(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ブルシンゲル製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/475 20060101AFI20220922BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220922BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220922BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220922BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220922BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220922BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220922BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220922BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220922BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220922BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
A61K31/475
A61P19/02
A61K9/06
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/42
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506060
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 CN2020106108
(87)【国際公開番号】W WO2021023099
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】201910709653.X
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522038145
【氏名又は名称】ベイジン インクリースファーマ コーポレーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJING INCREASEPHARM CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン,バオシァン
(72)【発明者】
【氏名】フ,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ヂェンヂェン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,クァン
(72)【発明者】
【氏名】クエ,チュンメイ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ウェンフイ
(72)【発明者】
【氏名】カオ,イン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC09
4C076DD24
4C076DD24S
4C076DD25
4C076DD25Z
4C076DD26
4C076DD26Z
4C076DD30
4C076DD30Z
4C076DD37
4C076DD37R
4C076DD37S
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD41R
4C076DD41Z
4C076DD43
4C076DD43R
4C076DD45
4C076DD45R
4C076DD49
4C076DD49S
4C076DD49Z
4C076DD50
4C076DD50Z
4C076DD59
4C076DD59S
4C076EE09
4C076EE09P
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE30P
4C076EE32
4C076EE32P
4C076EE36
4C076EE36P
4C076EE42
4C076EE42P
4C076EE45
4C076EE45P
4C076FF01
4C076FF34
4C076FF35
4C076GG11
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA06
4C086NA07
4C086NA11
4C086ZA96
(57)【要約】
