活性を示した。
【0122】
実施例4
パルボウイルス感染アッセイ活性(SVN)
生パルボウイルスが細胞に感染して細胞を破壊することを防ぐキメライヌMab A v2(配列番号:24及び25)及びキメライヌMab B v2(配列番号:67及び69)の能力を決定するために、血清ウイルス中和(SVN)アッセイを実施した。このアッセイでは、メイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞を増殖させた。抗体の段階希釈液を固定力価のパルボウイルスと混合した。次に、混合物を細胞と共にインキュベートした。インキュベーション後、細胞を顕微鏡で検査してウイルス細胞変性効果(CPE)を特定した。読み取りは、パルボウイルスが細胞変性効果を引き起こすのを防ぐ限界に達した抗体サンプルの最終希釈度である。
【0123】
(1)4℃に保ち、(2)200μg/mLで7回の凍結融解サイクルに供した両方のキメライヌMab A v2が同じ活性を有していた:CPV-2bに対するSVNは32000で、CPV2cに対するSVNは8000。
【0124】
実施例5
キメライヌMab A v2及びMab B v2の安定性
25mg/mLでのキメライヌMab A v2(配列番号:24及び25)及び20.5mg/mLでのキメライヌMab B v2(配列番号:67及び69)の安定性を試験した。キメライヌMab A v2及びキメライヌMab B v2は、それぞれ約25mg/mL及び約20.5mg/mLの濃度で、HIアッセイにより同様の比活性を示す。
【0125】
CHOK1安定プールから産生し精製したキメライヌMab A v2及びキメライヌMab B v2の両方は、PBS,pH7.2中で25mg/mLに容易に濃縮でき、両方の抗体には溶解性の懸念がないことを示唆している。
【0126】
キメライヌMab A v2及びキメライヌMab B v2は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって評価して、中性pHで、及びpH4.1で10時間保存した後、単量体(>99%)である。この分析では、抗体の単量体と凝集体を、Agilent 1100システム、KW-Gガードカラムを備えたShodex KW803カラム(8mm×300mm)、及び0.5mL/分の一定流量で2×PBS pH7.2(270mMのNaCl、5.4mMのKCl、8.6mMのNa2HPO4、2.8mMのKPO4)の移動相緩衝液を使用して、SEC-HPLCによって分離した。カラムは、サイログロブリン、γ-グロブリン、卵白アルブミン、ミオグロビン、及びビタミンB12で構成されるBio Radマーカー(カタログ番号151-1901)を使用してキャリブレーションした。
【0127】
(1)PBS,pH7.2中25mg/mLで、及び(2)50mMのクエン酸ナトリウムpH7、150mMのNaCl中25mg/mLで様々な温度におけるキメライヌMab A v2のリアルタイム安定性を評価した。10か月でのHPLC-SECの結果を表3にまとめる。
【0128】
【0129】
抗体を-70℃での凍結と室温での解凍を伴う三回の凍結融解サイクルに供することにより、安定性をまた試験した。CPV-2b HI値とCPV-2c HI値の両方に関して、何れの抗体でも活性の喪失は観察されなかった。
【0130】
抗体を-20℃での凍結と室温での解凍を伴う7回の凍結融解サイクルに供することにより、安定性を更に試験した。両方の抗体は、HIアッセイで測定した場合、完全な活性を維持した。
【0131】
示差走査蛍光(DSF)を使用して、異なる製剤中、ある範囲のpHにわたる二つの抗体の熱安定性を分析した。異なる条件での各抗体の融解温度(Tm)を測定した。緩衝液と12μgの抗体を1×プロテインサーマルシフト色素(Applied Biosystem,カタログ番号4461146)と混合した。StepOneリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystem,カタログ番号4376357)を用いて融解曲線を遂行した。製造元の説明書に従って、温度をランプ速度1%で25℃から99℃に上げた。データをプロテインサーマルシフトTMソフトウェアv1.0(Applied Biosystem,カタログ番号4466038)で解析し、タンパク質融解曲線の一次導関数をとって得られた最高値として計算して、Tmを決定した。PBS pH7.2を含む、試験した各製剤について、キメライヌMab A v2はキメライヌMab B v2よりも有意により安定であった。
【0132】
実施例6
キメライヌ抗体Mab A v2及びMab B v2のVLP結合
パルボウイルスVLPとのキメライヌMab A v2(配列番号:24及び25)及びキメライヌMab B v2(配列番号:67及び69)の見かけの親和性を測定した。先ず、ビオチン化したキメライヌMab A v2及びキメライヌMab B v2をストレプトアビジンセンサーチップに結合させた。次に、Mab結合センサーチップへの組換えイヌパルボウイルスCPV2bカプシド(Advanced ImmunoChemical Inc Cat#8-CPV)の結合性を評価した。
【0133】
キメライヌMab A v2及びキメライヌMab B v2抗体は、それぞれ、治療活性に潜在的に十分な動態でイヌCPV 2b VLPに対して親和性を示した。結合分析は、次のようにOctetバイオセンサーを使用して実施した。簡単に説明すると、キメライヌMab A v2(配列番号:24及び25)及びキメライヌMab B v2(配列番号:67及び69)をアミン化学によってビオチン化した。遊離の未反応ビオチンを、本格的な透析によって除去した。ビオチン化キメライヌMab A v2及びキメライヌMab B v2を、ストレプトアビジンセンサーチップに捕捉した。Mab A v2又はMab B v2とイヌCPV 2b VLP(40μg/mL)の何れかの会合を300秒間モニターした。解離を300秒間モニターした。ビオチン化された無関係のイヌIgG-Bを陰性対照として使用した。ForteBio
TMデータ解析ソフトウェアを使用してデータを1:1結合モデルに適合させ、kon、koff、及びKdを決定した。希釈及び全ての結合工程のための緩衝液は、20mMのリン酸、150mMのNaCl、pH7.2であった。キメライヌMab A v2とVLP2bのKdは9.78×10
-11Mであり、キメライヌMab B v2とVLP2bのKdは9.38×10
-12Mであった(
図2を参照)。
【0134】
実施例7
Mab A v2及びMab B v2のイヌ化
潜在的な免疫原性を低減するために、特に抗体A又はBの反復投与が必要な場合、Mab A v2及びB v2からのVH及びVLをイヌ化に供した。多数のイヌ化されたVH及びVLをデザインし、発現させ、精製した。CPV2b HIアッセイを使用して、比活性に対して優れた発現体を選択した。イヌ化A HC v3 IgG-B(配列番号:37)及びイヌ化A LC κ(配列番号:39)並びにイヌ化A HC v4 IgG-B(配列番号:38)及びイヌ化A LC κ(配列番号:39)が、キメラA HC IgG-B(配列番号:23)及びキメラA LC κ(配列番号:25)と比較して、並びにキメラA HC v2 IgG-B(配列番号:24)及びキメラA LC κ(配列番号:25)と比較して、十分な活性を維持した。イヌ化B HC v3 IgG-B(配列番号:79)及びイヌ化B LC v3 κ(配列番号:80)は、キメラB HC IgG-B(配列番号:66)及びキメラB LC κ(配列番号:68)と比較して、並びにキメラB HC v2 IgG-B(配列番号:67)及びキメラB LC v2 κ(配列番号:69)と比較して、十分な活性を維持した。
【0135】
実施例8
ネコキメラMab A及びMab B
キメライヌMab A v2(配列番号:24及び25)及びキメライヌMab B v2(配列番号:67及び69)は、ネコパルボウイルスHIアッセイにおいて活性を示した。200μg/mLのキメライヌMab A v2は、262144のネコパルボウイルスHIを示し、200μg/mlのキメライヌMab B v2は、131072のネコパルボウイルスHIを示した。
【0136】
従って、Mab A及びMab Bは、ネコパルボウイルス(汎白血球減少症ウイルス)の予防又は治療に使用することができる。更に、キメラネコMab A可変重鎖及びネコIgG-1を、キメラネコMab A可変軽鎖及びネコカッパ(配列番号:31及び32)と対になるようにデザインした。潜在的な不均一性を除去するために、グリコシル化部位を除去する変異を導入して、キメラネコMab A-IgG1を非グリコシル化カッパと対にすることができる(例えば、配列番号:31及び33)。
