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特表2022-542292大粒子スズスパッタリングターゲット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(54)【発明の名称】大粒子スズスパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C23C14/34 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505582
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 US2020046070
(87)【国際公開番号】W WO2021030534
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/886,747
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/985,998
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ルッジェーロ、マーク ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ファーラッセ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】アルフォード、フランク シー.
(72)【発明者】
【氏名】ストロザーズ、スーザン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーウッド、パトリック ケイ.
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029BA15
4K029CA05
4K029DC03
4K029DC08
4K029DC12
(57)【要約】

本開示は、概して、平面スパッタリングターゲットに関する。特に、本開示は、平面スパッタリング面及び平面スパッタリング面の反対側の後面を含む、平面スパッタリングターゲットを提供する。平面スパッタリングターゲットは、少なくとも10mm~最大100mmの平均粒径を有する2Nの純度のスズから形成される。本開示は、少なくとも10mm~最大100mmの平均粒径を有するスズ平面スパッタリングターゲットを製造する方法を提供する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面スパッタリングターゲットであって、
平面スパッタリング面と、
前記平面スパッタリング面とは反対側の後面と、を備え、
前記平面スパッタリングターゲットが、少なくとも10mm~最大100mmの平均粒径を有する2Nの純度のスズから形成されている、平面スパッタリングターゲット。
【請求項2】
前記スズが、最大15ppmの不純物含有量を有する高純度のスズである、請求項1に記載の平面スパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記スズが、0.01cph/cm未満のアルファカウントを有する高純度のスズである、請求項1に記載の平面スパッタリングターゲット。
【請求項4】
請求項1に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法であって、
少なくとも2Nの純度の溶融スズを鋳造する工程と、
前記鋳造スズを熱機械加工して、熱機械加工されたスズを形成する工程と、
少なくとも175℃~最大225℃の温度で、少なくとも2時間~最大48時間の時間にわたって前記熱機械加工されたスズを熱処理して、少なくとも10mm~最大100mmの平均粒径を有する平面スパッタリングターゲットを形成する工程と、からなる、方法。
【請求項5】
溶融スズを鋳造する前記工程が、約235℃~約350℃のるつぼ温度を約1時間にわたって有し、続いて前記溶融スズを金型に注湯して、ニアネット鋳物を形成することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記金型が、約250℃~約375℃の温度に約30分の時間にわたって予熱される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融スズを前記金型に注湯する前記工程に続いて、1時間当たり250℃以下の速度でゆっくりと冷却する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記熱機械加工されたスズを熱処理する前記工程が、約200℃からの温度で、約4時間の時間にわたる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
溶融スズを鋳造する前記工程が、ビレットを形成し、続いて前記ビレットをスライスして、複数のブランクを形成する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記ビレットを熱機械加工する前記工程が、少なくとも50%のクロス圧延圧下によって、前記複数のブランクを個別に熱機械加工することを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年8月5日に出願された米国特許出願第16/985,998号に対する優先権、及び2019年8月14日に出願された米国特許仮出願第62/886,747号に対する優先権を主張するものであり、これらの両方は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