ブルシンゲル製剤、その製造方法及び応用である。該ゲル製剤は0.5%~1%のブルシンと、0.5%~3%のゲル骨格と、10%~30%の助溶剤とを含む。前記ブルシンの水ゲルは、経皮吸収促進剤を含まず、経皮吸収促進効果に優れ、塗布されて広がりやすく、生体適合性に優れ、良好な皮膚吸収、良好な薬物フィルム接着性を有し、皮膚及び粘膜に対する刺激性がない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量百分率で、0.5%~1%のブルシンと、0.5%~3%のゲル骨格材料と、10%~30%の助溶剤とを含む、ブルシンゲル製剤。
【請求項2】
前記ゲル骨格材料は、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、トラガントガム、ゼラチン、キトサン、ポリアクリル酸及びそのナトリウム塩のうちの1種又は2種以上の組み合わせである、請求項1に記載のゲル製剤。
【請求項3】
前記ゲル骨格材料は、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアガム、及びポリアクリル酸ナトリウムから選ばれる、請求項1又は2に記載のゲル製剤。
【請求項4】
前記ゲル骨格材料は、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボマー、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のゲル製剤。
【請求項5】
前記ゲル骨格材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゲル製剤。
【請求項6】
前記助溶剤は、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール400、イソプロパノールのうちの1種又は2種以上の組み合わせである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のゲル製剤。
【請求項7】
前記ゲル製剤は、有機アミン類、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸、クエン酸、及びリン酸塩の緩衝液から選ばれるpH調整剤をさらに含み、
好ましくは、前記有機アミン類は、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、及びラウリルアミンから選ばれる、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のゲル製剤。
【請求項8】
前記ゲル製剤は、質量百分率で、0.01%~0.1%の酸化防止剤をさらに含み、前記酸化防止剤は、無水亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、t-ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルフェノール、ビタミンC、ビタミンCパルミチン酸エステル、エチレンジアミン四酢酸及びそのナトリウム塩のうちの1種又は2種以上の組み合わせである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のゲル製剤。
【請求項9】
前記ゲル製剤は、質量百分率で、0.01%~0.15%の静菌剤をさらに含み、前記静菌剤は、クロロブタノール、エチルパラベン、ベンジルアルコール、メチルパラベン、ブチルパラベン、ソルビン酸及びそのカリウム塩、安息香酸及びそのナトリウム塩のうちの1種又は2種以上の組み合わせである、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のゲル製剤。
【請求項10】
前記ゲル製剤は、質量百分率で、68%~80%の水を含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のゲル製剤。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のゲル製剤の製造方法であって、
(1)前記ゲル骨格材料を膨潤させてゲルマトリックスIを得る工程と、
(2)ブルシン及び助溶剤を水に溶解し、ブルシン溶液IIを得る工程と、
(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIとを混合してブルシンゲル製剤を得る工程と、
を含む製造方法。
【請求項12】
工程(1)において、pHを5.5~6.5に調整するようにpH調整剤を加えてもよく、
工程(2)において、酸化防止剤、静菌剤、及び経皮剤を加えてもよく、
工程(3)において、pHを6.5~7.5に調整するようにpH調整剤を加えてもよい、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
変形性膝関節症を治療するための医薬品の製造における、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のブルシンゲル製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、発明の名称が「ブルシンゲル製剤及びその製造方法」である、2019年8月2日に中国特許庁へ提出された中国特許出願201910709653.Xに基づく優先権を主張し、その全内容は、全体として援用により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、医薬製剤分野に関し、具体的には、ブルシンゲル製剤、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0003】