【0137】
更に、キメラネコMab B可変重鎖及びネコIgG-1を、キメラネコMab B可変軽鎖及びネコカッパ(配列番号:74及び75)と対になるようにデザインした。グリコシル化部位を除去する変異を導入して、キメラネコMab A-IgG1を非グリコシル化カッパと対にすることができる(例えば、配列番号:74及び76)。
【0138】
実施例9
子犬における安全性と薬力学
キメライヌMab A(配列番号:23及び25)及びキメライヌMab B(配列番号:66及び68)モノクローナル抗体を使用して、インビボ研究を実施した。この研究の目的は、目的を持って飼育された、ワクチン未接種の健康な子犬において二種の抗体による処置後の、安全性、イヌパボウイルス-2(CPV-2)力価に対するキメライヌMab A及びキメライヌMab Bの効果、ウイルス中和、及び一価修飾生ワクチンへの応答を評価することであった。以下の表4の研究デザインのまとめを参照のこと。
【0139】
【0140】
無作為化後、子犬を二グループ(3Mab A(イヌID BDW-8、DEW-8、及びDFW-8):3Mab B(イヌID CTW-8、CWW-8、及びDHW-8))に割り当てた。子犬に、研究0日目に、それぞれの抗体を、毛刈りして準備した橈側皮静脈を介して単一の静脈内用量(5mg/kg)を投与した。最初は80以下の力価で子犬に一価CPVワクチンのNobivac 1-Pv(Merck Animal Health, Kenilworth, NJ)を投与した。2回目の用量は最初の投与の21日後に投与した。2回目の投与の約21日後に子犬がセロコンバージョンしなかった場合は3回目の用量を投与した。
【0141】
子犬を、赤血球凝集抑制(HI)及びウイルス中和(VN)を使用して、合計100日間モニターした。HIは血清サンプル中の抗体量を定量化し、VNは、生ウイルスが細胞に感染して破壊するのを防ぐ抗体の能力を決定するために利用される。子犬をまたCPVワクチン接種後にセロコンバージョンしたかどうかを決定するために追跡した。
【0142】
全ての子犬は、Mab A又はB抗体の静脈内投与前の0日目に20未満のHI力価を有していることが検証された。Mab A又はBの投与後の1日目のHI力価は、2560と5120の間であった。力価を100日間モニターして、抗体の分解を文書化し、血清半減期を評価した。
【0143】
個々の子犬の力価が1:40まで低下し始めた37日目に、ワクチン接種が、ワクチン接種のCPV-2の中和を評価するために施され始めた。Mab A又はB抗体は、子犬において様々なレベルで免疫化をブロックすることが文書化された。子犬にはスケジュール通りにワクチン接種のその後の投与を与え、応答を検証した。ワクチン接種のセロコンバージョンは、最終的に6匹の子犬のうち5匹で発生した。両グループの動物のHIアッセイ力価は、以下の表5、及び
図3A(Mab Aグループ)、
図3B(Mab Bグループ)、及び
図3C(両方のグループを組み合わせたもの)に反映されている。
【0144】
時間の関数としてHIを使用して、高速分布及び低速相減衰を得るために、二相減衰動態を使用した。キメライヌMab Aの半減期は10.1日であり(
図4A)、キメライヌMab Bの半減期は8.6日であった(
図4B)。血清VNアッセイは、HI力価を写していた(以下の表6を参照)。半減期は母性由来の抗体とほぼ一致する。(Carmichael, LE, Joubert, JC and Pollock, RVH; “A Modified Live Canine Parvovirus Vaccine. II. Immune Response;” Cornell Vet, Volume 73, Pages 13-29; 1983)。
【0145】
この最初の薬力学的研究は、静脈内投与されたキメライヌMab A(配列番号:23及び25)及びキメライヌMab B(配列番号:66及び68)が、投与後24時間以内に2560と5120の間の初期抗体力価をもたらしたことを実証する。加えて、VNはHI力価に非常に厳密に従う。抗体のおおよその半減期は7日から10日の間である。免疫の持続期間(すなわち、HI力価が80以上に維持された持続期間)は、キメライヌMab A又はキメライヌMab Bの一回の投与後30~42日の範囲であった。ワクチン接種での干渉は、抗体がワクチン接種CPV-2を中和しなくなるほど十分に分解するまで可能性がある。キメライヌMab AとキメライヌMab Bは両方とも力価が高く、耐容性が良好で、有害事象や注射部位反応は報告されなかった。
【0146】
最初のCPVワクチン接種は、潜在的にワクチンを中和する残留キメライヌMab A又はB抗体のために、6匹中5匹の子犬においてセロコンバージョンをもたらさなかった。イヌMab A又はキメライヌMab Bの両方によるワクチンウイルス複製の遮断は、インビトロ中和データとの最初のインビボ相関であった。その後、3匹の子犬が2回目のワクチン接種後にセロコンバージョンし、1匹が3回目のワクチン接種後にセロコンバージョンした。
【0147】
子犬のCWW-8に関して、56日目のセロコンバージョンは、37日目に投与されたワクチン接種の時間枠と相関しなかった。本研究において他の子犬から排出されたワクチンウイルスがCWW-8を曝露し、力価が20未満になるとセロコンバージョンを引き起こしたと疑われる。
【0148】
【0149】
【0150】
実施例10
予防と治療
このインビボ研究では、MabA v2抗体を利用した。この研究の目的は、MabA v2の将来の重要な研究においてイヌに曝露するために使用される生CPV-2の用量を検証し、CPV-2感染を予防する予防的処置としてとCPV-2感染のイヌの治療的処置としての両方の二つの適応症に対するMabA v2の概念実証を提供することであった。以下の表7の研究デザインのまとめを参照のこと。
【0151】
【0152】
12匹のイヌを無作為化し、各グループに雄と雌を含む6グループの一つに割り当てた。グループ1-3には、3つの異なるウイルスログで必要とされる罹患率と死亡率を生成するために必要とされる用量を検証するために、生CPV-2曝露だけを施された。グループ4及び5のイヌには、生CPV-2bの接種前に、予防的処置としてMab A v2を投与した。グループ6のイヌには、曝露後にMab A v2が投与され、糞便ケージサイドELISA SNAP試験によってCPV-2感染の発生を確認した。CPV-2接種曝露スケジュールについては、表8(下記)を参照のこと。
【0153】
【0154】
以下の表9に従って、グループ4及び5に、研究1日目にMabA v2を投与した。
【0155】
【0156】
各子犬がパルボウイルス感染を確認する糞便中のCPV-2を確かにするケージサイドCPV-2 ELISA試験での陽性になった後、グループ6に、研究7日目にMab A v2を投与した。以下の表10を参照のこと。
【0157】
【0158】
この研究は、皮下投与されたMabA v2に関する最初の薬力学的データを提供した。グループ4のイヌに静脈内投与された用量は、予測されたようにHI力価の瞬間的な上昇をもたらした。グループ5のイヌに皮下投与された用量は、24時間にわたって同等の力価をもたらした。以下の表11では、MabA v2投与後のHI力価ピークが達成されたタイミングで静脈内投与と皮下投与がどのように異なるかを見ることができる。
【0159】
以下の表12に示されるように、MabA v2の投与により、投与後24時間(IV)及び48時間(SC)以内にイヌにおいて循環抗体力価が生じた。高負荷の病原性曝露に直面して、保護的受動抗体力価が16日間維持された。
【0160】
【0161】
【0162】
1日目に、グループ4及び5に、それぞれ、MabA v2を静脈内又は皮下的に投与した。4日目に、6グループ全ての12匹のイヌ全てに、表8の接種用量ごとに病原性CPV-2を鼻腔内投与した。合計14日間、一般的健康観察(GHO)を記録するためにイヌを6時間ごとにモニターし、12時間ごとに臨床スコア(検証済みシステム、Mohr等, 2003による)を文書化し、及び血液学検査、HI、及びVN、並びに糞便赤血球凝集アッセイ(HA)のために血液の頻繁なサンプリングを行った。加えて、パルボウイルス感染がいつ存在していたかを評価するために陽性と判定されるまで、接種後毎日、全てのイヌにケージサイドCPV-2 ELISA試験を実施した。表13は、研究中に観察されたCPV-2の臨床徴候をまとめたものである。