主題の分野は、10mm超の平均粒径を有するスズ(Sn)スパッタリングターゲットを含むスパッタリングシステムの設計及び使用である。
【背景技術】
【0003】
スパッタリングターゲットは、例えば、製造中に金属化層を形成するために、電子及び半導体構成要素の製造、ガラスコーティング、並びに太陽電池コーティングにおいて有用である。小さい粒径を有するスズスパッタリングターゲットを使用する薄膜堆積は、半導体、化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)、物理蒸着(physical vapor deposition、PVD)、ディスプレイ、及び光学用途において知られている。
【0004】
スパッタ堆積は、グロープラズマ放電が、続いて基板上に堆積する原子を放出するスパッタリングターゲットに衝撃を与えるPVD方法である。例示的なスパッタ堆積装置8の一部分の線図を図1に示す。ある構成では、スパッタリングターゲットアセンブリ10は、ターゲット14が接合されたバッキングプレート12を備える。半導体材料ウエハなどの基板18は、スパッタ堆積装置8内にあり、ターゲット14から離間して設けられる。示されるように、ターゲット14は、基板18の上方に配設され、スパッタリング面16が基板18と面するように位置決めされる。
【0005】
動作中、スパッタリングされた材料22は、ターゲット14の表面16から離れ、基板18上に薄膜20を形成する。いくつかの実施形態では、好適な基板18には、半導体製造で使用されるウエハが挙げられる。例えば、ターゲット14は、表面16からの原子が周囲大気中に放出され、続いて基板18上に堆積するまで、エネルギーによる衝撃を受ける。いくつかの実施形態では、プラズマスパッタリングを使用して、電子機器で使用するウエハ上に金属薄膜を堆積させる。
【0006】
スズスパッタリングターゲットの粒径は、典型的には、マイクロメートル範囲であり、すなわち、サブマイクロメートル~数百マイクロメートルである。ターゲット粒径は、堆積速度及び浸食速度に影響を及ぼし得る。例えば、10mmを上回る大きい粒径を有するスズ(Sn)ターゲットは、以前は知られていなかった。
【発明の概要】
【0007】
これら及び他の必要性は、本開示の様々な態様及び構成によって対処される。
【0008】
本開示の様々な態様は、平面スパッタリング面及び平面スパッタリング面の反対側の後面を含む平面スパッタリングターゲットを含み、平面スパッタリングターゲットは、少なくとも10mm~最大100mmの平均粒径を有する2Nの純度のスズから形成される。
【0009】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットは、平均粒径が、少なくとも20mm~最大50mmである。
【0010】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットは、平均粒径が均一に分布している。
【0011】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットは、スズが、最大15ppmの不純物含有量を有する高純度のスズである。
【0012】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットは、最大10ppmの不純物含有量を有する。
【0013】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットは、スズが、0.01cph/cm未満のアルファカウントを有する高純度のスズである。
【0014】
本開示の様々な態様は、上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法を含み、本方法は、(a)少なくとも2Nの純度の溶融スズを鋳造することと、(b)鋳造スズを熱機械加工して、熱機械加工されたスズを形成することと、(c)少なくとも175℃~最大225℃の温度で、少なくとも2時間~最大48時間の時間にわたって熱機械加工されたスズを熱処理して、少なくとも10mm~最大100mmの平均粒径を有する平面スパッタリングターゲットを形成することと、を含む。
【0015】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、溶融スズを鋳造する工程が、約235℃~約350℃のるつぼ温度を約1時間有し、続いて溶融スズを金型に注湯して、ニアネット鋳物を形成することを含む。
【0016】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、金型は、約250℃~約375℃の温度に約30分の時間にわたって予熱される。
【0017】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、溶融スズを金型に注湯する工程に続いて、1時間当たり250℃以下の速度でゆっくりと冷却する。
【0018】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、ニアネット鋳物は、約150mm~約600mmの直径及び約20mm~約69mmの厚さにサイズ決定される。