変形性膝関節症は、退行性の病理性変化に基づく疾患であり、変形性膝関節症が発生すると、痛みが激しく、かつ、この種の痛みは、局所的な重度と深部の特徴を示しており、疾患部位に素早く到達でき、かつ効果が長続きする薬剤が必要である。
【0004】
馬銭子は、本質的に苦く、温めて、強力な毒を有する。通絡止痛、散結消腫という薬能を持っており、打撲損傷、骨折による腫痛、風湿頑痺、中風、半身不随などに用いられている。馬銭子の主な有効成分は、ブルシン(Brucine)、ストリキニーネ、ボミシン(Vomicine)、ノバシン(novacine)、ロガニン、イカジン(icajine)などを含む総アルカロイドである。その中で、ブルシンは、抗炎症、鎮痛作用を有し、ストリキニーネは、抗炎症、鎮痛作用をほぼ有さず、馬銭子の主な有毒成分である。
【0005】
馬銭子及びその製剤に関する薬物動態研究は、ブルシン(Brucine)が吸収された後すぐに除去され、半減期が短く、鎮痛作用の発揮に不利であることを示している。また、馬銭子の治療用量は中毒となる投与量に近く、経口服用の場合は最適な用量を制御するのが困難であり、その臨床応用が大きく制限される。
【0006】
現在、市販されている馬銭子関連製剤には、経口の十三種類の生薬の馬銭子丸薬及び馬銭子散がある。それらの関連製剤の有効成分は、馬銭子の抽出物、又は馬銭子の総アルカロイドであり、又は、ブルシンとストリキニーネの両方を共に含む。それらの製剤や用量を正確にコントロールすることは困難であるので、治療用量が中毒となる投与量に近く、又は毒性成分のストリキニーネが同時に含まれる。有効成分としてブルシンモノマーのみを含む外用製剤は殆どない。ブルシンに関する研究の動向は、それをどのようにして安全かつ効果的な薬用新剤形として開発し、その鎮痛、抗炎症、抗がんなどの生物活性を十分に発揮するとともに、中枢毒性を回避でき、臨床によりよく適用させる、ことである。
【0007】
ゲル製剤の場合は、有効成分の経皮吸収促進効果をどのように向上させるかが主な問題である。現在、ゲル製剤の処方には、通常、有効成分の経皮吸収促進効果を向上させるために、例えば、アゾンといった経皮吸収促進剤を加える必要がある。アゾンは、強力な皮膚浸透促進効果を持つが、アゾンの親油性が高いため、長期間に使用されると、皮膚に長期間蓄積し、角質層を破壊し、不可逆的な皮膚損傷を引き起こし、激しい刺激性を有する。本発明者らは、ブルシンモノマーのみを含むゲル剤の処方について、添加物、特にゲルマトリックス材料(ゲル骨格材料)の選択は得られる製剤の薬物動態に大きく影響を及ばす可能性があり、通常に使用されている幾つかのマトリックス材料はブルシンのゲル製剤の製造に適さず、その経皮吸収促進効果が十分ではないか、または安定性、粘度などの他の製剤の特性に欠点もある、ことを発見した。
【0008】
そこで、従来技術において、安全かつ経皮吸収促進効果に優れるブルシン経皮製剤が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術に存在する欠陥に対して、安全かつ経皮吸収促進効果に優れる新規ブルシンゲル製剤、その製造方法及び用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様においては、本発明は、質量百分率で、0.5%~1%のブルシンと、0.5%~3%のゲル骨格材料と、10%~30%の助溶剤とを含むブルシンゲル製剤を提供する。
【0011】
上記のブルシンゲル製剤においては、前記ゲル骨格材料は、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、トラガントガム、ゼラチン、キトサン、ポリアクリル酸及びそのナトリウム塩のうちの1種又は2種以上の組み合わせである。好ましくは、前記ゲル骨格材料は、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアガム、及びポリアクリル酸ナトリウムから選ばれる。より好ましくは、前記ゲル骨格材料は、カルボマー、ポリアクリル酸ナトリウム、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる。さらに好ましくは、前記ゲル骨格材料は、カルボマー、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる。特に好ましくは、前記ゲル骨格材料はヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0012】
上記のブルシンゲル製剤においては、前記助溶剤は、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール400、イソプロパノールのうちの1種又は2種以上の組み合わせである。
【0013】
