(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(54)【発明の名称】抗体に結合して中和抗体を阻害するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20220922BHJP
C07K 14/30 20060101ALI20220922BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220922BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20220922BHJP
C12N 15/70 20060101ALI20220922BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220922BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220922BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20220922BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220922BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220922BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220922BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220922BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220922BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220922BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20220922BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20220922BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20220922BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220922BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220922BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220922BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220922BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220922BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220922BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20220922BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220922BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220922BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220922BHJP
C07K 17/00 20060101ALN20220922BHJP
C12R 1/35 20060101ALN20220922BHJP
【FI】
C12N15/31
C07K14/30 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/85 Z
C12N15/70 Z
C07K16/00
C12P21/08
C07K1/22
C12M1/34 F
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/16
A61P43/00 121
A61K35/76
A61K35/763
A61K35/761
A61K38/43
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K48/00
A61P37/02
A61P35/02
A61P7/00
A61P43/00 111
A61P9/14
G01N33/543 501J
C12N15/09 100
C12N15/113 Z
C07K17/00
C12R1:35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505585
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 US2020044559
(87)【国際公開番号】W WO2021022187
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514299550
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】リー チョンウェン
(72)【発明者】
【氏名】アスクー チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】クールマン ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】シーカー デーヴィッド フォレスト
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB17
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB06
4B029GB10
4B064AG01
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4B064DA01
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4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗体に結合するための方法および組成物に関する。当該方法は、抗体を単離するため、過剰抗体と関連する障害を処置するため、自己免疫性または炎症性応答を止めるために抗体を急性的にブロックするため、および中和抗体を阻害するために用いられ得る。実施態様において、本発明は、異種薬剤が対象へ投与されたときの異種薬剤に対する中和抗体を阻害する方法に関し、有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を対象へ投与するステップを含み、それにより、異種薬剤の中和を阻害する。本発明はさらに、野生型プロテインMと比較して熱安定性が増加した改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント、および本発明の方法におけるそれらの使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントであって、
野生型マイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントと比較して、マイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントの熱安定性を増加または維持する1つまたは複数のアミノ酸突然変異を有する、
改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項2】
請求項1に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントであって、
野生型マイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントと比較して、マイコプラズマ・プロテインMまたは機能性フラグメントの熱安定性を増加させる1つまたは複数のアミノ酸突然変異を有する、
改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項3】
請求項1または2に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントであって、
Mycoplasma genitaliumまたはMycoplasma pneumoniaeのプロテインMに由来する、
改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントであって、
M.genitaliumプロテインMの残基約74~残基約479(配列番号3)またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基のフラグメントである、
改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項5】
前記1つまたは複数の突然変異が、プロテインMの抗体結合部位の5Å以内の残基(残基95、99、102、103、105、106、107、109、110、114、116、117、118、119、120、144、158、160、161、162、163、177、178、179、180、181、186、187、188、191、321、338、340、341、345、381、384、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、426、427、429、436、438、439、440、441、442、444、445、446、447、448、449、452、453、455、456、457、462、466)にはない、またはM.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基469~479のいずれかにはない、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にはない、
請求項1から4のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項6】
前記1つまたは複数の突然変異が、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基78、81、83、84、85、89、90、91、92、93、94、96、97、100、101、108、111、112、113、122、123、125、126、127、128、130、131、133、134、136、137、139、141、142、146、147、148、149、150、153、154、155、156、164、167、170、175、176、184、185、189、192、193、196、198、201、202、204、205、206、207、209、211、215、218、220、224、225、226、227、231、232、234、235、236、237、239、241、243、244、245、246、247、249、250、252、253、254、255、256、257、258、259、264、269、270、272、274、275、276、279、282、284、286、287、288、291、297、299、300、302、303、304、305、307、308、309、310、311、313、317、318、319、320、322、326、327、329、331、332、333、335、337、342、343、347、348、351、354、355、357、358、359、360、361、362、363、367、369、370、371、372、373、374、375、378、385、399、400、401、402、405、406、407、408、409、411、413、414、417、418、419、424、428、434、435、443、450、459、460、463、464、465、468、もしくはそれらの任意の組み合わせ、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある、
請求項1から5のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項7】
前記1つまたは複数の突然変異が、表4に挙げられた突然変異またはそれらの任意の組み合わせである、請求項6に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項8】
前記1つまたは複数の突然変異が、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基83、90、92、94、137、142、147、150、156、184、196、198、205、211、215、225、231、232、234、235、236、237、239、243、245、250、255、256、259、264、272、274、275、276、279、282、297、300、302、310、320、326、331、332、335、342、343、347、348、355、357、361、371、374、378、385、401、402、409、413、424、460、463、464、468、もしくはそれらの任意の組み合わせ、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項9】
前記1つまたは複数の突然変異が、表5に挙げられた突然変異またはそれらの任意の組み合わせである、請求項8に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項10】
前記1つまたは複数の突然変異が、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基150、196、198、201、205、224、232、237、274、282、342、355、373、400、402、407、409、413、135、もしくはそれらの任意の組み合わせ、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項11】
前記1つまたは複数の突然変異が、
M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の、
a)237;
b)232;
c)282;
d)150、196、198、400、402、407、409;
e)413、435;
f)373、400;
g)402、407、409、413;
h)342;
i)150、196、198、232、237、282、342、373、400、402、407、409、413、435;
j)274;
k)150、196、198、232、237、342、400、402、407、409;
l)373、413、435;
m)205;
n)355;
o)150、196、198、342、373、400、402、407、409;
p)150、196、198、232、237、342、373、400、402、407、409;
q)201、224;
r)150、196、198、201、224、232、237、342、400、402、407、409;
s)150、196、198、232、237、342、390、400、402、407、409、444;
t)150、196、198、201、205、224、232、237、274、342、355、400、402、407、409;または
u)150、196、198、232、237、342、391、400、402、407、409
から選択される残基、
またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある、
請求項10に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント
【請求項12】
前記1つまたは複数の突然変異が、
M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の、
a)F237T;
b)S232Q;
c)Q282D;
d)S150E、S196R、S198P、V400I、N402I、K407P、S409V;
e)L413I、T435I;
f)V373I、V400I;
g)N402L、K407P、S409V、L413I;
h)A342V;
i)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、Q282D、A342V、V373I、V400I、N402I、K407P、S409V、L413I、T435I;
j)N274D;
k)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、A342V、V400I、N402I、K407P、S409V;
l)V373I、L413I、T435I;
m)A205P;
n)T355D;
o)T355P;
p)S150E、S196R、S198P、A342V、V373I、V400I、N402I、K407P、S409V;
q)150、196、198、232、237、342、373、400、402、407、409;
r)S201C、A224C;
s)S150E、S196R、S198P、S201C、A224C、S232Q、F237T、A342V、V400I、N402I、K407P、S409V;
t)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、A342V、F390E、V400I、N402I、K407P、S409V Y444K;
u)S150E、S196R、S198P、S201C、A205P、A224C、S232Q、F237T、N274D、A342V、T355P、V400I、N402I、K407P、S409V;または
v)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、A342V、A391P、V400I、N402I、K407P、S409V
またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基
から選択される、請求項11に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項13】
前記1つまたは複数の突然変異が、M.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の残基155、203、243、248、および358にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項14】
前記1つまたは複数の突然変異が、M.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)のA155E、K203R、H243T、V248Q、およびA358Vである、請求項13に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項15】
前記1つまたは複数の突然変異が、
M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の、
a)468;
b)150;
c)147;
d)272;
e)355;
f)276、277、279;
g)300;
h)378;
i)156;
j)232;
k)245;
l)276;
m)225;または
n)310
から選択される残基、
またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項16】
前記1つまたは複数の突然変異が、
M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の、
a)R468Q;
b)S150E;
c)H147F;
d)S272G;
e)T355G;
f)S276E、Q277L、N279R;
g)N300Q;
h)N378Y;
i)S156K;
j)S232L;
k)A245Q;
l)S276D;
m)K225P;または
n)V310E
またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基
から選択される、請求項15に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項17】
前記改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントが、さらに改変されて1つまたは複数のグリコシル化部位が除去されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項18】
前記改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントが、さらに改変されて1つまたは複数のグリコシル化部位が付加されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項19】
前記改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントの、抗体に対する親和性を高める1つまたは複数の突然変異をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項20】
前記1つまたは複数の突然変異が、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基95、102、103、106、107、114、116、160、161、162、163、181、186、321、381、384、389、390、391、396、397、426、429、436、438、439、441、442、447、448、449、452、453、455、456、462、もしくは466、またはそれらの任意の組み合わせ、または、M.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある、請求項19に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項21】
前記1つまたは複数の突然変異が、表6に挙げられた突然変異またはそれらの任意の組み合わせである、請求項20に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項22】
前記1つまたは複数の突然変異が、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基95、103、116、186、321、389、429、442、もしくは466、またはそれらの任意の組み合わせ、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある、請求項19に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項23】
前記1つまたは複数の突然変異が、表7に挙げられた突然変異またはそれらの任意の組み合わせである、請求項22に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項24】
前記改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントの、抗体に対する親和性を減少させる1つまたは複数の突然変異をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項25】
前記1つまたは複数の突然変異が、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基390および/または444、または、M.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある、請求項19に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項26】
前記1つまたは複数の突然変異が390Eおよび/またはY444Kである、請求項25に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項27】
N末端に分泌ペプチドをさらに含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項29】
プロモーターに動作可能に連結された、請求項28に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
前記プロモーターが細菌プロモーターである、請求項29に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
前記プロモーターが哺乳類プロモーターである、請求項29に記載のポリヌクレオチド。
【請求項32】
前記ポリヌクレオチドが、E.coliなどの細菌における発現のためにコドン最適化されている、請求項28から31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項33】
前記ポリヌクレオチドが、ヒト細胞などの哺乳類細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項28から31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項34】
前記ポリヌクレオチドが、E.coliなどの細菌およびヒト細胞などの哺乳類細胞の両方における発現のためにコドン最適化されている、請求項28から31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項35】
請求項28から34のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項36】
前記ベクターが細菌ベクターである、請求項35に記載のベクター。
【請求項37】
前記ベクターが哺乳類ベクターである、請求項35に記載のベクター。
【請求項38】
請求項28から34のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドおよび/または請求項35から37のいずれか一項に記載のベクターを含む、形質転換された細胞。
【請求項39】
E.coliなどの細菌細胞である、請求項38に記載の形質転換された細胞。
【請求項40】
ヒト細胞などの哺乳類細胞である、請求項38に記載の形質転換された細胞。
【請求項41】
請求項38から40のいずれか一項に記載の形質転換された細胞であって、前記ポリヌクレオチドが前記細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、形質転換された細胞。
【請求項42】
異種薬剤を対象へ投与した際の中和抗体による前記異種薬剤の中和を阻害する方法であって、
前記対象へ有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を投与するステップを含み、それにより前記異種薬剤の中和を阻害する、
方法。
【請求項43】
前記異種薬剤が核酸送達ベクターである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記核酸送達ベクターがウイルスベクターである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、またはアデノウイルスベクターである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記核酸送達ベクターが非ウイルスベクターである、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記非ウイルスベクターが、プラスミド、リポソーム、荷電脂質、核酸-タンパク質複合体、または生体高分子である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記異種薬剤が遺伝子編集複合体である、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記遺伝子編集複合体がCRISPR複合体である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記異種薬剤がタンパク質または核酸である、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
前記タンパク質が酵素である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記核酸がアンチセンス核酸または阻害性RNAである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
請求項42から52のいずれか一項に記載の方法であって、
プロテインMの前記有効量は、中和を少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98、99%、99.5%、または99.9%阻害するのに十分な量である、
方法。
【請求項54】
請求項42から53のいずれか一項に記載の方法であって、
プロテインMの前記有効量は、前記対象における総免疫グロブリンに対するプロテインMの比が、モル基準で約0.5:1~約8:1、例えば約2:1となるのに十分な量である、
方法。
【請求項55】
前記プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が、前記異種薬剤の投与前に前記対象へ投与される、請求項42から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が、前記異種薬剤の投与と同時に前記対象へ投与される、請求項42から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記異種薬剤が、前記対象への投与前に、前記プロテインMまたはそのフラグメントまたは誘導体と組み合わされる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が、Mycoplasma genitalium、Mycoplasma pneumoniae、またはMycoplasma penetrans由来である、請求項42から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が、プロテインMフラグメントである、請求項42から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記プロテインMの機能性フラグメントが、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)のアミノ酸残基17~537、37~556、37~482、37~468、37~442、74~468、74~479、74~482、74~468、74~442、または74~556、または、別のプロテインM由来の相当する残基を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が、請求項1から24のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントである、請求項42から60のいずれか一項に記載の方法
【請求項62】
前記プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が、前記対象へ1回よりも多く投与される、請求項42から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記異種薬剤が前記対象へ投与される都度(each time)、前記プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が前記対象へ投与される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
同一のプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体がその都度(each time)投与される、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
異なるプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体がその都度投与される、請求項62または63に記載の方法。
【請求項66】
前記対象における抗体濃度を減少させるための追加の処置を前記対象へ施すステップをさらに含む、請求項42から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記追加の処置が、血漿交換法、IdeSもしくはIdeZのような抗体消化酵素の投与、脾摘出術、化学療法、免疫療法、または放射線療法である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記追加の処置が、前記プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体の投与前、投与中、および/または投与後に施される、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
対象においてポリペプチドまたは機能性核酸を発現する方法であって、
前記対象に、(a)前記ポリペプチドまたは機能性核酸をコードする核酸送達ベクター、および(b)有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を投与するステップを含み、
それにより、前記対象において前記ポリペプチドまたは機能性核酸を発現する。
方法。
【請求項70】
それを必要とする対象における障害を処置する方法であって、
前記障害が、前記対象においてポリペプチドまたは機能性核酸を発現することによって処置可能であり、
前記対象に、(a)前記ポリペプチドまたは機能性核酸をコードする、治療的に有効量の核酸送達ベクター、および(b)有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を投与するステップを含み、
それにより前記対象における前記障害を処置する、
方法。
【請求項71】
対象における遺伝子を編集する方法であって、
前記対象に、(a)有効量の遺伝子編集複合体、および(b)有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を投与するステップを含み、
それにより、前記対象においてポリペプチドまたは機能性核酸を発現する、
方法。
【請求項72】
それを必要とする対象における自己免疫疾患を処置する方法であって、
治療的に有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を前記対象へ投与するステップを含み、
それにより前記自己免疫疾患を処置する、
方法。
【請求項73】
それを必要とする対象における過剰抗体と関連する障害を処置する方法であって、治療的に有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を前記対象へ投与するステップを含み、それにより過剰抗体と関連する前記障害を処置する、
方法。
【請求項74】
過剰抗体と関連する前記障害が、多発性骨髄腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、またはワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
それを必要とする対象において抗体を急性的に阻害する方法であって、
治療的に有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を前記対象へ投与するステップを含み、
それにより抗体を急性的に阻害する、
方法。
【請求項76】
前記対象が、サイトカイン放出症候群または急性自己免疫性発作、例えば、突然発症する重度の自己免疫性血管炎を有する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が、請求項1から27のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントである、請求項69から76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記マイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入、口腔(例えば舌下)、膣、髄腔内、眼球内、硝子体内、蝸牛内、経皮、内皮内、子宮内(または胚内)、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、筋肉内[骨格筋、横隔膜および/または心筋への投与を含む]、胸膜内、脳内、および関節内)、局所(例えば、皮膚および粘膜表面(気道表面を含む)の両方、および経皮投与)、リンパ内など、ならびに直接的な組織または臓器注入(例えば、肝臓、眼、骨格筋、心筋、横隔膜筋または脳)から選択される経路によって、前記対象へ投与される、請求項42から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記マイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が、骨格筋、平滑筋、心臓、横隔膜、気道上皮、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、皮膚、肺、眼、または耳へ投与される、請求項42から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記マイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が、病変組織または臓器へ投与される、請求項42から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記対象がヒトである、請求項42から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
試料から、抗体軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む化合物を単離する方法であって、
前記化合物を、固体支持体に付着された請求項1から27のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントと接触させて、それから、前記化合物を前記改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントから溶出させるステップを含む、
方法。
【請求項83】
抗体軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む前記化合物が、抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記固体支持体がビーズまたは粒子である、請求項82または83に記載の方法。
【請求項85】
前記固体支持体が、アガロース、ポリアクリルアミド、デキストラン、セルロース、多糖類、ニトロセルロース、シリカ、アルミナ、酸化アルミニウム、チタニア、酸化チタン、ジルコニア、スチレン、ポリビニルジフルオリドナイロン、スチレンおよびジビニルベンゼンの共重合体、ポリメタクリレートエステル、誘導体化アズラクトンポリマーもしくは共重合体、ガラス、またはセルロースを含む、請求項82から84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記化合物がpHの変化によって溶出する、請求項82から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
固体支持体に付着された、請求項1から27のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント。
【請求項88】
免疫測定法を行なう方法であって、
請求項1から27のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントを用いて、抗体軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む化合物を結合するステップを含む、
方法。
【請求項89】
前記免疫測定法が、放射免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)アッセイ、酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチアッセイ、ゲル拡散沈殿反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、免疫蛍光アッセイ、蛍光活性化セルソーティング(FACS)アッセイ、免疫組織化学アッセイ、プロテインA免疫測定法、プロテインG免疫測定法、プロテインL免疫測定法、ビオチン/アビジンアッセイ、ビオチン/ストレプトアビジンアッセイ、免疫電気泳動アッセイ、沈殿/フロキュレーション反応、免疫ブロット(ウエスタンブロット;ドット/スロット・ブロット);免疫拡散アッセイ;リポソーム免疫測定法、化学発光アッセイ、ライブラリースクリーニング、発現アレイ、免疫沈降、競合結合アッセイ、および免疫組織化学染色から選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
請求項1から27または87のいずれか一項に記載の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の陳述]
本出願は、2019年8月1日に出願された米国仮出願番号62/881,765の利益を主張し、その内容全体は参照により本明細書中に援用される。
【0002】
[本発明の分野]
本発明は、抗体に結合するための方法および組成物に関する。当該方法は、抗体を単離するため、過剰抗体と関連する障害を処置するため、自己免疫性または炎症性応答を止めるために抗体を急性的にブロックするため、および中和抗体を阻害するために用いられ得る。実施態様において、本発明は、異種薬剤が対象へ投与されたときに異種薬剤に対する中和抗体を阻害する方法に関し、有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を対象へ投与するステップを含み、それにより、異種薬剤の中和を阻害する。本発明はさらに、野生型プロテインMと比較して熱安定性が増大した改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント、および本発明の方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