【0163】
【0164】
グループ3及び6のイヌ(106個の生CPV-2に曝露され、MabA v2で事前に処置されていないイヌ)は、接種後3日目又は4日目にケージサイドCPV-2 ELISA試験で陽性を示した。グループ3(事実上対照グループ)の両方のイヌは、鬱病、嘔吐、血性下痢、進行性脱水症を含むパルボウイルス感染の深刻な古典的臨床徴候を発症し、瀕死になり、接種後7日までに安楽死させた。グループ6の両方のイヌは、生CPV-2を接種してから3日後にケージサイドCPV-2 ELISA試験で陽性を示した。ケージサイドCPV-2 ELISA試験が陽性であることを確認した後、イヌを続いて5mg/kgの静脈内Mab A v2で処置した。イヌは追加の補助的又は支持的なケアを受けなかった。
【0165】
グループ3のイヌは、病気が悪化し続け、最終的に瀕死状態になり、人道的に安楽死させたが、グループ6のイヌは生存し、研究期間中に完全な臨床的回復を示した。グループ6のイヌはまたケージサイドCPV-2 ELISA試験で陰性に戻ったが、これはイヌがウイルス粒子を放出しなくなったことを示している。
【0166】
予防的処置としてMab A v2を投与されたグループ4及び5の全てのイヌは、生存しただけでなく、健康を維持した(例えば、ケージサイドCPV-2 ELISAが陽性になったことはなく、パルボウイルス感染の臨床徴候を示したことはなかった)。
【0167】
予定された研究完了時の人道的安楽死後のグループ3-6の解剖学的病理組織診断を、人道的理由のために安楽死を早期に実施しない限り、実施した。グループ4及び5は、有意な病理学的変化を示さなかった。グループ6は胸腺のリンパ球枯渇を示したが、検査した他の臓器は正常であった。グループ3は、全てのリンパ器官のリンパ系枯渇、CPV-2感染を示す軽度から重度の陰窩壊死を伴う中等度から重度の小腸絨毛萎縮/壊死を示した。
【0168】
この試験的概念実証研究では、Mab A v2が予防的及び治療的介入として有望であることが実証された。予防群(n=4)の全てのイヌが、パルボウイルス感染を発症することはなく、臨床的に正常なままであった。パルボウイルスに感染したことが確認された治療群(n=2)の全てのイヌが、他の補助的又は支持的治療なしでMab A v2を投与された後、生存し、完全な臨床的回復を経験した。この研究ではまた、予防のためのMab A v2の皮下投与が実行可能な選択肢であることを検証した。最後に、この製剤は耐容性が高く、有害事象や注射部位反応はなかった。この概念実証研究において、曝露前のMab A v2の予防的投与により、子犬の100%がCPV-2感染から保護された。加えて、CPV感染確認後にMab A v2の治療的投与を受けた子犬の100%が生き残り、回復した。
【0169】
実施例11
治療的処置の中心的有効性研究
この中心的研究は、イヌパルボウイルス(CPV)疾患の治療剤としてのMab A v2の有効性を評価する。この研究の満足のいく完了と有効性の実証は、「この製剤は、イヌパルボウイルス(CPV)疾患に対する13週齢以上のイヌの治療に有効であることが示された」というラベルの主張を裏付けうる。
【0170】
このGCP、無作為化、盲検化、プラセボ対照試験は、少なくとも7日間の順化期間の後、14日間の長さである。合計28匹のナイーブ、CPV-2力価陰性のイヌ(0日目で13週齢以下、任意の性別、体重1.5kg以上)が、表14のように、二グループ(グループ1ではn=21匹のイヌ、グループ2ではn=7匹)に3:1の比率での研究に無作為化される。
【0171】
順化中、イヌは、一般的な蠕虫及びコクシジウム感染を排除するために駆虫薬及び抗生物質を投与されながら、給餌、飼育及び取り扱い手順に順化される。
【0172】
CPV-2b曝露の日は0日目と見なされる。0日目に、グループ1及び2の全てのイヌに、約1×106のTCID50の鼻腔内(IN)(約1mLの容量;鼻孔当たり約0.5mL)用量で病原性CPV-2bを投与する。糞便中にCPVを検出した同じ日に(ケージサイドCPV SNAP試験が陽性)、各イヌに、ルアーロックシリンジを使用してアクセス可能な静脈(例えば、橈側皮)カテーテルに静脈内(IV)注射によりMab A v2又は対照製剤(Control Product)(CP;リン酸緩衝生理食塩水(PBS))を投与する。Mab A v2は、体重に基づいて5mg/kgの単一用量で投与する。CPのpHは7.2±0.2である。Mab A v2Mab A v2及びCPの用量は次のように計算される:
{(kgでの体重)×(5mg/kg)}÷{25mg/mL}=注射されるmLでの容量
【0173】
表15に概略が示された予定時間に、個々のイヌの健康状態を、身体検査(PE)、一般的健康観察(GHO)、直腸温(RT)の測定、ケージサイドCPV SNP試験、血清HI、糞便赤血球凝集アッセイ(HA)、血清生化学検査、及び血液学検査で、14日間綿密にモニターする。
【0174】
主要有効性変数は、グループ1のイヌ対グループ2のイヌにおけるCPV感染による死亡の防止である。
【0175】
以下の表14の処置グループを参照のこと。
【0176】
【0177】
無作為化 この研究では、二段階の無作為化が必要になる場合がある。最初の段階は、どの28匹のイヌが研究に登録されるかを決定することである。次に、イヌを、グループ1及び2に対してそれぞれ3:1の比率で、可能であれば同腹仔に基づいてブロックサイズ4で無作為化する。無作為化は、シード番号を用いた無作為化選択方法を使用して、SAS(バージョン9.4以降, SAS Institute, Cary NC)のPLAN手順によって生成した乱数に基づく。
試験施設への到着後、イヌを到着順に2部屋のケージに入れ、同じ同腹仔/ブロックのイヌは可能であれば同じ部屋に留める。イヌは、感染したイヌから排出されたウイルスに二次的に曝露される可能性がある。両方の処置グループで類似レベルの二次ウイルス曝露を維持し、試験施設の人員への盲検化を維持するために、各部屋には両方の処置グループが含まれる。28匹のイヌを選択した後、それらのケージに1から28まで順に番号を付ける。同じ同腹仔のイヌは隣接するケージ番号であり、4匹の同腹仔が、部屋ごとに早い番号(例えば1-4、5-8など)を取る。一方の部屋にはケージ番号1-12が含まれ、他方の部屋にはケージ番号13-28が含まれるべきである。イヌは無作為化リストのケージ番号順に登録する。
【0178】
研究盲検化 治験責任医師及び他の全ての試験施設人員(分配者及び投薬のためにイヌを拘束する指定された一人を除く)は、0日目の実際の処置グループの割り当てについての知識を持っていない。分配者及び投薬中にイヌを拘束するための指定された人員だけが、各イヌの実際の処置グループの割り当て(Mab A v2又はCP)にアクセスできる。分配者とイヌの拘束者/ホルダーは、何ら研究評価を実施しない。
【0179】
仕様 合計で少なくとも30匹の目的を持って飼育された、ワクチン未接種のCPV-2血清陰性(HI<20)の健康なビーグル犬が調達される。イヌは、試験施設に到着すると、CPV SNAP試験によってCPV陰性であることが確認される。研究登録には28匹のイヌが含まれるが、スクリーニングと順化後にイヌの数が確実に満たされるように、更に2匹のイヌが購入される。理想的には、30匹のイヌは、7匹の同腹仔で同腹仔当たり4匹と、別の同腹仔(部分的な同腹仔)から2匹のイヌで構成される。
【0180】
中心的な効力の決定 中心的な有効性シリアルは、後続のシリアルの放出効力を設定し、各シリアルは、放出に十分であると見なされるために、効力アッセイと比較して、中心的な有効性シリアルの効力であるかそれ以上である必要がある。効力アッセイのマスター参照を設定するために、参照モニタリングアッセイを使用して、中心的な有効性シリアルが試験される。試験は、試験犬に投与された最初の有効用量について、投与の0±7日目に行われる。
【0181】
[観察]
【0182】
身体検査(PE) 身体検査は、少なくとも-7、-1日目、Mab A v2/CP投与日、13日目、及び必要に応じて予定外の日に、試験施設の獣医師によって全てのイヌに対して実施される。身体検査には、水分補給状態やBWを含む全ての体組織の包括的な評価が含まれ、記録される。
【0183】
食物消費 一日1回、一般的健康観察(GHO)と併せて、食物消費の定性的評価が行われる。観察された食物消費における全ての異常が記録される。
【0184】