【0019】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、ニアネット鋳物を熱機械加工する工程は、約5%~約15%のクロス圧延圧下を含む。
【0020】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、熱機械加工する工程は、鍛造、押出、ECAE/ECAP、ねじり、RCS、及びそれらの変形などの圧延以外の方法によって実施される。
【0021】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、熱機械加工されたスズを熱処理する工程は、約200℃からの温度で、約24時間の時間にわたる。
【0022】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、熱機械加工されたスズを熱処理する工程は、約200℃からの温度で、約4時間の時間にわたる。
【0023】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、溶融スズを鋳造する工程は、ビレットを形成し、続いてビレットをスライスして複数のブランクを形成する。
【0024】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、ビレットは、約171mm(6.75インチ)の直径及び約457mm(18インチ)の高さにサイズ決定される。
【0025】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、ビレットを熱機械加工する工程は、少なくとも50%のクロス圧延圧下によって複数のブランクを、個別に熱機械加工することを含む。
【0026】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、ビレットを熱機械加工する工程は、少なくとも60%~最大80%のクロス圧延圧下によって複数のブランクを個別に熱機械加工することを含む。
【0027】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、ビレットを熱機械加工する工程は、鍛造、押出、ECAE/ECAP、ねじり、RCS、及びそれらの変形などの圧延以外の方法によって実施される。
【0028】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、熱処理する工程は、約200℃の温度で、約24時間の時間にわたる。
【0029】
上記本明細書に記載の平面スパッタリングターゲットを製造する方法において、熱機械加工されたスズを熱処理する工程は、約200℃からの温度で、約4時間の時間にわたる。
【0030】
複数の実施形態が開示されるが、当業者には、本発明の例示的実施形態を図示及び説明する以下の発明を実施するための形態から、本発明の更に他の実施形態が明らかになるであろう。したがって、図面及び発明を実施するための形態は、制限的なものではなく、本質的に例示とみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】物理蒸着装置の一部分の概略図である。
【0032】
図2】例示的なスパッタリングターゲットアセンブリの概略平面図である。
【0033】
図3図2の線3-3に沿った概略断面図である。
【0034】
図4】本開示による、約10mm~約100mmの平均粒径を有する平面スパッタリングターゲットを作製するための方法を示すフローチャートである。
【0035】
図5】不均一な粒径を有する鋳放しスズ試料の画像である。
【0036】
図6】本開示による、約20mmの均一平均粒径を有するニアネット鋳造スズターゲット試料の例示的な画像である。
【0037】
図7】本開示による、約20mm~約50mmの均一平均粒径を有するビレット鋳造スズターゲット試料の例示的な画像である。
【0038】
図8】本開示による、スズターゲットに関する10ppm未満の不純物含有量を示す例示的な描画である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示は、概して、薄膜技術において使用するためのスズ(Sn)スパッタリングターゲットに関する。特に、本開示は、スズを含み、少なくとも10mmかつ最大100mmの平均粒径を有する平面スパッタリングターゲットを提供する。本開示は、熱機械加工の組み合わせを提供することによって、スパッタリングターゲットの微細構造を調整する必要性に対処する。それゆえ、平面スズスパッタリングターゲットは、約10mm~約100mmの平均粒径を有して実現され得る。
【0040】
本開示の様々な態様は、図2に示されるように、スパッタリングターゲットアセンブリ30の上面において平面スパッタリングターゲット31を含む。図3は、図2の線3-3に沿って取得されたスパッタリングターゲットアセンブリ30の断面図である。スパッタリングターゲットアセンブリ30は、スパッタリングターゲット31と、バッキングプレート34と、を含む。いくつかの実施形態では、スパッタリングターゲット31及びバッキングプレート34は、平面図において円形又は実質的に円形の断面形状を有する。使用時、バッキングプレート34は、例えば、ボルト又はクランプによってスパッタ堆積装置に接続される。