米国内の約10人に1人が稀な遺伝子疾患を患っており、寿命、生活の質、自立、および経済情勢に重大な影響を及ぼし得る。遺伝子療法は、遺伝性疾患を矯正するための処置の最も有望な形態である。遺伝子療法の中でも、送達ビヒクル、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが、非常に多くの臨床試験において治療的効果を示している。最初にFDAが承認した遺伝子療法は盲目患者で用いられている。AAV遺伝子療法に関する臨床試験数は、長期の治療的遺伝子発現に関し、その安全性および多くの異なるタイプの臓器の標的化における成功に起因して実質的に増えている。臨床的な成功にもかかわらず、AAVが介在する遺伝子送達に対する主な障壁は、標的組織のベクター形質導入をブロックする中和抗体(NAb)の高い出現率である。一般集団の90%よりも多くが、自然感染を介してAAVに曝露されており、50%よりも多くの人が、AAVに対するNAbに関して血清陽性である。NAbは治療的有効性を著しく減衰させ、成果の変動性を生じさせるので、臨床試験スクリーニング中の特定の閾値を超える既存のNAbの同定は、患者の登録を不適格にさせる。
【0004】
AAV NAbを克服するために、いくつかのアプローチ:連続的な血漿交換、免疫抑制薬、および、免疫エピトープを除去するためのベクターキャプシドの変更が採用されている。血漿交換は非効率であり、セッションごとに残存するNAbの2~3倍を取り出す複数回を要し、低力価のNAbしか対処することができない。また、血漿交換は時間がかかり、同時の抗体欠乏および繰り返しの静脈内の針曝露を介して患者を院内感染の伝染リスクに曝す。B細胞を死滅化させるためのステロイドまたは薬理学的免疫抑制は重大な健康リスクを有しており、NAbをさらに10倍減少させるためには長期のレジメンを必要とする。AAVキャプシド工学は革新的な方法であるが、ポリクローナル抗AAV血清に対しては最終的に不十分であり、抗体エスケープのわずか(modest)10倍の増加がインビボで観察される。さらに、NAb認識エピトープを変更するためのキャプシド構造の改変は、これらの変更された表面領域は多機能性であるので、典型的に、強力でないベクターおよび不完全なベクターの産生をもたらす。現在のアプローチは、臨床試験除外に関して設定された典型的な閾値を超える既存の抗-AAV NAbをうまく克服せず、または同じAAVベクターの繰り返し投与を可能にしない。
【0005】
マイコプラズマ・プロテインMは、非特異的に抗体に結合し、抗原に抗体が結合する能力をブロックすることが可能であるとして同定されている(米国特許第9,593,150号;米国公開番号2017/0320921)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、Nabを普遍的にブロックするためのベクター非依存性のタンパク質に基づく方法ならびに抗体結合に基づく他の方法および組成物を提供することにより、当該分野における欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、NAbを普遍的にブロックするためのベクター非依存性のタンパク質に基づく方法の開発および当該方法が広範囲の既存のNAb濃度に対して効果的であるという実証に部分的に基づく。本発明は、異種薬剤(例えば、AAVベクター)を対象へ投与した際のNAbによる異種薬剤の中和を防止することにより成功的な遺伝子送達を可能にするために、独特なマイコプラズマ由来タンパク質およびその類似体(プロテインMと呼ばれる)の使用を開拓する。プロテインMは、抗体軽鎖および重鎖上の保存領域に普遍的に結合して、抗原認識CDR領域と構造干渉を生じさせることにより、種および抗原に依存しない様式で哺乳類のIgG、IgM、およびIgA抗体クラスをブロックすることが示された。プロテインMは、ナノモルの親和性で抗体に結合し、様々な異なる試験された免疫グロブリン/抗原ペアに関して抗原抗体結合を妨げる。本発明者らは、プロテインMが抗体によるAAVの認識をブロックすること、および抗体が介在するAAVの中和を防止することを見いだした。NAbからエスケープするAAVベクターのレベルは、NAb力価および容量、プロテインMの量、およびAAVの量に比例することが示された。プロテインMが介在するNAbエスケープは、ヒト血清(IVIG)およびAAV免疫化マウス由来の血清を用いてインビトロおよびインビボで確認された。プロテインMは、NAb回避のために、AAV投与の前に単独で投与することができ、またはAAVとともに製剤化することができることが示された。このアプローチの有効性は、AAVが中和される前の免疫グロブリンとプロテインMの相互作用に依存する。このアプローチは、特有の遺伝子療法適用のための各薬剤の独特または有益な特性を維持しながら、複数の異種薬剤(例えば、AAVベクター血清型)に対するNAbを克服するために用いることができる。
【0008】
本発明はさらに、自己免疫障害の処置、過剰抗体と関連する障害の処置、抗体を単離する方法、および免疫測定法を行なう方法を含む、抗体に結合することが有益である他の方法におけるプロテインMの使用に関する。
【0009】
本発明はさらに、増大した熱安定性および/または本発明の方法をインビボまたは高温で実施するための他の有利な特徴を有する改変されたプロテインMタンパク質に関する。
【0010】
したがって、本発明の一態様は、野生型マイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントと比較して、マイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントの熱安定性を増加または維持する1つまたは複数のアミノ酸突然変異を有する、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントに関する。
【0011】
本発明のさらなる一態様は、本発明の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントをコードするポリヌクレオチドおよびそれを含むベクターまたは形質転換された細胞に関する。
【0012】
本発明の別態様は、対象への異種薬剤の投与の際の中和抗体による異種薬剤の中和を阻害する方法に関し、有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を対象へ投与するステップを含み、それにより異種薬剤の中和を阻害する。
【0013】
本発明のさらなる一態様は、対象においてポリペプチドまたは機能性核酸を発現する方法に関し、(a)ポリペプチドまたは機能性核酸をコードする核酸送達ベクター、および(b)有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を、対象へ投与するステップを含み、それにより、対象においてポリペプチドまたは機能性核酸を発現する。
【0014】
本発明のさらなる一態様は、それを必要とする対象における障害を処置する方法に関し、障害は、ポリペプチドまたは機能性核酸を対象において発現することによって処置可能であり、(a)ポリペプチドまたは機能性核酸をコードする治療的に有効量の核酸送達ベクター、および(b)有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を、対象へ投与するステップを含み、それにより対象における障害を処置する。
【0015】
本発明の別態様は、対象における遺伝子を編集する方法に関し、(a)遺伝子編集複合体、および(b)有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を対象へ投与するステップを含み、それにより、対象においてポリペプチドまたは機能性核酸を発現する。
【0016】
本発明のさらなる一態様は、それを必要とする対象における自己免疫疾患を処置する方法に関し、有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を対象へ投与するステップを含み、それにより自己免疫疾患を処置する。
【0017】
本発明のさらなる一態様は、それを必要とする対象における過剰抗体と関連する障害を処置する方法に関し、治療的に有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を対象へ投与するステップを含み、それにより、過剰抗体と関連する障害を処置する。
【0018】
本発明の別態様は、抗体軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む化合物を試料から単離する方法に関し、当該方法は、固体支持体に付着された本発明の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントと化合物を接触させて、それから、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントから化合物を溶出させるステップを含む。
【0019】
本発明のさらなる一態様は、免疫測定法を行なう方法に関し、当該方法は、抗体軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む化合物に結合するために本発明の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントを用いるステップを含む。
【0020】
本発明のさらなる一態様は、本発明の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントを含むキットに関する。
【0021】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の本発明の説明においてより詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ヒトIVIGが、用量依存的にAAV形質導入を阻害するAAV中和抗体を含むことを示す。ヒトIVIGの2倍希釈系列を用いてAAV2中和プロットを作成した。50μgで始めて、IVIGを1μg未満まで段階的に希釈して、各希釈物をAAV2-ルシフェラーゼの2×10
8ウイルスゲノムと4℃で1時間インキュベートした後に、各ウェルに播種した。AAV2導入遺伝子発現によって生じる発光レポーターシグナルは、AAV形質導入の関数的リードアウトであり、培養HEK-293細胞を形質導入するのに利用できたAAVの量に比例する。この実験では、48ウェルプレートの各ウェルに1×10
5細胞を播種して、血清フリー培地中2,000のMOIで形質導入した(条件あたりn=3の技術的レプリケート)。ルシフェラーゼ活性の測定を形質導入の48時間後にプレートリーダー上で細胞溶解およびルシフェリンの添加後に行なった。所定のIVIG量に関して中和されたAAVの割合間の関係は、同等の容量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含むIVIGなしコントロールと比較して、12.5μgのIVIGで72%(+/-1.3%)の中和であると決定された。さらに、25μgのIVIGは96%(+/-0.2%)を中和し、50μgのIVIGは99%(+/-0.17%)のAAV2を中和した。
【
図2】プロテインMが、ヒトIVIG内に存在する中和抗体からAAVを保護することを示す。前の図において、2×10
8vgの用量のAAV2の約70%を中和することが実証された12.5μg IVIGを用いて、抗体が介在する中和からのエスケープを、2倍希釈系列のプロテインMを用いて研究した。この場合では、1分子のIgGに対して8分子のプロテインMのモル比で実験を始め、それは、1分子のIgGが、完全な抗体不活性化のために占有されるべきであるプロテインM結合部位を2個有することを考慮すると、4倍過剰のプロテインMである。各ウェルにおいて、IVIGを、最初に個々のプロテインM希釈とともに4℃で1時間インキュベートして、その後にAAV2-ルシフェラーゼ(2×10
8vg)を加えてさらに1時間4℃でインキュベートした。それから、HEK-293細胞(1×10
5)をウェルに添加して48時間インキュベートした後に、ルシフェラーゼレポーターシグナルを測定した。IVIGを含むがプロテインMを含まないウェルは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含むIVIGなしコントロールウェルと比較して、AAVシグナルの約68%(+/-3.3%)減少を示した。しかしながら、プロテインMは、2:1よりも高いモル比で、AAVの中和を用量依存的にブロックし、中和を完全に防止したが(IVIGなしコントロールの108%~193%)、1:1または0.5:1の比は部分的にのみ中和をブロックした(それぞれIVIGなしコントロールの52%および40%)。さらに、8:1および4:1の比では、IVIGなしコントロールに対してAAVルシフェラーゼシグナルの用量依存的な増加が観察された。全てのウェルを、48ウェルプレート中の血清フリー培地(条件あたりn=3の技術的レプリケート)においてトリプリケートで行ない、ルシフェラーゼシグナルを形質導入の48時間後に測定した。
【
図3】過剰プロテインMが、8:1よりも高いモル比では、NAbからのさらなる保護をほとんど提供しないこと、および、プロテインMがAAV形質導入を高めることを示す。AAVの形質導入を保護または高めるプロテインMモル比の上限を確立する試みにおいて、中和抗体の条件とともにまたは伴わずに、NAbエスケープアッセイを、8:1または20:1のモル比で繰り返した。12.5μgのIVIGの添加は、IVIGなしPBSコントロールウェルと比較して、80%(+/-2.6%)のAAV2-ルシフェラーゼシグナルを中和した。以前の実験と同様に、プロテインMを、12.5μgのIVIG(8:1モル比、33μgプロテインM)とともに4℃で1時間予めインキュベートして、その後に、4℃で1時間AAVとともにインキュベートすると、AAVの中和が防止され、PBSを含むIVIGなしコントロールの194%(+/-24%)へと、ルシフェラーゼシグナルが増強した。NAbエスケープに必要なプロテインMの量の10倍では(20:1モル比、75μgプロテインM)、PBSを含むIVIGなしコントロールに対して256%(+/-44%)へと、ルシフェラーゼ活性のわずかな(modest)増加が観察された。IVIG存在下で、20:1比のルシフェラーゼシグナルは、8:1比と統計的に違いがなかった。さらに、IVIGなしでは、75μgまたは33μgのプロテインMを単独でAAV2-ルシフェラーゼと4℃で1時間インキュベートした場合、ルシフェラーゼシグナルの量に有意差はなく(それぞれ208%対216%)、PBSコントロールと比較したルシフェラーゼシグナルの増加が、プロテインMに基づく増強に起因することが確認された。各ウェルに血清フリー培地中の1×10
5HEK-293細胞を播種し、48ウェルプレートのフォーマットにおいて2,000のMOIで形質導入した(ウェル条件あたりn=3の技術的レプリケート)。
【
図4】AAV形質導入のプロテインM増強が用量依存的であることを示す。33μgで始めて、2倍希釈系列のプロテインMは、プロテインMとAAV2-ルシフェラーゼのインキュベーションが、PBS+AAVコントロールと比較してルシフェラーゼシグナルの増加をもたらすことを示す。ルシフェラーゼシグナルの増強は、2×10
8ウイルスゲノムに関して2μg未満のプロテインMの濃度において、すなわち、ゲノム含有AAV2-ルシフェラーゼ1粒子に対して40,000分子のプロテインMのモル比においては消失する。増強は、2×10
8ベクター粒子に関して約33μgのプロテインM、すなわち、ゲノム含有AAV2-ルシフェラーゼ1粒子に対して約700,000分子のプロテインMで飽和し始める。プロテインM希釈物を、形質導入前にAAVとともに4℃で1時間インキュベートした。各ウェルに血清フリー培地中の1×10
5HEK-293細胞を播種し、48ウェルプレートのフォーマットにおいて2,000のMOIで形質導入した(ウェル条件あたりn=3の技術的レプリケート)。
【
図5】プロテインMに基づくAAV形質導入の増強が、AAVキャプシドとプロテインMの直接的な相互作用に依存することを示す。3つの異なる条件を、AAV2-ルシフェラーゼとともに試験した:形質導入前1時間(-1h)のAAVとプロテインMの事前インキュベーション、形質導入付近(peri-transduction)の時点(0h)におけるAAVへのプロテインMの添加、または、AAVによる形質導入の18時間後(18h)のウェルへのプロテインMの添加。プロテインMを含まない2つのネガティブコントロール条件を用いた:AAVを単独で、細胞播種および形質導入の前に細胞培養培地中で4℃にて1時間インキュベートし(事前インキュベーションおよび形質導入付近の群における条件を表わしている)、またはAAVをPBS中に希釈して、細胞播種および形質導入の時点において細胞培養物へ添加した(形質導入後の群における条件を表わしている)。形質導入の18時間後に、追加容量のPBSをPBSコントロール群に添加して、同等容量のプロテインMが形質導入後の群に添加される条件を模擬した。プロテインMが形質導入付近または形質導入後に添加されたウェルにおいてはAAVルシフェラーゼシグナルの増強は見られなかったが、事前インキュベーションの群において用量依存的な増強が観察され、AAVとプロテインMの相互作用が増強メカニズムに必要であることが示された。全てのウェルには1×10
5Huh7細胞が播種され、各ウェルは2×10
8vgのAAVによって形質導入され、48ウェルプレートのフォーマットにおいてウェル条件あたりn=3の技術的レプリケートであった。
【
図6】プロテインMは、NAbがキャプシドに結合した後にAAV中和を防止しないことを示す。AAV2-ルシフェラーゼを、最初に異なる希釈のIVIGとともに4℃で1時間インキュベートし、それから、プロテインMを添加してさらに1時間4℃でインキュベートした。二重のネガティブコントロール群はAAVのみが投与され、ポジティブコントロールは、形質導入前にAAVとともに4℃で1時間インキュベートされた33μgのプロテインMが投与された。200μg、50μg、または12.5μgを含む3つの異なる希釈のIVIGを用いた。IVIGの希釈物とともにインキュベートされたAAVのみを含むプロテインMネガティブコントロール群と比較して、33μgのプロテインMは、50μgまたは200μgのIVIGによって99%のAAVが既に中和されている場合は、中和後の増強または中和抗体からのエスケープを可能にしない。しかしながら、12.5μgのIVIGがAAVとともにインキュベートされる場合は、約30%のベクターが中和されないままであり(
図1、2、および3を参照)、33μgのプロテインMは、AAVおよび12.5μg IVIGを含むプロテインMネガティブコントロールウェルと比較して、中和後にこの画分の形質導入を高めることができた。以前の図とは異なり、ルシフェラーゼ測定は、形質導入の24時間後にのみ行ない、このことは、12.5μg IVIG+AAVを有する群によるルシフェラーゼシグナルが二重ネガティブコントロールの30%未満である理由を説明することができる。各ウェルに血清フリー培地中の1×10
5HEK-293細胞を播種し、48ウェルプレートのフォーマットにおいて2,000のMOIで形質導入した(ウェル条件あたりn=3の技術的レプリケート)。
【
図7】AAVとプロテインMの事前インキュベーションが、IVIGによるその後の中和からベクターを保護することを示す。この中和アッセイについては、プロテインMの量を同一(8.25μg)に維持したが、様々な量のIVIGを用いて異なるモル比を達成した(50μg~3.12μgのIVIG)。プロテインMを最初にAAV2-ルシフェラーゼとともに4℃で1時間インキュベートして、その後にIVIGを添加して4℃で1時間インキュベート後、細胞培養を形質導入した。ポジティブコントロール群は、AAV+33μg、8.25μg、または1μgのプロテインMを含んでおり、ネガティブコントロール群はPBSとともにインキュベートされたAAVのみを含んでいた。プロテインMが介在することによりAAVの非中和画分が2~3倍増強されることが観察された。各ウェルに血清フリー培地中の1×10
5HEK-293細胞を播種し、48ウェルプレートのフォーマットにおいて2,000のMOIで形質導入した(ウェル条件あたりn=3の技術的レプリケート)。ルシフェラーゼ測定を形質導入の24時間後に行なった。
【
図8】AAVとプロテインMの事前インキュベーションが、過剰のバックグラウンド血清免疫グロブリンにおいてIVIGによる中和からベクターを保護することを示す。この実験については、2×10
8ウイルスゲノムの用量のAAV2-ルシフェラーゼの約95%を中和することが以前に示された25μgのIVIGを用いた。25μgのヒトIVIGを、10%ウシ胎児血清(FBS)を含む細胞培養ウェルに添加した(製造元によって行なわれたELISAによって決定される推定ウシIgG濃度350μg)。同量の10%FBSを含む細胞培養ウェルの別のセットをIVIGなしコントロールとして用いた。モル比4:1、2:1、および1:1(ウシIgG含有量に基づく)のプロテインMを、4℃で1時間、AAVとともにインキュベートした後に、IVIGなしコントロールウェルまたは25μg IVIG含有ウェルにそれぞれ10%FBSを添加した。ネガティブコントロール群においてはプロテインMの代わりにPBSとともにAAVをインキュベートして、10%FBSを含むウェルまたは25μgのIVIGとともに10%FBSを含むウェルに添加した。結果は、プロテインMの事前インキュベーションは、1分子のウシIgGに対して1分子のプロテインMの比でさえもIVIGによる中和からAAV2-ルシフェラーゼを保護したことを示すが、この量のプロテインM(108μg)は、ヒトIVIG(25μg)よりも実に12倍高い比(still in a 12-fold greater ratio than)であった。各ウェルに1×10
5HEK-293細胞を播種し、48ウェルプレートのフォーマットにおいて2,000のMOIで形質導入した(ウェル条件あたりn=3の技術的レプリケート)。ルシフェラーゼ測定を形質導入の24時間後に行なった。
【
図9】プロテインMが、免疫化マウスから回収されたプールされたポリクローナル血清において見られる中和抗体からのAAV8のインビトロエスケープを可能にすることを示す。この実験については、AAV8免疫化マウス由来の10μlのプールされたポリクローナル血清をPBS中に段階希釈して、最初に10倍希釈して1μlおよび0.1μl血清を含むウェルを作成した。それから、0.1μl血清ウェルを2倍希釈系列でさらに希釈した。AAV8-ルシフェラーゼベクター(ウェルあたり2×10
8ウイルスゲノム)を中和血清の希釈物とともに4℃で1時間インキュベートした後に形質導入した。プロテインMを、同一のAAV8中和マウス血清の10倍希釈系列に、概算で1分子の免疫グロブリンに対して2分子のプロテインMの比で添加した。1μlの中和マウス血清中、概算10μgの免疫グロブリンに対して6.5μgのプロテインMで始めて、それぞれのプロテインMおよび血清試料を別個に相互希釈した後、4℃で1時間のインキュベーションのために合わせた。それから、全ての試料をAAV8-ルシフェラーゼともに4℃で1時間インキュベートした後に細胞へ添加した。得られた中和実験からのデータを、AAV8のみを含む血清なしコントロールウェルに対して正規化して、それから、ルシフェラーゼシグナルを二重指数減衰関数によってフィットさせて、データのポイント間の曲線を推測した。モデル曲線を用いて、ポリクローナル血清によるAAV8の50%中和が、1:2,564の効果的な力価に関して、0.0039μlの用量で生じることが分かった。しかしながら、2:1モル比のプロテインMとともにインキュベートされた同じ血清の50%中和は、0.2744μlの血清容量で生じ、概算で1:36の効果的な力価をもたらした。この結果は、プロテインMが、インビトロで、ほぼ100倍差の血清濃度にわたり(over nearly a 100-fold difference)AAVを保護することが可能であることを示している。96ウェルプレートのフォーマットにおいて、全てのウェルに5×10
4HEK-293細胞を播種し(4,000のMOI)、ウェル条件あたりn=3の技術的レプリケートであり、ルシフェラーゼは形質導入の48時間後に測定された。
【
図10】AAV8に対する受動免疫を有するマウスへのプロテインMのインビボ投与が、中和抗体エスケープをもたらすことを示す。この実験では、マウスに、IV注入を介した受動移入によって様々な容量のポリクローナルAAV8血清(以前の図から、力価1:2,564)を与え、その後15~20分以内に、2×10
10ウイルスゲノムのAAV8-ルシフェラーゼをIV投与した。これにより、各マウスに送達された血清容量に基づく中和曲線が実証された。血清が受動移入されていないナイーブマウス群と比較して、1μl~0.001μlの移入血清では、AAV8-ルシフェラーゼシグナルの50%を超える中和が生じることが分かった。しかしながら、概算で2:1比のプロテインM(6.3mg)が受動移入後であるがAAV投与前にマウスに送達された場合、中和抗体からの完全なエスケープが0.3μlおよび1μlの移入血清容量で達成され、NAb濃度の1,000倍変化(fold change)の中和抗体からのプロテインMが介在するエスケープを示した。さらに、中和からのエスケープは、0.3μlの受動移入血清群について用量依存的であり、NAbエスケープが、血清なしコントロール群と比較して、1:1(3.15mg)および0.5:1(1.58mg)の概算モル比に関して減少することが示された。全ての群に関して、群の条件あたりn=5匹のマウスであり、肝臓からのルシフェラーゼシグナルをAAV投与の24時間後に測定した。
【
図11】
図10の結果から定量化された平均の生発光(raw luminescence)を示す。
【
図12】プロテインM/抗体複合体が、インビトロでの形成後に安定していることを示す。この実験において、概算で10μgの免疫グロブリンを含む1μlのポリクローナル血清(力価1:2,564)を用いてプロテインM(2:1モル比、6.6μg)と様々な持続時間でインキュベートした後にAAV8-ルシフェラーゼを添加した。ネガティブコントロール群は中和血清+培地を含んでおり、ポジティブコントロール群は培地+PBSまたはプロテインM+培地を含んでいた。72時間、48時間、24時間、16時間、4時間、2時間、および1時間のインキュベーション間隔を全ての群に適用した。全てのインキュベーション持続時間は、培地+PBSのネガティブコントロールと比較して、プロテインMが介在する、中和からのAAV8の保護を示した。96ウェルプレートのフォーマットにおいて、5×10
4HEK-293細胞を播種する時(0h)にAAV8-ルシフェラーゼをウェルに添加して、4,000のMOIで形質導入した(ウェル条件あたりn=3の技術的レプリケート)。ルシフェラーゼ測定を形質導入の48時間後に行なった。
【
図13】インビボでのプロテインMによる中和抗体エスケープの効能が不安定であることを示す。
図10および
図11と同一の実験を行なったが、今回は、NAbエスケープの耐久性を試験するために、プロテインM投与の5分後、またはプロテインM投与の3時間後にAAV8を添加した。AAV8-ルシフェラーゼシグナルは、AAV8を投与するまで3時間待った後は血清なしコントロール群の約1/3であったが、プロテインMの後にAAV8を投与するまで5分だけ待った場合は、ルシフェラーゼシグナルは血清なしコントロール群とほぼ同等であった。概算で2:1比のプロテインM(6.3mg)を、受動移入後であるがAAV投与前にマウスに送達し、n=3匹のマウスを含む3時間の間隔の群を除いて、群の条件あたりn=5匹のマウスであった。肝臓からのルシフェラーゼシグナルをAAV投与の24時間後に測定した。
【
図14】M.genitalium(MG WT)由来のトランケートされたプロテインMが、体温で不安定であることを示す。融解温度(Tm)を、ナノ示差走査型蛍光透視法(NanoDSF)を用いて決定した。一次導関数の変曲点はTmを示す。タンパク質をE.coli内で組換えにより発現して、測定前にニッケルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。円偏光二色性アッセイにより、MG WTが20℃で少なくとも2時間安定であり、目に見える析出物が形成されないことが示された。しかしながら、37℃では、MG WTは15分後にアンフォールディングし始めて、目に見える析出物が生じた。このことは、タンパク質が標準的なヒト体温付近で不安定であることを示す。0~100℃の温度傾斜により、MG WTの即時のアンフォールディングおよび融解温度(Tm)が約41.2°Cであることが示された。アンフォールディングは、目に見える析出物の凝集を伴った。
【
図15A-15B】M.genitalium(MG WT)およびM.pneumoniae(MP WT)由来のトランケートされたプロテインM、ならびに、MG WTよりも融解温度が少なくとも1度改善したプロテインMの類似体(A)またはMG WTの融解温度を維持するプロテインMの類似体(B)の融解温度を示す。融解温度を、WTおよびE.coliからの小スケールのタンパク質生産によって生産された突然変異体タンパク質類似体に関して、示差走査型蛍光透視法(NanoDSF)によって決定した。突然変異の数およびそれらの対応するアミノ酸置換を右に列挙する。類似体は様々な熱安定性を示し、多重突然変異は相加効果を生じさせて融解温度を増大させる。
【
図16】MG WTおよびMG29の融解温度を測定するために示差走査型蛍光透視法(DSF)を用いたデータの例を示す。全ての類似体について融解温度を決定して、MG WT(Tm=41.9℃)およびMG29(Tm=55.2℃)の結果を示した。一次導関数の変曲点は融解温度(Tm)を示す。タンパク質をE.coli内で組換えにより発現して、測定前にニッケルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
【
図17A-17C】SDS-PAGEによって決定されたプロテインM類似体の可溶性画分評価を示す。各タンパク質の7個のアリコート(0.4mg/mL)を、37℃で異なる時間インキュベートした。試料を15,000×Gで10分間遠心分離することによって析出タンパク質をペレット化した後に可溶性画分をSDS-PAGEゲルに通した。評価の0、1、4、24、48、72、または96時間前にタンパク質を加熱した。結果は、加熱の1~4時間後にMG WT(A)が、溶液から析出し始めることを示す。MG27(B)およびMG29(A)は、72時間にわたり可溶性のままであり、MG31(B)およびMG40(C)は24時間にわたり可溶性のままである。
【
図18A-18C】異なるプロテインM類似体が、インビトロ中和アッセイ中に、プールされたヒト静脈内免疫グロブリンγ(IVIG)をブロックして、AAV2-ルシフェラーゼベクターの中和を防止することを示す:1時間(AおよびB)または24時間(C)インキュベーションに関する4℃対37℃の熱曝露の比較。4:1比のプロテインM対IVIG。ルシフェラーゼ活性によって生産された相対発光量を、96ウェルプレートのフォーマットにおいてトリプリケートで行なわれたAAV2-ルシフェラーゼレポーターベクター(2E8vg)による形質導入の24時間後に細胞培養物から測定した。結果を、AAV2およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のみを含むウェルに対して正規化した(白いバー)。IVIG(12μg)とともに1時間インキュベートしたAAV2は、AAVのほぼ完全な中和を示した。4℃でインキュベートしたプロテインM類似体(16μg)は、AAVの前に1時間、一緒にインキュベートした場合、IVIGによるAAVの中和を防止した。これを、IVIGとインキュベートせずに4℃でインキュベートしたプロテインM類似体と比較した(MG8およびMG24については行わなかった)。類似体がIVIGとのインキュベーション前に37℃で熱曝露された場合、MG WTおよびより低い融解温度を有する一部の類似体は中和からAAVを保護しなかったが、より高いTmを有する他の類似体は、中和からAAVを保護する能力を維持した。大部分の突然変異MG類似体は、1時間の37℃曝露後に、中和抗体をブロックする能力を維持した。しかしながら、MG27、MG29、およびMG46は、24時間の37℃曝露後にAAVの中和を防止した。
【
図19】一次AAV投与の1ヶ月後のAAV再投与に関して、MG WTがNAbをブロックすることを示す。野生型C57BL6雌マウスを、AAV8-GFP(1E9vg)の腹腔内投与を介して免疫化して、血清を1ヶ月後に回収してAAV中和抗体力価をインビトロで評価した。それから、マウスにAAV8-ルシフェラーゼレポーターベクターを筋肉内投与し(1E9vg/脚)、ここで、マウスの右脚に対してはMG WTとの単純な混合としてAAVを製剤化し(33μg/脚)、または、マウスの左脚に対してはビヒクルコントロールとしてリン酸緩衝生理食塩水を用いてAAVを製剤化した。脚筋の発光イメージングを、AAV8-ルシフェラーゼ投与の2週間後に行なった。1:10のAAV中和抗体力価を有する3匹のマウスは、生理食塩水で製剤化された脚においてAAVルシフェラーゼレポーターベクターの中和を示したが、AAVルシフェラーゼレポーターベクターは、同じマウスのMG WTが製剤化された脚において中和抗体から保護された。生理食塩水の脚におけるAAVの中和は、MG WTが製剤化された脚よりも80%低い平均ルシフェラーゼシグナルを生じた。この結果は、以前のAAV投与によって誘発された中和抗体の産生後に、プロテインMを用いて成功的にAAVを再投与することができることを示している。
【
図20】MG29が、一次AAV投与の1ヶ月後のAAV再投与に関してNAbをブロックすることを示す。野生型C57BL6雌マウスを、AAV8-GFP(5E8vg)の腹腔内投与を介して免疫化して、血清を1ヶ月後に回収してAAV中和抗体力価をインビトロで評価した。それから、マウスにAAV8-ルシフェラーゼレポーターベクターを筋肉内投与し(2E9vg/脚)、ここで、マウスの右脚に対しては改変類似体MG29との単純な混合としてAAVを製剤化し(500μg/脚)、または、マウスの左脚に対してはビヒクルコントロールとしてリン酸緩衝生理食塩水を用いてAAVを製剤化した。脚筋の発光イメージングを、AAV8-ルシフェラーゼ投与の2週間後に行なった。1:100未満のAAV中和抗体力価(個々に1:8、1:32、および1:64)をそれぞれ有する3匹のマウスは、生理食塩水で製剤化された脚においてAAVルシフェラーゼレポーターベクターの中和を示したが、AAVルシフェラーゼレポーターベクターは、同じマウスのMG29が製剤化された脚において中和抗体から保護された。生理食塩水の脚におけるAAVの中和は、MG WTが製剤化された脚よりも少なくとも98%低い平均ルシフェラーゼシグナルを生じた。この結果は、以前のAAV投与によって誘発された中和抗体の産生後に、改変プロテインM類似体を用いて成功的にAAVを再投与することができることを示している。
【
図21】改変プロテインM類似体が、IgGに関して異なる親和性を示すことを示す。特定のプロテインM類似体の親和性を、バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて測定した。結合定数(KD)を、15.6nM~250nMのプロテインM濃度範囲にわたる会合速度および解離速度(動態解析)を用いて計算した。結果は、MG WTと比較した、BLIプローブに付着されたIgGに対する親和性の増大または低減を示す。
【
図22】動態解析によって作成されたBLI親和性データの一例を示す。曲線は、動態学的K
D値を予測するために用いられる。曲線フィットが、収集データ上に重ねられている。
【
図23】突然変異体の安定化の成功率を示す。MG WTに関してRosettaによって予測された突然変異が、安定性を増大した(Tm+1℃)、低減した(Tm-1℃)、または、影響がなかった頻度を表わす。「組み合わせの突然変異」は、MG WTを個々に安定化した突然変異体構築物のマージによって構築された構築物を表わす。
【
図24】MP WT配列の保存を示す。MP WTのホモロジーモデルを2方向で示し、BLOSUM62マトリックスに従ってMG WT配列に対する保存によって色付けした。残基は、白(同一)~黒(有意に異なる)にわたる保存の程度に従って色付けされている。ホモロジーレベルを、PDB ID:4NZRをテンプレートとして用いて構築した。
【
図25】プロテインMのDNA配列のコドン最適化によって、製造収率が高くなることを示す。MG WTタンパク質をコードするDNAプラスミドを、MG281にネイティブの細菌コドン(オリジナルPM)、または細菌およびヒトコドン使用頻度の両方に対して最適化されたコドン(最適化PM)を用いて生産した。同等濃度のオリジナルPMプラスミドまたは最適化PMプラスミドによって形質転換された3つのプールされた細菌コロニーを培養して、同等の一晩の期間、同等の増殖培地容量(10mL)中で繁殖させた。細菌をペレット化して、凍結融解および同等容量の溶解バッファー中の溶解によって粗溶解物を生産した。粗溶解物を遠心分離して、SDS-PAGEゲル上でのタンパク質分離のために上清を回収した。各溶解物からの同等容量をSDS-PAGEゲル上に流し、ウエスタンブロット上へ移して、それから、MG WTのアミノ末端に存在する6×ヒスチジンタグに対するマウス抗体を用いてプローブした後に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされたヤギ抗-マウス二次抗体を用いてプローブした。MG WTタンパク質のバンド強度を、ルミノール化学発光アッセイを用いて測定した。得られたMG WT収率を、細菌ペレットの重量に対して正規化されたウエスタンブロットのバンド強度に基づいて計算した。最適化PMプラスミドは、オリジナルPMプラスミドと比較した場合、MG WTタンパク質収率がほぼ4倍増加した。
【
図26】突然変異体の改善されたpH安定性を示す。融解温度(Tm)を、異なるpH条件でNanoDSFを用いて決定した。タンパク質をPBS中でSECを介して精製して、グリシン(pH2.5&3.5)、酢酸(pH4.5&5.5)、およびリン酸(pH6.5および7.5)バッファーにバッファー交換した。
【
図27A-27D】野生型M.genitaliumプロテインMアミノ酸74~479(配列番号3)および改変されたプロテインM MG1(配列番号4)、MG8(配列番号5)、MG13(配列番号6)、MG15(配列番号7)、MG21(配列番号8)、MG22(配列番号9)、MG23(配列番号10)、MG24(配列番号11)、MG27(配列番号12)、MG28(配列番号13)、MG29(配列番号14)、MG31(配列番号15)、MG33(配列番号16)、MG38(配列番号17)、MG40(配列番号18)、MG43(配列番号19)、MG44(配列番号20)、MG45(配列番号21)、およびMG46(配列番号22)の配列アライメントを示す。
【
図28】野生型M.genitaliumプロテインMアミノ酸74~479(配列番号3)およびM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当するフラグメントの配列アライメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、以下により詳細に説明される。この説明は、本発明が実施され得る全ての異なる方法または本発明に加えられ得る全ての特徴の詳細なカタログであることを意図しない。例えば、一実施態様に関して説明される特徴は、他の実施態様に組み込まれてよく、特定の実施態様に関して説明される特徴は、その実施態様から削除されてよい。さらに、本明細書において示唆される様々な実施態様に対する非常に多くのバリエーションおよび付加は、本開示に照らして当業者に明らかであり、本発明から逸脱しない。それ故に、以下の明細書は、本発明の一部の特定の実施態様を説明することを意図し、それらの全ての並べ替え、組み合わせ、およびバリエーションを網羅的に特定することを意図しない。
【0024】
文脈が別段の指示をしない限り、本明細書に記載される本発明の様々な特徴は、任意の組み合わせで用いられ得ることが明確に意図される。さらに、本発明はまた、本発明の一部の実施態様では、本明細書中に示される任意の特徴または特徴の組み合わせが除外または省略され得ることも検討する。例示すると、複合体は構成要素A、BおよびCを含むと明細書が記述している場合、A、BもしくはCのいずれか、またはそれらの組み合わせが、単独または任意の組み合わせで省略および否定され得ることが明確に意図される。
【0025】
別段の定義がされない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者の一人によって一般に理解されるのと同一の意味を持つ。本明細書において本発明の説明において用いられる専門用語は、特定の実施態様を説明する目的のためのみであり、本発明の制限を意図しない。
【0026】
ヌクレオチド配列は、別段の明確な指示がない限り、本明細書において、一本鎖のみによって、5’から3’の方向で、左から右に示される。ヌクレオチドおよびアミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される様式で、または、(アミノ酸については)一文字コードまたは三文字コードのいずれかによって、どちらも37 C.F.R.§1.822および確立された使用に従って表される。
【0027】
別段の指示がある場合を除き、当業者に公知の標準的な方法が、組換えおよび合成ポリペプチド、抗体またはその抗原結合フラグメントの生産、核酸配列の操作、形質転換された細胞の生産、rAAV構築物、改変キャプシドタンパク質、AAV repおよび/またはcap配列を発現するパッケージングベクター、および、一時的および安定的にトランスフェクトされたパッケージング細胞の構築のために用いられ得る。かかる技術は当業者に公知である。例えば、SAMBROOK et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,NY,1989);F.M.AUSUBEL et al.CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.,New York)を参照。
【0028】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、ヌクレオチド配列、アミノ酸配列および他の参考文献は、参照によってそれらの全体で援用される。
【0029】
定義
本発明の説明および添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形も含むことが意図される。
【0030】
本明細書において用いられる「および/または」は、関係がある挙げられたアイテムの1つまたは複数の任意および全てのあり得る組み合わせ、ならびに、選択的に解釈される場合(「または」)は、組み合わせの欠失を指し、および包含する。
【0031】
さらに、本発明は、本発明の一部の実施態様では、本明細書において示される任意の特徴または特徴の組み合わせが除外または省略され得ることも検討する。
【0032】