一般的健康観察(GHO)及び直腸温(RT)の測定 GHOは、試験施設の獣医師又はその被指名人によって、-7日目から-1日目までの順化期間中に少なくとも一日1回行われる。GHOは、0日目に始めて12日目まで12時間(±1時間)毎に行われる。0日目に始めて、各GHOと組み合わせて、華氏スケールの校正済み温度計を使用してRTもまた測定される。
【0185】
これらの4つのパラメータに関して特定のGHO情報が収集される。
・態度-正常、軽度から中等度の鬱病、重度の鬱病、又は虚脱状態又は瀕死状態として記録される
・食欲ー正常、自発的に少量を食べる、食物に興味がない、又は提供されないと記録される
・嘔吐-なし、軽度(12時間に一回)、中程度(12時間に2-5回)、又は重度(12時間に6回以上)として記録される
・糞便-形の良い又はなし、軟らかい又はペースト状糞便、水様の非血性下痢、又は水様の血性下痢として記録される
GHOには、これら4つのパラメーターに加えて他の所見も含まれる場合がある。これらのパラメーターは、各観察期間で各イヌについて文書化される。
【0186】
ケージサイドCPV SNAP試験 ケージサイドCPV ELISA試験が、製造元の説明書に従ってIDEXX CPV SNAP試験を使用して実施される。ベンダーから-7日目に到着すると、全てのイヌに対して予備的CPV SNAP試験が実施され、イヌにアクティブなCPV感染がないことが確認される。その後のCPV SNAP試験は、-1日目から試験終了までの朝の一貫した時間に評価される。万が一、イヌがCPV SNAP試験で陽性と判定されず、従ってMab A v2/CPを投与されなかった場合、そのイヌは有効性分析から除外される。
【0187】
血清CPV-2赤血球凝集(HI)試験 全血サンプルが、全てのイヌから頸静脈、橈側皮静脈、又は外側伏在静脈を介して血清分離管に収集され(約1.5mL)、-7、0、3、4、6、8、10、及び13日目に血清に処理され、0日目のサンプルは病原性CPV-2bに曝露される前に収集される。サンプルは予定外の安楽死の前にも収集される。サンプルは在庫管理され、検査室の治験医師までドライアイスでできるだけ早い機会に出荷される。サンプルは、出荷まで凍結状態(-60℃以下)で保管される。データが記録される。
【0188】
糞便CPV-2赤血球凝集アッセイ(HA)試験 バルク糞便サンプルが、0日目から研究終了まで各イヌから収集される。バルク糞便は各イヌから50mLチューブに集められ、個別に凍結され、CPV SNAP試験結果を検証し、4つのCPV-2b感染基準の一つを満たすために糞便HA試験のために保管される。結果の精度とサンプルサイズを最大にするために、HA試験の前に糞便サンプルを均質化する。糞便の収集、保管、及び輸送の手順は、検査室の治験医師の指示に従う。データが記録される。
【0189】
CPV-2b感染基準 CPV感染の基準は、9CFRセクション113.317、(c)、(3)、(i)に準拠している。この規制は、アクティブなCPV感染の4つの基準を定める。有効なCPV-2b曝露は、4つの基準のうち3つを引き起こし、又は7匹のCP犬のうち少なくとも4匹で死亡に至るはずである。9CFRセクション113.317の定義によると、パルボウイルスの4つの基準は次の通りである:
・体温≧103.4°F
・曝露前の正常値の50%以上のリンパ球減少
・糞便中の下痢、粘液及び/又は血
・糞便の1:5希釈で1:64以上のレベルのウイルス性赤血球凝集素(又は同等の感度の試験)
これらの4つの基準は、直腸温(RT)、リンパ球数をモニターするための特定された間隔での血液学検査、及び糞便HAを介して検証される結果で毎日実施されるCPV SNAP試験を含む、12時間ごとのGHOを介して全てのイヌで毎日モニターされる。曝露後、CPV感染により死亡した何れかのグループのイヌは、CPV感染による死亡と見なされる。瀕死と見なされ、救助条項によって安楽死させなければならないイヌもまたCPV感染による死亡と見なされる。
【0190】
臨床病理学(血液学及び臨床生化学) -7日目に、ベースラインの全血球数(CBC)と生化学的側面を評価して、イヌが健康であり、既存の病状がないことが確認される。-1、0、3、4、5、6、7、8、10及び13日目に、血リンパ球数をモニターするCBCのために採血される。サンプルは毎朝の一定の時間に収集され、記録される必要がある。血液学検査のために約0.5mLの血液が収集され、臨床生化学検査のために、任意のアクセス可能な静脈(例えば、頸静脈、橈側皮静脈、又は側伏在静脈)を介して約1mLの血液が収集される。全てのサンプルを分析してCBCデータをリアルタイムで評価し、9CFR113.317に基づくアクティブなCPVと一致する4つの臨床徴候の一つであるリンパ球減少症が発生したかどうかを判断する。
【0191】
[有効性アウトカム]
【0192】
主要アウトカム 主要有効性変数は、CPVに誘発される死亡である。Mab A v2及びCPグループの死亡率が計算される。Cochran-Mantel-Haenszel法(SAS,SAS Institute,CaryNC、バージョン9.4以降のFREQ手順)を使用して、層化変数として部屋を用いて、防止率(PF)と95%信頼限界の下限を計算して、Mab A v2グループをCPグループと比較する。データ(例えば、100%Mab A v2生存率)のためにPFを生成できず、結果が部屋間で均一である場合、層化変数として部屋を用いないで同じ分析が行われる。PFの95%信頼限界の下限が>0であり、CPグループの死亡率がMab A v2グループよりも高い場合、主要有効性エンドポイントが満たされる。Mab A v2/CP犬の死亡率は、CPV感染による死亡、又は瀕死と見なされ、救助条項によって安楽死させなければならないイヌとして定義される。万が一、イヌがCPV SNAP試験で陽性と判定されず、従ってMab A v2/CPを投与されなかった場合、そのイヌは有効性分析から除外される。
【0193】
救助条項 個々のイヌが試験施設の獣医師によって瀕死状態にあると見なされた場合、彼らは救助条項によってそのイヌを研究から除外し、安楽死を選択することができる。人道的な理由で研究から除外されたイヌは、安楽死の理由がCPVと無関係でない限り、「死亡率」として有効性評価に含められる。
【0194】
イベントのスケジュールを以下の表15に提供する。
【0195】
【0196】
次は、イヌパルボウイルス曝露接種手順である:
1.曝露材料が投与される約12時間前に食物を取り除く。水は引き続き利用できる。
2.曝露材料を超低温(-80℃)冷凍庫から取り出し、使用の約1時間前に室温で解凍する。
3.取り扱いエラーの場合に備えてバックアップ用量を確保するために、5つの余分なアリコートを解凍する。
4.使用するまで曝露材料を湿った氷上に保持する。
5.シリンジ一用量で一度に1mLのアリコート曝露材料を調製する。
6.鼻カニュラ付きのシリンジ(針なし)を使用して、各鼻孔に0.5mLを投与する。
7.拘束は手作業による;鎮静剤は必要ない。
8.飼育係が、投薬中に鼻を僅かに上げた状態でイヌの頭を持ち上げる。
9.イヌが飲み込んで快適になるまで、各鼻孔の間に数秒の時間を置く。
10.幾らかの曝露材料が鼻孔から排出される場合があることを予想のこと。
11.投薬が完了したら、イヌID、日付及び時刻を動物曝露記録に記録する。
12.投薬後直ぐに全てのイヌに食物を戻す。
13.未使用の曝露材料を-80℃の冷凍庫に戻し、「保持アリコート、日付」のラベルを付ける。
14.研究終了までアリコートを保持し、検査室の治験医師に戻す。
【0197】
次は、バルク糞便収集手順である:
1.最も異常と思われる個々の糞便パイル(又はパイル片)を選択する。
2.別個の木製舌圧子を使用して、各個々のイヌから最大数グラムの糞便を収集するー一日1匹のイヌにつき一回収集。下痢の多い糞便はシリンジを使用して収集する必要がある場合がある。
3.糞便を50mLのコニカルプラスチック製遠心チューブに入れる。チューブは半分以下が満たされている必要がある。
4.イヌIDと日付のラベルを付ける。
5.日付と処置グループごとにグループ化して、プラスチック製の冷凍バッグに保管する。
6.検査室の治験医師に出荷されるまで、-80℃で凍結する。
7.収集期間の終わりに、収集した全ての糞便をドライアイスで輸送し、一晩かけて検査室治験医師まで到達させる。
【0198】
実施例12
予防の中心的有効性の研究
この中心的研究の目的は、イヌパルボウイルス(CPV)感染の臨床徴候を予防するための予防的治療としてのMab A v2の有効性を評価することである。