【0041】
スパッタリングターゲット31は、前面又はスパッタリング面32と、スパッタリング面32とは反対側の後面29と、スパッタリングターゲット31の円周近くでスパッタリング面32と後面との間に延在する側壁35と、を有する。いくつかの実施形態では、スパッタリング面32は、略平坦又は平面であり得、本明細書では平面スパッタリング面32とも称される。例えば、スパッタリング面32は、水平な第1の平面に平行であり得る。他の実施形態では、スパッタリング面32は、1つ以上の凸状又は凹状の部分若しくは特徴を有し得る。後面29は、スパッタリング面32の反対側である。追加的に又は代替的に、スパッタリングターゲット31の後面は、実質的に平面であり得る。代替的に、後面は、突出部又は凹部を有し得る。例えば、後面は、埋め込まれたバッキングプレートとして知られている設計であるバッキングプレート34の一部分を受容し得るか、又はその中に受容され得る。スパッタリングターゲット31は、本開示によるスパッタリングターゲットとともに使用するのに好適なPVD堆積プロセス又は他のプロセスに好適な任意の金属から形成され得る。いくつかの実施形態では、スパッタリングターゲット31は、スズ(Sn)から形成される。
【0042】
バッキングプレート34は、前面37と、前面37とは反対側の後面39と、バッキングプレート34の外側円周近くで前面37から後面39まで延在する側壁41と、を有する。スパッタリングターゲット31の後面は、バッキングプレート34の前面37に隣接しており、かつそれに接合されている。バッキングプレート34の半径は、フランジ44と称されるバッキングプレート34の少なくとも一部分が、スパッタリングターゲット31の外径又は半径縁部から半径方向外方に延在するように、スパッタリングターゲット31の半径よりも大きい。バッキングプレート34及びスパッタリングターゲット31は、互いに接合された別個の部品であり得る。かかる実施形態では、バッキングプレート34は、スパッタリングターゲット31と同じ又は異なる材料で形成することができる。
【0043】
スパッタリングターゲット31から半径方向外方に延在するフランジ44は、実質的に平坦又は平面であり得、かつフランジ面46を含む。いくつかの実施形態では、前面37の露出部分は、水平な平面に対して平行又は実質的に平行であり得る。他の実施形態では、前面37の露出部分は、第1の平面に対してある角度で平面内にあり得る。フランジ44は、バッキングプレート34をスパッタ堆積ソース又は装置に接続又はボルト止めするための1つ以上のカウンタボア穴又は/及び貫通穴45を含み得る。
【0044】
バッキングプレート34は、任意の好適な金属から形成され得る。例えば、バッキングプレート34は、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、並びにこれらの合金及び組み合わせを含み得る。例えば、合金は、Al合金、V合金、Nb合金、Cu合金、Ti合金、Zr合金、及びMo合金を含む。好適な合金としては、限定されるものではないが、銅-クロム(CuCr)合金、銅-亜鉛(CuZn)合金、C18000合金などの銅-クロム-ニッケル-ケイ素(CuCrNiSi)合金、Al6061及びAl2024合金などの市販のアルミニウム合金が挙げられる。
【0045】
スパッタリングターゲット31を含むスパッタリングアセンブリ30は、図1に示されるような装置8などのスパッタ堆積装置において使用され得る一方で、限定されるものではないが、半導体、化学蒸着(CVD)、ディスプレイ、及び光学用途を含む、物理蒸着(PVD)に加えて、他の用途において、スパッタリングターゲット31が有用であると考えられる。
【0046】
本明細書で考察されるように、スパッタリングターゲット31は、平面であり、かつ平面スパッタリングターゲット面32と、スパッタリング面32の反対側の後面29と、それらの間のバルク部分と、を含む。平面スパッタリングターゲット31は、少なくとも10mm~最大100mmの平均粒径を有する、少なくとも2Nの純度のスズから形成される。スパッタリングターゲット面32と後面29との間のターゲット31のバルク部分はまた、表面32及び29を含み得る。平面スパッタリングターゲット31は、少なくとも10mm~最大100mmの平均粒径を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、平面スパッタリングターゲット31は、少なくとも10mm~最大100mmの平均粒径を有するようにバルク部分において特徴付けられる。いくつかの実施形態では、平面スパッタリングターゲット31は、少なくとも20mm~最大50mmの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、平均粒径は、均一に分布している。
【0047】
スズターゲットの純度は、使用に好適な任意のレベルであり得る。いくつかの実施形態では、スズの純度は、2N(99%)、又は3N(99.9%)、又は4N(99.99%)、又は5N(99.999%)である。いくつかの実施形態では、平面スパッタリングターゲット31のスズは、最大50ppmの不純物含有量を有する高純度のスズである。いくつかの実施形態では、不純物含有量は、最大15ppmである。いくつかの実施形態では、不純物含有量は、最大10ppm(5N)である。
【0048】