さらに、本明細書において用いられる用語「約」は、本発明の化合物または薬剤の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を指す場合、規定の量の±10%、±5%、±1%、±0.5%、または実に±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0033】
本明細書において用いられる移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、列挙された材料またはステップ、および、特許請求の範囲に記載された発明の基礎的および新規の特徴(単数または複数)に実質的に影響を及ぼさないものを包含すると解釈されるべきである。したがって、本明細書において用いられる用語「から本質的になる」は、「含む(comprising)」と同等であると解釈されるべきでない。
【0034】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に加えられる用語「から本質的になる(consists essentially of)」(および文法上の変形)は、列挙された配列(例えば、配列番号)、および、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの機能が実質的に変更されないような、列挙された配列の5’および/または3’またはN末端および/またはC末端上または2つの末端の間(例えばドメイン間)の、合計で10個以下(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のさらなるヌクレオチドまたはアミノ酸の、両方からなるポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。合計で10個以下のさらなるヌクレオチドまたはアミノ酸は、さらなるヌクレオチドまたはアミノ酸の合計数を合わせて含む。本発明のポリヌクレオチドに加えられる用語「実質的に変更される」は、列挙された配列からなるポリヌクレオチドの発現レベルと比較して少なくとも約50%以上の、コードされるポリペプチドを発現する能力の増大または低減を指す。本発明のポリペプチドに加えられる用語「実質的に変更される」は、列挙された配列からなるポリペプチドの活性と比較して少なくとも約50%以上の、生物学的活性の増大または低減を指す。
【0035】
本明細書において用いられる用語「パルボウイルス」は、Parvoviridaeファミリーを包含し、自律複製するパルボウイルスおよびディペンドウイルスを含む。自律的パルボウイルスは、パルボウイルス、エリスロウイルス、デンソウイルス、イテラウイルス、および、コントラウイルス(Contravirus)属のメンバーを含む。例示的な自律的パルボウイルスは、限定されないが、マウスの微小ウイルス、ウシのパルボウイルス、イヌのパルボウイルス、ニワトリのパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコのパルボウイルス、ガチョウのパルボウイルス、H1パルボウイルス、バリケンのパルボウイルス、ヘビのパルボウイルス、およびB19ウイルスを含む。他の自律的パルボウイルスは、当業者に公知である。例えば、FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照。
【0036】
ディペンドウイルス属は、制限されないが、AAVタイプ1、AAVタイプ2、AAVタイプ3(タイプ3Aおよび3Bを含む)、AAVタイプ4、AAVタイプ5、AAVタイプ6、AAVタイプ7、AAVタイプ8、AAVタイプ9、AAVタイプ10、AAVタイプ11、AAVタイプ12、AAVタイプ13、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ヤギAAV、ヘビAAV、ウマAAV、およびヒツジAAVを含む、アデノ付随ウイルス(AAV)を含む。例えば、FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers);および表1を参照。
【0037】
本発明の文脈における用語「アデノ随伴ウイルス」(AAV)は、制限されずに、AAVタイプ1、AAVタイプ2、AAVタイプ3(タイプ3Aおよび3Bを含む)、AAVタイプ4、AAVタイプ5、AAVタイプ6、AAVタイプ7、AAVタイプ8、AAVタイプ9、AAVタイプ10、AAVタイプ11、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、およびヒツジAAV、ならびに、現在知られまたは後に発見される任意の他のAAVを含む。例えば、BERNARDN.FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照。複数のさらなるAAV血清型およびクレードが同定されており(例えば、Gao et al.,(2004)J.Virol.78:6381-6388および表1を参照)、それらも用語「AAV」によって包含される。
【0038】
本発明のパルボウイルス粒子およびゲノムは、限定されないが、AAV由来であってよい。様々な血清型のAAVおよび自律的パルボウイルスのゲノム配列、ならびに、ネイティブITR、Repタンパク質、およびキャプシドサブユニットの配列は、当技術分野で知られている。かかる配列は、文献またはGenBankのような公共データベースに見られ得る。例えば、GenBankアクセッションナンバーNC_002077、NC_001401、NC_001729、NC_001863、NC_001829、NC_001862、NC_000883、NC_001701、NC_001510、NC_006152、NC_006261、AF063497、U89790、AF043303、AF028705、AF028704、J02275、J01901、J02275、X01457、AF288061、AH009962、AY028226、AY028223、AY631966、AX753250、EU285562、NC_001358、NC_001540、AF513851、AF513852およびAY530579を参照し;その開示は、パルボウイルスおよびAAV核酸およびアミノ酸配列の教示のために本明細書中に参照により援用される。また、例えば、Bantel-Schaal et al.,(1999)J.Virol.73:939;Chiorini et al.,(1997)J.Virol.71:6823;Chiorini et al.,(1999)J.Virol.73:1309;Gao et al.,(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 99:11854;Moris et al.,(2004)Virol.33-:375-383;Mori et al.,(2004)Virol.330:375;Muramatsu et al.,(1996)Virol.221:208;Ruffing et al.,(1994)J.Gen.Virol.75:3385;Rutledge et al.,(1998)J.Virol.72:309;Schmidt et al.,(2008)J.Virol.82:8911;Shade et al.,(1986)J.Virol.58:921;Srivastava et al.,(1983)J.Virol.45:555;Xiao et al.,(1999)J.Virol.73:3994;国際特許公報WO00/28061、WO99/61601、WO98/11244;および、米国特許第6,156,303号も参照し;その開示は、パルボウイルスおよびAAV核酸およびアミノ酸配列の教示のために本明細書中に参照により援用される。表1も参照。AAV1、AAV2およびAAV3 ITR配列の初期の説明は、Xiao,X.,(1996)、「Characterization of Adeno-associated virus(AAV)DNA replication and integration」Ph.D.学位論文、ピッツバーグ大学、ピッツバーグ、ペンシルバニア州によって提供される(その全体で本明細書中に援用される)。
【0039】
「キメラ」AAV核酸キャプシドコード配列またはAAVキャプシドタンパク質は、2以上のキャプシド配列の部分を組み合わせたものである。「キメラ」AAVビリオンまたは粒子は、キメラAAVキャプシドタンパク質を含む。
【0040】
本明細書において用いられる用語「向性(tropism)」は、特定の細胞または組織タイプ(単数または複数)へのベクター(例えば、ウイルスベクター)の優先的だが必ずしも排他的でない侵入および/または特定の細胞または組織タイプへの侵入を促進する細胞表面との優先的だが必ずしも排他的でない相互作用を指し、任意に(optionally)、および好ましくは、細胞における、ベクター内容物(例えばウイルスゲノム)によって保有される配列の発現(例えば転写、翻訳であってもよい)、例えば、組み換えウイルスについては、異種ヌクレオチド配列(単数または複数)の発現が続く。当業者は、ウイルスゲノム由来の異種核酸配列の転写は、例えば、誘導性プロモーターまたは他の方法で調節される核酸配列に関するトランス作用因子が不存在では開始され得ないことを理解している。rAAVゲノムの場合は、ウイルスゲノムからの遺伝子発現は、安定的に組み込まれたプロウイルス由来であってよく、および/または、組み込まれていないエピソーム、ならびに、ウイルス核酸が細胞内でとり得る任意の他の形態由来であってよい。
【0041】
用語「向性プロファイル」は、1つまたは複数の標的細胞、組織および/または臓器の形質導入パターンを指す。キメラAAVキャプシドの代表的な例は、末梢臓器の形質導入がほんの少しである中枢神経系(CNS)の細胞の効率的な形質導入によって特徴付けられる向性プロファイルを有する(例えば米国特許番号9,636,370(McCownら)、および米国特許公報2017/0360960(Grayら)を参照)。特異的な向性プロファイルを発現するベクター(例えば、ウイルスベクター、例えば、AAVキャプシド)は、それらの向性プロファイルについて「向性(tropic)」、例えば、神経向性、肝臓向性などと呼ばれ得る。
【0042】
本明細書において用いられる、ウイルスベクター(例えばAAVベクター)による細胞の「形質導入」は、細胞内へのベクターの侵入およびウイルスベクター内への核酸の取り込みによる細胞内への遺伝物質の移行およびウイルスベクターを介した細胞内へのその後の移行を意味する。
【0043】
【0044】
別段の指示がない限り、「効率的な形質導入」または「効率的な向性」または同様の用語は、適切なポジティブまたはネガティブコントロールに対する参照によって判定することができる(例えば、ポジティブコントロールの形質導入または向性の、それぞれ少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%またはそれよりも多い、または、ネガティブコントロールの形質導入または向性の、それぞれ少なくとも約110%、120%、150%、200%、300%、500%、1000%またはそれよりも多い)。
【0045】
同様に、適切なコントロールに対する参照によって、ウイルスが、標的組織に関して「効率的に形質導入しない」または「効率的な向性を有さない」(または同様の用語)か、判定することができる。特定の実施態様では、ウイルスベクターは、CNS以外の組織、例えば、肝臓、腎臓、生殖腺および/または生殖細胞を効率的に形質導入しない(すなわち、効率的な向性を有さない)。特定の実施態様では、組織(単数または複数)(例えば、肝臓)の望ましくない形質導入は、望ましい標的組織(単数または複数)(例えば、CNS細胞)の形質導入レベルの、20%以下、10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下である。
【0046】
用語「5’部分」および「3’部分」は、2以上のエレメント間の空間的関係を定義するための相対的用語である。したがって、例えば、ポリヌクレオチドの「3’部分」は、別のセグメントの下流であるポリヌクレオチドのセグメントを示す。用語「3’部分」は、セグメントが必ずしもポリヌクレオチドの3’末端にあることを示すことを意図せず、または、必ずしもポリヌクレオチドの3’の半分にあることさえ意図しないが、そうであってよい。同様に、ポリヌクレオチドの「5’部分」は、別のセグメントの上流であるポリヌクレオチドのセグメントを示す。用語「5’部分」は、セグメントが必ずしもポリヌクレオチドの5’末端にあることを示すことを意図せず、または、必ずしもポリヌクレオチドの5’の半分にあることさえ意図しないが、そうであってよい。
【0047】
本明細書において用いられる用語「ポリペプチド」は、別段の指示がない限り、ペプチドおよびタンパク質の両方を包含する。
【0048】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「ヌクレオチド配列」は、RNA、DNAまたはDNA-RNAハイブリッド配列(天然起源および非天然起源ヌクレオチドの両方を含む)であってよいが、好ましくは一本鎖または二本鎖DNA配列のいずれかである。
【0049】
用語「調節エレメント」は、核酸配列の発現のいくつかの態様を制御する遺伝因子を指す。例えば、プロモーターは、動作可能に連結されたコドン領域の転写の開始を促進する調節エレメントである。他の調節エレメントは、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、終結シグナルなどである。1つまたは複数の調節エレメントが見られる核酸配列またはポリヌクレオチド内の領域は、「調節領域」と呼ばれ得る。
【0050】
ポリペプチドに適用される用語「フラグメント」は、参照ポリペプチドまたはアミノ酸配列と同一の連続アミノ酸のアミノ酸配列を含む、から本質的になる、および/またはからなる、参照ポリペプチドまたはアミノ酸配列と比較して減少した長さのアミノ酸配列を意味することが理解される。一部の実施態様では、そのようなフラグメントは、本発明に係るポリペプチドまたはアミノ酸配列の少なくとも約4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200個、またはそれよりも多くの長さの連続するアミノ酸を有するペプチドを含むことができ、から本質的になることができ、および/または、からなることができる。一部の実施態様では、そのようなフラグメントは、本発明に係るポリペプチドまたはアミノ酸配列の約4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、または500個未満の長さの連続するアミノ酸を有するペプチドを含むことができ、から本質的になることができ、および/または、からなることができる。
【0051】
本明細書において用いられる「機能性フラグメント」は、そのポリペプチドと通常関連する少なくとも1つの生物学的活性(例えば、抗体結合)を実質的に維持するものを指す。「機能性フラグメント」は、改変されていないポリペプチドが有する活性の全てを実質的に維持する。生物学的活性を「実質的に維持する」とは、ポリペプチドが、ネイティブのポリペプチドの生物学的活性の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、75%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれよりも多くを維持する(および、ネイティブのポリペプチドよりも高い活性レベルを有することもできる)ことを意味する。「非機能性」ポリペプチドとは、そのポリペプチドと通常関連する検出可能な生物学的活性をほとんど示さないか、または本質的に示さないものを指す(例えば、せいぜい、ほんの僅かな量、例えば約10%未満または実に5%)。抗体結合のような生物学的活性は、当技術分野でよく知られており本明細書中に記載されるアッセイを用いて測定することができる。
【0052】
核酸に関して本明細書において用いられる用語「動作可能に連結される」とは、2以上の核酸の間の機能的な連結を指す。例えば、プロモーター配列は、プロモーター配列が異種核酸配列の転写を開始および/または仲介するという理由で、異種核酸配列に「動作可能に連結される」と説明され得る。一部の実施態様では、動作可能に連結された核酸配列は、連続しており、および/または、同一のリーディングフレーム内にある。
【0053】
本明細書において用いられる用語「オープンリーディングフレーム(ORF)」は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば遺伝子)の部分を指し、ポリペプチドの転写を開始する開始スタート部位(すなわち、コザック配列)を含む。用語「コード領域」は、オープンリーディングフレームと相互交換可能に用いられ得る。
【0054】
本明細書において用いられる用語「コドン最適化」は、コード配列(例えば、野生型配列、例えばプロテインMに関するコード配列を含む)内に通常存在する1つまたは複数のコドンを、同一(同義)アミノ酸に関するコドンで置換することによって、発現を増大させるように最適化されている遺伝子コード配列を指す。この様式において、遺伝子によってコードされるタンパク質は同一であるが、根底となる遺伝子の核酸塩基配列または対応するmRNAは異なる。一部の実施態様では、最適化は、1つまたは複数のレアコドン(すなわち、特定の種由来の細胞において相対的に稀に生じるtRNAに関するコドン)を、翻訳の効率を改善するために、より頻繁に生じる同義コドンによって置換する。例えば、ヒトコドン最適化では、コード配列内の1つまたは複数のコドンは、同一アミノ酸に関してヒト細胞においてより頻繁に生じるコドンによって置換される。コドン最適化は、転写および/または翻訳の効率を改善し得る他のメカニズムを通して遺伝子発現を増大することもできる。ストラテジーは、制限されずに、合計GC含有量(すなわち、コード配列全体におけるグアニンおよびシトシンのパーセント)の増大、CpG含有量(すなわち、コード配列におけるCGまたはGCジヌクレオチドの数)の低減、潜在的スプライスのドナーまたはアクセプター部位の除去、および/または、コザック配列のようなリボソームエントリーおよび/または開始部位の付加または除去を含む。望ましくは、コドン最適化遺伝子は、改善されたタンパク質発現を示し、例えば、それによってコードされるタンパク質は、他の点で同様の細胞において野生型遺伝子によって提供されるタンパク質の発現レベルと比較して、細胞において、検出可能により大きなレベルで発現される。コドン最適化はまた、インビトロまたはインビボで、内因性遺伝子および/または対応するmRNAからコドン最適化遺伝子および/または対応するmRNAを区別する能力を提供する。
【0055】
本明細書において用いられる用語「配列同一性」は、当技術分野における標準的な意味を有する。当技術分野で知られているように、多くの異なるプログラムを用いて、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが公知配列と配列同一性または類似性を有するかどうか同定することができる。配列同一性または類似性は、制限されないが、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所配列同一性アルゴリズムを含む当技術分野で知られている標準的な技術を用いて、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の配列同一性アライメントアルゴリズムによって、Pearson&Lipman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,WIにおける、GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピューター化された実行によって、Devereux et al.,Nucl.Acid Res.12:387(1984)により記載されるBest Fit配列プログラム、好ましくはデフォルト設定を用いて、または調査によって、判定され得る。
【0056】
有用なアルゴリズムの例は、PILEUPである。PILEUPは、プログレッシブ・ペアワイズアライメントを用いて、関連のある配列のグループから複数の配列アライメントを作る。また、アライメントを作るために用いられるクラスタリング関係を示すツリーをプロットすることもできる。PILEUPは、Feng&Doolittle,J.Mol.Evol.35:351(1987)のプログレッシブ・アライメント法の簡易化を用いて;その方法は、Higgins&Sharp,CABIOS 5:151(1989)により記載される方法に似ている。
【0057】
有用なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990)およびKarlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873(1993)に記載の、BLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、WU-BLAST-2プログラムであり、Altschul et al.,Meth.Enzymol.,266:460(1996);blast.wustl/edu/blast/README.htmlから取得されたものである。WU-BLAST-2は、いくつかの検索パラメーターを用いて、それらは好ましくは、デフォルト値に設定されている。パラメーターは、動的な値であり、特定の配列の構成、および、目的の配列が検索されている特定のデータベースの構成に応じて、プログラム自体によって確立されるが;感度を増大させるために値を調節してよい。
【0058】
さらなる有用なアルゴリズムは、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389(1997)により報告されるgapped BLASTである。
【0059】
アミノ酸配列同一性の値のパーセンテージは、一致する同一残基の数を、並べられた領域内の「より長い」配列の残基の合計数で割って決定される。「より長い」配列は、並べられた領域内の実際の残基が最も多いものである(アライメントスコアを最大化するためにWU-Blast-2により導入されるギャップは無視する)。
【0060】
同様の様式で、核酸配列同一性パーセントは、本明細書において具体的に開示されるポリヌクレオチド内のヌクレオチドと同一である候補配列内のヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。
【0061】
アライメントは、並べられる配列内のギャップの導入を含んでよい。さらに、本明細書において具体的に開示されるポリヌクレオチドよりも多いまたは少ないヌクレオチドを含む配列に関して、一実施態様では、配列同一性のパーセンテージは、ヌクレオチドの合計数に対する、同一のヌクレオチドの数に基づいて決定されることが理解される。したがって、例えば、本明細書に具体的に開示される配列よりも短い配列の配列同一性は、一実施態様では、より短い配列におけるヌクレオチドの数を用いて決定される。同一性のパーセントの計算においては、相対的重みづけは、配列バリエーション、例えば挿入、欠失、置換などの様々な出現に割り当てられない。
【0062】
一実施態様では、同一性のみが正にスコアされて(+1)、ギャップを含む全ての形態の配列バリエーションは「0」の値に割り当てられて、配列類似性計算に関して以下に記載される重みづけスケールまたはパラメーターの必要性を取り除く。配列同一性パーセントは、例えば、一致する同一残基の数を、並べられた領域内の「より短い」配列の残基の合計数で割って、100を掛けることにより、計算され得る。「より長い」配列は、並べられた領域内の実際の残基が最も多いものである。
【0063】
本明細書において用いられる「単離された」核酸またはヌクレオチド配列(例えば、「単離されたDNA」または「単離されたRNA」)は、天然起源の生物またはウイルスの他の構成要素の少なくとも一部、例えば、細胞またはウイルスの構造的構成要素または核酸またはヌクレオチド配列と関連して一般に見られる他のポリペプチドまたは核酸から、分離されたまたは実質的にフリーの、核酸またはヌクレオチド配列を意味する。
【0064】
同様に、「単離された」ポリペプチドは、天然起源の生物またはウイルスの他の構成要素の少なくとも一部、例えば、細胞またはウイルスの構造的構成要素またはポリペプチドと関連して一般に見られる他のポリペプチドまたは核酸から、分離されたまたは実質的にフリーの、ポリペプチドを意味する。
【0065】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に加えられる、本明細書において用いられる用語「改変された」は、1つまたは複数の欠失、付加、置換、またはそれらの任意の組み合わせに起因して、野生型配列とは異なる配列を指す。
【0066】
本明細書において用いられる、ウイルスベクターを「単離する」(または文法上の同等物)によって、ウイルスベクターが、出発原料中の他の構成要素の少なくとも一部から少なくとも部分的に分離されることを意味する。
【0067】
用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」または「の処置(treatment of)」(または文法上の同等の用語)によって、対象の状態の重症度を減少させること、または、少なくとも部分的に改善または改良すること、および/または、少なくとも1つの臨床症候を緩和、軽減または低減させること、および/または、症状の進行を遅延させることを意味する。
【0068】
本明細書において用いられる用語「予防する(prevent)」、「予防する(prevents)」、または「予防(prevention)」(およびその文法上の同等物)は、疾患の発症を遅延または阻害することを意味する。その用語は、疾患の完全な消滅を必要とすることを意味せず、症状の発生率を減少させるため、または症状の発症を遅らせるための、任意のタイプの予防的処置を包含する。
【0069】
本明細書において用いられる「処置効果的な(treatment effective)」量は、対象に対して何らかの改善または利益を与えるのに十分な量である。別の言い方をすると、「処置効果的な」量は、対象における少なくとも1つの臨床症候の何らかの緩和、軽減、低減または安定化を提供する量である。当業者は、何らかの利益が対象に提供される限り治療的効果は完全または治癒的である必要はないことを理解している。
【0070】
本明細書において用いられる「予防効果的な」量は、対象における疾患、障害および/または臨床症候の発症を予防および/または遅延させるのに十分な量、および/または、対象における疾患、障害および/または臨床症候の発症の重症度を、本発明の方法が存在しない場合に生じるであろうものと比較して減少および/または遅延させる量である。当業者は、何らかの利益が対象に提供される限り予防のレベルは完全である必要はないことを理解している。
【0071】
ウイルスに関する、「異種ヌクレオチド配列」または「異種核酸」は、それぞれ、ウイルスにおいて天然起源でない配列または核酸である。一般に、異種核酸またはヌクレオチド配列は、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームおよび/または非翻訳RNAを含む。
【0072】
「ベクター」は、外来遺伝物質を別の細胞(そこで複製および/または発現されることができる)へ運ぶためのビヒクルとして用いられる化合物を指す。外来核酸を含むクローニングベクターは、組み換えベクターと呼ばれる。核酸ベクターの例は、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、発現カセット、および人工染色体である。組み換えベクターは典型的に、複製起点、マルチクローニング部位、および選択可能マーカーを含む。核酸配列は典型的に、挿入物(組み換え核酸または導入遺伝子)およびベクターの「主鎖」として働くより大きな配列からなる。遺伝情報を別の細胞へ移行させるベクターの目的は典型的に、標的細胞において、挿入物を単離、増殖、または発現させることである。発現ベクター(発現構築物または発現カセット)は、標的細胞における外因性遺伝子の発現のためのものであり、一般に、外因性遺伝子/ORFの発現を駆動するプロモーター配列を有する。標的細胞へのベクターの挿入は、細菌および真核生物細胞については形質転換またはトランスフェクションと呼ばれるが、ウイルスベクターの挿入は、しばしば形質導入と呼ばれる。また、用語「ベクター」は一般に、外来遺伝物質を別の細胞、例えば制限されないが、形質転換される細胞またはナノ粒子へ運ぶ働きをするためのアイテムを説明するために用いられてもよい。
【0073】
本明細書において用いられる用語「ベクター」、「ウイルスベクター」、「送達ベクター」(および同様の用語)は、特定の実施態様では、一般に、核酸送達ビヒクルとして機能するウイルス粒子を指し、ビリオン内にパッケージされたウイルス核酸(すなわち、ベクターゲノム)を含む。本発明に係るウイルスベクターは、本発明に係るキメラAAVキャプシドを含み、AAVまたはrAAVゲノムまたは任意の他の核酸(ウイルス核酸を含む)をパッケージすることができる。あるいは、一部の文脈においては、用語「ベクター」、「ウイルスベクター」、「送達ベクター」(および同様の用語)は、ビリオンが不存在のベクターゲノム(例えば、vDNA)、および/または、キャプシドにつながれた、またはキャプシド内にパッケージされた分子を送達するための輸送体として作用するウイルスキャプシドを指すために用いられ得る。
【0074】
本発明のウイルスベクターはさらに、国際特許公報WO01/92551に記載される二重パルボウイルス粒子であってよい(その開示は参照によりその全体で本明細書中に援用される)。したがって、一部の実施態様では、二本鎖(二重)ゲノムがパッケージされ得る。
【0075】
「組み換えAAVベクターゲノム」または「rAAVゲノム」は、少なくとも1つの逆位末端配列(例えば、1つ、2つ、または3つの逆位末端配列)および1つまたは複数の異種ヌクレオチド配列を含む、AAVゲノム(すなわち、vDNA)である。rAAVベクターは一般に、ウイルスを産生するためにシスで145塩基の末端反復(単数または複数)(TR(s))を保持しているが、部分的または完全に合成の配列を含む改変AAV TRsおよび非AAV TRsも、この目的を果たすことができる。全ての他のウイルス配列は必ずしも必要でなく、トランスで供給されてよい(Muzyczka,(1992)Curr.Topics Microbiol.Immunol.158:97)。rAAVベクターは、2つのTR(例えば、AAV TRs)を含んでもよく、それらは一般に、異種ヌクレオチド配列(単数または複数)の5’および3’末端にあるが、それに連続している必要はない。TRsは、互いに同一または異なってよい。ベクターゲノムは、単一のITRをその3’または5’末端に含んでもよい。
【0076】
用語「末端反復」または「TR」は、ヘアピン構造を形成して逆位末端配列(ITR)として機能する(すなわち、複製、ウイルスパッケージング、インテグレーションおよび/またはプロウイルス・レスキューなどの所望の機能を仲介する)、任意のウイルス末端反復または合成配列を含む。TRは、AAV ITRまたは非AAV TRであってよい。例えば、他のパルボウイルス(例えば、イヌパルボウイルス(CPV)、マウスパルボウイルス(MVM)、ヒトパルボウイルスB-19)のもののような非AAV TR配列、または、SV40複製起源として作用するSV40ヘアピンを、TRとして用いることができ、それは、トランケーション、置換、欠失、挿入および/または付加によってさらに改変されてよい。さらに、TRは、部分的または完全に合成の、例えば、米国特許番号5,478,745(Samulskiら)に記載の「ダブル-D配列」であってよい。
【0077】
パルボウイルスゲノムは、回文構造の配列をその5’および3’両末端に有する。配列の回文構造の性質は、相補塩基対の間の水素結合の形成によって安定化されるヘアピン構造の形成を生じさせる。このヘアピン構造は、「Y」または「T」形状をとると考えられている。例えば、FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69&70章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照。
【0078】
「AAV逆位末端反復」または「AAV ITR」は、制限されないが、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11、または、現在知られまたは後に発見される任意の他のAAVを含む任意のAAV由来であってよい(例えば、表1を参照)。ITRが、例えば、複製、ウイルスパッケージング、インテグレーション、および/またはプロウイルス・レスキューなどの所望の機能を仲介する限り、AAV ITRは、ネイティブのITR配列を有する必要はない(例えば、ネイティブのAAV ITR配列は、挿入、欠失、トランケーションおよび/またはミスセンス突然変異によって変更されてよい)。
【0079】
用語「rAAV粒子」および「rAAVビリオン」は、本明細書において相互交換可能に用いられる。「rAAV粒子」または「rAAVビリオン」は、AAVキャプシド内にパッケージされたrAAVベクターゲノムを含む。
【0080】
本発明のウイルスベクターはさらに、国際特許公報WO00/28004およびChao et al.,(2000)Mol.Therapy 2:619に記載される「標的化」ウイルスベクター(例えば、方向付けられた向性を有する)および/または「ハイブリッド」パルボウイルス(すなわち、ウイルスのITRsおよびウイルスのキャプシドが異なるパルボウイルス由来である)であってよい。
【0081】
さらに、ウイルスキャプシドまたはゲノムエレメントは、挿入、欠失および/または置換を含む他の改変を含むことができる。
【0082】
本明細書において用いられる用語「アミノ酸」は、任意の天然起源アミノ酸、それらの改変された形態、および合成アミノ酸を包含し、非天然起源アミノ酸を含む。
【0083】
【0084】
あるいは、アミノ酸は、改変されたアミノ酸残基(非限定的な例を表3に示す)であってよく、または、翻訳後修飾(例えば、アセチル化、アミド化、ホルミル化、ヒドロキシル化、メチル化、リン酸化または硫酸化)によって改変されたアミノ酸であってよい。
【0085】
【0086】
さらに、非天然起源アミノ酸は、Wang et al.,(2006)Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.35:225-49によって記載される「非天然」アミノ酸であってよい。これらの非天然アミノ酸は、目的分子をAAVキャプシドタンパク質に化学的に連結させるために有利に用いることができる。
【0087】
保存的アミノ酸置換は、当技術分野で知られている。特定の実施態様では、保存的アミノ酸置換は、以下の群:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;および/またはフェニルアラニン、チロシンの1つまたは複数における置換を含む。
【0088】
用語「テンプレート」または「基質」は、本明細書において、パルボウイルスのウイルスDNAを生産するために複製され得るポリヌクレオチド配列を指すために用いられる。ベクター生産の目的のために、テンプレートは、典型的に、制限されないが、プラスミド、ネイキッドDNAベクター、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)またはウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、AAV、バキュロウイルス、レトロウイルスベクターなど)を含む、より大きなヌクレオチド配列または構築物内に埋め込まれる。あるいは、テンプレートは、パッケージング細胞の染色体内に安定的に組み込まれ得る。
【0089】
本明細書において用いられる、パルボウイルスまたはAAV「Repコード配列」は、ウイルス複製および新たなウイルス粒子の生産を仲介するパルボウイルスまたはAAVの非構造的タンパク質をコードする核酸配列を示す。パルボウイルスおよびAAV複製遺伝子およびタンパク質は、例えば、FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69&70章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)に記載されている。
【0090】
「Repコード配列」は、パルボウイルスまたはAAV Repタンパク質の全てをコードする必要はない。例えば、AAVに関しては、Repコード配列は、4つのAAV Repタンパク質(Rep78、Rep68、Rep52およびRep40)の全てをコードする必要はなく、実際に、AAV5は、スプライスされたRep68およびRep40タンパク質のみを発現すると考えられている。代表的な実施態様では、Repコード配列は、少なくとも、ウイルスゲノム複製および新たなビリオン中へのパッケージングに必要な、複製タンパク質をコードする。Repコード配列は、一般に、少なくとも1つの大きなRepタンパク質(すなわち、Rep78/68)および1つの小さなRepタンパク質(すなわち、Rep52/40)をコードする。特定の実施態様では、Repコード配列は、AAV Rep78タンパク質およびAAV Rep52および/またはRep40タンパク質をコードする。他の実施態様では、Repコード配列は、Rep68およびRep52および/またはRep40タンパク質をコードする。さらに、さらなる実施態様では、Repコード配列は、Rep68およびRep52タンパク質、Rep68およびRep40タンパク質、Rep78およびRep52タンパク質、または、Rep78およびRep40タンパク質をコードする。
【0091】
本明細書において用いられる用語「大きなRepタンパク質」は、Rep68および/またはRep78を指す。特許請求の範囲に記載される発明の大きなRepタンパク質は、野生型または合成のいずれかであってよい。野生型の大きなRepタンパク質は、制限されないが、血清型1、2、3a、3b、4、5、6、7、8、9、10、11、または13を含む任意のパルボウイルスまたはAAV、または、現在知られまたは後に発見される任意の他のAAV由来であってよい(例えば、表1を参照)。合成の大きなRepタンパク質は、挿入、欠失、トランケーションおよび/またはミスセンス突然変異によって変更され得る。
【0092】
当業者は、複製タンパク質は同一のポリヌクレオチドによってコードされる必要はないことをさらに理解する。例えば、MVMに関しては、NS-1およびNS-2タンパク質(スプライス変異体)は、互いに独立に発現され得る。同様に、AAVに関しては、p19プロモーターは不活化され得て、大きなRepタンパク質(単数または複数)は1つのポリヌクレオチドから発現され得て、小さなRepタンパク質(単数または複数)は異なるポリヌクレオチドから発現され得る。しかしながら典型的に、単一の構築物から複製タンパク質を発現することがより便利である。一部のシステムでは、ウイルスプロモーター(例えば、AAV p19プロモーター)は、細胞によって認識されなくてよく、したがって、別個の発現カセットから大きなRepタンパク質および小さなRepタンパク質を発現する必要がある。他の例では、大きなRepタンパク質および小さなRepタンパク質を、別個に、すなわち、別個の転写および/または翻訳制御エレメントの制御下で発現することが望ましくあり得る。例えば、小さなRepタンパク質に対する大きな方の比を低減させるように、大きなRepタンパク質の発現を制御することが望ましくあり得る。昆虫細胞の場合は、細胞に対する毒性を避けるために、大きなRepタンパク質(例えば、Rep78/68)の発現を下方調節することが有利であり得る(例えば、Urabe et al.,(2002)Human Gene Therapy 13:1935を参照)。
【0093】
本明細書において用いられる、パルボウイルスまたはAAV「capコード配列」は、機能性パルボウイルスまたはAAVキャプシドを形成する構造タンパク質をコードする(すなわち、DNAをパッケージすること、および標的細胞に感染することができる)。典型的に、capコード配列は、パルボウイルスまたはAAVキャプシドサブユニットの全てをコードするが、機能性キャプシドが生産される限り、全てよりも少ないキャプシドサブユニットがコードされてよい。典型的に、必ずしもではないが、capコード配列は、単一の核酸分子上に存在する。
【0094】
自律的パルボウイルスおよびAAVのキャプシド構造は、BERNARDN.FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69&70章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)により詳細に記載される。
【0095】
特性を「実質的に維持する」によって、特性(例えば、活性または他の測定可能な特徴)の少なくとも約75%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%が維持されることを意味する。
【0096】
抗体に結合するためのプロテインMおよびその誘導体を使用する方法
本発明の一態様は、対象への異種薬剤の投与の際の中和抗体による異種薬剤の中和を阻害する方法に関し、有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を対象へ投与するステップを含み、それにより、異種薬剤の中和を阻害する。
【0097】
本発明の別態様は、対象においてポリペプチドまたは機能性核酸を発現する方法に関し、(a)ポリペプチドまたは機能性核酸をコードする核酸送達ベクター、および(b)有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を、対象へ投与するステップを含み、それにより、対象においてポリペプチドまたは機能性核酸を発現する。
【0098】
本発明のさらなる一態様は、対象における遺伝子を編集する方法に関し、(a)遺伝子編集複合体、および(b)有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を、対象へ投与するステップを含み、それにより、対象においてポリペプチドまたは機能性核酸を発現する。
【0099】
本明細書において用いられる用語「異種薬剤」は、その薬剤が投与される対象において天然に見られない薬剤を指す。その用語はまた、対象において天然に見られる薬剤の組み換えまたは合成バージョンも含む。異種薬剤は、それに対する中和抗体が異種薬剤の投与前に対象内に存在するものであってよく、または、対象への投与の際に中和抗体を産生する可能性があるものであってよい。異種薬剤は、対象へ投与されたことが一度もないものであってよい。異種薬剤は、以前に対象へ投与されたことがあるものであってよい。
【0100】
本明細書において用いられる用語「中和抗体」は、対象へ投与された後に、異種薬剤に特異的に結合して、異種薬剤の1つまたは複数の生物学的活性を阻害する抗体を指す。
【0101】