【0199】
この研究の満足のいく完了及び有効性の実証は、「この製剤は、イヌパルボウイルス(CPV)疾患に対する13週齢以上の健康なイヌの受動免疫に有効であることが示された」というラベルの主張を裏付けうる。
【0200】
このGCP、無作為化、盲検化、プラセボ対照試験は、少なくとも7日間の順化期間の後、14日間の長さである。合計25匹のナイーブ、CPV-2血清陰性(CPV赤血球凝集抑制(HI)力価<20)のイヌが、表16のように、二グループ(グループ1ではn=20匹のイヌ、グループ2ではn=5匹)に無作為化される。イヌは、0日目に13週齢以下で、性別を問わず、到着時の体重は1.5kg以上で、健康状態が良好であり、試験開始時に病気の臨床徴候はない。
【0201】
順化中、イヌは、一般的な蠕虫及びコクシジウム感染を排除するために駆虫薬及び抗生物質を投与されながら、給餌、飼育及び取り扱い手順に順化される。
【0202】
0日目に、全てのイヌに、割り当てられたMab A v2(グループ1)又は対照製剤[CP;グループ2;リン酸緩衝生理食塩水(PBS)]を皮下(SC)注射により投与する。Mab A v2は、体重に基づいて5mg/kgの単一用量で投与する。CPのpHは7.2±0.2で、グループ1に等しい容量で投与される。Mab A v2及びCPの用量は次のように計算される:
{(kgでの体重)×(5mg/kg)}÷{25mg/mL}=注射されるmLでの容量
【0203】
局所及び全身の安全性データが、0日目(処置後)から2日目まで収集される。3日目に、グループ1及び2の両方からの全てのイヌに、約1×106TCID50/mLの用量で鼻腔内(IN)(鼻孔当たり約0.5mLに等しい容量)に病原性CPV-2bを投与する。
【0204】
表17に概略が示された予定時間に、個々のイヌの健康状態を、身体検査(PE)、直腸温(RT)の測定、ケージサイドCPV-2 ELISA IDEXX SNAP試験(CPV SNAP試験)、血清赤血球凝集抑制アッセイ(HI)、糞便赤血球凝集アッセイ(HA)、及び血液学検査で、14日間綿密にモニターする。
【0205】
主要有効性変数は、9CFRセクション113.317、(c)、(3)、(i)の基準によって定義されるグループ1のイヌにおけるCPV感染の予防である:
・体温≧103.4°F
・CPV-2b曝露前の正常値の50%以上のリンパ球減少
・糞便中の下痢、粘液及び/又は血
・糞便の1:5希釈で1:64以上のレベルのウイルス性赤血球凝集素(又は同等の感度の試験)
【0206】
グループ2(CP)犬の少なくとも80%が、9CFRセクション113.317、(c)、(3)、(i)に概略が記載された4つの基準のうちの少なくとも3つを有し、かつ少なくとも19匹のMab A v2で処置されたイヌが生きたままであり、4つの可能な臨床徴候の≦1を示すならば、有効性が実証される。
【0207】
以下の表16の処置グループを参照のこと。
【0208】
【0209】
無作為化 この研究では、二段階の無作為化が必要になる場合がある。最初の段階は、どの25匹のイヌが研究に登録されているかどうかを決定することである。次に、イヌを、グループ1及び2に対してそれぞれ4:1の比率でブロックサイズ5で無作為化する。無作為化は、シード番号を用いた無作為化選択方法を使用して、SAS(バージョン9.4以降, SAS Institute, Cary NC)のPLAN手順によって生成した乱数に基づく。
試験施設への到着後、イヌを到着順に2部屋のケージに入れ、同じ同腹仔/ブロックのイヌは可能であれば同じ部屋に留める。イヌは、感染したイヌから排出されたウイルスに二次的に曝露される可能性がある。両方の治療グループで類似レベルの二次ウイルス曝露を維持し、試験施設の人員への盲検化を維持するために、各部屋には両方の処置グループが含まれる。25匹のイヌを選択した後、それらのケージに1から25まで順に番号を付ける。同じ同腹仔のイヌは隣接するケージ番号であり、5匹の同腹仔が、部屋ごとに早い番号(例えば1-5、6-10など)を取る。一方の部屋にはケージ番号1-10が含まれ、他方の部屋にはケージ番号11-25が含まれるべきである。イヌは無作為化リストのケージ番号順に登録する。
【0210】
研究盲検化 治験責任医師及び他の全ての試験施設人員(分配者及び投薬のためにイヌを拘束する指定された一人を除く)は、0日目の実際の処置グループの割り当てについての知識を持っていない。分配者及び投薬中にイヌを拘束するための指定された人員だけが、各イヌの実際の処置グループの割り当て(Mab A v2又はCP)にアクセスできる。分配者とイヌの拘束者/ホルダーは、何ら研究評価を実施しない。
【0211】
仕様 合計で少なくとも27匹の目的を持って飼育された、ワクチン未接種のCPV-2血清陰性(HI<20)の健康なビーグル犬が調達される。イヌは、試験施設に到着すると、CPV SNAP試験によってCPV陰性であることが確認される。研究登録には25のイヌが含まれるが、スクリーニングと順化後にイヌの数が確実に満たされるように、更に2匹のイヌが購入される。理想的には、27匹のイヌは、5匹の同腹仔で同腹仔当たり5匹と、別の同腹仔(部分的な同腹仔)から2匹のイヌで構成される。
【0212】
[観察]
【0213】
身体検査(PE) 身体検査は、-7、0、3、13日目、及び必要に応じて予定外の日に、試験施設の獣医師によって全てのイヌに対して実施される。身体検査には、水分補給状態やBWを含む、全ての体組織の包括的な評価が含まれる。
【0214】
食物消費 一日1回、一般的健康観察(GHO)と併せて、食物消費の定性的評価が行われる。観察された食物消費における全ての異常が記録される。
【0215】
注射部位観察(ISO) ISOは、1日目と2日目に一日1回、局所炎症の臨床徴候(例えば、紅斑、熱、腫れ)についてMab A v2/CPの投与後4時間±1時間でなされる。反応サイズが記録される。観察された全ての異常が記録される。
【0216】
一般的健康観察(GHO)及び直腸温(RT)の測定 GHOは、試験施設の獣医師又はその被指名人によって、-7日目から-1日目までの順化期間中に一日1回行われる。GHOは、0日目から12日目まで12時間(±1時間)ごとに又は予定外に行われる。0日目に始めて、各GHOと組み合わせて、華氏スケールの校正済み体温計を使用して直腸温(RT)もまた測定される。一般的健康観察には、限定されないが、一般的な身体的外見、食物又は水の消費量の異常、及び/又は嘔吐又は下痢の発生の観察が含まれる。異常な兆候のないイヌを含む全てのイヌの状態が文書化される。
【0217】
ケージサイドCPV ELISA(CPV SNAP試験) ケージサイドCPV ELISA試験が、製造元の説明書に従ってIDEXX CPV SNAP試験を使用して実施される。ベンダーから-7日目に到着すると、全てのイヌに対して予備的CPV SNAP試験が実施され、イヌにアクティブなCPV感染がないことが確認される。その後のCPV SNAP試験は、0日目と3日目(病原性CPV-2bの接種前)の朝の一貫した時間に評価され、その後、試験終了まで一日1回評価される。CPV SNAP試験データが記録される。
【0218】
血清CPV-2赤血球凝集(HI)試験 全血サンプルが、全てのイヌから頸静脈、橈側皮静脈、又は外側伏在静脈を介して血清分離管に収集され(約1.5mL)、-7、0、2、3、4、6、8、10、及び13日目の朝の一定の時間に血清に処理され、3日目のサンプルは病原性CPV-2bが接種される前に収集される。サンプルは予定外の安楽死の前にも収集される。サンプルは在庫管理され、検査室の治験医師までドライアイスでできるだけ早い機会に出荷される。サンプルは、出荷まで凍結状態(-60℃以下)で保管される。データが記録される。
【0219】
糞便CPV-2赤血球凝集アッセイ(HA)試験 バルク糞便サンプルが、0日目と3日目から研究終了まで朝の一定の時間に各イヌから収集される。バルク糞便は各イヌから50mLチューブに集められ、個別に凍結され、CPV SNAP試験結果を検証し、4つのCPV-2b感染基準の一つを満たすために糞便HA試験のために保管される。結果の精度とサンプルサイズを最大にするために、HA試験の前に糞便サンプルを均質化する。糞便の収集、保管、及び輸送の手順は、検査室の治験医師の指示に従う。データが記録される。
【0220】
CPV-2b感染基準 CPV感染の基準は、9CFRセクション113.317、(c)、(3)、(i)に準拠している。この規制は、アクティブなCPV感染の4つの基準を定める。有効なCPV-2b曝露は、曝露対照犬の少なくとも80%で4つの基準のうち3つを満たす必要がある。9CFRセクション113.317の定義によると、パルボウイルスの4つの基準は次の通りである:
・体温≧103.4°F
・曝露前の正常値の50%以上のリンパ球減少
・糞便中の下痢、粘液及び/又は血
・糞便の1:5希釈で1:64以上のレベルのウイルス性赤血球凝集素(又は同等の感度の試験)
【0221】
これらの4つの基準は、直腸温(RT)、リンパ球数をモニターするための特定された間隔での血液学検査、及び糞便HAを介して検証される結果で毎日実施されるCPV SNAP試験を含む、12時間ごとのGHOを介して全てのイヌにおいて毎日モニターされる。
【0222】
臨床病理学(血液学及び臨床生化学) -7日目に、ベースラインの全血球数(CBC)と生化学的側面を評価して、イヌが健康であり、既存の病状がないことを確認する。0、3、5、6、7、8、9、10、及び13日目に、CBCのために血液が収集され、血リンパ球がモニターされる。サンプルは毎朝の一定の時間に収集され、記録される。血液学検査のために約0.5mLの血液が収集され、臨床生化学検査のために、任意のアクセス可能な静脈(例えば、頸静脈、橈側皮静脈、又は外側伏在静脈)を介して約1mLの血液が収集される。全てのサンプルを分析してCBCデータをリアルタイムで評価し、9CFR113.317に基づくアクティブなCPVと一致する4つの臨床徴候の一つであるリンパ球減少症が発生したかどうかを判断する。
【0223】
[有効性アウトカム]
【0224】
主要アウトカム 主要有効性変数は、9CFRセクション113.317、(c)、(3)、(i)の基準によって定義されているCPV感染の予防である:
・体温≧103.4°F
・CPV-2b曝露前の正常値の50%以上のリンパ球減少(曝露前のー7、0及び3日目の平均)
・糞便中の下痢、粘液及び/又は血
・糞便の1:5希釈で1:64以上のレベルのウイルス性赤血球凝集素(又は同等の感度の試験)
対照犬の80%が9CFR113.317に概略が記載されている4つの基準のうち3つを持ち、かつ少なくとも19匹のMab A v2処置犬が生き続け、4つの可能な臨床徴候の≦1を示す場合に、有効性が確立される。
【0225】
第二アウトカム CPV SNAP試験結果、血清HI力価、又はその他のパラメーターなどの二次的アウトカムが評価されうる。
【0226】
安全性アウトカム この中心的研究のイヌは、Mab A v2中心的フィールド安全性研究で処置された必要な数のイヌに適用される。安全性評価は、0日目(処置後)から3日目までの全ての局所及び全身性有害事象(AE)の照合によって行われる。具体的には、イヌは、(毎日のISOによって)紅斑、熱及び腫れなどの注射部位反応と、Mab A v2の投与後のアナフィラキシーを含む全身反応についてモニターされる。AEデータは統計的に解析されないが、最終的な報告のために要約され、表にされる。
【0227】
重篤なAE 重篤なAEとは、死亡に至り、生命を脅かし、持続的又は重大な障害/無能力、又は先天性異常又は先天性欠損症を引き起こすあらゆるAEである。治験責任医師は、重篤なAEの発生から24時間以内に臨床開発マネージャーに通知する。
【0228】
イベントのスケジュールを以下の表17に提供する。
【0229】
【0230】
次は、イヌパルボウイルス曝露接種手順である:
1.曝露材料が投与される約12時間前に食物を取り除く。水は引き続き利用できる。
2.曝露材料を超低温(-80℃)冷凍庫から取り出し、使用の約1時間前に室温で解凍する。
3.取り扱いエラーの場合に備えてバックアップ用量を確保するために、5つの余分なアリコートを解凍する。
4.使用するまで曝露材料を湿った氷上に保持する。
5.シリンジ一用量で一度に1mLのアリコート曝露材料を調製する。
6.鼻カニュラ付きのシリンジ(針なし)を使用して、各鼻孔に0.5mLを投与する。
7.拘束は手作業による;鎮静剤は必要ない。
8.飼育係が、投薬中に鼻を僅かに上げた状態でイヌの頭を持ち上げる。
9.イヌが飲み込んで快適になるまで、各鼻孔の間に数秒の時間を置く。
10.幾らかの曝露材料が鼻孔から排出される場合があることを予想のこと。
11.投薬が完了したら、イヌID、日付及び時刻を動物曝露記録に記録する。
12.投薬後直ぐに全てのイヌに食物を戻す。
13.未使用の曝露材料を-80℃の冷凍庫に戻し、「保持アリコート、日付」のラベルを付ける。
14.研究終了までアリコートを保持し、検査室の治験医師に戻す。
【0231】
次は、バルク糞便収集手順である:
1.最も異常と思われる個々の糞便パイル(又はパイル片)を選択する。
2.別個の木製舌圧子を使用して、各個々のイヌから最大数グラムの糞便を収集するー一日1匹のイヌにつき一回収集。下痢の多い糞便はシリンジを使用して収集する必要がある場合がある。
3.糞便を50mLのコニカルプラスチック製遠心チューブに入れる。チューブは半分以下が満たされている必要がある。
4.イヌIDと日付のラベルを付ける。
5.日付と処置グループごとにグループ化して、プラスチック製の冷凍バッグに保管する。
6.検査室の治験医師に出荷されるまで、-80℃で凍結する。
7.収集期間の終わりに、収集した全ての糞便をドライアイスで輸送し、一晩かけて検査室治験医師まで到達させる。
【0232】
実施例13
半減期の低下と抗体干渉の欠如
このインビボ研究は、インビボでのMab A v2の分解をモニターし、赤血球凝集抑制(HI)力価レベルがCPVのワクチン株を中和するのに十分なままである持続期間を評価する。次の目的が取り上げられる:
・ 皮下(SC)投与後のMab A v2の半減期低下を特徴付ける
・ Mab A v2がパルボウイルスに対する能動免疫を阻害しなくなる(抗体干渉の欠如、又はLOAI)投与後の時間枠を決定する
【0233】
Mab A v2の投与後のHI力価の血清学的モニタリングは、分解半減期を特徴付けうる。LOAIは、各グループ内のイヌの少なくとも80%におけるワクチン投与後のパルボウイルスに対する能動免疫応答によって決定される。能動応答は、HIによって決定されて1:80希釈以上の抗体力価の達成を伴うベースラインの4倍の力価の増加(セロコンバージョン)として定義される。このレベルの抗体応答は、免疫研究のチャレンジによって示されるように、イヌパルボウイルスに対する免疫を提供する(Pollock及びCarmichael, JAVMA 1982 Jan 1;180(1):37-42)。
【0234】
第二に、安全性データが、処置後とCPV免疫化の前に収集され、これは、獣医療サービス覚書(VSM)第800.204号を満たすUSDA-CVBによる300犬の最小要件を満たすために必要とされるイヌの総数に寄与するために使用されうる。
【0235】
この研究の満足のいく完了とCPV免疫化に対するLOAIがいつ起こるかの実証は、次のことを述べる二つのラベルの主張を支持しうる:
・ 「この製剤は、イヌパルボウイルス(CPV)疾患の予防のために13週齢以上の健康なイヌを受動免疫することが示されている。」
・ 「この製剤は、13週齢以上のイヌのイヌパルボウイルス(CPV)疾患の治療に有効であることが示されている。」
【0236】
以前の研究KB-030-PK-301を記述する、上記の実施例9において、Mab A v2は、母性由来の抗体に非常によく似たワクチン性CPVを中和した。現在の研究は、予防的治療としてのMab A v2の投与後のCPVワクチン接種のタイミングに関する情報を提供しうる。
【0237】
これは、健康なCPV血清陰性ビーグル犬で行われた無作為化された、非盲検化、オープンラベルGCP研究である。研究の長さは最大113日で、順化期間は7日である。順化中、イヌは給餌、飼育、取り扱いの手順に順化され;かつ、一般的な蠕虫及びコクシジウム感染症を排除するために駆虫薬と抗生物質薬を投与される。
【0238】
0日目に、5mg/kgのMab A v2が、グループ1及び2の肩甲骨間領域にSC投与される。グループ3及び4には、Mab A v2は投与されない。0日目から41日目まで、一般的健康観察(GHO)、身体検査(PE)、注射部位観察(ISO)が様々な時点で収集され、Mab A v2に対する局所的及び全身的反応についてイヌがモニターされる。
【0239】