スズは、低アルファ又は非低アルファであり得る。いくつかの実施形態では、スズは、0.01cph/cm未満のアルファカウントを有する低アルファである。いくつかの実施形態では、スズは、0.002cph/cm未満のアルファカウントを有する超低アルファである。いくつかの実施形態では、スズは、0.001cph/cm未満のアルファカウントを有する超々低アルファである。
【0049】
本開示による少なくとも10mm~最大100mmの平均粒径を有する平面スパッタリングターゲット31は、以下の製造方法を使用して形成され得る。いくつかの実施形態では、平面スパッタリングターゲット31の平均粒径は、少なくとも20mm~最大50mmである。
【0050】
第1の態様では、本開示による平面スパッタリングターゲットを作製するための方法100は、図4に示されるように、工程110、工程120、及び工程130を含む。工程110において、ターゲットブランクは、溶融スズを(232℃の融点を上回る温度で)鋳造し、金型に注湯することによって形成される。溶融スズを鋳造することを含む工程110は、約235℃~約350℃のるつぼ温度を約1時間の時間にわたって有し、続いて約250℃~約375℃の温度に約30分の時間にわたって予熱された金型に注湯して、ニアネット鋳物を形成することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、るつぼ温度は、約300℃である。いくつかの実施形態では、金型は、約320℃に予熱される。いくつかの実施形態では、溶融スズを金型に注湯することを含む工程110に続いて、1時間当たり250℃以下の速度でゆっくりと冷却する。いくつかの実施形態では、工程110は、任意選択的に、冷却テーブル上に水流を含み得る。いくつかの実施形態では、鋳造スズは、ニアネット鋳物であり、約150mm~約600mmの直径及び約20mm~約69mmの厚さにサイズ決定され得る。一例では、金型は、直径270mm×高さ20mmである。他の実施形態では、ニアネット鋳物及び金型は、ともに約250℃~約400℃の温度に再加熱され、続いて収縮空洞を低減し、ニアネット鋳物に対してより均一な微細構造を提供するために、1時間当たり250℃以下の速度で徐々に冷却する。
【0051】
他の実施形態では、工程110のように溶融スズを鋳造する工程は、ビレットを形成することを含み得、続いて、ビレットをスライスして複数のブランク又はスライスを形成する。これら又は他の実施形態では、ビレットは、約171mm(6.75インチ)の直径及び約457mm(18インチ)の高さにサイズ決定される。注湯される際、ビレットは、図5に示されるように不均一な粒径を示す。鋳放しビレットは、約1mm~約250mmの不均一な粒径を有し得る。スズ粒子の均一な粒径分布を提供するために、熱機械加工が必要である。
【0052】
工程120のように、図4を再び参照すると、圧延による圧下によって達成され得るように、鋳造スズは、熱機械加工されて熱機械加工されたスズを形成する。圧下のパーセンテージは、鋳造手順により変化し得る。ニアネット鋳物のための熱機械加工を含む工程120は、約5%~約15%の小さいクロス圧延圧下を含み得る。鋳造ビレットからのスライス又はブランクの場合、少なくとも約50%の圧延圧下が、より好適である。これら又は他の実施形態では、ビレットを熱機械加工する工程120は、複数のブランクを、少なくとも50%のクロス圧延圧下によって個別に熱機械加工することを含む。いくつかの実施形態では、複数のブランクは、少なくとも60%かつ最大80%のクロス圧延圧下によって個別に熱機械加工され得る。本開示の実施形態は、クロス圧延圧下による熱機械加工に限定されない。スズ材料における(厚さの減少%又は等価の真歪によって画定される)上記の変形の範囲を付与することができる任意の他の熱機械加工技術が、使用され得る。クロス圧延圧下に加えて、本開示に好適な熱機械加工技術の例は、鍛造、図面、押出、ECAE/ECAP、周期的押出、反復波形及び矯正(repetitive corrugation and straightening、RCS)、ねじり、及び非対称圧延などのクロス圧延の変形を含むそれらの変形を含む。
【0053】
工程130と同様に、図4を再び参照すると、熱機械加工されたスズは、少なくとも175℃~最大225℃の温度で少なくとも2時間~最大48時間の時間にわたって熱処理される。いくつかの実施形態では、熱機械加工されたスズは、約200℃の温度で約24時間の時間にわたって、又は約200℃の温度で約12時間の時間にわたって、又は約200℃の温度で約4時間の時間にわたって、熱処理される。いくつかの実施形態では、熱機械加工されたスズは、少なくとも175℃~最大225℃の第1の温度で、少なくとも2時間~最大48時間の第1の時間にわたって熱処理され、その後少なくとも175℃~最大225℃の第2の温度で、少なくとも2時間~最大48時間の第2の時間にわたって熱処理され得る。約150℃~最大175℃の温度範囲は、粒径の二峰性分布が小さすぎる及びその他が大きすぎる粒子を提供する、いくつかの粒子の爆発成長が起こる温度範囲を回避するために戦略的に回避される。
【実施例
【0054】