一部の実施態様では、異種薬剤は、核酸送達ベクター、例えば、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであってよい。一部の実施態様では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、またはアデノウイルスベクターである。一部の実施態様では、非ウイルスベクターは、プラスミド、リポソーム、荷電脂質、核酸タンパク質複合体、または生体高分子である。
【0102】
一部の実施態様では、異種薬剤は、遺伝子編集複合体、例えばCRISPR複合体である。
【0103】
一部の実施態様では、異種薬剤は、タンパク質または核酸である。一部の実施態様では、タンパク質は、酵素、調節タンパク質、または構造タンパク質、例えば、対象における欠失または欠陥タンパク質の代わりに用いることができるものである。一部の実施態様では、核酸は、機能性核酸、例えば、アンチセンス核酸または阻害性RNAである。
【0104】
有効量のプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、中和抗体による異種薬剤の阻害を少なくとも部分的にブロックする量である。一部の実施態様では、有効量のプロテインMは、中和を少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98、99%、、99.5%、または99.9%阻害するのに十分な量である。一部の実施態様では、有効量のプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、モル基準で約0.5:1~約8:1またはその中の任意の範囲、例えば、約0.5:1、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、または8:1またはその中の任意の範囲の、対象における総免疫グロブリンに対するプロテインMの比を生じさせるのに十分な量である。一部の実施態様では、比は、約0.5:1~約6:1、約0.5:1~約4:1、約0.5:1~約2.5:1、約0.5:1~約2:1、約1:1~約8:1、約1.5:1~約8:1、または約2:1~約8:1である。一実施態様では、比は、約1:1~約3:1、例えば、約2:1である。総免疫グロブリンは、総血清免疫グロブリンであってよい(例えばプロテインMの全身投与について)。総免疫グロブリンは、局在化された流体または組織における合計レベルであってよい(例えば、眼、耳、肺、脳、筋肉、関節などへの特異的な送達について)。総免疫グロブリンは、当技術分野で知られている技術によって、例えば、免疫グロブリンのFc領域に結合する抗体を用いた血清に対するELISAを行なうことによって、または免疫グロブリンに結合するプロテインAまたはGを用いることによって、測定され得る。さらに、マウスについては、それらの血清は5mg/ml~10mg/mlの免疫グロブリンを含むことが知られている。ヒトにおける血清免疫グロブリンに関する正常範囲は8~10mg/mlである。インビボでの概算については、10mg/mlの最上位(high end)を用いて比を計算することができる。局所的な免疫グロブリン含有量は、組織重量(40mLの血清/1kg体重)、または特定の体液中のIgの濃度、および血液血清よりも少ない場合はその臓器内の体液容量(例えば、眼、脳脊髄液)に基づいて概算することができる。
【0105】
プロテインMは、中和抗体による異種薬剤の阻害をブロックするのに効果的であることが見いだされた任意のスケジュールによって対象へ投与され得る。一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、異種薬剤の投与前に、例えば、異種薬剤の投与の少なくとも約1、5、10、15、20、30、40、または50分または少なくとも約1、2、3、4、5、6、12、18、または24時間前に、対象へ投与される。一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、異種薬剤の投与と同時に対象へ投与される。本明細書において用いられる用語「同時に(concurrently)」は、組み合わせた効果を生じるのに十分に近い時間を意味する(すなわち、「同時に(concurrently)」とは、「一緒に(simultaneously)」であってよく、または、短期間内に互いに前後して生じる2以上のイベントであってよい)。
【0106】
一部の実施態様では、異種薬剤は、対象への投与の前にプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体と組み合わされ、例えば、2つの構成要素は投与前に単一の組成物内に一緒に混合される。異種薬剤は、対象への投与の少なくとも約1、5、10、15、20、30、40、または50分または少なくとも約1、2、3、4、5、6、12、18、または24時間前に、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体と組み合わせてよい。他の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体および異種薬剤は、別個の組成物において投与される。
【0107】
一部の実施態様では、異種薬剤および/またはプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を、治療的または他の方法で有益な効果を与えるために対象へ1回よりも多く投与することが必要であり得る。プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、例えば、1回、2回、3回、4回またはそれよりも多くの回数、投与され得る。一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、異種薬剤が対象へ投与される都度、例えば、上述と同様の様式で、例えば、異種薬剤の前または現在(currently)に、対象へ投与される。異種薬剤の各投与に伴うプロテインMの使用は、再投与の際にしばしば問題となる異種薬剤に対するNAbの効果が存在(inhabit)し得る。一部の実施態様では、同一のプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体がその都度、投与される。他の実施態様では、異なるプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体がその都度、投与される(例えば、以下にさらに説明されるような異なる改変されたプロテインM)。理論によって拘束されずに、各投与で異なるプロテインM誘導体を使用することは、同一タンパク質の再投与によって生じ得るプロテインMに対する阻害抗体の効果を制限し得ると考えられる。また、飽和用量のプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体の投与は、プロテインMに対する任意の阻害抗体を打ち負かし、抗原認識を妨げると考えられる。
【0108】
プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が有利に抗体に非特異的に結合する能力は、抗体が抗原に結合するのを阻害することが有利な他の方法、例えば免疫抑制が望ましいか、または過剰抗体が存在する場合において用いられ得る。
【0109】
本発明のさらなる一態様は、それを必要とする対象における自己免疫疾患を処置する方法に関し、治療的に有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を対象へ投与するステップを含み、それにより自己免疫疾患を処置する。
【0110】
本明細書において用いられる用語「自己免疫疾患」は、自己免疫反応と関連する任意の障害を指す。例としては、限定されないが、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、過敏性腸症候群、過敏性腸症候群、ブドウ膜炎、インスリン依存性糖尿病、溶血性貧血、リウマチ熱、グッドパスチャー症候群、ギランバレー症候群、乾癬、甲状腺炎、グレーブス病、重症筋無力症、糸球体腎炎、および自己免疫性肝炎が含まれる。
【0111】
本発明の別態様は、それを必要とする対象における過剰抗体と関連する障害を処置する方法に関し、治療的に有効量のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を対象へ投与するステップを含み、それにより、過剰抗体と関連する障害を処置する。本明細書において用いられる用語「過剰抗体と関連する障害」は、障害の原因または少なくとも1つの症候が、血中または体内の他の場所における、平均よりも高い抗体レベルに起因する任意の障害を指す。例としては、限定されないが、多発性骨髄腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、およびワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症が含まれる。また、その方法は、自己免疫性イベント、例えば、サイトカイン放出症候群または急性自己免疫性発作、例えば、突然発症する重度の自己免疫性血管炎を急速に止めるための全抗体の急性的なブロック、または、抗体が介在する免疫複合体の形成によって引き起こされる移植組織に対する損傷の防止に有用であり得る。
【0112】
本発明の任意の方法に関して、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、効果的であることが見いだされた任意の投与経路によって対象へ投与され得る。最も適切な経路は、処置される対象および処置される障害または状態に依存する。一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入(例えばエアロゾルを介して)、口腔(例えば舌下)、膣、髄腔内、眼球内、硝子体内、蝸牛内、経皮、内皮内、子宮内(または胚内)、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、筋肉内[骨格筋、横隔膜および/または心筋への投与を含む]、胸膜内、脳内、および関節内)、局所(例えば、皮膚および粘膜表面(気道表面を含む)の両方、および経皮投与)、リンパ内など、ならびに直接的な組織または臓器注入(例えば、肝臓、眼、骨格筋、心筋、横隔膜筋または脳)から選択される経路によって対象へ投与される。
【0113】
プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、対象内の任意の組織または臓器へ送達または標的化され得る。一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、例えば、骨格筋、平滑筋、心臓、横隔膜、気道上皮、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、皮膚、肺、耳、および眼へ投与される。一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、病変組織または臓器、例えば腫瘍へ投与される。
【0114】
一部の実施態様では、異種薬剤およびプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、同一経路によって投与される。他の実施態様では、異種薬剤およびプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、異なる経路によって投与され、例えば、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は静脈内に投与され、異種薬剤は標的組織または臓器へ局所的に投与される。
【0115】
任意の上記方法は、抗体濃度を減少させるため、または対象における抗体機能を阻害するための、追加の処置を対象へ投与するステップをさらに含んでよい。追加の処置は、当技術分野で知られている任意の方法であってよく、限定されずに、血漿交換、IdeSもしくはIdeZのような抗体消化酵素の投与、脾摘出術、免疫抑制剤薬物(例えば、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、ブデソニド、プレドニゾロン)、Janusキナーゼ阻害剤(例えば、トファシチニブ)、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス)、mTOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス)、IMDH阻害剤(例えば、アザチオプリン、レフルノミド、ミコフェノール酸)、または生物製剤(例えば、アバタセプト、アダリムマブ、アナキンラ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、イキセキズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ)、またはB細胞を阻害または破壊するために設計された処置(例えば、化学療法、免疫療法、放射線療法)の投与を含む。追加の処置は、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体の投与前、投与中、および/または投与後に投与されてよい、
【0116】
プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が有利に抗体に非特異的に結合する能力は、精製方法において用いられ得る。抗体の精製は、抗体のFc領域に結合する薬剤に依拠することが多いが(例えばプロテインAおよびプロテインG)、プロテインMは、抗体の可変領域に非特異的に結合する。したがって、プロテインMを用いて、Fc領域を含まない抗体フラグメントおよび抗体誘導体(例えば単鎖可変フラグメント)および抗体可変領域を取り込んだ他の分子を単離することができる。
【0117】
したがって、本発明の一態様は、抗体軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む化合物を試料から単離する方法に関し、当該方法は、化合物を、固体支持体に付着された本発明の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントと接触させて、それから、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントから化合物を溶出させるステップを含む。一部の実施態様では、抗体軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む化合物は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。一部の実施態様では、抗体軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む化合物は、抗体誘導体、免疫グロブリン足場などである。本発明の改変されたプロテインMまたはその機能性フラグメントは、増大した熱安定性のため、野生型プロテインMよりも利点がある。このことは、プロテインMを複数の精製に関して再利用可能にさせ、野生型プロテインMであれば不安定化させる溶出条件の使用を可能にする。
【0118】
当該方法は、親和性精製の分野でよく知られている技術を用いて行なわれ得る。固体支持体は、アフィニティークロマトグラフィーまたはバッチ精製に適切な任意の材料であってよい。適切な材料は、限定されないが、アガロース、ポリアクリルアミド、デキストラン、セルロース、多糖類、ニトロセルロース、シリカ、アルミナ、酸化アルミニウム、チタニア、酸化チタン、ジルコニア、スチレン、ポリビニルジフルオリドナイロン、スチレンおよびジビニルベンゼンの共重合体、ポリメタクリレートエステル、誘導体化アズラクトンポリマーもしくは共重合体、ガラス、またはセルロースを含む。一部の実施態様では、固体支持体は樹脂である。一部の実施態様では、固体支持体はビーズまたは粒子である。一部の実施態様では、固体支持体は、例えばプレート、バイアル、またはカラムの表面である。
【0119】
接触させるステップは、任意の適切な方法により、例えば、化合物を含む試料をカラム内の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント上に通過させることにより、または、容器内またはプレートのウェル内で、化合物を含む組成物を、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントとインキュベートすることにより、行われ得る。接触させるステップは、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントに化合物が結合するのを可能にするのに十分な時間行われ得る。洗浄、遠心分離、または、試料内の他の構成要素からの改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントに結合した化合物の他の形態の分離の後に、化合物は、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントから溶出される。溶出は、当技術分野で知られている任意の方法、例えばイオン濃度、温度などの変化によって行なわれ得る。一実施態様では、溶出は、pH変化によって行なわれる。本発明の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントは有利に、野生型プロテインMよりも広い範囲のpHにわたって安定である。このことは、化合物の溶出を可能にする、より低いpHにおいて、改変されたプロテインMが安定なままであるのを可能にする。
【0120】
一部の実施態様では、接触させるステップは、結合バッファー(例えば、中性pH)において行なわれ、溶出は、低pHバッファー(例えば、0.1MグリシンpH2~3.5または0.1M酢酸pH3.5~4.5)を用いて、中和バッファー(例えば、高イオン強度アルカリ性バッファー、例えば1Mリン酸または1M Tris(pH8~9))中へ行なわれる。
【0121】
本発明のさらなる一態様は、上述の固体支持体に付着された改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントに関する。改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントは、当技術分野で知られている任意の手段、例えば共有結合によって、例えばリンカー分子を用いて、固体支持体に付着され得る。
【0122】
プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体が有利に抗体に非特異的に結合する能力は、抗体またはそのフラグメントまたは誘導体に結合するステップを含む任意の免疫測定法において用いられ得る。
【0123】
したがって、本発明の一態様は、免疫測定法を行なう方法に関し、その方法は、抗体軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む化合物に結合するために、本発明の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントを用いるステップを含む。
【0124】
改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントは、任意の包括的または特異的な抗体結合分子、例えば、プロテインA、プロテインG、または二次抗体の代わりに用いることができる。改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントは、当技術分野でよく知られているように、例えば、放射性、化学発光、または酵素検出のために標識されてよい。
【0125】
免疫測定法の例としては、限定されずに、放射免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)アッセイ、酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチアッセイ、ゲル拡散沈殿反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、免疫蛍光アッセイ、蛍光活性化セルソーティング(FACS)アッセイ、免疫組織化学アッセイ、プロテインA免疫測定法、プロテインG免疫測定法、プロテインL免疫測定法、ビオチン/アビジンアッセイ、ビオチン/ストレプトアビジンアッセイ、免疫電気泳動アッセイ、沈殿/フロキュレーション反応、免疫ブロット(ウエスタンブロット;ドット/スロット・ブロット);免疫拡散アッセイ;リポソーム免疫測定法、化学発光アッセイ、ライブラリースクリーニング、発現アレイ、免疫沈降、競合結合アッセイ、および免疫組織化学染色が含まれる。
【0126】
プロテインMおよびその誘導体
本発明の使用において用いられるプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、抗体に結合するプロテインMを産生する任意のマイコバクテリア種由来であり得る。一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、Mycoplasma genitalium、Mycoplasma pneumoniae、またはMycoplasma penetrans由来である。
【0127】
一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、PCT公開番号WO2014/014897および米国公開番号2017/0320921に記載される任意のプロテインM配列であってよく、それらの全体で参照により本明細書中に援用される。一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、M.genitaliumプロテインM(MG281、配列番号1)またはその機能性フラグメントまたは誘導体(例えば、配列番号3に示されるフラグメントまたはその誘導体)である。一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、M.pneumoniaeプロテインM(MPN400、配列番号23)またはその機能性フラグメントまたは誘導体(例えば、配列番号24に示されるフラグメントまたはその誘導体)である。一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、プロテインMフラグメントまたはフラグメントの誘導体、例えば、膜貫通ドメインを含まないフラグメントおよび/またはC末端を含まないフラグメントであり、例えば、機能性フラグメントは、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の約アミノ酸残基17~537、37~556、37~482、37~468、37~442、74~468、74~479、74~482、74~468、74~442、もしくは74~556、または、別のプロテインM由来の相当する残基を含む、から本質的になる、またはからなる。挙げられたフラグメントのそれぞれの末端に適用される用語「約」は、末端残基の一方または両方が、小程度、例えば、列挙された残基のいずれか側の約5、4、3、または2アミノ酸によって、異なってよいことを意味する。別のプロテインM由来の相当する残基は、M.genitaliumプロテインMと他のプロテインMとの間で配列アライメントを行なうことによって当業者によって容易に決定され得る。例えば、
図27は、野生型M.genitaliumプロテインMアミノ酸74~479(配列番号3)およびM.pneumoniaeプロテインMの相当するフラグメント(配列番号24)の配列アライメントを示している。一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、N末端6-Hisタグの後にトロンビン切断部位を有するプロテインMの可溶型(配列番号1のアミノ酸残基37~556)である配列番号2のアミノ酸配列を含む、から本質的になる、またはからなる。
【0128】
本明細書において用いられる用語「誘導体」は、天然起源ポリペプチドに対する小さな改変によって、天然起源のプロテインMまたはプロテインM機能性フラグメントとは異なるが、プロテインMの生物学的活性を大いに維持しているポリペプチドを指すために用いられる。小さな改変は、限定されずに、1個または数個のアミノ酸側鎖の変更、1個または数個のアミノ酸の変更(欠失、挿入、および/または置換を含む)、1個または数個の原子の立体化学の変更(例えば、D-アミノ酸)、および、限定されないが以下を含む小さな誘導体化:メチル化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化(palmitation)、アミド化、およびグリコシルホスファチジルイノシトールの付加を含む。本明細書において用いられる用語「実質的に維持する」は、天然起源ポリペプチドの活性(例えば、抗体結合)の少なくとも約20%、例えば、約30%、40%、50%またはそれよりも多くを維持する、ポリペプチドのフラグメント、誘導体、または他の変異体を指す。一部の実施態様では、プロテインMまたはプロテインM機能性フラグメントの誘導体は、20以下のアミノ酸残基の突然変異(任意の組み合わせでの欠失、挿入、および/または置換)、例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2またはそれよりも少ない突然変異を含む。一部の実施態様では、プロテインM誘導体は、M.pneumoniaeプロテインMの配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列または別のマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントの野生型配列と、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0129】
一部の実施態様では、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、関連のあるポリペプチドのインビボでの生存を促進するために、ブロッキング薬剤のアミノ末端および/またはカルボキシル末端における付加によって、インビボ用途のために改変することができる。このことは、ペプチド末端がプロテアーゼによって分解される傾向にある状況において有用であり得る。そのようなブロッキング薬剤は、限定されずに、投与されるタンパク質のアミノおよび/またはカルボキシル末端残基に付着させることのできる、追加の関係があるまたは関係のないペプチド配列を含むことができる。これは、タンパク質の合成中に化学的に、または、平均的な技術の当業者に馴染みのある方法による組み換えDNA技術によって、行なうことができる。あるいは、ブロッキング薬剤、例えばピログルタミン酸または当技術分野で知られている他の分子を、アミノおよび/またはカルボキシル末端残基に付着させることができ、または、アミノ末端のアミノ基またはカルボキシル末端のカルボキシル基を異なる部分で置換することができる。同様に、タンパク質は、投与前に、薬学的に許容できる「担体」タンパク質に共有結合または非共有結合させることができる。
【0130】
本発明の一態様では、プロテインM誘導体は、プロテインMの熱安定性を増大又は少なくとも維持する突然変異を含んでいる改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントである。これらの改変されたプロテインM誘導体は、インビボ方法および野生型プロテインMが変性し得る高温(例えば約37℃)を必要とする他の方法における使用に関する適合性が高い。
【0131】
一部の実施態様では、プロテインM誘導体は、野生型マイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントと比較して、マイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントの熱安定性を増加または維持する1つまたは複数のアミノ酸突然変異を有する、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントである。一部の実施態様では、改変されたプロテインMまたはその機能性フラグメントは、野生型プロテインMまたはその機能性フラグメントのTmよりも少なくとも0.5℃、例えば、0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、6.0℃、6.5℃、7.0℃、7.5℃、8.0℃、8.5℃、9.0℃、9.5℃、10.0℃、11.0℃、12.0℃、13.0℃、14.0℃、15.0℃、16.0℃、17.0℃、18.0℃、19.0℃、20.0℃、またはそれよりも多く増大した融解温度(Tm)を有する。一部の実施態様では、改変されたプロテインMまたはその機能性フラグメントは、野生型プロテインMまたはその機能性フラグメントのTmと比較して維持されたTmを有する(すなわち0.5℃以内)。Tmは、示差走査型蛍光透視法または任意の他の適切な技術によって測定され得る。野生型Mycoplasma genitaliumプロテインMのTmは約41.9℃であり、野生型Mycoplasma pneumoniaeプロテインMのTmは約44.1℃である。
【0132】
一部の実施態様では、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個、またはそれよりも多くの突然変異を有してよい。一部の実施態様では、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントは、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2個、またはそれよりも少ない突然変異を有してよい。
【0133】
一部の実施態様では、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントは、Mycoplasma genitaliumまたはMycoplasma pneumoniaeのプロテインMに由来する。
【0134】
一部の実施態様では、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントは、M.genitaliumプロテインMの残基約74(例えば、残基69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79)~残基約479(例えば、残基474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484)のフラグメント(配列番号3)またはM.pneumoniaeプロテインMの相当する残基(配列番号24)である。
【0135】
一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、熱安定性に影響を与えることが知られているプロテインMの部分に位置している。一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、プロテインMの生物学的活性における他の役割を有することが知られているプロテインMのタンパク質(proteins)には位置していない。一実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)のプロテインMの抗体結合部位の5Å以内の残基(すなわち、残基95、99、102、103、105、106、107、109、110、114、116、117、118、119、120、144、158、160、161、162、163、177、178、179、180、181、186、187、188、191、321、338、340、341、345、381、384、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、426、427、429、436、438、439、440、441、442、444、445、446、447、448、449、452、453、455、456、457、462、466)またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にはない。一実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、M.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)のプロテインMの抗体結合部位の5Å以内の残基(すなわち、残基100、104、107、108、110、111、112、114、115、119、121、122、123、124、125、149、163、165、166、167、168、182、183、184、185、186、192、193、196、337、338、354、356、357、399、402、404、405、406、407、408、409、410、411、412、442、443、445、454、455、456、457、458、460、461、462、463、464、465、468、469、472、473、478)にはない。一実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基469~479のいずれかまたはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にはない。
【0136】
本発明者らは、コンピューター分析を用いて、突然変異した場合にタンパク質のTmを増大または維持することが予測されるプロテインM内の残基を同定した。その結果、一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の、残基78、81、83、84、85、89、90、91、92、93、94、96、97、100、101、108、111、112、113、122、123、125、126、127、128、130、131、133、134、136、137、139、141、142、146、147、148、149、150、153、154、155、156、164、167、170、175、176、184、185、189、192、193、196、198、201、202、204、205、206、207、209、211、215、218、220、224、225、226、227、231、232、234、235、236、237、239、241、243、244、245、246、247、249、250、252、253、254、255、256、257、258、259、264、269、270、272、274、275、276、279、282、284、286、287、288、291、297、299、300、302、303、304、305、307、308、309、310、311、313、317、318、319、320、322、326、327、329、331、332、333、335、337、342、343、347、348、351、354、355、357、358、359、360、361、362、363、367、369、370、371、372、373、374、375、378、385、399、400、401、402、405、406、407、408、409、411、413、414、417、418、419、424、428、434、435、443、450、459、460、463、464、465、468、またはそれらの任意の組み合わせ、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある。一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、表4に挙げられた突然変異またはそれらの任意の組み合わせである。一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、M.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の残基83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、101、102、103、105、106、109、113、116、117、118、120、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、164、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、187、188、189、190、191、194、195、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、355、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、400、401、403、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、444、446、447、448、449、450、451、452、453、459、466、467、470、471、474、475、476、477、479、480、481、482、483、484、またはそれらの任意の組み合わせにある。
【0137】
一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基83、90、92、94、137、142、147、150、156、184、196、198、205、211、215、225、231、232、234、235、236、237、239、243、245、250、255、256、259、264、272、274、275、276、279、282、297、300、302、310、320、326、331、332、335、342、343、347、348、355、357、361、371、374、378、385、401、402、409、413、424、460、463、464、468、またはそれらの任意の組み合わせ、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある。一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、表5に挙げられた突然変異またはそれらの任意の組み合わせである。
【0138】
本発明者らは、予測される残基リストからの非常に多くの突然変異を、単独で、または成功率の高い熱安定性増大(安定化突然変異)もしくは少なくとも熱安定性維持(中立突然変異)と組み合わせて、調製および試験した。試験された点突然変異の79%が安定化または中立であったことを示している
図23を参照のこと。データはさらに、Tmを増大させる点突然変異の組み合わせが、さらにより高いTmを有する改変されたプロテインMを生じさせる傾向があることを示す(
図15Aを参照)。
【0139】
したがって、一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、単独または他の突然変異と組み合わせてTmを増大させることが示された残基にあり、例えば、1つまたは複数の突然変異は、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基150、196、198、201、205、224、232、237、274、282、342、355、373、400、402、407、409、413、135、もしくはそれらの任意の組み合わせ、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある。
【0140】
一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、以下の残基または残基の組み合わせから選択される残基にある:
M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の、
a)237(MG1);
b)232(MG8);
c)282(MG13);
d)150、196、198、400、402、407、409(MG15);
e)413、435(MG21);
f)373、400(MG22);
g)402、407、409、413(MG23);
h)342(MG24);
i)150、196、198、232、237、282、342、373、400、402、407、409、413、435(MG27);
j)274(MG28);
k)150、196、198、232、237、342、400、402、407、409(MG29);
l)373、413、435(MG31)
m)205(MG33);
n)355(MG38、MG40);
o)150、196、198、342、373、400、402、407、409(MG43);
p)150、196、198、232、237、342、373、400、402、407、409(MG44);
q)201、224(MG45);
r)150、196、198、201、224、232、237、342、400、402、407、409(MG46);
s)150、196、198、232、237、342、390、400、402、407、409、444(MG47);
t)150、196、198、201、205、224、232、237、274、342、355、400、402、407、409(MG48);または
u)150、196、198、232、237、342、391、400、402、407、409(MG49)
またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基。
【0141】
一部の実施態様では、1つまたは突然変異は、以下から選択される:
M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の、
a)F237T(MG1);
b)S232Q(MG8);
c)Q282D(MG13);
d)S150E、S196R、S198P、V400I、N402I、K407P、S409V(MG15);
e)L413I、T435I(MG21);
f)V373I、V400I(MG22);
g)N402L、K407P、S409V、L413I(MG23);
h)A342V(MG24);
i)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、Q282D、A342V、V373I、V400I、N402I、K407P、S409V、L413I、T435I(MG27);
j)N274D(MG28);
k)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、A342V、V400I、N402I、K407P、S409V(MG29);
l)V373I、L413I、T435I(MG31)
m)A205P(MG33);
n)T355D(MG38);
o)T355P(MG40);
p)S150E、S196R、S198P、A342V、V373I、V400I、N402I、K407P、S409V(MG43);
q)150、196、198、232、237、342、373、400、402、407、409(MG44);
r)S201C、A224C(MG45);
s)S150E、S196R、S198P、S201C、A224C、S232Q、F237T、A342V、V400I、N402I、K407P、S409V(MG46)