上記のブルシンゲル製剤においては、前記ゲル製剤は、pH調整剤をさらに含む。好ましくは、前記pH調整剤は、有機アミン類、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸、クエン酸、及びリン酸塩の緩衝液から選ばれる。より好ましくは、前記有機アミン類は、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、及びラウリルアミンから選ばれる。
【0014】
上記のブルシンゲル製剤において、前記ゲル製剤は質量百分率で、0.01%~0.1%の酸化防止剤をさらに含む。前記酸化防止剤は、無水亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、t-ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルフェノール、ビタミンC、ビタミンCパルミチン酸エステル、エチレンジアミン四酢酸及びそのナトリウム塩のうちの1種又は2種以上の組み合わせであることが好ましい。
【0015】
上記のブルシンゲル製剤において、前記ゲル製剤は、質量百分率で、0.01%~0.15%の静菌剤をさらに含む。前記静菌剤は、クロロブタノール、エチルパラベン、ベンジルアルコール、メチルパラベン、ブチルパラベン、ソルビン酸及びそのカリウム塩、安息香酸及びそのナトリウム塩のうちの1種又は2種以上の組み合わせであることが好ましい。
【0016】
上記のブルシンゲル製剤において、前記ゲル製剤は、質量百分率で、68%~80%の水をさらに含んでも良い。
【0017】
他の一態様において、本発明は、(1)ゲル骨格材料を膨潤させてゲルマトリックスIを得る工程と、(2)ブルシン及び助溶剤を水に溶解し、ブルシン溶液IIを得る工程と、(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIとを混合してブルシンゲル製剤を得る工程と、を含む本発明のゲル製剤の製造方法を提供する。
【0018】
ゲルマトリックスの酸性度とアルカリ度の違いにより、工程(1)にpHを5.5~6.5に調整するようにpH調整剤を加えても良い。実際には、pH調整剤を膨潤に用いられる溶剤に加えることでpHを調整することができる。
【0019】
工程(2)において、酸化防止剤及び/又は静菌剤及び/又は経皮剤を加えてもよい。実際には、前記酸化防止剤、静菌剤及び/又は経皮剤を水に加えて溶解してもよい。
【0020】
測定したブルシンゲル製剤のpHによっては、工程(3)において、pHを6.5~7.5に調整するようにpH調整剤を加えてもよい。
【0021】
上記の製造方法は、本発明で提案される製造方法を例示されたものに過ぎず、本発明に係る製造方法が上記に例示された方法のみに限られていると解釈されるべきではない。
【0022】
第3の態様において、本発明は、変形性膝関節症を治療するための医薬品の製造におけるブルシンゲル製剤の使用を提供する。
【発明の効果】
【0023】
従来技術に比べて、本発明は、以下の有利な効果を有する。
1.関節炎の治療におけるストリキニーネの経口投与は、毒副作用が強く、ブルシンの局所適用のためのゲル製剤を開発し、経口服用毒性を回避し、薬物の生物学的利用率を向上させ、治療効果を改善する。
2.本発明に係るブルシンゲル製剤は、単純な薬用添加物を使用し、経皮吸収促進剤を使用せず、経皮吸収促進効果に優れ、塗布されて広がりやすく、生体適合性に優れ、良好な皮膚吸収、良好な薬物フィルム接着性を有し、皮膚及び粘膜に対する刺激性がない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施例を合わせて本発明の実施形態を詳細に説明するが、当業者であれば、以下の実施例は本発明を説明するために用いられ、本発明の範囲を限定するものであると見なされるべきではないことを理解することが可能である。実施例で特定の条件が示されていない場合は、従来の条件またはメーカーが推奨する条件に従って実施する。使用する試薬又は機器は、メーカーが示されていない場合、市場から入手できる従来の製品である。
実施例1
【0025】
【0026】
調製方法:
(1)8.3gのカルボマーを水に加えて完全に膨潤させ、5Mの水酸化ナトリウムでpHを6程度に調整し、ゲルマトリックスIを得た。(2)1.67gのエチルパラベンをプロピレングリコールに溶かして溶液aを得、0.83gのエチレンジアミン四酢酸を適量の水に溶かして溶液bを得、10gのブルシンを無水エタノールと溶液aに溶かして溶液cを得、溶液cと溶液bとを均一に混合してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIとを混合し、均一に撹拌し、ブルシンゲル製剤を得た。
実施例2
【0027】
【0028】
調製方法:
(1)33.33gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを水に加えて完全に膨潤させ、ゲルマトリックスIを得た。(2)1.67gのエチルパラベンをプロピレングリコールに溶かして溶液aを得、0.83gのエチレンジアミン四酢酸を適量の水に溶かして溶液bを得、10.0gのブルシンを無水エタノールと溶液aに溶かして溶液cを得、溶液cと溶液bを均一に混合してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、均一に撹拌し、0.1Mのクエン酸を加えてpHを7程度に調整し、ブルシンゲル製剤を得た。