42日目に、事前に割り当てた一つの一価CPVワクチンがグループ1及び3に投与され、事前に割り当てた別の一価CPVワクチンがグループ2及び4に投与される。HI力価のために血清を収集した後、42日目に事前に割り当てた一価CPVワクチン(ワクチン1又はワクチン2の何れか)が各イヌに投与される。前回のワクチン接種後にワクチンのセロコンバージョンが実証されていない場合は、最初のワクチン接種の3週間後の63日目にブースターワクチン接種(「2回目のCPVワクチン」)が施される。2回目のCPVワクチン後にワクチンのセロコンバージョンが実証されていない場合は、事前に割り当てられた一価CPVワクチンの3回目のブースター(「3回目のブースター」)が84日目に投与される。個々のイヌによる研究終了は、セロコンバージョンを実証するHI結果を受け取ったときに生じる。一部のイヌが91日目のHI力価の後にワクチン接種に対する免疫応答を開始しなかった場合、105日目に4回目で最後の一価CPVブースター(「4回目のブースター」)が投与される。Mab A v2の分解をモニターする様々な時点とCPVワクチン接種に対するLOAIが起こるときに血清赤血球凝集抑制(HI)力価が測定される。
【0240】
43日目から研究終了まで、GHO及びPEが、イヌの一般的健康状態をモニターするために様々な時点で収集される。
【0241】
研究において事前に割り当てられ、投与される二種の一価CPVワクチンは、次の通りである:
[ワクチン1]
登録名: Nobivac(登録商標)イヌ1-PV
ワクチン: イヌパルボウイルス(改変した生)
剤形: 無菌注射液
試験用量: 1mL(1用量)
投与経路: 皮下
製造元: Merck Animal Health
包装: 製造元の包装ごとに個別のバイアル
保管条件: 2~7℃
利用可能単位: 1バイアル
[ワクチン2]
登録名: Recombitek(登録商標)
ワクチン: イヌパルボウイルス(改変した生)
剤形: 無菌注射液
試験用量: 1mL(1用量)
投与経路: 皮下
製造元: Merial
包装: 製造元の包装ごとに個別のバイアル
保管条件: 2~7℃
利用可能単位: 1バイアル
【0242】
以下の表18の処置グループを参照のこと。
【0243】
【0244】
無作為化 イヌ(0日目で13週齢以下、任意の性別、体重1.5kg以上)を、スポンサーの研究プログラマーが提供する無作為化リストを使用して、0日目又はそれ以前にグループ1から4に対して2:2:1:1の比率で無作為化する。処置は6匹のイヌの各ブロック内で無作為に割り当てる。無作為化は、シード番号を用いた無作為化選択方法を使用して、SAS(SAS Institute, Cary NC, バージョン9.4以降)のPLAN手順によって生成された乱数に基づく。
【0245】
[観察]
【0246】
身体検査(PE) PEは、-7日目、0日目、研究終了日、及び必要に応じて予定外の日の全ての日に実施される。身体検査には、水分補給状態や体重(BW)を含む、全ての体組織の包括的な評価が含まれる。
【0247】
注射部位観察(ISO) -3日目に、注射部位は0日目の投薬の準備のために毛刈りされる。投薬の前に、毛刈りされた注射部位は、炎症又は毛刈り傷がないものとして評価され記録される。0日目に始めて、注射部位は、限定されないが、紅斑、熱、及び腫れ(例えば、瘤)を含む局所注射部位反応について、14日目まで一日1回評価される。反応のサイズが記録される。観察された注射部位の反応は、注射部位観察フォームに文書化され、有害事象(AE)として記録される。
【0248】
一般的健康観察(GHO) GHOは、研究医師又は被指名人によって、-7日目から研究終了まで一日1回行われる。一般的健康観察には、限定されないが、一般的な身体的外見、食物又は水の消費量の異常、及び/又は嘔吐又は下痢の発生の観察が含まれる。異常な兆候のないイヌを含む全てのイヌの状態が、各観察期間における各イヌの一般的健康観察フォームに文書化される。PEが行われる-7、0日目及び研究終了時には、PEがGHOに取って代わる。
【0249】
血清CPV-2赤血球凝集(HI)試験 -7、0、1、7、14、21、28、35、42、49、56、63、70、77、84、91、98、105、112日目に全血サンプルが、頸静脈、橈側皮静脈、又は外側伏在静脈を介して全てのイヌから収集され(約1.5mL)、血清分離管に入れられ、血清に処理される。HIでセロコンバージョンが実証されている場合、その後の予定されたサンプリングは中止され、個々のイヌは研究を終了する。サンプルは、できるだけ早い機会に分析検査室に送られるまで、凍結状態(60から-80℃)で保管される。
【0250】
臨床病理学 -7日目に、ベースラインの全血球数(CBC)と生化学的側面を評価して、イヌが健康であり、既存の病状がないことを確認する。血液学検査のために約0.5mLの血液が収集され、臨床生化学検査のために頸静脈、橈側皮静脈、又は外側伏在静脈から約1mLが収集される。
【0251】
有害事象(AE) AEは、好ましくなく、予期されず、意図されず、かつ、製剤に関連すると考えられるかどうかに関係なく、動物用製剤の使用後に発生する、イヌのあらゆる所見として定義される。実験的処置が開始されると(Mab A v2が投与される0日目)、異常なGHO、PE、又はISOはAEと見なされる。
【0252】
主要エンドポイント 各グループの主要エンドポイントは、0日目からグループ内のイヌの80%以上が血清HI力価を介して一価CPVワクチン接種に対してCPVセロコンバージョンを示したときまでの日数である。セロコンバージョンは、血清HI力価によって決定されて、1:80希釈以上の抗体力価の達成を伴うベースラインに対する力価の4倍の増加として定義される。ワクチンに対する免疫応答を示したグループ当たりのイヌの数と、これが起こった研究日は、統計的には分析されないが、最終報告のために要約され、表にされる。
【0253】
以下の表19のイベントのスケジュールを参照のこと。
【0254】
【0255】
実施例14
健康なイヌにおける多施設の中心的安全性研究
このインビボのフィールド安全性研究は、MabA v2の局所的及び全身的耐容性を評価する。個々のイヌは、注射部位の炎症(限定されないが、紅斑、熱及び/又は腫れを含む)及び全身反応(例えば、アナフィラキシー)について観察される。
【0256】
最低300匹のイヌに、皮下(SC)(n=150)又は静脈内(IV)(n=150)経路の何れかによって、Mab A v2が投与される。この研究中に収集された安全性データは、米国農務省獣医生物学センター(USDA-CVB)の中心的なフィールド安全性300匹犬の要件を満たすことを目的としている。
【0257】
この研究の満足のいく完了と安全性の実証は、次を述べる二つのラベルの主張を裏付けうる:
・ 「この製剤は、イヌパルボウイルス(CPV)疾患の予防のために、10週齢以上の健康なイヌの受動免疫に有効であることが示されている。」
・ 「この製剤は、10週齢以上のイヌにおけるイヌパルボウイルス(CPV)疾患の治療に有効であることが示されている。」
【0258】
これは、若い健康な目的をもって飼育されたイヌで行われた、無作為化、非盲検GCPフィールド安全性研究である。この研究は、各研究サイトで16日間の長さである。任意の性別の少なくとも100匹の最低年齢犬(≦10週齢)と、任意の性別の少なくとも200匹の最低年齢よりも高齢(>10週齢)のイヌが研究に登録される。
【0259】
除外基準 イヌ:
・ 現在、別の研究に登録されている。
・ 過去30日以内に別の研究に登録されていた。
・ -2日目の90日前までにキメラ生物製剤が投与された。
・ 研究手順に協力的ではない。
・ 研究期間中生存していることが合理的に期待されない。
・ ISOを混乱させうる既存の皮膚病状がある。
・ 重大な併存疾患を示唆する現在の病歴がある(例えば、多尿症、多飲症、多食症、嘔吐又は下痢、原因不明の体重減少など)。
【0260】
最小週齢のイヌは一つのサイト(Ridglan Farms (Mount Horeb, WI))に置かれ、残りのイヌは3つの地理的地域の試験施設に分けられる。ジェネティクスを可能な限り多様化するために、三つの別々の地理的地域にある最低三つの試験施設と独自の飼育コロニーが使用される。各サイトで、イヌは、表20に従って、グループ1、2、3、及び4に1:1:1:1で無作為化される。
【0261】
0日目に、全てのイヌに、SC又はIVの何れかでMab A v2が投与される。この研究では、Mab A v2の二つの異なる事前ライセンスシリアル(PLS)が投与される。各年齢グループと処置法グループ内で、イヌの約半分に無作為にPLS第1番が投与され、残りの半分に無作為にPLS第2番が投与される。
【0262】
用量体積は、0日目の体重(BW)に基づいてEDCシステムによってmLで計算される。用量は、EDCシステムによって次のように計算される:
{(kgでの体重)×(5mg/kg)}・{TBDmg/mL}=注射されるmLでの容量
【0263】
皮下用量は、肩甲骨間領域の皮下に投与される。静脈内投与は橈側皮静脈に投与される。
【0264】
表20に概略が記載された予定時間に、個々のイヌの健康が、身体検査(PE)、注射部位観察(ISO)、及び一般的健康観察(GHO)を介して綿密にモニターされる。
【0265】
安全性評価は、全ての有害事象(AE)の照合によるものである。具体的には、イヌは、紅斑、熱又は腫れなどの注射部位反応(毎日のISOを介して)について、またアナフィラキシーを含む全身反応について、Mab A v2の投与後にモニターされる。AEデータは統計的には分析されないが、要約されて表にされる。
【0266】
以下の表20の処置グループを参照のこと。
【0267】
【0268】
無作為化 適切な年齢のイヌを飼育している試験施設を見出すのは難しいため、約100匹の最低年齢のイヌが一カ所から調達される。約200匹の残りのイヌは、少なくとも三つの地理的地域の試験施設で分けられ、試験施設にできるだけ均等に分けられる。無作為化は、試験施設のサイトによって4匹のイヌを含むブロックに階層化される。各サイト内で、イヌはグループ1(PLS第1番、SC)、2(PLS第2番、SC)、3(PLS第1番、IV)、及びグループ4(PLS第2番、IV)に対して1:1:1:1の比で無作為化される。無作為化は、シード番号を用いた無作為化選択法を使用して、SASのPLAN手順(SAS Institute, Cary NC, バージョン9.4以降)によって生成された乱数に基づく。
【0269】
順化 この研究は、イヌが以前に食餌、収容、取り扱い手順などに順化していた試験施設で行われる。従って、イヌが登録基準を満たしていることを確認し、-2日目に注射部位を毛刈りするために、2日間のみの順化段階が実行される。
【0270】
身体検査(PE) PEは、-2日目、0日目(投与前)、7日目、及び14日目に現場の獣医師によって実施される。PEには、全身外観と態度、耳、眼、口腔、粘膜、呼吸器、心臓血管、胃腸、神経学的、筋骨格系、外皮系及び泌尿生殖器系の主観評価が含まれる。VeDDRAの低レベルの用語を利用して、特定のPEの異常が記述される。0日目以降に記録される異常(既存の状態と悪化する異常を除く)はAEと見なされる。
【0271】
注射部位観察(ISO) -2日目に、注射部位は、0日目の投薬の準備のために毛刈りされる。処置前に、毛刈りされた注射部位は、炎症又はクリッパー傷がないとして評価され記録される。0日目に始めて14日目まで、注射部位の位置が、限定されないが、紅斑、熱、腫れ(例えば、瘤)を含む局所注射部位反応について毎日一回評価される。反応のサイズが記録される。如何なる観察された注射部位反応もAEとして記録される。
【0272】
一般的健康観察(GHO) GHOは、順化で始め研究終了まで毎日一回行われるが、一つの例外がある。PEが実施される-2、0、7、及び14日目では、PEがGHOに置き換わる。一般的健康観察には、限定されないが、一般的な身体的外見、食物又は水の消費量の異常、及び/又は嘔吐又は下痢の発生の観察が含まれる。VeDDRAの低レベルの用語を利用して、特定の観察結果が記述される。異常な兆候のないイヌを含む全てのイヌの状態が文書化される。
【0273】
体重 0日目に、BW(キログラム(kg)で記録)がキャリブレーションされた体重計を使用して測定され、記録される。イヌに餌を与えたり絶食させて体重が計られうる。体重は文書化される。
【0274】
安全性解析集団 安全性解析集団は、Mab A v2を投与された全てのイヌで構成される。
【0275】
安全性アウトカム 安全性評価は、全てのAEの照合によって行われる。具体的には、イヌは、(毎日のISOによって)紅斑、熱又は腫れなどの注射部位反応と、Mab A v2の投与後のアナフィラキシーを含む全身反応についてモニターされる。AEデータは統計的に解析されないが、要約されて表にされる。
【0276】
有害事象(AE) AEは、好ましくなく、予期されず、意図されず、かつ、製剤に関連すると考えられるかどうかに関係なく、動物用製剤の使用後に発生する、イヌのあらゆる所見として定義される。全てのAEは、低レベルのVEDDRA用語を使用して文書化され記録される。
【0277】
重篤なAE 致命的又は生命を脅かすか、又は医師の介入を必要とするAE(例えば、イヌの健康状態が、イヌを安楽死させるべきか、医学的処置を受けさせるべきであると治験医師が判断するようなものである)。
【0278】
非重篤なAE 医師の介入又は研究からのイヌの除外を必要とするほど重症ではないAE。
【0279】
以下の表21のイベントのスケジュールを参照のこと。
【0280】
【0281】
実施例15
増強されたADCC活性のためのバリアントイヌIgG-B Fcポリペプチドの同定
イヌCD16及びイヌIgG-B Fcの構造モデルを、鋳型としてヒトIgG1 Fc/CD16複合体(1e4k1.pdb)の構造座標を使用して調製した。Sondermann P., “The 3.2-A Crystal Structure of the Human IgG1 Fc Fragment-Fc gammaRIII complex,” Nature 406(6793):267-73 (2000)を参照のこと。野生型イヌIgG-B Fc(配列番号:91)とイヌCD16(配列番号:90)の間で相互作用すると思われるアミノ酸残基を特定した。イヌIgG-B Fc配列番号:91のSer10及びIle103の両方が、イヌCD16配列番号:90のLys148に近接している。静電相互作用を得るために、イヌIgG-B Fc配列番号:90のSer10及び/又はIle103を酸性アミノ酸Asp又はGluで置換して、イヌCD16配列番号:90のK148に塩橋を導入することができる。Ser10AspとLys148の間;Ser10GluとLys148の間;Ile103AspとLys148の間;及びIle103GluとLys148の間の距離はそれぞれ4Å未満である(
図5)。増強されたADCC活性のための例示的なバリアントイヌIgG-B Fcポリペプチド配列には、配列番号:92、配列番号:93、配列番号:94、配列番号:95、配列番号:96、配列番号:97、配列番号:98、及び配列番号:99が含まれる。このようなバリアントイヌIgG-B Fcポリペプチドを、野生型イヌIgG-B Fcの代わりに使用して、パルボウイルス感染細胞の死滅を増強することができる。
【0282】
参考文献:
1. S. Nandi, Manoj Kumar. Canine Parvovirus: Current Perspective. Indian J. Virol. 2010; 21(1):31-44。
【0283】
2. Carla Miranda, Gertrude Thompson. Canine parvovirus: the worldwide occurrence of antigenic variants. Journal of General Virology. 2016; 97, 2043-2057。
【0284】
3. Melissa Kennedy, Adesola Odunayo. Canine Parvovirus. Clinician’s Brief. 2017。
【0285】
4. Brindhalakshmi B, Mukhopadhyay HK, Antony PX, Thanislass J, Vijayalakshmi P, Mangadevi N. Isolation and molecular characterization of canine and feline parvovirus strains - an updated review. Journal of Dairy, Veterinary & Animal Research. 2016; 3(5):164-169。
【0286】
5. Emilee Venn, Karolina Preisner, Pedro Boscan, David Twedt, Lauren A. Sullivan. Evaluation of an outpatient protocol in the treatment of canine parvoviral enteritis. Journal of Veterinary Emergency and Critical Care. 2017; 27(1):52-65。
【配列表】
【国際調査報告】