t)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、A342V、F390E、V400I、N402I、K407P、S409V Y444K(MG47);
u)S150E、S196R、S198P、S201C、A205P、A224C、S232Q、F237T、N274D、A342V、T355P、V400I、N402I、K407P、S409V(MG48);または
v)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、A342V、A391P、V400I、N402I、K407P、S409V(MG49)
またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基。
【0142】
一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、単独または他の突然変異と組み合わせて、Tmを維持することが示された残基にあり、例えば、1つまたは複数の突然変異は、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基147、150、156、225、232、245、272、276、277、279、300、310、355、378、468、もしくはそれらの任意の組み合わせ、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある。
【0143】
一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、以下の残基または残基の組み合わせから選択される残基にある:
M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の、
a)468(MG2);
b)150(MG4);
c)147(MG5);
d)272(MG10);
e)355(MG12);
f)276、277、279(MG17);
g)300(MG18);
h)378(MG20);
i)156(MG32);
j)232(MG34);
k)245(MG35);
l)276(MG36)
m)225(MG41);または
n)310(MG42)
またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基。
【0144】
一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、以下から選択される:
M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の、
a)R468Q(MG2);
b)S150E(MG4);
c)H147F(MG5);
d)S272G(MG10);
e)T355G(MG12);
f)S276E、Q277L、N279R(MG17);
g)N300Q(MG18);
h)N378Y(MG20);
i)S156K(MG32);
j)S232L(MG34);
k)A245Q(MG35);
l)S276D(MG36)
m)K225P(MG41);または
n)V310E(MG42)
またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基。
【0145】
一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、M.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の残基155、203、243、248、および358にある。
【0146】
一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、M.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)のA155E、K203R、H243T、V248Q、およびA358Vである。
【0147】
改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントは、アミノ酸配列内の突然変異以外のさらなる改変を含んでよい。一部の実施態様では、プロテインM配列内の1つまたは複数のグリコシル化部位、例えば、1、2、または3グリコシル化部位が除去される。3つのN-グリコシル化部位は、NGlycPredサーバーを用いた配列および構造の両方の分析に基づき、M.genitaliumプロテインMにおいて予測される。これらは、N177、N213、およびN274を含む。2つのO-グリコシル化部位は、NetOGlyc 4.0サーバーを用いた構造分析に基づきM.genitaliumプロテインMにおいて予測される。これらはT110およびT206を含む。適切な突然変異は、限定されずに、N177D、T215Y、N274D、S112I、およびT206Yを任意の組み合わせで含む。一部の実施態様では、1つまたは複数のグリコシル化部位が、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメントに付加される。グリコシル化パターンの変更は、タンパク質の熱安定性を追加し得て、および/または、抗体認識をブロックすることによりタンパク質の免疫原性を変更させ得る。
【0148】
発現および精製目的のために、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたは機能性フラグメントは、分泌ペプチドを、例えばN末端に含んでよく、それにより、発現されるタンパク質は、それが発現される細胞から分泌され得て、培養培地から回収され得る。適切な分泌ペプチドは、限定されずに、ヒト血清アルブミン由来のもの、インターロイキン-2、CD5、免疫グロブリンκ軽鎖、トリプシノーゲン、またはプロラクチン(哺乳類細胞について)、およびSecまたはTat(細菌細胞について)を含む。分泌ペプチドは、プロテインMから、本発明の方法において用いられる前に除去されてよく、または除去されなくてよい。
【0149】
一部の実施態様では、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたは機能性フラグメントは、タンパク質の1つまたは複数の生物学的機能または物理的特徴を変更する1つまたは複数のさらなる突然変異を含んでよい。一部の実施態様では、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたは機能性フラグメントは、抗体に関するタンパク質の親和性を変更する1つまたは複数のさらなる突然変異を含んでよい。本発明者らは、コンピューター分析を用いて、突然変異した場合に抗体に関するタンパク質の親和性を増大させることが予測されるプロテインM内の残基を同定した。その結果、一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基95、102、103、106、107、114、116、160、161、162、163、181、186、321、381、384、389、390、391、396、397、426、429、436、438、439、441、442、447、448、449、452、453、455、456、462、または466、もしくはそれらの任意の組み合わせ、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある。一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、表6に挙げられた突然変異またはそれらの任意の組み合わせである。一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、M.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の残基100、104、107、108、110、111、112、114、115、119、121、122、123、124、125、149、163、165、166、167、168、182、183、184、185、186、192、193、196、337、338、354、356、357、399、402、404、405、406、407、408、409、410、411、412、442、443、445、454、455、456、457、458、460、461、462、463、464、465、468、469、472、473、478、もしくはそれらの任意の組み合わせにある。
【0150】
一部の実施態様では、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたは機能性フラグメントは、タンパク質のpH感受性を改変することにより抗体に関するタンパク質の親和性を変更する1つまたは複数のさらなる突然変異を含んでよい。本発明者らは、コンピューター分析を用いて、突然変異した場合にpH感受性を改変することにより抗体に関する親和性を増大させることが予測されるプロテインM内の残基を同定した。これらの突然変異体は、溶出のためのpH変化を用いる能力に起因して、抗体単離に特に有用であり得る。したがって、一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基95、103、116、186、321、389、429、442、もしくは466、またはそれらの任意の組み合わせ、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基にある。一部の実施態様では、1つまたは複数の突然変異は、表7に挙げられた突然変異またはそれらの任意の組み合わせである。
【0151】
一部の実施態様では、改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたは機能性フラグメントは、抗体に関する親和性を減少または除去する1つまたは複数のさらなる突然変異を含んでよい。例としては、限定されずに、M.genitaliumプロテインM(配列番号1)の残基390および444における突然変異、例えば、390EおよびY444K、またはM.pneumoniaeプロテインM(配列番号23)の相当する残基が含まれる。
【0152】
本発明に係るプロテインMタンパク質は、当技術分野でよく知られており本明細書中に記載される方法、例えば組み換え発現によって、生産および特徴付けられる。
【0153】
本発明のさらなる態様は、本発明のプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体をコードする単離されたポリヌクレオチドおよびプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を産生するための発現カセットを提供する。
【0154】
ポリヌクレオチドは、タンパク質の発現を助けるための調節エレメントに動作可能に連結されてよい。一部の実施態様では、ポリヌクレオチドは、プロモーターに動作可能に連結される。プロモーターは、細菌プロモーター(例えば、E.coliにおいて動作可能)または哺乳類プロモーター(例えばヒトプロモーター)であってよい。
【0155】
一部の実施態様では、ポリヌクレオチドは、宿主細胞におけるタンパク質の発現を高めるためにコドン最適化されてよい。一実施態様では、ポリヌクレオチドは、E.coliなどの細菌における発現のためにコドン最適化される。別の実施態様では、ポリヌクレオチドは、ヒト細胞などの哺乳類細胞における発現のためにコドン最適化される。1つの例は、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化された配列番号26の配列、またはそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一の配列である。さらなる一実施態様では、ポリヌクレオチドは、E.coliなどの細菌およびヒト細胞などの哺乳類細胞の両方における発現のためにコドン最適化される。1つの例は、E.coliおよびヒト細胞の両方における発現のためにコドン最適化された配列番号25の配列、またはそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一の配列である。
【0156】
本発明の別態様は、本発明のポリヌクレオチドを含む、ベクター、例えば発現ベクターである。ベクターは、限定されずに、プラスミドベクターおよびウイルスベクターを含む、当技術分野で知られている任意のタイプのベクターであってよい。ベクターは、例えば、細菌ベクター(例えば、E.coliベクター)または哺乳類細胞ベクター(例えば、ヒト細胞ベクター)であってよい。
【0157】
本発明のさらなる一態様は、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはベクターを含む細胞(例えば、単離された細胞、形質転換された細胞、組み換え細胞など)に関する。したがって、本発明の様々な実施態様は、ベクター(例えば、発現カセット)を含んでいる組み換え宿主細胞に関する。そのような細胞は、単離された細胞であり得る。一部の実施態様では、ポリヌクレオチドは、細胞のゲノム内に安定的に取り込まれる。一部の実施態様では、細胞は、E.coliなどの細菌細胞、または、ヒト細胞などの哺乳類細胞であってよい。
【0158】
本発明のさらなる一態様は、本発明の改変されたマイコプラズマ・プロテインMまたはその機能性フラグメント、ポリヌクレオチド、ベクター、および/または形質転換された細胞を含むキットに関する。キットは、本明細書中に記載される方法のうちの1つを行なうためのさらなる試薬を含んでよい。試薬は、適切なパッケージまたはコンテナー内に含まれてよい。さらなる試薬は、限定されずに、バッファー、標識、酵素、検出試薬などを含む。
【0159】
キットが供給される場合、異なる構成要素が別個のコンテナー内にパッケージされて、使用の直前に混合されてよい。構成要素をそのように別個にパッケージすることは、活性成分の機能を失わずに長期保存を可能にし得る。キットには、指示材料が供給されてもよい。指示は、紙または別の基材上に印刷されてよく、および/または、電子可読媒体として供給されてよい。
【0160】
異種薬剤
上述のように、異種薬剤は、異種薬剤の投与前に、それに対する中和抗体が対象内に存在するものであってよく、または、対象への投与の際に中和抗体が産生される可能性があるものであってよい。一部の実施態様では、異種薬剤は、核酸送達ベクター(例えば、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクター)、遺伝子編集複合体(例えば、CRISPR複合体)、タンパク質、または核酸であってよい。
【0161】
任意の目的の核酸配列(単数または複数)は、本発明の核酸送達ベクターにおいて送達され得る。目的の核酸は、治療的(例えば、医薬または獣医学用途)、免疫原性(例えばワクチンのため)、または診断ポリペプチドを含む、ポリペプチドをコードする核酸を含む。
【0162】
治療的ポリペプチドは、限定されないが、嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)、ジストロフィン(ミニ-およびマイクロ-ジストロフィンを含む(例えば、Vincent et al.,(1993)Nature Genetics 5:130;米国特許公開番号2003/017131;WO/2008/088895、Wang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:13714-13719(2000);およびGregorevic et al.,Mol.Ther.16:657-64(2008)を参照)、ミオスタチンプロペプチド、ホリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、IGF-1、抗-炎症性ポリペプチド、例えば、IkappaBドミナント突然変異体、サルコスパン、ユートロフィン(Tinsley et al.,(1996)Nature 384:349)、ミニ-ユートロフィン、凝固因子(例えば、VIII因子、IX因子、X因子など)、エリスロポエチン、アンギオスタシン、エンドスタチン、カタラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、LDL受容体、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、β-グロビン、α-グロビン、スペクトリン、α1-アンチトリプシン、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、β-グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼA、分枝鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ、RP65タンパク質、サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、インターロイキン-4、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、リンホトキシンなど)、ペプチド成長因子、神経栄養因子およびホルモン(例えば、ソマトトロピン、インスリン、インスリン様増殖因子1および2、血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、神経成長因子、神経栄養因子-3および-4、脳由来神経栄養因子、骨形態形成タンパク質[RANKLおよびVEGFを含む]、グリア由来増殖因子、形質転換増殖因子-αおよび-βなど)、リソソーム酸α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、受容体(例えば、腫瘍壊死増殖因子α可溶性受容体)、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ2型ノックダウンを生じさせる分子、例えば、トランケートされた構成的に活性のbARKct、抗-炎症性因子、例えばIRAP、抗-ミオスタチンタンパク質、アスパルトアシラーゼ、およびモノクローナル抗体(単鎖モノクローナル抗体を含む;例示的なMabはハーセプチン(登録商標)Mabである)を含む。他の例示的な異種核酸配列は、自殺遺伝子産物(例えば、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、および腫瘍壊死因子)、がん療法において用いられる薬物に対して耐性を与えるタンパク質、腫瘍抑制依遺伝子産物(例えば、p53、Rb、Wt-1)、TRAIL、FAS-リガンド、およびそれを必要とする対象における治療的効果を有する任意の他のポリペプチドをコードする。パルボウイルスベクターはまた、モノクローナル抗体および抗体フラグメント、例えば、ミオスタチンに対して向けられる抗体または抗体フラグメントを送達するために用いることもできる(例えば、Fang et al.,Nature Biotechnol.23:584-590(2005)を参照)。
【0163】
ポリペプチドをコードする核酸配列は、レポーターポリペプチド(例えば酵素)をコードするものを含む。レポーターポリペプチドは当技術分野で知られており、限定されないが、グリーン蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ルシフェラーゼ、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含む。
【0164】
あるいは、本発明の特定の実施態様では、核酸は、機能性核酸、すなわち、タンパク質に翻訳されずに機能する核酸、例えばアンチセンス核酸、リボザイム(例えば、米国特許第5,877,022号に記載)、スプライセオソームが介在するトランス-スプライシングを生じさせるRNA(Puttaraju et al.,(1999)Nature Biotech.17:246;米国特許第6,013,487号;米国特許第6,083,702号を参照)、遺伝子サイレンシングを仲介するsiRNA、shRNAまたはmiRNAを含む干渉RNA(RNAi)(Sharp et al.,(2000)Science 287:2431を参照)、および他の非翻訳RNA、例えば「ガイド」RNA(Gorman et al.,(1998)Proc.Nat.Acad.Sci.USA95:4929;米国特許第5,869,248号(Yuanら))などをコードしてよい。例示的な非翻訳RNAは、多剤耐性(MDR)遺伝子産物に対するRNAi(例えば、腫瘍を処置および/または予防するため、および/または、化学療法による損傷を防止するために心臓へ投与するため)、ミオスタチンに対するRNAi(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのため)、VEGFに対するRNAi(例えば、腫瘍を処置および/または予防するため)、ホスホランバンに対するRNAi(例えば、心血管系疾患を処置するため、例えば、Andino et al.,J.Gene Med.10:132-142(2008)およびLi et al.,Acta Pharmacol Sin.26:51-55(2005)を参照);ホスホランバン阻害またはドミナント-ネガティブ分子、例えばホスホランバンS16E(例えば心血管系疾患を処置するため、例えばHoshijima et al.Nat.Med.8:864-871(2002)を参照)、アデノシンキナーゼに対するRNAi(例えば、てんかんのため)、サルコグリカンに対するRNAi[例えば、α、β、γ]、ミオスタチン、ミオスタチンプロペプチド、ホリスタチン、またはアクチビンII型可溶性受容体に対するRNAi、抗-炎症性ポリペプチドに対するRNAi、例えば、IkappaBドミナント突然変異体、および、病原生物およびウイルスに対して向けられるRNAi(例えば、肝炎Bウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、CMV、単純ヘルペスウイルス、ヒト乳頭腫ウイルスなど)を含む。
【0165】
あるいは、本発明の特定の実施態様では、核酸は、タンパク質ホスファターゼ阻害剤I(I-1)、serca2a、ホスホランバン遺伝子を調節するジンクフィンガータンパク質、Barkct、β2-アドレナリン受容体、β2-アドレナリン受容体キナーゼ(BARK)、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3キナーゼ)、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ2型ノックダウンを生じさせる分子、例えば、トランケートされた構成的に活性のbARKct;カルサルシン(calsarcin)、ホスホランバンに対するRNAi;ホスホランバン阻害またはドミナント-ネガティブ分子、例えばホスホランバンS16E、enos、inos、または骨形態形成タンパク質(BNP2、7など、RANKLおよび/またはVEGFを含む)をコードしてよい。
【0166】
核酸送達ベクターは、宿主染色体上の遺伝子座とホモロジーを共有しておりそれと組み換える核酸を含んでもよい。この手法は、例えば、宿主細胞における遺伝的欠陥を修正するために使用することができる。
【0167】
本発明はまた、例えばワクチン接種のための、免疫原性ポリペプチドを発現する核酸送達ベクターを提供する。核酸は、当技術分野で知られている任意の目的の免疫原をコードしてよく、制限されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、インフルエンザウイルス、HIVまたはSIV gagタンパク質、腫瘍抗原、がん抗原、細菌抗原、ウイルス抗原など由来の免疫原を含む。
【0168】
ワクチンベクターとしてのパルボウイルスの使用は当技術分野で知られている(例えば、Miyamura et al.,(1994)Proc.Nat.Acad.Sci USA 91:8507;米国特許番号5,916,563(Youngら)、米国特許番号5,905,040(Mazzaraら)、米国特許番号5,882,652、米国特許番号5,863,541(Samulskiら)を参照)。抗原は、パルボウイルスキャプシド内に存在し得る。あるいは、抗原は、組み換えベクターゲノム内に導入された核酸によって発現され得る。本明細書中に記載および/または当技術分野で知られている任意の目的の免疫原は、核酸送達ベクターによって提供することができる。
【0169】
免疫原性ポリペプチドは、制限されないが、微生物、細菌性、原生動物、寄生性、真菌および/またはウイルス性の感染および疾患を含む感染および/または疾患に対して、免疫応答を引き起こすおよび/または対象を保護するのに適切な任意のポリペプチドであることができる。例えば、免疫原性ポリペプチドは、オルソミクソウイルス免疫原(例えば、インフルエンザウイルス免疫原、例えばインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)表面タンパク質またはインフルエンザウイルス核タンパク質、またはウマインフルエンザウイルス免疫原)またはレンチウイルス免疫原(例えば、ウマ伝染性貧血ウイルス免疫原、サル免疫不全ウイルス(SIV)免疫原、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)免疫原、例えば、HIVまたはSIVエンベロープGP160タンパク質、HIVまたはSIVマトリックス/キャプシドタンパク質、およびHIVまたはSIV gag、polおよびenv遺伝子産物)であることができる。免疫原性ポリペプチドはまた、アレナウイルス免疫原(例えば、ラッサ熱ウイルス免疫原、例えばラッサ熱ウイルスヌクレオカプシドタンパク質およびラッサ熱エンベロープ糖タンパク質)、ポックスウイルス免疫原(例えば、ワクシニアウイルス免疫原、例えばワクシニアL1またはL8遺伝子産物)、フラビウイルス免疫原(例えば、黄熱病ウイルス免疫原または日本脳炎ウイルス免疫原)、フィロウイルス免疫原(例えば、エボラウイルス免疫原、またはマールブルグウイルス免疫原、例えばNPおよびGP遺伝子産物)、ブニヤウイルス免疫原(例えば、RVFV、CCHF、および/またはSFSウイルス免疫原)、またはコロナウイルス免疫原(例えば、感染性ヒトコロナウイルス免疫原、例えばヒトコロナウイルスエンベロープ糖タンパク質、またはブタ伝染性胃腸炎ウイルス免疫原、またはトリ伝染性気管支炎ウイルス免疫原)であることもできる。免疫原性ポリペプチドはさらに、ポリオ免疫原、ヘルペス免疫原(例えば、CMV、EBV、HSV免疫原)流行性耳下腺炎免疫原、麻疹免疫原、風疹免疫原、ジフテリア毒素または他のジフテリア免疫原、百日咳抗原、肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎など)免疫原、および/または、現在当技術分野で知られている、または後に免疫原として同定される任意の他のワクチン免疫原であることもできる。
【0170】
あるいは、免疫原性ポリペプチドは、任意の腫瘍またはがん細胞抗原であることができる。腫瘍またはがん抗原は、がん細胞の表面上に発現されてもよい。例示的ながんおよび腫瘍細胞抗原は、S.A.Rosenberg(Immunity 10:281(1991))に記載されている。他の例示的ながんおよび腫瘍抗原は、限定されないが:BRCA1遺伝子産物、BRCA2遺伝子産物、gp100、チロシナーゼ、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、LAGE、NY-ESO-1、CDK-4、β-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE、SART-1、PRAME、p15、メラノーマ腫瘍抗原(Kawakami et al.,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3515;Kawakami et al.,(1994)J.Exp.Med.,180:347;Kawakami et al.,(1994) Cancer Res.54:3124)、MART-1、gp100 MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、TRP-1、TRP-2、P-15、チロシナーゼ(Brichard et al.,(1993)J.Exp.Med.178:489);HER-2/neu遺伝子産物(米国特許代4,968,603号)、CA125、LK26、FB5(エンドシアリン)、TAG72、AFP、CA19-9、NSE、DU-PAN-2、CA50、SPan-1、CA72-4、HCG、STN(シアリルTn抗原)、c-erbB-2タンパク質、PSA、L-CanAg、エストロゲン受容体、乳脂肪グロブリン、p53腫瘍抑制タンパク質(Levine,(1993)Ann.Rev.Biochem.62:623);ムチン抗原(国際特許公開番号WO90/05142);テロメラーゼ;核マトリックスタンパク質;前立腺酸性ホスファターゼ;乳頭腫ウイルス抗原;および/または、以下のがんと関連することが現在知られている、または後に発見される、抗原:メラノーマ、腺がん、胸腺腫、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、肉腫、肺がん、肝臓がん、結腸がん、白血病、子宮がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、膵がん、脳腫瘍および任意の他のがん、または、現在知られている、または後に同定される悪性状態(例えば、Rosenberg,(1996)Ann.Rev.Med.47:481-91を参照)を含む。
【0171】
目的の核酸(単数または複数)は、適切な制御配列と動作可能に関連することができることが当業者によって理解されるであろう。例えば、異種核酸は、発現制御エレメント、例えば転写/翻訳制御シグナル、複製起点、ポリアデニル化シグナル、内部リボソームエントリー部位(IRES)、プロモーター、および/またはエンハンサーなどと、動作可能に関連することができる。
【0172】
当業者は、様々なプロモーター/エンハンサーエレメントを、所望のレベルおよび組織特異的発現に応じて用いることができることを理解している。プロモーター/エンハンサーは、所望の発現パターンに応じて、構成的または誘導性であることができる。プロモーター/エンハンサーは、ネイティブまたは外来であってよく、天然または合成の配列であることができる。外来とは、転写開始領域が導入される野生型宿主において、その転写開始領域が見られないことを意図する。
【0173】
特定の実施態様では、プロモーター/エンハンサーエレメントは、処置される標的細胞または対象にとってネイティブであることができる。代表的な実施態様では、プロモーター/エンハンサーエレメントは、異種核酸配列にとってネイティブであることができる。プロモーター/エンハンサーエレメントは一般に、目的の標的細胞(単数または複数)内で機能するように選択される。さらに、特定の実施態様では、プロモーター/エンハンサーエレメントは、哺乳類のプロモーター/エンハンサーエレメントである。プロモーター/エンハンサーエレメントは、構成的または誘導性であってよい。
【0174】
誘導性の発現制御エレメントは、核酸配列(単数または複数)の発現に対して調節を提供することが望ましい適用において典型的に有利である。遺伝子送達のための誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントは、組織特異的または好適プロモーター/エンハンサーエレメントであってよく、筋肉特異的または好適(心筋、骨格筋および/または平滑筋特異的または好適を含む)、神経組織特異的または好適(脳特異的または好適を含む)、眼特異的または好適(網膜特異的および角膜特異的を含む)、肝臓特異的または好適、骨髄特異的または好適、膵臓特異的または好適、脾臓特異的または好適、および肺特異的または好適プロモーター/エンハンサーエレメントを含む。他の誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントは、ホルモン誘導性および金属誘導性エレメントを含む。例示的な誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントは、限定されないが、Tet on/offエレメント、RU486誘導性プロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、ラパマイシン誘導性プロモーター、およびメタロチオネインプロモーターを含む。
【0175】
核酸配列(単数または複数)が、標的細胞において、転写されて、それから翻訳される実施態様では、特異的な開始シグナルが一般に、挿入されたタンパク質コード配列の効率的な翻訳のために含まれる。これらの外因的な転写制御配列は、ATG開始コドンおよび隣接配列を含んでよく、天然および合成の両方の様々な起源であってよい。
【0176】
核酸送達ベクターは、分裂細胞および非分裂細胞を含む広範な細胞へ核酸を送達するための手段を提供する。核酸送達ベクターは、例えばエクスビボでの遺伝子療法のために、目的の核酸を細胞にインビトロで送達するために用いることができる。核酸送達ベクターは、例えば、免疫原性または治療的ポリペプチドまたは機能性RNAを発現するために、それを必要とする対象へ核酸を送達する方法においてさらに有用である。この様式において、ポリペプチドまたは機能性RNAは、対象においてインビボで生産され得る。対象はポリペプチドが不足しているため、そのポリペプチドを必要とし得る。さらに、対象におけるポリペプチドまたは機能性RNAの産生が何らかの有益な効果を与え得るため、当該方法が実施され得る。
【0177】
核酸送達ベクターはまた、対象において目的のポリペプチドまたは機能性RNAを産生するために用いることもできる(例えば、ポリペプチドを産生するため、または、例えばスクリーニング方法と組み合わせて対象に対する機能性核酸の効果を観察するため、バイオリアクターとして対象を用いる)。
【0178】
一般に、本発明の核酸送達ベクターを用いて、治療的ポリペプチドまたは機能性核酸を送達することが有益である任意の病態を処置および/または予防するために、ポリペプチドまたは機能性核酸をコードする核酸を送達することができる。例示的な病態は、限定されないが:嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質)および肺の他の疾患、血友病A(VIII因子)、血友病B(IX因子)、サラセミア(β-グロビン)、貧血(エリスロポエチン)および他の血液障害、アルツハイマー病(GDF;ネプリライシン)、多発性硬化症(β-インターフェロン)、パーキンソン病(グリア細胞由来神経栄養因子[GDNF])、ハンチントン病(リピートを除去するためのRNAi)、筋萎縮性側索硬化症、てんかん(ガラニン、神経栄養因子)、および他の神経障害、がん(エンドスタチン、アンギオスタシン、TRAIL、FAS-リガンド、インターフェロンを含むサイトカイン;VEGFまたは多剤耐性遺伝子産物に対するRNAiを含むRNAi)、糖尿病(インスリン)、Duchenneを含む筋ジストロフィー(ジストロフィン、ミニ-ジストロフィン、インスリン様増殖因子I、サルコグリカン[例えば、α、β、γ]、ミオスタチンに対するRNAi、ミオスタチンプロペプチド、ホリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、抗-炎症性ポリペプチド、例えば、IkappaBドミナント突然変異体、サルコスパン、ユートロフィン、ミニ-ユートロフィン、エクソンスキッピングを誘導するジストロフィン遺伝子内のスプライス部位に対するRNAi[例えば、WO/2003/095647を参照]、エクソンスキッピングを誘導するU7snRNAに対するアンチセンス[例えば、WO/2006/021724を参照]、および、ミオスタチンまたはミオスタチンプロペプチドに対する抗体または抗体フラグメント)およびBecker、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ)、ハーラー病(α-L-イズロニダーゼ)、アデノシンデアミナーゼ欠乏(アデノシンデアミナーゼ)、グリコーゲン蓄積症(例えば、ファブリ―病[α-ガラクトシダーゼ]およびポンぺ病[リソソーム酸α-グルコシダーゼ])および他の代謝欠陥、先天性気腫(α1-アンチトリプシン)、レッシュ・ナイハン症候群(ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)、ニーマン・ピック病(スフィンゴミエリナーゼ)、テイ・サックス病(リソソームヘキソサミニダーゼA)、メープルシロップ尿症(分枝鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ)、網膜変性疾患(および、眼および網膜の他の疾患;例えば、黄斑変性症に関するPDGF)、脳などの固形臓器の疾患(以下を含む:パーキンソン病[GDNF]、星状細胞腫[エンドスタチン、アンギオスタシンおよび/またはVEGFに対するRNAi]、グリア芽腫[エンドスタチン、アンギオスタシンおよび/またはVEGFに対するRNAi])、肝臓、腎臓、心臓:鬱血性心不全または末梢動脈疾患(PAD)を含む(例えば、以下を送達することによる:タンパク質ホスファターゼ阻害剤I(I-1)、serca2a、ジンクフィンガータンパク質(ホスホランバン遺伝子を調節する)、Barkct、β2-アドレナリン受容体、β2-アドレナリン受容体キナーゼ(BARK)、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3キナーゼ)、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ2型ノックダウンを生じさせる分子、例えば、トランケートされた構成的に活性のbARKct;カルサルシン(calsarcin)、ホスホランバンに対するRNAi;ホスホランバン阻害またはドミナント-ネガティブ分子、例えばホスホランバンS16Eなど)、関節炎(インスリン様増殖因子)、関節障害(インスリン様増殖因子1および/または2)、内膜過形成(例えば、enos、inosを送達することによる)、心臓移植の生存率を改善する(スーパーオキシドジスムターゼ)、AIDS(可溶性CD4)、筋消耗(インスリン様増殖因子I)、腎臓欠陥(エリスロポエチン)、貧血(エリスロポエチン)、関節炎(抗-炎症性因子、例えば、IRAPおよびTNFα可溶性受容体)、肝炎(α-インターフェロン)、LDL受容体欠陥(LDL受容体)、高アンモニア血症(オルニチントランスカルバミラーゼ)、クラッベ病(ガラクトセレブロシダーゼ)、バッテン病、SCA1、SCA2およびSCA3を含む脳脊髄失調症、フェニールケトン尿症(フェニルアラニンヒドロキシラーゼ)、自己免疫疾患などを含む。本発明はさらに、臓器移植後に、移植の成功を増大させるため、および/または、臓器移植の負の副作用を減少させるために、または、補助療法を、用いることができる(例えば、サイトカイン生産をブロックするための免疫抑制剤または阻害核酸を投与することにより)。別の例として、例えば、がん患者における骨折または外科的除去後に、骨形態形成タンパク質(BNP2、7など、RANKLおよび/またはVEGFを含む)を、骨の同種移植片とともに投与することができる。
【0179】
遺伝子導入は、病態について理解して療法を提供するための実質的な潜在的用途を有している。血管遺伝子が既知でありクローニングされている複数の遺伝性疾患が存在する。一般に、上記病態は2つのクラス:一般に劣性遺伝性である、欠乏状態(通常は酵素)、および、調節または構造タンパク質が関与し得て、典型的に優勢遺伝性である、不均衡状態に分類される。欠乏状態の疾患については、遺伝子導入は、正常遺伝子を補充療法のために影響を受けた組織へ運ぶため、および、アンチセンス突然変異を用いて疾患に関する動物モデルを作製するために、用いることができる。不均衡病態については、遺伝子導入は、モデル系における病態を作製するために用いることができ、それから、病態に対抗する試みにおいて用いることができる。したがって、核酸送達ベクターは、遺伝子疾患の処置および/または予防を可能にする。
【0180】
核酸送達ベクターはまた、インビトロまたはインビボで細胞に機能性核酸を提供するためにも用いられ得る。細胞における機能性核酸の発現は、例えば、細胞による特定の標的タンパク質の発現を減らすことができる。したがって、機能性核酸は、特定のタンパク質の発現を低減させるために、それを必要とする対象において投与することができる。
【0181】
核酸送達ベクターは、診断およびスクリーニング方法における用途を見いだし、それにより、目的の核酸が、トランスジェニック動物モデルにおいて一時的または安定して発現される。
【0182】
核酸送達ベクターはまた、当業者に明らかであるように、制限されないが、遺伝子ターゲッティング、クリアランス、転写、翻訳などを評価するためのプロトコルにおける使用を含む、様々な非治療的目的のために用いることもできる。核酸送達ベクターはまた、安全性(蔓延、毒性、免疫原性など)を評価する目的のために用いることもできる。そのようなデータは、例えば、臨床有効性の評価前の規制上の承認プロセスの一部として米国食品医薬品局によって考慮される。
【0183】
さらなる一態様として、本発明の核酸送達ベクターは、対象における免疫応答を産生するために用いられ得る。この実施態様によれば、免疫原性ポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸送達ベクターを対象へ投与することができ、能動免疫応答が、免疫原性ポリペプチドに対して対象によって開始される。免疫原性ポリペプチドは上記に説明したとおりである。一部の実施態様では、防御免疫応答が引き起こされる。
【0184】
あるいは、核酸送達ベクターは、エクスビボで細胞へ投与されてよく、変更された細胞が対象へ投与される。核酸を含む核酸送達ベクターが細胞内に導入されて、その細胞が対象へ投与されて、ここで、免疫原をコードする核酸が発現され得て、免疫原に対する対象における免疫応答を誘導する。特定の実施態様では、細胞は抗原提示細胞(例えば樹状細胞)である。
【0185】
「能動免疫応答」または「能動免疫」は、免疫原と遭遇した後の、宿主組織および細胞の「関与によって特徴付けられる。それは、リンパ細網組織内の免疫担当細胞の分化および増殖を含み、抗体の合成もしくは細胞が介在する反応度の発達、または両方を生じさせる。」Herbert B.Herscowitz,Immunophysiology:Cell Function and Cellular Interactions in Antibody Formation,in IMMUNOLOGY:BASIC PROCESSES 117(Joseph A.Bellanti ed.,1985)。別の言い方をすると、能動免疫応答は、感染またはワクチン接種によって免疫原に曝露された後に宿主によって開始される。能動免疫は、「能動的に免疫化された宿主から非免疫宿主への、予め形成された物質(抗体、伝達因子、胸腺移植組織(thymic graft)、インターロイキン-2)の移行」によって獲得される受動免疫と対比することができる。同文献(Id.)