実施例3
【0029】
【0030】
調製方法:
(1)40gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを水に加えて完全に膨潤させ、ゲルマトリックスIを得た。(2)10gのブルシンを無水エタノール及びプロピレングリコールに溶かし、残りの処方量の水を加え、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、均一に撹拌し、0.1Mのクエン酸を加えてpHを7程度に調整し、ブルシンゲル製剤を得た。
実施例4
【0031】
【0032】
調製方法:
(1)10gのカルボマーを水に加えて完全に膨潤させ、5Mの水酸化ナトリウムを使用してpHを6程度に調整し、ゲルマトリックスIを得た。(2)10gのブルシンを無水エタノール及びプロピレングリコールに溶かし、残りの処方量の水を加え、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、均一に撹拌し、ブルシンゲル製剤を得た。
実施例5
【0033】
【0034】
調製方法:
(1)20gのポリアクリル酸を水に加えて完全に膨潤させ、ゲルマトリックスIを得た。(2)10gのブルシンを無水エタノール及びプロピレングリコールに溶かし、残りの処方量の水を加え、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、均一に撹拌し、ブルシンゲル製剤を得た。
実施例6
【0035】
【0036】
調製方法:
(1)30gのカルボキシメチルセルロースナトリウムを水に加えて完全に膨潤させ、ゲルマトリックスIを得た。(2)10gのブルシンを無水エタノール及びグリセリンに溶かし、残りの処方量の水を混ぜ、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、均一に撹拌し、ブルシンゲル製剤を得た。
実施例7
【0037】
【0038】
調製方法:
(1)25gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを水に加えて完全に膨潤させ、ゲルマトリックスIを得た。(2)10gのブルシンをポリエチレングリコール400に溶かし、残り処方量の水を混ぜ、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、0.1Mのクエン酸を加えてpHを7程度に調整し、均一に撹拌し、ブルシンゲル製剤を得た。
実施例8
【0039】
【0040】
調製方法:
(1)8.33gのアラビアガムを水に加えて完全に膨潤させ、ゲルマトリックスIを得た。(2)10gのブルシンをベンジルアルコールに溶かし、残りの処方量の水を混ぜ、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、均一に撹拌し、ブルシンゲル製剤を得た。
実施例9
【0041】
【0042】
調製方法:
(1)30gのカルボマーを水に加えて完全に膨潤させ、5Mの水酸化ナトリウムを使用してpHを6程度に調整し、ゲルマトリックスIを得た。(2)10gのブルシンをグリセリンとイソプロパノールに溶かし、残りの処方量の水を混ぜ、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、均一に撹拌し、ブルシンゲル製剤を得た。
実施例10
【0043】
【0044】
調製方法:
(1)30gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを水に加えて完全に膨潤させ、ゲルマトリックスIを得た。(2)10gのブルシンをグリセリンに溶かし、残りの処方量の水を混ぜ、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、0.1Mのクエン酸を加えてpHを7程度に調整し、均一に撹拌し、ブルシンゲル製剤を得た。
比較例1
【0045】
【0046】
調製方法:
(1)40.0gのポリビニルアルコール、20gのヒアルロン酸ナトリウムを水に加えて完全に膨潤させ、ゲルマトリックスIを得た。(2)10gのブルシンを無水エタノール及びプロピレングリコールに溶かし、残りの処方量の水を加え、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、均一に撹拌し、そして、0.1Mのクエン酸を加えてpHを7程度に調整し、均一に撹拌し、ブルシンゲル製剤を得た。
比較例2
【0047】
【0048】
調製方法:
(1)40gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを水に加えて完全に膨潤させ、ゲルマトリックスIを得た。(2)20gの馬銭子の総アルカロイドを無水エタノール及びプロピレングリコールに溶かし、残りの処方量の水を混ぜ、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、均一に撹拌し、0.1Mのクエン酸を加えてpHを7程度に調整し、馬銭子の総アルカロイドのゲル製剤を得た。