実施例1:小規模試料。スズのビレットを、300℃のるつぼ温度を使用して鋳造し、約5cm×5cm×1cmにサイズ決定された試料にスライスした。次いで、試料を、圧延ミル[FENN、10インチの直径のロール、12インチ幅]を使用して、25%、50%、及び75%の圧下でのクロス圧延によって熱機械加工し、かつ平均粒径を、光学顕微鏡[平均粒径判定のためのClemex Vision PE 4.0画像分析用分析ツールを装備したNikon Epiphot]を使用することによって、及びASTM法E112に記載されているようなASTM粒径サイジングテンプレートを使用することによって、視覚的に判定した。断面試料を、120グリットを使用して機械的に研磨し、次いで、電気研磨及び電気エッチングして、粒界の視認性を高めた。
【0055】
機械的研磨により、動的再結晶化が誘発され、高純度のSnの低い熱安定性に起因して、表面において小さい粒子の薄層が生成されたことを見出し、したがって、電気研磨を使用して、機械研磨によって作成された表面層を除去した。機械研磨(120グリット)に続く電気研磨の技術の組み合わせは、表面の下のバルク微細構造の粒径を明らかにした。
【0056】
25%、50%、及び75%でのクロス圧延によって熱機械的に圧下された試料(それぞれ、試料1-H、2-H、及び3-H)を、50℃~225℃の範囲の温度で熱処理して、平均粒径に対する熱処理の効果を判定した。平均粒径に対する熱処理の効果は、表1に示される。
【0057】
【表1】
異常
【0058】
175℃における試料1-H及び150℃における試料2-Hは、粒子のうちの少なくともいくつかが平均よりも不均一に大きいことを意味する、異常な粒成長を示した。これは、概して、約150℃~約175℃で開始する温度で熱処理された試料について観察された。175℃を上回る、特に200℃を上回る温度において、好ましい配向を有する全ての粒子が同様のサイズ(概して1mmを上回る)に大きく成長する時間を有するため、粒径はより大きいが、より均一であった。25%及び75%の圧下でクロス圧延され、225℃で2時間熱処理された試料に関して、粒径は、直径が1mm~20mmの範囲の20,000μm(20mm)未満であることが観察された。75%圧下でクロス圧延され、225℃で4時間及び20時間熱処理された試料は、それぞれ、約4,500μm及び4,500μm~5,000μmの平均粒径を示した。驚くべきことに、225℃における長期の熱処理(最大20時間)は、20,000μm(20mm)を上回る平均粒径までの粒成長を生成しなかったことが観察された。理論に束縛されるものではないが、潜在的な理由は、比較的小さい試料寸法(5cm×5cm×1cm)が、大きい粒成長を妨げ得ることであると考えられる。次の実施例は、より大きいスケールの試料を含む。
【0059】
実施例2及び実施例3に示されるように、10mm~50mmのターゲット平均粒径を呈する試料は、ニアネット鋳物又は鋳造ビレットのいずれかによって実現され、鋳造ビレットは、次いで、直径200mmのブランクにスライスされる。両方の鋳造例では、熱機械加工は、熱処理前にサイズにおいて均一な粒子を作成することが必要であった。
【0060】
実施例2:ニアネット鋳物。ターゲットブランクは、溶融スズを(232℃の融点を上回る温度で)鋳造し、金型に注湯することによって形成された。約300℃のるつぼ温度を、約1時間適用し、続いて、溶融スズを約320℃に30分の間予熱した金型に注湯して、ニアネット鋳物を形成した。部品を、室温まで冷却することを可能にし、次いで、300℃で2.5時間の間、オーブン内で加熱し、続いて徐々に段階冷却し、最初に250℃で1時間、続いて1時間当たり約50℃の速度でゆっくりと冷却した。これにより、収縮空洞がなく、約110mmのかなり均一な平均粒径を有するニアネット形状鋳物をもたらした。次いで、ニアネット鋳物を、5%総厚の圧下でクロス圧延し、150℃で4時間熱処理し、続いて200℃で4時間第2の熱処理を行った。表2及び図6に示されるように、平均粒径は、約20.3mmであった。
【0061】
【表2】
【0062】
実施例3:ビレット鋳造。トールビレットを、約171mm(6.75インチ)の直径及び約457mm(18インチ)の高さで鋳造した。るつぼ温度は、300℃であり、金型を、320℃で予熱した。いくつかのスライスを、ビレットの厚さに沿って切断し、スライスは、各々約171mm(6.75インチ)の直径及び約25.4mm(1インチ)の厚さを有する。図5に示されるように、鋳放し粒径は、不均一である。ビレットの頂部からの1つのスライス(「頂部スライス」と称される)及びビレットの中心部からの1つのスライス(「バルクスライス」と称される)を、約67%の総圧下でクロス圧延した。熱処理は、150℃で4時間、続いて200℃で4時間実施された。図7に示され、かつ表3の平均粒径データに対応するように、約20mm~約50mmの平均粒径が呈される。
【0063】
【表3】
【0064】
表3による試料に提供される材料の純度は、図8のようにプロット200に示されるように、不純物含有量が10ppmを下回る状態で高かった。熱処理後、ブランクターゲットを、バッキングプレートに接合し、ターゲットを、使用前に洗浄した。
【0065】
本発明の範囲から逸脱することなく、考察された例示的な実施形態に対して様々な修正及び付加を行うことができる。例えば、上に記載される実施形態は、特定の特徴に言及するものであるが、この発明の範囲はまた、特徴の異なる組み合わせを有する実施形態及び上に記載される特徴の全てを含むわけではない実施形態を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】