【0186】
本明細書において用いられる「防御」免疫応答または「防御」免疫は、免疫応答が、疾患の発生を防止または減少させるという点で何らかの利益を対象に与えることを示す。あるいは、防御免疫応答または防御免疫は、疾患、特にがんまたは腫瘍の処置および/または予防において、(例えば、がんまたは腫瘍の形成を防止することにより、がんまたは腫瘍の回帰を生じさせることにより、および/または、転移を防止することにより、および/または、転移小結節の増殖を防止することにより)有用であり得る。防御効果は、処置の利益がその任意の不利な点に勝る限り、完全または部分的であってよい。
【0187】
特定の実施態様では、核酸を含んでいる核酸送達ベクターまたは細胞を、以下に説明される免疫原的有効量で投与することができる。
【0188】
核酸送達ベクターはまた、1つまたは複数のがん細胞抗原(または免疫学的に似ている分子)またはがん細胞に対して免疫応答を産生する任意の他の免疫原を発現する核酸送達ベクターの投与によって、がん免疫療法のために投与することもできる。説明すると、例えば、がんを有する患者を処置するため、および/または、がんが対象において発生するのを防止するために、がん細胞抗原をコードする核酸を含む核酸送達ベクターを投与することにより、免疫応答が対象においてがん細胞抗原に対して産生され得る。核酸送達ベクターは、本明細書中に記載のように、インビボで、またはエクスビボの方法を用いることにより、対象へ投与され得る。あるいは、がん抗原は、核酸送達ベクターの一部として発現され得る。
【0189】
別の代替としては、当技術分野で知られている任意の他の治療的核酸(例えば、RNAi)またはポリペプチド(例えば、サイトカイン)を投与して、がんを処置および/または予防することができる。
【0190】
本明細書において用いられる用語「がん」は、腫瘍形成がんを包含する。同様に、用語「がん性組織」は、腫瘍を包含する。「がん細胞抗原」は、腫瘍抗原を包含する。
【0191】
用語「がん」は、当該分野におけるその理解された意味を有し、例えば、体の離れた部位へ広がる(すなわち、転移する)潜在性を有する細胞の無制御な増殖である。例示的ながんとしては、限定されないが、黒色腫、腺がん、胸腺腫、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、肉腫、肺がん、肝臓がん、結腸がん、白血病、子宮がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、膵がん、脳腫瘍および任意の他のがん、または、現在既知または後に同定される悪性状態が含まれる。代表的な実施態様では、本発明は、腫瘍形成がんを処置および/または予防する方法を提供する。
【0192】
用語「腫瘍」はまた、例えば、多細胞生物内の未分化細胞の異常な塊として、当該分野において理解される。腫瘍は、悪性または良性であってよい。代表的な実施態様では、本明細書中に開示される方法は、悪性腫瘍を予防および処置するために用いられる。
【0193】
用語「がんを処置する」、「がんの処置」および同等の用語により、がんの重症度が減少または少なくとも部分的に除去されること、および/または、疾患の進行が遅延および/または制御されること、および/または、疾患が安定することが意図される。特定の実施態様では、これらの用語は、がんの転移が防止または減少または少なくとも部分的に除去されること、および/または、転移小結節の増殖が防止または減少または少なくとも部分的に除去されることを示す。
【0194】
用語「がんの予防」または「がんを予防する」および同等の用語により、当該方法が、がんの発症の発生率および/または重症度を少なくとも部分的に除去または減少および/または遅延させることが意図される。別の言い方をすると、対象におけるがんの発症は、可能性(likelihood)または確率(probability)が減少し、および/または遅延される。
【0195】
特定の実施態様では、細胞が、がんを有する対象から取りされて、核酸送達ベクターと接触され得る。それから、改変された細胞が対象へ投与されて、それにより、がん細胞抗原に対する免疫応答が引き起こされる。この方法は、インビボで十分な免疫応答を開始することができない(すなわち、増強抗体を十分な量で産生することができない)免疫不全の対象で有利に用いることができる。
【0196】
免疫応答は、免疫調節性サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、ω-インターフェロン、τ-インターフェロン、インターロイキン-1α、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン12、インターロイキン-13、インターロイキン-14、インターロイキン-18、B細胞増殖因子、CD40リガンド、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、単球走化性タンパク質-1、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、およびリンホトキシン)によって増強され得ることが当技術分野で知られている。したがって、免疫調節性サイトカイン(好ましくは、CTL誘導性サイトカイン)が、ウイルスベクターとともに対象へ投与され得る。
【0197】
サイトカインは、当技術分野で知られている任意の方法によって投与され得る。外因性のサイトカインが対象へ投与されてよく、またはあるいは、サイトカインをコードする核酸が適切なベクターを用いて対象へ送達されてよく、サイトカインがインビボで産生される。
【0198】
対象、医薬製剤、および投与モード
本発明の方法は、獣医学および医療用途の両方での使用を見いだす。適切な対象は、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、および哺乳類を含む。本明細書において用いられる用語「哺乳類」は、制限されないが、ヒト、霊長類、非ヒト霊長類(例えば、サルおよびヒヒ)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、齧歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター等)などを含む。ヒト対象は、新生児、幼児、青少年、および成人を含む。任意に(Optionally)、対象は、例えば、本明細書中に記載のものを含む障害を対象が有するまたはそのリスクがあると考えられ、または、本明細書中に記載のものを含むポリヌクレオチドの送達によって恩恵を受けるので、本発明の方法「を必要とする」。さらなる選択肢として、対象は、実験動物および/または疾患の動物モデルであってよい。好ましくは、対象はヒトである。
【0199】
特定の実施態様では、異種薬剤およびプロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、対象の人生においてできるだけ早く、例えば、対象が疾患または障害であると診断されたらすぐに、それを必要とする対象へ投与される。一部の実施態様では、当該方法は、新生児対象に対して、例えば新生児スクリーニングによって疾患または障害が同定された後に行なわれる。一部の実施態様では、当該方法は、10才よりも前、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10才よりも前の対象に対して行われる。一部の実施態様では、当該方法は、10才よりも後の若年または成人対象に対して行われる。一部の実施態様では、当該方法は、子宮内の胎児に対して、例えば出生前スクリーニングによって疾患または障害が同定された後に行なわれる。一部の実施態様では、当該方法は、対象が疾患または障害と関連する症候を発症したらすぐに、対象に対して行われる。一部の実施態様では、当該方法は、対象が疾患または障害と関連する症候を発症する前に、例えば、疾患または障害を有している疑いがあり、又はそのように診断されるが症候を示し始めていない対象に対して行われる。
【0200】
特定の実施態様では、本発明は、プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体を、単独または異種薬剤と組み合わせて、薬学的に許容できる担体内に含む1つまたは複数の医薬組成物を提供し、他の薬用剤、医薬品、安定化剤、バッファー、担体、アジュバント、希釈剤などを含んでもよい。注入については、担体は典型的に液体である。他の投与方法については、担体は固体または液体のいずれかであってよい。吸入投与については、担体は吸入可能であり、固体または液体の微粒子形態であってもよい。
【0201】
「薬学的に許容できる」によって、毒性または他の方法で望ましくないようなものでない材料を意味し、すなわち、材料は、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こさずに対象に投与され得る。
【0202】
本発明の一態様は、インビトロで、例えばエクスビボ方法の一部として、核酸を細胞へ移行させる方法である。異種薬剤(例えば、核酸送達ベクター、例えば、ウイルスベクター)は、適切な量で、例えば、特定の標的細胞に適切な標準的形質導入方法に従った感染多重度で、細胞へ導入され得る。投与すべきウイルスベクターの力価は、標的細胞のタイプおよび数、および特定のウイルスベクターによって変化し得て、過度の実験を伴わずに当業者によって決定され得る。代表的な実施態様では、少なくとも約103感染単位、より好ましくは少なくとも約105感染単位が細胞へ導入される。
【0203】
核酸送達ベクターが導入される細胞(単数または複数)は任意のタイプであることができ、制限されないが、神経系細胞(末梢および中枢神経系の細胞、特に、脳細胞、例えばニューロンおよびオリゴデンドロサイトを含む)、肺細胞、眼の細胞(網膜細胞、網膜色素上皮、および角膜細胞を含む)、血管細胞(例えば、内皮細胞、内膜細胞)、上皮細胞(例えば、消化管および呼吸器上皮細胞)、筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞および/または横隔膜筋細胞)、樹状細胞、膵臓細胞(膵島細胞を含む)、肝細胞、腎細胞、心筋細胞、骨細胞(例えば、骨髄幹細胞)、造血幹細胞、脾臓細胞、ケラチン生成細胞、線維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、生殖細胞などを含む。代表的な実施態様では、細胞は、任意の前駆細胞であることができる。さらなる可能性としては、細胞は、幹細胞(例えば、神経幹細胞、肝臓幹細胞)であることができる。さらなる代替としては、細胞は、がんまたは腫瘍細胞であることができる。さらに、細胞は、上記に記載したような任意の起源の種由来であることができる。
【0204】
核酸送達ベクターは、改変された細胞を対象へ投与する目的のために、インビトロで細胞内に導入することができる。特定の実施態様では、細胞が対象から取り出されて、核酸送達ベクターがその中に導入されて、それから、細胞が元の対象へ投与される。エクスビボでの操作のために細胞を対象から取り出して、その後に元の対象へ導入する方法は、当技術分野で知られている(例えば、米国特許第5,399,346号を参照)。あるいは、核酸送達ベクターを、ドナー対象由来の細胞へ、培養細胞へ、または、任意の他の適切な起源由来の細胞へ導入することができ、細胞が、それを必要とする対象(すなわち、「レシピエント」対象)へ投与される。
【0205】
エクスビボでの遺伝子送達に適切な細胞は上述のとおりである。対象へ投与する細胞の投薬量は、対象の年齢、状態および種類、細胞のタイプ、細胞によって発現される核酸、投与モードなどによって異なる。典型的に、少なくとも約102~約108細胞または少なくとも約103~約106細胞が、薬学的に許容できる担体において用量あたり投与される。特定の実施態様では、核酸送達ベクターを用いた細胞形質導入が、処置効果的または予防有効量で、製剤担体と組み合わせて対象へ投与される。
【0206】
一部の実施態様では、核酸送達ベクターが細胞内に導入されて、細胞が対象へ投与されて、送達されたポリペプチドに対する免疫原性応答を引き起こすことができる(例えば、導入遺伝子として、またはキャプシド内に発現される)。典型的に、免疫原的有効量のポリペプチドを発現するある量の細胞が、薬学的に許容できる担体と組み合わせて投与される。「免疫原的有効量」は、医薬製剤が投与される対象において、ポリペプチドに対する能動免疫応答を起こすのに十分な、発現されるポリペプチドの量である。特定の実施態様では、投薬量は、防御免疫応答(上記に定義)を生じるのに十分である。与えられる防御の程度は、免疫原性ポリペプチドを投与する利益がその任意の不利な点に勝る限り、完全または永久である必要はない。
【0207】
本発明のさらなる一態様は、異種薬剤(例えば、核酸送達ベクター)を対象へ投与する方法である。核酸送達ベクターの、それを必要とするヒト対象または動物への投与は、当技術分野で知られている任意の手段によることができる。核酸送達ベクターは、処置効果的または予防効果的な用量で、薬学的に許容できる担体において送達されてもよい。
【0208】
核酸送達ベクターはさらに、免疫原性応答を引き起こすために投与することができる(例えば、ワクチンとして)。典型的に、本発明の免疫原性組成物は、免疫原的有効量の核酸送達ベクターを、薬学的に許容できる担体と組み合わせて含む。投薬量は、防御免疫応答(上記に定義)を生じるのに十分であってもよい。与えられる防御の程度は、免疫原性ポリペプチドを投与する利益がその任意の不利な点に勝る限り、完全または永久である必要はない。対象および免疫原は上述のとおりである。
【0209】
対象へ投与される核酸送達ベクター(例えば、ウイルスベクター)の投薬量は、投与モード、処置および/または予防される疾患または状態、個々の対象の状態、特定の核酸送達ベクター、および送達される核酸などに依存し、ルーチンで決定することができる。治療的効果を達成するための例示的な用量は、少なくとも約105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015形質導入単位の力価であり、約108~1013形質導入単位であってもよい。
【0210】
特定の実施態様では、様々な間隔、例えば、毎日、毎週、毎月、毎年などの期間にわたって、1回を超える投与(例えば、2回、3回、4回、またはそれよりも多くの投与)を用いて、所望のレベルの遺伝子発現が達成され得る。
【0211】
例示的な投与モードには、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入(例えばエアロゾルを介する)、口腔(例えば舌下)、膣、髄腔内、眼球内、経皮、内皮内、子宮内(または胚内)、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、筋肉内[骨格筋、横隔膜および/または心筋への投与を含む]、胸膜内、脳内、および関節内)、局所(例えば、皮膚および粘膜表面(気道表面を含む)の両方、および経皮投与)、リンパ内など、ならびに直接的な組織または臓器注入(例えば、肝臓、眼、骨格筋、心筋、横隔膜筋または脳)が含まれる。
【0212】
投与は、対象における任意の部位であることができ、限定されずに、脳、骨格筋、平滑筋、心臓、横隔膜、気道上皮、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、皮膚、および眼からなる群より選択される部位を含む。
【0213】
投与は、腫瘍(例えば、腫瘍またはリンパ節内、またはその付近)に対するものであってもよい。任意の所定の場合における最も適切な経路は、処置および/または予防される症状の性質および重症度、ならびに、用いられる特定のベクターの性質に依存する。
【0214】
本発明による骨格筋への投与は、制限されないが、四肢(例えば、上腕、前腕、上腿、および/または下腿)、背中、首、頭部(例えば、舌)、胸部、腹部、骨盤/会陰、および/または指における骨格筋への投与を含む。適切な骨格筋は、限定されないが、小指外転筋小指外転筋(手)、小指外転筋小指外転筋(足)、母指外転筋、第五中足骨外転筋、短母指外転筋、長母指外転筋、短内転筋、母趾内転、長内転筋、大内転筋、母指内転筋、肘筋、前斜角筋、膝関節筋、上腕二頭筋、大腿二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋、頬筋、烏口腕筋、皺眉筋、三角筋、口角下制筋、下唇下制筋、二腹筋、背側骨間筋(手)、背側骨間筋(足)、短橈側手根伸筋、長橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、小指伸筋、指伸筋、短指伸筋、長指伸筋、短母指伸筋、長母趾伸筋、示指伸筋、短母指伸筋、長母指伸筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、短小指屈筋(手)、短小指屈筋(足)、短趾屈筋、長趾屈筋、深指屈筋、浅指屈筋、短母趾屈筋、長母趾屈筋、短母指屈筋、長母指屈筋、前頭筋、腓腹筋、オトガイ舌骨筋、大殿筋、中殿筋、小殿筋、薄筋、頚腸肋筋、腰腸肋筋、胸腸肋筋、腸骨筋、下双子筋、下斜筋、下直筋、棘下筋、棘間筋、横突間筋、外側翼突筋、外側直筋、広背筋、口角挙筋、眼窩下筋、上唇鼻翼挙筋、上眼瞼挙筋、肩甲挙筋、長回旋筋、頭最長筋、頸最長筋、胸最長筋、頭長筋、頸長筋、虫様筋(手)、虫様筋(足)、咬筋、内側翼突筋、内側直筋、中斜角筋、多裂筋、顎舌骨筋、下頭斜筋、上頭斜筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋、後頭筋、肩甲舌骨筋、小指対立筋、母指対立筋、眼輪筋、口輪筋、掌側骨間筋、短掌筋、長掌筋、恥骨筋、大胸筋、小胸筋、短腓骨筋、長腓骨筋、第3腓骨筋、梨状筋、底側骨間筋、足底筋、広頸筋、膝窩筋、後斜角筋、方形回内筋、円回内筋、大腰筋、大腿方形筋、足底方形筋、前頭直筋、外側頭直筋、大後頭直筋、小後頭直筋、大腿直筋、大菱形筋、小菱形筋、笑筋、縫工筋、最小斜角筋、半膜様筋、頭半棘筋、頚半棘筋、胸半棘筋、半腱様筋、前鋸筋、短回旋筋、ヒラメ筋、頭棘筋、頚棘筋、胸棘筋、頭板状筋、頚板状筋、胸鎖乳突筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、茎突舌骨筋、鎖骨下筋、肩甲下筋、上双子筋、上斜筋、上直筋、回外筋、棘上筋、側頭筋、大腿筋膜張筋、大円筋、小円筋、胸郭、甲状舌骨、前脛骨筋、後脛骨筋、僧帽筋、上腕三頭筋、中間広筋、外側広筋、内側広筋、大頬骨筋および小頬骨筋、ならびに当技術分野で知られている任意の他の適切な骨格筋を含む。
【0215】
異種薬剤は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、四肢灌流(足および/または腕の分離式四肢灌流であってもよい;例えばArruda et al.,(2005)Blood 105:3458-3464を参照)、および/または、直接的な筋肉内注入によって、骨格筋に送達することができる。特定の実施態様では、異種薬剤は、分離式四肢灌流であってもよい四肢灌流により(例えば、静脈内または関節内投与により)、対象(例えば、DMDなどの筋ジストロフィーを有する対象)の四肢(腕および/または足)へ投与される。本発明の実施態様では、異種薬剤は、「流体力学」技術を用いずに有利に投与することができる。従来技術ベクターの(例えば筋肉への)組織送達は、血管系内の圧力を増大させて薬剤が内皮細胞バリアを横切る能力を促進する流体力学技術(例えば、大容量での静脈内/静脈内投与)によってしばしば高められる。特定の実施態様では、異種薬剤は、大容量インフュージョンおよび/または脈管内圧の上昇(例えば正常の収縮期圧よりも高い、例えば、正常の収縮期圧よりも、脈管内圧が5%、10%、15%、20%、25%以下の増加)などの流体力学技術の不存在下で投与することができる。そのような方法は、浮腫、神経損傷および/またはコンパートメント症候群のような、流体力学技術と関連する副作用を減少または回避し得る。
【0216】
心筋への投与は、左心房、右心房、左心室、右心室および/または隔膜への投与を含む。異種薬剤は、静脈内投与、動脈内投与、例えば、大動脈内投与、直接的な心臓注入(例えば、左心房、右心房、左心室、右心室へ)、および/または冠動脈灌流によって、心筋へ送達され得る。
【0217】
横隔膜筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、および/または腹膜内投与を含む任意の適切な方法によることができる。
【0218】
平滑筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、および/または腹膜内投与を含む任意の適切な方法によることができる。一実施態様では、平滑筋内、平滑筋付近、および/または平滑筋上に存在する内皮細胞へ投与することができる。
【0219】
標的組織への送達は、異種薬剤を含んでいるデポーを送達することによっても達成することができる。代表的な実施態様では、異種薬剤を含んでいるデポーが、骨格筋、平滑筋、心筋および/または横隔膜筋組織へ埋め込まれ、または、異種薬剤を含んでいるフィルムまたは他のマトリックスと組織を接触させることができる。そのような埋め込み可能なマトリックスまたは基材は、米国特許第7,201,898号に記載されている。
【0220】
特定の実施態様では、異種薬剤は、骨格筋、横隔膜筋および/または心筋へ投与される(例えば、筋ジストロフィーまたは心疾患[例えば、PADまたは鬱血性心不全]を処置および/または予防するため)。
【0221】
代表的な実施態様では、本発明は、骨格筋、心筋および/または横隔膜筋の障害を処置および/または予防するために用いられる。
【0222】
代表的な実施態様では、本発明は、それを必要とする対象における筋ジストロフィーを処置および/または予防する方法を提供し、当該方法は、処置または予防有効量の異種薬剤を哺乳類の対象へ投与するステップを含み、ここで異種薬剤は、ジストロフィン、ミニ-ジストロフィン、マイクロ-ジストロフィン、ミオスタチンプロペプチド、ホリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、IGF-1、抗-炎症性ポリペプチド、例えばIkappaBドミナント突然変異体、サルコスパン、ユートロフィン、マイクロ-ジストロフィン、ラミニン-α2、α-サルコグリカン、β-サルコグリカン、γ-サルコグリカン、δ-サルコグリカン、IGF-1、ミオスタチンもしくはミオスタチンプロペプチドに対する抗体もしくは抗体フラグメント、および/または、ミオスタチンに対するRNAiをコードする核酸を含む。特定の実施態様では、異種薬剤は、本明細書中の他の場所で説明したように、骨格筋、横隔膜筋および/または心筋へ投与することができる。
【0223】
あるいは、血中または他の組織への全身性送達のために通常循環するポリペプチド(例えば、酵素)または機能性核酸(例えば、機能性RNA、例えば、RNAi、マイクロRNA、アンチセンスRNA)の産生のためのプラットフォームとして用いられる骨格筋、心筋または横隔膜筋へ核酸を送達するために本発明を実施して、障害を処置および/または予防することができる(例えば代謝障害、例えば糖尿病(例えば、インスリン)、血友病(例えば、IX因子またはVIII因子)、ムコ多糖障害(例えば、スライ症候群、ハーラー症候群、シャイエ症候群、ハーラー-シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A、B、C、D、モルキオ症候群、Maroteaux-Lamy症候群など)またはリソソーム蓄積症(例えばゴーシェ病[グルコセレブロシダーゼ]、ポンぺ病[リソソーム酸α-グルコシダーゼ]またはファブリ―病[α-ガラクトシダーゼA])または糖原病(例えばポンぺ病[リソソーム酸αグルコシダーゼ])。代謝障害を処置および/または予防するための他の適切なタンパク質は上述のとおりである。目的の核酸を発現するためのプラットフォームとしての筋肉の使用は、米国特許公開番号2002/0192189に記載されている。
【0224】
したがって、一態様として、本発明は、それを必要とする対象における代謝障害を処置および/または予防する方法をさらに包含し、当該方法は、処理または予防有効量の異種薬剤を対象へ(例えば、対象の骨格筋へ)投与するステップを含み、ここで異種薬剤は、ポリペプチドをコードする核酸を含み、ここで代謝障害は、ポリペプチドの欠乏および/または欠陥の結果である。例示的な代謝障害およびポリペプチドをコードする核酸は本明細書中に記載されている。ポリペプチドは分泌されてもよい(例えば、その本来の状態で、分泌されるポリペプチドであるポリペプチド、または、例えば、当技術分野で知られている分泌型シグナル配列との動作可能な関連性によって、分泌されるように改変されているポリペプチド)。本発明のいかなる特定の理論にも制限されずに、本実施態様によれば、骨格筋への投与は、体循環へのポリペプチドの分泌および標的組織(単数または複数)への送達をもたらすことができる。異種薬剤を骨格筋へ送達する方法は、本明細書中により詳細に記載されている。
【0225】
また、本発明を実施して、全身性送達のためにアンチセンスRNA、RNAiまたは他の機能性RNA(例えば、リボザイム)を産生することもできる。
【0226】
本発明はまた、それを必要とする対象における先天性心不全またはPADを処置および/または予防する方法を提供し、当該方法は、処置または予防有効量の本発明の異種薬剤を哺乳類の対象へ投与するステップを含み、ここで異種薬剤は、例えば、筋小胞体(sarcoplasmic endoreticulum)Ca2+-ATPase(SERCA2a)、血管新生因子、ホスファターゼ阻害剤I(I-1)、ホスホランバンに対するRNAi;ホスホランバン阻害またはドミナント-ネガティブ分子、例えばホスホランバンS16E、ホスホランバン遺伝子を調節するジンクフィンガータンパク質、β2-アドレナリン受容体、β2-アドレナリン受容体キナーゼ(BARK)、PI3キナーゼ、カルサルカン(calsarcan)、β-アドレナリン受容体キナーゼ阻害剤(βARKct)、タンパク質ホスファターゼ1の阻害剤1、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ2型ノックダウンを生じさせる分子、例えば、トランケートされた構成的に活性のbARKct、Pim-1、PGC-1α、SOD-1、SOD-2、EC-SOD、カリクレイン、HIF、チモシン-β4、mir-1、mir-133、mir-206および/またはmir-208をコードする核酸を含む。
【0227】
注入剤は、液体の溶液または懸濁液、注入前の液体中の溶液または懸濁液に適切な固体形態、またはエマルションとして、従来の形態で調製することができる。あるいは、全身ではなく局所的な様式で、例えばデポーまたは徐放性製剤において、異種薬剤を投与してよい。さらに、異種薬剤は、外科的に埋め込み可能なマトリックスに付着させて送達することができる(例えば、米国特許公開番号2004-0013645に記載される)。
【0228】
本明細書中に開示される異種薬剤は、任意の適切な手段によって、対象の肺へ投与することができる(対象が吸入する異種薬剤からなる呼吸用粒子のエアロゾル懸濁液の投与であってもよい)。呼吸用粒子は、液体または固体であってよい。異種薬剤を含んでいる液体粒子のエアロゾルは、当業者に公知のように、任意の適切な手段によって、例えば、圧力駆動型のエアロゾル噴霧器または超音波噴霧器を用いて産生され得る。例えば、米国特許第4,501,729号を参照。異種薬剤を含んでいる固体粒子のエアロゾルは、調剤分野で公知の技術により、任意の固体微粒子薬物エアロゾル発生器を用いて同様に産生され得る。
【0229】
異種薬剤は、CNSの組織(例えば、脳、眼)へ投与することができ、本発明が存在しない場合に観察されるものよりも広範な分配の異種薬剤を有利にもたらし得る。
【0230】
特定の実施態様では、異種薬剤は、遺伝性障害、神経変性障害、精神障害および腫瘍を含むCNSの疾患を処置するために投与され得る。CNSの例示的な疾患は、限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、カナバン病、リー病、レフサム病、トゥレット症候群、原発性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症、進行性筋萎縮症、ピック病、筋ジストロフィー、多発性硬化症、重症筋無力症、ビンスワンガー病、脊髄または頭部の傷害に起因する外傷、テイ・サックス病、Lesch-Nyan疾患、てんかん、脳梗塞、気分障害を含む精神障害(例えば、鬱病、双極性感情障害、持続的な情動障害、二次気分障害)、神経分裂症、薬物依存症(例えば、アルコール中毒および他の物質依存症)、ノイローゼ(例えば、不安、強迫観念的(obsessional)障害、身体表現性障害、解離性障害、悲嘆、産後鬱病)、精神病(例えば、幻覚および妄想)、認知症、偏執病、注意欠陥障害、精神性的障害、睡眠障害、疼痛性障害、摂食または体重障害(例えば、肥満、カヘキシー、神経性食欲不振、および過食症)ならびにCNSのがんおよび腫瘍(例えば、下垂体腫瘍)を含む。
【0231】
CNSの障害は、網膜、後方路(posterior tract)、および視神経が関与する眼の障害(例えば、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症および他の網膜変性疾患、ブドウ膜炎、加齢黄斑変性、緑内障)を含む。
【0232】
すべてではないとしても大部分の眼の疾患および障害は、3つのタイプの示度:(1)血管新生、(2)炎症、および(3)変性の、1つまたは複数と関連する。本発明の異種薬剤を用いて、抗-血管新生因子;抗-炎症性因子;細胞変性を遅延させ、細胞温存(sparing)を促進し、または、細胞増殖を促進する因子、および前述の組み合わせを送達することができる。
【0233】
糖尿病性網膜症は、例えば、血管新生によって特徴付けられる。糖尿病性網膜症は、1つまたは複数の抗-血管新生因子を、眼内(例えば硝子体内)または眼周囲(periocularly)(例えば、テノン下(sub-Tenon’s)領域)に送達することによって処置され得る。1つまたは複数の神経栄養因子を、眼内(例えば硝子体内(intravitreally))または眼周囲に、共送達してもよい。
【0234】
ブドウ膜炎は炎症を含む。1つまたは複数の抗-炎症性因子が、本発明の送達ベクターの眼球内(例えば、硝子体または前房)投与によって投与され得る。
【0235】
網膜色素変性症は、比較によって、網膜変性によって特徴づけられる。代表的な実施態様では、網膜色素変性症は、1つまたは複数の神経栄養因子をコードする異種薬剤の眼球内(例えば、硝子体投与)によって処置され得る。
【0236】
加齢黄斑変性は、血管新生および網膜変性の両方を含む。この障害は、1つまたは複数の神経栄養因子をコードする異種薬剤を眼内(例えば、硝子体)に、および/または、1つまたは複数の抗-血管新生因子を眼内または眼周囲(例えば、テノン下領域)に、投与することによって処置され得る。
【0237】
緑内障は、眼圧の増大および網膜神経節細胞の喪失によって特徴付けられる。緑内障のための処置は、異種薬剤を用いて、興奮毒性ダメージから細胞を保護する1つまたは複数の神経保護剤を投与するステップを含む。かかる薬剤は、眼内(硝子体内であってもよい)に送達されるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)拮抗薬、サイトカイン、および神経栄養因子を含む。
【0238】
他の実施態様では、本発明を用いて、発作を処置、例えば、発作の発症、発生率または重症度を減少させ得る。発作のための治療的な処置の効能は、行動的手段(例えば、眼または口の震え、チック(ticks))および/または電気記録手段(ほとんどの発作は、署名電気記録的(signature electrographic)異常を有する)によって評価され得る。したがって、本発明は、経時的な複数の発作を特徴とするてんかんを処置するためにも用いられ得る。
【0239】
1つの代表的な実施態様では、ソマトスタチン(またはその活性フラグメント)を、本発明の異種薬剤を用いて脳へ投与して下垂体腫瘍を処置する。この実施態様によれば、ソマトスタチン(またはその活性フラグメント)をコードする異種薬剤は、微量注入によって下垂体へ投与される。同様に、かかる処置を用いて、先端巨大症(下垂体からの異常な成長ホルモン分泌)を処置することができる。ソマトスタチンの核酸(例えば、GenBankアクセッションナンバーJ00306)およびアミノ酸(例えば、GenBankアクセッションナンバーP01166;プロセッシングされた活性ペプチドソマトスタチン-28およびソマトスタチン-14を含む)配列は、当技術分野で知られている。
【0240】
特定の実施態様では、異種薬剤は、米国特許第7,071,172号に記載の分泌型シグナルを含むことができる。
【0241】