比較例3
【0049】
【0050】
調製方法:
(1)40gのキタンサンガムを水に加えて完全に膨潤させ、ゲルマトリックスIを得た。(2)10gのブルシンを無水エタノール及びプロピレングリコールに溶かし、残りの処方量の水を加え、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、均一に撹拌し、0.1Mのクエン酸を加えてpHを7程度に調整し、製剤を得た。
比較例4
【0051】
【0052】
調製方法:
(1)300gのポロクサマーを水に加えて完全に膨潤させ、ゲルマトリックスIを得た。(2)10gのブルシンを無水エタノール及びプロピレングリコールに溶かし、残りの処方量の水を加え、均一に撹拌してブルシン溶液IIを得た。(3)ゲルマトリックスIとブルシン溶液IIを混合し、均一に撹拌し、0.1Mのクエン酸を加えてpHを7程度に調整し、製剤を得た。
【0053】
試験例1:本発明に係るブルシンゲル製剤の特性に関する研究
実施例1~10及び比較例1~4で調製されたゲル製剤について、物理的性状を肉眼で観察した。
【0054】
【0055】
その結果は、全ての製品がゲル製剤に対する粘度の要求を満たしたことを示した。
【0056】
試験例2:本発明のブルシンゲル製剤の皮膚投与のための関節液の薬物動態学に関する研究
1.実験動物、薬剤及び器械
1.1 実験動物
Wistarラット、SPFグレード(特殊な病原体を含まないグレードの実験動物):体重210~250g、雌性、動物年齢10~11週、斯貝福(北京)生物技術有限公司から購入、許可証番号:11401500036047。
動物室:試験中、動物は、北京盈科瑞薬物安全有効性研究有限公司に飼育された。実験施設の許可証:SYXK(京)2017-0026。施設管理は、中国の国家基準GB14925-2001「実験動物環境及び施設」に準拠する。
飼育条件:人工照射による12時間の明暗サイクルを採用し、環境温度を20~24℃に維持し、湿度を40%~70%に保ち、1時間に15回換気した。動物をポリカーボネート制マウスケージに、ケージあたりに同群の同性の6匹のラットずつに飼育し、2日間に1回ケージ及び寝わらを交換した。
飼料:斯貝福(北京)生物技術有限公司から購入されたラット・マウスの成長・維持用飼料。
飲料水:実験動物用の飲料水を動物に自由に摂取させ、毎日、新しいウォーターボトル及び新鮮な水に交換した。
【0057】
1.2 薬剤
実施例3、実施例4、実施例5、比較例1~4の製造方法に従って、それぞれゲル1、ゲル2、ゲル3、ゲル4、ゲル5、ゲル6、ゲル7が得られた。
【0058】
1.3 器械及び試薬
器械:
トリプル四重極-イオントラップ型質量分析計(AB Sciex QTRAP5500 Applied Biosystem社)、液相:超高速液体クロマトグラフィー(ExionLC AC Applied Biosystem社)、マイクロダイアリシスサンプリング装置:CMAマイクロダイアリシスサンプリングシステム
試薬及び薬品:
抱水クロラール、メーカー:上海山浦化工有限公司
【0059】
1.4 分析方法
1.4.1 LC-MS/MSによるラット関節液におけるブルシンの薬物濃度の分析法
透析液サンプル中のブルシンの濃度は、北京盈科瑞薬物安全有効性研究有限公司で分析された。分析には、非確認の液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)を使用した。ゲル1~7の標準曲線範囲は0.2~200ng/mLであり、定量下限は0.2ng/mLであった。
【0060】
内部標準物であるワルファリンを添加した後、ラット関節腔透析液をLC-MS/MSにより分析した。
10μLの試験透析液サンプルを取り、2μLのアセトニトリルを加えて処理した。標準曲線(濃度がそれぞれ0.20ng/mL、0.60ng/mL、2.00ng/mL、6.00ng/mL、20.0ng/mL、60.0ng/mL、200ng/mLであった)(ダブルブランクを除く)、品質管理及び試験試料に100μLの内部標準物(ワルファリン、100ng/mL)を加え、ボルテックスでよく混合した。10μLのダブルブランク試料を取り、102μLのアセトニトリルを加え、ボルテックスでよく混合した。上澄みを吸引し、順番にインジェクショントレイに置き、試料を注入し、測定を行った。すべての透析液は、-80℃の冷凍庫に保管された。
【0061】
HPLC条件:
HPLCクロマトカラム:ACQUITY UPLC BEH C8 1.7um 2.1×50mm Colume (Waters)
流速:0.5mL/min、移動相A:水/ギ酸 (99.9/0.1、v/v)
移動相B:アセトニトリル/ギ酸(99.9/0.1、v/v)、注入量:10μL、カラム温度:40℃
運転時間:3.0分
【0062】
MS条件:
イオン源:ESI、スキャンタイプ:陽イオン MRM (多重反応モニタリング)
CUR Gas:30.00、スプレー電圧:5500.00、源温度:500℃