本発明の代表的な実施態様では、異種薬剤は、CNS(例えば、脳または眼)へ投与される。異種薬剤は、脊髄、脳幹(延髄、脳橋)、中脳(視床下部、視床、視床上部、脳下垂体、黒質、松果体)、小脳、終脳(線条体、大脳、以下を含む:後頭、側頭、頭頂および前頭葉.皮質、基底核、海馬および扁桃体(portaamygdala))、辺縁系、新皮質、線条体、大脳、および下丘へ導入され得る。異種薬剤はまた、眼の異なる領域、例えば網膜、角膜および/または視神経へ投与され得る。
【0242】
異種薬剤は、異種薬剤のより分散した投与のために、脳脊髄液へ(例えば腰椎穿刺によって)送達され得る。異種薬剤はさらに、血液脳関門が撹乱した状況(例えば、脳腫瘍または脳梗塞)において、CNSへ血管内投与され得る。
【0243】
異種薬剤は、制限されないが、髄腔内、眼内、脳内、心室内、静脈内(例えばマンニトールなどの糖存在下で)、鼻腔内、耳内、眼内(例えば、硝子体内、網膜下、前房)および眼周囲(例えば、テノン下領域)送達、ならびに、運動ニューロンへの逆行性(retrograde)送達による筋肉内送達を含む、当技術分野で知られている任意の経路によって、CNSの所望の領域(単数または複数)へ投与することができる。
【0244】
特定の実施態様では、異種薬剤は、液体製剤において、直接注入(例えば定位的注入)によって、CNS内の所望の領域または区画へ投与される。他の実施態様では、異種薬剤は、所望の領域への局所適用によって、またはエアロゾル製剤の鼻腔内投与によって提供され得る。眼への投与は、液滴の局所適用によるものであってよい。さらなる代替としては、異種薬剤は、固体の徐放製剤として投与され得る(例えば、米国特許第7,201,898号を参照)。
【0245】
さらなる実施態様では、異種薬剤を逆行性輸送のために用いて、運動ニューロンが関与する疾患および障害(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS);脊髄性筋萎縮症(SMA)など)を処置および/または予防することができる。例えば、異種薬剤を筋組織へ送達することができ、そこからニューロンへと移行することができる。
【0246】
プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、異種薬剤に関して上述した任意の経路またはスケジュールによって投与され得る。プロテインMまたはその機能性フラグメントまたは誘導体は、異種薬剤とは異なる経路またはスケジュールによって投与され得る。
【0247】
本発明を説明したので、同様のことを、以下の実施例においてより詳細に説明するが、それらは例示目的だけのために本明細書中に含まれており、本発明に対する限定を意図しない。
【実施例】
【0248】
実施例1:方法
AAVウイルス産生:AAVベクターを、HEK293細胞における3プラスミドトランスフェクションによる標準的な手法を用いて生産した。簡潔には、AAV導入遺伝子プラスミドpTR-CBA-Lucを、AAV Rep/Capヘルパープラスミド(pXR2またはpXR8)およびアデノウイルスヘルパープラスミドpXX6-80で共トランスフェクトした。72時間後、細胞培養物を回収して、凍結融解および超音波処理によって溶解させた。浄化した細胞溶解物をDNAse処理して、15%/25%/40%/60%イオジキサノールステップ勾配中で超遠心分離して、陰イオン交換Q-カラムによって精製した。精製されたAAVベクターを、パッケージされたAAV導入遺伝子のセグメントを増幅することを目的とするプライマーを用いたqPCRによって滴定した。
【0249】
タンパク質産生:プロテインM(膜貫通ドメインが欠失しているトランケートされたM.genitaliumプロテインMG281(アミノ酸74~479))をコードしておりN末端His-Tagおよびトロンビン切断部位を有するプラスミドpET-28b(+)は、Rajeshによって提供された。プラスミドをエレクトロコンピテントDH10B細胞中で増殖させて、InvitrogenによるPureLink Maxi-Prepキットを用いて精製した。pET-28b(+)プラスミドを、一晩のスターター培養を用いてBL21/DE3細胞内に一時的にトランスフェクトした。自己誘導培地(InvitrogenによるMagic培地)にスターター培養物を播種して、1L~4L培養容量で、18℃で3日間増殖させた。それから、培養物を遠心分離によってペレット化して、-80℃で凍結させた。
【0250】
タンパク質精製:凍結した細菌細胞培養物ペレットを解凍して、超音波処理によって溶解させて、DNAse処理して、遠心分離によって浄化した。浄化した細菌溶解物をニッケル結合バッファー(20mMイミダゾール、50mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、500mM NaCl、0.02%アジ化ナトリウム)中ヘ透析して、FPLCを用いてニッケルHis-trap FFカラムに通した。それから、ニッケルカラムに結合したプロテインMを、500mMイミダゾールを含んでいるが同一バッファーベースによって溶出させた。それから、プロテインMを、S-100サイズ排除カラムに通して、2%グリセロールを含むリン酸緩衝生理食塩水中ヘ透析して、分光光度法を用いて定量化した。プロテインMの同一性をタンパク質分離のためのSDS-PAGEタンパク質ゲル電気泳動を用いて確認して、その後にクーマシーブルーのタンパク質染色を行ない、48kDaのプロテインMバンドを正しく同定した。
【0251】
ウエスタンブロット:8%SDS-PAGEゲルでのタンパク質分離後に、タンパク質をPVDFメンブレン上に移した。免疫ブロット法を5%脱脂乳中で抗-His一次抗体1:1000希釈(10μg/ml)を用いて行なった。二次ヤギ抗-ヒトIgG抗体を、ホースラディッシュペルオキシダーゼにコンジュゲートした(1:10,000希釈)。
【0252】
細胞培養:HEK-293細胞およびHuh7細胞を、それぞれ、全てのインビトロAAV中和実験および形質導入の増強に用いた。細胞を、10%ウシ胎仔血清およびペニシリン-ストレプトマイシンで補充されたダルベッコ改変イーグル培地を用いて5%CO2中37℃で維持した。
【0253】
ヒトIVIGおよび免疫化マウス血清:10%ヒトIVIG(Gamunex)をGrifols Therapeutics Inc.(Research Triangle Park,NC,USA)から購入した。12匹の異なるマウス(50%雄、50%雌)からの血清を、3×1010ウイルスゲノムのAAV8-FVIIIのIP投与の後に同一ベクターを2週間後にブースト投与して、1回目の投与の6週間後に2回目のブーストをした後に回収してプールした。ヒトIVIGおよびマウス血清を分取して、その後の使用のために-80℃で保管した。
【0254】
インビトロAAV中和アッセイ:NAb分析を、以前に説明されているものをわずかに改変して行なった。細胞を遠心分離によってペレット化して、血清フリーのX-Vivo 10培地中に再懸濁し、それから、48ウェルまたは96ウェルプレートのいずれかのフォーマットでプレーティングした。ヒトIVIGまたは血清を2倍または10倍で段階希釈した。AAV-LucをヒトIVIGまたはマウス血清とともに4℃で1時間インキュベートした後にAAVを添加して、さらに1時間4℃でインキュベートした。それから、AAV+血清インキュベーションを、プレーティング時に、血清フリー培地中に懸濁された細胞と混合した。プロテインMを用いた中和実験において、3つの異なるインキュベーションのシナリオを、4℃で1時間、各ステップで試験した:中和血清を最初にプロテインMとインキュベートした後にAAVとインキュベートする、AAVを最初に中和血清とインキュベートした後にプロテインMとインキュベートする、および、AAVを最初にプロテインMとインキュベートした後に中和血清とインキュベートする。細胞を、200μl培地中の48ウェルプレート、または100μl培地中の96ウェルプレートに播種した。形質導入後、細胞を37℃で24~48時間培養して、AAV-ルシフェラーゼ導入遺伝子を発現させた。Luc活性を測定するために、細胞をパッシブ(passive)溶解バッファー(Promega,Madison,WI,USA)で溶解させて、ルシフェラーゼシグナルを、Wallac 1420 Victor 2自動化プレートリーダーを用いて測定した。NAb力価を、ルシフェラーゼ活性が血清フリーコントロールよりも50%低い最大希釈として定義した。
【0255】
NAb血清のインビボAAV中和および受動移入:AAV NAbを含んでいる異なる量の血清をC57BL/6マウスの後眼窩静脈内に注入して、20分後にAAVを注入した。AAV投与の前にプロテインM処置を受けるマウスについては、プロテインM(2:1比については6.3mg、1:1比については3.15mg、または、0.5:1比については1.58mg)を、後眼窩静脈によって、血清注入の5~15分後に送達した。AAVを、2×1012粒子/kgのAAV-Lucベクターの全身性注入によって5分後に投与した。イメージングをAAV投与の1日後ならびに注入後の1週間および9日の時点で行なった。
【0256】
実施例2:
プロテインMは、AAV形質導入に対するIVIGの阻害活性を妨げる(ablates)
プロテインMが抗体をブロックする機能を試験するために、ヒト静脈内免疫グロブリンγ(IVIG)によるAAVのインビトロ中和アッセイを設定した。IVIGの段階希釈を用いてAAV中和アッセイを行ない、所定量のAAV2を中和するIVIGの量を決定した。AAV-ルシフェラーゼベクターを用いた細胞形質導入により生産されたルシフェラーゼ活性は、遺伝子発現の関数的(functional)リードアウトとしての役割を果たした。中和を、IVIGなしコントロールに対して正規化されたルシフェラーゼ活性のパーセントとして決定した。12.5μgのIVIGは75%(+/-5%)のAAV2を中和することが分かり(
図1)、この量のIVIGを、実験デザインを進めるのに選択して、AAV中和に関してIVIGをブロックするプロテインMを試験した。次に、トロンビン切断によってHisタグを除去することによって回収したプロテインM(配列番号2)の用量希釈系列を行ない、12.5μgのIVIGをブロックするその能力を調べ(
図2)、ここで、プロテインMをIVIGとともに1時間インキュベートし、その後にAAV2と1時間4℃でインキュベートした後に、細胞培養物の形質導入を行なった。1分子のIgGに対する2分子のプロテインMのモル比は、IVIGなしコントロールと同等レベルまで中和を防止するのに十分であることが分かった。さらに、IVIGに対するプロテインMのより高いモル比は、IVIGなしコントロールよりも高いレベルまでルシフェラーゼシグナルを増強させることが分かった(
図2)。1分子のIgGに対する8分子のプロテインMは、ルシフェラーゼ発現を2倍増大させた。より高いモル比によって増強がさらに増大するかどうかを見るために、8:1および20:1比のプロテインM対IVIGを同じ実験条件において試験した。プロテインM用量を2.5倍(8:1から20:1比に)増大させても、対応するシグナルは8:1比に対して0.25倍増しにしかならないので(
図3)、さらなる増強はほとんどないことが分かった。さらに、プロテインMが免疫グロブリンをブロックする活性は、N末端Hisタグの切断に依存しないことが分かり、したがって、Hisタグを切断していないプロテインMを次の実験に用いた。
【0257】
実施例3:AAVベクタービリオンとプロテインMの相互作用は、AAV形質導入を増強する
本発明者らによる以前に研究により、AAVビリオンと血清タンパク質の相互作用はAAV形質導入を増強させることができることが示されている。AAV形質導入に対するプロテインMの増強機能をさらに特性化するために、IVIGを用いずに2倍段階希釈のプロテインMを細胞培養物の形質導入の前にAAVとともに1時間インキュベートして、用量応答アッセイを行なった。
図4では、以前の実験による8:1比(33μgプロテインM)のプロテインMは、IVIGの不存在下でAAV形質導入を用量依存的に増強することができること、および、その増強は、2×10
8ウイルス粒子に関して2μg未満のプロテインMの希釈で失われることが分かった。増強が失われるプロテインM分子対AAV粒子の等価モル比は40,000:1未満であった。次に、プロテインMによる形質導入の増強は、AAVとプロテインMのインキュベーションに依存することが示された。
図5では、細胞培養物の形質導入アッセイを行なっており、ここで、プロテインMは、細胞に添加する1時間前にAAVに添加されたか(事前インキュベーション、-1h時点)、事前インキュベーションせずに、形質導入の時点で添加されたか(形質導入付近、0h時点)、または、AAVを細胞に添加した18時間後に添加された(形質導入後、18h時点)。用量依存的増強が、
図4と同様に事前インキュベーション群において見られるが、プロテインMおよびAAV2がアッセイの前に一緒にインキュベートされない他の2群では見られないことが分かった。さらに、この結果は、形質導入の時にプロテインMを細胞に添加することはルシフェラーゼシグナルに対して影響を与えなかったので、プロテインM増強のメカニズムが、ベクターキャプシドとの相互作用を含んでおり、細胞に対するプロテインMの生物学的効果は含まないことも示している。最後に、プロテインMは、IVIGが最初にAAV2と1時間事前インキュベートされて、その後にプロテインMと1時間インキュベーションした場合、中和をブロックすることができないこと、および、プロテインMによるAAV2ルシフェラーゼシグナルの増強は、AAV2がIVIGによって完全に中和されていない場合にのみ生じることが示された。このアッセイについては、12.5μgのIVIG(75~80%のAAV2を中和する)、50μgのIVIG(99%のAAV2を中和する、
図1)、または200μgのIVIG(100%のAAV2を中和する)を用いた。
図6では、99~100%のAAV2がIVIG(50μgおよび200μg)によって中和された場合、プロテインMは中和をブロックすることができず、形質導入の増強を与えることができないことが観察された。
図2および
図3のデータと合わせて、この結果は、免疫グロブリンに対する結合後の過剰量のプロテインMは、AAVビリオンと相互作用することが可能であり、形質導入の増強をもたらすことを示唆している。
【0258】
実施例4:AAVベクタービリオンとプロテインMの事前インキュベーションは、IVIGのAAV中和を保護する
次に、プロテインMを最初にIVIGと相互作用させる代わりに、プロテインMを最初にAAVと事前インキュベーションして、その後にIVIGとインキュベーションする効果を試験することにした。プロテインMをAAV2とともに1時間インキュベートした後にIVIGを添加して、さらに1時間4℃でインキュベートした後に細胞形質導入を行なった場合の、プロテインMが中和をブロックする能力を試験した。
図7では、プロテインM濃度を変化させず維持して(8.25μg)、IVIGの用量を50μgから3.12μgまで段階希釈した場合(1:2~8:1モル比のプロテインM対IVIG)、中和からのベクターの保護が2:1以上の比で達成されることが分かった。これは、プロテインMがAAV添加の前にIVIGとともにインキュベートされた場合の以前の結果と似ている。IgGの他に他のタイプのタンパク質が血清中に存在するインビボ状況により近い環境をシミュレートする試みにおいて、同様のインビトロ中和試験を、10%ウシ胎児血清(FBS)の存在下で行なった。ウシ血清に関する製造元のIgG定量化に従って、培地容量は、ウェルあたり約350μgのウシIgGを含むと概算された。それから、ウェルの半分において25μgのIVIGまたは血清フリー培地をスパイクして、AAVを中和し、または中和活性なしのコントロールとして用いた。
図8では、プロテインMが形質導入前にAAVとともに1時間インキュベートされて、総IgG(ヒトおよびウシ)が異なるモル比4:1、2:1、および1:1(プロテインM対IgG)で添加された場合、中和からの保護が1:1比でさえも観察された。これらの結果は、プロテインMが、他の血清タンパク質が存在している場合であっても、免疫グロブリンに結合してブロックすることが可能であることを示す。
【0259】
実施例5:インビトロでの、AAVに対するミューリン血清の中和活性に対する、プロテインMの効率的なブロック機能
IVIGによる知見を実際の状況に移すために、インビトロでの中和実験を、最初に、AAV8キャプシドベクターで免疫化されたマウス由来の血清を用いてAAV8-ルシフェラーゼベクターで行なった。免疫化マウス由来の血清およびプロテインMの両方を段階希釈して2:1のモル比を維持した場合、結果を血清のみのコントロールと比較すると、プロテインMは、概算で約100倍の希釈の1:2,564の力価の中和血清に対して、中和からエスケープさせることが分かった(50%中和が、0.0039μlの血清であるのに対し、プロテインM存在下では0.2744μlの血清、
図9)。
【0260】
実施例6:インビボでの、AAVに対するミューリン血清の中和活性に対する、プロテインMの効率的なブロック機能
次に、インビボ実験を行ない、異なる容量の中和血清を、後眼窩注入を介してナイーブマウスに受動移入した。マウスに5~15分間、血清灌流させた後、プロテインMを、同じく後眼窩注入を介してマウスに全身投与して、5分後にAAV8-Luc(2×10
10ウイルスゲノム)を投与した。
図10は、マウス内の総免疫グロブリンに対して概算のモル比2:1(6.3mg)のプロテインMは、1μlのAAV8-NAb血清(力価1:2,564)によるAAV8の中和を防止することができることを示す。このことは、50%よりも多くのAAV8-Lucが1μl~0.001μlの血清容量で中和されて1,000倍差の濃度にわたる(over a 1,000-fold difference)AAV NAbエスケープを表わす、段階希釈された抗-AAV8血清のインビボ中和アッセイと対比される(
図11)。
【0261】
実施例7:プロテインM/免疫グロブリン複合体の安定性
免疫グロブリンとプロテインMの複合体がどのくらい安定であるか試験するために、アッセイを最初にインビトロで行なった。プロテインMをマウス血清と2:1の分子比で、1時間~72時間の異なる持続時間、37℃で事前インキュベートして、それから、中和分析のために4℃でさらに1時間、AAV8ベクターを添加した。
図12に示すように、マウス血清中の抗-AAV8免疫グロブリンとプロテインMとの間で事前に形成された複合体は、細胞培養物に添加される前に37℃でインキュベートした場合、中和血清を含むがプロテインMを含まないコントロールまたはPBSもしくは培地のみを含むコントロールと比較すると、72時間以上安定であった。この結果は、プロテインMと免疫グロブリンとで形成された複合体は、インビトロで非常に安定であることを示唆している。
【0262】
次に、プロテインMのインビボ安定性を、0.3μlのAAV8中和血清の受動移入後に試験した。プロテインMが投与されて5分ではなく3時間待った場合は、プロテインMが抗体をブロックする機能は、3.5×10
5から1×10
5光子/秒/cm
2/自発率(spontaneous rate)に約70%減少することが分かった(
図13)。この結果は、プロテインMのNAbブロック効果がインビボで短期間であることを示す。
【0263】
AAVベクターを用いた遺伝子療法は、臨床試験において成功している。しかしながら、ヒト集団におけるAAV中和抗体の高い出現率は、より多くの患者がこの効果的な遺伝子送達から利益を受けるのを妨げている。本研究では、マイコプラズマ由来のプロテインMが、NAbと相互作用してAAV形質導入を増強することが可能であることが見いだされた。NAb活性をブロックするために必要なプロテインMの最小用量は免疫グロブリンの2倍の分子(2 fold more molecules than)であった。AAVビリオンとプロテインMの直接的な相互作用もまた、AAV形質導入を増大させた。中和抗体アッセイは、インビトロでAAV免疫化マウス血清をプロテインMとともにインキュベートした場合に、NAb活性が約100倍低減し、プロテインMが適用された場合に、NAb陽性血清を養子移入したマウスにおいて1000倍にわたる(over 1000 fold)保護が観察されることを示した。免疫グロブリンとプロテインMの複合体はインビトロで経時的に(over time)安定であったが、プロテインMは、インビボで、免疫グロブリンの中和からの、その保護機能を徐々に失う。
【0264】
AAV NAbを克服するために、複数のストラテジーが研究室において利用されている。1つのアプローチは、コーティングのためのポリマーまたはエキソソームを用いて、Nab認識をブロックするためにAAV表面をマスクすることである。このアプローチは有望ではあるが、AAV形質導入プロファイルを変更し得る。2つめのアプローチは、error-prone PCRまたはDNAシャッフリングを用いてAAVキャプシド変異のライブラリーを産生し、NAb存在下でNAbエスケープ突然変異体をインビトロおよびインビボで選択することである。このアプローチは、新規のキャプシドを産生したが、これらの突然変異体は動物組織から単離されて動物組織において試験され、動物試験によるデータは常にヒトに移されるわけではなく、ヒト組織におけるAAV形質導入を予測するために利用できる信頼性のある(authentic)システムは存在しないので、ヒトにおける形質導入効率が未知であるキャプシドを生産する潜在的制限を抱えている。3つめのアプローチは、NAb交差反応性が低いかまたは存在しない、AAVの代替の血清型を使用することである。このポピュラーな(popular)ストラテジーは、論理的かつ動物モデルにおいて成功的であるが、動物では予測され得ない、大部分のヒトにおける交差反応性の存在について懸念が残る。最後の実験アプローチは、AAVキャプシド表面上のNAb結合ドメインを合理的に改変してNAb結合部位を除去することである。このストラテジーは、モノクローナル抗体エピトープと、AAVビリオンの構造に関する情報を必要とし、ヒト血清由来のNAbはポリクローナルであるという事実に起因して本質的に制限され、全ての生産されたNAbを表わすヒト由来のmAbを得ることは不可能である。いくつかの臨床関連のアプローチも研究されている:1つの例は、ベクター送達の前に血漿交換を行なうことである。しかしながら、各回のアフェレーシスの相対的非効率性および低力価のNAb(<1:5)でさえAAV形質導入を抑制することができるという事実に起因して、このストラテジーは、AAV NAbの開始力価がより低い患者にのみ適切であり、複数セッションのアフェレーシスを必要とする。同様に、抗-CD20抗体(リツキシマブ)の使用は、B細胞の枯渇を達成することができるが、長い時間がかかり(約6~9ヶ月)、少数の対象においてAAV NAbを減少させるのに効果的なだけである。最後の臨床アプローチは、過剰な空AAVキャプシドをNAbに関するデコイとして使用することである。空の粒子の添加は、AAVキャプシドの負荷(load)を増大させ、それにより、キャプシド特異的な細胞傷害性免疫応答が介在するAAV形質導入細胞の除去が潜在的に増大し、おそらく、効果的な形質導入に関して完全なAAV粒子と競合するという懸念が残る。さらに、空のキャプシドは、完全なAAVベクターよりも大きな肝臓炎症を誘導し得る。NAb保護の低効率または上記アプローチの複雑性と比較して、本研究では、中和抗体活性をブロックするための、より大きな潜在性を有するストラテジーが、免疫グロブリン結合プロテインMを用いて示された。NAb回避能力は、プロテインMを用いた場合、インビトロで100倍(for 100 fold)、インビボでは1000倍にわたり(over 1000 fold)達成された。
【0265】
プロテインMは、抗体軽鎖および重鎖上の保存領域に普遍的に結合して、抗原認識またはCDR領域との構造的干渉を生じさせることによって哺乳類のIgG、IgM、およびIgA抗体クラスをブロックする普遍的な抗体結合タンパク質として機能する。プロテインMは、抗体に結合して、抗原抗体結合を妨げるが、以前に形成された抗原抗体複合体を破壊しない。抗体とプロテインMの相互作用は、ウエスタンブロット、ELISA、x線結晶学、電子顕微鏡、およびバイオレイヤー干渉法によって検証されている。プロテインMは、ベクターとは独立に用いることができるので、以前にFDAによって承認された遺伝子療法を含む処置レジメンに取り込むことができる。このことは、キャプシドに基づく免疫回避よりも有利である。なぜならば、それぞれの個々のキャプシドは、それぞれの疾患標的についてその独自の臨床試験を経なければならないからである。プロテインMの特性に基づき、このタンパク質は、任意のウイルスベクターが介在する遺伝子送達に適用することができるだけでなく、体液性免疫応答が介在するクリアランスを回避するためのCRISPR/cas9のような一過性のタンパク質療法にも適用することができる。また、プロテインMは、自己抗体により生じる自己免疫障害を処置する潜在性も有する。
【0266】
本研究では、少なくとも2分子またはそれよりも多くのプロテインMが、1分子の免疫グロブリンをブロックするために必要であり、全身投与後のNAb回避のために血中の全ての免疫グロブリンと相互作用するためには多くの量のプロテインMが必要となり得ることが示された。高用量の組み換えタンパク質、例えばヒト血清アルブミンおよび免疫グロブリンが臨床試験において用いられているが、高用量のプロテインMの潜在的な合併症による懸念は、臨床試験前に大きな動物において対処される必要がある。プロテインMがAAV投与のために局所的に用いられる場合は大きな問題ではないだろう。
【0267】
インビトロ試験は、プロテインM/免疫グロブリンの複合体が相対的に長期間安定であることを示したが、インビボ実験では、AAVベクターが、プロテインM適用のずっと後に投与された場合、プロテインM機能の喪失が徐々に表れた。血中でのプロテインM/免疫グロブリン複合体の動力学および動態学を理解することが重要であり;この情報は、プロテインMの投与後のAAV注入に関するウインドウに関する価値のある情報を提供する。
【0268】
他の懸念は、繰り返し投与に関するプロテインMの免疫原性である。プロテインMは外来タンパク質であるので、体液性免疫応答を誘発して抗体が産生される。プロテインMは、全ての免疫グロブリンに結合することによってその保護機能を発揮し、プロテインMに対する特異的なIgの量は、全てのIgの非常に小さな部分であり、したがって、高用量のプロテインMがAAV NAbをブロックする目的のために用いられる場合、プロテインM特異的なIgの量は、非常に少量のプロテインMを中和するだけであり、したがって、投与されるプロテインMは、AAV NAbからAAVを保護する機能に影響し得ない。プロテインMは、B細胞表面に結合することができ、B細胞の増殖を刺激する潜在性を有する。以前の研究により、無傷のプロテインMはB細胞の増殖を誘導することが可能であるが、トランケートされたプロテインMは、この機能を失うことが示されている。プロテインM投与後のインビボでの長期のフォローアップが行われるべきである。
【0269】
結論として、この結果は、1分子のIgGに対してプロテインMが2分子以上の分子比で存在する場合に、プロテインMは、免疫グロブリンがAAVを中和するのを防止することを示している。AAVベクターの保護は、AAVの免疫グロブリン中和前にプロテインMが免疫グロブリンと相互作用することに依存している。プロテインMは、インビボで、1,000倍範囲のNAb力価にわたってAAVを中和から保護することができる。この研究は、NAbを有する患者における将来のAAV臨床試験において、または再投与のために、NAb活性からのAAVベクタービリオンの保護のためのプロテインMの使用に対して重要な知見を提供した。
【0270】
実施例8:増強された特性を有する改変されたプロテインM変異体
上記の実施例は、遺伝子療法ベクターに対する中和抗体を回避するための、抗体をブロックするタンパク質としてのマイコプラズマ・プロテインMの使用を説明している。異なるマイコプラズマ種由来の天然起源プロテインMホモログは、大部分の哺乳類抗体クラスにナノモルの親和性で結合するが(Grover et al.,Science 343:656(2014))、天然起源タンパク質の多くの特徴は、治療薬としての使用に不適切である。ネイティブのプロテインMは可溶性でないが、細菌細胞膜内にそれを固定するN末端膜貫通ドメインによって膜結合されている。さらに、ネイティブのタンパク質は、薬物様分子として予想外に挙動し得る無秩序な(disordered)C末端を有する。N末端膜貫通ドメインおよび無秩序なC末端セグメントが欠失している、ネイティブのプロテインMトランケート型(Grover et al.,Science 343:656(2014)によるプロテインM TD)を、治療用抗体ブロッキング分子として用いた検証が行われたが、このタンパク質は、体温(37℃)でインキュベートした場合に構造的安定性がないという重要な知見がなされた。
【0271】
トランケートされたプロテインM(配列番号3)を、単純なインビトロでのバッファー懸濁液中で37℃に曝露すると、目に見える析出および凝集が短時間(15分~1時間)で生じた。円偏光二色性を用いた分析において、タンパク質を37℃に加熱することは、1時間以内の明瞭なタンパク質アンフォールディングのイベントと関連し、タンパク質の即時的な融解が41.2℃で生じるが、2時間にわたって続く20℃インキュベーションでは、アンフォールディングのイベントは生じないことが判明した(
図14)。タンパク質のアンフォールディングは、ウエスタンブロットによって評価される溶液中の可溶性画分の測定される低減とも相関する。不安定なタンパク質を用いることの治療的制限を克服するために、合理的な設計アプローチを用いて、M.genitalium(MG281)およびM.pneumoniae(MPN400)由来の突然変異体ホモログを含むトランケートされたプロテインMの突然変異類似体を産生した。このアプローチは、タンパク質モデリングへの入力としてプロテインMの結晶構造およびアミノ酸配列(PDB ID:4NZRおよび4NZT)、ならびに、Rosettaと呼ばれるエンジニアリング・ソフトウェアを用いた。自由エネルギー計算および3Dモデルを用いて、どのアミノ酸配列変化が三次構造の安定化をもたらすか予測し、850+を超えるアミノ酸置換のリストを出力した。個々の突然変異体および組み合わせた複数の突然変異体のDNA合成により、合理的に設計された変異ライブラリーを用いて突然変異体タンパク質を産生した。表4は、熱安定性に関して野生型タンパク質よりも良いスコアを有していた885個のコンピューターによって同定された点突然変異をリスト化している。表5は、熱安定性に関して野生型タンパク質よりも実質的に良い(-3.0デルタスコアよりも良い)スコアを有していた165個のコンピューターによって同定された点突然変異をリスト化している。
【0272】
示差走査型蛍光透視法を用いて、異なるプロテインM突然変異体を検証して、タンパク質融解温度を計算した(
図15、
図16)、それから、突然変異体を異なる時間、37℃の温度曝露に供して、溶解度(
図17A~17C)およびインビトロ中和アッセイにおけるプールしたヒト静脈内IgG(IVIG)によるAAV中和を防止する能力(18A~18C)を測定した。M.genitalium由来のプロテインMの類似体を試験するのに加えて、M.pneumoniaに由来する類似体も生産した。それから、いくつかの突然変異体をバイオレイヤー干渉法(BLI)によって試験して、マウスIgGに対する突然変異体タンパク質の親和性を決定し、突然変異体が、免疫グロブリン基質に関する突然変異体の親和性を変化させることができることが示された(
図21、22)。突然変異体はまた、安定性野生型プロテインMよりも広いpH範囲にわたる安定性によって証明されるように安定性の増大も示した(
図26)。MG29は、37℃で増大した安定性を有しておりIgGに関するナノモル親和性を維持している、リード類似体の1つであり、AAVキャプシドに対するマウスの直接免疫化後のインビボでのAAV中和抗体のブロックを試験するために用いた。一方の脚にリン酸緩衝生理食塩水で製剤化したAAVを筋肉内注入し、他方の脚にMG29で製剤化したAAVを筋肉内注入した結果により、MG29が、AAV免疫化マウスにおいてAAV中和抗体をブロックし、効果的な遺伝子送達およびAAVの再投与を可能することが示された(
図19、20)。
【0273】
Rosettaソフトウェアを用いた合理的なエンジニアリング・ストラテジーの第2ラウンドは、親和性および結合を増強または減少させる突然変異体プロテインM類似体の結合部位の改変を予測するための、平均モデルの多くのヒト免疫グロブリン構造を用いた突然変異体タンパク質の親和性の変更を含んでいた。さらに、合理的な設計ストラテジーの第3ラウンドは、Rosettaモデルおよび異なるマイコプラズマ種由来の天然起源プロテインM配列の多様性の両方の使用を組み入れて、天然には存在しない抗原的に別個の類似体を作製した。これらの類似体は、全タンパク質または個々エピトープの、キメラ、モザイク、またはデノボの合理的に変更されたアミノ酸突然変異体であることができる。同一または異なる類似体は、プロテインM類似体に対して生産された阻害抗体の存在下でさえ、複数ラウンドの再投与のためにAAVとともに用いることができる。これは、プロテインM類似体が、抗体結合および抗原認識(さらには阻害抗体によるそれ自身の認識)のブロックに関して直接的に競合するからである。飽和用量のプロテインM類似体は、初回の免疫曝露後にプロテインM類似体に対して産生される少量の免疫グロブリンに対して過剰である(in excess of the small portion of)。さらに、エピトープ多様性が増大したプロテインM類似体の作製は、プロテインM阻害抗体からの免疫回避のさらなる層を提供することができる。リスト化されたエンジニアリング・ストラテジーのそれぞれを組み合わせて、または互いの上に重ねて、複数の異なる特性を有するプロテインM類似体を作製することができると考えられる。
【0274】
最後に、タンパク質産物収率が増強されたプロテインMのDNAコドン最適化バージョンを生産した(
図25)。親トランケート型プロテインM配列の2つのコドン最適化バージョンが生産された:一方の配列は、E.coliおよびH.sapiensコドン使用頻度の両方について最適化され、他方はH.sapiensコドン使用頻度についてのみ最適化された。デュアルのE.coliおよびH.sapiensコドン構築物を用いてE.coliにおいてタンパク質を生産し、親である非最適化プラスミドと比較してタンパク質収率が4倍増加した。H.sapiensのみ最適化された構築物は、IL-2分泌ペプチドまたはアルブミン分泌ペプチド配列を含んでおり、培養培地からのプロテインM類似体の回収のために哺乳類細胞株からのタンパク質の分泌を可能にする。プロテインM突然変異類似体は、両方のタイプの最適化DNA配列にクローニングまたは合成されて、増強されたタンパク質生産のために用いられる。37℃で安定なプロテインM類似体は、分泌後、タンパク質アンフォールディングの影響を受けずにヒト細胞内で培養することができる。さらに、プロテインM類似体のグリコシル化部位は、結合部位のグリコシル化を除去するため、または外側表面にグリコシル化を追加するために置換されている(類似体MG28(N274D)など)。外側表面へのグリコシル化部位の追加は、プロテインM類似体の免疫回避を増強させるため、および、プロテインM類似体の複数回投与に関するプロテインM阻害抗体の認識を減少させるための、別のメカニズムである。最後に、プロテインM類似体のDNA配列は、37℃で安定であってグリコシル化部位が除去または新たに追加された分泌タンパク質を生産するために、哺乳類細胞株に安定的に組み込まれる。
【0275】
方法
【0276】
AAVウイルス産生:AAVベクターを、HEK293細胞における3プラスミドトランスフェクションによる標準的な手法を用いて生産した。簡潔には、AAV導入遺伝子プラスミドpTR-CBA-Lucを、AAV Rep/Capヘルパープラスミド(pXR2またはpXR8)およびアデノウイルスヘルパープラスミドpXX6-80で共トランスフェクトした。72時間後、細胞培養物を回収して、凍結融解および超音波処理によって溶解させた。浄化した細胞溶解物をDNAse処理して、15%/25%/40%/60%イオジキサノールステップ勾配中で超遠心分離して、陰イオン交換Q-カラムによって精製した。精製されたAAVベクターを、パッケージされたAAV導入遺伝子のセグメントを増幅することを目的とするプライマーを用いたqPCRによって滴定した。
【0277】
タンパク質産生:プラスミドpET-28b(+)は、プロテインM類似体(膜貫通ドメインが欠失しているM.genitaliumまたはM.pneumonia由来のトランケートされたタンパク質)をコードし、N末端His-Tagおよびトロンビン切断部位を有する。プラスミドをエレクトロコンピテントDH10B細胞中で増殖させて、InvitrogenによるPureLink Maxi-Prepキットを用いて精製した。pET-28b(+)プラスミドを、一晩のスターター培養を用いてBL21/DE3細胞内に一時的にトランスフェクトした。自己誘導培地(InvitrogenによるMagic培地)にスターター培養物を播種して、18℃で3日間増殖させた。それから、培養物を遠心分離によってペレット化して、-80℃で凍結させた。
【0278】
タンパク質精製:凍結した細菌細胞培養物ペレットを解凍して、超音波処理によって溶解させて、DNAse処理して、遠心分離によって浄化した。浄化した細菌溶解物をニッケル結合バッファー(20mMイミダゾール、50mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、500mM NaCl、0.02%アジ化ナトリウム)中に透析して、FPLCを用いてニッケルHis-trap FFカラムに通した。それから、ニッケルカラムに結合したプロテインMを、500mMイミダゾールを含んでいるが同一バッファーベースによって溶出させた。それから、プロテインMを、S-100サイズ排除カラムに通して、2%グリセロールを含むリン酸緩衝生理食塩水中へ透析して、分光光度法を用いて定量化した。プロテインMの同一性をタンパク質分離のためのSDS-PAGEタンパク質ゲル電気泳動を用いて確認して、その後にクーマシーブルーのタンパク質染色を行ない、45kDa~48kDaのプロテインMバンドを正しく同定した。
【0279】
一部のタンパク質の生産のために、2つのストラテジーのいずれかを実施して、プロテインM変異体を精製した。第1のプロトコル(Ni-Purity)は、NanoDSFのための小スケール生産に関するものであった。細胞ペレットを、2.5mg/mLリゾチーム、25%B-PER、75%リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4、およびプロテアーゼ阻害剤(PMSF、ベスタチン、およびペプスタチン)からなるバッファーと混合することによって溶解させた。室温での30分の混合後、粗溶解物を15,000rcfで20分間遠心分離して、上清をNi樹脂とともに1時間4℃でインキュベートした。それから、樹脂を洗浄して(PBS+20mMイミダゾール)、タンパク質を(PBS+500mMイミダゾール)で溶出させた。溶出したタンパク質を、Zeba脱塩カラムを用いてPBS pH7.4中に交換した後、安定性アッセイを行なった。第2のプロトコル(SEC-Purity)は、大スケールの生産に関するものであり、タンパク質試料からさらなる汚染物質/凝集体を除去した。超音波処理を介して細胞を溶解させ、ニッケル樹脂を用いて精製し(第1のプロトコルと同一のバッファー)、最後にPBS+2%グリセロール中へサイズ排除クロマトグラフィーを行なった後、試料を凍結させた。
【0280】
ウエスタンブロット:8%SDS-PAGEゲルでのタンパク質分離後に、タンパク質をPVDFメンブレン上に移した。免疫ブロット法を5%脱脂乳中で抗-His一次抗体1:1000希釈(10μg/ml)を用いて行なった。ホースラディッシュペルオキシダーゼにコンジュゲートされた二次ヤギ抗-ヒトIgG抗体(1:10,000希釈)。
【0281】
タンパク質の融解温度およびアンフォールディングの決定:融解温度(Tm)を、ナノ示差走査型蛍光定量法(NanoDSF)を用いて決定し、タンパク質のアンフォールディングを、円偏光二色性アッセイを用いて異なる温度で決定した。一次導関数の変曲点は、Tmまたはアンフォールディングを示す。タンパク質を、プロトコル1(Ni-Purity)に従って精製した。
【0282】
溶解度アッセイ:熱安定性経時変化を、それぞれのSEC精製タンパク質(0.4mg/mL)の7個のアリコートを37℃で異なる時間インキュベートすることによって行なった。析出したタンパク質を、試料を15,000×Gで10分間遠心分離することによってペレット化させてから、SDS-PAGEのためにゲルをローディングした。タンパク質を、プロトコル2(SEC-Purity)に従って精製した。
【0283】
バイオレイヤー干渉法による親和性評価:バイオレイヤー干渉法を37℃で行なって、プロテインM構築物の親和性を評価した。タンパク質を、プロトコル2(SEC-Purity)に従って精製した。1000nM~15.6nMの範囲の2倍希釈系列の各M構築物は、ForteBio Kineticsバッファー(PBS+洗浄剤)を用いて行なわれた。抗-マウスIgG Fc Captureバイオセンサーに対する結合を評価した。各プロトコルは、ベースライン、会合、および解離ステップを、それぞれ10分、5分、および5分含んでいた。データは、バッファー中の会合ステップと並行して実行された参照センサーから差し引かれた。親和性データを、ForteBioデータ分析v9.0ソフトウェア内の1:1曲線フィットに基づいて計算した。報告された安定状態の結合定数を、各濃度(n=7)における最大応答に基づいて計算した。X2を最小限にするために、反応速度データは、250~15.6nM希釈範囲(n=5)に関するデータのみ含めた。
【0284】
構造モデルおよび合理的なタンパク質エンジニアリング:プロテインM(PM)の類似体の熱安定性の最適化を、免疫グロブリンに結合したPMの既存の結晶構造(4NZTおよび4NZR)に基づき、インシリコの合理的なタンパク質エンジニアリング・アプローチを用いて達成した。Rosettaソフトウェア・パッケージを用いて、PMペプチドを安定化させる突然変異を同定した。第1のプロトコルは、部位飽和突然変異誘発をインシリコで行ない、隣のアミノ酸(amino acid neighbors)を突然変異残基付近に再充填(repack)させた。第2のプロトコルは、結晶構造内の充填不足(under-packed)の領域においてコンビナトリアル突然変異を生じさせた。突然変異体を、野生型アミノ酸と置換の間のスコアの違いに従ってランク分けした。さらなる目視検査を行なって、好ましい突然変異体を同定した。突然変異体を、pET-28b+ベクター内にTwist Biosciencesによってクローニングして合成した。結合部位の親和性の変更および別個の抗原性を有するPM類似体の作製のためのさらなる設計ストラテジーを行なった。
【0285】
MP WTのホモロジーモデルを、Swiss-Modelウェブサーバを用いて構築した(
図24)。MGとMP WTアイソフォームの間の保存スコアを、BLOSUM90マトリックスに従って計算した。画像をPyMolで表した(rendered in)。
【0286】
細胞培養:HEK-293細胞またはHuh7細胞を、全てのインビトロAAV中和実験に用いた。細胞を15cm組織培養プレート上で増殖させ、10%ウシ胎仔血清およびペニシリン-ストレプトマイシンで補充されたダルベッコ改変イーグル培地を用いて5%CO2中37℃で維持した。
【0287】
インビトロ中和実験のためのヒトIVIG:10%ヒトIVIGのストック(Gamunex)を、Grifols Therapeutics Inc.(Research Triangle Park,NC,USA)から購入した。個々のアリコートをリン酸緩衝生理食塩水中1mg/mLに希釈して、後の使用のために-80℃で保管した。12匹の異なるマウス(50%雄、50%雌)に、3×1010ウイルスゲノムのAAV8-FVIIIのIP投与の後、2週間後に同一ベクターのブースト投与、および1回目の投与の6週間後に2回目のブーストをした後、血清を回収してプールした。マウス血清を分取して、後の使用のために-80℃で保管した。
【0288】
インビトロAAV中和アッセイ:Nab分析を、わずかな改変をして以前に記載されるとおりに行なった(Wang et al.,Gene Ther.22:984(2015))。細胞を遠心分離によってペレット化して、血清フリーX-Vivo10培地中に再懸濁させ、それから、48ウェルまたは96ウェルプレートのフォーマットでプレーティングした。ヒトIVIGまたは血清を、2倍または10倍で段階希釈した。AAV-Lucを、ヒトIVIGまたはマウス血清とともに1時間4℃でインキュベートした後にAAVを添加して、さらに1時間4℃でインキュベートした。それから、AAV+血清インキュベーションを、血清フリー培地中に懸濁された細胞と、プレーティング時に混合した。プロテインMを用いた中和実験では、3つの異なるインキュベーションのシナリオを試験した(各ステップは4℃で1時間):中和血清を最初にプロテインMとインキュベートした後にAAVとインキュベート、AAVを最初に中和血清とインキュベートした後にプロテインMとインキュベート、および、AAVを最初にプロテインMとインキュベートした後に中和血清とインキュベート。細胞を、200μl培地中の48ウェルプレート、または100μl培地中の96ウェルプレートに播種した。形質導入後、細胞を24~48時間37℃で培養して、AAV-ルシフェラーゼ導入遺伝子を発現させた。Luc活性を測定するために、細胞をパッシブ溶解バッファー(Promega,Madison,WI,USA)で溶解させて、ルシフェラーゼシグナルをWallac1420 Victor 2自動化プレートリーダーで測定した。Nab力価を、ルシフェラーゼ活性が血清フリーのコントロールよりも50%低い最大希釈として定義した。
【0289】
AAV免疫化マウスにおけるインビボでのAAV再投与:C57BL/6マウスを、8E5vgまたは1E9vgのAAV8-GFPのI.P.注入によって免疫化した。およそ1ヶ月後に、AAV8インビトロ中和アッセイによる滴定のためにマウスから血清を回収した。1日後、I.M.注入を行ない、それぞれの脚は、等用量の1E9vgまたは2E9vg AAV8-ルシフェラーゼを含み、ここで、一方の脚はリン酸緩衝生理食塩水で製剤化されたAAVが投与され、他方の脚はプロテインM類似体で製剤化されたAAVが注入の直前の単純な混合で投与された。合計容量200μlが、脚あたり注入された。D-ルシフェリン基質をI.P.投与した後に、AAV-Luc投与の2週間後に発光イメージングを行なった。
【0290】
前述の実験は本発明の例示であり、その限定と解釈されるべきでない。本発明は、好ましい実施態様に関して詳細に説明されているが、以下の特許請求の範囲において記載および定義されるように、バリエーションおよび改変が本発明の範囲および主旨内に存在する。
【0291】
【0292】
【0293】
【0294】
表7:抗体へのMG WTの親和性を改善すると予測された17個の点突然変異体。デルタスコアは、突然変異体のスコア-WT残基のスコアを指す。このリストは、PDB ID:4NZR内の抗体界面の5Å以内の70残基を検討した。
【0295】
配列
配列番号1:野生型M.genitaliumプロテインM
【0296】
配列番号2:N末端6-Hisタグの後にトロンビン切断部位を有するM.genitaliumプロテインM(配列番号1のアミノ酸残基37~556)の可溶型
【0297】
配列番号3:野生型M.genitaliumプロテインMフラグメント74~479
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【0298】
配列番号4:改変されたM.genitaliumプロテインM MG1
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【0299】
配列番号5:改変されたM.genitaliumプロテインM MG8
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【0300】
配列番号6:改変されたM.genitaliumプロテインM MG13
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【0301】
配列番号7:改変されたM.genitaliumプロテインM MG15
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【0302】
配列番号8:改変されたM.genitaliumプロテインM MG21
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【0303】
配列番号9:改変されたM.genitaliumプロテインM MG22
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【0304】
配列番号10:改変されたM.genitaliumプロテインM MG23
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【0305】
配列番号11:改変されたM.genitaliumプロテインM MG24
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【0306】
配列番号12:改変されたM.genitaliumプロテインM MG27
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【0307】
配列番号13:改変されたM.genitaliumプロテインM MG28
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【0308】
配列番号14:改変されたM.genitaliumプロテインM MG29
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【0309】
配列番号15:改変されたM.genitaliumプロテインM MG31
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【0310】
配列番号16:改変されたM.genitaliumプロテインM MG33
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【0311】
配列番号17:改変されたM.genitaliumプロテインM MG38
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【0312】
配列番号18:改変されたM.genitaliumプロテインM MG40
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【0313】
配列番号19:改変されたM.genitaliumプロテインM MG43
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【0314】
配列番号20:改変されたM.genitaliumプロテインM MG44
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【0315】
配列番号21:改変されたM.genitaliumプロテインM MG45
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【0316】
配列番号22:改変されたM.genitaliumプロテインM MG46
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNFITPSFKAGYYDHVAEDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPRFPGWCNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFACKGSPLYDQYPNHTFEDVKTLAIDAKDISALKTTIDSEKPTYLIIRGLSGNGSQLNELQLPESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKANSFGFNPLVLGSKTNVINDLFVSKPFTHIDLTQVTLQNSDNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFERQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYPGASIYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
【0317】
配列番号23:野生型M.pneumoniaeプロテインM
MKLNFKIKDKKTLKRLKKGGFWALGLFGAAINAFSAVLIVNEVLRLQSGETLIASGRSGNLSFQLYSKVNQNAKSKLNSISLTDGGYRSEIDLGDGSNFREDFRNFANNLSEAITDAPKDLLRPVPKVEVSGLIKTSSTFITPNFKAGYYDQVAADGKTLKYYQSTEYFNNRVVMPILQTTNGTLTANNRAYDDIFVDQGVPKFPGWFHDVDKAYYAGSNGQSEYLFKEWNYYVANGSPLYNVYPNHHFKQIKTIAFDAPRIKQGNTDGINLNLKQRNPDYVIINGLTGDGSTLKDLELPESVKKVSIYGDYHSINVAKQIFKNVLELEFYSTNQDNNFGFNPLVLGDHTNIIYDLFASKPFNYIDLTSLELKDNQDNIDASKLKRAVSDIYIRRRFERQMQGYWAGGYIDRYLVKNTNEKNVNKDNDTVYAALKDINLHLEETYTHGGNTMYRVNENYYPGASAYEAERATRDSEFQKEIVQRAELIGVVFEYGVKNLRPGLKYTVKFESPQEQVALKSTDKFQPVIGSVTDMSKSVTDLIGVLRDNAEILNITNVSKDETVVAELKEKLDRENVFQEIRT
【0318】
配列番号24:野生型M.pneumoniaeプロテインMフラグメント
SISLTDGGYRSEIDLGDGSNFREDFRNFANNLSEAITDAPKDLLRPVPKVEVSGLIKTSSTFITPNFKAGYYDQVAADGKTLKYYQSTEYFNNRVVMPILQTTNGTLTANNRAYDDIFVDQGVPKFPGWFHDVDKAYYAGSNGQSEYLFKEWNYYVANGSPLYNVYPNHHFKQIKTIAFDAPRIKQGNTDGINLNLKQRNPDYVIINGLTGDGSTLKDLELPESVKKVSIYGDYHSINVAKQIFKNVLELEFYSTNQDNNFGFNPLVLGDHTNIIYDLFASKPFNYIDLTSLELKDNQDNIDASKLKRAVSDIYIRRRFERQMQGYWAGGYIDRYLVKNTNEKNVNKDNDTVYAALKDINLHLEETYTHGGNTMYRVNENYYPGASAYEAERATRDSEFQKEIVQRAELIGVVFE
【0319】
配列番号25:細菌およびヒト発現の両方のためにコドン最適化されたM.genitaliumプロテインMをコードするポリヌクレオチド
ATGGGCAGCAGCCATCACCATCATCATCACAGCAGCGGTCTGGTGCCGCGTGGTAGCCACATGAGCCTGAGCCTGAACGATGGTAGCTACCAGAGCGAGATCGACCTGAGCGGCGGTGCCAACTTCCGTGAAAAATTCCGCAACTTTGCTAACGAGCTGAGCGAAGCCATTACCAATAGCCCAAAGGGCCTGGATCGTCCAGTGCCGAAAACCGAGATCAGCGGCCTGATTAAGACCGGTGACAACTTTATCACCCCGAGCTTCAAGGCGGGCTACTATGATCACGTGGCTGAGGACGGTAGCCTGCTGAGCTACTATCAGAGCACCGAGTACTTTAACAACCGTGTGCTGATGCCGATTCTGCAGACCACCAACGGCACCCTGATGGCCAACAACCGTGGTTATGACGACGTGTTCCGTCAGGTGCCGCGTTTCCCGGGCTGGAGCAACACCAAAGCGACCACCGTGAGCACCAGCAACAACCTGACCTACGACAAGTGGACCTATTTCGCCGCGAAAGGTAGCCCGCTGTACGATCAGTATCCGAACCACACCTTTGAGGACGTGAAAACCCTGGCTATCGATGCCAAGGACATTAGCGCGCTGAAAACCACCATCGATAGCGAAAAGCCGACCTACCTGATCATTCGCGGTCTGAGCGGCAACGGTAGCCAGCTGAACGAGCTGCAGCTGCCGGAAAGCGTGAAGAAAGTGAGCCTGTACGGCGACTATACCGGTGTGAACGTGGCCAAACAGATTTTTGCGAACGTGGTGGAGCTGGAATTCTATAGCACCAGCAAGGCGAACAGCTTCGGCTTTAACCCGCTGGTGCTGGGTAGCAAAACCAACGTGATCAACGACCTGTTCGTGAGCAAGCCGTTCACCCACATTGACCTGACCCAGGTGACCCTGCAGAACAGCGATAACAGCGCGATCGACGCTAACAAGCTGAAACAGGCTGTGGGCGATATCTACAACTATCGTCGCTTCGAGCGTCAGTTTCAGGGTTACTTCGCCGGCGGTTACATCGATAAGTATCTGGTGAAAAACGTGAACACCAACAAAGACAGCGACGATGACCTGGTGTACCGCAGCCTGAAGGAACTGAACCTGCACCTGGAGGAAGCTTATCGTGAGGGCGACAACACCTACTATCGCGTGAACGAAAACTACTATCCGGGTGCCAGCATCTACGAGAACGAACGTGCGAGCCGCGATAGCGAGTTTCAGAACGAAATTCTGAAGCGTGCGGAGCAGAACGGCGTGACCTTCGACGAAAACTAATAA
【0320】
配列番号26:ヒト発現のためにコドン最適化されたM.genitaliumプロテインMをコードするポリヌクレオチド
ATGAGCCTGAGCCTGAACGATGGCAGCTACCAGAGCGAGATCGACCTGTCTGGCGGAGCCAACTTCAGAGAGAAGTTCAGAAACTTCGCCAACGAGCTGAGCGAGGCCATCACAAACAGCCCCAAAGGCCTGGACAGACCCGTGCCTAAGACAGAGATCAGCGGCCTGATCAAGACCGGCGACAACTTCATCACCCCTAGCTTCAAGGCCGGCTACTACGATCACGTGGCCTCTGATGGCAGCCTGCTGAGCTACTACCAGTCCACCGAGTACTTCAACAACCGGGTGCTGATGCCCATCCTCCAGACCACCAATGGCACCCTGATGGCCAACAACAGAGGCTACGACGACGTGTTCAGACAGGTGCCCAGCTTTAGCGGCTGGTCCAATACCAAGGCCACCACCGTGTCCACCAGCAACAACCTGACCTACGACAAGTGGACCTACTTCGCCGCCAAGGGCAGCCCTCTGTACGACAGCTACCCCAACCACTTCTTCGAGGACGTGAAAACCCTGGCCATCGACGCCAAGGATATCAGCGCCCTGAAAACCACCATCGACAGCGAGAAGCCCACCTACCTGATCATCAGAGGACTGAGCGGCAACGGCAGCCAGCTGAATGAACTCCAGCTGCCTGAGAGCGTGAAGAAGGTGTCCCTGTACGGCGATTACACCGGCGTGAACGTGGCCAAGCAGATCTTCGCCAATGTGGTGGAACTGGAATTCTACAGCACCAGCAAGGCCAACAGCTTCGGCTTCAACCCTCTGGTGCTGGGCAGCAAGACCAACGTGATCAACGACCTGTTCGCCAGCAAGCCCTTCACACACATCGATCTGACCCAAGTGACCCTCCAGAACAGCGACAACAGCGCCATTGATGCCAACAAGCTGAAACAGGCCGTGGGCGACATCTACAACTACAGAAGATTCGAGCGGCAGTTCCAGGGCTACTTCGCTGGCGGCTACATCGACAAGTACCTGGTCAAGAACGTGAACACCAACAAGGACAGCGACGACGACCTGGTGTACAGAAGCCTGAAAGAGCTGAACCTGCACCTGGAAGAGGCCTACAGAGAGGGCGACAACACCTACTACAGAGTGAACGAGAACTACTACCCAGGCGCCAGCATCTACGAGAACGAGAGAGCCAGCAGAGACAGCGAGTTCCAGAACGAGATCCTGAAGCGGGCCGAGCAGAATGGCGTGACCTTCGACGAGAACTGATGA
【0321】
配列番号27:改変されたM.genitaliumプロテインM MG47
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNFITPSFKAGYYDHVAEDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPRFPGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGSPLYDQYPNHTFEDVKTLAIDAKDISALKTTIDSEKPTYLIIRGLSGNGSQLNELQLPESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKANSFGFNPLVLGSKTNVINDLFVSKPFTHIDLTQVTLQNSDNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFERQFQGYEAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYKPGASIYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
【0322】
配列番号28:改変されたM.genitaliumプロテインM MG48
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNFITPSFKAGYYDHVAEDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPRFPGWCNTKPTTVSTSNNLTYDKWTYFACKGSPLYDQYPNHTFEDVKTLAIDAKDISALKTTIDSEKPTYLIIRGLSGDGSQLNELQLPESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKANSFGFNPLVLGSKTNVINDLFVSKPFTHIDLTQVPLQNSDNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFERQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYPGASIYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
【0323】
配列番号29:改変されたM.genitaliumプロテインM MG49
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNFITPSFKAGYYDHVAEDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPRFPGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGSPLYDQYPNHTFEDVKTLAIDAKDISALKTTIDSEKPTYLIIRGLSGNGSQLNELQLPESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKANSFGFNPLVLGSKTNVINDLFVSKPFTHIDLTQVTLQNSDNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFERQFQGYFPGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYPGASIYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
【0324】
配列番号30:改変されたM.genitaliumプロテインM MP29
SISLTDGGYRSEIDLGDGSNFREDFRNFANNLSEAITDAPKDLLRPVPKVEVSGLIKTSSTFITPNFKAGYYDQVAEDGKTLKYYQSTEYFNNRVVMPILQTTNGTLTANNRAYDDIFVDQGVPRFPGWFHDVDKAYYAGSNGQSEYLFKEWNYYVANGSPLYNQYPNHTFKQIKTIAFDAPRIKQGNTDGINLNLKQRNPDYVIINGLTGDGSTLKDLELPESVKKVSIYGDYHSINVAKQIFKNVLELEFYSTNQDNNFGFNPLVLGDHTNIIYDLFVSKPFNYIDLTSLELKDNQDNIDASKLKRAVSDIYIRRRFERQMQGYWAGGYIDRYLVKNTNEKNVNKDNDTVYAALKDINLHLEETYTHGGNTMYRVNENYYPGASAYEAERATRDSEFQKEIVQR
【配列表】
【国際調査報告】