GS1: 55.00、GS2: 55.00、CAD: Medium
【0063】
【0064】
計算:
Analyst 1.6.3ソフトウェアの線形プログラムにより、1/x2の重みでブルシンと内部標準とのピーク面積比と濃度の間に、線形方程式(標準曲線)をフィッティングした。この方程式は、透析液中のブルシンの濃度を推定するために用いられた。
【0065】
1.4.2 薬物動態学のデータ分析
WinNonlin(プロ版、5.2版、Pharsight社)ソフトウェアを使用して個々の動物の血漿濃度-時間データを分析した。非コンパートメントモデルは、濃度分析に用いられた。本発明における薬物動態パラメータをまとめて以下に示す。
Cmax(ng/mL):最大(ピーク)透析液薬物濃度
Tmax(h):最高血中濃度到達時間
t1/2(h):半減期
AUC0-inf (ng×h/mL):試験品投与後の薬物濃度-時間曲線下面積
【0066】
2.実験方法
雄SDラットを12匹ずつにランダムに4群に分けた。
研究において、3つの群に分けて、各群の動物にそれぞれ1回の経皮投与(ゲル1~7を投与)を実施し、投与量を10mg/kgとした。実験前に動物を絶食させることは必要がない。
【0067】
各群の動物を投与した後、マイクロダイアリシスサンプリング装置を1μL/minの流速でサンプリングするように調整した。サンプル収集の前にプローブを1時間灌流し平衡させ、30分ごとに1つのサンプルを合わせて10時間(採取する時、ラットを38℃の電気毛布に置いて呼吸数を観察し、温度を調整した)採取した。透析液は、分析まで-80℃で保存した。実験中、抱水クロラールで動物を麻酔し、採取中でラットが覚醒した場合、0.3mLの10%抱水クロラール(腹腔注射)を追加した。
【0068】
【0069】
ゲル1、ゲル2、ゲル3は、良好な薬物動態学特性を有し、ゲル1はゲル2及びゲル3より暴露量(AUC)が高く、ゲル1は薬物動態学特性がより優れ、吸収が急速であり、暴露量が高く、経皮吸収促進効果が高いことが分かった。予期せぬことに、ストリキニーネを含むブルシン(即ち、馬銭子の総アルカロイド)(ゲル5、比較例2)の経皮吸収促進効果が明らかに馬銭子モノマーから作られたゲル(ゲル1、実施例3)より低いことを発見した。
試験例3:本発明に係るブルシンゲル製剤による関節腫脹の治療効果の実験
【0070】
1.実験動物及び薬剤
1.1.実験動物及び薬剤が試験例2と同じである。
1.2.薬剤
完全フロイントアジュバント(CFA、メーカー:碧雲天生物技術有限公司
ボルタレン(ジクロフェナクジエチルアミンラテックス)、メーカー:北京Novartis製薬有限公司
それぞれ実施例3、実施例4、実施例5、比較例2の製造方法に従って得られた、ゲル1、ゲル2、ゲル3、ゲル5。
【0071】
2. 実験方法
動物を麻酔器で麻酔した後、各ラットの左後足指に0.1ml完全フロイントアジュバント(CFA)を皮内注射して、関節炎を誘発した。ここで、カルメット-ゲラン菌(BCG)の濃度は10mg/mlであった。
ラット関節炎臨床スコアに従って、ブランク対照群、モデル対照群、陽性対照群(ボルタレン、50mg/kg)、ゲル1群(5mg/kg)、ゲル2群(5mg/kg)、ゲル3群(5mg/kg)、ゲル5群(5mg/kg)にランダムに分けた。
【0072】
様々な量のゲルを秤量してラットの左足及び足首関節の周りに塗り、数回注意深くマッサージし、リリースペーパーで包み、一層の医療用絆創膏で貼り付けてから、薬剤が落ちるのを防止するように医療用絆創膏で巻き付けた。4時間後、医療用絆創膏を取り除き、ラットの左足を洗いた。すべての群に毎日に1回、連続的に7日投薬し、投薬開始時間は毎日ほぼ同じとした。
【0073】
関節炎の臨床スコア:モデリング前に1回、群分け時に1回、群分け後に1回である。0~4スケールのスコア法を採用し、各足の最大スコアは4点であり、右後足及び左後足を測定した。スコアの基準は以下の通りである。
0点:発赤・腫れなし
1点:趾関節に発赤・腫れ、及び足の表面に軽度の発赤・腫れがあり
2点:趾関節及び足指に腫れがあり
3点:足関節以下の足の爪に腫れがあり
4点:足関節を含むすべての足の爪に腫れがあり
【0074】
腫れ率の測定:モデリング前に1回、群分け前に1回、投薬後1週間に1回、左後足の足の裏の厚さを測定し、次の式で腫れ率を計算した。
腫れ率=(モデリング後毎回測定したデータ-モデリング前/モデリング前)×100%
結果は、以下の通りである。
【0075】
【0076】
以上の表から分かるように、ラットの左足裏に0.1mlの完全フロイントアジュバントを皮内注射した後、モデル群(G2)はブランク群に比べて、ラットの足指の腫れ度、左後足の趾関節腫れ度が非常に有意差を(P<0.01)有し、モデル構築が成功したことが示された。
また、ボルタレン(ジクロフェナクナトリウムジエチルアミン、陽性対照群G3)、及びブルシンゲル(実施例3、ゲル1群、実施例4、ゲル2群、実施例5、ゲル3群)、馬銭子の総アルカロイドゲル(比較例2、ゲル5群)を経皮投与すると、いずれも腫れ度を軽減することができ、その中で、ゲル1群は他の各群より大幅に優れていた。
【国際調査報告】